以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。1は集合住宅等で設置される、前入後出タイプの郵便受けとして用いられる収容箱である。収容箱1は、前面2aに横長長方形状の開口部Oを有して内部に収容物を収容可能な直方体形状の箱体2と、扁平な直方体形状で、一辺を軸支されて開口部Oを開閉するよう揺動可能に軸支される扉体3と、該扉体3を揺動可能に軸支するヒンジ部4と、によって構成されている。後述するように、扉体3はヒンジ部4に対して着脱自在であり、また、ヒンジ部4は箱体2に対して着脱自在となっている。そして、扉体3の開き方向を縦開きにするときには、扉体3として縦開き用扉5、ヒンジ部4として縦開き用ヒンジ部6が用いられる一方、横開きにするときには、扉体3として横開き用扉7、ヒンジ部4として横開き用ヒンジ部8が用いられる。収容箱1は、後述するように縦開きと横開きとを相互に変更可能なものであって、箱体2は、縦横いずれの開き方向であっても共通して用いられる。さらに、箱体2は、背面に投函口9が設けられており、該投函口9から郵便物が投函されたときに、前面側の扉体3を開放することで、開口部Oから郵便物を取り出すことができるものである。なお、一般にこのような郵便受けを「前入後出」タイプと呼ぶが、説明の便宜上、箱体2の扉体3側を前面、投函口9側を背面とする。ただし、これに限定されるものではない。
箱体2は、折り曲げ加工された2枚のステンレス等の金属板を底面で溶接して一体としたものであって、前面2aには開口部Oを有し、背面には投函口9が設けられており、他の面には天板2b、左側面板2c、右側面板2d、底板2eを備えている。なお、本実施の形態では、1枚の金属板の左右側面下端が左右方向内側に折り曲げられており、当該折り曲げ片2fと、他方の金属板である底板部材2gとを溶接して一体としているが、これら折り曲げ片2fと底板部材2gとを併せて底板2eというものとする。
箱体2の開口部Oの四周には、上端縁部10、左端縁部11、右端縁部12、下端縁部13が形成されている。上端縁部10は、天板2bの前端が垂下した前面板10aと、該前面板10aの下端が背面(投函口9)側に向けて水平に折曲した内面板10bと、からなり、断面略コ字状になっている。また、左右端縁部11、12は、箱体2の左右前端である左右側面板2c、2dの前端から左右方向内側に向けて折曲した前面板11a、12aと、該前面板11a、12aの左右方向内端から背面側に向けて垂直に折曲した内面板11b、12bと、からなり、断面略凵字状になっている。そして、左右端縁部11、12の内面板11b、12bにはそれぞれ、後述するヒンジ部4のブラケットを固定具であるビスXaによって取付けるための取付孔11c、12cが、上下に1つずつ穿設されている。この取付孔11c、12cは縦開き用ヒンジ部6又は横開き用ヒンジ部8を箱体2に取付けるときに共通に用いられるものである。そして、取付孔11c、12cを内面板11b、12bに設けることで、扉体3の閉鎖時には取外し作業ができなくなるため、セキュリティが高くなる。
一方、下端縁部13は、底板部材2gの前端側に、前高後低状に傾斜した傾斜面13aと、該傾斜面13aの上端から開口部Oの前端に向けて水平に延出した水平面13bと、該水平面13bの前端が垂下した前面板13cと、からなる。このように、下端縁部13は他の端縁部とは異なる形状となっているが、これは箱体2内に収容された収容物を取り出す際に、手や収容物が引っ掛かることがないよう配慮されているものである。
また、開口部の各端縁部には、扉体3の錠前16の係止部16aが係止する鍵受け14が切欠き形成されている。該鍵受け14は凹溝形状の切欠きで、左右端縁部11、12及び下端縁部13に1つずつ、計3つ形成されている。左右端縁部11、12の鍵受け14は、それぞれの内面板11b、12bの上下方向中央部で前後方向中央部から後端までが切欠かれて形成されている。錠前16の係止部16aは、右開きのときには左端縁部11の、左開きの時には右端縁部12の鍵受け14の前端に係止することで、扉体3の閉鎖時に施錠されるようになっている。また、下端縁部13の鍵受け14は、水平面13bの左端部の前端近傍から傾斜面13aにかけて前後方向に連続して切欠き形成されている。上開きのときには、この下端縁部13の鍵受け溝14の前端に錠前16の係止部16aが係合することで、扉体3の閉鎖時に施錠されるようになっている。
