以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は航走制御方法の第1実施形態を示す概要図である。図2は航走制御方法の実施に用いる航走制御システムを示す概要図である。図3はマスタ機およびスレーブ機の制御装置における処理を示す図である。図4は、図3におけるマスタ・スレーブ制御処理の詳細を示す図である。
本実施形態では、複数の自律航走体の協調航走の一例として、図1に示すように、水中航走体をマスタ機1とし、水上航走体をスレーブ機2として、設定された協調航走区間としてのマスタ・スレーブ制御区間A1,A2で、マスタ機1およびスレーブ機2をマスタ・スレーブ制御により航走させる場合について説明する。
ここで、先ず、マスタ機1とスレーブ機2の航走経路について説明する。
マスタ・スレーブ制御区間A1,A2は、マスタ機1が設定された深度を航走し、そのマスタ機1の航走に追従してスレーブ機2が水面を航走する区間とされている。
本実施形態では、たとえば、図1に示すように、直線状に延びるマスタ・スレーブ制御区間A1,A2が、設定された間隔で平行に複数配列されていて、各マスタ・スレーブ制御区間A1,A2には、予め航走順序が設定されている。図1では、航走順序が1番目のマスタ・スレーブ制御区間A1と、2番目のマスタ・スレーブ制御区間A2のみが示してある。
マスタ機1とスレーブ機2は、それぞれのスタート位置s1,s2から、各マスタ・スレーブ制御区間A1,A2を、設定された航走順序に従って航走する。本実施形態では、水中航走体であるマスタ機1のスタート位置s1は、水面に設定されている。
また、マスタ機1とスレーブ機2は、航走順序が並ぶ2つのマスタ・スレーブ制御区間A1,A2について、航走順序が前のマスタ・スレーブ制御区間A1の終点A1eから、航走順序が次のマスタ・スレーブ制御区間A2の始点A2sへ向かうときには、航走方向を180度反転するように旋回する経路を航走するものとしてある。
このような航走経路でマスタ機1とスレーブ機2の航走を行わせるために、図1に示すような配置でウェイポイントが設定されている。
航走順序が1番目のマスタ・スレーブ制御区間A1については、始点A1sよりも上流側となる位置に、第1ウェイポイントWP1が設定され、マスタ・スレーブ制御区間A1の始点A1sと終点A1e、および、終点A1eよりも下流側となる位置に、それぞれ、第2と第3と第4のウェイポイントWP2,WP3,WP4が設定されている。
なお、第1ウェイポイントWP1は、マスタ・スレーブ制御区間A1の始点A1s側を直線状に延ばした位置に配置されていることが好ましい。これにより、マスタ機1およびスレーブ機2は、それぞれ第1ウェイポイントWP1からマスタ・スレーブ制御区間A1の始点A1sである第2ウェイポイントWP2に向かう航走を行ってから、マスタ・スレーブ制御区間A1へ進入するようになる。したがって、この構成によれば、マスタ・スレーブ制御区間A1に進入する時点のマスタ機1とスレーブ機2の進行方向を、マスタ・スレーブ制御区間A1の延びる方向にほぼ揃えることができる。よって、マスタ・スレーブ制御区間A1では、マスタ機1の航走に追従してスレーブ機2を航走させるマスタ・スレーブ制御を円滑に開始することができる。
また、第4ウェイポイントWP4は、マスタ・スレーブ制御区間A1の終点A1e側を直線状に延ばした位置に配置されていることが好ましい。これにより、マスタ機1およびスレーブ機2は、マスタ・スレーブ制御区間A1の終点A1eである第3ウェイポイントWP3を通過した後、直線的に第4ウェイポイントWP4へ向かう航走を行ってから、航走順序が次のマスタ・スレーブ制御区間A2に向かうようになる。したがって、この構成によれば、スレーブ機2が、マスタ・スレーブ制御区間A1の終点A1eでマスタ機1に追従する制御が解除されて、通常のウェイポイント制御に復帰するときに、スレーブ機2の進行方向の急な変化を防ぐことができる。よって、スレーブ機2の航走を安定させることができる。
航走順序が2番目のマスタ・スレーブ制御区間A2については、始点A2sよりも上流側となる位置に、第5ウェイポイントWP5が設定され、マスタ・スレーブ制御区間A2の始点A2sと終点A2e、および、終点A2eよりも下流側となる位置に、それぞれ、第6と第7と第8のウェイポイントWP6,WP7,WP8が設定されている。
なお、第5ウェイポイントWP5は、マスタ・スレーブ制御区間A2の始点A2s側を直線状に延ばした位置に配置されていることが好ましい。これにより、マスタ機1およびスレーブ機2は、それぞれ第5ウェイポイントWP5からマスタ・スレーブ制御区間A2の始点A2sである第6ウェイポイントWP6に向かう航走を行ってから、マスタ・スレーブ制御区間A2へ進行するようになる。したがって、この構成によれば、マスタ・スレーブ制御区間A2に進行する時点のマスタ機1とスレーブ機2の進行方向を、マスタ・スレーブ制御区間A2の延びる方向にほぼ揃えることができる。よって、マスタ・スレーブ制御区間A2では、マスタ機1の航走に追従してスレーブ機2を航走させるマスタ・スレーブ制御を円滑に開始することができる。
また、第8ウェイポイントWP8は、マスタ・スレーブ制御区間A2の終点A2e側を直線状に延ばした位置に配置されていることが好ましい。これにより、マスタ機1およびスレーブ機2は、マスタ・スレーブ制御区間A2の終点A2eである第7ウェイポイントWP7を通過した後、直線的に第8ウェイポイントWP8へ向かう航走を行ってから、航走順序が次のマスタ・スレーブ制御区間(図示せず)に向かうようになる。したがって、この構成によれば、スレーブ機2が、マスタ・スレーブ制御区間A2の終点A2eでマスタ機1に追従する制御が解除されて、通常のウェイポイント制御に復帰するときに、スレーブ機2の進行方向の急な変化を防ぐことができる。よって、この場合もスレーブ機2の航走を安定させることができる。
