本発明の態様に係るパターン描画装置、パターン描画方法、および、デバイス製造方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の基板(被照射体)Pに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、特に断わりのない限り、重力方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがって、X方向、Y方向、およびZ方向を説明する。
デバイス製造システム10は、基板Pに所定の処理(露光処理など)を施して、電子デバイスを製造するシステム(基板処理装置)である。デバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイ、フィルム状のタッチパネル、液晶表示パネル用のフィルム状のカラーフィルター、フレキシブル配線、または、フレキシブル・センサなどを製造する製造ラインが構築された製造システムである。以下、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを前提として説明する。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイなどがある。デバイス製造システム10は、可撓性のシート状の基板(シート基板)Pをロール状に巻いた供給ロールFR1から基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを回収ロールFR2で巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。基板Pは、基板Pの移動方向(搬送方向)が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。第1の実施の形態においては、フィルム状の基板Pが、少なくとも処理装置(第1の処理装置)PR1、処理装置(第2の処理装置)PR2、露光装置(第3の処理装置)EX、処理装置(第4の処理装置)PR3、および、処理装置(第5の処理装置)PR4を経て、回収ロールFR2に巻き取られるまでの例を示している。
本第1の実施の形態では、X方向は、Z方向と直交する水平面内において、基板Pが供給ロールFR1から回収ロールFR2に向かう方向である。Y方向は、Z方向と直交する水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向(短尺方向)である。なお、−Z方向を、重力が働く方向(重力方向)とし、基板Pの搬送方向を+X方向とする。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼などの金属または合金からなる箔(フォイル)などが用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、デバイス製造システム10の搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが10μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)などのフィルムは、好適なシート基板の典型である。
基板Pは、処理装置PR1、処理装置PR2、露光装置EX、処理装置PR3、および、処理装置PR4で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板Pを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素などでもよい。また、基板Pは、フロート法などで製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔などを貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板Pの可撓性(flexibility)とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、または、湿度などの環境などに応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本第1の実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラムなどの搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。
処理装置PR1は、供給ロールFR1から搬送されてきた基板Pを処理装置PR2に向けて所定の速度で長尺方向に沿った搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して塗布処理を行う塗布装置である。処理装置PR1は、基板Pの表面に感光性機能液を選択的または一様に塗布する。この感光性機能液が表面に塗布された基板Pは処理装置PR2に向けて搬送される。
処理装置PR2は、処理装置PR1から搬送されてきた基板Pを露光装置EXに向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して乾燥処理を行う乾燥装置である。処理装置PR2は、熱風またはドライエアーなどの乾燥用エアー(温風)を基板Pの表面に吹き付けるブロワー、赤外線光源、セラミックヒーターなどによって感光性機能液に含まれる溶剤または水を除去して、感光性機能液を乾燥させる。これにより、基板Pの表面に感光性機能層(光感応層)となる膜が選択的または一様に形成される。なお、ドライフィルムを基板Pの表面に貼り付けることで、基板Pの表面に感光性機能層を形成してもよい。この場合は、処理装置PR1および処理装置PR2に代えて、ドライフィルムを基板Pに貼り付ける貼付装置(処理装置)を設ければよい。
ここで、この感光性機能液(層)の典型的なものはフォトレジスト(液状またはドライフィルム状)であるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤などがある。感光性機能液(層)として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅などの導電性ナノ粒子を含有するインク)または半導体材料を含有した液体などを選択塗布することで、薄膜トランジスタ(TFT)などを構成する電極、半導体、絶縁、或いは接続用の配線となるパターン層を形成することができる。感光性機能液(層)として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオンなどを含む無電解メッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にしてもよい。その場合は、露光装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)などの金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。本第1の実施の形態では、感光性機能液(層)として感光性還元剤が用いられる。
露光装置EXは、処理装置PR2から搬送されてきた基板Pを処理装置PR3に向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して露光処理を行う処理装置である。露光装置EXは、基板Pの表面(感光性機能層の表面、すなわち、感光面)に、電子デバイス用のパターン(例えば、電子デバイスを構成するTFTの電極や配線などのパターン)に応じた光パターンを照射する。これにより、感光性機能層に前記パターンに対応した潜像(改質部)が形成される。
本第1の実施の形態においては、露光装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置(パターン描画装置)である。後で詳細に説明するが、露光装置EXは、基板Pを+X方向(副走査の方向)に搬送しながら、露光用のパルス状のビームLB(パルスビーム)のスポット光SPを、基板Pの被照射面(感光面)上で所定の走査方向(Y方向)に1次元に走査(主走査)しつつ、スポット光SPの強度をパターンデータ(描画データ、パターン情報)に応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板Pの被照射面に電子デバイス、回路または配線などの所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。つまり、基板Pの副走査と、スポット光SPの主走査とで、スポット光SPが基板Pの被照射面(感光性機能層の表面)上で相対的に2次元走査されて、基板Pの被照射面に所定のパターンが描画露光される。また、基板Pは、搬送方向(+X方向)に沿って搬送されているので、露光装置EXによってパターンが露光される露光領域Wは、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられることになる(図4参照)。この露光領域Wに電子デバイスが形成されるので、露光領域Wは、デバイス形成領域でもある。
処理装置PR3は、露光装置EXから搬送されてきた基板Pを処理装置PR4に向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して湿式処理を行う湿式処理装置である。本第1の実施の形態では、処理装置PR3は、基板Pに対して湿式処理の一種であるメッキ処理を行う。つまり、基板Pを処理槽に貯蔵されたメッキ液に所定時間浸漬する。これにより、感光性機能層の表面に潜像に応じたパターン層が析出(形成)される。つまり、基板Pの感光性機能層上のスポット光SPの照射部分と非照射部分の違いに応じて、基板P上に所定の材料(例えば、パラジウム)が選択的に形成され、これがパターン層となる。
なお、感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、湿式処理の一種である液体(例えば、導電性インクなどを含有した液体)の塗布処理またはメッキ処理が処理装置PR3によって行われる。この場合であっても、感光性機能層の表面に潜像に応じたパターン層が形成される。つまり、基板Pの感光性機能層のスポット光SPの照射部分と被照射部分の違いに応じて、基板P上に所定の材料(例えば、導電性インクまたはパラジウムなど)が選択的に形成され、これがパターン層となる。また、感光性機能層としてフォトレジストを採用する場合は、処理装置PR3によって、湿式処理の一種である現像処理が行われる。この場合は、この現像処理によって、潜像に応じたパターンが感光性機能層(フォトレジスト)に形成される。
処理装置PR4は、処理装置PR3から搬送されてきた基板Pを回収ロールFR2に向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して洗浄・乾燥処理を行う洗浄・乾燥装置である。処理装置PR4は、湿式処理が施された基板Pに対して純水による洗浄を行い、その後ガラス転移温度以下で、基板Pの水分含有率が所定値以下になるまで乾燥させる。
なお、感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いた場合は、処理装置PR4は、基板Pに対してアニール処理と乾燥処理を行うアニール・乾燥装置であってもよい。アニール処理は、塗布された導電性インクに含有されるナノ粒子同士の電気的な結合を強固にするために、例えば、ストロボランプからの高輝度のパルス光を基板Pに照射する。感光性機能層としてフォトレジストを採用した場合は、処理装置PR4と回収ロールFR2との間に、エッチング処理を行う処理装置(湿式処理装置)PR5と、エッチング処理が施された基板Pに対して洗浄・乾燥処理を行う処理装置(洗浄・乾燥装置)PR6とを設けてもよい。これにより、感光性機能層としてフォトレジストを採用した場合は、エッチング処理が施されることで、基板Pにパターン層が形成される。つまり、基板Pの感光性機能層のスポット光SPの照射部分と被照射部分の違いに応じて、基板P上に所定の材料(例えば、アルミニウム(Al)または銅(Cu)など)が選択的に形成され、これがパターン層となる。処理装置PR5、PR6は、送られてきた基板Pを回収ロールFR2に向けて所定の速度で基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送する機能を有する。複数の処理装置PR1〜PR4(必要に応じて処理装置PR5、PR6も含む)および露光装置EXの基板Pを+X方向に搬送する搬送機構は、デバイス製造システム10の基板搬送装置として機能する。
このようにして、各処理が施された基板Pは回収ロールFR2によって回収される。デバイス製造システム10の少なくとも各処理を経て、1つのパターン層が基板P上に形成される。複数のパターン層が重ね合わされることで電子デバイスが構成される場合は、電子デバイスを生成するために、図1に示すようなデバイス製造システム10の各処理を少なくとも2回は経なければならない。そのため、基板Pが巻き取られた回収ロールFR2を供給ロールFR1として別のデバイス製造システム10に装着することで、パターン層を積層することができる。そのような動作を繰り返して、電子デバイスが形成される。処理後の基板Pは、複数の電子デバイスが所定の間隔をあけて基板Pの長尺方向に沿って連なった状態となる。つまり、基板Pは、多面取り用の基板となっている。
電子デバイスが連なった状態で形成された基板Pを回収した回収ロールFR2は、図示しないダイシング装置に装着されてもよい。回収ロールFR2が装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを電子デバイス(デバイス形成領域である露光領域W)毎に分割(ダイシング)することで、複数の枚葉となった電子デバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
図2は、露光装置EXの構成を示す構成図である。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度、所定の湿度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制するとともに、基板Pの吸湿性や搬送に伴って発生する静電気の帯電などを抑制する。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eからの振動を低減する。この設置面Eは、工場の床面自体であってもよいし、水平面を出すために床面上に専用に設置される設置土台(ペデスタル)上の面であってもよい。露光装置EXは、基板搬送機構12と、同一構成の2つの光源装置LS(LSa、LSb)と、ビーム切換部BDUと、露光ヘッド14と、制御装置16と、複数のアライメント顕微鏡AM1m、AM2m(なお、m=1、2、3、4)と、複数のエンコーダヘッドENja、ENjb(なお、j=1、2、3、4)とを少なくとも備えている。制御装置(制御部)16は、露光装置EXの各部を制御するものである。この制御装置16は、コンピュータとプログラムが記録された記録媒体などとを含み、該コンピュータがプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の制御装置16として機能する。
基板搬送機構12は、デバイス製造システム10の前記基板搬送装置の一部を構成するものであり、処理装置PR2から搬送される基板Pを、露光装置EX内で所定の速度で搬送した後、処理装置PR3に所定の速度で送り出す。基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)DR、テンション調整ローラRT2、駆動ローラR2、および、駆動ローラR3を有している。基板Pが、基板搬送機構12のエッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1〜R3、テンション調整ローラRT1、RT2、および、回転ドラム(円筒ドラム)DRに掛け渡されることで、露光装置EX内で搬送される基板Pの搬送路が規定される。
エッジポジションコントローラEPCは、処理装置PR2から搬送される基板Pの幅方向(Y方向であって基板Pの短尺方向)における位置を調整する。つまり、エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションがかけられた状態で搬送されている基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションがかけられた状態で基板Pが掛け渡されるローラと、基板Pの幅方向の端部(エッジ)の位置を検出する図示しないエッジセンサ(端部検出部)とを有する。エッジポジションコントローラEPCは、前記エッジセンサが検出した検出信号に基づいて、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラをY方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。駆動ローラ(ニップローラ)R1は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを回転ドラムDRへ向けて搬送する。なお、エッジポジションコントローラEPCは、回転ドラムDRに巻き付く基板Pの長尺方向が、回転ドラムDRの中心軸AXoに対して常に直交するように、基板Pの幅方向における位置と適宜調整するとともに、基板Pの進行方向における傾き誤差を補正するように、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラの回転軸とY軸との平行度を適宜調整してもよい。
回転ドラムDRは、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有する。回転ドラムDRは、この外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に円筒面状に湾曲させて支持(保持)しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板Pを+X方向に搬送する。回転ドラムDRは、露光ヘッド14からのビームLB(スポット光SP)が投射される基板P上の領域(部分)をその外周面で支持する。回転ドラムDRは、電子デバイスが形成される面(感光面が形成された側の面)とは反対側の面(裏面)側から基板Pを支持(密着保持)する。回転ドラムDRのY方向の両側には、回転ドラムDRが中心軸AXoの周りを回転するように環状のベアリングで支持されたシャフトSftが設けられている。回転ドラムDRは、制御装置16によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構など)からの回転トルクがシャフトSftに与えられることで中心軸AXo回りに一定の回転速度で回転する。なお、便宜的に、中心軸AXoを含み、YZ平面と平行な平面を中心面Pocと呼ぶ。
駆動ローラ(ニップローラ)R2、R3は、基板Pの搬送方向(+X方向)に沿って所定の間隔を空けて配置されており、露光後の基板Pに所定の弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR2、R3は、駆動ローラR1と同様に、基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを処理装置PR3へ向けて搬送する。テンション調整ローラRT1、RT2は、−Z方向に付勢されており、回転ドラムDRに巻き付けられて支持されている基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えている。これにより、回転ドラムDRにかかる基板Pに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。制御装置16は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機など)を制御することで、駆動ローラR1〜R3を回転させる。なお、駆動ローラR1〜R3の回転軸、および、テンション調整ローラRT1、RT2の回転軸は、回転ドラムDRの中心軸AXoと平行している。
光源装置LS(LSa、LSb)は、パルス状のビーム(パルスビーム、パルス光、レーザ)LBを発生して射出する。このビームLBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であり、ビームLBの発光周波数(発振周波数、所定周波数)をFaとする。光源装置LS(LSa、LSb)が射出したビームLBは、ビーム切換部BDUを介して露光ヘッド14に入射する。光源装置LS(LSa、LSb)は、制御装置16の制御にしたがって、発光周波数FaでビームLBを発光して射出する。この光源装置LS(LSa、LSb)の構成は、後で詳細に説明するが、第1の実施の形態では、赤外波長域のパルス光を発生する半導体レーザ素子、ファイバー増幅器、増幅された赤外波長域のパルス光を紫外波長域のパルス光に変換する波長変換素子(高調波発生素子)などで構成され、発振周波数Faが数百MHz程度まで確保でき、1パルス光の発光時間がピコ秒程度の高輝度な紫外線のパルス光が得られるファイバーアンプレーザ光源(高調波レーザ光源)を用いるものとする。なお、光源装置LSaからのビームLBと、光源装置LSbからのビームLBとを区別するために、光源装置LSaからのビームLBをLBa、光源装置LSbからのビームLBをLBbで表す場合がある。
ビーム切換部BDUは、露光ヘッド14を構成する複数の走査ユニットUn(なお、n=1、2、・・・、6)のうち2つの走査ユニットUnに、2つの光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)を入射させるとともに、ビームLB(LBa、LBb)が入射する走査ユニットUnを切り換える。詳しくは、ビーム切換部BDUは、3つの走査ユニットU1〜U3のうち1つの走査ユニットUnに光源装置LSaからのビームLBaを入射させ、3つの走査ユニットU4〜U6のうち1つの走査ユニットUnに、光源装置LSbからのビームLBbを入射させる。また、ビーム切換部BDUは、ビームLBaが入射する走査ユニットUnを走査ユニットU1〜U3の中で切り換え、走査ビームLBbが入射する走査ユニットUnを走査ユニットU4〜U6の中で切り換える。なお、ビーム切換部BDUを介して走査ユニットUnに入射する光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)を、LBnと表す場合がある。そして、走査ユニットU1に入射するビームLBnをLB1で表し、同様に、走査ユニットU2〜U6に入射するビームLBnをLB2〜LB6で表す場合がある。
ビーム切換部BDUは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnにビームLBnが入射するように、ビームLBnが入射する走査ユニットUnを切り換える。つまり、ビーム切換部BDUは、走査ユニットU1〜U3のうち、スポット光SPの走査を行う1つの走査ユニットUnに、光源装置LSaからのビームLBn(LBa)を入射させる。同様に、ビーム切換部BDUは、走査ユニットU4〜U6のうち、スポット光SPの走査を行う1つの走査ユニットUnに、光源装置LSbからのビームLBn(LBb)を入射させる。このビーム切換部BDUについては後で詳細に説明する。なお、走査ユニットU1〜U3に関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUn、つまり、ビームLBnが入射する走査ユニットUnが、U1→U2→U3、の順番で切り換わるものとする。また、走査ユニットU4〜U6に関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUn、つまり、ビームLBnが入射する走査ユニットUnが、U4→U5→U6、の順番で切り換わるものとする。
以上に説明したような光源装置LS(LSa、LSb)とビーム切換部BDUとを組み合わせたパターン描画装置の構成は、例えば国際公開第2015/166910号パンフレットに開示されている。
露光ヘッド14は、同一構成の複数の走査ユニットUn(U1〜U6)を配列した、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッドとなっている。露光ヘッド14は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されている基板Pの一部分に、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)によってパターンを描画する。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、所定の配置関係で配置されている。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、中心面Pocを挟んで基板Pの搬送方向に2列に千鳥配列で配置される。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)で、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。偶数番の走査ユニットU2、U4、U6は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)で、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6とは、XZ平面からみて、中心面Pocに対して対称に設けられている。
各走査ユニットUn(U1〜U6)は、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBnを基板Pの被照射面上でスポット光SPに収斂するように投射しつつ、そのスポット光SPを、回転するポリゴンミラーPM(図5参照)によって1次元に走査する。この各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMによって、基板Pの被照射面上でスポット光SPが1次元に走査される。このスポット光SPの走査によって、基板P上(基板Pの被照射面上)に、1ライン分のパターンが描画される直線的な描画ライン(走査ライン)SLn(なお、n=1、2、・・・、6)が規定される。つまり、描画ラインSLnは、ビームLBnのスポット光SPの基板P上における走査軌跡を示すものである。この走査ユニットUnの構成については、後で詳しく説明する。
走査ユニットU1は、スポット光SPを描画ラインSL1に沿って走査し、同様に、走査ユニットU2〜U6は、スポット光SPを描画ラインSL2〜SL6に沿って走査する。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、図3、図4に示すように、X方向に関しては奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5と偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6とが互いに離間しているが、Y方向(基板Pの幅方向、主走査方向)に関しては互いに分離することなく継ぎ合わされるように設定されている。走査ユニットUnに入射するビームLBnは、所定の方向に偏光した直線偏光(P偏光またはS偏光)のビームであってもよく、本第1の実施の形態では、P偏光のビームとする。
図4に示すように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は全部で露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、走査領域を分担している。これにより、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、基板Pの幅方向に分割された複数の領域(描画範囲)毎にパターンを描画することができる。例えば、1つの走査ユニットUnによるY方向の走査長(描画ラインSLnの長さ)を20〜60mm程度とすると、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の3個との計6個の走査ユニットUnをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を120〜360mm程度まで広げている。各描画ラインSLn(SL1〜SL6)の長さ(描画範囲の長さ)は、原則として同一とする。つまり、描画ラインSL1〜SL6の各々に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査距離は、原則として同一とする。なお、露光領域Wの幅を広くしたい場合は、描画ラインSLn自体の長さを長くするか、Y方向に配置する走査ユニットUnの数を増やすことで対応することができる。
なお、実際の各描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、スポット光SPが被照射面上を実際に走査可能な最大の長さ(最大走査長)よりも僅かに短く設定される。例えば、主走査方向(Y方向)の描画倍率が初期値(倍率補正無し)の場合にパターン描画可能な描画ラインSLnの走査長を30mmとすると、スポット光SPの被照射面上での最大走査長は、描画ラインSLnの描画開始点(走査開始点)側と描画終了点(走査終了点)側の各々に0.5mm程度の余裕を持たせて、31mm程度に設定されている。このように設定することによって、スポット光SPの最大走査長31mmの範囲内で、30mmの描画ラインSLnの位置を主走査方向に微調整したり、描画倍率を微調整したりすることが可能となる。スポット光SPの最大走査長は31mmに限定されるものではなく、主に走査ユニットUn内のポリゴンミラーPMの後に設けられるfθレンズFT(図5参照)の口径や焦点距離などによって決まる。
複数の描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、中心面Pocを挟んで、回転ドラムDRの周方向に2列に千鳥配列で配置される。奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。描画ラインSL1〜SL6は、基板Pの幅方向、つまり、回転ドラムDRの中心軸AXoと略並行となっている。
描画ラインSL1、SL3、SL5は、基板Pの幅方向(主走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に1列に配置されている。描画ラインSL2、SL4、SL6も同様に、基板Pの幅方向(主走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に1列に配置されている。このとき、描画ラインSL2は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL1と描画ラインSL3との間に配置される。同様に、描画ラインSL3は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL2と描画ラインSL4との間に配置されている。描画ラインSL4は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL3と描画ラインSL5との間に配置され、描画ラインSL5は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL4と描画ラインSL6との間に配置されている。
奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の各々に沿って走査されるビームLB1、LB3、LB5のスポット光SPの主走査方向は、1次元の方向となっており、−Y方向となっている。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の各々に沿って走査されるビームLB2、LB4、LB6のスポット光SPの主走査方向は、1次元の方向となっており、+Y方向となっている。これにより、描画ラインSL1、SL3、SL5の描画開始点側の端部と、描画ラインSL2、SL4、SL6の描画開始点側の端部とはY方向に関して隣接または一部重複する。また、描画ラインSL3、SL5の描画終了点側の端部と、描画ラインSL2、SL4の描画終了点側の端部とはY方向に関して隣接または一部重複する。Y方向に隣り合う描画ラインSLnの端部同士を一部重複させるように、各描画ラインSLnを配置する場合は、例えば、各描画ラインSLnの長さに対して、描画開始点、または描画終了点を含んでY方向に数%以下の範囲で重複させるとよい。なお、描画ラインSLnをY方向に継ぎ合わせるとは、描画ラインSLnの端部同士をY方向に関して隣接または一部重複させることを意味する。