他方、上端縁部10には鍵受け溝14が設けられていない。このため、扉体3の開き方向を下開きに変更しようとしても、錠前16の係止部16aが係止することができないため、下開きに変更できないようになっている。これは特に、収容箱1が郵便受け等で床上に設置されていない場合に下開きへの変更を可能とすると、下開きの扉体3に荷物が置かれたり、ぶら下がられたりすると、想定以上の負荷がかかり、箱体2や扉体3、ヒンジ部4等が歪む等して変形・破損してしまうおそれがある。このため、本実施の形態では下開きへの変更をすることができないようにしたものである。もっとも、下開きとしてもこのような問題が生じない場合には、鍵受け14を上端縁部10に設けてもよい。このように、錠前16を扉体3に取付けたときには、各端縁部における鍵受け14の有無によって特定の開き方向への変更をできないようにすることができる。
続いて、開口部Oの端縁部の四隅について説明する。左右端縁部の前面板11a、12bの上下長さはいずれも箱体2の天板2bと底板2e(折り曲げ片2f)とのあいだの長さであるが、内面板11b、12bは上下端が切欠かれて、上下長さが上端縁部10の内面板10bと下端縁部13の水平面13bとのあいだの長さとなっている。また、上端縁部10の前面板10aの左右長さは箱体2の左右側面板2c、2dのあいだの長さであるが、その内面板10bは左右端が切欠かれて、左右長さが左右端縁部11、12の内面板11b、12bのあいだの長さとなっている。そして、左右端縁部の前面板11a、12aの上端部に、上端縁部の前面板10aが前側から折り畳まれて左右端部が重なっているが、この重なった両端部には、リベットRを挿通させるためのリベット貫通孔15が穿設されている。該リベット貫通孔15にリベットRが挿通されてかしめられることで、開口部Oの端縁部の右上、左上の両隅部が止められている。
他方、下端縁部13は、前面板13cの左右長さが箱体2の左右側面板2c、2dのあいだの長さである一方、傾斜面13aから水平面13bの左右端部は切欠かれて左右側面板2c、2dと離間してスペースS1が形成されており、該スペースS1にブラケット17の補強板17dの下端部17gが挿通されるようになっている。さらに、水平面13bの左右端の前面板13c側は、左右端縁部の前面板11a、12bの左右長さに相当する長さだけ切欠かれてスペースS2が形成されており、該スペースS2に左右端縁部の前面板11a、12bの下端部が挿通されて、下端縁部13の前面板13cの左右両端と重なるようになっている。そして、スペースS2に挿通された左右端縁部の前面板11a、12bの下端部と、下端縁部の前面板13cの左右両端との重なりを溶接することで、開口部Oの端縁部の右下、左下の両隅部が止められている。なお、折り曲げ片2fは傾斜面13aから前面板13cに相当する位置にかけて切欠かれているが、その左右端部2hはわずかに幅を有しており、該左右端部2hに、後述するようにブラケット17の補強板17dの下端部17gが当接するようになっている。
開口部Oでは、特に扉体3の開閉時に大きな負荷がかかるため、歪みや破損を防ぐための十分な強度が必要であるが、上述のように端縁部の四隅をリベットRや溶接によって止めることで、ヒンジ部4を箱体2と別体で着脱可能のものとしても、十分な強度が得られて耐久性が高いものとなっている。なお、本実施の形態では、下端縁部13側の左右両端部を溶接しているが、上端縁部10側と同様にリベットRでかしめ固定したものとしてもよい。リベットRによる固定では、溶接と比較して歪み変形が生じにくくなるため、特に下開きへの変更を可能とするときには、負荷がかかる下端縁部13側の左右両端をリベットRで固定することで、耐久性を向上させることができる。
