JP6750453B2 - 含フッ素硬化性組成物及びゴム物品 - Google Patents

含フッ素硬化性組成物及びゴム物品 Download PDF

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Description

本発明は、低粘度で成形しやすく、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性及び機械的強度に優れ、特に、光透過性に優れた硬化物を与える含フッ素硬化性組成物、及び該組成物を硬化して得られるゴム物品に関する。
1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物、及びヒドロシリル化反応触媒を含有する組成物から、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、離型性、撥水性、撥油性、耐候性等に優れた硬化物が得られることは、特許第2990646号公報(特許文献1)、特開2011−201940号公報(特許文献2)等により知られている。
上記特許文献1や特許文献2に記載されたポリマーは、ほとんどの用途において十分な性能を有しているが、何れのポリマーも、アミド基−芳香環結合を有し、該結合由来の近紫外線領域の強い光吸収を示すため、光半導体封止材用途等、光透過性が求められる環境には適さない。
ところで、上記特許文献1や特許文献2で示される含フッ素硬化性組成物にはヒドロシリル化反応触媒を用いられるが、該触媒は良好な触媒活性を示すため、全ての成分を1つの組成物として扱う、いわゆる1液タイプの組成物とする場合、十分な保存性を得るため反応制御剤の添加が必要となる。一方で、制御剤の添加により硬化性が犠牲となり、十分に硬化を進行させるには高温の加熱処理が必要となる。したがって、上記含フッ素組成物を適用するには加熱工程が必要となって製造ラインに制限が生じ、また耐熱性の乏しい部材への適用が難しい。
上記特許文献1や特許文献2で示される含フッ素硬化性組成物は、例えば、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物及びヒドロシリル化触媒を主剤とし、それ以外の成分を硬化剤とする等、いわゆる2液タイプの組成物とすることも可能である。この場合、保存性を得るための反応制御剤の添加は不要となる上、室温付近の低温で硬化が可能となるが、使用の直前に2種の組成物を混合しなければならず、製造工程が煩雑化する。
一方、シリコーンエラストマー材料において、UV光照射によって触媒が活性化する光活性型ヒドロシリル化触媒を用いて、光未照射時の十分な保存性と光照射時の良好な硬化性を兼ね備えた光硬化性組成物が知られている(特許文献3及び特許文献4)。前記光活性型ヒドロシリル化触媒を1液タイプの含フッ素組成物に適用することで、加熱工程及び2液の混合工程が不要となり、かつ十分な保存性と硬化性を示す光硬化性含フッ素組成物が得られるが、特許文献1や特許文献2で示される含フッ素硬化性組成物は、前述のように、アミド基−芳香環結合由来の近紫外線領域の強い光吸収を示すため、光硬化性含フッ素組成物の実用化は難しい。
以上のように、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、離型性、撥水性、撥油性、耐候性が必要で、かつ光透過性及び/又は光硬化性も必要な硬化物を得るために、光透過性に優れた含フッ素組成物が望まれていた。
特許第2990646号公報 特開2011−201940号公報 特表2011−511768号公報 特開2010−47646号公報
従って、本発明は、低粘度で成形しやすく、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性及び機械的強度に優れ、特に光透過性に優れた硬化物を与える含フッ素硬化性組成物、及び該組成物を硬化して得られるゴム物品を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ベースポリマーのアルケニル基を有する含フッ素ポリマーとして、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、下記一般式(1)で表される、ポリマー末端構造に、アミド基−芳香環結合を有さない、特定のポリマー末端構造を有する数平均分子量1,000〜100,000の含フッ素ポリマーを用いることにより、低粘度で成形しやすく、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性及び機械的強度に優れ、特に光透過性に優れた硬化物を与える含フッ素硬化性組成物が得られることを知見し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、下記含フッ素硬化性組成物及びゴム物品を提供するものである。
〔1〕
(a)下記一般式(1)
Figure 0006750453
(式(1)中、Rfはパーフルオロアルキレン基又は2価のパーフルオロポリエーテル基であり、R1及びR2はそれぞれ独立に、ビニル基又は炭素数1〜4のアルキル基、R3は炭素数3〜6のアルキレン基、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、またはフッ素置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される数平均分子量1,000〜100,000の含フッ素ポリマー、
(b)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物:(a)成分中のアルケニル基に対する(b)成分中のヒドロシリル基(SiH基)のモル比が0.4〜5となる量、及び
(c)ヒドロシリル化反応触媒:触媒量
を含有する含フッ素硬化性組成物。
〔2〕
一般式(1)中、R1及びR2がメチル基であり、R3がトリメチレン基であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14が水素原子である〔1〕に記載の含フッ素硬化性組成物。
〔3〕
更に(d)シリカ系充填剤:(a)成分100質量部に対して1〜100質量部を含有する〔1〕又は〔2〕に記載の含フッ素硬化性組成物。
〔4〕
上記一般式(1)において、Rfの2価のパーフルオロポリエーテル基が、下記式(2)
Figure 0006750453
(式(2)中、gは1〜6の整数であり、hは20〜600の整数である。)
で表される構造を有する基である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
〔5〕
上記一般式(1)において、Rfの2価のパーフルオロポリエーテル基が、下記式(3)〜(5)
Figure 0006750453
(式(3)中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、p,q及びrは、それぞれp≧0、q≧0、0≦p+q≦600、及び0≦r≦6を満たす整数である。但し、p=q=r=0を除く。)
Figure 0006750453
(式(4)中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、v及びwは、それぞれ0≦v≦300、0≦w≦300、及び1≦v+w≦600を満たす整数である。各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
Figure 0006750453
(式(5)中、zは1≦z≦600の整数である。)
で表される構造からなる群から選ばれる構造を有する基である〔4〕記載の含フッ素硬化性組成物。
〔6〕
上記(b)成分が、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロポリエーテル基、2価のパーフルオロアルキレン基、又は2価のパーフルオロポリエーテル基を有し、かつケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する有機ケイ素化合物である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物。