本第1の実施の形態の場合、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)がパルス光であるため、主走査の間に描画ラインSLn上に投射されるスポット光SPは、ビームLB(LBa、LBb)の発振周波数Fa(例えば、100MHz)に応じて離散的になる。そのため、ビームLBの1パルス光によって投射されるスポット光SPと次の1パルス光によって投射されるスポット光SPとを、主走査方向にオーバーラップさせる必要がある。そのオーバーラップの量は、スポット光SPのサイズφ、スポット光SPの走査速度(主走査の速度)Vs、および、ビームLBの発振周波数Faによって設定される。スポット光SPの実効的なサイズφは、スポット光SPの強度分布がガウス分布で近似される場合、スポット光SPのピーク強度の1/e2(または1/2)で決まる。本第1の実施の形態では、実効的なサイズ(寸法)φに対して、φ×1/2程度スポット光SPがオーバーラップするように、スポット光SPの走査速度Vsおよび発振周波数Faが設定される。したがって、スポット光SPの主走査方向に沿った投射間隔は、φ/2となる。そのため、副走査方向(描画ラインSLnと直交した方向)に関しても、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1回の走査と、次の走査との間で、基板Pがスポット光SPの実効的なサイズφの略1/2の距離だけ移動するように設定することが望ましい。さらに、Y方向に隣り合う描画ラインSLを主走査方向に継ぐ場合も、φ/2だけオーバーラップさせることが望ましい。本第1の実施の形態では、スポット光SPのサイズ(寸法)φを3μmとする。
なお、基板P上の感光性機能層への露光量の設定は、ビームLB(パルス光)のピーク値の調整で可能であるが、ビームLBの強度を上げられない状況で露光量を増大させたい場合は、スポット光SPの主走査方向の走査速度Vsの低下、ビームLBの発振周波数Faの増大、或いは基板Pの副走査方向の搬送速度Vtの低下などのいずれかによって、スポット光SPの主走査方向または副走査方向に関するオーバーラップ量を増加させればよい。スポット光SPの主走査方向の走査速度Vsは、ポリゴンミラーPMの回転数(回転速度Vp)に比例して速くなる。
各走査ユニットUn(U1〜U6)は、少なくともXZ平面において、各ビームLBnが回転ドラムDRの中心軸AXoに向かって進むように、各ビームLBnを基板Pに向けて照射する。これにより、各走査ユニットUn(U1〜U6)から基板Pに向かって進むビームLBnの光路(ビーム中心軸)は、XZ平面において、基板Pの被照射面の法線と平行となる。また、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に照射するビームLBnが、YZ平面と平行な面内では基板Pの被照射面に対して垂直となるように、ビームLBnを基板Pに向けて照射する。すなわち、被照射面でのスポット光SPの主走査方向に関して、基板Pに投射されるビームLBn(LB1〜LB6)はテレセントリックな状態で走査される。ここで、各走査ユニットUn(U1〜U6)によって規定される所定の描画ラインSLn(SL1〜SL6)の各中点を通って基板Pの被照射面と垂直な線(または光軸とも呼ぶ)を、照射中心軸Len(Le1〜Le6)と呼ぶ。
この各照射中心軸Len(Le1〜Le6)は、XZ平面において、描画ラインSL1〜SL6と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の各々の照射中心軸Le1、Le3、Le5は、XZ平面において同じ方向となっており、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の各々の照射中心軸Le2、Le4、Le6は、XZ平面において同じ方向となっている。また、照射中心軸Le1、Le3、Le5と照射中心軸Le2、Le4、Le6とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θ1となるように設定されている(図2参照)。
図2に示した複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、図4に示す基板Pに形成された複数のアライメント用のマークMKm(MK1〜MK4)を検出するためのものであり、Y方向に沿って複数(本第1の実施の形態では、4つ)設けられている。複数のマークMKm(MK1〜MK4)は、基板Pの被照射面上の露光領域Wに描画される所定のパターンと基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されている基板P上で、複数のマークMKm(MK1〜MK4)を検出する。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)は、露光ヘッド14からのビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPによる基板P上の被照射領域(描画ラインSL1〜SL6で囲まれた領域)よりも基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。また、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)は、露光ヘッド14からビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPによる基板P上の被照射領域(描画ラインSL1〜SL6で囲まれた領域)よりも基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。
アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、アライメント用の照明光を基板Pに投射する光源と、基板Pの表面のマークMKmを含む局所領域(観察領域)Vw1m(Vw11〜Vw14)、Vw2m(Vw21〜Vw24)の拡大像を得る観察光学系(対物レンズを含む)と、その拡大像を基板Pが搬送方向に移動している間に、基板Pの搬送速度Vtに応じた高速シャッタで撮像するCCD、CMOSなどの撮像素子とを有する。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)の各々が撮像した撮像信号(画像データ)は制御装置16に送られる。制御装置16のマーク位置検出部106(図12参照)は、この送られてきた複数の撮像信号の画像解析を行うことで、基板P上のマークMKm(MK1〜MK4)の位置(マーク位置情報)を検出する。なお、アライメント用の照明光は、基板P上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500〜800nm程度の光である。
複数のマークMK1〜MK4は、各露光領域Wの周りに設けられている。マークMK1、MK4は、露光領域Wの基板Pの幅方向の両側に、基板Pの長尺方向に沿って一定の間隔Dhで複数形成されている。マークMK1は、基板Pの幅方向の−Y方向側に、マークMK4は、基板Pの幅方向の+Y方向側にそれぞれ形成されている。このようなマークMK1、MK4は、基板Pが大きなテンションを受けたり、熱プロセスを受けたりして変形していない状態では、基板Pの長尺方向(X方向)に関して同一位置になるように配置される。さらに、マークMK2、MK3は、マークMK1とマークMK4の間であって、露光領域Wの+X方向側と−X方向側との余白部に基板Pの幅方向(短尺方向)に沿って形成されている。マークMK2は、基板Pの幅方向の−Y方向側に、マークMK3は、基板Pの+Y方向側に形成されている。
さらに、基板Pの−Y方向側の端部に配列されるマークMK1と余白部のマークMK2とのY方向の間隔、余白部のマークMK2とマークMK3のY方向の間隔、および基板Pの+Y方向側の端部に配列されるマークMK4と余白部のマークMK3とのY方向の間隔は、いずれも同じ距離に設定されている。これらのマークMKm(MK1〜MK4)は、第1層のパターン層の形成の際に一緒に形成されてもよい。例えば、第1層のパターンを露光する際に、パターンが露光される露光領域Wの周りにマーク用のパターンも一緒に露光してもよい。なお、マークMKmは、露光領域W内に形成されてもよい。例えば、露光領域W内であって、露光領域Wの輪郭に沿って形成されてもよい。また、露光領域W内に形成される電子デバイスのパターン中の特定位置のパターン部分、或いは特定形状の部分をマークMKmとして利用してもよい。
アライメント顕微鏡AM11、AM21は、図4に示すように、対物レンズによる観察領域(検出領域)Vw11、Vw21内に存在するマークMK1を撮像するように配置される。同様に、アライメント顕微鏡AM12〜AM14、AM22〜AM24は、対物レンズによる観察領域Vw12〜Vw14、Vw22〜Vw24内に存在するマークMK2〜MK4を撮像するように配置される。したがって、複数のアライメント顕微鏡AM11〜AM14、AM21〜AM24は、複数のマークMK1〜MK4の位置に対応して、基板Pの−Y方向側からAM11〜AM14、AM21〜AM24、の順で基板Pの幅方向に沿って設けられている。なお、図3においては、アライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)の観察領域Vw2m(Vw21〜Vw24)の図示を省略している。
複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)は、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1〜SL6)と観察領域Vw1m(Vw11〜Vw14)との距離が、露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)も同様に、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1〜SL6)と観察領域Vw2m(Vw21〜Vw24)との距離が、露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。なお、Y方向に設けられるアライメント顕微鏡AM1m、AM2mの数は、基板Pの幅方向に形成されるマークMKmの数に応じて変更可能である。また、各観察領域Vw1m(Vw11〜Vw14)、Vw2m(Vw21〜Vw24)の基板Pの被照射面上の大きさは、マークMK1〜MK4の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。
図3に示すように、回転ドラムDRの両端部には、回転ドラムDRの外周面の周方向の全体に亘って環状に形成された目盛を有するスケール部SDa、SDbが設けられている。このスケール部SDa、SDbは、回転ドラムDRの外周面の周方向に一定のピッチ(例えば、20μm)で凹状または凸状の格子線(目盛)を刻設した回折格子であり、インクリメンタル型のスケールとして構成される。このスケール部SDa、SDbは、中心軸AXo回りに回転ドラムDRと一体に回転する。スケール部SDa、SDbを読み取るスケール読取ヘッドとしての複数のエンコーダヘッドENja、ENjb(なお、j=1、2、3、4)は、このスケール部SDa、SDbと対向するように設けられている(図2、図3参照)。なお、図3においては、エンコーダヘッドEN4a、EN4bの図示を省略している。
エンコーダヘッドENja、ENjbは、回転ドラムDRの回転角度位置を光学的に検出するものである。回転ドラムDRの−Y方向側の端部に設けられたスケール部SDaに対向して、4つのエンコーダヘッドENja(EN1a、EN2a、EN3a、EN4a)が設けられている。同様に、回転ドラムDRの+Y方向側の端部に設けられたスケール部SDbに対向して、4つのエンコーダヘッドENjb(EN1b、EN2b、EN3b、EN4b)が設けられている。
エンコーダヘッドEN1a、EN1bは、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられており、設置方位線Lx1上に配置されている(図2、図3参照)。設置方位線Lx1は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN1a、EN1bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Lx1は、XZ平面において、各アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)の観察領域Vw1m(Vw11〜Vw14)と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。つまり、複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)も設置方位線Lx1上に配置されている。
エンコーダヘッドEN2a、EN2bは、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられており、且つ、エンコーダヘッドEN1a、EN1bより基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。エンコーダヘッドEN2a、EN2bは、設置方位線Lx2上に配置されている(図2、図3参照)。設置方位線Lx2は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN2a、EN2bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。この設置方位線Lx2は、XZ平面において、照射中心軸Le1、Le3、Le5と同角度位置となって重なっている。
エンコーダヘッドEN3a、EN3bは、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、設置方位線Lx3上に配置されている(図2、図3参照)。設置方位線Lx3は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN3a、EN3bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。この設置方位線Lx3は、XZ平面において、照射中心軸Le2、Le4、Le6と同角度位置となって重なっている。したがって、設置方位線Lx2と設置方位線Lx3とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θ1となるように設定されている(図2参照)。
エンコーダヘッドEN4a、EN4bは、エンコーダヘッドEN3a、EN3bより基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、設置方位線Lx4上に配置されている(図2参照)。設置方位線Lx4は、XZ平面において、エンコーダヘッドEN4a、EN4bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Lx4は、XZ平面において、各アライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)の観察領域Vw2m(Vw21〜Vw24)と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。つまり、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)も設置方位線Lx4上に配置されている。この設置方位線Lx1と設置方位線Lx4とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θ2となるように設定されている(図2参照)。
各エンコーダヘッドENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)は、スケール部SDa、SDbに向けて計測用の光ビームを投射し、その反射光束(回折光)を光電検出することにより、パルス状の検出信号(1/4周期の位相差を持つ2相デジタル信号)を制御装置16に出力する。制御装置16の回転位置検出部108(図12参照)は、その検出信号(2相デジタル信号)の内挿処理によって生成される計数パルスをカウントすることで、回転ドラムDRの回転角度位置および角度変化をサブミクロンの分解能で計測する。この回転ドラムDRの角度変化から、基板Pの搬送速度Vtも計測することができる。回転位置検出部108は、各エンコーダヘッドENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)からの検出信号をそれぞれ個別にカウントする。
以上に説明したようなエンコーダヘッドENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)を搭載したパターン描画装置の構成は、例えば、国際公開第2013/146184号パンフレットに開示されている。
回転位置検出部108は、複数のカウンタ回路CNja(CN1a〜CN4a)、CNjb(CN1b〜CN4b)を有する。カウンタ回路CN1aは、エンコーダヘッドEN1aからの検出信号(2相デジタル信号)から生成されるパルスをカウントし、カウンタ回路CN1bは、エンコーダヘッドEN1bからの検出信号(2相デジタル信号)から生成されるパルスをカウントする。同様にして、カウンタ回路CN2a〜CN4a、CN2b〜CN4bは、エンコーダヘッドEN2a〜EN4a、EN2b〜EN4bからの検出信号(2相デジタル信号)から生成されるパルスをカウントする。この各カウンタ回路CNja(CN1a〜CN4a)、CNjb(CN1b〜CN4b)は、各エンコーダヘッドENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)がスケール部SDa、SDbの周方向の一部に形成された図3に示す原点マーク(原点パターン)ZZを検出すると、原点マークZZを検出したエンコーダヘッドENja、ENjbに対応するカウント値を0にリセットする。
このカウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値のいずれか一方若しくはその平均値は、設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられ、カウンタ回路CN2a、CN2bのカウント値のいずれか一方若しくは平均値は、設置方位線Lx2上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられる。同様に、カウンタ回路CN3a、CN3bのカウント値のいずれか一方若しくは平均値は、設置方位線Lx3上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられ、カウンタ回路CN4a、CN4bのカウント値のいずれか一方若しくはその平均値は、設置方位線Lx4上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられる。なお、回転ドラムDRの製造誤差などによって回転ドラムDRが中心軸AXoに対して偏心して回転している場合を除き、原則として、カウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値は同一となる。同様にして、カウンタ回路CN2a、CN2bのカウント値も同一となり、カウンタ回路CN3a、CN3bのカウント値、カウンタ回路CN4a、CN4bのカウント値もそれぞれ同一となる。
上述したように、アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)とエンコーダヘッドEN1a、EN1bとは、設置方位線Lx1上に配置され、アライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)とエンコーダヘッドEN4a、EN4bとは、設置方位線Lx4上に配置されている。したがって、複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)が撮像した複数の撮像信号のマーク位置検出部106の画像解析によるマークMKm(MK1〜MK4)の位置検出と、アライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間の回転ドラムDRの回転角度位置の情報(エンコーダヘッドEN1a、EN1bに基づくカウント値)とに基づいて、設置方位線Lx1上における基板Pの位置を高精度に計測することができる。同様に、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)が撮像した複数の撮像信号のマーク位置検出部106の画像解析によるマークMKm(MK1〜MK4)の位置検出と、アライメント顕微鏡AM2mが撮像した瞬間の回転ドラムDRの回転角度位置の情報(エンコーダヘッドEN4a、EN4bに基づくカウント値)とに基づいて、設置方位線Lx4上における基板Pの位置を高精度に計測することができる。
また、エンコーダヘッドEN1a、EN1bからの検出信号に基づくカウント値と、エンコーダヘッドEN2a、EN2bからの検出信号に基づくカウント値と、エンコーダヘッドEN3a、EN3bからの検出信号に基づくカウント値と、エンコーダヘッドEN4a、EN4bからの検出信号に基づくカウント値は、各エンコーダヘッドENja、ENjbが原点マークZZを検出した瞬間にゼロにリセットされる。そのため、エンコーダヘッドEN1a、EN1bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)のときの、回転ドラムDRに巻き付けられている基板Pの設置方位線Lx1上における位置を第1の位置とした場合に、基板P上の第1の位置が設置方位線Lx2上の位置(描画ラインSL1、SL3、SL5の位置)まで搬送されると、エンコーダヘッドEN2a、EN2bに基づくカウント値は第1の値(例えば、100)となる。同様に、基板P上の第1の位置が設置方位線Lx3上の位置(描画ラインSL2、SL4、SL6の位置)まで搬送されると、エンコーダヘッドEN3a、EN3bからの検出信号に基づくカウント値は第1の値(例えば、100)となる。同様に、基板P上の第1の位置が設置方位線Lx4上の位置まで搬送されると、エンコーダヘッドEN4a、EN4bからの検出信号に基づくカウント値は第1の値(例えば、100)となる。
ところで、基板Pは、回転ドラムDRの両端のスケール部SDa、SDbより内側に巻き付けられている。図2では、スケール部SDa、SDbの外周面の中心軸AXoからの半径を、回転ドラムDRの外周面の中心軸AXoからの半径より小さく設定した。しかしながら、図3に示すように、スケール部SDa、SDbの外周面を、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの外周面と同一面となるように設定してもよい。つまり、スケール部SDa、SDbの外周面の中心軸AXoからの半径(距離)と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの外周面(被照射面)の中心軸AXoからの半径(距離)とが同一となるように設定してもよい。これにより、各エンコーダヘッドENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)は、回転ドラムDRに巻き付いた基板Pの被照射面と同じ径方向の位置でスケール部SDa、SDbを検出することができる。したがって、エンコーダヘッドENja、ENjbによる計測位置と処理位置(描画ラインSL1〜SL6)とが回転ドラムDRの径方向で異なることで生じるアッベ誤差を小さくすることができる。
ただし、被照射体としての基板Pの厚さは十数μm〜数百μmと大きく異なるため、スケール部SDa、SDbの外周面の半径と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの外周面の半径とを常に同一にすることは難しい。そのため、図3に示したスケール部SDa、SDbの場合、その外周面(スケール面)の半径は、回転ドラムDRの外周面の半径と一致するように設定される。さらに、スケール部SDa、SDbを個別の円盤で構成し、その円盤(スケール円盤)を回転ドラムDRのシャフトSftに同軸に取り付けることも可能である。その場合も、アッベ誤差が許容値内に収まる程度に、スケール円盤の外周面(スケール面)の半径と回転ドラムDRの外周面の半径とを揃えておくのがよい。
アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)によって検出されたマークMKm(MK1〜MK4)の基板P上の位置と、エンコーダヘッドEN1a、EN1bに基づくカウント値(カウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値のいずれか一方若しくは平均値)に基づいて、制御装置16は、基板Pの長尺方向(X方向)における露光領域Wの描画露光の開始位置を決定する。なお、露光領域WのX方向の長さは予め既知なので、制御装置16は、マークMKm(MK1〜MK4)を所定個数検出する度に、描画露光の開始位置として決定する。そして、露光開始位置が決定された際のエンコーダヘッドEN1a、EN1bに基づくカウント値を第1の値(例えば、100)とした場合は、エンコーダヘッドEN2a、EN2bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)となると、基板Pの長尺方向における露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL1、SL3、SL5上に位置する。したがって、走査ユニットU1、U3、U5は、エンコーダヘッドEN2a、EN2bのカウント値に基づいて、スポット光SPの走査を開始することができる。また、エンコーダヘッドEN3a、EN3bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)となると、基板Pの長尺方向における露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に位置する。したがって、走査ユニットU2、U4、U6は、エンコーダヘッドEN3a、EN3bのカウント値に基づいて、スポット光SPの走査を開始することができる。
通常は、テンション調整ローラRT1、RT2が基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えることで、基板Pは、回転ドラムDRに密着しながら、回転ドラムDRの回転と一緒になって搬送される。しかし、回転ドラムDRの回転速度Vpが速かったり、テンション調整ローラRT1、RT2が基板Pに与えるテンションが一時的に低くなり過ぎたり、高くなり過ぎたりするなどの理由により、回転ドラムDRの外周面上に密接しているはずの基板Pが長尺方向に僅かに滑る現象(マイクロスリップ)が発生する可能性がある。基板Pの回転ドラムDRに対する滑りが発生しない状態時においては、エンコーダヘッドEN4a、EN4bに基づくカウント値が、マークMKmA(ある特定のマークMKm)をアライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間のエンコーダヘッドEN1a、EN1bに基づくカウント値(例えば、150)と同じ値になった場合は、アライメント顕微鏡AM2mによって、このマークMKmAが検出される。
しかしながら、基板Pの回転ドラムDRに対する滑りが発生している場合は、エンコーダヘッドEN4a、EN4bに基づくカウント値が、マークMKmAをアライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間のエンコーダヘッドEN1a、EN1bに基づくカウント値(例えば、150)と同じ値となっても、アライメント顕微鏡AM2mによって、このマークMKmAが検出されない。この場合は、エンコーダヘッドEN4a、EN4bに基づくカウント値が、例えば、150を過ぎてから、アライメント顕微鏡AM2mによって、マークMKmAが検出されることになる。したがって、マークMKmAをアライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間のエンコーダヘッドEN1a、EN1bに基づくカウント値と、マークMKmAをアライメント顕微鏡AM2mが撮像した瞬間のエンコーダヘッドEN4a、EN4bのカウント値とに基づいて、基板Pの回転ドラムDR上での滑り量を求めることができる。このように、このアライメント顕微鏡AM2mおよびエンコーダヘッドEN4a、EN4bを追加設置することで、基板Pの滑り量を測定することができる。なお、アライメント顕微鏡AM1m、AM2m、エンコーダヘッドENja、ENjb、スケール部SDa、SDb、マーク位置検出部106、および、回転位置検出部108は、アライメント系として構成される。
次に、図5を参照して走査ユニットUn(U1〜U6)の光学的な構成について説明する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、同一の構成を有することから、走査ユニット(描画ユニット)U1についてのみ説明し、他の走査ユニット(描画ユニット)U2〜U6についてはその説明を省略する。また、図5においては、照射中心軸Len(Le1)と平行する方向をZt方向とし、Zt方向と直交する平面上にあって、基板Pが処理装置PR2から露光装置EXを経て処理装置PR3に向かう方向をXt方向とし、Zt方向と直交する平面上であって、Xt方向と直交する方向をYt方向とする。つまり、図5のXt、Yt、Ztの3次元座標は、図2のX、Y、Zの3次元座標を、Y軸を中心にZ軸方向が照射中心軸Len(Le1)と平行となるように回転させた3次元座標である。
図5に示すように、走査ユニットU1内には、ビームLB1の入射位置から被照射面(基板P)までのビームLB1の進行方向に沿って、反射ミラーM20、ビームエキスパンダーBE、反射ミラーM21、偏光ビームスプリッタBS1、反射ミラーM22、シフト光学部材(平行平板)SR、偏向調整光学部材(プリズム)DP、フィールドアパーチャFA、反射ミラーM23、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM24、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、反射ミラーM25、シリンドリカルレンズCYbが設けられる。さらに、走査ユニットU1内には、走査ユニットU1の描画開始可能タイミングを検出する原点センサ(原点検出器)OP1と、被照射面(基板P)からの反射光を偏光ビームスプリッタBS1を介して検出するための光学レンズ系G10および光検出器(反射光検出部)DT1とが設けられる。ビームLB1の進行方向に沿って、反射ミラーM20〜シリンドリカルレンズCYbまでの光学部材(例えば、ポリゴンミラーPM、fθレンズなど)は、ビーム走査部を構成する。
走査ユニットU1に入射するビームLB1は、−Zt方向に向けて進み、XtYt平面に対して45°傾いた反射ミラーM20に入射する。この走査ユニットU1に入射するビームLB1の軸線は、照射中心軸Le1と同軸になるように反射ミラーM20に入射する。反射ミラーM20は、ビームLB1を走査ユニットU1に入射させる入射光学部材として機能し、入射したビームLB1を、Xt軸と平行に設定される光軸AXaに沿って、反射ミラーM20から−Xt方向に離れた反射ミラーM21に向けて−Xt方向に反射する。したがって、光軸AXaはXtZt平面と平行な面内で照射中心軸Le1と直交する。反射ミラーM20で反射したビームLB1は、光軸AXaに沿って配置されるビームエキスパンダーBEを透過して反射ミラーM21に入射する。ビームエキスパンダーBEは、透過するビームLB1の径を拡大させる。ビームエキスパンダーBEは、集光レンズBe1と、集光レンズBe1によって収斂された後に発散するビームLB1を平行光束にするコリメートレンズBe2とを有する。
反射ミラーM21は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1(光軸AXa)を偏光ビームスプリッタBS1に向けて−Yt方向に反射する。反射ミラーM21に対して−Yt方向に離れて設置されている偏光ビームスプリッタBS1の偏光分離面は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、P偏光のビームを反射し、P偏光と直交する方向に偏光した直線偏光(S偏光)のビームを透過するものである。走査ユニットU1に入射するビームLB1は、P偏光のビームなので、偏光ビームスプリッタBS1は、反射ミラーM21からのビームLB1を−Xt方向に反射して反射ミラーM22側に導く。
