以下、添付図面を参照して、本願の開示する排水弁装置、洗浄水タンク装置および水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1は、実施形態に係る排水弁装置30の概要説明図である。なお、図1では、後述する洗浄水タンク11の内部において、同じく後述する係合部50bによる「係合」状態を図中左方に示し、係合部50bによる「係合解除」状態を図中右方に示している。
図1に示すように、排水弁装置30は、弁体40と、引上部50とを備える。弁体40は、便器を洗浄する洗浄水を貯水するタンク(洗浄水タンク)11の底面に配置される排水口15を塞ぐ。引上部50は、排水口15を開放するために弁体40を引き上げる。
ここで、従来の排水弁装置は、たとえば、操作レバーに対する操作時間が長引いた場合、排水口15を開放する時間が長くなるため、操作時間が短い場合に比べて便器へ供給される洗浄水の量が多めであった。とくに、節水化の流れで普及してきている3.8L洗浄の便器の場合、0.5秒という短い時間で操作しなければ、3.8L洗浄の節水効果を十分に発揮することが難しい。
そこで、実施形態に係る排水弁装置30では、引上部50に、排水口15を閉塞している弁体40に対して第1の高さH1で係合し、第1の高さH1よりも高い第2の高さH2で弁体40との係合を解除する係合部50bを設けることとした。すなわち、引上部50によって引き上げられた弁体40は、第2の高さH2で引上部50と分離するので、操作レバーの操作とは無関係となる。
したがって、実施形態に係る排水弁装置30によれば、操作レバーに対する操作時間の長短に左右されずに弁体40を上下動させることができる。これにより、排水口15を開放する時間を一定にすることができ、操作時間に関わらず節水化を図ることができる。
なお、図1では、引上部50における係合部50bを図中の左右向きにずらすように図示しているが、係合および係合解除の説明をわかりやすくするための便宜的な記載であり、必ずしもずらす必要はない。また、係合部50bなどの「係合」という表現は、両者が引っ掛かり合う場合のみならず、磁石のように両者が引き付け合う場合も含むものとする。
<第1の実施形態>
以下では、図2〜図12を参照して第1の実施形態に係る排水弁装置30、洗浄水タンク装置10および水洗大便器1について詳細に説明する。まず、図2を参照して第1の実施形態に係る水洗大便器1の全体構成について説明する。図2は、第1の実施形態に係る水洗大便器1の概略的な斜視図である。
また、図2には、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きを正方向とするZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。なお、以下では、Y軸の正方向を正面視の方向と規定し、さらに、X軸の正方向を右側面視の方向、X軸の負方向を左側面視の方向、Z軸の負方向を平面(上面)視の方向と規定する。
図2に示すように、第1の実施形態に係る水洗大便器1は、トイレ室の床面に設置される便器本体2と、便器本体2の上部に設置され、便器本体2に使用される洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置10とを備える。なお、便器本体2は、床置き式に限らず、壁掛け式であってもよい。
便器本体2は、汚物を受けるボウル部3と、洗浄水タンク装置10から供給される洗浄水をボウル部3へ導く導水路(図示せず)と、ボウル部3の下部に入口が接続され、ボウル部3内の汚物を後述する排水管5へ排出する排水トラップ管路(図示せず)とを備える。なお、便器本体2は、たとえば、陶器製である。
ボウル部3は、上縁部において内側にオーバーハングしたリム部4と、リム部4に設けられ、導水路から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口(図示せず)と、溜水面の上方位置に設けられ、導水路を流れる洗浄水を吐水する第2吐水口(図示せず)とを備える。
排水トラップ管路は、管路入口から上方へ延びる上昇路部分と、上昇路部分の末端から下方に延びて、トイレ室の床下などに配管された排水管5に接続される下降路部分とを備える。ボウル部3から排水トラップ管路の上昇路部分にかけては、水封状態を形成するための洗浄水が貯水される。なお、貯水された洗浄水を「溜水」といい、溜水の水面が上記した溜水面である。
水洗大便器1は、サイホン作用を利用してボウル部3内の汚物を引き込んで排水トラップ管路から排出する、いわゆるサイホン式である。また、水洗大便器1では、第1吐水口から吐水された洗浄水が旋回しながら下降してボウル部3を洗浄する。また、水洗大便器1では、第2吐水口から吐水された洗浄水が水流を発生させる。
