JP6736808B2 - ガス生産システム、及びガス生産方法 - Google Patents
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Description
天然ガスハイドレートは、メタン分子を水分子が籠状に取り囲んだ結晶構造を有する包接化合物である。天然ガスハイドレートは、低温、高圧の環境下で、固体の状態で存在し、このような環境を満たす、深海の海底の表層や海底面下の地層中に安定して存在している。
減圧法では、具体的に、天然ガスを海底から海上に向けて運ぶ管(ライザー管)を用いて、管内の海水を排出することで液面を下げ、ライザー管内の海水の圧力を、天然ガスハイドレートを含んだ海底内の地層(ハイドレート層)に作用させ、分解させる。天然ガスハイドレートが分解して生成した天然ガスは、液体と混ざり合った混相流(気液混合物)としてライザー管内の海水に取り込まれる。混相流を取り込んだ海水は、ライザー管内で、天然ガスと海水とに分離され(気液分離され)、それぞれ海上に排出される。
ライザー管内の海水は、具体的に、ライザー管内に配置された液体輸送管(排出管)によって吸い上げられ、排出される。
地中内に埋設されるように構成された先端部を有する長尺状の管であって、前記先端部から上方に延びる前記管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減することにより、前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を前記管内の前記液体に取り込むように、前記先端部に設けられ前記管の外部に開口した孔を備えたライザー管と、
前記ライザー管内に配置され、前記液体が前記ライザー管の外部に排出されるよう、前記ライザー管内の前記液体を吸い上げる排出管と、を備え、
前記排出管は、前記孔より下方に位置するよう配置される吸込口を有している、ことを特徴とする。
前記気相空間の圧力の測定値の前記気相空間の基準圧力からの変動量に応じて、前記排出管から排出される前記液体の排出量を制御することで前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御する制御装置と、を備えることが好ましい。
サイズが調整された前記気泡に遠心力を作用させ、当該気泡の少なくとも一部を前記液体から分離する分離装置と、を備えることが好ましい。
地中内に埋設された先端部を有し、前記先端部から上方に延びるライザー管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減させるステップと、
前記ガスハイドレートに作用する、低減された圧力によって前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を、前記ライザー管の外部に開口した孔から前記ライザー管内の前記液体に取り込み、前記気泡からガスを取り出すステップと、を備え、
前記圧力を低減させるステップでは、前記ライザー管内の前記液体を吸い上げる排出管の吸込口を、前記孔より下方に位置させた状態で、前記排出管を用いて前記液体を前記ライザー管の外部に排出する、ことを特徴とする。
前記気相空間の圧力の測定値の前記気相空間の基準圧力からの変動量に応じて、前記排出管から排出される前記液体の排出量を制御することで前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御するステップと、を備えることが好ましい。
サイズが調整された前記気泡に遠心力を作用させ、当該気泡の少なくとも一部を前記液体から分離するステップと、を備えることが好ましい。
また、本明細書でいうガス生産システムは、地中のガスハイドレートを減圧して分解することによりガスを生成するものであり、海底表面にあるガスハイドレートからガスを生成するシステムと異なる。
一実施形態のガス生産システム(以下、システムともいう)は、地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産するシステムである。システムは、ライザー管と、排出管と、を主に備える。
ライザー管は、地中内に埋設されるように構成された先端部を有する長尺状の管である。ライザー管は、先端部に設けられ、管の外部に開口した孔を備える。この外部に開口した孔は、ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を管内の液体に取り込むように設けられている。ガスハイドレートは、ライザー管の先端部から上方に延びる管内の液体によって生じる圧力を用いて管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減することにより分解される。
排出管は、ライザー管内に配置され、液体がライザー管の外部に排出されるよう、ライザー管内の液体を吸い上げる。