なお、図示しないが、航走順序が3番目以降の各マスタ・スレーブ制御区間についても、始点よりも上流側となる位置と、始点と、終点と、終点よりも下流側となる位置とに、それぞれ、ウェイポイントが設定されている。図1におけるWPENDは、最終ウェイポイントである。
前記第1から第8の各ウェイポイントWP1〜WP8のウェイポイントファイルは、たとえば、以下のように設定される。なお、目標座標は、たとえば、緯度と経度のような地球に固定された水平面内の直交座標系で、マスタ機1とスレーブ機2が経由すべき位置を指定している。目標深度は、水中航走体であるマスタ機1についてのみ、目標座標の位置で潜航すべき深度を指定している。
また、マスタ・スレーブ制御区間A1の終点A1eである第3ウェイポイントWP3についてのウェイポイントファイルでは、マスタ・スレーブ制御区間A1をマスタ機1が航走するときの目標速度V3が指定されている。同様に、マスタ・スレーブ制御区間A2の終点A2eである第7ウェイポイントWP7についてのウェイポイントファイルでは、マスタ・スレーブ制御区間A2をマスタ機1が航走するときの目標速度V7が指定されている。
更に、本実施形態の航走制御方法は、マスタ・スレーブ制御区間A1の始点A1sである第2ウェイポイントWP2についてのウェイポイントファイルには、マスタ機1およびスレーブ機2が第2ウェイポイントWP2に到着すべき時刻が、到着目標時刻T2として指定されている。同様に、マスタ・スレーブ制御区間A2の始点A2sである第6ウェイポイントWP6についてのウェイポイントファイルには、マスタ機1およびスレーブ機2が第6ウェイポイントWP6に到着すべき時刻が、到着目標時刻T6として指定されている。
なお、マスタ機1およびスレーブ機2が第2ウェイポイントWP2や第6ウェイポイントWP6に到着すべき時刻というのは、マスタ機1およびスレーブ機2が、各ウェイポイントWP2,WP6に到着するとともに通過する時刻、すなわち、各ウェイポイントWP2,WP6が始点A1s,A2sとなっているマスタ・スレーブ制御区間A1,A2へ進入する時刻を意味している。
航走順序が3番目以降の図示しない各マスタ・スレーブ制御区間についても、それぞれの終点に設定されるウェイポイントについてのウェイポイントファイルでは、対応するマスタ・スレーブ制御区間をマスタ機1が航走するときの目標速度が指定されている。また、各マスタ・スレーブ制御区間の始点に設定されるウェイポイントについてのウェイポイントファイルには、マスタ機1およびスレーブ機2がそのウェイポイントに到着すべき時刻が、到着目標時刻として指定されている。
次に、本実施形態の航走制御方法の実施に用いる航走制御システムについて説明する。
本実施形態における航走制御システムは、図2に示すように、マスタ機1とスレーブ機2と遠隔制御装置3とを備えた構成とされている。
水中航走体であるマスタ機1は、制御装置4を備え、制御装置4に、前記ウェイポイントファイルを記憶する記憶装置5と、慣性航法装置6と、推進および操舵装置7と、音響通信機のような水中通信機8と、水面に浮上しているときに無線通信や衛星通信に用いる通信機9が接続された構成を備えている。
更に、慣性航法装置6には、GPSのような全地球航法衛星システム10と、ドップラーベロシティログ11が接続されている。
全地球航法衛星システム10は、マスタ機1が潜航前に水面に配置されているか、あるいは水面から引き上げられて図示しない支援船などに搭載されている状態のときに、自機であるマスタ機1の位置と向きを取得するためのものである。この際、全地球航法衛星システム10で取得するマスタ機1の位置は、各ウェイポイントWP1〜WP8の目標座標と同じ座標系であることが好ましい。
したがって、慣性航法装置6では、マスタ機1が潜航する前に全地球航法衛星システム10で取得した位置と向きの情報を基に、慣性航法と、ドップラーベロシティログ11によって取得する情報とを使用することで、潜航するマスタ機1において、自機の位置と向きと姿勢とを検出することができる。
制御装置4は、慣性航法装置6より得られるマスタ機1の現在の位置と向きと姿勢の情報と、記憶装置5に記憶されているウェイポイントファイルから取得した目標点とするウェイポイントWPn(n=1、2、…)の目標座標および目標深度の情報とを基に、現在位置から目標点のウェイポイントWPnに達するための航走経路を求める機能を備えている。更に、制御装置4は、求められた航走経路に従ってマスタ機1を航走させるための指令を、推進および操舵装置7に与える機能を備えている。これにより、マスタ機1は、現在位置から目標点のウェイポイントWPnに向かう自律航走を実施することができる。
なお、図示してないが、マスタ機1には、航走経路に存在していて航走の障害となる障害物を検出する手段を備えており、この障害物検出手段で検出された障害物を回避するように航走方向や速度を適宜制御する機能も、制御装置4は備えている。
水上航走体であるスレーブ機2は、制御装置12を備え、制御装置12に、前記ウェイポイントファイルを記憶する記憶装置13と、慣性航法装置14と、推進および操舵装置15と、音響通信機のような水中通信機16と、無線通信や衛星通信に用いる通信機17が接続された構成を備えている。
更に、慣性航法装置14には、マスタ機1における全地球航法衛星システム10と同様の全地球航法衛星システム18が接続されている。この全地球航法衛星システム18では、自機であるスレーブ機2の位置と向きを取得するためのものである。