なお、上記した水洗大便器1は、サイホン式に限定されず、たとえば、ボウル部3内の洗浄水の落差による流水作用で汚物を押し流す、いわゆる洗い落し式であってもよいし、その他のタイプの水洗大便器であってもよい。
次に、図3を参照して第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置10について説明する。図3は、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置10の内部を示す概略的な正面断面図である。なお、図3では、洗浄水タンク装置10の後述する洗浄水タンク11のみをX−Z断面で示している。
図3に示すように、第1の実施形態に係る洗浄水タンク装置10は、洗浄水を貯水する洗浄水タンク11(以下、単に「タンク」という)と、タンク11内に設けられる給水装置20と、排水弁装置30と、操作部12と、操作部12の操作に連動するワイヤ巻取装置70とを備える。
タンク11は、たとえば、陶器製であり、上部が開口した略矩形の容器である。また、タンク11の上部開口は、陶器製の蓋11aによって閉塞される。
タンク11の外側面には、操作部12としての操作レバーハンドル(以下、単に「操作レバー」という)が設けられる。操作レバー12は、回動軸12aまわりに、たとえば、図中の手前から奥側へと回動する。また、操作レバー12は、回動軸12aを介して、タンク11の内側面に設けられた後述するワイヤ巻取装置70に連動可能に連結される。
ワイヤ巻取装置70と排水弁装置30との間には、取り回し形状を任意に変更可能なチューブ13(同図では略S字状)が設けられる。また、チューブ13には、操作レバー12の操作によって進退する操作ワイヤ14が挿通される。操作ワイヤ14は、一端側がワイヤ巻取装置70に取り付けられ、他端側が排水弁装置30の後述する引上部50(図4参照)に接続される。なお、ワイヤ巻取装置70については、図9を用いて後述する。
また、タンク11の底面には、上記した便器本体2(図2参照)の導水路へ連通し、洗浄水を導水路へと供給する排水口15が設けられる。排水口15は、排水弁装置30の弁体40によって開閉される。
また、図3に示すように、タンク11内には、給水装置20が設けられる。給水装置20は、給水管21と、小タンク22と、給水用フロート23とを備える。給水管21は、タンク11外の給水源(図示せず)に接続されるとともに、タンク11の底面から上方へと延伸する。さらに、給水管21の下部には、タンク11内へと洗浄水を供給する給水口21aが設けられる。
また、給水管21の上部には、給水弁(図示せず)が設けられる。給水弁は、たとえば、ダイアフラム式であり、給水管21から供給される洗浄水のタンク11内への給水と止水とを切り替える。
小タンク22は、略矩形の容器であり、給水管21の側方に着脱自在に設けられる。小タンク22には、底面に設けられた開口(図示せず)を開閉する逆止弁(図示せず)が設けられる。給水用フロート23は、小タンク22内に配置され、小タンク22内の水位に応じて上下動する。
給水用フロート23は、揺動体などを介して上記した給水弁に接続され、上下動によって給水弁を開閉する。具体的には、給水用フロート23は、小タンク22に貯水された洗浄水が開口(図示せず)から排水されることで、小タンク22内の水位に連動して下降する。そして、給水弁は、給水用フロート23が下降することで開放され、給水口21aからタンク11内へと洗浄水を供給する。
次に、第1の実施形態に係る排水弁装置30について説明する。第1の実施形態に係る排水弁装置30は、排水口15の上方に配置され、弁体40の後述する蓋部41が上下動することで、排水口15を開閉するいわゆる直動式である。図3に示すように、排水弁装置30は、本体31と、台座32と、オーバーフロー管33とを備える。
本体31および台座32は、上下に並んで設けられ、排水口15の略直上に配置される。台座32は、所定間隔をあけて、排水口15の中心に対して同心円状に並んだ複数の柱部32aを備える。また、台座32は、最下部に設けられた円筒状の接続部32bが排水口15と螺合することで、排水口15に取り付けられる。さらに、台座32の下部には、排水口15へ連通する排水空間が形成される。
オーバーフロー管33は、上端開口が上方を向いた円筒状に形成され、台座32の側方において台座32と一体的に設けられる。また、オーバーフロー管33の下端開口は、上端開口とは略直交する向きに開口し、排水空間へと連通する。かかるオーバーフロー管33は、タンク11から洗浄水が溢水することを防ぐために設けられ、オーバーフロー管33の上端開口の高さを超えてオーバーフロー管33内へ流入した洗浄水を排水口15へ排水する。
