本発明の態様に係るパターン描画装置およびパターン描画方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の基板(被照射体)Pに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、特に断わりのない限り、重力方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがって、X方向、Y方向、およびZ方向を説明する。
デバイス製造システム10は、基板Pに所定の処理(露光処理等)を施して、電子デバイスを製造するシステム(基板処理装置)である。デバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイ、フィルム状のタッチパネル、液晶表示パネル用のフィルム状のカラーフィルター、フレキシブル配線、または、フレキシブル・センサ等を製造する製造ラインが構築された製造システムである。以下、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを前提として説明する。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等がある。デバイス製造システム10は、可撓性のシート状の基板(シート基板)Pをロール状に巻いた供給ロールFR1から基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを回収ロールFR2で巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。基板Pは、基板Pの移動方向(搬送方向)が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。第1の実施の形態においては、フィルム状の基板Pが、少なくとも処理装置(第1の処理装置)PR1、処理装置(第2の処理装置)PR2、露光装置(第3の処理装置)EX、処理装置(第4の処理装置)PR3、および、処理装置(第5の処理装置)PR4を経て、回収ロールFR2に巻き取られるまでの例を示している。
なお、本第1の実施の形態では、X方向は、水平面内において、基板Pが供給ロールFR1から回収ロールFR2に向かう方向(搬送方向)である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向(短尺方向)である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(上方向)であり、重力が働く方向と平行である。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、デバイス製造システム10の搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
基板Pは、処理装置PR1、処理装置PR2、露光装置EX、処理装置PR3、および、処理装置PR4で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板Pを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板Pの可撓性(flexibility)とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、または、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本第1の実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。
処理装置PR1は、供給ロールFR1から搬送されてきた基板Pを処理装置PR2に向けて所定の速度で長尺方向に沿った搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して塗布処理を行う塗布装置である。処理装置PR1は、基板Pの表面に感光性機能液を選択的または一様に塗布する。この感光性機能液が表面に塗布された基板Pは処理装置PR2に向けて搬送される。
処理装置PR2は、処理装置PR1から搬送されてきた基板Pを露光装置EXに向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して乾燥処理を行う乾燥装置である。処理装置PR2は、熱風またはドライエアー等の乾燥用エアー(温風)を基板Pの表面に吹き付けるブロワー、赤外線光源、セラミックヒーター等によって感光性機能液に含まれる溶剤または水を除去して、感光性機能液を乾燥させる。これにより、基板Pの表面に感光性機能層(光感応層)となる膜が選択的または一様に形成される。なお、ドライフィルムを基板Pの表面に貼り付けることで、基板Pの表面に感光性機能層を形成してもよい。この場合は、処理装置PR1および処理装置PR2に代えて、ドライフィルムを基板Pに貼り付ける貼付装置(処理装置)を設ければよい。
ここで、この感光性機能液(層)の典型的なものはフォトレジスト(液状またはドライフィルム状)であるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能液(層)として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)または半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、薄膜トランジスタ(TFT)等を構成する電極、半導体、絶縁、或いは接続用の配線となるパターン層を形成することができる。感光性機能液(層)として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にしてもよい。その場合は、露光装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。本第1の実施の形態では、感光性機能液(層)として感光性還元剤が用いられる。
露光装置EXは、処理装置PR2から搬送されてきた基板Pを処理装置PR3に向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して露光処理を行う処理装置である。露光装置EXは、基板Pの表面(感光性機能層の表面、すなわち、感光面)に、電子デバイス用のパターン(例えば、電子デバイスを構成するTFTの電極や配線等のパターン)に応じた光パターンを照射する。これにより、感光性機能層に前記パターンに対応した潜像(改質部)が形成される。
本第1の実施の形態においては、露光装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置(パターン描画装置)である。後で詳細に説明するが、露光装置EXは、基板Pを+X方向(副走査の方向)に搬送しながら、露光用のパルス状のビームLB(パルスビーム)のスポット光SPを、基板Pの被照射面(感光面)上で所定の走査方向(Y方向)に1次元に走査(主走査)しつつ、スポット光SPの強度をパターンデータ(描画データ、パターン情報)に応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板Pの被照射面に電子デバイス、回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。つまり、基板Pの副走査と、スポット光SPの主走査とで、スポット光SPが基板Pの被照射面上で相対的に2次元走査されて、基板Pに所定のパターンが描画露光される。また、基板Pは、搬送方向(+X方向)に沿って搬送されているので、露光装置EXによってパターンが露光される被露光領域Wは、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられることになる(図4参照)。この被露光領域Wに電子デバイスが形成されるので、被露光領域Wは、デバイス形成領域でもある。なお、電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されるので、露光装置EXによって各層に対応したパターンが露光されるようにしてもよい。
処理装置PR3は、露光装置EXから搬送されてきた基板Pを処理装置PR4に向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して湿式処理を行う湿式処理装置である。本第1の実施の形態では、処理装置PR3は、基板Pに対して湿式処理の一種であるメッキ処理を行う。つまり、基板Pを処理槽に貯蔵されたメッキ液に所定時間浸漬する。これにより、感光性機能層の表面に潜像に応じたパターン層が析出(形成)される。つまり、基板Pの感光性機能層上のスポット光SPの照射部分と非照射部分の違いに応じて、基板P上に所定の材料(例えば、パラジウム)が選択的に形成され、これがパターン層となる。
なお、感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、湿式処理の一種である液体(例えば、導電性インク等を含有した液体)の塗布処理またはメッキ処理が処理装置PR3によって行われる。この場合であっても、感光性機能層の表面に潜像に応じたパターン層が形成される。つまり、基板Pの感光性機能層のスポット光SPの照射部分と被照射部分の違いに応じて、基板P上に所定の材料(例えば、導電性インクまたはパラジウム等)が選択的に形成され、これがパターン層となる。また、感光性機能層としてフォトレジストを採用する場合は、処理装置PR3によって、湿式処理の一種である現像処理が行われる。この場合は、この現像処理によって、潜像に応じたパターンが感光性機能層(フォトレジスト)に形成される。
処理装置PR4は、処理装置PR3から搬送されてきた基板Pを回収ロールFR2に向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して洗浄・乾燥処理を行う洗浄・乾燥装置である。処理装置PR4は、湿式処理が施された基板Pに対して純水による洗浄を行い、その後ガラス転移温度以下で、基板Pの水分含有率が所定値以下になるまで乾燥させる。
なお、感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いた場合は、処理装置PR4は、基板Pに対してアニール処理と乾燥処理を行うアニール・乾燥装置であってもよい。アニール処理は、塗布された導電性インクに含有されるナノ粒子同士の電気的な結合を強固にするために、例えば、ストロボランプからの高輝度のパルス光を基板Pに照射する。感光性機能層としてフォトレジストを採用した場合は、処理装置PR4と回収ロールFR2との間に、エッチング処理を行う処理装置(湿式処理装置)PR5と、エッチング処理が施された基板Pに対して洗浄・乾燥処理を行う処理装置(洗浄・乾燥装置)PR6とを設けてもよい。これにより、感光性機能層としてフォトレジストを採用した場合は、エッチング処理が施されることで、基板Pにパターン層が形成される。つまり、基板Pの感光性機能層のスポット光SPの照射部分と被照射部分の違いに応じて、基板P上に所定の材料(例えば、アルミニウム(Al)または銅(Cu)等)が選択的に形成され、これがパターン層となる。処理装置PR5、PR6は、送られてきた基板Pを回収ロールFR2に向けて所定の速度で基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送する機能を有する。複数の処理装置PR1〜PR4(必要に応じて処理装置PR5、PR6も含む)が、基板Pを+X方向に搬送する機能は基板搬送装置として構成される。
このようにして、各処理が施された基板Pは回収ロールFR2によって回収される。デバイス製造システム10の少なくとも各処理を経て、1つのパターン層が基板P上に形成される。上述したように、電子デバイスは、複数のパターン層が重ね合わされることで構成されるので、電子デバイスを生成するために、図1に示すようなデバイス製造システム10の各処理を少なくとも2回は経なければならない。そのため、基板Pが巻き取られた回収ロールFR2を供給ロールFR1として別のデバイス製造システム10に装着することで、パターン層を積層することができる。そのような動作を繰り返して、電子デバイスが形成される。処理後の基板Pは、複数の電子デバイスが所定の間隔をあけて基板Pの長尺方向に沿って連なった状態となる。つまり、基板Pは、多面取り用の基板となっている。
電子デバイスが連なった状態で形成された基板Pを回収した回収ロールFR2は、図示しないダイシング装置に装着されてもよい。回収ロールFR2が装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを電子デバイス(デバイス形成領域である被露光領域W)毎に分割(ダイシング)することで、複数の枚葉となった電子デバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
図2は、露光装置EXの構成を示す構成図である。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度、所定の湿度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制するとともに、基板Pの吸湿性や搬送に伴って発生する静電気の帯電等を考慮した湿度に設定される。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eからの振動を低減する。この設置面Eは、工場の床面自体であってもよいし、水平面を出すために床面上に専用に設置される設置土台(ペデスタル)上の面であってもよい。露光装置EXは、基板搬送機構12と、同一構成の2つの光源装置(光源)LS(LSa、LSb)と、ビーム切換部(電気光学偏向装置を含む)BDUと、露光ヘッド(走査装置)14と、制御装置16と、複数のアライメント顕微鏡AM1m、AM2m(なお、m=1、2、3、4)と、複数のエンコーダENja、ENjb(なお、j=1、2、3、4)とを少なくとも備えている。制御装置(制御部)16は、露光装置EXの各部を制御するものである。この制御装置16は、コンピュータとプログラムが記録された記録媒体等とを含み、該コンピュータがプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の制御装置16として機能する。
基板搬送機構12は、デバイス製造システム10の前記基板搬送装置の一部を構成するものであり、処理装置PR2から搬送される基板Pを、露光装置EX内で所定の速度で搬送した後、処理装置PR3に所定の速度で送り出す。この基板搬送機構12によって、露光装置EX内で搬送される基板Pの搬送路が規定される。基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)DR、テンション調整ローラRT2、駆動ローラR2、および、駆動ローラR3を有している。
エッジポジションコントローラEPCは、処理装置PR2から搬送される基板Pの幅方向(Y方向であって基板Pの短尺方向)における位置を調整する。つまり、エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションがかけられた状態で搬送されている基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションがかけられた状態で基板Pが掛け渡されるローラと、基板Pの幅方向の端部(エッジ)の位置を検出する図示しないエッジセンサ(端部検出部)とを有する。エッジポジションコントローラEPCは、前記エッジセンサが検出した検出信号に基づいて、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラをY方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。駆動ローラ(ニップローラ)R1は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを回転ドラムDRへ向けて搬送する。なお、エッジポジションコントローラEPCは、回転ドラムDRに巻き付く基板Pの長尺方向が、回転ドラムDRの中心軸AXoに対して常に直交するように、基板Pの幅方向における位置と適宜調整するとともに、基板Pの進行方向における傾き誤差を補正するように、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラの回転軸とY軸との平行度を適宜調整してもよい。
回転ドラムDRは、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有する。回転ドラムDRは、この外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に円筒面状に湾曲させて支持(保持)しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板Pを+X方向に搬送する。回転ドラムDRは、露光ヘッド14からのビームLB(スポット光SP)が投射される基板P上の領域(部分)をその外周面で支持する。回転ドラムDRは、電子デバイスが形成される面(感光面が形成された側の面)とは反対側の面(裏面)側から基板Pを支持(密着保持)する。回転ドラムDRのY方向の両側には、回転ドラムDRが中心軸AXoの周りを回転するように環状のベアリングで支持されたシャフトSftが設けられている。このシャフトSftは、制御装置16によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられることで中心軸AXo回りに一定の回転速度で回転する。なお、便宜的に、中心軸AXoを含み、YZ平面と平行な平面を中心面Pocと呼ぶ。
駆動ローラ(ニップローラ)R2、R3は、基板Pの搬送方向(+X方向)に沿って所定の間隔を空けて配置されており、露光後の基板Pに所定の弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR2、R3は、駆動ローラR1と同様に、基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを処理装置PR3へ向けて搬送する。テンション調整ローラRT1、RT2は、−Z方向に付勢されており、回転ドラムDRに巻き付けられて支持されている基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えている。これにより、回転ドラムDRにかかる基板Pに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。制御装置16は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機等)を制御することで、駆動ローラR1〜R3を回転させる。なお、駆動ローラR1〜R3の回転軸、および、テンション調整ローラRT1、RT2の回転軸は、回転ドラムDRの中心軸AXoと平行している。
光源装置LS(LSa、LSb)は、パルス状のビーム(パルスビーム、パルス光、レーザ)LBを発生して射出する。このビームLBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であり、ビームLBの発光周波数(発振周波数、所定周波数)をFaとする。光源装置LS(LSa、LSb)が射出したビームLBは、ビーム切換部BDUを介して露光ヘッド14に入射する。光源装置LS(LSa、LSb)は、制御装置16の制御にしたがって、発光周波数FaでビームLBを発光して射出する。この光源装置LS(LSa、LSb)の構成は、後で詳細に説明するが、第1の実施の形態では、赤外波長域のパルス光を発生する半導体レーザ素子、ファイバー増幅器、増幅された赤外波長域のパルス光を紫外波長域のパルス光に変換する波長変換素子(高調波発生素子)等で構成され、発振周波数Faが数百MHzで、1パルス光の発光時間がピコ秒程度の高輝度な紫外線のパルス光が得られるファイバーアンプレーザ光源(高調波レーザ光源)を用いるものとする。なお、光源装置LSaからのビームLBと、光源装置LSbからのビームLBとを区別するために、光源装置LSaからのビームLBをLBa、光源装置LSbからのビームLBをLBbで表す場合がある。
ビーム切換部BDUは、露光ヘッド14を構成する複数の走査ユニットUn(なお、n=1、2、・・・、6)のうち2つの走査ユニットUnに、2つの光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)を入射させるとともに、ビームLB(LBa、LBb)が入射する走査ユニットUnを切り換える。詳しくは、ビーム切換部BDUは、3つの走査ユニットU1〜U3のうち1つの走査ユニットUnに光源装置LSaからのビームLBaを入射させ、3つの走査ユニットU4〜U6のうち1つの走査ユニットUnに、光源装置LSbからのビームLBbを入射させる。また、ビーム切換部BDUは、ビームLBaが入射する走査ユニットUnを走査ユニットU1〜U3の中で切り換え、ビームLBbが入射する走査ユニットUnを走査ユニットU4〜U6の中で切り換える。
ビーム切換部BDUは、スポット光SPの走査を行う走査ユニット(描画ユニット)UnにビームLBnが入射するように、ビームLBa、LBbが入射する走査ユニットUnを切り換える。つまり、ビーム切換部BDUは、走査ユニットU1〜U3のうち、スポット光SPの走査を行う1つの走査ユニットUnに、光源装置LSaからのビームLBaを入射させる。同様に、ビーム切換部BDUは、走査ユニットU4〜U6のうち、スポット光SPの走査を行う1つの走査ユニットUnに、光源装置LSbからのビームLBbを入射させる。このビーム切換部BDUについては後で詳細に説明する。なお、走査ユニットU1〜U3に関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが、U1→U2→U3、の順番で切り換わり、走査ユニットU4〜U6に関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが、U4→U5→U6、の順番で切り換わるものとする。なお、以上のビーム切換部BDUや光源装置LS(LSa、LSb)の構成は、例えば国際公開第2015/166910号パンフレットに開示されているが、後で図6、図7を参照して詳述する。
露光ヘッド14は、同一構成の複数の走査ユニットUn(U1〜U6)を配列した、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッドとなっている。露光ヘッド14は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されている基板Pの一部分に、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)によってパターンを描画する。露光ヘッド14は、基板Pに対して電子デバイス用のパターン露光を繰り返し行うことから、パターンが露光される被露光領域(電子デバイス形成領域)Wは、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている(図4参照)。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、所定の配置関係で配置されている。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、中心面Pocを挟んで基板Pの搬送方向に2列に千鳥配列で配置される。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)で、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。偶数番の走査ユニットU2、U4、U6は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)で、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6とは、XZ面内でみると中心面Pocに対して対称に設けられている。
各走査ユニットUn(U1〜U6)は、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBを基板Pの被照射面上でスポット光SPに収斂するように投射しつつ、そのスポット光SPを、回転するポリゴンミラーPM(図5参照)によって1次元に走査する。この各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラー(偏向部材)PMによって、基板Pの被照射面上でスポット光SPが1次元に走査される。このスポット光SPの走査によって、基板P上(基板Pの被照射面上)に、1ライン分のパターンが描画される直線的な描画ライン(走査線)SLn(なお、n=1、2、・・・、6)が規定される。この走査ユニットUnの構成については、後で詳しく説明する。
走査ユニットU1は、スポット光SPを描画ラインSL1に沿って走査し、同様に、走査ユニットU2〜U6は、スポット光SPを描画ラインSL2〜SL6に沿って走査する。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、図3、図4に示すように、Y方向(基板Pの幅方向、主走査方向)に関して互いに分離することなく、継ぎ合わされるように設定されている。なお、ビーム切換部BDUを介して走査ユニットUnに入射する光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBを、LBnと表す場合がある。そして、走査ユニットU1に入射するビームLBnをLB1で表し、同様に、走査ユニットU2〜U6に入射するビームLBnをLB2〜LB6で表す場合がある。この描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、走査ユニットUn(U1〜U6)によって走査されるビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPの走査軌跡を示すものである。走査ユニットUnに入射するビームLBnは、所定の方向に偏光した直線偏光(P偏光またはS偏光)のビームであってもよく、本第1の実施の形態では、P偏光のビームとする。
図4に示すように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は全部で被露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、走査領域を分担している。これにより、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、基板Pの幅方向に分割された複数の領域(描画範囲)毎にパターンを描画することができる。例えば、1つの走査ユニットUnによるY方向の走査長(描画ラインSLnの長さ)を20〜60mm程度とすると、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の3個との計6個の走査ユニットUnをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を120〜360mm程度まで広げている。各描画ラインSLn(SL1〜SL6)の長さ(描画範囲の長さ)は、原則として同一とする。つまり、描画ラインSL1〜SL6の各々に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査距離は、原則として同一とする。なお、被露光領域Wの幅を広くしたい場合は、描画ラインSLn自体の長さを長くするか、Y方向に配置する走査ユニットUnの数を増やすことで対応することができる。
なお、実際の各描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、スポット光SPが被照射面上を実際に走査可能な最大の長さ(最大走査長)よりも僅かに短く設定される。例えば、主走査方向(Y方向)の描画倍率が初期値(倍率補正無し)の場合にパターン描画可能な描画ラインSLnの走査長を30mmとすると、スポット光SPの被照射面上での最大走査長は、描画ラインSLnの描画開始点(走査開始点)側と描画終了点(走査終了点)側の各々に0.5mm程度の余裕を持たせて、31mm程度に設定されている。このように設定することによって、スポット光SPの最大走査長31mmの範囲内で、30mmの描画ラインSLnの位置を主走査方向に微調整したり、描画倍率を微調整したりすることが可能となる。スポット光SPの最大走査長は31mmに限定されるものではなく、主に走査ユニットUn内のポリゴンミラー(回転ポリゴンミラー)PMの後に設けられるfθレンズFT(図5参照)の口径によって決まる。
複数の描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、中心面Pocを挟んで、回転ドラムDRの周方向に2列に千鳥配列で配置される。奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。描画ラインSL1〜SL6は、基板Pの幅方向、つまり、回転ドラムDRの中心軸AXoと略並行となっている。
描画ラインSL1、SL3、SL5は、基板Pの幅方向(主走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に1列に配置されている。描画ラインSL2、SL4、SL6も同様に、基板Pの幅方向(主走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に1列に配置されている。このとき、描画ラインSL2は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL1と描画ラインSL3との間に配置される。同様に、描画ラインSL3は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL2と描画ラインSL4との間に配置されている。描画ラインSL4は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL3と描画ラインSL5との間に配置され、描画ラインSL5は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL4と描画ラインSL6との間に配置されている。このように、複数の描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、Y方向(主走査方向)に関して、互いにずれるように配置されている。
奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の各々に沿って走査されるビームLB1、LB3、LB5のスポット光SPの主走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向となっている。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の各々に沿って走査されるビームLB2、LB4、LB6のスポット光SPの主走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向となっている。この描画ラインSL1、SL3、SL5に沿って走査されるビームLB1、LB3、LB5のスポット光SPの主走査方向と、描画ラインSL2、SL4、SL6に沿って走査されるビームLB2、LB4、LB6のスポット光SPの主走査方向とは互いに逆方向であってもよい。本第1の実施の形態では、描画ラインSL1、SL3、SL5に沿って走査されるビームLB1、LB3、LB5のスポット光SPの主走査方向は−Y方向である。また、描画ラインSL2、SL4、SL6に沿って走査されるビームLB2、LB4、LB6のスポット光SPの主走査方向は+Y方向である。これにより、描画ラインSL1、SL3、SL5の描画開始点側の端部と、描画ラインSL2、SL4、SL6の描画開始点側の端部とはY方向に関して隣接または一部重複する。また、描画ラインSL3、SL5の描画終了点側の端部と、描画ラインSL2、SL4の描画終了点側の端部とはY方向に関して隣接または一部重複する。Y方向に隣り合う描画ラインSLnの端部同士を一部重複させるように、各描画ラインSLnを配置する場合は、例えば、各描画ラインSLnの長さに対して、描画開始点、または描画終了点を含んでY方向に数%以下の範囲で重複させるとよい。なお、描画ラインSLnをY方向に継ぎ合わせるとは、描画ラインSLnの端部同士をY方向に関して隣接(密接)または一部重複させることを意味する。
なお、描画ラインSLnの副走査方向の幅(X方向の寸法)は、スポット光SPのサイズ(直径)φに応じた太さである。例えば、スポット光SPのサイズ(寸法)φが3μmの場合は、描画ラインSLnの幅も3μmとなる。スポット光SPは、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズφの1/2とする)だけオーバーラップするように、描画ラインSLnに沿って投射されてもよい。また、Y方向に隣り合う描画ラインSLn(例えば、描画ラインSL1と描画ラインSL2)同士を互いに継ぐ場合も、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズφの1/2)だけオーバーラップさせるのがよい。
本第1の実施の形態の場合、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)がパルス光であるため、主走査の間に描画ラインSLn上に投射されるスポット光SPは、ビームLB(LBa、LBb)の発振周波数Fa(例えば、400MHz)に応じて離散的になる。そのため、ビームLBの1パルス光によって投射されるスポット光SPと次の1パルス光によって投射されるスポット光SPとを、主走査方向にオーバーラップさせる必要がある。そのオーバーラップの量は、スポット光SPのサイズφ、スポット光SPの走査速度(主走査の速度)Vs、および、ビームLBの発振周波数Faによって設定される。スポット光SPの実効的なサイズφは、スポット光SPの強度分布がガウス分布で近似される場合、スポット光SPのピーク強度の1/e2(または1/2)で決まる。本第1の実施の形態では、実効的なサイズ(寸法)φに対して、φ×1/2程度スポット光SPがオーバーラップするように、スポット光SPの走査速度Vsおよび発振周波数Faが設定される。したがって、スポット光SPの主走査方向に沿った投射間隔は、φ/2となる。そのため、副走査方向(描画ラインSLnと直交した方向)に関しても、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1回の走査と、次の走査との間で、基板Pがスポット光SPの実効的なサイズφの略1/2の距離だけ移動するように設定することが望ましい。また、基板P上の感光性機能層への露光量の設定は、ビームLB(パルス光)のピーク値の調整で可能であるが、ビームLBの強度を上げられない状況で露光量を増大させたい場合は、スポット光SPの主走査方向の走査速度Vsの低下、ビームLBの発振周波数Faの増大、或いは基板Pの副走査方向の搬送速度Vtの低下等のいずれかによって、スポット光SPの主走査方向または副走査方向に関するオーバーラップ量を増加させればよい。スポット光SPの主走査方向の走査速度Vsは、ポリゴンミラーPMの回転数(回転速度Vp)に比例して速くなる。
各走査ユニットUn(U1〜U6)は、少なくともXZ平面において、各ビームLBnが回転ドラムDRの中心軸AXoに向かって進むように、各ビームLBnを基板Pに向けて照射する。これにより、各走査ユニットUn(U1〜U6)から基板Pに向かって進むビームLBnの光路(ビーム中心軸)は、XZ平面において、基板Pの被照射面の法線と平行となる。また、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に照射するビームLBnが、YZ平面と平行な面内では基板Pの被照射面に対して垂直となるように、ビームLBnを基板Pに向けて照射する。すなわち、被照射面でのスポット光SPの主走査方向に関して、基板Pに投射されるビームLBn(LB1〜LB6)はテレセントリックな状態で走査される。ここで、各走査ユニットUn(U1〜U6)によって規定される所定の描画ラインSLn(SL1〜SL6)の各中点を通って基板Pの被照射面と垂直な線(または光軸とも呼ぶ)を、照射中心軸Len(Le1〜Le6)と呼ぶ。
この各照射中心軸Len(Le1〜Le6)は、XZ平面において、描画ラインSL1〜SL6と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の各々の照射中心軸Le1、Le3、Le5は、XZ平面において同じ方向となっており、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の各々の照射中心軸Le2、Le4、Le6は、XZ平面において同じ方向となっている。また、照射中心軸Le1、Le3、Le5と照射中心軸Le2、Le4、Le6とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θ1となるように設定されている(図2参照)。
図2に示した複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、図4に示す基板Pに形成された複数のアライメントマークMKm(MK1〜MK4)を検出するためのものであり、Y方向に沿って複数(本第1の実施の形態では、4つ)設けられている。複数のアライメントマークMKm(MK1〜MK4)は、基板Pの被照射面上の被露光領域Wに描画される所定のパターンと、基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されている基板P上で、複数のアライメントマークMKm(MK1〜MK4)を検出する。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)は、露光ヘッド14からのビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPによる基板P上の被照射領域(描画ラインSL1〜SL6で囲まれた領域)よりも基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。また、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)は、露光ヘッド14からビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPによる基板P上の被照射領域(描画ラインSL1〜SL6で囲まれた領域)よりも基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。
アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、アライメント用の照明光を基板Pに投射する光源と、基板Pの表面のアライメントマークMKmを含む局所領域(観察領域)Vw1m(Vw11〜Vw14)、Vw2m(Vw21〜Vw24)の拡大像を得る観察光学系(対物レンズを含む)と、その拡大像を基板Pが搬送方向に移動している間に、基板Pの搬送速度Vtに応じた高速シャッタで撮像するCCD、CMOS等の撮像素子とを有する。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)の各々が撮像した撮像信号(画像データ)は制御装置16に送られる。制御装置16のマーク位置検出部106(図9参照)は、この送られてきた複数の撮像信号の画像解析を行うことで、基板P上のアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置(マーク位置情報)を検出する。なお、アライメント用の照明光は、基板P上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500〜800nm程度の光である。
複数のアライメントマークMK1〜MK4は、各被露光領域Wの周りに設けられている。アライメントマークMK1、MK4は、被露光領域Wの基板Pの幅方向の両側に、基板Pの長尺方向に沿って一定の間隔Dhで複数形成されている。アライメントマークMK1は、基板Pの幅方向の−Y方向側に、アライメントマークMK4は、基板Pの幅方向の+Y方向側にそれぞれ形成されている。このようなアライメントマークMK1、MK4は、基板Pが大きなテンションを受けたり、熱プロセスを受けたりして変形していない状態では、基板Pの長尺方向(X方向)に関して同一位置になるように配置される。さらに、アライメントマークMK2、MK3は、アライメントマークMK1とアライメントマークMK4の間であって、被露光領域Wの+X方向側と−X方向側との余白部に基板Pの幅方向(短尺方向)に沿って形成されている。アライメントマークMK2、MK3は、被露光領域Wと被露光領域Wとの間に形成されている。アライメントマークMK2は、基板Pの幅方向の−Y方向側に、アライメントマークMK3は、基板Pの+Y方向側に形成されている。
さらに、基板Pの−Y方向側の端部に配列されるアライメントマークMK1と余白部のアライメントマークMK2とのY方向の間隔、余白部のアライメントマークMK2とアライメントマークMK3のY方向の間隔、および基板Pの+Y方向側の端部に配列されるアライメントマークMK4と余白部のアライメントマークMK3とのY方向の間隔は、いずれも同じ距離に設定されている。これらのアライメントマークMKm(MK1〜MK4)は、第1層のパターン層の形成の際に一緒に形成されてもよい。例えば、第1層のパターンを露光する際に、パターンが露光される被露光領域Wの周りにアライメントマーク用のパターンも一緒に露光してもよい。なお、アライメントマークMKmは、被露光領域W内に形成されてもよい。例えば、被露光領域W内であって、被露光領域Wの輪郭に沿って形成されてもよい。また、被露光領域W内に形成される電子デバイスのパターン中の特定位置のパターン部分、或いは特定形状の部分をアライメントマークMKmとして利用してもよい。
アライメント顕微鏡AM11、AM21は、図4に示すように、対物レンズによる観察領域(検出領域)Vw11、Vw21内に存在するアライメントマークMK1を撮像するように配置される。同様に、アライメント顕微鏡AM12〜AM14、AM22〜AM24は、対物レンズによる観察領域Vw12〜Vw14、Vw22〜Vw24内に存在するアライメントマークMK2〜MK4を撮像するように配置される。したがって、複数のアライメント顕微鏡AM11〜AM14、AM21〜AM24は、複数のアライメントマークMK1〜MK4の位置に対応して、基板Pの−Y方向側からAM11〜AM14、AM21〜AM24、の順で基板Pの幅方向に沿って設けられている。なお、図3においては、アライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)の観察領域Vw2m(Vw21〜Vw24)の図示を省略している。
複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)は、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1〜SL6)と観察領域Vw1m(Vw11〜Vw14)との距離が、被露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)も同様に、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1〜SL6)と観察領域Vw2m(Vw21〜Vw24)との距離が、被露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。なお、Y方向に設けられるアライメント顕微鏡AM1m、AM2mの数は、基板Pの幅方向に形成されるアライメントマークMKmの数に応じて変更可能である。また、各観察領域Vw1m(Vw11〜Vw14)、Vw2m(Vw21〜Vw24)の基板Pの被照射面上の大きさは、アライメントマークMK1〜MK4の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。
図3に示すように、回転ドラムDRの両端部には、回転ドラムDRの外周面の周方向の全体に亘って環状に形成された目盛を有するスケール部SDa、SDbが設けられている。このスケール部SDa、SDbは、回転ドラムDRの外周面の周方向に一定のピッチ(例えば、20μm)で凹状または凸状の格子線を刻設した回折格子であり、インクリメンタル型のスケールとして構成される。このスケール部SDa、SDbは、中心軸AXo回りに回転ドラムDRと一体に回転する。スケール部SDa、SDbを読み取るスケール読取ヘッドとしての複数のエンコーダENja、ENjb(なお、j=1、2、3、4)は、このスケール部SDa、SDbと対向するように設けられている(図2、図3参照)。なお、図3においては、エンコーダEN4a、EN4bの図示を省略している。
エンコーダENja、ENjbは、回転ドラムDRの回転角度位置を光学的に検出するものである。回転ドラムDRの−Y方向側の端部に設けられたスケール部SDaに対向して、4つのエンコーダENja(EN1a、EN2a、EN3a、EN4a)が設けられている。同様に、回転ドラムDRの+Y方向側の端部に設けられたスケール部SDbに対向して、4つのエンコーダENjb(EN1b、EN2b、EN3b、EN4b)が設けられている。
エンコーダEN1a、EN1bは、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられており、設置方位線Lx1上に配置されている(図2、図3参照)。設置方位線Lx1は、XZ平面において、エンコーダEN1a、EN1bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Lx1は、XZ平面において、各アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)の観察領域Vw1m(Vw11〜Vw14)と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。つまり、複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)も設置方位線Lx1上に配置されている。
エンコーダEN2a、EN2bは、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられており、且つ、エンコーダEN1a、EN1bより基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。エンコーダEN2a、EN2bは、設置方位線Lx2上に配置されている(図2、図3参照)。設置方位線Lx2は、XZ平面において、エンコーダEN2a、EN2bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。この設置方位線Lx2は、XZ平面において、照射中心軸Le1、Le3、Le5と同角度位置となって重なっている。
エンコーダEN3a、EN3bは、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、設置方位線Lx3上に配置されている(図2、図3参照)。設置方位線Lx3は、XZ平面において、エンコーダEN3a、EN3bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。この設置方位線Lx3は、XZ平面において、照射中心軸Le2、Le4、Le6と同角度位置となって重なっている。したがって、設置方位線Lx2と設置方位線Lx3とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θ1となるように設定されている(図2参照)。
エンコーダEN4a、EN4bは、エンコーダEN3a、EN3bより基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、設置方位線Lx4上に配置されている(図2参照)。設置方位線Lx4は、XZ平面において、エンコーダEN4a、EN4bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Lx4は、XZ平面において、各アライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)の観察領域Vw2m(Vw21〜Vw24)と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。つまり、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)も設置方位線Lx4上に配置されている。この設置方位線Lx1と設置方位線Lx4とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θ2となるように設定されている(図2参照)。
各エンコーダENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)は、スケール部SDa、SDbに向けて計測用の光ビームを投射し、その反射光束(回折光)を光電検出することにより、パルス信号である検出信号を制御装置16に出力する。制御装置16の回転位置検出部108(図9参照)は、その検出信号(パルス信号)をカウントすることで、回転ドラムDRの回転角度位置および角度変化をサブミクロンの分解能で計測する。この回転ドラムDRの角度変化から、基板Pの搬送速度Vtも計測することができる。回転位置検出部108は、各エンコーダENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)からの検出信号をそれぞれ個別にカウントする。
具体的には、回転位置検出部108は、複数のカウンタ回路CNja(CN1a〜CN4a)、CNjb(CN1b〜CN4b)を有する。カウンタ回路CN1aは、エンコーダEN1aからの検出信号をカウントし、カウンタ回路CN1bは、エンコーダEN1bからの検出信号をカウントする。同様にして、カウンタ回路CN2a〜CN4a、CN2b〜CN4bは、エンコーダEN2a〜EN4a、EN2b〜EN4bからの検出信号をカウントする。この各カウンタ回路CNja(CN1a〜CN4a)、CNjb(CN1b〜CN4b)は、各エンコーダENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)がスケール部SDa、SDbの周方向の一部に形成された図3に示す原点マーク(原点パターン)ZZを検出すると、原点マークZZを検出したエンコーダENja、ENjbに対応するカウント値を0にリセットする。
このカウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値のいずれか一方若しくはその平均値は、設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられ、カウンタ回路CN2a、CN2bのカウント値のいずれか一方若しくは平均値は、設置方位線Lx2上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられる。同様に、カウンタ回路CN3a、CN3bのカウント値のいずれか一方若しくは平均値は、設置方位線Lx3上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられ、カウンタ回路CN4a、CN4bのカウント値のいずれか一方若しくはその平均値は、設置方位線Lx4上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられる。なお、回転ドラムDRの製造誤差等によって回転ドラムDRが中心軸AXoに対して偏心して回転している場合を除き、原則として、カウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値は同一となる。同様にして、カウンタ回路CN2a、CN2bのカウント値も同一となり、カウンタ回路CN3a、CN3bのカウント値、カウンタ回路CN4a、CN4bのカウント値もそれぞれ同一となる。
上述したように、アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)とエンコーダEN1a、EN1bとは、設置方位線Lx1上に配置され、アライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)とエンコーダEN4a、EN4bとは、設置方位線Lx4上に配置されている。したがって、複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)が撮像した複数の撮像信号のマーク位置検出部106の画像解析によるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置検出と、アライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間の回転ドラムDRの回転角度位置の情報(エンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値)とに基づいて、設置方位線Lx1上における基板Pの位置を高精度に計測することができる。同様に、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)が撮像した複数の撮像信号のマーク位置検出部106の画像解析によるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置検出と、アライメント顕微鏡AM2mが撮像した瞬間の回転ドラムDRの回転角度位置の情報(エンコーダEN4a、EN4bに基づくカウント値)とに基づいて、設置方位線Lx4上における基板Pの位置を高精度に計測することができる。
また、エンコーダEN1a、EN1bからの検出信号のカウント値と、エンコーダEN2a、EN2bからの検出信号のカウント値と、エンコーダEN3a、EN3bからの検出信号のカウント値と、エンコーダEN4a、EN4bからの検出信号のカウント値は、各エンコーダENja、ENjbが原点マークZZを検出した瞬間にゼロにリセットされる。そのため、エンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)のときの、回転ドラムDRに巻き付けられている基板Pの設置方位線Lx1上における位置を第1の位置とした場合に、基板P上の第1の位置が設置方位線Lx2上の位置(描画ラインSL1、SL3、SL5の位置)まで搬送されると、エンコーダEN2a、EN2bに基づくカウント値は第1の値(例えば、100)となる。同様に、基板P上の第1の位置が設置方位線Lx3上の位置(描画ラインSL2、SL4、SL6の位置)まで搬送されると、エンコーダEN3a、EN3bに基づく検出信号のカウント値は第1の値(例えば、100)となる。同様に、基板P上の第1の位置が設置方位線Lx4上の位置まで搬送されると、エンコーダEN4a、EN4bに基づく検出信号のカウント値は第1の値(例えば、100)となる。
ところで、基板Pは、回転ドラムDRの両端のスケール部SDa、SDbより内側に巻き付けられている。図2では、スケール部SDa、SDbの外周面の中心軸AXoからの半径を、回転ドラムDRの外周面の中心軸AXoからの半径より小さく設定した。しかしながら、図3に示すように、スケール部SDa、SDbの外周面を、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの外周面と同一面となるように設定してもよい。つまり、スケール部SDa、SDbの外周面の中心軸AXoからの半径(距離)と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの外周面(被照射面)の中心軸AXoからの半径(距離)とが同一となるように設定してもよい。これにより、各エンコーダENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)は、回転ドラムDRに巻き付いた基板Pの被照射面と同じ径方向の位置でスケール部SDa、SDbを検出することができる。したがって、エンコーダENja、ENjbによる計測位置と処理位置(描画ラインSL1〜SL6)とが回転ドラムDRの径方向で異なることで生じるアッベ誤差を小さくすることができる。
ただし、被照射体としての基板Pの厚さは十数μm〜数百μmと大きく異なるため、スケール部SDa、SDbの外周面の半径と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの外周面の半径とを常に同一にすることは難しい。そのため、図3に示したスケール部SDa、SDbの場合、その外周面(スケール面)の半径は、回転ドラムDRの外周面の半径と一致するように設定される。さらに、スケール部SDa、SDbを個別の円盤で構成し、その円盤(スケール円盤)を回転ドラムDRのシャフトSftに同軸に取り付けることも可能である。その場合も、アッベ誤差が許容値内に収まる程度に、スケール円盤の外周面(スケール面)の半径と回転ドラムDRの外周面の半径とを揃えておくのがよい。
以上のことから、アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)によって検出されたアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の基板P上の位置と、エンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値(カウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値のいずれか一方若しくは平均値)に基づいて、制御装置16によって基板Pの長尺方向(X方向)における被露光領域Wの描画露光の開始位置が決定される。なお、被露光領域WのX方向の長さは予め既知なので、制御装置16は、アライメントマークMKm(MK1〜MK4)を所定個数検出する度に、描画露光の開始位置として決定する。そして、露光開始位置が決定された際のエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値を第1の値(例えば、100)とした場合は、エンコーダEN2a、EN2bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)となると、基板Pの長尺方向における被露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL1、SL3、SL5上に位置する。したがって、走査ユニットU1、U3、U5は、エンコーダEN2a、EN2bのカウント値に基づいて、スポット光SPの走査を開始することができる。また、エンコーダEN3a、EN3bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)となると、基板Pの長尺方向における被露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に位置する。したがって、走査ユニットU2、U4、U6は、エンコーダEN3a、EN3bのカウント値に基づいて、スポット光SPの走査を開始することができる。