図10に示されるように、箱体2の投函口9には、左右端に備えられた一対のブラケット9aに軸支された、上後方(箱体外方向)に揺動可能な外側の外蓋9bと、上前方(箱体内方向)に揺動可能な内側の内蓋9cとが設けられており、平時はいずれの蓋も閉鎖されている。そして、郵便物を投函するときには、外蓋9bを持ち上げ、郵便物を挿入すると、郵便物によって内蓋9cが押し上げられて開口し、郵便物を箱体2内部に投函可能となっているものである。投函後は、外蓋9b、内蓋9cのいずれも自重によって閉方向に揺動するようになっている。投函口9のこうした構造は既知のものであるため、詳細な説明は省略する。なお、投函口9はこのような構成のものに限られず、適宜のものとしてよい。また、収容箱1を前入前出タイプの郵便受けとするときには、扉体3に投函口を設け、背面の投函口9は設けないものとすればよい。さらに、収容箱1を、ロッカーのように扉体3の開閉のみによって収容物を出し入れ可能とする場合には、投函口を設けなくてよい。
続いて扉体3、ヒンジ部4について説明するが、まずは上開きのものについて説明し、その後、横開き、特に右開きのものについて説明する。ここで、右開きと左開きのものは、扉体3及びヒンジ部4を上下転倒させて箱体2の軸支された辺と対向する辺側に取付けられたものであって相互に対応したものであるため、左開きのものについての説明は省略する。また、下開きへの変更を可能とする場合の下開きのものも同様であるため、説明は省略する。
縦開き用扉体5は、ステンレス等の金属板を折り曲げ加工したものであって、箱体2の前面2aと略同形の横長長方形状の前面板5aと、該前面板5aが後方に延出した左右側面板5b、5c及び上下板5d、5eと、上板5dの後端から垂下した折返し部5fと、から構成され、背面が開口して厚さ(奥行き)が小さい扁平な直方体形状をしており、錠前16が取付けられていて、開口部の閉鎖時に施錠することができるようになっている。前面板5aと折り返し部5fとのあいだには下方が開放されたスペースS3が形成されており、該スペースS3には、後述する軸受部材18が取付けられる。
縦開き用扉体5の上板5dの左右両端部には、後述する縦開き用ブラケット17の延出部17jに対応する位置に、凹溝5gが切欠き形成されている。該凹溝5gは上板5dの前後方向中央部から後端にかけて形成されており、縦開き用扉体5を開方向へ揺動させると、所定位置で延出部17jの上端17nが凹溝5gの前端に当接し、これによって縦開き用扉体5の開方向への揺動可能な範囲が規制されるようになっている。また、縦開き用扉体5の折返し部5fは、上板5dの凹溝5gに相当する左右位置から左右両端までが切欠かれており、開閉時にブラケット17の延出部17jが折返し部5fに当接してないようになっている。また、縦開き用扉体5の折返し部5fの左右両端部には、後述するヒンジ部4の軸受部材18を取付けるためのビス孔5hがそれぞれ2箇所ずつ穿設されている。さらに、縦開き用扉体5の下板5eの左右両端部の後端からは、上方に向けて戸当り片5iが延設されている。該戸当り片5iには、ゴム等の緩衝材からなる戸当り5jが取付けられており、該戸当り5jは、縦開き用扉体5の閉鎖時に開口部Oの下端縁部の前面板13cの左右両端部に緩衝して当接して、金属板同士が直切当接しないようになっている。
そして、縦開き用扉体5の前面板5aの左下端部には、錠前16を取付けるための錠前取付孔5kが穿設されている。該錠前取付孔5kは、縦開き用扉体5が開口部Oを閉鎖したときに、下端縁部13の鍵受け14に対応する位置に設けられている。そして、錠前取付孔5kに錠前16の後部を挿通させて、背面側からナット16dを螺入することで、錠前16が縦開き用扉体5に螺着されている。このとき、錠前16は、係止部16aが下側に突出するように取付けられる。なお、錠前取付孔5kの左右位置は、開口部Oの下端縁部13の鍵受け14の位置と対応させればよく、中央部や右端部等適宜のものとすることができる。
錠前16は、錠前取付け孔5kより大径のダイヤル部16bと、該ダイヤル部16bの後部で錠前取付孔5kより小径のボルト部16cと、該ボルト部16cのさらに後部に設けられて鍵受け溝14と係合する係止部16aと、を備えており、ボルト部16cを錠前取付孔5kに前側から挿通させ、縦開き用扉体5の背面側からナット16dを螺入してボルト部16cと螺着することで、縦開き用扉体5に脱着可能に取付けられたものである。錠前16自体は既知のものであるため詳細な説明は省略するが、ダイヤル部16bを所定回数回転させることで施錠状態から解錠状態となり、施錠状態では、係止部16aの揺動が規制されて鍵受け14の前端と当接して係止されるが、開錠状態では、係止部16aが揺動自在となって係止が解除され、縦開き用扉体5を開放可能とするものである。そして、鍵受け14が設けられていない場合には、施錠状態にしようとしても開口部Oの下端縁部13に係止部16aが当接してしまうため、縦開き用扉体5を閉鎖した状態で施錠状態にすることができないものである。なお、錠前16は着脱可能であるため、縦開き用扉体5と、横開き用扉体7に共通して用いることができるが、それぞれで別の錠前としてもよい。また、本実施の形態では錠前16をダイヤル錠としているが、これに限られず、デジタル錠やシリンダー錠、ラッチロック錠等種々のものとすることができる。