以下、図4〜図11を参照して排水弁装置30を詳細に説明する。図4は、第1の実施形態に係る排水弁装置30の概略的な平面図である。図5は、第1の実施形態に係る排水弁装置30の概略的な正面断面図である。なお、詳細には、図5は、図4におけるI−I線断面図である。図6は、直動部50aの概略的な斜視図である。図7は、係合部50bの概略的な斜視図である。図8は、直動部50aおよび係合部50bの組み立て状態の正面端面図である。
図4に示すように、第1の実施形態に係る排水弁装置30において、本体31は、円筒状に形成され、同じく円筒状に形成された台座32の上方に略同軸で設けられる。また、本体31の上面には、排水弁装置30とワイヤ巻取装置70との間を接続するチューブ13が取り付けられる。
また、図5に示すように、排水弁装置30は、本体31に、弁体40と、引上部50と、フロート65とを備える。弁体40は、蓋部41と、軸部42とを備える。蓋部41は、円板状に形成され、排水口15と対向する面に、たとえば、ゴム製のシール部41aを有する。また、蓋部41は、台座32の内部において所定の可動範囲で上下動可能に設けられ、可動範囲の最下位置において排水口15を閉塞する。
軸部42は、蓋部41よりも小径に形成されるとともに、略矩形軸状に形成され、蓋部41から上方へ延伸する。なお、軸部42は、本体31の内部を上下動可能に設けられ、軸部42が上下動することで、蓋部41が台座32の内部で上下動する。軸部42の周面には、引上部50およびフロート65へ向けて、それぞれ突起(引上部側突起43、フロート側突起44)が設けられる。
このうち、引上部側突起43は、軸部42から遠いほど、すなわち、X軸の正方向へ向かうほど低い下り傾斜の摺動面を有する。かかる摺動面のY軸方向についての幅は、引上部50との接触を避けるため、後述する引上部50における一対の腕部53,53(図6参照)間の距離よりも小さい。また、フロート側突起44は、引上部側突起43とは反対側の面に設けられ、軸部42から遠いほど、すなわち、X軸の負方向へ向かうほど低い下り傾斜の摺動面を有する。
引上部50は、本体31の内部における一側部に設けられ、ワイヤ巻取装置70(図3参照)から伸びた操作ワイヤ14に接続され、操作ワイヤ14の進退によって上下動する。引上部50は、直動部50aと、係合部50bとを備える。直動部50aは、上下方向に直動自在に設けられる。また、引上部50は、上面視(Z軸の負方向視)において、弁体40の軸部42と並設される。また、係合部50bは、引上部50が引き上げられると、軸部42の引上部側突起43と係合する。
かかる構成によれば、弁体40の軸部42と並べて引上部50を配置することで、たとえば、引上部50を付勢する、後述する付勢部60Aのような引上部50に作用する付加的な機構を容易に配置することができる。
係合部50bは、直動部50aによって水平向き、すなわち、Y軸向きの回転軸54(図6参照)まわりに回動自在に支持される。なお、引上部50(直動部50aおよび係合部50b)の詳細な形状については、図6〜図8を用いて後述する。
また、排水弁装置30は、引上部50を下方へ向けて付勢する付勢部60Aを備える。第1の実施形態においては、付勢部60Aとしてバネを採用している。かかる付勢部60Aによって、引上部50の下降時に摺動抵抗などが生じても、引上部50を確実に下降させることができる。
また、本体31の内部において、弁体40(軸部42)を挟んで引上部50と対向する他側部には、フロート65が設けられる。フロート65は、フロート本体66と、フロート調節部67と、フロート側係合部68とを備える。フロート本体66は、たとえば、中空の円筒状に形成される。フロート調節部67は、上下に延伸し、フロート本体66が取り付けられる。フロート調節部67の周面には、フロート本体66の取り付け位置を上下に調節するための調節用溝67aが設けられる。
フロート本体66は、タンク11(図3参照)内の水位が低下して所定高さに達すると、以降の水位の低下に連動して下降する。フロート本体66は、フロート調節部67への取り付け位置に応じて下降するタイミングを変更することができる。このように、フロート本体66が下降するタイミングを可変とすることで、排水口15(図3参照)から排出する洗浄水の量を変更することができる。
また、フロート調節部67の下端部には、弁体40と係合するフロート側係合部68が取り付けられる取付部67bが設けられる。また、フロート側係合部68は、水平向き、すなわち、Y軸向きの揺動軸68aによって揺動可能に設けられる。これにより、フロート本体66およびフロート調節部67は、フロート側係合部68の揺動に連動し、所定の揺動範囲において上下に揺動する。
フロート側係合部68は、上記した揺動軸68aと、環状部68bと、押上部68cとを備える。環状部68bは、フロート調節部67の取付部67bに取り付けられる。押上部68cは、略矩形ブロック状であり、フロート側係合部68の設置状態において軸部42と対向する面に凹部が形成される。