反射ミラーM22は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を、反射ミラーM22から−Zt方向に離れた反射ミラーM23に向けて−Zt方向に反射する。反射ミラーM22で反射されたビームLB1は、Zt軸と平行な光軸AXcに沿ってシフト光学部材SR、偏向調整光学部材DP、および、フィールドアパーチャ(視野絞り)FAを通過して、反射ミラーM23に入射する。シフト光学部材SRは、ビームLB1の進行方向(光軸AXc)と直交する平面(XtYt平面)内において、ビームLB1の断面内の中心位置を2次元的に調整する。シフト光学部材SRは、光軸AXcに沿って配置される2枚の石英の平行平板Sr1、Sr2で構成され、平行平板Sr1は、Xt軸回りに傾斜可能であり、平行平板Sr2は、Yt軸回りに傾斜可能である。この平行平板Sr1、Sr2がそれぞれ、Xt軸、Yt軸回りに傾斜することで、ビームLB1の進行方向と直交するXtYt平面において、ビームLB1の中心の位置を2次元に微小量シフトする。この平行平板Sr1、Sr2は、制御装置16の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
偏向調整光学部材DPは、反射ミラーM22で反射されてシフト光学部材SRを通ってきたビームLB1の光軸AXcに対する傾きを微調整するものである。偏向調整光学部材DPは、光軸AXcに沿って配置される2つの楔状のプリズムDp1、Dp2で構成され、プリズムDp1、Dp2の各々は独立して光軸AXcを中心に360°回転可能に設けられている。2つのプリズムDp1、Dp2の回転角度位置を調整することによって、反射ミラーM23に達するビームLB1の軸線と光軸AXcとの平行出し、または、基板Pの被照射面に達するビームLB1の軸線と照射中心軸Le1との平行出しが行われる。なお、2つのプリズムDp1、Dp2によって偏向調整された後のビームLB1は、ビームLB1の断面と平行な面内で横シフトしている場合があり、その横シフトは先のシフト光学部材SRによって元に戻すことができる。このプリズムDp1、Dp2は、制御装置16の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
このように、シフト光学部材SRと偏向調整光学部材DPとを通ったビームLB1は、フィールドアパーチャFAの円形開口を透過して反射ミラーM23に達する。フィールドアパーチャFAの円形開口は、ビームエキスパンダーBEで拡大されたビームLB1の断面内の強度分布の裾野部分をカットする絞りである。フィールドアパーチャFAの円形開口を口径が調整可能な可変虹彩絞りにすると、スポット光SPの強度(輝度)を調整することができる。
反射ミラーM23は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を反射ミラーM24に向けて+Xt方向に反射する。反射ミラーM23で反射したビームLB1は、λ/4波長板QWおよびシリンドリカルレンズCYaを介して反射ミラーM24に入射する。反射ミラーM24は、入射したビームLB1をポリゴンミラー(回転多面鏡、走査用偏向部材、偏向部材)PMに向けて反射する。ポリゴンミラーPMは、入射したビームLB1を、Xt軸と平行な光軸AXfを有するfθレンズFTに向けて+Xt方向側に反射する。ポリゴンミラーPMは、ビームLB1のスポット光SPを基板Pの被照射面上で走査するために、入射したビームLB1をXtYt平面と平行な面内で1次元に偏向(反射)する。具体的には、ポリゴンミラーPMは、Zt軸方向に延びる回転軸AXpと、回転軸AXpの周りに形成された複数の反射面RP(本実施の形態では反射面RPの数Npを8とする)とを有する。回転軸AXpを中心にこのポリゴンミラーPMを所定の回転方向に回転させることで反射面RPに照射されるパルス状のビームLB1の反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの反射面RPによってビームLB1の反射方向が偏向され、基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1のスポット光SPを主走査方向(基板Pの幅方向、Yt方向)に沿って走査することができる。
つまり、1つの反射面RPによって、ビームLB1のスポット光SPを主走査方向に沿って走査することができる。このため、ポリゴンミラーPMの1回転で、基板Pの被照射面上にスポット光SPが走査される描画ラインSL1の数は、最大で反射面RPの数と同じ8本となる。ポリゴンミラーPMは、制御装置16の制御の下、回転駆動源(例えば、モータや減速機構など)RMによって一定の速度で回転する。先に説明したように、描画ラインSL1の実効的な長さ(例えば、30mm)は、このポリゴンミラーPMによってスポット光SPを走査することができる最大走査長(例えば、31mm)以下の長さに設定されており、初期設定(設計上)では、最大走査長の中央に描画ラインSL1の中心点(照射中心軸Le1が通る点)が設定されている。
単レンズで構成されるシリンドリカルレンズCYaは、ポリゴンミラーPMによる主走査方向(回転方向)と直交する非走査方向(Zt方向)に関して、入射したビームLB1をポリゴンミラーPMの反射面RP上に収斂する。つまり、シリンドリカルレンズCYaは、ビームLB1を反射面RP上でXtYt平面と平行な方向に延びたスリット状(長楕円状)に収斂する。母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYaと、後述のシリンドリカルレンズCYbとによって、反射面RPがZt方向に対して傾いている場合(XtYt平面の法線に対する反射面RPの傾き)があっても、その影響を抑制することができる。例えば、基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1(描画ラインSL1)の照射位置が、ポリゴンミラーPMの各反射面RP毎の僅かな傾き誤差によってXt方向にずれることを抑制することができる。
Xt軸方向に延びる光軸AXfを有するfθレンズ(走査用レンズ系)FTは、ポリゴンミラーPMによって反射されたビームLB1を、XtYt平面において、光軸AXfと平行となるように反射ミラーM25に投射するテレセントリック系のスキャンレンズである。ビームLB1のfθレンズFTへの入射角θは、ポリゴンミラーPMの回転角(θ/2)に応じて変わる。fθレンズFTは、反射ミラーM25および単レンズで構成されるシリンドリカルレンズCYbを介して、その入射角θに比例した基板Pの被照射面上の像高位置にビームLB1を投射する。焦点距離をfoとし、像高位置をyとすると、fθレンズFTは、y=fo×θ、の関係(歪曲収差)を満たすように設計されている。したがって、このfθレンズFTによって、ビームLB1をYt方向(Y方向)に正確に等速で走査することが可能になる。fθレンズFTへの入射角θが0度のときに、fθレンズFTに入射したビームLB1は、光軸AXf上に沿って進む。
反射ミラーM25は、fθレンズFTからのビームLB1を基板Pに向けて−Zt方向に反射する。反射ミラーM25で反射されたビームLB1は、シリンドリカルレンズCYbを介して基板Pに投射される。fθレンズFTおよび母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYbによって、基板Pに投射されるビームLB1が基板Pの被照射面上で直径数μm程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPに収斂される。また、基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPは、ポリゴンミラーPMによって、Yt方向に延びる描画ラインSL1によって1次元走査される。なお、fθレンズFTの光軸AXfと照射中心軸Le1とは、同一の平面上にあり、その平面はXtZt平面と平行である。したがって、光軸AXf上に進んだビームLB1は、反射ミラーM25によって−Zt方向に反射し、照射中心軸Le1と同軸になって基板Pに投射される。本第1の実施の形態において、少なくともfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって偏向されたビームLB1を基板Pの被照射面に投射する投射光学系として機能する。また、少なくとも反射部材(反射ミラーM21〜M25)および偏光ビームスプリッタBS1は、反射ミラーM20から基板PまでのビームLB1の光路を折り曲げる光路偏向部材として機能する。この光路偏向部材によって、反射ミラーM20に入射するビームLB1の入射軸と照射中心軸Le1とを略同軸にすることができる。XtZt平面に関して、走査ユニットU1内を通るビームLB1は、略U字状またはコ字状の光路を通った後、−Zt方向に進んで基板Pに投射される。
このように、基板PがX方向に搬送されている状態で、各走査ユニットUn(U1〜U6)によって、ビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPを主走査方向(Y方向)に一次元に走査することで、スポット光SPを基板Pの被照射面に相対的に2次元走査することができる。
なお、本第1の実施の形態では、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な長さを30mmとし、実効的なサイズφが3μmのスポット光SPの1/2ずつ、つまり、1.5μmずつ、オーバーラップさせながらスポット光SPを描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って基板Pの被照射面上に照射する場合は、スポット光SPは、1.5μmの間隔で照射される。したがって、1回の走査で照射されるスポット光SPの数は、20000(=30〔mm〕/1.5〔μm〕)となる。また、基板Pの副走査方向の送り速度(搬送速度)Vtを約2.419mm/secとし、副走査方向についてもスポット光SPの走査が1.5μmの間隔で行われるものとすると、描画ラインSLnに沿った1回の走査開始(描画開始)時点と次の走査開始時点との時間差Tpxは、約620μsec(=1.5〔μm〕/2.419〔mm/sec〕)となる。この時間差Tpxは、8反射面RPのポリゴンミラーPMが1面分(45度=360度/8)だけ回転する時間である。この場合、ポリゴンミラーPMの1回転の時間が、約4.96msec(=8×620〔μsec〕)となるように設定される必要があるので、ポリゴンミラーPMの回転速度Vpは、毎秒約201.613回転(=1/4.96〔msec〕)、すなわち、約12096.8rpmに設定される。
一方、ポリゴンミラーPMの1反射面RPで反射したビームLB1が有効にfθレンズFTに入射する最大入射角度(スポット光SPの最大走査長に対応)は、fθレンズFTの焦点距離と最大走査長によっておおよそ決まってしまう。一例として、8反射面RPのポリゴンミラーPMの場合は、1反射面RP分の回転角度45度のうちで実走査に寄与する回転角度αの比率(走査効率)は、α/45度で表される。本第1の実施の形態では、実走査に寄与する回転角度αを15度とするので、走査効率は1/3(=15度/45度)となり、fθレンズFTの最大入射角は30度(光軸AXfを中心として±15度)となる。そのため、描画ラインSLnの最大走査長(例えば、31mm)分だけスポット光SPを走査するのに必要な時間Tsは、Ts=Tpx×走査効率、となり、先の数値例の場合は、時間Ts、約206.666・・・μsec(=620〔μsec〕/3)、となる。本第1の実施の形態における描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な走査長を30mmとするので、この描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1走査の走査時間Tspは、約200μsec(=206.666・・・〔μsec〕×30〔mm〕/31〔mm〕)、となる。したがって、この時間Tspの間に、20000のスポット光SP(パルス光)を照射する必要があるので、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBの発光周波数(発振周波数)Faは、Fa≒20000回/200μsec=100MHzとなる。
図5に示す原点センサOP1は、ポリゴンミラーPMの反射面RPの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始可能な所定位置にくると原点信号SZ1を発生する。言い換えるならば、原点センサOP1は、これからスポット光SPの走査を行う反射面RPの角度が所定の角度位置になったときに原点信号SZ1を発生する。ポリゴンミラーPMは、8つの反射面RPを有するので、原点センサOP1は、ポリゴンミラーPMが1回転する期間で、8回原点信号SZ1を出力することになる。この原点センサOP1が発生した原点信号SZ1は、制御装置16に送られる。原点センサOP1が原点信号SZ1を発生してから、遅延時間Td1経過後にスポット光SPの描画ラインSL1に沿った走査が開始される。つまり、この原点信号SZ1は、走査ユニットU1によるスポット光SPの描画可能開始タイミング(走査可能開始タイミング)を示す情報となっている。
原点センサOP1は、基板Pの感光性機能層に対して非感光性の波長域のレーザビームBgaを反射面RPに対して射出するビーム送光系Opaと、反射面RPで反射したレーザビームBgaの反射ビームBgbを受光して原点信号SZ1を発生するビーム受光系Opbとを有する。ビーム送光系Opaは、図示しないが、レーザビームBgaを射出する光源と、光源が発光したレーザビームBgaを反射面RPに投射する光学部材(反射ミラーやレンズなど)とを有する。ビーム受光系Opbは、図示しないが、受光した反射ビームBgbを受光して電気信号に変換する光電変換素子を含む受光部と、反射面RPで反射した反射ビームBgbを前記受光部に導く光学部材(反射ミラーやレンズなど)を有する。ビーム送光系Opaとビーム受光系Opbとは、ポリゴンミラーPMの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始される直前の所定位置にきたときに、ビーム送光系Opaが射出したレーザビームBgaの反射ビームBgbをビーム受光系Opbが受光することができる位置に設けられている。走査ユニットU2〜U6に設けられている原点センサOPnをOP2〜OP6で表し、原点センサOP2〜OP6で発生する原点信号SZnをSZ2〜SZ6で表す。制御装置16は、この原点信号SZn(SZ1〜SZ6)に基づいて、どの走査ユニットUnがこれからスポット光SPの走査を行うかを管理している。また、原点信号SZ2〜SZ6が発生してから、走査ユニットU2〜U6による描画ラインSL2〜SL6に沿ったスポット光SPの走査を開始するまでの遅延時間TdnをTd2〜Td6で表す場合がある。
この遅延時間Tdnを変えることで、基板P上における描画ラインSLnの位置を主走査方向(Y方向)に沿ってシフトすることができる。例えば、遅延時間Td1、Td3、Td5を短くすることで、描画ラインSL1、SL3、SL5を、描画ラインSL1、SL3、SL5の主走査方向(−Y方向)とは反対側の方向(+Y方向)にシフトすることができる。逆に、遅延時間Td1、Td3、Td5を長くすることで、描画ラインSL1、SL3、SL5を、描画ラインSL1、SL3、SL5の主走査方向(−Y方向)にシフトすることができる。同様にして、遅延時間Td2、Td4、Td6を短くすることで、描画ラインSL2、SL4、SL6を、描画ラインSL2、SL4、SL6の主走査方向(+Y方向)とは反対側の方向(−Y方向)にシフトすることができる。逆に、遅延時間Td2、Td4、Td6を長くすることで、描画ラインSL2、SL4、SL6を、描画ラインSL2、SL4、SL6の主走査方向(+Y方向)にシフトすることができる。
図5に示す光検出器DT1は、入射した光を光電変換する光電変換素子を有する。ここで、基板Pの感光性機能層に対して走査ユニットU1からビームLB1のスポット光SPを照射すると、その反射光が、シリンドリカルレンズCYb、反射ミラーM25、fθレンズFT、ポリゴンミラーPM、反射ミラーM24、シリンドリカルレンズCYa、λ/4波長板QW、反射ミラーM23、フィールドアパーチャFA、偏向調整光学部材DP、シフト光学部材SR、および、反射ミラーM22を通過して偏光ビームスプリッタBS1に入射する。ここで、偏光ビームスプリッタBS1と基板Pとの間、具体的には、反射ミラーM23とシリンドリカルレンズCYaとの間には、λ/4波長板QWが設けられている。これにより、基板Pに照射されるビームLB1は、このλ/4波長板QWによってP偏光から円偏光のビームLB1に変換され、基板Pから偏光ビームスプリッタBS1に入射する反射光は、このλ/4波長板QWによって、円偏光からS偏光に変換される。したがって、基板Pからの反射光は偏光ビームスプリッタBS1を透過し、光学レンズ系G10を介して光検出器DT1に入射する。
特定材料によるパターン(以下、第1パターン)が予め形成された下層(下地)の上に形成された感光性機能層に対して、走査ユニットU1が新たにパターン(以下、第2パターン)を描画する場合、第2パターンの一部が、下層の第1パターンの一部に重ね合せて描画されることがある。このとき、基板Pに投射されるビームLB1(スポット光SP)の基板Pでの反射光には、ビームLB1の入射方向に沿って逆進する正規反射光(0次回折光)の成分と、下層の第1パターンの段差構造(段差エッジ)によってビームLB1の入射方向と異なる方向に向かって反射する散乱光(若しくは1次以上の回折光)の成分とが含まれる。スポット光SPが走査する下層(下地)の表面状態によって、発生する正規反射光の成分と散乱光(回折光)の成分の各々の光量が変わる。本実施の形態における光検出器DT1は、主に正規反射光の光量(輝度)の変化を検出しており、その光量に応じた信号を用いることで、下層の第1パターンに対応した画像情報を取得することができる。
具体的には、光検出器DT1から出力される光電信号(検出信号)PS1の強度変化を、ビームLB1(スポット光SP)のパルス発光のためのクロック信号LTC(光源装置LSで作られる)に応答して、デジタルサンプリングすることでYt方向の1次元の画像データとして取得する。さらに、描画ラインSL1上における回転ドラムDRの回転角度位置を計測するエンコーダヘッドEN2a、EN2bの計測値に応答して、副走査方向の一定距離(例えば、スポット光SPのサイズφの1/2)ごとにYt方向の1次元の画像データをXt方向に並べることにより、第1パターンの2次元の画像情報を所得する。制御装置16は、この取得した2次元の画像情報に基づいて、下層に形成された第1パターンの位置に関する情報や、そのパターンの形状(歪みを含む)に関する情報を取得することができる。制御装置16は、この取得した第1パターンの位置に関する情報およびその形状に関する情報を用いて、新たに描画すべき第2パターンの位置や形状を補正する。この光検出器DT1による第1パターンの位置に関する情報およびその形状に関する情報の取得については後で詳細に説明する。なお、走査ユニットU2〜U6に設けられている光検出器DTnをDT2〜DT6で表し、光検出器DT2〜DT6が検出した光電信号(検出信号)PSnをPS2〜PS6で表す。
ところで、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の各々が照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに微少な角度分解能で回動(回転)することができるように、図示しない本体フレームに保持されている。この各走査ユニットUn(U1〜U6)が、照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動すると、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)も、基板Pの被照射面上で照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動する。したがって、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、Y方向に対して微少な角度分解能(例えばμラジアンのオーダー)で傾けることができる。各走査ユニットUn(U1〜U6)が照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動した場合であっても、各走査ユニットUn(U1〜U6)内を通過するビームLBn(LB1〜LB6)と各走査ユニットUn(U1〜U6)内の光学的な部材との相対的な位置関係は変わらない。したがって、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、基板Pの被照射面上で回動した描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿ってスポット光SPを走査することができる。この各走査ユニットUn(U1〜U6)の照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りの回動は、制御装置16の制御の下、図示しないアクチュエータによって行われる。
なお、走査ユニットUnの照射中心軸Lenと、走査ユニットUnが実際に回動する軸(回動中心軸)とが完全に一致していなくても、所定の許容範囲内で両者が精密に同軸であればよい。この所定の許容範囲は、走査ユニットUnを角度θsmだけ回動させたときの実際の描画ラインSLnの描画開始点(または描画終了点)と、照射中心軸Lenと回動中心軸とが完全に一致すると仮定したときに走査ユニットUnを所定の角度θsmだけ回動させたときの設計上の描画ラインSLnの描画開始点(または描画終了点)との差分量が、スポット光SPの主走査方向に関して、所定の距離(例えば、スポット光SPのサイズφ)以内となるように設定されている。また、走査ユニットUnに実際に入射するビームLBnの光軸(中心軸)が、走査ユニットUnの回動中心軸と完全に一致してなくても、前記した所定の許容範囲内で同軸であればよい。
図6は、ビーム切換部BDUの構成図であり、国際公開第2015/166910号パンフレットにも開示されている。ビーム切換部BDUは、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)と、複数の集光レンズCD1〜CD6と、複数の反射ミラーM1〜M14と、複数のユニット側入射ミラーIM1〜IM6と、複数のコリメートレンズCL1〜CL6と、吸収体TR1、TR2とを有する。選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、ビームLB(LBa、LBb)に対して透過性を有するものであり、超音波信号で駆動される音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)である。これらの光学的な部材(選択用光学素子AOM1〜AOM6、集光レンズCD1〜CD6、反射ミラーM1〜M14、ユニット側入射ミラーIM1〜IM6、コリメートレンズCL1〜CL6、および、吸収体TR1、TR2)は、板状の支持部材IUBによって支持されている。この支持部材IUBは、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の上方(+Z方向側)で、これらの光学的な部材を下方(−Z方向側)から支持する。したがって、支持部材IUBは、発熱源となる選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)と複数の走査ユニットUn(U1〜U6)との間を断熱する機能も備えている。
光源装置LSaからビームLBaは、反射ミラーM1〜M6によってその光路がつづらおり状に曲げられて、吸収体TR1まで導かれる。また、光源装置LSbからのビームLBbも同様に、反射ミラーM7〜M14によってその光路がつづらおり状に曲げられて、吸収体TR2まで導かれる。以下、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)がいずれもオフ状態(超音波信号が印加されていない状態)の場合で、詳述する。
光源装置LSaからのビームLBa(平行光束)は、Y軸と平行に+Y方向に進んで集光レンズCD1を通って反射ミラーM1に入射する。反射ミラーM1で−X方向に反射したビームLBaは、集光レンズCD1の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第1の選択用光学素子AOM1をストレートに透過し、コリメートレンズCL1によって再び平行光束にされて、反射ミラーM2に至る。反射ミラーM2で+Y方向に反射したビームLBaは、集光レンズCD2を通った後に反射ミラーM3で+X方向に反射される。
反射ミラーM3で+X方向に反射されたビームLBaは、集光レンズCD2の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第2の選択用光学素子AOM2をストレートに透過し、コリメートレンズCL2によって再び平行光束にされて、反射ミラーM4に至る。反射ミラーM4で+Y方向に反射されたビームLBaは、集光レンズCD3を通った後に反射ミラーM5で−X方向に反射される。反射ミラーM5で−X方向に反射されたビームLBaは、集光レンズCD3の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第3の選択用光学素子AOM3をストレートに透過し、コリメートレンズCL3によって再び平行光束にされて、反射ミラーM6に至る。反射ミラーM6で+Y方向に反射したビームLBaは、吸収体TR1に入射する。この吸収体TR1は、ビームLBaの外部への漏れを抑制するためにビームLBaを吸収する光トラップである。
光源装置LSbからのビームLBb(平行光束)は、Y軸と平行に+Y方向に進んで反射ミラーM13に入射し、反射ミラーM13で+X方向に反射したビームLBbは反射ミラーM14で+Y方向に反射される。反射ミラーM14で+Y方向に反射したビームLBbは、集光レンズCD4を通った後に反射ミラーM7で+X方向に反射される。反射ミラーM7で+X方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD4の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第4の選択用光学素子AOM4をストレートに透過し、コリメートレンズCL4によって再び平行光束にされて、反射ミラーM8に至る。反射ミラーM8で+Y方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD5を通った後に反射ミラーM9で−X方向に反射される。
反射ミラーM9で−X方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD5の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第5の選択用光学素子AOM5をストレートに透過し、コリメートレンズCL5によって再び平行光束にされて、反射ミラーM10に至る。反射ミラーM10で+Y方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD6を通った後に反射ミラーM11で+X方向に反射される。反射ミラーM11で+X方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD6の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第6の選択用光学素子AOM6をストレートに透過し、コリメートレンズCL6によって再び平行光束にされて、反射ミラーM12に至る。反射ミラーM12で−Y方向に反射したビームLBbは、吸収体TR2に入射する。この吸収体TR2は、ビームLBbの外部への漏れを抑制するためにビームLBbを吸収する光トラップ(ダンパー)である。
以上のように、選択用光学素子AOM1〜AOM3は、光源装置LSaからのビームLBaを順次透過するようにビームLBaの進行方向に沿って直列に配置される。また、選択用光学素子AOM1〜AOM3は、集光レンズCD1〜CD3とコリメートレンズCL1〜CL3とによって、各選択用光学素子AOM1〜AOM3の内部にビームLBaのビームウェストが形成されるように配置される。これにより、選択用光学素子(音響光学変調素子)AOM1〜AOM3に入射するビームLBaの径を小さくして、回折効率を高くするとともに応答性を高めている。同様に、選択用光学素子AOM4〜AOM6は、光源装置LSbからのビームLBbを順次透過するようにビームLBbの進行方向に沿って直列に配置される。また、選択用光学素子AOM4〜AOM6は、集光レンズCD4〜CD6とコリメートレンズCL4〜CL6とによって、各選択用光学素子AOM4〜AOM6の内部にビームLBbのビームウェストが形成されるように配置される。これにより、選択用光学素子(音響光学変調素子)AOM4〜AOM6に入射するビームLBbの径を小さくして、回折効率を高くするとともに応答性を高めている。
各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、超音波信号(高周波信号)が印加されると、入射したビーム(0次光)LB(LBa、LBb)を、高周波の周波数に応じた回折角で回折させた1次回折光を射出ビーム(ビームLBn)として発生させるものである。したがって、選択用光学素子AOM1から1次回折光として射出されるビームがLB1となり、同様に選択用光学素子AOM2〜AOM6から1次回折光として射出されるビームがLB2〜LB6となる。このように、各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、光源装置LSa、LSbからのビームLB(LBa、LBb)の光路を偏向する機能を奏する。ただし、実際の音響光学変調素子は、1次回折光の発生効率が0次光の80%程度であるため、各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々で偏向されたビームLBn(LB1〜LB6)は、元のビームLB(LBa、LBb)の強度よりは低下している。また、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)のいずれか1つがオン状態のとき、回折されずに直進する0次光が20%程度残存するが、それは最終的に吸収体TR1、TR2によって吸収される。
図6に示すように、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々は、偏向された1次回折光であるビームLBn(LB1〜LB6)を、入射するビームLB(LBa、LBb)に対して−Z方向に偏向するように設置される。選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から偏向して射出するビームLBn(LB1〜LB6)は、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から所定距離だけ離れた位置に設けられたユニット側入射ミラーIM1〜IM6に投射され、そこで−Z方向に照射中心軸Le1〜Le6と同軸になるように反射される。ユニット側入射ミラーIM1〜IM6(以下、単にミラーIM1〜IM6とも呼ぶ)で反射されたビームLB1〜LB6は、支持部材IUBに形成された開口部TH1〜TH6の各々を通って、照射中心軸Le1〜Le6に沿うように走査ユニットU1〜U6の各々に入射する。
なお、選択用光学素子AOMnは、超音波によって透過部材中の所定方向に屈折率の周期的な粗密変化を生じさせる回折格子であるため、入射ビームLB(LBa、LBb)が直線偏光(P偏光かS偏光)である場合、その偏光方向と回折格子の周期方向とは、1次回折光の発生効率(回折効率)が最も高くなるように設定される。図6のように、各選択用光学素子AOMnが入射したビームLB(LBa、LBs)を−Z方向に回折偏向するように設置される場合、選択用光学素子AOMn内に生成される回折格子の周期方向も−Z方向であるので、それと整合するように光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBの偏光方向が設定(調整)される。
なお、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)が1mm程度よりも小さい直径の平行光束である場合、選択用光学素子AOMnの各々に入射するビームLBがそのまま細い平行光束でリレーされるように、集光レンズCDn(CD1〜CD6)とコリメートレンズCLn(CL1〜CL6)を配置してもよい。その場合、選択用光学素子AOMnと対応するユニット側入射ミラーIMn(IM1〜IM6)との間に集光レンズCDnを設け、選択用光学素子AOMnで回折して偏向されたビームLBn(LB1〜LB6)をユニット側入射ミラーIMnの位置またはその近傍位置でビームウェストとなるように集光してもよい。そのために、選択用光学素子AOMnは集光レンズCDnの前側焦点位置に配置され、ユニット側入射ミラーIMnは集光レンズCDnの後側焦点位置またはその近傍に配置される。
