JP6735979B2 - ガス生産システム、及びガス生産方法 - Google Patents
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天然ガスハイドレートは、メタン分子を水分子が籠状に取り囲んだ結晶構造を有する包接化合物である。天然ガスハイドレートは、低温、高圧の環境下で、固体の状態で存在し、このような環境を満たす、深海の海底の表層や海底面下の地層中に安定して存在している。
減圧法では、具体的に、天然ガスを海底から海上に向けて運ぶ管(ライザー管)を用いて、管内の海水を排出することで液面を下げ、ライザー管内の海水の圧力を、天然ガスハイドレートを含んだ海底内の地層(ハイドレート層)に作用させ、分解させる。天然ガスハイドレートが分解して生成した天然ガスは、液体と混ざり合った混相流(気液混合物)としてライザー管内の海水に取り込まれる。混相流を取り込んだ海水は、ライザー管内で、天然ガスと海水とに分離され(気液分離され)、それぞれ海上に排出される。
このように、気液分離装置における気液分離が十分でないことにより変動するライザー管の先端部における圧力(坑底圧)の影響を受けて、天然ガスの生産が不安定になることは好ましくない。
地中内に埋設されるように構成された先端部を有する長尺状の管であって、前記先端部から上方に延びる前記管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減することにより、前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を前記管内の前記液体に取り込むように、前記先端部に設けられ前記管の外部に開口した孔を備えたライザー管と、
前記ライザー管の前記先端部に設けられ、前記ライザー管内の前記先端部における圧力を計測する圧力計と、
前記ライザー管内に設けられ、前記気液混合物を取り込んだ前記液体から気泡を分離する気液分離装置と、
前記気液分離装置で分離した気体を、生産するガスとして、前記ライザー管から取り出すガス生成管を備えるガス生成ラインと、
前記気液分離装置で前記ガスが分離された前記液体を前記ライザー管から排出するために、ポンプ回転数を調整値に維持して前記液体を吸い上げるポンプと、
前記ポンプの前記ポンプ回転数の維持のために供給される電流量を計測する電流計と、
前記ポンプ回転数の前記調整値を、前記圧力計で計測された計測圧力と前記電流計で計測された計測電流量に基づいて調整する制御装置と、を備える。
前記計測圧力が前記設定圧力以下の場合、前記調整値を減らす、ことが好ましい。
地中内に埋設された先端部を有し、前記先端部から上方に延びるライザー管内の液体によって前記ライザー管内に生じる前記先端部の圧力を用いて前記ライザー管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減させるステップと、
前記ガスハイドレートに作用する、低減された圧力によって前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を、前記ライザー管の外部に開口した孔から前記ライザー管内の前記液体に取り込むステップと、
前記ライザー管内に取り込んだ前記気液混合物を取り込んだ前記液体から気液分離を行ってガスを取り出すステップと、
前記気液分離後の前記液体を、前記ライザー管から排出するために、ポンプ回転数を調整値に維持したポンプにより、前記気液分離後の前記液体を吸い上げるステップと、
前記ポンプ回転数の前記調整値を、前記圧力の計測圧力と前記ポンプの前記ポンプ回転数の維持のために供給される電流量の計測電流量に基づいて調整するステップと、を備える。
また、本明細書でいうガス生産システムは、地中のガスハイドレートを減圧して分解することによりガスを生成するものであり、海底表面にあるガスハイドレートからガスを生成するシステムと異なる。
一実施形態のガスの生産システム(以下、システムともいう)は、地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産するシステムである。システムは、ライザー管と、気液分離装置と、ガス生成ラインと、ポンプと、圧力計と、電流計と、制御装置と、を主に備える。
ライザー管は、地中内に埋設されるように構成された先端部を有する長尺状の管である。ライザー管は、先端部に設けられ、管の外部に開口した孔を備える。この外部に開口した孔は、ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を管内の液体に取り込むように設けられている。ガスハイドレートは、ライザー管の先端部から上方に延びる管内の液体によって生じる圧力を用いて管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減することにより分解される。