また、押上部68cは、上方へ突出して設けられる。かかる押上部68cでは、フロート側係合部68が揺動軸68aを中心に揺動して軸部42側となる一端側が上がるとフロート側突起44を上記した凹部によってY軸方向に通過させる。また、フロート調節部67側となる他端側が上がると、一端側が下がり、押上部68cの上端部がフロート側突起44に当接する。これにより、フロート65と軸部42とが係合し、軸部42の下降に浮力を付与することができる。
また、本体31は、上面側から下方へ突出し、軸部42から遠いほど、すなわち、X軸の正方向へ向かうほど低い下り傾斜の上側ガイド61を内部に備える。上側ガイド61は、下方を向いた面であり、弁体40を引き上げるために上昇してきた係合部50bと当接する。
さらに、本体31は、底面側から上方へ突出し、軸部42から遠いほど、すなわち、X軸の正方向へ向かうほど低い下り傾斜の下側ガイド62を内部に備える。下側ガイド62は、上方を向いた面であり、下降してきた係合部50bと当接する。
ここで、図6〜図8を参照して引上部50(直動部50aおよび係合部50b)について詳細に説明する。図6に示すように、直動部50aは、胴部51と、一対のガイド部52,52と、一対の腕部53,53と、一対の回転軸54,54と、一対の回動規制部55,55とを備える。胴部51は、一部が切り欠かれた円筒状に形成され、付勢部60Aとしてのバネ(図5参照)が取り付けられる。
また、胴部51の底面には、操作ワイヤ14の接続用として、操作ワイヤ14が挿通される挿通穴51aが設けられる。一対のガイド部52,52は、上下(Z軸方向)に延伸する略矩形ブロック状に形成され、胴部51の外周面にそれぞれ設けられる。
一対の腕部53,53は、胴部51からX軸の負方向側へ突出してそれぞれ設けられる。回転軸54は、一対の腕部53,53の先端部にY軸と平行に設けられる。回動規制部55は、一対の回転軸54,54からX軸の負方向へ突出して設けられる。
また、図7に示すように、係合部50bは、基部56と、爪部58とを備える。基部56は、回転軸視(Y軸方向視)において棒状に形成される。また、基部56は、X軸方向視の両端部の上方に、一対の当接部57,57と、一対の把持部59,59とを備える。一対の当接部57,57は、それぞれ中心軸がY軸方向を向いた円柱状に形成される。
一対の把持部59,59は、基部56と爪部58との間にそれぞれ設けられ、回転軸視において開放部を有する形状に形成される。なお、図示の例では、把持部59は、略C字形に形成される。また、爪部58は、係合部50bの一端部を形成し、X軸の負方向へ向けて湾曲した鉤状に形成される。なお、上記した基部56は、係合部50bの他端部を形成する。
図8に示すように、引上部50は、直動部50aの回転軸54を係合部50bの把持部59に挿通させることで、直動部50aに係合部50bが回転可能に支持される。また、係合部50bは、把持部59の開放縁部が直動部50aの回動規制部55に規制されることで、所定範囲で回動可能となる。直動部50aに支持された係合部50bは、爪部58が回転軸54よりも下方であって軸部42における突起43の先端よりも軸部42に近い姿勢(以下、「基準姿勢」という)をとる位置に重心がある。
このように、係合部50bが、直動部50aに支持された状態で、爪部58が上記した基準姿勢をとる位置に重心があることで、係合部50bを弁体40の軸部42に確実に係合させることができる。
次に、図9を参照してワイヤ巻取装置70について説明する。図9は、ワイヤ巻取装置70の概略的な斜視図である。上記したように、ワイヤ巻取装置70は、操作ワイヤ14を進退させる。図9に示すように、ワイヤ巻取装置70は、タンク11(図3参照)の外側面に取り付けられた操作レバー12に連結され、操作レバー12を所定の洗浄モード(たとえば、大洗浄)を実行させる方向に回動操作することで、操作レバー12と連動して作動する。
ワイヤ巻取装置70は、ケース71と、第1歯車72と、第2歯車73と、揺動部74と、規制部75とを備える。ケース71は、タンク11の内側面に配置される。第1歯車72は、ケース71内に設けられ、操作レバー12の回転軸と同軸の回転軸72aまわりに回転可能に設けられる。第2歯車73は、回転軸73aまわりに回転可能に設けられるとともに、第1歯車72と噛合可能に設けられる。
また、第2歯車73の外側には、第2歯車73と同心円状であり、かつ、円弧状の揺動部74が設けられる。揺動部74は、ケース71の内周面に沿って所定範囲を揺動可能に設けられる。また、揺動部74には、操作ワイヤ14の基端側が取り付けられる。なお、操作ワイヤ14は、揺動部74の揺動によってチューブ13内を図中の矢線方向に進退する。また、規制部75は、操作ワイヤ14の基端側に設けられ、操作ワイヤ14の進退を規制する。
