本発明の態様に係るパターン露光装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の基板(被照射体)Pに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、特に断わりのない限り、重力方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定し、図に示す矢印にしたがって、X方向、Y方向、およびZ方向を説明する。
デバイス製造システム10は、基板Pに所定の処理(露光処理等)を施して、電子デバイスを製造するシステム(基板処理装置)である。デバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイ、フィルム状のタッチパネル、液晶表示パネル用のフィルム状のカラーフィルター、フレキシブル配線、または、フレキシブル・センサ等を製造する製造ラインが構築された製造システムである。以下、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを前提として説明する。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等がある。デバイス製造システム10は、可撓性のシート状の基板(シート基板)Pをロール状に巻いた供給ロールFR1から基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを回収ロールFR2で巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。基板Pは、基板Pの移動方向(搬送方向)が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。第1の実施の形態においては、フィルム状の基板Pが、少なくとも処理装置(第1の処理装置)PR1、処理装置(第2の処理装置)PR2、露光装置(第3の処理装置)EX、処理装置(第4の処理装置)PR3、および、処理装置(第5の処理装置)PR4を経て、回収ロールFR2に巻き取られるまでの例を示している。
なお、本第1の実施の形態では、X方向は、水平面内において、基板Pが供給ロールFR1から回収ロールFR2に向かう方向(搬送方向)である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向(短尺方向)である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(上方向)であり、重力が働く方向と平行である。
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、デバイス製造システム10の搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
基板Pは、処理装置PR1、処理装置PR2、露光装置EX、処理装置PR3、および、処理装置PR4で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板Pを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
ところで、基板Pの可撓性(flexibility)とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、または、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本第1の実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。
処理装置PR1は、供給ロールFR1から搬送されてきた基板Pを処理装置PR2に向けて所定の速度で長尺方向に沿った搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して塗布処理を行う塗布装置である。処理装置PR1は、基板Pの表面に感光性機能液を選択的または一様に塗布する。この感光性機能液が表面に塗布された基板Pは処理装置PR2に向けて搬送される。
処理装置PR2は、処理装置PR1から搬送されてきた基板Pを露光装置EXに向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して乾燥処理を行う乾燥装置である。処理装置PR2は、熱風またはドライエアー等の乾燥用エアー(温風)を基板Pの表面に吹き付けるブロワー、赤外線光源、セラミックヒーター等によって感光性機能液に含まれる溶剤または水を除去して、感光性機能液を乾燥させる。これにより、基板Pの表面に感光性機能層(光感応層)となる膜が選択的または一様に形成される。なお、ドライフィルムを基板Pの表面に貼り付けることで、基板Pの表面に感光性機能層を形成してもよい。この場合は、処理装置PR1および処理装置PR2に代えて、ドライフィルムを基板Pに貼り付ける貼付装置(処理装置)を設ければよい。
ここで、この感光性機能液(層)の典型的なものはフォトレジスト(液状またはドライフィルム状)であるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能液(層)として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)または半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、薄膜トランジスタ(TFT)等を構成する電極、半導体、絶縁、或いは接続用の配線となるパターン層を形成することができる。感光性機能液(層)として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にしてもよい。その場合は、露光装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。本第1の実施の形態では、感光性機能液(層)として感光性還元剤が用いられる。
露光装置EXは、処理装置PR2から搬送されてきた基板Pを処理装置PR3に向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して露光処理を行う処理装置である。露光装置EXは、基板Pの表面(感光性機能層の表面、すなわち、感光面)に、電子デバイス用のパターン(例えば、電子デバイスを構成するTFTの電極や配線等のパターン)に応じた光パターンを照射する。これにより、感光性機能層に前記パターンに対応した潜像(改質部)が形成される。
本第1の実施の形態においては、露光装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置(パターン描画装置)である。後で詳細に説明するが、露光装置EXは、基板Pを+X方向(副走査の方向)に搬送しながら、露光用のパルス状のビームLB(パルスビーム)のスポット光SPを、基板Pの被照射面(感光面)上で所定の走査方向(Y方向)に1次元に走査(主走査)しつつ、スポット光SPの強度をパターンデータ(描画データ)に応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板Pの被照射面に電子デバイス、回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。つまり、基板Pの副走査と、スポット光SPの主走査とで、スポット光SPが基板Pの被照射面上で相対的に2次元走査されて、基板Pに所定のパターンが描画露光される。また、基板Pは、搬送方向(+X方向)に沿って搬送されているので、露光装置EXによってパターンが露光される露光領域Wは、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられることになる(図4参照)。この露光領域Wに電子デバイスが形成されるので、露光領域Wは、デバイス形成領域でもある。なお、電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されるので、露光装置EXによって各層に対応したパターンが露光されるようにしてもよい。
処理装置PR3は、露光装置EXから搬送されてきた基板Pを処理装置PR4に向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して湿式処理を行う湿式処理装置である。本第1の実施の形態では、処理装置PR3は、基板Pに対して湿式処理の一種であるメッキ処理を行う。つまり、基板Pを処理槽に貯蔵されたメッキ液に所定時間浸漬する。これにより、感光性機能層の表面に潜像に応じたパターン層が析出(形成)される。つまり、基板Pの感光性機能層上のスポット光SPの照射部分と非照射部分の違いに応じて、基板P上に所定の材料(例えば、パラジウム)が選択的に形成され、これがパターン層となる。
なお、感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、湿式処理の一種である液体(例えば、導電性インク等を含有した液体)の塗布処理またはメッキ処理が処理装置PR3によって行われる。この場合であっても、感光性機能層の表面に潜像に応じたパターン層が形成される。つまり、基板Pの感光性機能層のスポット光SPの照射部分と被照射部分の違いに応じて、基板P上に所定の材料(例えば、導電性インクまたはパラジウム等)が選択的に形成され、これがパターン層となる。また、感光性機能層としてフォトレジストを採用する場合は、処理装置PR3によって、湿式処理の一種である現像処理が行われる。この場合は、この現像処理によって、潜像に応じたパターンが感光性機能層(フォトレジスト)に形成される。
処理装置PR4は、処理装置PR3から搬送されてきた基板Pを回収ロールFR2に向けて所定の速度で搬送方向(+X方向)に搬送しつつ、基板Pに対して洗浄・乾燥処理を行う洗浄・乾燥装置である。処理装置PR4は、湿式処理が施された基板Pに対して純水による洗浄を行い、その後ガラス転移温度以下で、基板Pの水分含有率が所定値以下になるまで乾燥させる。
なお、感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いた場合は、処理装置PR4は、基板Pに対してアニール処理と乾燥処理を行うアニール・乾燥装置であってもよい。アニール処理は、塗布された導電性インクに含有されるナノ粒子同士の電気的な結合を強固にするために、例えば、ストロボランプからの高輝度のパルス光を基板Pに照射する。感光性機能層としてフォトレジストを採用した場合は、処理装置PR4と回収ロールFR2との間に、エッチング処理を行う処理装置(湿式処理装置)PR5と、エッチング処理が施された基板Pに対して洗浄・乾燥処理を行う処理装置(洗浄・乾燥装置)PR6とを設けてもよい。これにより、感光性機能層としてフォトレジストを採用した場合は、エッチング処理が施されることで、基板Pにパターン層が形成される。つまり、基板Pの感光性機能層のスポット光SPの照射部分と被照射部分の違いに応じて、基板P上に所定の材料(例えば、アルミニウム(Al)または銅(Cu)等)が選択的に形成され、これがパターン層となる。処理装置PR5、PR6は、送られてきた基板Pを回収ロールFR2に向けて所定の速度で基板Pを搬送方向(+X方向)に搬送する機能を有する。複数の処理装置PR1〜PR4(必要に応じて処理装置PR5、PR6も含む)が、基板Pを+X方向に搬送する機能は基板搬送装置として構成される。
このようにして、各処理が施された基板Pは回収ロールFR2によって回収される。デバイス製造システム10の少なくとも各処理を経て、1つのパターン層が基板P上に形成される。上述したように、電子デバイスは、複数のパターン層が重ね合わされることで構成されるので、電子デバイスを生成するために、図1に示すようなデバイス製造システム10の各処理を少なくとも2回は経なければならない。そのため、基板Pが巻き取られた回収ロールFR2を供給ロールFR1として別のデバイス製造システム10に装着することで、パターン層を積層することができる。そのような動作を繰り返して、電子デバイスが形成される。処理後の基板Pは、複数の電子デバイスが所定の間隔をあけて基板Pの長尺方向に沿って連なった状態となる。つまり、基板Pは、多面取り用の基板となっている。
電子デバイスが連なった状態で形成された基板Pを回収した回収ロールFR2は、図示しないダイシング装置に装着されてもよい。回収ロールFR2が装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを電子デバイス(デバイス形成領域である露光領域W)毎に分割(ダイシング)することで、複数の枚葉となった電子デバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
図2は、露光装置EXの構成を示す構成図である。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度、所定の湿度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制するとともに、基板Pの吸湿性や搬送に伴って発生する静電気の帯電等を考慮した湿度に設定される。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eからの振動を低減する。この設置面Eは、工場の床面自体であってもよいし、水平面を出すために床面上に専用に設置される設置土台(ペデスタル)上の面であってもよい。露光装置EXは、基板搬送機構12と、同一構成の2つの光源装置LS(LSa、LSb)と、ビーム切換部BDUと、露光ヘッド14と、制御装置16と、複数のアライメント顕微鏡AM1m、AM2m(なお、m=1、2、3、4)と、複数のエンコーダENja、ENjb(なお、j=1、2、3、4)とを少なくとも備えている。制御装置(制御部)16は、露光装置EXの各部を制御するものである。この制御装置16は、コンピュータとプログラムが記録された記録媒体等とを含み、該コンピュータがプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の制御装置16として機能する。
基板搬送機構12は、デバイス製造システム10の前記基板搬送装置の一部を構成するものであり、処理装置PR2から搬送される基板Pを、露光装置EX内で所定の速度で搬送した後、処理装置PR3に所定の速度で送り出す。この基板搬送機構12によって、露光装置EX内で搬送される基板Pの搬送路が規定される。基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラム)DR、テンション調整ローラRT2、駆動ローラR2、および、駆動ローラR3を有している。
エッジポジションコントローラEPCは、処理装置PR2から搬送される基板Pの幅方向(Y方向であって基板Pの短尺方向)における位置を調整する。つまり、エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションがかけられた状態で搬送されている基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションがかけられた状態で基板Pが掛け渡されるローラと、基板Pの幅方向の端部(エッジ)の位置を検出する図示しないエッジセンサ(端部検出部)とを有する。エッジポジションコントローラEPCは、前記エッジセンサが検出した検出信号に基づいて、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラをY方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。駆動ローラ(ニップローラ)R1は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを回転ドラムDRへ向けて搬送する。なお、エッジポジションコントローラEPCは、回転ドラムDRに巻き付く基板Pの長尺方向が、回転ドラムDRの中心軸AXoに対して常に直交するように、基板Pの幅方向における位置と適宜調整するとともに、基板Pの進行方向における傾き誤差を補正するように、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラの回転軸とY軸との平行度を適宜調整してもよい。
回転ドラムDRは、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸AXoと、中心軸AXoから一定半径の円筒状の外周面とを有する。回転ドラムDRは、この外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に円筒面状に湾曲させて支持(保持)しつつ、中心軸AXoを中心に回転して基板Pを+X方向に搬送する。回転ドラムDRは、露光ヘッド14からのビームLB(スポット光SP)が投射される基板P上の領域(部分)をその外周面で支持する。回転ドラムDRは、電子デバイスが形成される面(感光面が形成された側の面)とは反対側の面(裏面)側から基板Pを支持(密着保持)する。回転ドラムDRのY方向の両側には、回転ドラムDRが中心軸AXoの周りを回転するように環状のベアリングで支持されたシャフトSftが設けられている。このシャフトSftは、制御装置16によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられることで中心軸AXo回りに一定の回転速度で回転する。なお、便宜的に、中心軸AXoを含み、YZ平面と平行な平面を中心面Pocと呼ぶ。
駆動ローラ(ニップローラ)R2、R3は、基板Pの搬送方向(+X方向)に沿って所定の間隔を空けて配置されており、露光後の基板Pに所定の弛み(あそび)を与えている。駆動ローラR2、R3は、駆動ローラR1と同様に、基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを処理装置PR3へ向けて搬送する。テンション調整ローラRT1、RT2は、−Z方向に付勢されており、回転ドラムDRに巻き付けられて支持されている基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えている。これにより、回転ドラムDRにかかる基板Pに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。制御装置16は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機等)を制御することで、駆動ローラR1〜R3を回転させる。なお、駆動ローラR1〜R3の回転軸、および、テンション調整ローラRT1、RT2の回転軸は、回転ドラムDRの中心軸AXoと平行している。
光源装置LS(LSa、LSb)は、パルス状のビーム(パルスビーム、パルス光、レーザ)LBを発生して射出する。このビームLBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であり、ビームLBの発光周波数(発振周波数、所定周波数)をFaとする。光源装置LS(LSa、LSb)が射出したビームLBは、ビーム切換部BDUを介して露光ヘッド14に入射する。光源装置LS(LSa、LSb)は、制御装置16の制御にしたがって、発光周波数FaでビームLBを発光して射出する。この光源装置LS(LSa、LSb)の構成は、後で詳細に説明するが、第1の実施の形態では、赤外波長域のパルス光を発生する半導体レーザ素子、ファイバー増幅器、増幅された赤外波長域のパルス光を紫外波長域のパルス光に変換する波長変換素子(高調波発生素子)等で構成され、発振周波数Faが数百MHzで、1パルス光の発光時間がピコ秒程度の高輝度な紫外線のパルス光が得られるファイバーアンプレーザ光源(高調波レーザ光源)を用いるものとする。なお、光源装置LSaからのビームLBと、光源装置LSbからのビームLBとを区別するために、光源装置LSaからのビームLBをLBa、光源装置LSbからのビームLBをLBbで表す場合がある。
ビーム切換部BDUは、露光ヘッド14を構成する複数の走査ユニットUn(なお、n=1、2、・・・、6)のうち2つの走査ユニットUnに、2つの光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)を入射させるとともに、ビームLB(LBa、LBb)が入射する走査ユニットUnを切り換える。詳しくは、ビーム切換部BDUは、3つの走査ユニットU1〜U3のうち1つの走査ユニットUnに光源装置LSaからのビームLBaを入射させ、3つの走査ユニットU4〜U6のうち1つの走査ユニットUnに、光源装置LSbからのビームLBbを入射させる。また、ビーム切換部BDUは、ビームLBaが入射する走査ユニットUnを走査ユニットU1〜U3の中で切り換え、走査ビームLBbが入射する走査ユニットUnを走査ユニットU4〜U6の中で切り換える。
ビーム切換部BDUは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnにビームLBnが入射するように、ビームLBa、LBbが入射する走査ユニットUnを切り換える。つまり、ビーム切換部BDUは、走査ユニットU1〜U3のうち、スポット光SPの走査を行う1つの走査ユニットUnに、光源装置LSaからのビームLBaを入射させる。同様に、ビーム切換部BDUは、走査ユニットU4〜U6のうち、スポット光SPの走査を行う1つの走査ユニットUnに、光源装置LSbからのビームLBbを入射させる。このビーム切換部BDUについては後で詳細に説明する。なお、走査ユニットU1〜U3に関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが、U1→U2→U3、の順番で切り換わり、走査ユニットU4〜U6に関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが、U4→U5→U6、の順番で切り換わるものとする。
露光ヘッド14は、同一構成の複数の走査ユニットUn(U1〜U6)を配列した、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッドとなっている。露光ヘッド14は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されている基板Pの一部分に、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)によってパターンを描画する。露光ヘッド14は、基板Pに対して電子デバイス用のパターン露光を繰り返し行うことから、パターンが露光される露光領域(電子デバイス形成領域)Wは、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられている(図4参照)。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、所定の配置関係で配置されている。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、中心面Pocを挟んで基板Pの搬送方向に2列に千鳥配列で配置される。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)で、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。偶数番の走査ユニットU2、U4、U6は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)で、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して1列に配置されている。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6とは、中心面Pocに対して対称に設けられている。
各走査ユニットUn(U1〜U6)は、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBを基板Pの被照射面上でスポット光SPに収斂するように投射しつつ、そのスポット光SPを、回転するポリゴンミラーPM(図5参照)によって1次元に走査する。この各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMによって、基板Pの被照射面上でスポット光SPが1次元に走査される。このスポット光SPの走査によって、基板P上(基板Pの被照射面上)に、1ライン分のパターンが描画される直線的な描画ライン(走査線)SLn(なお、n=1、2、・・・、6)が規定される。この走査ユニットUnの構成については、後で詳しく説明する。
走査ユニットU1は、スポット光SPを描画ラインSL1に沿って走査し、同様に、走査ユニットU2〜U6は、スポット光SPを描画ラインSL2〜SL6に沿って走査する。複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、図3、図4に示すように、Y方向(基板Pの幅方向、主走査方向)に関して互いに分離することなく、継ぎ合わされるように設定されている。なお、ビーム切換部BDUを介して走査ユニットUnに入射する光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBを、LBnと表す場合がある。そして、走査ユニットU1に入射するビームLBnをLB1で表し、同様に、走査ユニットU2〜U6に入射するビームLBnをLB2〜LB6で表す場合がある。走査ユニットUnに入射するビームLBnは、所定の方向に偏光した直線偏光(P偏光またはS偏光)のビームであってもよく、本第1の実施の形態では、P偏光のビームとする。
図4に示すように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は全部で露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、走査領域を分担している。これにより、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、基板Pの幅方向に分割された複数の領域(描画範囲)毎にパターンを描画することができる。例えば、1つの走査ユニットUnによるY方向の走査長(描画ラインSLnの長さ)を20〜60mm程度とすると、奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の3個と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の3個との計6個の走査ユニットUnをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を120〜360mm程度まで広げている。各描画ラインSLn(SL1〜SL6)の長さ(描画範囲の長さ)は、原則として同一とする。つまり、描画ラインSL1〜SL6の各々に沿って走査されるビームLBnのスポット光SPの走査距離は、原則として同一とする。なお、露光領域Wの幅を広くしたい場合は、描画ラインSLn自体の長さを長くするか、Y方向に配置する走査ユニットUnの数を増やすことで対応することができる。
なお、実際の各描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、スポット光SPが被照射面上を実際に走査可能な最大の長さ(最大走査長)よりも僅かに短く設定される。例えば、主走査方向(Y方向)の描画倍率が初期値(倍率補正無し)の場合にパターン描画可能な描画ラインSLnの走査長を30mmとすると、スポット光SPの被照射面上での最大走査長は、描画ラインSLnの描画開始点(走査開始点)側と描画終了点(走査終了点)側の各々に0.5mm程度の余裕を持たせて、31mm程度に設定されている。このように設定することによって、スポット光SPの最大走査長31mmの範囲内で、30mmの描画ラインSLnの位置を主走査方向に微調整したり、描画倍率を微調整したりすることが可能となる。スポット光SPの最大走査長は31mmに限定されるものではなく、主に走査ユニットUn内のポリゴンミラー(回転ポリゴンミラー)PMの後に設けられるfθレンズFT(図5参照)の口径によって決まる。
複数の描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、中心面Pocを挟んで、回転ドラムDRの周方向に2列に千鳥配列で配置される。奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6は、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。描画ラインSL1〜SL6は、基板Pの幅方向、つまり、回転ドラムDRの中心軸AXoと略並行となっている。
描画ラインSL1、SL3、SL5は、基板Pの幅方向(主走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に1列に配置されている。描画ラインSL2、SL4、SL6も同様に、基板Pの幅方向(主走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に1列に配置されている。このとき、描画ラインSL2は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL1と描画ラインSL3との間に配置される。同様に、描画ラインSL3は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL2と描画ラインSL4との間に配置されている。描画ラインSL4は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL3と描画ラインSL5との間に配置され、描画ラインSL5は、基板Pの幅方向に関して、描画ラインSL4と描画ラインSL6との間に配置されている。
奇数番の描画ラインSL1、SL3、SL5の各々に沿って走査されるビームLB1、LB3、LB5のスポット光SPの主走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向となっている。偶数番の描画ラインSL2、SL4、SL6の各々に沿って走査されるビームLB2、LB4、LB6のスポット光SPの主走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向となっている。この描画ラインSL1、SL3、SL5に沿って走査されるビームLB1、LB3、LB5のスポット光SPの主走査方向と、描画ラインSL2、SL4、SL6に沿って走査されるビームLB2、LB4、LB6のスポット光SPの主走査方向とは互いに逆方向であってもよい。本第1の実施の形態では、描画ラインSL1、SL3、SL5に沿って走査されるビームLB1、LB3、LB5のスポット光SPの主走査方向は−Y方向である。また、描画ラインSL2、SL4、SL6に沿って走査されるビームLB2、LB4、LB6のスポット光SPの主走査方向は+Y方向である。これにより、描画ラインSL1、SL3、SL5の描画開始点側の端部と、描画ラインSL2、SL4、SL6の描画開始点側の端部とはY方向に関して隣接または一部重複する。また、描画ラインSL3、SL5の描画終了点側の端部と、描画ラインSL2、SL4の描画終了点側の端部とはY方向に関して隣接または一部重複する。Y方向に隣り合う描画ラインSLnの端部同士を一部重複させるように、各描画ラインSLnを配置する場合は、例えば、各描画ラインSLnの長さに対して、描画開始点、または描画終了点を含んでY方向に数%以下の範囲で重複させるとよい。なお、描画ラインSLnをY方向に継ぎ合わせるとは、描画ラインSLnの端部同士をY方向に関して隣接または一部重複させることを意味する。
なお、描画ラインSLnの副走査方向の幅(X方向の寸法)は、スポット光SPのサイズ(直径)φに応じた太さである。例えば、スポット光SPのサイズ(寸法)φが3μmの場合は、描画ラインSLnの幅も3μmとなる。スポット光SPは、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズφの7/8とする)だけオーバーラップするように、描画ラインSLnに沿って投射されてもよい。また、Y方向に隣り合う描画ラインSLn(例えば、描画ラインSL1と描画ラインSL2)同士を互いに継ぐ場合も、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズφの7/8)だけオーバーラップさせるのがよい。
本第1の実施の形態の場合、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)がパルス光であるため、主走査の間に描画ラインSLn上に投射されるスポット光SPは、ビームLB(LBa、LBb)の発振周波数Fa(例えば、400MHz)に応じて離散的になる。そのため、ビームLBの1パルス光によって投射されるスポット光SPと次の1パルス光によって投射されるスポット光SPとを、主走査方向にオーバーラップさせる必要がある。そのオーバーラップの量は、スポット光SPのサイズφ、スポット光SPの走査速度(主走査の速度)Vs、および、ビームLBの発振周波数Faによって設定される。スポット光SPの実効的なサイズφは、スポット光SPの強度分布がガウス分布で近似される場合、スポット光SPのピーク強度の1/e2(または1/2)で決まる。本第1の実施の形態では、実効的なサイズ(寸法)φに対して、φ×7/8程度スポット光SPがオーバーラップするように、スポット光SPの走査速度Vsおよび発振周波数Faが設定される。したがって、スポット光SPの主走査方向に沿った投射間隔は、φ/8となる。そのため、副走査方向(描画ラインSLnと直交した方向)に関しても、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1回の走査と、次の走査との間で、基板Pがスポット光SPの実効的なサイズφの略1/8の距離だけ移動するように設定することが望ましい。また、基板P上の感光性機能層への露光量の設定は、ビームLB(パルス光)のピーク値の調整で可能であるが、ビームLBの強度を上げられない状況で露光量を増大させたい場合は、スポット光SPの主走査方向の走査速度Vsの低下、ビームLBの発振周波数Faの増大、或いは基板Pの副走査方向の搬送速度Vtの低下等のいずれかによって、スポット光SPの主走査方向または副走査方向に関するオーバーラップ量を増加させればよい。スポット光SPの主走査方向の走査速度Vsは、ポリゴンミラーPMの回転数(回転速度Vp)に比例して速くなる。
各走査ユニットUn(U1〜U6)は、少なくともXZ平面において、各ビームLBnが回転ドラムDRの中心軸AXoに向かって進むように、各ビームLBnを基板Pに向けて照射する。これにより、各走査ユニットUn(U1〜U6)から基板Pに向かって進むビームLBnの光路(ビーム中心軸)は、XZ平面において、基板Pの被照射面の法線と平行となる。また、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に照射するビームLBnが、YZ平面と平行な面内では基板Pの被照射面に対して垂直となるように、ビームLBnを基板Pに向けて照射する。すなわち、被照射面でのスポット光SPの主走査方向に関して、基板Pに投射されるビームLBn(LB1〜LB6)はテレセントリックな状態で走査される。ここで、各走査ユニットUn(U1〜U6)によって規定される所定の描画ラインSLn(SL1〜SL6)の各中点を通って基板Pの被照射面と垂直な線(または光軸とも呼ぶ)を、照射中心軸Len(Le1〜Le6)と呼ぶ。
この各照射中心軸Len(Le1〜Le6)は、XZ平面において、描画ラインSL1〜SL6と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の各々の照射中心軸Le1、Le3、Le5は、XZ平面において同じ方向となっており、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の各々の照射中心軸Le2、Le4、Le6は、XZ平面において同じ方向となっている。また、照射中心軸Le1、Le3、Le5と照射中心軸Le2、Le4、Le6とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θ1となるように設定されている(図2参照)。
図2に示した複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、図4に示す基板Pに形成された複数のアライメントマークMKm(MK1〜MK4)を検出するためのものであり、Y方向に沿って複数(本第1の実施の形態では、4つ)設けられている。複数のアライメントマークMKm(MK1〜MK4)は、基板Pの被照射面上の露光領域Wに描画される所定のパターンと、基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、回転ドラムDRの外周面(円周面)で支持されている基板P上で、複数のアライメントマークMKm(MK1〜MK4)を検出する。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)は、露光ヘッド14からのビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPによる基板P上の被照射領域(描画ラインSL1〜SL6で囲まれた領域)よりも基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。また、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)は、露光ヘッド14からビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPによる基板P上の被照射領域(描画ラインSL1〜SL6で囲まれた領域)よりも基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。
アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)は、アライメント用の照明光を基板Pに投射する光源と、基板Pの表面のアライメントマークMKmを含む局所領域(観察領域)Vw1m(Vw11〜Vw14)、Vw2m(Vw21〜Vw24)の拡大像を得る観察光学系(対物レンズを含む)と、その拡大像を基板Pが搬送方向に移動している間に、基板Pの搬送速度Vtに応じた高速シャッタで撮像するCCD、CMOS等の撮像素子とを有する。複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)、AM2m(AM21〜AM24)の各々が撮像した撮像信号(画像データ)は制御装置16に送られる。制御装置16のマーク位置検出部106(図12参照)は、この送られてきた複数の撮像信号の画像解析を行うことで、基板P上のアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置(マーク位置情報)を検出する。なお、アライメント用の照明光は、基板P上の感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500〜800nm程度の光である。
複数のアライメントマークMK1〜MK4は、各露光領域Wの周りに設けられている。アライメントマークMK1、MK4は、露光領域Wの基板Pの幅方向の両側に、基板Pの長尺方向に沿って一定の間隔Dhで複数形成されている。アライメントマークMK1は、基板Pの幅方向の−Y方向側に、アライメントマークMK4は、基板Pの幅方向の+Y方向側にそれぞれ形成されている。このようなアライメントマークMK1、MK4は、基板Pが大きなテンションを受けたり、熱プロセスを受けたりして変形していない状態では、基板Pの長尺方向(X方向)に関して同一位置になるように配置される。さらに、アライメントマークMK2、MK3は、アライメントマークMK1とアライメントマークMK4の間であって、露光領域Wの+X方向側と−X方向側との余白部に基板Pの幅方向(短尺方向)に沿って形成されている。アライメントマークMK2、MK3は、露光領域Wと露光領域Wとの間に形成されている。アライメントマークMK2は、基板Pの幅方向の−Y方向側に、アライメントマークMK3は、基板Pの+Y方向側に形成されている。
さらに、基板Pの−Y方向側の端部に配列されるアライメントマークMK1と余白部のアライメントマークMK2とのY方向の間隔、余白部のアライメントマークMK2とアライメントマークMK3のY方向の間隔、および基板Pの+Y方向側の端部に配列されるアライメントマークMK4と余白部のアライメントマークMK3とのY方向の間隔は、いずれも同じ距離に設定されている。これらのアライメントマークMKm(MK1〜MK4)は、第1層のパターン層の形成の際に一緒に形成されてもよい。例えば、第1層のパターンを露光する際に、パターンが露光される露光領域Wの周りにアライメントマーク用のパターンも一緒に露光してもよい。なお、アライメントマークMKmは、露光領域W内に形成されてもよい。例えば、露光領域W内であって、露光領域Wの輪郭に沿って形成されてもよい。また、露光領域W内に形成される電子デバイスのパターン中の特定位置のパターン部分、或いは特定形状の部分をアライメントマークMKmとして利用してもよい。
アライメント顕微鏡AM11、AM21は、図4に示すように、対物レンズによる観察領域(検出領域)Vw11、Vw21内に存在するアライメントマークMK1を撮像するように配置される。同様に、アライメント顕微鏡AM12〜AM14、AM22〜AM24は、対物レンズによる観察領域Vw12〜Vw14、Vw22〜Vw24内に存在するアライメントマークMK2〜MK4を撮像するように配置される。したがって、複数のアライメント顕微鏡AM11〜AM14、AM21〜AM24は、複数のアライメントマークMK1〜MK4の位置に対応して、基板Pの−Y方向側からAM11〜AM14、AM21〜AM24、の順で基板Pの幅方向に沿って設けられている。なお、図3においては、アライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)の観察領域Vw2m(Vw21〜Vw24)の図示を省略している。
複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)は、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1〜SL6)と観察領域Vw1m(Vw11〜Vw14)との距離が、露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)も同様に、X方向に関して、露光位置(描画ラインSL1〜SL6)と観察領域Vw2m(Vw21〜Vw24)との距離が、露光領域WのX方向の長さよりも短くなるように設けられている。なお、Y方向に設けられるアライメント顕微鏡AM1m、AM2mの数は、基板Pの幅方向に形成されるアライメントマークMKmの数に応じて変更可能である。また、各観察領域Vw1m(Vw11〜Vw14)、Vw2m(Vw21〜Vw24)の基板Pの被照射面上の大きさは、アライメントマークMK1〜MK4の大きさやアライメント精度(位置計測精度)に応じて設定されるが、100〜500μm角程度の大きさである。
図3に示すように、回転ドラムDRの両端部には、回転ドラムDRの外周面の周方向の全体に亘って環状に形成された目盛を有するスケール部SDa、SDbが設けられている。このスケール部SDa、SDbは、回転ドラムDRの外周面の周方向に一定のピッチ(例えば、20μm)で凹状または凸状の格子線を刻設した回折格子であり、インクリメンタル型のスケールとして構成される。このスケール部SDa、SDbは、中心軸AXo回りに回転ドラムDRと一体に回転する。スケール部SDa、SDbを読み取るスケール読取ヘッドとしての複数のエンコーダENja、ENjb(なお、j=1、2、3、4)は、このスケール部SDa、SDbと対向するように設けられている(図2、図3参照)。なお、図3においては、エンコーダEN4a、EN4bの図示を省略している。
エンコーダENja、ENjbは、回転ドラムDRの回転角度位置を光学的に検出するものである。回転ドラムDRの−Y方向側の端部に設けられたスケール部SDaに対向して、4つのエンコーダENja(EN1a、EN2a、EN3a、EN4a)が設けられている。同様に、回転ドラムDRの+Y方向側の端部に設けられたスケール部SDbに対向して、4つのエンコーダENjb(EN1b、EN2b、EN3b、EN4b)が設けられている。
エンコーダEN1a、EN1bは、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられており、設置方位線Lx1上に配置されている(図2、図3参照)。設置方位線Lx1は、XZ平面において、エンコーダEN1a、EN1bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Lx1は、XZ平面において、各アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)の観察領域Vw1m(Vw11〜Vw14)と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。つまり、複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)も設置方位線Lx1上に配置されている。
エンコーダEN2a、EN2bは、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられており、且つ、エンコーダEN1a、EN1bより基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられている。エンコーダEN2a、EN2bは、設置方位線Lx2上に配置されている(図2、図3参照)。設置方位線Lx2は、XZ平面において、エンコーダEN2a、EN2bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。この設置方位線Lx2は、XZ平面において、照射中心軸Le1、Le3、Le5と同角度位置となって重なっている。
エンコーダEN3a、EN3bは、中心面Pocに対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、設置方位線Lx3上に配置されている(図2、図3参照)。設置方位線Lx3は、XZ平面において、エンコーダEN3a、EN3bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。この設置方位線Lx3は、XZ平面において、照射中心軸Le2、Le4、Le6と同角度位置となって重なっている。したがって、設置方位線Lx2と設置方位線Lx3とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θ1となるように設定されている(図2参照)。
エンコーダEN4a、EN4bは、エンコーダEN3a、EN3bより基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に設けられており、設置方位線Lx4上に配置されている(図2参照)。設置方位線Lx4は、XZ平面において、エンコーダEN4a、EN4bの計測用の光ビームのスケール部SDa、SDb上への投射位置(読取位置)と、中心軸AXoとを結ぶ線となっている。また、設置方位線Lx4は、XZ平面において、各アライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)の観察領域Vw2m(Vw21〜Vw24)と中心軸AXoとを結ぶ線となっている。つまり、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)も設置方位線Lx4上に配置されている。この設置方位線Lx1と設置方位線Lx4とは、XZ平面において、中心面Pocに対して角度が±θ2となるように設定されている(図2参照)。
各エンコーダENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)は、スケール部SDa、SDbに向けて計測用の光ビームを投射し、その反射光束(回折光)を光電検出することにより、パルス信号である検出信号を制御装置16に出力する。制御装置16の回転位置検出部108(図12参照)は、その検出信号(パルス信号)をカウントすることで、回転ドラムDRの回転角度位置および角度変化をサブミクロンの分解能で計測する。この回転ドラムDRの角度変化から、基板Pの搬送速度Vtも計測することができる。回転位置検出部108は、各エンコーダENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)からの検出信号をそれぞれ個別にカウントする。
具体的には、回転位置検出部108は、複数のカウンタ回路CNja(CN1a〜CN4a)、CNjb(CN1b〜CN4b)を有する。カウンタ回路CN1aは、エンコーダEN1aからの検出信号をカウントし、カウンタ回路CN1bは、エンコーダEN1bからの検出信号をカウントする。同様にして、カウンタ回路CN2a〜CN4a、CN2b〜CN4bは、エンコーダEN2a〜EN4a、EN2b〜EN4bからの検出信号をカウントする。この各カウンタ回路CNja(CN1a〜CN4a)、CNjb(CN1b〜CN4b)は、各エンコーダENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)がスケール部SDa、SDbの周方向の一部に形成された図3に示す原点マーク(原点パターン)ZZを検出すると、原点マークZZを検出したエンコーダENja、ENjbに対応するカウント値を0にリセットする。
このカウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値のいずれか一方若しくはその平均値は、設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられ、カウンタ回路CN2a、CN2bのカウント値のいずれか一方若しくは平均値は、設置方位線Lx2上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられる。同様に、カウンタ回路CN3a、CN3bのカウント値のいずれか一方若しくは平均値は、設置方位線Lx3上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられ、カウンタ回路CN4a、CN4bのカウント値のいずれか一方若しくはその平均値は、設置方位線Lx4上における回転ドラムDRの回転角度位置として用いられる。なお、回転ドラムDRの製造誤差等によって回転ドラムDRが中心軸AXoに対して偏心して回転している場合を除き、原則として、カウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値は同一となる。同様にして、カウンタ回路CN2a、CN2bのカウント値も同一となり、カウンタ回路CN3a、CN3bのカウント値、カウンタ回路CN4a、CN4bのカウント値もそれぞれ同一となる。
上述したように、アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)とエンコーダEN1a、EN1bとは、設置方位線Lx1上に配置され、アライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)とエンコーダEN4a、EN4bとは、設置方位線Lx4上に配置されている。したがって、複数のアライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)が撮像した複数の撮像信号のマーク位置検出部106の画像解析によるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置検出と、アライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間の回転ドラムDRの回転角度位置の情報(エンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値)とに基づいて、設置方位線Lx1上における基板Pの位置を高精度に計測することができる。同様に、複数のアライメント顕微鏡AM2m(AM21〜AM24)が撮像した複数の撮像信号のマーク位置検出部106の画像解析によるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置検出と、アライメント顕微鏡AM2mが撮像した瞬間の回転ドラムDRの回転角度位置の情報(エンコーダEN4a、EN4bに基づくカウント値)とに基づいて、設置方位線Lx4上における基板Pの位置を高精度に計測することができる。
また、エンコーダEN1a、EN1bからの検出信号のカウント値と、エンコーダEN2a、EN2bからの検出信号のカウント値と、エンコーダEN3a、EN3bからの検出信号のカウント値と、エンコーダEN4a、EN4bからの検出信号のカウント値は、各エンコーダENja、ENjbが原点マークZZを検出した瞬間にゼロにリセットされる。そのため、エンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)のときの、回転ドラムDRに巻き付けられている基板Pの設置方位線Lx1上における位置を第1の位置とした場合に、基板P上の第1の位置が設置方位線Lx2上の位置(描画ラインSL1、SL3、SL5の位置)まで搬送されると、エンコーダEN2a、EN2bに基づくカウント値は第1の値(例えば、100)となる。同様に、基板P上の第1の位置が設置方位線Lx3上の位置(描画ラインSL2、SL4、SL6の位置)まで搬送されると、エンコーダEN3a、EN3bに基づく検出信号のカウント値は第1の値(例えば、100)となる。同様に、基板P上の第1の位置が設置方位線Lx4上の位置まで搬送されると、エンコーダEN4a、EN4bに基づく検出信号のカウント値は第1の値(例えば、100)となる。
ところで、基板Pは、回転ドラムDRの両端のスケール部SDa、SDbより内側に巻き付けられている。図2では、スケール部SDa、SDbの外周面の中心軸AXoからの半径を、回転ドラムDRの外周面の中心軸AXoからの半径より小さく設定した。しかしながら、図3に示すように、スケール部SDa、SDbの外周面を、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの外周面と同一面となるように設定してもよい。つまり、スケール部SDa、SDbの外周面の中心軸AXoからの半径(距離)と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの外周面(被照射面)の中心軸AXoからの半径(距離)とが同一となるように設定してもよい。これにより、各エンコーダENja(EN1a〜EN4a)、ENjb(EN1b〜EN4b)は、回転ドラムDRに巻き付いた基板Pの被照射面と同じ径方向の位置でスケール部SDa、SDbを検出することができる。したがって、エンコーダENja、ENjbによる計測位置と処理位置(描画ラインSL1〜SL6)とが回転ドラムDRの径方向で異なることで生じるアッベ誤差を小さくすることができる。
ただし、被照射体としての基板Pの厚さは十数μm〜数百μmと大きく異なるため、スケール部SDa、SDbの外周面の半径と、回転ドラムDRに巻き付けられた基板Pの外周面の半径とを常に同一にすることは難しい。そのため、図3に示したスケール部SDa、SDbの場合、その外周面(スケール面)の半径は、回転ドラムDRの外周面の半径と一致するように設定される。さらに、スケール部SDa、SDbを個別の円盤で構成し、その円盤(スケール円盤)を回転ドラムDRのシャフトSftに同軸に取り付けることも可能である。その場合も、アッベ誤差が許容値内に収まる程度に、スケール円盤の外周面(スケール面)の半径と回転ドラムDRの外周面の半径とを揃えておくのがよい。
以上のことから、アライメント顕微鏡AM1m(AM11〜AM14)によって検出されたアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の基板P上の位置と、エンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値(カウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値のいずれか一方若しくは平均値)に基づいて、制御装置16によって基板Pの長尺方向(X方向)における露光領域Wの描画露光の開始位置が決定される。なお、露光領域WのX方向の長さは予め既知なので、制御装置16は、アライメントマークMKm(MK1〜MK4)を所定個数検出する度に、描画露光の開始位置として決定する。そして、露光開始位置が決定された際のエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値を第1の値(例えば、100)とした場合は、エンコーダEN2a、EN2bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)となると、基板Pの長尺方向における露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL1、SL3、SL5上に位置する。したがって、走査ユニットU1、U3、U5は、エンコーダEN2a、EN2bのカウント値に基づいて、スポット光SPの走査を開始することができる。また、エンコーダEN3a、EN3bに基づくカウント値が第1の値(例えば、100)となると、基板Pの長尺方向における露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に位置する。したがって、走査ユニットU2、U4、U6は、エンコーダEN3a、EN3bのカウント値に基づいて、スポット光SPの走査を開始することができる。
通常は、テンション調整ローラRT1、RT2が基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えることで、基板Pは、回転ドラムDRに密着しながら、回転ドラムDRの回転と一緒になって搬送される。しかし、回転ドラムDRの回転速度Vpが速かったり、テンション調整ローラRT1、RT2が基板Pに与えるテンションが低くなり過ぎたり、高くなり過ぎたりする等の理由により、基板Pの回転ドラムDRに対する滑りが発生する可能性がある。基板Pの回転ドラムDRに対する滑りが発生しない状態時においては、エンコーダEN4a、4bに基づくカウント値が、アライメントマークMKmA(ある特定のアライメントマークMKm)をアライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間のエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値(例えば、150)と同じ値になった場合は、アライメント顕微鏡AM2mによって、このアライメントマークMKmAが検出される。
しかしながら、基板Pの回転ドラムDRに対する滑りが発生している場合は、エンコーダEN4a、EN4bに基づくカウント値が、アライメントマークMKmAをアライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間のエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値(例えば、150)と同じ値となっても、アライメント顕微鏡AM2mによって、このアライメントマークMKmAが検出されない。この場合は、エンコーダEN4a、EN4bに基づくカウント値が、例えば、150を過ぎてから、アライメント顕微鏡AM2mによって、アライメントマークMKmAが検出されることになる。したがって、アライメントマークMKmAをアライメント顕微鏡AM1mが撮像した瞬間のエンコーダEN1a、EN1bに基づくカウント値と、アライメントマークMKmAをアライメント顕微鏡AM2mが撮像した瞬間のエンコーダEN4a、EN4bのカウント値とに基づいて、基板Pに対する滑り量を求めることができる。このように、このアライメント顕微鏡AM2mおよびエンコーダEN4a、EN4bを追加設置することで、基板Pの滑り量を測定することができる。
次に、図5を参照して走査ユニットUn(U1〜U6)の光学的な構成について説明する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、同一の構成を有することから、走査ユニットU1についてのみ説明し、他の走査ユニットUnについてはその説明を省略する。また、図5においては、照射中心軸Len(Le1)と平行する方向をZt方向とし、Zt方向と直交する平面上にあって、基板Pが処理装置PR2から露光装置EXを経て処理装置PR3に向かう方向をXt方向とし、Zt方向と直交する平面上であって、Xt方向と直交する方向をYt方向とする。つまり、図5のXt、Yt、Ztの3次元座標は、図2のX、Y、Zの3次元座標を、Y軸を中心にZ軸方向が照射中心軸Len(Le1)と平行となるように回転させた3次元座標である。
図5に示すように、走査ユニットU1内には、ビームLB1の入射位置から被照射面(基板P)までのビームLB1の進行方向に沿って、反射ミラーM10、ビームエキスパンダーBE、反射ミラーM11、偏光ビームスプリッタBS1、反射ミラーM12、シフト光学部材(平行平板)SR、偏向調整光学部材(プリズム)DP、フィールドアパーチャFA、反射ミラーM13、λ/4波長板QW、シリンドリカルレンズCYa、反射ミラーM14、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、反射ミラーM15、シリンドリカルレンズCYbが設けられる。さらに、走査ユニットU1内には、走査ユニットU1の描画開始可能タイミングを検出する原点センサ(原点検出器)OP1と、被照射面(基板P)からの反射光を偏光ビームスプリッタBS1を介して検出するための光学レンズ系G10および光検出器DTとが設けられる。
走査ユニットU1に入射するビームLB1は、−Zt方向に向けて進み、XtYt平面に対して45°傾いた反射ミラーM10に入射する。この走査ユニットU1に入射するビームLB1の軸線は、照射中心軸Le1と同軸になるように反射ミラーM10に入射する。反射ミラーM10は、ビームLB1を走査ユニットU1に入射させる入射光学部材として機能し、入射したビームLB1を、Xt軸と平行に設定される光軸AXaに沿って、反射ミラーM10から−Xt方向に離れた反射ミラーM11に向けて−Xt方向に反射する。したがって、光軸AXaはXtZt平面と平行な面内で照射中心軸Le1と直交する。反射ミラーM10で反射したビームLB1は、光軸AXaに沿って配置されるビームエキスパンダーBEを透過して反射ミラーM11に入射する。ビームエキスパンダーBEは、透過するビームLB1の径を拡大させる。ビームエキスパンダーBEは、集光レンズBe1と、集光レンズBe1によって収斂された後に発散するビームLB1を平行光にするコリメートレンズBe2とを有する。
反射ミラーM11は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1(光軸AXa)を偏光ビームスプリッタBS1に向けて−Yt方向に反射する。反射ミラーM11に対して−Yt方向に離れて設置されている偏光ビームスプリッタBS1の偏光分離面は、YtZt平面に対して45°傾いて配置され、P偏光のビームを反射し、P偏光と直交する方向に偏光した直線偏光(S偏光)のビームを透過するものである。走査ユニットU1に入射するビームLB1は、P偏光のビームなので、偏光ビームスプリッタBS1は、反射ミラーM11からのビームLB1を−Xt方向に反射して反射ミラーM12側に導く。
反射ミラーM12は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を、反射ミラーM12から−Zt方向に離れた反射ミラーM13に向けて−Zt方向に反射する。反射ミラーM12で反射されたビームLB1は、Zt軸と平行な光軸AXcに沿ってシフト光学部材SR、偏向調整光学部材DP、およびフィールドアパーチャ(視野絞り)FAを通過して、反射ミラーM13に入射する。シフト光学部材SRは、ビームLB1の進行方向(光軸AXc)と直交する平面(XtYt平面)内において、ビームLB1の断面内の中心位置を2次元的に調整する。シフト光学部材SRは、光軸AXcに沿って配置される2枚の石英の平行平板Sr1、Sr2で構成され、平行平板Sr1は、Xt軸回りに傾斜可能であり、平行平板Sr2は、Yt軸回りに傾斜可能である。この平行平板Sr1、Sr2がそれぞれ、Xt軸、Yt軸回りに傾斜することで、ビームLB1の進行方向と直交するXtYt平面において、ビームLB1の中心の位置を2次元に微小量シフトする。この平行平板Sr1、Sr2は、制御装置16の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
偏向調整光学部材DPは、反射ミラーM12で反射されてシフト光学部材SRを通ってきたビームLB1の光軸AXcに対する傾きを微調整するものである。偏向調整光学部材DPは、光軸AXcに沿って配置される2つの楔状のプリズムDp1、Dp2で構成され、プリズムDp1、Dp2の各々は独立して光軸AXcを中心に360°回転可能に設けられている。2つのプリズムDp1、Dp2の回転角度位置を調整することによって、反射ミラーM13に達するビームLB1の軸線と光軸AXcとの平行出し、または、基板Pの被照射面に達するビームLB1の軸線と照射中心軸Le1との平行出しが行われる。なお、2つのプリズムDp1、Dp2によって偏向調整された後のビームLB1は、ビームLB1の断面と平行な面内で横シフトしている場合があり、その横シフトは先のシフト光学部材SRによって元に戻すことができる。このプリズムDp1、Dp2は、制御装置16の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。
このように、シフト光学部材SRと偏向調整光学部材DPとを通ったビームLB1は、フィールドアパーチャFAの円形開口を透過して反射ミラーM13に達する。フィールドアパーチャFAの円形開口は、ビームエキスパンダーBEで拡大されたビームLB1の断面内の強度分布の裾野部分をカットする絞りである。フィールドアパーチャFAの円形開口を口径が調整可能な可変虹彩絞りにすると、スポット光SPの強度(輝度)を調整することができる。
反射ミラーM13は、XtYt平面に対して45°傾いて配置され、入射したビームLB1を反射ミラーM14に向けて+Xt方向に反射する。反射ミラーM13で反射したビームLB1は、λ/4波長板QWおよびシリンドリカルレンズCYaを介して反射ミラーM14に入射する。反射ミラーM14は、入射したビームLB1をポリゴンミラー(回転多面鏡、走査用偏向部材)PMに向けて反射する。ポリゴンミラーPMは、入射したビームLB1を、Xt軸と平行な光軸AXfを有するfθレンズFTに向けて+Xt方向側に反射する。ポリゴンミラーPMは、ビームLB1のスポット光SPを基板Pの被照射面上で走査するために、入射したビームLB1をXtYt平面と平行な面内で1次元に偏向(反射)する。具体的には、ポリゴンミラーPMは、Zt軸方向に延びる回転軸AXpと、回転軸AXpの周りに形成された複数の反射面RP(本実施の形態では反射面RPの数Npを8とする)とを有する。回転軸AXpを中心にこのポリゴンミラーPMを所定の回転方向に回転させることで反射面RPに照射されるパルス状のビームLB1の反射角を連続的に変化させることができる。これにより、1つの反射面RPによってビームLB1の反射方向が偏向され、基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1のスポット光SPを主走査方向(基板Pの幅方向、Yt方向)に沿って走査することができる。
つまり、1つの反射面RPによって、ビームLB1のスポット光SPを主走査方向に沿って走査することができる。このため、ポリゴンミラーPMの1回転で、基板Pの被照射面上にスポット光SPが走査される描画ラインSL1の数は、最大で反射面RPの数と同じ8本となる。ポリゴンミラーPMは、制御装置16の制御の下、回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)RMによって一定の速度で回転する。先に説明したように、描画ラインSL1の実効的な長さ(例えば、30mm)は、このポリゴンミラーPMによってスポット光SPを走査することができる最大走査長(例えば、31mm)以下の長さに設定されており、初期設定(設計上)では、最大走査長の中央に描画ラインSL1の中心点(照射中心軸Le1が通る点)が設定されている。
シリンドリカルレンズCYaは、ポリゴンミラーPMによる主走査方向(回転方向)と直交する非走査方向(Zt方向)に関して、入射したビームLB1をポリゴンミラーPMの反射面RP上に収斂する。つまり、シリンドリカルレンズCYaは、ビームLB1を反射面RP上でXtYt平面と平行な方向に延びたスリット状(長楕円状)に収斂する。母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYaと、後述のシリンドリカルレンズCYbとによって、反射面RPがZt方向に対して傾いている場合(XtYt平面の法線に対する反射面RPの傾き)があっても、その影響を抑制することができる。例えば、基板Pの被照射面上に照射されるビームLB1(描画ラインSL1)の照射位置が、ポリゴンミラーPMの各反射面RP毎の僅かな傾き誤差によってXt方向にずれることを抑制することができる。
Xt軸方向に延びる光軸AXfを有するfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって反射されたビームLB1を、XtYt平面において、光軸AXfと平行となるように反射ミラーM15に投射するテレセントリック系のスキャンレンズである。ビームLB1のfθレンズFTへの入射角θは、ポリゴンミラーPMの回転角(θ/2)に応じて変わる。fθレンズFTは、反射ミラーM15およびシリンドリカルレンズCYbを介して、その入射角θに比例した基板Pの被照射面上の像高位置にビームLB1を投射する。焦点距離をfoとし、像高位置をyとすると、fθレンズFTは、y=fo×θ、の関係(歪曲収差)を満たすように設計されている。したがって、このfθレンズFTによって、ビームLB1をYt方向(Y方向)に正確に等速で走査することが可能になる。fθレンズFTへの入射角θが0度のときに、fθレンズFTに入射したビームLB1は、光軸AXf上に沿って進む。
反射ミラーM15は、fθレンズFTからのビームLB1を、シリンドリカルレンズCYbを介して基板Pに向けて−Zt方向に反射する。fθレンズFTおよび母線がYt方向と平行となっているシリンドリカルレンズCYbによって、基板Pに投射されるビームLB1が基板Pの被照射面上で直径数μm程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPに収斂される。また、基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPは、ポリゴンミラーPMによって、Yt方向に延びる描画ラインSL1によって1次元走査される。なお、fθレンズFTの光軸AXfと照射中心軸Le1とは、同一の平面上にあり、その平面はXtZt平面と平行である。したがって、光軸AXf上に進んだビームLB1は、反射ミラーM15によって−Zt方向に反射し、照射中心軸Le1と同軸になって基板Pに投射される。本第1の実施の形態において、少なくともfθレンズFTは、ポリゴンミラーPMによって偏向されたビームLB1を基板Pの被照射面に投射する投射光学系として機能する。また、少なくとも反射部材(反射ミラーM11〜M15)および偏光ビームスプリッタBS1は、反射ミラーM10から基板PまでのビームLB1の光路を折り曲げる光路偏向部材として機能する。この光路偏向部材によって、反射ミラーM10に入射するビームLB1の入射軸と照射中心軸Le1とを略同軸にすることができる。XtZt平面に関して、走査ユニットU1内を通るビームLB1は、略U字状またはコ字状の光路を通った後、−Zt方向に進んで基板Pに投射される。
このように、基板PがX方向に搬送されている状態で、各走査ユニットUn(U1〜U6)によって、ビームLBn(LB1〜LB6)のスポット光SPを主走査方向(Y方向)に一次元に走査することで、スポット光SPを基板Pの被照射面に相対的に2次元走査することができる。
なお、一例として、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な長さを30mmとし、実効的なサイズφが3μmのスポット光SPの7/8ずつ、つまり、2.625(=3×7/8)μmずつ、オーバーラップさせながらスポット光SPを描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って基板Pの被照射面上に照射する場合は、スポット光SPは、0.375μmの間隔で照射される。したがって、1回の走査で照射されるスポット光SPの数は、80000(=30〔mm〕/0.375〔μm〕)となる。また、基板Pの副走査方向の送り速度(搬送速度)Vtを0.6048mm/secとし、副走査方向についてもスポット光SPの走査が0.375μmの間隔で行われるものとすると、描画ラインSLnに沿った1回の走査開始(描画開始)時点と次の走査開始時点との時間差Tpxは、約620μsec(=0.375〔μm〕/0.6048〔mm/sec〕)となる。この時間差Tpxは、8反射面RPのポリゴンミラーPMが1面分(45度=360度/8)だけ回転する時間である。この場合、ポリゴンミラーPMの1回転の時間が、約4.96msec(=8×620〔μsec〕)となるように設定される必要があるので、ポリゴンミラーPMの回転速度Vpは、毎秒約201.613回転(=1/4.96〔msec〕)、すなわち、約12096.8rpmに設定される。
一方、ポリゴンミラーPMの1反射面RPで反射したビームLB1が有効にfθレンズFTに入射する最大入射角度(スポット光SPの最大走査長に対応)は、fθレンズFTの焦点距離と最大走査長によっておおよそ決まってしまう。一例として、8反射面RPのポリゴンミラーPMの場合は、1反射面RP分の回転角度45度のうちで実走査に寄与する回転角度αの比率(走査効率)は、α/45度で表される。本第1の実施の形態では、実走査に寄与する回転角度αを15度とするので、走査効率は1/3(=15度/45度)となり、fθレンズFTの最大入射角は30度(光軸AXfを中心として±15度)となる。そのため、描画ラインSLnの最大走査長(例えば、31mm)分だけスポット光SPを走査するのに必要な時間Tsは、Ts=Tpx×走査効率、となり、先の数値例の場合は、時間Ts、約206.666・・・μsec(=620〔μsec〕/3)、となる。本第1の実施の形態における描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な走査長を30mmとするので、この描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1走査の走査時間Tspは、約200μsec(=206.666・・・〔μsec〕×30〔mm〕/31〔mm〕)、となる。したがって、この時間Tspの間に、80000のスポット光SP(パルス光)を照射する必要があるので、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBの発光周波数(発振周波数)Faは、Fa≒80000回/200μsec=400MHzとなる。
