JP6750644B2 - 異常監視方法および異常監視装置 - Google Patents

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Description

本発明は、製鉄転炉設備の傾動軸受の異常の有無を監視する異常監視方法および異常監視装置に関する。
従来、回転機械に発生する振動を測定して監視することにより、回転機械の異常の有無を監視する技術が知られている。
例えば、特許文献1,2には、測定した振動の大きさなどを所定の単位系で表した有次元パラメータにより回転機械の異常を検知する振動監視技術が開示されている。
特許文献3には、音響の振幅を計測するAE(Acoustic Emission)法により低速回転機械の異常を検知する低速回転診断技術が開示されている。
特許文献4,5には、有次元パラメータに加え、測定した振動の波形の特徴を無単位で表した無次元パラメータを活用することにより、回転機械の異常を検知する技術が開示されている。
特許文献6には、転炉の炉体からスラグが排滓された後、炉体が直立するまで空鍋状態で回転する炉体において計測された軸受の振動信号を収集し、振動信号に基づいて軸受の異常を検知する技術が開示されている。
特開2009−116420号公報 特開2009−115481号公報 特許第5143863号公報 特開2008−58191号公報 特許第4312477号公報 特許第5915596号公報
しかしながら、特許文献1,2に記載の有次元パラメータによる振動監視技術は、回転速度が200rpm以下では異常検知の精度が低下するため、製鉄転炉設備の傾動軸受のような回転速度が1rpm程度の低速回転機械には適用できない。
特許文献3に記載の技術は、回転速度が0.25rpm以下の超低速回転機械を対象としているものの、異常を検知するまでに7回転以上の測定を必要としている。これに対し、転炉の傾動軸の回転は200度程度と1回転未満であるため、この技術を転炉の傾動軸受の異常検知に適用することはできない。
特許文献4,5に記載の技術は、活用するパラメータの種類が多く、異常検知に寄与す
るパラメータの検証が不十分といわざるを得ない。また、外乱を含んだままの振動データから主成分分析法により状態評価指数を算出して評価しているため、この状態評価指数が外乱により顕著に変化してしまい信頼性に欠ける。そのため、この技術は実用化が困難である。
特許文献6に記載の技術は、空鍋状態で回転している炉体が直立するまでの振動信号を収集しているため、基準となる正常時の振動信号は比較的安定しているものの、低速かつ1回転未満の回転機械である転炉傾動軸受では、異常時の変化が微弱であり、明確に異常判定することが困難な場合がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、低速かつ1回転未満の回転機械である製鉄転炉設備の傾動軸受の異常を精度よく検知できる異常監視方法および異常監視装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る異常監視方法は、製鉄転炉設備において炉体を回転させる傾動軸の軸受の異常を検知する異常監視方法であって、吹錬完了後から出鋼までの溶鋼が鍋に入っている状態で回転する炉体において計測された軸受の振動信号を収集する計測信号収集ステップと、前記振動信号に基づいて前記軸受の異常を検知する異常検知ステップと、を含むことを特徴とする。
また、本発明に係る異常監視方法は、上記発明において、前記計測信号収集ステップは、吹錬完了後、直立状態の前記炉体が溶鋼を出鋼するために回転し始めてから6〜15秒計測された軸受の振動信号を収集することが好ましい。
また、本発明に係る異常監視方法は、上記発明において、前記異常検知ステップは、前記振動信号に基づいて、振動速度のピーク値、振動加速度のピーク値、加速度RMS値、前記軸受の外輪傷周波数成分値、前記軸受の内輪傷周波数成分値、前記軸受の転動体傷周波数成分値、振動加速度の歪み度、速度の歪み度、振動加速度の尖り度、および速度の尖り度のうちの1つ以上のパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップで算出されたパラメータを監視して異常を検知するパラメータ監視ステップと、を含むことが好ましい。
また、本発明に係る異常監視方法は、上記発明において、前記異常検知ステップは、前記パラメータ算出ステップで算出されたパラメータのうちの1つ以上のパラメータに基づいて主成分分析法により統合パラメータ値を算出する統合パラメータ値算出ステップと、前記統合パラメータ値算出ステップで算出された統合パラメータ値を監視して異常を検知する統合パラメータ値監視ステップと、を含むことが好ましい。
また、本発明に係る異常監視方法は、上記発明において、前記異常検知ステップは、前記パラメータ算出ステップで算出されたパラメータのうち、振動加速度のピーク値、加速度RMS値、振動加速度の歪み度、振動加速度の尖り度を除く、1つ以上のパラメータに基づいて主成分分析法により統合パラメータ値を算出する統合パラメータ値算出ステップと、前記統合パラメータ値算出ステップで算出された統合パラメータ値を監視して異常を検知する統合パラメータ値監視ステップと、を含むことが好ましい。
また、本発明に係る異常監視方法は、上記発明において、前記異常検知ステップは、前記振動信号に基づいて、対称型カルバック情報量を算出するパラメータ算出ステップと、前記パラメータ算出ステップで算出されたパラメータを監視して異常を検知するパラメータ監視ステップと、を含むことが好ましい。
また、本発明に係る異常監視装置は、製鉄転炉設備において炉体を回転させる傾動軸の軸受の異常を検知する異常監視装置であって、吹錬完了後から出鋼までの溶鋼が鍋に入っている状態で回転する炉体において計測された軸受の振動信号を収集する計測信号収集手段と、前記振動信号に基づいて前記軸受の異常を検知する異常検知手段と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、低速かつ1回転未満の回転機械である製鉄転炉設備の傾動軸受の異常を精度よく検知することができる。