したがって、慣性航法装置14では、全地球航法衛星システム18で取得したスレーブ機2の位置と向きの情報を基に、慣性航法により、水面を航走するスレーブ機2において、自機の位置と向きとを検出することができる。
制御装置12は、慣性航法装置14より得られるスレーブ機2の現在の位置と向きの情報と、記憶装置13に記憶されているウェイポイントファイルから取得した目標点とするウェイポイントWPn(n=1、2、…)の目標座標の情報とを基に、現在位置から目標点のウェイポイントWPnに達するための航走経路を求める機能を備えている。更に、制御装置12は、求められた航走経路に従ってスレーブ機2を航走させるための指令を、推進および操舵装置15に与える機能を備えている。これにより、スレーブ機2は、現在位置から目標点のウェイポイントWPnに向かう自律航走を実施することができる。
なお、図示してないが、スレーブ機2には、航走経路に存在していて航走の障害となる障害物を検出する手段を備えており、この障害物検出手段で検出された障害物を回避するように航走方向や速度を適宜制御する機能も、制御装置12は備えている。
スレーブ機2の水中通信機16と、マスタ機1の水中通信機8は、マスタ機1が潜航している状態のときに相互通信を行うためのものである。この相互通信により、スレーブ機2の制御装置12と、マスタ機1の制御装置4との間では、コマンドやステータスなどの情報を相互に受け渡しすることができる。
遠隔制御装置3は、支援船あるいは陸上に備えられているもので、図示しないユーザーインターフェースを備えると共に、無線通信や衛星通信に用いる通信機19が接続された構成を備えている。
遠隔制御装置3の通信機19と、スレーブ機2の通信機17は、無線通信や衛星通信の電波が届く状況であれば、相互通信を常時行うことができる。また、マスタ機1の通信機9は、マスタ機1が水面に浮上している状態のときに、遠隔制御装置3の通信機19やスレーブ機2の通信機17と相互通信を行うためのものである。
したがって、この相互通信により、遠隔制御装置3では、スレーブ機2の制御装置12や、マスタ機1の制御装置4との間で、ユーザーインターフェースを介して設定されるコマンドや、スレーブ機2やマスタ機1のステータスなどの情報を、相互に受け渡しすることができる。
なお、マスタ機1が潜航しているときには、スレーブ機2の制御装置12で中継を行うことで、遠隔制御装置3とマスタ機1の制御装置4との間でのコマンドやステータスの受け渡しを行うことは可能である。
次いで、マスタ機1の制御装置4およびスレーブ機2の制御装置12で行う処理について説明する。
図3は、マスタ機1の制御装置4の処理を示すものである。
制御装置4は、たとえば、遠隔制御装置3から受けるコマンドに基づき、マスタ機1の航走を開始する(ステップSA1)。
このとき、制御装置4は、自機であるマスタ機1と、マスタ・スレーブ制御による協調航走の対象となるスレーブ機2とについて、航走開始の基準時刻を合わせる処理を行う(ステップSA2)。この基準時刻を合わせる処理は、たとえば、遠隔制御装置3から、マスタ機1の制御装置4とスレーブ機2の制御装置12の双方へ、基準時刻合わせのためのコマンドを与えることで行うようにすればよい。また、この航走開始基準時刻合わせの処理は、制御装置4と制御装置12とによる通信機9,17を介した相互通信により、制御装置4,12同士で自律的に行うようにしてもよい。
次に、制御装置4は、現在、目標点としているウェイポイントWPn、すなわち、現在位置から次に到着すべきウェイポイントWPnが、協調航走制御指定、本実施形態では、マスタ・スレーブ制御指定のウェイポイントか否かの判定を行う(ステップSA3)。
なお、マスタ・スレーブ制御指定のウェイポイントとは、前記ウェイポイントファイルにて、マスタ・スレーブ制御区間A1,A2でのマスタ・スレーブ制御を実施するための付加情報が指定されたウェイポイントである。本実施形態では、マスタ・スレーブ制御区間A1,A2をマスタ機1が航走するときの目標速度V3,V7が指定されている第3ウェイポイントWP3と、第7ウェイポイントWP7とが、マスタ・スレーブ制御指定のウェイポイントとなる。
前記ステップSA3で、現在目標点としているウェイポイントWPnが、マスタ・スレーブ制御指定のウェイポイントではないと判断されると、制御装置4は、ステップSA4に進む。
ステップSA4では、制御装置4は、ウェイポイントファイルにおいて到着目標時刻T2,T6が指定されているウェイポイントWP2,WP6のような各到着目標時刻指定ウェイポイントWPsのうち、自機であるマスタ機1が次に到達する到着目標時刻指定ウェイポイントWPsまでの経路距離を算出する。
この場合、自機の現在位置座標をP、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsの座標をPsとすると、PからPsまでのウェイポイント制御による経路距離は、各ウェイポイントWPnの座標の設定などを基に定まる関数L(Ps、P)で表すことができる。
ステップSA4にて、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsまでの経路距離L(Ps,P)が算出されると、制御装置4は、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに、マスタ機1が指定された到着目標時刻通りに到着するために必要な平均速度を算出する(ステップSA5)。
この場合、現在時刻をT、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsの到着目標時刻をTsとし、前記平均速度をVsとすると、Vsは、以下の式(1)で算出される。