各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の構成、機能、作用などは互いに同一のものを用いてもよい。複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)のオン/オフにしたがって、入射したビームLB(LBa、LBb)を回折させた回折光の発生をオン/オフする。例えば、選択用光学素子AOM1は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射した光源装置LSaからのビームLBaを回折させずに透過する。したがって、選択用光学素子AOM1を透過したビームLBaは、コリメートレンズCL1を透過して反射ミラーM2に入射する。一方、選択用光学素子AOM1は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されてオンの状態のときは、入射したビームLBaを回折させてミラーIM1に向かわせる。つまり、この駆動信号によって選択用光学素子AOM1がスイッチングする。ミラーIM1は、選択用光学素子AOM1によって回折された1次回折光であるビームLB1を選択して走査ユニットU1側に反射する。選択用のミラーIM1で反射したビームLB1は、支持部材IUBの開口部TH1を通って照射中心軸Le1に沿って走査ユニットU1に入射する。したがって、ミラーIM1は、反射したビームLB1の光軸(中心軸)が照射中心軸Le1と同軸となるように、入射したビームLB1を反射する。また、選択用光学素子AOM1がオンの状態のとき、選択用光学素子AOM1をストレートに透過するビームLBの0次光(入射ビームの20%程度の強度)は、その後のコリメートレンズCL1〜CL3、集光レンズCD2、CD3、反射ミラーM2〜M6、および、選択用光学素子AOM2、AOM3を透過して吸収体TR1に達する。
同様に、選択用光学素子AOM2、AOM3は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射したビームLBaを回折させずにコリメートレンズCL2、CL3側(反射ミラーM4、M6側)に透過する。一方、選択用光学素子AOM2、AOM3は、制御装置16からの駆動信号が印加されてオンの状態のときは、入射したビームLBaの1次回折光であるビームLB2、LB3をミラーIM2、IM3に向かわせる。このミラーIM2、IM3は、選択用光学素子AOM2、AOM3によって回折されたビームLB2、LB3を走査ユニットU2、U3側に反射する。ミラーIM2、IM3で反射したビームLB2、LB3は、支持部材IUBの開口部TH2、TH3を通って照射中心軸Le2、Le3と同軸となって走査ユニットU2、U3に入射する。
このように、制御装置16は、選択用光学素子AOM1〜AOM3の各々に印加すべき駆動信号(高周波信号)をオン/オフ(ハイ/ロー)にすることによって、選択用光学素子AOM1〜AOM3のいずれか1つをスイッチングして、ビームLBaが後続の選択用光学素子AOM2、AOM3または吸収体TR1に向かうか、偏向されたビームLB1〜LB3の1つが、対応する走査ユニットU1〜U3に向かうかを切り換える。
また、選択用光学素子AOM4は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射した光源装置LSbからのビームLBbを回折させずにコリメートレンズCL4側(反射ミラーM8側)に透過する。一方、選択用光学素子AOM4は、制御装置16からの駆動信号が印加されてオンの状態ときは、入射したビームLBbの1次回折光であるビームLB4をミラーIM4に向かわせる。このミラーIM4は、選択用光学素子AOM4によって回折されたビームLB4を走査ユニットU4側に反射する。ミラーIM4で反射したビームLB4は、照射中心軸Le4と同軸となって、支持部材IUBの開口部TH4を通って走査ユニットU4に入射する。
同様に、選択用光学素子AOM5、AOM6は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射したビームLBbを回折させずにコリメートレンズCL5、CL6側(反射ミラーM10、M12側)に透過する。一方、選択用光学素子AOM5、AOM6は、制御装置16からの駆動信号が印加されてオンの状態ときは、入射したビームLBbの1次回折光であるビームLB5、LB6をミラーIM5、IM6に向かわせる。このミラーIM5、IM6は、選択用光学素子AOM5、AOM6によって回折されたビームLB5、LB6を走査ユニットU5、U6側に反射する。ミラーIM5、IM6で反射したビームLB5、LB6は、照射中心軸Le5、Le6と同軸となって、支持部材IUBの開口部TH5、TH6の各々を通って走査ユニットU5、U6に入射する。
このように、制御装置16は、選択用光学素子AOM4〜AOM6の各々に印加すべき駆動信号(高周波信号)をオン/オフ(ハイ/ロー)にすることによって、選択用光学素子AOM4〜AOM6のいずれか1つをスイッチングして、ビームLBbが後続の選択用光学素子AOM5、AOM6または吸収体TR2に向かうか、偏向されたビームLB4〜LB6の1つが、対応する走査ユニットU4〜U6に向かうかを切り換える。
以上のように、ビーム切換部BDUは、光源装置LSaからのビームLBaの進行方向に沿って直列に配置された複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3)を備えることで、ビームLBaの光路を切り換えてビームLBn(LB1〜LB3)が入射する走査ユニットUn(U1〜U3)を1つ選択することができる。したがって、光源装置LSaからのビームLBaの1次回折光であるビームLBn(LB1〜LB3)を、3つの走査ユニットUn(U1〜U3)の各々に順番に入射させることができる。例えば、走査ユニットU1にビームLB1を入射させたい場合は、制御装置16が、複数の選択用光学素子AOM1〜AOM3のうち、選択用光学素子AOM1のみをオン状態にし、走査ユニットU3にビームLB3を入射させたい場合は、選択用光学素子AOM3のみをオン状態にすればよい。
同様に、ビーム切換部BDUは、光源装置LSbからのビームLBbの進行方向に沿って直列に配置された複数の選択用光学素子AOMn(AOM4〜AOM6)を備えることで、ビームLBbの光路を切り換えてビームLBn(LB4〜LB6)が入射する走査ユニットUn(U4〜U6)を1つ選択することができる。したがって、光源装置LSbからのビームLBbの1次回折光であるビームLBn(LB4〜LB6)を、3つの走査ユニットUn(U4〜U6)の各々に順番に入射させることができる。例えば、走査ユニットU4にビームLB4を入射させたい場合は、制御装置16が、複数の選択用光学素子AOM4〜AOM6のうち、選択用光学素子AOM4のみをオン状態にし、走査ユニットU6にビームLB6を入射させたい場合は、選択用光学素子AOM6のみをオン状態にすればよい。
この複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)に対応して設けられ、対応する走査ユニットUnにビームLBnを入射させるか否かを切り換えている。なお、本第1の実施の形態では、選択用光学素子AOM1〜AOM3を、第1の光学素子モジュールと呼び、選択用光学素子AOM4〜AOM6を、第2の光学素子モジュールと呼ぶ。また、第1の光学素子モジュールの選択用光学素子AOM1〜AOM3に対応する走査ユニットU1〜U3を第1の走査モジュールと呼び、第2の光学素子モジュールの選択用光学素子AOM4〜AOM6に対応する走査ユニットU4〜U6を第2の走査モジュールと呼ぶ。したがって、第1の走査モジュールのいずれか1つの走査ユニットUnと、第2の走査モジュールのいずれか1つの走査ユニットUnとで、スポット光SPの走査(描画動作)が並行して行われることになる。
上述したように、本第1の実施の形態では、走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの実走査に寄与する回転角度αを15度とするので、走査効率は1/3となる。したがって、例えば、1つの走査ユニットUnが1反射面RP分の角度(45度)回転する間に、スポット光SPの走査を行うことができる角度は15度となり、それ以外の角度範囲(30度)では、スポット光SPの走査を行うことはできず、その間にポリゴンミラーPMに入射するビームLBnは無駄となる。したがって、ある1つの走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの回転角度が実走査に寄与しない角度となっている間に、それ以外の他の走査ユニットUnにビームLBnを入射させることで、他の走査ユニットUnのポリゴンミラーPMによってスポット光SPの走査を行わせる。ポリゴンミラーPMの走査効率は1/3なので、ある1つの走査ユニットUnがスポット光SPを走査してから次の走査を行うまでの間に、それ以外の2つの走査ユニットUnにビームLBnを振り分けて、スポット光SPの走査を行うことが可能である。そのため、本第1の実施の形態は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)を2つのグループ(走査モジュール)に分け、3つの走査ユニットU1〜U3を第1の走査モジュールとし、3つの走査ユニットU4〜U6を第2の走査モジュールとした。
これにより、例えば、走査ユニットU1のポリゴンミラーPMが45度(1反射面RP分)回転する間に、ビームLBn(LB1〜LB3)を3つの走査ユニットU1〜U3のいずれか1つに順番に入射させることができる。したがって、走査ユニットU1〜U3の各々は、光源装置LSaからのビームLBaを無駄にすることなく、順番にスポット光SPの走査を行うことができる。同様に、走査ユニットU4のポリゴンミラーPMが45度(1反射面RP分)回転する間に、ビームLBn(LB4〜LB6)を3つの走査ユニットU4〜U6のいずれか1つに順番に入射させることができる。したがって、走査ユニットU4〜U6は、光源装置LSbからのビームLBbを無駄にすることなく、順番にスポット光SPの走査を行うことができる。なお、各走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの間に、ポリゴンミラーPMは、丁度1反射面RP分の角度(45度)回転していることになる。
本第1の実施の形態では、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)の各々は、所定の順番でスポット光SPの走査を行うので、これに対応して、制御装置16は、各光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)を所定の順番でオンにスイッチングして、ビームLBn(LB1〜LB3、LB4〜LB6)が入射する走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)を順番に切り換える。例えば、各走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3、U4〜U6のスポット光SPの走査を行う順番が、U1→U2→U3、U4→U5→U6、となっている場合は、制御装置16は、各光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)を、AOM1→AOM2→AOM3、AOM4→AOM5→AOM6、の順番でオンにスイッチングして、ビームLBnが入射する走査ユニットUnを、U1→U2→U3、U4→U5→U6、の順番で切り換える。
なお、ポリゴンミラーPMが1反射面RP分の角度(45度)回転する間に、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)が順番にスポット光SPの走査を行うためには、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)の各ポリゴンミラーPMが、次のような条件を満たして回転する必要がある。その条件とは、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)の各ポリゴンミラーPMが、同一の回転速度Vpとなるように同期制御されるとともに、各ポリゴンミラーPMの回転角度位置(各反射面RPの角度位置)が所定の位相関係となるように同期制御される必要がある。本第1の実施の形態では、所定の位相関係とは、ポリゴンミラーPMの回転角度位置が15度ずつずれている関係のことをいう。なお、各走査モジュールの3つの走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの回転速度Vpが同一で回転することを同期回転と呼ぶ。
ビーム切換部BDUの各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、走査ユニットUn(U1〜U6)の各々のポリゴンミラーPMによるスポット光SPの1回の走査期間の間だけ、オン状態となっていればよい。また、ポリゴンミラーPMの反射面数をNp、ポリゴンミラーPMの回転速度をVp(rpm)とすると、ポリゴンミラーPMの反射面RPの1面分の回転角度に対応した時間Tpxは、Tpx=60/(Np×Vp)〔秒〕となる。例えば、反射面数Npが8、回転速度Vp〔rpm〕が1.20968万の場合、時間Tpxは、約0.62ミリ秒となる。これは周波数に換算すると約1.6129kHz程度であり、紫外域の波長のビームLBをパターンデータ(描画データ)に応答して数十MHz程度で高速に変調するための音響光学変調素子に比べると、相当に低い応答周波数の音響光学変調素子でよいことを意味する。そのため、入射するビームLB(0次光)に対して偏向されるビームLB1〜LB6(1次回折光)の回折角が大きいものを使うことができ、選択用光学素子AOM1〜AOM6をストレートに通過するビームLBの進路に対して、偏向されたビームLB1〜LB6を分離するミラーIM1〜IM6の配置が容易になる。
図7は、光源装置(パルス光源装置、パルスレーザ装置)LSa(LSb)の構成を示す図であり、基本的には国際公開第2015/166910号パンフレットに開示された構成と同じである。ファイバーレーザ装置としての光源装置LSa(LSb)は、パルス光発生部20と、制御回路22とを備える。パルス光発生部20は、DFB半導体レーザ素子30、32、偏光ビームスプリッタ34、描画用光変調器としての電気光学素子(ビーム強度変調部)36、この電気光学素子36の駆動回路36a、偏光ビームスプリッタ38、吸収体40、励起光源42、コンバイナ44、ファイバー光増幅器46、波長変換光学素子48、50、および、複数のレンズ素子GLを有する。制御回路22は、クロック信号LTCおよび画素シフトパルスBSCを発生する信号発生部22aを有する。信号発生部22aが発生した画素シフトパルスBSCは、制御装置16の統括制御部104に出力される。なお、光源装置LSaの信号発生部22aから統括制御部104に出力される画素シフトパルスBSCと、光源装置LSbの信号発生部22aから統括制御部104に出力される画素シフトパルスBSCとを区別するため、光源装置LSaからの画素シフトパルスBSCをBSCaで表し、光源装置LSbからの画素シフトパルスBSCをBSCbで表す場合がある。
DFB半導体レーザ素子(第1固体レーザ素子)30は、所定周波数である発振周波数Fa(例えば、100MHz)で俊鋭若しくは尖鋭のパルス状の種光(パルスビーム、ビーム)S1を発生し、DFB半導体レーザ素子(第2固体レーザ素子)32は、所定周波数である発振周波数Fa(例えば、100MHz)で緩慢(時間的にブロード)なパルス状の種光(パルスビーム、ビーム)S2を発生する。DFB半導体レーザ素子30が発生する種光S1と、DFB半導体レーザ素子32が発生する種光S2とは、発光タイミングが同期している。種光S1、S2は、ともに1パルス当たりのエネルギーは略同一であるが、偏光状態が互いに異なり、ピーク強度は種光S1の方が強い。この種光S1と種光S2とは、直線偏光の光であり、その偏光方向は互いに直交している。本第1の実施の形態では、DFB半導体レーザ素子30が発生する種光S1の偏光状態をS偏光とし、DFB半導体レーザ素子32が発生する種光S2の偏光状態をP偏光として説明する。この種光S1、S2は、赤外波長域の光である。
制御回路22は、信号発生部22aから送られてきたクロック信号LTCのクロックパルスに応答して種光S1、S2が発光するようにDFB半導体レーザ素子30、32を制御する。これにより、このDFB半導体レーザ素子30、32は、クロック信号LTCの各クロックパルス(発振周波数Fa)に応答して、所定周波数(発振周波数)Faで種光S1、S2を発光する。この制御回路22は、制御装置16によって制御される。このクロック信号LTCのクロックパルスの周期(=1/Fa)を、基準周期Taと呼ぶ。DFB半導体レーザ素子30、32で発生した種光S1、S2は、偏光ビームスプリッタ34に導かれる。
なお、この基準クロック信号となるクロック信号LTCは、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)のベースとなるものである。また、信号発生部22aには、基板Pの被照射面上における描画ラインSLnの倍率補正を行うための倍率補正情報TMgが制御装置16から入力される。倍率補正とは、簡単に説明すると、倍率補正情報TMgに応じて、クロック信号LTCの発振周波数Faを変更させることで、描画データ上の1画素(1ビット)に含まれるスポット光の数は一定にしたまま、主走査方向に沿って投射されるスポット光SPの投射間隔(つまり、スポット光の発振周波数)を一律に微調整する。これにより、基板Pの被照射面上における描画ラインSLnの長さ(走査長)を微調整することができる。この描画ラインSLnの伸縮(走査長の微調整)は、描画ラインSLnの最大走査長(例えば、31mm)の範囲内で行うことができる。なお、倍率補正情報が0、つまり、補正無しの場合の発振周波数Faを100Mzとする。
偏光ビームスプリッタ34は、S偏光の光を透過し、P偏光の光を反射するものであり、DFB半導体レーザ素子30が発生した種光S1と、DFB半導体レーザ素子32が発生した種光S2とを、電気光学素子36に導く。詳しくは、偏光ビームスプリッタ34は、DFB半導体レーザ素子30が発生したS偏光の種光S1を透過することで種光S1を電気光学素子36に導く。また、偏光ビームスプリッタ34は、DFB半導体レーザ素子32が発生したP偏光の種光S2を反射することで種光S2を電気光学素子36に導く。DFB半導体レーザ素子30、32、および、偏光ビームスプリッタ34は、種光S1、S2を生成するパルス光源部35を構成する。
電気光学素子(ビーム強度変調部)36は、種光S1、S2に対して透過性を有するものであり、例えば、電気光学変調器(EOM:Electro-Optic Modulator)が用いられる。電気光学素子36は、描画ビット列データSBa(SBb)のハイ/ロー状態に応答して、種光S1、S2の偏光状態を駆動回路36aによって切り換えるものである。描画ビット列データSBaは、走査ユニットU1〜U3の各々が露光すべきパターンに応じたパターンデータ(ビットパターン)に基づいて生成されるものであり、描画ビット列データSBbは、走査ユニットU4〜U6の各々が露光すべきパターンに応じたパターンデータ(ビットパターン)に基づいて生成されるものである。したがって、描画ビット列データSBaは、光源装置LSaの駆動回路36aに入力され、描画ビット列データSBbは、光源装置LSbの駆動回路36aに入力される。DFB半導体レーザ素子30、DFB半導体レーザ素子32の各々からの種光S1、S2は波長域が800nm以上と長いため、電気光学素子36として、偏光状態の切り換え応答性がGHz程度のものを使うことができる。
パターンデータ(描画データ)は、走査ユニットUn毎に設けられ、各走査ユニットUnによって描画されるパターンを、スポット光SPのサイズφに応じて設定される寸法Pxyの画素によって分割し、複数の画素の各々を前記パターンに応じた論理情報(画素データ)で表したものである。つまり、このパターンデータは、スポット光SPの主走査方向(Y方向)に沿った方向を行方向とし、基板Pの副走査方向(X方向)に沿った方向を列方向とするように2次元に分解された複数の画素の論理情報で構成されているビットマップデータである。この画素の論理情報は、「0」または「1」の1ビットのデータである。「0」の論理情報は、基板Pに照射するスポット光SPの強度を低レベル(非描画)にすることを意味し、「1」の論理情報は、基板P上に照射するスポット光SPの強度を高レベル(描画)にすることを意味する。なお、画素の寸法Pxyの主走査方向(Y方向)の寸法をPyとし、副走査方向(X方向)の寸法をPxとする。
パターンデータの1列分の画素の論理情報は、1本分の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に対応するものである。したがって、1列分の画素の数は、基板Pの被照射面上での画素の寸法Pxyと描画ラインSLnの長さとに応じて決まる。この1画素の寸法Pxyは、スポット光SPのサイズφと同程度、或いは、それ以上に設定され、例えば、スポット光SPの実効的なサイズφが3μmの場合は、1画素の寸法Pxyは、3μm角程度以上に設定される。1列分の画素の論理情報に応じて、1本の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って基板Pに投射されるスポット光SPの強度が変調される。この1列分の画素の論理情報をシリアルデータDLnと呼ぶ。つまり、パターンデータは、シリアルデータDLnが列方向に並んだビットマップデータである。走査ユニットU1のパターンデータのシリアルデータDLnをDL1で表し、同様に、走査ユニットU2〜U6のパターンデータのシリアルデータDLnをDL2〜DL6で表す。本実施の形態では、スポット光SPが1.5μm(サイズφの1/2)ずつオーバーラップしながら基板P上に投射されるので、2つのスポット光SPが1画素に対応する。したがって、描画ラインSLnに沿って投射されるスポット光の数が20000となるので、1列分の画素の数は、その半分である10000となる。そのため、1列分の画素の論理情報を1行目から順々に駆動回路36aに出力するタイミングを制御する画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)の発振周波数は、クロック信号LTCの発振周波数Faの1/2となる。つまり、画素シフトパルスBSCは、クロック信号LTCを1/2に分周したものである。
また、走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)は、所定の順番でスポット光SPの走査を1回ずつ行う動作を繰り返すことから、それに対応して、走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)のパターンデータのシリアルデータDL1〜DL3(DL4〜DL6)も、所定の順番で、光源装置LSa(LSb)の駆動回路36aに出力される。この光源装置LSaの駆動回路36aに順次出力されるシリアルデータDL1〜DL3を描画ビット列データSBaと呼び、この光源装置LSbの駆動回路36aに順次出力されるシリアルデータDL4〜DL6を描画ビット列データSBbと呼ぶ。
例えば、第1の走査モジュールにおいて、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番が、U1→U2→U3、の場合は、まず、1列分のシリアルデータDL1が光源装置LSaの駆動回路36aに出力され、続いて、1列分のシリアルデータDL2が光源装置LSaの駆動回路36aに出力されるといった具合に、描画ビット列データSBaを構成する1列分のシリアルデータDL1〜DL3が、DL1→DL2→DL3、の順番で光源装置LSaの駆動回路36aに出力される。その後、次の列のシリアルデータDL1〜DL3が、DL1→DL2→DL3、の順番で描画ビット列データSBaとして光源装置LSaの駆動回路36aに出力される。同様に、第2の走査モジュールにおいて、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番が、U4→U5→U6、の場合は、まず、1列分のシリアルデータDL4が光源装置LSbの駆動回路36aに出力され、続いて、1列分のシリアルデータDL5が光源装置LSbの駆動回路36aに出力されるといった具合に、描画ビット列データSBbを構成する1列分のシリアルデータDL4〜DL6が、DL4→DL5→DL6、の順番で光源装置LSbの駆動回路36aに出力される。その後、次の列のシリアルデータDL4〜DL6が、DL4→DL5→DL6、の順番で描画ビット列データSBbとして光源装置LSbの駆動回路36aに出力される。
駆動回路36aに入力される描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がロー(「0」)状態のとき、電気光学素子36は種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ38に導く。一方で、駆動回路36aに入力される描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がハイ(「1」)状態のとき、電気光学素子36は入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて、つまり、偏光方向を90度変えて偏光ビームスプリッタ38に導く。このように駆動回路36aが描画ビット列データSBa(SBb)に基づいて電気光学素子36を駆動することによって、電気光学素子36は、描画ビット列データSBa(SBb)の画素の論理情報がハイ状態(「1」)のときは、S偏光の種光S1をP偏光の種光S1に変換し、P偏光の種光S2をS偏光の種光S2に変換する。
偏光ビームスプリッタ38は、P偏光の光を透過してレンズ素子GLを介してコンバイナ44に導き、S偏光の光を反射させて吸収体40に導くものである。この偏光ビームスプリッタ38を透過する光(種光)をビームLseで表す。このパルス状のビームLseの発振周波数はFaとなる。励起光源42は励起光を発生し、発生した励起光は、光ファイバー42aを通ってコンバイナ44に導かれる。コンバイナ44は、偏光ビームスプリッタ38から照射されたビームLseと励起光とを合成して、ファイバー光増幅器46に出力する。ファイバー光増幅器46は、励起光によって励起されるレーザ媒質がドープされている。したがって、合成されたビームLseおよび励起光が伝送するファイバー光増幅器46内では、励起光によってレーザ媒質が励起されることにより、種光としてのビームLseが増幅される。ファイバー光増幅器46内にドープされるレーザ媒質としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ツリウム(Tm)などの希土類元素が用いられる。この増幅されたビームLseは、ファイバー光増幅器46の射出端46aから所定の発散角を伴って放射され、レンズ素子GLによって収斂またはコリメートされて波長変換光学素子48に入射する。
波長変換光学素子(第1の波長変換光学素子)48は、第2高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)によって、入射したビームLse(波長λ)を、波長がλの1/2の第2高調波に変換する。波長変換光学素子48として、疑似位相整合(Quasi Phase Matching:QPM)結晶であるPPLN(Periodically Poled LiNbO3)結晶が好適に用いられる。なお、PPLT(Periodically Poled LiTaO3)結晶などを用いることも可能である。
波長変換光学素子(第2の波長変換光学素子)50は、波長変換光学素子48が変換した第2高調波(波長λ/2)と、波長変換光学素子48によって変換されずに残留した種光(波長λ)との和周波発生(Sum Frequency Generation:SFG)により、波長がλの1/3の第3高調波を発生する。この第3高調波が、370nm以下の波長帯域(例えば、355nm)にピーク波長を有する紫外線光(ビームLB)となる。
駆動回路36aに印加する描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がロー(「0」)の場合は、電気光学素子(ビーム強度変調部)36は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ38に導く。そのため、偏光ビームスプリッタ38を透過するビームLseは種光S2となる。したがって、光源装置LSa(LSb)から最終的に出力されるP偏光のLBa(LBb)は、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2と同じ発振プロファイル(時間特性)を有する。すなわち、この場合は、ビームLBa(LBb)は、パルスのピーク強度が低く、時間的にブロードな鈍った特性となる。ファイバー光増幅器46は、そのようなピーク強度が低い種光S2に対する増幅効率が低いため、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、露光に必要なエネルギーまで増幅されない光となる。したがって、露光という観点からみれば、実質的に光源装置LSa(LSb)はビームLBa(LBb)を射出していないのと同じ結果となる。つまり、基板Pに照射されるスポット光SPの強度は低レベルとなる。ただし、パターンの露光が行われない期間(非露光期間)では、種光S2由来の紫外域の不要なビームLBa(LBb)が僅かな強度であっても照射され続ける。そのため、描画ラインSL1〜SL6が、長時間、基板P上の同じ位置にある状態が続く場合(例えば、搬送系のトラブルによって基板Pが停止している場合など)は、光源装置LSa(LSb)のビームLBa(LBb)の射出窓(図示略)から各走査ユニットU1〜U6のシリンドリカルレンズCYbの直後までの光路中に可動シャッタを設けて、基板Pに紫外域の不要なビームが照射されないように阻止するとよい。
一方、駆動回路36aに印加する描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がハイ(「1」)の場合は、電気光学素子(ビーム強度変調部)36は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて偏光ビームスプリッタ38に導く。そのため、偏光ビームスプリッタ38を透過するビームLseは種光S1となる。したがって、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1に由来して生成されたものとなる。DFB半導体レーザ素子30からの種光S1はピーク強度が強いため、ファイバー光増幅器46によって効率的に増幅され、光源装置LSa(LSb)から出力されるP偏光のビームLBa(LBb)は、基板Pの露光に必要なエネルギーを持つ。つまり、基板Pに照射されるスポット光SPの強度は高レベルとなる。
このように、光源装置LSa(LSb)内に、描画用光変調器としての電気光学素子36を設けたので、1つの電気光学素子(ビーム強度変調部)36を制御することで、走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)によって走査されるスポット光SPの強度を、描画すべきパターンに応じて変調させることができる。したがって、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、強度変調された描画ビームとなる。
ここで、本第1の実施の形態では、駆動回路36aに描画ビット列データSBa(DL1〜DL3)、SBb(DL4〜DL6)が印加されていない期間においても、光源装置LSa、LSbから種光S2に由来するビームLBa、LBbが射出されることになる。そのため、スポット光SPの走査が可能な最大走査長(例えば、31mm)以下の範囲内で描画ラインSLnの実効的な走査長(例えば、30mm)が設定されていたとしても、実際には、スポット光SPは、最大走査長の全範囲に亘って主走査方向に沿って走査される。ただし、描画ラインSLn以外の位置に投射されるスポット光SPの強度は低レベルである。したがって、本第1の実施の形態でいうところの描画ラインSLnとは、各シリアルデータDL1〜DL6によってスポット光SPの強度が変調されて走査される、つまり、描画される走査線のことをいう。したがって、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの走査期間と、シリアルデータDLnの各画素の論理情報が出力される期間とは略同一である。