図1は、実施形態で適用される製鉄転炉設備の概略構成を示す模式図である。 図2は、製鉄転炉設備における各操業プロセスでの炉体の傾動状態を模式的に示す説明図である。 図3は、実施形態における異常監視装置の概略構成を示す模式図である。 図4Aは、実施形態の異常監視処理手順を示すフローチャートである。 図4Bは、別の異常判定方法の一例を示すフローチャートである。 図5は、一般的な軸受の主要諸元を示す図である。 図6は、軸受の損傷がない炉体における出鋼時の傾動軸の振動速度波形と振動加速度波形とを例示する図である。 図7は、軸受の損傷がない炉体における排滓時の傾動軸の振動速度波形と振動加速度波形とを例示する図である。 図8は、軸受の損傷のない炉体における各種パラメータの算出結果を例示する図である。 図9(a)は、実施形態の異常監視方法を用いた実際の異常判定例を示す図である。図9(b)は、異常判定された振動加速度波形例を示す図である。図9(c)は、潤滑不良と推定された軸受に対して軸受への給油量を増量した後の振動加速度波形例を示す図である。図9(d)は、転炉修理後の振動加速度波形例を示す図である。 図10(a)は、軸受傷がある炉体におけるACC−foの傾向管理グラフ図である。図10(b)は、軸受傷がない正常な炉体におけるACC−foの傾向管理グラフ図である。 図11は、軸受の損傷がある炉体における出鋼時の統合パラメータの変化を例示する図である。 図12Aは、振動波形と確率密度関数とを例示する図である。 図12B(a)は、正常時の波形データである基準データを例示する図である。図12B(b)は、異常時の測定データを例示する図である。 図12Cは、基準データの確率密度関数と異常判定対象の測定データの確率密度関数とを例示する図である。 図12Dは、対称型カルバック情報量の波形を例示する図である。 図13は、対称型カルバック情報量による異常判定方法を用いた異常判定例を示すグラフ図である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である異常監視方法および異常監視装置を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
[1.製鉄転炉設備]
まず、図1および図2を参照して、本実施形態で対象とする製鉄転炉設備について説明する。図1は、製鉄転炉設備の概略構成を示す模式図である。また、図2は、製鉄転炉設備における各操業プロセスでの炉体の傾動状態を模式的に示した説明図である。図1に示すように、製鉄転炉設備は、炉体1と、この炉体1の外周に設けられたトラニオンリング2と、このトラニオンリング2を介して炉体1を傾動(回転)可能に支持する傾動軸3とを備えている。図2に示すように、製鉄転炉設備では、炉体1を低速で回転させながら、スクラップや溶銑を装入(P2,P3)したり、溶鋼を出鋼(P5)したり、スラグを排滓(P7)したりする。本実施形態の異常監視処理は、回転する炉体1を支持する軸受4の振動を計測し、軸受4の異常を検知するものである。本実施形態では、図1に示すように、炉体1の傾動軸3の駆動側の軸受4に配設された振動センサ12により計測され収集された振動信号に基づいて、異常監視装置が後述する異常監視処理によって軸受4の異常を検知する。例えば、振動の計測対象となる軸受4は、回転速度が1rpm程度の転炉傾動軸受である。そして、振動センサ12は一つの軸受4に対して、製鉄転炉設備の東側/西側(図2の表面側/裏面側)の2箇所に設置されている。
[2.振動の計測タイミング]
本実施形態における振動の計測タイミングは、出鋼時である。具体的には、吹錬完了後(P4)、直立状態の炉体1が出鋼(P5)のために傾動(回転)し始めてから炉体1の傾動(回転)が停止するまでの間に、振動センサ12による軸受4の振動計測が行われる。このように、本実施形態では、吹錬完了後(P4)から出鋼(P5)までの溶鋼が鍋に入っている状態で傾動中の炉体1において軸受4の振動を計測する。
また、吹錬完了後(P4)の炉体1には、内容物として約300tの溶鋼が入っているため、出鋼時の軸受4は、炉体1とトラニオンリング2と傾動軸3の荷重(ラジアル荷重)に加え、内容物である約300tにも及ぶ溶鋼の荷重を受けることになる。そのため、排滓後(P7)から直立状態(P1)まで空鍋状態の炉体1が回転する場合と比較して、出鋼時では、軸受4にかかる負荷が大きくなる。このように、出鋼時には炉体1の内容物が300tにも及び、軸受4にかかる負荷が大きいため、転炉傾動軸受のような回転速度が1rpm程度の低速回転機械であっても、潤滑不良や軸受傷等の異常時には振動変化が大きくなり、異常判定が可能である。
[3.振動の計測時間]
さらに、振動センサ12による振動の計測時間について説明する。まず、吹錬完了後(P4)から出鋼(P5)までの回転(回転速度約1rpm)に要する時間は、10秒から15秒程度である。それを超えると炉体1から溶鋼が出鋼され始めて外乱振動が発生する。そのため、本実施形態では、炉体1から溶鋼が出鋼され始めた後の外乱振動をなるべく計測しないよう、振動の計測時間を、出鋼時に傾動中の炉体1が傾いた状態で回転停止するまでの15秒程度とする。
また、軸受4の回転速度が1rpm程度である場合に、軸受4に外輪傷や内輪傷があれば、その振動信号の周期が3秒程度となる。この軌道輪傷による周期について、異常検知の精度維持に必要な2周期分以上(6秒以上)の振動信号を収集するためにも、傾動中の炉体1が回転停止する直前までの範囲内で振動の計測時間を約6〜15秒とする。
[4.異常監視装置の構成]
次に、図3を参照して、本実施形態の異常監視装置の概略構成について説明する。図3に示すように、異常監視装置10は、信号変換器13と、記録信号再生装置14と、表示装置15と、印刷装置16と、データベース20と、各構成部を制御する制御部11と、を備える。
信号変換器13は、振動センサ12からの振動信号を電荷信号から電圧信号などに変換する。記録信号再生装置14は、記録媒体に記録されている振動信号を再生する。なお、記録媒体には、例えば、振動センサ12からの振動信号がデータ収集PCなどにより収集され記録されている。表示装置15および印刷装置16は、制御部11からの情報を出力する。