図5に示す原点センサOP1は、ポリゴンミラーPMの反射面RPの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始可能な所定位置にくると原点信号SZ1を発生する。言い換えるならば、原点センサOP1は、これからスポット光SPの走査を行う反射面RPの角度が所定の角度位置になったときに原点信号SZ1を発生する。ポリゴンミラーPMは、8つの反射面RPを有するので、原点センサOP1は、ポリゴンミラーPMが1回転する期間で、8回原点信号SZ1を出力することになる。この原点センサOP1が発生した原点信号SZ1は、制御装置16に送られる。原点センサOP1が原点信号SZ1を発生してから、遅延時間Td1経過後にスポット光SPの描画ラインSL1に沿った走査が開始される。つまり、この原点信号SZ1は、走査ユニットU1によるスポット光SPの描画開始タイミング(走査開始タイミング)を示す情報となっている。
原点センサOP1は、基板Pの感光性機能層に対して非感光性の波長域のレーザビームBgaを反射面RPに対して射出するビーム送光系opaと、反射面RPで反射したレーザビームBgaの反射ビームBgbを受光して原点信号SZ1を発生するビーム受光系opbとを有する。ビーム送光系opaは、図示しないが、レーザビームBgaを射出する光源と、光源が発光したレーザビームBgaを反射面RPに投射する光学部材(反射ミラーやレンズ等)とを有する。ビーム受光系opbは、図示しないが、受光した反射ビームBgbを受光して電気信号に変換する光電変換素子を含む受光部と、反射面RPで反射した反射ビームBgbを前記受光部に導く光学部材(反射ミラーやレンズ等)を有する。ビーム送光系opaとビーム受光系opbとは、ポリゴンミラーPMの回転位置が、反射面RPによるスポット光SPの走査が開始される直前の所定位置にきたときに、ビーム送光系opaが射出したレーザビームBgaの反射ビームBgbをビーム受光系opbが受光することができる位置に設けられている。なお、走査ユニットU2〜U6に設けられている原点センサOPnをOP2〜OP6で表し、原点センサOP2〜OP6で発生する原点信号SZnをSZ2〜SZ6で表す。制御装置16は、この原点信号SZn(SZ1〜SZ6)に基づいて、どの走査ユニットUnがこれからスポット光SPの走査を行うかを管理している。また、原点信号SZ2〜SZ6が発生してから、走査ユニットU2〜U6による描画ラインSL2〜SL6に沿ったスポット光SPの走査を開始するまでの遅延時間TdnをTd2〜Td6で表す場合がある。
図5に示す光検出器DTは、入射した光を光電変換する光電変換素子を有する。回転ドラムDRの表面には、予め決められた基準パターンが形成されている。この基準パターンが形成された回転ドラムDR上の部分は、ビームLB1の波長域に対して低めの反射率(10〜50%)の素材で構成され、基準パターンが形成されていない回転ドラムDR上の他の部分は、反射率が10%以下の材料または光を吸収する材料で構成される。そのため、基板Pが巻き付けられていない状態(または基板Pの透明部を通した状態)で、回転ドラムDRの基準パターンが形成された領域に走査ユニットU1からビームLB1のスポット光SPを照射すると、その反射光が、シリンドリカルレンズCYb、反射ミラーM15、fθレンズFT、ポリゴンミラーPM、反射ミラーM14、シリンドリカルレンズCYa、λ/4波長板QW、反射ミラーM13、フィールドアパーチャFA、偏向調整光学部材DP、シフト光学部材SR、および、反射ミラーM12を通過して偏光ビームスプリッタBS1に入射する。ここで、偏光ビームスプリッタBS1と基板Pとの間、具体的には、反射ミラーM13とシリンドリカルレンズCYaとの間には、λ/4波長板QWが設けられている。これにより、基板Pに照射されるビームLB1は、このλ/4波長板QWによってP偏光から円偏光のビームLB1に変換され、基板Pから偏光ビームスプリッタBS1に入射する反射光は、このλ/4波長板QWによって、円偏光からS偏光に変換される。したがって、基板Pからの反射光は偏光ビームスプリッタBS1を透過し、光学レンズ系G10を介して光検出器DTに入射する。
このとき、パルス状のビームLB1が連続して走査ユニットU1に入射される状態で、回転ドラムDRを回転して走査ユニットU1がスポット光SPを走査することで、回転ドラムDRの外周面には、スポット光SPが2次元的に照射される。したがって、回転ドラムDRに形成された基準パターンの画像を光検出器DTによって取得することができる。
具体的には、光検出器DTから出力される光電信号の強度変化を、ビームLB1(スポット光SP)のパルス発光のためのクロック信号LTC(光源装置LSで作られる)に応答して、デジタルサンプリングすることでYt方向の1次元の画像データとして取得する。さらに、描画ラインSL1上における回転ドラムDRの回転角度位置を計測するエンコーダEN2a、EN2bの計測値に応答して、副走査方向の一定距離(例えば、スポット光SPのサイズφの1/8)ごとにYt方向の1次元の画像データをXt方向に並べることにより、回転ドラムDRの表面の2次元の画像情報を所得する。制御装置16は、この取得した回転ドラムDRの基準パターンの2次元の画像情報に基づいて、走査ユニットU1の描画ラインSL1の傾きを計測する。この描画ラインSL1の傾きとは、各走査ユニットUn(U1〜U6)間における相対的な傾きであってもよく、回転ドラムDRの中心軸AXoに対する傾き(絶対的な傾き)であってもよい。なお、同様にして、各描画ラインSL2〜SL6の傾きも計測することができることはいうまでもない。
なお、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の各々が照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動(回転)することができるように、図示しない本体フレームに保持されている。この各走査ユニットUn(U1〜U6)が、照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動すると、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)も、基板Pの被照射面上で照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動する。したがって、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)は、Y方向に対して傾くことになる。各走査ユニットUn(U1〜U6)が照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動した場合であっても、各走査ユニットUn(U1〜U6)内を通過するビームLBn(LB1〜LB6)と各走査ユニットUn(U1〜U6)内の光学的な部材との相対的な位置関係は変わらない。したがって、各走査ユニットUn(U1〜U6)は、基板Pの被照射面上で回動した描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿ってスポット光SPを走査することができる。この各走査ユニットUn(U1〜U6)の照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りの回動は、制御装置16の制御の下、図示しないアクチュエータによって行われる。
そのため、制御装置16は、計測した各描画ラインSLnの傾きに応じて、走査ユニットUn(U1〜U6)を照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動させることで、複数の描画ラインSLn(SL1〜SL6)の平行状態を保つことができる。また、アライメント顕微鏡AM1m、AM2mを用いて検出したアライメントマークMKmの位置に基づいて、基板Pや露光領域Wが歪んでいる(変形している)場合は、それに応じて描画するパターンも歪ませる必要性がある。そのため、制御装置16は、基板Pや露光領域Wが歪んでいる(変形している)と判断した場合は、走査ユニットUn(U1〜U6)を照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動させることで、基板Pや露光領域Wの歪み(変形)に応じて各描画ラインSLnをY方向に対して微少に傾斜させる。その際、本実施形態においては、後で説明するように、各描画ラインSLnに沿って描画されるパターンを、指定された倍率(例えば、ppmオーダー)に応じて伸縮させるような制御、或いは、各描画ラインSLnを個別に副走査方向(図5中のXt方向)に微少にシフトさせる制御が可能となっている。
なお、走査ユニットUnの照射中心軸Lenと、走査ユニットUnが実際に回動する軸(回動中心軸)とが完全に一致していなくても、所定の許容範囲内で両者が同軸であればよい。この所定の許容範囲は、走査ユニットUnを角度θsmだけ回動させたときの実際の描画ラインSLnの描画開始点(または描画終了点)と、照射中心軸Lenと回動中心軸とが完全に一致すると仮定したときに走査ユニットUnを所定の角度θsmだけ回動させたときの設計上の描画ラインSLnの描画開始点(または描画終了点)との差分量が、スポット光SPの主走査方向に関して、所定の距離(例えば、スポット光SPのサイズφ)以内となるように設定されている。また、走査ユニットUnに実際に入射するビームLBnの光軸が、走査ユニットUnの回動中心軸と完全に一致してなくても、前記した所定の許容範囲内で同軸であればよい。
図6は、ビーム切換部BDUの構成図である。ビーム切換部BDUは、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)と、複数の集光レンズCD1〜CD6と、複数の反射ミラーM1〜M14と、複数のユニット側入射ミラーIM1〜IM6と、複数のコリメートレンズCL1〜CL6と、吸収体TR1、TR2とを有する。選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、ビームLB(LBa、LBb)に対して透過性を有するものであり、超音波信号で駆動される音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)である。これらの光学的な部材(選択用光学素子AOM1〜AOM6、集光レンズCD1〜CD6、反射ミラーM1〜M14、ユニット側入射ミラーIM1〜IM6、コリメートレンズCL1〜CL6、および、吸収体TR1、TR2)は、板状の支持部材IUBによって支持されている。この支持部材IUBは、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)の上方(+Z方向側)で、これらの光学的な部材を下方(−Z方向側)から支持する。したがって、支持部材IUBは、発熱源となる選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)と複数の走査ユニットUn(U1〜U6)との間を断熱する機能も備えている。
光源装置LSaからビームLBaは、反射ミラーM1〜M6によってその光路がつづらおり状に曲げられて、吸収体TR1まで導かれる。また、光源装置LSbからのビームLBbも同様に、反射ミラーM7〜M14によってその光路がつづらおり状に曲げられて、吸収体TR2まで導かれる。以下、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)がいずれもオフ状態(超音波信号が印加されていない状態)の場合で、詳述する。
光源装置LSaからのビームLBa(平行光束)は、Y軸と平行に+Y方向に進んで集光レンズCD1を通って反射ミラーM1に入射する。反射ミラーM1で−X方向に反射したビームLBaは、集光レンズCD1の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第1の選択用光学素子AOM1をストレートに透過し、コリメートレンズCL1によって再び平行光束にされて、反射ミラーM2に至る。反射ミラーM2で+Y方向に反射したビームLBaは、集光レンズCD2を通った後に反射ミラーM3で+X方向に反射される。
反射ミラーM3で+X方向に反射されたビームLBaは、集光レンズCD2の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第2の選択用光学素子AOM2をストレートに透過し、コリメートレンズCL2によって再び平行光束にされて、反射ミラーM4に至る。反射ミラーM4で+Y方向に反射されたビームLBaは、集光レンズCD3を通った後に反射ミラーM5で−X方向に反射される。反射ミラーM5で−X方向に反射されたビームLBaは、集光レンズCD3の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第3の選択用光学素子AOM3をストレートに透過し、コリメートレンズCL3によって再び平行光束にされて、反射ミラーM6に至る。反射ミラーM6で+Y方向に反射したビームLBaは、吸収体TR1に入射する。この吸収体TR1は、ビームLBaの外部への漏れを抑制するためにビームLBaを吸収する光トラップである。
光源装置LSbからのビームLBb(平行光束)は、Y軸と平行に+Y方向に進んで反射ミラーM13に入射し、反射ミラーM13で+X方向に反射したビームLBbは反射ミラーM14で+Y方向に反射される。反射ミラーM14で+Y方向に反射したビームLBbは、集光レンズCD4を通った後に反射ミラーM7で+X方向に反射される。反射ミラーM7で+X方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD4の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第4の選択用光学素子AOM4をストレートに透過し、コリメートレンズCL4によって再び平行光束にされて、反射ミラーM8に至る。反射ミラーM8で+Y方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD5を通った後に反射ミラーM9で−X方向に反射される。
反射ミラーM9で−X方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD5の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第5の選択用光学素子AOM5をストレートに透過し、コリメートレンズCL5によって再び平行光束にされて、反射ミラーM10に至る。反射ミラーM10で+Y方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD6を通った後に反射ミラーM11で+X方向に反射される。反射ミラーM11で+X方向に反射されたビームLBbは、集光レンズCD6の焦点位置(ビームウェスト位置)に配置された第6の選択用光学素子AOM6をストレートに透過し、コリメートレンズCL6によって再び平行光束にされて、反射ミラーM12に至る。反射ミラーM12で−Y方向に反射したビームLBbは、吸収体TR2に入射する。この吸収体TR2は、ビームLBbの外部への漏れを抑制するためにビームLBbを吸収する光トラップである。
以上のように、選択用光学素子AOM1〜AOM3は、光源装置LSaからのビームLBaを順次透過するようにビームLBaの進行方向に沿って直列に配置される。また、選択用光学素子AOM1〜AOM3は、集光レンズCD1〜CD3とコリメートレンズCL1〜CL3とによって、各選択用光学素子AOM1〜AOM3の内部にビームLBaのビームウェストが形成されるように配置される。これにより、選択用光学素子(音響光学変調素子)AOM1〜AOM3に入射するビームLBaの径を小さくして、回折効率を高くするとともに応答性を高めている。同様に、選択用光学素子AOM4〜AOM6は、光源装置LSbからのビームLBbを順次透過するようにビームLBbの進行方向に沿って直列に配置される。また、選択用光学素子AOM4〜AOM6は、集光レンズCD4〜CD6とコリメートレンズCL4〜CL6とによって、各選択用光学素子AOM4〜AOM6の内部にビームLBbのビームウェストが形成されるように配置される。これにより、選択用光学素子(音響光学変調素子)AOM4〜AOM6に入射するビームLBbの径を小さくして、回折効率を高くするとともに応答性を高めている。
各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、超音波信号(高周波信号)が印加されると、入射したビーム(0次光)LB(LBa、LBb)を、高周波の周波数に応じた回折角で回折させた1次回折光を射出ビーム(ビームLBn)として発生させるものである。本第1の実施の形態では、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から1次回折光として射出されるビームLBnをビームLB1〜LB6とし、各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、光源装置LSa、LSbからのビームLB(LBa、LBb)の光路を偏向する機能を奏するものとして扱う。ただし、実際の音響光学変調素子は、1次回折光の発生効率が0次光の80%程度であるため、各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々で偏向されたビームLBn(LB1〜LB6)は、元のビームLB(LBa、LBb)の強度よりは低下している。また、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)のいずれか1つがオン状態のとき、回折されずに直進する0次光が20%程度残存するが、それは最終的に吸収体TR1、TR2によって吸収される。
図6に示すように、複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々は、偏向された1次回折光であるビームLBn(LB1〜LB6)を、入射するビームLB(LBa、LBb)に対して−Z方向に偏向するように設置される。選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から偏向して射出するビームLBn(LB1〜LB6)は、選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の各々から所定距離だけ離れた位置に設けられたユニット側入射ミラーIM1〜IM6に投射され、そこで−Z方向に照射中心軸Le1〜Le6と同軸になるように反射される。ユニット側入射ミラーIM1〜IM6(以下、単にミラーIM1〜IM6とも呼ぶ)で反射されたビームLB1〜LB6は、支持部材IUBに形成された開口部TH1〜TH6の各々を通って、照射中心軸Le1〜Le6に沿うように走査ユニットUn(U1〜U6)の各々に入射する。
なお、選択用光学素子AOMnは、超音波によって透過部材中の所定方向に屈折率の周期的な粗密変化を生じさせる回折格子であるため、入射ビームLB(LBa、LBb)が直線偏光(P偏光かS偏光)である場合、その偏光方向と回折格子の周期方向とは、1次回折光の発生効率(回折効率)が最も高くなるように設定される。図6のように、各選択用光学素子AOMnが入射したビームLB(LBa、LBs)を−Z方向に回折偏向するように設置される場合、選択用光学素子AOMn内に生成される回折格子の周期方向も−Z方向であるので、それと整合するように光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBの偏光方向が設定(調整)される。
各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)の構成、機能、作用等は互いに同一のものを用いてもよい。複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)のオン/オフにしたがって、入射したビームLB(LBa、LBb)を回折させた回折光の発生をオン/オフする。例えば、選択用光学素子AOM1は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射した光源装置LSaからのビームLBaを回折させずに透過する。したがって、選択用光学素子AOM1を透過したビームLBaは、コリメートレンズCL1を透過して反射ミラーM2に入射する。一方、選択用光学素子AOM1は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されてオンの状態のときは、入射したビームLBaを回折させてミラーIM1に向かわせる。つまり、この駆動信号によって選択用光学素子AOM1がスイッチングする。ミラーIM1は、選択用光学素子AOM1によって回折された1次回折光であるビームLB1を選択して走査ユニットU1側に反射する。選択用のミラーIM1で反射したビームLB1は、支持部材IUBの開口部TH1を通って照射中心軸Le1に沿って走査ユニットU1に入射する。したがって、ミラーIM1は、反射したビームLB1の光軸が照射中心軸Le1と同軸となるように、入射したビームLB1を反射する。また、選択用光学素子AOM1がオンの状態のとき、選択用光学素子AOM1をストレートに透過するビームLBの0次光(入射ビームの20%程度の強度)は、その後のコリメートレンズCL1〜CL3、集光レンズCD2〜CD3、反射ミラーM2〜M6、および、選択用光学素子AOM2〜AOM3を透過して吸収体TR1に達する。
同様に、選択用光学素子AOM2、AOM3は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射したビームLBaを回折させずにコリメートレンズCL2、CL3側(反射ミラーM4、M6側)に透過する。一方、選択用光学素子AOM2、AOM3は、制御装置16からの駆動信号が印加されてオンの状態のときは、入射したビームLBaの1次回折光であるビームLB2、LB3をミラーIM2、IM3に向かわせる。このミラーIM2、IM3は、選択用光学素子AOM2、AOM3によって回折されたビームLB2、LB3を走査ユニットU2、U3側に反射する。ミラーIM2、IM3で反射したビームLB2、LB3は、支持部材IUBの開口部TH2、TH3を通って照射中心軸Le2、Le3と同軸となって走査ユニットU2、U3に入射する。
このように、制御装置16は、選択用光学素子AOM1〜AOM3の各々に印加すべき駆動信号(高周波信号)をオン/オフ(ハイ/ロー)にすることによって、選択用光学素子AOM1〜AOM3のいずれか1つをスイッチングして、ビームLBaが後続の選択用光学素子AOM2、AOM3または吸収体TR1に向かうか、偏向されたビームLB1〜LB3の1つが、対応する走査ユニットU1〜U3に向かうかを切り換える。
また、選択用光学素子AOM4は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射した光源装置LSbからのビームLBbを回折させずにコリメートレンズCL4側(反射ミラーM8側)に透過する。一方、選択用光学素子AOM4は、制御装置16からの駆動信号が印加されてオンの状態ときは、入射したビームLBbの1次回折光であるビームLB4をミラーIM4に向かわせる。このミラーIM4は、選択用光学素子AOM4によって回折されたビームLB4を走査ユニットU4側に反射する。ミラーIM4で反射したビームLB4は、照射中心軸Le4と同軸となって、支持部材IUBの開口部TH4を通って走査ユニットU4に入射する。
同様に、選択用光学素子AOM5、AOM6は、制御装置16からの駆動信号(高周波信号)が印加されずにオフの状態のときは、入射したビームLBbを回折させずにコリメートレンズCL5、CL6側(反射ミラーM10、M12側)に透過する。一方、選択用光学素子AOM5、AOM6は、制御装置16からの駆動信号が印加されてオンの状態ときは、入射したビームLBbの1次回折光であるビームLB5、LB6をミラーIM5、IM6に向かわせる。このミラーIM5、IM6は、選択用光学素子AOM5、AOM6によって回折されたビームLB5、LB6を走査ユニットU5、U6側に反射する。ミラーIM5、IM6で反射したビームLB5、LB6は、照射中心軸Le5、Le6と同軸となって、支持部材IUBの開口部TH5、TH6の各々を通って走査ユニットU5、U6に入射する。
このように、制御装置16は、選択用光学素子AOM4〜AOM6の各々に印加すべき駆動信号(高周波信号)をオン/オフ(ハイ/ロー)にすることによって、選択用光学素子AOM4〜AOM6のいずれか1つをスイッチングして、ビームLBbが後続の選択用光学素子AOM5、AOM6または吸収体TR2に向かうか、偏向されたビームLB4〜LB6の1つが、対応する走査ユニットU4〜U6に向かうかを切り換える。
以上のように、ビーム切換部BDUは、光源装置LSaからのビームLBaの進行方向に沿って直列に配置された複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3)を備えることで、ビームLBaの光路を切り換えてビームLBn(LB1〜LB3)が入射する走査ユニットUn(U1〜U3)を1つ選択することができる。したがって、光源装置LSaからのビームLBaの1次回折光であるビームLBn(LB1〜LB3)を、3つの走査ユニットUn(U1〜U3)の各々に順番に入射させることができる。例えば、走査ユニットU1にビームLB1を入射させたい場合は、制御装置16が、複数の選択用光学素子AOM1〜AOM3のうち、選択用光学素子AOM1のみをオン状態にし、走査ユニットU3にビームLB3を入射させたい場合は、選択用光学素子AOM3のみをオン状態にすればよい。
同様に、ビーム切換部BDUは、光源装置LSbからのビームLBbの進行方向に沿って直列に配置された複数の選択用光学素子AOMn(AOM4〜AOM6)を備えることで、ビームLBbの光路を切り換えてビームLBn(LB4〜LB6)が入射する走査ユニットUn(U4〜U6)を1つ選択することができる。したがって、光源装置LSbからのビームLBbの1次回折光であるビームLBn(LB4〜LB6)を、3つの走査ユニットUn(U4〜U6)の各々に順番に入射させることができる。例えば、走査ユニットU4にビームLB4を入射させたい場合は、制御装置16が、複数の選択用光学素子AOM4〜AOM6のうち、選択用光学素子AOM4のみをオン状態にし、走査ユニットU6にビームLB6を入射させたい場合は、選択用光学素子AOM6のみをオン状態にすればよい。
この複数の選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)に対応して設けられ、対応する走査ユニットUnにビームLBnを入射させるか否かを切り換えている。なお、本第1の実施の形態では、選択用光学素子AOM1〜AOM3を、第1の光学素子モジュールと呼び、選択用光学素子AOM4〜AOM6を、第2の光学素子モジュールと呼ぶ。また、第1の光学素子モジュールの選択用光学素子AOM1〜AOM3に対応する走査ユニットU1〜U3を第1の走査モジュールと呼び、第2の光学素子モジュールの選択用光学素子AOM4〜AOM6に対応する走査ユニットU4〜U6を第2の走査モジュールと呼ぶ。したがって、第1の走査モジュールのいずれか1つの走査ユニットUnと、第2の走査モジュールのいずれか1つの走査ユニットUnとで、スポット光SPの走査が並行して行われることになる。
上述したように、本第1の実施の形態では、走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの実走査に寄与する回転角度αを15度とするので、走査効率は1/3となる。したがって、例えば、1つの走査ユニットUnが1反射面RP分の角度(45度)回転する間に、スポット光SPの走査を行うことができる角度は15度となり、それ以外の角度範囲(30度)では、スポット光SPの走査を行うことはできず、その間にポリゴンミラーPMに入射するビームLBnは無駄となる。したがって、ある1つの走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの回転角度が実走査に寄与しない角度となっている間に、それ以外の他の走査ユニットUnにビームLBnを入射させることで、他の走査ユニットUnのポリゴンミラーPMによってスポット光SPの走査を行わせる。ポリゴンミラーPMの走査効率は1/3なので、ある1つの走査ユニットUnがスポット光SPを走査してから次の走査を行うまでの間に、それ以外の2つの走査ユニットUnにビームLBnを振り分けて、スポット光SPの走査を行うことが可能である。そのため、本第1の実施の形態は、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)を2つのグループ(走査モジュール)に分け、3つの走査ユニットU1〜U3を第1の走査モジュールとし、3つの走査ユニットU4〜U6を第2の走査モジュールとした。
これにより、例えば、走査ユニットU1のポリゴンミラーPMが45度(1反射面RP分)回転する間に、ビームLBn(LB1〜LB3)を3つの走査ユニットU1〜U3のいずれか1つに順番に入射させることができる。したがって、走査ユニットU1〜U3の各々は、光源装置LSaからのビームLBaを無駄にすることなく、順番にスポット光SPの走査を行うことができる。同様に、走査ユニットU4のポリゴンミラーPMが45度(1反射面RP分)回転する間に、ビームLBn(LB4〜LB6)を3つの走査ユニットU4〜U6のいずれか1つに順番に入射させることができる。したがって、走査ユニットU4〜U6は、光源装置LSbからのビームLBbを無駄にすることなく、順番にスポット光SPの走査を行うことができる。なお、各走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの間に、ポリゴンミラーPMは、丁度1反射面RP分の角度(45度)回転していることになる。
本第1の実施の形態では、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)の各々は、所定の順番でスポット光SPの走査を行うので、これに対応して、制御装置16は、各光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)を所定の順番でオンにスイッチングして、ビームLBn(LB1〜LB3、LB4〜LB6)が入射する走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)を順番に切り換える。例えば、各走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3、U4〜U6のスポット光SPの走査を行う順番が、U1→U2→U3、U4→U5→U6、となっている場合は、制御装置16は、各光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)を、AOM1→AOM2→AOM3、AOM4→AOM5→AOM6、の順番でオンにスイッチングして、ビームLBnが入射する走査ユニットUnを、U1→U2→U3、U4→U5→U6、の順番で切り換える。
なお、ポリゴンミラーPMが1反射面RP分の角度(45度)回転する間に、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)が順番にスポット光SPの走査を行うためには、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)の各ポリゴンミラーPMが、次のような条件を満たして回転する必要がある。その条件とは、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)の各ポリゴンミラーPMが、同一の回転速度Vpとなるように同期制御されるとともに、各ポリゴンミラーPMの回転角度位置(各反射面RPの角度位置)が所定の位相関係となるように同期制御される必要がある。各走査モジュールの3つの走査ユニットUnのポリゴンミラーPMの回転速度Vpが同一で回転することを同期回転と呼ぶ。
ビーム切換部BDUの各選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)は、走査ユニットUn(U1〜U6)の各々のポリゴンミラーPMによるスポット光SPの1回の走査期間の間だけ、オン状態となっていればよい。また、ポリゴンミラーPMの反射面数をNp、ポリゴンミラーPMの回転速度をVp(rpm)とすると、ポリゴンミラーPMの反射面RPの1面分の回転角度に対応した時間Tpxは、Tpx=60/(Np×Vp)〔秒〕となる。例えば、反射面数Npが8、回転速度Vp〔rpm〕が1.20968万の場合、時間Tpxは、約0.62ミリ秒となる。これは周波数に換算すると約1.6129kHz程度であり、紫外域の波長のビームLBをパターンデータ(描画データ)に応答して数十MHz程度で高速に変調するための音響光学変調素子に比べると、相当に低い応答周波数の音響光学変調素子でよいことを意味する。そのため、入射するビームLB(0次光)に対して偏向されるビームLB1〜LB6(1次回折光)の回折角が大きいものを使うことができ、選択用光学素子AOM1〜AOM6をストレートに通過するビームLBの進路に対して、偏向されたビームLB1〜LB6を分離するミラーIM1〜IM6の配置が容易になる。
図7は、光源装置(パルス光源装置、パルスレーザ装置)LSa(LSb)の構成を示す図である。ファイバーレーザ装置としての光源装置LSa(LSb)は、パルス光発生部20と、制御回路22とを備える。パルス光発生部20は、DFB半導体レーザ素子30、32、偏光ビームスプリッタ34、描画用光変調器としての電気光学素子(強度変調部)36、この電気光学素子36の駆動回路36a、偏光ビームスプリッタ38、吸収体40、励起光源42、コンバイナ44、ファイバー光増幅器46、波長変換光学素子48、50、および、複数のレンズ素子GLを有する。制御回路22は、クロック信号LTCおよび画素シフトパルスBSCを発生する信号発生部22aを有する。なお、光源装置LSaの信号発生部22aから出力される画素シフトパルスBSCと、光源装置LSbの信号発生部22aから出力される画素シフトパルスBSCとを区別するため、光源装置LSaからの画素シフトパルスBSCをBSCaで表し、光源装置LSbからの画素シフトパルスBSCをBSCbで表す場合がある。
DFB半導体レーザ素子(第1固体レーザ素子)30は、所定周波数である発振周波数Fa(例えば、400MHz)で俊鋭若しくは尖鋭のパルス状の種光(パルスビーム、ビーム)S1を発生し、DFB半導体レーザ素子(第2固体レーザ素子)32は、所定周波数である発振周波数Fa(例えば、400MHz)で緩慢(時間的にブロード)なパルス状の種光(パルスビーム、ビーム)S2を発生する。DFB半導体レーザ素子30が発生する種光S1と、DFB半導体レーザ素子32が発生する種光S2とは、発光タイミングが同期している。種光S1、S2は、ともに1パルス当たりのエネルギーは略同一であるが、偏光状態が互いに異なり、ピーク強度は種光S1の方が強い。この種光S1と種光S2とは、直線偏光の光であり、その偏光方向は互いに直交している。本第1の実施の形態では、DFB半導体レーザ素子30が発生する種光S1の偏光状態をS偏光とし、DFB半導体レーザ素子32が発生する種光S2の偏光状態をP偏光として説明する。この種光S1、S2は、赤外波長域の光である。
制御回路22は、信号発生部22aから送られてきたクロック信号LTCのクロックパルスに応答して種光S1、S2が発光するようにDFB半導体レーザ素子30、32を制御する。これにより、このDFB半導体レーザ素子30、32は、クロック信号LTCの各クロックパルス(発振周波数Fa)に応答して、所定周波数(発振周波数)Faで種光S1、S2を発光する。この制御回路22は、制御装置16によって制御される。このクロック信号LTCのクロックパルスの周期(=1/Fa)を、基準周期Taと呼ぶ。DFB半導体レーザ素子30、32で発生した種光S1、S2は、偏光ビームスプリッタ34に導かれる。
なお、この基準クロック信号となるクロック信号LTCは、詳しくは後述するが、ビットマップ状のパターンデータのメモリ回路中の行方向のアドレスを指定するためのカウンタ部CONn(CON1〜CON6)(図14参照)の各々に供給される画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)のベースとなるものである。また、信号発生部22aには、基板Pの被照射面上における描画ラインSLnの全体倍率補正を行うための全体倍率補正情報TMgと、描画ラインSLnの局所倍率補正を行うための局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)とが制御装置16から入力される。後で詳しく説明するが、これにより、基板Pの被照射面上における描画ラインSLnの長さ(走査長)を微調整することができる。この描画ラインSLnの伸縮(走査長の微調整)は、描画ラインSLnの最大走査長(例えば、31mm)の範囲内で行うことができる。なお、本第1の実施の形態での全体倍率補正とは、簡単に説明すると、描画データ上の1画素(1ビット)に含まれるスポット光の数は一定にしたまま、主走査方向に沿って投射されるスポット光SPの投射間隔(つまり、スポット光の発振周波数)を一律に微調整することで、描画ラインSLn全体の走査方向の倍率を一様に補正するものである。また、本第1の実施の形態での局所倍率補正とは、簡単に説明すると、1描画ライン上に設定される離散的な複数の補正点の各々に位置する1画素(1ビット)を対象に、その補正点の画素に含まれるべきスポット光の数を、隣接する他の画素に含まれるべきスポット光の数に対して増減させることで、基板上に描画される各補正点での画素のサイズを主走査方向に僅かに伸縮させるものである。
