本発明による可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と水と保湿剤と樹脂エマルションを含むが、樹脂エマルションとしては、エマルション中の樹脂の固形分酸価が100以下であることを一つの特徴とするものである。
本発明に用いる樹脂エマルションとは、樹脂が水に溶解せずに粒子状で存在し、水が蒸発して粒子同士が結着し造膜するものである。
本発明に用いる樹脂エマルションとしては、樹脂エマルション中の樹脂の固形分酸価として1以上であり、100以下である。この範囲より大きいと、印像を形成した際に、その印像の皮膜がもろくなるか皮膜を形成できず、押印面に印像を定着できないか定着しにくくなり、さらに、印像を摩擦部材などで擦過した際に、印像が剥がれる。好ましくは、固形分酸価が5以上であり、60以下が好ましい。より好ましくは、55以下である。この範囲とすることで、印像の皮膜が強固に形成されるため、印像の定着性が向上し、さらに印像を摩擦部材などで擦過した際にも、印像が押印面から剥がれることがない。
本発明における固形分酸価とはエマルション中の樹脂自体の酸価であり、JISK2501に記載されている指示薬滴定法にて下記計算式より求められる値である。
AN=56.1×cKOH×(V1−V0)/m
AN:酸価(mgKOH/g)
V1:試料の滴定に要した0.1mol/l水酸化カリウムの2−プロパノール溶液の量 (ml)
V0:空試験の滴定に要した0.1mol/l水酸化カリウムの2−プロパノール溶液の量(ml)
cKOH:0.1mol/l水酸化カリウムの2−プロパノール溶液のモル濃度(mol/l)
m: 試料のはかり採り量 (g)
56.1: 水酸化カリウムの式量
本発明に用いる樹脂エマルション中の樹脂の配合割合としては、インキ組成物全質量に対して、1%以上であり、15質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、3質量%以上であり、10質量%以下である。この範囲より大きいと、インキ組成物の粘度が上昇し、インキ組成物の流動性が悪くなる傾向が見られ、鮮明な印像が得られなくなる虞がある。また、インキ組成物の経時安定性が劣る傾向にある。この範囲より小さいと印像の皮膜が形成されないか、皮膜を形成するのに時間がる傾向があり、印像の定着性が劣る虞がある。この範囲にあると、インキ組成物の流動性が良く鮮明な印像が得られ、また、印像を形成した際にその印像の皮膜が強固に形成できるため印像の定着性が向上する。さらに、印像を摩擦部材などで擦過した際にも、印像が押印面に対し強固に定着するため、押印面から剥がれることがない。
本発明に用いる樹脂エマルションとしては、アクリル系樹脂エマルション、ウレタン系樹脂エマルション、などを用いることができる。より具体的には、アクリル系エマルションとしては、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンーアクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体のエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。また、ウレタン系エマルションは、ポリエーテルポリオール共重合型、ポリエステルポリオール共重合型、ポリカーボネートポリオール共重合型ウレタンエマルションなどが挙げられる。
本発明による可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料と水と保湿剤と樹脂エマルションを含むが、その保湿剤の量としては、インキ組成物全質量に対して、30〜60質量%であることが好ましい。この範囲より少ないと、印面が乾燥し、印像が掠れるなど、鮮明な印像が得られない。また、この範囲より多いと、吸湿性が高くなり、印像が滲んだり、斑が出たりする為、鮮明な印像が得られない。より好ましくは、30〜55質量%であり、さらに好ましくは、40〜50質量%である。インキ注入量と保湿剤の量が前記範囲にあると、インキが乾燥することや吸湿することがなく、印象が鮮明に獲られる。
本発明に用いる保湿剤としては、一般に保湿剤として用いることが出来るもので有れば特に限定はないが、水溶性有機溶剤が好ましい。前記水溶性有機溶剤としては、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール類及びそれらの低級アルキルエーテル、2−ピロリドン、N−ビニルピロリドン、等が挙げられ、顔料として(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とからなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を用いる場合は、水溶性有機溶剤としてグリセリン、プロピレングリコールが好適に用いられる。
前記樹脂エマルション中の樹脂と保湿剤の配合比は、質量比として樹脂エマルション中の樹脂/保湿剤が1/3〜1/100であることが好ましい。より好ましくは1/5〜1/20であり、この範囲より樹脂エマルションの配合比が少ないと印像の定着性が劣る傾向が見られ、この範囲より多いと、インキ組成物の保存安定性が劣る傾向が見られる。前記範囲にあると、印像の定着性が十分であり、インキ組成物の保存安定性も良好となる。
