以下の説明及び図面では、同一の部品には同一の参照番号を付してある。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。また、以下に述べる実施の形態の全ての部分がこの発明の実施に必須というわけではない。発明の実施に必須な構成要素は、特許請求の範囲の記載により定められるべきである。
[第1の実施の形態]
<構成>
《全体構成》
図1に、この発明の第1の実施の形態に係る香りディスプレイシステム50の外観を示す。図1を参照して、香りディスプレイシステム50は、最大で12種類の香りをそれぞれ所望の香りの強さで同時に、また個々に噴出可能な香りディスプレイ52と、香りディスプレイ52の動作と香りディスプレイ52が噴出する香りの構成をリアルタイムで制御し、同時に香りの構成を直感的にわかりやすいように表示することで香りの開発を補助するためのパネル型コンピュータ54とを含む。
図2を参照して、この香りディスプレイシステム50では、香りディスプレイ52とパネル型コンピュータ54とは互いに無線通信56でデータ及びコマンドなどを通信する。例えば香りディスプレイ52からパネル型コンピュータ54へは、パネル型コンピュータ54に設定された香りカートリッジの位置と、そのカートリッジに封入された香源の識別子(香りの識別子)とが送信される。パネル型コンピュータ54から香りディスプレイ52へは、各カートリッジから噴出する香りの強さ、香りディスプレイ52が噴出する風の流れの強さなどに関するコマンドが送信される。この実施の形態では、パネル型コンピュータ54において香りディスプレイ52の動作を設定する際の、設定された香りの強さ、風の強さなどがリアルライムでパネル型コンピュータ54にわかりやすく表示される点、及び、パネル型コンピュータ54から香りディスプレイ52に無線通信56を介して送信されたコマンドが、リアルタイムで香りディスプレイ52の動作に反映される点に特徴がある。
図3に、本発明の第1の実施の形態に係る香りディスプレイ52の外観図を示す。図4は、図3に示す香りディスプレイ52を斜め上方から見た分解斜視図である。図5は、図3に示す香りディスプレイ52を斜め下方から見た分解斜視図である。
《香りディスプレイ52》
図3〜図6を参照して、香りディスプレイ52は、ほぼ正12角柱形状を持つ筐体60を持つ。筐体60は、香りディスプレイ52の基部を形成し、上記した香り成分を含まない空気の噴射機構を内蔵したほぼ正12角形の平面形状を持つベース筐体84と、ベース筐体84の上部からベース筐体84に組付けられる、正12角形の平面形状を持つ中間筐体86と、中間筐体86の上部に組付けられ、内部に12個の香りカートリッジ130、132、…、134、135、…、136(図4、図5、図9及び図10参照)を収容するカートリッジ収容部110(図4、図9及び図10を参照)を持つ、正12角形の平面形状の上部筐体88と、上部筐体88の上部開口を覆うように上部筐体88に着脱可能に組付けられる、これも正12角形の平面形状を持つトップパネル90とを含む。このトップパネル90の中央部には香りを含まない空気の流通路となる開口68が設けられている。トップパネル90は上部筐体88の上部に対して着脱可能である。トップパネル90を上部筐体88からはずすことで上部筐体88の上部が開放され、ユーザが香りカートリッジ収容部110にアクセス可能になり、香りカートリッジ130、…を収容部内に装填したり、収容部から取外したりできる。
図6及び図7を参照して、トップパネル90は、上部筐体88の上面に着脱可能に取付けられる、中央部に孔部を持つベース部材172と、この孔部を覆うようにベース部材172の上面に取付けられるキャップ170とを含む。
ベース部材172は、中央に孔部を持つドーナツ状の外側部材70と、外側部材70の孔部内に設けられた内側部材72とを含む。外側部材70の底面側の開口184(図7)の内径は、上面側の開口176(図6)の内径より大きくなっている。上面側の開口176と底面側の開口184とを結ぶ孔部の壁面は、底面側の開口184と上面側の開口176とをなめらかに結ぶ曲面を形成している。この曲面は、孔部の内径が外側部材70の底部から上面に向かって直線的に小さくなるように、すなわち単調に減少するように傾斜している。
内側部材72の側面174には12個の下部仕切板178が突き出るように形成され、この下部仕切板178により内側部材72が外側部材70の孔部の内側面に固定されている。内側部材72はその中央に、後述するシロッコファンにより形成される空気の流通路となる、上下に貫通する開口68を持つ。内側部材72の下面は円形であり、その外径は外側部材70の底面側の開口184の内径よりも小さい。内側部材72の上面も円形であり、その外径は外側部材70の上面側の開口176の内径よりも小さい。内側部材72の側面は、上面の外縁及び下面の外縁をなめらかに結ぶ曲面であり、その曲面と外側部材70の内側曲面との間の距離が一定となるように形成されている。
一方、キャップ170は、開口176よりやや大きな直径で、中央に開口領域64を持ち、上に凸に緩やかな曲面を描くキャップ本体190と、キャップ本体190の下面に、外側部材70の下部仕切板178と噛み合うように形成され、キャップ本体190を外側部材70に固定するための12個の爪部180とを含む。キャップ本体190の下面には円形の壁部が形成されており、爪部180はこの壁部の下端に、下部仕切板178の幅とほぼ等しい間隔を開けて形成されている。また、壁部の内側面の、隣接する爪部180の間の部分には、上側仕切板182が形成されている。
図8を参照して、キャップ170をベース部材172に組み付けると、ベース部材172の外側部材70及び内側部材72、及びキャップ170が上記した形状を持つため、外側部材70と内側部材72との間には、空気の通路が形成される。このとき、ベース部材172の各下部仕切板178(図7)と上側仕切板182とがその端部で接し、1つの仕切板を形成する。その結果、ベース部材172の孔部の外側部材70と内側部材72との間の空間は、これら仕切板により12個の空間からなる空気の通路186に分割される。上部筐体88に収容される12個の香りカートリッジ130、…からの香気は、それぞれ各香りカートリッジ130、…に対応した空気の通路186を通ってトップパネル90の外側に噴射される。