縦開き用ヒンジ部6は、軸孔17cが穿設されて箱体2に取付けられるブラケット17と、縦開き用扉体5の背面側に取付けられて軸孔18aが設けられた軸受部材18と、ブラケット17の軸孔17cと軸受部材18の軸孔18aとに挿通されて縦開き用扉体5が揺動する際の軸となる支軸19と、から構成されている。そして、縦開き用ヒンジ部6は、開口部Oの左右両側面側にそれぞれ設けられている。
縦開き用ヒンジ部6におけるブラケット17は左右で異なり、箱体2の右端縁部12には右ブラケット17Aが、左端縁部11には左ブラケット17Bが、それぞれ取付けられている。右ブラケット17Aと左ブラケット17Bとは、左右対称な構造をしているため、以下では特に右ブラケット17Aについて説明する。右ブラケット17Aは、一枚のステンレス等の金属板を折り曲げ加工したもので、上下方向に長尺で前面側が開口した平面略冂字状の長尺部17aと、該長尺部17aの上端部から前方に向けて延出して、軸孔17cが穿設された軸受部17bと、からなる。
右ブラケット17Aの長尺部17aは、左右方向外側(右側)の補強板17dと、背面板17eと、左右方向内側(左側)の固定面板17fと、からなり、平面略冂字状形状となっている。背面板17eの左右長さは、箱体2の右端縁部12の前面板12aの左右長さと略同じである。また、補強板17dの上下長さは、箱体2内部の天板2bと底板2e(折り曲げ片2f)とのあいだの高さと略同じである一方、背面板17e及び固定面板17fは、補強板17dより上下端が均等に短く、開口部Oの右端縁部12の内面板12bの高さと略同じになっている。このようにすることで、右ブラケット17Aは、補強板17dの右面が箱体2の右側面板2dの内面(左面)に当接すると共に、固定面板17fの右面が開口部Oの右端縁部12の内面板12bの左面と当接して箱体2に取付けられるようになっている。このとき、補強板17dの下端部17gは、開口部Oの下端縁部13の右端のスペースS1から下方に挿通され、下端が底板2eの折り曲げ片2fと当接する一方、上端は天板2bの内面(下面)と当接している。また、固定面板17f及び背面板17eの下端は、開口部Oの下端縁部13の水平面13bと当接しており、固定面板17fの上端は、開口部Oの上端縁部10の内面板10bと当接している。このように、長尺部17aは、補強板17dの上下端が箱体2の天板2b及び底板2eに上下方向内側から当接する一方、固定面板17fの上下端及び背面板17eの下端が開口部Oの上下端縁部10、13に上下方向内側から当接するようになっており、これら箱体2と当接する各端部を当接端部17hとして備えている。この長尺部17aは、各ブラケットで共通又は対称な形状を有しているもので、このような当接端部17hを備えることにより、扉体3の開閉時に負荷がかかる開口部の左右両端部をヒンジ部4によって補強することができるため、ヒンジ部4を着脱自在なものとしても、十分な強度を得ることができ、耐久性が向上する。
また、右ブラケット17Aの固定面板17fには、箱体2の右端縁部12の内面板12bに穿設された上下の取付孔12cに対応する位置にそれぞれ取付孔17iが穿設されており、これらに内側(左側)から固定具としてビスXaが螺入されることで、右ブラケット17Aが箱体2に螺着されている。すなわち、固定面板17fは、開口部Oの右端縁部12に設けられた取付孔12cに螺入するビスXaを介して内面板12bに着脱自在に固定される固定片に相当する。