気液分離装置は、ライザー管内に設けられ、ライザー管の気液混合物を取り込んだ液体から気泡を分離するように構成される。
ガス生成ラインは、気泡から生成されたガスを、生産するガスとして、ライザー管から取り出すガス生成管を備える。
ポンプは、気液分離装置でガスが分離された液体をライザー管から排出するために、ポンプ回転数を調整値に維持して液体を吸い上げるように構成されている。
電流計は、ポンプのポンプ回転数の維持のために供給される電流量、具体的には、ポンプを回転させるモータに流す電流量を計測する。
圧力計は、ライザー管の先端部に設けられ、先端部における圧力(坑底圧)を計測する。
制御装置は、ポンプ回転数の調整値を、圧力計で計測された計測圧力と電流計で計測された計測電流量に基づいて調整するように、構成される。
以下、具体的な一実施形態について説明する。
図1は、一実施形態のシステム1を概略的に示す図である。図2は、ライザー管10の先端部10a付近の内部構成の一例を説明する図である。以下、海底の地中内の天然ガスハイドレートを分解して天然ガスを生産するシステム1を例に説明する。
システム1は、ライザー管10と、気液分離装置20と、ポンプ23と、ガス生成ライン12と、ガス生成ラインと、液体排出ライン13と、制御装置40と、を主に備える。
気液分離装置20と、ポンプ23と、ガス生成ライン12と、液体排出ライン13とが、管本体11内に設けられている。
この他に、管本体11内には、ヒータ26が設けられている。
孔18aに設けられたスクリーン19は、天然ガスハイドレートの分解によって生成した気泡及び水、さらには海水から、砂や泥を分離除去する部材である。スクリーン19は、気泡、水、海水を通過させるが、砂や泥を通過させない機能を有している。スクリーン19は、例えば、多数の孔を有するシート状又は板状の構造体であって、互いに孔の大きさや形態が異なる複数の構造体から構成される。複数の構造体の組み合わせの具体例として、ジョンソンスクリーン、メッシュ、及びグレーチングが挙げられる。ジョンソンスクリーンは、ジョンソンスクリーン社製の金網状の構造体として周知である。グレーチングは鋼材を格子状に組んだ部材である。ジョンソンスクリーン、メッシュ、グレーチングは、揚収管部分18の側からハイドレート5層の側に向かって、この順に、揚収管部分18に重ねて配置される。
坑底圧とは、ライザー管10の先端部10aから上方に延びるライザー管10内の所定の範囲に充填された液体によってライザー管10内の先端部10aにおいて生じる圧力であり、具体的には、後述する液面Sの下方の液体によって、ライザー管10の下端が受ける水頭圧と液面S上方の気相空間の圧力と合計圧力である。ライザー管10の下端は、坑井7の穴底(坑底)と同じ高さに位置している。ここで、先端部10aは、ライザー管10のうち孔18aの設けられる部分を含む。
ライザー管10内の液体は、気泡及び水等の天然ガスハイドレートから分解して生成された気液混合物のほか、水や海水を含む。水や海水は、ハイドレート層5に含まれる水や海水、ハイドレート層5と接する他の地層に含まれる水や海水を起源として孔18aから取り込まれたものである。ライザー管10内の液体は、後述するように、気泡を取り込んだものも含む。
ポンプ23は、具体的には、気液分離装置20で気泡から分離された液体をライザー管から排出するために、ポンプ回転数を調整値に維持して液体を吸い上げる。ポンプ回転数の調整値は、制御装置40からの制御信号によって設定される。
図2に示す例のポンプ23は、液体輸送管14内に配置されており、モータ24と、モータ24によって駆動されるスクリュー25と、を有するオーガポンプである。スクリュー25は、鉛直方向に延びる軸と、軸の周りを螺旋状に延びる羽根と、を有しており、液体輸送管14内の液体を撹拌しながら上方に送る機能を有する。モータ24は、掘削船3の制御装置40に接続されている。モータ24は、制御装置40から出力された信号を受けて、調整された周波数で駆動するよう制御される。調整された周波数は、上述のポンプ回転数の調整値と同じである。モータ24は、液体輸送管14内に、液体の流路となる隙間を形成するよう、液体輸送管14内に配置されている。なお、システム1の運転中、ライザー管10には開口18aを通して海水あるいは水が流入し続けることから、通常、ポンプ23は稼働した状態に維持される。
ポンプ23のポンプ回転数を制御装置40が設定した調整値に維持するためにモータ24に流れる電流量を計測するための電流計24aが設けられている。電流計24aは、制御装置40に接続されており、計測電流量の情報を制御装置40に出力する。
ガス生成管12aは、液面Sに浮上した気泡から生成され、気相空間Gに流入したガスを、生産する天然ガスとしてライザー管10内から取り出す。ガス生成ライン12は、気相空間G内のガスを生産する天然ガスとして掘削船3まで運ぶ。ガス生成管12aは、管本体11内に、液面Sの上方に配置されており、ガス生成管の下端は、気相空間Gに接続されている。
