以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る施工方法を説明するための図である。また、図2は、本実施形態に係る化粧材10が施工されて得られる構造体の構成を例示する断面図である。図1および図2では、壁に化粧材10を施工する例を示しているが、これに限定されない。
本施工方法は、マグネット部材14を含む複数の化粧材10を、強磁性体を含む下地20に貼り付ける施工方法である。本施工方法は、下地20に第1の化粧材10aを貼り付ける工程、および下地20に第2の化粧材10bを貼り付ける工程を含む。第2の化粧材10bを貼り付ける工程では、第2の化粧材10bの意匠面101とは反対側の表面である第1面102を下地20に対向させて、下地20に第2の化粧材10bを貼り付ける。また、第2の化粧材10bを貼り付ける工程では、第1の化粧材10aの側面103aと第2の化粧材10bの側面103bとが互いに接するように、下地20に第2の化粧材10bを貼り付ける。以下に詳しく説明する。
本実施形態の施工方法は、たとえば部屋や通路等の内壁または外壁を施工する方法である。内装または外装を施工する建物としては、特に限定されないが、ビルや住宅等が挙げられる。本施工方法は、エレベータの内装の施工方法であっても良い。また、本施工方法は、移動体や家具等の表面に化粧材を施工する方法であっても良い。
複数の化粧材10は、第1の化粧材10aと第2の化粧材10bとを含む。本実施形態において、第1の化粧材10aおよび第2の化粧材10bはそれぞれ以下に説明する化粧材10のような構成を有する。なお、第1の化粧材10aおよび第2の化粧材10bは同じ構成を有していても良いし、互いに異なる構成を有していても良い。
本実施形態において、複数の化粧材10はそれぞれ、化粧層12と、マグネット部材14との積層構造を有する。図2の例において、マグネット部材14は化粧層12の意匠面101側とは反対側の面に一様に設けられたマグネット層である。以下ではマグネット部材14をマグネット層14として説明するが、マグネット部材14は、シート状に限定されず、塊状であってもよい。化粧材10は、意匠面101側から木目等の模様やデザインが視認可能に構成されている。また、化粧材10の側面とは、化粧材10の主面(意匠面101および第1面102)に略垂直な面である。
下地20への吸着力を高める観点から、マグネット層14は、化粧材10の意匠面101に垂直な方向から見てほぼ全面に設けられていることが好ましい。また、マグネット層14は、化粧層12の意匠面101とは反対側の面に一様に設けられていることがより好ましい。そうすれば、化粧材10が、下地20から浮いたり、撓んだりすることが避けられる。また、化粧材10の平面形状を加工しても、化粧材10の下地20への着脱機能を確保できる。なお、マグネット層14が化粧材10のほぼ全面に設けられているとは、たとえば化粧層12の主面に垂直な方向から見て90%以上の領域に設けられていることをいう。
化粧材10はたとえば化粧層12、マグネット層14および、化粧層12とマグネット層14とを接合する接着層13を備える。化粧材10はシート状であっても良いし、板状であっても良い。また化粧材10は、織物状であってもよい。化粧材10の構造については詳しく後述する。
化粧材10の厚さは特に限定されないが、たとえば0.4mm以上1.0mm以下である。本実施形態の施工方法によれば、化粧材10が厚い場合であっても、複数の化粧材10をほぼ隙間無く貼り付けることができる。
図3は、化粧材10が施工された壁の斜視図であり、下地20、および化粧材10の一部は省略されている。
複数の化粧材10は下地20のほぼ全体を覆うように固定される。たとえば下地20のうち躯体30とは反対側の面の95%以上は化粧材10で覆われている。図2および図3の例において、下地20は複数の下地層を有する。下地層は壁の骨組みと化粧材10との間に位置する層である。または、下地層は、化粧材10よりも壁の内側に位置するように、壁の枠組みに嵌め込まれた層である。下地層は、単独でまたは複数が協働して、たとえば構造補強、断熱、防湿、防水、耐火等の機能を発揮する。図2および図3の例では、下地20は第1下地層22および第2下地層24を備える。ただし、下地20は、さらに他の下地層を備えても良い。下地20は躯体30に対して固定されている。
躯体30は、たとえば建物の躯体であり、建物の構造を支える骨組である。躯体30は、木材、金属、鉄筋コンクリート等である。なお、下地20は建物の躯体30に必ずしも固定されていなくてもよい。たとえば、下地20と化粧材10との積層体は、室内の空間を区切るパーテーションの一部であっても良い。また、化粧材10は、出隅入り隅材、見切り材、ジョイナー、掲示パネル等として機能してもよい。
下地20には強磁性体が含まれ、下地20にマグネットが引きつけられる。強磁性体は、たとえば鉄、コバルト、ニッケル、及びこれらの合金からなる群から選択される一以上である。本実施形態において下地20は、強磁性体を含む強磁性層を含む。たとえば第2下地層24および第1下地層22の少なくとも一方は強磁性層である。ここで、下地20のうち最も化粧材10に近い下地層が強磁性層であることが好ましい。そうすれば、下地20に対する化粧材10の固定強度を向上させることができる。強磁性層以外の下地層としては、ケイカル(ケイ酸カルシウム)板、石膏ボード、火山性ガラス質複層板等の無機質板や木製合板等が挙げられる。
本実施形態において強磁性層は、強磁性材料を含む板材である。強磁性材料を含む板材は、たとえば鉄板等、強磁性体の板である。また、強磁性材料を含む板材は、強磁性体以外の材料と鉄粉や鉄箔等の強磁性材料との複合部材であっても良い。複合部材を用いることで、形状の自由度の向上、および軽量化が図れる。強磁性体以外の材料としては樹脂や木材、石膏、ケイ酸カルシウム、セメント、ガラス質材料等が挙げられる。複合部材において、強磁性体以外の材料と強磁性材料とは、混合されていても良いし、積層されていても良い。複合部材はたとえば、樹脂粒子や木材のチップ等と鉄粉を混合して板状に成形することで得られる。または、複合部材は、強磁性体以外の材料の板状部材と鉄箔とを積層し、接着することで得られる。また、下地層を土壁で形成する場合、強磁性材料を混合した土を用いて層を形成することで複合部材としても良い。強磁性層の厚さは特に限定されないが、たとえば1mm以上20mm以下である。