次に、図10〜図12を参照して第1の実施形態に係る排水弁装置30の動作について説明する。図10および図11は、第1の実施形態に係る排水弁装置30の動作説明図である。なお、図10および図11は、一連の排水動作を説明するための図である。このため、図10において最後の動作を示す右側の図と、図11において最初の動作を示す左側の図とは同一であるので、図10で説明することとし、図11における説明は省略する。
また、図10および図11では、弁体40(蓋部41)が上昇すると排水口15(図3参照)から排水されるため、図中に示しているタンク11内の洗浄水は徐々に減少する。すなわち、図中の水位WLが徐々に低くなる。
図10(左側)に示すように、操作レバー12の操作前の状態では、排水弁装置30は、弁体40の蓋部41によって排水口15(図3参照)を閉塞している。この状態では、引上部50が上記した基準高さにあって、係合部50bが上記した基準姿勢をとっている。なお、弁体40の軸部42とフロート65との係合は解除されている。
次いで、図10(中央)に示すように、操作レバー12が操作されると、すなわち、操作レバー12が図中の矢線方向に回動されると、操作ワイヤ14が図中の矢線方向へ後退(上昇)し、引上部50(直動部50aおよび係合部50b)が上昇する。なお、引上部50は、付勢部60Aの下向きの付勢力に抗しながら上昇する。
引上部50が上昇すると、第1の高さH1で係合部50bの爪部58が軸部42の突起(引上部側突起)43と係合する。そして、引上部50がさらに上昇を続けることで、係合部50bが弁体40の軸部42を引き上げる。これに伴い、蓋部41が上昇して、排水口15を開放する。これにより、タンク11内の洗浄水が排水口15から排水される。
すなわち、弁体40は、第1の高さH1で上昇を開始する。ここで、具体的に、第1の高さH1は、爪部58が引上部側突起43に係合するとともに、引上部50の引き上げによって弁体40が上昇を開始する高さである。
次いで、図10(右側)に示すように、引上部50が所定高さまで上昇すると、係合部50bの当接部57が上側ガイド61に当接する。引上部50がさらに上昇して第2の高さH2で、当接部57は、上側ガイド61の摺動面の傾斜に沿って弁体40の軸部42側へ移動する。当接部57が軸部42側へ移動すると、回転軸54を中心に爪部58が軸部42から遠ざかる向きへ回動する。これにより、引上部50と弁体40との係合が解除され、弁体40はフリーとなり、弁体40は自重で下降を開始する。
また、引上部50と弁体40との係合が解除されることで、弁体40が操作レバー12による操作に依存しなくなり、操作レバー12を回動操作したままの状態でも、かかる操作に関係なく弁体40は下降する。
すなわち、弁体40は、第2の高さH2で下降を開始する。ここで、具体的に、第2の高さH2は、爪部58が引上部側突起43との係合を解除するとともに、弁体40が下降を開始する高さである。
このように、弁体40が、第1の高さH1で上昇を開始し、第2の高さH2で下降を開始することで、弁体40を上下動させることができ、弁体40の上下動に伴い、排水口15が開閉されて洗浄水を排水および止水することができる。また、弁体40を、低い位置から高い位置へ引き上げ、さらに、高い位置から低い位置へ下降させることができる。
また、係合が解除されて自重で下降している弁体40は、下降途中でフロート65と係合する。弁体40とフロート65とが係合することで、以降の弁体40は、タンク11(図3参照)内の洗浄水の水位WLの低下に連動して下降する。
次いで、図11(中央)に示すように、タンク11内の水位WLの低下によって、弁体40およびフロート65(フロート本体66)が所定の高さまで下降すると、フロート側係合部68が、揺動軸68aを中心に軸部42側の端部が上方へ揺動する。これにより、弁体40とフロート65との係合が解除され、以降、弁体40は、単独で下降する。なお、上記したように、図11の左側の図は、図10の右側の図と同一であるので、説明を省略している。
そして、図11(右側)に示すように、自重で下降する弁体40が、排水口15を閉塞すると、排水口15からの洗浄水の排水が終了する。なお、弁体40が排水口15を閉塞して排水が終了した際のタンク11内における洗浄水の水位を「死水水位(DWL)」という。
ところで、操作レバー12の回動操作を解除すると、操作ワイヤ14が再度進出する。操作ワイヤ14が進出すると、付勢部60Aの付勢力に抗して上方へ引き上げられていた引上部50が、付勢部60Aに付勢されながら下降する。ここで、図12を参照して弁体40が引上部50よりも先行して下降した場合における引上部50の回帰動作について説明する。図12は、引上部50の回帰動作説明図である。