右ブラケット17Aの軸受部17bは、固定面板17fの上端部から前方に延出した延出部17jと、該延出部17jの前端部から上方に突出した突出部17kと、からなり、該突出部17kには、支軸19の右端部が挿通するための軸孔17cが穿設されている。延出部17jは、固定面板17fの上端近傍から、上側の取付孔17iの下部近傍に至るまでが前方に向けて延出したものであり、その前方への延出長さは、縦開き用扉体5の厚さ(奥行き)と略同じである。突出部17kの上端は、補強板17dの上端より僅かに低く、縦開き用扉体5の揺動時に前面板5aや上板5dと当接しないようになっている。他方、延出部17jの上端17nは、縦開き用扉体5の開方向へ揺動すると、所定位置で上板5dの凹溝5gの前端と当接し、これによって縦開き用扉体5の開方向への揺動範囲が規制されている。
軸受部材18及び支軸19は、開き方向によらず共通のものを用いることができる。軸受部材18は、支軸19が挿通される軸孔18aを有する長方形状の樹脂材である。また、支軸19としては、円柱形状のヒンジピン19aと、後述のトルクヒンジ20のピン20aとが用いられている。軸孔18aとして、左右両側面の上面側には、ヒンジピン19aの一端部が挿通される第一軸孔18bが穿設されている。第一軸孔18bは左右両側面に対向して設けられているが、左右の第一軸孔18bのあいだの中間部には仕切壁18cが設けられており、一方側面の第一軸孔18bにヒンジピン19aを挿通させても、その先端は仕切壁18cに突き当たるため、他方側面の第一軸孔18aには挿通されないようになっている。これによって、軸受部材18を左右で共通の構造としつつ、ヒンジピン19aが抜け止めされるようになっている。
一方、軸受部材18の底面側では、前面側が切欠かれることでトルクヒンジ嵌合部18dが形成されており、左右両側面に軸孔18aとして第二軸孔18eが設けられている。そして、このトルクヒンジ嵌合部18dにトルクヒンジ20が嵌合・螺着され、該トルクヒンジ20のピン20aが第二軸孔18eを通じてブラケット17の突出部17kの軸孔17cへと挿通されるようになっている。また、軸受部材18の背面側の上下方向中央部には、軸受部材18を扉体3の折返し部5fに取付けるための2つのビス孔18fが設けられており、軸受部材18を扉体3のスペースS3に挿入してビス孔18fと扉体3の折返し部5fのビス孔5hとを位置合わせし、ビスXbを螺入することで、軸受部材18が扉体3に螺着されている。
軸受部材18をこのような構成とすることによって、1つの部材でヒンジピン19aとトルクヒンジ20とに対応可能となる。トルクヒンジ20を用いると、扉体3の自由な揺動を規制して、任意の位置で停止可能としたり、勢いよく揺動されないようにしたりすることができる。本実施の形態では、上開きのときには左側の縦開き用ヒンジ部6にはトルクヒンジ20を用いる一方、右側の縦開き用ヒンジ部6にはヒンジピン19aを用いたものとしている。
次に、右開きの場合の扉体3及びヒンジ部4について説明する。横開き用扉体7及び横開き用ヒンジ部8は、左右開きいずれでも用いることができるが、説明の便宜上、方向・位置等は右開きのときのものを前提とする。横開き用扉体7の基本的な構成は縦開き用扉体5と同様であって、箱体2の前面2aと略同形の横長長方形状の前面板7aと、該前面板7aが後方に延出した左右側面板7b、7c及び上下板7d、7eと、を備えているが、折返し部7fが右側面板7cの後端部から前面と平行に折り返されており、この点では縦開き用扉体5とは異なっている。そして、前面板7aと折り返し部7fとのあいだには、左方が開放されたスペースS4が形成されている。
そして、右側面板7cの上下両端部には、後述する横開き用のブラケット22の軸受部22bに対応する位置に凹溝7gが切欠き形成されていること、折返し部7fの左右両端が切り欠かれていること、折返し部7fに軸受部材18を取付けるためのビス孔7hが穿設されていることは、縦開き用扉体5の上板5d及び折返し部5fの場合と同様である。また、左側面板7bの上下両端部の後端から、左右方向内側(正面視で右側)に向けて戸当り片7iが延設されており、該戸当り片7iに戸当り7jが取付けられていることは、縦開き用扉体5の下板5eの場合と同様である。また、横開き用扉体7にも錠前16が取付けられており、該錠前16を取付けるための錠前取付孔7kは、前面板7aの左端中央部に穿設されていて、錠前16の係止部16aは開口部Oの左端縁部11の鍵受け14に係止するようになっている。すなわち、上開きとした場合に対して、右開きとした場合には、錠前16が右に90度回転した状態で取付けられており、係止部16aが左側に位置するようになっている。