下地20は、主面に垂直な方向から見て、少なくとも一部の領域に強磁性体を含んでいれば良く、全体に強磁性体を含んでいる必要は無い。下地20全体の面積に対する、強磁性体を含む領域の面積は特に限定されないが、20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。たとえば、下地20は、格子状にパターン化された強磁性層を含んでも良い。また、下地20のうち各化粧材10の外周に対向する領域には、強磁性体が含まれることが好ましい。
強磁性材料を含む板材は、一つの、または二つ以上の開口を有していても良い。板材が開口を有することで、下地20の重さを低減することができ、建物の耐震性を向上できる。ただし、耐火性向上の観点から、開口は他の下地層を構成する板材同士の境界と重ならないことが好ましい。
また、強磁性層は、強磁性材料を含む塗料の固化物であってもよい。塗料の固化物とは、塗料が固化、または硬化して得られる固体である。この場合、任意の下地層に強磁性材料を含む塗料を塗布し、固化または硬化させることにより強磁性層を形成することができる。
塗料は、強磁性材料およびバインダーを含む。強磁性材料はたとえば鉄粉等の強磁性粉末である。粒子の大きさは特に限定されないが、強磁性粉末のメディアン径D50は0.02mm以上0.2mm以下が好ましく、0.05mm以上0.1mm以下がより好ましい。そうすれば、塗料を均一に塗布しやすくなる。また、塗料の固形物における強磁性粉末の含有率は、50質量%以上90質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。そうすれば、化粧材10を下地20に充分な磁力で固定することができる。
塗料に含まれるバインダーとしては、マグネット層14に含まれるバインダーとして後述する樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
また、塗料は、強磁性材料およびバインダーに加えて、溶剤、可塑剤、分散材、増粘剤、その他の添加剤を含んでも良い。これらの添加剤の含有量の合計は、たとえば塗料の固化物に対して5重量%以下である。
塗料は、上記の各成分を混合することにより得られる。
以上のとおり、下地20に強磁性体が含まれることにより、マグネット層14が下地20に引きつけられ、化粧材10を下地20に固定することができる。そして、化粧材10は下地20に対して脱着可能であることから、化粧材10が汚れたり傷んだりした場合や、内装または外装のデザインを変更したい場合に下地20にダメージを与えることなく、短時間で容易に化粧材10の張り替えができる。また、施工現場において下地に化粧材を固定する際、接着剤を使用する必要が無い。したがって、乾燥時に有機溶剤等による臭気が発生することがない。さらに、化粧材10を下地20へ素早く容易に固定できることから、施工期間の短縮が図れる。
図3に示す様に、第1下地層22および第2下地層24はそれぞれ複数の板材で形成されていても良い。ここで、第1下地層22における複数の板材の境界と、第2下地層24における複数の板材の境界とは、交差点を除いて互いに重ならないことが好ましい。そうすることで、火災時に境界部から火が漏れ広がることが避けられ、耐火性が向上する。
また、最も化粧材10側の下地層である第2下地層24において、複数の板材の境界はパテ201で埋められている。また、板材と板材との境界に生じる段差は、パテ201によっておよそ平らに均されている。
化粧材10は下地20に対し磁力で固定されている。一つの壁面には、複数の化粧材10が敷き詰められている。一体の化粧材10で敷き詰めるよりも、複数の化粧材10を用いることにより各化粧材10が小さくなり、施工場所までの化粧材10の運搬が容易となる。また、化粧材10が可撓性を有する場合、ロール状に丸めて運搬することができる。
図4は、本実施形態に係る化粧材10の構成を例示する断面図である。本実施形態に係る化粧材10について以下に詳しく説明する。ただし、化粧材10は以下の構造に限定されない。
化粧材10は、化粧層12、接着層13、およびマグネット層14を備える。化粧層12の構造は特に限定されないが、本実施形態において化粧層12は表面層120および芯材層129を含む。化粧層12は、たとえばメラミン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、および(メタ)アクリル樹脂により構成される群から選択される一以上の樹脂を含んで構成される。
本図の例において表面層120は芯材層129と接している。さらに表面層120は、印刷基材122、印刷部121、第1樹脂層123、および第2樹脂層124を含んで構成されている。化粧材10の意匠面101には、表面層120が露出している。ただし、表面層120は印刷基材122および印刷部121を含んでいなくても良い。たとえば表面層120はエンボス加工により凹凸が施された樹脂層や金属層を含むことにより、意匠性を生じても良い。また、化粧材10の意匠面101の表面に意匠が施されていても良い。
化粧材10は全体として可撓性を有することが好ましい。そうすれば湾曲した下地にも固定することができる。具体的には化粧材10は、25℃において10mmの曲げ半径で湾曲させたとき、亀裂が生じない程度の可撓性を有することが好ましい。
化粧層12は、壁面に意匠性を付与する部分である。化粧層12は、意匠面101側から見て美観を起こさせる意匠性を有する。本図の例においては、化粧層12は意匠面101側から印刷部121、すなわち印刷された模様等のデザインを視認可能に構成されている。
表面層120は、たとえば意匠面となる意匠面101側にメラミン樹脂を含有する樹脂(第1樹脂層123)を担持し、芯材層129と接する第1面102側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分(第2樹脂層124)を担持する印刷基材122からなる表面層材料で構成される。なお、第1面102は、化粧材10の意匠面101とは反対側の面である。以下に詳しく説明する。
印刷基材122は、たとえばパルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維である。また、印刷基材122は、酸化チタンなどの顔料を含有する酸化チタン含有化粧紙であってもよい。
本図の例において、印刷部121は化粧材10に意匠性を付与する。印刷部121は印刷により印刷基材122に担持されたインクである。印刷部121は、印刷基材122の表面に層状に形成されていてもよいし、少なくとも一部が印刷基材122に含浸していてもよい。印刷法は、特に限定されないが、グラビア印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等を用いることができる。