排出管は、孔より下方に位置するよう配置される吸込口を有している。
図1は、一実施形態のシステム1を概略的に示す図である。図2は、ライザー管10の先端部10a付近の内部構成を説明する図である。以下、海底の地中内の天然ガスハイドレートを分解して天然ガスを生産するシステム1を例に説明する。
システム1は、ライザー管10と、気液分離装置20と、ポンプ23と、ガス生成ライン12と、液体排出ライン13と、制御装置40と、を主に備える。
気液分離装置20と、ポンプ23と、ガス生成ライン12と、液体排出ライン13の一部とが、管本体11内に設けられている。
この他に、管本体11内には、ヒータ26が設けられている。
スクリーン19は、天然ガスハイドレートの分解によって生成した気泡及び水、さらには海水を取り込み、砂や泥を分離除去する部材である。スクリーン19は、気泡、水、海水を通過させるが、砂や泥を通過させない機能を有している。スクリーン19は、例えば、多数の孔を有するシート状又は板状の構造体であって、互いに孔の大きさや形態が異なる複数の構造体から構成される。複数の構造体の組み合わせの具体例として、ジョンソンスクリーン、メッシュ、及びグレーチングが挙げられる。ジョンソンスクリーンは、ジョンソンスクリーン社製の金網状の構造体として周知である。グレーチングは鋼材を格子状に組んだ部材である。ジョンソンスクリーン、メッシュ、グレーチングは、揚収管部分18の側からハイドレート層5の側に向かって、この順に、揚収管部分18に重ねて配置される。
坑底圧とは、ライザー管10の先端部10aから上方に延びるライザー管10内の所定の範囲に充填された液体によってライザー管10内の先端部10aにおいて生じる圧力と後述する気相空間Gの圧力の和であり、後述する液面Sの下方の液体によって、ライザー管10の下端が受ける水頭圧によって定まる圧力である。ライザー管10の下端は、坑井7の穴底(坑底)と略同じ高さに位置している。ここで、先端部10aは、ライザー管10のうち孔18aの設けられる部分を含む。
ライザー管10内の液体には、天然ガスハイドレートから分解して生成された気液混合物が取り込まれるほか、孔18aを通って進入した水や海水が取り込まれる。気液混合物は気泡を含むので、ライザー管10内の液体には気泡が混在している。水や海水は、ハイドレート層5に含まれる水や海水、ハイドレート層5と接する他の地層に含まれる水や海水を起源としている。
このように、気液分離装置20は、遠心分離方式を採用しており、従来一般に採用されている重力分離方式を採用していない。重力分離方式とは、液体の流路が上方に向けた上昇路と、液体から気泡の一部を排除するために、上昇路に接続され液体の流路を上方から下方に変更させる下降路と、を用いて、気体と液体にかかる重力(比重)を利用して分離する方式をいう。
ガス生成ライン12の先端部には、ガスの流量を調節する弁が設けられている。弁の開度は、ガスが一定量で排出されるよう調節されている。また、ガス生成ライン12の先端は、例えば、掘削船3あるいは他の船舶に備え付けられた貯蔵タンク(図示せず)に接続されている。貯蔵タンクに貯蔵された天然ガスは、適宜、液化され、掘削船3あるいは他の船舶で海上を輸送される。
液体排出ライン13は、図1に示す例において、先端部10aから空間15aまで延びる液体輸送管(排出管)14と、管本体11から分岐して、空間15aから掘削船3まで延びる管16と、を有している。液体輸送管14は、ライザー管10内に配置され、液体がライザー管10の外部に排出されるよう、ライザー管10内の液体を吸い上げる管である。液体輸送管14は、孔18aより下方に位置するよう配置される吸込口14aを有している。図2に示す例において、液体輸送管14の吸込口14aは、最も下方に位置する孔18aよりも下方に位置している。
空間15aは、隔壁17a,17bで仕切られた空間である。
排出された液体は、回収され、例えば貯水される。
また、ライザー管10の先端部10aには、ライザー管10の先端部10aにおける圧力(坑底圧)を計測する圧力計31が設けられている。圧力計31は、制御装置40に接続されており、先端部10aにおける圧力(坑底圧)の計測結果の情報が、制御装置40に送信される。先端部10aにおける圧力は、液体の液面Sの位置及び気相空間Gの圧力によって定まる。
坑底圧は、圧力計31から送信される計測結果の情報から取得される。制御装置40は、一定の時間間隔で、坑底圧が目標圧力の範囲にあるか否かを判定する。この判定において、坑底圧が目標圧力の範囲内にあれば、ガスハイドレートに作用する圧力を維持する制御を行う。具体的には、ポンプ23の回転数を維持する。一方、坑底圧が目標圧力の範囲を超えて高くなっている場合、天然ガスハイドレートの分解の速度が所定の範囲にないので、坑底圧が低くなるよう制御を行う。具体的には、ポンプ23の回転数を上げる。また、坑底圧が目標圧力の範囲より低くなっている場合、天然ガスハイドレートの分解の速度が所定の範囲にないので、坑底圧が高くなるよう制御を行う。具体的には、ポンプ23の回転数を下げる。
