JP6749541B2 - 超伝導導体 - Google Patents
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Description
超伝導テープ線材に関連する従来技術として、例えば、特許文献1は、超伝導テープ線材を同心円状に巻回した超伝導コイルを開示し、かかる超伝導コイルにおいて、磁場による位置ずれが生じないように超伝導テープ線材を固定する技術を開示している。
特許文献2は、帯状の金属基板上に,超伝導層を形成した後、長手方向に切断することにより超伝導テープ線材の製造方法について開示する。
特許文献3は、超伝導テープ線材が、その面の法線方向に曲がりながら沿うための曲面と、面の幅方向(以下、本明細書において「エッジ方向」ということもある)に部分的に曲げながら沿う捻れ枠部を設けることにより3次元的に湾曲した曲面のコイルを実現する技術を開示している。
かかる課題は、超伝導テープ線材を利用する限り、高温超伝導以外にも共通の課題であった。本発明は、かかる課題に鑑み、超伝導テープ線材を用いて、3次元的な湾曲を伴う形成を実現可能とする技術を提供することを目的とする。
超伝導導体であって、
相互に接着することなく積層された複数の超伝導テープ線材と、
テープ幅方向に前記超伝導テープ線材が相互にずれることを許容して、前記超伝導テープ線材を結束する結束部材とを有する超伝導導体として構成することができる。
結束部材としては、種々の部材を適用可能であり、例えば、ワイヤ、ラバーバンド、チューブ、スプリングなどとすることができる。チューブのように連続体を結束部材として使用する場合には、結束部材自体の柔軟性が確保されていることが好ましい。結束部材の材質は、例えば、樹脂、金属などとすることができる。
超伝導テープ線材の積層数は、任意に設定可能である。積層数が多ければ、大電流値を達成することも可能となる。また、積層数が多ければ、エッジ方向の疑似的な柔軟性をより確保しやすくなる利点がある。
前記結束部材は、曲げを柔軟に行うことができるフレキシブルチューブであり、
前記複数の超伝導テープ線材は、積層された状態で、前記フレキシブルチューブ内に挿入されることにより前記結束が行われているものとしてもよい。
フレキシブルチューブとは、管の軸方向の伸縮、横方向の変位、曲げ変位などに適応してたわみが可能な管を言う。樹脂製、金属製などがある。
このようなフレキシブルチューブを利用すれば、柔軟性を確保しながら、超伝導テープ線材を挿入するのみで容易に結束することができる利点がある。
前記フレキシブルチューブは、金属製であり、
さらに、前記フレキシブルチューブの外部を覆う絶縁性のテープを有するものとしてもよい。
超伝導導体には、磁力など様々な力が作用するが、金属製のフレキシブルチューブを利用することにより、これらの荷重に耐えられる強度を備えることができる。また、絶縁性のテープで外部を覆うことにより、超伝導導体同士の絶縁も確保することができる。
本発明においては、
前記超伝導テープ線材の幅方向への曲げも含む最終的な形状に成形された前記超伝導テープ線材および結束部材を、該形状に保持するよう、前記超伝導テープ線材をモールドするモールド部材を備えるものとしてもよい。
上記態様は、超伝導導体の柔軟性を活かして巻回した後、全体をモールドすることにより、形状を保持するものである。超伝導導体を巻回したコイル等を磁場中で使用すると、超伝導テープ線材に電磁力など様々な荷重が作用し、超伝導テープ線材の変形を招くおそれがあるが、上記態様によれば、モールド部材によってモールドすることにより、こうした弊害を緩和することができる。
前記モールド部材は、金属製であるものとしてもよい。
金属を用いることにより、強固なモールドを実現することができる。かかる場合の金属は、超伝導層の損傷を抑制するため、200℃または150℃以下の融点を有する低融点金属とすることが好ましい。例えば、融点約80℃のUアロイ78や、ハンダなどを用いることができる。金属でモールドする場合、超伝導テープ線材同士の空隙を金属で埋めることになる。このため、超伝導テープ線材の冷却効率を向上させることができる利点もある。超伝導テープ線材が、荷重や熱などによって局所的に超伝導性を失う状態をクエンチと呼ぶが、クエンチが生じると、超伝導テープ線材の温度上昇が進み、超伝導性が広い範囲で失われるおそれがある。本態様のように、超伝導テープ線材の隙間も金属でモールドしておけば、仮にクエンチが生じたとしても、モールドによって熱伝導を高めることができ、冷却効率を向上させることができるため、クエンチの広がりを抑制することが可能となる。