ところで、図2において、通常は、テンション調整ローラRT1、RT2が基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えることで、基板Pは、回転ドラムDRに密着しながら、回転ドラムDRの回転と一緒になって搬送される。しかし、回転ドラムDRの回転速度Vpが速かったり、テンション調整ローラRT1、RT2が基板Pに与えるテンションが低くなり過ぎたり、高くなり過ぎたりする等の理由により、基板Pの回転ドラムDRに対する滑りが発生する可能性がある。基板Pの回転ドラムDRに対する滑りが発生しない状態時においては、エンコーダEN4a、4bに基づくカウント値が、アライメントマークMKmA(ある特定のアライメントマークMKm)をアライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間のエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値(例えば、150)と同じ値になった場合は、アライメント顕微鏡AM2mによって、このアライメントマークMKmAが検出される。
しかしながら、基板Pの回転ドラムDRに対する滑りが発生している場合は、エンコーダEN4a、EN4bに基づくカウント値が、アライメントマークMKmAをアライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間のエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値(例えば、150)と同じ値となっても、アライメント顕微鏡AM2mによって、このアライメントマークMKmAが検出されない。この場合は、エンコーダEN4a、EN4bに基づくカウント値が、例えば、150を過ぎてから、アライメント顕微鏡AM2mによって、アライメントマークMKmAが検出されることになる。したがって、アライメントマークMKmAをアライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間のエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値と、アライメントマークMKmAをアライメント顕微鏡AM2mが撮像した瞬間のエンコーダEN4a、EN4bのカウント値とに基づいて、基板Pに対する滑り量を求めることができる。このように、このアライメント顕微鏡AM2mおよびエンコーダEN4a、EN4bを追加設置することで、基板Pの滑り量を測定することができる。
次に、図5を参照して走査ユニットUn(U1〜U6)の光学的な構成について説明する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、同一の構成を有することから、走査ユニット(描画ユニット)U1についてのみ説明し、他の走査ユニットUnについてはその説明を省略する。また、図5においては、照射中心軸Len(Le1)と平行する方向をZt方向とし、Zt方向と直交する平面上にあって、基板Pが処理装置PR2から露光装置EXを経て処理装置PR3に向かう方向をXt方向とし、Zt方向と直交する平面上であって、Xt方向と直交する方向をYt方向とする。つまり、図5のXt、Yt、Ztの3次元座標は、図2のX、Y、Zの3次元座標を、Y軸を中心にZ軸方向が照射中心軸Len(Le1)と平行となるように回転させた3次元座標である。
図5に示すように、走査ユニットU1内には、ビームLB1の入射位置から被照射面(基板P)までのビームLB1の進行方向に沿って、反射ミラーM10、ビームエキスパンダーBE、反射ミラーM11、偏光ビームスプリッタBS1、反射ミラーM12、シフト光学部材(光透過性の平行平板)SR、偏向調整光学部材(プリズム)DP、フィールドアパーチャFA、反射ミラーM13、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM14、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、反射ミラーM15、シリンドリカルレンズCYbが設けられる。さらに、走査ユニットU1内には、走査ユニットU1の描画開始可能タイミングを検出する原点センサ(原点検出器)OP1と、被照射面(基板P)からの反射光を偏光ビームスプリッタBS1を介して検出するための光学レンズ系G10および光検出器DTとが設けられる。
走査ユニットU1に入射するビームLB1は、−Zt方向に向けて進み、XtYt平面に対して45°傾いた反射ミラーM10に入射する。この走査ユニットU1に入射するビームLB1の軸線は、照射中心軸Le1と同軸になるように反射ミラーM10に入射する。反射ミラーM10は、ビームLB1を走査ユニットU1に入射させる入射光学部材として機能し、入射したビームLB1を、Xt軸と平行に設定される光軸AXaに沿って、反射ミラーM10から−Xt方向に離れた反射ミラーM11に向けて−Xt方向に反射する。したがって、光軸AXaはXtZt平面と平行な面内で照射中心軸Le1と直交する。反射ミラーM10で反射したビームLB1は、光軸AXaに沿って配置されるビームエキスパンダーBEを透過して反射ミラーM11に入射する。ビームエキスパンダーBEは、透過するビームLB1の径を拡大させる。ビームエキスパンダーBEは、集光レンズBe1と、集光レンズBe1によって収斂された後に発散するビームLB1を平行光にするコリメートレンズBe2とを有する。
反射ミラーM11は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1(光軸AXa)を偏光ビームスプリッタBS1に向けて−Yt方向に反射する。反射ミラーM11に対して−Yt方向に離れて設置されている偏光ビームスプリッタBS1の偏光分離面は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、P偏光のビームを反射し、P偏光と直交する方向に偏光した直線偏光(S偏光)のビームを透過するものである。走査ユニットU1に入射するビームLB1は、P偏光のビームなので、偏光ビームスプリッタBS1は、反射ミラーM11からのビームLB1を−Xt方向に反射して反射ミラーM12側に導く。
反射ミラーM12は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を、反射ミラーM12から−Zt方向に離れた反射ミラーM13に向けて−Zt方向に反射する。反射ミラーM12で反射されたビームLB1は、Zt軸と平行な光軸AXcに沿ってシフト光学部材SR、偏向調整光学部材DP、およびフィールドアパーチャ(視野絞り)FAを通過して、反射ミラーM13に入射する。シフト光学部材SRは、ビームLB1の進行方向(光軸AXc)と直交する平面(XtYt平面)内において、ビームLB1の断面内の中心位置を2次元的に調整する。シフト光学部材SRは、光軸AXcに沿って配置される2枚の石英の平行平板Sr1、Sr2で構成され、平行平板Sr1は、Xt軸回りに傾斜可能であり、平行平板Sr2は、Yt軸回りに傾斜可能である。この平行平板Sr1、Sr2がそれぞれ、Xt軸、Yt軸回りに傾斜することで、ビームLB1の進行方向と直交するXtYt平面において、ビームLB1の中心の位置を2次元に微小量シフトする。この平行平板Sr1、Sr2は、制御装置16の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。シフト光学部材SRのうちの平行平板Sr2は、基板P上に投射されるビームLB1のスポット光SPを副走査方向(図4におけるX方向)に、例えばスポット光SPのサイズφ、或いは画素サイズの数倍〜十数倍の範囲でシフトさせる機械光学的なビーム位置調整部材(第1調整部材、第1調整光学部材)として機能する。
偏向調整光学部材DPは、反射ミラーM12で反射されてシフト光学部材SRを通ってきたビームLB1の光軸AXcに対する傾きを微調整するものである。偏向調整光学部材DPは、光軸AXcに沿って配置される2つの楔状のプリズムDp1、Dp2で構成され、プリズムDp1、Dp2の各々は独立して光軸AXcを中心に360°回転可能に設けられている。2つのプリズムDp1、Dp2の回転角度位置を調整することによって、反射ミラーM13に達するビームLB1の軸線と光軸AXcとの平行出し、または、基板Pの被照射面に達するビームLB1の軸線と照射中心軸Le1との平行出しが行われる。なお、2つのプリズムDp1、Dp2によって偏向調整された後のビームLB1は、ビームLB1の断面と平行な面内で横シフトしている場合があり、その横シフトは先のシフト光学部材SRによって元に戻すことができる。このプリズムDp1、Dp2は、制御装置16の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
このように、シフト光学部材SRと偏向調整光学部材DPとを通ったビームLB1は、フィールドアパーチャFAの円形開口を透過して反射ミラーM13に達する。フィールドアパーチャFAの円形開口は、ビームエキスパンダーBEで拡大されたビームLB1の断面内の強度分布の周辺部(裾野部分)をカット(遮蔽)する絞りである。フィールドアパーチャFAの円形開口を口径が調整可能な可変虹彩絞りにすると、スポット光SPの強度(輝度)を調整することができる。
反射ミラーM13は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を反射ミラーM14に向けて+Xt方向に反射する。反射ミラーM13で反射したビームLB1は、λ/4波長板QWおよびシリンドリカルレンズCYaを介して反射ミラーM14に入射する。反射ミラーM14は、入射したビームLB1をポリゴンミラー(回転多面鏡、走査用偏向部材)PMに向けて反射する。ポリゴンミラーPMは、入射したビームLB1を、Xt軸と平行な光軸AXfを有するfθレンズFTに向けて+Xt方向側に反射する。ポリゴンミラーPMは、ビームLB1のスポット光SPを基板Pの被照射面上で走査するために、入射したビームLB1をXtYt平面と平行な面内で1次元に偏向(反射)する。具体的には、ポリゴンミラーPMは、Zt軸方向に延びる回転軸AXpと、回転軸AXpの周りに形成された複数の反射面RP(本実施の形態では反射面RPの数Npを8とする)とを有する。回転軸AXpを中心にこのポリゴンミラーPMを所定の回転方向に回転させることで反射面RPに照射されるパルス状のビームLB1の反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの反射面RPによってビームLB1の反射方向が偏向され、基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1のスポット光SPを主走査方向(基板Pの幅方向、Yt方向)に沿って走査することができる。
つまり、1つの反射面RPによって、ビームLB1のスポット光SPを主走査方向に沿って走査することができる。このため、ポリゴンミラーPMの1回転で、基板Pの被照射面上にスポット光SPが走査される描画ラインSL1の数は、最大で反射面RPの数と同じ8本となる。ポリゴンミラーPMは、制御装置16の制御の下、回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)RMによって一定の速度で回転する。先に説明したように、描画ラインSL1の実効的な長さ(例えば、30mm)は、このポリゴンミラーPMによってスポット光SPを走査することができる最大走査長(例えば、31mm)以下の長さに設定されており、初期設定(設計上)では、最大走査長の中央に描画ラインSL1の中心点(照射中心軸Le1が通る点)が設定されている。
シリンドリカルレンズCYaは、ポリゴンミラーPMによる主走査方向(回転方向)と直交する非走査方向(Zt方向)に関して、入射したビームLB1をポリゴンミラーPMの反射面RP上に収斂する。つまり、シリンドリカルレンズCYaは、ビームLB1を反射面RP上でXtYt平面と平行な方向に延びたスリット状(長楕円状)に収斂する。母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYaと、後述のシリンドリカルレンズCYbとによって、反射面RPがZt方向に対して傾いている場合(XtYt平面の法線に対する反射面RPの傾き)があっても、その影響を抑制することができる。すなわち、基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1(描画ラインSL1)の照射位置は、ポリゴンミラーPMの各反射面RPが回転軸AXpと平行な状態から僅かに傾いていたとしても、Xt方向にずれることが抑制される。
Xt軸方向に延びる光軸AXfを有するfθレンズ(走査用レンズ系)FTは、ポリゴンミラーPMによって反射されたビームLB1を、XtYt平面において、光軸AXfと平行となるように反射ミラーM15に投射するテレセントリック系のスキャンレンズである。ビームLB1のfθレンズFTへの入射角θは、ポリゴンミラーPMの回転角(θ/2)に応じて変わる。fθレンズFTは、反射ミラーM15およびシリンドリカルレンズCYbを介して、その入射角θに比例した基板Pの被照射面上の像高位置にビームLB1を投射する。焦点距離をfoとし、像高位置をyとすると、fθレンズFTは、y=fo×θ、の関係(歪曲収差)を満たすように設計されている。したがって、このfθレンズFTによって、ビームLB1をYt方向(Y方向)に正確に等速で走査することが可能になる。ビームLB1のfθレンズFTへの入射角θが0度のときに、fθレンズFTに入射したビームLB1は、光軸AXf上に沿って進む。
反射ミラーM15は、fθレンズFTからのビームLB1を、シリンドリカルレンズCYbを通すように基板Pに向けて−Zt方向に反射する。fθレンズFTおよび母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYbによって、基板Pに投射されるビームLB1が基板Pの被照射面上で直径数μm程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPに収斂される。また、基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPは、ポリゴンミラーPMによって、Yt方向に延びる描画ラインSL1によって1次元走査される。なお、fθレンズFTの光軸AXfと照射中心軸Le1とは、同一の平面上にあり、その平面はXtZt平面と平行である。したがって、光軸AXf上に進んだビームLB1は、反射ミラーM15によって−Zt方向に反射し、照射中心軸Le1と同軸になって基板Pに投射される。本第1の実施の形態において、少なくともfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって偏向されたビームLB1を基板Pの被照射面に投射する投射光学系として機能する。また、少なくとも反射部材(反射ミラーM11〜M15)および偏光ビームスプリッタBS1は、反射ミラーM10から基板PまでのビームLB1の光路を折り曲げる光路偏向部材として機能する。この光路偏向部材によって、反射ミラーM10に入射するビームLB1の入射軸と照射中心軸Le1とを略同軸にすることができる。XtZt平面に関して、走査ユニットU1内を通るビームLB1は、略U字状またはコ字状の光路を通った後、−Zt方向に進んで基板Pに投射される。
このように、基板PがX方向に搬送されている状態で、各走査ユニットUn(U1〜U6)によって、ビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPを主走査方向(Y方向)に一次元に走査することで、スポット光SPを基板Pの被照射面に相対的に2次元走査することができる。
なお、一例として、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な長さを30mmとし、実効的なサイズφが3μmのパルス状のスポット光SPの1/2ずつ、つまり、1.5μmずつ、オーバーラップさせながらスポット光SPを描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って基板Pの被照射面上に照射する場合は、スポット光SPは、1.5μmの間隔で照射される。したがって、1回の走査で照射されるスポット光SPのパルス数は、20000(=30〔mm〕/1.5〔μm〕)となる。また、副走査方向についてもスポット光SPの走査が1.5μmの間隔で行われるものとすると、基板Pの副走査方向の送り速度(搬送速度)Vt〔mm/sec〕は、描画ラインSLnに沿った1回の走査開始(描画開始)時点と次の走査開始時点との時間差をTpx〔μsec〕とすると、1.5〔μm〕/Tpx〔μsec〕となる。この時間差Tpxは、8反射面RPのポリゴンミラーPMが1面分(45度=360度/8)だけ回転する時間である。この場合、ポリゴンミラーPMの1回転の時間が、8×Tpx〔μsec〕となるように設定される必要がある。
一方、ポリゴンミラーPMの1反射面RPで反射したビームLB1が有効にfθレンズFTに入射する最大入射角度(スポット光SPの最大走査長に対応)は、fθレンズFTの焦点距離と最大走査長、及びポリゴンミラーPMの1反射面RPに入射するビームLB1の主走査方向の太さ(開口数:NA)によっておおよそ決まってしまう。一例として、8反射面RPのポリゴンミラーPMの場合は、1反射面RP分の回転角度45度のうちで実走査に寄与する回転角度αの比率(走査効率)は、α/45度で表される。本第1の実施の形態では、実走査に寄与する回転角度αを15度とするので、走査効率は1/3(=15度/45度)となり、fθレンズFTの最大入射角は30度(光軸AXfを中心として±15度)となる。そのため、描画ラインSLnの最大走査長(例えば、31mm)分だけスポット光SPを走査するのに必要な時間Ts〔μsec〕は、Ts=Tpx×走査効率、となる。本第1の実施の形態における描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な走査長を30mmとするので、この描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1走査の走査時間Tsp〔μsec〕は、Tsp=Ts×30〔mm〕/31〔mm〕となる。したがって、この時間Tspの間に、20000のスポット光SP(パルス光)を照射する必要があるので、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBの発光周波数(発振周波数)Faは、Fa≒20000/Tsp〔μsec〕となる。
図5に示す原点センサOP1は、ポリゴンミラーPMの反射面RPの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始可能な所定位置にくると原点信号SZ1を発生する。言い換えるならば、原点センサOP1は、これからスポット光SPの走査を行う反射面RPの角度が所定の角度位置になったときに原点信号SZ1を発生する。ポリゴンミラーPMは、8つの反射面RPを有するので、原点センサOP1は、ポリゴンミラーPMが1回転する期間で、8回原点信号SZ1を出力することになる。この原点センサOP1が発生した原点信号SZ1は、制御装置16に送られる。原点センサOP1が原点信号SZ1を発生してから、遅延時間Td1経過後にスポット光SPの描画ラインSL1に沿った走査が開始される。つまり、この原点信号SZ1は、走査ユニットU1によるスポット光SPの描画開始タイミング(走査開始タイミング)を示す情報となっている。
原点センサOP1は、基板Pの感光性機能層に対して非感光性の波長域のレーザビームBgaを反射面RPに対して射出するビーム送光系opaと、反射面RPで反射したレーザビームBgaの反射ビームBgbを受光して原点信号SZ1を発生するビーム受光系opbとを有する。ビーム送光系opaは、図示しないが、レーザビームBgaを射出する光源と、光源が発光したレーザビームBgaを反射面RPに投射する光学部材(反射ミラーやレンズ等)とを有する。ビーム受光系opbは、図示しないが、受光した反射ビームBgbを受光して電気信号に変換する光電変換素子を含む受光部と、反射面RPで反射した反射ビームBgbを前記受光部に導く光学部材(反射ミラーやレンズ等)を有する。ビーム送光系opaとビーム受光系opbとは、ポリゴンミラーPMの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始される直前の所定位置にきたときに、ビーム送光系opaが射出したレーザビームBgaの反射ビームBgbをビーム受光系opbが受光することができる位置に設けられている。なお、走査ユニットU2〜U6に設けられている原点センサOPnをOP2〜OP6で表し、原点センサOP2〜OP6で発生する原点信号SZnをSZ2〜SZ6で表す。制御装置16は、この原点信号SZn(SZ1〜SZ6)に基づいて、どの走査ユニットUnがこれからスポット光SPの走査を行うかを管理している。また、原点信号SZ2〜SZ6が発生してから、走査ユニットU2〜U6による描画ラインSL2〜SL6に沿ったスポット光SPの走査を開始するまでの遅延時間TdnをTd2〜Td6で表す場合がある。
図5に示す光検出器DTは、入射した光を光電変換する光電変換素子を有する。回転ドラムDRの表面には、予め決められた基準パターンが形成されている。この基準パターンが形成された回転ドラムDR上の部分は、ビームLB1の波長域に対して低めの反射率(10〜50%)の素材で構成され、基準パターンが形成されていない回転ドラムDR上の他の部分は、反射率が10%以下の材料または光を吸収する材料で構成される。そのため、基板Pが巻き付けられていない状態(または基板Pの透明部を通した状態)で、回転ドラムDRの基準パターンが形成された領域に走査ユニットU1からビームLB1のスポット光SPを照射すると、その反射光が、シリンドリカルレンズCYb、反射ミラーM15、fθレンズFT、ポリゴンミラーPM、反射ミラーM14、シリンドリカルレンズCYa、λ/4波長板QW、反射ミラーM13、フィールドアパーチャFA、偏向調整光学部材DP、シフト光学部材SR、および、反射ミラーM12を通過して偏光ビームスプリッタBS1に入射する。ここで、偏光ビームスプリッタBS1と基板Pとの間、具体的には、反射ミラーM13とシリンドリカルレンズCYaとの間には、λ/4波長板QWが設けられている。これにより、基板Pに照射されるビームLB1は、このλ/4波長板QWによってP偏光から円偏光のビームLB1に変換され、基板Pから偏光ビームスプリッタBS1に入射する反射光は、このλ/4波長板QWによって、円偏光からS偏光に変換される。したがって、基板Pからの反射光は偏光ビームスプリッタBS1を透過し、光学レンズ系G10を介して光検出器DTに入射する。
このとき、パルス状のビームLB1が連続して走査ユニットU1に入射される状態で、回転ドラムDRを回転して走査ユニットU1がスポット光SPを走査することで、回転ドラムDRの外周面には、スポット光SPが2次元的に照射される。したがって、回転ドラムDRに形成された基準パターンの画像信号(反射強度に応じた光電信号)を光検出器DTによって取得することができる。
具体的には、光検出器DTから出力される光電信号の強度変化を、ビームLB1(スポット光SP)のパルス発光のためのクロック信号LTC(光源装置LSで作られる)に応答して、デジタルサンプリングすることでYt方向の1次元の画像データとして取得する。さらに、描画ラインSL1上における回転ドラムDRの回転角度位置を計測するエンコーダEN2a、EN2bの計測値に応答して、副走査方向の一定距離(例えば、スポット光SPのサイズφの1/2)ごとにYt方向の1次元の画像データをXt方向に並べることにより、回転ドラムDRの表面の2次元の画像情報を取得できる。制御装置16は、この取得した回転ドラムDRの基準パターンの2次元の画像情報に基づいて、走査ユニットU1の描画ラインSL1の傾きを計測する。この描画ラインSL1の傾きとは、各走査ユニットUn(U1〜U6)間における相対的な傾きであってもよく、回転ドラムDRの中心軸AXoに対する傾き(絶対的な傾き)であってもよい。なお、同様にして、各描画ラインSL2〜SL6の傾きも計測することができることはいうまでもない。なお、光検出器DTから得られる基準パターンの2次元の画像情報を解析することにより、各描画ラインSL2〜SL6の傾き誤差以外に、各描画ラインSL2〜SL6の描画開始点や描画終了点の位置誤差の確認、各描画ラインSL2〜SL6の継ぎ誤差の確認等ができ、各走査ユニットUn(U1〜U6)のキャリブレーションができる。
複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の各々が照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動(回転)することができるように、図示しない本体フレームに保持されている。この各走査ユニットUn(U1〜U6)が、照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動すると、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)も、基板Pの被照射面上で照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動する。したがって、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、Y方向に対して傾くことになる。各走査ユニットUn(U1〜U6)が照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動した場合であっても、各走査ユニットUn(U1〜U6)内を通過するビームLBn(LB1〜LB6)と各走査ユニットUn(U1〜U6)内の光学的な部材との相対的な位置関係は変わらない。したがって、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、基板Pの被照射面上で回動した描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿ってスポット光SPを走査することができる。この各走査ユニットUn(U1〜U6)の照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りの回動は、制御装置16の制御の下、図示しないアクチュエータによって行われる。
そのため、制御装置16は、計測した各描画ラインSLnの傾きに応じて、走査ユニットUn(U1〜U6)を照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動させることで、複数の描画ラインSLn(SL1〜SL6)の平行状態を保つことができる。また、アライメント顕微鏡AM1m、AM2mを用いて検出したアライメントマークMKmの位置に基づいて、基板Pや被露光領域Wが歪んでいる(変形している)場合は、それに応じて描画するパターンも歪ませる必要性がある。そのため、制御装置16は、基板Pや被露光領域Wが歪んでいる(変形している)と判断した場合は、走査ユニットUn(U1〜U6)を照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動させることで、基板Pや被露光領域Wの歪み(変形)に応じて各描画ラインSLnをY方向に対して微少に傾斜させる。その際、本実施の形態においては、後で説明するように、各描画ラインSLnに沿って描画されるパターンを、指定された倍率(例えば、ppmオーダー)に応じて伸縮させるような制御、或いは、各描画ラインSLnを個別に副走査方向(図5中のXt方向)に微少にシフトさせる制御が可能となっている。
なお、走査ユニットUnの照射中心軸Lenと、走査ユニットUnが実際に回動する軸(回動中心軸)とが完全に一致していなくても、所定の許容範囲内で両者が同軸であればよい。この所定の許容範囲は、走査ユニットUnを角度θsmだけ回動させたときの実際の描画ラインSLnの描画開始点(または描画終了点)と、照射中心軸Lenと回動中心軸とが完全に一致すると仮定したときに走査ユニットUnを所定の角度θsmだけ回動させたときの設計上の描画ラインSLnの描画開始点(または描画終了点)との差分量が、スポット光SPの主走査方向に関して、所定の距離(例えば、スポット光SPのサイズφ)以内となるように設定されている。また、走査ユニットUnに実際に入射するビームLBnの光軸が、走査ユニットUnの回動中心軸と完全に一致してなくても、前記した所定の許容範囲内で同軸であればよい。
図6は、ビーム切換部BDUの構成図である。ビーム切換部BDUは、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)と、複数の集光レンズCD1〜CD6と、複数の反射ミラーM1〜M14と、複数のユニット側入射ミラーIM1〜IM6(IMn)と、複数のコリメートレンズCL1〜CL6と、吸収体TR1、TR2とを有する。選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、ビームLB(LBa、LBb)に対して透過性を有するものであり、超音波信号で駆動される音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)である。これらの光学的な部材(選択用光学素子AOM1〜AOM6、集光レンズCD1〜CD6、反射ミラーM1〜M14、ユニット側入射ミラーIM1〜IM6、コリメートレンズCL1〜CL6、および、吸収体TR1、TR2)は、板状の支持部材IUBによって支持されている。この支持部材IUBは、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の上方(+Z方向側)で、これらの光学的な部材を下方(−Z方向側)から支持する。したがって、支持部材IUBは、発熱源となる選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)と複数の走査ユニットUn(U1〜U6)との間を断熱する機能も備えている。
光源装置LSaからビームLBaは、反射ミラーM1〜M6によってその光路がつづらおり状に曲げられて、吸収体TR1まで導かれる。また、光源装置LSbからのビームLBbも同様に、反射ミラーM7〜M14によってその光路がつづらおり状に曲げられて、吸収体TR2まで導かれる。以下、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)がいずれもオフ状態(超音波信号が印加されていない状態)の場合で、詳述する。
