次に、本発明の実施形態について説明する。
(A)第1実施形態の構成の説明
図1は、本発明の第1実施形態に係る電源装置を有する車両の電源系統を示す図である。この図に示すように、車両の電源系統は、スタータモータ10、エンジン11、オルタネータ12、二次電池13、電圧センサ14、電流センサ15、温度センサ16、状態検知部17、エンジンECU(Electric Control Unit)18、電力推定部19、サブECU、CAN(Controller Area Network)バス21、LIN(Local Interconnect Network)バス22、電力線23、電力制御部24、および、負荷25−1〜25−3を有している。
ここで、スタータモータ10は、二次電池13に蓄電された電力によって駆動され、エンジン11を始動する電動機である。エンジン11は、例えば、ガソリンエンジンもしくはディーゼルエンジン等のレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等によって構成され、スタータモータ10によって始動され、図示しない車輪に回転力を与えて車両を走行させるとともに、オルタネータ12を駆動して二次電池13を充電する。
オルタネータ12は、エンジン11によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、二次電池13を充電する。
二次電池13は、例えば、鉛蓄電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、または、リチウムイオン電池等の二次電池によって構成され、オルタネータ12によって充電され、スタータモータ10を駆動してエンジン11を始動するとともに、電力制御部24を介して負荷25−1〜25−3に電力を供給する。
電圧センサ14は、二次電池13の端子電圧を検出し、状態検知部17に通知する。電流センサ15は、二次電池13に流れる電流を検出し、状態検知部17に通知する。温度センサ16は、二次電池13の液温を検出し、状態検知部17に通知する。
状態検知部17は、電圧センサ14、電流センサ15、および、温度センサ16の出力を参照し、二次電池13の状態を検知し、検知結果をエンジンECU18および電力推定部19に通知する。
エンジンECU18は、LINバス22を介してスタータモータ10、エンジン11、状態検知部17、電力推定部19、および、電力制御部24と接続され、これらとの間で情報を授受する。
電力推定部19は、状態検知部17による検知結果を参照して、二次電池13の電力を推定し、推定結果をエンジンECU18に通知する。また、エンジンECU18が休止状態である場合には、エンジンECU18の代わりに各部を制御する。
サブECU20は、例えば、ブレーキやステアリングを制御するECUであり、エンジンECU18、電力推定部19とCANバス21によって接続される。なお、図1の例では、図面を簡略化するためにサブECU20を1つだけ示しているが、実際には複数のサブECUが存在する。
CANバス21は、エンジンECU18、電力推定部19、サブECU20を相互に接続し、シリアル通信プロトコルよって、これらの間でデータの授受を可能にするバスである。
LINバス22は、スタータモータ10、エンジン11、オルタネータ12、状態検知部17、エンジンECU18、電力推定部19、および、電力制御部24を相互に接続し、これらの間で情報を授受するためのバスであり、前述したCANバス21よりも低速で安価なバスである。
電力線23は、スタータモータ10、オルタネータ12、二次電池13、および、電力制御部24を接続し、オルタネータ12によって発電された電力を二次電池13に供給するとともに、二次電池13に蓄電された電力を各部に供給する。
電力制御部24は、エンジンECU18または電力推定部19によって制御され、二次電池13から負荷25−1〜25−3に対する電力の供給/遮断を制御する。
負荷25−1〜25−3は、カーオーディオ、ナビゲーションシステム、ブレーキ、ステアリング、エアコン、および、デフォガ等によって構成され、二次電池13から供給される電力によって動作する。
(B)第1実施形態の動作の説明
つぎに、図1に示す第1実施形態の動作について説明する。図2は、第1実施形態の動作を説明するための図である。図2の上段は車両の状態を示し、下段は電力推定部19によって推定される二次電池13の状態を示している。図2の上段に模式的に示すように、例えば、車両が下り坂を走行している場合や、所定の速度以上で走行している場合に、燃料消費を抑えるために、エンジン11を停止する、いわゆるコースティングが実行されることがある。図2の例では、時刻t1においてコースティングが実行され、エンジン11が停止される。
図2の下段に示すように、二次電池13の電圧は、エンジン11が動作中は、オルタネータ12の発電電圧の変動や負荷の消費電力の変動に応じて電圧が変化する。時刻t1においてエンジン11が停止されるとオルタネータ12からの電力の供給が停止されるので、二次電池13に対する充電が停止され、二次電池13は電力の持ち出しのみの状態になる。このため、図2の時刻t1〜t2間に実線で示すように、時間の経過とともに二次電池13の電圧が低下する。
コースティングを終了してエンジン11を再始動する場合、スタータモータ10を回転させる必要がある。スタータモータ10を回転させると、時刻t1〜t2間に「電圧降下」と説明を付した電圧が急降下する破線部分のように、二次電池13の電圧が急激に低下する。図2において、破線で示す電圧降下予測ラインは、各タイミングにおいて、エンジン11を再始動した場合の電圧降下の予測ラインである。
ここで、例えば、カーオーディオやカーナビゲーションシステムのような、運転者の快適運転に資するような「快適システム」は、二次電池13の電圧が所定の電圧以下に低下すると、スピーカからノイズが発生したり、システムが再起動されたりする場合がある。このような状態が発生する限界の電圧を「快適システム動作限界電圧」と本明細書中では称する。
車両がコースティングを継続し、電圧降下予測ラインが、図2において横方向の破線で示す快適システム限界電圧を下回った場合、エンジン11を再始動する際に、快適システムがノイズを発生したり、再起動したりするので、運転者に不快感を与えてしまう。
そこで、本発明の第1実施形態では、コースティングが開始されると、再始動による電圧降下を予測し、予測された電圧降下が快適システム動作限界電圧以下になる前に、エンジン11を再始動することで、ノイズや再起動が発生することを防止する。
つぎに、より詳細な動作について説明する。図3は二次電池13を一定電流で放電した場合の電圧変化を示す図である。図3の横軸は時間(秒[s])を示し、縦軸は電圧[V]を示している。また、実線の曲線は一定電流による放電を行った際の二次電池13の電圧の時間的変化を示す「二次電池電圧変化予測曲線」であり、破線の曲線は負荷を動作させた場合の電圧降下の予測曲線を示す「応答電圧予測曲線」である。図中一点鎖線で示す横線は前述した快適システム作動限界電圧を示し、二点鎖線で示す横線は後述する走行系システム作動限界電圧を示し、間隔が長い破線は後述するエンジン作動限界電圧を示す。第1実施形態では、破線で示す応答電圧予測曲線が快適システム作動限界電圧に到達したときのSOC(State of Charge(充電率))を下限SOCと称する。