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の含フッ素硬化性組成物の硬化物からなるゴム物品。
本発明によれば、低粘度で成形しやすく、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性及び機械的強度に優れ、特に光透過性に優れた硬化物を与える含フッ素硬化性組成物を提供することができる。また、上記組成物を硬化させて得られるゴム物品は、自動車や化学機器、化学プラント等のゴム部材、アルカリ洗浄液用容器のシール材、光半導体封止剤として有用であり、さらに硬化に高温での加熱を必要としない、光硬化性組成物としても利用可能である。
合成例1で調製したアミノ基含有ビニルシランの1H−NMRスペクトルである。 合成例2で調製した含フッ素ポリマーの1H−NMRスペクトルである。
本発明の含フッ素硬化性組成物は、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、下記一般式(1)で表される数平均分子量1,000〜100,000の含フッ素ポリマー、
(b)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物、及び
(c)ヒドロシリル化反応触媒
を含有するものである。
[(a)成分]
本発明の(a)成分は、数平均分子量1,000〜100,000の含フッ素ポリマーであって、下記一般式(1)で表される1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するものである。
Figure 0006750453
(式(1)中、Rfはパーフルオロアルキレン基又は2価のパーフルオロポリエーテル基であり、R1及びR2はそれぞれ独立に、ビニル基又は炭素数1〜4のアルキル基、R3は炭素数3〜6のアルキレン基、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、またはフッ素置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基である。)
上記一般式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、ビニル基又は1〜4のアルキル基、即ち、ビニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基及びtert−ブチル基から選ばれる基であり、好ましくはビニル基又はメチル基である。
上記一般式(1)において、R3は炭素数3〜6の直鎖状又は分岐状のアルキレン基(例えば、プロピレン基(トリメチレン基、メチルエチレン基)、ブチレン基(テトラメチレン基、メチルプロピレン基)、ヘキサメチレン基等)である。炭素数が前記下限値未満のものは合成が困難であり、一方で炭素数が前記上限値を超えるものは酸化され易くなるため耐熱性に劣る。好ましくは、R3はプロピレン基、特にはトリメチレン基である。
上記一般式(1)において、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、又はフッ素置換されていてよい炭素数1〜4のアルキル基(例えばメチル基、トリフロロメチル基など)である。R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14は、上記一般式(1)の含フッ素ポリマーの製造が容易になるため、水素原子が好ましい。
上記一般式(1)におけるRfのパーフルオロアルキレン基としては、炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜6程度の直鎖状又は分岐状の2価のパーフルオロアルキレン基が挙げられる。
また、上記2価のパーフルオロポリエーテル基は、下記式
Figure 0006750453
(式中、gは1〜6の整数である。)
で表される繰り返し単位(パーフルオロオキシアルキレン単位)を多数含む、例えば下記式(2)で表されるもの等が挙げられる。なお、この2価のパーフルオロポリエーテル基を構成する繰り返し単位(パーフルオロオキシアルキレン単位)同士は、通常、直鎖状に連結しているものであるが、各繰り返し単位(パーフルオロオキシアルキレン単位)自体は直鎖状であっても分岐鎖状(例えば、-CF(CF3)CF2O-等)であってもよい。
Figure 0006750453
(式(2)中、gは1〜6の整数であり、hは20〜600、好ましくは30〜400、より好ましくは30〜200の整数である。)
上記一般式
Figure 0006750453
で表される繰り返し単位としては、例えば下記式で表される単位等が挙げられる。
Figure 0006750453
これらの中では、特に下記式で表される単位が好適である。
Figure 0006750453
なお、Rfで示される2価のパーフルオロポリエーテル基は、これらの繰り返し単位の1種で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせで構成されていてもよい。
また、該2価のパーフルオロポリエーテル基は、パーフルオロオキシアルキレン単位の繰り返し構造とパーフルオロアルキレン基との組み合わせであってもよく、例えば、下記式(3)〜(5)で表される構造からなる群から選ばれる構造を有することが好ましい。
Figure 0006750453
(式(3)中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、p,q及びrは、それぞれp≧0、q≧0、0≦p+q≦600、及び0≦r≦6を満たす整数である。但し、p=q=r=0を除く。)
Figure 0006750453
(式(4)中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、v及びwは、それぞれ0≦v≦300、0≦w≦300、及び1≦v+w≦600を満たす整数である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
Figure 0006750453
(式(5)中、zは1≦z≦600の整数である。)
上記一般式(1)におけるRfの具体例(式(6)〜(14))を以下に示す。
Figure 0006750453
(式(8)中、p1,q1及びr1は、それぞれp1≧0、q1≧0、0≦p1+q1≦200、特に2≦p1+q1≦150、及び0≦r1≦6を満たす整数である。)
Figure 0006750453
(式(9)、(10)中、p2及びq2は、それぞれ1≦p2≦100、1≦q2≦100、2≦p2+q2≦200を満たす整数である。)
Figure 0006750453
(式(11)〜(14)中、v1、v2、w1、z1は、それぞれ2≦v1≦200、1≦v2≦100、1≦w1≦100、2≦v2+w1≦200、1≦z1≦200を満たす整数である。各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
上記一般式(1)の含フッ素ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)におけるポリスチレン換算の数平均分子量が1,000〜100,000であり、特に3,000〜30,000であるものが好ましい。数平均分子量が1,000未満では、必要とされる耐薬品性を満たすことができない。一方、数平均分子量が100,000を超えると、他成分との相溶性に問題を生じるため好ましくない。
なお、本発明におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定は、以下のような条件で行った。
[測定条件]
展開溶媒:ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)−225
流量:1mL/min.