この実施の形態では、上部筐体88の断面は正12角形状をしており、上部筐体88の内部には、図4に示すとおり12個の香りカートリッジを収容可能なカートリッジ収容部110、…が形成されている。そしてこの12個のカートリッジ収容部110、…に、図4及び図5に示すように12個の香りカートリッジ130、…が装填されている。
図5を参照して、ベース筐体84の下面には、後述するように空気の取入れ口となる複数の開口部100が設けられる。図13を参照して、ベース筐体84の底部には、底板94が設けられる。底板94には空気の流通経路となる複数の開口部96が形成されている。底板94の上面には、無線通信により外部と通信可能な通信装置と、香りディスプレイ52内の風力源を駆動する制御回路とを搭載した制御基板98、その電源となる図示しないバッテリーが搭載されている。底板94の上面にはさらに、制御基板98上の制御回路により制御されて動作する、香りを含まない空気からなる空気流を生成し、トップパネル90に設けた開口68に向けて吐出口121から送り出すためのシロッコファン120及びその駆動回路基板126が、取付板128並びに取付部材122及び取付部材124をそれぞれ介して取付けられている。
シロッコファン120の吐出口121には、吐出口121を覆うように形成された吸入口を持つノズル92が設けられている。ノズル92の先端112はその基部より小径の、丸みを帯びた正方形状となっている。
香りディスプレイ52はさらに、上部筐体88の底部と中間筐体86の上部との間に位置するように、金属板106により駆動回路基板126に固定され、制御基板98と香りカートリッジ130、…のための風力源のドライバ回路との間を中継する中継基板102を含む。中継基板102の中央には、ノズル92の上部が挿入される開口104が形成されている。中継基板102の下面には、香りカートリッジ130、…の底面にそれぞれ貼付された後述するNFCタグ164(図12参照)と近距離無線通信するための12個のNFCチップ108が、香りカートリッジ130、…に対応した位置に設けられている。
特に図5及び図13を参照して、上部筐体88の内部には、シロッコファン120からの空気の通路を持ち、上部筐体88のほぼ内部全面を覆うように形成されたフランジと空気の通路を規定する筒部とからなり、上部筐体88の内部を空気の流通路140の内部と香りカートリッジ130、132、…、134、135、…、136などを収容するカートリッジ収容部110とに区画し、シロッコファン120からの空気を空気の流通路140内にガイドするガイド部材114が設けられる。ガイド部材114の先端は上部筐体88の上面から少し上に突き出している。ガイド部材114により規定される空気の流通路140は円形断面を持ち、ガイド部材114の中で、空気の流通路140の下部を形成する円筒部116にはノズル92の先端112が挿入される形で嵌め合わされている。すなわち、ノズル92は、シロッコファン120の吐出口121と空気の流通路140とをカプリングし、シロッコファン120が吐出する空気を空気の流通路140に導くための部材となっている。
図9及び図10は、それぞれ、上部筐体88の上端からトップパネル90を取除いたときのカートリッジ収容部110の斜視図及び平面図である。図9及び図10を参照して、上部筐体88の内部はガイド部材114により空気の流通路140と香りカートリッジ130、132、…、134、135、…、136などを収容するカートリッジ収容部110とに区画されている。
上部筐体88の内部のカートリッジ収容部110のガイド部材114の上面には、香りカートリッジ130、…を収容する収容部を規定するように香りカートリッジ130、…を保持する仕切200、仕切202などが形成されている。この各正三角形の底辺は上部筐体88の正12角形の各辺と平行になっている。上部筐体88の正12角形の各辺の中央部の内面には、12個のマイクロブロア138、…が設けられている。マイクロブロア138などの位置は、香りカートリッジ130、…に形成される、空気を香りカートリッジに導入するための給気口の位置と一致するように選ばれている。仕切200のうち周縁側は接続部206により上部筐体88と一体となっており、中心側はリブ208を介して上部筐体88の中心の円筒部分に接続されている。
図11及び図12を参照して、例えば香りカートリッジ130は、断面がほぼ正三角形の中空の三角柱状で、互いに平行な上面142及び下面144、並びにこれらの周囲をつなぐように形成された側面146とからなる筐体150を持つ。筐体150の内部の空間には、香気を発生する香源が保持されている。筐体150の縦方向の1つのエッジ152を挟む2つの側面の、エッジ152の近傍には、溝154及び溝156が形成されている。
特に図11を参照して、上面142の、エッジ152と溝154及び溝156とに挟まれた領域には、筐体150の内部の空間に通じ、筐体150内に封入された香源からの香りを含む空気が放出される噴射口160が形成されている。側面146の、エッジ152と反対側の部分には、筐体150の内部に外部のマイクロブロアから空気を送り込むための給気口158が形成されている。給気口158から筐体150の内部空間に空気を送り込むと、筐体150の内部空間の香りを含んだ空気が噴射口160から外部に放出される。
図12を参照して、筐体150の下面144には、NFCチップ108と近距離無線通信を行うためのNFCタグ164がシール162により貼り付けられている。この実施の形態では、シール162が下面144からはみ出し、その一部が側面146に回り込んでいる。NFCタグ164がシール162に接着されたものが市販されており、この実施の形態ではそれを使用している。シール162は筐体150から剥がすことが可能なので、必要に応じNFCタグ164を筐体150から取外し、別のものと交換できる。