コースティングが開始されると、エンジンECU18は、快適システム作動限界電圧に対する下限SOCを、例えば、電圧とSOCの関係を示す関係式によって求める。つぎに、エンジンECU18は、状態検知部17から、二次電池13のその時点におけるSOCを取得する。そして、以下の式(1)に対して、その時点のSOCと下限SOCを代入し、連続放電可能な電気量[Ah]を求める。
連続放電可能な電気量=((その時点のSOC−下限SOC)/100)×補正SOH ・・・(1)
なお、補正SOHは、以下の式(2)によって得ることができる。ここで、20時間率容量とは、二次電池13の液温が25℃である場合に、0.05CAにより放電した場合の二次電池13の電気容量を示す。なお、右辺のf(放電レート,温度)は、放電レートと温度を変数とする所定の関数である。
補正SOH=20時間率容量×f(放電レート,温度) ・・・(2)
なお、放電レートと温度に基づいてSOHを補正するのは、図4に示すように、温度と放電レートによってSOHが変化するからである。図4において横軸は放電レート[CA]を示し、縦軸はSOH[Ah]を示している。また、各曲線は、65℃、45℃、25℃、0℃、および、−20℃における特性を示している。図4に示すような特性曲線に基づいて、前述した相対SOH算出用の関数f(放電レート,温度)に含まれるパラメータを求める。
式(1)に基づいて連続放電可能な電気量を求めると、つぎに、式(3)に基づいて、動作可能時間Tp[s]を求める。
動作可能時間Tp=連続放電可能な電気量/車両のトータルの消費電流×3600 ・・・(3)
以上の計算により、正確な動作可能時間Tpを求めることができるので、エンジンECU18は、その時点の時刻を参照することで、図2に示す限界点(電圧降下予測ラインが快適システム動作限界電圧と交差する点)のタイミングを求めることができる。エンジンECU18は、以上の式によって求めた限界点に到達する前の所定のタイミングにおいて、スタータモータ10を動作させることで、エンジン11を再始動させ、コースティングを終了することができる。エンジン11が始動されると、オルタネータ12からの電力の供給が開始されるので、二次電池13の充電が開始され、二次電池13の電圧が図2に示すように回復する。
以上に説明したように、本発明の第1実施形態によれば、コースティングが開始されると、電圧降下予測ラインと快適システム動作限界電圧とが交差する限界点を求め、この限界点に到達する前の所定のタイミングでエンジン11を始動するようにしたので、快適システムであるカーオーディオやカーナビゲーションシステムからノイズが発生したり、再起動したりすることを防止できる。これにより、運転者に不快な思いをさせることを防止できる。
また、第1実施形態では、二次電池13の液温および放電レートに関する補正SOHを求め、この補正SOHによって連続可能な電気量を補正するようにしたので、液温および放電レートに拘わらず、正確な電気量を求めることができる。
つぎに、図5および図6を参照して、第1実施形態における処理の詳細な流れを説明する。図5は、第1実施形態において実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。このフローチャートが開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS10では、エンジンECU18は、図示しないイグニッションキーが操作されて、イグニッションオンの状態になったか否かを判定し、イグニッションオンの状態になったと判定した場合(ステップS10:Y)にはステップS11に進み、それ以外の場合(ステップS10:N)には処理を終了する。例えば、運転者が車両に搭乗し、エンジン11を始動するために、イグニッションキーをオンに操作した場合にはステップS11に進む。
ステップS11では、エンジンECU18は、コースティングを開始したか否かを判定し、コースティングを開始したと判定した場合(ステップS11:Y)にはステップS12に進み、それ以外の場合(ステップS11:N)には同様の処理を繰り返す。例えば、エンジン11の始動後に車両が走行を開始し、長い下り坂を走行している場合にはステップS12に進む。
ステップS12では、エンジンECU18は、下限電圧を、快適システム作動限界電圧に設定する。より詳細には、エンジンECU18は、下限電圧を、図3に示す快適システム作動限界電圧に設定する。
ステップS13では、エンジンECU18は、電力推定部19に対して、下限電圧を快適システム作動限界電圧とした場合の動作可能時間Tpを算出させる。なお、ステップS13の処理の詳細は、図6を参照して後述する。
ステップS14では、エンジンECU18は、コースティングを終了するか否かを判定し、コースティングを終了すると判定した場合(ステップS14:Y)には、ステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS14:N)にはステップS15に進む。例えば、下り坂が終了したことによって、コースティングを終了する場合にはステップS16に進み、それ以外の場合にはステップS15に進む。
ステップS15では、エンジンECU18は、ステップS13の処理によって算出した動作可能時間Tpが終了間近であるか否かを判定し、動作可能時間Tpが終了間近であると判定した場合(ステップS15:Y)にはステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS15:N)にはステップS13に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。例えば、動作可能時間Tp終了までの残余の時間が1分以下になった場合にはステップS16に進む。
ステップS16では、エンジンECU18は、スタータモータ10を制御して、エンジン11を始動させる。この結果、エンジン11によってオルタネータ12が駆動されるので、二次電池13の充電が開始される。
ステップS17では、エンジンECU18は、図示しないイグニッションキーが操作されて、イグニッションオフの状態になったか否かを判定し、イグニッションオフの状態になったと判定した場合(ステップS17:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS17:N)にはステップS11に戻って前述の場合と同様の処理を実行する。例えば、運転者が車両に停車して、エンジン11を停止するために、イグニッションキーをオフに操作した場合には処理を終了する。
つぎに、図6を参照して、図5のステップS13に示す「動作可能時間Tp算出処理」の詳細について説明する。図6に示す処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS30では、電力推定部19は、状態検知部17に対して、その時点におけるトータルの消費電力を検出させる。例えば、コースティングを実行している際に、例えば、カーオーディオ、カーナビゲーションシステム、ヘッドライト、および、エアコンが作動している場合には、これらの消費電流がトータルの消費電流として検出される。