検出器:蒸発光散乱検出器
カラム:東ソー社製 TSKgel Multipore HXL−M
7.8mmφ×30cm 2本使用
カラム温度:35℃
試料注入量:100μL(濃度0.3質量%のHCFC−225溶液)
(a)成分の含フッ素ポリマーとして、具体的には、下記に示すもの(式(15)〜(20))が例示できるが、本発明は、これらに限定されない。
Figure 0006750453
(式(15)〜(17)中、p,q及びrは、それぞれp≧0、q≧0、0≦p+q≦600、及び0≦r≦6を満たす整数である。但し、p=q=r=0を除く。)
Figure 0006750453
(式(18)〜(20)中、v及びwは、それぞれ0≦v≦300、0≦w≦300、及び1≦v+w≦600を満たす整数である。各繰り返し単位はランダムに結合されていてよい。)
本発明の一般式(1)で表される含フッ素ポリマーは、例えば下記に示す工程により製造することができる。
Figure 0006750453
第1工程では、末端がハロゲン原子で置換されたアルキル基とケイ素原子上にハロゲン原子とを有するハロゲン化シラン、例えば3−クロロプロピルジメチルクロロシランに、ビニル基を有するグリニャール試薬、例えばビニルマグネシウムクロリドを反応させて、ケイ素原子上にビニル基を導入することにより、3−クロロプロピルジメチルビニルシラン等のハロゲン化アルキルビニルシランとする。ハロゲン化シランとして、3−クロロプロピルジメチルクロロシランの代わりに、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン又は3−クロロプロピルトリクロロシランを用いると、それぞれ3−クロロプロピルメチルジビニルシラン又は3−クロロプロピルトリビニルシランが得られる。反応は、ビニルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液にハロゲン化シランを滴下して行うことが好ましい。反応温度は20〜75℃程度でよい。反応は発熱を伴うので、温度が上がりすぎる場合には冷却を行いながら反応させる。滴下終了後、さらに30分〜10時間撹拌を行い反応終了とする。反応終了後は希塩酸にて反応で生成したマグネシウム塩を溶解し、有機層を回収して精製することにより目的物の中間体であるクロロアルキルビニルシラン等のハロゲン化アルキルビニルシランが得られる。
Figure 0006750453
第2工程では、第1工程で得られたビニルシラン、例えば3−クロロプロピルジメチルビニルシランに、水素原子がフッ素置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基で置換された、又は無置換のシクロヘキシルアミン、例えばシクロヘキシルアミンを反応させることで、目的物の中間体であるアミノ基含有ビニルシランが得られる。シクロヘキシルアミンの炭素原子上の置換基は、可視領域から近紫外域の光を吸収しない基であればよい。シクロヘキシルアミンが置換基を有する場合、反応で得られる有機ケイ素化合物の沸点が高く、精製の効率が低下するため、無置換のシクロヘキシルアミンが好ましい。反応は、水素原子が置換された、又は無置換のシクロヘキシルアミンと3−クロロプロピルジメチルビニルシランを混合し、70〜150℃の温度で1〜20時間加熱することで行う。反応終了後、塩酸塩を取り除きさらに精製することにより目的物の中間体であるアミノ基含有ビニルシランが得られる。
第3工程では、第2工程で得られたアミノ基含有ビニルシランと、下記一般式(6)で表される化合物を反応させることで、上記一般式(1)で表される含フッ素ポリマーが得られる。
Figure 0006750453
(式(21)中、Rfはパーフルオロアルキレン基又は2価のパーフルオロポリエーテル基であり、Xはフッ素、塩素等のハロゲン、又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。)
上記一般式(21)で表されるパーフルオロジカルボニル化合物のカルボニル基当量に対して、1.0〜1.2モル当量のアミノ基含有ビニルシランを上記カルボニル化合物に加えて30分から3時間撹拌することにより、上記一般式(1)で表される含フッ素ポリマーが生成する。
Xがハロゲンである場合、反応温度は20〜100℃の範囲であり、好ましくは35〜60℃であり、さらに好ましくは35〜45℃である。パーフルオロジハロゲン化物とアミノ基含有ビニルシランの相溶性を高めるため、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン等の溶媒を加えてもよい。上記反応終了後、1.2モル当量以上の炭酸カルシウムを加えて100〜150℃に加熱し、ハロゲン化カルシウムとしてハロゲン化物イオンを除く。次いで固形物を濾過して取り除き、未反応のアミノ基含有ビニルシランや溶媒を除いて精製することで、目的物である一般式(1)で表される含フッ素ポリマーが得られる。
Xがアルコキシ基である場合、反応温度は100〜200℃の範囲であり、好ましくは100〜150℃であり、さらに好ましくは120〜150℃である。パーフルオロジハロゲン化物とアミノ基含有ビニルシランの相溶性を高めるため、1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン等の溶媒を加えてもよい。上記反応終了後、1.2モル当量以上の炭酸カルシウムを加えて100〜150℃に加熱し、ハロゲン化カルシウムとしてハロゲン化物イオンを除く。次いで固形物を濾過して取り除き、未反応のアミノ基含有ビニルシランや溶媒を除いて精製することで、目的物である一般式(1)で表される含フッ素ポリマーが得られる。
(a)成分の含フッ素ポリマーは、1種で使用することもできるし、又は2種以上を組み合わせて使用することもできる。
[(b)成分]
(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiHで示されるヒドロシリル基)を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物であり、上記(a)成分の架橋剤(及び鎖長延長剤)として作用するものである。(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物は特に制限されるものではないが、(a)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性等を考慮すると、1分子中に1個以上の1価又は2価の含フッ素有機基(具体的に、1価の含フッ素有機基としては、パーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロポリエーテル基(例えば、片末端がフッ素原子又はパーフルオロアルキル基で封鎖されたパーフルオロオキシアルキレン単位の繰り返し構造など)等、2価の含フッ素有機基としては、2価のパーフルオロアルキレン基、2価のパーフルオロポリエーテル基(例えば、パーフルオロオキシアルキレン単位の繰り返し構造や、パーフルオロオキシアルキレン単位の繰り返し構造とパーフルオロアルキレン基との組み合わせなど)等)を有し、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有する有機ケイ素化合物(例えば、直鎖状、分岐状、環状構造等のシロキサン、シルアルキレン、シルフェニレン、シラン化合物等)が好ましい。