制御部11は、処理プログラムを実行するCPUなどを用いて実現され、前述した異常監視装置10の各構成部を制御する。この制御部11は、入出力制御部110と、波形読込部111と、FFT処理部112と、パラメータ算出部113と、主成分分析部114と、統合パラメータ値算出部115と、良否判定処理部116と、判定結果処理部117と、を有する。制御部11は、入出力制御部110を介して入力された振動信号に基づいて後述する異常監視処理を実行し、入出力制御部110を介して処理結果を出力する。
データベース20は、更新記憶可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、SSD、CD−ROMなどの情報記憶媒体およびその読取装置等によって実現される。このデータベース20は、初期状態データベース21、測定値データベース22、および基準値データベース23を有し、後述する異常監視処理を行うために用いる各種データを記憶する。初期状態データベース21は、回転機械(炉体1の軸受4)の正常状態において算出された各種パラメータ値などを記憶する。測定値データベース22は、回転機械の現状において算出された各種パラメータ値などを記憶する。基準値データベース23は、回転機械の良否を判定するための基準値を記憶する。なおデータベース20は、LANやインターネットなどの電気通信回線を介して制御部11と通信する構成としてもよい。
[5.異常監視処理]
次に、異常監視装置10による異常監視処理手順について説明する。本実施形態の異常監視処理では、後述するように、軸受4の振動信号に基づいて、限定された軸受4の異常を検知可能なパラメータを算出して監視し、また、算出されたパラメータに基づいて、現状の正常状態からの乖離度合いを表す状態評価指標を算出して監視する。図4Aのフローチャートは、例えば、操作者による開始の指示入力があったタイミングで開始となり、異常監視処理はステップS1の処理に進む。
ステップS1の処理では、波形読込部111が、振動センサ12または記録信号再生装置14から、回転機械の初期状態(正常状態)における振動信号の振動波形を読み込む。ここで、波形読込部111は振動加速度波形ならびに振動速度波形を読み込むように構成してもよい。また、波形読込部111は、振動加速度波形を読み込んだ後、その信号を積分して振動速度波形を算出するように構成してもよい。また、波形読込部111は、振動信号を振動センサ12から直接に、あるいは記録信号再生装置14から読み込んでいるが、この形態に限定されず、例えば図示しない電気通信回線を介して遠隔から振動信号を読み取るように構成してもよい。これにより、ステップS1の処理は完了し、異常監視処理は、ステップS2の処理に進む。
ステップS2の処理では、FFT処理部112が、波形読込部111により読み込まれた振動信号の周波数分析を実行し、周波数毎の成分値(波形データ)を算出する。なお、ステップS1,S2の処理に関して、波形読込部111およびFFT処理部112を制御部11の内部に設けず外部の装置を用いて構成し、その処理結果を制御部11に入力するようにしてもよい。これにより、ステップS2の処理は完了し、異常監視処理は、ステップS3の処理に進む。
ステップS3の処理では、パラメータ算出部113が、ステップS2の処理で算出された波形データに基づいて、測定した振動の大きさなどを所定の単位系で表した有次元パラメータと、測定した振動の波形の特徴を無単位で表した無次元パラメータとを算出する。本実施形態では、後述するように、軸受の異常を検知可能な6つの有次元パラメータと4つの無次元パラメータとに限定して算出する。これにより、ステップS3の処理は完了し、異常監視処理は、ステップS4の処理に進む。
ステップS4の処理では、主成分分析部114が、ステップS3の処理で算出された正常状態にある回転機械(本実施形態では炉体1の傾動軸3の軸受4)の振動信号の有次元パラメータ、無次元パラメータのうちの一部または全部を対象として、後述するように主成分分析を行って、固有ベクトルを求める。これにより、ステップS4の処理は完了し、異常監視処理は、ステップS5の処理に進む。
ステップS5の処理では、統合パラメータ値算出部115が、ステップS4の処理の対象のパラメータおよび固有ベクトルに基づいて、後述する統合パラメータ値Sを算出する。後述するように、この統合パラメータ値Sは、回転機械の異常を判定するための状態評価指標である。これにより、ステップS5の処理は完了し、異常監視処理は、ステップS6の処理に進む。
ステップS6の処理では、制御部11が、ステップS5の処理で求められた統合パラメータ値Sを、正常状態における基準データとして、初期状態データベース21に記憶する。なお、ステップS6までの処理により、正常状態における回転機械の基準データが作成される。その後、ステップS7の処理に移行するにあたっては、現状の回転機械について測定された振動信号に基づいて、パラメータ算出部113が、各種パラメータを算出し、主成分分析部114が、初期状態データベース21に記憶されている初期状態の固有ベクトルに基づいて主成分を算出し、統合パラメータ値算出部115が、算出された主成分に基づいて統合パラメータ値Sを算出する。算出された主成分と統合パラメータ値Sとは、測定値データベース22に記憶される。これにより、ステップS6の処理は完了し、異常監視処理は、ステップS7の処理に進む。
ステップS7の処理では、良否判定処理部116が、算出されたパラメータおよび統合パラメータ値Sに基づいて回転機械の良否(異常の有無)を判定する。すなわち、測定値データベース22に記憶された現状のパラメータおよび統合パラメータ値Sを、初期状態データベース21に記憶された初期状態のパラメータおよび統合パラメータ値Sと対比させ、例えば、初期状態よりもd1倍になれば注意、d2(d2>d1)倍になれば異常、d1倍未満であれば良と判定する。判定基準としてのd1、d2は、予め基準値データベース23に格納されている値が用いられる。これにより、ステップS7の処理は完了し、異常監視処理は、ステップS8の処理に進む。
ステップS8の処理では、判定結果処理部117が、ステップS7の処理における判定結果(診断結果)を表示装置15あるいは印刷装置16に出力する。これにより、ステップS8の処理は完了し、異常監視処理は、ステップS9の処理に進む。