さらに、モールドする金属を、超伝導テープ線材の基板と同等の熱膨張係数の素材としてもよい。こうすることにより、超伝導テープ線材に熱膨張等の変形が生じたとき、モールド部材も同程度の変形を生じることになり、超伝導テープ線材とモールド部材間の剪断応力の発生を抑制することができる。この結果、超伝導テープ線材の表面の超伝導層が剪断応力によって剥離することを抑制することが可能となる。
例えば、
超伝導導体の成形方法であって、
(a) 複数の超伝導テープ線材を相互に接着することなく積層する工程と、
(b) テープ幅方向に前記超伝導テープ線材が相互にずれることを許容して、前記超伝導テープ線材を結束部材により結束する工程と、
を有する超伝導導体の成形方法なる構成である。
さらに、
(c) 前記超伝導テープ線材および結束部材を巻回して、前記超伝導テープ線材の幅方向への曲げも含む最終的な形状を成形する工程と、
(d) 前記成形された形状を保持するよう、前記超伝導テープ線材をモールド部材によりモールドする工程とを有するものとしてもよい。
図1(a)の超伝導導体10は、複数の超伝導テープ線材11を積層し、金属製のワイヤ12で結束して構成されている。超伝導テープ線材11は、種々のサイズを利用可能であるが、本実施例では、幅4mm、厚さ0.2mmのテープ線材を用いた。
本実施例では、ワイヤ12は螺旋状に巻き付けてあるが、リング状の複数のワイヤ12を用いて結束してもよい。ワイヤ12の間隔Wは、任意に決めることができる。間隔Wを広くとれば、積層した超伝導テープ線材11の変形の自由度が増し、超伝導導体10全体の柔軟性を高めることができる。一方、間隔Wが広い場合には、超伝導テープ線材11がばらばらに近い状態となるため、巻回の作業性が低下するおそれもある。間隔Wは、これらの要素を考慮して、定めればよい。
積層数も任意に決定可能である。積層数が増せば、大電流値が達成可能となる。本実施例では、16枚積層するものとした。
スプリング22の寸法は任意に選択可能である。内径がさらに大きいものを利用すれば、超伝導テープ線材21の捻れ等の自由度が高まり、超伝導導体20の柔軟性が向上する。一方、内径が大きくなれば、超伝導テープ線材21の結束が弱くなるため、巻回の作業性が悪くなる。スプリング22のサイズは、これらの要素を考慮して定めればよい。
上述の実施例では、結束部材として、金属製のワイヤ12、スプリング22を用いているが、それぞれ樹脂製を用いても良い。
図2(b)には、この超伝導導体30Aを曲げた状態を例示した。図示する通り、超伝導導体30Aは、非常に柔軟に屈曲することができる。図の例では、超伝導テープ線材31のフラット方向に曲げるとともにエッジ方向にも若干、曲げた状態を示しているが、エッジ方向にさらに大きく曲げることも可能である。
図3(a)は、小型のヘリカルコイルの構造体を示している。この構造体には、表面に超伝導導体を二重の螺旋に巻回するための溝40、41が形成されている。この溝に沿って巻回させるためには、超伝導導体をフラット方向のみならずエッジ方向にも曲げる必要が生じるが、本実施例の超伝導導体によれば、こうした3次元的な巻回も実現することが可能となる。
図3(b)は、より大型のヘリカルコイルの構造を示した。大型のヘリカルコイルでは、超伝導導体30Aを複数本用意し、これらをコイル挿入孔50に配列して挿入することにより、ヘリカルコイルを形成する。形成されるヘリカルコイルも、全体としては図3(a)のような形状となるが、サイズが大きいため、複数の超伝導導体30Aを長手方向にも接続することになる。かかる接続は、接合する2本の超伝導導体30Aをそれぞれ構成する超伝導テープ線材の表面の超伝導層同士が接触するように接続し、両者をインジウムやハンダで貼り合わせればよい。
ヘリカルコイルは、本実施例の超伝導導体30Aを適用する一例に過ぎず、本実施例の超伝導導体30Aは、さらに種々の用途に利用可能である。また、必ずしもエッジ方向の曲げを伴う巻回に限られるものではなく、フラット方向の曲げのみで巻回する用途に利用しても差し支えない。