上記1価の含フッ素有機基としては、下記式で表される基を例示することができる。
Figure 0006750453
(式(22)中、aは1〜10、好ましくは2〜8の整数である。)
Figure 0006750453
(式(23)〜(28)中、kは1〜6の整数であり、n及びmは、それぞれ0≦m≦100、0≦n≦100、かつ0≦m+n≦100を満たす整数である。各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
また、上記2価の含フッ素有機基としては、下記式で表される基を例示することができる。
Figure 0006750453
(式(29)、(30)中、gは1〜10、好ましくは2〜8の整数である。)
Figure 0006750453
(式(31)中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、p,q及びrは、それぞれp≧0、q≧0、0≦p+q≦600、特に2≦p+q≦200、及び0≦r≦6を満たす整数である。但し、r=p=q=0を除く。)
Figure 0006750453
(式(32)中、Yはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、v及びwは、それぞれ0≦v≦300、0≦w≦300、及び1≦v+w≦600を満たす整数である。各繰り返し単位同士はランダムに結合されていてよい。)
Figure 0006750453
(式(33)中、zは1≦z≦600の整数である。)
上記1価又は2価の含フッ素有機基は、ケイ素原子に直接結合していてもよいが、ケイ素原子と2価の連結基を介して結合していてもよい。ここで、2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基やこれらの組み合わせでも、あるいは、これらにエーテル結合酸素原子やアミド結合、カルボニル結合等を介在するものであってもよい。上記2価の連結基は、例えば炭素数2〜12、特に2〜10のものが好ましく、具体的には下記式で表される基等が挙げられる。なお、下記式中、Ph及びPh’はフェニル基、cHxはシクロヘキシル基である。
Figure 0006750453
なお、光透過性が損なわれるため、上記2価の連結基として、アミド基−芳香環結合を含まないことが望ましい。
また、この(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物における上記1価又は2価の含フッ素有機基以外のケイ素原子に結合した1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;あるいはこれらの基の水素原子の一部が塩素原子、シアノ基等で置換された例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜20の非置換又は置換1価炭化水素基が挙げられる。
(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物は、直鎖状、分岐状又は環状でもよく、更に三次元網状構造であってもよい。なお、この含フッ素有機ケイ素化合物における分子中のケイ素原子数は特に制限されないが、通常2〜60、特に3〜30程度が好ましい。
このような含フッ素有機ケイ素化合物としては、例えば下記式で表される、シロキサン構造及び/又はシルアルキレン構造等を有する有機ケイ素化合物等が挙げられ、これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
Figure 0006750453
(b)成分の配合量は、通常、(a)成分中に含まれるビニル基、アリル基、シクロアルケニル基等のアルケニル基1モルに対する(b)成分中のヒドロシリル基(即ち、SiH基)の合計のモル比が、0.4〜5となる量であり、好ましくは0.8〜3となる量である。(b)成分中のヒドロシリル基の量が少なすぎると架橋度合いが不十分で硬化物の強度が不足し、多すぎても同様に硬化物の強度が不足する。また、この(b)成分は1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
[(c)成分]
(c)成分のヒドロシリル化反応触媒としては、遷移金属、例えばPt、Rh、Pd等の白金族金属やこれら遷移金属の化合物等が好ましく使用される。本発明では、比較的入手しやすい白金又は白金化合物を用いることが好ましい。
白金化合物として、具体的には、塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコールやビニルシロキサンとの錯体、白金/シリカ、アルミナ又はカーボン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
白金化合物以外の白金族金属化合物としては、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム系化合物等が知られており、例えば、RhCl(PPh33、RhCl(CO)(PPh32、RhCl(C242、Ru3(CO)12、IrCl(CO)(PPh32、Pd(PPh34等が挙げられる(なお、Phはフェニル基を示す)。
これらの触媒の使用量は、特に制限されるものではなく、いわゆる触媒量で所望とする硬化速度を得ることができるが、経済的見地から、又は良好な硬化物を得るためには組成物全量に対して白金族金属の質量換算で0.1〜1,000ppm、より好ましくは0.1〜500ppm程度の範囲とするのがよい。
本発明では、任意成分として、必要に応じて、次のものを用いることができる。
[(d)成分]