また、ガス生成管12aの上方の先端は、例えば、掘削船3あるいは他の船舶に備え付けられた貯蔵タンク(図示せず)、あるいは陸地にある貯蔵システムに延びるパイプラインに接続されている。貯蔵タンクに貯蔵された天然ガスは、適宜、液化され、掘削船3あるいは他の船舶で海上を輸送される。
液体排出管13aは、図1に示す例において、気液分離装置20から空間15aまで延びる液体輸送管14と、管本体11から分岐して、空間15aから掘削船3まで延びる管16と、を有している。空間15aは、隔壁17a,17bで仕切られた空間である。
排出された液体は、例えば掘削船3上に回収されて、所定の容器に収納される。
制御装置40の制御内容については後述する。制御装置40は、CPU、メモリ等を含むコンピュータで構成される。制御装置40は、図1に示す例において、掘削船3に設けられている。
ポンプ23には、上述したように、気液分離装置20を通過した液体がポンプ23の吸い込みにより導入されるが、気液分離装置20における気液分離が十分でなく、ポンプ23に導入される液体には、気泡が混入する場合がある。この様な気泡の混入は、液体内に混入する気泡の量が液体に比べて多く、一部の気泡が気液分離できないこと、あるいは、気液分離装置20で流れる液体の上昇流(図2に示す、太い矢印の流れ)及び下降流(図2に示す図中下方向に向く細い矢印)の速度が速く、液体内の気泡が液体の流れに追従して液体の下降流に巻き込まれて気泡が十分に分離できないこと、に拠る。
したがって、ポンプ23に導入される液体内に混在する気泡が液体の排出量に影響を与える程度に存在する場合、ポンプ23が液体を引き込む速度を低下させることが好ましい。
制御装置40が、ポンプ回転数の調整値の増減のために、計測圧力Pvと比較する圧力は設定圧力であり、設定圧力は、下記表1に示すように、電流計24aで計測された計測電流量Iに応じて変更される。すなわち、設定圧力が、ポンプ回転数を上昇させるあるいは低下させる制御を定める基準となる。
計測電流量Iが下限値I0を上回り、計測圧力Pvが基準圧力Sv0を上回る場合、ポンプ23に進入する気泡は少ない状態であり(気液分離が十分に機能している状態であり)、計測圧力Pvを低下させ(液面Sの位置を低下させ)て、天然ガスハイドレートの分解を促進させるようにする。すなわち、制御装置40は、ポンプ回転数が上昇するように、ポンプ回転数の調整値を増加させる制御1を行う。
また、測電流量Iが下限値I0を上回り、計測圧力Pvが基準圧力Sv0以下である場合、ポンプ23に進入する気泡は少ない状態であり(気液分離が十分に機能している状態であり)、計測圧力Pvを増加させ(液面Sの位置を上昇させ)て、天然ガスハイドレートの分解を抑制させるようにする。すなわち、制御装置40は、ポンプ回転数が上昇するように、ポンプ回転数の調整値を下げる制御2を行う。
このとき、制御装置40は、計測圧力Pvと設定圧力との比較結果に応じて、調整値を増減し、設定圧力は、表1に示すように、計測電流量Iに応じて変更して設定するので、ポンプ23に進入する気泡を効果的に抑制することができ、あるいは、ポンプ23に進入する気泡(気泡の大きさや量)の変動をより効果的に安定化させることができる。
すなわち、地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産するとき、
(1)地中内に埋設された先端部を有し、先端部から上方に延びるライザー管10内の液体によってライザー管10内に生じる先端部の圧力を用いて外部にある天然ガスハイドレートに作用する圧力を低減させる。
(2)天然ガスハイドレートに作用する、低減された圧力によって天然ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を、ライザー管10の外部に開口した孔18aからライザー管10内の液体に取り込む。
(3)ライザー管10内に取り込んだ気液混合物を取り込んだ液体から気液分離装置20によって気液分離を行ってガスを取り出す。
(4)気液分離装置20で気液分離した液体を、ライザー管10から排出するためにポンプ23によりポンプ回転数を調整値に維持して吸い上げる。
(5)このとき、ポンプ23のポンプ回転数の調整値を、圧力計31による計測圧力とポンプ23のポンプ回転数の維持のために供給される電流量の計測電流量Iに基づいて調整する。
2 海底面
3 掘削船
4 上層
5 ハイドレート層
7 坑井
10 ライザー管
10a 先端部
11 管本体
12 ガス生成ライン
13 液体排出ライン
13a 液体排出管
14 液体輸送管
15a 空間
16 管
17a,17b,17c 隔壁
18 揚収管部分
20 気液分離装置
21 囲み容器
21a 側壁
21b 底壁
22 遠心分離器
23 ポンプ
24 モータ
24a 電流計
25 スクリュー
26 ヒータ
31 圧力計