図13及び図14を参照して、ガイド部材114の底部のフランジ部分の上面には、香りカートリッジ130、…を位置決めするための仕切200、仕切202などが形成されている。ガイド部材114の筒状部材とマイクロブロア138との間に、噴射口160が形成されたエッジ152が上部筐体88の中央を向くように香りカートリッジ130、…を挿入する。これにより、図10に示すように、香りカートリッジ130、…が上部筐体88の内面に沿って規則出しく等間隔で配置される。香りカートリッジ130、…の外側面及び内側の角部とは、いずれも上部筐体88の中心を中心とする、それぞれ所定の半径の同心の円上に整列される。この実施の形態では、各香りカートリッジ130、…の外側面が配置される円(これを「外側円」という。)の半径は、エッジ152が配置される円(これを「内側円」という。)の半径の2倍以上となっている。香りカートリッジ130、…の断面形状が正三角形状であり、かつ上記2つの円の間の関係が上に説明したとおりとなっているため、隣接するどの2つの香りカートリッジの間でも、中心側の角部の間にはある程度の空間が形成される。この空間内に指を入れて香りカートリッジをはさみ、引き抜くことで香りカートリッジ130、…を容易に交換できる。外側円の半径は、内側円の1.5倍程度以上であれば、香りカートリッジの交換には問題ないが、あまりその差が大きくなると上部筐体88の内部に余分な空間が生じる。そこで、外側円の半径は、内側円の4倍程度までに収めることが望ましい。
この例では、香りカートリッジ130、…が上部筐体88の中心軸を中心として回転対称(12回転対称)の位置に配置される。このような配置とすることで、香りカートリッジを効率的に収容しながら、どの香りカートリッジからの香気についても、同じ制御で同じ濃度の香気を噴出できるという効果がある。
各香りカートリッジ130、…がカートリッジ収容部110に装着されると、香りカートリッジ内部に空気を送り込むための給気口158が上部筐体88の外側を向くことになる。例えば図13を参照して、香りカートリッジ130の場合、給気口158が外側を向く。上部筐体88の内面と香りカートリッジ130との間には、給気口158に空気を送り込むマイクロブロア138が配置されている。このマイクロブロア138を駆動することで香りカートリッジ132の内部に空気が送り込まれ、中心側に位置する香りカートリッジ132の香り噴出のための噴射口160(図11を参照)から香りを含んだ空気が外部に噴出される。なお、香りカートリッジ132などからの香気の噴出を効率的にするため、噴射口160はトップパネル90に形成されている空気の通路186に対向するように形成されている。トップパネル90と上部筐体88とは、この空気の通路186及びその周囲では空気の通路186以外に香気が逃げないよう、気密になるように組み付けられる。
なお、各香りカートリッジ130、…がカートリッジ収容部110に装着されると、NFCタグ164がカートリッジ収容部110の底部に位置する。その結果、NFCチップ108とNFCタグ164との間での近距離通信が可能になる。
マイクロブロア138は、上記特許文献1に開示されたものと同様の構成を持つ。図15を参照して、具体的には、マイクロブロア138は、内部空間であるブロア室252を持つケース250と、ブロア室252を塞ぐようにケース250の上面を覆って取付けられ、上面に形成されたノズル270を持つカバー部材254とを含む。ノズル270内部には空気の流通孔256が形成されており、流通孔256はブロア室252の上部に開口している。
ブロア室252内部にはブロア室252を上下2つの部分に仕切る仕切板258が設けられている。仕切板258の、流通孔256の開口直下には、流通孔256と位置合わせされた開口260が形成されている。
仕切板258により仕切られたブロア室252の下部空間には、バネ弾性を持つ金属薄板で形成されたダイアフラム262と、ダイアフラム262の下面に接着された圧電素子264とを含む。圧電素子264に交番電圧を印加することでダイアフラム262が上下に振動して開口260を通して空気をブロア室252内に吐出し、さらに流通孔256を通じて外部に吹き出す。ノズル270が香りカートリッジ背面の給気口158の位置に来るようにマイクロブロア138を上部筐体88の内部に設け、交番電圧を所定の間印加することで、香りカートリッジ内に任意のタイミングで任意の時間の間空気を送り込むことができる。その結果、香りカートリッジから香りを含んだ空気を任意の時間にわたり噴出させることができる。なお、ケース250には空気の取入れ口266が設けられており、取入れ口266の空気が空気の流通路268を介してブロア室252内に供給される。取入れ口266には、後述するように筐体60の底面からの空気が供給される。
香りカートリッジ130以外についても、背面側の開口から内部に空気を送り込むマイクロブロアがそれぞれ配置されている。これらを独立に動作させることにより、任意の香りカートリッジから任意のタイミングで、任意の時間だけ香気を外部に噴出できる。
図14は、図10において矢印14−14で示す方向の矢視断面図である。この図では、香りカートリッジの断面は現れておらず、香りカートリッジの位置決めをする仕切200及び仕切204が図示されている。図14を参照して、香りカートリッジ130の位置決めをする仕切200は、香りカートリッジ130の側面のうち、下部の7割程度までの高さを持ち、香りカートリッジ130を保持している。仕切200のうち周縁側は接続部206により上部筐体88と一体となっており、中心側はリブ208を介して上部筐体88に接続されている。香りカートリッジ135についても同様である。