本発明では、さらに(d)成分として、シリカ系充填剤を用いることができる。シリカ系充填剤としては、石英やガラスを粉砕した粉砕シリカ、一旦溶融してから球粒状に成形した溶融シリカ、ケイ酸ソーダに鉱酸を加えて製造される湿式シリカ(沈降性シリカ)、シラン化合物を燃焼させて製造される乾式シリカ(ヒュームドシリカ又は煙霧質シリカ)等が挙げられる。これらのうち、機械的強度を向上させる観点から、BET比表面積が30m2/g以上、好ましくは50〜400m2/gのシリカ系充填剤が好適に用いられる。なお、湿式シリカ、乾式シリカがこれに該当するが、吸着水分が少ない乾式シリカが好適である。ポリマー成分との濡れ性を考慮すると、シリカ系充填剤の表面が疎水化処理されたものが更に好ましい。シリカ系充填剤表面の疎水化処理が施されていないと、十分な機械的強度が得られなかったり、組成物の粘度が異常に高くなったりする等の弊害が生じるおそれがある。
(d)成分を使用する場合の配合量は、(a)成分100質量部に対して1〜100質量部、特に1〜40質量部とすることが好ましい。1質量部未満ではフィラーの補強性効果が十分に得られない場合があり、100質量部を超えると組成物の粘度が高くなり、作業性を損なう場合がある。
[その他の成分]
本発明の組成物には、上記した(a)〜(c)成分及び任意成分である(d)成分のほかに、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサン、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、フェニルブチノール等のアセチレンアルコールや、1価のパーフルオロアルキル基又は1価のパーフルオロオキシアルキル基を有するクロロシランとアセチレン性アルコールとの反応物、3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−3−ヘキセン−1−イン、トリアリルイソシアヌレート、ポリビニルシロキサン、有機リン化合物等のヒドロシリル化反応触媒の制御剤、酸化鉄、酸化セリウム、カーボンブラック等の顔料、着色剤、染料、酸化防止剤、一部又は全てがフッ素変性されたオイル状化合物等が挙げられる。なお、これらの任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で任意とすることができる。
[使用方法]
本発明の組成物は、用途に応じて上記(a)〜(c)成分の必須成分全てを1つの組成物として取り扱う、いわゆる1液タイプとして構成してもよいし、あるいは、例えば上記(a)、(c)成分を一方の組成物とし、(a)、(b)成分を他方の組成物とする、いわゆる2液タイプとして構成し、使用にあたってこれを混合してもよい。
また、組成物を溶解希釈して用いることも可能である。このような溶剤としては、(a)成分を溶解させ得るものが好ましく、例えばC410、C818、C49OCH3、C49OC25、2−n−ノナフルオロブチル−テトラフルオロフラン、トリス(n−ノナフルオロブチル)アミン、メタキシレンヘキサフルオライド、パラキシレンヘキサフルオライド、ベンゾトリフルオライド等のフッ素化溶剤等が挙げられる。
本発明の含フッ素硬化性組成物は、従来の含フッ素硬化性組成物と同様、常温にて放置するか、加熱することにより容易に硬化させることができるが、(c)成分として光により活性化するヒドロシリル化触媒を用いることにより光硬化させることもできる。これらのような硬化により、優れた特性を有するゴム物品を得ることができる。
本発明の含フッ素硬化性組成物は、従来の直鎖状含フッ素ポリマーをベースポリマー(主剤)とした硬化性組成物と同様に、耐溶剤性、耐薬品性、耐酸性、耐アミン性に優れ、また、透湿性も低く、低表面エネルギーを有するため、離型性、撥水性にも優れており、種々の用途に利用することができる。例えば、耐油性を要求される自動車用ゴム部品、具体的にはフューエル・レギュレーター用ダイヤフラム、パルセーションダンパ用ダイヤフラム、オイルプレッシャースイッチ用ダイヤフラム、EGR用ダイヤフラム等のダイヤフラム類、キャニスタ用バルブ、パワーコントロール用バルブ等のバルブ類、クイックコネクタ用O−リング、インジェクター用O−リング等のO−リング類、あるいは、オイルシール、シリンダヘッド用ガスケット等のシール材として、あるいは、圧力センサーの保護材、防振を目的とする材料に好適に使用できる。また、化学プラント用ゴム部品、具体的にはポンプ用ダイヤフラム、バルブ類、O−リング類、ホース類、パッキン類、オイルシール、ガスケット等のシール材、インクジェットプリンタ用ゴム部品、半導体製造ライン用ゴム部品、具体的には薬品が接触する機器用のダイヤフラム、弁、O−リング、パッキン、ガスケット等のシール材、低摩擦耐磨耗性を要求されるバルブ、分析、理化学機器用ゴム部品、具体的にはポンプ用ダイヤフラム、弁、シール部品(O−リング、パッキン等)、医療機器用ゴム部品、具体的にはポンプ、バルブ、ジョイントとしても好適に使用できる。更に、テント膜材料、シーラント、成形部品、押し出し部品、被覆材、複写機ロール材料、電気用防湿コーティング材、センサー用ポッティング材、積層ゴム布、航空機用エンジンオイル、ジェット燃料、ハイドローリックオイル、スカイドロール等の流体配管用O−リング、フェースシール、パッキン、ガスケット、ダイヤフラム、バルブ等の航空機用ゴム部品、アルカリ洗浄液用容器のシール材、光半導体素子の封止剤等に有用である。
また、本発明の含フッ素硬化性組成物は、従来の含フッ素硬化性組成物に比べ紫外から可視領域にかけての光透過性に優れるため、適切なヒドロシリル化触媒の使用により、上記の各部材の成形に加熱硬化を必要としない、光硬化性組成物として使用可能であり、耐熱性に乏しい部材にも適用が容易である。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、Meはメチル基を示す。
[合成例1]
2Lフラスコ中のビニルマグネシウムクロリドのテトラヒドロフラン溶液(1.6mol/L)800mLに、3−クロロプロピルジメチルクロロシラン175gを30分かけて滴下した。滴下中、フラスコ内部は65℃まで昇温した。滴下終了後、4時間撹拌を続けて反応終了とした。フラスコ内容物を希塩酸中に投入して分液し、水洗を2回行った後有機層を回収した。これを蒸留し、上記第1工程の生成物である3−クロロプロピルジメチルビニルシラン123gを得た。3−クロロプロピルジメチルビニルシランの沸点は40mmHgにおいて80℃であった。
別途、300mLフラスコにシクロヘキシルアミンを仕込み、内部温度を130℃に加熱した。そこに上記中間体、3−クロロプロピルジメチルビニルシラン50gを40分かけて滴下した。滴下終了後、内部温度130〜135℃にて約6時間撹拌し、反応終了とした。反応終了後には白色の固形物が析出した。反応混合物を27℃まで冷却し、水酸化ナトリウムの30%水溶液200gを加えた。約3時間撹拌後、分液して有機層を回収し、蒸留することで沸点が125〜130℃/3mmHgの無色透明の留分36gを得た。留分を1H−NMRで分析したところ、下記式(34)で表されるアミノ基含有ビニルシランであることがわかった。図1に、アミノ基含有ビニルシランの1H−NMRスペクトルを示す。