ステップS31では、電力推定部19は、二次電池電圧変化予測曲線を算出する。この結果、例えば、図3に実線で示す二次電池電圧変化予測曲線を得ることができる。
ステップS32では、電力推定部19は、対象となる負荷による電圧降下を特定する。例えば、負荷がスタータモータ10の場合には、スタータモータ10による電圧降下を特定する。
ステップS33では、電力推定部19は、ステップS31で求めた二次電池電圧変化予測曲線に対して、ステップS32で求めた負荷による電圧降下を加味して、応答電圧予測曲線を算出する。この結果、例えば、図3に破線で示す、応答電圧予測曲線を得ることができる。
ステップS34では、電力推定部19は、ステップS33で求めた応答電圧予測曲線と下限電圧から下限SOCを求める。例えば、図5の例では、ステップS12において、下限電圧が快適システム作動限界電圧に設定されているので、応答電圧予測曲線と快適システム作動限界電圧との交差する点の下限電圧に対応する下限SOCが算出される。
ステップS35では、電力推定部19は、前述した式(2)に基づいて、補正SOHを算出する。より詳細には、その時点における二次電池13の液温と、その時点における負荷に対する放電レートとに基づいて補正SOHが算出される。
ステップS36では、電力推定部19は、状態検知部17に対して、その時点(現在)のSOCを特定するように指示する。この結果、状態検知部17は、その時点のSOCを特定する。
ステップS37では、電力推定部19は、式(1)に基づいて、連続放電可能な電気量を算出する。
ステップS38では、電力推定部19は、式(3)に基づいて、動作可能時間Tpを算出する。そして、元の処理に復帰(リターン)する。
以上の処理によれば、前述した第1実施形態の動作を実現することができる。
(C)第2実施形態の説明
つぎに、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の構成は、図1に示す第1実施形態と同様であり、動作のみが異なっているので、構成についての説明は省略する。
図7は、第2実施形態の動作を説明するための図である。第2実施形態では、コースティングを実行し、限界点に到達する前にエンジン11を始動する動作を実行するまでは、第1実施形態と同様であるが、第2実施形態では、その際にエンジン11の始動に失敗した場合の動作となっている。
すなわち、限界点に到達する前に、エンジン11の始動を試みて失敗した場合、エンジンECU18は、まず、車両の走行に必要な負荷である、例えば、ステアリングおよびブレーキ等と、視界確保のために必要な負荷であるワイパーおよびヘッドライト等以外の負荷に対する電力の供給を遮断する。より詳細には、エンジンECU18は、電力制御部24を制御し、ステアリング、ブレーキ、ワイパー、および、ヘッドライト以外の負荷(例えば、エアコン等)についての電力の供給を遮断する。この結果、図7に示すように、時刻t2以降では、二次電池13の電圧を示す直線の傾きが、時刻t1〜t2間よりも緩やかになっている。
つぎに、エンジンECU18は、走行系システム作動限界電圧を下限電圧に設定し、動作可能時間Tpを電力推定部19に算出させる。より詳細には、エンジン11の始動に失敗した場合には、エンジン11による車両の駆動ができなくなるだけなく、オルタネータ12が停止することから二次電池13は充電されない状態となる。このため、安全な場所に車両を移動させるまでの間、車両の走行に関する負荷は動作可能な状態としなければならない。そこで、負荷として、例えば、ステアリング、ブレーキ、ワイパー、および、ヘッドライト等が同時に動作した場合の電圧降下を、二次電池13の電圧変化予測曲線に加味して応答電圧予測曲線を求める。そして、この応答電圧予測曲線と、走行系システム作動限界電圧との交点から下限SOCを求める。なお、走行系システム作動限界電圧とは、前述したステアリング、ブレーキ、ワイパー、および、ヘッドライト等が同時に動作可能な下限の電圧である。
下限SOCの算出が完了すると、電力推定部19は、前述した式(2)に基づいて、補正SOHを算出する。また、電力推定部19は、状態検知部17に対して、二次電池13の現在のSOCを特定させる。そして、電力推定部19は、式(1)に基づいて、連続放電可能な電気量を算出する。また、電力推定部19は、状態検知部17がその時点において測定、または、応答電圧予測曲線を求める前に測定したトータルの消費電流を取得し、このようにして求めた値を、式(3)に代入することで、動作可能時間Tpを算出する。
そして、動作可能時間Tpが所定時間以下になった場合(例えば、5分以下になった場合)には、車両を安全な場所に待避させて停止するように、運転者に対して指示する。
以上に説明したように、本発明の第2実施形態によれば、コースティング中にエンジン11の始動に失敗した場合、走行系システム以外への電力の供給を停止するようにしたので、オルタネータ12の停止後に、走行系システムが動作できる時間を延長することができる。また、第2実施形態では、走行系システムの動作による電圧降下に基づいて動作可能時間Tpを算出し、動作可能時間Tpの間近になった場合には、運転者に対して通知するようにしたので、走行系が確実に動作可能な間に、車両を安全な場所に待避させることができる。
つぎに、図8を参照して、第2実施形態において実行される処理の詳細について説明する。なお、図8において、図5と対応する部分には同一の符号を付してあるので、その説明は省略する。より詳細には、ステップS10〜S15の処理は、図5と同様であるので、ステップS51以降の処理について説明する。
ステップS51では、エンジンECU18は、エンジン11の始動に成功したか否かを判定し、エンジン11の始動に成功したと判定した場合(ステップS51:Y)にはステップS11に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS51:N)にはステップS52に進む。
ステップS52では、エンジンECU18は、電力制御部24を制御して、ステアリング、ブレーキ、ワイパー、および、ヘッドライト等の重要補機(走行に必須な負荷)以外の負荷に対する電力の供給を遮断する。この結果、例えば、エアコン等に対する電力の供給が停止される。
ステップS53では、エンジンECU18は、下限電圧を走行システム作動限界電圧に設定する。
ステップS54では、エンジンECU18は、動作可能時間Tpを算出する処理を電力推定部19に実行させる。なお、ステップS54の処理の詳細は図6と同様である。このステップS54の処理により、走行系システム作動限界電圧を下限電圧とした場合の動作可能時間Tpが算出される。
ステップS55では、エンジンECU18は、車両が停止したか否かを判定し、車両が停止したと判定した場合(ステップS55:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS55:N)にはステップS56に進む。
ステップS56では、エンジンECU18は、動作可能時間Tpが終了間近か否かを判定し、動作可能時間Tpが終了間近と判定した場合(ステップS56:Y)にはステップS57に進み、それ以外の場合(ステップS56:N)にはステップS54に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。