Vs=L(Ps、P)÷(Ts−T) …(1)
次いで、制御装置4は、前記式(1)で算出された平均速度Vsを速度指令値として、推進および操舵装置7に指令を与えて、現在目標点としているウェイポイントWPnに向けてのマスタ機1の航走を行わせる(ステップSA6)。
この航走の際、制御装置4は、慣性航法装置6より得られるマスタ機1の現在の位置の検出結果を監視して、マスタ機1の現在の位置が、現在目標点としているウェイポイントWPnの座標を中心として設定された許容範囲に収まるようになると、マスタ機1が目標点としていたウェイポイントWPnに到着したと判断する(ステップSA7)。
このようにしてマスタ機1が目標点としていたウェイポイントWPnに到着すると、制御装置4は、到着したウェイポイントWPnが、最終ウェイポイントWPENDであるか否かの判定を行う(ステップSA8)。
このステップSA8の判定処理で、マスタ機1が到着したウェイポイントWPnは最終ウェイポイントWPENDではないと判断されると、制御装置4は、ステップSA9に進み、記憶装置5に記憶してあるウェイポイントファイルに従って、目標点とするウェイポイントWPnの更新処理(n=n+1)を行う。その後、制御装置4は、ステップSA3へ戻ってステップSA3以降の処理を行う。
制御装置4は、ステップSA3で、現在目標点としているウェイポイントWPnが、第3、第7の各ウェイポイントWP3,WP7のようなマスタ・スレーブ制御指定のウェイポイントであると判断されると、協調航走制御処理としてのマスタ・スレーブ制御処理SBを実施する。
マスタ・スレーブ制御処理SBの詳細は、図4に示す。なお、本実施形態では、水中航走体をスレーブ機として使用する場合や、水上航走体をマスタ機として使用する場合があること等を想定して、マスタ機1の制御装置4における処理と、スレーブ機2の制御装置12における処理は、共通化を図るようにしてある。
そのため、制御装置4は、ステップSB1でマスタ・スレーブ制御処理SBを開始すると、ステップSB2に進んで、自機がマスタ機1か否かの判断を行う。
制御装置4はマスタ機1に備えられているものであるため、制御装置4によるステップSB2の判断は、自機がマスタ機1であるという判断結果となる。この場合、制御装置4は、ステップSB3に進む。
ステップSB3では、制御装置4は、マスタ・スレーブ制御指定のウェイポイントについてウェイポイントファイルで指定されている目標速度を速度指令値として、推進および操舵装置7に指令を与えて、現在目標点としているマスタ・スレーブ制御指定のウェイポイントに向けてのマスタ機1の航走を行わせる。
その後、制御装置4は、前記ステップSA7へ進んで、ステップSA7以降の処理を行う。
前記ステップSA8の判定処理で、マスタ機1が到着したウェイポイントWPnが最終ウェイポイントWPENDであると判断されると、制御装置4は、マスタ機1の航走を終了する(ステップSA10)。この場合、制御装置4は、マスタ機1を、水面まで浮上させて、支援船などで回収可能な状態にするとよい。
次に、スレーブ機2の制御装置12の処理について説明する。
制御装置12は、図3に示したマスタ機1の制御装置4の処理と同様に、たとえば、遠隔制御装置3から受けるコマンドに基づき、スレーブ機2の航走を開始する(ステップSA1)。
このとき、制御装置12は、自機であるスレーブ機2と、マスタ・スレーブ制御による協調航走の対象となるマスタ機1とについて、航走開始の基準時刻を合わせる処理を行う(ステップSA2)。このステップSA2で基準時刻を合わせる処理は前記したと同様である。
次に、制御装置12は、図3におけるステップSA3〜ステップSA9の処理を行う。この場合、前述したステップSA3〜ステップSA9の説明について、マスタ機1、制御装置4、記憶装置5、慣性航法装置6、推進および操舵装置7を、それぞれスレーブ機2、制御装置12、記憶装置13、慣性航法装置14、推進および操舵装置15に置き換えるようにすればよい。
制御装置12は、ステップSA3で、現在目標点としているウェイポイントWPnが、第3、第7の各ウェイポイントWP3,WP7のようなマスタ・スレーブ制御指定のウェイポイントであると判断されると、協調航走制御処理としてのマスタ・スレーブ制御処理SBを実施する。
制御装置12によるマスタ・スレーブ制御処理SBも、図4に示すものである。
制御装置12は、ステップSB1でマスタ・スレーブ制御処理SBを開始すると、ステップSB2に進んで、自機がマスタ機か否かの判断を行う。
制御装置12はスレーブ機2に備えられているものであるため、制御装置12によるステップSB2の判断は、自機がマスタ機ではないという判断結果となる。この場合、制御装置12は、ステップSB4に進む。
ステップSB4では、制御装置12は、水中通信機16または通信機17によるマスタ機1の水中通信機8または通信機9との相互通信により、マスタ機1の現在位置の座標を取得する。
次いで、取得したマスタ機1の現在位置の情報を基に、マスタ機1に追従するために必要とされる速度指令および操舵指令を、推進および操舵装置15へ与えて、スレーブ機2のマスタ機1に追従する航走を行わせる(ステップSB5)
その後、制御装置12は、前記ステップSA7へ進んで、ステップSA7以降の処理を行う。
前記ステップSA8の判定処理で、スレーブ機2が到着したウェイポイントWPnが最終ウェイポイントWPENDであると判断されると、制御装置12は、スレーブ機2の航走を終了して(ステップSA10)、スレーブ機2を、支援船などで回収可能な状態で待機させる。