第1樹脂層123は、樹脂(A)を含む層であり、印刷基材122の意匠面101側に位置する透明な層である。樹脂(A)は、メラミン系樹脂を含む。樹脂(A)は中でもメラミン樹脂を含むことが好ましい。これにより、化粧材10の表面がメラミン樹脂を含むこととなり、化粧層12の表面に好適な硬度を付与することができる。ひいては、化粧材10の耐久性を高めることができる。本図の例において、化粧材10の意匠面101には、第1樹脂層123が露出している。
メラミン樹脂としては、特に限定されず、例えば、メラミンとホルムアルデヒドを中性または弱アルカリ下において反応させて得られるものを用いることができる。
また、メラミン樹脂としては、住友化学(株)製のメラミン樹脂等、市販のものを用いることもできる。
樹脂(A)を印刷基材122の意匠面101側に担持させる方法としては、特に限定されず、例えば、樹脂(A)を溶媒に溶解した樹脂ワニスを、例えば、スプレー装置、シャワー装置、キスコーター、コンマコーター等の装置を用いて塗工した後、80〜130℃程度で加熱乾燥する方法等が挙げられる。
樹脂(A)を溶解する溶剤としては、特に限定されず、例えば、水、メタノール等が挙げられる。中でも水が好ましい。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。樹脂ワニスの固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、樹脂ワニスの30〜70質量%であるのが好ましく、45〜60質量%であるのがより好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を向上できる。
第2樹脂層124は、樹脂(B)を含む層である。樹脂(B)は、たとえば熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分である。なお、本明細書中おいて、熱可塑性エマルジョン樹脂とは、熱可塑性樹脂が溶剤に分散してエマルジョン状態となったものである。また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分とは、熱可塑性エマルジョン樹脂から溶剤を除いた成分を意味する。
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、エマルジョン樹脂粒子として存在する成分を含み、金属や各種素材との接着特性を有し、化粧層12に柔軟性を付与する。したがって、表面層120の第1面102側に熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分が担持されることにより、表面層120と芯材層129との接着強度を向上させることができるとともに、化粧層12の曲げ加工性を向上させることができる。
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分としては、たとえば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系共重合体、ウレタンアクリル複合粒子、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等の熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子が挙げられる。これらの中でもウレタンアクリル複合粒子が好ましい。本明細書中において、ウレタンアクリル複合粒子とは、単一粒子内にアクリル樹脂とウレタン樹脂との異相構造を有するものを意味する。
ウレタン樹脂とアクリル樹脂は、各々が芯材層129との接着強度が高いため、ウレタンアクリル複合粒子を用いることで、芯材層129との良好な接着強度を発現することができる。さらに、ウレタン樹脂は、特に強靭性、弾性、柔軟性に優れ、アクリル樹脂は、特に透明性、耐久性、耐候性、耐薬品性、造膜性に優れる。
また、本明細書中において「異相構造」とは、1個の粒子内に異なる種類の樹脂からなる相が複数存在する構造を意味し、例えば、コアシェル構造、局在構造、海島構造等が挙げられる。
なお、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分としては、これらの中の1種類が単独で含まれるものを用いることもできるし、異なる2種類以上の熱可塑性樹脂を混合して含むものを用いることもできる。
また、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分には、上記熱可塑性樹脂のエマルジョン粒子以外にも、必要に応じて少量の増粘剤、浸透促進剤、消泡剤等を含んでいてもよい。
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分は、平均粒径が30〜100nmのエマルジョン樹脂粒子を含むことが好ましく、エマルジョン樹脂粒子の平均粒径は、60〜90nmであることがより好ましい。これにより、印刷基材122の繊維間への含浸性が向上し、より印刷基材122の内部に含浸させることができるため、表面層120に良好な柔軟性を付与することができる。
熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を印刷基材122の第1面102側に担持させる方法としては、特に限定されず、樹脂(A)を印刷基材122の意匠面101側に担持させる上述の方法と同様にして行うことができる。つまり、溶剤に溶解されたエマルジョン状態の熱可塑性エマルジョン樹脂を塗工、加熱乾燥する方法等が挙げられる。
熱可塑性エマルジョン樹脂に用いられる溶剤としては、特に限定されず、例えば、水等が挙げられる。また、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分(溶剤を除く全成分)は、特に限定されないが、熱可塑性エマルジョン樹脂の25〜60質量%であるのが好ましく、30〜45質量%であるのがより好ましい。これにより、熱可塑性エマルジョン樹脂の基材への含浸性を向上できる。
なお、第1樹脂層123および第2樹脂層124は単独で層を形成していなくてもよい。すなわち、樹脂(A)および樹脂(B)は印刷基材122に担持されていればよい。ここで、印刷基材122が樹脂を担持するとは、樹脂が基材(担体)の表面に付着し、または、基材内部の空隙部に含浸され、表面層材料の成形後に担持させた樹脂の性能を発現することを可能にする状態であることを意味する。第1樹脂層123および第2樹脂層124はたとえば、表面層120において層状の分布を有している。なお、樹脂は、基材の表面および基材の内部に均一に分布していなくてもよい。