図10、図13及び図14により示されるように、香りカートリッジ130、…の3つのエッジのうち、噴射口160が形成されている部分に近いエッジとガイド部材114との間には一定の距離がある。この距離は、1センチメートル以上であることが望ましい。また、図9及び図14に示されるように、仕切200及び仕切202は、香りカートリッジ130、…の側面のうち、噴射口160が形成されている部分に近いエッジを挟む側面の上部の少なくとも一部を露出するように形成されている。このような構成をとると、香りカートリッジ130、…のうち、隣接する2つの香りカートリッジの頂点間には一定の間隔が形成される。さらに、各香りカートリッジとガイド部材114の外側表面との間には少なくとも1センチメートルの間隔が確保されている。したがってこの部分に指を差し入れ、香りカートリッジをつまんで取出すことが容易にできる。さらに、香りカートリッジ130、…の側面の一部が露出しているため、この部分を指で挟むことが容易に行える。その結果、香りカートリッジ130、…を容易に交換できるという効果が生じる。
図4、図5及び図13に示すシロッコファン120は、マイクロブロア138と異なり、通常のブラシレスモータにより駆動される。ブラシレスモータは専用の駆動回路(駆動回路基板126上の回路)を必要とするが、安定した回転速度で動作でき、メンテナンスも不要という利点がある。さらに発生する騒音も小さいため、香りディスプレイが利用される場面を選ばない。このシロッコファン120を駆動することで、任意のタイミングで任意の間、多くの空気を図3、図4、図5及び図13などに示すトップパネル90の開口68から放出させることができる。シロッコファン120が送り出す空気の量は、マイクロブロア138によるものと比較してはるかに多い。
図16に、香りディスプレイ52内部における空気の流れを示す。図16において、香りカートリッジ130、…に供給される空気及び香りカートリッジ130、…から放出される香気の流れは細線の矢印で示す。シロッコファン120に供給される空気及びシロッコファン120から送り出される空気の流れは太線の矢印で示す。
香りカートリッジ130、…を代表して香りカートリッジ130への空気の流れを以下に説明する。ベース筐体84の底面及び底板94に設けられた多数の開口部100及び開口部96を通して空気が筐体60内に取込まれる。この空気は、ベース筐体84内及び中間筐体86内に形成された空気の移動経路300及び空気の移動経路302を通って、上部筐体88内のマイクロブロア138に供給される。マイクロブロア138内の圧電素子264(図15参照)に交番電圧が印加されることによりマイクロブロア138から送り込まれた空気は給気口158を通って香りカートリッジ130の内部に導かれる。
香りカートリッジ130の内部にマイクロブロア138によって空気が導き入れられると、香りカートリッジ130内の圧力が高くなる。その結果、香りカートリッジ130内の香気を含んだ空気が香りカートリッジ130の噴射口160から香りカートリッジ130に対応するトップパネル90の空気の通路186を経由しトップパネル90の開口領域64を通って外部に噴射される。他の香りカートリッジの場合も同様である。
一方、シロッコファン120の場合、香りカートリッジ130、…と同様、ベース筐体84の底面及び底板94の開口部100及び開口部96から空気が供給される。供給された空気は、シロッコファン120が駆動されると吐出口121からノズル92及び上部筐体88内部の空気の流通路140の内部を通ってトップパネル90に形成された開口68から外部に噴射される。シロッコファン120の空気の噴射量はマイクロブロアと比較してはるかに多いので、香りカートリッジ130、…から香りを含んだ空気を噴射した後にこの開口68から空気を噴射すると、周囲に残存していた香りを含んだ空気は消散し、香りが混ざることなく別の香りに切替えることができる。また香りカートリッジ130、…から香気を継続して噴出させるのと並行してシロッコファン120を駆動することで、シロッコファン120の生成する空気の流れにより香りを遠くまで搬送し、広い範囲に香りを行き渡らせることができる。
すなわち、シロッコファン120は、香りを含んだ空気を遠方に到達させるためのブースター機能も果たす。さらに、シロッコファン120による空気の噴射量及び速度を制御することによって、開口領域64から噴射される香りの濃度を制御できる。さらに開口68からの空気と開口領域64からの空気との噴射量の制御によって、香りディスプレイ52の調香機能を果たすこともできる。
なお、この実施の形態では、空気の流通路140内部を流れる空気の流れで香りカートリッジ130などからの香気を搬送する。空気の流通路140の内部を流れる空気の流速が噴射口160からの空気の流速と比較してあまりに大きいと、香りの効果を十分に得ることができない可能性がある。それを防止するために、シロッコファン120から吐出される空気の速度自体を制御すればよいが、空気の流通路140の内径が途中で絞られていたりすると流速が大きくなる可能性がある。そこで、この実施の形態では、空気の流通路140の内径が噴射口160の内径の10倍以上で20倍以下となるようにした。こうすることで、シロッコファン120から吐出される空気の量をあまり小さくしなくても、開口68の部分の空気の流速が噴射口160からの香気の速度と大きく相違することはなくなる。その結果、香りを制御性高く噴射できるという効果がある。
<香りディスプレイの制御構成>
図17は、香りディスプレイの制御に関する概略構成を示すブロック図であって、この図17を参照して、香りディスプレイ52の制御系回路は、香りディスプレイシステム50から香りディスプレイ52を制御するためのコマンドを受けて各部にコマンドに応じた制御信号を送信する制御基板98と、制御基板98からのコマンド信号にしたがって動作する、マイクロブロア138などを含むマイクロブロア群310と、制御基板98からのコマンド信号にしたがってシロッコファン120の動作を制御する駆動回路基板126とを含む。実際には、コマンドに相当するパラメータは制御用プロセッサ314の内部の、マイクロブロア群310のマイクロブロアの各々及び駆動回路基板126に割当てられた記憶領域に保存され、マイクロブロア及びシロッコファン120が動作するときに一定のタイミングでこの値が読出される。その結果、マイクロブロア群310内のマイクロブロアの各々、及びシロッコファン120は、パネル型コンピュータ54からチャンネルを指定したパラメータが送信されてくると僅かな時間遅れで、ほぼリアルタイムでパラメータに応じて動作を変化させる。