また、本発明のインキ組成物は、印面を有する浸透性のスタンプ用インキ組成物として用いることができるが、インキ組成物中に含まれる水と保湿剤の配合比は、質量比として水/保湿剤が1/3.3〜1/1.8であることが好ましい。より好ましくは1/3〜1/1.9であり、この範囲より水の配合比が少ないと、スタンプとした際にキャップオフ時にインキが吸湿して印面の水分が増加し、押印した際に印像が滲む傾向が見られ、この範囲より水分量が多いと、保湿剤に対する水分量が多いため、インク中の水分が蒸発するため、押印した際に印像が掠れる傾向が見られる。前記範囲にあると、キャップオフ時にインキの吸湿や水分の蒸発を押さえることができ、押印した際に良好な印像が得られる。特に、水と保湿剤の配合比を前記範囲とし、保湿剤の配合割合を前記好ましい範囲である、インキ組成物全質量に対して30〜60質量%とすることで、その効果が顕著となる。
さらに、本発明のインキ組成物中に含まれる、樹脂エマルション中の樹脂の配合割合をインキ組成物全質量に対して、1%以上であり、15質量%以下することで、鮮明な印像が得られ、その印像の定着性、耐擦過性も良好な状態を保ちつつ、スタンプとした際のキャップオフ時の押印した際の性能と、押印して形成された印像の定着性、耐擦過性を良好に保てるなど、スタンプとしての性能をさらに向上することができる。
前記水の他に媒体として、スタンプ用インキに通常用いられている有機溶剤を用いてもよい。具体的には、ヒマシ油脂肪酸アルキルエステル類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、エチレングリコールアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコール系溶剤、エチルホルメート、アミルホルメート、エチルアセテート、エチルアセトアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、アミルアセテート、メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネート、プロピル−3−メトキシプロピオネート、ブチル−3−メトキシプロピオネート、メチルラクテート、エチルラクテート、エチル−2−ヒドロキシブチレート、ブチルブチレート、ブチルステアレート、エチルカプレート、ジエチルオキサレート、エチルピルベート、エチルベンゾエート等のエステル系溶剤、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、n−ドデカン、ジイソブチレン、ジペンテン、ヘキセン、メチルシクロヘキセン、ビシクロヘキシル、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶剤、アミルクロライド、ブチルクロライド等のハロゲン化炭化水素系溶剤、3−メトキシ−3−メチルブタノール、3−メトキシ−3−メチルペンタノール等のアルコール系溶剤、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジアミルエーテル、ジヘキシルエーテル等のエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソアミルケトン、エチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、メチルノニルケトン、ジイソプロピルケトン、ジイソブチルケトン、メトキシメチルペンタノン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、3−メトキシプロピオン酸、3−エトキシプロピオン酸等のプロピオン酸系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ベンゾニトリル等の高極性溶剤、或いはこれらの混合溶剤などが挙げられる。
本発明に用いる可逆熱変色性インキ組成物は、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を含むが、前記(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料について以下に説明する。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料としては、特公昭51−44706号公報、特公昭51−44707号公報、特公平1−29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1〜7℃)を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を適用できる(図1参照)。
また、特公平4−17154号公報、特開平7−179777号公報、特開平7−33997号公報、特開平8−39936号公報等に記載されている大きなヒステリシス特性(ΔHB=8〜50℃)を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度(t1)以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度(t4)以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔t2〜t3の間の温度域(実質的二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する加熱消色型(加熱により消色し、冷却により発色する)の可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料も適用できる(図2参照)。
以下に前記可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料の色濃度−温度曲線におけるヒステリシス特性を図2のグラフによって説明する。