この工程では、まず高温超伝導導体テープ線材を積層する(ステップS10)。そして、この積層体を、フレキシブルチューブに挿入する(ステップS11)。その後、フレキシブルチューブの外側にポリイミドテープを巻く(ステップS12)。これらの工程により、図2(a)に示した状態の超伝導導体20Aを形成することができる。
超伝導コイルを強磁場の中で利用すると、超伝導導体には電磁力が作用する。金属でモールドしていない場合には、それぞれの超伝導テープ線材が電磁力の作用によって移動または変形することになり、その状態によっては、局所的に臨界電流が顕著に低下するクエンチが生じるおそれもある。上述の実施例のように、金属でモールドすれば、こうした減少を回避でき、超伝導コイルを安定して動作させることが可能となる。
また、金属でモールドすることにより、機械的な強度を実現することもできる。
さらに金属でモールドすることにより、冷却効率を向上させることができる利点もある。金属でモールドすれば、超伝導テープ線材の空隙を金属で埋めることができるため、空隙をそのまま残しておく場合に比較して、超伝導導体の熱伝導率を高めることが可能となるのである。この結果、超伝導テープ線材に局所的なクエンチが発生した場合であっても、速やかに冷却することが可能となり、クエンチの拡散を抑制することができる。
さらに、金属でモールドした場合、例えば、クエンチが発生し多量の熱が発生したとしても、その熱は、金属の溶融に利用されることになり、クエンチの拡散を抑制することができる利点がある。
冷却効率を向上させるため、超伝導導体の巻き線の際に、冷却用の配管を沿わせるようにしてもよい。このような構造とすれば、冷却効率がより向上するだけでなく、冷却用の配管が、超伝導導体を支持する効果を奏し、全体の強度を向上させることも可能となる。
11 :超伝導テープ線材
12 :ワイヤ
20 :超伝導導体
20A :超伝導導体
21 :超伝導テープ線材
22 :スプリング
30A :超伝導導体
31 :超伝導テープ線材
32 :フレキシブルチューブ
33 :絶縁テープ
40 :溝
41 :溝
50 :コイル挿入孔
Claims (7)
- コイル用の超伝導導体であって、
一本一本が相互に接着することなく積層された複数の超伝導テープ線材と、
テープ幅方向に前記超伝導テープ線材が相互にずれることを許容して、前記超伝導テープ線材を結束する結束部材とを有するコイル用の超伝導導体。 - 請求項1記載の超伝導導体であって、
前記結束部材は、曲げを柔軟に行うことができるフレキシブルチューブであり、
前記複数の超伝導テープ線材は、積層された状態で、前記フレキシブルチューブ内に挿入されることにより前記結束が行われている超伝導導体。 - 請求項2記載の超伝導導体であって、
前記フレキシブルチューブは、金属製であり、
さらに、前記フレキシブルチューブの外部を覆う絶縁性のテープを有する超伝導導体。 - 請求項1〜3いずれか記載の超伝導導体であって、
コイルの構造体の表面に形成された溝に沿って巻回させることで前記超伝導テープ線材の幅方向への曲げも含む最終的な形状に成形された前記超伝導テープ線材および結束部材を、該形状に保持するよう、前記超伝導テープ線材をモールドするモールド部材を備える超伝導導体。 - 請求項4記載の超伝導導体であって、
前記モールド部材は、融点が150℃以下の低融点金属で金属製である超伝導導体。 - コイル用の超伝導導体の成形方法であって、
(a) 複数の超伝導テープ線材を一本一本が相互に接着することなく積層する工程と、
(b) テープ幅方向に前記超伝導テープ線材が相互にずれることを許容して、前記超伝導テープ線材を結束部材により結束する工程と、
を有するコイル用の超伝導導体の成形方法。 - 請求項6記載の成形方法であって、
さらに、
(c) 前記超伝導テープ線材および結束部材をコイルの構造体の表面に形成された溝に沿って巻回して、前記超伝導テープ線材の幅方向への曲げも含む最終的な形状を成形する工程と、
(d) 前記成形された形状を保持するよう、前記超伝導テープ線材をモールド部材によりモールドする工程とを有する超伝導導体の成形方法。
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