芯材層129は、たとえばガラスクロス、またはガラスクロスを基材とするプリプレグを含んで構成されている。これにより、化粧層12に、耐熱性、不燃性、剛性などを付与することができる。
芯材層129の厚みは、50μm以上とすることが好ましい。これにより、化粧層12に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほど化粧層12の厚みと重量が増大すると共に、コストも嵩むため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、350μm以下にすることが好ましい。
マグネット層14は、化粧層12の第1面102側に固定されている。化粧材10がマグネット層14を備えることにより、強磁性体を含む下地20に化粧材10を脱着可能に取り付けることができる。また、施工場所で溶剤を用いることなく、化粧材10を下地20に取り付けることができる。化粧材10が下地20に十分強く固定されるためにマグネット層14の第2面102側の表面磁束密度は20mT以上であることが好ましい。また、マグネット層14は、化粧材10の主面に垂直な方向から見て75%以上の領域に設けられていることが好ましく、ほぼ全面に設けられていることがより好ましい。そうすれば、化粧材10の平面形状を加工した場合であっても、化粧材10の下地20への着脱機能を確保できる。なお、マグネット層14が化粧材10のほぼ全面に設けられているとは、たとえば化粧材10の主面に垂直な方向から見て90%以上の領域に設けられていることをいう。
マグネット層14は、磁石粉末をバインダー(結合樹脂)で結合してなる層であり、たとえばマグネットシートである。磁石粉末は、優れた磁気特性を有するものが好ましい。このような磁石粉末としては、例えば、R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)を含む合金、特にR(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)とTM(ただし、TMは、遷移金属のうちの少なくとも1種)とB(ボロン)とを含む合金が挙げられる。
マグネット層14に含まれるバインダーとしては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66、ナイロン6T、ナイロン9T)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、ビスフェノール型、ノボラック型、ナフタレン系等の各種エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル(不飽和ポリエステル)樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。なお、使用される熱硬化性樹脂(未硬化)は、室温で液状のものでも、固形(粉末状)のものでもよい。
マグネット層14の厚さ(平均厚さ)は、審美的な観点から適宜変更されるが、0.15〜6mmであるのが好ましく、0.6〜2mmであるのがより好ましい。マグネット層14の大きさ・形状は、化粧材10の形状等によって適宜変更することができる。
マグネット層14は、接着層13により化粧層12に固定されている。接着層13は特に限定されないが、たとえば、主として粘着剤で構成されている。この粘着剤としては、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を挙げることができる。
アクリル系粘着剤としては、粘着性を与える低Tgの主モノマー成分、接着性や凝集力を与える高Tgのコモノマー成分、架橋や接着性改良のための官能基含有モノマー成分を主とする重合体または共重合体よりなる。
主モノマー成分としては、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジル等のアクリル酸アルキルエステルや、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル等のメタクリル酸アルキルエステル等を挙げることができる。
コモノマー成分としてはアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
官能基含有モノマー成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有モノマーや、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等のヒドロキシル基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
また、ゴム系粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、イソプレンゴム系、スチレン−ブタジエン系、再生ゴム系、ポリイソブチレン系のものや、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレン等のゴムを含むブロック共重合体を主とするもの等を挙げることができる。
また、シリコーン系粘着剤としては、例えば、ジメチルシロキサン系、ジフェニルシロキサン系のもの等を挙げることができる。
以上のような粘着剤は、非架橋型、架橋型のいずれのものも使用可能である。後者の場合、必要に応じ、架橋剤を添加することができる。架橋剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアナート系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩、アミン化合物、ヒドラジン化合物、アルデヒド系化合物等が挙げられる。このような粘着剤は、有機溶剤系、エマルション系のいずれでもよい。
また、接着層13には、例えば、可塑剤、粘着付与剤、増粘剤、充填材、老化防止剤、防腐剤、防カビ剤、染料、顔料等の各種添加剤が必要に応じ添加されていてもよい。
なお、芯材層129に接着剤が含浸されている場合等、芯材層129が接着層13を兼ねていても良い。また、化粧層12は、さらに保護層を有していても良い。保護層は意匠面101に露出するよう設けることができる。