マスタ機1の制御装置4とスレーブ機2の制御装置12で図3および図4で示した処理をそれぞれ実施することにより、マスタ機1とスレーブ機2は、図1に示したスタート位置S1,S2から第1ウェイポイントWP1を経て到着目標時刻T2が指定されている第2ウェイポイントWP2に向かう経路上では、それぞれ到着目標時刻T2に第2ウェイポイントWP2に到着するように航走速度を自律的に調整しながら航走する。
よって、マスタ機1とスレーブ機2は、第2ウェイポイントWP2に到着する時刻を、共に指定された到着目標時刻T2にほぼ一致させることができる。
これにより、マスタ機1とスレーブ機2は、マスタ・スレーブ制御区間A1の始点A1sである第2ウェイポイントWP2で会合することができ、この会合した状態でマスタ・スレーブ制御区間A1へ進行することができる。したがって、マスタ機1とスレーブ機2は、マスタ・スレーブ制御区間A1におけるマスタ・スレーブ制御による航走を円滑に開始することができる。
第2ウェイポイントWP2から第3ウェイポイントWP3までのマスタ・スレーブ制御区間A1では、マスタ機1は、指定された目標速度V3での航走を行い、スレーブ機2は、マスタ機1の航走に追従する航走を行うことができる。
マスタ機1とスレーブ機2は、第3ウェイポイントWP3を通過した後、第4ウェイポイントWP4と第5ウェイポイントWP5を経て到着目標時刻T6が指定されている第6ウェイポイントWP6に向かう経路上では、それぞれ到着目標時刻T6に第6ウェイポイントWP6に到着するように航走速度を自律的に調整しながら各ウェイポイントWP4,WP5,WP6を順次目標点とする航走を行う。
よって、マスタ機1とスレーブ機2は、第6ウェイポイントWP6に到着する時刻を、共に指定された到着目標時刻T6にほぼ一致させることができる。
これにより、マスタ機1とスレーブ機2は、マスタ・スレーブ制御区間A2の始点A2sである第6ウェイポイントWP6で会合することができ、この会合した状態でマスタ・スレーブ制御区間A2へ進行することができる。したがって、マスタ機1とスレーブ機2は、マスタ・スレーブ制御区間A2におけるマスタ・スレーブ制御による航走を円滑に開始することができる。
第6ウェイポイントWP6から第7ウェイポイントWP7までのマスタ・スレーブ制御区間A2では、マスタ機1は、指定された目標速度V7での航走を行い、スレーブ機2は、マスタ機1の航走に追従する航走を行うことができる。
マスタ機1とスレーブ機2は、第7ウェイポイントWP7を通過した後は、前記と同様に、マスタ・スレーブ制御区間を除いて、次に到着目標時刻が指定されているウェイポイントに向かう経路上では、その到着目標時刻指定のウェイポイントに到着目標時刻通りに到着するように航走速度を自律的に調整する航走を行うようになる。
マスタ機1とスレーブ機2は、最終ウェイポイントWPENDに到着すると、それぞれ航走を終了し、水面で待機するようになる。
このように、本実施形態の航走制御方法によれば、マスタ・スレーブ制御区間A1,A2と、その後の各マスタ・スレーブ制御区間でマスタ・スレーブ制御による協調航走を行わせるマスタ機1とスレーブ機2を、それぞれの各マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)の始点(A1s,A2s,…)に、ほぼ同時に到着させて、各マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)へ進入させることができる。これにより、それぞれのマスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)では、マスタ機1とスレーブ機2のマスタ・スレーブ制御による航走を円滑に開始することができる。
なお、本実施形態では、マスタ・スレーブ制御処理SBを、図4に示したように、マスタ機1の制御装置4と、スレーブ機2の制御装置12で処理を共通化できるものとして説明した。
しかし、マスタ機1の制御装置4では、マスタ機1専用のマスタ・スレーブ制御を行い、スレーブ機2の制御装置12では、スレーブ機2専用のマスタ・スレーブ制御を行うようにしてもよい。
この場合、マスタ機1専用のマスタ・スレーブ制御としては、図4におけるステップSB1でマスタ・スレーブ制御を開始した後は、ステップSB2の判断を省略して、ステップSB3の処理のみを行うようにすればよい。
一方、スレーブ機2専用のマスタ・スレーブ制御としては、図4におけるステップSB1でマスタ・スレーブ制御を開始した後は、ステップSB2の判断を省略して、ステップSB4とステップSB5の処理のみを行うようにすればよい。
このようにしても、マスタ機1とスレーブ機2は、マスタ・スレーブ制御区間において前記したと同様のマスタ・スレーブ制御による航走を実施することができる。
[第1実施形態の応用例]
第1実施形態の航走制御方法では、ウェイポイント制御による経路距離の算出基準となる各ウェイポイントWPnの座標の設定と、第2ウェイポイントWP2の到着目標時刻T2や、第6ウェイポイントWP6の到着目標時刻T6のような各到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに指定される到着目標時刻Tsは、通常、マスタ機1とスレーブ機2の最高巡航速度で航走可能な範囲内で設定される。
ところが、マスタ機1の航走経路に予期しない障害物が浮遊していたり、スレーブ機2の航走経路に予期しない障害物(航走の障害となる地形も含む)が存在していたりする場合は、マスタ機1やスレーブ機2は、それぞれ障害物を回避する航走を行う。