たとえば、操作レバー12を長時間回動させたままとすると、引上部50は上方に保持され、引上部50の係合部50bとの係合が解除された弁体40のみ先行して下降する。この場合、係合部50bは、軸部42を追い越して元の状態(基準姿勢)に戻る。
図12(左側)に示すように、引上部50は、付勢部60Aに付勢されながら下降し、爪部58が下側ガイド62の摺動面に当接する。引上部50がさらに下降すると、爪部58が下側ガイド62の摺動面を摺動して軸部42から遠ざかる向き、X軸の正方向へ回動する。なお、この場合の爪部58の回動は、回動規制部55が把持部59の開放部に当接することで、所定範囲に規制される。これにより、係合部50bの必要以上の回動が抑えられて姿勢が崩れにくくなり、確実に基準姿勢をとることができる。
また、図12(中央)に示すように、引上部50がさらに下降を続けると、係合部50bの当接部57が、下側ガイド62の摺動面を摺動して、直動部50aの回転軸54を中心にX軸の正方向へ回動する。これに伴い、爪部58がX軸の負方向へ回動する。
そして、図12(右側)に示すように、係合部50bの爪部58は、軸部42の引上部側突起43を回避して、元の基準姿勢へ復帰する。また、引上部50は、元の基準高さへ復帰する。
また、たとえば、操作レバー12を短時間回動させた場合など、付勢部60Aに付勢された引上部50が先行して下降することがある。この場合、係合部50bの爪部58がX軸の正方向に回動した状態のままであったとしても、下側ガイド62によって基準姿勢へ復帰する。
上記した第1の実施形態に係る排水弁装置30によれば、第1の高さH1で引上部50と弁体40とを係合し、第2の高さH2で引上部50と弁体40との係合を解除することで、操作レバー12などに対する操作時間が長引いた場合を含めて、弁体40を一律に上下動させることができる。すなわち、操作レバー12などに対する操作に依存させずに弁体40を動かすことができる。これにより、排水口15を開放する時間を一定にすることができ、操作レバー12の操作時間に関わらず節水化を図ることができる。
また、上記した第1の実施形態に係る排水弁装置30によれば、引上部50が、弁体40との係合を解除した後に基準高さまで自重で下降することで、引上部50による弁体40の引き上げ操作を自動的に繰り返すことができ、さらに、引き上げ操作を繰り返し行っても、引上部50と弁体40との係合を確実に行うことができる。
また、上記した第1の実施形態に係る排水弁装置30によれば、引上部50との係合が解除されて弁体40がフリーになった後、弁体40の下降をフロート65に委ねることによって、操作レバー12の操作時間の長短に関わらず、便器へ供給する洗浄水量を一定に保つことができる。
また、上記した第1の実施形態に係る排水弁装置30によれば、上側ガイド61に当接した基部56が、軸部42へ近づく向きに摺動し、爪部58が軸部42から遠ざかる向きへ回動し、弁体40との係合が解除されることで、引上部50と弁体40との係合解除を確実、かつ、低コストで行うことができる。
また、上記した第1の実施形態に係る排水弁装置30によれば、基部56が下側ガイド62に当接して、爪部58が弁体40の軸部42に近づく向きへ回動し、基準姿勢をとることで、係合部50bを基準姿勢へ確実に回帰させることができる。
また、上記した第1の実施形態に係る排水弁装置30によれば、爪部58が引上部側突起43の上面に当接して、爪部58が弁体40の軸部42から遠ざかる向きへ回動し、引上部側突起43を回避することで、係合部50bに引上部側突起43を確実に回避させることができる。
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る排水弁装置100、洗浄水タンク装置および水洗大便器について説明する。なお、第2の実施形態は、上記した第1の実施形態とは、排水弁装置100の構成が異なる。このため、以下では、図13〜図15を参照して第2の実施形態に係る排水弁装置100について説明する。
図13は、第2の実施形態に係る排水弁装置100の概略的な斜視図である。図14は、係合部121bの斜視図である。図15は、第2の実施形態に係る排水弁装置100の動作説明図である。なお、第2の実施形態に係る排水弁装置100において、上記した第1の実施形態に係る排水弁装置30と同等または同一の箇所には同一の符号を付して説明を省略している。
また、上記した第1の実施形態に係る排水弁装置30では、引上部50が弁体40の軸部42に並置される。これに対し、第2の実施形態に係る排水弁装置100は、引上部120が弁体40の軸部110と同軸上にある点で排水弁装置30とは異なる。
