JP6788770B2 - ガス生産システム、及びガス生産方法 - Google Patents
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Description
天然ガスハイドレートは、メタン分子を水分子が籠状に取り囲んだ結晶構造を有する包接化合物である。天然ガスハイドレートは、低温、高圧の環境下で、固体の状態で存在し、このような環境を満たす、深海の海底の表層や海底面下の地層中に安定して存在している。
減圧法では、具体的に、天然ガスを海底から海上に向けて運ぶ管(ライザー管)を用いて、管内の海水を排出することで液面を下げ、ライザー管内の海水の圧力を、天然ガスハイドレートを含んだ海底内の地層(ハイドレート層)に作用させ、分解させる。天然ガスハイドレートが分解して生成した天然ガスは、液体と混ざり合った混相流(気液混合物)としてライザー管内の海水に取り込まれる。混相流を取り込んだ海水は、ライザー管内で、天然ガスと海水とに分離され(気液分離され)、それぞれ海上に排出される。
また、坑底圧は、液体を吸い上げるポンプの故障など、ライザー管に関して発生した異常にも起因して変動する。このため、坑底圧が不安定な状態が定常化すると、このようなライザー管に関する異常に気づき難くなるという問題がある。水深の深い位置に配置されたポンプ等のメンテナンスには困難が伴うため、こうした異常が看過されることで、運転の継続に支障をきたすおそれがある。
地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産するシステムであって、
地中内に埋設されるように構成された先端部を有する長尺状の管であって、前記先端部から上方に延びる前記管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減することにより、前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を前記管内の前記液体に取り込むように、前記先端部に設けられ前記管の外部に開口した孔を備えたライザー管と、
前記ライザー管内の液体の上方に形成される気相空間の圧力を計測する圧力計と、
前記気相空間の圧力の測定値の前記気相空間の基準圧力からの変動量に応じて、前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御することにより前記気液混合物の生産量を調整する制御装置と、を備えることを特徴とする。
前記ライザー管は、前記水が混入する前記ライザー管内の前記液体を排出するポンプを有し、
前記制御装置は、前記気相空間の圧力の測定値の前記変動量に応じて、前記ポンプによる前記液体の排出量を調整することで、前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御することが好ましい。
地中内に埋設された先端部を有し、前記先端部から上方に延びるライザー管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減させるステップと、
前記ガスハイドレートに作用する、低減された圧力によって前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を、前記ライザー管の外部に開口した孔から前記ライザー管内の前記液体に取り込み、前記気泡からガスを取り出すステップと、
前記液体の上方に形成された気相空間の圧力を計測するステップと、
前記ガスハイドレートに前記先端部における圧力を作用させるとき、および、前記気液混合物を前記ライザー管内の前記液体に取り込むとき、前記気相空間の圧力の測定値の前記気相空間の基準圧力からの変動量に応じて前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御することにより前記気液混合物の生産量を調整するステップと、を備えることを特徴とする。
前記方法は、さらに、ポンプを用いて、前記水が混入する前記液体を排出するステップを備え、
前記気液混合物の生産量を調整するステップでは、前記気相空間の圧力の測定値の前記変動量に応じて、前記ポンプによる前記液体の排出量を調整することで、前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御することが好ましい。
前記気液混合物の生産量を調整するステップでは、前記ガスハイドレートが分解開始したときの前記気相空間の圧力値を前記基準圧力として、前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御することが好ましい。
また、本明細書でいうガス生産システムは、地中のガスハイドレートを減圧して分解することによりガスを生成するものであり、海底表面にあるガスハイドレートからガスを生成するシステムと異なる。