化粧材10の製造方法について以下に説明する。化粧材10は、化粧層12に接着層13を介してマグネット層14を固定することにより形成される。具体的には、化粧層12に接着層13を構成する粘着剤等を塗布し、マグネット層14を積層する。ただし、粘着剤を塗布したマグネット層14を化粧層12に積層してもよい。
化粧層12は、表面層120と芯材層129とを重ね合わせ、これを加熱加圧成形して積層することにより得られる。また、化粧層12の成形時に、所定の板材を重ねることにより、化粧材10の意匠面101の表面粗さや光の反射率等を調整することができ、デザイン性を高めることができる。
表面層120は、以下の様にして得られる。まず、印刷基材122に模様等のデザインを印刷することにより印刷部121を形成する。次いで、印刷部121を設けた印刷基材122の一方の面に第1樹脂層123を形成し、他方の面に第2樹脂層124を形成する。
なお、化粧材10の製造方法は上記した方法に限定されない。たとえば、必要に応じて担体フィルムを使用してもよい。担体フィルムは製造時においていずれかの層を保護したり、製造を容易にしたりするために用いられる。担体フィルムは、その後除去されることにより、化粧材10には含まれない。
また、本図では、印刷部121が化粧層12の内部に位置する例を示したが、印刷部121は化粧層12の意匠面101側の表面に位置していてもよい。
図5は、化粧材10の構造の変形例を示す断面図である。本変形例に係る化粧材10は、化粧層12の構造を除いて図4に例示した化粧材10と同じである。
本変形例において化粧層12は第1樹脂層123、第2樹脂層124、および印刷部121を備える。そして第2樹脂層124が印刷基材122として機能する。
第1樹脂層123は、透明な樹脂フィルムである。第1樹脂層123は、合成樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、又は(メタ)アクリル樹脂を含む。第1樹脂層123は、たとえばエンボス圧延加工によるラミネートによって、印刷部121が形成された第2樹脂層124に積層される。第1樹脂層123の厚さはたとえば10μm以上80μm以下である。
第2樹脂層124は、合成樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンポリエステル、ポリオレフィン樹脂、又は(メタ)アクリル樹脂を含む。第2樹脂層124は、さらに、不燃性の無機充填材を含んでもよい。無機充填材としては、CaCO3、Mg(OH)2、Al(OH)3、SiO2、粘土(例えば、モンモリロナイト又はカオリン)等が挙げられる。第2樹脂層124の厚さはたとえば60μm以上150μm以下である。第2樹脂層124はたとえばキャスティング、またはカレンダリングにより形成することができる。
本変形例に係る化粧材10は化粧層12の形成方法を除いて図4を用いて説明した化粧材10の製造方法と同じである。本変形例において化粧層12は、第2樹脂層124のうち意匠面101側となる面に印刷により印刷部121を形成し、次いで、印刷部121を覆うように第1樹脂層123を形成することで得られる。
化粧材10は、合成樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、および(メタ)アクリル樹脂からなる群から選択される一以上の樹脂を含むことが好ましく、たとえば、図4に示したような構成を有することが好ましい。
化粧材10が合成樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、および(メタ)アクリル樹脂からなる群から選択される一以上の樹脂を含むことにより、化粧材10の耐久性、難燃性が高くなるとともに、発色性が良くなる。また、安価で加工性にも優れる材料であることから、製造コストを低減できる。
なお、化粧材10の構造は上記した例に限定されない。化粧材10は、たとえば布、麻、綿、絹等のクロス、塩化ビニル・PET・ポリオレフィン等のプラスチック樹脂、SUS・アルミ等の金属(箔)、段ボール等の紙類、木材、竹、籐のうちの一以上の材料を含んで構成されることができる。
図3に戻り、本実施形態に係る施工方法について以下に説明する。本施工方法では、躯体30等、壁等の構造部材(骨組み)に下地20を固定する工程を含んでもよい。下地20を固定する工程では、構造部材に対し、ステイプラーやネジ等で、壁面のほぼ全体を覆うように複数の板材を取り付け、第1下地層22を形成する。次いで、第1下地層22に対し、第1下地層22のほぼ全体を覆うように複数の板材をステイプラーやネジ等で取り付け、第2下地層24を形成する。たとえば第2下地層24は強磁性層である。そして、第2下地層24を構成する複数の板材同士の境界にパテ201を塗って隙間を埋めるとともに段差を均す。次いで、下地20に複数の化粧材10を貼り付ける工程では、化粧材10のマグネット層14を下地20側に向け、化粧材10を下地20に貼り付ける。
下地20に複数の化粧材10を貼り付ける工程では、第1の化粧材10aを貼り付ける工程および第2の化粧材10bを貼り付ける工程を行う。第1の化粧材10aと第2の化粧材10bは互いに隣り合い、互いの側面が接するように下地20に貼り付けられる。
図6は、本実施形態に係る第2の化粧材10bを貼り付ける工程を説明するための図である。第1の化粧材10aおよび第2の化粧材10bを互いの側面が接するように下地20に貼り付ける方法について以下に説明する。
本実施形態において、第2の化粧材10bを貼り付ける工程は、第2の化粧材10bの側面103bを第1の化粧材10aの側面103aに突き合わせる工程を含む。突き合わせる工程では、第1状態で、下地20の表面で第2の化粧材10bを、下地20の表面に平行な方向にスライドさせる。ここで、第1状態とは、第2の化粧材10bの第1面102の少なくとも一部である第1領域110を下地20に対向させた状態である。
本図の例において、第1領域110は第2の化粧材10bの第1面102の一部であり、第1領域110はたとえば側面103bに沿った端部である。第1領域110は特に限定されないが、たとえば側面103bから幅5cm以上20cm以下の領域である。
本図の例では、第1状態において、第1領域110は全体が下地20に接している。また、第1状態において第2の化粧材10bのうち下地20と接する面の表面磁束密度は20mT以上100mT以下であることが好ましい。そうすることにより、容易に第2の化粧材10bをスライドさせることができるとともに、下地20に対して第2の化粧材10bを安定して固定できる。