偏光ビームスプリッタ34は、S偏光の光を透過し、P偏光の光を反射するものであり、DFB半導体レーザ素子30が発生した種光S1と、DFB半導体レーザ素子32が発生した種光S2とを、電気光学素子36に導く。詳しくは、偏光ビームスプリッタ34は、DFB半導体レーザ素子30が発生したS偏光の種光S1を透過することで種光S1を電気光学素子36に導く。また、偏光ビームスプリッタ34は、DFB半導体レーザ素子32が発生したP偏光の種光S2を反射することで種光S2を電気光学素子36に導く。DFB半導体レーザ素子30、32、および、偏光ビームスプリッタ34は、種光S1、S2を生成するパルス光源部35を構成する。
電気光学素子(強度変調部)36は、種光S1、S2に対して透過性を有するものであり、例えば、電気光学変調器(EOM:Electro-Optic Modulator)が用いられる。電気光学素子36は、描画ビット列データSBa(SBb)のハイ/ロー状態に応答して、種光S1、S2の偏光状態を駆動回路36aによって切り換えるものである。描画ビット列データSBaは、走査ユニットU1〜U3の各々が露光すべきパターンに応じたパターンデータ(ビットパターン)に基づいて生成されるものであり、描画ビット列データSBbは、走査ユニットU4〜U6の各々が露光すべきパターンに応じたパターンデータ(ビットパターン)に基づいて生成されるものである。したがって、描画ビット列データSBaは、光源装置LSaの駆動回路36aに入力され、描画ビット列データSBbは、光源装置LSbの駆動回路36aに入力される。DFB半導体レーザ素子30、DFB半導体レーザ素子32の各々からの種光S1、S2は波長域が800nm以上と長いため、電気光学素子36として、偏光状態の切り換え応答性がGHz程度のものを使うことができる。
パターンデータ(描画データ)は、走査ユニットUn毎に設けられ、各走査ユニットUnによって描画されるパターンを、スポット光SPのサイズφに応じて設定される寸法Pxyの画素によって分割し、複数の画素の各々を前記パターンに応じた論理情報(画素データ)で表したものである。つまり、このパターンデータは、スポット光SPの主走査方向(Y方向)に沿った方向を行方向とし、基板Pの副搬送方向(X方向)に沿った方向を列方向とするように2次元に分解された複数の画素の論理情報で構成されているビットマップデータである。この画素の論理情報は、「0」または「1」の1ビットのデータである。「0」の論理情報は、基板Pに照射するスポット光SPの強度を低レベル(非描画)にすることを意味し、「1」の論理情報は、基板P上に照射するスポット光SPの強度を高レベル(描画)にすることを意味する。なお、画素の寸法Pxyの主走査方向(Y方向)の寸法をPyとし、副走査方向(X方向)の寸法をPxとする。
パターンデータの1列分の画素の論理情報は、1本分の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に対応するものである。したがって、1列分の画素の数は、基板Pの被照射面上での画素の寸法Pxyと描画ラインSLnの長さとに応じて決まる。この1画素の寸法Pxyは、スポット光SPのサイズφと同程度、或いは、それ以上に設定され、例えば、スポット光SPの実効的なサイズφが3μmの場合は、1画素の寸法Pxyは、3μm角程度以上に設定される。1列分の画素の論理情報に応じて、1本の描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って基板Pに投射されるスポット光SPの強度が変調される。この1列分の画素の論理情報をシリアルデータDLnと呼ぶ。つまり、パターンデータは、シリアルデータDLnが列方向に並んだビットマップデータである。走査ユニットU1のパターンデータのシリアルデータDLnをDL1で表し、同様に、走査ユニットU2〜U6のパターンデータのシリアルデータDLnをDL2〜DL6で表す。
また、走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)は、所定の順番でスポット光SPの走査を1回ずつ行う動作を繰り返すことから、それに対応して、走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)のパターンデータのシリアルデータDL1〜DL3(DL4〜DL6)も、所定の順番で、光源装置LSa(LSb)の駆動回路36aに出力される。この光源装置LSaの駆動回路36aに順次出力されるシリアルデータDL1〜DL3を描画ビット列データSBaと呼び、この光源装置LSbの駆動回路36aに順次出力されるシリアルデータDL4〜DL6を描画ビット列データSBbと呼ぶ。
例えば、第1の走査モジュールにおいて、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番が、U1→U2→U3、の場合は、まず、1列分のシリアルデータDL1が光源装置LSaの駆動回路36aに出力され、続いて、1列分のシリアルデータDL2が光源装置LSaの駆動回路36aに出力されるといった具合に、描画ビット列データSBaを構成する1列分のシリアルデータDL1〜DL3が、DL1→DL2→DL3、の順番で光源装置LSaの駆動回路36aに出力される。その後、次の列のシリアルデータDL1〜DL3が、DL1→DL2→DL3、の順番で描画ビット列データSBaとして光源装置LSaの駆動回路36aに出力される。同様に、第2の走査モジュールにおいて、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番が、U4→U5→U6、の場合は、まず、1列分のシリアルデータDL4が光源装置LSbの駆動回路36aに出力され、続いて、1列分のシリアルデータDL5が光源装置LSbの駆動回路36aに出力されるといった具合に、描画ビット列データSBbを構成する1列分のシリアルデータDL4〜DL6が、DL4→DL5→DL6、の順番で光源装置LSbの駆動回路36aに出力される。その後、次の列のシリアルデータDL4〜DL6が、DL4→DL5→DL6、の順番で描画ビット列データSBbとして光源装置LSbの駆動回路36aに出力される。この光源装置LSa(LSb)の駆動回路36aに描画ビット列データSBa(SBb)を出力する具体的な構成については後で詳細に説明する。
駆動回路36aに入力される描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がロー(「0」)状態のとき、電気光学素子36は種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ38に導く。一方で、駆動回路36aに入力される描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がハイ(「1」)状態のとき、電気光学素子36は入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて、つまり、偏光方向を90度変えて偏光ビームスプリッタ38に導く。このように駆動回路36aが描画ビット列データSBa(SBb)に基づいて電気光学素子36を駆動することによって、電気光学素子36は、描画ビット列データSBa(SBb)の画素の論理情報がハイ状態(「1」)のときは、S偏光の種光S1をP偏光の種光S1に変換し、P偏光の種光S2をS偏光の種光S2に変換する。
偏光ビームスプリッタ38は、P偏光の光を透過してレンズ素子GLを介してコンバイナ44に導き、S偏光の光を反射させて吸収体40に導くものである。この偏光ビームスプリッタ38を透過する光(種光)をビームLseで表す。このパルス状のビームLseの発振周波数はFaとなる。励起光源42は励起光を発生し、該発生した励起光は、光ファイバー42aを通ってコンバイナ44に導かれる。コンバイナ44は、偏光ビームスプリッタ38から照射されたビームLseと励起光とを合成して、ファイバー光増幅器46に出力する。ファイバー光増幅器46は、励起光によって励起されるレーザ媒質がドープされている。したがって、合成されたビームLseおよび励起光が伝送するファイバー光増幅器46内では、励起光によってレーザ媒質が励起されることにより、種光としてのビームLseが増幅される。ファイバー光増幅器46内にドープされるレーザ媒質としては、エルビウム(Er)、イッテルビウム(Yb)、ツリウム(Tm)等の希土類元素が用いられる。この増幅されたビームLseは、ファイバー光増幅器46の射出端46aから所定の発散角を伴って放射され、レンズ素子GLによって収斂またはコリメートされて波長変換光学素子48に入射する。
波長変換光学素子(第1の波長変換光学素子)48は、第2高調波発生(Second Harmonic Generation:SHG)によって、入射したビームLse(波長λ)を、波長がλの1/2の第2高調波に変換する。波長変換光学素子48として、疑似位相整合(Quasi Phase Matching:QPM)結晶であるPPLN(Periodically Poled LiNbO3)結晶が好適に用いられる。なお、PPLT(Periodically Poled LiTaO3)結晶等を用いることも可能である。
波長変換光学素子(第2の波長変換光学素子)50は、波長変換光学素子48が変換した第2高調波(波長λ/2)と、波長変換光学素子48によって変換されずに残留した種光(波長λ)との和周波発生(Sum Frequency Generation:SFG)により、波長がλの1/3の第3高調波を発生する。この第3高調波が、370mm以下の波長帯域(例えば、355nm)にピーク波長を有する紫外線光(ビームLB)となる。
図8に示すように、駆動回路36aに印加する描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がロー(「0」)の場合は、電気光学素子(強度変調部)36は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えずにそのまま偏光ビームスプリッタ38に導く。そのため、偏光ビームスプリッタ38を透過するビームLseは種光S2となる。したがって、光源装置LSa(LSb)から最終的に出力されるP偏光のLBa(LBb)は、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2と同じ発振プロファイル(時間特性)を有する。すなわち、この場合は、ビームLBa(LBb)は、パルスのピーク強度が低く、時間的にブロードな鈍った特性となる。ファイバー光増幅器46は、そのようなピーク強度が低い種光S2に対する増幅効率が低いため、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、露光に必要なエネルギーまで増幅されない光となる。したがって、露光という観点からみれば、実質的に光源装置LSa(LSb)はビームLBa(LBb)を射出していないのと同じ結果となる。つまり、基板Pに照射されるスポット光SPの強度は低レベルとなる。ただし、パターンの露光が行われない期間(非露光期間)では、種光S2由来の紫外域のビームLBa(LBb)が僅かな強度であっても照射され続ける。そのため、描画ラインSL1〜SL6が、長時間、基板P上の同じ位置にある状態が続く場合(例えば、搬送系のトラブルによって基板Pが停止している場合等)は、光源装置LSa(LSb)のビームLBa(LBb)の射出窓(図示略)に可動シャッタを設けて、射出窓を閉じるようにするとよい。
一方、図8に示すように、駆動回路36aに印加する描画ビット列データSBa(SBb)の1画素分の論理情報がハイ(「1」)の場合は、電気光学素子(強度変調部)36は、入射した種光S1、S2の偏光状態を変えて偏光ビームスプリッタ38に導く。そのため、偏光ビームスプリッタ38を透過するビームLseは種光S1となる。したがって、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1に由来して生成されたものとなる。DFB半導体レーザ素子30からの種光S1はピーク強度が強いため、ファイバー光増幅器46によって効率的に増幅され、光源装置LSa(LSb)から出力されるP偏光のビームLBa(LBb)は、基板Pの露光に必要なエネルギーを持つ。つまり、基板Pに照射されるスポット光SPの強度は高レベルとなる。
このように、光源装置LSa(LSb)内に、描画用光変調器としての電気光学素子36を設けたので、1つの電気光学素子(強度変調部)36を制御することで、走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)によって走査されるスポット光SPの強度を、描画すべきパターンに応じて変調させることができる。したがって、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、強度変調された描画ビームとなる。
ここで、本第1の実施の形態では、駆動回路36aに描画ビット列データSBa(DL1〜DL3)、SBb(DL4〜DL6)が印加されていない期間においても、光源装置LSa、LSbから種光S2に由来するビームLBa、LBbが射出されることになる。そのため、スポット光SPの走査が可能な最大走査長(例えば、31mm)以下の範囲内で描画ラインSLnの実効的な走査長(例えば、30mm)が設定されていたとしても、実際には、スポット光SPは、最大走査長の全範囲に亘って主走査方向に沿って走査される。ただし、描画ラインSLn以外の位置に投射されるスポット光SPの強度は低レベルである。したがって、本第1の実施の形態でいうところの描画ラインSLnとは、各シリアルデータDL1〜DL6によってスポット光SPの強度が変調されて走査される、つまり、描画される走査線のことをいう。したがって、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの走査期間と、シリアルデータDLnの各画素の論理情報が出力される期間とは略同一である。
なお、図7の構成において、DFB半導体レーザ素子32および偏光ビームスプリッタ34を省略して、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1のみを、パターンデータ(描画ビット列データSBa、SBb、または、シリアルデータDLn)に基づく電気光学素子36の偏光状態の切り換えで、ファイバー光増幅器46にバースト波状に導光することも考えられる。しかしながら、この構成を採用すると、種光S1のファイバー光増幅器46への入射周期性が描画すべきパターンに応じて大きく乱される。すなわち、ファイバー光増幅器46にDFB半導体レーザ素子30からの種光S1が入射しない状態が続いた後に、ファイバー光増幅器46に種光S1が入射すると、入射直後の種光S1は通常のときよりも大きな増幅率で増幅され、ファイバー光増幅器46からは、規定以上の大きな強度を持つビームが発生するという問題がある。そこで、本第1の実施の形態では、好ましい態様として、ファイバー光増幅器46に種光S1が入射しない期間に、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2(ピーク強度が低いブロードなパルス光)をファイバー光増幅器46に入射することで、このような問題を解決している。
また、電気光学素子36をスイッチングするようにしたが、パターンデータ(描画ビット列データSBa、SBb、または、シリアルデータDLn)に基づいて、DFB半導体レーザ素子30、32を駆動するようにしてもよい。この場合は、このDFB半導体レーザ素子30、32が、描画用光変調器(強度変調部)として機能する。つまり、制御回路22は、描画ビット列データSBa(DL1〜DL3)、SBb(DL4〜DL6)、に基づいて、DFB半導体レーザ素子30、32を制御して、所定周波数Faでパルス状に発振する種光S1、S2を選択的(択一的)に発生させる。この場合は、偏光ビームスプリッタ34、38、電気光学素子36、および吸収体40は不要となり、DFB半導体レーザ素子30、32のいずれか一方から選択的にパルス発振される種光S1、S2の一方が、直接コンバイナ44に入射する。このとき、制御回路22は、DFB半導体レーザ素子30からの種光S1と、DFB半導体レーザ素子32からの種光S2とが同時にファイバー光増幅器46に入射しないように、各DFB半導体レーザ素子30、32の駆動を制御する。すなわち、基板Pに各ビームLBnのスポット光SPを照射する場合は、種光S1のみがファイバー光増幅器46に入射するようにDFB半導体レーザ素子30を制御する。また、基板Pに各ビームLBnのスポット光SPを照射しない(スポット光SPの強度を極めて低くする)場合には、種光S2のみがファイバー光増幅器46に入射するようにDFB半導体レーザ素子32を制御する。このように、基板PにビームLBnを照射するか否かは、画素の論理情報(ハイ/ロー)に基づいて決定される。また、この場合の種光S1、S2の偏光状態はともにP偏光でよい。
ここで、光源装置LSa(LSb)は、スポット光SPの走査中に、基板Pの被照射面上の寸法Pxyの1画素に対して、スポット光SPが主走査方向に沿ってN個(本第1の実施の形態では、N=8とする)投射されるように、ビームLBa(LBb)を射出する。この光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、信号発生部22aが発生するクロック信号LTCのクロックパルスに応答して発生する。したがって、寸法Pxyの1画素に対してスポット光SPをN個(Nは2以上の整数)投射するためには、主走査方向におけるスポット光SPの基板Pに対する相対的な走査速度をVsとしたとき、信号発生部22aは、Pxy/(N×Vs)またはPy/(N×Vs)で決まる基準周期Ta(=1/Fa)でクロック信号LTCのクロックパルスを発生する必要がある。例えば、実効的な描画ラインSLnの長さを30mmとし、1回の走査時間Tspを200μsecとすると、スポット光SPの走査速度Vsは、150m/secとなる。そして、画素の寸法Pxy(PxおよびPy)がスポット光SPの実効的なサイズと同じ3μmであって、Nが8個の場合は、基準周期Ta=3μm/(8×150m/sec)=0.0025μsecとなり、その周波数Fa(=1/Ta)は、400MHzとなる。
原則として、1画素に対してN(=8)個のスポット光SPが対応するので、クロック信号LTCのクロックパルスがN個(8個)出力される度に、駆動回路36aに出力するシリアルデータDL1〜DL3(DL4〜DL6)で構成される描画ビット列データSBa(SBb)の画素の論理情報が行方向に1つシフトすることになる。図8に示すように、ある画素の画素データとして論理情報(「1」)が出力され始めてから8個のクロックパルスが出力されると、次の画素の論理情報である「0」が出力される。そして、各描画ラインSL1〜SL3(SL4〜SL6)の長さを局所的に倍率補正するために、各描画ラインSL1〜SL3(SL4〜SL6)上に離散的に等間隔に配置された補正対象となる画素(以下、補正画素)に対しては、N±m個(mは、m<Nの関係を有する1以上の整数)のスポット光SPが対応する。そのため、補正画素に対しては、N±m個のクロック信号LTCのクロックパルスが出力されると、駆動回路36aに出力する描画ビット列データSBa(SBb)の画素の論理情報が行方向に1つシフトする。例えば、Nが8、mが1の場合は、補正画素に対しては7個または9個のスポット光SPが投射される。したがって、補正画素が主走査方向に伸縮することになり、結果として描画ラインSL1〜SL3(SL4〜SL6)の各々が全体的に伸縮することになる。補正画素以外の非補正画素に対しては8個のスポット光SPが投射される。この補正画素の指定および補正画素の主走査方向における伸縮率(倍率)は、補正画素を指定するための補正位置情報Nvおよび補正画素の主走査方向における伸縮率(倍率)を示す倍率情報SCAを含む局所倍率補正情報(補正情報)CMgnに基づいて決定される。なお、倍率情報SCAは、「±m」の値を示す情報である。この局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)は、走査ユニットUn(U1〜U6)毎に設けられている。
本第1の実施の形態では、局所倍率補正を行わない場合は、1描画ラインSLn当り80000のスポット光SPが主走査方向に沿って走査され、1画素当りのスポット光SPは8個なので、1描画ラインSLn当りの画素の数(シリアルデータDLnの論理情報の数)は、10000(=80000/8)、となる。また、「N」を8、「m」を1とするので、局所倍率補正を行う場合は、補正画素に7個または9個(N±m個)のスポット光SPを照射することになるが、1描画ラインSLn当りの画素の数は10000のままなので、1描画ラインSLnで照射されるスポット光SPの数が80000より多くまたは少なくなる。例えば、伸長の場合は、補正画素に対して9つのスポット光SPを投射するので、1描画ラインSLn当り40個の補正画素が存在する場合は、1描画ラインSLnで照射されるスポット光SPの数は80040となる。また、縮小の場合は、補正画素に対して7つのスポット光SPを投射するので、1描画ラインSLn当り40個の補正画素が存在する場合は、1描画ラインSLnで照射されるスポット光SPの数は79960となる。
図9は、光源装置LSa(LSb)の補正画素を伸縮させる機能を有する信号発生部22aの構成を示す図である。信号発生部22aは、クロック発生部(発振器)60と、補正画素指定部62と、送出タイミング切換部64とを有する。このクロック発生部60、補正画素指定部62、および、送出タイミング切換部64等は、FPGA(Field Programmable Gate Array)により集約して構成することができる。
クロック発生部60は、全体倍率補正情報TMgに応じた発振周波数Faのクロック信号(基準クロック信号)LTCを発振する。本第1の実施の形態では、全体倍率補正情報TMgが0の場合に、クロック発生部60が400MHzの発振周波数Faでクロックパルス(クロック信号LTC)を発生(生成)する。したがって、この場合は、光源装置LS(LSa、LSb)は、パルス状のビームLB(LBa、LBb)を400MHzで射出する。また、本第1の実施の形態では、発振周波数Faが400MHzのときに、80000個のスポット光SPが主走査方向に沿って0.375μm間隔で照射されるようにポリゴンミラーPMの回転速度Vpが設定されているので、描画ラインSLnの走査長は30mmとなる。全体倍率補正情報TMgによって発振周波数Faが400MHzより高くなると、基板Pの被照射面上でのスポット光SPの主走査方向の投射間隔は短くなり、その結果描画ラインSLnが30mmより短くなる。逆に、全体倍率補正情報TMgによって発振周波数Faが400MHzより低くなると、基板Pの被照射面上でのスポット光SPの走査方向の投射間隔は長くなり、その結果描画ラインSLnが30mmより長くなる。このように、全体倍率補正情報TMgによって、描画ラインSLnの全体倍率を調整することができる。この全体倍率補正情報TMgに応じて基板Pの被照射面上における画素の主走査方向における寸法Pxyの長さは伸縮されるが、本第1の実施の形態では、全体倍率補正情報TMgは0(発振周波数Fa=400MHz)とするので、画素の寸法Pxyは、スポット光SPのサイズφと同程度となる。クロック発生部60が発生したクロック信号LTCは、制御回路22に送られるとともに、補正画素指定部62および送出タイミング切換部64にも送られる。
補正画素指定部62は、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って並ぶ複数の画素のうちで、特定の位置に配置される少なくとも1つの画素を補正画素として指定するものである。補正画素指定部62は、局所倍率補正情報(補正情報)CMgn(CMg1〜CMg6)の一部である補正位置情報(設定値)Nvに基づいて補正画素を指定する。局所倍率補正情報(補正情報)CMgnの補正位置情報Nvは、描画ラインSLnに沿って描画されるパターンの描画倍率(または描画ラインSLnの主走査方向における倍率)に応じて、描画ラインSLn上の等間隔に離散的な複数の位置の各々に補正画素を指定するための情報であり、補正画素と補正画素との距離間隔(等間隔)を示す情報である。これにより、補正画素指定部62は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)上の等間隔に離散的な位置に配置される複数の画素を補正画素として指定することができる。各描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って並ぶ複数の画素のうち、補正画素として指定されなかった画素は、非補正画素となるので、補正画素指定部62は、補正画素を指定することで、非補正画素も指定しているといえる。なお、「N±m」の「m」の値が一定の場合は、補正すべき描画ラインSLn(SL1〜SL6)の伸縮率が大きくなる程、指定される補正画素の数は多くなる。
送出タイミング切換部(送出タイミング制御部)64は、局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)の補正位置情報Nvに基づいて補正画素指定部62が指定した補正画素と、局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)の倍率情報SCAとに基づいて、シリアルデータDLn(DL1〜DL6)の各画素の論理情報の送出タイミングを制御する(切り換える)。つまり、描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿ってスポット光SPが走査される画素が補正画素の場合は、局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)の倍率情報SCAに基づいて補正画素が伸縮するように、駆動回路36aに送出(供給)されるシリアルデータDLnの画素の論理情報(つまり、パターンデータの行方向の画素毎の論理情報)の送出タイミングを切り換える。
詳しくは、送出タイミング切換部64は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)上の補正画素でない画素(通常画素、非補正画素)をスポット光SPが走査するタイミングでは、クロック信号LTCのクロックパルス(スポット光SP)のN個が1画素に対応し、描画ラインSLn(SL1〜SL6)上の補正画素をスポット光SPが走査するタイミングでは、クロック信号LTCのクロックパルス(スポット光SP)のN±m個が1画素に対応するように、駆動回路36aに送出されるシリアルデータDLn(DL1〜DL6)の各画素の論理情報の送出タイミングを切り換える。つまり、送出タイミング切換部64は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)上の通常画素をスポット光SPが走査するタイミングでは、クロック信号LTCのクロックパルスがN個発生すると次の画素の論理情報が駆動回路36aに出力され、描画ラインSLn(SL1〜SL6)上の補正画素をスポット光SPが走査するタイミングでは、クロック信号LTCのクロックパルスがN±m個発生すると次の画素の論理情報が駆動回路36aに出力されるように、駆動回路36aに送出されるシリアルデータDLn(DL1〜DL6)の各画素の論理情報の送出タイミングを切り換える(制御する)。この「±m」の値は、局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)の一部である倍率情報SCAに基づいて決定される。
補正画素指定部62は、ビーム切換部BDUによってビームLBnが入射する走査ユニットUnに対応した局所倍率補正情報CMgnの補正位置情報Nvを用いて、ビームLBnが入射する走査ユニットUnの描画ラインSLn上に配置される複数の補正画素を指定する。送出タイミング切換部64は、補正画素指定部62が指定したビームLBnが入射する走査ユニットUnの描画ラインSLn上の補正画素と、ビームLBnが入射する走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnの倍率情報SCAとに基づいて、ビームLBnが入射する走査ユニットUnに対応するシリアルデータDLnの各画素の論理情報の送出タイミングを切り換える。
光源装置LSaの場合は、ビーム切換部BDUの第1の光学素子モジュール(AOM1〜AOM3)によって光源装置LSaからのビームLBa(LB1〜LB3)が、第1の走査モジュール(U1〜U3)のいずれか1つの走査ユニットUnに導かれる。したがって、光源装置LSaの信号発生部22aの補正画素指定部62は、走査ユニットU1〜U3のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnの補正位置情報Nvに基づいて補正画素を指定する。また、光源装置LSaの信号発生部22aの送出タイミング切換部64は、走査ユニットU1〜U3のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnの局所倍率補正情報CMgnの倍率情報SCAと、補正画素指定部62が指定した補正画素とに基づいて、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応するシリアルデータDLnの画素毎の論理情報の送出タイミングを切り換える。例えば、走査ユニットU2にビームLB2が入射する場合は、光源装置LSaの補正画素指定部62は、走査ユニットU2に対応した局所倍率補正情報CMg2の補正位置情報Nvに基づいて、描画ラインSL2上の等間隔に離散的な位置に配置される複数の画素を補正画素として指定する。そして、光源装置LSaの信号発生部22aの送出タイミング切換部64は、補正画素指定部62が指定した描画ラインSL2上の補正画素と、局所倍率補正情報CMg2の倍率情報SCAとに基づいて、走査ユニットU2に対応したシリアルデータDL2の各画素の論理情報の送出タイミングを切り換える。
また、光源装置LSbの場合は、ビーム切換部BDUの第2の光学素子モジュール(AOM4〜AOM6)によって光源装置LSbからのビームLBb(LB4〜LB6)が、第2の走査モジュール(U4〜U6)のいずれか1つの走査ユニットUnに導かれる。したがって、光源装置LSbの信号発生部22aの補正画素指定部62は、走査ユニットU4〜U6のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnの補正位置情報Nvに基づいて補正画素を指定する。また、光源装置LSbの信号発生部22aの送出タイミング切換部64は、走査ユニットU4〜U6のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnの局所倍率補正情報CMgnの倍率情報SCAと、補正画素指定部62が指定した補正画素とに基づいて、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応するシリアルデータDLnの画素毎の論理情報の送出タイミングを切り換える。例えば、走査ユニットU6にビームLB6が入射する場合は、光源装置LSbの補正画素指定部62は、走査ユニットU6に対応した局所倍率補正情報CMg6の補正位置情報Nvに基づいて、描画ラインSL6上の等間隔に離散的な位置に配置される複数の画素を補正画素として指定する。そして、光源装置LSbの送出タイミング切換部64は、補正画素指定部62が指定した描画ラインSL6上の補正画素と、局所倍率補正情報CMg6の倍率情報SCAとに基づいて、走査ユニットU6に対応したシリアルデータDL6の各画素の論理情報の送出タイミングを切り換える。
補正画素指定部62について具体的に説明すると、補正画素指定部62は、第1の分周カウンタ回路70と遅延素子72、74とを有する。第1の分周カウンタ回路70は、減算カウンタであり、クロック信号LTCのクロックパルス(基準クロックパルス)が入力される。第1の分周カウンタ回路70は、カウント値C1が補正位置情報(設定値)Nvにプリセットされ、クロック信号LTCのクロックパルスが入力される度にカウント値C1をデクリメントする。第1の分周カウンタ回路70は、カウント値C1が0になると1パルスの一致信号Idaを出力する。つまり、第1の分周カウンタ回路70は、クロック信号LTCのクロックパルスを補正位置情報Nv分だけカウントすると一致信号Idaを出力する。この一致信号Idaは、次の1画素が補正画素であることを意味しており、第1の分周カウンタ回路70は、一致信号Idaを出力することで補正画素を指定している。一致信号Idaが出力されると、次に発生するクロックパルスに応じて発光したビームLBnのスポット光SPは、補正画素に投射される。第1の分周カウンタ回路70が出力した一致信号Idaは、遅延素子72を介して第1の分周カウンタ回路70に入力される。第1の分周カウンタ回路70は、一致信号Idaが入力されると、プリセット可能な状態になり、新たにクロック信号LTCのクロックパルスが入力されると、カウント値C1を補正位置情報(設定値)Nvにプリセットする。これにより、描画ラインSLnに沿って等間隔に補正画素を複数指定することができる。なお、補正位置情報Nvの具体的な値は、後で例示する。
この一致信号Idaは、遅延素子74を介して1パルスの設定信号Sppとして、送出タイミング切換部64に出力される。遅延素子72、74は、入力された一致信号Idaを一定時間遅延させて出力するものである。遅延素子72、74の遅延時間(一定時間)は、クロック信号LTCの基準周期Taよりも短い時間である。そうすることで、クロック信号LTCのクロックパルスが入力されてカウント値C1が0になった後、次のクロックパルスの入力と同時に第1の分周カウンタ回路70のカウント値C1を補正位置情報Nvにプリセットすることができる。また、クロック信号LTCのクロックパルスが入力されてカウント値C1が0になった後、次のクロックパルスが入力される前に設定信号Sppを送出タイミング切換部64に出力することができる。
送出タイミング切換部64について具体的に説明すると、送出タイミング切換部64は、プリセット部76、第2の分周カウンタ回路78、および、遅延素子80、82を有する。プリセット部76には、連続して発生するクロック信号LTCのクロックパルス(スポット光SP)を画素毎に区切るために、次の画素がクロック信号LTCのクロックパルス(スポット光SP)の何個分に相当するのかを示すプリセット値を出力する。このプリセット部76には、局所倍率補正情報CMgnの一部である倍率情報SCA(伸縮情報POLと伸縮率情報RECとからなる)が入力される。この伸縮情報POLは、補正画素を伸長させるか縮小させるかを示す情報であり、伸縮率情報RECは、補正画素を通常画素に対してどのくらいの割合で伸長または伸縮させるかを示す情報である。補正画素に対してはN±m個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応することは既に述べた通りであり、倍率情報SCAは、この「±m」を示す情報である。そして、「±m」の極性「±」が伸縮情報(極性情報)POLに対応し、「m」が伸縮率情報RECに対応する。1ビットの伸縮情報POLの値がハイ(論理理が「1」)の場合は、極性「+」(補正画素を伸長すること)を意味し、ロー(論理値が「0」)の場合は、極性「−」(補正画素を縮小すること)を意味している。スポット光SPの1回の走査期間中は、同一の倍率情報SCAが入力される。したがって、1描画ラインSLn上の指定された補正画素は全て同一の倍率で伸長または縮小される。なお、本第1の実施の形態では、伸縮率情報RECによってm=1に設定されるものとする。
1パルスの設定信号Sppが発生していない期間(つまり、設定信号Sppの論理値が「0」の期間)は、主走査方向に走査されているスポット光SPが通過(走査)する画素は、補正画素以外の通常の画素(通常画素)となる。したがって、通常画素に対しては、1画素に対してN(=8)個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応するため、プリセット部76は、1パルスの設定信号Sppが入力されていない期間は、「7」のプリセット値を第2の分周カウンタ回路78に出力する。一方、1パルスの設定信号Spp(論理値が「1」)が発生すると、スポット光SPがこれから通過(走査)する画素は補正画素ということになる。したがって、補正画素に対しては、1画素に対してN±m(=8±1)個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応するため、プリセット部76は、1パルスの設定信号Sppが入力されると、7±1のプリセット値を第2の分周カウンタ回路78に出力する。例えば、伸縮情報POLが「+」(伸長)の場合は、プリセット部76は、「8」のプリセット値を出力し、伸縮情報POLが「−」(縮小)の場合は、プリセット部76は、「6」のプリセット値を出力する。したがって、本第1の実施の形態におけるプリセット部76が出力するプリセット値の真理値表は、図10のように示される。
つまり、図10の真理値表に示すように、プリセット部76は、1パルスの設定信号Sppが入力されていない期間(つまり、設定信号Sppの論理値が「0」の期間)は、伸縮情報POLにかかわらず「7」のプリセット値を第2の分周カウンタ回路78に出力する。また、プリセット部76は、1パルスの設定信号Spp(論理値は「1」)が入力されると、伸縮情報POLに応じたプリセット値(「6」または「8」)を第2の分周カウンタ回路78に出力する。プリセット部76は、伸縮情報POLが「1」(伸長)の場合は、「8」のプリセット値を第2の分周カウンタ回路78に出力し、伸縮情報POLが「0」(縮小)の場合は、「6」のプリセット値を第2の分周カウンタ回路78に出力する。