Figure 0006750453
1H−NMR
δ0.0−0.1(−SiCH3)6H
δ0.5−0.6(−SiCH2CH2CH2−)2H
δ0.9−1.3(−NH−CH(CH2CH22CH2)(axial)5H
δ1.4−1.5(−SiCH2CH2CH2−)2H
δ1.5−1.9(−NH−CH(CH2CH22CH2)(equatorial)6H
δ2.3−2.4(−NH−CH(CH2CH22CH2)1H
δ2.5−2.6(−SiCH2CH2CH2−)2H
δ5.6−6.2(−SiCH=CH2)3H
[合成例2]
下記式(35)
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=35)
で表されるパーフルオロポリエーテル100g及び1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン40gを200mLフラスコに仕込み、合成例1にて得られたアミノ基含有ビニルシラン7.5g、トリエチルアミン3.4g、及び1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン10gの混合液を30分かけて滴下した。滴下中、フラスコ内部は45℃まで昇温した。滴下終了後30分撹拌して反応終了とし、炭酸カルシウム4.0gを加えて100℃に加熱して4時間撹拌した。次いで、窒素バブリングを行いながら140℃/2mmHgで揮発分を除いた。冷却後、パーフルオロヘキサン100gと合成ケイ酸アルミニウムの粉末1.5gを加えて撹拌し、濾過により固形物を除き、パーフルオロヘキサンを留去することで、下記式(36)で表される含フッ素ポリマー95gを得た。図2に、含フッ素ポリマーの1H−NMRスペクトルを示す。
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=35)
1H−NMRにて上記含フッ素ポリマーのビニル価を測定したところ、2.86×10-4mol/gであった。
1H−NMR
δ0.0−0.1(−SiCH3)6H
δ0.4−0.6(−SiCH2CH2CH2−)2H
δ0.9−2.3(−SiCH2CH2CH2−N−CH(CH2CH22CH2)12H
δ3.0−3.6(−SiCH2CH2CH2−)2H
δ3.8−4.2(−N−CH(CH2CH22CH2)1H
δ5.5−6.2(−SiCH=CH2)3H
[合成例3]
下記式(37)
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=90)
で表されるパーフルオロポリエーテル100g及び1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン40gを200mLフラスコに仕込み、合成1にて得られたアミノ基含有ビニルシラン3.1g、トリエチルアミン1.4g及び1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン10gの混合液を30分かけて滴下した。滴下中、フラスコ内部は35℃まで昇温した。滴下終了後1時間撹拌して反応終了とし、炭酸カルシウム1.6gを加えて100℃に加熱して4時間撹拌した。次いで、窒素バブリングを行いながら140℃/2mmHgで揮発分を除いた。冷却後、パーフルオロヘキサン100gと合成ケイ酸アルミニウムの粉末1.5gを加えて撹拌し、濾過により固形物を除き、パーフルオロヘキサンを留去することで、下記式(38)で表される含フッ素ポリマー100gを得た。
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=90)
1H−NMRにて上記含フッ素ポリマーのビニル価を測定したところ、1.20×10-4mol/gであった。
[合成例4]
下記式(39)
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=90)
で表されるパーフルオロポリエーテル100g及び1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン40gを200mLフラスコに仕込み、合成にて得られたアミノ基含有ビニルシラン3.1g、トリエチルアミン1.4g及び1,3−ビストリフルオロメチルベンゼン10gを加え、150℃で2時間撹拌した。次いで、窒素バブリングを行いながら140℃/2mmHgで揮発分を除いた。冷却後、パーフルオロヘキサン100gと合成ケイ酸アルミニウムの粉末1.5gを加えて撹拌し、濾過により固形物を除き、パーフルオロヘキサンを留去することで、上記式(38)で表される含フッ素ポリマー96gを得た。
1H−NMRにて上記含フッ素ポリマーのビニル価を測定したところ、1.20×10-4mol/gであった。
[実施例1]
上記合成例3で得られた、下記式(38)
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=90)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0120モル/100g、数平均分子量=15,900)100質量部、アエロジルR972(日本アエロジル(株)製、ジクロロジメチルシランで表面が疎水化処理された乾式シリカ)20質量部をプラネタリーミキサーにより、120℃で1時間混合した。その後、3本ロールミル処理を施した。得られた混合物120質量部中100質量部に、下記式(40)
Figure 0006750453
で表される含フッ素有機ケイ素化合物2.4質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH2=CHSiMe2OSiMe2CH=CH2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.2質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.3質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して以下の測定を行った。
硬化物の初期ゴム物性:
上記組成物を150℃、10分のプレス架橋(一次架橋)及び150℃、1時間のオーブン架橋(二次架橋)を行って硬化シート(170mm×130mm×2mm)を作製した。得られた硬化シートの下記耐熱性試験前の初期物性(硬さ、引張強さ、切断時伸び)(初期値)をJIS K6253−3:2012、及びJIS K6251:2010に準拠して測定した。