次に、光検出器DT1による第1パターンの位置に関する情報およびその形状に関する情報の取得について説明する。図8Aは、走査ユニットU1によって新たに描画すべき第2パターンPT2の一部分に対応したパターンデータの一例を示し、図8Bは、図8Aに示す位置Aの列のシリアルデータDL1に基づいて、スポット光SPを描画ラインSL1に沿って描画(スポット光SPを走査しつつ強度を変調)した場合のスポット光SPの強度を示す図である。図8Aにおいては、画素の論理情報が「1」となる領域を白で表し、画素の論理情報が「0」となる領域をグレー(灰色)で表している。図9Aは、図8Aに示すパターンデータを用いて、下層の第1パターンPT1に重ね合わせて第2パターンPT2を描画している例を示し、図9Bは、光検出器DT1がそのときに検出した反射光の強度を示す図である。図9Aは、位置Aの列のシリアルデータDL1に基づいて、スポット光SPを描画した状態を示し、図9Bは、そのときに光検出器DT1が検出した反射光の強度を示している。なお、図9Aのおいては、グレー(灰色)で表した領域が第1パターンPT1を表し、斜線で表した領域が描画された第2パターンPT2を表している。
図8Bに示すように、基板P上に投射されるビームLB1のスポット光SPの強度は、画素の論理情報が「1」となっている領域においては高レベルとなり、画素の論理情報が「0」となっている領域においては0(低レベル)となる。なお、上述したように、画素の論理情報が「0」の場合であってもビームLB1のスポット光SPが基板Pに投射されるが、このビームLB1の強度は露光という観点からみれば、実質的にスポット光SPが投射されていないものと見做すことができるので、画素の論理情報が「0」となっている領域のスポット光SPの強度を0として扱っている。このことは、図9Bにおいても同様である。
一方で、基板Pからの反射光に関しては、図9Bに示すように、画素の論理情報が「1」となっている領域のうち、第1パターンPT1が形成されている領域に照射されたスポット光SPの反射光の強度Eaが最も高くなり、第1パターンPT1が形成されていない領域に照射されたスポット光SPの反射光の強度Ebは、強度Eaに比べ低くなる。また、画素の論理情報が「0」となっている領域(つまり、スポット光SPが照射されていない領域)においては、その反射光の強度は0となる。したがって、光検出器DTnを用いて取得した画像データ(信号波形)は、描画された第2パターンPT2と重複する領域のうち、第1パターンPT1が形成されている領域は明るくなり、第1パターンPT1が形成されていない領域は暗くなった画像データとなる。なお、第2パターンPT2と重複しない領域に関しては、スポット光SPが投射されていないので、最も暗い領域となる。なお、この図9A、9Bでは、基板Pを厚さ100μm程度のPETシートとし、その表面に第1パターンPT1として数十μmの厚さで反射率の高い銅(Cu)を蒸着したものとする。
したがって、制御装置16(具体的には図12を参照して後述する計測部116)は、光検出器DTnを用いて取得した画像データに基づいて、輝度が閾値より高い領域を抽出することで、第1パターンPT1が形成されている位置およびその形状(歪みなども含む)を計測することができる。また、制御装置16(計測部116)は、第1パターンPT1の位置を計測することによって、新たに描画すべき第2パターンPT2と第1パターンPT1との相対的な位置関係を計測することもできる。上述したように、第2パターンPT2は、アライメント系を用いて、第2パターンPT2を描画すべき基板P上の位置を特定しているので、第2パターンPT2の位置は既知であるとともに、光検出器DT1を用いて取得した画像データに基づいて、第2パターンPT2の位置も計測することができる。制御装置16(具体的には図12を参照して後述する露光制御部114)は、計測部116が計測した第1パターンPT1の位置、形状、および、第2パターンPT2と第1パターンPT1との相対的な位置関係のうち少なくとも一方に基づいて、現在描画している第2パターンPT2を補正することで、第1パターンPT1に対する第2パターンPT2の位置合せ精度、重ね合せ精度を高精度に行うことができる。なお、第1パターンPT1のX方向における各位置は、エンコーダヘッドEN2a、EN2bに基づくカウント値によって表される。また、光検出器DT1による第1パターンの位置に関する情報およびその形状に関する情報の取得について説明したが、光検出器DT2〜DT6についても同様である。
ところで、光検出器DT1で検出される画像データ(信号波形)は、図9Bのように、第1パターンPT1の部分での反射光の強度Eaと、第1パターンPT1以外の部分(基板P)での反射光の強度Ebとの比(コントラスト)が明確に高くなるとは限らない。例えば、第1パターンPT1の材料によっては描画用のビームLBn(スポット光SP)の波長に対する反射率が低い場合、検出される画像データ(信号波形)のコントラスト(Ea/Eb)が低下する。しかしながら、第1パターンPT1は所定の厚みを持つ段差構造であるため、第1パターンPT1のエッジ部では、散乱光の光量が増加し、光検出器DT1まで達する正規反射光の光量が低下する。図10A、10Bは、そのような状況で得られる画像データ(信号波形)の一例を説明する図である。
図10Aのように、基板P上に所定の厚みで低反射率の第1パターンPT1が形成され、その上に所定の厚さでレジスト層Regが一様に形成されている状態で、第1パターンPT1を横切るようにスポット光SPが走査されると、基板P上からは正規反射光Lw0、第1パターンPT1上からは正規反射光Lw1が発生し、そして第1パターンPT1の段差エッジ部からは散乱光Ldfも発生する。散乱光Ldfは、ビームLbnの入射方向と逆方向に進む正規反射光Lw0、Lw1とは異なる方向に発生し、光検出器DT1まで達しない。そのため、図10Bに示すように、光検出器DT1から得られる画像データの波形(信号波形)としては、正規反射光Lw0の強度Ebと正規反射光Lw1の強度Eaとに大きな差が無い状態になる。そして、第1パターンPT1の段差エッジ部では、散乱光Ldfの発生によって相対的に正規反射光の強度Ecはボトム状に低下する。図10Bのような信号波形の場合であっても、制御装置16(計測部116)は第1パターンPT1のエッジ位置を解析することができる。
ところが、第1パターンPT1に対して第2パターンPT2が相対的に所定精度で位置合わせされて描画されるものの、第2パターンPT2が第1パターンPT1と重なり合わない領域に描画(露光)される場合もある。その場合、第1パターンPT1からの反射光Lw1が得られないため、第1パターンPT1の位置および形状と、第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係とを計測することはできない。この第1パターンPT1と第2パターンPT2とが重なり合わない領域が多い場合には、露光領域W(図4)中で確認したい部分での位置合せ精度、重ね合せ精度を計測できない。そこで、第2パターンPT2を描画するためのパターンデータに、第1パターンPT1の一部と重なり合うようなダミーパターンのデータを組み込む。
図11は、基板P上に既に形成された下層の第1パターンPT1と、ダミーパターンデータが組み込まれた重ね合わせ露光用の第2層のパターンデータに基づいて、基板P上に位置合わせして露光される第2パターンPT2とを示す図である。図11では、一例として走査ユニットU1によって第2パターンPT2(ダミーパターンを含む)を描画する場合を示し、ビームLB1(スポット光SP)の走査による描画ラインSL1が基板Pの搬送方向(X方向)の位置Xd1、Xd2の各々に位置した場合を示す。
図11において、第1パターンPT1は、電子デバイスを構成するパターンであり、パターンデータに基づいて描画される第2パターンPT2は、電子デバイスを構成する本パターンPT2aと、電子デバイスを構成しないダミーパターンPT2bとを含む。ダミーパターンPT2bは、電子デバイスの動作や性能に影響しないような位置と形状であって、本パターンPT2aに対して予め定められた間隔距離に設定される。本パターンPT2aは、第1パターンPT1とは重なり合っていないが、ダミーパターンPT2bの少なくとも一部が第1パターンPT1の少なくとも一部と重なり合うように描画されている。すなわち、位置Xd1における描画ラインSL1上では、パルス発光するビームLB1のスポット光SPが本パターンPT2aの描画領域にのみ投射され、第1パターンPT1上には投射されない。さらに、位置Xd2における描画ラインSL1上には本パターンPT2aが存在せず、パルス発光するビームLB1のスポット光SPは第1パターンPT1の一部を含むダミーパターンPT2bの描画領域にのみ投射される。
このように、電子デバイスを構成する第2パターンPT2(本パターンPT2a)が第1パターンPT1と重なり合わなくても、第2パターンPT2に応じたパターンデータにダミーパターンデータを組み込むことで、ダミーパターンPT2bを第1パターンPT1に対して重なるように露光することができる。したがって、電子デバイスを構成する本パターンPT2aが第1パターンPT1と重なり合わない領域がある場合であっても、制御装置16(計測部116)は、その領域における第1パターンPT1の位置および形状と、その領域における第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係とを計測することができる。それにより、第1パターンPT1に対する第2パターンPT2の露光時の位置合せ精度、重ね合せ精度をほぼリアルタイムで高精度に確認することができる。
また、新たに描画する第2パターンPT2と重なり合うように、下層の第1パターンPT1中にダミーパターンを設けるようにしてもよい。図12は、基板Pに既に形成された下層の第1パターンPT1と、露光用の第2層のパターンデータに基づいて基板P上に位置合わせして露光される第2パターンPT2とを示す図である。第1パターンPT1は、電子デバイスを構成する本パターンPT1aと、電子デバイスを構成しないダミーパターンPT1bとを含み、パターンデータに基づいて描画される第2パターンPT2は、電子デバイスを構成する本パターンである。本パターンPT1aは、第2パターンPT2とは重なり合っていないが、ダミーパターンPT1bの少なくとも一部が第2パターンPT2の少なくとも一部と重なり合うように形成されている。ここでも、ダミーパターンPT1bは、電子デバイスの動作や性能に影響しないような位置と形状であって、本パターンPT1aに対して予め定められた間隔距離に設定される。
図12でも、一例として走査ユニットU1によって第2パターンPT2(本パターンPT2aを含む)を描画する場合を示し、ビームLB1(スポット光SP)の走査による描画ラインSL1が基板Pの搬送方向(X方向)の位置Xd1、Xd2の各々に位置した場合を示す。位置Xd1、Xd2の各々における描画ラインSL1、SL2上では、パルス発光するビームLB1のスポット光SPが本パターンPT2aの描画領域にのみ投射され、第1パターンPT1の本パターンPT1a上には投射されない。しかしながら、位置Xd2における描画ラインSL1上で本パターンPT2aの露光のために、パルス発光するビームLB1のスポット光SPが投射される間、第1パターンPT1のダミーパターンPT1bもスポット光SPで投射される。このように、電子デバイスを構成する第1パターンPT1(本パターンPT1a)が第2パターンPT2と重なり合わなくても、第1パターンPT1に予めダミーパターンPT1bを設けることで、第2パターンPT2の一部をダミーパターンPT1bに対して重なるように露光することができる。したがって、電子デバイスを構成する本パターンPT1aが第2パターンPT2と重なり合わない領域がある場合であっても、制御装置16(計測部116)は、その領域における第1パターンPT1の位置および形状と、その領域における第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係とを計測することができる。それにより、第1パターンPT1に対する第2パターンPT2の露光時の位置合せ精度、重ね合せ精度をほぼリアルタイムで高精度に確認することができる。
さらに、下層の第1パターンPT1にダミーパターンPT1bを設けるととともに、第2パターンPT2を描画するためのパターンデータに、ダミーパターンデータを組み込むようにしてもよい。この場合は、第1パターンPT1は、電子デイバスを構成する本パターンPT1aと電子デバイスの動作や性能に影響を与えないダミーパターンPT1bとを含む。また、パターンデータに応じて描画される第2パターンPT2には、電子デバイスを構成する本パターンPT2aと、電子デバイスの動作や性能に影響を与えないダミーパターンPT2bとが含まれる。したがって、この場合は、ダミーパターンPT2bの少なくとも一部がダミーパターンPT1bの少なくとも一部と重なり合うように露光される。以上のように、基板P上に予め形成されているダミーパターンPT1bと、基板P上に描画されるダミーパターンPT2bとを少なくとも部分的に重ね合わせ露光することで、その領域における第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係とを計測することができる。それにより、第1パターンPT1に対する第2パターンPT2の位置合せ精度、重ね合せ精度を高精度に確認できる。
図13は、露光装置EXの電気的な制御システムの構成を示すブロック図である。露光装置EXの制御装置16は、ポリゴン駆動制御部100、選択素子駆動制御部102、統括制御部104、マーク位置検出部106、および、回転位置検出部108を有する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)の原点センサOPn(OP1〜OP6)が出力した原点信号SZn(SZ1〜SZ6)は、ポリゴン駆動制御部100および選択素子駆動制御部102に入力される。また、各走査ユニットUn(U1〜U6)の光検出器DTn(DT1〜DT6)が検出した光電信号(検出信号)PSn(PS1〜PS6)は、統括制御部104(計測部116)に入力される。なお、図13に示す例では、光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)が選択用光学素子AOM2(AOM5)によって回折され、その1次回折光であるビームLB2(LB5)が走査ユニットU2(U5)に入射している状態を示している。
ポリゴン駆動制御部100は、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転を駆動制御する。ポリゴン駆動制御部100は、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMを駆動させる回転駆動源(モータや減速機など)RM(図5参照)を有し、このモータの回転を駆動制御することで、ポリゴンミラーPMの回転を駆動制御する。ポリゴン駆動制御部100は、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のポリゴンミラーPMの回転角度位置が所定の位相関係となるように、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のポリゴンミラーPMの各々を同期回転させる。詳しくは、ポリゴン駆動制御部100は、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のポリゴンミラーPMの回転速度(回転数)Vpが互いに同一で、且つ、一定の角度分ずつ回転角度位置の位相がずれるように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転を制御する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転速度Vpは、全て同一とする。
本第1の実施の形態では、上述したように、実走査に寄与するポリゴンミラーPMの回転角度αを15度とするので、反射面RPが8つの八角形のポリゴンミラーPMの走査効率は1/3となる。第1の走査モジュールでは、3つの走査ユニットUnによるスポット光SPの走査が、U1→U2→U3、の順番で行われる。したがって、この順番で、この3つの走査ユニットU1〜U3の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が15度ずつずれた状態で等速回転するように、走査ユニットU1〜U3の各々のポリゴンミラーPMがポリゴン駆動制御部100によって同期制御される。また、第2の走査モジュールでは、3つの走査ユニットUnによるスポット光SPの走査が、U4→U5→U6、の順番で行われる。したがって、この順番で、3つの走査ユニットU4〜U6の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が15度ずつずれた状態で等速回転するように、走査ユニットU4〜U6の各々のポリゴンミラーPMがポリゴン駆動制御部100によって同期制御される。
具体的には、ポリゴン駆動制御部100は、例えば、第1の走査モジュールに関しては、走査ユニットU1の原点センサOP1からの原点信号SZ1を基準にして、走査ユニットU2の原点センサOP2からの原点信号SZ2が時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU2のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。ポリゴン駆動制御部100は、原点信号SZ1を基準にして、走査ユニットU3の原点センサOP3からの原点信号SZ3が2×時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU3のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。この時間Tsは、ポリゴンミラーPMが15度回転する時間(スポット光SPの最大走査時間)であり、本第1の実施の形態では、約206.666・・・μsec(=Tpx×1/3=620〔μsec〕/3)である。これにより、各走査ユニットU1〜U3の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相差が、U1、U2、U3の順番で15度ずつずれた状態となる。したがって、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3は、U1→U2→U3の順番で、スポット光SPの走査を行うことができる。
第2の走査モジュールに関しても同様に、ポリゴン駆動制御部100は、例えば、走査ユニットU4の原点センサOP4からの原点信号SZ4を基準にして、走査ユニットU5の原点センサOP5からの原点信号SZ5が時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU5のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。ポリゴン駆動制御部100は、原点信号SZ4を基準にして、走査ユニットU6の原点センサOP6からの原点信号SZ6が2×時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU6のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。これにより、各走査ユニットU4〜U6の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が、U4、U5、U6の順番で15度ずつずれた状態となる。したがって、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U4〜U6)は、U4→U5→U6の順番で、スポット光SPの走査を行うことができる。
選択素子駆動制御部(ビーム切換駆動制御部)102は、ビーム切換部BDUの各光学素子モジュールの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)を制御して、各走査モジュールの1つの走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでに、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)を、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)に順番に振り分ける。なお、1つの走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでに、ポリゴンミラーPMは45度回転しており、その時間間隔は、時間Tpx(=3×Ts)となる。
具体的には、選択素子駆動制御部102は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生すると、原点信号SZnが発生してから一定時間(オン時間Ton)だけ、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)を発生した走査ユニットUn(U1〜U6)に対応する選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)に駆動信号(高周波信号)HFn(HF1〜HF6)を印加する。これにより、駆動信号(高周波信号)HFnが印加された選択用光学素子AOMnは、オン時間Tonだけオン状態となり、対応する走査ユニットUnにビームLBnを入射させることができる。また、原点信号SZnを発生した走査ユニットUnにビームLBnを入射させるので、スポット光SPの走査を行うことができる走査ユニットUnにビームLBnを入射させることができる。なお、このオン時間Tonは、時間Ts以下の時間である。また、選択素子駆動制御部102は、取得した原点信号SZn(SZ1〜SZ6)を統括制御部104に出力する。
第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3で発生する原点信号SZ1〜SZ3は、時間Ts間隔で、SZ1→SZ2→SZ3、の順で発生する。そのため、第1の光学素子モジュールの各選択用光学素子AOM1〜AOM3には、時間Ts間隔で、AOM1→AOM2→AOM3、の順番で駆動信号(高周波信号)HF1〜HF3がオン時間Tonだけ印加される。したがって、第1の光学素子モジュール(AOM1〜AOM3)は、光源装置LSaからのビームLBn(LB1〜LB3)が入射する1つの走査ユニットUnを時間Ts間隔で、U1→U2→U3、の順番で切り換えることができる。これにより、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが時間Ts間隔で、U1→U2→U3、の順番で切り換わることになる。また、走査ユニットU1がスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの時間(Tpx=3×Ts)に、光源装置LSaからのビームLBn(LB1〜LB3)を3つの走査ユニットUn(U1〜U3)のいずれか1つに順番に入射させることができる。
同様に、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットU4〜U6で発生する原点信号SZ4〜SZ6は、時間Ts間隔で、SZ4→SZ5→SZ6、の順で発生する。そのため第2の光学素子モジュールの各選択用光学素子AOM4〜AOM6には、時間Ts間隔で、AOM4→AOM5→AOM6、の順番で駆動信号(高周波信号)HF4〜HF6がオン時間Tonだけ印加される。したがって、第2の光学素子モジュール(AOM4〜AOM6)は、光源装置LSbからのビームLBn(LB4〜LB6)が入射する1つの走査ユニットUnを時間Ts間隔で、U4→U5→U6、の順番で切り換えることができる。これにより、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが時間Ts間隔で、U4→U5→U6、の順番で切り換わることになる。また、走査ユニットU4がスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの時間(Tpx=3×Ts)に、光源装置LSbからのビームLBn(LB4〜LB6)を3つの走査ユニットUn(U4〜U6)のいずれか1つに順番に入射させることができる。
図13に示すように、統括制御部(ビーム制御部)104は、ビームLBのスポット光SPが描画される描画ラインSLnの倍率およびビームLBの強度変調、および、描画するパターン形状の補正などを制御するものである。統括制御部104は、倍率設定部110、描画データ出力部112、露光制御部114、および、各走査ユニットUn(U1〜U6)内の光検出器DTn(DT1〜DT6)からの検出信号PSn(PS1〜PS6)を入力する計測部116を備える。倍率設定部110は、露光制御部114から送られてきた倍率補正情報TMgを記憶するとともに、倍率補正情報TMgを光源装置LS(LSa、LSb)の制御回路22の信号発生部22aに出力する。信号発生部22aのクロック発生部60は、この倍率補正情報TMgに応じた発振周波数Faのクロック信号LTCを生成する。そのため、描画倍率補正情報TMgに応じて、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)の発振周波数を変えたり、或いはビームLBnの1走査中にクロック信号LTCの所々で発振周期を微少に変更したりすることができる。計測部116は、光検出器DTnの各々からの検出信号PSnを入力するアナログ/デジタル変換器(A/Dコンバータ)を含み、図7の光源装置LSa(LSb)中の制御回路22(信号発生部22a)で生成される画素シフトパルスBSCa(BSCb)の各パルス、或いはクロック信号LTCの各クロックパルスに応答して、検出信号PSnの波形(例えば、図9B、図10B)の強度をデジタルサンプリングして一時的に記憶する。
描画データ出力部112は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の各々に対応したパターンデータを、描画データ出力部112内に設けられた図示しない記憶部に記憶している。そして、描画データ出力部112は、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3)のうち、原点信号SZnを発生した走査ユニットUn(これからスポット光SPの走査を行う走査ユニットUn)に対応する1列分のシリアルデータDLn(DL1〜DL3)を描画ビット列データSBaとして光源装置LSaの駆動回路36aに出力する。また、描画データ出力部112は、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U4〜U6)のうち、原点信号SZnを発生した走査ユニットUn(これからスポット光SPの走査を行う走査ユニットUn)に対応する1列分のシリアルデータDLn(DL4〜DL6)を描画ビット列データSBbとして光源装置LSbの駆動回路36aに出力する。第1の走査モジュールに関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU1〜U3の順番は、U1→U2→U3、となっているので、描画データ出力部112は、DL1→DL2→DL3、の順番で繰り返されるシリアルデータDL1〜DL3を描画ビット列データSBaとして出力する。第2の走査モジュールに関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU4〜U6の順番は、U4→U5→U6、となっているので、描画データ出力部112は、DL4→DL5→DL6、の順番で繰り返されるシリアルデータDL4〜DL6を描画ビット列データSBbとして出力する。
また、描画データ出力部112は、露光制御部114から送られてきた遅延時間Tdn(Td1〜Td6)に応じて、シリアルデータDLn(DL1〜DL6)の出力タイミングを制御する。詳しくは、描画データ出力部112は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)を発生した走査ユニットUn(U1〜U6)に対応するシリアルデータDLn(DL1〜DL6)を、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)の発生タイミングから、遅延時間Tdn(Td1〜Td6)の経過後に出力する。例えば、原点センサOP1が原点信号SZ1を発生すると、描画データ出力部112は、原点信号SZ1の発生タイミングから遅延時間Td1経過後にシリアルデータDL1を出力する。同様に、原点センサOP2〜OP6が原点信号SZ2〜SZ6を発生すると、描画データ出力部112は、原点信号SZ2〜SZ6の発生タイミングから遅延時間Td2〜Td6経過後にシリアルデータDL2〜DL6を出力する。描画するパターンの非補正時には、遅延時間Tdn(Td1〜Td6)は、初期値に設定されている。この初期値とは、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の中心点が描画ラインSLn(SL1〜SL6)の最大走査長の中央(中点)と一致するような値である。露光制御部114は、この遅延時間Tdn(Td1〜Td6)を変えることによって、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の基板P上の位置を主走査方向(Y方向)にシフトすることができる。
このシリアルデータDLn(DL1〜DL6)は、上述したように行方向に並んだ複数の画素の論理情報で構成されている。そのため、描画データ出力部112は、出力するシリアルデータDL1〜DL3の複数の画素の論理情報を、光源装置LSaから送られてきた画素シフトパルスBSCaに応じて1行目から順々に光源装置LSaの駆動回路36aに出力する。同様に、描画データ出力部112は、出力するシリアルデータDL4〜DL6の複数の画素の論理情報を、光源装置LSbから送られてきた画素シフトパルスBSCbに応じて1行目から順々に光源装置LSbの駆動回路36aに出力する。具体的には、描画データ出力部112は、不図示のYアドレスカウンタを有し、このYアドレスカウンタが画素シフトパルスBSCa、BSCbの各々をカウントすることで、出力する画素の論理情報の行方向(Y方向)のYアドレス値(カウント値)を指定する。描画データ出力部112は、この指定されたYアドレス値(カウント値)の画素の論理情報を出力する。このように、画素シフトパルスBSCa、BSCbによって、出力する画素の論理情報が行方向にシフトされる。
なお、光源装置LSaの駆動回路36aに出力するシリアルデータDL1〜DL3の列方向のシフトは、例えば、描画データ出力部112に設けられた図示しないXアドレスカウンタによって行われる。このXアドレスカウンタは、シリアルデータDL1〜DL3(または走査ユニットU1〜U3)の各々に対応して設けられ、次に走査を行う走査ユニットU2、U3、U1の原点センサOP2、OP3、OP1の原点信号SZ2、SZ3、SZ1をカウントすることすることで、次に出力するシリアルデータDL1、DL2、DL3の列方向のXアドレス値(カウント値)を指定する。例えば、シリアルデータDL1(または走査ユニットU1)に対応して設けられたXアドレスカウンタは、シリアルデータDL1を出力し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU2の原点センサOP2の原点信号SZ2をカウントすることで、次に出力するシリアルデータDL1の列方向のXアドレス値(カウント値)を選択する。
同様にして、光源装置LSbの駆動回路36aに出力するシリアルデータDL4〜DL6の列方向のシフトは、例えば、描画データ出力部112に設けられた図示しないXアドレスカウンタによって行われる。このXアドレスカウンタは、シリアルデータDL4〜DL6(または走査ユニットU4〜U6)の各々に対応して設けられ、次に走査を行う走査ユニットU5、U6、U4の原点センサOP5、OP6、OP4の原点信号SZ5、SZ6、SZ4をカウントすることすることで、次に出力するシリアルデータDL4、DL5、DL6の列方向のXアドレス値(カウント値)を指定する。例えば、シリアルデータDL4(または走査ユニットU4)に対応して設けられたXアドレスカウンタは、シリアルデータDL4を出力し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU5の原点センサOP5の原点信号SZ5をカウントすることで、次に出力するシリアルデータDL4の列方向のXアドレス値(カウント値)を選択する。
さて、図13に示した露光制御部114は、倍率設定部110および描画データ出力部112を制御するものである。露光制御部114には、マーク位置検出部106が検出した設置方位線Lx1、Lx4上におけるマークMKm(MK1〜MK4)の位置情報と、回転位置検出部108が検出した設置方位線Lx1〜Lx4上における回転ドラムDRの回転角度位置情報(カウンタ回路CN1a〜CN4a、CN1b〜CN4bに基づくカウント値)とが入力される。露光制御部114は、設置方位線Lx1上におけるマークMKm(MK1〜MK4)の位置情報と、設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置(カウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値)とに基づいて、基板Pの副走査方向(X方向)における露光領域Wの描画露光の開始位置を検出(決定)する。