ステップS57では、エンジンECU18は、車両を安全な場所に待避させて停車させるように運転者に対して指示する。
以上の処理によれば、コースティング中にエンジン11の始動に失敗した場合、重要補機以外への電力の供給を停止するとともに、動作可能時間Tpを算出し、動作可能時間Tpの終了間近になった場合には、車両を待避して停止するように指示することで、車両を安全に待避させることができる。
(D)第3実施形態の説明
つぎに、第3実施形態について説明する。なお、第3実施形態の構成は、図1に示す第1実施形態と同様であり、動作のみが異なっているので、構成についての説明は省略する。
図9は、第3実施形態の動作を説明するための図である。第3実施形態の車両は、自動運転が可能な車両とされている。このような、自動運転可能な車両が走行中にオルタネータ12が故障した場合、二次電池13の電力が十分でなくなると、自動運転を実行できなくなってしまう。そこで、第3実施形態では、自動運転による走行中に、オルタネータ12が故障した場合には、エンジンECU18は、まず、電力制御部24を制御して、自動運転および走行に必須な負荷であるステアリング、ブレーキ、ワイパー、ヘッドライト、周辺監視センサ等以外の負荷に対する電力の供給を遮断する。この結果、車両の動作可能時間を延長することができる。また、また、エンジンECU18は、自動運転ができなくなったことを、例えば、音声メッセージ等によって運転者に通知する。
つぎに、エンジンECU18は、走行系システム作動限界電圧を下限電圧に設定し、動作可能時間Tpを電力推定部19に算出させる。より詳細には、オルタネータ12が故障した場合には、二次電池13は充電されないので、自動運転を継続できない状態となる。このため、運転者に対して、運転を移管して待避行動を実行してもらう必要がある。そこで、負荷として、例えば、周辺監視センサ、ステアリング、ブレーキ、ワイパー、および、ヘッドライトが同時に動作した場合の電圧降下を、二次電池13の電圧変化予測曲線に加味して応答電圧予測曲線を求める。そして、この応答電圧予測曲線と、走行系システム作動限界電圧との交点から下限SOCを求める。なお、走行系システム作動限界電圧とは、前述した、周辺監視センサ、ステアリング、ブレーキ、ワイパー、および、ヘッドライトが同時に動作可能な下限電圧である。
下限SOCの算出が完了すると、電力推定部19は、前述した式(2)に基づいて、補正SOHを算出する。また、電力推定部19は、状態検知部17に対して、二次電池13のその時点のSOCを特定させる。そして、電力推定部19は、式(1)に基づいて、連続放電可能な電気量を算出する。また、電力推定部19は、状態検知部17がその時点において測定、または、応答電圧予測曲線を求める前に測定したトータルの消費電流を取得し、このようにして求めた値を、式(3)に代入することで、動作可能時間Tpを算出する。
エンジンECU18は、動作可能時間Tpを自動運転が可能な時間として運転者に音声メッセージ等によって通知するとともに、動作可能時間Tpが終了するまでに操舵を移管するように運転者に依頼する。その結果、動作可能時間Tpが終了するまでに、操舵を運転者に移管した場合には、自動運転を停止する。また、操舵を運転者に移管することができない場合には、安全な場所(例えば、待避地帯)を探索し、見つかった安全な場所に自動運転によって車両を待避させる。
以上の処理によれば、自動運転中にオルタネータ12が故障した場合には、走行系システム以外への給電を停止することで、自動運転および手動運転が可能な時間を延長することができる。また、走行系システムの動作可能時間Tpを算出し、動作可能時間Tpを運転者に通知することで、操舵を円滑に運転者に移管することができる。また、移管ができなかった場合には安全な場所まで自動運転によって待避することで、事故等の発生を未然に防ぐことができる。
つぎに、図10を参照して、第3実施形態の詳細な動作について説明する。図10に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS70では、エンジンECU18は、図示しないイグニッションキーが操作されて、イグニッションオンの状態になったか否かを判定し、イグニッションオンの状態になったと判定した場合(ステップS70:Y)にはステップS71に進み、それ以外の場合(ステップS70:N)には処理を終了する。
ステップS71では、エンジンECU18は、自動運転が選択されたか否かを判定し、自動運転が選択されたと判定した場合(ステップS71:Y)にはステップS72に進み、それ以外の場合(ステップS71:N)には処理を終了する。例えば、運転者によって自動運転モードが選択された場合には、ステップS72に進む。
ステップS72では、車両は、自動運転処理を実行する。より詳細には、目的値までの経路に基づいて走行する道路を選択するとともに、センサによって検出された車両の周辺の情報に基づいて操舵する処理を実行する。
ステップS73では、エンジンECU18は、オルタネータ12が故障したか否かを判定し、オルタネータ12が故障したと判定した場合(ステップS73:Y)にはステップS74に進み、それ以外の場合(ステップS73:N)にはステップS72に戻って同様の処理を繰り返す。例えば、オルタネータ12が故障して電力の供給が停止した場合にはステップS74に進む。
ステップS74では、エンジンECU18は、重要補機への電力の供給を停止する。より詳細には、エンジンECU18は、電力制御部24を制御して、周辺監視センサ、ステアリング、ブレーキ、ワイパー、ヘッドライト等以外の負荷に対する電力の供給を遮断する。この結果、車両の走行可能時間を延長することができる。
ステップS75では、エンジンECU18は、下限電圧を走行システム作動限界電圧に設定する。
ステップS76では、エンジンECU18は、例えば、音声メッセージ等によって、運転者に対して運転の移管を要請する。
ステップS77では、エンジンECU18は、動作可能時間Tpを算出する処理を電力推定部19に実行させる。なお、ステップS77の処理の詳細は図6と同様である。ステップS77の処理により、走行系システム作動限界電圧を下限電圧とした場合の動作可能時間Tpが算出される。
ステップS78では、エンジンECU18は、ステップS77で算出した動作可能時間Tpを運転者に対して、例えば、音声メッセージ等によって通知する。より詳細には、「自動運転を継続可能な時間はあと15分ですので、15分以内に運転の交替をお願いします。」をメッセージとして運転者に通知する。
ステップS79では、エンジンECU18は、運転者に操舵を移管することで、自動運転が終了したか否かを判定し、自動運転が終了した場合(ステップS79:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS79:N)にはステップS80に進む。
ステップS80では、エンジンECU18は、動作可能時間Tpの終了間近か否かを判定し、動作可能時間Tpが終了間近と判定した場合(ステップS79:Y)にはステップS81に進み、それ以外の場合(ステップS80:N)にはステップS77に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。