前述したとおり、香りカートリッジ130,…の各々の底面には、NFCチップ群312のうち対応するNFCチップ108と近距離通信するためのNFCタグ164が貼り付けられている。NFCタグ164には、香りカートリッジ130,…に封入されている香りの識別コードが記憶されており、この識別コードを香りカートリッジ130,…のNFCタグ164からNFCチップ108へ、NFCチップ108からさらに制御基板98に送信し、制御基板98から香りディスプレイシステム50に送信する。香りディスプレイシステム50は、この識別子を使用して、どの香りカートリッジ130,…から香りを噴射させるかを決定し、制御基板98にそのための制御信号を送信する。
−制御基板98の構成−
制御基板98は、パネル型コンピュータ54との間で無線を介して通信を行うための無線通信ユニット316と、無線通信ユニット316を介してパネル型コンピュータ54から受信したコマンドに応じてマイクロブロア群310及び駆動回路基板126を制御するコマンド信号を生成したり、NFCチップ108などを含むNFCチップ群312から香りディスプレイ52にセットされた各香りカートリッジの香りを特定する識別コードを受信し、無線通信ユニット316を介してパネル型コンピュータ54に送信したりするための制御用プロセッサ314と、制御用プロセッサ314とマイクロブロア群310及び駆動回路基板126との間の入出力I/O320と、制御用プロセッサ314とNFCチップ群312との間の入出力I/O318とを含む。
制御用プロセッサ314は、NFCチップ群312内のNFCチップ108などからそのNFCチップ108に対応するカートリッジ収容位置に装填された香りカートリッジの識別コードを受信すると、すぐに収容位置を示す情報とその識別コードとを無線通信ユニット316を介してパネル型コンピュータ54に送信する機能を持つ。制御用プロセッサ314はまた、無線通信ユニット316を介してパネル型コンピュータ54からコマンドを受信すると、そのコマンドの種類の宛先とに応じた入出力I/O320の適切なポートを通じ、コマンドに応じたコマンド信号を直ちに出力する。したがって、パネル型コンピュータ54で香りディスプレイ52に対して何らかの操作が行われると、その操作が直ちに香りディスプレイ52の動作にリアルタイムで反映される。
《パネル型コンピュータ54の画面構成》
図18は、パネル型コンピュータ54の制御画面330を示す。図18を参照して、制御画面330は、香りディスプレイ52からの香りの噴出のオン・オフを制御するための噴射制御ボタン342と、香りディスプレイ52に装填された12個の香りカートリッジについて設定された12種類の香りの濃度の構成、即ち香りパターンを示すチャンネル濃度グラフ340と、予め準備された香りの濃度構成及びユーザがパネル型コンピュータ54を使用して作成した香りパターン(賦香)からなる賦香リスト358と、賦香リスト358を編集する際にユーザがタップする編集ボタン362とを含む。なおこの実施の形態では、チャンネル濃度グラフ340は、全体としては制御画面330の中央付近の一点を中心として放射状でかつ回転対称に配置された、各チャンネルに対応した数の同じ形で同じ大きさの扇形のセクションに分割されている。各セクションは、そのセクションに対応する香りカートリッジが装填されていないときには一定の背景色(例えば黒)で表示される。香りカートリッジが装填されているときには、対応するセクションにはそれぞれ別々の色彩が付与されてその香りの強度が表示される。これらの色彩は自由に決めれば良いが、対応する香りカートリッジの香りの種類に応じて予め定められた色彩を用いるようにすると好ましい。したがって、同じ香りのカートリッジが2箇所に装填されている場合には、それらが同じ色で表示されるようにしてもよい。
なお、この実施の形態では図18に示すように、各セクションは画面上の1点を中心とする円板上の扇形となっている。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。各カートリッジの色が区別できるような表示で、各セクションが同じ形、かつ同じ大きさのものであればどのような表示形式でもよい。例えばこの実施の形態と同様に1点から放射状に各セクションが表示される場合、中心位置から外側の一定距離まではその幅(例えば上記1点を中心とする円周方向の長さ)が単調増加し、途中から単調減少に転じて最終的にゼロとなるような形(花びらのような形)であってもよい。もちろん、これらの形を多少変形させたもの、例えば途中にしぼりがある形状、全体的に円周方向にひねった形状などを採用しても良い。又は各セクションを単純な棒状のものにしてもよい。
またこの実施の形態では、各セクションは互いに重ならないように配置されている。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。隣接するセクションの一部が互いに重なるようにしてもよい。この場合、重なった部分については、重なっているセクションの色彩を混合した色彩で表示しても良い。この混合は加法混色としてもよい。もちろん、重なり合う部分の面積があまりに大きくなることは好ましくない。重なり合う部分の面積は、最大でも各セクションの面積の1/4程度までとすることが望ましい。