なお、下層6が、水が多く含んだ地層である場合、孔18aが下層6に接近して配置されていると、下層6から水を引き込むことによって、ライザー管10内の液体が排出され難くなる場合がある。このため、孔18aは、下層6との間隔を大きくあけて配置されることが好ましい。例えば、孔18aは、ハイドレート層5内の砂質層が存在する高さ範囲のうち、下層6よりも上層4に近い側に配置される。
通常、ライザー管内の液体の液面高さが高くなると、気相空間の圧力及び先端部における圧力(坑底圧)はそれぞれ高くなり、坑底圧が高くなると、ガスハイドレートに作用する圧力も高くなる。このため、気相空間の圧力が高くなると、ガスハイドレートに作用する圧力も高くなるといえる。つまり、気相空間Gの圧力は、天然ガスハイドレートに作用する圧力と相関性を有している。また、気相空間Gの圧力は、ライザー管10の下端の位置と孔18aの高さ位置との高低差に影響を受けることがなく、気相空間Gの圧力には、天然ガスハイドレートに作用する圧力の変化が反映されやすい。したがって、気相空間Gの圧力を用いることで、天然ガスハイドレートの分解のために天然ガスハイドレートに作用させる圧力を精度良く制御することができる。
制御装置40は、一定の時間間隔で、気相空間Gの圧力の測定値が目標圧力の範囲にあるか否かを判定する。
この判定において、気相空間Gの圧力の測定値が目標圧力の範囲内にあれば、ガスハイドレートに作用する圧力を維持する制御を行う。具体的に、制御装置40は、ポンプ23の回転数を維持することで、ポンプ23による液体の排出量を維持する。これにより、天然ガスハイドレートに作用する圧力が維持される。
調整部材27の具体例として、メッシュが挙げられる。調整部材27としてのメッシュは、例えば、網目状に織られたシート状の金網であって、網目の大きさは、1.0mmである。
図2に示す例において、調整部材27は、液体輸送管14の下方に、液体の流れ方向と直交する方向に延在するようライザー管10内に配置されている。このような配置によって、液体輸送管14内に流れ込む液体は、調整部材27を通過する。
なお、シート状の調整部材27の他の具体例として、エキスパンド、パンチングなどの、多数の孔を有するシート状物が挙げられる。
図3に示す例のコイルは、螺旋軸(図3に示す一点鎖線)が延びる方向が、液体の流れ方向と一致するように、ライザー管10内に配置される。このコイルは、螺旋軸が延びる方向に沿って延びる回転軸(図示せず)を有しており、コイルの螺旋部分が、ライザー管10内を上昇する液体の水流を受けることで、コイルは、螺旋軸を回転中心として回転する。このようなコイルを液体が通過するとき、液体に含まれる気泡のうち一部の気泡に、コイルが衝突して、大きな気泡は複数の小さい気泡に分断され、サイズが調整される。
地中内に埋設された先端部10aを有し、先端部10aから上方に延びるライザー管10内の液体によってライザー管10内に生じる先端部10aにおける圧力を用いてライザー管10の外部にある天然ガスハイドレートに作用する圧力を低減させる。
次に、天然ガスハイドレートに作用する、低減された圧力によって天然ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を、ライザー管10の外部に開口した孔18aからライザー管10内の液体に取り込み、気泡からガスを取り出す。
圧力を低減させるステップでは、ライザー管10内の液体を吸い上げる液体輸送管14(排出管)の吸込口14aを、孔18aより下方に位置させた状態で、液体輸送管14を用いて液体をライザー管10の外部に排出する。
さらに、ライザー管10内の液体の上方に形成される気相空間Gの圧力を測定する。
気相空間Gの圧力の測定値の気相空間Gの基準圧力からの変動量に応じて、液体輸送管14から排出される液体の排出量を制御することでガスハイドレートに作用する圧力を制御する。気相空間Gの圧力は、ライザー管10の下端の位置と孔18aの高さ位置との高低差に影響を受けることがなく、気相空間Gの圧力には、天然ガスハイドレートに作用する圧力の変化が反映されやすい。したがって、坑底圧を用いる場合と比べて、天然ガスハイドレートの分解のために天然ガスハイドレートに作用させる圧力を精度良く制御することができる。
さらに、吸込口14aに向かって流れる液体に、吸込口14aに対し液体の流れ方向の上流側に配置された調整部材27を通過させつつ調整部材27を気泡の少なくとも一部と接触させることで、気泡の少なくとも一部のサイズを調整する。
サイズが調整された気泡に遠心力を作用させ、当該気泡の少なくとも一部を液体から分離する。サイズが調整された気泡は、浮上する力が小さいため、遠心分離器22によって集められやすく、液体輸送管14の外側に放出されやすい。このため、液体輸送管14から排出される液体中に混入する気泡の量が低減され、その分、ガス生成ライン12によって取り出される天然ガスの量が増える。これにより、天然ガスの生産量の低減が抑制される。