また、横開き用扉体7には、前面板7aの背面側の錠前16の下部に垂れ止め21が取付けられている。該垂れ止め21は、前面板7aの背面に当接して上部に取付孔21bが穿設された取付面21aと、該取付面21aの下端から後方に延出して、後端部が上方に傾斜した延出部21cと、から構成されている。垂れ止め21は、錠前16を錠前取付孔7kに挿入した状態で、錠前16の後部を取付孔21bに挿通させておいた後、ナット16dによって錠前16を横開き用扉体7に取付けるに際して、横開き用扉体7の前面板7aの裏面とナット16dとに挟まれて固定されることで着脱可能に取付けられている。横開き用扉体7の閉鎖時に、延出部21cが開口部Oの下端縁部13の水平面13bの横開き用ヒンジ部8が設けられていない側の端部(右開きでは左端側)と当接し、これによって横開き用ヒンジ部8にかかる負荷が軽減されることとなる。
右開きの場合、横開き用ヒンジ部8は右端縁部12にのみ設けられており、ブラケットとして横開き用のブラケット22が用いられる。該ブラケット22は、縦開き用のブラケット17と略同形状の長尺部22aを有し、該長尺部22aが右側の補強板22d、背面板22e、左側の固定面板22fからなり、箱体2への取付時における長尺部22aと箱体2との当接関係、すなわち長尺部22aが当接端部22hを有することや、固定面板22fに取付孔22iが設けられていることについても、縦開き用のブラケット17の長尺部17aと同様である。
一方、軸受部22bの構造は、縦開き用のブラケット17の軸受部17bの構造と異なっている。横開き用のブラケット22の軸受部22bは、長尺部22aの固定面板22fの上下端から左前方に略矩形状に延出した一対の延出部22jと、該一対の延出部22jの右前端部から右方へ突出した突出部22kと、からなり、該突出部22kには、上下方向に貫通した軸孔22cが穿設されている。延出部22jは、固定面板22fの上下端部が折り曲げられて延出したものであり、その前方への延出長さは、横開き用扉体7の厚さ(奥行き)と略同じである。そして、突出部22kの右端は、補強板22dよりに僅かに左に位置し、横開き用扉体7の揺動時に前面板7aや右側面板7cと当接しないようになっている。他方、延出部22jの右端22nは、横開き用扉体7を開方向へ揺動すると、所定位置で右側面板7cの凹溝7gの前端と当接し、これによって横開き用扉体7の開方向への揺動範囲が規制されている。
右開きの場合、軸受部材18、支軸19(及びトルクヒンジ20)は縦開きの場合と共通のものを用いることができる。支軸19の一端(上下方向外端)をブラケット22の軸孔22cに、他端を軸受部材18の軸孔18aに挿通させて、横開き用扉体7裏面のスペースS4に軸受部材18が配されてビス止めされることで、横開き用ヒンジ部8によって開き用扉体7が箱体2の右端縁部12に軸支されて介装されている。なお、本実施の形態では、上側の支軸19にはトルクヒンジ20のピン20aを用いる一方、下側の支軸19にはヒンジピン19aを用いたものとしている。
また、右開きの場合には、箱体2の左端縁部11に補助ブラケット23が取付けられている。補助ブラケット23は、ブラケット22の軸受部22bを有さず長尺部22a(補強板23d、背面板23e、固定面板23f)のみからなる形状をしており、ブラケット22と同様に、ビスXaを左端縁部11の取付孔11cに連通して螺入することで、箱体2に取付けられているものである。補助ブラケット23は、ブラケット22が取付けられていない箱体2の左端縁部11側を補強するものである。また、補助ブラケット23の長尺部23aには、開口部Oの左端縁部11の鍵受け14に対応する位置に、固定面板23fから背面板23eまで鍵受け14aが切欠き形成されている。これによって、補助ブラケット23を取付けても横開き用扉体7に取付けられた錠前16の係止部16aが、開口部Oの左端縁部11の鍵受け14及び補助ブラケット23の鍵受け14aの前端に係止できるようになっている。