図2において、縦軸に色濃度、横軸に温度が表されている。温度変化による色濃度の変化は矢印に沿って進行する。ここで、Aは完全に消色した状態に達する温度t4(以下、完全消色温度と称す)における濃度を示す点であり、Bは消色し始める温度t3(以下、消色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Cは発色し始める温度t2(以下、発色開始温度と称す)における濃度を示す点であり、Dは完全に発色した状態に達する温度t1(以下、完全発色温度と称す)における濃度を示す点である。
また、線分EFの長さが変色のコントラストを示す尺度であり、線分HGの長さがヒステリシスの程度を示す温度幅(以下、ヒステリシス幅ΔHと記す)であり、このΔH値が大きい程、変色前後の各状態の保持が容易である。
ここで、t4とt3の差、或いは、t2とt1の差(Δt)が変色の鋭敏性を示す尺度である。
更に、可逆熱変色性組成物の発消色状態のうち常温域では特定の一方の状態(発色状態)のみ存在させると共に、前記可逆熱変色性組成物による印像を摩擦により生じる摩擦熱により簡易に変色(消色)させるためには、完全消色温度(t4)が50〜95℃でありと好ましく、且つ、発色開始温度(t2)が−50〜10℃であると好ましい。
ここで、発色状態が常温域で保持でき、且つ、印像の摩擦による変色性を容易とするために何故完全消色温度(t4)が50〜95℃、且つ、発色開始温度(t2)が−50〜10℃であるかを説明すると、発色状態から消色開始温度(t3)を経て完全消色温度(t4)に達しない状態で加温を止めると、再び第一の状態に復する現象を生じること、及び、消色状態から発色開始温度(t2)を経て完全発色温度(t1)に達しない状態で冷却を中止しても発色を生じた状態が維持されることから、完全消色温度(t4)が常温域を越える50℃以上であれば、発色状態は通常の使用状態において維持されることになり、発色開始温度(t2)が常温域を下回る−50〜10℃の温度であれば消色状態は通常の使用において維持される。
更に、摩擦により印像を消去する場合、完全消色温度(t4)が95℃以下であれば、被印像面に形成された印像上を摩擦部材による数回の摩擦による摩擦熱で十分に変色できる。
完全消色温度(t4)が95℃を越える温度の場合、摩擦部材による摩擦で得られる摩擦熱が完全消色温度に達し難くなるため、容易に変色し難くなり、摩擦回数が増加したり、或いは、荷重をかけ過ぎて摩擦する傾向にあるため、被印像面が紙の場合は紙面を傷めてしまう虞がある。
よって、前記温度設定は押印面に変色状態の印像を選択して択一的に視認させるためには重要な要件であり、利便性と実用性を満足させることができる。
前述の完全消色温度(t4)の温度設定において、発色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、しかも、摩擦による摩擦熱が完全消色温度(t4)を越えるようにするためには低い温度であることが好ましい。よって、完全消色温度(t4)は、好ましくは50〜90℃、より好ましくは60〜80℃である。更に、前述の発色開始温度(t2)の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、−50〜5℃が好適であり、−50〜0℃がより好適である。本発明においてヒステリシス幅(ΔH)は50℃〜100℃の範囲であり、好ましくは55〜90℃、更に好ましくは60〜80℃である。
本発明による可逆熱変色性スタンプに用いるマイクロカプセル顔料は、前記変色温度域よりも高温側に完全消色温度(t4)を有する可逆熱変色性組成物を用いることもできる。
前記可逆熱変色性組成物の発消色状態のうち常温域では特定の一方の状態(発色状態)のみ存在させると共に、前記可逆熱変色性組成物による印像を加熱消去具等から得られる熱により消色させるためには、完全消色温度(t4)が80℃以上とし、且つ、発色開始温度(t2)が15℃以下である。ここで、発色状態が常温域で保持でき、且つ、消色状態は通常の使用において維持されるために何故完全消色温度(t4)が80℃以上、且つ、発色開始温度(t2)が15℃以下であるかを説明すると、発色状態から消色開始温度(t3)を経て完全消色温度(t4)に達しない状態で加温を止めると、再び第一の状態に復する現象を生じること、及び、消色状態から発色開始温度(t2)を経て完全発色温度(t1)に達しない状態で冷却を中止しても発色を生じた状態が維持されることから、完全消色温度(t4)が常温域を越える80℃以上であれば、発色状態が夏場の車内等の高温環境下で維持され、発色開始温度(t2)が常温域を下回る15℃以下の温度であれば消色状態は通常の使用において維持される。更に、完全消色温度(t4)が90℃以上であれば、発色状態は高温環境下でより維持され、発色開始温度(t2)が10℃以下であれば、消色状態が通常の使用状態でより維持される。よって、前記温度設定は押印面に変色状態の印像を選択して択一的に視認させるための重要な要件であり、印像は所期の目的を達成することができる。前述の完全消色温度(t4)の温度設定において、発色状態が高温環境下で維持されるためにはより高い温度であることが好ましく、完全消色温度(t4)は、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上である。更に、前述の発色開始温度(t2)の温度設定において、消色状態が通常の使用状態において維持されるためにはより低い温度であることが好ましく、−50〜10℃が好適であり、−50〜5℃がより好適である。なお、可逆熱変色性組成物を予め発色状態にするためには冷却手段としては汎用の冷凍庫にて冷却することが好ましいが、冷凍庫の冷却能力を考慮すると、−50℃迄が限度であり、従って、完全発色温度(t1)は−50℃以上であると好ましい。本発明においてヒステリシス幅(ΔH)は70℃〜150℃の範囲である。