一実施形態のガス生産システム(以下、システムともいう)は、地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産するシステムである。システムは、ライザー管と、圧力計と、制御装置と、を主に備える。
ライザー管は、地中内に埋設されるように構成された先端部を有する長尺状の管である。ライザー管は、先端部に設けられ、管の外部に開口した孔を備える。この外部に開口した孔は、ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を管内の液体に取り込むように設けられている。ガスハイドレートは、ライザー管の先端部から上方に延びる管内の液体によって生じる圧力を用いて管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減することにより分解される。
圧力計は、ライザー管内の液体の上方に形成される気相空間の圧力を計測する。
制御装置は、気相空間の圧力の測定値の気相空間の基準圧力からの変動量に応じてガスハイドレートに作用する圧力を制御することにより気液混合物の生産量を調整する。
したがって、気相空間の圧力を用いることで、ガスハイドレートの分解のためにガスハイドレートに作用させる圧力を安定して制御することができる。具体的に、気相空間の圧力の測定値の気相空間の基準圧力からの変動量に応じて、ガスハイドレートに作用する圧力は制御される。
図1は、一実施形態のシステム1を概略的に示す図である。図2は、ライザー管10の先端部10a付近の内部構成を説明する図である。以下、海底の地中内の天然ガスハイドレートを分解して天然ガスを生産するシステム1を例に説明する。
システム1は、ライザー管10と、気液分離装置20と、ポンプ23と、ガス生成ライン12と、液体排出ライン13と、制御装置40と、を主に備える。
気液分離装置20と、ポンプ23と、ガス生成ライン12と、液体排出ライン13の一部とが、管本体11内に設けられている。
この他に、管本体11内には、ヒータ26が設けられている。
スクリーン19は、天然ガスハイドレートの分解によって生成した気泡及び水、さらには海水を取り込み、砂や泥を分離除去する部材である。スクリーン19は、気泡、水、海水を通過させるが、砂や泥を通過させない機能を有している。スクリーン19は、例えば、多数の孔を有するシート状又は板状の構造体であって、互いに孔の大きさや形態が異なる複数の構造体から構成される。複数の構造体の組み合わせの具体例として、ジョンソンスクリーン、メッシュ、及びグレーチングが挙げられる。ジョンソンスクリーンは、ジョンソンスクリーン社製の金網状の構造体として周知である。グレーチングは鋼材を格子状に組んだ部材である。ジョンソンスクリーン、メッシュ、グレーチングは、揚収管部分18の側からハイドレート5層の側に向かって、この順に、揚収管部分18に重ねて配置される。
坑底圧とは、ライザー管10の先端部10aから上方に延びるライザー管10内の所定の範囲に充填された液体によってライザー管10内の先端部10aにおいて生じる圧力と後述する気相空間Gの圧力の和であり、後述する液面Sの下方の液体によって、ライザー管10の下端が受ける水頭圧によって定まる圧力である。ライザー管10の下端は、坑井7の穴底(坑底)と略同じ高さに位置している。ここで、先端部10aは、ライザー管10のうち孔18aの設けられる部分を含む。
ライザー管10内の液体には、天然ガスハイドレートから分解して生成された気液混合物が取り込まれるほか、孔18aを通って進入した水や海水が取り込まれる。気液混合物は気泡を含むので、ライザー管10内の液体には気泡が混在している。水や海水は、ハイドレート層5に含まれる水や海水、ハイドレート層5と接する他の地層に含まれる水や海水を起源としている。
すなわち、気液分離装置20は、液体の流路が上方に向けた上昇路と、液体から気泡の一部を排除するために、上昇路に接続され液体の流路を上方から下方に変更させる下降路と、を備える。このような気液分離の方式を、気体と液体にかかる重力(比重)を利用して分離するので、重力分離方式という。
このように、気液分離装置20は、重力分離方式と遠心分離方式を併用するが、一実施形態によれば、重力分離方式のみで気液分離を行うことができる。また、一実施形態によれば、重力分離方式のみで気液分離を行うこともできる。
ガス生成ライン12の先端部には、ガスの流量を調節する弁が設けられている。弁の開度は、ガスが一定量で排出されるよう調節されている。また、ガス生成ライン12の先端は、例えば、掘削船3あるいは他の船舶に備え付けられた貯蔵タンク(図示せず)に接続されている。貯蔵タンクに貯蔵された天然ガスは、適宜、液化され、掘削船3あるいは他の船舶で海上を輸送される。
液体排出ライン13は、図1に示す例において、気液分離装置20から空間15aまで延びる液体輸送管14と、管本体11から分岐して、空間15aから掘削船3まで延びる管16と、を有している。空間15aは、隔壁17a,17bで仕切られた空間である。
排出された液体は、回収され、例えば貯水される。