以上の通り、共通の箱体2に縦開き用扉体5又は横開き用扉体7のいずれかが取付け可能となっており、これら扉体3及びヒンジ部4はいずれも着脱可能であるため、何れか一方から他方への交換取付けが可能となっているものである。続いて、開き方向を縦開きから横開き、特に上開きから右開きへと変更する方法を説明する。なお、横開きから上開きへの変更は、以下の逆手順のようにすれば可能であるから、その説明を省略する。
まず、錠前16を解錠状態にして、縦開き用扉体5を上方に揺動して開放状態にする。そして、縦開き用扉体5の背面側から左右の軸受部材18を螺着しているビスXbを全て外し、軸受部材18及び支軸19を左右方向内側へ移動させて支軸19を左右のブラケット17の軸孔17cからそれぞれ引き抜く。これによって、縦開き用扉体5が縦開き用ヒンジ部4(及び箱体2)から取り外される。続いて、左右のブラケット17を箱体2に螺着しているビスXaを全て外し、ブラケット17を箱体2の左右端縁部11、12から引き抜いて取り外す。これによって、縦開き用ヒンジ部6が箱体2から取り外される。
続いて、横開き用扉体7、横開き用ヒンジ部8及び補助ブラケット23を箱体2の右端縁部12に取付ける。まず、開口部Oの右端縁部12に横開き用のブラケット22を配し、補強板22dの下端部22gを箱体端縁部13の右端のスペースS1に挿通させる。そして、補強板22dの右面を箱体2の右側面板2dの内面に当接させると共に、固定面板22fの右面を右端縁部12の内面板12bの左面と当接させる。そしてこの状態で、横開き用のブラケット22の取付面板に設けられた上下一対の取付孔22iと、開口部Oの右端縁部の内面板12bに設けられた取付孔12cとを連通して螺子Xaを螺入することで、ブラケット22を箱体2の右端縁部12に取付ける。また併せて、補助ブラケット23を、ブラケット22と同様にして箱体2の左端縁部11の取付孔11cと連通させるよう螺子Xaを螺入して、箱体2の左端縁部11に取付ける。そして、上下の支軸19の一端側(上下方向内端側)を軸受部材18に、他端側をブラケット22の軸孔22cに挿通させた状態で、上下一対の軸受部材18を横開き用扉体7のスペースS4に配し、横開き用扉体7の折返し部7fのビス孔5hと軸受部材18のビス孔18fとを位置合わせして、折返し部7f側からこれらビス孔5h、18fを連通してビスXbを螺入することで、横開き用扉体7に軸受部材18が取付けられると共に、横開き用扉体7が横開き用ヒンジ部8を介して箱体2の右端縁部12に軸支されて、右開きとなって開口部Oを開閉自在に揺動可能なものとなる。
このようすることで、箱体2を共通のものとして、扉体3の開き方向を上開き(縦開き)から右開き(横開き)へと変更することができる。そしてこの際、ヒンジ部4の縦開き用のブラケット17、横開き用のブラケット22、補助ブラケット23は、いずれも開口部Oの左右端縁部11、12の内面板11b、12bに設けられた取付孔11c、12cに、固定具であるビスXaを螺入することで箱体2に取付けられるようになっており、固定具及び取付位置が共通化されているため、開き方向の変更方法が明快で、作業性が良いものとなっている。加えて、縦開き用のブラケット17、横開き用のブラケット22、補助ブラケット23の長尺部は略共通の形状であり、これらの各当接端部が箱体2と上下方向で当接しているため、縦開き・横開きのいずれの開き方向であっても、開閉時に負荷がかかる左右両端部が補強され、歪み変形や破損等による箱体2と扉体3とのずれ等が生じないようになっている。
なお、錠前16、軸受部材18、支軸19及びトルクヒンジ20は、いずれも着脱可能なものであって、上開きと下開きで共通のものを用いることができる。この際、錠前16については、任意の時においてナット16dの螺合を解除して縦開き用扉体5から取外し、その後、取外した錠前16の後部を、横開き用扉体7の錠前取付孔7kと、横開き用扉体7の背面に配した垂れ止め21の取付孔21bとを連通して挿通させ、ナット16dによってこれらを螺合する。このようにすると、開き方向を変えた場合であっても、共通の錠前16を使用できるため、コストが抑えられると共に、解錠番号を変更する必要がないため、使用者にとって便利なものである。