そして、露光制御部114は、描画露光の開始位置が検出されたときの設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置と、設置方位線Lx2上における回転角度位置(カウンタ回路CN2a、CN2bに基づくカウント値)とに基づいて、基板Pの描画露光の開始位置が設置方位線Lx2上にある描画ラインSL1、SL3、SL5上まで搬送されたか否かを判断する。露光制御部114は、描画露光の開始位置が描画ラインSL1、SL3、SL5上まで搬送されたと判断すると、倍率設定部110および描画データ出力部112などを制御して、走査ユニットU1、U3、U5にスポット光SPの走査による描画を開始させる。走査ユニットU1、U3、U5によるスポット光の走査による描画は、シリアルデータDL1、DL3、DL5を光源装置LSa、LSbの駆動回路36aに出力することで開始される。
その後、露光制御部114は、描画露光の開始位置が検出されたときの設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置と、設置方位線Lx3上における回転角度位置(カウンタ回路CN3a、CN3bのカウント値)とに基づいて、基板Pの描画露光の開始位置が設置方位線Lx3上にある描画ラインSL2、SL4、SL6上まで搬送されたか否かを判断する。露光制御部114は、描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上まで搬送されたと判断すると、倍率設定部110および描画データ出力部112を制御して、さらに、走査ユニットU2、U4、U6にスポット光SPの走査を開始させる。走査ユニットU2、U4、U6によるスポット光の走査による描画は、シリアルデータDL2、DL4、DL6を光源装置LSa、LSbの駆動回路36aに出力することで開始される。
なお、露光制御部114は、基板Pの副走査方向(X方向)における露光領域Wの描画露光の終了位置が、描画ラインSL1、SL3、SL5上に到達したと判断すると、走査ユニットU1、U3、U5によるスポット光SPの走査を終了させる。また、露光制御部114は、基板Pの副走査方向(X方向)における露光領域Wの描画露光の終了位置が、描画ラインSL2、SL4、SL6上に到達したと判断すると、走査ユニットU2、U4、U6によるスポット光SPの走査を終了させる。
また、露光制御部114は、マーク位置検出部106が検出した設置方位線Lx1、Lx4上におけるマークMKm(MK1〜MK4)の位置情報と、回転位置検出部108が検出した設置方位線Lx1、Lx4上における回転ドラムDRの回転角度位置情報とに基づいて、基板Pまたは露光領域Wの歪み(変形)を逐次演算する。例えば、基板Pが長尺方向に大きなテンションを受けたり、熱プロセスを受けたりして変形している場合は、露光領域W(下層の第1パターンPT1)の形状も歪み(変形し)、マークMKm(MK1〜MK4)の配列も、図4に示すような矩形状にならず、歪んだ(変形した)状態になる。基板Pまたは露光領域W(下層の第1パターンPT1)が歪んだ場合は、第1パターンPT1と新たに描画すべき第2パターンPT2との間に相対的な位置誤差が発生する。したがって、露光制御部114は、アライメント系によって検出したマークMKmの基板P上の位置に基づいて、推定される第1パターンPT1の位置誤差、形状誤差(歪み誤差)、或いは、第1パターンPT1と描画すべき第2パターンPT2との相対的な重ね誤差の少なくとも1つを計測(推定)する。そして、推定される位置誤差、形状誤差および、重ね誤差の少なくとも1つに基づいて、新たに描画する第2パターンPT2の描画状態を補正する。具体的には、露光制御部(補正部)114は、第2パターンPT2に応じたパターンデータ、電気光学素子36によるビームLB(LBa、LBb、LBn)の描画タイミング、第2パターンPT2の倍率、および、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の傾きの少なくとも1つ補正することで、第2パターンPT2の描画状態を補正する。これにより、第2パターンPT2は、基板P上に形成されたマークMKmの配置に基づいて推定される露光領域W中の第1パターンPT1の位置誤差、形状誤差などに応じて、重ね誤差が低減されるように補正された状態で重ね合わせ露光される。
露光制御部114が描画データ出力部112内に記憶されているパターンデータを補正することで、パターンデータに応じて描画露光される第2パターンPT2の描画位置、および、形状を補正することができる。露光制御部114が描画データ出力部112に出力する遅延時間Tdn(Td1〜Td6)を補正することで、電気光学素子36によるビームLBの描画タイミングが補正されて、基板P上における描画ラインSLn(SL1〜SL6)の位置が主走査方向にシフトする。これにより、描画露光される第2パターンPT2の描画位置および形状を補正することができる。露光制御部114が倍率設定部110に出力する倍率補正情報TMgを生成することで、描画露光される第2パターンPT2の倍率(大きさ)を補正することができる。また、シリアルデータDLn(DL1〜DL6)の列毎に、つまり、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿ったスポット光SPの走査毎(または複数の走査毎)に倍率補正情報TMgを徐々に変えることで、描画露光される第2パターンPT2の形状を意図的に歪ませることもできる。露光制御部114が複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の各々を照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動させるために設けられた前記アクチュエータを制御するための補正傾き角情報を生成することで、描画ラインSLn(SL1〜SL6)のY方向に対する傾きを補正することができる。これにより、描画露光される第2パターンPT2の描画位置および形状を補正することができる。
このように、露光制御部114が下層に形成された第1パターンPT1(露光領域W)に応じて新たに描画する第2パターンPT2を補正することで、位置合せ精度、重ね合せ精度を向上させることができる。しかしながら、アライメント系(アライメント顕微鏡AM1m、AM2m、エンコーダヘッドENja、ENjb、スケール部SDa、SDb)では、第1パターンPT1と一定の位置関係で形成されたマークMKm(具体的には、露光領域Wの周りに形成されたマークMKm)を用いて下層の第1パターンPT1の変形を検出している。そのため、第1パターンPT1(露光領域W)の内部の変形などは考慮されていない。したがって、アライメント系による第2パターンPT2の補正では、下層に形成された第1パターンPT1と新たに描画する第2パターンPT2との間に相対的な位置誤差(重ね合わせ誤差)が残留している可能性があり、第1パターンPT1と第2パターンPT2との位置合せ精度、重ね合せ精度が不十分になることもある。特に、走査ユニットUnの各々の描画ラインSLnによって露光されるパターンの継ぎ部分では、重ね合わせ精度とともに、その継ぎ精度も許容範囲内に抑える必要もある。
そこで、本第1の実施の形態では、統括制御部104に設けられる計測部116が、アライメント系(アライメント顕微鏡AM11〜AM14)による計測結果に基づいて位置補正して第2パターンPT2を実際に描画露光している間に、光検出器DTn(DT1〜DT6)が検出した光電信号(検出信号)PSn(PS1〜PS6)に基づいて、基板P上に形成されている第1パターンPT1と、描画露光している第2パターンPT2との相対的な位置関係、或いは、第1パターンPT1の位置や形状の測定している。基板P上に形成済みの第1パターンPT1と描画露光される第2パターンPT2との相対的な位置関係の計測は、第1パターンPT1(本パターンPT1a、或いはダミーパターンPT1b)の位置と描画露光される第2パターンPT2(本パターンPT2a、或いはダミーパターンPT2b)との各位置を、光電信号(検出信号)PSn中の波形の変化位置を、画素シフトパルスBSCa(BSCb)のシフトパルス、或いはクロック信号LTCのクロックパルスの計数値に対応させて求めることで行われる。この第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係は、アライメント系によるマーク位置計測結果に基づいても補正しきれずに残留している位置誤差(残留位置誤差)である。そして、露光制御部114は、計測部116が測定した第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係の残留位置誤差、或いは第1パターンPT1の形状情報の少なくとも一方を用いて、残留位置誤差の計測後に引き続き描画される第2パターンPT2を逐次補正している。この場合の第2パターンPT2の補正も、第2パターンPT2に応じたパターンデータ、電気光学素子36によるビームLB(LBa、LBb、LBn)の描画タイミング、第2パターンPT2の倍率、および、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の傾きの少なくとも1つ補正することによって行われる。これにより、第1パターンPT1と第2パターンPT2との間の残留位置誤差を抑制することができ、第1パターンPT1と第2パターンPT2との位置合せ、重ね合せ精度を、長時間に渡って許容範囲内に抑えつつ、連続して長尺パターン(長尺の露光領域W)を露光することができる。
なお、上記第1の実施の形態では、アライメント系による計測結果に基づいて第2パターンPT2の描画位置を補正してから、計測部116によって第2パターンPT2の露光状態(重ね合わせ状態)の残留位置誤差を求めて逐次補正したが、アライメント系による計測結果が既に重ね合わせ精度の許容範囲内に入っている場合は、第2パターンPT2の描画位置の補正は行わず、計測部116による残留位置誤差の計測のみを続け、実際に露光される第2パターンPT2の重ね合わせ精度が許容範囲内か否かを確認するだけでもよい。
このように、本第1の実施の形態の露光装置EXは、光源装置LSからのビームLBnをパターン情報に応じて強度変調させつつ、ビームLBnを基板P上に投射して主走査方向に走査することで、基板P上にパターンを描画するものあって、ビームLBnの主走査方向への走査のために、光源装置LSからのビームLBnを偏向するポリゴンミラーPMを含むビーム走査部と、ビームLBnが基板Pに投射されたときに発生する反射光をビーム走査部のポリゴンミラーPMを介して光電検出する光検出器DTnとを有する走査ユニットUnと、基板P上に特定材料で予め形成された第1パターンPT1の少なくとも一部に、新たに描画すべき第2パターンPT2の少なくとも一部が重ねて描画されるように、パターン情報に応じてビームLBnの強度変調を制御する電気光学素子36と、基板P上に第2パターンPT2が描画される間に、光検出器DTnから出力される検出信号PSnに基づいて、第1パターンPT1の描画位置、または形状、或いは第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係のうち少なくとも一方を計測する計測部116と、を備える。これにより、実際に第2パターンPT2を描画し続ける間、基板P上に既に形成された第1パターンPT1と新たに露光される第2パターンPT2との相対的な位置関係(重ね合わせ精度)を高精度に確認し続けることができる。
露光装置EXは、基板P上に形成された第1パターンPT1と一定の位置関係で基板P上に形成されたアライメント用のマークMKmを検出し、マークMKmの検出位置に基づいて、描画すべき第2パターンPT2と第1パターンPT1の相対的な位置誤差を、ビームLBnの走査による第2パターンPT2の描画に先だって推定するアライメント系(アライメント顕微鏡AM11〜AM14)を備えているので、実際に第2パターンPT2を描画する前に、第1パターンPT1の位置ずれや形状変形をある程度予測することができる。
電気光学素子36は、アライメント系によって推定される第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置誤差が低減されるように、第2パターンPT2のパターン情報に基づいたビームLBnの描画タイミングを補正する。計測部116は、計測された第1パターンPT1の位置に関する情報と、電気光学素子36によって描画タイミングなどを補正して描画される第2パターンPT2の位置とを、クロック信号LTCを基準にして求めて比較しているので、第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な残留位置誤差をほぼリアルタイムに求めることができる。
以上のように、露光装置EXの露光制御部114は、計測部116が計測した第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係(相対的な残留位置誤差も含む)に基づいて、描画する第2パターンの描画状態を補正する。これにより、第1パターンPT1と第2パターンPT2との位置合せ、重ね合せを露光中に高精度に維持できる。露光制御部114は、計測部116が計測した第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係に基づいて、少なくとも、第2パターンPT2に応じたパターンデータ(描画データ、パターン情報)の補正、電気光学素子36によるビームLBnの描画タイミング、第2パターンPT2の倍率補正、或いは、第2パターンPT2の形状補正のいずれか1つを行う。
第1パターンPT1は、第2パターンPT2の少なくとも一部と重なるように設けられたダミーパターンPT1bを含んでもよいし、第2パターンPT2が、第1パターンPT1の少なくとも一部と重なるように、パターンデータに組み込まれたダミーパターンPT2bを含んでもよい。また、第1パターンPTは、電子デバイスを構成する本パターンPT1aとダミーパターンPT1bとを含み、第2パターンPT2は、第1パターンPT1のダミーパターンPT1bの少なくとも一部と重なるようにパターンデータに組み込まれたダミーパターンPT2bを含んでもよい。これにより、電子デバイスを構成する第1パターンPT1の本パターンPT1aと電子デバイスを構成する第2パターンPT2の本パターンPT2aとの一部が互いに重複しない場合であっても、第1パターンPT1と一部が重ね合うように第2パターンPT2を描画することができる。したがって、計測部116は、第1パターンPT1の位置ずれや形状誤差を露光中にほぼリアルタイムに計測して、第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係を正確に計測することができる。
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態では、露光用のビームLBnの反射光を検出するので、露光用のビームLBnのスポット光SPが投射されない基板P上の領域に関しては、第1パターンPT1の位置、形状、および、第1パターンPTと第2パターンPT2との相対的な位置関係を計測することはできない。そこで、本第2の実施の形態においては、走査ユニットUnaは、露光用のビームLBnとは別の計測用のビーム(以下、計測光)MLnも基板Pに投射し、光検出器DTnmは、計測光MLnの投射により基板Pで反射した反射光を検出する。これにより、露光用のビームLBnが投射されない基板P上の領域に関しても、第1パターンPT1の位置や形状、或いは第1パターンPTと第2パターンPT2との相対的な位置関係の少なくとも一方を計測することが可能となる。この計測光MLnは、基板Pの感光面に対して低感度若しくは感度を有さない波長域のビーム(非感光性ビーム)である。基板Pの感光面に対して低感度とは、例えば、露光用のビームLBnの1%以下の感度にすることである。
図14は、第2の実施の形態による走査ユニットU1aの構成を示す図である。なお、各走査ユニットUna(U1a〜U6a)は、同一の構成を有することから、走査ユニット(描画ユニット)U1aについてのみ説明し、他の走査ユニット(描画ユニット)U2a〜U6aについてはその説明を省略する。また、上記第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、上記第1の実施の形態と異なる部分だけを説明する。したがって、特に説明する必要のない光学部材については、その図示を省略している。図14においては、fθレンズFTの光軸AXfと平行する方向をXt方向とし、光軸AXfを通りポリゴンミラーPMの偏光方向と平行な平面上において、Xt方向と直交する方向をYt方向とし、XtYt平面と直交する方向をZt方向とする。
XtZt平面に対して45度傾いた波長選択性のダイクロイックミラーDMは、+Xt方向に進む平行光束のビームLB1をそのまま透過して、ダイクロイックミラーDMの+Xt方向側に離れて配置された反射ミラーM24に導く。ダイクロイックミラーDMは、光源装置(第2光源装置)LS2からの計測光ML1を反射ミラーM24に向けて反射する。ダイクロイックミラーDMを透過したビームLB1は、λ/4波長板QWおよびシリンドリカルレンズCYa透過した後、反射ミラーM24に入射する。反射ミラーM24は、入射したビームLB1をポリゴンミラーPMに向けて反射する。ポリゴンミラーPMの後に設けられたfθレンズFT、反射ミラーM25、および、単レンズで構成されるシリンドリカルレンズCYbは、上記第1の実施の形態と同様なので説明を割愛する。
偏光ビームスプリッタPBSは、光源装置(第2光源装置)LS2が射出した直線偏光の計測光ML1を透過する。計測光ML1の波長は、ダイクロイックミラーDMで分離可能な程度に、露光用のビームLB1の波長(例えば355nm)よりも長く設定されている。例えば、光源装置LS2が射出した計測光ML1がP偏光の光である場合、偏光ビームスプリッタPBSは、P偏光の光を透過し、P偏光の光と直交する直線偏光の光(つまり、S偏光の光を)を反射する。本第2の実施の形態では、光源装置LS2が射出する計測光ML1をP偏光の光として説明する。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測光ML1は、反射ミラーM26およびレンズG22などを介して−Yt方向側に進み、XtZt平面に対して45度傾いたダイクロイックミラーDMに入射する。これにより、ダイクロイックミラーDMは、入射した計測光ML1を+Xt方向側に反射して反射ミラーM24に導く。なお、ダイクロイックミラーDMに入射する計測光ML1は平行光束となっている。ダイクロイックミラーDMで反射された計測光ML1は、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYaを通って、反射ミラーM24に入射する。反射ミラーM24は、入射した計測光ML1もポリゴンミラーPMに向けて反射する。これにより、ポリゴンミラーPMおよびfθレンズFTなどによって、計測光ML1のスポット光MSPも基板P上で主走査方向(Y方向、Yt方向)に沿って走査される。
基板Pで反射したビームLB1および計測光ML1の反射光は、シリンドリカルレンズCYb、反射ミラーM25、fθレンズFT、ポリゴンミラーPM、反射ミラーM24、シリンドリカルレンズCYa、λ/4波長板QWを介してダイクロイックミラーDMに入射する。ダイクロイックミラーDMは、ビームLB1の波長帯域を透過し、計測光ML1の波長帯域を反射するので、計測光ML1(スポット光MSP)の基板Pでの反射光は、ダイクロイックミラーDMで反射して、レンズG22および反射ミラーM26などを介して偏光ビームスプリッタPBSに入射する。ダイクロイックミラーDMと反射ミラーM24との間には、λ/4波長板QWが設けられているので、基板Pに投射される計測光ML1は、このλ/4波長板QWによってP偏光から円偏光の光に変換され、基板Pから偏光ビームスプリッタBS1に入射する計測光ML1の反射光は、このλ/4波長板QWによって、円偏光からS偏光の光に変換される。したがって、偏光ビームスプリッタPBSに入射した計測光ML1は、偏光ビームスプリッタPBSで反射し、レンズG24を介して光検出器DT1mに入射する。
ここで、光源装置LS2は、連続して計測光(連続光)ML1を発光し続けるものであってもよいし、パルス状の計測光(パルス光)ML1を所定の周波数で発光するものであってもよい。この光源装置LS2は、走査ユニットUna(U1a〜U6a)毎に設けてもよく、1つのまたは2つの光源装置LS2を設けてもよい。光源装置LS2を1つにする場合は、光源装置LS2が射出した計測光MLを、ビームスプリッタなどを介して6つに分岐にし、分岐された各々の計測光MLn(ML1〜ML6)を走査ユニットUn(U1〜U6)に入射させる。光源装置LS2を2つにする場合は、上述したように、2つの光源装置LS2の各々が射出した計測光MLnを、音響光学変調素子(AOM)を用いて時分割にして、3つの走査ユニットU1a〜U3a、U4a〜U6aの各々に順番に入射させてもよい。計測光MLnが入射する走査ユニットUnaの切り換えは、ビームLBnの場合と同様に、原点信号SZnの発生タイミングに応じて切り換える。つまり、これからスポット光SPの走査を行う走査ユニットUnaに計測光MLnを入射させる。
図15Aは、図14に示すシリンドリカルレンズCYaから基板Pに投射されるまでのビームLB1を、ビームLB1の偏光方向(走査方向)と平行な−Yt方向側から見た場合の概略図、図15Bは、図14に示すシリンドリカルレンズCYaから基板Pに投射されるまでのビームLB1を、ビームLB1の偏向方向(走査方向)と平行な平面と直交する方向側からみた場合の概略図である。図14、図15A、および、図15Bを参照して、シリンドリカルレンズCYaから基板Pに投射されるまでのビームLB1の光路、形状について説明する。
シリンドリカルレンズCYaは、母線がYt方向と平行しているので、走査方向(Yt方向)に関しては、入射した平行光束のビームLB1および計測光ML1をそのまま透過し(図15B参照)、走査方向と垂直な平面(XtZt平面)に関しては、入射した平行光束のビームLB1および計測光ML1を後焦点位置で収斂させる(図14A参照)。このように、母線がYt方向と平行するようにシリンドリカルレンズCYaを設けることで、上記第1の実施の形態と同様に、ビームLB1および計測光ML1を、ポリゴンミラーPMの反射面RP上でXtYt平面と平行な方向に延びたスリット状(長楕円状)に成形することができる。
fθレンズFTは、非走査方向(Zt方向)に関しては、反射面RPで反射され後、拡散したビームLB1および計測光ML1を平行光束にする(図15B参照)。また、fθレンズFTは、走査方向と平行な平面(XtYt平面)に関しては、反射面RPで反射された平行光束のビームLB1および計測光ML1を基板P上で収斂させる(図15A参照)。シリンドリカルレンズCYbは、母線がYt方向と平行しているので、非走査方向(反射ミラーM25によってZt方向からXt方向に転換)に関しては、fθレンズFTを透過した平行光束のビームLB1および計測光ML1を基板P上で収斂させ(図15B参照)、走査方向と平行は平面(反射ミラーM25によってXtYt平面からYtZt平面に変換)に関しては、fθレンズFTからのビームLB1および計測光ML1をそのまま透過する(図15A参照)。これにより、基板P上に照射されるビームLB1はスポット光(サイズφは約3μm)となる。なお、図15A、図15Bにおいては、ビームLB1の光軸(中心軸)をAXgで表している。また、図15Aに示すように、非走査方向に関しては、ビームLB1の光軸AXgとfθレンズFTの光軸(中心軸)AXfとは重なっている。
ダイクロイックミラーDMで反射された計測光ML1の光軸(中心軸)が、ダイクロイックミラーDMを透過したビームLB1の光軸(中心軸)と同軸となるように、計測光ML1をダイクロイックミラーDMに入射させた場合は、計測光ML1の光路、形状は、ビームLB1と同一となる。つまり、ポリゴンミラーPMの反射面RPに照射される計測光ML1は、ビームLB1と同様に、反射面RP上でXtYt平面と平行な方向に延びたスリット状(長楕円状)に成形され、ポリゴンミラーPMの回転角に応じた基板P上の投射位置に計測光ML1のスポット光MSPが投射される。したがって、計測光ML1のスポット光MSPも描画ラインSL1に沿ってY方向に描画されることになり、スポット光SPの走査とスポット光MSPの走査とが同時に行われる。
しかしながら、ビームLB1の波長(または波長帯域)と計測光ML1の波長(または波長帯域)とは異なるため、実際は色収差の影響によってスポット光MSPの走査位置は、描画ラインSL1からずれてしまう。つまり、ビームLB1のスポット光SPが直線状の描画ラインSL1に沿って精密に走査されるように、ビームLB1の波長(または波長帯域)に応じて走査ユニットU1a内の光学部材(シリンドリカルレンズCYa、CYb、fθレンズFTなど)を設計しているため、計測光ML1のスポット光MSPが投射される位置は、色収差の影響によって描画ラインSL1に対して誤差を持つ場合がある。
図16は、ビームLB1のスポット光SPに対する計測光ML1のスポット光MSPの投射位置の誤差の一例を示す図である。なお、図16においては、描画ラインSL1の中心点は、最大走査長の中点と一致しているものとする。上述したように、色収差の影響によってスポット光MSPが投射される基板P上の位置が、スポット光SPが投射される基板P上の位置に対してずれてしまうことがある。スポット光SPの投射位置に対するスポット光MSPの投射位置のY方向(主走査方向)のずれ(位置誤差)をΔYmsで表し、X方向(副走査方向)のずれ(位置誤差)をΔXssとする。図16では、位置誤差ΔYmsが負(−)の値の場合は、スポット光SPの投射位置に対してスポット光MSPの投射位置が主走査方向とは反対側の方向(+Y方向)側に位置していることを表す。逆に、位置誤差ΔYmsが正(+)の値の場合は、スポット光SPの投射位置に対してスポット光MSPの投射位置が主走査方向(−Y方向側)側の位置にあることを表している。また、図16では、位置誤差ΔXssが負(−)の値の場合は、スポット光SPの投射位置に対してスポット光MSPの投射位置が基板Pの搬送方向とは反対側の方向(−X方向)側にあることを表している。
スポット光SPの位置が描画ラインSL1の中心点(最大走査長の中点)では、位置誤差ΔYmsは0となる。そして、スポット光SPの位置が描画ラインSL1の中心点(最大走査長の中点)を境に、描画開始点(走査開始点)側、つまり、+Y方向側になると位置誤差ΔYmsは負の値となり、描画終了点(走査終了点)側、つまり、−Y方向側になると位置誤差ΔYmsは正の値となる。また、スポット光SPの位置が、描画ラインSL1の中心点(最大走査長の中点)より描画開始点側になるにつれ、位置誤差ΔYmsの値は徐々に小さくなる(位置誤差ΔYmsの絶対値は大きくなる)。逆に、スポット光SPの位置が、描画ラインSL1の中心点(最大走査長の中点)より描画終了点側になるにつれ、位置誤差ΔYmsの値は徐々に大きくなる。したがって、スポット光MSPの走査ライン(走査軌跡)の走査長は、描画ラインSL1より長くなる。
また、スポット光SPの位置が描画ラインSL1の中心点(最大走査長の中点)では、位置誤差ΔXssは0となる。そして、スポット光SPの位置が、描画ラインSL1の中心点(最大走査長の中点)から離れると位置誤差ΔXssは、例えば負の値となるとともに、描画ラインSL1の中心点(最大走査長の中点)から離れるにつれて位置誤差ΔXssの絶対値は大きくなる。したがって、スポット光MSPの走査ライン(走査軌跡)は僅かに弧状を描くことになる。
計測部116(図13参照)は、この図16に示すような、位置誤差(ΔXss,ΔYms)を補正するための誤差マップを有し、照射されたスポット光SPの描画ラインSL1上の走査位置と図16に示すような誤差マップとを用いて、計測光ML1のスポット光MSPの投射位置を特定することができる。そして、計測部116は、光検出器DT1mが検出した光電信号(PS1mとする)と、特定したスポット光MSPの投射位置とを用いて、第1パターンPT1の位置情報、形状情報、或いは第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係(重ね合わせ誤差情報)の少なくとも1つを計測することができる。これにより、第1パターンPT1に対する第2パターンPT2の位置合せ精度、重ね合せ精度を高精度に行うことができる。なお、スポット光SP(ビームLB1)は、クロック信号LTCに応じて発光することから、このスポット光SPの描画ラインSL1上の投射位置(走査位置)は、計測部116によって、選択用光学素子AOM1にシリアルデータDL1を出力したタイミング、つまり、スポット光SPの描画開始タイミング以降に発生したクロック信号LTCのクロックパルスの数をカウントし、このカウント値とポリゴンミラーPMの回転速度Vpとから、スポット光SPの投射位置を特定することができる。
また、描画ラインSL1〜SL3に沿って照射されるスポット光SPは、光源装置LSaの信号発生部22aが発生したクロック信号LTCに応じて発光するため、描画ラインSL1〜SL3上に投射されるスポット光SPの投射位置は、光源装置LSaからのクロック信号LTCを用いて特定する。同様に、描画ラインSL4〜SL6上に投射されるスポット光SPの投射位置は、光源装置LSbからのクロック信号LTCを用いて特定する。なお、クロック信号LTCのクロックパルスは、露光用のビームLB1の強度がパターン描画のためにオン状態(スポット光SPが投射される状態)であってもオフ状態であっても常時発生しているので、計測光ML1のスポット光MSPが基板P上に投射されていれば、クロック信号LTCによって光検出器DT1mから出力される信号PS1mの波形を、計測部116(図13参照)内に設けられるクアナログ/デジタル変換器などによっていつでもデジタルサンプリングできる。
ところで、ダイクロイックミラーDMで反射された計測光ML1の光軸AXhが、ダイクロイックミラーDMを透過したビームLB1の光軸AXgに対して偏心(或いは傾斜)するように、計測光ML1をダイクロイックミラーDMに入射させた場合は、基板Pの搬送方向(X方向)に関して、描画ラインSL1に対して計測光ML1のスポット光MSPの走査ライン(走査軌跡)を、所定の距離だけ副走査方向に離すことができる。したがって、計測光ML1のスポット光MSPの走査ラインを描画ラインSL1に対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に位置させることで、スポット光SPの走査を行う前に、予め第1パターンPT1の位置や形状うち少なくとも1つを、第2パターンPT2の描画タイミングとは無関係に計測することができる。
図17Aは、ダイクロイックミラーDMで反射された計測光ML1の光軸AXhを、ダイクロイックミラーDMを透過したビームLB1の光軸AXgに対して平行に偏心(シフト)させた場合における、シリンドリカルレンズCYaから基板Pに投射されるまでの計測光ML1を、計測光ML1(ビームLB1)の偏光方向(走査方向)と平行な−Yt方向側から見た場合の概略図である。図17Bは、ダイクロイックミラーDMで反射された計測光ML1の光軸AXhを、ダイクロイックミラーDMを透過したビームLB1の光軸AXgに対して平行に偏心(シフト)させた場合における、シリンドリカルレンズCYaから基板Pに投射されるまでの計測光ML1を、計測光ML1(ビームLB1)の偏向方向(走査方向)と平行な平面と直交する方向側からみた場合の概略図である。図14、図17A、および、図17Bを参照して、シリンドリカルレンズCYaから基板Pに投射されるまでの計測光ML1の光路、形状について説明する。
走査方向と平行な平面(XtYt平面)に関しては、計測光ML1は、その光軸AXhがビームLBの光軸AXgと重なるようにシリンドリカルレンズCYaに入射する(図17B参照)。したがって、走査方向と平行は平面(反射ミラーM25まではXtYt平面、反射ミラーM25後はYtZt平面)に関しては、計測光ML1の光路、形状は、上述したビームLB1の光路、形状と同一となるので説明を省略する。
一方で、非走査方向(Zt方向)に関しては、シリンドリカルレンズCYaに入射する計測光ML1は、その光軸AXhがビームLB1の光軸AXgに対して微小量だけ+Zt方向に平行シフトして入射する(図17A参照)。したがって、シリンドリカルレンズCYaを通過した計測光MLは、その光軸AXhがビームLB1の光軸AXgより+Zt方向側からポリゴンミラーPMの反射面RPに斜めに入射する。上述したように、非走査方向(Zt方向)に関しては、シリンドリカルレンズCYaによってポリゴンミラーPMに照射される計測光ML1が反射面RP上で収斂される。