このような障害物の回避などの理由により、マスタ機1やスレーブ機2は、現在位置で目標点としているウェイポイント以降の各ウェイポイントWPnのうち、次に到着する到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに、指定された到着目標時刻Tsまでに到着できない場合が生じる可能性がある。
そこで、この場合の対策として、マスタ機1の制御装置4と、スレーブ機2の制御装置12では、図3に示した処理におけるステップSA4とステップSA5との間に、到着目標時刻補正処理SCを行うようにすることが好ましい。
図5は、制御装置4と制御装置12で実施する到着目標時刻補正処理SCの詳細を示す図である。
到着目標時刻補正処理SCは、前記ステップSA4で、マスタ機1の制御装置4と、スレーブ機2の制御装置12が、それぞれ自機の現在位置から次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsまでの経路距離L(Ps,P)を算出した段階で、ステップSC1の処理を開始する。
ステップSC1では、制御装置4と制御装置12は、水中通信機8,16または通信機9,17を介した相互通信を行い、相互の協調航走対象であるマスタ機1とスレーブ機2の現在位置の情報を取得する。
次に、制御装置4と制御装置12は、自機と協調航走対象について、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに指定された到着目標時刻Tsまでに到着できるか、という到着可能性の確認を行う(ステップSC2)。
この場合、自機の最高巡航速度をVmaxとすると、自機の現在位置座標P、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsの座標Ps、PからPsまでの経路距離L(Ps、P)、現在時刻T、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsの到着目標時刻Tsとを基に、以下の式(2)が成立することが、到着目標時刻Tsまでに次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに自機が到着することが可能という確認の基準となる。
Ts−T≧L(Ps、P)÷Vmax …(2)
一方、制御装置4と制御装置12では、前記式(2)が成立しない場合、自機が次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに到着目標時刻Tsまでに到着することは不可能であるということが分かる。
次いで、制御装置4と制御装置12は、自機と協調航走対象の双方で前記式(2)が成立するかという判断基準に基づいて、自機と協調航走対象が共に到着目標時刻Tsまでに次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに到着可能か否かを判断する(ステップSC3)。
前記ステップSC3で自機と協調航走対象が共に到着目標時刻Tsまでに次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに到着可能であると判断される場合は、制御装置4と制御装置12は、ステップSC4へ進む。
ステップSC4では、制御装置4と制御装置12は、水中通信機8,16または通信機9,17を介した相互通信により、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsの到着目標時刻Tsはウェイポイントファイルで指定されている現在の到着目標時刻Tsのままとすることについて相互に確認し、その後、図3におけるステップSA5に進んで、前述したステップSA5以降の処理を行う。
一方、前記ステップSC3で自機と協調航走対象の少なくとも一方が、到着目標時刻Tsまでに次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに到着することは不可能であると判断される場合は、制御装置4と制御装置12は、ステップSC5へ進む。
ステップSC5では、制御装置4と制御装置12は、自機と協調航走対象のうち、到着目標時刻Tsまでに次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに到着することは不可能であると判断されたものについて、時刻補正量ΔTを、以下の式(3)で算出する。
L(Ps、P)÷Vmax−(Ts−T)=ΔT …(3)
この時刻補正量ΔTは、前記のように到着目標時刻Tsまでに次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに到着することは不可能であると判断されたものが、現在位置から最高巡航速度Vmaxで航走して次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに到着するときの到着目標時刻Tsからの遅れ量である。
したがって、この時刻補正量ΔTの分、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに指定されている到着目標時刻Tsを後ろにずらせば、自機や協調航走対象が到着することが可能になる。
そこで、制御装置4と制御装置12は、ステップSC6にて、相互通信により、次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPs以降の各到着目標時刻指定ウェイポイントWPsについて、指定されている到着目標時刻Tsを、それぞれΔTずつ遅らせた時刻に更新する処理を共に行う(Ts=Ts+ΔT)。
なお、ステップSC5で自機と協調航走対象の双方について時刻補正量ΔTが算出される場合は、より大きな値の時刻補正量ΔTを採用すればよい。