本実施の形態に係る収容箱1は、図11に示されるように、縦横積み重ねて集合住宅用郵便受け24とすることができる。このようにするためには、箱体2の天板2b及び底板2eには、積み重ね時に対応する位置に上下連結孔25a、25bを穿設し、左右側面板2c、2dには、隣接時に対応する位置に左右連結孔25c、25dを穿設しておけばよい。そして、これら上下連結孔25a、25b同士、左右連結孔25c、25d同士を図示しないナイロンリベット等の連結具によって連通・固定することで、複数の収容箱1を、上下左右に連結可能としている。そして、このようにした集合住宅用郵便受け24では、図11(A)に示されるように、最初の設置時にはすべて開き方向が上開きのものであっても、開き方向を変更することにより、図11(B)に示されるように、例えば最下段だけ右開きのものとするように改修することができる。したがって、事後的な開き方向の変更に対応でき、しかも一部のみの変更もすることができるため、使用者個々にとって所望の開き方向とすることができる。
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、収容箱1は、前面2aに横長長方形状の開口部Oを有して内部に収容物を収容可能な箱体2に、開口部Oの開閉揺動をすべくヒンジ部4を介して扉体3が着脱自在に取付けられている。そして、扉体3としては、縦開き用扉体5又は横開き用扉体7の何れかが取付けられており、ヒンジ部4としては、縦開き用扉体5には縦開き用ヒンジ部6が、横開き用扉体7には横開き用ヒンジ部8が用いられており、開口部Oの左右両端縁部11、12には、縦開き用ヒンジ部6又は横開き用ヒンジ部8を箱体2に着脱自在に取付けるときに共通に用いられる取付孔11c、12cが設けられている。これによって、収容箱1は、扉体3の開き方向を縦開きとする縦開き用扉体5と横開きとする横開き用扉体7とについて何れか一方から他方への交換取付けが可能となるよう構成されながら、開き方向を変更するに際して共通の取付孔11c、12cを用いるため変更方法が明快なものとなっている。
また、開口部Oの左右端縁部11、12は、箱体左右前端から左右方向内側に向けて折曲した前面板11a、12aと、該前面板11a、12aの左右方向内端から背面側に向けて折曲した内面板11b、12bとを備えており、取付孔11c、12cは内面板11b、12bに設けられている一方、各ヒンジ部6、8はそれぞれブラケット17、22を備えており、取付孔11c、12cに螺入する固定具であるビスXaを介して内面板11b、12bに着脱自在に固定される固定片として、ブラケット17、22は固定板面17f、22fを有している。これによって、扉体3が開放された状態でのみ扉体の交換が可能となるため、セキュリティが高くなり、閉鎖時に取付部分が視認できないため、外観性が向上する。また、ブラケット17、22の長尺部17a、22aは、箱体2の天板2b及び底板2e(折り曲げ片2f)に上下方向内側から当接する補強板17d、22dの上下端と、開口部Oの上下端縁部10、13に上下方向内側から当接する固定板面17fの上下端と、背面板17eの下端と、からなる当接端部17hを備えている。これによって、ヒンジ部4を着脱自在としつつ、箱体2の左右両端部の強度が補強されるため、耐久性に優れた収容箱1とすることができる。
またさらに、扉体3には錠前16が取付けられており、縦開き用扉体5の錠前16の係止部16aは、開口部Oの下端縁部13に設けられた鍵受け14に係脱自在に係止し、横開き用扉体7の錠前16の係止部16aは、開口部Oの左右両端縁部11、12に設けられた鍵受け14に係脱自在に係止するように構成されている。一方、鍵受け14は、開口部Oの上端縁部10には設けられていない。これによって、錠前16を有する扉体3であっても、縦開き・横開き相互間の交換取付けが可能であり、しかも、鍵受けを設けないことによって下開きには変更できないようになっている。
なお、本発明は、上述の実施の形態に限られるものではないことは勿論である。例えば、第一の実施の形態の収容箱1に、第二の実施の形態の錠前16等を設けてもよい。また、各種ブラケットは、開口部Oの左右端縁部の取付孔11c、12cを通じて箱体2に取付けられているが、必ずしも取付孔11c、12cのみによって取付けられなければならないものではなく、必要に応じて、上下端縁部にも取付孔を設けて補強するものとしてもよい。また、補強の必要性がなければ、ブラケットの長尺部17a、22aは、補強板17d、22d、背面板17e、22e当接端部17h、22hを有さないものとしてもよい。