第2の分周カウンタ回路78は、減算カウンタであり、クロック信号LTCのクロックパルスが入力される。第2の分周カウンタ回路78は、カウント値C2がプリセット部76から出力されたプリセット値にプリセットされ、クロック信号LTCのクロックパルスが入力される度にカウント値C2をデクリメントする。第2の分周カウンタ回路78は、カウント値C2が0になると1パルスの一致信号Idbを出力する。つまり、第2の分周カウンタ回路78は、クロック信号LTCのクロックパルスをプリセット値分だけカウントすると一致信号Idbを出力する。この一致信号Idbは、1画素の区切を示す情報であり、遅延素子82を介して画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)として出力される。この画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が発生すると、駆動回路36aに出力されるシリアルデータDLnの画素の論理情報が行方向に1つシフトされる。つまり、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が発生すると、行方向の次の画素の論理情報が駆動回路36aに入力される。画素シフトパルスBSCaが発生すると、光源装置LSaの駆動回路36aに入力されるシリアルデータDL1〜DL3の画素の論理情報が行方向に1つシフトされ、同様に、画素シフトパルスBSCbが発生すると、光源装置LSbの駆動回路36aに入力されるシリアルデータDL4〜DL6の画素の論理情報が行方向に1つシフトされる。
第2の分周カウンタ回路78が出力した一致信号Idbは、遅延素子80を介して第2の分周カウンタ回路78に入力される。第2の分周カウンタ回路78は、一致信号Idbが入力されると、プリセット可能な状態になり、新たにクロック信号LTCのクロックパルスが入力されると、カウント値C2をプリセット部76から出力されたプリセット値にプリセットする。これにより、スポット光SPが通常画素を走査するタイミングでは、クロック信号LTCのクロックパルスが8個発生すると、次の画素の論理情報が出力され、スポット光SPが補正画素を走査するタイミングでは、クロック信号LTCのクロックパルスが7個または9個発生すると、次の画素の論理情報が出力されるように、シリアルデータDLnの各画素の論理情報の送出タイミングを切り換えることができる。
なお、遅延素子80、82は、入力された一致信号Idbを一定時間遅延させて出力するものであり、その遅延時間(一定時間)は、クロック信号LTCの基準周期Taよりも短い時間である。そうすることで、クロック信号LTCのクロックパルスが入力されてカウント値C2が0になった後、次のクロックパルスの入力と同時に第2の分周カウンタ回路78のカウント値C2をプリセット部76から出力されたプリセット値にプリセットすることができる。また、クロック信号LTCのクロックパルスが入力されてカウント値C2が0になった後、次のクロックパルスが出力される前に画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)を信号発生部22aから出力することができる。
このように、クロック信号LTCのクロックパルスが補正位置情報Nv分の数だけ出力されるまでは、つまり、スポット光SPが補正画素を通過するまでは、1パルスの設定信号Sppが発生しないので、第2の分周カウンタ回路78は、カウント値C2が0になると、プリセット部76から出力されたプリセット値「7」にプリセットする。したがって、クロック信号LTCのクロックパルスが8個出力される度に、信号発生部22aから画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が出力されて、駆動回路36aに入力されるシリアルデータDLnの画素の論理情報が行方向に1つシフトされる。したがって、主走査方向に走査されているスポット光SPが補正対象でない画素(通常画素)を通過するタイミングでは、1画素に対して8つスポット光SPが投射されることになる。
そして、クロック信号LTCのクロックパルスが補正位置情報Nv分の数だけ出力される度に、つまり、スポット光SPが補正画素を通過する度に、第1の分周カウンタ回路70からの一致信号Idaに応じた1パルスの設定信号Sppがプリセット部76に入力される。そのため、第2の分周カウンタ回路78のカウント値C2は、クロック信号LTCのクロックパルスが補正位置情報Nv分の数だけ出力される度に、プリセット部76から出力される伸縮情報POLに応じたプリセット値(「6」または「8」)にプリセットされる。したがって、伸縮情報POLが「0」の場合には、第2の分周カウンタ回路78のカウント値C2は「6」のプリセット値にプリセットされるので、クロック信号LTCのクロックパルスが7個出力されると、信号発生部22aから画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が出力される。また、伸縮情報POLが「1」の場合は、第2の分周カウンタ回路78のカウント値C2は「8」のプリセット値にプリセットされるので、クロック信号LTCのクロックパルスが9個出力されると、信号発生部22aから画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が出力される。この画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が出力されると、駆動回路36aに入力されるシリアルデータDLnの画素の論理情報が行方向に1つシフトされる。したがって、主走査方向に走査されているスポット光SPが補正画素を通過するタイミングでは、1画素に対して7つまたは9つのスポット光SPが投射されることになる。その結果、描画ラインSLn上に離散的に等間隔(クロック信号LTCのクロックパルスのNv間隔)に配置された補正画素を伸縮することができる。
1描画ラインSLnの画素の数を10000とし、描画ラインSLn上に補正画素の数を等間隔に40個配置すると、250画素間隔で補正画素が配置されることになる。この場合は、補正対象以外の画素(通常画素)は、9960個となる。補正画素のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)の数が7個の場合(伸縮情報POLが「0」の場合)、1描画ラインSLnで投射されるスポット光SPの数は、79960(=80000−40、若しくは、=9960×8+40×7)となり、補正位置情報Nvは、1999(=79960/40)、となる。したがって、1描画ラインSLnで見ると、局所倍率補正がない場合の走査長(描画ラインSLnの長さ)の初期値を30mmとすると、局所倍率補正によって縮小された走査長は、40個分だけスポット光SPが照射されていないので、15μm(=3μm×1/8×40)だけ縮小されており、その倍率は、0.9995(=29.985/30)、すなわち−500ppmとなる。また、補正画素のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)の数が9個の場合(伸縮情報POLが「1」の場合)、1描画ラインSLnで投射されるスポット光SPの数は、80040(=80000+40、若しくは、=9960×8+40×9)となり、補正位置情報Nvは、2001(=80040/40)、となる。したがって、1描画ラインSLnで見ると、局所倍率補正がない場合の走査長(描画ラインSLnの長さ)の初期値を30mmとすると、局所倍率補正によって伸長された走査長は、40個分だけ余分にスポット光SPが照射されているので、15μm(=3μm×1/8×40)だけ伸長されており、その倍率は、1.0005(=30.015/30)、すなわち+500ppmとなる。なお、上述したように、クロック信号LTCのクロックパルスは、局所倍率補正の有無にかかわらず、所定周波数(発振周波数)Faで発生しているので、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの投射間隔は一定であり、本第1の実施の形態では、スポット光SPのサイズφを3μmとし、スポット光SPは主走査方向に沿って7/8ずつオーバーラップしながら投射されているものとする。つまり、スポット光SPの投射間隔は、スポット光SPのサイズφの1/8である、0.375μm、となり、補正画素での1画素当りの伸縮量も、±0.375μmとなる。
この局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)の補正位置情報(設定値)Nvは、任意に変更することができ、描画ラインSLnの倍率に応じて適宜設定される。例えば、描画ラインSLn上に位置する補正画素が1つとなるように、補正位置情報Nvを設定してもよい。全体倍率補正情報TMgによっても、描画ラインSLを伸縮させることはできるが、局所倍率補正の方がきめ細やかな微小な倍率補正を行うことができる。例えば、発振周波数Faが400MHzで描画ラインSLnの走査長(描画範囲)の初期値を30mmとした場合に、全体倍率補正情報TMgによって描画ラインSLnの走査長を15μm(比率500ppm)だけ伸縮または伸長させる場合には、発振周波数Faを、約0.2MHz(比率500ppm)だけ大きくまたは小さくしなければならず、その調整が難しい。また、調整することができたとしても、一定の遅れ(時定数)を持って調整後の発振周波数Faに切り換わるため、その間は、所望する倍率を得ることができない。さらに、描画倍率の補正比が500ppm以下、例えば数ppm〜数十ppm程度に設定される場合は、光源装置LSa(LSb)の発振周波数Faを変える全体倍率補正方式よりも、離散的な補正画素でのスポット光の数を増減する局所倍率補正方式の方が、分解能が高い補正を簡単に行える。もちろん、全体倍率補正方式と局所倍率補正方式の両方を併用すれば、大きな描画倍率の補正比に対応しつつ高分解能な補正ができるといった利点が得られる。
また、伸縮率情報RECによってmを1に設定したが、mは、m<Nの関係を有する1以上の整数であればよい。さらに、1描画ラインSLnでは補正位置情報Nvの値を一定としたが、1描画ラインSLnで、補正位置情報Nvを変更させてもよい。この場合であっても、描画ラインSLn上の離散的な位置に複数の補正画素が指定されることには変わりはないが、補正位置情報Nvを変更することで、補正画素間の間隔を不均一にすることができる。さらに、描画ラインSLnに沿ったビームの1走査毎、或いはポリゴンミラーPMの1回転毎に、描画ラインSLn上の補正画素の数は変えずに、補正画素の位置を異ならせるようにしてもよい。
なお、クロック発生部60が発生したクロック信号LTCのクロックパルスは、ゲート回路GTaを介して補正画素指定部62の第1の分周カウンタ回路70および送出タイミング切換部64の第2の分周カウンタ回路78に入力される。このゲート回路GTaは、後述する描画許可信号SQnがハイ(論理値は1)の期間に開くゲートである。つまり、第1の分周カウンタ回路70および第2の分周カウンタ回路78は、描画許可信号SQnがハイの期間中だけ、クロック信号LTCのクロックパルスをカウントすることになる。この描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)は、対応する走査ユニットUn(U1〜U6)のスポット光SPの走査による描画を許可するか否かを示す信号であり、ハイの期間中だけ描画が許可される。つまり、この描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)がハイの期間中だけ、対応する走査ユニットUn(U1〜U6)のスポット光SPが描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って走査されつつ、シリアルデータDLn(DL1〜DL6)に基づいてその強度が変調される。
そのため、光源装置LSaのゲート回路GTaには、走査ユニットU1〜U3に対応する3つの描画許可信号SQ1〜SQ3が印加される。光源装置LSaのゲート回路GTaは、描画許可信号SQ1〜SQ3のいずれかがハイ(H)の期間に入力されたクロック信号LTCのクロックパルスを出力する。同様に、光源装置LSbのゲート回路GTaには、走査ユニットU4〜U6に対応する3つの描画許可信号SQ4〜SQ6が印加される。光源装置LSbのゲート回路GTaは、描画許可信号SQ4〜SQ6のいずれかがハイ(H)の期間に入力されたクロック信号LTCのクロックパルスを出力する。上述したように、描画ラインSLnとは、スポット光SPが主走査方向に沿って走査される最大走査長の範囲内で、シリアルデータDLnによって強度変調される範囲のことを意味している。このように、描画許可信号SQnがハイの期間中だけ、クロック信号LTCのクロックパルスをカウントすることで、第1の分周カウンタ回路70は、描画ラインSLn上に位置する補正画素を正確に指定することができ、第2の分周カウンタ回路78は、描画ラインSL上に位置する画素を正確に区切ることができる。
図11は、クロック信号LTCの各クロックパルス、第2の分周カウンタ回路78のカウント値C2、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)の出力タイミング、駆動回路36aに入力されるシリアルデータDLnの画素の論理情報の切換タイミングを示すタイムチャートである。なお、図11では、便宜上、クロック信号LTCのクロックパルスに応答して発生するビームLBのスポット光SPのサイズφを、画素の寸法Pxyに対して極めて小さく表示している。図11に示すように、第2の分周カウンタ回路78は、クロック信号LTCのクロックパルスが入力される度にカウント値C2をデクリメントし、そのカウント値C2が0になると一致信号Idb(図示略)を出力する。この一致信号Idbに応じて画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が出力される。この画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)は、カウント値C2が0になったクロックパルスから次のクロックパルスが入力されるまでの間に出力される。この画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)に応じて、駆動回路36aに入力されるシリアルデータDLnの画素の論理情報が行方向に1つシフトされる。つまり、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が出力されると、次の行の画素の論理情報が駆動回路36aに出力されることになる。図11では、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)の出力に応じて、「0」→「1」→「1」→「0」の順で画素の論理情報が切り換えられた例を示している。
図示しないが、第1の分周カウンタ回路70は、クロック信号LTCのクロックパルスが入力される度にカウント値C1をデクリメントし、そのカウント値C1が0になると一致信号Idaを出力する。この一致信号Idaに応じて設定信号Spp(値は「1」)が発生し、プリセット部76に入力される。第1の分周カウンタ回路70は、一致信号Idaを出力した後、新たにクロック信号LTCのクロックパルスが入力されると、カウント値C1を補正位置情報Nvにプリセットする。
第2の分周カウンタ回路78は、カウント値C2が0になると、次のクロック信号LTCのクロックパルスの入力と同時に、カウント値C2をプリセット部76から出力されたプリセット値にプリセットする。このプリセット部76は、設定信号Spp(値が「1」)が発生してない場合は、「7」のプリセット値を出力する。そのため、1パルスの設定信号Sppが発生していない期間(設定信号Sppの論理値が「0」の期間)では、クロック信号LTCのクロックパルスが8個発生する度に信号発生部22aから画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が出力される。したがって、1パルスの設定信号Sppが発生されていない期間では、1画素(通常画素)に対して8つのスポット光SPが主走査方向に沿って投射されることになる。
一方で、設定信号Spp(値が「1」)がプリセット部76に入力されると(第1の分周カウンタ回路70のカウント値C1が「0」になると)、プリセット部76からのプリセット値は、伸縮情報POLに応じた値(「6」または「8」)となる。そのため、1パルスの設定信号Spp(論理値が「1」)が発生すると、クロック信号LTCのクロックパルスが7個または9個発生したあと信号発生部22aから画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が出力される。したがって、1パルスの設定信号Sppが発生すると、1画素(補正画素)に対して7つまたは9つのスポット光SPが主走査方向に沿って投射されることになる。図11に示す例では、設定信号Sppが発生すると、プリセット値は「6」に設定されているので、クロックパルスが7個発生すると、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が出力されている。その後は、第1の分周カウンタ回路70のカウント値C1が再び0になるまでは、設定信号Sppの論理値は「0」のままなので、第2の分周カウンタ回路78のカウント値C2のプリセット値は「7」に戻される。
なお、補正画素指定部62および送出タイミング切換部64を信号発生部22aの内部に設けるようにしたが、補正画素指定部62および送出タイミング切換部64を、制御回路22の内部であって、信号発生部22aの外に設けるようにしてもよいし、補正画素指定部62および送出タイミング切換部64を制御回路22の外に設けるようにしてもよい。この場合は、補正画素指定部62および送出タイミング切換部64を、後述するビーム制御装置104の内部(例えば、描画データ出力部114の内部)に設けるようにしてもよい。
図12は、露光装置EXの電気的な構成を示すブロック図である。露光装置EXの制御装置16は、ポリゴン駆動制御部100、選択素子駆動制御部102、ビーム制御装置104、マーク位置検出部106、および、回転位置検出部108を有する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)の原点センサOPn(OP1〜OP6)が出力した原点信号SZn(SZ1〜SZ6)は、ポリゴン駆動制御部100および選択素子駆動制御部102に入力される。なお、図12に示す例では、光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)が選択用光学素子AOM2(AOM5)によって回折され、その1次回折光であるビームLB2(LB5)が走査ユニットU2(U5)に入射している状態を示している。
ポリゴン駆動制御部100は、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転を駆動制御する。ポリゴン駆動制御部100は、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMを駆動させる回転駆動源(モータや減速機等)RMを有し、このモータの回転を駆動制御することで、ポリゴンミラーPMの回転を駆動制御する。ポリゴン駆動制御部100は、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のポリゴンミラーPMの回転角度位置が所定の位相関係となるように、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のポリゴンミラーPMの各々を同期回転させる。詳しくは、ポリゴン駆動制御部100は、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のポリゴンミラーPMの回転速度(回転数)Vpが互いに同一で、且つ、一定の角度分ずつ回転角度位置の位相がずれるように、複数の走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転を制御する。なお、各走査ユニットUn(U1〜U6)のポリゴンミラーPMの回転速度Vpは、全て同一とする。
本第1の実施の形態では、上述したように、実走査に寄与するポリゴンミラーPMの回転角度αを15度とするので、反射面RPが8つの八角形のポリゴンミラーPMの走査効率は1/3となる。第1の走査モジュールでは、3つの走査ユニットUnによるスポット光SPの走査が、U1→U2→U3、の順番で行われる。したがって、この順番で、この3つの走査ユニットU1〜U3の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が15度ずつずれた状態で等速回転するように、走査ユニットU1〜U3の各々のポリゴンミラーPMがポリゴン駆動制御部100によって同期制御される。また、第2の走査モジュールでは、3つの走査ユニットUnによるスポット光SPの走査が、U4→U5→U6、の順番で行われる。したがって、この順番で、3つの走査ユニットU4〜U6の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が15度ずつずれた状態で等速回転するように、走査ユニットU4〜U6の各々のポリゴンミラーPMがポリゴン駆動制御部100によって同期制御される。
具体的には、図13に示すように、ポリゴン駆動制御部100は、例えば、第1の走査モジュールに関しては、走査ユニットU1の原点センサOP1からの原点信号SZ1を基準にして、走査ユニットU2の原点センサOP2からの原点信号SZ2が時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU2のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。ポリゴン駆動制御部100は、原点信号SZ1を基準にして、走査ユニットU3の原点センサOP3からの原点信号SZ3が2×時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU3のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。この時間Tsは、ポリゴンミラーPMが15度回転する時間(スポット光SPの最大走査時間)であり、本第1の実施の形態では、約206.666・・・μsec(=Tpx×1/3=620〔μsec〕/3)である。これにより、各走査ユニットU1〜U3の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相差が、U1、U2、U3の順番で15度ずつずれた状態となる。したがって、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3は、U1→U2→U3の順番で、スポット光SPの走査を行うことができる。
第2の走査モジュールに関しても同様に、ポリゴン駆動制御部100は、例えば、走査ユニットU4の原点センサOP4からの原点信号SZ4を基準にして、走査ユニットU5の原点センサOP5からの原点信号SZ5が時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU5のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。ポリゴン駆動制御部100は、原点信号SZ4を基準にして、走査ユニットU6の原点センサOP6からの原点信号SZ6が2×時間Tsだけ遅れて発生するように、走査ユニットU6のポリゴンミラーPMの回転位相を制御する。これにより、各走査ユニットU4〜U6の各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置の位相が、U4、U5、U6の順番で15度ずつずれた状態となる。したがって、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U4〜U6)は、U4→U5→U6の順番で、スポット光SPの走査を行うことができる。
選択素子駆動制御部(ビーム切換駆動制御部)102は、ビーム切換部BDUの各光学素子モジュールの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)を制御して、各走査モジュールの1つの走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでに、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLB(LBa、LBb)を、各走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)に順番に振り分ける。なお、1つの走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでに、ポリゴンミラーPMは45度回転しており、その時間間隔は、時間Tpx(=3×Ts)となる。
具体的には、選択素子駆動制御部102は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生すると、原点信号SZnが発生してから一定時間(オン時間Ton)だけ、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)を発生した走査ユニットUn(U1〜U6)に対応する選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)に駆動信号(高周波信号)HFn(HF1〜HF6)を印加する。これにより、駆動信号(高周波信号)HFnが印加された選択用光学素子AOMnは、オン時間Tonだけオン状態となり、対応する走査ユニットUnにビームLBnを入射させることができる。また、原点信号SZnを発生した走査ユニットUnにビームLBnを入射させるので、スポット光SPの走査を行うことができる走査ユニットUnにビームLBnを入射させることができる。なお、このオン時間Tonは、時間Ts以下の時間である。
第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3で発生する原点信号SZ1〜SZ3は、時間Ts間隔で、SZ1→SZ2→SZ3、の順で発生する。そのため、第1の光学素子モジュールの各選択用光学素子AOM1〜AOM3には、時間Ts間隔で、AOM1→AOM2→AOM3、の順番で駆動信号(高周波信号)HF1〜HF3がオン時間Tonだけ印加される。したがって、第1の光学素子モジュール(AOM1〜AOM3)は、光源装置LSaからのビームLBn(LB1〜LB3)が入射する1つの走査ユニットUnを時間Ts間隔で、U1→U2→U3、の順番で切り換えることができる。これにより、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが時間Ts間隔で、U1→U2→U3、の順番で切り換わることになる。また、走査ユニットU1がスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの時間(Tpx=3×Ts)に、光源装置LSaからのビームLBn(LB1〜LB3)を3つの走査ユニットUn(U1〜U3)のいずれか1つに順番に入射させることができる。
同様に、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットU4〜U6で発生する原点信号SZ4〜SZ6は、時間Ts間隔で、SZ4→SZ5→SZ6、の順で発生する。そのため第2の光学素子モジュールの各選択用光学素子AOM4〜AOM6には、時間Ts間隔で、AOM4→AOM5→AOM6、の順番で駆動信号(高周波信号)HF4〜HF6がオン時間Tonだけ印加される。したがって、第2の光学素子モジュール(AOM4〜AOM6)は、光源装置LSbからのビームLBn(LB4〜LB6)が入射する1つの走査ユニットUnを時間Ts間隔で、U4→U5→U6、の順番で切り換えることができる。これにより、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnが時間Ts間隔で、U4→U5→U6、の順番で切り換わることになる。また、走査ユニットU4がスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの時間(Tpx=3×Ts)に、光源装置LSbからのビームLBn(LB4〜LB6)を3つの走査ユニットUn(U4〜U6)のいずれか1つに順番に入射させることができる。
選択素子駆動制御部102についてさらに詳しく説明すると、選択素子駆動制御部102は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生すると、図13に示すように、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生してから一定時間(オン時間Ton)だけH(ハイ)になる複数の入射許可信号LPn(LP1〜LP6)を生成する。この複数の入射許可信号LPn(LP1〜LP6)は、対応する選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)をオン状態にすることを許可する信号である。つまり、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)は、対応する走査ユニットUn(U1〜U6)へのビームLBn(LB1〜LB6)の入射を許可する信号である。そして、選択素子駆動制御部102は、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)がH(ハイ)になっているオン時間Tonだけ、対応する選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)に駆動信号(高周波信号)HFn(HF1〜HF6)を印加して、対応する選択用光学素子AOMnをオン状態(1次回折光を発生する状態)にする。例えば、選択素子駆動制御部102は、入射許可信号LP1〜LP3がH(ハイ)になっている一定時間Tonだけ、対応する選択用光学素子AOM1〜AOM3に駆動信号HF1〜HF3を印加する。これにより、光源装置LSaからのビームLB1〜LB3が、対応する走査ユニットU1〜U3に入射する。また、選択素子駆動制御部102は、入射許可信号LP4〜LP6がH(ハイ)になっている一定時間Tonだけ、対応する選択用光学素子AOM4〜AOM6に駆動信号(高周波信号)HF4〜HF6を印加する。これにより、光源装置LSbからのビームLB4〜LB6が、対応する走査ユニットU4〜U6に入射する。
図13に示すように、第1の光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOM1〜AOM3に対応する入射許可信号LP1〜LP3は、H(ハイ)になる立ち上がりタイミングが、LP1→LP2→LP3、の順で時間Tsずつずれており、且つ、H(ハイ)になるオン時間Tonが互いに重複することはない。したがって、ビームLBn(LB1〜LB3)が入射する走査ユニットUnは、時間Ts間隔で、U1→U2→U3、の順で切り換わる。同様に、第2の光学素子モジュールの3つの選択用光学素子AOM4〜AOM6に対応する入射許可信号LP4〜LP6は、H(ハイ)になる立ち上がりタイミングが、LP4→LP5→LP6、の順で時間Tsずつずれており、且つ、H(ハイ)になるオン時間Tonが互いに重複することはない。したがって、ビームLBn(LB4〜LB6)が入射する走査ユニットUnは、時間Ts間隔で、U4→U5→U6、の順で切り換わる。選択素子駆動制御部102は、生成した複数の入射許可信号LPn(LP1〜LP6)を、ビーム制御装置104に出力する。
ビーム制御装置(ビーム制御部)104は、ビームLB(LBa、LBb、LBn)の発光周波数Fa、ビームLBのスポット光SPが描画される描画ラインSLnの倍率、および、ビームLBの強度変調を制御するものである。ビーム制御装置104は、全体倍率設定部110、局所倍率設定部112、描画データ出力部114、および、露光制御部116を備える。全体倍率設定部(全体倍率補正情報記憶部)110は、露光制御部116から送られてきた全体倍率補正情報TMgを記憶するとともに、全体倍率補正情報TMgを光源装置LS(LSa、LSb)の制御回路22の信号発生部22aに出力する。信号発生部22aのクロック発生部60は、この全体倍率補正情報TMgに応じた発振周波数Faのクロック信号LTCを生成する。
局所倍率設定部(局所倍率補正情報記憶部、補正情報記憶部)112は、露光制御部116から送られてきた局所倍率補正情報(補正情報)CMgnを記憶するとともに、局所倍率補正情報CMgnを光源装置LS(LSa、LSb)の制御回路22の信号発生部22aに出力する。この局所倍率補正情報CMgnに基づいて、描画ラインSLn上の補正画素の位置が指定(特定)され、その倍率が決定される。制御回路22の信号発生部22aは、この局所倍率補正情報CMgに基づいて決定した補正画素、および、その倍率に応じて、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)を出力する。なお、局所倍率設定部112は、露光制御部116から送られてきた走査ユニットUn(U1〜U6)毎の局所倍率補正情報CMgn(CMg1〜CMg6)を記憶する。そして、局所倍率設定部112は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnを光源装置LS(LSa、LSb)の信号発生部22aに出力する。つまり、局所倍率設定部112は、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)を発生した走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnを、該走査ユニットUnに入射するビームLBnの発生源となる光源装置LSa(LSa、LSb)の信号発生部22aに出力する。
例えば、原点信号SZnを発生した走査ユニットUn(つまり、これからスポット光SPの走査を行う走査ユニットUn)が、走査ユニットU1〜U3のいずれかである場合は、局所倍率設定部112は、原点信号SZnを発生した走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnを、光源装置LSaの信号発生部22aに出力する。同様に、原点信号SZnを発生した走査ユニットUnが、走査ユニットU4〜U6のいずれかである場合は、局所倍率設定部112は、原点信号SZnを発生した走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgnを、光源装置LSbの信号発生部22aに出力する。これにより、走査モジュール毎に、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)に対応する画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が、光源装置LS(LSa、LSb)の送出タイミング切換部64から出力される。これにより、描画ラインSLn毎に個別に走査長を調整することができる。
描画データ出力部114は、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U1〜U3)のうち、原点信号SZnを発生した走査ユニットUn(これからスポット光SPの走査を行う走査ユニットUn)に対応する1列分のシリアルデータDLnを描画ビット列データSBaとして光源装置LSaの駆動回路36aに出力する。また、描画データ出力部114は、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットUn(U4〜U6)のうち、原点信号SZnを発生した走査ユニットUn(これからスポット光SPの走査を行う走査ユニットUn)に対応する1列分のシリアルデータDLn(DL4〜DL6)を描画ビット列データSBbとして光源装置LSbの駆動回路36aに出力する。第1の走査モジュールに関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU1〜U3の順番は、U1→U2→U3、となっているので、描画データ出力部114は、DL1→DL2→DL3、の順番で繰り返されるシリアルデータDL1〜DL3を描画ビット列データSBaとして出力する。第2の走査モジュールに関しては、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU4〜U6の順番は、U4→U5→U6、となっているので、描画データ出力部114は、DL4→DL5→DL6、の順番で繰り返されるシリアルデータDL4〜DL6を描画ビット列データSBbとして出力する。
図14を用いて、描画データ出力部114の構成について詳しく説明する。描画データ出力部114は、描画ビット列データSBaを出力する第1データ出力部114aと、描画ビット列データSBbを出力する第2データ出力部114bとを有する。第1データ出力部114aは、走査ユニットU1〜U3(選択用光学素子AOM1〜AOM3)の各々に対応した3つの生成回路GE1、GE2、GE3と、3入力のORゲート部GT1mとを有する。生成回路GE1は、メモリ部BM1、カウンタ部CON1、2入力のANDゲート部GT1a、GT1b、および、描画許可信号生成部OSM1を有する。生成回路GE2は、メモリ部BM2、カウンタ部CON2、2入力のANDゲート部GT2a、GT2b、および、描画許可信号生成部OSM2を有する。生成回路GE3は、メモリ部BM3、カウンタ部CON3、2入力のANDゲート部GT3a、GT3b、および、描画許可信号生成部OSM3を有する。第2データ出力部114bは、走査ユニットU1〜U3(選択用光学素子AOM1〜AOM3)の各々に対応した3つの生成回路GE4、GE5、GE6と、3入力のORゲート部GT2mとを有する。生成回路GE4は、メモリ部BM4、カウンタ部CON4、2入力のANDゲート部GT4a、GT4b、および、描画許可信号生成部OSM4を有する。生成回路GE5は、メモリ部BM5、カウンタ部CON5、2入力のANDゲート部GT5a、GT5b、および、描画許可信号生成部OSM5を有する。生成回路GE6は、メモリ部BM6、カウンタ部CON6、2入力のANDゲート部GT6a、GT6b、および、描画許可信号生成部OSM6を有する。