ステップS81では、エンジンECU18は、自動運転によって、車両を安全な場所に待避させて停車させる。
以上の処理によれば、自動運転中にオルタネータ12が故障した場合、重要補機以外への電力の供給を停止することで自動運転を継続できる時間を延長することができる。また、動作可能時間Tpを算出し、運転者に通知して運転の交替を依頼することで、操舵を円滑に移管することができる。また、操舵の移管ができなかった場合において、動作可能時間Tp終了間近になった場合には、自動運転によって車両を待避して停止するように制御することで、事故の発生を未然に防ぐことができる。
(E)第4実施形態の説明
つぎに、第4実施形態について説明する。なお、第4実施形態の構成は、図1に示す第1実施形態と同様であり、動作のみが異なっているので、構成についての説明は省略する。
図11は、第4実施形態の動作を説明するための図である。第4実施形態では、車両が駐車中の状況を示している。時刻t0〜t1間では、車両が駐車中であって、搭乗者がいない状態なので、二次電池13から負荷25−1〜25−3に対しては、微弱な電流である暗電流しか流れていない。このため、図11の下段に示すように二次電池13の電圧は略一定の状態となっている。
このような場合に、例えば、運転者が車両に搭乗し、エンジン11を始動しない状態で、時刻t1において、カーオーディオや室内灯をオンの状態にした場合、図11の下段に示すように二次電池13の電圧は降下する。
その場合、エンジンECU18は、下限電圧をエンジン始動限界電圧に設定し、電力推定部19に対して動作可能時間Tpを算出させる。より詳細には、オルタネータ12が停止した状態で、負荷を動作させた場合には、二次電池13からは持ち出しだけの状態となる。このため、スタータモータ10を駆動してエンジン11を始動する際の電圧降下を、二次電池13の電圧変化予測曲線に加味して応答電圧予測曲線を求める。そして、この応答電圧予測曲線と、エンジン11を始動する限界電圧であるエンジン始動限界電圧との交点から下限SOCを求める。
下限SOCの算出が完了すると、電力推定部19は、前述した式(2)に基づいて、補正SOHを算出する。また、電力推定部19は、状態検知部17に対して、二次電池13の現在のSOCを特定させる。そして、電力推定部19は、式(1)に基づいて、連続放電可能な電気量を算出する。また、電力推定部19は、状態検知部17に対してその時点において測定、または、応答電圧予測曲線を求める前に測定したトータルの消費電流を取得し、このようにして求めた値を、式(3)に代入することで、動作可能時間Tpを算出する。
そして、エンジンECU18は、動作可能時間Tpが終了間近になった場合には、例えば、音声メッセージ等によって運転者に対して電装品の使用を中止するか、エンジンを始動するように促す。あるいは、スタータモータ10を制御してエンジン11を始動させる。その結果、オルタネータ12が動作するので、二次電池13の充電が開始される。
つぎに、図12を参照して、第4実施形態の詳細な動作を説明する。図12に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS90では、エンジンECU18は、図示しないイグニッションキーがイグニッションオフの状態か否かを判定し、イグニッションオフの状態であると判定した場合(ステップS90:Y)にはステップS91に進み、それ以外の場合(ステップS90:N)には処理を終了する。
ステップS91では、エンジンECU18は、搭乗者が電装品の使用を開始したか否かを判定し、電装品の使用を開始したと判定した場合(ステップS91:Y)にはステップS92に進み、それ以外の場合(ステップS91:N)には同様の処理を繰り返す。例えば、車両の所有者が駐車中の車両に搭乗し、エンジン11を始動しないで、電装品の使用を開始した場合には、ステップS92に進む。
ステップS92では、エンジンECU18は、下限電圧をエンジン始動限界電圧に設定する。
ステップS93では、エンジンECU18は、動作可能時間Tpを算出する処理を電力推定部19に実行させる。なお、ステップS93の処理の詳細は図6と同様である。ステップS93の処理により、エンジン始動限界電圧を下限電圧とした場合の動作可能時間Tpが算出される。
ステップS94では、エンジンECU18は、搭乗者が電装品の使用を終了したか否かを判定し、電装品の使用を終了したと判定した場合(ステップS94:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS94:N)にはステップS95に進む。例えば、搭乗者が、例えば、カーオーディオ等の電装品の使用を終了した場合には、処理を終了する。
ステップS95では、エンジンECU18は、動作可能時間Tpが終了間近か否かを判定し、動作可能時間Tpが終了間近と判定した場合(ステップS95:Y)にはステップS96に進み、それ以外の場合(ステップS95:N)にはステップS93に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。
ステップS96では、エンジンECU18は、二次電池13の残容量が少なくなっていることから、始動不能になる可能性がある旨を搭乗者に、例えば、音声メッセージによって通知する。
ステップS97では、エンジンECU18は、スタータモータ10を制御して、エンジン11を始動する。
以上に説明したように、本発明の第4実施形態によれば、車両のエンジン11を停止中に搭乗者が電装品の使用を開始した場合には、下限電圧をエンジン始動限界電圧に設定して動作可能時間Tpを算出し、動作可能時間Tpが終了間近になった場合には、エンジン11を自動的に始動するようにしたので、二次電池13の容量不足でエンジン11が始動できなくなることを防止できる。
(F)第5実施形態の説明
つぎに、第5実施形態について説明する。なお、第5実施形態の構成は、図1に示す第1実施形態と同様であり、動作のみが異なっているので、構成についての説明は省略する。
図13は、第5実施形態の動作を説明するための図である。第5実施形態では、車両が駐車中の状況を示している。時刻t0〜t1間では、車両が駐車中であって、搭乗者がいない状態なので、二次電池13から負荷25−1〜25−3に対しては、微弱な電流である暗電流しか流れていない。このため、図13の下段に示すように二次電池13の電圧は略一定の状態となっている。
このような場合に、時刻t1において、新たな電装品を追加装備したことで消費電流が増加したとする。あるいは、既存の電装品の異常動作に起因して消費電流が増加したとする。このような場合には、搭乗者がいない状態で、二次電池13の電圧が減少することになる。
ところで、この場合、搭乗者はおらず、車両の電源も投入されていない状態であるので、エンジンECU18は、動作を停止した状態である。そこで、第5実施形態では、エンジンECU18が動作を停止している場合には、エンジンECU18が動作を停止したままで、電力推定部19が代わりに制御動作を実行するように構成されている。エンジンECU18は、CANバス21のマスタ装置として動作し、エンジンECU18が動作を開始した場合には、CANバス21に接続されているマスタ装置(例えば、サブECU20等)も自動的に起動されるので、電力消費が増加するためである。なお、第4実施形態の場合も同様に、エンジンECU18に代わって、電力推定部19が制御動作を実行するようにしてもよい。