光源装置LSaからのビームLBa(例えば直径が1mm以下の平行光束)は、Y軸と平行に+Y方向に進んで集光レンズCD1を通って反射ミラーM1に入射する。反射ミラーM1で−X方向に反射したビームLBaは、集光レンズCD1の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第1の選択用光学素子AOM1をストレートに透過し、コリメートレンズCL1によって再び平行光束にされて、反射ミラーM2に至る。反射ミラーM2で+Y方向に反射したビームLBaは、集光レンズCD2を通った後に反射ミラーM3で+X方向に反射される。
反射ミラーM3で+X方向に反射されたビームLBaは、集光レンズCD2の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第2の選択用光学素子AOM2をストレートに透過し、コリメートレンズCL2によって再び平行光束にされて、反射ミラーM4に至る。反射ミラーM4で+Y方向に反射されたビームLBaは、集光レンズCD3を通った後に反射ミラーM5で−X方向に反射される。反射ミラーM5で−X方向に反射されたビームLBaは、集光レンズCD3の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第3の選択用光学素子AOM3をストレートに透過し、コリメートレンズCL3によって再び平行光束にされて、反射ミラーM6に至る。反射ミラーM6で+Y方向に反射したビームLBaは、吸収体TR1に入射する。この吸収体TR1は、ビームLBaの外部への漏れを抑制するためにビームLBaを吸収する光トラップである。
光源装置LSbからのビームLBb(例えば直径が1mm以下の平行光束)は、Y軸と平行に+Y方向に進んで反射ミラーM13に入射し、反射ミラーM13で+X方向に反射したビームLBbは反射ミラーM14で+Y方向に反射される。反射ミラーM14で+Y方向に反射したビームLBbは、集光レンズCD4を通った後に反射ミラーM7で+X方向に反射される。反射ミラーM7で+X方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD4の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第4の選択用光学素子AOM4をストレートに透過し、コリメートレンズCL4によって再び平行光束にされて、反射ミラーM8に至る。反射ミラーM8で+Y方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD5を通った後に反射ミラーM9で−X方向に反射される。
反射ミラーM9で−X方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD5の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第5の選択用光学素子AOM5をストレートに透過し、コリメートレンズCL5によって再び平行光束にされて、反射ミラーM10に至る。反射ミラーM10で+Y方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD6を通った後に反射ミラーM11で+X方向に反射される。反射ミラーM11で+X方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD6の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第6の選択用光学素子AOM6をストレートに透過し、コリメートレンズCL6によって再び平行光束にされて、反射ミラーM12に至る。反射ミラーM12で−Y方向に反射したビームLBbは、吸収体TR2に入射する。この吸収体TR2は、ビームLBbの外部への漏れを抑制するためにビームLBbを吸収する光トラップである。
以上のように、選択用光学素子AOM1〜AOM3は、光源装置LSaからのビームLBaを順次透過するようにビームLBaの進行方向に沿って直列に配置される。また、選択用光学素子AOM1〜AOM3は、集光レンズCD1〜CD3とコリメートレンズCL1〜CL3とによって、各選択用光学素子AOM1〜AOM3の内部にビームLBaのビームウェストが形成されるように配置される。これにより、選択用光学素子(音響光学変調素子)AOM1〜AOM3に入射するビームLBaの径を小さくして、回折効率を高くするとともに応答性を高めている。同様に、選択用光学素子AOM4〜AOM6は、光源装置LSbからのビームLBbを順次透過するようにビームLBbの進行方向に沿って直列に配置される。また、選択用光学素子AOM4〜AOM6は、集光レンズCD4〜CD6とコリメートレンズCL4〜CL6とによって、各選択用光学素子AOM4〜AOM6の内部にビームLBbのビームウェストが形成されるように配置される。これにより、選択用光学素子(音響光学変調素子)AOM4〜AOM6に入射するビームLBbの径を小さくして、回折効率を高くするとともに応答性を高めている。
各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、超音波信号(高周波信号)が印加されると、入射したビーム(0次光)LB(LBa、LBb)を、高周波の周波数に応じた回折角で回折させた1次回折光を射出ビーム(ビームLBn)として発生させるものである。本第1の実施の形態では、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から1次回折光として射出されるビームLBnをビームLB1〜LB6とし、各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、光源装置LSa、LSbからのビームLB(LBa、LBb)の光路を偏向する機能を奏するものとして扱う。ただし、実際の音響光学変調素子は、1次回折光の発生効率が0次光の80%程度であるため、各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々で偏向されたビームLBn(LB1〜LB6)は、元のビームLB(LBa、LBb)の強度よりは低下している。また、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)のいずれか1つがオン状態のとき、回折されずに直進する0次光が20%程度残存するが、それは最終的に吸収体TR1、TR2によって吸収される。
図6に示すように、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々は、偏向された1次回折光であるビームLBn(LB1〜LB6)を、入射するビームLB(LBa、LBb)に対して−Z方向に偏向するように設置される。選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から偏向して射出するビームLBn(LB1〜LB6)は、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から所定距離だけ離れた位置に設けられたユニット側入射ミラーIM1〜IM6に投射され、そこで−Z方向に照射中心軸Le1〜Le6と同軸になるように反射される。ユニット側入射ミラーIM1〜IM6(以下、単にミラーIM1〜IM6とも呼ぶ)で反射されたビームLB1〜LB6は、支持部材IUBに形成された開口部TH1〜TH6の各々を通って、照射中心軸Le1〜Le6に沿うように走査ユニットUn(U1〜U6)の各々に入射する。
なお、選択用光学素子AOMnは、超音波によって透過部材中の所定方向に屈折率の周期的な粗密変化を生じさせる回折格子であるため、入射ビームLB(LBa、LBb)が直線偏光(P偏光かS偏光)である場合、その偏光方向と回折格子の周期方向とは、1次回折光の発生効率(回折効率)が最も高くなるように設定される。図6のように、各選択用光学素子AOMnが入射したビームLB(LBa、LBs)を−Z方向に回折偏向するように設置される場合、選択用光学素子AOMn内に生成される回折格子の周期方向も−Z方向であるので、それと整合するように光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBの偏光方向が設定(調整)される。
各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の構成、機能、作用等は互いに同一のものを用いてもよい。複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)のオン/オフにしたがって、入射したビームLB(LBa、LBb)を回折させた回折光の発生をオン/オフする。例えば、選択用光学素子AOM1は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射した光源装置LSaからのビームLBaを回折させずに透過する。したがって、選択用光学素子AOM1を透過したビームLBaは、コリメートレンズCL1を透過して反射ミラーM2に入射する。一方、選択用光学素子AOM1は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されてオンの状態のときは、入射したビームLBaを回折させてミラーIM1に向かわせる。つまり、この駆動信号によって選択用光学素子AOM1がスイッチングする。ミラーIM1は、選択用光学素子AOM1によって回折された1次回折光であるビームLB1を選択して走査ユニットU1側に反射する。選択用のミラーIM1で反射したビームLB1は、支持部材IUBの開口部TH1を通って照射中心軸Le1に沿って走査ユニットU1に入射する。したがって、ミラーIM1は、反射したビームLB1の光軸が照射中心軸Le1と同軸となるように、入射したビームLB1を反射する。また、選択用光学素子AOM1がオンの状態のとき、選択用光学素子AOM1をストレートに透過するビームLBの0次光(入射ビームの20%程度の強度)は、その後のコリメートレンズCL1〜CL3、集光レンズCD2〜CD3、反射ミラーM2〜M6、および、選択用光学素子AOM2〜AOM3を透過して吸収体TR1に達する。
同様に、選択用光学素子AOM2、AOM3は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射したビームLBa(0次光)を回折させずにコリメートレンズCL2、CL3側(反射ミラーM4、M6側)に透過する。一方、選択用光学素子AOM2、AOM3は、制御装置16からの駆動信号が印加されてオンの状態のときは、入射したビームLBaの1次回折光であるビームLB2、LB3をミラーIM2、IM3に向かわせる。このミラーIM2、IM3は、選択用光学素子AOM2、AOM3によって回折されたビームLB2、LB3を走査ユニットU2、U3側に反射する。ミラーIM2、IM3で反射したビームLB2、LB3は、支持部材IUBの開口部TH2、TH3を通って照射中心軸Le2、Le3と同軸となって走査ユニットU2、U3に入射する。
このように、制御装置16は、選択用光学素子AOM1〜AOM3の各々に印加すべき駆動信号(高周波信号)をオン/オフ(ハイ/ロー)にすることによって、選択用光学素子AOM1〜AOM3のいずれか1つをスイッチングして、ビームLBaが後続の選択用光学素子AOM2、AOM3または吸収体TR1に向かうか、偏向されたビームLB1〜LB3の1つが、対応する走査ユニットU1〜U3に向かうかを切り換える。
また、選択用光学素子AOM4は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射した光源装置LSbからのビームLBbを回折させずにコリメートレンズCL4側(反射ミラーM8側)に透過する。一方、選択用光学素子AOM4は、制御装置16からの駆動信号が印加されてオンの状態ときは、入射したビームLBbの1次回折光であるビームLB4をミラーIM4に向かわせる。このミラーIM4は、選択用光学素子AOM4によって回折されたビームLB4を走査ユニットU4側に反射する。ミラーIM4で反射したビームLB4は、照射中心軸Le4と同軸となって、支持部材IUBの開口部TH4を通って走査ユニットU4に入射する。
同様に、選択用光学素子AOM5、AOM6は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射したビームLBbを回折させずにコリメートレンズCL5、CL6側(反射ミラーM10、M12側)に透過する。一方、選択用光学素子AOM5、AOM6は、制御装置16からの駆動信号が印加されてオンの状態ときは、入射したビームLBbの1次回折光であるビームLB5、LB6をミラーIM5、IM6に向かわせる。このミラーIM5、IM6は、選択用光学素子AOM5、AOM6によって回折されたビームLB5、LB6を走査ユニットU5、U6側に反射する。ミラーIM5、IM6で反射したビームLB5、LB6は、照射中心軸Le5、Le6と同軸となって、支持部材IUBの開口部TH5、TH6の各々を通って走査ユニットU5、U6に入射する。
このように、制御装置16は、選択用光学素子AOM4〜AOM6の各々に印加すべき駆動信号(高周波信号)をオン/オフ(ハイ/ロー)にすることによって、選択用光学素子AOM4〜AOM6のいずれか1つをスイッチングして、ビームLBbが後続の選択用光学素子AOM5、AOM6または吸収体TR2に向かうか、偏向されたビームLB4〜LB6の1つが、対応する走査ユニットU4〜U6に向かうかを切り換える。
以上のように、ビーム切換部BDUは、光源装置LSaからのビームLBaの進行方向に沿って直列に配置された複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3)を備えることで、ビームLBaの光路を切り換えてビームLBn(LB1〜LB3)が入射する走査ユニットUn(U1〜U3)を1つ選択することができる。したがって、光源装置LSaからのビームLBaの1次回折光であるビームLBn(LB1〜LB3)を、3つの走査ユニットUn(U1〜U3)の各々に順番に入射させることができる。例えば、走査ユニットU1にビームLB1を入射させたい場合は、制御装置16が、複数の選択用光学素子AOM1〜AOM3のうち、選択用光学素子AOM1のみをオン状態にし、走査ユニットU3にビームLB3を入射させたい場合は、選択用光学素子AOM3のみをオン状態にすればよい。
同様に、ビーム切換部BDUは、光源装置LSbからのビームLBbの進行方向に沿って直列に配置された複数の選択用光学素子AOMn(AOM4〜AOM6)を備えることで、ビームLBbの光路を切り換えてビームLBn(LB4〜LB6)が入射する走査ユニットUn(U4〜U6)を1つ選択することができる。したがって、光源装置LSbからのビームLBbの1次回折光であるビームLBn(LB4〜LB6)を、3つの走査ユニットUn(U4〜U6)の各々に順番に入射させることができる。例えば、走査ユニットU4にビームLB4を入射させたい場合は、制御装置16が、複数の選択用光学素子AOM4〜AOM6のうち、選択用光学素子AOM4のみをオン状態にし、走査ユニットU6にビームLB6を入射させたい場合は、選択用光学素子AOM6のみをオン状態にすればよい。
この複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)に対応して設けられ、対応する走査ユニットUnにビームLBnを入射させるか否かを切り換えている。なお、本第1の実施の形態では、選択用光学素子AOM1〜AOM3を、第1の光学素子モジュールと呼び、選択用光学素子AOM4〜AOM6を、第2の光学素子モジュールと呼ぶ。また、第1の光学素子モジュールの選択用光学素子AOM1〜AOM3に対応する走査ユニットU1〜U3を第1の走査モジュールと呼び、第2の光学素子モジュールの選択用光学素子AOM4〜AOM6に対応する走査ユニットU4〜U6を第2の走査モジュールと呼ぶ。したがって、第1の走査モジュールのいずれか1つの走査ユニットUnと、第2の走査モジュールのいずれか1つの走査ユニットUnとで、スポット光SPの走査が並行して行われることになる。
上述したように、本第1の実施の形態では、走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの実走査に寄与する回転角度αを15度とするので、走査効率は1/3となる。したがって、例えば、1つの走査ユニットUnが1反射面RP分の角度(45度)回転する間に、スポット光SPの走査を行うことができる角度は15度となり、それ以外の角度範囲(30度)では、スポット光SPの走査を行うことはできず、その間にポリゴンミラーPMに入射するビームLBnは無駄となる。したがって、ある1つの走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの回転角度が実走査に寄与しない角度となっている間に、それ以外の他の走査ユニットUnにビームLBnを入射させることで、他の走査ユニットUnのポリゴンミラーPMによってスポット光SPの走査を行わせる。ポリゴンミラーPMの走査効率は1/3なので、ある1つの走査ユニットUnがスポット光SPを走査してから次の走査を行うまでの間に、それ以外の2つの走査ユニットUnにビームLBnを振り分けて、スポット光SPの走査を行うことが可能である。そのため、本第1の実施の形態は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)を2つのグループ(走査モジュール)に分け、3つの走査ユニットU1〜U3を第1の走査モジュールとし、3つの走査ユニットU4〜U6を第2の走査モジュールとした。
これにより、例えば、走査ユニットU1のポリゴンミラーPMが45度(1反射面RP分)回転する間に、ビームLBn(LB1〜LB3)を3つの走査ユニットU1〜U3のいずれか1つに順番に入射させることができる。したがって、走査ユニットU1〜U3の各々は、光源装置LSaからのビームLBaを無駄にすることなく、順番にスポット光SPの走査を行うことができる。同様に、走査ユニットU4のポリゴンミラーPMが45度(1反射面RP分)回転する間に、ビームLBn(LB4〜LB6)を3つの走査ユニットU4〜U6のいずれか1つに順番に入射させることができる。したがって、走査ユニットU4〜U6は、光源装置LSbからのビームLBbを無駄にすることなく、順番にスポット光SPの走査を行うことができる。なお、各走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの間に、ポリゴンミラーPMは、丁度1反射面RP分の角度(45度)回転していることになる。
本第1の実施の形態では、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)の各々は、所定の順番でスポット光SPの走査を行うので、これに対応して、制御装置16は、各光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)を所定の順番でオンにスイッチングして、ビームLBn(LB1〜LB3、LB4〜LB6)が入射する走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)を順番に切り換える。例えば、各走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3、U4〜U6のスポット光SPの走査を行う順番が、U1→U2→U3、U4→U5→U6、となっている場合は、制御装置16は、各光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)を、AOM1→AOM2→AOM3、AOM4→AOM5→AOM6、の順番でオンにスイッチングして、ビームLBnが入射する走査ユニットUnを、U1→U2→U3、U4→U5→U6、の順番で切り換える。
なお、ポリゴンミラーPMが1反射面RP分の角度(45度)回転する間に、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)が順番にスポット光SPの走査を行うためには、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)の各ポリゴンミラーPMが、次のような条件を満たして回転する必要がある。その条件とは、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)の各ポリゴンミラーPMが、同一の回転速度Vpとなるように同期制御されるとともに、各ポリゴンミラーPMの回転角度位置(各反射面RPの角度位置)が所定の位相関係となるように同期制御される必要がある。各走査モジュールの3つの走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの回転速度Vpが同一で回転することを同期回転と呼ぶ。
図7は、光源装置(パルス光源装置、パルスレーザ装置)LSa(LSb)の構成を示す図である。ファイバーレーザ装置としての光源装置LSa(LSb)は、パルス光発生部20と、制御回路22とを備える。パルス光発生部20は、DFB半導体レーザ素子30、32、偏光ビームスプリッタ34、描画用光変調器としての電気光学素子(強度変調部)36、この電気光学素子36の駆動回路36a、偏光ビームスプリッタ38、吸収体40、励起光源42、コンバイナ44、ファイバー光増幅器46、波長変換光学素子48、50、および、複数のレンズ素子GLを有する。制御回路22は、クロック信号LTCおよび画素シフトパルスBSCを発生する信号発生部22aを有する。なお、光源装置LSaの信号発生部22aから出力される画素シフトパルスBSCと、光源装置LSbの信号発生部22aから出力される画素シフトパルスBSCとを区別するため、光源装置LSaからの画素シフトパルスBSCをBSCaで表し、光源装置LSbからの画素シフトパルスBSCをBSCbで表す場合がある。
DFB半導体レーザ素子(第1固体レーザ素子)30は、不図示のQスイッチ等のパルス波の切り出し系と協同して、所定周波数である発振周波数Fa(例えば、400MHz)で俊鋭(峻鋭)若しくは尖鋭のパルス状の種光(パルスビーム、ビーム)S1を発生し、DFB半導体レーザ素子(第2固体レーザ素子)32は、所定周波数である発振周波数Fa(例えば、400MHz)で緩慢(時間的にブロード)なパルス状の種光(パルスビーム、ビーム)S2を発生する。DFB半導体レーザ素子30が発生する種光S1と、DFB半導体レーザ素子32が発生する種光S2とは、発光タイミングが同期している。種光S1、S2は、ともに1パルス当たりのエネルギーは略同一であるが、偏光状態が互いに異なり、ピーク強度は種光S1の方が強い。この種光S1と種光S2とは、直線偏光の光であり、その偏光方向は互いに直交している。本第1の実施の形態では、DFB半導体レーザ素子30が発生する種光S1の偏光状態をS偏光とし、DFB半導体レーザ素子32が発生する種光S2の偏光状態をP偏光として説明する。この種光S1、S2は、赤外波長域の光である。
制御回路22は、信号発生部22aから送られてきたクロック信号LTCのクロックパルスに応答して種光S1、S2が発光するようにDFB半導体レーザ素子30、32を制御する。これにより、このDFB半導体レーザ素子30、32は、クロック信号LTCの各クロックパルス(発振周波数Fa)に応答して、所定周波数(発振周波数)Faで種光S1、S2を発光する。この制御回路22は、制御装置16によって制御される。このクロック信号LTCのクロックパルスの周期(=1/Fa)を、基準周期Taと呼ぶ。DFB半導体レーザ素子30、32で発生した種光S1、S2は、偏光ビームスプリッタ34に導かれる。
なお、この基準クロック信号となるクロック信号LTCは、詳しくは後述するが、ビットマップ状のパターンデータのメモリ回路中の行方向のアドレスを指定するためのカウンタ部の各々に供給される画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)のベースとなるものである。また、信号発生部22aには、基板Pの被照射面上における描画ラインSLnの全体倍率補正を行うための全体倍率補正情報TMgと、描画ラインSLnの局所倍率補正を行うための局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)とが制御装置16から入力される。後で詳しく説明するが、これにより、基板Pの被照射面上における描画ラインSLnで描画されるパターンの長さ(パターン描画長)を微調整することができる。このパターン描画長の伸縮(走査長の微調整)は、描画ラインSLnの最大走査長(例えば、31mm)内で、例えば±1000ppm程度の範囲で行うことができる。なお、本第1の実施の形態での全体倍率補正とは、簡単に説明すると、描画データ上の1画素(1ビット)に含まれるスポット光の数は一定にしたまま、主走査方向に沿って投射されるスポット光SPの投射間隔(つまり、スポット光の発振周波数)を一律に微調整することで、描画ラインSLn全体の走査方向の描画倍率を一様に補正するものである。また、本第1の実施の形態での局所倍率補正とは、簡単に説明すると、1描画ライン上に設定される離散的な複数の補正点の各々に位置する1画素(1ビット)を対象に、その補正点の画素におけるスポット光SPの主走査方向の間隔を、正規の間隔(例えばスポット光SPのサイズφの1/2)からわずかに増減させることで、基板上に描画される各補正点での画素のサイズを主走査方向に僅かに伸縮させるものである。
偏光ビームスプリッタ34は、S偏光の光を透過し、P偏光の光を反射するものであり、DFB半導体レーザ素子30が発生した種光S1と、DFB半導体レーザ素子32が発生した種光S2とを、電気光学素子36に導く。詳しくは、偏光ビームスプリッタ34は、DFB半導体レーザ素子30が発生したS偏光の種光S1を透過することで種光S1を電気光学素子36に導く。また、偏光ビームスプリッタ34は、DFB半導体レーザ素子32が発生したP偏光の種光S2を反射することで種光S2を電気光学素子36に導く。DFB半導体レーザ素子30、32、および、偏光ビームスプリッタ34は、種光S1、S2を生成するパルス光源部35を構成する。
電気光学素子(強度変調部)36は、種光S1、S2に対して透過性を有するものであり、例えば、電気光学変調器(EOM:Electro-Optic Modulator)が用いられる。電気光学素子36は、描画ビット列データSBa(SBb)のハイ/ロー状態に応答して、種光S1、S2の偏光状態を駆動回路36aによって切り換えるものである。描画ビット列データSBaは、走査ユニットU1〜U3の各々が露光すべきパターンに応じたパターンデータ(ビットパターン)に基づいて生成されるものであり、描画ビット列データSBbは、走査ユニットU4〜U6の各々が露光すべきパターンに応じたパターンデータ(ビットパターン)に基づいて生成されるものである。したがって、描画ビット列データSBaは、光源装置LSaの駆動回路36aに入力され、描画ビット列データSBbは、光源装置LSbの駆動回路36aに入力される。DFB半導体レーザ素子30、DFB半導体レーザ素子32の各々からの種光S1、S2は波長域が800nm以上と長いため、電気光学素子36として、偏光状態の切り換え応答性がGHz程度のものを使うことができる。
パターンデータ(描画データ)は、走査ユニットUn毎に設けられ、各走査ユニットUnによって描画されるパターンを、スポット光SPのサイズφに応じて設定される寸法Pxyの画素によって分割し、複数の画素の各々を前記パターンに応じた論理情報(画素データ)で表したものである。つまり、このパターンデータは、スポット光SPの主走査方向(Y方向)に沿った方向を行方向とし、基板Pの副搬送方向(X方向)に沿った方向を列方向とするように2次元に分解された複数の画素の論理情報で構成されているビットマップデータである。この画素の論理情報は、「0」または「1」の1ビットのデータである。「0」の論理情報は、基板Pに照射するスポット光SPの強度を低レベル(非描画)にすることを意味し、「1」の論理情報は、基板P上に照射するスポット光SPの強度を高レベル(描画)にすることを意味する。なお、画素の寸法Pxyの主走査方向(Y方向)の寸法をPyとし、副走査方向(X方向)の寸法をPxとする。
パターンデータの1列分の画素の論理情報は、1本分の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に対応するものである。したがって、1列分の画素の数は、基板Pの被照射面上での画素の寸法Pxyと描画ラインSLnの長さとに応じて決まる。この1画素の寸法Pxyは、スポット光SPのサイズφと同程度、或いは、それ以上に設定され、例えば、スポット光SPの実効的なサイズφが3μmの場合は、1画素の寸法Pxyは、3μm角程度以上に設定される。1列分の画素の論理情報に応じて、1本の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って基板Pに投射されるスポット光SPの強度が変調される。この1列分の画素の論理情報をシリアルデータDLnと呼ぶ。つまり、パターンデータは、シリアルデータDLnが列方向に並んだビットマップデータである。走査ユニットU1のパターンデータのシリアルデータDLnをDL1で表し、同様に、走査ユニットU2〜U6のパターンデータのシリアルデータDLnをDL2〜DL6で表す。
また、走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)は、所定の順番でスポット光SPの走査を1回ずつ行う動作を繰り返すことから、それに対応して、走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)のパターンデータのシリアルデータDL1〜DL3(DL4〜DL6)も、所定の順番で、光源装置LSa(LSb)の駆動回路36aに出力される。光源装置LSaの駆動回路36aに順次出力されるシリアルデータDL1〜DL3を描画ビット列データSBaと呼び、光源装置LSbの駆動回路36aに順次出力されるシリアルデータDL4〜DL6を描画ビット列データSBbと呼ぶ。