40 制御装置
Claims (10)
- 地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産するシステムであって、
地中内に埋設されるように構成された先端部を有する長尺状の管であって、前記先端部から上方に延びる前記管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減することにより、前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を前記管内の前記液体に取り込むように、前記先端部に設けられ前記管の外部に開口した孔を備えたライザー管と、
前記ライザー管の前記先端部に設けられ、前記ライザー管内の前記先端部における圧力を計測する圧力計と、
前記ライザー管内に設けられ、前記気液混合物を取り込んだ前記液体から気泡を分離する気液分離装置と、
前記気液分離装置で分離した気体を、生産するガスとして、前記ライザー管から取り出すガス生成管を備えるガス生成ラインと、
前記気液分離装置で前記ガスが分離された前記液体を前記ライザー管から排出するために、ポンプ回転数を調整値に維持して前記液体を吸い上げるポンプと、
前記ポンプの前記ポンプ回転数の維持のために供給される電流量を計測する電流計と、
前記ポンプ回転数の前記調整値を、前記圧力計で計測された計測圧力と前記電流計で計測された計測電流量に基づいて調整する制御装置と、を備えることを特徴とするガス生産システム。 - 前記制御装置は、前記計測圧力と設定圧力との比較結果に応じて、前記調整値を増減し、前記設定圧力は、前記計測電流量に応じて設定する、請求項1に記載のガス生産システム。
- 前記計測電流量が設定した下限値よりも低下した場合、前記制御装置は、前記設定圧力を第1の圧力から前記第1の圧力よりも高い第2の圧力に変更する、請求項2に記載のガス生産システム。
- 前記制御装置は、前記計測圧力が前記設定圧力に対して高い場合において、前記計測電流量が設定した下限値よりも低下したときに前記調整値として設定される第1の値は、前記計測電流量が設定した下限値以上のときに前記調整値として設定される第2の値に比べて小さい、請求項2または3に記載のガス生産システム。
- 前記制御装置は、前記計測圧力が前記設定圧力に対して高い場合、前記調整値を増やし、
前記計測圧力が前記設定圧力以下の場合、前記調整値を減らす、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス生産システム。 - 地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産するガス生産方法であって、
地中内に埋設された先端部を有し、前記先端部から上方に延びるライザー管内の液体によって前記ライザー管内に生じる前記先端部の圧力を用いて前記ライザー管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減させるステップと、
前記ガスハイドレートに作用する、低減された圧力によって前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を、前記ライザー管の外部に開口した孔から前記ライザー管内の前記液体に取り込むステップと、
前記ライザー管内に取り込んだ前記気液混合物を取り込んだ前記液体から気液分離を行ってガスを取り出すステップと、
前記気液分離後の前記液体を、前記ライザー管から排出するために、ポンプ回転数を調整値に維持したポンプにより、前記気液分離後の前記液体を吸い上げるステップと、
前記ポンプ回転数の前記調整値を、前記圧力の計測圧力と前記ポンプの前記ポンプ回転数の維持のために供給される電流量の計測電流量に基づいて調整するステップと、を備えることを特徴とするガス生産方法。 - 前記調整値の調整では、前記計測圧力と設定圧力との比較結果に応じて、前記調整値は増減され、前記設定圧力は、前記計測電流量に応じて設定される、請求項6に記載のガス生産方法。
- 前記計測電流量が設定した下限値よりも低下した場合、前記設定圧力を第1の圧力から前記第1の圧力よりも高い第2の圧力に変更する、請求項7に記載のガス生産方法。
- 前記調整値の調整では、前記計測圧力が前記設定圧力に対して高い場合において、前記計測電流量が設定した下限値よりも低下したときに前記調整値として設定される第1の値は、前記計測電流量が設定した下限値以上のときに前記調整値として設定される第2の値に比べて小さい、請求項7または8に記載のガス生産方法。
- 前記調整値の調整では、前記計測圧力が前記設定圧力に対して高い場合、前記調整値を増やし、前記計測圧力が前記設定圧力以下の場合、前記調整値を減らす、請求項6〜9のいずれか1項に記載のガス生産方法。
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