前記可逆熱変色性組成物を用いることで、重要書類などに形成した印像が夏場の車内などの高温環境下で放置しても消色することがなく、スタンプとしての適用範囲を広げることができる。さらに、摩擦部材による擦過により、消去しにくくなることから、書類の真贋を判別することに用いることができる。その際、本発明による可逆性熱変色性スタンプ用インキ組成物を用いると、印像が剥がれることがないので、特に有用である。
以下に可逆熱変色性組成物を構成する(イ)、(ロ)、(ハ)成分について説明する。
本発明において(イ)成分は、顕色剤である成分(ロ)に電子を供与し、成分(イ)が有するラクトン環などの環状構造が開環し、成分(ロ)と共鳴構造をとることにより発色する電子供与性呈色性有機化合物からなるものである。このような電子供与性呈色性有機化合物としては、ジフェニルメタンフタリド類、フェニルインドリルフタリド類、インドリルフタリド類、ジフェニルメタンアザフタリド類、フェニルインドリルアザフタリド類、フルオラン類、スチリノキノリン類、ジアザローダミンラクトン類、ピリジン類、キナゾリン類、ビスキナゾリン類などを挙げることができる。
成分(ロ)の電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群(酸ではないが、組成物中で酸として作用して成分(イ)を発色させる化合物群)、電子空孔を有する化合物群等がある。
活性プロトンを有する化合物を例示すると、フェノール性水酸基を有する化合物としては、モノフェノール類からポリフェノール類があり、さらにその置換基としてアルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基及びそのエステル又はアミド基、ハロゲン基等を有するもの、及びビス型、トリス型フェノール等、フェノール−アルデヒド縮合樹脂等を挙げることができる。又、前記フェノール性水酸基を有する化合物の金属塩であってもよい。
前記(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類を挙げることができる。
前記(ハ)成分として好ましくは、色濃度−温度曲線に関し、大きなヒステリシス特性(温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線が、温度を低温側から高温側へ変化させる場合と、高温側から低温側へ変化させる場合で異なる)を示して変色する、色彩記憶性を示す可逆熱変色性組成物を形成できる5℃以上50℃未満のΔT値(融点−曇点)を示すカルボン酸エステル化合物が用いられる。このような化合物としては、種々のものが提案されており、それらから任意に選択して用いることができるが、具体的には下記のようなものが挙げられる。
まず、前記(ハ)成分として、特開2006−137886号公報などに記載されている下記一般式(1)で示される化合物が好適に用いられる。
(式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、mは0〜2の整数を示し、X1、X2のいずれか一方は−(CH2)nOCOR2又は−(CH2)nCOOR2、他方は水素原子を示し、nは0〜2の整数を示し、R2は炭素数4以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、Y1及びY2は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、又は、ハロゲンを示し、r及びpは1〜3の整数を示す。)
前記式(1)で示される化合物のうち、R1が水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好適であり、更にR1が水素原子であり、且つ、mが0の場合がより好適である。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記一般式(2)で示される化合物が用いられる。
(式中のRは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示すが、好ましくは炭素数10〜24のアルキル基、更に好ましくは炭素数12〜22のアルキル基である。)
更に、前記(ハ)成分として、下記一般式(3)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基を示し、m及びnはそれぞれ1〜3の整数を示し、X及びYはそれぞれ水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲンを示す。)
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(4)で示される化合物を用いることもできる。
前記(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物をマイクロカプセルに内包させた可逆熱変色性マイクロカプセル顔料について以下に説明する。
(式中、Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1乃至3の整数を示し、nは1〜20の整数を示す。)