耐熱性:
上記硬化シートを150℃の温度条件下、1,000時間保存した後、硬さ、引張強さ、切断時伸びを測定した。150℃、1,000時間保存後の測定値の、初期値からの変化量を算出することによって、硬さ変化量(ポイント)、引張強さ変化量(%)、切断時伸び変化量(%)を決定した。
なお、硬化物のゴム物性の測定結果及び耐熱性の測定結果は表1に示した。
[比較例1]
下記式(41)
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=90)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0121モル/100g、数平均分子量=15,800)100質量部、アエロジルR972(日本アエロジル(株)製、ジクロロジメチルシランで表面が疎水化処理された乾式シリカ)20質量部をプラネタリーミキサーにより、120℃で1時間混合した。その後、3本ロールミル処理を施した。得られた混合物120質量部中100質量部に、下記式(40)
Figure 0006750453
で表される含フッ素有機ケイ素化合物2.4質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH2=CHSiMe2OSiMe2CH=CH2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.2質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.3質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により硬化物のゴム物性、耐熱性の測定を行った。
[比較例2]
下記式(42)
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=90)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0119モル/100g、数平均分子量=15,800)100質量部、アエロジルR972(日本アエロジル(株)製、ジクロロジメチルシランで表面が疎水化処理された乾式シリカ)20質量部をプラネタリーミキサーにより、120℃で1時間混合した。その後、3本ロールミル処理を施した。得られた混合物120質量部中100質量部に、下記式(40)
Figure 0006750453
で表される含フッ素有機ケイ素化合物2.4質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH2=CHSiMe2OSiMe2CH=CH2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.2質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.3質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により硬化物のゴム物性、耐熱性の測定の測定を行った。
[実施例2]
上記合成例2で得られた、下記式(36)
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=35)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0286モル/100g、数平均分子量=6,500)100質量部に、下記式(40)
Figure 0006750453
で表される含フッ素有機ケイ素化合物6.9質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH2=CHSiMe2OSiMe2CH=CH2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.4質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.5質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して以下の測定を行った。
光透過性:
上記組成物を2枚のガラス板で作られた厚さ2mmの隙間に流し込み、150℃、1時間のオーブン架橋を行って硬化シート(50mm×50mm×2mm)を作製した。得られた硬化シートの透明性を、(株)島津製作所製紫外可視近赤外分光光度計UV−3600を用いて測定した。測定結果を表2に示した。
[比較例3]
下記式(43)
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=35)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0302モル/100g、数平均分子量=6,500)100質量部に、下記式(40)
Figure 0006750453
で表される含フッ素有機ケイ素化合物7.3質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH2=CHSiMe2OSiMe2CH=CH2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.4質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.6質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により光透過性の測定を行った。
[比較例4]
下記式(44)
Figure 0006750453
(p’+q’の平均値=35)
で表されるポリマー(ビニル基量0.0276モル/100g、数平均分子量=6,500)100質量部に、下記式(40)
Figure 0006750453
で表される含フッ素有機ケイ素化合物6.6質量部(SiH基/ビニル基=1.2モル/モル)、塩化白金酸をCH2=CHSiMe2OSiMe2CH=CH2で変性した触媒のトルエン溶液(白金濃度0.5質量%)0.4質量部及び1−エチニル−1−ヒドロキシシクロヘキサンの60質量%トルエン溶液0.5質量部を混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この組成物を使用して、上述した方法により光透過性の測定を行った。
Figure 0006750453
Figure 0006750453