図13に示すように、第2の実施形態に係る排水弁装置100は、弁体40(図15参照)を上下動させる軸部110として、第1軸部111と、第2軸部112とを備える。第1軸部111は、略矩形軸であり、下方に蓋部41(図15参照)が連結される。第2軸部112は、第1軸部111の外側に設けられ、内側において第1軸部111を上下方向(Z軸方向)に摺動させる。第2軸部112は、本体31と略一体に設けられる。
また、排水弁装置100は、引上部120を備える。引上部120は、直動部121aと、係合部121bとを備える。直動部121aは、第2軸部112の外側に設けられるとともに、第2軸部112の外側ガイド112bに沿って上下動可能に設けられる。また、直動部121aには、操作ワイヤ14が接続される。
係合部121bは、直動部121aに対して、直動部121aに設けられY軸方向を向いた回転軸122を回転中心として回動自在に設けられる。なお、係合部121bの形状については、図14を用いて後述する。
また、排水弁装置100は、錘部60Bとしてのオモリを備える。なお、錘部60Bのオモリには、たとえば、単数または複数の金属片を採用している。かかる錘部60Bを取り付けることで、引上部120の自重を洗浄水に対する浮力よりも増やすことができ、引上部120の下降時に摺動抵抗などが生じても、引上部120を確実に下降させることができる。
ここで、図14を参照して係合部121bについて説明する。図14に示すように、係合部121bは、当接部123と、把持部124と、爪部125とを備える。当接部123は、軸部110から遠いほど、すなわち、X軸の正方向に向かうほど低い下り傾斜した摺動面を有する。また、係合部121bの上下方向(Z軸方向)の中途位置には、回転軸122(図13参照)に所定範囲で回転可能に取り付けられる把持部124が設けられる。また、軸部110の下端部には、軸部110に近づく向きに突出する爪部125が設けられる。
なお、爪部125は、基準姿勢において、軸部110へ向けて突出しており、第1軸部111に設けられた係合穴126(図15参照)に挿通可能に設けられる。また、爪部125が第1軸部111の係合穴126に挿通されることで、第1軸部111と係合部121bとを係合することができる。
また、爪部125においても、上記した係合部50bの爪部58と同様に、直動部121aに支持された状態で、爪部125が回転軸122よりも下方であって第1軸部111の係合穴126よりも第1軸部111側となる基準姿勢をとる位置に重心がある。なお、係合部121bは、所定範囲で回動可能となるように回動規制される。
このように、係合部121bが、直動部121aに支持された状態で、爪部125が上記した基準姿勢をとる位置に重心があることで、係合部121bを弁体40の第1軸部111に確実に係合させることができる。
次に、図15を参照して第2の実施形態に係る排水弁装置100の動作について説明する。図15は、第2の実施形態に係る排水弁装置100の動作説明図である。
また、図15においても、図10および図11と同様に、弁体40(蓋部41)が上昇すると排水口15(図3参照)から排水されるため、図中に示しているタンク11内の洗浄水は徐々に減少する。すなわち、図中の水位WLが徐々に低くなる。
図15(左側)に示すように、操作レバー12(図10の参照)の操作前の状態では、排水弁装置100は、弁体40の蓋部41によって排水口15(図3参照)を閉塞している。この状態では、引上部120が上記した基準高さにあって、係合部121bが上記した基準姿勢をとっている。また、排水弁装置100では、基準高さが第1の高さH1となり、蓋部41が排水口15を閉塞している状態で、係合部121bが弁体40、具体的には、第1軸部111と係合されている。
次いで、図15(中央)に示すように、操作レバー12が操作されて操作ワイヤ14が図中の矢線方向へ後退(上昇)し、引上部120(直動部121aおよび係合部121b)が上昇する。なお、引上部120は、錘部60Bの荷重に抗しながら上昇する。
引上部120が上昇すると、これに伴い、蓋部41が上昇して、排水口15を開放する。これにより、タンク11内の洗浄水が排水口15から排水される。
引上部120が所定の高さまで上昇すると、係合部121bの当接部123が上側ガイド61に当接する。引上部120がさらに上昇して第2の高さH2で、当接部123は、上側ガイド61の摺動面の傾斜に沿って弁体40の第1軸部111側へ移動する。当接部123が第1軸部111側へ移動すると、回転軸122を中心に爪部125が反対方向となる第1軸部111から遠ざかる向きへ回動する。これにより、引上部120と弁体40の第1軸部111との係合が解除され、引上部120が取り付けられた第2軸部112に対して第1軸部111はフリーとなり、自重に錘部60Bの荷重が負荷された状態で下降を開始する。