例えば、第1の走査モジュールにおいて、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番が、U1→U2→U3、の場合は、まず、1列分のシリアルデータDL1が光源装置LSaの駆動回路36aに出力され、続いて、1列分のシリアルデータDL2が光源装置LSaの駆動回路36aに出力されるといった具合に、描画ビット列データSBaを構成する1列分のシリアルデータDL1〜DL3が、DL1→DL2→DL3、の順番で光源装置LSaの駆動回路36aに出力される。その後、次の列のシリアルデータDL1〜DL3が、DL1→DL2→DL3、の順番で描画ビット列データSBaとして光源装置LSaの駆動回路36aに出力される。同様に、第2の走査モジュールにおいて、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番が、U4→U5→U6、の場合は、まず、1列分のシリアルデータDL4が光源装置LSbの駆動回路36aに出力され、続いて、1列分のシリアルデータDL5が光源装置LSbの駆動回路36aに出力されるといった具合に、描画ビット列データSBbを構成する1列分のシリアルデータDL4〜DL6が、DL4→DL5→DL6、の順番で光源装置LSbの駆動回路36aに出力される。その後、次の列のシリアルデータDL4〜DL6が、DL4→DL5→DL6、の順番で描画ビット列データSBbとして光源装置LSbの駆動回路36aに出力される。この光源装置LSa(LSb)の駆動回路36aに描画ビット列データSBa(SBb)を出力する具体的な構成については後で詳細に説明する。
駆動回路36aに入力される描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がロー(「0」)状態のとき、電気光学素子36は種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ38に導く。一方で、駆動回路36aに入力される描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がハイ(「1」)状態のとき、電気光学素子36は入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて、つまり、偏光方向を90度変えて偏光ビームスプリッタ38に導く。このように駆動回路36aが描画ビット列データSBa(SBb)に基づいて電気光学素子36を駆動することによって、電気光学素子36は、描画ビット列データSBa(SBb)の画素の論理情報がハイ状態(「1」)のときは、S偏光の種光S1をP偏光の種光S1に変換し、P偏光の種光S2をS偏光の種光S2に変換する。
偏光ビームスプリッタ38は、P偏光の光を透過してレンズ素子GLを介してコンバイナ44に導き、S偏光の光を反射させて吸収体40に導くものである。この偏光ビームスプリッタ38を透過する光(種光)をビームLseで表す。このパルス状のビームLseの発振周波数はFaとなる。励起光源42は励起光を発生し、該発生した励起光は、光ファイバー42aを通ってコンバイナ44に導かれる。コンバイナ44は、偏光ビームスプリッタ38から照射されたビームLseと励起光とを合成して、ファイバー光増幅器46に出力する。ファイバー光増幅器46は、励起光によって励起されるレーザ媒質がドープされている。したがって、合成されたビームLseおよび励起光が伝送するファイバー光増幅器46内では、励起光によってレーザ媒質が励起されることにより、種光としてのビームLseが増幅される。ファイバー光増幅器46内にドープされるレーザ媒質としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ツリウム(Tm)等の希土類元素が用いられる。この増幅されたビームLseは、ファイバー光増幅器46の射出端46aから所定の発散角を伴って放射され、レンズ素子GLによって収斂またはコリメートされて波長変換光学素子48に入射する。
波長変換光学素子(第1の波長変換光学素子)48は、第2高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)によって、入射したビームLse(波長λ)を、波長がλの1/2の第2高調波に変換する。波長変換光学素子48として、疑似位相整合(Quasi Phase Matching:QPM)結晶であるPPLN(Periodically Poled LiNbO3)結晶が好適に用いられる。なお、PPLT(Periodically Poled LiTaO3)結晶等を用いることも可能である。
波長変換光学素子(第2の波長変換光学素子)50は、波長変換光学素子48が変換した第2高調波(波長λ/2)と、波長変換光学素子48によって変換されずに残留した種光(波長λ)との和周波発生(Sum Frequency Generation:SFG)により、波長がλの1/3の第3高調波を発生する。この第3高調波が、370mm以下の波長帯域(例えば、355nm)にピーク波長を有する紫外線光(ビームLB)となる。
図8に示すように、駆動回路36aに印加する描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がロー(「0」)の場合は、電気光学素子(強度変調部)36は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ38に導く。そのため、偏光ビームスプリッタ38を透過するビームLseは種光S2となる。したがって、光源装置LSa(LSb)から最終的に出力されるP偏光のLBa(LBb)は、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2と同じ発振プロファイル(時間特性)を有する。すなわち、この場合は、ビームLBa(LBb)は、パルスのピーク強度が低く、時間的にブロードな鈍った特性となる。ファイバー光増幅器46は、そのようなピーク強度が低い種光S2に対する増幅効率が低いため、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、露光に必要なエネルギーまで増幅されない光となる。したがって、露光という観点からみれば、実質的に光源装置LSa(LSb)はビームLBa(LBb)を射出していないのと同じ結果となる。つまり、基板Pに照射されるスポット光SPの強度は低レベルとなる。ただし、パターンの露光が行われない期間(非露光期間)では、種光S2由来の紫外域のビームLBa(LBb)が僅かな強度であっても照射され続ける。そのため、描画ラインSL1〜SL6が、長時間、基板P上の同じ位置にある状態が続く場合(例えば、搬送系のトラブルによって基板Pが停止している場合等)は、光源装置LSa(LSb)のビームLBa(LBb)の射出窓(図示略)に可動シャッタを設けて、射出窓を閉じるようにするとよい。
一方、図8に示すように、駆動回路36aに印加する描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がハイ(「1」)の場合は、電気光学素子(強度変調部)36は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて偏光ビームスプリッタ38に導く。そのため、偏光ビームスプリッタ38を透過するビームLseは種光S1となる。したがって、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1に由来して生成されたものとなる。DFB半導体レーザ素子30からの種光S1はピーク強度が強いため、ファイバー光増幅器46によって効率的に増幅され、光源装置LSa(LSb)から出力されるP偏光のビームLBa(LBb)は、基板Pの露光に必要なエネルギーを持つ。つまり、基板Pに照射されるスポット光SPの強度は高レベルとなる。
このように、光源装置LSa(LSb)内に、描画用光変調器としての電気光学素子36を設けたので、1つの電気光学素子(強度変調部)36を制御することで、走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)によって走査されるスポット光SPの強度を、描画すべきパターンに応じて変調させることができる。したがって、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、強度変調された描画ビームとなる。
なお、図7の構成において、DFB半導体レーザ素子32および偏光ビームスプリッタ34を省略して、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1のみを、パターンデータ(描画ビット列データSBa、SBb、または、シリアルデータDLn)に基づく電気光学素子36の偏光状態の切り換えで、ファイバー光増幅器46にバースト波状に導光することも考えられる。しかしながら、この構成を採用すると、種光S1のファイバー光増幅器46への入射周期性が描画すべきパターンに応じて大きく乱される。すなわち、ファイバー光増幅器46にDFB半導体レーザ素子30からの種光S1が入射しない状態が続いた後に、ファイバー光増幅器46に種光S1が入射すると、入射直後の種光S1は通常のときよりも大きな増幅率で増幅され、ファイバー光増幅器46からは、規定以上の大きな強度を持つビーム(ジャイアントパルス)が数パルス分に渡って発生するという問題がある。そこで、本第1の実施の形態では、好ましい態様として、ファイバー光増幅器46に種光S1が入射しない期間に、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2(ピーク強度が低いブロードなパルス光)をファイバー光増幅器46に入射することで、このような問題を解決している。
また、電気光学素子36をスイッチングするようにしたが、パターンデータ(描画ビット列データSBa、SBb、または、シリアルデータDLn)に基づいて、DFB半導体レーザ素子30、32を駆動するようにしてもよい。この場合は、このDFB半導体レーザ素子30、32が、描画用光変調器(強度変調部)として機能する。つまり、制御回路22は、描画ビット列データSBa(DL1〜DL3)、SBb(DL4〜DL6)、に基づいて、DFB半導体レーザ素子30、32を制御して、所定周波数Faでパルス状に発振する種光S1、S2を選択的(択一的)に発生させる。この場合は、偏光ビームスプリッタ34、38、電気光学素子36、および吸収体40は不要となり、DFB半導体レーザ素子30、32のいずれか一方から選択的にパルス発振される種光S1、S2の一方が、直接コンバイナ44に入射する。このとき、制御回路22は、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1と、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2とが同時にファイバー光増幅器46に入射しないように、各DFB半導体レーザ素子30、32の駆動を制御する。すなわち、基板Pに各ビームLBnのスポット光SPを照射する場合は、種光S1のみがファイバー光増幅器46に入射するようにDFB半導体レーザ素子30を制御する。また、基板Pに各ビームLBnのスポット光SPを照射しない(スポット光SPの強度を極めて低くする)場合には、種光S2のみがファイバー光増幅器46に入射するようにDFB半導体レーザ素子32を制御する。このように、基板PにビームLBnを照射するか否かは、画素の論理情報(ハイ/ロー)に基づいて決定される。また、この場合の種光S1、S2の偏光状態はともにP偏光でよい。
ここで、光源装置LSa(LSb)は、スポット光SPの走査中に、基板Pの被照射面上の寸法Pxyの1画素に対して、スポット光SPが主走査方向に沿ってN個(本第1の実施の形態では、N=2とする)投射されるように、ビームLBa(LBb)を射出する。この光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、信号発生部22aが発生するクロック信号LTCのクロックパルスに応答して発生する。したがって、寸法Pxyの1画素に対してスポット光SPをN個(Nは2以上の整数でも良い)投射するためには、主走査方向におけるスポット光SPの基板Pに対する相対的な走査速度をVsとしたとき、信号発生部22aは、Pxy/(N×Vs)またはPy/(N×Vs)で決まる基準周期Ta(=1/Fa)でクロック信号LTCのクロックパルスを発生する必要がある。例えば、実効的な描画ラインSLnの長さを30mmとし、1回の走査時間Tspを約50μsecとすると、スポット光SPの走査速度Vsは、約600m/secとなる。そして、画素の寸法Pxy(PxおよびPy)がスポット光SPの実効的なサイズと同じ3μmであって、Nが2の場合は、基準周期Ta=3μm/(2×600m/sec)=0.0025μsecとなり、その周波数Fa(=1/Ta)は、400MHzとなる。
この局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)の補正位置情報(設定値)Nvは、任意に変更することができ、描画ラインSLnの倍率に応じて適宜設定される。例えば、描画ラインSLn上に位置する補正画素が1つとなるように、補正位置情報Nvを設定してもよい。全体倍率補正情報TMgによっても、描画ラインSLを伸縮させることはできるが、局所倍率補正の方がきめ細やかな微小な倍率補正を行うことができる。例えば、発振周波数Faが400MHzで描画ラインSLnの走査長(描画範囲)の初期値を30mmとした場合に、全体倍率補正情報TMgによって描画ラインSLnの走査長を15μm(比率500ppm)だけ伸縮または伸長させる場合には、発振周波数Faを、約0.2MHz(比率500ppm)だけ大きくまたは小さくしなければならず、その調整が難しい。また、調整することができたとしても、一定の遅れ(時定数)を持って調整後の発振周波数Faに切り換わるため、その間は、所望する倍率を得ることができない。さらに、描画倍率の補正比が500ppm以下、例えば数ppm〜数十ppm程度に設定される場合は、光源装置LSa(LSb)の発振周波数Faを変える全体倍率補正方式よりも、離散的な補正画素でのスポット光の数を増減する局所倍率補正方式の方が、分解能が高い補正を簡単に行える。もちろん、全体倍率補正方式と局所倍率補正方式の両方を併用すれば、大きな描画倍率の補正比に対応しつつ高分解能な補正ができるといった利点が得られる。
図9は、露光装置EXの電気的な構成を示すブロック図である。露光装置EXの制御装置16は、ポリゴン駆動制御部100、選択素子駆動制御部102、ビーム制御装置104、マーク位置検出部106、および、回転位置検出部108を有する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)の原点センサOPn(OP1〜OP6)が出力した原点信号SZn(SZ1〜SZ6)は、ポリゴン駆動制御部100および選択素子駆動制御部102に入力される。なお、図9に示す例では、光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)が選択用光学素子AOM2(AOM5)によって回折され、その1次回折光であるビームLB2(LB5)が走査ユニットU2(U5)に入射している状態を示している。
ポリゴン駆動制御部100は、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転を駆動制御する。ポリゴン駆動制御部100は、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMを駆動させる回転駆動源(モータや減速機等)RMを有し、このモータの回転を駆動制御することで、ポリゴンミラーPMの回転を駆動制御する。ポリゴン駆動制御部100は、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のポリゴンミラーPMの回転角度位置が所定の位相関係となるように、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のポリゴンミラーPMの各々を同期回転させる。すなわち、ポリゴン駆動制御部100は、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のポリゴンミラーPMの回転速度(回転数)Vpが互いに同一で、且つ、一定の角度分ずつ回転角度位置の位相がずれるように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転を制御する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転速度Vpは、全て同一とする。
本第1の実施の形態では、上述したように、実走査に寄与するポリゴンミラーPMの回転角度αを15度とするので、反射面RPが8つの八角形のポリゴンミラーPMの走査効率は1/3となる。第1の走査モジュールでは、3つの走査ユニットUnによるスポット光SPの走査が、U1→U2→U3、の順番で行われる。したがって、この順番で、この3つの走査ユニットU1〜U3の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が15度ずつずれた状態で等速回転するように、走査ユニットU1〜U3の各々のポリゴンミラーPMがポリゴン駆動制御部100によって同期制御される。また、第2の走査モジュールでは、3つの走査ユニットUnによるスポット光SPの走査が、U4→U5→U6、の順番で行われる。したがって、この順番で、3つの走査ユニットU4〜U6の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が15度ずつずれた状態で等速回転するように、走査ユニットU4〜U6の各々のポリゴンミラーPMがポリゴン駆動制御部100によって同期制御される。
具体的には、図10に示すように、ポリゴン駆動制御部100は、例えば、第1の走査モジュールに関しては、走査ユニットU1の原点センサOP1からの原点信号SZ1を基準にして、走査ユニットU2の原点センサOP2からの原点信号SZ2が時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU2のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。ポリゴン駆動制御部100は、原点信号SZ1を基準にして、走査ユニットU3の原点センサOP3からの原点信号SZ3が2×時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU3のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。この時間Tsは、ポリゴンミラーPMが15度回転する時間(スポット光SPの最大走査時間)である。これにより、各走査ユニットU1〜U3の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相差が、U1、U2、U3の順番で15度ずつずれた状態となる。したがって、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3は、U1→U2→U3の順番で、スポット光SPの走査を行うことができる。
第2の走査モジュールに関しても同様に、ポリゴン駆動制御部100は、例えば、走査ユニットU4の原点センサOP4からの原点信号SZ4を基準にして、走査ユニットU5の原点センサOP5からの原点信号SZ5が時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU5のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。ポリゴン駆動制御部100は、原点信号SZ4を基準にして、走査ユニットU6の原点センサOP6からの原点信号SZ6が2×時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU6のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。これにより、各走査ユニットU4〜U6の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が、U4、U5、U6の順番で15度ずつずれた状態となる。したがって、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U4〜U6)は、U4→U5→U6の順番で、スポット光SPの走査を行うことができる。
選択素子駆動制御部(ビーム切換駆動制御部)102は、ビーム切換部BDUの各光学素子モジュールの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)を制御して、各走査モジュールの1つの走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでに、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)を、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)に順番に振り分ける。なお、1つの走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでに、ポリゴンミラーPMは45度回転しており、その時間間隔は、時間Tpx(=3×Ts)となる。
具体的には、選択素子駆動制御部102は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生すると、原点信号SZnが発生してから一定時間(オン時間Ton)だけ、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)を発生した走査ユニットUn(U1〜U6)に対応する選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)に駆動信号(高周波信号)HFn(HF1〜HF6)を印加する。これにより、駆動信号(高周波信号)HFnが印加された選択用光学素子AOMnは、オン時間Tonだけオン状態となり、対応する走査ユニットUnにビームLBnを入射させることができる。また、原点信号SZnを発生した走査ユニットUnにビームLBnを入射させるので、スポット光SPの走査を行うことができる走査ユニットUnにビームLBnを入射させることができる。なお、このオン時間Tonは、時間Ts以下の時間である。
第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3で発生する原点信号SZ1〜SZ3は、時間Ts間隔で、SZ1→SZ2→SZ3、の順で発生する。そのため、第1の光学素子モジュールの各選択用光学素子AOM1〜AOM3には、時間Ts間隔で、AOM1→AOM2→AOM3、の順番で駆動信号(高周波信号)HF1〜HF3がオン時間Tonだけ印加される。したがって、第1の光学素子モジュール(AOM1〜AOM3)は、光源装置LSaからのビームLBn(LB1〜LB3)が入射する1つの走査ユニットUnを時間Ts間隔で、U1→U2→U3、の順番で切り換えることができる。これにより、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが時間Ts間隔で、U1→U2→U3、の順番で切り換わることになる。また、走査ユニットU1がスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの時間(Tpx=3×Ts)に、光源装置LSaからのビームLBn(LB1〜LB3)を3つの走査ユニットUn(U1〜U3)のいずれか1つに順番に入射させることができる。
同様に、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットU4〜U6で発生する原点信号SZ4〜SZ6は、時間Ts間隔で、SZ4→SZ5→SZ6、の順で発生する。そのため第2の光学素子モジュールの各選択用光学素子AOM4〜AOM6には、時間Ts間隔で、AOM4→AOM5→AOM6、の順番で駆動信号(高周波信号)HF4〜HF6がオン時間Tonだけ印加される。したがって、第2の光学素子モジュール(AOM4〜AOM6)は、光源装置LSbからのビームLBn(LB4〜LB6)が入射する1つの走査ユニットUnを時間Ts間隔で、U4→U5→U6、の順番で切り換えることができる。これにより、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが時間Ts間隔で、U4→U5→U6、の順番で切り換わることになる。また、走査ユニットU4がスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの時間(Tpx=3×Ts)に、光源装置LSbからのビームLBn(LB4〜LB6)を3つの走査ユニットUn(U4〜U6)のいずれか1つに順番に入射させることができる。
選択素子駆動制御部102についてさらに詳しく説明すると、選択素子駆動制御部102は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生すると、図10に示すように、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生してから一定時間(オン時間Ton)だけH(ハイ)になる複数の入射許可信号LPn(LP1〜LP6)を生成する。この複数の入射許可信号LPn(LP1〜LP6)は、対応する選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)をオン状態にすることを許可する信号である。つまり、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)は、対応する走査ユニットUn(U1〜U6)へのビームLBn(LB1〜LB6)の入射を許可する信号である。そして、選択素子駆動制御部102は、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)がH(ハイ)になっているオン時間Tonだけ、対応する選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)に駆動信号(高周波信号)HFn(HF1〜HF6)を印加して、対応する選択用光学素子AOMnをオン状態(1次回折光を発生する状態)にする。例えば、選択素子駆動制御部102は、入射許可信号LP1〜LP3がH(ハイ)になっている一定時間Tonだけ、対応する選択用光学素子AOM1〜AOM3に駆動信号HF1〜HF3を印加する。これにより、光源装置LSaからのビームLB1〜LB3が、対応する走査ユニットU1〜U3に入射する。また、選択素子駆動制御部102は、入射許可信号LP4〜LP6がH(ハイ)になっている一定時間Tonだけ、対応する選択用光学素子AOM4〜AOM6に駆動信号(高周波信号)HF4〜HF6を印加する。これにより、光源装置LSbからのビームLB4〜LB6が、対応する走査ユニットU4〜U6に入射する。
図10に示すように、第1の光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOM1〜AOM3に対応する入射許可信号LP1〜LP3は、H(ハイ)になる立ち上がりタイミングが、LP1→LP2→LP3、の順で時間Tsずつずれており、且つ、H(ハイ)になるオン時間Tonが互いに重複することはない。したがって、ビームLBn(LB1〜LB3)が入射する走査ユニットUnは、時間Ts間隔で、U1→U2→U3、の順で切り換わる。同様に、第2の光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOM4〜AOM6に対応する入射許可信号LP4〜LP6は、H(ハイ)になる立ち上がりタイミングが、LP4→LP5→LP6、の順で時間Tsずつずれており、且つ、H(ハイ)になるオン時間Tonが互いに重複することはない。したがって、ビームLBn(LB4〜LB6)が入射する走査ユニットUnは、時間Ts間隔で、U4→U5→U6、の順で切り換わる。選択素子駆動制御部102は、生成した複数の入射許可信号LPn(LP1〜LP6)を、ビーム制御装置104に出力する。
図9のビーム制御装置(ビーム制御部)104は、ビームLB(LBa、LBb、LBn)の発光周波数Fa、ビームLBのスポット光SPが描画される描画ラインSLnの倍率、および、ビームLBの強度変調を制御するものである。ビーム制御装置104は、全体倍率設定部110、局所倍率設定部112、描画データ出力部114、および、露光制御部116を備える。全体倍率設定部(全体倍率補正情報記憶部)110は、露光制御部116から送られてきた全体倍率補正情報TMgを記憶するとともに、全体倍率補正情報TMgを光源装置LS(LSa、LSb)の制御回路22の信号発生部22aに出力する。信号発生部22aのクロック発生部60は、この全体倍率補正情報TMgに応じた発振周波数Faのクロック信号LTCを生成する。なお、全体倍率設定部110と局所倍率設定部112の詳細な構成については後で詳述する。