ステップS9の処理では、制御部11が、判定結果などを適当な記憶部に保存する。これにより、ステップS9の処理は完了し、一連の異常監視処理は終了する。
また、別の異常判定方法として、図4Bに示すように、対称型カルバック情報量を用いた異常監視処理を実施することができる。なお、図4Bに示すステップS11,S15,S16の処理は、図4Aに示すステップS1,S8,S9の処理と同様であるため説明を省略する。
ステップS12の処理では、制御部11が、正常時の波形データを基準データとして基準データの確率密度関数を求めるとともに、異常判定対象の測定データの確率密度関数を求める。正常時の波形データとは、正常状態における振動波形のことである。測定データとは、異常判定対象となる振動波形(異常判定対象データ)のことである。
ステップS13の処理では、パラメータ算出部113が、ステップS12の処理で求められた確率密度関数に基づいて、対称型カルバック情報量を算出する。後述するように、対称型カルバック情報量は振幅確率密度関数または時間確率密度関数に基づいて算出される。これにより、ステップS13の処理は完了し、異常監視処理は、ステップS14の処理に進む。
ステップS14の処理では、良否判定処理部116が、ステップS13の処理で算出された対称型カルバック情報量の大きさから良否判定処理を行う。例えば、算出された対称型カルバック情報量を、予め定められた閾値と対比させて、対称型カルバック情報量が閾値よりも大きければ異常、対称型カルバック情報量が閾値以下であれば良と判定する。そして、ステップS14の処理からステップS15の診断結果の出力処理へと進む。
このように、異常監視装置10は、統合パラメータ値Sを用いる異常監視処理(図4A参照)と、対称型カルバック情報量を用いる異常監視処理(図4B参照)とを実施することができる。例えば、統合パラメータ値Sを用いる異常監視処理のみを実施して、対称型カルバック情報量を用いる異常監視処理は実施しないように構成されてよい。または、対称型カルバック情報量を用いる異常監視処理のみを実施して、統合パラメータ値Sを用いる異常監視処理は実施しないように構成されてよい。あるいは、統合パラメータ値Sを用いる異常監視処理と対称型カルバック情報量を用いる異常監視処理とを両方とも実施して、どちらか一方で異常判定がでた場合に、異常との判定結果を出力するように構成されてもよい。
[6.パラメータ]
具体的に、ステップS3の処理では、以下(a)〜(f)の6つの有次元パラメータと、(g)〜(j)の4つの無次元パラメータとが算出される。
[6−1.有次元パラメータ]
[6−1−1.振動速度]
(a)速度ピーク値:VEL−P
VEL−Pとは、測定した振動速度波形の振幅値xの内、|x|の大きなものから数えた上位5%の|x|の平均値を意味する。
[6−1−2.振動加速度]
(b)加速度ピーク値:ACC−P
ACC−Pとは、測定した振動加速度波形の振幅値xの内、|x|の大きなものから数えた上位5%の|x|の平均値を意味する。
(c)加速度RMS値:ACC−R
ACC−R(以下、Xrms)は、以下の式(1)により算出される。
Figure 0006750644
(d)周波数成分値:ACC−fo(外輪傷周波数成分)
ACC−fo(以下、fo)は、以下の式(2)により算出される。
Figure 0006750644
(e)周波数成分値:ACC−fi(内輪傷周波数成分)
ACC−fi(以下、fi)は、以下の式(3)により算出される。
Figure 0006750644
(f)周波数成分値:ACC−fb(転動体傷周波数成分)
ACC−fb(以下、fb)は、以下の式(4)により算出される。
Figure 0006750644
ここで、軸受の主要諸元については、fr:軸(内輪)の回転周波数(Hz)、D:軸受のピッチ円直径(mm)、d:転動体の直径(mm)、α:接触角(度)、z:転動体の数としている(図5参照)。また、回転周波数frは、N:回転数[rpm]を用いて以下の式(5)により算出される。
Figure 0006750644
[6−2.無次元パラメータ]
[6−2−1.振動速度]
(g)スキューネス(歪み度)β:VEL−β(振動速度の歪み度)
VEL−β(以下、β)は、振動波形がゼロ点を中心にしていかに非対称となっているかを示すパラメータであり、以下の式(6)により算出される。βの算出時、下式(6)中のxは「測定した振動速度波形の振幅値x」であり、平均値は「測定した振動速度波形の振幅値xによる平均値」である。また、下式(6)中の実効値は、上式(1)により求まる振動加速度波形による実効値とは異なり、振動速度波形の振幅値xにおける実効値である。なお、摩耗系の異常が発生すると、振動波形が非対称となり、振動速度の歪み度VEL−βが増大する。
Figure 0006750644
(h)クートシス(尖り度)β:VEL−β(振動速度の尖り度)
VEL−β(以下、β)は、振動波形がゼロ点を中心にしていかに尖っているかを示すパラメータであって、以下の式(7)により算出される。βの算出時、下式(7)中のxは「測定した振動速度波形の振幅値x」であり、平均値は「測定した振動速度波形の振幅値xによる平均値」である。振動速度の尖り度VEL−βは、転がり軸受の著しい異常や歯車装置の異常診断に有効なパラメータである。なお、転がり軸受の著しい異常(劣化)や歯車対の噛み合い不良等の異常時には、周波数帯10〜1000Hzの周波数領域(速度領域)に含まれる周波数の振動が生じることが知られている。
Figure 0006750644
[6−2−2.振動加速度]
(i)スキューネス(歪み度)β:ACC−β(振動加速度の歪み度)
ACC−β(以下、β)は、β同様に、振動波形がゼロ点を中心にしていかに非対称となっているかを示すパラメータであり、上式(6)により算出される。βの算出時、上式(6)中において、βをβに置き換え、xは「測定した振動加速度波形の振幅値x」であり、平均値は「測定した振動加速度波形の振幅値xによる平均値」である。一般的には、βのほうが磨耗系はより顕著ではあるものの、磨耗系の異常が発生すると、振動波形が非対称となり、振動加速度の歪み度ACC−βも増大する。
(j)クートシス(尖り度)β:ACC−β(振動加速度の尖り度)