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(5)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Rは炭素数1乃至21のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは1〜3の整数を示す。)
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(6)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1〜3の整数を示し、nは1〜20の整数を示す。)
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(7)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Rは炭素数4〜22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4〜22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0又は1を示す。)
前記化合物としては、4−フェニル安息香酸デシル、4−フェニル安息香酸ラウリル、4−フェニル安息香酸ミリスチル、4−フェニル安息香酸シクロヘキシルエチル、4−ビフェニル酢酸オクチル、4−ビフェニル酢酸ノニル、4−ビフェニル酢酸デシル、4−ビフェニル酢酸ラウリル、4−ビフェニル酢酸ミリスチル、4−ビフェニル酢酸トリデシル、4−ビフェニル酢酸ペンタデシル、4−ビフェニル酢酸セチル、4−ビフェニル酢酸シクロペンチル、4−ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル、4−ビフェニル酢酸ヘキシル、4−ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチルなどを例示できる。
更に、前記(ハ)成分として下記一般式(8)で示される化合物を用いることもできる。
(式中、Rは炭素数3〜7のアルキル基を示し、Xは水素原子、メチル基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、メチル基のいずれかを示し、Zは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1又は2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す。)
前記化合物としては、4−ブトキシ安息香酸フェニルエチル、4−ブトキシ安息香酸フェノキシエチル、4−ペンチルオキシ安息香酸フェノキシエチルなどを例示できる。
更に、電子受容性化合物として炭素数3〜18の直鎖又は側鎖アルキル基を有する特定のアルコキシフェノール化合物を用いたり(特開平11−129623号公報、特開平11−5973号公報)、特定のヒドロキシ安息香酸エステルを用いたり(特開2001−105732号公報)、没食子酸エステル等を用いた(特公昭51−44706号公報、特開2003−253149号公報)加熱発色型(加熱により発色し、冷却により消色する)の可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を適用することもできる(図3参照)。
前記(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分の構成成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の変色特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1〜50、好ましくは0.5〜20、(ハ)成分1〜800、好ましくは5〜200の範囲である(前記割合はいずれも質量基準である)。また、各成分は各々二種以上を混合して用いてもよい。
前記可逆熱変色性組成物はマイクロカプセルに内包して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として使用される。これは、種々の使用条件において可逆熱変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
前記可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル化する方法としては、界面重合法、界面重縮合法、in Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。更にマイクロカプセルの表面には、目的に応じて二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与することや、表面特性を改質させて実用に供することもできる。
ここで、可逆熱変色性組成物とマイクロカプセル壁膜の質量比は7:1〜1:1、好ましくは6:1〜1:1の範囲を満たす。
可逆熱変色性組成物の壁膜に対する比率が前記範囲より大になると、壁膜の厚みが肉薄となり過ぎ、圧力や熱に対する耐性の低下を生じ易く、壁膜の可逆熱変色性組成物に対する比率が前記範囲より大になると発色時の色濃度及び鮮明性の低下を生じ易くなる。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料には、その機能に影響を及ぼさない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、溶解助剤、防腐・防黴剤、非熱変色性染料や顔料等の各種添加剤を添加することができる。