本発明の含フッ素硬化性組成物のベースポリマーである含フッ素ポリマーは、耐熱性の良好なフェニル基を有さず、代わりにシクロヘキシル基を有するが、表1の結果から明らかなように、実施例1の硬化物は、比較例1及び2の硬化物と同等の耐熱性を有していた。実施例1で用いた含フッ素ポリマーは、比較例1及び2で用いた従来の含フッ素ポリマーと同等の耐熱性を有すことがわかる。
表2から明らかなように、実施例2の、芳香族−アミド結合を有さないベースポリマーを用いた硬化物は、従来の比較例3及び4の、芳香族−アミド結合を有するベースポリマーを用いた硬化物に比べ、可視光から紫外域にかけて光透過性に優れていた。
以上の結果から、本発明の含フッ素硬化性組成物から、従来の含フッ素硬化性組成物から得られる硬化物と同等の耐熱性を有しながら、且つ可視光から紫外域にかけて光透過性に優れた硬化物が得られることが明らかとなった。
したがって、本発明の含フッ素硬化性組成物は、従来の含フッ素硬化性組成物の用途にも利用可能であるが、可視光におけるより優れた光透過性を有する、光半導体封止剤等にも利用可能である。また、紫外域における優れた光透過性を有するため、成形に高温での加熱硬化を必要としない、光硬化性組成物として、耐熱性の乏しい部材への適用が容易である。

Claims (10)

  1. (a)下記一般式(1)
    Figure 0006750453
    (式(1)中、Rfはパーフルオロアルキレン基又は下記式(5)、(8)、(9)、( 10)及び(11)
    Figure 0006750453
    (式(5)中、zは1≦z≦600の整数である。)
    Figure 0006750453
    (式(8)中、p1,q1及びr1は、それぞれp1≧0、q1≧0、2≦p1+q1≦ 200、及び0≦r1≦6を満たす整数である。)
    Figure 0006750453
    (式(9)、(10)中、p2及びq2は、それぞれ1≦p2≦100、1≦q2≦10 0、2≦p2+q2≦200を満たす整数である。)
    Figure 0006750453
    (式(11)中、v1は、2≦v1≦200を満たす整数である。各繰り返し単位同士は ランダムに結合されていてよい。)
    で表される構造からなる群から選ばれる2価のパーフルオロポリエーテル基であり、R1及びR2はそれぞれ独立に、ビニル基又は炭素数1〜4のアルキル基、R3は炭素数3〜6のアルキレン基、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立に、水素原子、またはフッ素置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基である。)
    で表される数平均分子量1,000〜100,000の含フッ素ポリマー
    (b)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物:(a)成分中のアルケニル基に対する(b)成分中のヒドロシリル基(SiH基)のモル比が0.4〜5となる量、及び
    (c)ヒドロシリル化反応触媒:触媒量
    を含有する含フッ素硬化性組成物。
  2. 一般式(1)中、R1及びR2がメチル基であり、R3がトリメチレン基であり、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13及びR14が水素原子である請求項1記載の含フッ素硬化性組成物。
  3. 更に(d)シリカ系充填剤:(a)成分100質量部に対して1〜100質量部を含有する請求項1又は2記載の含フッ素硬化性組成物。
  4. 上記(b)成分が、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロポリエーテル基、2価のパーフルオロアルキレン基、又は2価のパーフルオロポリエーテル基を有し、かつケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する有機ケイ素化合物である請求項1乃至のいずれか1項記載の含フッ素硬化性組成物。
  5. 請求項1乃至のいずれか1項記載の含フッ素硬化性組成物の硬化物からなるゴム物品。
  6. (a)下記一般式(1)
    Figure 0006750453
    (式(1)中、Rfは下記式(12)及び(13)
    Figure 0006750453
    (式(12)、(13)中、v2、w1は、それぞれ1≦v2≦100、1≦w1≦10 0、2≦v2+w1≦200を満たす整数である。各繰り返し単位同士はランダムに結合 されていてよい。)
    で表される構造からなる群から選ばれる2価のパーフルオロポリエーテル基であり、R 1 及びR 2 はそれぞれ独立に、ビニル基又は炭素数1〜4のアルキル基、R 3 は炭素数3〜6 のアルキレン基、R 4 、R 5 、R 6 、R 7 、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 はそ れぞれ独立に、水素原子、またはフッ素置換されていてもよい炭素数1〜4のアルキル基 である。)
    で表される数平均分子量1,000〜100,000の含フッ素ポリマー
    (b)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケ イ素化合物:(a)成分中のアルケニル基に対する(b)成分中のヒドロシリル基(Si H基)のモル比が0.4〜5となる量、及び
    (c)ヒドロシリル化反応触媒:触媒量
    を含有する含フッ素硬化性組成物。
  7. 一般式(1)中、R 1 及びR 2 がメチル基であり、R 3 がトリメチレン基であり、R 4 、R 5 、R 6 、R 7 、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 、R 12 、R 13 及びR 14 が水素原子である請求項6記 載の含フッ素硬化性組成物。
  8. 更に(d)シリカ系充填剤:(a)成分100質量部に対して1〜100質量部を含有 する請求項6又は7記載の含フッ素硬化性組成物。
  9. 上記(b)成分が、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパー フルオロポリエーテル基、2価のパーフルオロアルキレン基、又は2価のパーフルオロポ リエーテル基を有し、かつケイ素原子に結合した水素原子を2個以上有する有機ケイ素化 合物である請求項6乃至8のいずれか1項記載の含フッ素硬化性組成物。
  10. 請求項6乃至9のいずれか1項記載の含フッ素硬化性組成物の硬化物からなるゴム物品
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