制御装置4と制御装置12は、ステップSC6の後は図3におけるステップSA5に進んで、前述したステップSA5以降の処理を行う。
本応用例によれば、制御装置4と制御装置12は、マスタ機1とスレーブ機2の少なくとも一方が次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに指定されている到着目標時刻Tsまでに到着することが不可能であると判断された時点で、相互通信を行って、到着目標時刻Tsについて時刻補正量ΔTで遅らせる処理を行うことができる。
したがって、本応用例によれば、マスタ機1やスレーブ機2の片方に障害物回避を行うなど、何らかの理由で遅れが生じる場合であっても、次のマスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)の始点(A1s,A2s,…)である到着目標時刻Tsが指定されたウェイポイントWPsまでに、更新された到着目標時刻Ts通りに到着するように、マスタ機1とスレーブ機2の航走速度を自律的に調整する航走を行うことができる。
これにより、本応用例によっても、第1実施形態と同様に、マスタ・スレーブ制御区間でマスタ・スレーブ制御による協調航走を行わせるマスタ機1とスレーブ機2を、それぞれの各マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)の始点(A1s,A2s,…)にほぼ同時に到着させて、各マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)へ進入させることができる。このため、それぞれのマスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,・・・)では、マスタ機1とスレーブ機2のマスタ・スレーブ制御による航走を円滑に開始することができる。
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態として、航走制御方法の実施に用いる航走制御システムの別の例を示す図である。
なお、図6において、第1実施形態と同一のものには同一符号を付してその説明を省略する。
本実施形態の航走制御システムは、第1実施形態における航走制御システムと同様の構成において、マスタ機1とスレーブ機2に相互通信を行う水中通信機8,16を備えた構成に代えて、スレーブ機2は制御装置に接続された音響測位装置20を備え、この音響測位装置20に応答するトランスポンダ21をマスタ機1に備えた構成としたものである。
この構成では、スレーブ機2の制御装置4では、音響測位装置20から、トランスポンダ21を備えたマスタ機1の現在位置の測位結果を得ることができる。
本実施形態では、マスタ機1の制御装置4は、ウェイポイントファイルで指定されている各ウェイポイントWPnの目標座標および目標深度、マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)の始点(A1s,A2s…)となる到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに指定されている到着目標時刻Ts、マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)に指定されている目標速度を基に、図3および図4に示した処理を行って、マスタ機1の航走を行うようにすればよい。
一方、スレーブ機2の制御装置12は、基本的には、図3および図4に示した処理を行って、スレーブ機2の航走を行うようにすればよい。また、制御装置12は、マスタ機1の現在位置の検出結果から、マスタ機1が次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに指定されている到着目標時刻Tsまでに到着することが不可能であると判断される場合は、図5に示したと同様の到着目標時刻補正処理SCを行うようにすればよい。
なお、本実施形態では、マスタ機1とスレーブ機2は、マスタ機1が潜航中に相互通信を行うための水中通信機は備えておらず、また、マスタ機1側でスレーブ機2の現在位置を検出する手段は備えていない。
したがって、本実施形態では、制御装置12は、前記したマスタ機1が次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに到着するために必要な時刻補正量ΔTを算出し、この時刻補正量ΔTで次の到着目標時刻指定ウェイポイントWPsに指定されている到着目標時刻Tsの補正を行うようにすればよい。
これにより、マスタ機1に、障害物回避を行うなどの理由で遅れが生じる場合であっても、次のマスタ・スレーブ制御区間の始点である到着目標時刻Tsが指定されたウェイポイントWPsに、マスタ機1が当初の到着目標時刻Tsより遅れて到着するときとほぼ同時にスレーブ機2も到着するように、スレーブ機2の航走速度を自律的に調整する航走を行うことができる。
したがって、本実施形態によっても、第1実施形態の応用例と同様の効果を得ることができる。
なお、本実施形態では、スレーブ機2が障害物回避を行うような場合に、スレーブ機2の遅れに合わせてマスタ機1側で航走速度を自律的に調整することはできない。しかし、一般に、水中航走体をマスタ機1とする場合、マスタ機1の最高巡航速度Vmaxは数ノット程度であることが多いため、水上航走体であるスレーブ機2がマスタ機1の最高巡航速度Vmaxを上回る航走速度で航走できるようにしておけば、障害物回避などによるスレーブ機2の遅れは、スレーブ機2の航走速度を上げることで挽回することが可能になる。