二次電池13の電圧が低下すると、エンジンECU18に代わって、電力推定部19は、下限電圧をエンジン始動限界電圧に設定し、動作可能時間Tpを算出する。より詳細には、オルタネータ12が停止した状態で、負荷を動作させた場合には、二次電池13からは持ち出しだけの状態となる。このため、スタータモータ10を駆動してエンジン11を始動する際の電圧降下を、二次電池13の電圧変化予測曲線に加味して応答電圧予測曲線を求める。そして、この応答電圧予測曲線と、エンジン11を始動する限界電圧であるエンジン始動限界電圧との交点から下限SOCを求める。
下限SOCの算出が完了すると、電力推定部19は、前述した式(2)に基づいて、補正SOHを算出する。また、電力推定部19は、状態検知部17に対して、二次電池13の現在のSOCを特定させる。そして、電力推定部19は、式(1)に基づいて、連続放電可能な電気量を算出する。また、電力推定部19は、状態検知部17に対してその時点において測定、または、応答電圧予測曲線を求める前に測定したトータルの消費電流を取得し、このようにして求めた値を、式(3)に代入することで、動作可能時間Tpを算出する。
そして、電力推定部19は、動作可能時間Tpよりも所定の時間(例えば、3日)前になった場合には、例えば、図示しない通信装置を駆動して、運転者またはディーラに対してエンジン11を再始動するように通知を行う。なお、通知の方法としては、例えば、運転者が双方向リモコンを有している場合には、当該双方向リモコンに対して通知を行う。あるいは、運転者が携帯型の通信装置(例えば、スマートフォン)を有している場合には、当該携帯型の通信装置に対して、電子メール等によって通知を行う。あるいは、テレマティックス等を用いて、運転者またはディーラに対して通知を行う。
このような通知を受け取った運転者は、車両に搭乗して、エンジン11を再始動する。その結果、オルタネータ12が動作するので、二次電池13の充電が開始される。
つぎに、図14を参照して、第5実施形態の詳細な動作を説明する。なお、図14において、図12と対応する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。図14では、図12と比較すると、ステップS111以降の処理が異なっているので、ステップS111以降を中心に説明する。図14に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
ステップS111では、電力推定部19は、エンジン11が始動されたか否かを判定し、エンジン11が始動されたと判定した場合(ステップS111:Y)には処理を終了し、それ以外の場合(ステップS111:N)にはステップS112に進む。
ステップS112では、電力推定部19は、動作可能時間Tpよりも所定時間前になったか否かを判定し、所定時間前になったと判定した場合(ステップS112:Y)にはステップS113に進み、それ以外の場合(ステップS112:N)にはステップS93に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。
ステップS113では、電力推定部19は、図示しない通信装置を制御して、二次電池13の容量が少なくなっていることを運転者またはディーラに通知する。
以上に説明したように、本発明の第5実施形態によれば、車両のエンジン11を停止中に、例えば、暗電流等の増加によって二次電池13の容量が減少した場合には、下限電圧をエンジン始動限界電圧に設定して動作可能時間Tpを算出し、動作可能時間Tpよりも所定の時間前になった場合には、運転者またはディーラに通知するようにしたので、二次電池13の容量不足でエンジン11が始動できなくなることを防止できる。
(G)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の各実施形態では、動作可能時間Tpに基づいて制御を行うようにしたが、連続放電可能な電気量に基づいて制御を行うようにしてもよい。例えば、連続放電可能な電気量が所定の閾値以下になった場合に、所定の制御を行うようにしてもよい。また、動作可能時間Tpを元に、走行可能距離を算出し、走行可能距離に基づいて制御を行うようにしてもよく、運転者に対して動作可能時間Tpでなく走行可能距離を通知するようにしてもよい。
また、以上の各実施形態では、液温と放電レートの双方に基づいて補正SOHを算出するようにしたが、液温と放電レートのいずれか一方に基づいて補正SOHを算出するようにしてもよい。
また、図1に示す構成例では、負荷25−1〜25−3への電力の供給を、電力制御部24によって制御するようにしたが、例えば、それぞれの負荷が有するECUに対して指示を行うことで、電力の供給を制御するようにしてもよい。
また、図1に示す構成例では、エンジンECU18の他に電力推定部19を設け、これらの双方の協働動作によって処理を実行するようにしたが、これらのいずれか一方のみによって処理を実行するようにしてもよい。また、第5実施形態では、エンジン11が停止している場合には、電力推定部19がエンジンECU18に代替して処理を実行するようにしたが、第4実施形態の場合も同様に、電力推定部19がエンジンECU18に代替して処理を実行するようにしてもよい。もちろん、代替しないでエンジンECU18または電力推定部19のいずれか一方が処理を実行するようにしてもよい。
また、第1および第2実施形態では、現在走行中の下り坂のみを対象として限界点を判断するようにしたが、例えば、下り坂が断続的に継続する場合には、コースティングとつぎのコースティングの間隔が十分でない場合には、二次電池13の充電を満足に行うことができない場合も想定される。そこで、そのような場合には、現在走行中の下り坂のみではなく、複数または全ての下り坂を対象として、図5および図6に示す処理を実行し、動作可能時間Tpを算出して、判断を実行するようにしてもよい。
また、第1および第2実施形態では、オルタネータ12が停止する場合として、コースティングを例に挙げて説明したが、例えば、信号待ち等においてエンジン11を停止する、いわゆる、「アイドリングストップ」時に、コースティング時と同様の処理を実行するようにしてもよい。
また、以上の各実施形態では、動作可能時間Tpが終了間近か否かの判定の際には、固定値を用いる場合を例に挙げて説明したが、固定値ではなく、過去の走行履歴に基づいて定めた値(可変値)を用いて判断するようにしてもよい。そのような構成によれば、車両のユーザ毎の運転特性に応じた最適な判断を行うことができる。
また、過去の走行履歴とともに、負荷による電力の消費履歴を記憶部に記憶しておき、このような消費履歴を参照することで、例えば、二次電池13の充電率の低下が生じた場合にはその原因を探ることができるようにしてもよい。もちろん、このようにして記憶された情報に基づいて、前述したように判定値を決めるようにしてもよい。