非走査方向(Zt方向)に関しては、反射面RPで反射した計測光ML1は、光軸AXhがビームLB1の光軸AXgに対して−Zt方向側の位置でfθレンズFTに入射する。このfθレンズFTは、非走査方向(Zt方向)に関しては、反射面RPで反射して発散した計測光ML1をほぼ平行光束にする。fθレンズFTを透過した計測光ML1は、シリンドリカルレンズCYbを介してスポット光MSPとなって基板Pに投射されるが、その投射位置は、ビームLB1のスポット光SPより基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)の位置となる。したがって、描画ラインSL1に対して計測光ML1のスポット光MSPの走査ライン(走査軌跡)MSL1の位置を基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)にずらすことができる。この場合も、スポット光SPの走査とスポット光MSPの走査とが同時に行われる。なお、このシリンドリカルレンズCYbは、非走査方向(Zt方向)に関して、計測光ML1を基板P上でスポット光MSPに収斂する。
図18は、色収差の影響によって、図17A、図17Bに示した計測光ML1のスポット光MSPの投射位置の誤差の一例を示す図である。図18中のMSL1は、色収差の影響を考慮しない場合に、計測光ML1のスポット光MSPが走査される設計上の走査ラインである。この走査ラインMSL1は、描画ラインSL1に対してオフセット距離Ofx分だけ基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に位置している。したがって、スポット光SPの投射位置に対するスポット光MSPの投射位置のY方向のずれ(位置誤差)はΔYmsとなるが、X方向のずれ(位置誤差)は、オフセット距離(所定間隔)Ofx分だけ−X方向にずれているため、ΔXms(=ΔXss+Ofx)となる。なお、図18においても、描画ラインSL1(走査ラインMSL1)の中心点は、最大走査長の中点と一致しているものとする。
したがって、計測部116(図13参照)は、この図18に示すような、位置誤差(ΔXms(=ΔXss+Ofx),ΔYms)を補正するような誤差マップを有し、照射されたスポット光SPの描画ラインSL1上の走査位置(クロック信号LTCのクロックパルスの計数)と、この図18に示すような誤差マップとを用いて、計測光ML1のスポット光MSPの投射位置を特定することができる。そして、光検出器DT1mが検出した光電信号PS1mの波形と特定したスポット光MSPの投射位置とを用いて、第1パターンPT1の位置や形状を計測することができる。これにより、第1パターンPT1に対する第2パターンPT2の位置合せ精度、重ね合せ精度をビームLB1による描画露光の直前に計測することができる。
このように、ポリゴンミラーPMによって計測光MLn(ML1〜ML6)のスポット光MSPを走査するので、ビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPが投射されていない領域であっても、第1パターンPT1の位置、形状、或いは、第1パターンPT1と第2パターンPT2の相対的な位置関係のうち少なくとも1つを計測することができる。また、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に対して計測光MLn(ML1〜ML6)のスポット光MSPの走査ライン(走査軌跡)MSLn(MSL1〜MSL6)の位置を基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)にすることで、スポット光SPの走査を行う前に、予め第1パターンPT1の位置や形状を計測することができる。したがって、第2パターンPT2を露光する前に、この計測した情報を用いて第2パターンPT2の露光状態を補正することができる。
以上のように、第2の実施の形態の露光装置EXは、光源装置LSからのビームLBnをパターン情報に応じて強度変調させつつ、ビームLBnを基板Pの感光面上に投射して主走査方向に走査することで、基板P上にパターンを描画するものであって、基板Pの感光面に対して低感度の波長域の計測光MLnを射出する光源装置LS2と、ビームLBnおよび計測光MLnを偏向して、ビームLBnおよび計測光MLnを主走査方向に走査するポリゴンミラーPMを含むビーム走査部と、計測光MLnが基板Pに投射されたときに発生する反射光をビーム走査部のポリゴンミラーPMを介して光電検出する光検出器DTnm(DT1m〜DT6m)とを有する走査ユニットUnaと、光検出器DTnmから出力される検出信号PSnm(PS1m〜PS6m)に基づいて、基板P上に特定材料で予め形成された第1パターンPT1の基板P上における位置、形状、或いは、第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係のうち少なくとも1つに関する情報を計測する計測部116と、を備える。これにより、ビームLBnが基板Pに投射されていなくても計測光MLnを基板P上で走査することで、第1パターンPT1の位置、形状、或いは、第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係に関する情報を高精度に計測することができる。
露光装置EXの露光制御部114は、計測部116が計測した第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係(相対的な残留位置誤差も含む)などの計測結果に基づいて、新たに描画する第2パターンの描画状態(描画位置、描画倍率、描画形状など)を補正する。これにより、第1パターンPT1と第2パターンPT2との位置合せ、重ね合せを高精度に行うことができる。
ポリゴンミラーPMを含むビーム走査部は、ビームLBnと計測光MLnを副走査方向に関して基板P上で所定間隔(オフセット距離Ofx)だけずれるように投射しつつ、ビームLBnと計測光MLnとの走査を基板P上で同時に行う。これにより、第2パターンPT2の露光に先立って、第1パターンPT1の位置や形状、或いは、第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係を計測することができる。なお、図18に示したオフセット距離Ofxは、基板P上で1mm〜数mm程度に設定されるが、1mm未満であってもよい。
〔上記第1および第2の実施の形態の変形例〕
上記第1および第2の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
《変形例1》上記第2の実施の形態では、ビームLBnと計測光MLnを反射ミラーM24を介して同じ方向からポリゴンミラーPMの反射面RPに入射させたが、変形例1では、ビームLBnと計測光MLnとのポリゴンミラーPMの反射面RPへの入射方向を互いに異ならせる。
図19は、本変形例1の走査ユニットU1bの構成を示す図である。なお、各走査ユニットUnb(U1b〜U6b)は、同一の構成を有することから、走査ユニット(描画ユニット)U1bについてのみ説明し、他の走査ユニット(描画ユニット)U2b〜U6bについてはその説明を省略する。また、上記第2の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付し、上記第2の実施の形態と異なる部分だけを説明する。したがって、特に説明する必要のない光学部材については、その図示を省略している。図19においては、fθレンズFTの光軸AXfと平行する方向をXt方向とし、光軸AXfを通りポリゴンミラーPMの偏光方向と平行な平面上において、Xt方向と直交する方向をYt方向とし、XtYt平面と直交する方向をZt方向とする。
走査ユニットU1bには、ビームLB1の光路上にダイクロイックミラーDMおよびλ/4波長板QWは設けられてない。したがって、反射ミラーM24に向かって+Xt方向に進む露光用のビームLB1(平行光束)は、そのままシリンドリカルレンズCYaを通過した後、反射ミラーM24に入射する。反射ミラーM24に入射した後のビームLB1の光路、形状は、上記第2の実施の形態と同様なので説明を割愛する。
偏光ビームスプリッタPBS1は、光源装置(第2光源装置)LS2が射出した直線偏光の計測光ML1を反射し、光源装置LS2が射出した計測光ML1と偏光方向が直交する直線偏光の光を透過する。本変形例2では、光源装置LS2が射出する計測光ML1は、P偏光の光とするので、偏光ビームスプリッタPBS1は、P偏光の光を反射し、S偏光の光を透過するものとする。偏光ビームスプリッタPBS1で反射した計測光ML1は、反射ミラーM27、シリンドリカルレンズCYa´および反射ミラーM24´などを介して進み、ポリゴンミラーPMの反射面RPに入射する。このとき、計測光ML1は、ビームLB1の反射面RPの入射方向とは異なる方向から反射面RPに入射する。本変形例1では、シリンドリカルレンズCYaおよび反射ミラーM24をポリゴンミラーPMの−Y方向側に設け、シリンドリカルレンズCYa´および反射ミラーM24´をポリゴンミラーPMの+Yt方向側に設けている。したがって、反射ミラーM24で反射されたビームLB1は、−Yt方向側からポリゴンミラーPMの反射面RPに入射し、反射ミラーM24´で反射された計測光ML1は、+Yt方向側からポリゴンミラーPMの反射面RPに入射する。なお、図19では図示を省略したが、偏光ビームスプリッタPBS1とシリンドリカルレンズCYa´との間の光路中には、1/4波長板が設けられている。
シリンドリカルレンズCYa´および反射ミラーM24´は、シリンドリカルレンズCYaおよび反射ミラーM24と同等の機能を有する。したがって、シリンドリカルレンズCYa´を透過した平行光束の計測光ML1がポリゴンミラーPMの反射面RP上で収斂される。また、走査方向と平行な平面(XtYt平面)内では、計測光ML1は平行光束の状態で反射面RP上に照射される。したがって、反射面RPに照射される計測光ML1は、ビームLB1と同様に、反射面RP上でXtYt平面と平行な方向に延びたスリット状(長楕円状)に成形される。反射面RPで反射された後の計測光ML1の光路、形状は、上記第2の実施の形態と同様なので説明を割愛する。
このように、計測光ML1とビームLB1とのポリゴンミラーPMの反射面RPへの入射方向を異ならせることで、計測光ML1のスポット光MSPとビームLB1のスポット光SPとの走査タイミングを異ならせることができる。つまり、計測光ML1とビームLB1の反射面への入射方向に応じて、計測光ML1のスポット光MSPの走査と、ビームLB1のスポット光SPの走査とを一定の時間差で行うことができる。
なお、上記第2の実施の形態で説明したように、計測光ML1のスポット光MSPを、ビームLB1の描画ラインSL1上に沿って走査させるようにしてもよい。この場合は、図示しないが、ポリゴンミラーPMからfθレンズFTに入射するビームLB1と計測光ML1とは同軸となっている。また、計測光ML1のスポット光MSPの走査ラインMSL1を、基板Pの搬送方向(X方向)に関して、ビームLB1の描画ラインSL1に対してオフセット距離Ofx分だけ離すように、計測光ML1をZt方向に関してポリゴンミラーPMの反射面RPに対して斜めに入射させてもよい。どちらの場合にしても、計測光ML1は色収差の影響を受けるため、計測部116は、図16または図18に示すような誤差マップを用いて、計測光ML1のスポット光MSPの投射位置を補正して特定することで、光検出器DT1mからの信号PS1mの波形に基づいて、第1パターンPT1の位置や形状、或いは、第1パターンPT1と第2パターンPT2との相対的な位置関係の少なくとも1つを、精密に計測することができる。その際、計測光ML1によるスポット光MSPの走査とビームLB1によるスポット光SPの走査とは、一定の時間差を持つため、その時間差に対応したクロック信号LTCのクロックパルス数分のオフセット(主走査方向の位置ずれ)を勘案して、スポット光MSPの走査位置とスポット光SPの走査位置との対応付けを行えばよい。
《変形例2》変形例2では、走査ユニットUncが第2パターンPT2を描画露光していない間に、計測光MLnを走査ユニットUncに入射させるというものである。つまり、スポット光SPの走査とスポット光MSPとの走査とを択一的に行う。図20は、本変形例2の走査ユニットU1cの構成を示す図であり、基本的な構成は先の図5と同様である。なお、各走査ユニットUnc(U1c〜U6c)は、同一の構成を有することから、走査ユニット(描画ユニット)U1cについてのみ説明し、他の走査ユニット(描画ユニット)U2c〜U6cについてはその説明を省略する。また、上記第1および第2の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を付し、異なる部分だけを説明する。
走査ユニットU1cに入射する露光用のビームLB1(平行光束)は、ダイクロイックミラーDMを−Zt方向に通過して反射ミラーM20に入射する。このビームLB1は、照射中心軸Le1と同軸となるように反射ミラーM20に入射する。また、光源装置LS2から−Xt方向に進む非感光性の計測光ML1(平行光束)は、ダイクロイックミラーDMによって−Zt方向に反射されて反射ミラーM20に入射する。この計測光ML1も、照射中心軸Le1上に沿って反射ミラーM20に入射する。また、反射ミラーM23と反射ミラーM24との間、および、反射ミラーM25と基板Pとの間であって、ビームLB1(計測光ML1)の光路上には、補正用光学レンズG30、G31が挿脱可能に設けられている。この補正用光学レンズG30、G31は、計測光ML1の波長(または波長帯域)とビームLB1の波長(または波長帯域)の違いによって生じる色収差による影響を補正するためのレンズである。走査ユニットU1c内の光学部材は、ビームLB1のスポット光SPが直線状の描画ラインSL1に沿って走査されるように設定されているため、上述したように、色収差の影響によって、計測光ML1のスポット光MSPの走査ラインMSL1は描画ラインSL1に対して変形したり、スポット光MSP自体が円形から歪んだりしてしまう。したがって、補正用光学レンズG30、G31を設けることで、色収差による計測光ML1のスポット光MSPの走査ラインMSL1の変形を補正する。この補正用光学レンズG30、G31は、図示しないアクチュエータによって、ビームLB1(計測光ML1)の光路上から退避することができる。なお、補正用光学レンズG30、G31の配置位置は、図20に示す位置に限定されない。
光源装置LS2は、走査ユニットU1に入射するビームLB1の強度が低レベルとなっているときに、計測光ML1を走査ユニットU1cに入射させる。例えば、制御装置16の統括制御部104は、走査ユニットU1cが第2パターンPT2を描画露光しない期間に、光源装置LS2に計測光ML1を発光させることで、計測光ML1を走査ユニットU1cに入射させる。また、統括制御部104は、前記したアクチュエータを制御することで、走査ユニットU1cによって第2パターンPT2が描画露光されている間は、補正用光学レンズG30、G31をビームLB1(計測光ML1)の光路上から退避させる。つまり、走査ユニットU1cによる第2パターンPT2の描画露光中に、補正用光学レンズG30、G31をビームLB1の光路上に配置すると、スポット光SPの描画ラインSL1が変形してしまうので、この場合は、補正用光学レンズG30、G31を退避させる。一方で、統括制御部104は、前記したアクチュエータを制御することで、計測光ML1を走査ユニットU1cに入射させる期間中(第2パターンPT2を描画露光しない間)は、補正用光学レンズG30、G31をビームLB1(計測光ML1)の光路上に位置させる。これにより、計測光ML1のスポット光MSPを描画ラインSL1に沿って走査することができる。つまり、スポット光SPの走査とスポット光MSPとの走査とが択一的に行われる。
したがって、走査ユニットU1cによって第2パターンPT2が描画露光されていない間は、光検出器DT1mによって計測光ML1の基板Pからの反射光を検出し、走査ユニットU1cによって第2パターンPT2が描画露光されている間は、光検出器DT1によってビームLB1の基板Pからの反射光を検出することができる。
制御装置16は、基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送させた状態で、走査ユニットU1cによる第2パターンPT2の描画露光を行わずに、光源装置LS2に計測光ML1を発光させ、計測光ML1を走査ユニットU1cに入射させてもよい。これにより、計測光ML1のスポット光MSPが描画ラインSL1に沿って走査される。計測部116は、光検出器DT1mが検出した検出信号(光電信号)PS1に基づいて、露光領域Wに形成されている下層の第1パターンPT1の位置や形状を計測することができる。そして、制御装置16は、基板Pを逆方向(−X方向)に搬送して基板Pを所定量巻き戻した後、補正用光学レンズG30、G31を退避させた状態で、再び基板Pを+X方向に搬送する。そして、制御装置16は、位置、形状を測定した第1パターンPT1に重ね合せるように第2パターンPT2を描画露光する。このとき、第1パターンPT1の位置、形状は既に計測されているので、制御装置16の露光制御部114は、この計測結果に基づいて、新たに描画露光する第2パターンPT2の描画状態(描画位置、描画倍率など)を補正する。したがって、第1パターンPT1の対する第2パターンPT2の位置合せ、重ね合せを高精度に行うことができる。
走査ユニットU1cは、fθレンズFTとシリンドリカルレンズCYbによって色収差補正が可能な場合は、補正用光学レンズG30、G31を備えなくてもよい。この場合は、計測部116は、図16に示すような誤差マップ(補正マップ)を用いて、第1パターンPT1の位置、形状を測定する。この場合は、光源装置LS2は、走査ユニットU1cに強度が高レベルのビームLB1が入射されていない間に、計測光ML1を走査ユニットU1cに入射してもよい。これにより、走査ユニットU1cには、強度が高レベルのビームLB1と計測光ML1とのどちらか一方が入射することになる。つまり、統括制御部104は、描画データ出力部112が出力する描画ビット列データSBa(SBb)の論理情報が0となる期間に、光源装置LS2が計測光ML1を発光するように制御してもよい。これにより、走査ユニットU1cが第2パターンPT2を描画している最中であっても、第1パターンPT1の位置、形状を計測することができる。つまり、光検出器DT1は、ビームLB1のスポット光SPが基板Pに投射されているときに発生する反射光を検出し、ビームLB1のスポット光SPが基板Pに投射されていないときは計測光ML1のスポット光MSPが基板Pに投射されているときに発生する反射光が光検出器DT1mによって検出される。したがって、スポット光SPが投射されない領域であっても、第1パターンPT1の位置、形状を計測することができる。なお、計測光ML1は、基板Pに対して非感光性であるため、ダイクロイックミラーDMを介して、常時、走査ユニットU1cに入射し続けるようにしてもよい。
《変形例3》なお、上記第1および第2の実施の形態(変形例も含む)においては、ビームLBnおよび計測光MLnを偏向させる部材としてポリゴンミラーPMを用いたが、ポリゴンミラーPM以外のものであってもよい。例えば、ポリゴンミラーPMに代えて、図21に示すような光を反射する平面状の反射面を有する揺動部材(ガルバノミラー)GMを採用してもよい。この揺動部材(揺動反射鏡)GMは、図示しない駆動部材によってZt軸と平行に設定される回転軸AXsを中心に所定の振れ角度の範囲内で振動(揺動)する。揺動部材GMが回転軸AXsを中心に揺動(振動)することによって、ビームLBn(計測光MLn)を偏向させることができる。この場合も、揺動部材GMの反射面は、fθレンズFTの入射瞳の位置(前側焦点の位置)に設けられ、回転軸AXsはfθレンズFTの光軸AXfと交差するように配置される。
《変形例4》上記第1および第2の実施の形態(変形例も含む)では、スポット光SP、MSPの各々の投射によって基板Pから発生する反射光を、ポリゴンミラーPMを介して光検出器DTn(DT1〜DT6)、または光検出器DTnm(DT1m〜DT6m)を用いて検出するようにしたが、ポリゴンミラーPMを介することなく、基板Pからの反射光を検出するようにしてもよい。
図22は、変形例4における光検出器DTRnの配置例を示す図である。光検出器DTRnは、走査ユニットUn(Una、Unb、Unc)毎に設けられている。光検出器DTRnは、シリンドリカルレンズCYbと基板Pとの間に設けられ、シリンドリカルレンズCYbを透過したビームLBn(または計測光MLn)のスポット光SP(またはMSP)が基板Pに投射されるように、開口部OPが設けられている。光検出器DTRnの開口部OP付近には、スポット光SP(またはMSP)の走査方向に沿ってPINフォトダイオード(図示略)などが複数配置されている。この複数のPINフォトダイオードは、スポット光SP(またはMSP)の走査方向(Y方向)に沿って一定の間隔で設けられている。
先の図10Aで説明したように、基板P上に形成された第1パターンPT1が段差構造を有する場合、その段差エッジ部からは散乱光Ldfが発生する。光検出器DTRnのPINフォトダイオードは、そのような反射散乱光Ldf(または反射回折光)を検出するセンサーである。上述したように、スポット光SP(MSP)の走査位置は、スポット光SP(またはMSP)の走査開始時から発振したクロック信号LTCのクロックパルス数、または、スポット光SP(またはMSP)の走査開始時刻からの経過時間によって特定することができる。したがって、計測部116は、スポット光SP(またはMSP)の走査位置(投射位置)に応じた位置のPINフォトダイオードの検出信号(光電信号)を、クロック信号LTCのクロックパルスに応答してA/Dコンバータでデジタルサンプリングすることで、スポット光SP(またはMSP)の走査位置に対応した散乱光による2次元の画像データを生成することができる。その画像データに基づいて、計測部116は、第1パターンPT1の位置や形状、或いは、第1パターンPTと第2パターンPT2との相対的な位置関係の少なくとも一つを計測する。
《変形例5》上記第1および第2の実施の形態(変形例も含む)では、光源装置LSa、LSbのパルス光発生部20に設けられた描画用光変調器としての電気光学素子(強度変調部)36を、描画ビット列データSBa(シリアルデータDL1〜DL3)、SBb(シリアルデータDL4〜DL6)を用いてスイッチングするようにした。しかしながら、変形例5では、描画用光変調器として、電気光学素子36に代えて描画用光学素子AOMを用いる。この描画用光学素子AOMは、音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)である。
図23は、パターンデータに応じてスポット光の強度を変調する電気光学素子36に代えて描画用光学素子AOMを用いた場合の、描画用光学素子AOMの配置例を示す図である。ビーム切換部BDUの選択用光学素子AOM1〜AOM3のうち、光源装置LSaからのビームLBaが最初に入射する選択用光学素子AOM1と光源装置LSaとの間に、描画用光学素子(強度変調部)AOM(以下、AOMa)を配置する。同様に、ビーム切換部BDUの選択用光学素子AOM4〜AOM6のうち、光源装置LSbからのビームLBbが最初に入射する選択用光学素子AOM4と光源装置LSbとの間に、描画用光学素子(強度変調部)AOM(以下、AOMb)を配置する。この描画用光学素子AOMaは、描画ビット列データSBa(シリアルデータDL1〜DL3)に応じてスイッチングされ、描画用光学素子AOMbは、描画ビット列データSBb(シリアルデータDL4〜DL6)によってスイッチングされる。この描画用光学素子AOMa(AOMb)は、画素の論理情報が「0」の場合は入射したビームLBa(LBb)を透過して図示しない吸収体に導き、画素の論理情報が「1」の場合は入射したビームLBa(LBb)を回折させた1次回折光を発生する。この発生した1次回折光が選択用光学素子AOM1(AOM4)に導かれる。したがって、画素の論理情報が「0」の場合は、基板Pの被照射面上にスポット光SPが投射されないので、スポット光SPの強度は低レベル(ゼロ)になり、画素の論理情報が「1」の場合は、スポット光SPの強度は高レベルになる。これにより、走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)によって走査されるスポット光SPの強度をシリアルデータDL1〜DL3(DL4〜DL6)に応じて変調させることができる。
また、描画用光学素子(強度変調部)AOMcn(AOMc1〜AOMc6)を走査ユニットUn(Una、Unb、Unc)毎に設けてもよい。この場合は、描画用光学素子AOMcnは、ビームLBnの進行方向からみてポリゴンミラーPM(または揺動部材GM)の手前に配置される。この各走査ユニットUn(Una、Unb、Unc)の描画用光学素子AOMcnは、各シリアルデータDLnに応じてスイッチングされる。例えば、走査ユニットU1(U1a、U1b、U1c)内に設けられた描画用光学素子AOMc1は、シリアルデータDL1に応じてスイッチングされる。各走査ユニットUn(Una、Unb、Unc)の描画用光学素子AOMcnは、画素の論理情報が「0」の場合は、入射したビームLBnを図示しない吸収体に導き、画素の論理情報が「1」の場合は入射したビームLBnを回折させた1次回折光を発生する。この発生した1次回折光(ビームLBn)は、ポリゴンミラーPM(または揺動部材GM)に導かれてスポット光SPとして基板上に投射される。
《変形例6》また、ビームLBn(または計測光MLn)のスポット光SP(またはMSP)をマークMKmが形成された領域に対して走査してもよい。これにより、光検出器DTn(DTnm、DTRn)が、ビームLBn(または計測光MLn)によってマークMKmが走査されたときにマークMKmで発生する反射光(正規反射光または散乱光)を検出することで、計測部116は、マークMKmの位置を計測することができる。これにより、露光領域W(第1パターンPT1)の形状歪みなどを検出することができる。
図24は、基板P上の十字状のマークMKmをスポット光SP(MSP)で走査する様子を示す。図24に示すように、マークMKmの形状が十字の形状の場合、そのクロスポイントCMmをマークMKmの位置として検出する必要がある。そして、予め設計上で定められている基板P上のマークMKmの予測位置CWm、または直前にアライメント系(アライメント顕微鏡AM11〜AM14)によって計測されて定められるマークMKmの予測位置CWmを中心とする2次元の計測領域Marに対して、ビームLBn(または計測光MLn)を高レベル(オン状態)にしてスポット光SP(MSP)による走査を行う。すなわち、描画用のビームLBnのスポット光SPで計測領域Marを2次元走査する場合、矩形状の計測領域Marが先の図11で説明したダミーパターンPT2bに相当したものとなる。通常、マークMKmは、電子デバイス用の回路パターン(第1パターンTP1)として機能しない無関係なパターンであり、描画用のスポット光SPの走査によって計測領域Marのレジスト層が露光されても問題ない。
計測部116は、スポット光SP(MSP)の走査によって光検出器DTn(またはDTnm、DTRn)から出力される光電信号の波形によって生成される2次元の画像データを解析して、計測領域Mar内でのマークMKmのクロスポイントCMmの位置を求め、計測領域Marの中心である予測位置CWmとの偏差(XY方向の各ずれ量)を求める。これによって、アライメント系(アライメント顕微鏡AM11〜AM14)によって計測されたマークMKmの予測位置CWmが、どの程度ずれるかが確認できる。通常は、予測位置CWmとクロスポイントCMmの位置との偏差が許容範囲内で一致するように、アライメント系(アライメント顕微鏡AM11〜AM14)と各走査ユニットUn(Una、Unb、Unc)は精密に調整されて配置されている。そのため、予測位置CWmとクロスポイントCMmの位置との間に許容範囲以上の偏差が生じた場合は、露光装置EX内の温度変化による金属部材の伸縮によって機械的な配置関係にドリフトが発生していることが予見される。或いは、基板P上のマークMKmが、アライメント系(アライメント顕微鏡AM11〜AM14)で検出される位置から、スポット光SPまたはMSPで走査される計測領域Marの位置まで移動していく間に、回転ドラムDRの外周面に支持されている基板Pがミクロンオーダーで外周面上を滑るマイクロスリップ現象を発生していたことが予見される。
露光装置EX内の温度変化によるドリフトは時間的に緩やかに生じるので、予測位置CWmとクロスポイントCMmの位置との間の偏差を、基板P上に長尺方向に一定間隔で並ぶマークMK1、MK4(図4参照)を使って逐次求めれば、そのドリフトの変化の傾向や度合いに基づいて許容範囲以上になるか否かを事前に予測して、補正することが可能である。さらに、マイクロスリップ現象に対しては、先の第2実施の形態における図17A、17Bと図18に示したように、計測光ML1によるスポット光MSPの走査ラインMSL1を、描画用のスポット光SPの描画ラインSL1に対してオフセット距離Ofxだけ、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向)に配置し、光検出器DTnmまたはDTRnから出力される光電信号の波形によって生成される画像データを高速に解析することで、マイクロスリップが起きた位置、マイクロスリップの滑り量が、描画用のスポット光SPによるパターン描画の直前に予測可能であり、滑り量によっては描画補正も可能である。
なお、基板Pの変形(伸縮など)が少ない場合、基板Pの回転ドラムDR上での搬送方向(X方向)や幅方向(Y方向)への位置ずれが少ない場合、或いはマイクロスリップ現象も認められない場合には、アライメント系(アライメント顕微鏡AM11〜AM14)を使わなくても、光検出器DTn(またはDTnm、DTRn)を用いて、マークMKmのクロスポイントCMmの位置を高精度に計測することができる。マイクロスリップ現象は、先の図3、図4で示すように、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の位置から偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の位置まで、基板Pが搬送方向(副走査方向)に移動している際にも生じ得る。その場合は、例えば、奇数番の走査ユニットU1の光検出器DT1(またはDT1m、DTR1)からの光電信号の波形に基づいて計測される基板P上の第1パターンPT1の副走査方向の位置と、偶数番の走査ユニットU2の光検出器DT2(またはDT2m、DTR2)からの光電信号の波形に基づいて計測される基板P上の第1パターンPT1の副走査方向の位置とを比較し、その位置の差が副走査方向に関して設計上で定められる所定の距離と合っているか否かを判断すればよい。このように、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の各々の光検出器DTn(DTnm、DTRn)からの光電信号に基づいて計測される第1パターンTP1(本パターンTP1aまたはダミーパターンTP1b)の副走査方向の位置情報と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の各々の光検出器DTn(DTnm、DTRn)からの光電信号に基づいて計測される第1パターンTP1(本パターンTP1aまたはダミーパターンTP1b)の副走査方向の位置情報とを比較することによって、奇数番の走査ユニットUnと偶数番の走査ユニットUnの各々によって露光される第2パターンTP2(本パターンTP2a、ダミーパターンTP2b)の副走査方向に関する継ぎ精度、或いは主走査方向に関する継ぎ精度を確認することもできる。
[第3の実施の形態]
上記第1および第2の実施の形態(変形例も含む)では、走査ユニットUn(Una、Unb、Unc)は、ポリゴンミラーPMを用いてスポット光SPを走査して第2パターンPT2を描画するようにしたが、第3の実施の形態では、いわゆるDMD(デジタルマイクロミラーデバイス)を用いて第2パターンPT2を描画する。
第3の実施の形態では、ポリゴンミラーPMを有する走査ユニットUn(Una、Unb、Unc)に代えて、DMD(空間光変調素子)を有する描画ユニットDUnを備える。本第3の実施の形態においても、描画ユニットDUn(DU1〜DU6)は、基板Pの搬送方向(X方向)に2列に千鳥配列で配置され、主走査方向(Y方向)に関しても描画領域を分担している。
図25は、描画ユニットDUnの構成を示す図である。描画ユニットDUnに入射されたP偏光のビーム(平行光束)LBnは、DMDで構成される描画パターン形成部SLMに入射する。描画パターン形成部SLMは、マトリクス状に配置された図示しない複数のマイクロミラーを有する。描画パターン形成部SLMに入射する平行光束のビームLBnは、描画パターン形成部SLMの複数のマイクロミラーが形成された領域の大きさに合わせたサイズの断面形状を有する。このマイクロミラーの個々の傾斜角度を変えることで、入射した光をマイクロレンズアレイMLAに向けて反射するか否かをマイクロミラー単位で切り換えることができる。複数のマイクロミラーは、制御装置16の制御の下、図示しないDMD駆動部によってその傾斜角度が変わる。具体的には、制御装置16は、パターンデータに応じて、複数のマイクロミラーをオンオフにする。オンのマイクロミラーは、入射した光をマイクロレンズアレイMLAに向けて反射し、オフのマイクロミラーは、入射した光を図示しない吸収体に向けて反射する。したがって、オンのマイクロミラーで反射された光のみがマイクロレンズアレイMLAに導かれる。そのため、描画パターン形成部SLMで反射したビームLBnのうち、マイクロレンズアレイMLAに導かれるビームLBPは、パターンデータに応じた光パターンを有する。