各描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)は、ワンショットマルチバイブレータ等によって構成されている。各描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)は、対応する走査ユニットUn(U1〜U6)によるスポット光SPの描画開始タイミングを調整する描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)を生成する。各描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)には、対応する走査ユニットUn(U1〜U6)の入射許可信号LPn(LP1〜LP6)が入力され、この入力された入射許可信号LPn(LP1〜LP6)に基づいて、描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)を生成する。例えば、描画許可信号生成部OSM1には入射許可信号LP1が入力され、描画許可信号生成部OSM1は、この入力された入射許可信号LP1に基づいて描画許可信号SQ1を生成する。同様に、描画許可信号生成部OSM2〜OSM6には入射許可信号LP2〜LP6が入力され、描画許可信号生成部OSM2〜OSM6は、この入力された入射許可信号LP2〜LP6に基づいて描画許可信号SQ2〜SQ6を生成する。この描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)がハイ(H)になっている期間中に、対応する走査ユニットUn(U1〜U6)のシリアルデータDLn(DL1〜DL6)が、駆動回路36aに出力される。
図15は、描画許可信号生成部OSMnによって生成される描画許可信号SQnおよび描画許可信号SQnがハイ(論理値は1)の期間中に出力される画素シフトパルスBSCを示すタイムチャートである。上述したように原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生すると、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生してから一定時間(オン時間Ton)ハイ(H)になる入射許可信号LPn(LP1〜LP6)が生成される。なお、このオン時間Tonは、走査ユニットUnのスポット光SPの最大走査時間である時間Ts以下の時間であることはいうまでもない。描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)は、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)がハイ「1」になってから、つまり、原点信号SZn(SZ1〜SZ6)が発生してから遅延時間Tdn(Td1〜Td6)経過した後に立ち上がり、且つ、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)がロー「0」になるのと同時またはその前に、立ち下がる描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)を生成する。例えば、描画許可信号生成部OSM3は、入射許可信号LP3がハイになってから遅延時間Td3経過した後に立ち上がり、且つ、入射許可信号LP3がローになるのと同時またはその前に立ち下がる描画許可信号SQ3を生成する。この描画許可信号SQ1〜SQ3は、SQ1→SQ2→SQ3、の順でハイ(H)になり、ハイ(H)になる時間が互いに重複することはない。同様に、描画許可信号SQ4〜SQ6が、SQ4→SQ5→SQ6、の順でハイ(H)になり、ハイ(H)になる時間が互いに重複することはない。この描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)が実際にハイ(H)になっている期間で、基板Pの被照射面上にスポット光SPの描画が許可される。
この遅延時間Tdnを変動させることで、基板P上における描画ラインSLnの位置を主走査方向(Y方向)に沿ってシフトさせることができる。つまり、遅延時間Tdを短くすることによって、描画ラインSLnの主走査方向における位置が、描画開始位置側(主走査方向とは反対側)にシフトされ、遅延時間Tdを長くすることによって、描画ラインSLnの主走査方向における位置が、描画終了位置側(主走査方向側)にシフトされる。この遅延時間Tdnは、原則として、描画ラインSLnの中心点が最大走査長(例えば、31mm)の中央(中点)にくるように設定される。したがって、遅延時間Tdnが一定のままで、描画ラインSLnの走査長が全体倍率補正情報TMgおよび局所倍率補正情報CMgnの少なくとも一方によって伸縮されると、描画ラインSLnの中心点が最大走査長の中央に位置しなくなる。したがって、全体倍率補正情報TMgおよび局所倍率補正情報CMgnによってこの遅延時間Tdnを決定してもよい。この遅延時間Tdn(Td1〜Td6)によって、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)を主走査方向に沿って個別にシフトさせることができる。露光制御部116は、全体倍率補正情報TMgおよび局所倍率補正情報CMgnに基づいて遅延時間Tdn(Td1〜Td6)を示す遅延情報を生成し、生成した遅延情報を描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)に出力する。描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)は、入力された遅延情報に基づいて、生成する描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)の遅延時間Tdn(Td1〜Td6)を決定する。
図16は、最大走査長の範囲内で伸縮された描画ラインSLnの位置と遅延時間Tdとの関係を示す図である。符号MSLnは、最大走査長の描画ラインSLnを示している。また、符号SLnaは、伸縮されていない初期値の描画ラインSLnを示し、この場合の遅延時間TdnをTdaで表している。つまり、描画ラインSLnaの中心点paが最大走査長の中点pmにくるように、この遅延時間Tdaが初期値として設定されている。また、符号SLnbは、初期値の描画ラインSLnaを全体倍率補正または局所倍率補正によって縮小したときの描画ラインSLnを示すものであり、符号SLncは、初期値の描画ラインSLnaを全体倍率補正または局所倍率補正によって伸長したときの描画ラインSLnを示すものである。
描画ラインSLnbの遅延時間を描画ラインSLnaのときと同じ遅延時間Tdaとした場合は、描画開始タイミングは、描画ラインSLnaのときと同一となる。したがって、描画ラインSLnbの描画開始点が、描画ラインSLnaの描画開始点に対して主走査方向に沿ってシフトすることはない。しかしながら、この場合だと、描画ラインSLnbは描画ラインSLnaに対して縮小されているため、描画ラインSLnbの描画終了点は、描画ラインSLnaの描画終了点より描画開始点側にずれてしまう。そのため、描画ラインSLnbの中心点pbの位置は、最大走査長の描画ラインMSLnの中点pmの位置より描画開始点側にずれてしまう。したがって、描画ラインSLnbの場合は、描画ラインSLnbの縮小率に基づいて、描画ラインSLnbの中心点pbが描画ラインMSLnの中点pmと一致するように遅延時間Tdbを決定してもよい。この場合の遅延時間Tdbは、遅延時間Tdaより長くなり、描画ラインSLnbの描画開始点は、描画ラインSLnaの描画開始点より描画終了点側(主走査方向側)にシフトされた状態となる。
また、描画ラインSLncの遅延時間を描画ラインSLnaのときと同じ遅延時間Tdaとした場合は、描画開始タイミングは、描画ラインSLnaのときと同一となる。したがって、描画ラインSLncの描画開始点が、描画ラインSLnaの描画開始点に対して主走査方向に沿ってシフトすることはない。しかしながら、この場合だと、描画ラインSLnbは描画ラインSLnaに対して伸長されているため、描画ラインSLncの描画終了点は、描画ラインSLnaの描画終了点より描画終了点側(主走査方向側)にずれてしまう。そのため、描画ラインSLncの中心点pcの位置は、最大走査長の描画ラインMSLnの中点pmの位置より描画終了点側にずれてしまう。したがって、描画ラインSLncの場合は、描画ラインSLncの伸長率に基づいて、描画ラインSLncの中心点pcが描画ラインMSLnの中点pmと一致するように遅延時間Tdcを決定してもよい。この場合の遅延時間Tdcは、遅延時間Tdaより短くなり、描画ラインSLncの描画開始点は、描画ラインSLnaの描画開始点より描画開始点側(主走査方向とは反対側)にシフトされた状態となる。
図14の説明に戻り、各描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)が生成した描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)は、ANDゲート部GTnb(GT1b〜GT6b)の一方の入力端子に入力される。詳しくは、ANDゲート部GT1bの一方の入力端子には、描画許可信号SQ1が入力され、同様に、ANDゲート部GT2b〜GT6bの一方の入力端子には描画許可信号SQ2〜SQ6が入力される。ANDゲート部GTnb(GT1b〜GT6b)の他方の入力端子には、画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)が入力される。ANDゲート部GT1b〜GT3bには、光源装置LSaの信号発生部22aからの画素シフトパルスBSCaが同時に入力され、ANDゲート部GT4b〜GT6bには、光源装置LSbの信号発生部22aからの画素シフトパルスBSCbが同時に入力される。ANDゲート部GTnb(GT1b〜GT6b)は、図15に示すように、描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)から入力される描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)がハイの時間だけ、入力された画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)を出力する。なお、図9のゲート回路GTaによって、画素シフトパルスBSCa(BSCb)は、描画許可信号SQ1〜SQ3(SQ4〜SQ6)がハイの期間中に生成される。
3つのANDゲート部GT1b〜GT3b(GT4b〜GT6b)には、3つの描画許可信号SQ1〜SQ3(SQ4〜SQ6)のうち、ハイになっている描画許可信号SQnに対応する走査ユニットUnのシリアルデータDLnの画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCa(BSCb)が入力される。詳しく説明すると、描画許可信号SQ1がハイの期間中に、描画許可信号SQ1に対応する走査ユニットU1のシリアルデータDL1の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCaが3つのANDゲート部GT1b〜GT3bに入力される。また、描画許可信号SQ2、SQ3がハイの期間中に、描画許可信号SQ2、SQ3に対応する走査ユニットU2、U3のシリアルデータDL2、DL3の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCaが3つのANDゲート部GT1b〜GT3bに入力される。同様にして、描画許可信号SQ4〜SQ6がハイの期間中に、描画許可信号SQ4〜SQ6に対応する走査ユニットU4〜U6のシリアルデータDL4〜DL6の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCbが3つのANDゲート部GT4b〜GT6bに入力される。
各メモリ部(描画データ記憶部)BMn(BM1〜BM6)は、対応する走査ユニットUn(U1〜U6)が描画露光すべきパターンに応じたパターンデータ(ビットマップ)を記憶するメモリである。カウンタ部CONn(CON1〜CON6)は、メモリ部BMn(BM1〜BM6)に記憶されたパターンデータのうち、シリアルデータDLn(DL1〜DL6)の各画素の論理情報を、行方向に1画素ずつ画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)に同期して出力するためのカウンタである。これにより、描画許可信号SQn(SQ1〜SQ6)がハイ(H)の時間中に、それに対応する走査ユニットUn(U1〜U6)のシリアルデータDLn(DL1〜DL6)の各画素の論理情報が、行方向に1画素ずつ画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)に同期して出力されることになる。例えば、描画許可信号SQ1(SQ2、SQ3)がハイ(H)の期間中には、シリアルデータDL1(DL2、DL3)の論理情報が、1画素ずつ画素シフトパルスBSCaに同期して出力される。また、描画許可信号SQ4(SQ5、SQ6)がハイ(H)の期間中には、シリアルデータDL4(DL5、DL6)の論理情報が、1画素ずつ画素シフトパルスBSCbに同期して出力される。
また、メモリ部BMn(BM1〜BM6)に記憶されたパターンデータのシリアルデータDLn(DL1〜DL6)は、不図示のアドレスカウンタ等によって列方向にシフトされる。つまり、不図示のアドレスカウンタによって読み出す列が、1列目、2列目、3列目、・・・、というようにシフトされる。そのシフトは、例えば、走査ユニットU1に対応するメモリ部BM1であればシリアルデータDL1を出力し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU2に対応した入射許可信号LP2がハイ(H)になったタイミング(原点信号SZ2が発生したタイミング)で行われる。メモリ部BM2に記憶されたパターンデータのシリアルデータDL2のシフトは、シリアルデータDL2を出力し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU3に対応した入射許可信号LP3がハイ(H)になったタイミング(原点信号SZ3が発生したタイミング)で行われる。また、メモリ部BM3に記憶されたパターンデータのシリアルデータDL3のシフトは、シリアルデータDL3を出力し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU1に対応した入射許可信号LP1がハイ(H)になったタイミング(原点信号SZ1が発生したタイミング)で行われる。なお、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3は、U1→U2→U3、の順でスポット光SPの走査を行うものとする。
同様にして、メモリ部BM4〜BM6に記憶されたパターンデータのシリアルデータDL4〜DL6のシフトは、シリアルデータDL4〜DL6を出力し終わった後で、次に走査を行う走査ユニットU5、U6、U4に対応した入射許可信号LP5、LP6、LP4がハイ(H)になったタイミング(原点信号SZ5、SZ6、SZ4が発生したタイミング)で行われる。なお、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットU4〜U6は、U4→U5→U6、の順でスポット光SPの走査を行うものとする。
メモリ部BMn(BM1〜BM6)から出力されるシリアルデータDLn(DL1〜DL6)は、ANDゲート部GTna(GT1a〜GT6a)の一方の入力端子に入力される。ANDゲート部GTna(GT1a〜GT6a)の他方の入力端子には、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)が入力される。したがって、ANDゲート部GTna(GT1a〜GT6a)は、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)がハイ(H)の期間中(時間Ton中)、シリアルデータDLn(DL1〜DL6)を出力する。これにより、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnのシリアルデータDLnが出力されることになる。これにより、第1データ出力部114aの生成回路GE1〜GE3から、シリアルデータDLn(DL1〜DL3)が、DL1→DL2→DL3、の順で出力され、3入力のORゲート部GT1mに入力される。同様にして、第2データ出力部114bの生成回路GE4〜GE6から、シリアルデータDLn(DL4〜DL6)が、DL4→DL5→DL6、の順で出力され、3入力のORゲート部GT2mに入力される。
ORゲート部GT1mは、DL1→DL2→DL3、の順に繰り返し入力されたシリアルデータDLn(DL1→DL2→DL3)を描画ビット列データSBaとして光源装置LSaの駆動回路36aに出力する。これにより、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3は、U1→U2→U3、の順番で、スポット光SPの走査を行うと同時に、パターンデータに応じたパターンを描画露光することができる。同様にして、ORゲート部GT2mは、DL4→DL5→DL6、の順に繰り返し入力されたシリアルデータDLnを描画ビット列データSBbとして光源装置LSbの駆動回路36aに出力する。これにより、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットU4〜U6は、U4→U5→U6、の順番で、スポット光SPの走査を行うと同時に、パターンデータに応じたパターンを描画露光することができる。
なお、本第1の実施の形態では、走査ユニットUn(U1〜U6)毎に、パターンデータを用意し、走査モジュール毎に、3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のパターンデータの中から、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番(U1→U2→U3、U4→U5→U6)にしたがって、シリアルデータDL1〜DL3、DL4〜DL6を出力するようにした。しかしながら、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番は予め決められているので、走査モジュール毎に、3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のパターンデータの各シリアルデータDLn(DL1〜DL3、DL4〜DL6)を組み合わせた1つのパターンデータを用意してもよい。つまり、走査モジュール毎に、3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のパターンデータの各列のシリアルデータDLn(DL1〜DL3、DL4〜DL6)を、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnの順番に応じて配列させた1つのパターンデータを構築するようにしてもよい。この場合は、走査モジュール毎に構築された1つのパターンデータのシリアルデータDLnを描画許可信号SQn(SQ1〜SQ3、SQ4〜SQ6)に応じて、1列目から順番に出力すればよい。
さて、図12に示した露光制御部116は、全体倍率設定部110、局所倍率設定部112、および、描画データ出力部114を制御するものである。露光制御部116には、マーク位置検出部106が検出した設置方位線Lx1、Lx4上におけるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置情報と、回転位置検出部108が検出した設置方位線Lx1〜Lx4上における回転ドラムDRの回転角度位置情報(カウンタ回路CN1a〜CN4a、CN1b〜CN4bに基づくカウント値)とが入力される。露光制御部116は、設置方位線Lx1上におけるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置情報と、設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置(カウンタ回路CN1a、CN1bのカウント値)とに基づいて、基板Pの副走査方向(X方向)における露光領域Wの描画露光の開始位置を検出(決定)する。
そして、露光制御部116は、描画露光の開始位置が検出されたときの設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置と、設置方位線Lx2上における回転角度位置(カウンタ回路CN2a、CN2bに基づくカウント値)とに基づいて、基板Pの描画露光の開始位置が設置方位線Lx2上にある描画ラインSL1、SL3、SL5上まで搬送されたか否かを判断する。露光制御部116は、描画露光の開始位置が描画ラインSL1、SL3、SL5上まで搬送されたと判断すると、局所倍率設定部112および描画データ出力部114等を制御して、走査ユニットU1、U3、U5にスポット光SPの走査による描画を開始させる。
この場合は、露光制御部116は、走査ユニットU1、U3が描画露光を行うタイミングで、局所倍率設定部112にスポット光SPの走査を行う走査ユニットU1、U3に対応する局所倍率補正情報CMg1、CMg3を光源装置LSaの信号発生部22aに出力させる。これにより、光源装置LSaの信号発生部22aは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU1、U3のシリアルデータDL1、DL3の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCaを、局所倍率補正情報CMg1、CMg3に応じて発生する。この画素シフトパルスBSCaに応じて、描画データ出力部114は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU1、U3に対応するシリアルデータDL1、DL3の各画素の論理情報を1画素ずつシフトさせていく。同様に、露光制御部116は、走査ユニットU5が描画露光を行うタイミングで、局所倍率設定部112に、走査ユニットU5に対応する局所倍率補正情報CMg5を光源装置LSbの信号発生部22aに出力させる。これにより、光源装置LSbの信号発生部22aは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU5に対応するシリアルデータDL5の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCbを、局所倍率補正情報CMg5に応じて発生する。この画素シフトパルスBSCbに応じて、描画データ出力部114は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU5のシリアルデータDL5の各画素の論理情報を1画素ずつシフトさせていく。
その後、露光制御部116は、描画露光の開始位置が検出されたときの設置方位線Lx1上における回転ドラムDRの回転角度位置と、設置方位線Lx3上における回転角度位置(カウンタ回路CN3a、CN3bのカウント値)とに基づいて、基板Pの描画露光の開始位置が設置方位線Lx3上にある描画ラインSL2、SL4、SL6上まで搬送されたか否かを判断する。露光制御部116は、描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上まで搬送されたと判断すると、局所倍率設定部112および描画データ出力部114を制御して、さらに、走査ユニットU2、U4、U6にスポット光SPの走査を開始させる。
この場合は、露光制御部116は、走査ユニットU2が描画露光を行うタイミングで、局所倍率設定部112に、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU2に対応する局所倍率補正情報CMg2を光源装置LSaの信号発生部22aに出力させる。これにより、光源装置LSaの信号発生部22aは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU2のシリアルデータDL2の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCaを、局所倍率補正情報CMg2に応じて発生する。この画素シフトパルスBSCaに応じて、描画データ出力部114は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU2のシリアルデータDL2の各画素の論理情報を1画素ずつシフトさせていく。同様に、露光制御部116は、走査ユニットU4、U6が描画露光を行うタイミングで、局所倍率設定部112に、走査ユニットU4、U6に対応する局所倍率補正情報CMg4、CMg6を光源装置LSbの信号発生部22aに出力させる。これにより、光源装置LSbの信号発生部22aは、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU4、U6のシリアルデータDL4、DL6の画素をシフトさせる画素シフトパルスBSCbを、局所倍率補正情報CMg4、CMg6に応じて発生する。この画素シフトパルスBSCbに応じて、描画データ出力部114は、スポット光SPの走査を行う走査ユニットU4、U6のシリアルデータDL4、DL6の各画素の論理情報を1画素ずつシフトさせていく。
先の図4から分かるように、基板Pは+X方向に搬送されるので、描画ラインSL1、SL3、SL5の各々における描画露光が先行し、基板Pが所定距離だけさらに搬送されてから、描画ラインSL2、SL4、SL6の各々における描画露光が行われる。一方で、第1の走査モジュールの3つの走査ユニットU1〜U3の各ポリゴンミラーPM、第2の走査モジュールの3つの走査ユニットU4〜U6の各ポリゴンミラーPMは、所定の位相差を持って回転制御されているため、原点信号SZ1〜SZ3、SZ4〜SZ6は、図13に示すように、時間Tsだけ位相差を持って発生し続ける。そのため、図13に示すような入射許可信号LPn(LP1〜LP6)が発生し、描画ラインSL1、SL3、SL5における描画露光の開始時点から描画ラインSL2、SL4、SL6における描画露光の開始直前までの間も、図14中のANDゲート部GT2a、GT4a、GT6aが開かれ、シリアルデータDL2、DL4、DL6が出力される。したがって、露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に達する前に、走査ユニットU2、U4、U6によるスポット光SPの走査によってパターンが描画されてしまう。
そこで、図14の構成において、露光制御部116の制御によって、入射許可信号LPn(LP1〜LP6)を、ANDゲート部GTna(GT1a〜GT6a)および描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)に送るか禁止するかを選択する選択ゲート回路を、生成回路GEn(GE1〜GE6)毎に設けるのがよい。これにより、各生成回路GEn(GE1〜GE6)の選択ゲート回路が開かれている期間中だけ、ANDゲート部GTna(GT1a〜GT6a)および描画許可信号生成部OSMn(OSM1〜OSM6)に入射許可信号LPn(LP1〜LP6)が入力される。したがって、露光制御部116は、生成回路GE2、GE4、GE6の選択ゲート回路を閉じ、生成回路GE1、GE3、GE5の選択ゲート回路を開くことで、シリアルデータDL2、DL4、DL6の出力を禁止することができる。また、この生成回路GE2、GE4、GE6の選択ゲート回路を閉じることで、描画許可信号SQ2、SQ4、SQ6が生成されることもない。したがって、生成回路GE2、GE4、GE6の選択ゲート回路を閉じている間は、ゲート回路GTa(図9参照)によって、シリアルデータDL2、DL4、DL6の画素をシフトする画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)の生成も禁止される。
なお、各生成回路GEn(GE1〜GE6)に選択ゲート回路を設けない場合は、露光制御部116は、光源装置LSa、LSbの駆動回路36aに出力する描画ビット列データSBa、SBbのうち、シリアルデータDL2、DL4、DL6に対応する部分の画素の論理情報を全て「0」にキャンセルすることで、実質的に走査ユニットU2、U4、U6による描画露光をキャンセルすることができる。キャンセル期間中は、メモリ部BM2、BM4、BM6から出力されるシリアルデータDL2、DL4、DL6の列は、シフトされず1列目のままである。そして、露光領域Wの描画露光の開始位置が描画ラインSL2、SL4、SL6上に到達してから、シリアルデータDL2、DL4、DL6の出力を開始し、シリアルデータDL2、DL4、DL6の列方向へのシフトが行われる。
同様に、露光領域Wの描画露光の終了位置は、先に描画ラインSL1、SL3、SL5上に到達し、その後一定の時間をおいて、描画ラインSL2、SL4、SL6上に達する。そのため、描画露光の終了位置が描画ラインSL1、SL3、SL5に到達した後、描画ラインSL2、SL4、SL6に到達するまでは、走査ユニットU2、U4、U6のみでパターンの描画露光を行うことになる。したがって、露光制御部116は、生成回路GE1、GE3、GE5の選択ゲート回路を閉じ、生成回路GE2、GE4、GE6の選択ゲート回路を開くことで、シリアルデータDL1、DL3、DL5の出力を禁止することができる。また、この生成回路GE1、GE3、GE5の選択ゲート回路を閉じることで、図9に示すゲート回路GTaによって、シリアルデータDL1、DL3、DL5の画素をシフトする画素シフトパルスBSC(BSCa、BSCb)の生成も禁止される。なお、各生成回路GEn(GE1〜GE6)に選択ゲート回路を設けない場合は、露光制御部116は、光源装置LSa、LSbの駆動回路36aに出力する描画ビット列データSBa、SBbのうち、シリアルデータDL1、DL3、DL5に対応する部分の画素の論理情報を全て「0」にキャンセルすることで、実質的に走査ユニットU1、U3、U5による描画露光をキャンセルすることができる。
また、露光制御部116は、マーク位置検出部106が検出した設置方位線Lx1、Lx4上におけるアライメントマークMKm(MK1〜MK4)の位置情報と、回転位置検出部108が検出した設置方位線Lx1、Lx4上における回転ドラムDRの回転角度位置情報とに基づいて、基板Pまたは露光領域Wの歪み(変形)を逐次演算する。例えば、基板Pが長尺方向に大きなテンションを受けたり、熱プロセスを受けたりして変形している場合は、露光領域Wの形状も歪み(変形し)、アライメントマークMKm(MK1〜MK4)の配列も、図4に示すような矩形状にならず、歪んだ(変形した)状態になる。基板Pまたは露光領域Wが歪んだ場合は、それに応じて各描画ラインSLnの倍率を変更する必要があるので、露光制御部116は、演算した基板Pまたは露光領域Wの歪みに基づいて、全体倍率補正情報TMgおよび局所倍率補正情報CMgnの少なくとも一方を生成する。そして、この生成された全体倍率補正情報TMgおよび局所倍率補正情報CMgnの少なくとも一方は、全体倍率設定部110または局所倍率設定部112に出力される。これにより、重ね合わせ露光の精度を向上させることができる。また、露光制御部116は、基板Pまたは露光領域Wの歪みに応じて、各描画ラインSLn毎に補正傾き角情報を生成してもよい。この生成された補正傾き角情報に基づいて、上述した前記アクチュエータが、各走査ユニットUn(U1〜U6)を照射中心軸Len(Le1〜Le6)回りに回動させる。これにより、重ね合わせ露光の精度がより向上する。露光制御部116は、各走査ユニットUn(U1〜U6)によってスポット光SPの走査が行われる度、若しくは、スポット光SPの走査が所定回数行われる度に、若しくは、基板Pまたは露光領域Wの歪みの傾向が許容範囲を超えて変わったときに、全体倍率補正情報TMgおよび局所倍率補正情報CMgnの少なくとも一方と、補正傾き角情報とを再び生成してもよい。
以上のように、第1の実施の形態の露光装置EXは、パルス光源部35からの種光S1、S2によって生成されるビームLB(Lse、LBa、LBb、LBn)のスポット光SPをパターンに応じて強度変調しつつ、基板P上の描画ラインSLnに沿ってスポット光SPを相対的に走査することにより、基板P上にパターンを描画する。そして、露光装置EXは、メモリ部BMn、クロック発生部60、光源制御部、補正画素指定部62、および、送出タイミング切換部64を少なくとも備える。上述したように、メモリ部BMnは、走査ユニットUnのスポット光SPの走査によって描画されるパターンデータを記憶したものである。クロック発生部60は、Pxy/(N×Vs)で決まる基準周期Taを有し、スポット光SPの走査中に1画素の寸法Pxy当りN個のクロックパルスを有するクロック信号LTCを生成する。光源制御部は、少なくとも、制御回路22と、電気光学素子36、駆動回路36a、および、描画データ出力部114から構成される。この光源制御部は、クロック信号LTCのクロックパルスに応答してビームLBを発生するようにパルス光源部35を制御するとともに、メモリ部BMnから順次送出されるパターンデータを構成するシリアルデータDLnの画素毎の論理情報に基づいてビームLBの強度を変調する。補正画素指定部62は、描画ラインSLn上に並ぶ複数の画素のうちで、特定の位置に配置される少なくとも1つの画素を補正画素として指定する。送出タイミング切換部64は、スポット光SPが描画ラインSLn上の補正画素以外の通常画素を走査するタイミングでは、クロックパルスのN個が1画素に対応し、スポット光SPが描画ラインSLn上の補正画素を走査するタイミングでは、クロックパルスのN±m個が1画素に対応するように、画素の論理情報のメモリ部BMnからの送出タイミングを切り換える。したがって、描画ラインSLn(描画するパターン)の倍率をきめ細やかに補正することができ、ミクロンオーダーでの精密な重ね合わせ露光を行うことができる。
露光装置EXは、ビームLBを1次元に偏向するポリゴンミラーPMと、ポリゴンミラーPMで偏向されたビームLBを入射して、基板P上にスポット光SPとして集光する光学レンズ部材(少なくとも、fθレンズFTおよびシリンドリカルレンズCYbを含む)とを有する走査ユニットUnを複数備える。露光装置EXは、複数の走査ユニットUnの各々から投射されるスポット光SPによって、基板P上にパターンを描画する。これにより、露光領域Wの幅を簡単に広げることができる。
露光装置EXは、複数の走査ユニットUnの各々のポリゴンミラーPMの回転角度位置が所定の位相関係となるように、ポリゴンミラーPMの各々を同期回転させるポリゴン駆動制御部100と、光源装置LSa(またはLSb)からのビームを、ポリゴンミラーPMの回転角度位置に応じて、複数の走査ユニットUnのいずれか1つに順番に導くように切り換えるビーム切換部BDUと、を備える。これにより、1つの走査ユニットUnがスポット光SPの走査を開始してから次の走査を開始するまでの間に、複数の走査ユニットUnの各々が順番にスポット光SPの走査を行うことができる。その結果、ビームLBを有効に活用することができる。
露光装置EXは、描画ラインSLn上に位置する複数の画素のうち、補正対象となる補正画素を指定するための局所倍率補正情報(補正情報)CMgnを、複数の走査ユニットUn毎に記憶する局所倍率設定部(補正情報記憶部)112を備える。補正画素指定部62は、ビーム切換部BDUによってビームLBが導かれる走査ユニットUnに対応した局所倍率補正情報CMgnに基づいて、ビームLBが導かれる走査ユニットUnの描画ラインSLn上に位置する補正画素を指定する。これにより、描画ラインSLn(走査ユニットUn)毎に、描画ラインSLn(描画するパターン)の倍率をきめ細やかに補正することができる。したがって、パターン露光の重ね合わせ精度が向上する。
局所倍率補正情報CMgnは、描画ラインSLnに沿って描画されるパターンの描画倍率に応じて描画ラインSLn上の離散的な複数の位置の各々に補正画素を指定するための補正位置情報Nvを含む。補正画素指定部62は、補正位置情報Nvに基づいて、描画ラインSLn上に離散的に位置する複数の補正画素を指定する。送出タイミング切換部64は、描画ラインSLn上に位置する複数の補正画素の各々で、補正画素に対してN±m個のクロック信号LTCのクロックパルスが対応するように、論理情報のメモリ部BMnからの送出タイミングを切り換える。これにより、ムラなく描画ラインSLn(描画するパターン)を倍率補正(伸縮)させることができる。
局所倍率補正情報CMgnは、描画ラインSLnに沿って描画されるパターンの描画倍率に応じて、前記した「±m」の値を設定するための倍率情報SCAを含む。これにより、描画倍率に応じて、描画ラインSLn(描画するパターン)を伸縮させることができる。
ビーム切換部BDUは、光源装置LSa(またはLSb)からのビームLBの進行方向に沿って直列に配置され、ビームLBの光路を切り換えてビームLBが入射する走査ユニットUnを1つ選択する複数の選択用光学素子AOMnを有する。したがって、描画露光すべき1つの走査ユニットUnに対して光源装置LSa(またはLSb)からのビームLBを効率的に集中させることができ、高い露光量が得られる。例えば、光源装置LSa(またはLSb)からの1つのビームLBを複数のビームスプリッタを使って3つに振幅分割し、分割した3つのビームLBの各々を、シリアルデータDLnによって変調させる描画用の音響光学変調素子(強度変調部)AOMを介して、3つの走査ユニットUnに導いた場合、描画用の音響光学変調素子でのビーム強度の減衰を20%、各走査ユニットUn内でのビーム強度の減衰を30%とすると、1つの走査ユニットUnにおけるスポット光SPの強度は、元のビームLBの強度を100%としたとき、約18.67%となる。一方、第1の実施の形態のように、光源装置LSa(またはLSb)からのビームLBを3つの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM3、AOM4〜AOM6)によって偏向させて、3つの走査ユニットUn(U1〜U3、U4〜U6)のいずれか1つに入射するようにした場合、選択用光学素子AOMnでのビーム強度の減衰を20%としたとき、1つの走査ユニットUnにおけるスポット光SPの強度は、元のビームLBの強度の約56%になる。