局所倍率設定部(局所倍率補正情報記憶部、補正情報記憶部)112は、露光制御部116から送られてきた局所倍率補正情報(補正情報)CMgnを記憶するとともに、局所倍率補正情報CMgnを光源装置LS(LSa、LSb)の制御回路22の信号発生部22aに出力する。この局所倍率補正情報CMgnに基づいて、描画ラインSLn上の補正画素の位置が指定(特定)され、その倍率が決定される。制御回路22の信号発生部22aは、この局所倍率補正情報CMgに基づいて決定した補正画素、および、その倍率に応じて、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)を出力する。なお、局所倍率設定部112は、露光制御部116から送られてきた走査ユニットUn(U1〜U6)毎の局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)を記憶する。そして、局所倍率設定部112は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnを光源装置LS(LSa、LSb)の信号発生部22aに出力する。つまり、局所倍率設定部112は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)を発生した走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnを、該走査ユニットUnに入射するビームLBnの発生源となる光源装置LSa(LSa、LSb)の信号発生部22aに出力する。なお、全体倍率補正情報TMgや局所倍率補正情報CMgnに基づく描画倍率の補正は、光源装置LS(LSa、LSb)の制御回路22の信号発生部22aからのクロック信号LTCのクロック周期を部分的に微調整して行われる。制御回路22(信号発生部22a)の詳細な構成については後で詳述する。
例えば、原点信号SZnを発生した走査ユニットUn(つまり、これからスポット光SPの走査を行う走査ユニットUn)が、走査ユニットU1〜U3のいずれかである場合は、局所倍率設定部112は、原点信号SZnを発生した走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnを、光源装置LSaの信号発生部22aに出力する。同様に、原点信号SZnを発生した走査ユニットUnが、走査ユニットU4〜U6のいずれかである場合は、局所倍率設定部112は、原点信号SZnを発生した走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnを、光源装置LSbの信号発生部22aに出力する。これにより、走査モジュール毎に、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)に対応する画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が、光源装置LS(LSa、LSb)の送出タイミング切換部64から出力される。これにより、描画ラインSLn毎に個別に走査長を調整することができる。
描画データ出力部114は、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3)のうち、原点信号SZnを発生した走査ユニットUn(これからスポット光SPの走査を行う走査ユニットUn)に対応する1列分のシリアルデータDLnを描画ビット列データSBaとして光源装置LSaの駆動回路36aに出力する。また、描画データ出力部114は、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U4〜U6)のうち、原点信号SZnを発生した走査ユニットUn(これからスポット光SPの走査を行う走査ユニットUn)に対応する1列分のシリアルデータDLn(DL4〜DL6)を描画ビット列データSBbとして光源装置LSbの駆動回路36aに出力する。第1の走査モジュールに関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU1〜U3の順番は、U1→U2→U3、となっているので、描画データ出力部114は、DL1→DL2→DL3、の順番で繰り返されるシリアルデータDL1〜DL3を描画ビット列データSBaとして出力する。第2の走査モジュールに関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU4〜U6の順番は、U4→U5→U6、となっているので、描画データ出力部114は、DL4→DL5→DL6、の順番で繰り返されるシリアルデータDL4〜DL6を描画ビット列データSBbとして出力する。
さて、図9に示した露光制御部116は、全体倍率設定部110、局所倍率設定部112、および、描画データ出力部114を制御するものである。露光制御部116には、マーク位置検出部106が検出した設置方位線Lx1、Lx4上におけるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置情報と、回転位置検出部108が検出した設置方位線Lx1〜Lx4上における回転ドラムDRの回転角度位置情報(カウンタ回路CN1a〜CN4a、CN1b〜CN4bに基づくカウント値)とが入力される。露光制御部116は、設置方位線Lx1上におけるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置情報と、設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置(カウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値)とに基づいて、基板Pの副走査方向(X方向)における被露光領域Wの描画露光の開始位置を検出(決定)する。
そして、露光制御部116は、描画露光の開始位置が検出されたときの設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置と、設置方位線Lx2上における回転角度位置(カウンタ回路CN2a、CN2bに基づくカウント値)とに基づいて、基板Pの描画露光の開始位置が設置方位線Lx2上にある描画ラインSL1、SL3、SL5上まで搬送されたか否かを判断する。露光制御部116は、描画露光の開始位置が描画ラインSL1、SL3、SL5上まで搬送されたと判断すると、局所倍率設定部112および描画データ出力部114等を制御して、走査ユニットU1、U3、U5にスポット光SPの走査による描画を開始させる。
この場合は、露光制御部116は、走査ユニットU1、U3が描画露光を行うタイミングで、局所倍率設定部112にスポット光SPの走査を行う走査ユニットU1、U3に対応する局所倍率補正情報CMg1、CMg3を光源装置LSaの信号発生部22aに出力させる。これにより、光源装置LSaの信号発生部22aは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU1、U3のシリアルデータDL1、DL3の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCaを、局所倍率補正情報CMg1、CMg3に応じて発生する。この画素シフトパルスBSCaに応じて、描画データ出力部114は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU1、U3に対応するシリアルデータDL1、DL3の各画素の論理情報を1画素ずつシフトさせていく。同様に、露光制御部116は、走査ユニットU5が描画露光を行うタイミングで、局所倍率設定部112に、走査ユニットU5に対応する局所倍率補正情報CMg5を光源装置LSbの信号発生部22aに出力させる。これにより、光源装置LSbの信号発生部22aは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU5に対応するシリアルデータDL5の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCbを、局所倍率補正情報CMg5に応じて発生する。この画素シフトパルスBSCbに応じて、描画データ出力部114は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU5のシリアルデータDL5の各画素の論理情報を1画素ずつシフトさせていく。
その後、露光制御部116は、描画露光の開始位置が検出されたときの設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置と、設置方位線Lx3上における回転角度位置(カウンタ回路CN3a、CN3bのカウント値)とに基づいて、基板Pの描画露光の開始位置が設置方位線Lx3上にある描画ラインSL2、SL4、SL6上まで搬送されたか否かを判断する。露光制御部116は、描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上まで搬送されたと判断すると、局所倍率設定部112および描画データ出力部114を制御して、さらに、走査ユニットU2、U4、U6にスポット光SPの走査を開始させる。
この場合は、露光制御部116は、走査ユニットU2が描画露光を行うタイミングで、局所倍率設定部112に、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU2に対応する局所倍率補正情報CMg2を光源装置LSaの信号発生部22aに出力させる。これにより、光源装置LSaの信号発生部22aは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU2のシリアルデータDL2の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCaを、局所倍率補正情報CMg2に応じて発生する。この画素シフトパルスBSCaに応じて、描画データ出力部114は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU2のシリアルデータDL2の各画素の論理情報を1画素ずつシフトさせていく。同様に、露光制御部116は、走査ユニットU4、U6が描画露光を行うタイミングで、局所倍率設定部112に、走査ユニットU4、U6に対応する局所倍率補正情報CMg4、CMg6を光源装置LSbの信号発生部22aに出力させる。これにより、光源装置LSbの信号発生部22aは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU4、U6のシリアルデータDL4、DL6の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCbを、局所倍率補正情報CMg4、CMg6に応じて発生する。この画素シフトパルスBSCbに応じて、描画データ出力部114は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU4、U6のシリアルデータDL4、DL6の各画素の論理情報を1画素ずつシフトさせていく。
先の図4から分かるように、基板Pは+X方向に搬送されるので、描画ラインSL1、SL3、SL5の各々における描画露光が先行し、基板Pが所定距離だけさらに搬送されてから、描画ラインSL2、SL4、SL6の各々における描画露光が行われる。一方で、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3の各ポリゴンミラーPM、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットU4〜U6の各ポリゴンミラーPMは、所定の位相差を持って回転制御されているため、原点信号SZ1〜SZ3、SZ4〜SZ6は、図10に示すように、時間Tsだけ位相差を持って発生し続ける。そのため、図10に示すような入射許可信号LPn(LP1〜LP6)が発生し、描画ラインSL1、SL3、SL5における描画露光の開始時点から描画ラインSL2、SL4、SL6における描画露光の開始直前までの間も、シリアルデータDL2、DL4、DL6が出力される。したがって、被露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に達する前に、走査ユニットU2、U4、U6によるスポット光SPの走査によってパターンが描画されてしまう。そこで、図9の露光制御部116は、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)を論理演算する論理回路によって、走査ユニットU2、U4、U6の各々に対応したシリアルデータDL2、DL4、DL6の画素のシフトが禁止される。
また、露光制御部116は、マーク位置検出部106が検出した設置方位線Lx1、Lx4上におけるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置情報と、回転位置検出部108が検出した設置方位線Lx1、Lx4上における回転ドラムDRの回転角度位置情報とに基づいて、基板Pまたは被露光領域Wの歪み(変形)を逐次演算する。例えば、基板Pが長尺方向に大きなテンションを受けたり、熱プロセスを受けたりして変形している場合は、被露光領域Wの形状も歪み(変形し)、アライメントマークMKm(MK1〜MK4)の配列も、図4に示すような矩形状にならず、歪んだ(変形した)状態になる。基板Pまたは被露光領域Wが歪んだ場合は、それに応じて各描画ラインSLnの倍率を変更する必要があるので、露光制御部116は、演算した基板Pまたは被露光領域Wの歪みに基づいて、全体倍率補正情報TMgおよび局所倍率補正情報CMgnの少なくとも一方を生成する。そして、この生成された全体倍率補正情報TMgおよび局所倍率補正情報CMgnの少なくとも一方は、全体倍率設定部110または局所倍率設定部112に出力される。これにより、重ね合わせ露光の精度を向上させることができる。
さらに、露光制御部116は、基板Pまたは被露光領域Wの歪みに応じて、各描画ラインSLn毎に補正傾き角情報を生成してもよい。この生成された補正傾き角情報に基づいて、上述した前記アクチュエータが、各走査ユニットUn(U1〜U6)を照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動させる。これにより、重ね合わせ露光の精度がより向上する。露光制御部116は、各走査ユニットUn(U1〜U6)によってスポット光SPの走査が行われる度、若しくは、スポット光SPの走査が所定回数行われる度に、若しくは、基板Pまたは被露光領域Wの歪みの傾向が許容範囲を超えて変わったときに、全体倍率補正情報TMgおよび局所倍率補正情報CMgnの少なくとも一方と、補正傾き角情報とを再び生成してもよい。
図11は、光源装置LSa(LSb)の内部に設けられる信号発生部22aの構成を示す図である。図9に示すように、信号発生部22aには、補正位置情報Nvと伸縮情報(極性情報)POLとを有する局所倍率補正情報CMgnが、局所倍率設定部112から送られてくるものとする。この局所倍率設定部112は、走査ユニットUn(U1〜U6)毎に、局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)を記憶している。
信号発生部22aは、クロック信号発生部200、補正点指定部202、および、クロック切換部204を有する。このクロック信号発生部200、補正点指定部202、および、クロック切換部204等は、FPGA(Field Programmable Gate Array)により集約して構成することができる。クロック信号発生部200は、φ/Vs、で定まる周期よりも短い基準周期Teを有するとともに、基準周期Teの1/Nの補正時間ずつ位相差を与えた複数(N個)のクロック信号CKp(p=0、1、2、・・・、N−1)を生成する。φは、スポット光SPの実効的なサイズであり、Vsは、基板Pに対するスポット光SPの主走査方向の相対的な速度であり、ここでは一例として150mm/secとして説明する。なお、基準周期Teが、φ/Vsで定まる周期よりも長い場合は、主走査方向に沿って照射されるスポット光SPが所定の間隔をあけて離散的に基板Pの被照射面上に照射されてしまう。逆に、基準周期Teが、φ/Vsで定まる周期よりも短い場合は、スポット光SPが主走査方向に関して互いに重なり合うように基板Pの被照射面上に照射される。本実施の形態では、原則として、スポット光SPをサイズφの1/2ずつオーバーラップさせるために、発振周波数Feが100MHzに設定されるものとする。この場合、基準周期Teは、1/Fe=1/100〔MHz〕=10〔nsec〕となり、φ/Vs=3〔μm〕/150〔mm/sec〕=20nsecより小さい値となる。また、N=50とすると、クロック信号発生部200は、0.2nsec(=10〔nsec〕/50)の位相差が与えられた50個のクロック信号CK0〜CK49を生成する。
具体的には、クロック信号発生部200は、クロック発生部(発振器)60と、複数(N−1個)の遅延回路De(De01〜De49)とを有する。クロック発生部60は、全体倍率補正情報TMgに応じた発振周波数Fe(=1/Te)で発振するクロックパルスからなるクロック信号CK0を発生する。本実施の形態では、全体倍率補正情報TMgを0(補正量0%)とし、クロック発生部60は、100MHzの発振周波数Fe(基準周期Te=10nsec)でクロック信号CK0を発生する。
クロック発生部60からのクロック信号(出力信号)CK0は、直列に接続された複数の遅延回路De(De01〜De49)の初段(先頭)の遅延回路De01に入力されるとともに、クロック切換部204の1番目の入力端子に入力される。この遅延回路De(De01〜De049)は、入力信号であるクロック信号CKpを一定時間(Te/N=0.2nsec)だけ遅延させて出力する。したがって、初段の遅延回路De01は、クロック発生部60が発生したクロック信号CK0と同一の基準周期Te(10nsec)であり、且つ、クロック信号CK0に対して0.2nsecの遅れを持ったクロック信号(出力信号)CK1を出力する。同様に、2段目の遅延回路De02は、前段の遅延回路De01からのクロック信号(出力信号)CK1と同一の基準周期Te(10nsec)であり、且つ、クロック信号CK1に対して0.2nsecの遅れを持ったクロック信号(出力信号)CK2を出力する。3段目以降の遅延回路De03〜De49も同様に、前段の遅延回路De02〜De48からのクロック信号(出力信号)CK2〜CK48と同一の基準周期Te(10nsec)であり、且つ、クロック信号CK2〜CK48に対して0.2nsecの遅れを持ったクロック信号(出力信号)CK3〜CK49を出力する。
クロック信号CK0〜CK49は、0.2nsecずつ位相差が与えられた信号であることから、クロック信号CK0は、クロック信号CK49と同一の基準周期Te(10nsec)であり、且つ、クロック信号CK49に対してさらに0.2nsecの遅れを持ったクロック信号と、丁度1周期だけずれた信号となる。したがって、クロック信号CK0は、実質的にクロック信号CK49の各クロックパルスに対して0.2nsecの遅れたクロック信号と見做すことができる。遅延回路De01〜De49からのクロック信号CK1〜CK49は、クロック切換部204の2番目〜50番目の入力端子に入力される。
クロック切換部204は、入力された50個のクロック信号CKp(CK0〜CK49)のうち、いずれか1つのクロック信号CKpを選択し、選択したクロック信号CKpをクロック信号(基準クロック信号)LTCとして出力するマルチプレクサ(選択回路)である。したがって、クロック信号LTCの発振周波数Fa(=1/Ta)は、原則としてクロック信号CK0〜CK49の発振周波数Fe(=1/Ta)、つまり、100MHzと同じになる。制御回路22は、クロック切換部204から出力されるクロック信号LTCの各クロックパルスに応答して種光S1、S2が発光するように、DFB半導体レーザ素子30、32を制御する。したがって、光源装置LSa(LSb)から射出されるパルス状のビームLBa(LBb)の発振周波数Faは、原則として100MHzとなる。
クロック切換部204は、スポット光SPが走査線上に位置する特定の補正点CPPを通過するタイミングで、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKp、つまり、ビームLBa(LBb)の発生に起因するクロック信号CKpを、位相差の異なる他のクロック信号CKpに切り換える。クロック切換部204は、スポット光SPが補正点CPPを通過するタイミングで、クロック信号LTCとして選択するクロック信号CKpを、クロック信号LTCとして現在選択しているクロック信号CKpに対して0.2nsecだけ位相差を有するクロック信号CKp±1に切り換える。この切り換えるクロック信号CKp±1の位相差の方向、つまり、位相が0.2nsecだけ遅れる方向か位相が0.2nsecだけ進む方向かは、局所倍率補正情報(補正情報)CMgn(CMg1〜CMg6)の一部である1ビットの伸縮情報(極性情報)POLに応じて決定される。
伸縮情報POLがハイ「1」(伸長)の場合は、クロック切換部204は、現在クロック信号LTCとして出力しているクロック信号CKpに対して0.2nsecだけ位相が遅れたクロック信号CKp+1をクロック信号LTCとして選択して出力する。また、伸縮情報POLがロー「0」(縮小)の場合は、クロック切換部204は、現在クロック信号LTCとして出力しているクロック信号CKpに対して0.2nsecだけ位相が進んだクロック信号CKp-1をクロック信号LTCとして選択して出力する。例えば、クロック切換部204は、現在クロック信号LTCとして出力しているクロック信号CKpがCK11の場合において、伸縮情報POLがハイ(H)の場合は、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpをクロック信号CK12に切り換え、伸縮情報POLがロー(L)の場合は、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpをクロック信号CK10に切り換える。スポット光SPの1回の走査期間中は、同一の伸縮情報POLが入力される。
クロック切換部204は、ビーム切換部BDUによってビームLBnが入射する走査ユニットUnに対応した局所倍率補正情報CMgnの伸縮情報POLを用いて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向(位相が進む方向か遅れる方向か)を決定する。光源装置LSaからのビームLBa(LB1〜LB3)は走査ユニットU1〜U3のいずれか1つに導かれる。したがって、光源装置LSaの信号発生部22aのクロック切換部204は、走査ユニットU1〜U3のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnの伸縮情報POLに基づいて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向を決定する。例えば、走査ユニットU2にビームLB2が入射する場合は、光源装置LSaのクロック切換部204は、走査ユニットU2に対応した局所倍率補正情報CMg2の伸縮情報POLに基づいて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向を決定する。
また、光源装置LSbからのビームLBb(LB4〜LB6)は走査ユニットU4〜U6のいずれか1つに導かれる。したがって、光源装置LSbの信号発生部22aのクロック切換部204は、走査ユニットU4〜U6のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnの伸縮情報POLに基づいて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向を決定する。例えば、走査ユニットU6にビームLB6が入射する場合は、光源装置LSbのクロック切換部204は、走査ユニットU6に対応した局所倍率補正情報CMg6の伸縮情報POLに基づいて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向を決定する。
補正点指定部202は、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)上の特定の点を補正点CPPとして指定する。補正点指定部202は、局所倍率補正情報(補正情報)CMgn(CMg1〜CMg6)の一部である補正点CPPを指定するための補正位置情報(設定値)Nvに基づいて補正点CPPを指定する。この局所倍率補正情報CMgnの補正位置情報Nvは、描画ラインSLnに沿って描画されるパターンの描画倍率(または描画ラインSLnの主走査方向における描画倍率)に応じて、描画ラインSLn上の等間隔に離散的な複数の位置の各々に補正点CPPを指定するための情報であり、補正点CPPと補正点CPPとの距離間隔(等間隔)を示す情報である。これにより、補正点指定部202は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)上に等間隔に離散的に配置される位置を補正点CPPとして指定することができる。この補正点CPPは、例えば、描画ラインSLnに沿って投射される隣り合う2つのスポット光SPの投射位置(スポット光SPの中心位置)の間に設定される。
補正点指定部202は、ビーム切換部BDUによってビームLBnが入射する走査ユニットUnに対応した局所倍率補正情報CMgnの補正位置情報Nvを用いて補正点CPPを指定する。光源装置LSaからのビームLBa(LB1〜LB3)が走査ユニットU1〜U3のいずれか1つに導かれるので、補正点指定部202は、走査ユニットU1〜U3のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnの補正位置情報Nvに基づいて補正点CPPを指定する。例えば、走査ユニットU2にビームLB2が入射する場合は、光源装置LSaの補正点指定部202は、走査ユニットU2に対応した局所倍率補正情報CMg2の補正位置情報Nvに基づいて、描画ラインSLn2上に等間隔に離散的に配置される複数の位置を補正点CPPとして指定する。
また、光源装置LSbからのビームLBb(LB4〜LB6)が走査ユニットU4〜U6のいずれか1つに導かれるので、光源装置LSbの信号発生部22aの補正点指定部202は、走査ユニットU4〜U6のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnの補正位置情報Nvに基づいて補正点CPPを指定する。例えば、走査ユニットU6にビームLB6が入射する場合は、光源装置LSbの補正点指定部202は、走査ユニットU6に対応した局所倍率補正情報CMg6の補正位置情報Nvに基づいて、描画ラインSLn6上に等間隔に離散的に配置される複数の位置を補正点CPPとして指定する。
この補正点指定部202について具体的に説明すると、補正点指定部202は、分周カウンタ回路212とシフトパルス出力部214とを有する。分周カウンタ回路212は、減算カウンタであり、クロック切換部204から出力されるクロック信号LTCのクロックパルス(基準クロックパルス)が入力される。クロック切換部204から出力されたクロック信号LTCのクロックパルスは、ゲート回路GTaを介して分周カウンタ回路212に入力される。ゲート回路GTaには、走査ユニットU1〜U3の各々が描画期間であることを表す描画許可信号SQ1〜SQ3が論理和となって印加される。描画許可信号SQ1〜SQ3は、図10の入射許可信号LP1〜LP3に応答して生成される。ゲート回路GTaは、描画許可信号SQnがハイ(H)の期間に開くゲートである。つまり、分周カウンタ回路212は、描画許可信号SQnがハイの期間中だけ、クロック信号LTCのクロックパルスをカウントすることになる。したがって、光源装置LSaのゲート回路GTaは、描画許可信号SQ1〜SQ3のいずれかがハイ(H)の期間に入力されたクロック信号LTCのクロックパルスを分周カウンタ回路212に出力する。同様に、光源装置LSbの信号発生部22aのゲート回路GTaには、走査ユニットU4〜U6に対応する3つの描画許可信号SQ4〜SQ6が印加される。したがって、光源装置LSbのゲート回路GTaは、描画許可信号SQ4〜SQ6のいずれかがハイ(H)の期間に入力されたクロック信号LTCのクロックパルスを分周カウンタ回路212に出力する。
分周カウンタ回路212は、初期のカウント値が補正位置情報(設定値)Nvにプリセットされ、クロック信号LTCのクロックパルスが入力される度にカウント値をデクリメントする。分周カウンタ回路212は、カウント値が0になると1パルスの一致信号Idcをシフトパルス出力部214に出力する。つまり、分周カウンタ回路212は、クロック信号LTCのクロックパルスを補正位置情報Nv分だけカウントすると一致信号Idcを出力する。この一致信号Idcは、次のクロックパルスが発生する前に補正点CPPが存在することを示す情報である。また、分周カウンタ回路212は、カウント値が0になった後、次のクロックパルスが入力されると、カウント値を補正位置情報Nvにプリセットする。これにより、描画ラインSLnに沿って等間隔に補正点CPPを複数指定することができる。
シフトパルス出力部214は、一致信号Idcが入力されるとシフトパルスCSをクロック切換部204に出力する。このシフトパルスCSが発生すると、クロック切換部204は、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpを切り換える。このシフトパルスCSは、補正点CPPを示す情報であり、分周カウンタ回路212のカウント値が0になった後、次のクロックパルスが入力される前に発生する。したがって、分周カウンタ回路212のカウント値を0にしたクロックパルスに応じて発生したビームLBa(LBb)のスポット光SPの基板P上における位置と、次のクロックパルスに応じて発生したビームLBa(LBb)のスポット光SPの基板P上における位置との間に補正点CPPが存在することになる。
上述したように、1描画ラインSLn当り20000個のスポット光SPを投射し、描画ラインSLn上に補正点CPPを等間隔に離散的に40個配置すると、スポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)の500個間隔で補正点CPPが配置されることになり、補正位置情報Nvは500と設定される。