ACC−β(以下、β)は、β同様に、振動波形がゼロ点を中心にしていかに尖っているかを示すパラメータであり、上式(7)により算出される。βの算出時、上式(7)中において、βをβに置き換え、xは「測定した振動加速度波形の振幅値x」であり、平均値は「測定した振動加速度波形の振幅値xによる平均値」である。振動加速度の尖り度ACC−βは、転がり軸受の傷等の異常診断に有効なパラメータである。なお、転がり軸受の傷や潤滑不良や潤滑油漏れなどの異常時には、周波数帯1kHz以上の周波数領域(加速度領域)に含まれる周波数の振動が生じることが知られている。
[7.主成分分析]
次に、ステップS4の処理における主成分分析部114による有次元パラメータ、無次元パラメータのうちの一部または全部を対象とした主成分分析手順について説明する。
ある設備の正常状態下で上述の手順により収集されたm個のパラメータを要素とするn組の兆候パラメータY=(Y,Y,Y,・・・,Y)のデータからなる行列Yを以下の式(8)で定義する。
Figure 0006750644
次に、この行列Yの列方向、すなわち縦方向の行列要素に対して以下の式(9)を用いて演算を行い、yを算出する。
Figure 0006750644
この演算を列毎に行うことによって、以下の式(10)のように、標準化された兆候パラメータを要素とする新たなデータ行列Yを求める。
Figure 0006750644
この行列Yは、列毎に平均値=0、分散=1に変換された行列である。そこで、このデータ行列Yから相関行列Rを算出すると以下の式(11)が成立する。
Figure 0006750644
ここで、rijは2つの列の相関係数である。すなわち、以下の式(12)が成立する。
Figure 0006750644
次に、以下の式(13)を満たす相関行列Rの固有値λを求める。
Figure 0006750644
ここで求められた固有値をλ,・・・,λ(ただし、λ>λ>・・・>λ)とする。これらのn個の固有値に対する固有ベクトルa(i=1,・・・,n)を次式(14)のように定義する。
Figure 0006750644
そうするとそれぞれの固有ベクトルに対して次の式(15)が成立する。
Figure 0006750644
この式(15)に基づいて、ai1,ai2,・・・,aimを求める。ただし、この
係数は以下の式(16)を充たす値である。
Figure 0006750644
この手順を繰り返して、それぞれの固有値λ,・・・,λに対する固有ベクトルa,a,・・・,aを求めることができる。そしてこれらのn個の固有ベクトルと標準化された兆候パラメータ(y,y,・・・,y)とを組み合わせることで、以下の式(17)のように主成分Z,Z,・・・,Zを表すことができる。
Figure 0006750644
ここで、Zを第1主成分、Zを第2主成分、Zを第n主成分と呼ぶ。
[8.統合パラメータ値(状態監視指標)]
次に、ステップS5の処理では、以下の手順で統合パラメータ値Sが算出される。
前述の正常状態下で求められた主成分Z(母集団)は、正規分布に従うと仮定する。この母集団から独立に取り出されたn個の標本で構成される統計量χは、次式(18)に示すように、自由度n−1のカイ2乗分布に従う。
Figure 0006750644
ここで、母集団から取り出したn個の標本をX,X,・・・,Xとすると、標本分散sは次の式(19)で表される。
Figure 0006750644
また、主成分Zの母分散σは固有値λに等しいことから、次式(20)が成立する。
Figure 0006750644
これらの関係を整理すると以下の式(21)となり、標準化されたX値の偏差平方和は、自由度n−1のカイ2乗分布に従う。
Figure 0006750644
ここで、上記式(21)のXを主成分Zに置き換えると、次式(22)が成立する。
Figure 0006750644
次に、正常状態下におけるデータの主成分Zが1−αの確率で入る領域は、以下の式(23)で表される。
Figure 0006750644
よって、正常状態の状態確定領域は次の式(24)を満たす範囲となる。
Figure 0006750644
たとえば、有意水準α=0.05、自由度φ=3の場合には、次式(25)が成立する。
Figure 0006750644
現状のデータがこの正常状態確定領域に入ったときは正常、領域外のときは異常と判定
できる。そこで、現状のデータの正常状態からの変化量を監視するために、以下の式(2
6)で表される状態量Sを統合パラメータ値として定義する。
Figure 0006750644
この状態量Sは劣化の程度(測定データが初期状態の正常なデータからどれだけ乖離しているか)を表すものであって、1以下となる領域が正常状態確定領域であり、大きくなれば異常状態と判定できる。すなわち、この状態量Sは、回転機械の良否を判定するための普遍的な状態監視指標と言える。ステップS5の処理では、上記の式(26)によってパラメータの一部または全部を集約した状態量Sを統合パラメータ値とする。そして、異常監視装置10は、この統合パラメータ値を監視することにより、設備の状態監視を行う。すなわち、ステップS7の処理では、所定の判定周期で、現状の状態量Sとしての統合パラメータ値が正常確定領域に入っているか否かを確認し、初期状態の統合パラメータ値と対比させることにより、異常の有無を判定することができる。
[9.対称型カルバック情報量]
次に、対称型カルバック情報量の算出方法について説明する。この算出方法では、ステップS13の処理で対称型カルバック情報量を算出する際に、ステップS12の処理で求めた確率密度関数を用いる。
ステップS12の確率密度関数(P(t))は、振動確率密度関数(または時間確率密度関数)を以下の式(27)により抽出することで求まる。
Figure 0006750644
対称型カルバック情報量(ID)は、上記の式(27)により抽出した正常時の波形データから求めた基準データの振幅確率密度関数(または時間確率密度関数)と異常判定対象の測定データから求めた振幅確率密度関数(または時間確率密度関数)から以下の式(28)により算出される。
Figure 0006750644