ここで、第2の実施形態においても、上記した第1の実施形態と同様、第1の高さH1は、爪部125が係合穴126に係合するととともに、引上部120の引き上げによって弁体40が上昇を開始する高さである。また、第2の高さH2は、爪部125が係合穴126から離脱して係合穴126との係合を解除するとともに、弁体40が下降を開始する高さである。
また、引上部120と弁体40(第1軸部111)との係合が解除されることで、弁体40の第1軸部111が操作に依存しなくなり、操作レバー12(図3参照)を回動操作したままの状態でも、かかる操作に関係なく第1軸部111は下降する。
また、係合が解除されて自重で下降している弁体40の第1軸部111は、上記した第1の実施形態に係る排水弁装置30と同様に、下降途中でフロート65と係合する。第1軸部111とフロート65とが係合することで、以降の第1軸部111は、タンク11(図3参照)内の洗浄水の水位WLの低下に連動して下降する。
次いで、タンク11内の水位WLの低下によって、弁体40(第1軸部111)およびフロート65(フロート本体66)が所定の高さまで下降すると、フロート側係合部68が、揺動軸68aを中心に第1軸部111側の端部が上方へ揺動する。これにより、第1軸部111とフロート65との係合が解除され、以降、第1軸部111は、単独で下降する。
そして、図15(右側)に示すように、下降する弁体40の蓋部41が、排水口15を閉塞すると、排水口15からの洗浄水の排水が終了する。また、係合部121bの爪部125は、第1軸部111の係合穴126と係合するとともに、元の基準姿勢へ復帰し、さらに、引上部120は、元の基準高さへ復帰する。
上記した第2の実施形態に係る排水弁装置100によれば、第1の高さ(基準高さ)H1で引上部120の爪部125と弁体40の第1軸部111の係合穴126とを係合し、第2の高さH2で爪部125と係合穴126との係合を解除する。このため、操作レバー12などに対する操作時間が長引いた場合を含めて、弁体40を一律に上下動させることができる。すなわち、操作レバー12などに対する操作に依存させずに弁体40を動かすことができる。これにより、排水口15を開放する時間を一定にすることができ、操作レバー12の操作時間に関わらず節水化を図ることができる。
また、上記した第2の実施形態に係る排水弁装置100によれば、引上部120(爪部125)が、弁体40(第1軸部111の係合穴126)との係合を解除した後に基準高さまで自重および錘部60Bの荷重が負荷されて下降する。これにより、第1軸部111の引き上げ操作を自動的に繰り返すことができ、さらに、引き上げ操作を繰り返し行っても、爪部125と係合穴126との係合を確実に行うことができる。
また、上記した第2の実施形態に係る排水弁装置100によれば、爪部125との係合が解除されて第1軸部111がフリーになった後、第1軸部111の下降をフロート65に委ねることによって、操作レバー12の操作時間の長短に関わらず、便器へ供給する洗浄水量を一定に保つことができる。
また、上記した第2の実施形態に係る排水弁装置100によれば、上側ガイド61に当接した基部56の当接部123が、第1軸部111へ近づく向きに摺動し、爪部125が第1軸部111から遠ざかる向きへ回動し、係合穴126との係合が解除されることで、爪部125と係合穴126との係合解除を確実、かつ、低コストで行うことができる。
また、第1軸部111および第2軸部112と同軸で引上部120を配置することで、上面視(Z軸の負方向視)における専有面積を小さくすることができる。これにより、排水弁装置100のコンパクト化を図ることができる。
また、上記した実施形態に係る洗浄水タンク装置10によれば、操作レバー12などの操作時間に関わらず節水化を図ることができる。
さらに、上記した実施形態に係る水洗大便器1によれば、操作レバー12などの操作時間に関わらず節水化を図ることができる。
また、上記した実施形態に係る排水弁装置30,100では、それぞれ弁体40が軸部42,110を備え、引上部50,120が軸部42,110に対して係合する係合部50b,121bを備える構成としている。しかしながら、これに限定されず、たとえば、係合部50b,121bが蓋部41に対して直接係合する構成としてもよい。なお、上記したように、係合とは、両者が引っ掛かり合う場合のみをあらわすものではない。
また、上記した実施形態に係る排水弁装置30,100では、配置の自由度が高い操作ワイヤ14を用いて弁体40を上下させる構成としているが、これに限定されず、たとえば、スピンドルに玉鎖などの紐体が接続されたものを用いて弁体40を上下させる構成としてもよい。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。