具体例としては、第2の化粧材10bを貼り付ける工程では、第2の化粧材10bの第1面102の一部を下地20に対向させた状態で、第2の化粧材10bの側面103bに垂直な方向に巻き取られた第2の化粧材10bの側面103bを、第1の化粧材10aの側面103aに突き当てる。その後、第2の化粧材10bを広げる。そして、第2の化粧材10bの残りのマグネット層14を下地20に貼り付ける。
側面103bは、第2の化粧材10bが巻き取られた状態の巻回体において、外側に位置する。
通常、第2の化粧材10bの全体を下地20に貼り付けた状態では、第2の化粧材10bの下地20への吸着力が強すぎるために下地20の表面で第2の化粧材10bをスライドさせることができない。これに対し、本方法によれば、第1状態において第2の化粧材10bのうち一部分のみが下地20に貼り付けられている。したがって、全体を貼り付けた場合に比べて、下地20に対する第2の化粧材10bの吸着力を低減させることができる。よって、第2の化粧材10bをスライドさせ、第2の化粧材10bの側面103bを第1の化粧材10aの側面103aに突き当てることができる。その結果として第1の化粧材10aおよび第2の化粧材10bを互いの側面が接するように下地20に貼り付けることができる。
なお、第1の化粧材10aの側面103aと、第2の化粧材10bの側面103bとは互いに少なくとも一部が接していればよく、第1の化粧材10aと第2の化粧材10bとの間には、化粧材10の側面が直線でないこと等に起因して、わずかに隙間が空いていても良い。
同様の方法で、複数の化粧材10を順に下地20に貼り付けることにより、複数の化粧材10をほぼ隙間なく施工することができる。
また、化粧材10を交換したい場合には、化粧材10を下地20から剥がし、新たな化粧材10を下地20に貼り付ければよい。
また、下地20の強磁性層と化粧材10との間には他のシート材が挟み込まれてもよい。そうすれば、やむを得ず化粧材10を取り外した状態としている間にも、意匠性を失わずに済む。シート材としてはたとえば、塩化ビニルシート等の樹脂シート、および紙が挙げられる。シート材は、下地20の一部としてたとえば下地20の最表面(最も化粧材10側の面)を形成するように張り付けられていてもよいし、下地20と化粧材10との間に挟み込まれてもよい。また、シート材を設ける代わりに、下地20の最表面に、塗料による塗装膜を形成しても良い。その場合でも同様の効果が得られる。
また、化粧材10は、磁力での固定のみならず、物理的な支持手段や接着材をさらに用いて下地20に固定されてもよい。
本実施形態に係る施工方法では、上記した通り、複数の化粧材10を下地20に貼り付ける。複数の化粧材10は、たとえば平面形状、寸法、意匠、マグネット層14の材質、およびマグネット層14の厚さのうち少なくとも一つが互いに異なる二以上の化粧材10を含んでよい。すなわち、複数の化粧材10は、全てが同じ構成を有する必要は無い。
特に、複数の化粧材10のうち、少なくとも第1の化粧材10aと第2の化粧材10bとを含む二以上の化粧材10が、少なくとも一つのデザインを構成している場合、本実施形態に係る方法が有益である。ここで、デザインは、たとえば文字、図形、記号、写真のうち少なくともいずれかを含む。この様な場合に第1の化粧材10aと第2の化粧材10bの間に隙間が空いてしまうと、デザインの中に切れ目が視認されてしまうおそれがある。これに対し、第1の化粧材10aおよび第2の化粧材10bを互いの側面が接するように下地20に貼り付けることにより、施工後の外観を良くすることができる。
化粧材10の形状は主面に垂直な方向から見てたとえば矩形である。ただし、施工対象の壁等の形状および大きさは、場合によって様々であるため、化粧材10は、必要に応じ、施工前に施工対象である壁等の形状や寸法に合わせて切断されてもよい。また、施工現場に搬入する前、たとえば出荷時等に、予め施工対象に合わせて化粧材10を加工しておくことで、現場での施工時間を短縮することもできる。特に、マグネット層14を有する化粧材10は、通常の壁紙等に比べて厚いため、現場での切断に時間を要する場合がある。したがって、事前の加工が有益である。ただし、第1の化粧材10aの側面103aと第2の化粧材10bの側面103bとは、それぞれ化粧材10の主面に垂直な方向から見て直線状であることが好ましい。
なお、以上では主に内装の施工方法について説明したが、内装に限定されず、複数の化粧材10は外装に用いられても良い。化粧材10はたとえば外装用のパネル、シート、タイル等であり得る。
本実施形態に係る施工方法によれば、たとえば、マグネット層14を含む複数の化粧材10と、強磁性体を含む下地20との積層構造を有し、第1の化粧材10aの側面103aと第2の化粧材10bの側面103bとが互いに接している壁構造体が得られる。
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、複数の化粧材をほぼ隙間なく並べて施工することができるため、できあがりの外観に優れる。
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係る施工方法を説明するための図である。本実施形態に係る施工方法は、第1状態で、第1領域110の少なくとも一部と、下地20との間に磁力調整シート50を介在させる点を除いて第1の実施形態の施工方法と同じである。以下に詳しく説明する。
本実施形態の施工方法において、第1状態の第1領域110のうち一部は下地20に接しており、他部は磁力調整シート50を介して下地20に対向している。磁力調整シート50が介在した領域において、第2の化粧材10bの下地20に対する吸着力は弱い。したがって、容易に第2の化粧材10bをスライドさせ、第2の化粧材10bの側面103bを第1の化粧材10aの側面103aに突き当てることができる。
本施工方法の第2の化粧材10bを貼り付ける工程では、第2の化粧材10bと下地20との間に部分的に磁力調整シート50を介在させた状態で第2の化粧材10bを下地20に当てる。ここで、磁力調整シート50は第2の化粧材10bを下地20に対向させる際に第2の化粧材10bと下地20との間に挟み込んでも良いし、磁力調整シート50を予め下地20の表面に除去可能に貼り付け、その磁力調整シート50を覆うように第2の化粧材10bを配置しても良い。
磁力調整シート50としては紙、樹脂、織物または不織布が挙げられる。ここで、紙としては、ボール紙、段ボール、剥離紙等が挙げられる。磁力調整シート50の厚さは特に限定されないが、たとえば0.05mm以上3.0mm以下であることが好ましく、0.1mm以上0.5mm以下であることがより好ましい。