制御画面330はさらに、香りディスプレイ52から噴出される風力を調整する際にユーザがタップする風力設定ボタン344と、チャンネル濃度グラフ340に表示される各香りの濃度をランダムな値に設定するためにユーザがタップするランダム設定ボタン346と、チャンネル濃度グラフ340に表示される各香りの濃度を全て100%に設定するためにユーザがタップする全チャンネル100%設定ボタン348と、パネル型コンピュータ54の操作説明などを表示させるためにユーザがタップするマニュアル表示ボタン350とを含む。
制御画面330はさらに、ユーザが新たな賦香(香りパターン)を作成する際にタップする新規作成ボタン360と、ユーザがチャンネル濃度グラフ340に表示される12個の香りカートリッジ(チャンネル)からの香りの濃度を設定する際に操作する濃度設定スライダ352とを含む。
濃度設定スライダ352は、スライダバー354と、スライダバー354上をスライドするように設定された濃度スライドボタン356とを含む。スライダバー354の左に行くほど濃度は低く(香りは弱く)なり、右に行くほど濃度は高く(香りは強く)なる。この実施の形態では、この濃度は0(%)から100(%)の範囲で設定可能であり、その数字が濃度設定スライダ352の右側に表示される。ここでは、各香りカートリッジが噴射する香気の強さの最大値を100%とし、全く香気を出さないときを0%としている。またこの実施の形態では、スライダバー354の濃度スライドボタン356の左側部分は太く表示され、右側は細く表示される。もちろんこれは1例であり、例えば濃度スライドボタン356の左右でスライダバー354の色を変えるようにしてもよい。又はスライダに代えてダイヤル式の表示にしてもよい。またこの実施の形態では、後述するようにチャンネル濃度グラフ340の一つのチャンネルを指定して、そのチャンネルについて濃度設定スライダ352を用いて香りの強さを調整している。そうではなく、チャンネルごとに濃度設定スライダ352のような濃度調節のためのUI(ユーザ・インターフェイス)要素を設けても良い。
図19を参照して、チャンネル濃度グラフ340は、初期状態(香りカートリッジが全く装填されていない状態)では、全体が一定の背景色(例えば黒又はグレー)で表示される。扇形領域370の輪郭はこの実施の形態ではこの状態では表示されない。しかし、もちろん各輪郭を背景色と異なる色で表示したり、背景色と同じ色で輝度を高くして表示したりしてもよい。濃度グラフ340のある1つのチャンネル(例えばチャンネル1)に相当する部分をユーザがタップすると、そのチャンネル1に対応する扇形領域370の輪郭が強調表示される。ここでの強調表示も、背景色と異なる色で行っても良いし、背景色と同じ色で輝度を高くすることで行っても良い。
図19の表示ではチャンネル1の強度は0%である。図20において矢印表示374により示すように、この状態でユーザが濃度設定スライダ352の濃度スライドボタン356を左右にスライドさせることにより、チャンネル1の香りの強度が変化し、そのチャンネルの扇形領域370に表示されるほぼ扇形の濃度グラフ372(図20)の大きさも変化する。この実施の形態では、扇形領域370の扇形の中心角は一定で、強度が100%のときには濃度グラフ372はチャンネル濃度グラフ340の最も外側まで伸び、強度が弱くなるにしたがってチャンネル濃度グラフ340の中心側(扇形の要部分)に縮小していく。強度が0%となると濃度グラフ372は表示されなくなる。もちろんこれは1例であって、強度が0%となっても濃度グラフ372がチャンネル濃度グラフ340の最も内側の狭い領域に表示されるようにしてもよい。 このようにこの実施の形態では、濃度グラフ372の部分(要に近い部分)と、それ以外の部分とが異なる表示態様で表示される。濃度が高くなると濃度グラフ372の大きさが大きくなり、濃度が低くなると小さくなる。この実施の形態では、扇形の要からの長さで濃度を表している。しかし、例えば扇形領域370の面積に対する濃度グラフ372の面積の割合が濃度の大きさに比例するようにしてもよい。
図21を参照して、噴射制御ボタン342は、香りディスプレイ52からの空気の噴出のオン及びオフをトグルさせるためにユーザが操作するボタンである。図14を参照して、香りディスプレイ52からの香りなどの噴出が停止しているときは、噴射制御ボタン342は例えば黒地に白で表示される。一方、香りディスプレイ52からの香りなどの噴出がオンのときには、図21の噴射制御ボタン342により示されるように、噴射制御ボタン342は強調表示(例えば黒地に赤で表示、又は反転表示、又は点滅表示)される。
図22を参照して、ユーザが風力設定ボタン344をタップするとポップアップスライダ390がポップアップ表示される。ポップアップスライダ390は香りディスプレイ52から噴出される風の強さを調節するためのものである。
図23を参照して、ポップアップスライダ390は、スライダバー392と、スライダバー392の上をスライド可能なスライドボタン394とを含む。スライドボタン394を矢印396により示されるように左右にスライドすると、スライドボタン394が左に行くほど噴出される風の強さは弱く、右に行くほど強くなる。この例では風の強さは0から100の範囲内で設定される。設定された風の強さはポップアップスライダ390の真ん中の上部に数字で表示される。図23では設定された風の強さは「48」である。
図24を参照して、ランダム設定ボタン346をユーザがタップすると、チャンネル濃度グラフ340の各チャンネルについて、香りの強度が0から100の範囲でランダムな値に設定される。図25に、ランダム設定ボタン346が操作された後のランダム表示画面400を示す。図26には、さらに別のランダム表示画面402を示す。これら画面のいずれにおいても、チャンネル濃度グラフ340を構成する香りの強さの各々はランダムな値に設定されている。各香りの強度をランダムな値に設定するためには、例えばパネル型コンピュータ54が[0,1]の範囲でランダムな値を生成し、生成された値に100を掛ければよい。後述するようにこのようにランダムに生成された香りパターンも、ユーザが作成した香りパターンとして取扱うことができる。例えばランダムに生成された香りパターンを賦香リストに登録できる。