また、以上の第1および第2実施形態では、コースティング開始後の動作について説明したが、コースティングの実行の可否を判定するようにしてもよい。より詳細には、図5に示すフローチャートにおいて、ステップS11を開始する前に、動作可能時間Tpを算出し、Tpが所定の時間(例えば、1分)以上である場合に、コースティングを実行するようにしてもよい。そのような実施形態によれば、エンジン11の再始動が困難な場合にコースティングが実行されることを防止するだけでなく、エンジン11の再始動が繰り返されることによって運転者に不快感を与えることを防止できる。なお、このような判断はコースティングを実行していない場合(オルタネータ12が動作している場合)に実行するので、二次電池14を流れる電流だけでなく、オルタネータ12の発電量も考慮して、車両全体での消費電流量を算出する必要がある。そこで、ステップS30の処理を実行する際には、検出した二次電池14を流れる電流にオルタネータ12の電流値を加算して消費電流を算出したりしてもよい。また、動作可能時間Tpに基づいて判断するのではなく、連続放電可能な電気量が所定の閾値以上の場合に、コースティングを実行するようにしてもよい。
また、以上の各実施形態では、エンジン停止後の二次電池13のSOCに基づいて、連続放電可能な電気量および動作可能時間を求めるようにしたが、これに変えて、例えば、SOF(State Of Function)を用いて連続放電可能な電気量および動作可能時間を求めるようにしてもよい。
図15は、SOFを用いて連続放電可能な電気量および動作可能時間Tpを求める変形実施形態を説明するための図である。この図15では、横軸は時間を示し、縦軸はSOFを示している。図15の例では、電気量推定部19は、コースティングを開始した後の所定のタイミング(時間0)において、SOFを算出し、算出した値をSOF0とする。なお、SOFを算出する方法としては、例えば、開回路電圧OCVと、負荷25−1〜25−3に流れる電流Iと、二次電池13のインピーダンスRから、SOF=OCV−I×Rによって求めることができる。もちろん、これ以外の方法でSOFを求めてもよい。
つぎに、電気量推定部19は、図15に示す時間Δtが経過後のSOF1を推定する。より詳細には、電気量推定部19は、二次電池13の放電電流を所定時間測定し、所定時間内における平均電流Iaを求める。つぎに、電気量推定部19は、平均電流Iaで時間Δt放電した場合の放電量を求め、現在のSOCの値から放電量を差し引くことで、時間Δt後のSOC1を求める。つぎに、電気量推定部19は、OCVとSOCの関係を示す関係式から、Δt後の開回路電圧OCV1を求める。つぎに、電気量推定部19は、Δt時間後の等価回路モデルを推定し、この等価回路モデルからインピーダンスR1を求める。そして、OCV1、Ia、R1から、Δt経過後のSOF1を前述の式に基づいて算出する。
つぎに、電気量推定部19は、図15に示す直線の傾きAを求める。より詳細には、電気量推定部19は、A=(SOF1−SOF0)/Δtにより傾きを求めることができる。
傾きAが求まると、電気量推定部19は、大きな電流が流れる負荷である電動パワーステアリング(EPS:Electric Power Steering)、電動ブレーキ(ECB:Electric Control Braking System)、アンチロックブレーキシステム(ABS:Antilock Brake System)、または、(VSC:Vehicle Stability Control)が動作できるSOFの下限値であるSOFLと、傾きAとに基づいて、式Tp=(SOFL−SOF0)/Aにより、動作可能時間Tpを求める。なお、コースティング走行中に、負荷25−1〜25−3の作動数が変化したり、二次電池13の放電電流が変化したりした場合は、前述した処理を繰り返し、動作可能時間Tpを再計算することが望ましい。以上の処理によれば、SOFに基づいて、動作可能時間Tpを求めることができる。
なお、以上の例では、動作可能時間Tpのみを求めるようにしたが、例えば、動作可能時間Tpに対して、負荷25−1〜25−3に流れる電流の値を乗算することで、二次電池13が供給可能な電気量についても求めることができる。
図16は、前述した処理を実現するためのフローチャートである。なお、図16において図5と対応する部分には同一の符号を付しているのでその説明は省略する。図16と図5を比較すると、ステップS12〜ステップS13の処理が、ステップS120〜ステップS125の処理に置換されるとともに、ステップS126の処理が追加されている。それ以外の処理は、図5と同様であるので、以下では、ステップS120〜ステップS126の処理を中心に説明する。
ステップS120では、電気量推定部19は、二次電池13のSOFを算出する処理を実行する。この結果、その時点における二次電池13のSOFの値を得る。なお、SOFを求める方法としては、前述したように、開回路電圧OCVと、負荷25−1〜25−3に流れる電流Iと、二次電池13のインピーダンスRから、SOF=OCV−I×Rによって求めることができる。
ステップS121では、電気量推定部19は、ステップS120で求めたSOFをSOF0とする。
ステップS122では、電気量推定部19は、時間Δt後の二次電池13のSOFを予測する。なお、予測する方法としては、前述したように、まず、電気量推定部19が、二次電池13の所定時間内における平均電流Iaを求める。つぎに、電気量推定部19は、平均電流Iaで時間Δt放電した場合の放電量を求め、現在のSOCの値から放電量を差し引くことで、時間Δt後のSOC1を求める。また、電気量推定部19は、OCVとSOCの関係式から、Δt後の開回路電圧OCV1を求める。さらに、電気量推定部19は、Δt時間後の二次電池13の等価回路モデルを求め、この等価回路モデルからインピーダンスR1を求める。そして、電気量推定部19は、OCV1、Ia、R1から、Δt経過後のSOFを前述の式に基づいて算出する。なお、推定するのではなく、Δt経過後のSOFを、前述のステップS120と同様に算出するようにしてもよい。
ステップS123では、電気量推定部19は、ステップS122で求めたSOFをSOF1とする。
ステップS124では、電気量推定部19は、式(SOF1−SOF0)/Δtによって得た値を、傾きAとする。
ステップS125では、電気量推定部19は、式(SOFL−SOF0)/Aによって得た値を、動作可能時間Tpとする。
ステップS14では、エンジンECU18は、コースティングを終了するか否かを判定し、コースティングを終了すると判定した場合(ステップS14:Y)には、ステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS14:N)にはステップS126に進む。
ステップS126では、エンジンECU18は、動作中の負荷25−1〜25−3の数や、二次電池13の放電電流が変化したか否かを判定し、変化したと判定した場合(ステップS126:Y)にはステップS120に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS126:N)にはステップS15に進む。
ステップS15では、エンジンECU18は、ステップS125の処理によって算出した動作可能時間Tpが終了間近であるか否かを判定し、動作可能時間Tpが終了間近であると判定した場合(ステップS15:Y)にはステップS16に進み、それ以外の場合(ステップS15:N)にはステップS14に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返す。