図12は、図11に示す信号発生部22aの各部から出力される信号を示すタイムチャートである。クロック信号発生部200が発生する50個のクロック信号CK0〜CK49は、いずれもクロック発生部60が出力するクロック信号CK0と同じ基準周期Teではあるが、その位相が0.2nsecずつ遅れたものとなっている。したがって、例えば、クロック信号CK3は、クロック信号CK0に対して0.6nsec位相が遅れたものとなり、クロック信号CK49は、クロック信号CK0に対して9.8nsec位相が遅れたものとなっている。分周カウンタ回路212が、クロック切換部204から出力されるクロック信号LTCのクロックパルスを補正位置情報(設定値)Nv分だけカウントすると一致信号Idc(図示略)を出力し、これに応じて、シフトパルス出力部214がシフトパルスCSを出力する。シフトパルス出力部214は、通常は、ハイ(論理値が1)の信号を出力しているが、一致信号Idcが出力されるとロー(論理値は0)に立ち下がり、クロック信号CKpの基準周期Teの半分(半周期)の時間が経過するとハイ(論理値は1)に立ち上がるシフトパルスCSを出力する。これにより、このシフトパルスCSは、分周カウンタ回路212がクロック信号LTCのクロックパルスを補正位置情報(設定値)Nv分だけカウントしてから、次のクロックパルスが入力される前に立ち上がる。
クロック切換部204は、シフトパルスCSの立ち上がりに応答して、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpを、シフトパルスCSが発生する直前まで出力していたクロック信号CKpから、伸縮情報POL´に応じた方向に0.2nsec位相がずれたクロック信号CKp±1に切り換える。図12の例では、シフトパルスCSが発生する直前までクロック信号LTCとして出力していたクロック信号CKpをCK0、伸縮情報POLを「0」(縮小)としているので、シフトパルスCSの立ち上がりに応答して、クロック信号CK49に切り換わっている。このように、伸縮情報POLが「0」の場合は、スポット光SPが補正点CPPを通過する度に(つまり、シフトパルスCSが発生する度に)、クロック切換部204は、位相が0.2nsecずつ進むようにクロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpを切り換える。したがって、クロック信号LTCとして出力(選択)されるクロック信号CKpは、CK0→CK49→CK48→CK47→・・・・、の順番で切り換わる。このシフトパルスCSが発生する補正点CPPの位置では、クロック信号LTCの周期が基準周期Te(=10nsec)に対して、0.2nsec短い時間(9.8nsec)となり、それ以降は、スポット光SPが次の補正点CPPを通過するまで(次のシフトパルスCSが発生するまで)、クロック信号LTCの周期は基準周期Te(=10nsec)となる。
逆に、伸縮情報POLが「1」の場合は、スポット光SPが補正点CPPを通過する度に(つまり、シフトパルスCSが発生する度に)、クロック切換部204は、位相が0.2nsecずつ遅れるようにクロック信号LTCとして出力(選択)するクロック信号CKpを切り換える。したがって、クロック信号LTCとして出力(選択)されるクロック信号CKpは、CK0→CK1→CK2→CK3→・・・・、の順番で切り換わる。このシフトパルスCSが発生する補正点CPPの位置では、クロック信号LTCの周期が基準周期Te(=10nsec)に対して、0.2nsec長い時間(10.2nsec)となり、それ以降は、スポット光SPが次の補正点CPPを通過するまで(次のシフトパルスCSが発生するまで)、クロック信号LTCの周期は基準周期Te(=10nsec)となる。
本実施の形態では、実効的なサイズφが3μmのスポット光SPが1.5μmずつ重なるように主走査方向に沿って投射されるので、補正点CPPにおけるクロック信号LTCの周期の補正時間(±0.2nsec)は、0.03μm(=1.5〔μm〕×(±0.2〔nsec〕/10〔nsec〕))に相当し、1画素当り±0.03μm伸縮することになる。
図13Aは、局所倍率補正が行われていない場合に描画されるパターンPPを説明する図であり、図13Bは、図12に示すタイムチャートにしたがって局所倍率補正(縮小)が行われた場合に描画されるパターンPPを説明する図である。なお、強度が高レベルのスポット光SPを実線で表し、強度が低レベルまたはゼロのスポット光SPを破線で表している。図13A、図13Bに示すように、クロック信号LTCの各クロックパルスに応答して発生したスポット光SPによってパターンPPが描画される。図13Aと図13Bのクロック信号LTCとパターンPPとを区別するため、図13A(局所倍率補正が行われていない場合)のクロック信号LTC、パターンPPを、LTC1、PP1で表し、図13B(局所倍率補正が行われた場合)のクロック信号LTC、パターンPPを、LTC2、PP2で表している。
局所倍率補正が行われていない場合は、図13Aに示すように、描画される各画素の寸法Pxyは、主走査方向において一定の長さとなる。なお、画素の副走査方向(X方向)の長さをPxで表し、主走査方向(Y方向)の長さをPyで表している。図12に示すようなタイムチャートにしたがって局所倍率補正(縮小)が行われると、図13Bに示すように補正点CPPを含む画素の寸法Pxyは、画素の長さPyがΔPy(=0.03μm)だけ縮んだ状態となる。逆に、伸長の局所倍率補正が行われると、補正点CPPを含む画素の寸法Pxyは、画素の長さPyがΔPy(=0.03μm)だけ伸びた状態となる。
なお、シリアルデータDLnの画素シフトについては特に触れなかったが、クロック切換部204からクロック信号LTCのクロックパルスが2個出力される度に、図9に示す描画データ出力部114は、光源装置LSa(LSb)の駆動回路36aに出力するシリアルデータDLnの画素の論理情報を1画素分(1ビット分)だけシフトする。これにより、スポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)の2個が1画素に対応することになる。
以上のように、本実施の形態の露光装置EXは、パルス光源部35からの種光S1、S2に応じて生成されるビームLB(Lse、LBa、LBb、LBn)のスポット光SPをパターンデータに応じて強度変調しつつ、基板P上の描画ラインSLnに沿ってスポット光SPを相対的に走査することにより、基板P上にパターンを描画する。露光装置EXは、クロック信号発生部200、制御回路(光源制御部)22、および、クロック切換部204を少なくとも備える。上述したように、クロック信号発生部200は、φ/Vsで決まる周期よりも短い基準周期Te(例えば、10nsec)を有するとともに、基準周期Teの1/Nの補正時間(例えば、0.2nsec)ずつ位相差を与えた複数(N=50個)のクロック信号CKp(CK0〜CK49)を生成する。制御回路(光源制御部)22は、複数のクロック信号CKpのうちいずれか1つのクロック信号CKp(クロック信号LTC)の各クロックパルスに応答してビームLBが発生するようにパルス光源部35を制御する。クロック切換部204は、スポット光SPが描画ラインSLn上に指定される特定の補正点CPPを通過するタイミングで、ビームLBの発生に起因するクロック信号CKp、つまり、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpを、位相差の異なる他のクロック信号CKpに切り換える。したがって、描画ラインSLn(描画するパターン)の倍率をきめ細やかに補正することができ、ミクロンオーダーでの精密な重ね合わせ露光を行うことができる。
この局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)の補正位置情報(設定値)Nvは、任意に変更することができ、描画ラインSLnの倍率に応じて適宜設定される。例えば、描画ラインSLn上に位置する補正点CPPが1つとなるように、補正位置情報Nvを設定してもよい。また、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1走査ごとに補正位置情報Nvの値を変えても良いし、1走査中にスポット光SPが補正点CPPに来るたびに、補正位置情報Nvの値を変えても良い。この場合であっても、描画ラインSLn上の離散的な位置に複数の補正点CPPが指定されることには変わりはないが、補正位置情報Nvを変更することで、補正点CPPの間隔を不均一にすることができる。さらに、描画ラインSLnに沿ったビームLBn(スポット光SP)の1走査毎、或いはポリゴンミラーPMの1回転毎に、描画ラインSLn上の補正画素の数は変えずに、補正画素(補正点CPP)の位置を異ならせるようにしてもよい。
[第1の実施の形態の変形例]
上記第1の実施の形態は、以下のような変形が可能である。なお、上記の実施の形態と同一の構成については同様の符号を付し、異なる箇所を中心に説明する。
(変形例1)
上記の第1の実施の形態では、光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)を走査ユニットUn(U1〜U6)のいずれかに選択的に供給するための選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)を音響光学変調素子とした。すなわち、入射ビームに対して所定の回折角で偏向されて出力される1次回折光を描画用のビームLBnとして走査ユニットUnに供給しているが、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、回折現象を使わない電気光学偏向部材であっても良い。図14は、変形例1によるビーム切換部BDU内の1つの走査ユニットUnに対応したビーム切換部の構成を示し、本変形例では、光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)を入射する電気光学素子OSnと、電気光学素子OSnを透過したビームの偏光特性に応じて、ビームを透過または反射する偏光ビームスプリッタBSnとが、先の図6に示した選択用光学素子AOM1とユニット側入射ミラーIM1との組み合せ系の代わりに設けられる。
図14において、光源装置LSa(LSb)から平行光束となって射出されるビームLBa(LBb)の進行方向をX軸と平行に設定したとき、電気光学素子OSnに入射するビームLBa(LBb)をY方向に偏光した直線偏光とし、電気光学素子OSnのY方向に対向した面に形成された電極EJp、EJmの間に数Kvの電圧を印加すると、電気光学素子OSnを透過したビームは、入射時の偏光状態から90度回転してZ方向に偏光した直線偏光となって、偏光ビームスプリッタBSnに入射する。電極EJp、EJm間に電圧を印加しない場合、電気光学素子OSnを透過したビームは、入射時の偏光状態のままY方向に偏光した直線偏光となる。従って、電極EJp、EJm間の電圧が零のオフ状態のとき、電気光学素子OSnからのビームは、立方体状の偏光ビームスプリッタBSnの偏光分割面psp(XY面とYZ面の各々に対して45度傾いた面)をそのまま透過する。電極EJp、EJm間に電圧が印加されるオン状態のとき、電気光学素子OSnからのビームは偏光ビームスプリッタBSnの偏光分割面pspで反射されて、描画データ(例えば図9中の描画ビット列データSBa、SBb)に応じて強度変調された描画用のビームLBnとなって走査ユニットUnに向かう。電気光学素子OSnは、印加される電界強度の1乗で屈折率が変化するポッケルス効果、又は印加される電界強度の2乗で屈折率が変化するカー効果を呈する結晶媒体又は非結晶媒体で構成される。また電気光学素子OSnは、電界の代わりに磁界によって屈折率が変化するファラデー効果を呈する結晶媒体であっても良い。
(変形例2)
図15は、図6に示したビーム切換部BDUを構成する選択用光学素子AOM1〜AOM6とユニット側入射ミラーIM1〜IM6とを、図14の変形例1の構成に置き換えた場合の変形例2を示す。光源装置LSaから平行光束(ビーム径は1mm以下)として射出される直線偏光のビームLBaは、図6、図9に示したような音響光学変調素子(又は音響光学偏向素子)を用いたビームシフター部SFTaを介して、電気光学素子OS1、偏光ビームスプリッタBS1、電気光学素子OS2、偏光ビームスプリッタBS2、電気光学素子OS3、偏光ビームスプリッタBS3の順に通った後、吸収体TR1に入射する。偏光ビームスプリッタBS1は、電気光学素子OS1に電界が印加されたとき、ビームLBaを描画用のビームLB1として走査ユニットU1に向けて反射する。同様に、偏光ビームスプリッタBS2は、電気光学素子OS2に電界が印加されたとき、ビームLBaを描画用のビームLB2として走査ユニットU2に向けて反射し、偏光ビームスプリッタBS3は、電気光学素子OS3に電界が印加されたとき、ビームLBaを描画用のビームLB3として走査ユニットU3に向けて反射する。図15では、電気光学素子OS1〜OS3のうちの電気光学素子OS2のみに電界が印加され、ビームシフター部SFTaから射出されるビームLBaがビームLB2として走査ユニットU2のみに入射している。
同様に、光源装置LSbから平行光束(ビーム径は1mm以下)として射出される直線偏光のビームLBbは、音響光学変調素子(又は音響光学偏向素子)を用いたビームシフター部SFTbを介して、電気光学素子OS4、偏光ビームスプリッタBS4、電気光学素子OS5、偏光ビームスプリッタBS5、電気光学素子OS6、偏光ビームスプリッタBS6の順に通った後、吸収体TR2に入射する。偏光ビームスプリッタBS4は、電気光学素子OS4に電界が印加されたとき、ビームLBbを描画用のビームLB4として走査ユニットU4に向けて反射し、偏光ビームスプリッタBS5は、電気光学素子OS5に電界が印加されたとき、ビームLBbを描画用のビームLB5として走査ユニットU5に向けて反射し、偏光ビームスプリッタBS6は、電気光学素子OS6に電界が印加されたとき、ビームLBbを描画用のビームLB6として走査ユニットU6に向けて反射する。図15では、電気光学素子OS4〜OS6のうちの電気光学素子OS6のみに電界が印加され、ビームシフター部SFTbから射出されるビームLBbがビームLB6として走査ユニットU6のみに入射している。
ビームシフター部SFTa、SFTbは、一例として、音響光学偏向素子AODsを用いて図16のように構成される。音響光学偏向素子AODsは、図9に示されている選択素子駆動制御部102からの高周波電力としての駆動信号HFnと同様の高周波駆動信号HGa、HGbによって駆動される。光源装置LSa(LSb)からの平行なビームLBa(LBb)は、焦点距離f1のレンズCG1の光軸と同軸となって入射し、面puでビームウェストとなるように集光する。音響光学偏向素子AODsの偏向点は、面puの位置に配置される。駆動信号HGa(HGb)がオフの状態では、面puでビームウェストとなったビームLBa(LBb)は回折されることなく、面puから焦点距離f2のレンズCG2に入射し、平行光束になってミラーOMで反射されて吸収体TR3に入射する。駆動信号HGa(HGb)が音響光学偏向素子AODsに印加されたオン状態のとき、音響光学偏向素子AODsは駆動信号HGa(HGb)の周波数に応じた回折角で偏向されたビームLBa(LBb)の1次回折光を生成さする。その1次回折光は、ここでは偏向されたビームLBa(LBb)と呼ぶ。音響光学偏向素子AODsの偏向点は、レンズCG2の焦点距離f2の位置である面puに配置されるので、レンズCG2から射出するビームLBa(LBb)は、レンズCG2の光軸と平行な平行光束となって、図15の電気光学素子OS1、又はOS4に入射する。
音響光学偏向素子AODsに印加される駆動信号HGa(HGb)の周波数を変えることにより、レンズCG2から射出するビームLBa(LBb)は、レンズCG2の光軸と平行な状態で、光軸と垂直な方向に位置シフトする。ビームLBa(LBb)の位置シフトの方向は、図14に示した電気光学素子OSn(OS1又はOS4)の入射端面上でZ方向に対応し、シフト量は駆動信号HGa(HGb)の周波数の変化量に対応する。本変形例の場合、ビームシフター部SFTa(SFTb)は3つの走査ユニットU1、U2、U3(U4、U5、U6)に対して共通に設けられている。その為、音響光学偏向素子AODsに印加される駆動信号HGa(HGb)の周波数は、図15の電気光学素子OS1〜OS3のいずれか1つ、又は電気光学素子OS4〜OS6のいずれか1つがオン状態になるタイミングに同期して変更(周波数変調)することができる。これにより、電気光学素子OS1〜OS3(OS4〜OS6)を通るビームLBa(LBb)が図14中でZ方向に平行にシフトし、偏光ビームスプリッタBS1〜BS3(BS4〜BS6)で反射されたビームLBn(LB1〜Lb6)は、図14中でX方向に平行シフトする。これによって、オン状態となった電気光学素子OSnに対応した走査ユニットUnからのビームLBnのスポット光SPを、副走査方向(X方向)に微少量だけ高速にシフトさせることができる。
以上、本実施の形態では、光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)を、3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)のいずれか1つに選択的に振り分ける為に、偏向作用を持たない電気光学素子OS1〜OS3(OS4〜OS6)を用いたので、スポット光SPの位置を副走査方向に微調整するために、偏向作用を持つ音響光学偏向素子AODsによるビームシフター部SFTa(SFTb)が設けられる。
(変形例3)
図17A及びBは、上記の実施形態や変形例で使われた選択用光学素子AOM1〜AOM6や音響光学偏向素子AODsの代わりに設けられ、回折作用によらないビーム偏向部材の一例を示す。図17Aは、所定の厚みでプリズム状(三角形)に形成された透過性の結晶媒体の対向する平行な側面(図17Aでは上下面)に電極EJp、EJmが形成された電気光学素子ODnを示す。結晶媒体は、化学組成として、KDP(KH2PO4)、ADP(NH4H2PO4)、KD*P(KD2PO4)、KDA(KH2AsO4)、BaTiO3、SrTiO3、LiNbO3、LiTaO3等で表される材料である。電気光学素子ODnの一方の斜面から入射したビームLBa(LBb)は、電極EJp、EJm間の電界が零のときは、結晶媒体の初期の屈折率と空気の屈折率との差に応じて偏向されて、他方の斜面から射出する。電極EJp、EJm間に一定値以上の電界が印加されると、結晶媒体の屈折率が初期値から変化するため、入射したビームLBa(LBb)は、他方の斜面から初期の角度と異なる角度で射出するビームLBnとなる。このような電気光学素子ODnを用いても、光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)を、走査ユニットU1〜U6の各々に時分割でスイッチングして供給することができる。また、電気光学素子ODnに印加する電界強度を変えることで、射出するビームLBnの偏向角を微少に高速に変えられるので、電気光学素子ODnにスイッチング機能と共に、基板P上のスポット光SPを副走査方向に微少量シフトさせるビームシフト機能を併せ持たせても良い。さらに、図16のような単独のビームシフター部SFTa(SFTb)の音響光学偏向素子AODsの代わりに電気光学素子ODnを用いても良い。
また、図17Bは、例えば、特開2014−081575号公報、国際公開第2005/124398号パンフレットに開示されているようなKTN(KTa1-xNbxO3)結晶による電気光学素子KDnを用いたビーム偏向部材の例を示す。図17Bにおいて、電気光学素子KDnは、ビームLBa(LBb)の進行方向に沿って長い角柱状に形成された結晶媒体と、その結晶媒体を挟んで対向配置される電極EJp、EJmとで構成される。電気光学素子KDnは、一定の温度(例えば40度台)に保たれるように、温調機能を有するケース内に収納される。電極EJp、EJm間の電界強度が零のとき、角柱状のKTN結晶媒体の一方の端面から入射したビームLBa(LBb)は、KTN結晶媒体内を直進して、他方の端面から射出する。電極EJp、EJm間に電界強度を印加すると、KTN結晶媒体内を通るビームLBa(LBb)が、電界の方向に偏向されて、他方の端面からビームLBnとして射出する。KTN結晶媒体も、電界の強度によって屈折率が変化する材料ではあるが、先に挙げた各種の結晶媒体と比べて、一桁ほど低い電界強度(数百V)で大きな屈折率変化が得られる。その為、電極EJp、EJm間に印加する電圧を変えると、電気光学素子KDnから射出するビームLBnの元のビームLBa(LBb)に対する偏向角を比較的に大きな範囲(例えば、0度〜5度)で高速に調整できる。
このような電気光学素子KDnを用いても、光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)を、走査ユニットU1〜U6の各々に時分割でスイッチングして供給することができる。また、電気光学素子KDnに印加する電界強度を変えることで、射出するビームLBnの偏向角を高速に変えられるので、電気光学素子KDnにスイッチング機能と共に、基板P上でのスポット光SPの副走査方向へのシフト機能とを併せ持たせても良い。さらに、図16のような単独のビームシフター部SFTa(SFTb)の音響光学偏向素子AODsの代わりに電気光学素子KDnを用いても良い。
以上の第1の実施の形態、或いはそれらの各変形例によれば、描画ラインSLnの各々に沿って走査されるスポット光SPを副走査方向にシフトさせる為に、走査ユニットUn(U1〜U6)の各々に設けられたシフト光学部材SR(平行平板Sr2)による機械光学的なシフターと、走査ユニットUn(U1〜U6)の各々に入射するビームLBnを、音響光学偏向素子AODs、電気光学素子OSn、ODn、KDn等でシフトさせる電気光学的なシフターとが設けられている。従って、走査ユニットUn(U1〜U6)の各々からのビームLBnのスポット光SPの走査による描画ラインSLnの副走査方向の位置関係を所定の状態(初期の配置状態等)にセットする較正(キャリブレーション)の際は、機械光学的なシフター(平行平板Sr2)を用い、その較正によっても残留する誤差分は電気光学的なシフター(音響光学偏向素子AODs、電気光学素子OSn、ODn、KDn)によって、さらにファインに補正することができる。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。なお、上記の実施の形態(変形例も含む)と同様の構成については同一の符号を付し、異なる箇所のみを説明する。上記実施の形態として説明した図6の構成では、集光レンズCDとコリメータレンズ(コリメートレンズ)LCによる多数のリレー系によって、光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)に複数のビームウェスト(集光点)を作り、そのビームウェストの位置の各々に選択用光学素子(音響光学変調素子)AOM1〜AOM6を配置した。ビームLBa(LBb)のビームウェスト位置は、最終的に基板Pの表面(ビームLB1〜LB6の各スポット光SP)と光学的に共役になるように設定されているため、選択用光学素子(音響光学変調素子)AOM1〜AOM6の特性変化等によって偏向角に誤差が生じても、基板P上のスポット光SPが副走査方向(Xt方向)にドリフトすることが抑制される。そのため、走査ユニットUn毎に、スポット光SPによる描画ラインSLnを副走査方向(Xt方向)に画素寸法(数μm)程度の範囲で微調整する場合は、先の図5に示した走査ユニットUn内の平行平板Sr2を傾ければよい。さらに平行平板Sr2の傾斜を自動化するには、小型のピエゾモータや傾斜量のモニター系といった機構を設ければよい。
しかしながら、平行平板Sr2の傾斜を自動化しても、機械的な駆動であるために、例えばポリゴンミラーPMの1回転分の時間に対応した高い応答性を持った制御は難しい。そこで、第2の実施の形態では、先の図7のような光源装置LS(LSa、LSb)から各走査ユニットUnまでのビーム送光系(ビーム切換部BDU)の光学的な構成や配置を少し変更し、選択用光学素子(音響光学変調素子)AOM1〜AOM6に、ビームのスイッチング機能とともに、スポット光SPの位置を副走査方向に微調整するシフト機能を兼用して持たせるようにする。以下、本第2の実施の形態の構成を図18〜図22により説明する。
図18は、先の図7に示した光源装置LSa(LSb)のパルス光発生部20内の波長変換部の構成を詳細に示す図、図19は光源装置LSa(LSb)から最初の選択用光学素子AOM1までのビームLBa(LBbは省略)の光路を示す図、図20は、選択用光学素子AOM1から次段の選択用光学素子AOM2までの光路と選択用光学素子AOM1のドライバ回路の構成を示す図、図21は選択用光学素子AOM1の後の選択用のミラー(分岐反射鏡)IM1でのビーム選択とビームシフトの様子を説明する図、図22はポリゴンミラーPMから基板Pまでのビームの振る舞いを説明する図である。
図18に示すように、光源装置LSa内のファイバー光増幅器46の射出端46aからは、増幅された種光(ビーム)Lseが小さな発散角(NA:開口数)で射出する。レンズ素子GL(GLa)は種光Lseが第1の波長変換素子(波長変換光学素子)48中でビームウェストとなるように集光する。したがって、第1の波長変換素子48で波長変換された1次の高調波ビームは発散性を持ってレンズ素子GL(GLb)に入射する。レンズ素子GLbは1次の高調波ビームが第2の波長変換素子(波長変換光学素子)50中でビームウェストとなるように集光する。第2の波長変換素子50で波長変換された2次の高調波ビームは発散性を持ってレンズ素子GL(GLc)に入射する。レンズ素子GLcは、2次の高調波ビームをほぼ平行な細いビームLBa(LBb)にして、光源装置LSaの射出窓20Hから射出するように配置される。射出窓20Hから射出するビームLBaの直径は数mm以下であり、好ましくは1mm程度である。このように、波長変換素子48、50の各々は、レンズ素子GLa、GLbによってファイバー光増幅器46の射出端46a(発光点)と光学的に共役になるように設定される。したがって、波長変換素子48、50の結晶特性の変動によって、生成される高調波ビームの進行方向がわずかに傾いた場合でも、射出窓20Hから射出するビームLBaの角度方向(方位)に関するドリフトが抑えられる。なお、図18では、レンズ素子GLcと射出窓20Hとを離して示してあるが、レンズ素子GLc自体を射出窓20Hの位置に配置してもよい。
射出窓20Hから射出したビームLBaは、図19に示すように、2つの集光レンズCD0、CD1よるエクスパンダー系の光軸AXjに沿って進み、ビーム径が1/2程度(0.5mm程度)に縮小されたほぼ平行光束に変換されて1段目の選択用光学素子AOM1に入射する。射出窓20HからのビームLBaは集光レンズCD0と集光レンズCD1の間の集光位置Pepでビームウェストとなる。集光レンズCD1は、先の図6中の集光レンズCD1として設けられる。さらに、選択用光学素子AOM1内のビームの偏向位置Pdf(回折点)は、集光レンズCD0、CD1よるエクスパンダー系によって、射出窓20Hと光学的に共役になるように設定される。さらに、集光位置Pepは、図18中のファイバー光増幅器46の射出端46a、波長変換素子48、50の各々と光学的に共役になるように設定される。また、選択用光学素子AOM1のビームの偏向方向、すなわちスイッチング時に、入射したビームLBaの1次回折光として射出するビームLB1の回折方向は、Z方向(基板P上のスポット光SPを副走査方向にシフトさせる方向)に設定される。選択用光学素子AOM1を通るビームLBaは、例えば、ビーム径が約0.5mm程度の平行光束となっており、1次回折光として射出するビームLB1も、ビーム径が約0.5mm程度の平行光束になる。つまり、上記各実施の形態(変形例も含む)においては、選択用光学素子AOM1内でビームウェストとなるようにビームLBa(LBb)を収斂したが、本第2の実施の形態では、選択用光学素子AOM1を通るビームLBa(LBb)を、微小の径を有する平行光束とする。
図20に示すように、選択用光学素子AOM1を透過したビームLBaと、スイッチング時に1次回折光として偏向されるビームLB1は、光軸AXjと同軸に配置されたコリメータレンズCL1(図6中のレンズCL1に相当)に共に入射する。選択用光学素子AOM1の偏向位置Pdfは、コリメータレンズCL1の前側焦点の位置に設定される。したがって、ビームLBaとビームLB1は、コリメータレンズ(集光レンズ)CL1の後側焦点の面Pipでそれぞれビームウェストとなるように収斂される。コリメータレンズCL1の光軸AXjに沿って進むビームLBaは、面Pipから発散した状態で図6に示した集光レンズ(コンデンサーレンズ)CD2に入射し、再びビーム径が0.5mm程度の平行光束となって、2段目の選択用光学素子AOM2に入射する。2段目の選択用光学素子AOM2の偏向位置Pdfは、コリメータレンズCL1と集光レンズCD2とによるリレー系によって、選択用光学素子AOM1の偏向位置Pdfと共役関係に配置される。
図6に示した選択用のミラーIM1は、本第2の実施の形態では、コリメータレンズCL1と集光レンズCD2の間の面Pipの近傍に配置される。面Pipでは、ビームLBa、LB1が最も細いビームウェストとなってZ方向に分離するので、ミラーIM1の反射面IM1aの配置が容易になる。選択用光学素子AOM1の偏向位置Pdfと面Pipとは、コリメータレンズCL1によって瞳位置と像面の関係になっており、コリメータレンズCL1からミラーIM1の反射面IM1aに向かうビームLB1の中心軸(主光線)は、ビームLBaの主光線(光軸AXj)と平行になる。ミラーIM1の反射面IM1aで反射したビームLB1は、集光レンズCD2と同等のコリメータレンズCL1aによって平行光束に変換されて、図5に示した走査ユニットU1のミラーM10に向かう。なお、面Pipは、コリメータレンズCL1と図19中の集光レンズCD1とによって集光位置Pepと光学的に共役な関係になっている。したがって、面Pipは、図18のファイバー光増幅器46の射出端46a、波長変換素子48、50の各々とも共役な関係になっている。つまり、面Pipは、レンズ素子GLa、GLb、GLc、集光レンズCD0、CD1、および、コリメートレンズCL1から構成されるリレーレンズ系によって、ファイバー光増幅器46の射出端46a、波長変換素子48、50の各々と共役に設定されている。