2 海底面
3 掘削船
4 上層
5 ハイドレート層
6 下層
7 坑井
10 ライザー管
10a 先端部
11 管本体
12 ガス生成ライン
13 液体排出ライン
14 液体輸送管
15a 空間
16 管
17a,17b,17c 隔壁
18 揚収管部分
20 気液分離装置
22 遠心分離器
23 ポンプ
24 モータ
25 スクリュー
26 ヒータ
27 コイル
30,31 圧力計
40 制御装置
Claims (8)
- 地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産するシステムであって、
地中内に埋設されるように構成された先端部を有する長尺状の管であって、前記先端部から上方に延びる前記管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減することにより、前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を前記管内の前記液体に取り込むように、前記先端部に設けられ前記管の外部に開口した孔を備えたライザー管と、
前記ライザー管内に配置され、前記液体が前記ライザー管の外部に排出されるよう、前記ライザー管内の前記液体を吸い上げる排出管と、を備え、
前記排出管は、前記孔より下方に位置するよう配置される吸込口を有している、ことを特徴とするガス生産システム。 - 前記吸込口は、前記ガスハイドレートを含んだ地中内の地層が存在する深さ範囲内において、前記地層の下方に隣接する他の地層に接近して配置される、請求項1に記載のガス生産システム。
- さらに、前記ライザー管内の前記液体の上方に形成される気相空間の圧力を測定する圧力計と、
前記気相空間の圧力の測定値の前記気相空間の基準圧力からの変動量に応じて、前記排出管から排出される前記液体の排出量を制御することで前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御する制御装置と、を備える、請求項1又は2に記載のガス生産システム。 - さらに、前記吸込口に対し前記液体の流れ方向の上流側に配置され、前記吸込口に向かって流れる前記液体を通過させつつ前記気泡の少なくとも一部と接触することで、前記気泡の少なくとも一部のサイズを調整する調整部材と、
サイズが調整された前記気泡に遠心力を作用させ、当該気泡の少なくとも一部を前記液体から分離する分離装置と、を備える、請求項1から3のいずれか1項に記載のガス生産システム。 - 地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産する方法であって、
地中内に埋設された先端部を有し、前記先端部から上方に延びるライザー管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減させるステップと、
前記ガスハイドレートに作用する、低減された圧力によって前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を、前記ライザー管の外部に開口した孔から前記ライザー管内の前記液体に取り込み、前記気泡からガスを取り出すステップと、を備え、
前記圧力を低減させるステップでは、前記ライザー管内の前記液体を吸い上げる排出管の吸込口を、前記孔より下方に位置させた状態で、前記排出管を用いて前記液体を前記ライザー管の外部に排出する、ことを特徴とするガス生産方法。 - 前記圧力を低減させるステップでは、前記吸込口が、前記ガスハイドレートを含んだ地中内の地層が存在する深さ範囲内において、前記地層の下方に隣接する他の地層に接近して配置された状態で、前記液体の排出を行う、請求項5に記載のガス生産方法。
- さらに、前記ライザー管内の前記液体の上方に形成される気相空間の圧力を測定するステップと、
前記気相空間の圧力の測定値の前記気相空間の基準圧力からの変動量に応じて、前記排出管から排出される前記液体の排出量を制御することで前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御するステップと、を備える、請求項5又は6に記載のガス生産方法。 - さらに、前記吸込口に向かって流れる前記液体に、前記吸込口に対し前記液体の流れ方向の上流側に配置された調整部材を通過させつつ前記調整部材を前記気泡の少なくとも一部と接触させることで、前記気泡の少なくとも一部のサイズを調整するステップと、
サイズが調整された前記気泡に遠心力を作用させ、当該気泡の少なくとも一部を前記液体から分離するステップと、を備える、請求項5から7のいずれか1項に記載のガス生産方法。
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