以上の処理によれば、前述した、SOFから動作可能時間Tpを求める処理を実現することができる。
なお、図15および図16の例では、SOFのみを考慮するようにしたが、二次電池13の分極も考慮するようにしてもよい。すなわち、二次電池13である鉛蓄電池は二酸化鉛からなる正極板、鉛からなる負極板、および、希硫酸からなる電解液を有する。充電時には極板から硫酸が発生し、放電時には水が発生する。これにより、充放電時には電解液の濃度が不均一になる分極と呼ばれる現象が発生し、二次電池13の端子電圧が開回路電圧であるOCVから乖離したものとなる。図17は、充電による分極電圧とSOCとの関係を示す図である。この図17に示すように、SOCが100%に近づくと分極電圧は減少する。そこで、このような分極電圧も考慮に入れて、動作可能時間Tpを算出するようにしたのが、図18の例である。
図18の例では、時間Δt経過した後のSOF1から分極電圧Vpを減算した値から傾きA1(実線の傾き)を求め、この傾きA1を用いて動作可能時間Tp2を求める。より詳細には、前述の場合と同様の方法によってSOF0を算出し、時間Δtが経過後のSOFであるSOF1を推定する。また、Δt経過後のSOCを推定し、推定したSOCを図17に示すSOCと分極電圧との関係を示すグラフに適用するか、または、SOCと分極電圧との関係を示す数式に適用し、分極電圧Vpを求める。そして、このようにして求めたSOF0、SOF1、および、Vpから傾きA1を、A1=(SOF1−SOF0−Vp)/Δtによって求める。そして、SOFの下限値であるSOFLと傾きA1とから、動作可能時間Tp2を、Tp2=(SOFL−SOF0)/A1によって求めることができる。このような方法によれば、分極電圧も考慮して、より現実の値に近い動作可能時間を求めることができる。
図19は、前述した分極電圧を考慮した処理を実現するためのフローチャートである。なお、図19において、図16と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。図19では図16と比較すると、ステップS124〜ステップS125の処理が除外され、ステップS130〜ステップS132の処理が追加されている。これら以外は図16と同様であるので、以下ではステップS130〜ステップS132の処理を中心に説明する。
ステップS130では、電気量推定部19は、分極電圧Vpを算出する。より詳細には、例えば、図17に示す、SOCと分極電圧の関係を示すグラフまたはこれらの関係を示す数式から、分極電圧Vpを求める。
ステップS131では、電気量推定部19は、SOF1、SOF0、Vp、および、Δtに基づいて傾きA1を算出する。より詳細には、A1=(SOF1−SOF0−Vp)/Δtにより傾きA1を求める。
ステップS132では、電気量推定部19は、SOFL、SOF0、および、A1に基づいて、動作可能時間Tp2を算出する。より詳細には、Tp2=(SOFL−SOF0)/A1により動作可能時間Tp2を求める。
以上の処理によれば、分極電圧Vpも考慮して動作可能時間Tp2を求めることができる。
なお、図18および図19の例では、SOFとVpを考慮するようにしたが、負荷25−1〜25−3による電圧降下も考慮するようにしてもよい。図20は、負荷25−1〜25−3による電圧降下Vdを考慮した場合の動作可能時間Tp3を示す図である。図20の例では、前述の場合と同様に分極電圧Vpを考慮した場合の傾きA1を求める。そして、負荷25−1〜25−3による電圧降下Vdを、例えば、電圧センサ14によって検出し、SOF0、Vd、および、A1から動作可能時間Tp3を求める。より詳細には、Tp3=(SOFL−(SOF0−Vd))/A1により、動作可能時間Tp3を得ることができる。
図21は、分極電圧Vpおよび電圧降下Vdを考慮した処理を実現するためのフローチャートである。なお、図21において、図19と対応する部分には同一の符号を付してあるのでその説明は省略する。図21では図19と比較すると、ステップS132の処理が除外され、ステップS140〜ステップS141の処理が追加されている。これら以外は図19と同様であるので、以下ではステップS140〜ステップS141の処理を中心に説明する。
ステップS140では、電気量推定部19は、電圧降下Vdを算出する。より詳細には、電気量推定部19は、例えば、二次電池13の等価回路モデルから求めたインピーダンスと、電流センサ15によって検出した電流値とから、電圧降下Vdを算出する。なお、前述したように電圧センサ14によって電圧降下Vdを検出するようにしたり、これら以外の方法によって電圧降下Vdを求めたりしてもよい。
ステップS141では、電気量推定部19は、SOFの下限値であるSOFL、SOF0、電圧降下Vd、および、傾きA1に基づいて、動作可能時間Tp3を求める。より詳細には、Tp3=(SOFL−(SOF0−Vd))/A1により、動作可能時間Tp3を求める。
以上の処理によれば、負荷25−1〜25−3による電圧降下Vdも考慮した動作可能時間Tp3を用いることで、より実際の値に近い動作可能時間に基づいた制御を行うことができる。
なお、図20に示す例では、分極電圧Vpを考慮した傾きA1を用いるようにしたが、場合によっては、分極電圧Vpを考慮していない傾きAを用いるようにしてもよい。
また、図15〜図21に示す変形実施形態では、SOFの下限値としてのSOFLは、例えば、電動パワーステアリング等が動作可能な下限のSOFとしたが、第1〜第5実施形態と同様に、快適システム作動限界電圧、走行系システム作動限界電圧、または、エンジン始動限界電圧に対応したSOFに設定するようにしてもよい。
また、図15〜図21に示す変形実施形態において、算出または推定したSOFの値を、二次電池13の液温に応じて、補正するようにしてもよい。
また、図17〜図21に示す変形実施形態では、分極電圧Vpについては図17に示すSOCと分極電圧の関係に基づいて求めるようにしたが、この図17を走行毎に更新するようにしてもよい。より詳細には、例えば、停車時にOCVを測定し、走行時に端子電圧とSOCを測定して、OCVと端子電圧の差分値をSOCに応じてプロットするようにすればよい。なお、走行毎に更新するのではなく、二次電池13の劣化に応じて、図17に示すグラフの傾きを調整するようにしてもよい。例えば、二次電池13の劣化度をSOHによって測定し、このSOHの値に応じて、図17のグラフの傾きを調整するようにしてもよい。また、図17のグラフだけでなく、前述した開回路電圧OCV1を求めるためのSOCとOCVの関係式についても、二次電池13の劣化に応じて補正するようにしてもよい。
また、図17〜図21に示す変形実施形態では、分極電圧Vpを考慮するようにしたが、第1実施形態においても、分極電圧Vpを考慮するようにしてもよい。より詳細には、図6に示すステップS33において、変化予測曲線に対して、電圧降下だけでなく、分極電圧Vpを加味して応答電圧予測曲線を算出するようにしてもよい。そのような実施形態によれば、分極電圧Vpの影響を加味した正確な動作可能時間を求めることができる。