また、ライザー管10の先端部10aには、ライザー管10の先端部10aにおける圧力(坑底圧)を計測する圧力計31が設けられている。圧力計31は、制御装置40に接続されており、先端部10aにおける圧力(坑底圧)の計測結果の情報が、制御装置40に送信される。先端部10aにおける圧力は、液体の液面Sの位置及び気相空間Gの圧力によって定まる。
制御装置40は、気相空間Gの圧力の測定値の気相空間Gの基準圧力からの変動量に応じて、天然ガスハイドレートに作用する圧力を制御し、これにより、気液混合物の生産量を調整する。気相空間Gの圧力の測定値は、圧力計30から送信される計測結果の情報から取得される。気相空間Gの基準圧力とは、天然ガスハイドレートが分解開始したときの圧力、具体的には、ガス生成ライン12からのガスの排出量が所定量に達したときの圧力をいう。上述したように、気相空間Gの圧力は、天然ガスハイドレートに作用する圧力と相関性を有している。また、気相空間Gは、ライザー管10内の上方に位置しているため、気相空間Gの圧力は、坑底圧と比べて、液体中のガスの流動様式による影響を受け難い。したがって、気相空間Gの圧力を用いることで、天然ガスハイドレートの分解のために天然ガスハイドレートに作用させる圧力を安定して制御することができる。
制御装置40は、一定の時間間隔で、気相空間Gの圧力の測定値が目標圧力の範囲にあるか否かを判定する。
この判定において、気相空間Gの圧力の測定値が目標圧力の範囲内にあれば、ガスハイドレートに作用する圧力を維持する制御を行う。具体的に、制御装置40は、ポンプ23の回転数を維持することで、ポンプ23による液体の排出量を維持する。これにより、天然ガスハイドレートに作用する圧力が維持される。
なお、ライザー管10内の液体の液面高さは、液体中の気体の流動様式が変化して、液体中の気体の割合が大きくなることで、高くなる場合がある。この場合、気相空間Gの圧力は高くなる一方で、坑底圧は、混相流の比重が小さくなるために、低くなることがある。しかし、液体中の気体の割合が大きくなる場合は、天然ガスハイドレートの分解量が多い場合であるため、坑底圧は低くなっても、天然ガスハイドレートに作用する圧力は高くなる。したがって、気相空間の圧力が高くなると、上述したように、天然ガスハイドレートに作用する圧力も高くなるといえる。また、液体中の気体の割合が変動した場合、気相空間の圧力は、坑底圧と比べ、変動し難い。このため、液体中の気体の流動様式が変化した場合にも、上述したように、気相空間の圧力の変動量に応じて、天然ガスハイドレートに作用させる圧力を安定して制御することができる。
この場合、制御装置40は、例えば、ポンプ23の駆動を停止することで、システム1の運転を停止する。システム1の停止後、ポンプ23の状態の確認など、異常を特定するための作業が行われ、必要に応じて、ポンプ23の修理、交換等が行われる。その後、制御装置40は、ポンプ23の駆動を再開し、システム1の運転を再開する。
この場合も、制御装置40は、例えば、ポンプ23の駆動を停止することで、システム1の運転を停止する。システム1の停止後、ライザー管10の孔18aやスクリーン19の状態の確認など、異常を特定するための作業が行われ、適宜、例えば、再生成した天然ガスハイドレートを、インヒビターを用いて融解させることが行われる。その後、制御装置40は、ポンプ23の駆動を再開し、システム1の運転を再開する。
地中内に埋設された先端部10aを有し、先端部10aから上方に延びるライザー管10内の液体によってライザー管10内に生じる先端部10aにおける圧力を用いてライザー管10の外部にある天然ガスハイドレートに作用する圧力を低減させる。
次に、天然ガスハイドレートに作用する、低減された圧力によって天然ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を、ライザー管10の外部に開口した孔18aからライザー管10内の液体に取り込む。
液体の上方に形成された気相空間Gの圧力を計測する。
ガスハイドレートに先端部10aにおける圧力を作用させるとき、および、気液混合物をライザー管10内の液体に取り込むとき、ライザー管10内の空間に、気相空間Gの圧力の測定値の気相空間Gの基準圧力からの変動量に応じてガスハイドレートに作用する圧力を制御することにより気液混合物の生産量を調整する。
気液混合物は、ガスの気泡と、液体に混入する水とを含んでいる。天然ガス生産方法では、気液混合物の生産量を調整するとき、気相空間の圧力の測定値の変動量に応じて、ポンプ23による、水が混入する液体の排出量を調整することで、ガスハイドレートに作用する圧力を制御することが好ましい。気液混合物には、ライザー管内の液体に混入する水が含まれており、天然ガスハイドレートの分解が行われている間、ライザー管10内には絶えず水や海水が流入する。この場合に、ポンプ23を用いて液体の排出量の調整を行うことで、天然ガスハイドレートに作用する圧力の制御を容易に行うことができる。
2 海底面
3 掘削船
4 上層