図27に示す全チャンネル100%設定ボタン348は、チャンネル濃度グラフ340の各チャンネルの香りの強さを全て100%に設定するためにユーザがタップするボタンである。ユーザが全チャンネル100%設定ボタン348をタップした後の全チャンネル100%画面420を図28に示す。図28を参照して、チャンネル濃度グラフ340の各チャンネルの扇形はいずれも強さの最大値である100%に応じて最も外側まで開いている。
図29を参照して、ユーザが新たに作成したチャンネル濃度グラフ482は新たな香りパターンとして賦香リスト358に登録できる。そのためにはユーザは新規作成ボタン360をタップする。新規作成ボタン360がタップされたときのパネル型コンピュータ54が表示する賦香名入力画面440を図30に示す。図30を参照して、賦香名入力画面440には賦香名入力ダイアログ460とキーボード462とが表示される。賦香名入力ダイアログ460の入力フィールドにキーボード462を用いてユーザが新しい賦香名を入力すると、図31に示すように、賦香リスト358に新たな追加された賦香名480が追加される。もちろん画面上の賦香リスト358に追加された賦香名480という表示が追加されるだけではない。図示しない記憶装置には賦香リストを記憶する記憶領域が設けられ、その記憶領域にはその賦香リストに含まれる香りパターンの各々の情報(賦香名、各香りチャンネルの香りカートリッジの識別子及びその装填位置、香り濃度、作成者、作成日時、作成時の温度及び湿度、作成時の位置情報及びその位置での天気など)が格納されており、ここに表示中の香りパターンに応じた新たな香りパターンの情報が記憶される。なお、この実施の形態では、香りパターンの新規登録時には賦香名しかユーザが指定しないようになっているが、例えば香りに応じたコメントなどを追加するようにしてもよい。
賦香リスト358から任意の一つの香りパターンを削除するときには、ユーザは編集ボタン362をタップする。すると画面は図32に示すものに変化する。
図32を参照して、編集ボタン362は編集完了ボタン490に変化し、賦香リスト358内の各香りパターンの右側には削除ボタン492が表示される。ユーザが削除ボタン492のうち削除の対象となる香りパターンに対応するものをタップすると画面は図33に示すものとなる。例えば図32において「Aroma1」と書かれた香りパターンの横に表示された削除ボタン492をタップすると、図33に示すように、指定された香りパターンを削除してもよいか否かを尋ねる賦香削除ダイアログ500が表示される。賦香削除ダイアログ500で「はい」を選択すれば指定された香りパターンが削除される。この削除は表示上だけではなく、賦香リストの記憶領域からの削除も伴う。
《パネル型コンピュータ54のハードウェア構成》
図34は、パネル型コンピュータ54のハードウェア構成を示すブロック図である。図34を参照して、パネル型コンピュータ54は、プロセッサ550、ペリフェラルI/F554及びメモリコントローラ552を搭載した半導体集積回路510を含む。プロセッサ550、ペリフェラルI/F554及びメモリコントローラ552は互いにバス556を介して通信可能である。
半導体集積回路510のメモリコントローラ552にはメモリ528が接続されている。メモリ528はこの実施の形態では揮発性メモリと不揮発性メモリとの組合せを含む。不揮発性メモリはフラッシュメモリを含み、例えばプロセッサ550を動作させるための基本的プログラム、アプリケーションプログラムなどを記憶している。不揮発性メモリは作業用メモリ、プログラムの実行時の作業用メモリとして使用される。
パネル型コンピュータ54はさらに、ペリフェラルI/F554を介してプロセッサ550との相互通信が可能なRF回路520、オーディオ回路522、センサ群524、ディスプレイコントローラ532及びカメラコントローラ536と、半導体集積回路510に接続され、図示しない可搬型メモリ、可搬型ハードディスクなどが接続可能な外部ポート526とを含む。ディスプレイコントローラ532にはさらにタッチパネルディスプレイ530が接続される。カメラコントローラ536には同様にカメラ534が接続される。
《パネル型コンピュータ54のプログラム構成》
−メインルーチン−
図35は、香りディスプレイ52が噴出する香りの構成及び風の強さをユーザの制御にしたがって制御するために、パネル型コンピュータ54のプロセッサ550が実行するプログラムのメインルーチンの制御構造を示すフローチャートである。
図35を参照して、このプログラムは、起動されると、プログラム中で使用するオブジェクトのインスタンスの生成、必要な記憶領域の確保及び初期化、図18に示す初期画面の表示などの処理を含む初期処理を実行するステップ600と、図18に示す制御画面330を初期画面として表示するステップ602とを含む。記憶領域の確保及び初期化などについてはインスタンス生成時にコンストラクタと呼ばれるメソッドが呼び出されることで行われる。
このプログラムはさらに、ステップ602に続き、何らかのイベントを待機し、イベントが発生するとそのイベントの種類に応じて制御の流れを分岐するステップ604を含む。図18に示す制御画面330で生ずる主なイベントと、それに対して起動されるステップは以下のとおりである。
・図18のチャンネル濃度グラフ340内のいずれかのチャンネル領域をタップ(ステップ610)
・濃度設定スライダ352をタップ(ステップ612)
・制御画面330の、操作対象領域以外をタップ(ステップ614)
・風力設定ボタン344をタップ(ステップ616)
・ポップアップスライダ390(図22)をタップ(ステップ618)
・ランダム設定ボタン346をタップ(ステップ620)
・全チャンネル100%設定ボタン348をタップ(ステップ622)
・新規作成ボタン360をタップ(ステップ624)
・編集ボタン362をタップ(ステップ626)
・削除ボタン492(図32)のいずれかをタップ(ステップ628)