本図の例において、第1領域110は第2の化粧材10bの第1面102の全体である。また、第1領域110のうち側面103bに沿った端部で第2の化粧材10bは下地20に接している。さらに、第2の化粧材10bの主面に垂直な方向から見て、第1領域110のうち、側面103bと垂直な二辺に沿った端部で第2の化粧材10bは下地20に接している。そして、第1領域110のうち半分以上の領域は下地20に接していない。
なお、第2の化粧材10bを下地20の表面でスライドさせる際には、磁力調整シート50を同時にスライドさせてもよいし、磁力調整シート50をスライドさせず第2の化粧材10bのみをスライドさせてもよい。
また、第2の化粧材10bを貼り付ける工程は、上記の突き合わせる工程の後に、第1領域110の少なくとも一部と、下地20との間の磁力調整シート50を除去する工程を含んでもよい。そうすることにより、最終的に第2の化粧材10bの全体を下地20に接触させ、磁力で第2の化粧材10bを下地20に対して安定して固定することができる。
たとえば磁力調整シート50は、第1状態において一部が第2の化粧材10bからはみ出しており、そのはみ出した部分を引っ張ることで磁力調整シート50を第2の化粧材10bと下地20の間から抜くことができる。
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果を得られる。くわえて、本実施形態の施工方法では、第2の化粧材10bを巻き取る必要が無いため、比較的可撓性が低い第2の化粧材10bにも適用できる。
(第3の実施形態)
図8(a)は、第3の実施形態に係る第2の化粧材10bを例示する平面図である。本図は、第2の化粧材10bを、第1面102側から見た図である。本実施形態に係る施工方法は、磁力調整シート50が予め第2の化粧材10bの第1面102に除去可能に貼り付けられている点を除いて第2の実施形態に係る施工方法と同じである。以下に詳しく説明する。
本図において、磁力調整シート50は予めマグネット層14に剥離可能に積層されている。すなわち、施工現場に搬入された時点で、第2の化粧材10bには磁力調整シート50が設けられている。磁力調整シート50はたとえば剥離紙である。
本実施形態の第2の化粧材10bを貼り付ける工程では、まず磁力調整シート50の一部のみをマグネット層14から剥がして第2の化粧材10bを下地20に対向させ、第1状態とする。このとき、第2の化粧材10bの第1面102のうち磁力調整シート50が剥がされた部分のみが下地20に接触する。一方、磁力調整シート50が残った部分については、第1面102は下地20に接触しない。したがって、磁力調整シート50が介在する部分において第2の化粧材10bの下地20に対する吸着力は弱く、容易に第2の化粧材10bをスライドさせ、第2の化粧材10bの側面103bを第1の化粧材10aの側面103aに突き当てることができる。
ここで、第1状態では、第2の化粧材10bと下地20の間に磁力調整シート50が介在する部分の面積が、第2の化粧材10bの第1面102の面積に対して80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。そうすれば、容易に第2の化粧材10bをスライドさせることができる。
図8(b)は、本実施形態に係る第2の化粧材10bの第1の変形例を示す図であり、図8(c)は、本実施形態に係る第2の化粧材10bの第2の変形例を示す図である。図8(b)および図8(c)において、磁力調整シート50は部分的に除去できるように予め複数の領域に分割されている。分割された各領域を以下では分割領域と呼ぶ。たとえば、磁力調整シート50において各分割領域の境界は切断されていても良いし、切り込みが設けられていても良い。
図8(b)の例では、磁力調整シート50は第1分割領域501と第2分割領域502を有している。第1分割領域501は第2の化粧材10bの長辺に沿った領域であり、第2分割領域502は残りの領域である。第2の化粧材10bを貼り付ける工程では、第1分割領域501側の側面103bを第1の化粧材10aに突き当てる。具体的には、まず、磁力調整シート50の第1分割領域501を第2の化粧材10bから除去することにより部分的にマグネット層14を露出させる。そして、第2の化粧材10bの第1面102を下地20に対向させて貼り付ける。このとき、第2の化粧材10bのマグネット層14と下地20との間には、磁力調整シート50の第2分割領域502が介在する。そして、第2の化粧材10bの側面103bを第1の化粧材10aの側面103aに突き当てた後、突き当てた状態で磁力調整シート50の第2分割領域502をマグネット層14から剥がして除去する。こうすることで、最終的に第2の化粧材10bの第1面102の全体が下地20に接触する。なお、磁力調整シート50の第2分割領域502を除去する際には、第2の化粧材10bを部分的に下地20から剥がせばよい。
本例の方法によれば、予め磁力調整シート50が分割されていることにより、さらに容易に第2の化粧材10bの施工ができる。
図8(c)の例では、磁力調整シート50は、複数の分割領域を有している。具体的には、分割領域の境界は、第2の化粧材10bの各辺に沿って、かつ、各辺から所定の距離離れて延在している。なお、所定の距離はたとえば5cm以上15cm以下である。磁力調整シート50において分割領域の境界は切断されていても良いし、切り込みが設けられていても良い。本例の第2の化粧材10bを貼り付ける工程では、まず、第2の化粧材10bのうち、第1の化粧材10a側となる辺に沿った分割領域の磁力調整シート50を除去する。そして、以後は、図8(b)の例に示した第2の化粧材10bを貼り付ける場合と同様に、第2の化粧材10bを施工する。
本例によれば、第1の化粧材10aに突き当てる側面103bとして、任意の側面を選択できる。
なお、磁力調整シート50は除去されず、部分的に第2の化粧材10bと下地20との間に残されても良い。
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。くわえて、本実施形態によれば、第2の化粧材10bに予め磁力調整シート50が設けられていることにより、別途磁力調整シート50を準備する必要が無く、容易に第2の化粧材10bを施工できる。
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態に係る施工方法を説明するための図である。本施工方法は、以下に説明する点を除いて第1の実施形態に係る施工方法と同じである。