本発明による可逆熱変色性スタンプに用いる可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物のマイクロカプセル顔料は、0.1〜10μmであると好ましい。この範囲より小さいと、得られた印像が紙面から裏抜けする傾向があり、また、着色剤としての発色濃度が小さくなるため、印像に鮮明さがなくなる。更に、インキ中に安定した状態で維持をすることが難しくなる場合があり、マイクロカプセル顔料が凝集しやすくなり、連続気孔中をインキが流動しにくくなり、結果として、印像がかすれることや、連続押印ができなくなることがある。また、この範囲より大きいと、インキ出が悪くなったり、印像の鮮明さがなくなる傾向がある。好ましくは、0.1〜7μmであり、更に好ましくは、0.3〜5μmである。この範囲にあると、印像が鮮明で、シャープになり、連続押印した際にも品質の高い印像が得られる。前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、体積基準で算出する。
本発明に用いる可逆熱変色性スタンプ用インキは、増粘剤を用いてもよいが、増粘剤としては、キサンタンガム、ウェランガム、構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカン(平均分子量約100乃至800万)、グアーガム、ローカストビーンガム及びその誘導体、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸アルキルエステル類、メタクリル酸のアルキルエステルを主成分とする分子量10万〜15万の重合体、グリコマンナン、寒天やカラゲニン等の海藻より抽出されるゲル化能を有する増粘多糖類、ベンジリデンソルビトール及びベンジリデンキシリトール又はこれらの誘導体、架橋性アクリル酸重合体、無機質微粒子、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、脂肪酸アミド等のHLB値が8〜12のノニオン系界面活性剤、ジアルキル又はジアルケニルスルホコハク酸の塩類を例示でき、単独或いは混合して使用することができる。
その他、必要に応じてpH調整剤、防腐剤或いは防黴剤等の添加剤を添加することができる。
前記pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、酢酸ソーダ等の無機塩類、トリエタノールアミンやジエタノールアミン等の水溶性のアミン化合物等の有機塩基性化合物等が挙げられる。
前記防腐剤或いは防黴剤としては、石炭酸、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンのナトリウム塩、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン等が挙げられる。
その他、溶剤の浸透性を向上させるフッ素系界面活性剤やノニオン、アニオン、カチオン系界面活性剤、ジメチルポリシロキサン等の消泡剤を添加することもできる。
なお、インキ組成物中には、非熱変色性の染料或いは顔料を配合して、温度変化により有色(1)から有色(2)への互変性を呈する熱変色像を形成できるよう構成することができる。
前記インキ組成物は、25℃でBL型粘度計を用いて6rpmで測定したインキ粘度が3000〜10000mPa・s、好ましくは3500〜7000mPa・s、より好ましくは4000〜6000mPa・sであり、揺変度(6rpmで測定したインキ粘度/60rpmで測定したインキ粘度)が1.1〜2.5、好ましくは1.2〜2.0である。
前記インキ粘度が3000mPa・s未満では、インキ組成物を用いて紙面に形成した印像が滲み易くなる。10000mPa・sを超えると、連続気孔中においてマイクロカプセル顔料の流動性が不十分で、印面への円滑なインキ組成物の流動が確保できなくなり、連続した捺印操作により不鮮明な印像が形成される。
前記揺変度が1.1未満では、インキ組成物を用いて紙面に形成した印像が滲み易く、2.5を超えると、連続気孔中においてマイクロカプセル顔料の流動性が不十分で、印面への円滑なインキ組成物の流動が確保できなくなり、連続した捺印操作により不鮮明な印像が形成される。
前記可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の配合割合としては、インキ組成物全質量に対して5質量%〜50質量%が好ましく、より好ましくは10〜35質量%、さらに好ましくは10〜30質量%であり、この範囲より少ないと発色濃度が低下する傾向が見られ、この範囲より多いとインキ組成物中で分散安定性が若干悪くなる傾向が見られる。
前記樹脂エマルション中の樹脂と可逆熱変色性マイクロカプセル顔料の配合比は、質量比として樹脂エマルション中の樹脂/可逆熱変色性マイクロカプセル顔料が3/1〜1/25であることが好ましい。より好ましくは1/1〜1/5であり、この範囲より樹脂エマルションの配合比が少ないと印像の定着性が劣る傾向が見られ、この範囲より多いと、インキ組成物の保存安定性が劣る傾向が見られる。前記範囲にあると、印像の定着性が十分であり、インキ組成物の保存安定性も良好となる。
本発明による可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物は、印材にインキ組成物が含浸されてなる可逆熱変色性スタンプに用いることができる。前記可逆熱変色性スタンプを用い、押印面に押しつけるとインキ浸透面からインキ組成物が押印面に移り、印像が形成される。また、前記可逆熱変色性スタンプは、印面が露出するようにスタンプ基材に納められ、露出面は不使用時のインキ組成物の乾燥や不慮の接触による汚染を防止するためキャップを備えることが好ましい。なお、連続気孔を有する印材の後部には、印材にインキ組成物を供給するインキ貯留部を設けて、押印回数を増加させる構成であってもよい。