複数の選択用光学素子AOMnは、複数の走査ユニットUnに対応して設けられ、対応する走査ユニットUnにビームLBを入射させるか否かを切り換える。したがって、複数の走査ユニットUnのうち、ビームLBnが入射すべき1つの走査ユニットUnを簡単に選択できる。
なお、本第1の実施の形態では、ポリゴンミラーPMの走査効率が1/3、ビームLBa、LBbが振り分けられる走査ユニットUnの数を3つとしたので、6つの選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)を2つの光学素子モジュール(2つの組)に分け、それに対応して6つの走査ユニットUn(U1〜U6)を2つの走査モジュール(2つの組)に分けた。しかしながら、ポリゴンミラーPMの走査効率が1/H、走査ユニットUnおよび選択用光学素子AOMnの数がQの場合は、Q個の選択用光学素子AOMnをQ/H個の光学素子モジュール(Q/Hの組)に分ける。そして、Q個の走査ユニットUnをQ/Hの走査モジュールに分ければよい。この場合、Q/H個の光学素子モジュール(Q/Hの組)の各々に含まれる選択用光学素子AOMnの数は等しく、また、Q/H個の走査モジュール(Q/Hの組)の各々に含まれる走査ユニットUnの数も等しくするのが好ましい。なお、このQ/Hは、正数であることが好ましい。つまり、Qは、Hの倍数であることが好ましい。例えば、ポリゴンミラーPMの走査効率が1/2、走査ユニットUnおよび選択用光学素子AOMnの数が6つの場合は、6つの選択用光学素子AOMnを3つの光学素子モジュール(3つの組)に等しく分け、6つの走査ユニットUnを3つの走査モジュール(3つの組)に等しく分ければよい。
また、上記第1の実施の形態では、ポリゴンミラーPMの形状を、8角形としたが(反射面RPが8つ)としたが、6角形、7角形であってもよいし、9角形以上であってもよい。これにより、ポリゴンミラーPMの走査効率も変わる。一般的に、多角形の形状のポリゴンミラーPMの反射面数Np以外の条件(例えば、fθレンズFTの口径や焦点距離等の条件)が同一の場合は、反射面数Npが多くなる程、ポリゴンミラーPMの1反射面RPにおける走査効率は大きくなり、反射面数が少なくなる程、ポリゴンミラーPMの走査効率は小さくなる。また、反射面数Npが多くなる程、ポリゴンミラーPMの外形が円形に近づくので、回転中の風損が減り、ポリゴンミラーPMをより高速に回転させることができる。例えば、先の例のように、8面のポリゴンミラーPMを走査効率1/3未満で使う場合、24面(8面÷1/3)のポリゴンミラーPMに変えることもできる。ただし、その場合は、1つの光源装置LSa(LSb)からのビームLBa(LBb)を3つの走査ユニットUnの各々に時分割で振り分けるために、3つの走査ユニットUnの各々の24面のポリゴンミラーPMは、同じ角度位相となる(原点信号が同一タイミングで発生する)ように同期回転させ、ポリゴンミラーPMの2つの反射面置きに1回の描画が行われるように制御すればよい。
また、上記第1の実施の形態では、画素の寸法Pxと寸法Pyとは同じ長さ(例えば、3μm)としたが、寸法Pxと寸法Pyとの長さを異ならせてもよい。要は、クロック発生部60は、Py/(N×Vs)で決まる基準周期Taを有し、スポット光SPの走査中に1画素の寸法Py当りN個のクロックパルスを有するクロック信号LTCを生成すればよい。
[第1の実施の形態の変形例]
上記第1の実施の形態は、以下のように変形してもよい。
上記第1の実施の形態においては、通常画素に対してN(=8)個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応し、補正画素に対してN±m(=8±1)個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応するようにした。また、1画素の寸法Pxyを、スポット光SPのサイズφと同じ3μmとし、クロック信号LTCの発振周波数Faを400MHzとしているので、主走査方向に沿って走査されるスポット光SPの投射間隔は、0.375μmとなる。したがって、補正画素は、主走査方向に関して、寸法Pxyが3μmの通常画素に対して、0.375μmだけ伸縮した大きさとなる。つまり、補正画素が伸縮する割合は、12.5(=0.375/3)%となる。また、倍率情報SCAによって定められる「±m」の値が、「±2」の場合は、寸法Pxyが3μmの通常画素に対して、補正画素は、0.75μmだけ伸縮し、その割合は、25(=0.75/3)%となる。
これに対して、1画素の寸法Pxyを、スポット光SPのサイズφと同じ3μmとし、クロック信号LTCの発振周波数Faを400MHzの2倍である800MHzにすると、通常画素に対して16個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応することになる。したがって、倍率情報SCAによって定められる「±m」の値を「±1」のままにすると、補正画素に対して16±1個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応する。この場合は、主走査方向に走査されるスポット光SPの投射間隔は、0.1875(3×1/16)μmとなる。したがって、補正画素は、主走査方向に関して、寸法Pxyが3μmの通常画素に対して、0.1875μmだけ伸縮し、その割合は、6.25(=0.1875/3)%となる。また、倍率情報SCAによって定められる「±m」の値が、「±2」の場合は、寸法Pxyが3μm通常画素に対して、補正画素は、0.375μmだけ伸縮し、その割合は、12.5%となる。したがって、クロック信号LTCの発振周波数Faを高くした方が、きめ細やかな倍率補正を行うことができる。
しかしながら、発振周波数Faを400MHzから高くした場合であっても、パルス光発生部20のDFB半導体レーザ素子30、32が高くした発振周波数Fa(例えば、800MHz)でパルス状の種光S1、S2を発生することができない場合がある。また、高くした発振周波数Faで応答することができるDFB半導体レーザ素子30、32を用いた場合は、コストが高くなるという問題がある。したがって、本変形例では、400MHzの発振周波数Fbで発生したビームLBを合成することで、スポット光SPの周波数を800MHzにするというものである。
なお、本変形例では、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な長さを30mmとし、実効的なサイズφが3μmのスポット光SPを、15/16ずつ、つまり、2.8125(=3×15/16)μmずつ、オーバーラップさせながらスポット光SPを描画ラインSLn(SL1〜SL6)に沿って基板P上(基板Pの被照射面上)に照射するものとする。したがって、スポット光SPの投射間隔は、0.1875μmとなり、1回の走査で照射されるスポット光SPの数は、160000(=30〔mm〕/0.1875〔μm〕)となる。また、スポット光SPの周波数(発振周波数Fa)を800MHzとし、1回の走査で、スポット光SPを160000回照射するので、描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1回の走査に必要な時間Tspは、200μsec(=160000〔回〕/800〔MHz〕)となり、その走査速度Vsは、150m/sec(=30〔mm〕/200〔μsec〕)となる。また、副走査方向についても、スポット光SPの走査が、0.1875μmの間隔で行われるものとすると、時間Tpx(=620μsec)当り0.1875μmだけ基板Pが進む必要があることから、搬送速度(送り速度)Vtは、約0.3024mm/sec(=0.1875〔μm〕/620〔μsec〕)となる。なお、本変形例のポリゴンミラーPMの回転速度Vpは、上記第1の実施の形態と同じ、約12096.8rpmとする。
図17は、本変形例における光源装置LSa(LSb)の構成を示す図である。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成については同様の符号を付し、異なる箇所のみを説明する。光源装置LSa(LSb)は、クロック信号発生部150、2つの制御回路152a、152b、2つのパルス光発生部20(以下、20a、20b)、ORゲート部(クロック発生部)GX1、および、合成光学部材154を有する。
クロック信号発生部150は、スポット光SPの走査速度をVs、Nを2以上の整数とし、パルス光発生部20(パルス光源部35)の数をMとしたとき、(Pxy×M)/(N×Vs)で決まる基準周期Tbを有するとともに、基準周期Tbの1/Mの補正時間ずつ位相を与えた複数(M個)のクロック信号(第1クロック信号)CKを発生する。このMは、2以上の整数であってNより小さい整数である。本変形例では、1画素当りのクロックパルス(スポット光SP)の数Nは16、Mは2、Pxyは3μm、Vsは150m/secとなるので、基準周期Tb=(3μm×2)/(16×150m/sec)=0.0025μsecとなり、その周波数Fb(1/Tc)は、400MHzとなる。また、クロック信号発生部150は、基準周期Tbの1/Mの補正時間ずつ位相を与えた複数(M個)のクロック信号を発生することから、基準周期Tbの1/2補正時間ずつ位相を与えた2つのクロック信号CKを発生する。この2つのクロック信号CKをCKa、CKbで表す。つまり、本変形例のクロック信号発生部150は、互いに位相が半周期ずれた400MHzのクロック信号CKa、CKbを生成することになる。クロック信号発生部150が発生(生成)したクロック信号CKaは、制御回路152aおよびORゲート部GX1に出力され、クロック信号CKbは、制御回路152bおよびORゲート部GX1に出力される。
図18は、クロック信号発生部150の構成を示す図である。クロック信号発生部150は、クロック発生部60、ワンショットパルス発生器LC、2入力のANDゲート部GX2、GX3、および、NOTゲート部GX4を有する。上記第1の実施の形態でも説明したように、クロック発生部60は、全体倍率補正情報TMgに応じた発振周波数Fc(周期Tc=1/Fc)のクロック信号CKsを発生(生成)する。本変形例では、クロック発生部60は、全体倍率補正情報TMgを0とし、全体倍率補正情報TMgが0の場合に、発振周波数(発光周波数)Fcが800MHzのクロック信号CKsを生成するものとする。クロック発生部60が発生したクロック信号CKsは、ANDゲート部GX1、GX2の一方の入力端子およびワンショットパルス発生器LCにそれぞれ入力される。
ワンショットパルス発生器LCは、通常は論理値「0」の信号SDoを出力するが、クロック信号CKsのクロックパルスが発生すると、クロックパルスの立ち下がりから一定時間Tdpだけ論理値「1」の信号SDoを出力する。つまり、ワンショットパルス発生器LCは、クロック信号CKsのクロックパルスの立ち下がりに応じて一定時間Tdpだけ論理値を反転させる。時間Tdpは、Tc<Tdp<2×Tc、の関係に設定され、好ましくは、Tdp≒1.5×Tc、に設定される。ANDゲート部GX3の他方の入力端子には、この信号SDoが入力される。ANDゲート部GX2の他方の入力端子には、NOTゲート部GX4を介して信号SDoが入力される。つまり、ANDゲート部GX2には、信号SDoを反転させた信号が入力される。ANDゲート部GX2は、入力されたクロック信号CKsと信号SDoの値を反転した信号とに基づいて、クロック信号CKaを出力する。ANDゲート部GX3は、入力されたクロック信号CKsと信号SDoとに基づいて、クロック信号CKbを出力する。したがって、ANDゲート部GX2は、信号SDoの論理値が「0」のときだけ、入力されたクロック信号CKsのクロックパルスを出力し、ANDゲート部GX3は、信号SDoの論理値が「1」のときだけ、入力されたクロック信号CKsのクロックパルスを出力する。
図19は、図18のクロック信号発生部150の動作を説明するタイミングチャートである。信号SDoの論理値が「0」(ロー)の状態で、クロック信号CKsのクロックパルス(このクロックパルスを1番目のクロックパルスと呼ぶ)が発生すると、ANDゲート部GX3の出力信号(クロック信号CKb)の値は「0」(ロー)となる。つまり、ANDゲート部GX3は、入力された1番目のクロックパルスを出力しない。一方で、信号SDoの論理値が「0」の場合は、NOTゲート部GX4によって信号SDoの値を反転させた値「1」がANDゲート部GX2に入力されるので、ANDゲート部GX2の出力信号(クロック信号CKa)の値は「1」となる。つまり、ANDゲート部GX2は、入力された1番目のクロックパルスを出力する。
信号SDoの論理値「0」の状態で、クロック信号CKsのクロックパルスが発生すると、ワンショットパルス発生器LCは、そのクロックパルスの立ち下がりから一定時間Tdpだけ信号SDoの論理値を「1」にする。クロック信号CKsのクロックパルスは、時間Tdpより短い周期Tcで発生しているので、次の(2番目の)クロックパルスが発生するタイミングでは、信号SDoの論理値は「1」のままとなる。したがって、ANDゲート部GX3は、入力された2番目のクロックパルスを出力し、ANDゲート部GX2は、2番目のクロックパルスを出力しない。3番目のクロックパルスは、1番目のクロックパルスの立ち下がりから一定時間Tdpが経過した後に発生するので、3番目のクロックパルスが発生するタイミングでは、信号SDoの論理は「0」となっている。したがって、ANDゲート部GX3は、入力された3番目のクロックパルスを出力せず、ANDゲート部GX2は、入力された3番目のクロックパルスを出力する。このような動作の繰り返しにより、ANDゲート部GX2は、発振周波数Fcが800MHzのクロック信号CKsのクロックパルスを1つ置きに間引いたクロック信号CKaを生成し、ANDゲート部GX3は、クロック信号CKaに対して位相が半周期ずれるように、発振周波数Fcが800MHzのクロック信号CKsのクロックパルスを1つ置きに間引いたクロック信号CKbを生成する。つまり、クロック信号発生部150は、発振周波数Fcが800MHzのクロック信号CKsを1/2に分周し、且つ、互いに位相が半周期ずれた2つのクロック信号CKa、CKbを生成している。したがって、このクロック信号CKa、CKbの発振周波数(発光周波数)Fbは400MHzとなる。
制御回路152aは、クロック信号CKaの各クロックパルスに応答して種光S1、S2を発光するように、パルス光発生部20aのパルス光源部35(具体的には、DFB半導体レーザ素子30、32)を制御する。これにより、パルス光発生部20aが射出するビームLBa1(LBb1)の周波数は400MHzとなる。制御回路152bは、クロック信号CKbの各クロックパルスに応答して種光S1、S2を発光するように、パルス光発生部20bのパルス光源部35(具体的には、DFB半導体レーザ素子30、32)を制御する。これにより、パルス光発生部20bが射出するビームLBa2(LBb2)の周波数は400MHzとなり、且つ、ビームLBa1(LBb1)に対して射出タイミングの位相が半周期ずれている。
なお、本変形例では、各パルス光発生部20a、20bのDFB半導体レーザ素子30、32が発光する種光S1、S2は、互いに偏光方向が直行した直線偏光の光であり、且つ、パルス光発生部20a、20bのDFB半導体レーザ素子30同士、および、DFB半導体レーザ素子32同士も、互いに偏光方向が直交した直線偏光の光である。これにより、パルス光発生部20aから射出されるビームLBa1(LBb1)と、パルス光発生部20bから射出されるビームLBa2(LBb2)とは、互いに直行する直線偏光の光となる。本変形例では、パルス光発生部20aのDFB半導体レーザ素子30が発光する種光S1、および、パルス光発生部20bのDFB半導体レーザ素子32が発光する種光S2の偏光状態はともにS偏光となる。また、パルス光発生部20aのDFB半導体レーザ素子32が発光する種光S2、および、パルス光発生部20bのDFB半導体レーザ素子30が発光する種光S1の偏光状態はともにP偏光となる。したがって、本変形例では、パルス光発生部20aが射出するビームLBa1(LBb1)はP偏光の光となり、パルス光発生部20bが射出するビームLBa2(LBb2)はS偏光の光となる。なお、パルス光発生部20aの偏光ビームスプリッタ34は、S偏光の光を透過してP偏光の光を反射し、パルス光発生部20bの偏光ビームスプリッタ34は、P偏光の光を透過してS偏光の光を反射することを前提とする。また、パルス光発生部20aの偏光ビームスプリッタ38は、P偏光の光を透過してS偏光の光を反射し、パルス光発生部20bの偏光ビームスプリッタ38は、S偏光の光を透過してP偏光の光を反射することを前提とする。
ORゲート部GX1は、入力された位相が互いに半周期ずれている2つのクロック信号CKa、CKbを合成して1つのクロック信号(基準クロック信号)LTCを生成(発生)する。これにより、クロック信号LTCの各クロックパルス(基準クロックパルス)は、800MHzの発振周波数Fa(周期Ta=1/Fa)で発生する。なお、クロック信号LTCは、クロック信号発生部150のクロック発生部60が発生したクロック信号CKsの周波数および位相と同一なので、ORゲート部GX1を設けなくてもよい。この場合は、クロック発生部60が発生したクロック信号CKsをクロック信号LTCとして用いればよい。
また、クロック信号発生部150は、クロック発生部60と可変遅延回路(図示略)とを有する構成であってもよい。この場合は、クロック発生部60は、400MHzの発振周波数Fcでクロック信号CKsを生成(発生)するとともに、前記可変遅延回路は、クロック信号CKsの周期Tc(=1/Fc)の1/2だけクロック信号CKsを遅延させる。クロック信号発生部150は、クロック発生部60が発生したクロック信号CKsをクロック信号CKaとして制御回路152aおよびORゲート部GX1に出力するとともに、前記可変遅延回路が1/2周期Tcだけ遅延させたクロック信号CKsをクロック信号CKbとして制御回路152bおよびORゲート部GX1に出力する。
このクロック信号LTCは、図示しないが、図9で示したのと同一構成の補正画素指定部62および送出タイミング切換部64にゲート回路GTaを介して入力される。本変形例では、この800MHzのクロック信号LTCに基づいて、補正画素が指定され、描画ビット列データSBa(SBb)若しくはシリアルデータDL1〜DL3(DL4〜DL6)の各画素の論理情報の送出タイミング、つまり、出力する論理情報の画素をシフトするタイミング、つまり、画素シフトパルスSBCa(SBCb)の出力タイミングが決定される。この補正画素指定部62および送出タイミング切換部64は、光源装置LSa(LSb)の内部に設けられていてもよいし、光源装置LSa(LSb)の外部に設けられていてもよい。
そして、この送出タイミング切換部64から出力される画素シフトパルスBSCa(BSCb)にしたがって順次出力される描画ビット列データSBa(SBb)若しくはシリアルデータDL1〜DL3(DL4〜DL6)の各画素の論理情報が、光源装置LSa(LSb)のパルス光発生部20a、20bの駆動回路36aに出力される。したがって、パルス光発生部20a、20bから射出されるビームLBa1(LBb1)、LBa2(LBb2)は、この描画ビット列データSBa(SBb)若しくはシリアルデータDL1〜DL3(DL4〜DL6)に基づいてその強度が変調される。また、射出されたビームLBa1(LBb1)、LBa2(LBb2)は、合成光学部材154によって1つのビームLBa(LBb)に合成される。このビームLBa1(LBb1)とビームLBa2(LB2b)とは、発振周波数Fbが400MHzで同一であり、位相が半周期ずれていることから、合成光学部材154によって800MHzのビームLBa(LBb)が生成されることになる。したがって、この生成された発振周波数Fa(=800MHz)のビームLBa(LBb)が光源装置LSa(LSb)から射出される。
合成光学部材154は、パルス光発生部20aが射出したP偏光のビームLBa1(LBb1)と、パルス光発生部20bが射出したS偏光のビームLBa2(LBb2)とを合成する偏光ビームスプリッタPBSと、パルス光発生部20aが射出したビームLBa1(LBb1)を偏光ビームスプリッタPBSに導くミラーM20、M21と、パルス光発生部20bが射出したビームLBa2(LBb2)を偏光ビームスプリッタPBSに導くミラーM22とを少なくとも有する。偏光ビームスプリッタPBSは、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する特性を有するので、ビームLBa1(LBb1)を透過し、ビームLBa2(LBb2)を反射する。このとき、偏光ビームスプリッタPBSの偏向分離面は、偏光ビームスプリッタPBSに入射するビームLBa1(LBb1)の光軸と直交する平面に対して45度傾き、且つ、偏光ビームスプリッタPBSに入射するビームLBa2(LBb2)の光軸と直交する平面に対して45度傾くように配置されている。これにより、偏光ビームスプリッタPBSを透過したビームLBa1(LBb1)と、偏光ビームスプリッタで反射したビームLBa2(LBb2)とが同軸となるので、ビームLBa1(LBb1)とビームLBa2(LBb2)とが合成される。
なお、光源装置LSa(LSb)から射出されるビームLBa(LBb)は、P偏向のビームLB1a(LB1b)とS偏光のビームLB2a(LB2b)を含むものとなっているので、図5に示す走査ユニットUn内の光学レンズ系G10、光検出器DT、および、λ/4波長板QWを省略してもよい。この場合は、描画ラインSLnの傾きを検出することができなくなる。また、描画ラインSLnの傾きを検出したい場合は、ビームLB1a(LB1b)と、ビームLB2a(LB2b)の偏向状態を、偏光板等によってともに同一(例えば、直線P偏向または円偏光)にする。そして、合成光学部材154は、互いに同軸となるようにこの2つのビームLB1a(LB1b)、ビームLB2a(LB2b)を合成すればよい。
このように、本変形例の露光装置EXでは、光源装置LSa(LSb)は、2つのパルス光発生部20(20a、20b)で、400MHzで発光したビームLBa1(LBb1)、LBa2(LBb2)を強度変調し、その強度変調されたビームLBa1(LBb1)、LBa2(LBb2)を合成してビームLBa(LBb)として射出するので、上記第1の実施の形態に比べ、さらに、描画ラインSLn(描画するパターン)の倍率をきめ細やかに補正することができる。
なお、ビームLBa1(LBb1)、LBa2(LBb2)の単位面積当たりの強度が強いと、それに応じて偏光ビームスプリッタPBS等に焼けが生じてしまう。そのため、単位面積当たりの強度を下げるために、ビームLBa1(LBb1)、LBa2(LBb2)の径を拡大させる拡大レンズG20a、G20bと、拡大されたビームLBa1(LBb1)、LBa2(LBb2)を平行光にするコリメートレンズCL20a、CL20bとを設けてもよい。また、参照符号160は、合成されたビームLBa(LBb)をビームプロファイラー162に導くための反射鏡等を含む光導光部材である。この光導光部材160は、ビームプロファイラー162の計測面上でビームLBa(LBb)がスポット光となるようにビームLBa(LBb)を集光(収斂)する。ビームプロファイラー162は、集光したビームLBa(LBb)のスポット光の2次元的な光強度分布を高精度に計測する。これにより、合成されたビームLBa(LBb)のビームLBa1(LBb1)とビームLBa2(LBb2)との同軸性を精密に計測することができる。この光導光部材160は、反射鏡の移動等によってビームLBa(LBb)の光軸位置(光路)から退避可能に構成される。
また、本変形例では、1画素に対して16個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応するようにしたが、1画素に対して8個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応するようにしてもよい。スポット光SPの投射間隔は、本変形例と同様に、0.1875μmとすると、8個のスポット光SPが1画素に対応するため、1画素の寸法Pxyは、1.5(=0.1875×8)μmとなる。したがって、この場合は、スポット光SPのサイズφも寸法Pxyと同程度以下の大きさ、つまり、1.5μm以下とする。この場合であっても、本変形例と同様の効果を得ることができるとともに、画素の寸法を小さくすることができるので、パターンの解像度、分解能を飛躍的に細かくすることができ、より高精細なパターンを描画露光することができる。
画素の寸法Pxと寸法Pyとは同じ長さ(例えば、3μm)としたが、寸法Pxと寸法Pyとの長さを異ならせてもよい。要は、クロック信号発生部150は、(Py×M)/(N×Vs)で決まる基準周期Tbを有するとともに、基準周期Tbの1/Mの補正時間ずつ位相を与えた複数(M個)のクロック信号(第1クロック信号)CKを発生すればよい。
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。上記第1の実施の形態(変形例も含む)では、主走査方向におけるスポット光SPの投射間隔を一定にし、局所的に補正画素の1画素当りのスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)の数を変更することで、描画ラインSLnの走査長を伸縮させた。これに対して、本第2の実施の形態では、1画素当りのスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)の数は全て同じにし、局所的に主走査方向におけるスポット光SPの投射間隔を変更させることで、描画ラインSLnの走査長を伸縮させる。
なお、本第2の実施の形態においては、描画ラインSLn(SL1〜SL6)の実効的な長さを30mm、スポット光SPのサイズφを3μmとし、原則として主走査方向におけるスポット光SPの投射間隔をスポット光SPのサイズφの1/2、つまり、1.5μmとする。したがって、1回の走査で照射されるスポット光SPの数は、20000(=30〔mm〕/1.5〔μm〕)となる。また、基板Pの副走査方向の送り速度(搬送速度)Vtを2.419mm/secとし、副走査方向についてもスポット光SPの走査が1.5μmの間隔で行われるものとすると、描画ラインSLnに沿った1回の走査開始(描画開始)時点と次の走査開始時点との時間差Tpxは、約620μsec(=1.5〔μm〕/2.419〔mm/sec〕)となる。この時間差Tpxは、8反射面RPのポリゴンミラーPMが1面分(45度=360度/8)だけ回転する時間である。この場合、ポリゴンミラーPMの1回転の時間が、約4.96msec(=8×620〔μsec〕)となるように設定される必要があるので、ポリゴンミラーPMの回転速度Vpは、毎秒約201.613回転(=1/4.96〔msec〕)、すなわち、約12096.8rpmに設定される。
また、ポリゴンミラーPMの反射面の数Npを8とし、その走査効率を1/3とする。そのため、描画ラインSLnの最大走査長(例えば、31mm)分だけスポット光SPを走査するのに必要な時間Tsは、Ts=Tpx×走査効率、となり、先の数値例の場合は、時間Tsは、約206.666・・・μsec(620〔μsec〕/3)、となる。描画ラインSLn(SL1〜SL6)が伸縮されない場合(倍率が1倍の場合)の実効的な走査長を30mmとするので、この描画ラインSLnに沿ったスポット光SPの1走査の走査時間Tspは、約200μsec(=206.666・・・〔μsec〕×30〔mm〕/31〔mm〕)、となる。したがって、描画ラインSLnが伸縮されない場合は、この時間Tspの間に、20000のスポット光SP(パルス光)を照射する必要があるので、光源装置LSからのビームLBの発光周波数(発振周波数)Feは、Fe≒20000〔回〕/200〔μsec〕=100MHzとなる。また、スポット光SPの走査速度Vsは、30〔mm〕/200〔μsec〕=150m/secとなる。なお、本第2の実施の形態では、1画素の寸法Pxyをスポット光SPの実効的なサイズφと同じ3μmとし、1画素に対して2個のスポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)が対応しているものとする。
図20は、第2の実施の形態における光源装置LSa(LSb)の内部に設けられる信号発生部22aの構成を示す図である。なお、上記第1の実施の形態(変形例も含む)と同様の構成については同様の符号を付し、異なる部分だけを説明する。この信号発生部22aは、上記第1の実施の形態と同様に、制御回路22の内部に設けられているが、制御回路22の外部に設けられていてもよい。また、光源装置LSa(LSb)の外部にこの信号発生部22aを設けてもよい。また、本第2の実施の形態では、図12に示す局所倍率設定部112から補正位置情報Nv´と伸縮情報(極性情報)POL´とを有する局所倍率補正情報CMgn´が信号発生部22aに送られるものとする。この局所倍率設定部112は、走査ユニットUn(U1〜U6)毎に、局所倍率補正情報CMgn´(CMg1´〜CMg6´)を記憶する。局所倍率設定部112は、上記第1の実施の形態と同様に、スポット光SPの走査を行う走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgn´を光源装置LS(LSa、LSb)の信号発生部22aに出力する。なお、局所倍率補正情報CMgn´は、局所倍率補正を行うための情報である。
信号発生部22aは、クロック信号発生部200、補正点指定部202、および、クロック切換部204を有する。このクロック信号発生部200、補正点指定部202、および、クロック切換部204等は、FPGA(Field Programmable Gate Array)により集約して構成することができる。クロック信号発生部200は、φ/Vs、で定まる周期よりも短い基準周期Teを有するとともに、基準周期Teの1/Nの補正時間ずつ位相差を与えた複数(N個)のクロック信号CKp(p=0、1、2、・・・、N−1)を生成する。φは、スポット光SPの実効的なサイズであり、Vsは、基板Pに対するスポット光SPの主走査方向の相対的な速度である。なお、基準周期Teが、φ/Vsで定まる周期よりも長い場合は、主走査方向に沿って照射されるスポット光SPが所定の間隔をあけて離散的に基板Pの被照射面上に照射されてしまう。逆に、基準周期Teが、φ/Vsで定まる周期よりも短い場合は、スポット光SPが主走査方向に関して互いに重なり合うように基板Pの被照射面上に照射される。本第2の実施の形態では、原則として、スポット光SPがサイズφの1/2ずつオーバーラップするように発振周波数Feが100MHzのパルス状のスポット光SPを照射するので、基準周期Teは、1/Fe=1/100〔MHz〕=10〔nsec〕となり、φ/Vs=3〔μm〕/150〔mm/sec〕=20nsecより小さい値となる。また、N=50とするので、クロック信号発生部200は、0.2nsec(=10〔nsec〕/50)の位相差が与えられた50個のクロック信号CK0〜CK49を生成する。
具体的には、クロック信号発生部200は、クロック発生部(発振器)60と、複数(N−1個)の遅延回路De(De01〜De49)とを有する。クロック発生部60は、全体倍率補正情報TMgに応じた発振周波数Fe(=1/Te)で発振するクロックパルスからなるクロック信号CK0を発生する。本第2の実施の形態では、全体倍率補正情報TMgを0とし、クロック発生部60は、100MHzの発振周波数Fe(基準周期Te=10nsec)でクロック信号CK0を発生する。
クロック発生部60からのクロック信号(出力信号)CK0は、直列に接続された複数の遅延回路De(De01〜De49)の初段(先頭)の遅延回路De01に入力されるとともに、クロック切換部204の1番目の入力端子に入力される。この遅延回路De(De01〜De049)は、入力信号であるクロック信号CKpを一定時間(Te/N=0.2nsec)だけ遅延させて出力する。したがって、初段の遅延回路De01は、クロック発生部60が発生したクロック信号CK0と同一の基準周期Te(10nsec)であり、且つ、クロック信号CK0に対して0.2nsecの遅れを持ったクロック信号(出力信号)CK1を出力する。同様に、2段目の遅延回路De02は、前段の遅延回路De01からのクロック信号(出力信号)CK1と同一の基準周期Te(10nsec)であり、且つ、クロック信号CK1に対して0.2nsecの遅れを持ったクロック信号(出力信号)CK2を出力する。3段目以降の遅延回路De03〜De49も同様に、前段の遅延回路De02〜De48からのクロック信号(出力信号)CK2〜CK48と同一の基準周期Te(10nsec)であり、且つ、クロック信号CK2〜CK48に対して0.2nsecの遅れを持ったクロック信号(出力信号)CK3〜CK49を出力する。
クロック信号CK0〜CK49は、0.2nsecずつ位相差が与えられた信号であることから、クロック信号CK0は、クロック信号CK49と同一の基準周期Te(10nsec)であり、且つ、クロック信号CK49に対してさらに0.2nsecの遅れを持ったクロック信号と、丁度1周期だけずれた信号となる。したがって、クロック信号CK0は、実質的にクロック信号CK49の各クロックパルスに対して0.2nsecの遅れたクロック信号と見做すことができる。遅延回路De01〜De49からのクロック信号CK1〜CK49は、クロック切換部204の2番目〜50番目の入力端子に入力される。
各遅延回路De(De01〜De49)は、例えば、図21Aまたは図21Bに示すようなゲート回路(論理回路)が使われる。図21Aでは、一方の入力端子In1に入力信号(クロック信号CKp)が入力され、他方の入力端子In2に、ハイ(論理値は1)の信号が印加されるANDゲート回路GT10によって構成される。このANDゲート回路GT10によって、入力信号(クロック信号CKp)に対して0.2nsecだけ遅れを持った出力信号(クロック信号CKp+1)が出力される。また、図21Bでは、一方の入力端子In1に入力信号(クロック信号CKp)が入力され、他方の入力端子In2に、ロー(論理値は0)の信号が印加されるORゲート回路GT11によって構成される。このORゲート回路GT11によって、入力信号(クロック信号CKp)に対して0.2nsecだけ遅れを持った出力信号(クロック信号CKp+1)が出力される。このように、各遅延回路De(De01〜De49)は、複数のトランジスタで組まれるゲート回路(論理回路)によって所望の遅延時間を得るようにしてもよいし、1〜2個のトランジスタを接続した簡単なものであってもよい。
クロック切換部204は、入力された50個のクロック信号CKp(CK0〜CK49)のうち、いずれか1つのクロック信号CKpを選択し、選択したクロック信号CKpをクロック信号(基準クロック信号)LTCとして出力するマルチプレクサ(選択回路)である。したがって、クロック信号LTCの発振周波数Fa(=1/Ta)は、原則としてクロック信号CK0〜CK49の発振周波数Fe(=1/Ta)、つまり、100MHzと同じになる。制御回路22は、クロック切換部204から出力されるクロック信号LTCの各クロックパルスに応答して種光S1、S2が発光するように、DFB半導体レーザ素子30、32を制御する。したがって、光源装置LSa(LSb)から射出されるパルス状のビームLBa(LBb)の発振周波数Faは、原則として100MHzとなる。
クロック切換部204は、スポット光SPが走査線上に位置する特定の補正点CPPを通過するタイミングで、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKp、つまり、ビームLBa(LBb)の発生に起因するクロック信号CKpを、位相差の異なる他のクロック信号CKpに切り換える。クロック切換部204は、スポット光SPが補正点CPPを通過するタイミングで、クロック信号LTCとして選択するクロック信号CKpを、クロック信号LTCとして現在選択しているクロック信号CKpに対して0.2nsecだけ位相差を有するクロック信号CKp±1に切り換える。この切り換えるクロック信号CKp±1の位相差の方向、つまり、位相が0.2nsecだけ遅れる方向か位相が0.2nsecだけ進む方向かは、局所倍率補正情報(補正情報)CMgn´(CMg1´〜CMg6´)の一部である1ビットの伸縮情報(極性情報)POL´に応じて決定される。
伸縮情報POL´がハイ「1」(伸長)の場合は、クロック切換部204は、現在クロック信号LTCとして出力しているクロック信号CKpに対して0.2nsecだけ位相が遅れたクロック信号CKp+1をクロック信号LTCとして選択して出力する。また、伸縮情報POL´がロー「0」(縮小)の場合は、クロック切換部204は、現在クロック信号LTCとして出力しているクロック信号CKpに対して0.2nsecだけ位相が進んだクロック信号CKp-1をクロック信号LTCとして選択して出力する。例えば、クロック切換部204は、現在クロック信号LTCとして出力しているクロック信号CKpがCK11の場合において、伸縮情報POL´がハイ(H)の場合は、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpをクロック信号CK12に切り換え、伸縮情報POL´がロー(L)の場合は、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpをクロック信号CK10に切り換える。スポット光SPの1回の走査期間中は、同一の伸縮情報POL´が入力される。