本実施形態において、第2の化粧材10bを貼り付ける工程は、第2の化粧材10bの側面103bに平行な方向に巻き取られた第2の化粧材10bの、側面103bに垂直な方向に延びる端部104bのマグネット層14を下地20に貼り付ける工程を含む。また、第2の化粧材10bを貼り付ける工程は、第2の化粧材10bを広げて第2の化粧材10bの残りのマグネット層14を下地20に貼り付ける工程を含む。端部104bのマグネット層14を下地20に貼り付ける工程では、第2の化粧材10bの側面103bが、第1の化粧材10aの側面103aと平行になるように端部104bのマグネット層14を下地20に貼り付ける。以下に詳しく説明する。
端部104bは、第2の化粧材10bが巻き取られた状態の巻回体において、外側に位置する。
本実施形態において、端部104bのマグネット層14を下地20に貼り付ける工程において、第1の化粧材10aの側面103aと第2の化粧材10bの側面103bとを平行にし、かつ、側面103aと側面103bが接するように第2の化粧材10bを下地20に貼り付ける。そうすることで、第2の化粧材10bの残りの部分を広げて下地20に貼り付けたときに、第1の化粧材10aの側面103aと第2の化粧材10bの側面103bとはほぼ全体にわたって互いに接することとなる。
また、第1の化粧材10aの側面103aと下地20の施工領域の辺202とは垂直であり、第2の化粧材10bの側面103bと辺105bが垂直である場合、第2の化粧材10bの辺105bと下地20の辺202とを揃えることにより、第1の化粧材10aの側面103aと第2の化粧材10bの側面103bとを平行にすることができる。なお、第2の化粧材10bの辺105bと下地20の辺202とを揃えるためには、必要に応じて治具等を用いても良い。
本実施形態に係る方法では、側面103bが第2の化粧材10bの長辺方向に延びる側面である場合に特に有効である。第2の化粧材10bを巻き取った巻回体の長さを小さくできるためである。化粧材10はこのように長辺方向に巻き取られた巻回体の状態で運搬されることが多く、運搬後に第2の化粧材10bを広げたり、別方向に巻いたりすることなく施工作業に移れることは作業時間の短縮に繋がる。
次に、本実施形態の作用および効果について説明する。本実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用および効果が得られる。くわえて、第2の化粧材10bの側面103bに平行な方向に巻き取られた第2の化粧材10bを、容易に施工できる。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. マグネット部材を含む複数の化粧材を、強磁性体を含む下地に貼り付ける施工方法であって、
前記下地に第1の前記化粧材を貼り付ける工程と、
第2の前記化粧材の意匠面とは反対側の表面である第1面を前記下地に対向させて、前記下地に前記第2の化粧材を貼り付ける工程とを含み、
前記第2の化粧材を貼り付ける工程では、前記第1の化粧材の側面と前記第2の化粧材の側面とが互いに接するように、前記下地に前記第2の化粧材を貼り付ける施工方法。
2. 1.に記載の施工方法において、
前記複数の化粧材はそれぞれ、化粧層と、前記マグネット部材として前記化粧層の意匠面側とは反対側の面に一様に設けられたマグネット層との積層構造を有する施工方法。
3. 2.に記載の施工方法において、
前記第2の化粧材を貼り付ける工程は、
前記第2の化粧材の前記第1面の少なくとも一部である第1領域を前記下地に対向させた第1状態で、前記下地の表面で前記第2の化粧材を前記表面に平行な方向にスライドさせて、前記第2の化粧材の前記側面を前記第1の化粧材の前記側面に突き合わせる工程を含む施工方法。
4. 3.に記載の施工方法において、
前記第1状態において前記第2の化粧材のうち前記下地と接する面の表面磁束密度は20mT以上100mT以下である施工方法。
5. 3.または4.に記載の施工方法において、
前記第1状態では、前記第1領域の少なくとも一部と、前記下地との間に磁力調整シートを介在させる施工方法。
6. 5.に記載の施工方法において、
前記第2の化粧材を貼り付ける工程は、前記突き合わせる工程の後に、前記第1領域の少なくとも一部と、前記下地との間の前記磁力調整シートを除去する工程を含む施工方法。
7. 5.または6.のいずれか一項に記載の施工方法において、
前記磁力調整シートは予め前記第2の化粧材の前記第1面に除去可能に貼り付けられている施工方法。
8. 1.から7.のいずれか一項に記載の施工方法において、
前記第2の化粧材を貼り付ける工程では、
前記第2の化粧材の前記第1面の一部を前記下地に対向させた状態で、前記第2の化粧材の前記側面に垂直な方向に巻き取られた前記第2の化粧材の前記側面を、前記第1の化粧材の前記側面に突き当てた後、前記第2の化粧材を広げて前記第2の化粧材の残りの前記マグネット部材を前記下地に貼り付ける施工方法。
9. 1.から8.のいずれか一項に記載の施工方法において、
前記第2の化粧材を貼り付ける工程は、
前記第2の化粧材の前記側面に平行な方向に巻き取られた前記第2の化粧材の、前記側面に垂直な方向に延びる端部の前記マグネット部材を前記下地に貼り付ける工程と、
前記第2の化粧材を広げて前記第2の化粧材の残りの前記マグネット部材を前記下地に貼り付ける工程とを含み、
前記端部の前記マグネット部材を前記下地に貼り付ける工程では、前記第2の化粧材の前記側面が、前記第1の化粧材の前記側面と平行になるように前記端部の前記マグネット部材を前記下地に貼り付ける施工方法。
10. 1.から9.のいずれか一項に記載の施工方法において、
前記複数の化粧材のうち、少なくとも前記第1の化粧材と前記第2の化粧材とを含む二以上の前記化粧材は、少なくとも一つのデザインを構成している施工方法。
11. 10.に記載の施工方法において、
前記デザインは、文字、図形、記号、写真のうち少なくともいずれかを含む施工方法。
12. 1.から11.のいずれか一項に記載の施工方法において、
前記化粧材はガラスクロスを含む施工方法。
13. 1.から12.のいずれか一項に記載の施工方法において、
前記化粧材は合成樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン樹脂、および(メタ)アクリル樹脂からなる群から選択される一以上の樹脂を含む施工方法。
14. 1.から13.のいずれか一項に記載の施工方法において、
前記化粧材は、熱可塑性エマルジョン樹脂の固形分を含む施工方法。
15. マグネット部材を含む複数の化粧材と、強磁性体を含む下地との積層構造を有し、
第1の前記化粧材の側面と第2の前記化粧材の側面とが互いに接している壁構造体。