ここで、図12A〜図12Dを参照して、振幅確率密度関数および対称型カルバック情報量の算出過程を説明する。図12Aに示すように、波形データ(振動波形)は、横軸を時間(t)として縦軸を振幅値(x(t))として表され、所定時間内における振幅の出現割合を振幅確率密度関数(p(x))として表せる。正常時の波形データ(基準データ)は図12B(a)に示すような波形となり、異常時の波形データ(異常データ)は図12B(b)に示すような波形となる。そして、上記の式(27)を用いて、正常時の波形データから基準データの振幅確率密度関数を求めるとともに、異常判定対象の測定データから測定データの振幅確率密度関数を求める。図12Cに示すように、正常状態である基準データの振幅確率密度分布と、異常時の測定データの振幅確率密度分布とを重ね合わせると、正常時と異常時とでは確率密度関数に相違が現われることが分かる。さらに、基準データの振幅確率密度関数と測定データ(異常データ)の振幅確率密度分布とを用いて上記の式(28)から算出された対称型カルバック情報量の分布は、図12Dに示すような波形として表される。
以上説明したように、本実施形態の異常監視装置10による異常監視処理では、吹錬完了後(P4)から出鋼(P5)までの溶鋼が鍋に入っている状態で回転する炉体1について、軸受4の振動を計測する。これにより、軸受負荷が大きいタイミングで振動を計測でき、潤滑不良等の異常時には振動変化が大きく出るため、回転速度が1rpm程度の低速回転機械である軸受4に対して異常振動が検出し易くなる。そのため、精度よく異常判定することが可能となる。例えば排滓後(P7)から直立(P1)するまでの空鍋状態で炉体1が回転するタイミングで振動信号を収集定する場合よりも、本実施形態のほうが異常判定の精度が向上し、軸受4の異常を早期に検知できる。
また、本実施形態では、振動の計測時間を約6〜15秒としたことから、軸受4の外輪や内輪に異常があれば転動体(ボールやコロ)が外輪や内輪を通過するときの周期性を見出せるので、収集された振動信号を用いて軸受4の異常を検知できる。加えて、計測時間が最長15秒程度となっているので、出鋼開始後の外乱振動に起因する振動信号が計測されることを抑制でき、精度よく異常判定を行うために必要な振動信号を収集することができる。
さらに、軸受傷周期成分値(有次元パラメータ)を限定して監視するので、直接的に軸受4の外輪、内輪、転動体(ボールやコロ)などの異常を検知できる。また、振動波形の特徴を捉える無次元パラメータを尖り度などに限定して監視することにより、振動ピーク頻度に基づいて軸受4の異常を精度よく検知できる。
加えて、本実施形態では、限定されたパラメータのうちの複数を統合して、計測データがどれだけ初期の正常データから乖離しているかを表す状態評価指標(統合パラメータ)を算出して監視する。これにより、各パラメータの変化が顕著に反映され、測定データがどれだけ初期の正常データから乖離しているかが精度よく数値で表されるので、軸受4の異常の兆候を早期に検知できる。
また、別の異常判定方法として対称型カルバック情報量を監視することにより、異常時の振動波形の微小変化を捉えることができ、軸受4の異常の兆候を早期に検知できる。さらに、統合パラメータ値を用いる異常監視処理と、対称型カルバック情報量を用いる異常監視処理とを両方とも実施する場合には、異常検知の精度が向上し、より異常判定の信頼性を向上させることができる。
なお、上述した実施形態は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、仕様などに応じて種々変形することは本発明の範囲内であり、さらに本発明の範囲内において、他の様々な実施形態が可能であることは上記記載から自明である。例えば、上述した実施形態では駆動側の軸受の振動信号に基づいているが、従動側の軸受の振動信号に基づいた処理でもよい。また、上述した実施形態のパラメータの全てを監視対象とする必要はなく、設備によって一部を選定して監視してもよい。また、統合パラメータ値を算出する際のパラメータの組み合わせは、特に限定されない。
[10.実施例]
ここで、上述した実施形態を適用した実施例について説明する。この実施例では、軸受の損傷が判明している炉体aと、軸受の損傷がなく正常な炉体bとについて、傾動軸の軸受の振動を複数回測定し、各回の振動信号に基づいて各種パラメータを算出した。
[10−1.振動の計測タイミング]
図6は、軸受の損傷がない正常な炉体bにおける出鋼時の傾動軸3の振動速度波形と振動加速度波形を例示する図である。図7は、同じ炉体bにおける排滓時の傾動軸3の振動速度波形と振動加速度波形を例示する図である。図6および図7から分かるように、出鋼時の波形レベルのほうが排滓時の波形レベルよりも高くなっており、異常時の変化が大きくなる。このことから、出鋼時のほうが排滓時よりも異常時の振動変化を検出し易く、異常判定し易いことが分かる。さらに、振動の計測タイミングを「直立状態の炉体1が出鋼のために傾動し始めてから停止するまで」とすることで、溶鋼が出鋼され始めた後に生じる外乱振動を振動信号として収集することを抑制できる。これにより、外乱を含む振動信号に基づいた周波数分析や、外乱を含む振動データに基づいて主成分分析や波形解析が行われることを抑制でき、異常判定の精度が向上する。
[10−2.振動の計測時間]
図8は、正常な炉体bについて各種パラメータを算出した結果を例示する図である。図8に示すように、回転速度(回転数)が1.3[rpm]の場合、内輪傷の周期T(=1000/f)は2151.9ms、外輪傷の周期T(=1000/f)は2487.8msであった。内輪傷および外輪傷の周期T,Tは、回転速度1.0[rpm]では3秒程度となる。そのため、上述した実施形態のように振動の計測時間を約6〜15秒とすることで、異常検知の精度の維持に必要な内輪傷および外輪傷による2〜3周期分(6〜9秒)を含む振動信号を収集できることが分かる。すなわち、内輪傷および外輪傷の周期で少なくとも2周期分が計測対象期間に含まれるよう、計測時間を6秒以上とすることが望ましい。
さらに、内輪傷の周期および外輪傷の周期より周期の長い転動体傷の周期Tb(=1000/fb)も、回転速度1.3[rpm]で6787.3ms、回転速度1.0[rpm]では10秒弱となる。そのため、振動計測時間を約6〜15秒とすることで、転動体傷による1周期分以上(10秒以上)を含む振動信号を収集できることが分かる。すなわち、転動体傷の周期で少なくとも1周期分が計測対象期間に含まれるよう、計測時間は10秒以上であることが望ましい。