描画パターン形成部SLMで反射したビームLBPは、拡大倍率を有するリレーレンズ系G40(集光レンズG40aおよびコリメートレンズG40b)を介してマイクロレンズアレイMLAに入射する。集光レンズG40aは、描画パターン形成部SLMで反射したビームLBPを集光し、コリメートレンズG40bは、集光レンズG40aで集光された後、拡散されたビームLBPを平行光束にする。この集光レンズG40aとコリメートレンズG40bとによって、描画パターン形成部SLMがマイクロレンズアレイMLA側に反射したビームLBPを拡大させることができる。マイクロレンズアレイMLAは、マトリクス状に配置された複数のマイクロレンズ(凸レンズ)を有し、描画パターン形成部SLMの複数のマイクロミラーの各々に対応して、マイクロレンズが形成されている。マイクロレンズアレイMLAの複数のマイクロレンズが形成された領域は、描画パターン形成部SLMの複数のマイクロミラーが形成された領域より大きい。したがって、リレーレンズ系G40は、描画パターン形成部SLMのマイクロミラーがマイクロレンズアレイMLA側に反射した光が対応するマイクロレンズに入射するように、ビームLBPを拡大させる。
マイクロレンズアレイMLAを透過したビームLBPは、個々のマイクロレンズの焦点面p1でスポット光に集光された後、発散して偏光ビームスプリッタPBS2に入射する。偏光ビームスプリッタPBS2は、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。ビームLBPは、P偏光の光なので、偏光ビームスプリッタPBS2は、マイクロレンズアレイMLAの個々のマイクロレンズを透過したビームLBPを透過する。偏光ビームスプリッタPBSを透過したビームLBPは、λ/4波長板QW1、結像レンズ系G41(第1レンズ群G41aおよび第2レンズ群G41bを含む)を介して基板Pに投射される。結像レンズ系G41は、マイクロレンズアレイMLAの射出側の焦点面p1と基板Pの表面とを光学的に共役な関係(結像関係)にし、焦点面p1に形成されるスポット光を基板P上に結像投影する。
ここで、図26に示すように、マイクロレンズアレイMLAの複数のマイクロレンズMLeは、対応する描画パターン形成部SLMのマイクロミラーからマイクロレンズアレイMLAに向かって反射された光を、マイクロレンズアレイMLAと偏光ビームスプリッタPB2との間に位置する焦点面p1上で集光する。マイクロミラーから対応するマイクロレンズMLeに入射する光は、絞りとして機能するピンホールPHを介して、マイクロレンズMLeに入射する。焦点面p1と基板Pの被照射面とは共役関係となるように結像レンズ系G41が設計されている。したがって、描画パターン形成部SLMの複数のマイクロミラーからマイクロレンズアレイMLAに向かって反射された複数の光は、スポット光となって基板P上に投射される。なお、ピンホールPHは、焦点面p1に形成されるスポット光(ビームウェスト)の径に応じたサイズにして、焦点面p1に配置してもよい。
また、基板Pに投射されたビームLBP(個々のマイクロレンズMLeから射出したビームによるスポット光)の基板Pでの反射光は、結像レンズ系G41およびλ/4波長板QW1を透過して偏光ビームスプリッタPBS2に入射する。偏光ビームスプリッタPBS2に入射する基板Pからの反射光は、λ/4波長板QW1によってS偏光の光となるので、偏光ビームスプリッタPBS2で反射する。偏光ビームスプリッタPBS2で反射したビームLBPの反射光は、結像レンズ系G42を介して撮像素子IEの受光面に入射する。偏光ビームスプリッタPBS2とレンズ系G42との間に位置する面p2と、基板Pの被照射面とは共役関係(結像関係)になっている。したがって、描画パターン形成部SLMの複数のマイクロミラーでマイクロレンズアレイMLAに向けて反射されて基板P上でスポット光となった光の反射光は、面p2上で、基板Pの表面の反射特性(反射率、散乱性)に応じて強度が変化するスポット光となる。結像レンズ系G42は、基板Pからの反射光によって面p2に2次元で分布する個々のスポット光を撮像素子IEの受光面に結像する。計測部116は、この撮像素子IEで撮像される反射光によるスポット光の分布を撮像した映像信号に基づいて、第1パターンPT1の位置や形状、或いは、第1パターンPT1と第2パターンPT2の相対的な位置関係を計測することができる。
[第4の実施の形態]
以上の各実施の形態やその変形例では、を走査ユニットUn(或いはUna、Unb、Unc)に設けられた光検出器DTn(またはDTnm、DTRn)からの光電信号に基づいて、基板Pに形成された第1パターンTP1の位置ずれや重ね合せ誤差を求めるものとしたが、本実施の形態では、描画用のビームLBnによるスポット光SPや非感光性の計測光MLnによるスポット光MSPが、基板Pの表面に正しくフォーカス設定されているか否かを確認し、フォーカスずれが生じている際は、そのずれを調整する機能を持たせるようにする。図27は、本実施の形態による走査ユニットU1a’の構成の一部を示し、基本的な構成は先の図14で示した走査ユニットU1aと同じであり、異なる点は、特に軸上色収差(ピント位置のずれ)の補正のためにレンズ系G23a、G23bを設けるとともに、光検出器DT1m、レンズ系G23a、G23bの少なくとも1つを光軸方向に調整可能、或いは高速に往復移動可能に設けたことである。
図14の構成では、計測用の光源装置LS2からの非感光性の計測光ML1を平行光束として偏光ビームスプリッタPBSに入射させたが、図27の本実施の形態では、偏光ビームスプリッタPBSに入射させる計測光ML1が色収差補正のために若干収斂(または発散)するように、レンズ系G23aによって調整される。偏光ビームスプリッタPBSを透過した計測光ML1は、図14で説明したように、ダイクロイックミラーDMで反射されて第1のシリンドリカルレンズCYaを通って、ポリゴンミラーPMの1つの反射面RPに達し、そこでXtYt面と平行な面内で偏向されてfθレンズFTに入射する。レンズ系G23aの位置を光軸方向に調整することにより、基板Pに投射される計測光ML1のスポット光MSPのサイズが調整できる。これは、基板P側で収斂する計測光ML1のビームウェストの位置をfθレンズFTの光軸AXfの方向にシフトすること、すなわち、計測光ML1のフォーカス位置を光軸方向に調整する送光系側でのピント調整を意味する。また、基板Pに投射された計測光ML1による基板Pからの正規反射光は、偏光ビームスプリッタPBSで反射されて、光検出器DT1mに向かうが、本実施の形態では、偏光ビームスプリッタPBSと光検出器DT1mの間に、色収差補正のためのレンズ系G23bが設けられるので、光検出器DT1mに向かう基板Pからの正規反射光は収斂したビームとなる。光検出器DT1mの手前には、ピンホール板PHdが配置される。
レンズ系G23bは、計測光ML1の波長域において、ピンホール板PHdのピンホール(微小開口)と基板Pの表面とが光学的に共役関係となるように補正するものであり、レンズ系G23bの位置を光軸方向に調整することにより、ピンホール板PHd上に生成される正規反射光のスポット光のサイズが調整できる。これは、受光系側でもピント調整できることを意味する。このような構成において、光検出器DT1mとピンホール板PHdを一体にして光軸方向に移動させると、ピンホール板PHdのピンホールを透過して光検出器DT1mに達する正規反射光の光量が変化する。ピンホール板PHdの光軸方向の位置が適切な位置(ベストフォーカス位置)に設定されると、ピンホールを透過する正規反射光の光量が最大となり、その適切な位置からずれるに連れてピンホールを透過する正規反射光の光量が減少する。そこで、駆動機構DAUによって、ピンホール板PHd付の光検出器DT1mとレンズ系G23bのうちの少なくとも1つを、光軸方向にサーボ制御などによって高速に移動可能にしておく。そして、基板P上の走査ラインMSL1中に第1パターンPT1の段差エッジなどが無い状態で、計測光ML1のスポット光MSPを走査したときに基板Pから発生する正規反射光の光量変化を光検出器DT1mで検出しつつ、ピンホール板PHd付の光検出器DT1m、或いはレンズ系G23bを光軸方向に所定のストローク範囲でスイープ移動させる。このとき、光検出器DT1mから出力される光電信号は、ベストフォーカス状態のときに極大値をとる波形となる。その極大値となったときのピンホール板PHd付の光検出器DT1m、或いはレンズ系G23bの光軸方向の位置をモニターすることで、ベストフォーカス状態となる基板Pのフォーカス方向の位置が特定される。
このように、基板Pの表面の光軸(fθレンズFTの光軸AXf)方向の位置(フォーカス位置)を、計測光ML1を使って計測する場合、fθレンズFTから投射される描画用のビームLB1のビームウェスト位置と、計測光ML1のビームウェスト位置とを、光軸方向に関して揃えておくとよい。そのためには、例えば、駆動機構DAUによって、レンズ系G23aの光軸方向の位置を調整して、計測光ML1のビームウェスト位置を光軸方向にシフトさせる。そのような状態で、計測光ML1を使って計測される基板Pのフォーカス位置からのずれ量が許容値以上である場合、描画用のビームLB1のビームウェスト位置も基板Pの表面から光軸方向にシフトしていることになる。そこで、例えば、図5の走査ユニットUnや図20の走査ユニットUncに示したビームエキスパンダーBEの2つの集光レンズBe1、Be2のうちの少なくとも一方の位置を光軸方向に調整可能な構成(フォーカス調整機構)にし、fθレンズFTから投射される描画用のビームLB1のビームウェスト位置をfθレンズFTの光軸AXf方向に変位できるようにする。このように、描画用のビームLBnのスポット光SPを基板P上で最もシャープに集光させるフォーカス調整機構は、走査ユニットUn、Una、Unb、Uncの各々に設けることができる。
〔上記第4の実施の形態の変形例〕
(変形例1)以上の第4の実施の形態では、計測光ML1のスポット光MSPを基板Pに投射し、基板Pからの反射光をピンホール板PHd上でスポット光として再結像し、ピンホールの透過光量の変化に基づいて基板Pのフォーカス位置を確認できるようにした。ピンホールの透過光量の変化を計測するために、第4の実施の形態では、ピンホール板PHd付の光検出器DT1m、或いはレンズ系G23bを光軸方向にスイープ移動させていた。すなわち、光検出器DT1mまたはレンズ系G23bを機械的に精密に移動させる駆動機構DAUやガイド機構などが必要となり、走査ユニットUna’(U1a’〜U6a’)が大型化するおそれがある。そこで、本変形例1では、光検出器DT1mまたはレンズ系G23bを機械的に移動させないように、ピンホール板PHd付の光検出器DT1mを3つ設ける。
図28は、第4の実施の形態の変形例1による走査ユニットU1a’の構成を示し、基本的な構成は図27の走査ユニットU1a’と同じであり、異なる点は、基板Pから発生する計測光ML1の反射光を光電検出するレンズ系G23b以降の受光系として、2つのビームスプリッタBSa、BSbと、3つの光電センサ部DTPa、DTPb、DTPcを設けたことである。光電センサ部DTPa、DTPb、DTPcの各々は、第4の実施の形態(図27)と同様のピンホール板PHd付の光検出器DT1mで構成される。偏光ビームスプリッタPBSから射出してレンズ系G23bを通った計測光ML1の反射光は、収斂光束となってビームスプリッタBSaに入射し、透過成分と反射成分とに分割される。ビームスプリッタBSaを透過した計測光ML1の反射光は光電センサ部DTPaに達し、ビームスプリッタBSaで反射した計測光ML1の反射光はビームスプリッタBSbに入射する。ビームスプリッタBSbを透過した計測光ML1の反射光は光電センサ部DTPbに達し、ビームスプリッタBSbで反射した計測光ML1の反射光は光電センサ部DTPcに達する。光電センサ部DTPa、DTPb、DTPcの各々の光検出器DT1mから出力される光電信号をSSa、SSb、SScとする。
図28では、偏光ビームスプリッタPBSから射出してレンズ系G23bに入射する反射光(正規反射光)を破線で示すが、ここでは反射光のビーム径を拡大して誇張して示す。基板Pの表面が所定のベストフォーカス位置にある場合、レンズ系G23bによって収斂された反射光は、ビームスプリッタBSa、BSbを通って、光電センサ部DTPbのピンホール板PHd上に集光する。そのとき、ビームスプリッタBSaのみを通って光電センサ部DTPaに向かう反射光は、反射光が集光する点よりも手前の位置で光電センサ部DTPaのピンホール板PHdに達し、ビームスプリッタBSa、BSbを通って光電センサ部DTPcに向かう反射光は、反射光が集光する点よりも後方の位置で光電センサ部DTPcのピンホール板PHdに達する。すなわち、光電センサ部DTPaのピンホール板PHdは、収斂する正規反射光のビームの集光点よりも前の前ピント位置に配置され、光電センサ部DTPbのピンホール板PHdは、収斂する正規反射光のビームの集光点であるピント位置に配置され、光電センサ部DTPcのピンホール板PHdは、収斂する正規反射光のビームの集光点よりも後の後ピント位置に配置される。
光電センサ部DTPa、DTPb、DTPcの各々からの光電信号SSa、SSb、SScは、基板Pのフォーカス位置の変化に対して、例えば、図29のような特性で強度変化する。図29は、縦軸が基板Pのフォーカス位置(±50μmの範囲)を表し、横軸が光電信号SSa、SSb、SScの強度を規格化した値を表している。基板Pの表面がベストフォーカス位置に一致している状態をフォーカス位置ゼロとする。基板Pの表面が+Zt方向に変位して、例えば、図29中の+20μmの位置にあると、規格化された光電信号SSa、SSb、SScの強度は、SSa>SSb>SScの大小関係になる。また、基板Pの表面がベストフォーカス位置(図29中の0μmの位置)にあると、規格化された光電信号SSbが最も大きくなり、光電信号SSa、SScの強度はほぼ同じ強度で、光電信号SSbよりも小さくなる。さらに、基板Pの表面が−Zt方向に変位して、例えば、図29中の−20μmの位置にあると、規格化された光電信号SSa、SSb、SScの強度は、SSc>SSb>SSaの大小関係になる。
このように、規格化された光電信号SSa、SSb、SScの強度変化の特性(図29中の変化曲線)に基づいて、光電信号SSa、SSb、SScの相互の大小関係をモニターするだけで、基板Pの表面のフォーカス位置の変化をリアルタイムに計測することができる。なお、初期調整のために、レンズ系G23aは光軸方向に手動で位置調整できるようにしておくのがよい。以上、図28、図29のような変形例によれば、ピンホール板PHd付の光検出器DT1mやレンズ系G23bを機械的に直線移動させる駆動機構DAUなどが不要となるので、駆動に伴う振動発生もなくなり、フォーカス位置の計測のみならず、描画用のビームLB1を使った基板P上の第1パターンPT1の位置計測などの計測精度の低下も防げる。
(変形例2)以上の変形例1では、3つのピント位置の各々に、光電センサ部DTPa、DTPb、DTPcを配置した受光系としたが、変形例2では、いわゆる瞳分割方式によって基板Pの表面のフォーカス位置(Zt方向の位置)の変化を計測する。瞳分割方式の1つの方式は、テレセントリックな投射レンズ系(ここではfθレンズFT)を通して基板P上に照射するビームLBnを、投射レンズ系の入射瞳内の光軸から一方に偏心した領域を通るように制限して、基板Pに達するビームの主光線をテレセントリックな状態から一方に傾けた傾斜照明とし、基板Pからの正規反射光が投射レンズ系を通って入射瞳内を通る際に、正規反射光が入射瞳内で通るべき本来の位置からどの程度ずれているかの横ずれ量を計測するタイプである。図30は、そのような瞳分割方式のフォーカス位置モニターを組み込んだ走査ユニットU1e(Une)の構成を示し、ダイクロイックミラーDM以降の基板Pまでの光学構成は、先の図14、図27、図28と同じである。
図30において、不図示の光源装置LS2からの別波長の計測光ML1(直線偏光)は、レンズ系G25aを介して偏光ビームスプリッタPBS2で反射し、1/4波長板QWを通って円偏光に変換されてダイクロイックミラーDMを透過する。ダイクロイックミラーDMからは、露光用のビームLB1と計測光ML1とが、それぞれの主光線を平行な状態にしてシリンドリカルレンズCYaに向かう。その際、ビームLB1は、図30の紙面内(XtYt面)では、基板Pに投射されるスポット光SPの開口数(NA)に応じた一定の太さφbを有している。ビームLB1は、XtYt面ではその太さφbを保ってポリゴンミラーPMの反射面RPで反射されて、fθレンズFTに入射する。したがって、ビームLB1は、XtYt面内(主走査方向)についてはfθレンズFTの屈折力によって基板P上にスポット光SPとして集光される。fθレンズFTから射出するビームLB1の主光線(ビームの中心線)をLppとすると、主光線Lppは基板Pの表面と垂直なテレセントリックな状態になっている。
一方、偏光ビームスプリッタPBS2(および1/4波長板QW)を通ってダイクロイックミラーDMを透過した計測光ML1は、レンズ系G25aによって、露光用のビームLB1の太さφbよりも細い平行光束となり、ビームLB1の主光線Lppに対して偏心した状態(ここでは−Yt方向にシフトした状態)で、シリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM24を通ってポリゴンミラーPMの反射面RPまで、ビームLB1と並行に進む。計測光ML1は、シリンドリカルレンズCYaの作用によってZt方向に収斂され、ポリゴンミラーPMの反射面RP上では、Zt方向に圧縮されたスリット状のスポット光になって集光する。ポリゴンミラーPMの反射面RPで反射した計測光ML1は、ビームLB1の主光線Lppと平行にfθレンズFTに入射し、反射ミラーM25とシリンドリカルレンズCYbを介して基板Pに達する。計測光ML1は、ポリゴンミラーPMの反射面RPの位置、すなわち、fθレンズFTの入射瞳(前側焦点)の面内で、ビームLB1の主光線Lppに対して主走査方向(Yt方向)に偏心した位置を通るので、基板P上に投射される計測光ML1は主光線Lppに対して主走査方向に一定の角度だけ傾いた状態となる。すなわち、計測光ML1は、基板P上では主走査方向(Yt方向)に関して非テレセントリックな状態となっている。なお、計測光ML1も、fθレンズFTの前後に配置された2つのシリンドリカルレンズCYa、CYbの作用によって、ポリゴンミラーPMの反射面RPの面倒れ誤差の影響を受けずに、基板P上にスポット光MSPとして集光される。
基板Pへの計測光ML1(スポット光MSP)の投射によって基板Pの表面から発生する正規反射光ML1’は、ビームLB1の主光線Lppに対して計測光ML1とほぼ対称な角度だけ主走査方向に傾いてfθレンズFTに入射する。fθレンズFTを通った正規反射光ML1’は、計測光ML1の光路に対して主光線Lppを挟んだ反対側の光路をほぼ平行に通って、ポリゴンミラーPMの反射面RP、反射ミラーM24、シリンドリカルレンズCYa、およびダイクロイックミラーDMを透過して、偏光ビームスプリッタPBS2(および1/4波長板QW)に達する。
ここで、ポリゴンミラーPMの反射面RP(fθレンズFTの入射瞳の位置)の付近でのビームLB1、計測光ML1、正規反射光ML1’の状態を、図31により模式的に説明する。露光用のビームLB1は、ポリゴンミラーPMの反射面RP上では、シリンドリカルレンズCYaの作用により、Zt方向についてのみ圧縮されて主走査方向(偏向方向)に細く延びるスリット状になる。したがって、反射面RPで反射したビームLB1は、主走査方向(偏向方向)に関しては元の太さφbを維持し、Zt方向(副走査方向)に関しては発散光となってfθレンズFTに入射する。一方、計測光ML1は、ポリゴンミラーPMの反射面RP上の主走査方向(偏向方向)の端部付近、すなわち、スリット状に圧縮されたビームLB1の端部付近で、シリンドリカルレンズCYaの作用により、Zt方向についてのみ圧縮されたスリット状になる。したがって、反射面RPで反射した計測光ML1は、主走査方向(偏向方向)に関しては元の太さを維持し、Zt方向(副走査方向)に関しては発散光となってfθレンズFTに入射する。
基板Pから発生した正規反射光ML1’は、計測光ML1の光路に対して主光線Lppを挟んだ反対側の光路をほぼ平行に通って、ポリゴンミラーPMの反射面RPに達するが、正規反射光ML1’は、ポリゴンミラーPMの反射面RP上の主走査方向(偏向方向)の端部付近、すなわち、スリット状に圧縮されたビームLB1の計測光ML1の位置とは反対側の端部付近で、Zt方向についてのみ圧縮されたスリット状になる。
基板Pの表面がベストフォーカス位置(Zt方向の規定位置)にある状態では、ポリゴンミラーPMの反射面RPに向かう正規反射光ML1’の光路は、主光線Lppと平行で主光線Lppに対して計測光ML1の光路と対称的な位置となる。しかしながら、基板Pの表面がベストフォーカス位置からZt方向にデフォーカスすると、ポリゴンミラーPMの反射面RP上での正規反射光ML1’の位置が、ビームLB1のスリット状の分布の長手方向(偏向方向)に変化する。その変化の程度が基板Pのベストフォーカス位置からのデフォーカス量(ピントずれ量)に対応している。そこで、図30に示すように、1/4波長板QW、偏光ビームスプリッタPBS2を透過した正規反射光ML1’を、CCD、CMOSなどの撮像素子で構成される光電センサ部DTSで受光し、撮像面上に投射される正規反射光ML1’のスポットの位置変化をモニターする。なお、図30では図示を省略したが、主走査方向(図30ではYt方向)に関しては、ポリゴンミラーPMの反射面RPと光電センサ部DTSの撮像面とが結像関係となるように、偏光ビームスプリッタPBS2と光電センサ部DTSの間にレンズ系を設けてもよい。また、ポリゴンミラーPMの反射面RP上に投射される計測光ML1の位置が、ビームLB1の主光線Lppの位置から離れるほど、基板P上に投射される計測光ML1の主光線Lppに対する主走査方向の傾き角が大きくなり、光電センサ部DTSの撮像面上での正規反射光ML1’のスポットの位置変化量のデフォーカス量に対する比率、すなわち、フォーカス変化の計測感度も大きくなる。
以上、本変形例2によっても、図28の変形例1と同様に、基板Pの表面のフォーカス位置の変化をリアルタイムに計測することができる。また、ピンホール板PHd付の光検出器DT1mを含む光電センサ部やレンズ系などを機械的に直線移動させる駆動機構DAUなどが不要となるので、駆動に伴う振動発生もなくなり、フォーカス位置の計測のみならず、描画用のビームLB1、または計測光ML1を使った基板P上の第1パターンPT1の位置計測などの計測精度の低下も防げる。また、以上の図27の第4の実施の形態、図28の変形例1、図30の変形例2の各々に示した走査ユニットUna’、Uneにおいても、描画用のビームLB1と計測光ML1との波長の違いによる色収差を補正するために、fθレンズFTとして色消し補正の光学設計を施したものを使ったり、色収差補正用のレンズを計測光ML1やその反射光(正規反射光ML1’)の光路中に設けたりするのがよい。
以上、第1〜第4の実施の形態、およびそれらの各変形例において、露光用のビームLBn(LB1〜LB6)を生成する光源装置LSa、LSbは、単一の特定波長(例えば紫外波長域の355nm)のビームを発生するものとしたが、波長が特定波長と僅かに異なる紫外波長域のビームの1つまたは複数を同軸に合成して露光用のビームLBnとしてmよい。また、計測光MLn(ML1〜ML6)も、紫外波長域よりも長い波長帯の単一のビームを発生する光源装置LS2から発生させたが、光源装置LS2を波長が異なる複数のビームを発生する光源装置とし、基板P上の第1パターンPT1の材質や基板Pの表面に塗布される感光層(レジスト層)に応じた反射特性の違いによって、用いる計測光MLnの波長を切り替えたり、複数の波長で同じ第1パターンPT1の位置や形状を計測したりしてもよい。なお、計測光MLn(ML1〜ML6)は、基板P上の感光層に対する感度が殆ど無い波長域のものが好ましいが、露光用のビームLBn(LB1〜LB6)の波長と異なる波長であれば、感光層に対する感度を多少有する波長であってもよい。
[第5の実施の形態]
図32は、第5の実施の形態によるパターン描画制御の際のシーケンスや動作などを、機能ブロックとして表した図である。本実施形態では、特に、先の図17A、17B、図18に示したように、計測光MLn(ML1〜ML6)のスポット光MSPによる走査ラインMSLn(MSL1〜MSL6)が、描画用のビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPによる描画ラインSLn(SL1〜SL6)対して、基板Pの搬送方向(副走査方向)の上流側にオフセット距離Ofxだけ離れて位置している走査ユニットUna(U1a〜U6a)を用いて、基板Pにパターンを描画することを前提とする。しかしながら、本実施の形態で使用可能な走査ユニットは、図19、図20、図22、図27、図28、図30のいずれであってもよい。
図32において、基板P上に最初に第1パターンTP1(本パターンTP1aやダミーパターンTP1b)とマークMKmを描画するファースト露光モードでは、機能(工程)200のように、図13に示した統括制御部104の描画データ出力部112に記憶されている描画データ(第1パターンTP1の設計情報、CAD情報)が、実描画制御を行う機能(工程)202に送られる。ファースト露光モードでは、基板P上にマークMKmも露光するので、機能(工程)200から送出される描画データには、マークMKmを描画するためのデータも含まれている。また、機能(工程)204は、マーク計測情報やエンコーダ計測値に基づいて描画状態(描画位置、描画形状、描画倍率など)を補正するための補正情報を生成するが、ファースト露光モードでは、基板P上にマークMKmが形成されていないので、エンコーダ計測値に基づいた補正情報のみを生成する。
基板P上に形成された第1パターンTP1(またはマークMKm)に計測光MLnが投射されたときに発生する反射光を検出する事前計測の機能(工程)206Aと、事前計測された情報(光電信号など)に基づいて、描画状態を直前に補正するための事前補正情報を生成する機能(工程)206Bとは、ファースト露光モードの際には使用できない。したがって、機能(工程)202では、機能(工程)200から送出される描画データを、機能(工程)204から送出されるエンコーダ計測値に基づく補正情報に応じて位置補正しつつ、基板P上に第1パターンTP1とマークMKmとを描画する。
ファースト露光モードで、第1パターンTP1とマークMKmが形成された基板Pに対して重ね合せ露光、すなわちセカンド露光モードを実施する場合は、基本的な制御シーケンスとして、機能(工程)200から送出される第2パターンTP2(本パターンTP2aとダミーパターンTP2b)の描画データに基づいて、機能(工程)202の実描画制御時に第2パターンTP2を基板Pに露光する際に、機能(工程)204で生成される補正情報に応じて位置補正する。ただし、セカンド露光モードでは、機能(工程)204において生成される補正情報に、基板P上のマークMKmの計測情報に基づいて特定される第1パターンTP1を含む露光領域Wの形状変形などを補正するための情報が含まれる。さらに、セカンド露光モードでは、計測光MLnを用いた事前計測の機能(工程)206Aと事前補正情報を生成する機能(工程)206Bとを使って、実描画制御を行う機能(工程)202において、機能(工程)206Bで生成される事前補正情報も加味して、露光領域W内の全体(各走査ユニットUnaごとに露光される領域)で、重ね合せ精度が平均的に高くなるような補正が、実描画の直前に行われる。もちろん、機能(工程)206Aにおいて、事前計測される第1パターンTP1の位置が所定の位置に対して許容範囲内であれば、事前補正情報は生成されない。このように、事前計測の機能(工程)206Aと事前補正情報を生成する機能(工程)206Bとは、セカンド露光モードの際の位置合せ制御において、重ね合せ精度を良好にするためのフィードフォワード制御部FFCとして機能する。
さて、セカンド露光モードで重ね合せ露光を行う場合、基板P上に投射される描画用のビームLBnの反射光を光検出器DTn(図5、図13)などで検出して、基板P上の第1パターンTP1と重ね合せ露光される第2パターンTP2との相対的な位置ずれ(重ね誤差)を、図13中の計測部116によってリアルタイムに計測することができる。そこで、重ね合せ露光を行っている間、描画用のビームLBnを使った重ね合せ誤差の描画時計測の機能(工程)208Aと、描画時に光検出器DTnから出力される光電信号などに基づいて計測される重ね合せ誤差を補正するための事後補正情報を生成する機能(工程)208Bとを使って、実描画制御を行う機能(工程)202において、機能(工程)208Bで生成される事後補正情報も加味して、露光領域W内の全体(例えば、各走査ユニットUnaごとに露光される領域)で重ね合せ精度が平均的に小さくなるように、描画位置の補正が行なわれる。もちろん、機能(工程)208Aにおいて、描画時にリアルタイムに計測される重ね合せ誤差が許容範囲内であれば、事後補正情報は生成されない。このように、描画時計測の機能(工程)208Aと事後補正情報を生成する機能(工程)208Bとは、セカンド露光モードの際の位置合せ制御において、重ね合せ精度を良好にするためのフィードバック制御部FBCとして機能する。
以上のように、セカンド露光モード(重ね合せ露光)の際の位置合せ(位置決め)制御において、フィードフォワード制御部FFCとフィードバック制御部FBCとの両方を使うことによって、基板Pに大きな歪みが発生して露光領域Wが大きく変形しても、それに対応して、描画状態(描画位置、描画倍率、描画ラインの傾斜など)をきめ細かく補正することができるので、露光領域Wの全体に対して良好な重ね合せ精度を維持できる。なお、基板Pの歪み(伸縮など)が少なく、露光領域Wの変形が少ない場合には、セカンド露光モードであっても、フィードフォワード制御部FFCとフィードバック制御部FBCのいずれか一方のみを使う制御方式であってもよい。或いは、1つの露光領域Wを露光している間に、フィードフォワード制御部FFCとフィードバック制御部FBCのいずれか一方を使う制御と、フィードフォワード制御部FFCとフィードバック制御部FBCの両方を使う制御とを、露光領域W上での描画ラインSLnの副走査方向の位置変化に応じて適宜切り替えてもよい。
このように、本実施の形態の露光装置EXは、パターンデータに応じて強度変化された描画ビームLBnを基板P上に投射して、基板P上に新たな第2パターンPT2を描画するものである。そして、露光装置EXは、描画ビームLBnを偏向する偏向部材(PM、GM)によって、描画ビームLBnを基板P上で走査するビーム走査部と、基板P上に特定材料で予め形成されている第1パターンPT1の少なくとも一部に、描画ビームLBnが投射されたときに発生する反射光を光電検出する光検出器(第1の光検出部)DTn(DTRn)と、描画ビームLBnとは異なる波長の計測ビームMLnがビーム走査部を介して基板P上で走査されるように、計測ビームMLnを偏向部材(PM、GM)に導く計測ビーム送光系(PBS、M26など)と、基板P上の第1パターンPT1の少なくとも一部に、計測ビームMLnが投射されたときに発生する反射光を光電検出する光検出器(第2の光検出部)DTnm(DTRn)と、光検出器DTn(DTRn)と光検出器DTnm(DTRn)の少なくとも一方から出力される信号に基づいて、描画ビームLBnによって基板P上に描画される新たな第2パターンPT2の位置を制御する制御装置16(制御部)と、を備える。
なお、図32に示したようなフィードフォワード制御部FFCとフィードバック制御部FBCとを用いて位置合せを行う制御方式は、先の第1の実施の形態(図2〜図13)に示したように、描画用のビームLBnの投射により基板Pから発生する反射光の情報を用いるパターン描画装置に対しても同様に適用可能である。ただしその場合、走査ユニットUnは、例えば特開2009−093196号公報に開示されているように、1つのポリゴンミラーによって複数の描画用のビームを同時に偏向して、基板P上で副走査方向にずれて位置する少なくとも2つのスポット光を主走査方向に同時に走査するマルチスポット走査方式の描画ユニットとして構成される。そして、基板Pの移動方向(+X方向)に関して上流側に位置する第1のスポット光でパターン描画する際に得られる反射光の情報(光電信号)を、図32中のフィードフォワード制御部FFCで用い、さらに基板P上で副走査方向に関して第1のスポット光の下流側の第2のスポット光でパターン描画する際に得られる反射光の情報(光電信号)を、図32中のフィードバック制御部FBCで用いることができる。このように、本実施の形態では、描画ビームLBnによるスポット光、または計測ビームMLnによるスポット光によって、基板P上の下地パターン(またはダミーパターン)が走査されたときに発生する反射光の情報を、フィードフォワード制御部FFCとフィードバック制御部FBCとのいずれか一方、或いは双方で用いることにより、基板P上に重ね合せ露光すべきセカンドパターンの位置合せを、基板Pの変形が大きくなったとしても精密に制御することができる。