前記可逆熱変色性スタンプは、各種押印面に対して、印像を形成することが可能である。さらに、その印像は、摩擦部材よる擦過や加熱具又は冷熱具の適用により変色や消色させることができるが、摩擦部材で擦過した際にも、本発明による可逆熱変色性スタンプ用インキを用いていることにより、印像が剥がれることなく、変色や消色をさせることが可能となる。
前記加熱具としては、PTC素子等の抵抗発熱体を装備した、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプを用いた通電加熱変色具、温水等の媒体を充填した加熱変色具、スチームやレーザー光を用いた加熱変色具、ヘアドライヤーの適用が挙げられる。好ましくは、簡便な方法により変色可能な手段として摩擦部材が用いられる。
前記摩擦部材としては、弾性感に富み、擦過時に適度な摩擦を生じて摩擦熱を発生させることのできるエラストマー、プラスチック発泡体等の弾性体が好適である。前記摩擦部材の材質としては、シリコーン樹脂やSEBS樹脂(スチレンエチレンブチレンスチレンブロック共重合体)、ポリエステル系樹脂、ポリエステル系エラストマー等が用いられる。前記摩擦部材はスタンプと別体の任意形状の部材である摩擦体とを組み合わせてスタンプセットを得ることもできるが、スタンプに摩擦部材を設けることにより、携帯性に優れたものとなる。
前記完全消色温度(t4)が80℃以上の高温側に完全消色温度(t4)を有する可逆熱変色性組成物を用いた、可逆熱変色性スタンプの加熱変色具としては、PTC素子等の抵抗発熱体を装備した、サーマルヘッド、ヒートローラー、ホットスタンプを用いた通電加熱変色具、温水等の媒体を充填した加熱変色具、スチームやレーザー光を用いた加熱変色具、ヘアドライヤーが好ましく用いられる。
前記冷熱具としては、ペルチエ素子を利用した冷熱変色具、冷水、氷片などの冷媒を充填した冷熱変色具や保冷剤、冷蔵庫や冷凍庫の適用などが挙げられる。
前記可逆熱変色性スタンプ(1)は、可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物を、連続気孔を有する印材に含浸させ、印面が露出するようにスタンプ基材(3)に固着し、尾栓(4)とキャップ(5)を嵌めて作製することができる。なお、スタンプ基材(3)の後端部には、尾栓(4)としての摩擦部材を設けることも出来る。
また、可逆熱変色性スタンプ(1)の他の作製方法としては、連続気孔を有する印材(2)を印面が露出するようにスタンプ基材(3)に固着した後、可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物を含浸させ、尾栓(4)とキャップ(5)を嵌めて作製することができる。前記作製方法と同じで、スタンプ基材(3)の後端部には、尾栓(4)としての摩擦部材を設けることもできる。さらに、印材にインキを含浸させる際には、印面と反対側から注入し、印材に含浸してもよい。
本発明による可逆熱変色性スタンプ(1)は、単独で使用することもできるが、インキ色の違いや、印像の違いによって、複数個を組み合わせる、スタンプセットとして用いることもできる。
(実施例1)
(マイクロカプセル顔料の製造)
(イ)成分として、3−(2−エトキシ−4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド1部、(ロ)成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部、(ハ)成分として4−ビフェニル酢酸シクロヘキシルメチル50.0部、ステアリン酸−p−メチルベンジル5.0部からなる色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を加温溶解し、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30.0部、助溶剤40.0部を混合した溶液を、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら撹拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、更に撹拌を続けて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料懸濁液を得た。 前記懸濁液をフィルターでろ過して可逆熱変色性マイクロカプセル顔料を単離した。
なお、前記マイクロカプセル顔料の平均粒子径Dは2.0μmであり、t1:−18℃、t2:−12℃、t3:42℃、t4:66℃、感温変色性色彩記憶組成物:壁膜=2.6:1.0のヒステリシス特性を有する挙動を示し、青色から無色、無色から青色へ可逆的に色変化した。
(可逆熱変色性スタンプ用インキの調製)
マイクロカプセル顔料 17.5質量部
水溶性有機溶剤(グリセリン) 50質量部
樹脂エマルションA 13.2質量部
(ウレタン系樹脂エマルション 固形分酸価 5.6
NeoRezR−650(商品名 楠本化成(株)製 固形分38%))
pH調整剤(トリエタノールアミン) 0.5質量部
増粘剤 4質量部
(プライマルTT935(商品名 ローム&ハース・ジャパン社製))
浸透剤 0.5質量部
防腐剤 0.2質量部
水 14.1質量部
上記配合物混合して、可逆熱変色性スタンプ用インキを得た。
(可逆熱変色性スタンプの作製)