また、回転速度が1.0[rpm]の場合、吹錬完了後(P4)から出鋼(P5)まで炉体1の回転に要する時間は10秒から15秒程度である。そのため、出鋼時に傾動中の炉体1が傾いた状態で回転停止するまでに計測対象期間が限られるよう、計測時間を最長15秒程度とすることが望ましい。
このように、回転速度が1rpm程度の低速回転機械(軸受4)に対して、軸受傷の周期(T,T,Tb)を少なくとも1周期分以上含む振動信号を収集するとともに、出鋼時に炉体1が傾動中の振動信号を収集するためには、振動の計測時間を6〜15秒とすることが妥当である。これにより、軸受傷に起因する振動信号を収集できるとともに、出鋼時に炉体1が傾動中である場合に計測対象期間が限定されるので、異常判定するために必要な振動信号を外乱振動が含まれ難いタイミングで収集でき、軸受4の異常を検知し易くなる。
[10−3.異常判定例]
図9(a)は、実施形態の異常監視方法を用いた実際の異常判定例を示す図である。図9(a)に示す例では、VEL−P,ACC−P,ACC−Rなど、各パラメータの急激な上昇を確認し、特にACC−R(加速度RMS値)の変化が大きかった。そのため、振動加速度波形を解析し、軸受4の潤滑不良と推定できた(図9(b)参照)。そこで、軸受4の点検を8/17に実施した結果、軸受4のダストシールに損傷を発見し、そのダストシール損傷による潤滑油量の低下を確認した。これに対して軸受4への給油量(潤滑油の供給量)を増量した結果、その翌日8/18には振動加速度波形の振動値が正常値に復帰した(図9(c)参照)。その後、転炉修理期間において、補修および軸受4の超音波探傷確認と触診確認により、軸受4自体(内輪、外輪、転動体)には剥離等の異常は認められなかった。転炉修理後の9/16においても、振動加速度波形の振動値は正常値で安定していた(図9(d)参照)。
[10−4.パラメータ]
ここで、ACC−PとACC−foを例にして、統合パラメータを算出する際に、算出対象から除かれるパラメータと算出対象に含まれるパラメータとの違いについて説明する。
ACC−P(振動加速度のピーク値)は、上述した図9(a)に例示するように、異常時としては特徴的な変化を示すが、そのバラツキは大きくなっている。このバラツキが生じる要因として、炉体1の本体にトラニオンリング2を固定している部分にガタが発生し、ある傾動角で滑りが起こることによることが挙げられる。しかしながら、統合パラメータの異常判定においては、このバラツキによる影響が大きい。そのため、ACC−Pは、統合パラメータを算出する際に用いられるパラメータからは除かれることが望ましい。
ACC−fo(外輪傷周波数成分値)は、図10(b)に例示するように正常な炉体b(B転炉)の場合に正常値の範囲内で安定しており、図10(a)に例示するように軸受傷がある炉体a(A転炉)の場合には明らかに正常値とは異なる特徴的な変化を示す。その図10(a)に例示する異常時に注目すると、ACC−foはバラツキも少ないことが分かる。そのため、ACC−foは、統合パラメータを算出する際に用いられるパラメータに含まれることが望ましい。
このように、統合パラメータで取り扱うパラメータとしては、ACC−PよりもACC−foのような軸受傷に特化するパラメータの方が異常を明確に判定できることが分かった。つまり、ACC−Pなどの一部のパラメータを除いたうえで、軸受の周期に絞ったパラメータ(軸受傷周期成分値)を用いて統合パラメータを算出することにより、算出された統合パラメータは、軸受傷の周期に特化した統合パラメータとなっている。
なお、統合パラメータを算出する際に含まれることが望ましいパラメータとして、ACC−foに加えて、ACC−fi(内輪傷周波数成分値)、ACC−fb(転動体傷周波数成分値)が挙げられる。一方、統合パラメータを算出する際に除かれることが望ましいパラメータとして、ACC−Pの他に、ACC−R(加速度RMS値)、ACC−β(振動加速度の歪み度)、ACC−β(振動加速度の尖り度)が挙げられる。
[10−5.統合パラメータの監視]
図11は、軸受傷がある炉体a(A転炉)における統合パラメータの月毎の変化を示すグラフ図である。なお、図11には、軸受傷の周期に特化した統合パラメータ値が示されている。
図11に示すように、出鋼時における軸受傷の周期に特化した統合パラメータによれば、軸受4の潤滑不足などの異常発生時には、時間の経過とともに徐々に振動レベルが上昇しており、軸受4の異常を正確に捉えることができた。図11に例示するグラフ図では、5月〜6月までは正常値の範囲内で安定していたが、6月〜7月にかけて振動レベルが上昇し始め、7月〜8月には振動レベルが急激に上昇した。このように、軸受傷の周期に特化した統合パラメータ値では、軸受4の異常時に、振動レベルの変化量が大きくなり、正常時(炉体b)に対する変化が顕著に現われることが分かる。このように、出鋼時における軸受傷の周期に特化した統合パラメータ値を監視すれば、軸受4の異常を精度よく検知できることが確認できた。
[10−6.対称型カルバック情報量の監視]
図13は、対称型カルバック情報量による異常判定方法を用いた異常判定例を示すグラフ図である。対称型カルバック情報量は、図13に例示するように異常時には特徴的な変化を示す。図13に例示するグラフ図では、8月に入ってから対称型カルバック情報量(ID値)が急激に上昇していることが分かる。このように、対称型カルバック情報量においても、軸受4の異常を正確に捉えることができた。そして、上述したように、軸受4の点検を8/17に実施して、ダストシール損傷による潤滑油量の低下を確認したので、軸受4への給油量を増量した結果、その翌日以降は対称型カルバック情報量(ID値)が正常値に復帰した。
1 炉体
2 トラニオンリング
3 傾動軸
4 軸受
10 異常監視装置
11 制御部
110 入出力制御部
111 波形読込部
112 FFT処理部
113 パラメータ算出部
114 主成分分析部
115 統合パラメータ値算出部
116 良否判定処理部
117 判定結果処理部
12 振動センサ
13 信号変換器
14 記録信号再生装置
15 表示装置
16 印刷装置
20 データベース
21 初期状態データベース
22 測定値データベース
23 基準値データベース

Claims (4)