コリメータレンズCL1aの光軸AXmは、図5中の照射中心軸Le1と同軸に設定され、スイッチング時の選択用光学素子AOM1によるビームLB1の偏向角が規定角度(基準の設定角)のときに、ビームLB1の中心線(主光線)が光軸AXmと同軸になるようにコリメータレンズCL1aに入射する。また、ミラーIM1の反射面IM1aは、図20のように、ビームLBaの光路を遮らないようにビームLB1のみを反射するとともに、反射面IM1aに達するビームLB1がZ方向に僅かにシフトとした場合でもビームLB1を確実に反射するような大きさに設定される。ただし、ミラーIM1の反射面IM1aを面Pipの位置に配置した場合、反射面IM1a上にビームLB1が集光したスポット光が作られるため、反射面IM1aが面Pipの位置から少しずれるようにミラーIM1をX方向にずらして配置するのがよい。また、反射面IM1aには紫外線耐性の高い反射膜(誘電体多層膜)が形成されている。
本第2の実施の形態では、先の図9に示した選択素子駆動制御部102内に、選択用光学素子AOM1にビームのスイッチング機能とシフト機能の両方を持たせるためのドライブ回路102Aが設けられる。ドライブ回路102Aは、選択用光学素子AOM1に印加すべき駆動信号HF1の周波数を基準周波数から変えるための補正信号FSSを受けて、基準周波数に対して補正すべき周波数に応じた補正高周波信号を生成する局部発振回路102A1(VCO:電圧制御オシレータ等)と、基準発振器102Sで作られる安定な周波数の高周波信号と、局部発振回路102A1からの補正高周波信号とを周波数が加減算されるように合成する混合回路102A2と、混合回路102A2で周波数合成された高周波信号を、選択用光学素子AOM1の超音波振動子の駆動に適した振幅まで増幅した駆動信号HF1に変換する増幅回路102A3とで構成される。増幅回路102A3は、図9の選択素子駆動制御部102で生成される入射許可信号LP1に応答して、高周波の駆動信号HF1を高レベルと低レベル(または振幅ゼロ)に切り替えるスイッチング機能を備えている。したがって、駆動信号HF1が高レベルの振幅の間(信号LP1がHレベルの間)、選択用光学素子AOM1はビームLBaを偏向してビームLB1を生成する。以上の図20のようなミラーIM1とコリメータレンズCL1aの光学系とドライブ回路102Aは、他の選択用光学素子AOM2〜AOM6の各々に対しても同様に設けられる。以上の構成において、局部発振回路102A1と混合回路102A2とは、補正信号FSSの値に応じて駆動信号HF1の周波数を変化させる周波数変調回路として機能する。
このドライブ回路102Aにおいて、補正信号FSSが補正量ゼロを表す場合、増幅回路102A3から出力される駆動信号HF1の周波数は、選択用光学素子AOM1によるビームLB1の偏向角が規定角度(基準の設定角)になるような規定周波数に設定される。補正信号FSSが補正量+ΔFsを表す場合は、選択用光学素子AOM1によるビームLB1の偏向角が規定角度に対してΔθγだけ増加するように駆動信号HF1の周波数が補正される。補正信号FSSが補正量−ΔFsを表す場合は、選択用光学素子AOM1によるビームLB1の偏向角が規定角度に対してΔθγだけ減少するように駆動信号HF1の周波数が補正される。ビームLB1の偏向角が規定角度に対して±Δθγ変化すると、ミラーIM1の反射面IM1aに入射するビームLB1の位置が僅かにZ方向にシフトし、コリメータレンズCL1aから射出するビームLB1(平行光束)が光軸AXmに対して僅かに傾いたものとなる。その様子を図21によりさらに説明する。
図21は、選択用光学素子AOM1で偏向されるビームLB1のシフトの様子を誇張して示した光路図である。ビームLB1が選択用光学素子AOM1によって規定角度で偏向されている場合、ビームLB1の中心軸はコリメータレンズCL1aの光軸AXmと同軸になっている。このとき、コリメータレンズCL1から射出したビームLB1の中心軸は、元のビームLBaの中心軸(光軸AXj)から−Z方向にΔSF0だけ離れている。その状態から、選択用光学素子AOM1を駆動する駆動信号HF1の周波数を、例えばΔFsだけ高くしたとすると、選択用光学素子AOM1でのビームLB1の偏向角が規定角度に対してΔθγだけ増加し、ミラーIM1に達するビームLB1’の中心軸AXm’は、光軸AXjから−Z方向にΔSF1だけ離れて位置する。このように、駆動信号HF1の周波数のΔFsの変化によって、ミラーIM1に向かうビームLB1’の中心軸AXm’は、規定位置(光軸AXmと同軸の位置)から、ΔSF1−ΔSF0、だけ−Z方向に横シフト(平行移動)する。
光軸AXm上には、面Pipに相当する面Pip’が存在し、その面Pip’でビームLB1(LB1’)はビームウェストとなるように集光される。面Pip’からコリメータレンズCL1aに向かうビームLB1’の中心軸AXm’は光軸AXmと平行であり、面Pip’をコリメータレンズCL1aの前側焦点の位置に設定することで、コリメータレンズCL1aから射出するビームLB1’は、光軸AXmに対してXZ面内で僅かに傾いた平行光束に変換される。本実施の形態では、面Pip’が最終的に基板Pの表面(スポット光SP)と共役になるように、走査ユニットU1内のレンズ系(図5中のレンズBe1、Be2、シリンドリカルレンズCYa、CYb、fθレンズTF)が配置される。
図22は、走査ユニットU1内のポリゴンミラーPMの1つの反射面RP(RPa)から基板Pまでの光路を展開してYt方向から見た図である。選択用光学素子AOM1によって規定角度で偏向されたビームLB1は、XtYt面と平行な面内でポリゴンミラーPMの反射面RPaに入射して反射される。反射面RPaに入射するビームLB1は、XtZt面内では、図5に示した第1のシリンドリカルレンズCYaにより反射面RPa上でZt方向に収斂される。反射面RPaで反射したビームLB1は、fθレンズFTの光軸AXfを含むXtYt面と平行な面内で、ポリゴンミラーPMの回転速度に応じて高速に偏向され、fθレンズFTと第2のシリンドリカルレンズCYbとを介して、基板P上にスポット光SPとして集光される。スポット光SPは図21では紙面と垂直な方向に1次元走査される。
一方、図21のように、面Pip’でビームLB1に対してΔSF1−ΔSF0だけ横シフトしたビームLB1’は、ポリゴンミラーPMの反射面RPa上のビームLBの照射位置に対して僅かにZt方向にずれた位置に入射する。それによって、反射面RPaで反射したビームLB1’の光路は、XtZt面内では、ビームLB1の光路と僅かにずれた状態で、fθレンズFTと第2のシリンドリカルレンズCYbとを通って、基板P上にスポット光SP’として集光される。ポリゴンミラーPMの反射面RPaは、光学的にはfθレンズFTの瞳面に配置されるが、2つのシリンドリカルレンズCYa、CYbによる面倒れ補正の作用によって、図22のXtZt面内では、反射面RPaと基板Pの表面とは共役関係になっている。したがって、ポリゴンミラーPMの反射面RPa上に照射されるビームLB1がビームLB1’のようにZt方向に僅かにシフトすると、基板P上のスポット光SPはスポット光SP’のように、副走査方向にΔSFpだけシフトする。
以上の構成のように、選択用光学素子AOM1の駆動信号HF1の周波数を規定周波数から±ΔFsだけ変化させることにより、スポット光SPを副走査方向に±ΔSFpだけシフトさせることができる。そのシフト量(|ΔSFp|)は、選択用光学素子AOM1自体の偏向角の最大範囲、ミラーIM1の反射面IM1aの大きさ、走査ユニットU1内のポリゴンミラーPMまでの光学系(リレー系)の倍率、ポリゴンミラーPMの反射面のZt方向の幅、ポリゴンミラーPMから基板Pまでの倍率(fθレンズFTの倍率)等による制限を受けるが、スポット光SPの基板P上の実効的なサイズ(径)程度、或いは描画データ上で定義される画素寸法(Pxy)程度の範囲に設定される。もちろん、それ以上のシフト量に設定してもよい。なお、選択用光学素子AOM1および走査ユニットU1に関して説明したが、他の選択用光学素子AOM2〜AOM6および走査ユニットU2〜U6に関しても同様である。
このように、本実施の形態では、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)を、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)に応答したビームのスイッチング機能と、補正信号FSSに応答したスポット光SPのシフト機能とのために兼用できるので、各走査ユニットUn(U1〜U6)にビームを供給するビーム送光系(ビーム切換部BDU)の構成が簡単になる。さらに、走査ユニットUn毎にビーム選択用とスポット光SPのシフト用の音響光学変調素子(AOMやAOD)を別々に設ける場合に比べて、発熱源を減らすことができ、露光装置EXの温度安定性を高めることができる。特に、音響光学変調素子を駆動するドライブ回路(102A)は大きな発熱源になるが、駆動信号HF1が50MHz以上の高周波であるため、音響光学変調素子の近くに配置される。ドライブ回路(102A)を冷却する機構を設けても、その数が多いと装置内の温度が短時間で上昇し易くなり、光学系(レンズやミラー)の温度変化による変動で、描画精度が低下する可能性がある。そのため、熱源となるドライブ回路、および音響光学変調素子は少ない方が望ましい。また、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々が、温度変化の影響を受けて、入射ビームLBa(LBb)の1次回折光として偏向されるビームLBnの偏向角を変動させる場合、本実施の形態では、図20のドライブ回路102Aに与える補正信号FSSの値を、温度変化に応じて調整するフィードバック制御系を設けることにより、偏向角の変動を容易に相殺することができる。
本実施の形態の選択用光学素子AOMnによるビームシフト機能は、複数の走査ユニットUnの各々からのビームLBnのスポット光SPnによる描画ラインSLnの位置を、高速に副走査方向に微調整できる。例えば、図20に示した選択用光学素子AOM1を入射許可信号LP1がHレベルになる度に、補正信号FSSによる補正量を変えるように制御すると、ポリゴンミラーPMの反射面毎、すなわち、スポット光SPの走査毎に、描画ラインSL1を副走査方向に画素サイズ(またはスポット光のサイズ)程度の範囲でシフトできる。そのため、隣接する走査ユニットUnの各々を、照射中心軸Le1〜Le6の周りに微少回転させて各描画ラインSLnの傾きを調整した後、先の第1の実施の形態のようにして描画倍率を補正することに加えて、第2の実施の形態のように描画ラインSLnを副走査方向にシフトさせることによって、各描画ラインSLnの端部におけるパターン描画時の継ぎの精度を高めることが可能となる。また、基板Pにすでに形成された電子デバイスの為の下地パターンに対して、新たなパターンを重ね合わせて描画する際も、その重ね合わせの精度を高めることができる。
以上の第2の実施の形態では、基板Pの表面(ビームLBnがスポット光SPとして集光する位置)と、図21中の面Pip’とは互いに共役な関係に設定され、さらに面Pip’(Pip)は、光源装置LSa(LSb)中の波長変換素子48、50、ファイバー光増幅器46の射出端46aの各々とも互いに共役な関係に設定されている。そのため、ポリゴンミラーPMの反射面の1つを一定の向きに静止させた状態にして、ビームLBnをfθレンズFTとシリンドリカルレンズCYbを介して基板Pの表面の1点にスポット光SPとして投射した場合、波長変換素子48、50の結晶特性の変化によって高調波ビームの進行方向が角度的にドリフトしても、その影響を受けることなく基板P上のスポット光SPは静止している。このことは、スポット光SPの主走査方向の走査開始位置、或いは原点信号SDに応答した描画開始位置が、主走査方向にドリフトすることなく安定していることを意味する。したがって、長期的に安定した精度でパターン描画ができる。
[第3の実施の形態]
図23は、上記第2の実施の形態に適用される走査ユニットU1(Un)の具体的な構成を示す第3の実施の形態による図であり、ビームLB1の走査方向(偏向方向)を含む平面(XY平面と平行な平面)と直交する平面(XZ平面)からみた図である。なお、図23では、fθレンズ系FTの光軸AXfがXY面と平行に配置され、先端の反射ミラーM15が光軸AXfを90度で折り曲げるように配置されるものとする。走査ユニットU1内には、ビームLB1の入射位置から被照射面(基板P)までのビームLB1の送光路に沿って、反射ミラーM10、ビームエキスパンダーBE、傾斜角可変の平行平板HVP、開口絞りPA、反射ミラーM12、第1のシリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM13、反射ミラーM14、ポリゴンミラーPM(反射面RP)、fθレンズ系FT、反射ミラーM15、および、第2のシリンドリカルレンズCYbが設けられる。図23の構成は、基本的に図5の構成と同じであるが、一部説明に不要な部材等は省略してある。そして本実施の形態では、図5で設けられていたシフト光学部材SRの平行平板Sr2を、光透過性の平行平板(石英板)HVPとして設ける。
図6で示したミラーIM1によって−Z方向に反射された平行光束のビームLB1は、XY平面に対して45度傾いた反射ミラーM10に入射する。この反射ミラーM10は、入射したビームLB1を、反射ミラーM10から−X方向に離れた反射ミラーM12に向けて−X方向に反射する。反射ミラーM10で反射したビームLB1は、ビームエキスパンダーBEおよび開口絞りPAを透過して反射ミラーM12に入射する。ビームエキスパンダーBEは、透過するビームLB1の径を拡大させる。ビームエキスパンダーBEは、集光レンズBe1と、集光レンズBe1によって収斂された後に発散するビームLB1を平行光束にするコリメートレンズBe2とを有する。このビームエキスパンダーBEによりビームLB6を開口絞りPAの開口部分に照射することが容易になる。集光レンズBe1とコリメートレンズBe2の間には、不図示の駆動モータ等で傾斜角度を変更可能な石英の平行平板HVPが配置されている。この平行平板HVPの傾斜角を変えることで、基板P上で走査されるスポット光SPの走査軌跡である描画ラインSLnを副走査方向に微少量(例えば、スポット光SPの実効的なサイズφの数倍〜十数倍程度)だけシフトさせることができる。
反射ミラーM12は、YZ平面に対して45度傾いて配置され、入射したビームLB1を、反射ミラーM12から−Z方向に離れた反射ミラーM13に向けて−Z方向に反射する。反射ミラーM12で−Z方向に反射されたビームLB1は、第1のシリンドリカルレンズCYa(第1光学部材)を透過した後、反射ミラーM13に至る。反射ミラーM13は、XY平面に対して45度傾いて配置され、入射したビームLB1を反射ミラーM14に向けて+X方向に反射する。反射ミラーM13で反射したビームLB1は、反射ミラーM14で反射されてポリゴンミラーPMに投射される。ポリゴンミラーPMの1つの反射面RPは、入射したビームLB1を、X軸方向に延びる光軸AXfを有するfθレンズ系FTに向けて+X方向に反射する。
ビームエキスパンダーBEを構成するレンズ系Be1、Be2の間に設けられる平行平板HVPの傾斜角を変えることで、描画ラインSLnを副走査方向にシフトできる。図24A、図24Bは、平行平板HVPの傾斜によって描画ラインSLnがシフトする様子を説明するもので、図24Aは、平行平板HVPの互いに平行な入射面と射出面がビームLBnの中心線(主光線)に対して90度になっている状態を示す図であり、すなわち平行平板HVPがXZ面内で傾斜していない状態を示す図である。図24Bは、平行平板HVPの互いに平行な入射面と射出面がビームLBnの中心線(主光線)に対して90度から傾いている場合、すなわち平行平板HVPがYZ面に対して角度ηだけ傾斜している状態を示す図である。
さらに、図24A、図24Bでは、平行平板HVPが傾斜していない状態(角度η=0度)のとき、レンズ系Be1、Be2の光軸AXeは開口絞りPAの円形開口の中心を通るように設定され、ビームエキスパンダーBEに入射するビームLBnの中心線は光軸AXeと同軸になるように調整されているものとする。また、レンズ系Be2の後側焦点の位置は開口絞りPAの円形開口の位置に一致するように配置される。開口絞りPAの位置は、第1のシリンドリカルレンズCYaによって、副走査方向に関しては、ポリゴンミラーPMの反射面RPの位置(或いはfθレンズ系FTの前側焦点の位置)からみると、ほぼ瞳の位置になるように設定されている。一方で、主走査方向に関しては、開口絞りPAは、fθレンズ系FTの前側焦点の位置である入射瞳の位置と光学的に共役になるように配置されている。そのため、平行平板HVPを角度ηだけ傾けた場合、平行平板HVPを透過してレンズ系Be2に入射するビームLBn(ここでは発散光束)の中心線は、光軸AXeに対して−Z方向に微小に平行移動し、レンズ系Be2から射出するビームLBnは平行光束に変換されるとともに、ビームLBnの中心線は光軸AXeに対して僅かに傾く。
レンズ系Be2の後側焦点の位置は開口絞りPAの円形開口の位置に一致するように配置されているので、レンズ系Be2から傾いて射出するビームLBn(平行光束)は、開口絞りPA上でZ方向にずれることは無く、円形開口に投射され続ける。したがって、開口絞りPAの円形開口を通過したビームLBnは、強度分布上の1/e2の裾野の強度を正確にカットされた状態で、光軸AXeに対してXZ面内で副走査方向に僅かに傾いた角度で、後段の第1のシリンドリカルレンズCYaに向かう。開口絞りPAは、副走査方向に関してはポリゴンミラーPMの反射面RPからみると瞳位置に対応しており、開口絞りPAの円形開口を通過したビームLBnの副走査方向に関する傾き角に応じて、ポリゴンミラーPMの反射面RPに入射するビームLBn(副走査方向に関して収斂)の反射面上での位置が僅かにシフトする。したがって、ポリゴンミラーPMの反射面RPで反射したビームLBnも、図23に示したfθレンズ系FTの光軸AXfを含むXY面と平行な面に対して僅かにZ方向にシフトした状態でfθレンズ系FTに入射する。その結果、第2のシリンドリカルレンズCYbに入射するビームLBnが副走査方向に僅かに傾き、基板P上に投射されるビームLBnのスポット光SPの位置を副走査方向に僅かにシフトさせることができる。
[第4の実施の形態]
図25は、第4の実施の形態による露光装置EX(パターン描画装置)の制御装置16の構成を示すブロック図である。図25において、制御装置16を構成するポリゴン駆動制御部100、選択素子駆動制御部102、ビーム制御装置104(露光制御部116)、マーク位置検出部106、および、回転位置検出部108は、先の図9に示した構成と同じである。また、図25では、代表して、光源装置LSaからのビームLBaが走査ユニットU1に供給されている状態のみを模式的に表し、選択用光学素子AOM1、コリメートレンズCL1、ユニット側入射ミラーIM1は図20と同様に配置され、反射ミラーM10から第2のシリンドリカルレンズCYbまでの走査ユニットU1は図23と同様に構成されるものとする。本実施の形態では、走査ユニットU1内の機械光学的なビームシフターとしての平行平板HVPを所定のストロークで傾斜する為のピエゾモータ等を含むサーボ制御系DUと、下地層計測部MUとが設けられる。下地層計測部MUは、走査ユニットU1内の光検出器DT(図5参照)からの光電信号の波形変化を高速にデジタルサンプリングする回路構成を有し、重ね合せ露光の為にスポット光SPが基板P上に既に形成されている下地パターン(金属層、絶縁層、半導体層等に対応)を走査したときに発生する反射光の強度変化に基づいて、下地パターンの主走査方向や副走査方向に関する位置、或いは重ね合せ露光される新たなパターンと下地パターンとの相対的な位置誤差(重ね誤差)を計測する。下地層計測部MUで計測される計測結果、特に重ね誤差に関する情報は、図20に示した選択素子駆動制御部102内のドライブ回路102Aに印加される補正信号FSSを生成する為に利用される。このように、走査ユニットUnの各々に光検出器DT(図5参照)を設け、位置計測部としての下地層計測部MUを設けることにより、アライメント用のマークMKnが無い被露光領域(図4のデバイス形成領域)W内での重ね合せ精度の確認、或いはパターン露光中の基板Pの移動位置(デバイス形成領域Wの移動位置)を確認することができる。
平行平板HVPは、走査ユニットUnの各々に設けられているので、走査ユニットUn毎に、平行平板HVPの傾き角度ηを連続的に変化させることで、基板P上に描画されるパターンの副走査方向の寸法を微少な比率で伸縮させることができる。そのため、基板Pの長尺方向(副走査方向)に関して基板Pが部分的に伸縮している場合であっても、基板P上にアライメントマークMKnと共に形成された電子デバイスの為の下地パターン(第1層パターン)に対して第2層用のパターンを重ね合せ露光(描画)する際の重ね合せ精度を良好に維持できる。基板Pの長尺方向(副走査方向)の局所的な伸縮は、例えば、図4に示したように、基板Pの幅方向の両側に長尺方向に一定のピッチ(例えば10mm)で形成されるアライメントマークMK1、MK4を、図25に示したアライメント顕微鏡AM1mで検出することで計測できる。具体的には、図4で示したようにアライメント顕微鏡AM11、AM14によってアライメントマークMK1、MK4を撮像素子で順次撮像し、マーク位置の長尺方向の変化(マークのピッチ変化等)を、マーク位置検出部106と回転位置検出部108等によって露光制御部116で解析することで計測できる。そこで、基板Pの搬送方向の部分的な伸縮量(スケーリング誤差)に応じて、露光制御部116からサーボ制御系DUに、基板Pの副走査方向の移動位置(又は移動量)に応じて、平行平板HVPを逐次傾斜させるような制御指令を与える。これによって、パターンの描画位置を基板Pの移動位置に連動して副走査方向に徐々に調整することができ、伸縮の大きい基板Pに対する重ね合せ露光の精度低下を抑制できる。
また、平行平板HVPは、奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5と偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6との副走査方向(基板Pの搬送方向)の間隔を調整するためにも使うことができる。例えば、基板Pの搬送速度に緩やかな変動が生じた場合、その速度変動によって、奇数番の描画ラインで描画されるパターンと、偶数番の描画ラインで描画されるパターンとが副走査方向にミクロンオーダーでずれることになり、継ぎ精度が劣化する。そこで、回転ドラムDRの回転位置を計測するエンコーダENja、ENjb(図25では代表してEN1a、EN2aのみを示す)からの計測信号をカウントする回転位置検出部108によって、回転ドラムDRの回転速度の変動(基板Pの速度変動)を検出し、その変動の増減量に応じて平行平板HVPの傾きをサーボ制御系DUで駆動するようにしても良い。
さらに、平行平板HVPによる機械光学的なビームシフター(ビーム位置調整部材、第1調整部材)をスポット光SPの副走査方向への位置調整の粗調整用とし、図25に示した選択用光学素子AOM1(或いは、先の図16に示した音響光学偏向素子AODs、図17に示した電気光学素子ODn、KDn等)による電気光学的なビームシフター(ビーム位置調整部材、第2調整部材、第2調整光学部材)をスポット光SPの副走査方向への位置調整の微調整用として併用しても良い。図25のように、平行平板HVPと択用光学素子AOM1(AOMn)とを組み合わせた場合、機械光学的なビームシフターとしての平行平板HVPは、傾斜可能なストローク範囲内で基板P上のスポット光SPを副走査方向に数十画素分(例えば、±100μm程度)変位せることができ、一方、電気光学的なビームシフターとしての択用光学素子AOM1(AOMn)は、基板P上のスポット光SPを副走査方向に、例えば数画素分(スポット光SPのサイズφの数倍程度)の微少範囲で高速に変位させることができる。
選択用光学素子(音響光学偏向素子)AOMn、AODsや電気光学素子ODn、KDn等による電気光学的なビームシフターでは、図10に示した入射許可信号LPnの発生ごとに補正信号FSSの値を変えることで、スポット光SPの副走査方向の位置を1走査ごとに高速に微調整できる。そのため、微細なパターンを描画した時の描画品質、特に複数の描画ラインSLnの各々で描画されるパターンを主走査方向に継いだときの継ぎ誤差を低減することができる。本実施の形態では、一例として、図25に示した光検出器DTと下地層計測部MUを用いて、ほぼリアルタイムに継ぎ誤差の程度を計測することが可能である。例えば、図4において、描画ラインSL1と描画ラインSL2の各々によって描画されるパターンが副走査方向に継がれる場合で、基板Pに既に下地パターン(第1層パターン)が形成されていると、描画ラインSL1でパターン描画する走査ユニットU1に設けられた下地層計測部MU(図25)で計測される継ぎ部分での重ね誤差の情報と、描画ラインSL2でパターン描画する走査ユニットU2に設けられた同様の下地層計測部MUで計測される継ぎ部分での重ね誤差の情報とを比較することで、下地パターンを基準として、描画ラインSL1と描画ラインSL2の各々で描画されるパターンの副走査方向に関する継ぎ誤差を確認することができる。
図4の場合、描画ラインSL1で描画された基板P上の副走査方向の位置は、基板Pが描画ラインSL1と描画ラインSL2の副走査方向の間隔分だけ移動した後で、描画ラインSL2によって描画されので、その間隔分の移動の時間だけ時間差が生じるが、下地層計測部MUによる重ね誤差の計測を、基板Pの適当な移動量ごと(例えば1mm毎とか5mm毎)に逐次行っていけば、継ぎ誤差の傾向(誤差が大きくなったか否か)が把握できる。継ぎ誤差が大きくなるような傾向を示した場合は、その継ぎ誤差が低減されるように、走査ユニットU1と走査ユニットU2の少なくとも一方に対応して設けられている選択素子駆動制御部102内のドライブ回路102A(図20参照)に印加される補正信号FSSを、下地層計測部MUで計測される継ぎ誤差の情報に基づいて調整し、描画ラインSL1と描画ラインSL2の少なくとも一方に沿って走査されるスポット光SPの副走査方向の位置を微調整すれば良い。
〔他の変形例1〕
以上の各実施の形態や変形例では、ビームLBn(スポット光SP)を副走査方向にシフトさせる機械光学的なビームシフター(位置調整部材、第1調整部材)としての傾斜可能な平行平板Sr2、又はHVPを、走査ユニットUn内のミラーM10からポリゴンミラーPMまでの光路中に設けたが、ポリゴンミラーPMから基板Pまでの光路中に設けても良い。さらに、機械光学的なビームシフターは、ビーム切換部BDUのユニット側入射ミラーIMn(IM1〜IM6)から走査ユニットUnのミラーM10までの光路中に設けても良い。先に説明したように、機械光学的なビームシフター(第1調整部材、第1調整光学部材)は、ビームLBnのスポット光SPを比較的に大きな範囲で副走査方向にシフトできるが、機械的な精度に依存した誤差が残留し易いので、残留誤差の低減する為に電気光学的なビームシフター(第2調整部材、第2調整光学部材)を併用することができる。その場合、電気光学的なビームシフターは、光源装置LSa、LSbからのビームLBa、LBbが進む光路に沿って機械光学的なビームシフターの手前に設けるのが良い。
〔他の変形例2〕
走査ユニット(描画ユニット)Unの各々には、ビームエキスパンダーBEを構成するレンズ系Be1、Be2が先の図23に示したように、正の屈折力を有する凸レンズ系で設けられているが、図26に示すように、反射ミラーM10で反射されたビームLBnを入射するレンズ系Be1を、負の屈折力を有する凹のレンズ系Be1’に替えても良い。図26は、図23に示した走査ユニット(描画ユニット)Un内の光路のうち、反射ミラーM10から開口絞りPAまでの光路におけるビームLBnの状態を模式的に誇張して示したものである。反射ミラーM10で反射されるビームLBnは、実効的なビーム径が1mm以下の細い平行光束となって凹のレンズ系Be1’に入射する。レンズ系Be1’は、入射したビームLBnをレンズ系Be1’の焦点距離に応じて発散させながら、正の屈折力を有する凸のレンズ系Be2に入射させる。凹のレンズ系Be1’の前側焦点距離の位置と、凸のレンズ系Be2の前側焦点距離の位置とを一致させることにより、凸のレンズ系Be2から射出するビームLBnは、図23で説明したように、実効的なビーム径が拡大された平行光束となって開口絞りPAに向かう。凹のレンズ系Be1’と凸のレンズ系Be2によるビームエキスパンダーは、2つの凸のレンズ系Be1、Be2によるビームエキスパンダーに比べて、2つのレンズ系の間の物理的な距離を短くできる。
また、図23に示した走査ユニット(描画ユニット)UnのビームエキスパンダーBE内には、基板P上でスポット光SPの走査軌跡である描画ラインSLnを副走査方向(X方向)に機械光学的にシフトさせる平行平板HVPのみが設けられていた。しかしながら、描画ラインSLnの全体を主走査方向(Y方向)に微調整する為に、X方向用のシフターとしての平行平板HVPxと、Y方向用のシフターとしての平行平板HVPyとを光軸AXeに沿ってレンズ系Be1’とレンズ系Be2の間に並置しても良い。この場合、平行平板HVPxを傾ける為の回転中心軸Syと、平行平板HVPyを傾ける為の回転中心軸Sxとは、光軸AXeと直交する面(YZ面と平行)内では、互いに直交するように設定される。
〔他の変形例3〕
描画ラインSLnの全体を主走査方向(Y方向)に微調整する為の機械光学的なシフターとしての平行平板HVPyは、図27に示すように、fθレンズ系FTの後に設けても良い。図27は、図23に示した走査ユニット(描画ユニット)Un内のポリゴンミラーPMから基板Pまでの光学系配置を示したものである。fθレンズ系FTの後では、ビームLBnが主走査方向(Y方向)に走査されている為、図27のように、反射ミラーM15と第2のシリンドリカルレンズCYbとの間に平行平板HVPyを設ける場合は、平行平板HVPyをシリンドリカルレンズCYbのY方向の寸法と同程度の長さに設定する。さらに、図27の平行平板HVPyをYZ面と平行な面内で傾ける為の回転中心軸Sxは、X軸と平行に設定されると共に、反射ミラーM15で折り曲げられてZ軸と平行になったfθレンズ系FTの光軸AXfと直交するように設定される。