前記可逆熱変色性スタンプ用インキを、連続気孔を有する印材(エチレン酢酸ビニル共重合体)に注入し、印面が露出するようにスタンプ基材(3)に固着し、キャップ(5)を嵌めてスタンプを得た。なお、スタンプ基材(3)の後端部には、尾栓(4)としてSEBS樹脂製の摩擦部材を設けた。
(実施例2〜8)
表1に示した配合とした以外は、実施例1と同じ方法で、可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物を得た。さらに、実施例1と同じ方法で、可逆熱変色性スタンプを得た。
(実施例9〜15)
表2に示した配合とした以外は、実施例1と同じ方法で、可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物を得た。さらに、実施例1と同じ方法で、可逆熱変色性スタンプを得た。
(比較例1〜6)
表3に示した配合とした以外は、実施例1と同じ方法で、可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物を得た。さらに、実施例1と同じ方法で、可逆熱変色性スタンプを得た。
実施例1〜15及び比較例1〜6で得られた可逆熱変色性スタンプを用いて、コート紙(エスプリコートW(日本製紙(株)製)に押印して印像を形成し、その際の印像の押印性、定着性、耐擦過性、キャップオフ性を以下の方法により評価した。その結果を(表1)〜(表3)に示した。
樹脂エマルションA:ウレタン系樹脂エマルション 固形分酸価 5.6 NeoRezR−650 楠本化成(株)製 固形分38%
樹脂エマルションB:スチレン−アクリル系樹脂エマルション 固形分酸価 51 ジョンクリル7100(商品名 BASFジャパン(株)製 固形分48%)
樹脂エマルションC:アクリル系樹脂エマルション 固形分酸価 55 ジョンクリル775(商品名 BASFジャパン(株)製 固形分45%)
樹脂エマルションD:アクリル系樹脂エマルション 固形分酸価 60 ジョンクリル7600(商品名 BASFジャパン(株)製 固形分47%)
樹脂エマルションE:アクリル系樹脂エマルション 固形分酸価 87 ジョンクリルPDX−7370(商品名 BASFジャパン(株)製 固形分42%)
樹脂エマルションF:アクリル系樹脂エマルション 固形分酸価 200 ジョンクリルPDX−7630A(商品名 BASFジャパン(株)製 固形分32%)
水溶性樹脂A:アルカリ可溶型アクリル樹脂 固形分酸価 215 ジョンクリル57J(商品名 BASFジャパン(株)製 固形分37%)
水溶性樹脂B:ポリビニルアルコール ゴーセノールGL03(商品名 日本合成化学工業(株)製)
押印性:コート紙に押印して印像を形成し、その際の印像について、目視により評価した。
◎:鮮やかな印像が得られている。
○:印像がわずかに滲んでいるか、わずかな掠れがあるが印像として視認可能。
△:印像が滲んでいるか、掠れがあるが印像としては視認可能。
×:印像が滲みがひどいか、掠れがひどく、印像として視認できない。
定着性:コート紙に押印後、所定の時間経過した後に印像を手で擦り、そのときの印像の状態を目視により確認した。
○:印像が流れずに押印面に定着しており、鮮明な印像が確認できる。
△:印像の一部が流れるが印像が確認できる。
×:印像が流れていしまい、印像を確認できない。
耐擦過性:コート紙に押印後、30分経過した後に印像をSEBS樹脂製の摩擦部材で、印像を擦過し、印像を消色した状態を目視により確認した。さらに、印像が消色した状態のコート紙を−20℃に冷却し、そのときの印像の状態を確認した。
○:印像が剥がれることなく、そのままの状態で消色しており、冷却後、印像が押印した状態で発色する。
△:印像の一部が剥がれた状態で消色しており、冷却後、印像の一部が流れた状態で発色する。
×:印像が完全に剥がれた状態で消色しており、冷却後、印像が得られない。
キャップオフ性:キャップ(5)を外した後、20℃、65%RHの雰囲気下で24時間放置した後、コート紙に押印し、そのときの印像の状態を確認した。
◎:初期と同等の印像が得られており、良好なキャップオフ性能が得られている。
○:初期と比較して、印像がわずかに滲んでいるか、わずかな掠れがあるが十分なキャップオフ性能が得られている。
△:初期と比較して、印像が滲んでいるか、掠れがあるが印像としては視認可能であるが、キャップオフ性能は若干劣っている。
×:初期と比較して、印像の滲みがひどいか、掠れがひどく、印像として視認できず、キャップオフ性能を有していない。
(表1)〜(表3)に示した結果からも明らかなように、本発明による可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物は、比較例の可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物と比較して、定着性や耐擦過性が向上しており、可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物として優れていることが明らかとなった。
さらに、(表1)、(表2)に示した結果からも明らかなように、本発明による可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物は、キャップオフ性能に優れていた。特に、実施例1、3〜6、9、10、12は、押印性が初期と変わらず、良好な性能を示していた。さらに、実施例1、3、4、9は、押印した際の印像の定着性、耐擦過性についても優れており、可逆熱変色性スタンプ用インキ組成物として特に優れていることが明らかとなった。これらの結果から、印面が出没するタイプに代表される、気密性を有するキャップを有しないスタンプにも用いることができるなどスタンプとしての適用範囲を広げることができる。