クロック切換部204は、ビーム切換部BDUによってビームLBnが入射する走査ユニットUnに対応した局所倍率補正情報CMgn´の伸縮情報POL´を用いて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向(位相が進む方向か遅れる方向か)を決定する。光源装置LSaからのビームLBa(LB1〜LB3)は走査ユニットU1〜U3のいずれか1つに導かれる。したがって、光源装置LSaの信号発生部22aのクロック切換部204は、走査ユニットU1〜U3のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgn´の伸縮情報POL´に基づいて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向を決定する。例えば、走査ユニットU2にビームLB2が入射する場合は、光源装置LSaのクロック切換部204は、走査ユニットU2に対応した局所倍率補正情報CMg2´の伸縮情報POL´に基づいて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向を決定する。
また、光源装置LSbからのビームLBb(LB4〜LB6)は走査ユニットU4〜U6のいずれか1つに導かれる。したがって、光源装置LSbの信号発生部22aのクロック切換部204は、走査ユニットU4〜U6のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgn´の伸縮情報POL´に基づいて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向を決定する。例えば、走査ユニットU6にビームLB6が入射する場合は、光源装置LSbのクロック切換部204は、走査ユニットU6に対応した局所倍率補正情報CMg6´の伸縮情報POL´に基づいて、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpの位相がずれる方向を決定する。
補正点指定部202は、各描画ラインSLn(SL1〜SL6)上の特定の点を補正点CPPとして指定する。補正点指定部202は、局所倍率補正情報(補正情報)CMgn´(CMg1´〜CMg6´)の一部である補正点CPPを指定するための補正位置情報(設定値)Nv´に基づいて補正点CPPを指定する。この局所倍率補正情報CMgn´の補正位置情報Nv´は、描画ラインSLnに沿って描画されるパターンの描画倍率(または描画ラインSLnの主走査方向における倍率)に応じて、描画ラインSLn上の等間隔に離散的な複数の位置の各々に補正点CPPを指定するための情報であり、補正点CPPと補正点CPPとの距離間隔(等間隔)を示す情報である。これにより、補正点指定部202は、描画ラインSLn(SL1〜SL6)上に等間隔に離散的に配置される位置を補正点CPPとして指定することができる。この補正点CPPは、描画ラインSLnに沿って投射される隣り合う2つのスポット光SPの投射位置(スポット光SPの中心位置)の間に設定される。
補正点指定部202は、ビーム切換部BDUによってビームLBnが入射する走査ユニットUnに対応した局所倍率補正情報CMgn´の補正位置情報Nv´を用いて補正点CPPを指定する。光源装置LSaからのビームLBa(LB1〜LB3)が走査ユニットU1〜U3のいずれか1つに導かれるので、光源装置LSaの信号発生部22aの補正点指定部202は、走査ユニットU1〜U3のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgn´の補正位置情報Nv´に基づいて補正点CPPを指定する。例えば、走査ユニットU2にビームLB2が入射する場合は、光源装置LSaの補正点指定部202は、走査ユニットU2に対応した局所倍率補正情報CMg2´の補正位置情報Nv´に基づいて、描画ラインSLn2上に等間隔に離散的に配置される複数の位置を補正点CPPとして指定する。
また、光源装置LSbからのビームLBb(LB4〜LB6)が走査ユニットU4〜U6のいずれか1つに導かれるので、光源装置LSbの信号発生部22aの補正点指定部202は、走査ユニットU4〜U6のうち、ビームLBnが入射する1つの走査ユニットUnに対応する局所倍率補正情報CMgn´の補正位置情報Nv´に基づいて補正点CPPを指定する。例えば、走査ユニットU6にビームLB6が入射する場合は、光源装置LSbの補正点指定部202は、走査ユニットU6に対応した局所倍率補正情報CMg6´の補正位置情報Nv´に基づいて、描画ラインSLn6上に等間隔に離散的に配置される複数の位置を補正点CPPとして指定する。
この補正点指定部202について具体的に説明すると、補正点指定部202は、分周カウンタ回路212とシフトパルス出力部214とを有する。分周カウンタ回路212は、減算カウンタであり、クロック切換部204から出力されるクロック信号LTCのクロックパルス(基準クロックパルス)が入力される。クロック切換部204から出力されたクロック信号LTCのクロックパルスは、ゲート回路GTaを介して分周カウンタ回路212に入力される。ゲート回路GTaは、上記第1の実施の形態で説明した描画許可信号SQnがハイ(H)の期間に開くゲートである。つまり、分周カウンタ回路212は、描画許可信号SQnがハイの期間中だけ、クロック信号LTCのクロックパルスをカウントすることになる。光源装置LSaの信号発生部22aのゲート回路GTaには、走査ユニットU1〜U3に対応する3つの描画許可信号SQ1〜SQ3が印加される。したがって、光源装置LSaのゲート回路GTaは、描画許可信号SQ1〜SQ3のいずれかがハイ(H)の期間に入力されたクロック信号LTCのクロックパルスを分周カウンタ回路212に出力する。同様に、光源装置LSbの信号発生部22aのゲート回路GTaには、走査ユニットU4〜U6に対応する3つの描画許可信号SQ4〜SQ6が印加される。したがって、光源装置LSbのゲート回路GTaは、描画許可信号SQ4〜SQ6のいずれかがハイ(H)の期間に入力されたクロック信号LTCのクロックパルスを分周カウンタ回路212に出力する。
分周カウンタ回路212は、カウント値C3が補正位置情報(設定値)Nv´にプリセットされ、クロック信号LTCのクロックパルスが入力される度にカウント値C3をデクリメントする。分周カウンタ回路212は、カウント値C3が0になると1パルスの一致信号Idcをシフトパルス出力部214に出力する。つまり、分周カウンタ回路212は、クロック信号LTCのクロックパルスを補正位置情報Nv´分だけカウントすると一致信号Idcを出力する。この一致信号Idcは、次のクロックパルスが発生する前に補正点CPPが存在することを示す情報である。また、分周カウンタ回路212は、カウント値C3が0になった後、次のクロックパルスが入力されると、カウント値C3を補正位置情報Nv´にプリセットする。これにより、描画ラインSLnに沿って等間隔に補正点CPPを複数指定することができる。なお、補正位置情報Nv´の具体的な値は、後で例示する。
シフトパルス出力部214は、一致信号Idcが入力されるとシフトパルスCSをクロック切換部204に出力する。このシフトパルスCSが発生すると、クロック切換部204は、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpを切り換える。このシフトパルスCSは、補正点CPPを示す情報であり、分周カウンタ回路212のカウント値C3が0になった後、次のクロックパルスが入力される前に発生する。したがって、分周カウンタ回路212のカウント値C3を0にしたクロックパルスに応じて発生したビームLBa(LBb)のスポット光SPの基板P上における位置と、次のクロックパルスに応じて発生したビームLBa(LBb)のスポット光SPの基板P上における位置との間に補正点CPPは存在することになる。
上述したように、本第2の実施の形態では、1描画ラインSLn当り20000個のスポット光SPを投射し、描画ラインSLn上に補正点CPPを等間隔に離散的に40個配置すると、スポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)の500個間隔で補正点CPPが配置されることになる。したがって、補正位置情報Nv´は、500となる。
図22は、図20に示す信号発生部22aの各部から出力される信号を示すタイムチャートである。クロック信号発生部200が発生する50個のクロック信号CK0〜CK49は、いずれもクロック発生部60が出力するクロック信号CK0と同じ周期Teではあるが、その位相が0.2nsecずつ遅れたものとなっている。したがって、例えば、クロック信号CK3は、クロック信号CK0に対して0.6nsec位相が遅れたものとなり、クロック信号CK49は、クロック信号CK0に対して9.8nsec位相が遅れたものとなっている。
分周カウンタ回路212が、クロック切換部204から出力されるクロック信号LTCのクロックパルスを補正位置情報(設定値)Nv´分だけカウントすると一致信号Idc(図示略)を出力し、これに応じて、シフトパルス出力部214がシフトパルスCSを出力する。シフトパルス出力部214は、通常は、ハイ(論理値が1)の信号を出力しているが、一致信号Idcが出力されるとロー(論理値は0)に立ち下がり、クロック信号CKpの基準周期Teの半分(半周期)の時間が経過するとハイ(論理値は1)に立ち上がるシフトパルスCSを出力する。これにより、このシフトパルスCSは、分周カウンタ回路212がクロック信号LTCのクロックパルスを補正位置情報(設定値)Nv´分だけカウントしてから、次のクロックパルスが入力される前に立ち上がる。
クロック切換部204は、シフトパルスCSの立ち上がりに応答して、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpを、シフトパルスCSが発生する直前まで出力していたクロック信号CKpから、伸縮情報POL´に応じた方向に0.2nsec位相がずれたクロック信号CKp±1に切り換える。図22の例では、シフトパルスCSが発生する直前までクロック信号LTCとして出力していたクロック信号CKpをCK0、伸縮情報POL´を「0」(縮小)としているので、シフトパルスCSの立ち上がりに応答して、クロック信号CK49に切り換わっている。このように、伸縮情報POL´が「0」の場合は、スポット光SPが補正点CPPを通過する度に(つまり、シフトパルスCSが発生する度に)、クロック切換部204は、位相が0.2nsecずつ進むようにクロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpを切り換える。したがって、クロック信号LTCとして出力(選択)されるクロック信号CKpは、CK0→CK49→CK48→CK47→・・・・、の順番で切り換わる。このシフトパルスCSが発生する補正点CPPの位置では、クロック信号LTCの周期が基準周期Te(=10nsec)に対して、0.2nsec短い時間(9.8nsec)となり、それ以降は、スポット光SPが次の補正点CPPを通過するまで(次のシフトパルスCSが発生するまで)、クロック信号LTCの周期は基準周期Te(=10nsec)となる。
逆に、伸縮情報POL´が「1」の場合は、スポット光SPが補正点CPPを通過する度に(つまり、シフトパルスCSが発生する度に)、クロック切換部204は、位相が0.2nsecずつ遅れるようにクロック信号LTCとして出力(選択)するクロック信号CKpを切り換える。したがって、クロック信号LTCとして出力(選択)されるクロック信号CKpは、CK0→CK1→CK2→CK3→・・・・、の順番で切り換わる。このシフトパルスCSが発生する補正点CPPの位置では、クロック信号LTCの周期が基準周期Te(=10nsec)に対して、0.2nsec長い時間(10.2nsec)となり、それ以降は、スポット光SPが次の補正点CPPを通過するまで(次のシフトパルスCSが発生するまで)、クロック信号LTCの周期は基準周期Te(=10nsec)となる。
本第2の実施の形態では、実効的なサイズφが3μmのスポット光SPが1.5μmずつ重なるように主走査方向に沿って投射されるので、補正点CPPにおけるクロック信号LTCの周期の補正時間(±0.2nsec)は、0.03μm(=1.5〔μm〕×(±0.2〔nsec〕/10〔nsec〕))に相当し、1画素当り±0.03μm伸縮することになる。したがって、上記第1の実施の形態(変形例も含む)に比べ、よりきめ細やかな倍率補正が可能となる。
図23Aは、局所倍率補正が行われていない場合に描画されるパターンPPを説明する図であり、図23Bは、図22に示すタイムチャートにしたがって局所倍率補正(縮小)が行われた場合に描画されるパターンPPを説明する図である。なお、強度が高レベルのスポット光SPを実線で表し、強度が低レベルまたはゼロのスポット光SPを破線で表している。
図23A、図23Bに示すように、クロック信号LTCの各クロックパルスに応答して発生したスポット光SPによってパターンPPが描画される。図23Aと図23Bのクロック信号LTCとパターンPPとを区別するため、図23A(局所倍率補正が行われていない場合)のクロック信号LTC、パターンPPを、LTC1、PP1で表し、図23B(局所倍率補正が行われた場合)のクロック信号LTC、パターンPPを、LTC2、PP2で表している。
局所倍率補正が行われていない場合は、図23Aに示すように、描画される各画素の寸法Pxyは、主走査方向において一定の長さとなる。なお、画素の副走査方向(X方向)の長さをPxで表し、主走査方向(Y方向)の長さをPyで表している。図22に示すようなタイムチャートにしたがって局所倍率補正(縮小)が行われると、補正点CPPを含む画素の寸法Pxyは、画素の長さPyがΔPy(=0.03μm)だけ縮んだ状態となる。逆に、伸長の局所倍率補正が行われると、補正点CPPを含む画素の寸法Pxyは、画素の長さPyがΔPy(=0.03μm)だけ伸びた状態となる。
なお、シリアルデータDLnの画素シフトについては特に触れなかったが、クロック切換部204からクロック信号LTCのクロックパルスが2個出力される度に、図12に示す描画データ出力部114は、光源装置LSa(LSb)の駆動回路36aに出力するシリアルデータDLnの画素の論理情報を行方向に1つシフトする。これにより、スポット光SP(クロック信号LTCのクロックパルス)の2個が1画素に対応することになる。
以上のように、第2の実施の形態の露光装置EXは、パルス光源部35からの種光S1、S2に応じて生成されるビームLB(Lse、LBa、LBb、LBn)のスポット光SPをパターンデータに応じて強度変調しつつ、基板P上の描画ラインSLnに沿ってスポット光SPを相対的に走査することにより、基板P上にパターンを描画する。露光装置EXは、クロック信号発生部200、制御回路(光源制御部)22、および、クロック切換部204を少なくとも備える。上述したように、クロック信号発生部200は、φ/Vsで決まる周期よりも短い基準周期Te(例えば、10nsec)を有するとともに、基準周期Teの1/Nの補正時間(例えば、0.2nsec)ずつ位相差を与えた複数(N=50個)のクロック信号CKp(CK0〜CK49)を生成する。制御回路(光源制御部)22は、複数のクロック信号CKpのうちいずれか1つのクロック信号CKp(クロック信号LTC)の各クロックパルスに応答してビームLBが発生するようにパルス光源部35を制御する。クロック切換部204は、スポット光SPが描画ラインSLn上に指定される特定の補正点CPPを通過するタイミングで、ビームLBの発生に起因するクロック信号CKp、つまり、クロック信号LTCとして出力されるクロック信号CKpを、位相差の異なる他のクロック信号CKpに切り換える。したがって、描画ラインSLn(描画するパターン)の倍率をきめ細やかに補正することができ、ミクロンオーダーでの精密な重ね合わせ露光を行うことができる。
クロック切換部204は、スポット光SPが描画ラインSLn上の補正点CPPを通過する際に、制御回路22に現在入力しているクロック信号CKpに対して、補正時間(±Te/N=0.2nsec)の位相差を有するクロック信号CKpに切り換える。これにより、描画ラインSLn(描画するパターン)の倍率をよりきめ細やかに補正することができる。
露光装置EXは、描画ラインSLn上の補正点CPPを指定するための局所倍率補正情報(補正情報)CMgn´を、複数の走査ユニットUn毎に記憶する局所倍率設定部(補正情報記憶部)112を備える。クロック切換部204は、ビーム切換部BDUによってビームLBが導かれる走査ユニットUnに対応した局所倍率補正情報CMgn´に基づいてクロック信号CKpを切り換える。これにより、描画ラインSLn(走査ユニットUn)毎に、描画ラインSLn(描画するパターン)の倍率をきめ細やかに補正することができる。したがって、パターン露光の重ね合わせ精度が向上する。
局所倍率補正情報CMgn´は、描画ラインSLnに沿って描画されるパターンの描画倍率に応じて、描画ラインSLn上の離散的な複数の位置の各々に補正点CPPを指定するための補正位置情報Nv´を含む。クロック切換部204は、補正位置情報Nv´に基づいて描画ラインSLn上の複数の補正点CPPの各々でクロック信号CKpを切り換える。これにより、ムラなく描画ラインSLn(描画するパターン)を倍率補正(伸縮)させることができる。
局所倍率補正情報CMgn´は、描画ラインSLnに沿って描画されるパターンの描画倍率に応じて、切り換えるクロック信号CKpが、制御回路22に現在入力しているクロック信号CKpに対して、位相が遅れる方向か進む方向かであるかの伸縮情報(極性情報)POL´を含む。これにより、伸縮情報POL´に応じて、描画ラインSLn(描画するパターン)を伸長または縮小させることができる。
なお、クロック切換部204は、クロック信号LTCとして出力するクロック信号CKpを、現在出力しているクロック信号LTCとして出力しているクロック信号CKpに対して、q×Te/N=q×0.2nsec、だけ位相差を有するクロック信号CKp±qに切り換えてもよい。ただし、qは、q<Nの関係を有する1以上の整数であるとする。したがって、例えば、qが2の場合であって、現在出力しているクロック信号LTCとして出力しているクロック信号CKpがクロック信号CK11の場合であって、伸縮情報POL´が「1」のときは、クロック切換部204は、クロック信号CK11に対して位相が0.4nsecだけ遅れたクロック信号CK13に切り換える。また、伸縮情報POL´が「1」の場合は、クロック切換部204は、クロック信号CK11に対して位相が0.4nsecだけ進んだクロック信号CK9に切り換える。この「q」の値を示す情報は、伸縮率情報REC´として、局所倍率設定部112(図12参照)からクロック切換部204に入力される。この伸縮率情報REC´は、局所倍率補正情報CMgn´の一部に含まれる。スポット光SPの1回の走査期間中は、同一の伸縮率情報REC´が入力される。
この局所倍率補正情報CMgn´(CMg1´〜CMg6´)の補正位置情報(設定値)Nv´は、任意に変更することができ、描画ラインSLnの倍率に応じて適宜設定される。例えば、描画ラインSLn上に位置する補正点CPPが1つとなるように、補正位置情報Nv´を設定してもよい。また、1描画ラインSLnでは補正位置情報Nv´の値を一定としたが、1描画ラインSLnで、補正位置情報Nv´を変更させてもよい。この場合であっても、描画ラインSLn上の離散的な位置に複数の補正点CPPが指定されることには変わりはないが、補正位置情報Nvを変更することで、補正点CPPの間隔を不均一にすることができる。さらに、描画ラインSLnに沿ったビームLBn(スポット光SP)の1走査毎、或いはポリゴンミラーPMの1回転毎に、描画ラインSLn上の補正画素の数は変えずに、補正画素(補正点CPP)の位置を異ならせるようにしてもよい。
[第1および第2の実施の形態の変形例]
上記各実施の形態(変形例も含む)は、以下のような変形も可能である。なお、上記各実施の形態(変形例も含む)と同一の構成については同様の符号を付し、異なる箇所のみを説明する。
(変形例1)上記各実施の形態(変形例も含む)では、光源装置LSa、LSbのパルス光発生部20に設けられた描画用光変調器としての電気光学素子(強度変調部)36を、描画ビット列データSBa(シリアルデータDL1〜DL3)、SBb(シリアルデータDL4〜DL6)を用いてスイッチングするようにした。しかしながら、変形例1では、描画用光変調器として、電気光学素子36に代えて描画用光学素子AOMを用いる。この描画用光学素子AOMは、音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)である。
例えば、図24に示すように、ビーム切換部BDUの選択用光学素子AOM1〜AOM3のうち、光源装置LSaからのビームLBaが最初に入射する選択用光学素子AOM1と光源装置LSaとの間に、描画用光学素子(強度変調部)AOMaを配置する。同様に、ビーム切換部BDUの選択用光学素子AOM4〜AOM6のうち、光源装置LSbからのビームLBbが最初に入射する選択用光学素子AOM4と光源装置LSbとの間に、描画用光学素子(強度変調部)AOMbを配置する。この描画用光学素子AOMaは、図14に示した描画データ出力部114の第1データ出力部114aから出力される描画ビット列データSBa(シリアルデータDL1〜DL3)に応じてスイッチングされ、描画用光学素子AOMbは、第2データ出力部114bから出力される描画ビット列データSBb(シリアルデータDL4〜DL6)によってスイッチングされる。この描画用光学素子AOMa(AOMb)は、画素の論理情報が「0」の場合は入射したビームLBa(LBb)を透過して図示しない吸収体に導き、画素の論理情報が「1」の場合は入射したビームLBa(LBb)を回折させた1次回折光を発生する。この発生した1次回折光が選択用光学素子AOM1(AOM4)に導かれる。したがって、画素の論理情報が「0」の場合は、基板Pの被照射面上にスポット光SPが投射されないので、スポット光SPの強度は低レベル(ゼロ)になり、画素の論理情報が「1」の場合は、スポット光SPの強度は高レベルになる。これにより、走査ユニットU1〜U3(U4〜U6)によって走査されるスポット光SPの強度をシリアルデータDL1〜DL3(DL4〜DL6)に応じて変調させることができる。この場合であっても、上記各実施の形態等と同様の効果を得ることができる。
また、描画用光学素子(強度変調部)AOMcn(AOMc1〜AOMc6)を走査ユニットUn(U1〜U6)毎に設けてもよい。この場合は、描画用光学素子AOMcnは、各走査ユニットUnの反射ミラーM14(図5参照)の手前に設けてもよい。この各走査ユニットUn(U1〜U6)の描画用光学素子AOMcn(AOMc1〜AOMc6)は、各シリアルデータDLn(DL1〜DL6)に応じてスイッチングされる。走査ユニットU1内に設けられた描画用光学素子AOMc1は、シリアルデータDL1に応じてスイッチングされる。同様に、走査ユニットU2〜U6内に設けられた描画用光学素子AOMc2〜AOMc6は、シリアルデータDL2〜DL6に応じてスイッチングされる。また、各走査ユニットUnの描画用光学素子AOMcnは、画素の論理情報が「0」の場合は、入射したビームLBnを図示しない吸収体に導き、画素の論理情報が「1」の場合は入射したビームLBnを回折させた1次回折光を発生する。この発生した1次回折光(ビームLBn)は、反射ミラーM14に導かれてスポット光SPとして基板上に投射される。
本変形例1では、光源装置LSa(LSb)内で、ビームLBの強度変調を行う必要がないので、DFB半導体レーザ素子32、偏光ビームスプリッタ34、38、電気光学素子36、および、吸収体40は不要となる。したがって、DFB半導体レーザ素子30が発光した種光S1は、直接コンバイナ44に導かれる。
(変形例2)光源装置LSからのビームLBの各々を、複数のビームスプリッタを使って3つまたは6つに分割し、分割した3つまたは6のビームLBの各々を、3つのまたは6つの走査ユニットUnに入射させるようにしてもよい。この場合は、走査ユニットUnに入射する分割後のそれぞれのビームLBをシリアルデータDLnを用いて強度変調させる。
(変形例3)上記各実施の形態(変形例も含む)では、シート状の基板Pを回転ドラムDRの外周面に密接させた状態で、円筒面状に湾曲した基板Pの表面に、複数の走査ユニットUnの各々による描画ラインSLnに沿ったパターン描画を行うようにした。しかしながら、例えば、国際公開第WO2013/150677号パンフレットに開示されているように、基板Pを平面状に支持しつつ長尺方向に送りながら露光処理するような構成であってもよい。この場合、基板Pの表面がXY平面と平行に設定されるものとすると、例えば、図2、図3に示した奇数番の走査ユニットU1、U3、U5の各照射中心軸Le1、Le3、Le5と、偶数番の走査ユニットU2、U4、U6の各照射中心軸Le2、Le4、Le6とが、XZ平面と平行な面内でみると互いにZ軸と平行で、且つ、X方向に一定の間隔で位置するように、複数の走査ユニットU1〜U6を配置すればよい。
(変形例4)以上の第1の実施の形態、第2の実施の形態、或いはそれらの各変形例において、各走査ユニットUnは、図5に示したように、ポリゴンミラーPMの反射面に向かうビームLBnを1次元方向(図5ではZt方向)に収斂する第1のシリンドリカルレンズ(トーリックレンズ)CYaと、ポリゴンミラーPMの1つの反射面で反射して、fθレンズFTを通ったビームLBnを1次元方向(図5ではXt方向)に収斂する第2のシリンドリカルレンズ(トーリックレンズ)CYbとを設けることにより、ポリゴンミラーPMの各反射面の僅かな倒れによる描画ラインSLn(スポット光SP)の副走査方向(Xt方向)へのブレを抑制している。この場合、第1のシリンドリカルレンズCYaの母線と直交する面内でみたとき、第1のシリンドリカルレンズCYaの後側焦点が、ポリゴンミラーPMの反射面の位置となるように設定される。さらに、第2のシリンドリカルレンズCYbの母線と直交した面内でみたとき、fθレンズFTと第2のシリンドリカルレンズCYbとの合成系は、ポリゴンミラーPMの反射面と基板Pの被照射面とが光学的に共役な関係(結像関係)となるように設定されている。すなわち、fθレンズFTの前側焦点の位置またはその近傍にポリゴンミラーPMの反射面が所定の公差範囲内で位置するように設定され、第2のシリンドリカルレンズCYbの後側焦点の位置に基板Pの被照射面が所定の焦点深度範囲(Depth of Focus)内で位置するように設定される。
さらに、このような関係の下で、図6または図24のビーム切換部BDU中に設けられる選択用光学素子AOMn(AOM1〜AOM6)や描画用光学素子AOMa、AOMb、或いは各走査ユニットUn内に設けられる描画用光学素子AOMcn(AOMc1〜AOMc6)が、入射ビーム(0次光)を描画用ビーム(1次回折光)として回折する偏向位置を、基板P上の描画ラインSLnと交差する方向(X方向またはXt方向)に関して、基板Pの被照射面、および、ポリゴンミラーPMの反射面の各々と光学的に共役に設定する。すなわち、それらの光学素子AOMによる描画用ビーム(1次回折光)の偏向方向が、光学的に、シリンドリカルレンズCYb(或いはCYa)の母線の方向と直交(または交差)した屈折力を呈する方向に対応するように設定される。
この種の光学素子AOM(音響光学変調素子)は、超音波振動により内部に回折格子を生成する光学部材の温度によって、偏向角(回折角)が変動するといった問題がある。しかしながら、上記のように、光学素子AOMによる描画用ビーム(1次回折光)の偏向方向を、第2のシリンドリカルレンズCYb(または第1のシリンドリカルレンズCYa)の屈折力を呈する方向に合せるように設定することにより、光学素子AOMの温度変化で生じる偏向角(回折角)の変動に起因した描画ラインSLn(スポット光SP)の副走査方向(Xt方向)への変動を抑制することができる。
そのことを、図25を参照して説明する。図25は、図6または図24に示したビーム切換部BDU中の集光レンズ(コンデンサーレンズ)CD1、選択用光学素子AOM1、コリメートレンズCL1、および、ユニット側入射ミラーIM1の配置と、走査ユニットU1内の第2のシリンドリカルレンズCYbの配置との関係を、途中の光路を省略して模式的に示した図である。集光レンズCD1に入射するビームLBaは、例えば数mm径の円形断面を有する平行光束であり、集光レンズCD1によって後側焦点の位置でビームウェスト(最小径)となるように収斂される。そのビームウェストの位置に、選択用光学素子AOM1の偏向位置Pdfがくるように設定される。選択用光学素子AOM1がオン状態(入射許可信号LP1がH状態)のとき、偏向位置Pdfにおいて、入射するビームLBaに対して偏向角(回折角)θdfだけ向きを変えたビーム(1次回折光)LB1が生成される。選択用光学素子AOM1がオフ状態(入射許可信号LP1がL状態)のとき、偏向位置PdfでのビームLBaの回折が行われないため、ビームLBaは、偏向位置Pdfからそのまま発散光束となってコリメートレンズCL1に向かう。コリメートレンズCL1の前側焦点の位置も、選択用光学素子AOM1の偏向位置Pdfに合されているため、コリメートレンズCL1を透過したビームLBaは、再び平行光束となって次段の集光レンズCD2、選択用光学素子AOM2に向かう。
選択用光学素子AOM1で偏向(回折)されたビームLB1は、ユニット側入射ミラーIM1で反射されて、走査ユニットU1に向かう。先の図6、図24では図示を省略したが、ミラーIM1の後には、コリメートレンズCL1と同じようなコリメートレンズCL1’が設けられ、選択用光学素子AOM1から発散光束となって進むビームLB1を平行光束にする。そのため、コリメートレンズCL1’の前側焦点の位置は選択用光学素子AOM1の偏向位置Pdfに設定される。コリメートレンズCL1’を通ったビームLB1は、図5の走査ユニットU1に入射し、第1のシリンドリカルレンズCYa、ポリゴンミラーPM、fθレンズFT、および、反射ミラーM15等を経て、母線がYt方向に延びる第2のシリンドリカルレンズCYbに入射した後、基板P上の描画ラインSL1上にスポット光SPとして集光される。図25において、描画ラインSL1はYt方向に直線的に延びており、スポット光SPはYt方向に走査される。ここで、第2のシリンドリカルレンズCYbが屈折力を呈する方向はXt方向である。
選択用光学素子AOM1で偏向されるビームLB1の偏向角θdfが、選択用光学素子AOM1の温度変化により、Δθdfだけ変動すると、コリメートレンズCL1’から射出するビームLB1は、横方向に平行移動(ドリフト)したビームLB1’となる。ドリフトしたビームLB1’は、fθレンズFTから射出する際、本来の射出位置からXt方向にドリフトして射出するが、第2のシリンドリカルレンズCYbの屈折力により、ビームLB1’がスポット光SPとして集光するXt方向の位置は、ドリフト前の位置とほとんど変化しない。このように、選択用光学素子AOM1の偏向位置Pdfと基板Pの被照射面とを光学的に共役な関係に設定すること、第2のシリンドリカルレンズCYb(または第1のシリンドリカルレンズCYa)の母線と直交する面(すなわち、図25中のXtZt面と平行な面)内において、選択用光学素子AOM1の偏向位置PdfとポリゴンミラーPMの反射面とを光学的に共役な関係に設定すること、そして、選択用光学素子AOM1によるビームLB1の偏向方向(回折方向)がXtZt面と平行な面内にあるように設定することにより、選択用光学素子AOM1の温度変化に依存して偏向角θdfに変動が生じても、それに起因した描画ラインSL1(スポット光SP)の位置変動は無視できる程度に抑制される。以上のような関係は、他の走査ユニットU2〜U6のための選択用光学素子AOM2〜AOM6や描画用光学素子AOMa、AOMb、或いは各走査ユニットUn内に設けられる描画用光学素子AOMcn(AOMc1〜AOMc6)においても、同様に設定される。
ところで、先の第1の実施の形態(変形例も含む)では、光源装置LS(LSa、LSb)がパルスレーザ光源であったため、描画ラインSLn上に指定される1つの補正画素に対応するクロック信号LTCのパルス数(スポット光SPのパルス数)と、他の非補正画素に対応するクロック信号LTCのパルス数とが異なるように描画データ(ビット列)の読み出しを制御し、そのクロック信号LTCのパルスに応答して、光源装置LS(LSa、LSb)からのビームLBをパルス発光させた。しかしながら、光源装置LS(LSa、LSb)を、連続発光も可能な半導体レーザ光源、または、発光ダイオード(LED)等の半導体光源として、複数の走査ユニットUnの各々に設け、その半導体光源からのビームで直接スポット光SPを生成する場合は、補正画素と他の画素(非補正画素)とで半導体光源の発光時間を僅かに異ならせるように制御してもよい。そのような制御の際は、先の図8で示した描画ビット列データSBa(SBb)がHレベルの期間だけ半導体光源を連続点灯させるようにすればよい。もちろん、図8中のようなクロック信号LTCと描画ビット列データSBa(SBb)との論理積(AND)で得られるクロックパルスに応答して、半導体光源をパルス点灯させるようにしてもよい。
(変形例5)以上の各実施の形態や変形例では、スポット光SPの主走査方向の走査をポリゴンミラーPMで行ったが、ポリゴンミラーPMの代わりに、図26に示すようなガルバノミラー(振動ミラー)GMを使うこともできる。図26は、本変形例5の走査ユニットUa1のガルバノミラーGMとfθレンズFTとの平面配置を示す。fθレンズFTの光軸AXfは直交座標系XYZのX軸と平行に配置され、ガルバノミラーGMの回転(振動)中心軸Cgは、Z軸と平行に配置される。ガルバノミラーGMの反射平面は、Z軸と平行であるとともに、中心軸Cg回りの振動の中立位置ではfθレンズFTの光軸AXfに対してXY面内で45度の角度となるように設定されている。ビーム送光系を通ってガルバノミラーGMの反射面に入射した光源装置LSからのビームLB1(描画データに応じて強度変調された断面が円形の平行光束)は、その反射面で+X方向に反射される。ガルバノミラーGMで反射されたビームLB1は、所定の振れ角度θgの範囲でfθレンズFTに入射し、基板P上の描画ラインSL1にスポット光SPとして集光される。
ガルバノミラーGMを主走査用の偏向部材とする場合、スポット光SPの主走査方向の走査速度が一定とならず、描画ラインSL1の中央部と周辺部とで僅かに速度差が生じることがある。これは、ガルバノミラーGMの往復振動によるビームLB1の振れ角度の変化が時間軸に対して線形にならない部分が生じるからである。そのようなスポット光SPの速度ムラは、主走査方向に沿った描画パターンの部分的な描画倍率誤差、特に描画ラインSLnの中央部と周辺部での倍率誤差として現われる。先の第1の実施の形態、または第2の実施の形態によれば、そのような部分的な倍率誤差に対しても容易に補正することが可能である。
(変形例6)図27は、ポリゴンミラーPMやガルバノミラーGMのように、光源装置LSからのビームLB1を反射する反射面の角度を変えて、ビームLB1を主走査方向に偏向走査する代わりに、機械的な回転機構によって、ビームLB1のスポット光SPを被照射体(基板P)上で円弧状に走査する方式の走査ユニットUR1の斜視図である。図27において、基板Pは直交座標系XYZのXY面と平行に配置され、副走査のためにX方向に所定速度で移動する。走査ユニットUR1には、Z軸と平行に設定されるビーム送光系の光軸AXuに沿って入射するビームLB1(断面が円形の平行光束)を90度に折り曲げるミラーMR1、XY面と平行な光軸AXvを有し、ミラーMR1で反射されたビームLB1を光軸AXvに沿って同軸に入射する集光レンズG30、および、XY面と平行な光軸AXvをZ軸と平行な光軸AXwに折り曲げるミラーMR2とが設けられる。集光レンズG30は、入射したビームLB1を基板Pの表面(被照射面)にスポット光SP’として集光する。走査ユニットUR1の筐体は、ミラーMR1、MR2、集光レンズG30を一体に保持して、Z軸と平行な光軸AXuを中心軸としてXY面と平行な面内で矢印ARのように一方向に所定速度で高速回転する。
被照射面上で、回転中心軸となる光軸AXuの延長線と交差する点を回転中心点CRとすると、走査ユニットUR1の回転によって、スポット光SP’は、回転中心点CRから長さLamを半径とする円に沿って走査される。この走査ユニットUR1の構成では、スポット光SP’は、半径Lamの円上の360度に渡って被照射面に投射可能である。しかしながら、実際には、副走査方向や半径Lamの円の曲率を考慮して、走査ユニットUR1が一定の角度範囲θuにあるときだけ、描画データに応じて強度変調されたスポット光SP’を被照射面に投射し、角度範囲θuに対応した円弧状の描画ラインSL1’に沿ってパターンを描画する。本変形例の場合、スポット光SP’による円弧状の描画ラインSL1’の走査開始点Jsと走査終了点Jeとの副走査方向(X方向)の各位置は、揃っているのが好ましい。
また、本変形例の場合、描画ラインSL1’がY軸と平行な直線ではないため、描画データに応じたスポット光SP’の強度変調の制御(タイミング)は、描画データの2次元的な画素マップ上に、円弧状の描画ラインSL1’を重ね合せて、スポット光SP’の走査位置(走査ユニットUR1の回転角度位置)に応じた画素ビットが、描画状態(「1」)か非描画状態(「0」)かに応じて、スポット光SP’(ビームLB1)の強度を変調させればよい。スポット光SP’の走査位置をリアルタイムに精密に計測するために、走査ユニットUR1の筐体には、半径Lam程度のロータリーエンコーダ用のスケール円板を光軸AXuと同軸に設けるのが好ましい。図27では、走査ユニットUR1の筐体を、光軸AXu(回転中心点CR)から径方向に延びる角柱状で示したが、回転時の軸ブレ等を低減し安定した回転特性を得るために、ミラーMR1、MR2、集光レンズG30を保持するZ方向の厚みを持った円盤状とするのが望ましい。