なお、本発明は、前記各実施形態にのみ限定されるものではなく、図3のステップSA2にて行うマスタ機1とスレーブ機2の航走開始の基準時刻合わせは、共に水面に位置している状態で行わなくてもよい。たとえば、水中航走体であるマスタ機1が潜航を開始して、マスタ機1の通信機9とスレーブ機2の通信機17とによる無線通信が途絶した時点で、マスタ機1の制御装置4とスレーブ機2の制御装置12で予め設定された基準時刻に合わせる処理を行うようにしてもよい。また、マスタ機1とスレーブ機2の航走開始の基準時刻合わせを行うことができれば、前記した以外の任意の手法で基準時刻合わせを行うようにしてもよいことは勿論である。
各マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)の始点(A1s,A2s,…)よりも上流側には、各マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)の始点(A1s,A2s,…)側を直線状に延ばした位置に配置されたウェイポイントを備えることが好ましいが、このウェイポイントは省略してもよい。
各マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)は、始点と終点のみにウェイポイントが設定された直線状に延びる区間として示したが、スレーブ機2がマスタ機1に追従して航走できるようなレイアウトであれば、途中に単数あるいは複数のウェイポイントが設定された屈曲した区間であってもよい。
マスタ機1が水中航走体、スレーブ機2が水上航走体の場合の例を示したが、水上航走体がマスタ機1、水中航走体がスレーブ機2であってもよい。
更に、マスタ機1とスレーブ機2は、共に水中航走体であってもよい。この場合は、それぞれウェイポイントファイルで指定するウェイポイントの目標座標や目標深度を、適宜間隔を隔てた配置で設定するようにすればよい。
同様に、マスタ機1とスレーブ機2は、共に水上航走体であってもよい。この場合は、それぞれウェイポイントファイルで指定するウェイポイントの目標座標を、適宜間隔を隔てた配置で設定するようにすればよい。
マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)でマスタ機1にスレーブ機2を追従して航走させることができれば、マスタ・スレーブ制御の手法は、非特許文献1に示されている手法や、その他、従来実施あるいは提案されている任意の手法を採用してよい。
マスタ・スレーブ制御区間は、マスタ・スレーブ制御区間A1とマスタ・スレーブ制御区間A2の2つであってもよい。
マスタ・スレーブ制御区間(A1,A2,…)でマスタ機1に追従して航走するスレーブ機2は複数であってもよい。
図1に示したマスタ機1とスレーブ機2の形状や相対的な寸法は、図示するための便宜上のものであり、各機の実際の形状や相対的な寸法を反映したものではない。
本発明の航走制御方法および航走制御システムは、複数の自律航走体を、設定された協調航走区間で、マスタ・スレーブ制御以外の手法により並列航走させる場合や、所望のフォーメーションの編隊を組んで航走させる場合のような協調航走を実施するときにも、適用してよい。
この場合は、複数の自律航走体を設定された協調航走手法で協調航走させる協調航走区間について、該協調航走区間の始点の座標を設定し、前記協調航走区間で前記協調航走手法で協調航走させる複数の自律航走体に、前記協調航走区間の始点の座標と、該始点の座標に到着すべき共通の到着目標時刻とをウェイポイントファイルで設定し、前記複数の自律航走体は、それぞれの制御装置により、前記ウェイポイントファイルで与えられた前記協調航走区間の始点に前記到着目標時刻に到着するように航走を制御する航走制御方法および航走制御システムとすればよい。これにより、前記協調航走区間で協調航走させる前記複数の自律航走体を、前記協調航走区間の始点にほぼ同時に到着させて該協調航走区間へ進入させることができる。よって、前記協調航走区間では、前記複数の自律航走体による協調航走を円滑に開始することができる。
また、前記複数の自律航走体のうちのいずれかが前記協調航走区間の始点に設定された到着目標時刻通りに到着することができないときには、前記複数の自律航走体の制御装置同士が、通信を介して、前記協調航走区間の始点に設定された到着目標時刻に最も遅れて到着する自律航走体の遅れ量の分、遅らせた時刻に前記到着目標時刻を更新する処理を行う方法とすることがより好ましい。これにより、前記複数の自律航走体のうちのいずれかに協調航走区間の始点への到着目標時刻に遅れが生じた場合であっても、前記複数の自律航走体は、前記協調航走区間の始点にほぼ同時に到着させて前記協調航走区間へ進入させることができる。
更に、前記複数の自律航走体に、前記協調航走区間の始点の座標と、該始点よりも上流側となる位置の座標とをウェイポイントで設定して、前記複数の自律航走体を、前記協調航走区間の始点よりも上流側となる位置に設定されたウェイポイントを経て前記協調航走区間の始点に設定されたウェイポイントへ向かう航走を行わせるようにしてもよい。これにより、前記協調航走区間へ進入するときの前記複数の自律航走体の進行方向を、ほぼ同様にすることができる。よって、前記協調航走区間では、前記複数の自律航走体による協調航走をより円滑に開始することができる。
マスタ機1やスレーブ機2、あるいは、前記複数の自律航走体が自律航走を行うために自機の位置を検出する手段は、全地球航法衛星システムやドップラーベロシティログのみに限定されるものではなく、任意の形式の自己位置検出手段を採用してよい。
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。