  1. 製鉄転炉設備において炉体を回転させる傾動軸の軸受の異常を検知する異常監視方法であって、
    吹錬完了後から出鋼までの溶鋼が鍋に入っている状態で回転する炉体において計測された軸受の振動信号を収集する計測信号収集ステップと、
    前記振動信号に基づいて前記軸受の異常を検知する異常検知ステップと、
    を含み、
    前記計測信号収集ステップは、計測対象期間として、吹錬完了後、直立状態の前記炉体が溶鋼を出鋼するために回転し始めてから6〜15秒計測された軸受の振動信号を収集し、
    前記計測対象期間は、前記軸受の内輪傷および外輪傷の周期で少なくとも2周期分を含む6秒以上の計測時間と、吹錬完了後から出鋼まで前記炉体の回転に要する時間10〜15秒すなわち出鋼時に傾動中の前記炉体が傾いた状態で回転停止するまでの最長15秒と、に基づいて設定されたものであり、
    前記異常検知ステップは、
    前記計測信号収集ステップで収集された前記振動信号に基づいて、振動速度のピーク値、振動加速度のピーク値、加速度RMS値、前記軸受の外輪傷周波数成分値、前記軸受の内輪傷周波数成分値、前記軸受の転動体傷周波数成分値、振動加速度の歪み度、速度の歪み度、振動加速度の尖り度、および速度の尖り度のうちの1つ以上のパラメータを算出するパラメータ算出ステップと、
    前記パラメータ算出ステップで算出されたパラメータを監視して異常を検知するパラメータ監視ステップと、
    前記パラメータ算出ステップで算出されたパラメータのうちの1つ以上のパラメータに基づいて主成分分析法により統合パラメータ値を算出する統合パラメータ値算出ステップと、
    前記統合パラメータ値算出ステップで算出された統合パラメータ値を監視して異常を検知する統合パラメータ値監視ステップと、を含む
    ことを特徴とする異常監視方法。
  2. 製鉄転炉設備において炉体を回転させる傾動軸の軸受の異常を検知する異常監視方法であって、
    吹錬完了後から出鋼までの溶鋼が鍋に入っている状態で回転する炉体において計測された軸受の振動信号を収集する計測信号収集ステップと、
    前記振動信号に基づいて前記軸受の異常を検知する異常検知ステップと、
    を含み、
    前記計測信号収集ステップは、計測対象期間として、吹錬完了後、直立状態の前記炉体が溶鋼を出鋼するために回転し始めてから6〜15秒計測された軸受の振動信号を収集し、
    前記計測対象期間は、前記軸受の内輪傷および外輪傷の周期で少なくとも2周期分を含む6秒以上の計測時間と、吹錬完了後から出鋼まで前記炉体の回転に要する時間10〜15秒すなわち出鋼時に傾動中の前記炉体が傾いた状態で回転停止するまでの最長15秒と、に基づいて設定されたものであり、
    前記異常検知ステップは、
    前記計測信号収集ステップで収集された前記振動信号に基づいて、対称型カルバック情報量を算出するパラメータ算出ステップと、
    前記パラメータ算出ステップで算出されたパラメータを監視して異常を検知するパラメータ監視ステップと、を含む
    ことを特徴とする異常監視方法。
  3. 製鉄転炉設備において炉体を回転させる傾動軸の軸受の異常を検知する異常監視装置であって、
    吹錬完了後から出鋼までの溶鋼が鍋に入っている状態で回転する炉体において計測された軸受の振動信号を収集する計測信号収集手段と、
    前記振動信号に基づいて前記軸受の異常を検知する異常検知手段と、
    を備え、
    前記計測信号収集手段は、計測対象期間として、吹錬完了後、直立状態の前記炉体が溶鋼を出鋼するために回転し始めてから6〜15秒計測された軸受の振動信号を収集し、
    前記計測対象期間は、前記軸受の内輪傷および外輪傷の周期で少なくとも2周期分を含む6秒以上の計測時間と、吹錬完了後から出鋼まで前記炉体の回転に要する時間10〜15秒すなわち出鋼時に傾動中の前記炉体が傾いた状態で回転停止するまでの最長15秒と、に基づいて設定されたものであり、
    前記異常検知手段は、
    前記計測信号収集手段で収集された前記振動信号に基づいて、振動速度のピーク値、振動加速度のピーク値、加速度RMS値、前記軸受の外輪傷周波数成分値、前記軸受の内輪傷周波数成分値、前記軸受の転動体傷周波数成分値、振動加速度の歪み度、速度の歪み度、振動加速度の尖り度、および速度の尖り度のうちの1つ以上のパラメータを算出するパラメータ算出手段と、
    前記パラメータ算出手段で算出されたパラメータを監視して異常を検知するパラメータ監視手段と、
    前記パラメータ算出手段で算出されたパラメータのうちの1つ以上のパラメータに基づいて主成分分析法により統合パラメータ値を算出する統合パラメータ値算出手段と、
    前記統合パラメータ値算出手段で算出された統合パラメータ値を監視して異常を検知する統合パラメータ値監視手段と、を有する
    ことを特徴とする異常監視装置。
  4. 製鉄転炉設備において炉体を回転させる傾動軸の軸受の異常を検知する異常監視装置であって、
    吹錬完了後から出鋼までの溶鋼が鍋に入っている状態で回転する炉体において計測された軸受の振動信号を収集する計測信号収集手段と、
    前記振動信号に基づいて前記軸受の異常を検知する異常検知手段と、
    を備え、
    前記計測信号収集手段は、計測対象期間として、吹錬完了後、直立状態の前記炉体が溶鋼を出鋼するために回転し始めてから6〜15秒計測された軸受の振動信号を収集し、
    前記計測対象期間は、前記軸受の内輪傷および外輪傷の周期で少なくとも2周期分を含む6秒以上の計測時間と、吹錬完了後から出鋼まで前記炉体の回転に要する時間10〜15秒すなわち出鋼時に傾動中の前記炉体が傾いた状態で回転停止するまでの最長15秒と、に基づいて設定されたものであり、
    前記異常検知手段は、
    前記計測信号収集手段で収集された前記振動信号に基づいて、対称型カルバック情報量を算出するパラメータ算出手段と、
    前記パラメータ算出手段で算出されたパラメータを監視して異常を検知するパラメータ監視手段と、を有する
    ことを特徴とする異常監視装置。
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