5 ハイドレート層
7 坑井
10 ライザー管
10a 先端部
11 管本体
12 ガス生成ライン
13 液体排出ライン
14 液体輸送管
15a 空間
16 管
17a,17b,17c 隔壁
18 揚収管部分
20 気液分離装置
21 囲み容器
21a 側壁
21b 底壁
22 遠心分離器
23 ポンプ
24 モータ
25 スクリュー
26 ヒータ
30,31 圧力計
40 制御装置
Claims (8)
- 地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産するシステムであって、
地中内に埋設されるように構成された先端部を有する長尺状の管であって、前記先端部から上方に延びる前記管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減することにより、前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を前記管内の前記液体に取り込むように、前記先端部に設けられ前記管の外部に開口した孔を備えたライザー管と、
前記ライザー管内の液体の上方に形成される気相空間の圧力を計測する圧力計と、
前記気相空間の圧力の測定値の前記気相空間の基準圧力からの変動量に応じて、前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御することにより前記気液混合物の生産量を調整する制御装置と、を備えることを特徴とするガス生産システム。 - 前記気液混合物は、ガスの気泡と、前記液体に混入する水とを含み、
前記ライザー管は、前記水が混入する前記ライザー管内の前記液体を排出するポンプを有し、
前記制御装置は、前記気相空間の圧力の測定値の前記変動量に応じて、前記ポンプによる前記液体の排出量を調整することで、前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御する、請求項1に記載のガス生産システム。 - 前記ライザー管内の前記液体の上方には、前記気泡の少なくとも一部が前記液体の液面に浮上して前記気相空間に流入した気体を、生産するガスとして取り出すガス生成管を、備える、請求項1又は2に記載のガス生産システム。
- 前記圧力計は、前記制御装置による前記ガスハイドレートに作用する圧力の制御に伴って変動する前記液体の液面高さの範囲の上方に位置している、請求項1から3のいずれか1項に記載のガス生産システム。
- 地中内のガスハイドレートを分解してガスを生産する方法であって、
地中内に埋設された先端部を有し、前記先端部から上方に延びるライザー管内の液体によって生じる圧力を用いて前記管の外部にあるガスハイドレートに作用する圧力を低減させるステップと、
前記ガスハイドレートに作用する、低減された圧力によって前記ガスハイドレートから分解して生成される気泡を含む気液混合物を、前記ライザー管の外部に開口した孔から前記ライザー管内の前記液体に取り込み、前記気泡からガスを取り出すステップと、
前記液体の上方に形成された気相空間の圧力を計測するステップと、
前記ガスハイドレートに前記先端部における圧力を作用させるとき、および、前記気液混合物を前記ライザー管内の前記液体に取り込むとき、前記気相空間の圧力の測定値の前記気相空間の基準圧力からの変動量に応じて前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御することにより前記気液混合物の生産量を調整するステップと、を備えることを特徴とするガス生産方法。 - 前記気液混合物は、ガスの気泡と、前記液体に混入する水とを含み、
前記ガス生産方法は、さらに、ポンプを用いて、前記水が混入する前記液体を排出するステップを備え、
前記気液混合物の生産量を調整するステップでは、前記気相空間の圧力の測定値の前記変動量に応じて、前記ポンプによる前記液体の排出量を調整することで、前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御する、請求項5に記載のガス生産方法。 - 前記ライザー管内の前記液体の上方から、前記気泡の少なくとも一部が前記液体の液面に浮上して前記気相空間に流入した気体を、生産するガスとして取り出すステップをさらに備える、請求項5または6に記載のガス生産方法。
- 前記ガスハイドレートに作用する圧力を低減させるステップの前に、前記気相空間を形成しないように前記液体が前記ライザー管内に満たされた状態から、前記液体の一部を排出して、前記ガスハイドレートが分解開始するまで前記液体の液面高さを下げるステップをさらに備え、
前記気液混合物の生産量を調整するステップでは、前記ガスハイドレートが分解開始したときの前記気相空間の圧力値を前記基準圧力として、前記ガスハイドレートに作用する圧力を制御する、請求項5から7のいずれか1項に記載のガス生産方法。
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