・噴射制御ボタン342をタップ(ステップ630)
これらイベントのうち、画面に対するユーザのタップにより生ずるイベントについては、画面表示と、ユーザのタップ位置及びタップ位置の変化(ドラッグ)などによりどのイベントが生じたかがプログラムの実行系により特定され、実行中のプログラムに通知される。以下、これら各イベントについて順に説明する。
−チャンネル選択−
ユーザがチャンネル濃度グラフ340の一部、例えば図19に示す扇形領域370をタップすると、図35のステップ604の判定によりステップ610が実行される。
図36を参照して、ステップ610は、選択されたチャンネルを特定するステップ650と、選択されたチャンネルに関する設定値をメモリ528(図34)から読出すステップ652と、ステップ650で特定されたチャンネルに対応する扇形領域370を、他のチャンネルと異なる形態でハイライト表示し制御をメインルーチンに戻すステップ654とを含む。ステップ654では同時に、濃度設定スライダ352の表示を強調表示に切替える。濃度設定スライダ352が強調表示されることにより、濃度設定スライダ352を用いて選択中のチャンネルの香り濃度が調整可能であることが分かる。
−濃度設定スライダ352−
ユーザがあるチャンネルを選択して図20に示す濃度設定スライダ352をタップすると、図35のステップ604で濃度設定スライダ352のイベントが発生し、ステップ612が実行される。
図37を参照して、ステップ612は、ステップ604で受信したイベントの種類により制御の流れを分岐させるステップ680を含む。ここでのイベントの種類としては、ドラッグと、タップの発生と、タップの終了とがある。
イベントがドラッグであるときのルーチンは、ステップ604で受信された、ドラッグ中のタップ位置を検出し、保存するステップ690と、ステップ690の後、タップ位置に応じた濃度スライドボタン356の位置を決定し、保存するステップ692と、強調モードで濃度設定スライダ352を再表示するステップ694とを含む。ステップ694では、スライダバー354のうち、濃度スライドボタン356の位置より左側は太く、右側は細く表示する。スライダバー354の右側にはタップ位置に応じた香り強度を示す数字を表示する。なお、香りの強度は、タップ位置のx座標(画面横方向の座標軸上の座標値)xと、濃度設定スライダ352の右端のx座標x1と左端のx座標x0との差とから以下の式により算出できる。
香りの強度=(x−x0)×100/(x1−x0)
この実施の形態では、香りの強度の小数点以下は四捨五入する。
イベントがタップの発生であるときのルーチンは、タップされた位置を検出し保存するステップ700と、タップされた位置に応じて濃度スライドボタン356の位置を決定し保存するステップ702と、通常モードで濃度設定スライダ352を再表示するステップ704とを含む。
なお、強調モードでの表示とは、通常モードでの表示と区別できる態様の表示であればどのようなものでもよいが、対象の画面上の部品の輝度を高くする、色を通常モードと変える、部品又は文字の大きさを通常モードの表示より大きくする、又は周囲を何らかの枠で囲むなどの態様で表示することをいう。また、ここでいう通常モードの表示とは、濃度設定スライダ352がアクティブであることを示す表示であって、強調モードほどではないが、操作可能であることを示すために、他の要素よりは強調された表示である。
イベントがタップの終了であるときのルーチンは、タップ終了位置を決定し、濃度スライドボタン356の表示位置を決定するステップ710と、通常モードで濃度設定スライダ352を再表示するステップ712とを含む。
ステップ612はさらに、ステップ694、ステップ704、及びステップ712の後に実行され、パネル型コンピュータ54に対してステップ692又はステップ702で算出された香り強度と、ステップ604(図35)において通知されたチャンネルの番号とを香りディスプレイ52に送信して制御をメインルーチンに戻すステップ696とを含む。
−領域外のタップ−
領域外がタップされると、図35のステップ604で領域外タップのイベントが発生し、ステップ614が実行される。
図38を参照して、ステップ614は、現在何らかのダイアログが表示中か否かを判定し、判定結果が否定のときには直ちにメインルーチンに制御を戻すステップ730と、判定結果が肯定のときに、表示中のダイアログたモーダルダイアログか否かを判定して制御の流れを分岐させるステップ732と、ステップ732の判定が否定のときに、表示中のダイアログを消去し、ダイアログ表示前の画面を復元して制御をメインルーチンに戻すステップ734と、ステップ732の判定が肯定のときに、ユーザに対して注意を促すための処理、例えばモーダルダイアログが表示中であることを示すメッセージの表示、何らかの音の発生などを行った後に制御をメインルーチンに戻すステップ736とを含む。
−風力設定ボタン344−
図22に示す風力設定ボタン344がタップされると、図35のステップ604で風力設定ボタン344のイベントが発生し、ステップ616が実行される。
図39を参照して、ステップ616は、風力設定ボタン344を強調表示するステップ740と、現在の風量をメモリ528(図34)から読出すステップ742と、ステップ742において読出された風量にしたがった位置にスライドボタン394(図23)を設定してポップアップスライダ390(図22)を表示し制御をメインルーチンに戻すステップ744とを含む。
ステップ744で実行されるルーチンは以下のような制御構造を持つ。図40を参照して、ステップ744は、現在設定されている風量に対応した座標位置を計算し、その位置にスライドボタン394(図23を参照)が位置するようにポップアップスライダ390を表示するステップ760を含む。ポップアップスライダ390は非モーダルダイアログであり、ポップアップスライダ390が表示されている間に領域外をタップするとポップアップスライダ390は消去される。このルーチンはさらに、ステップ604で発生したイベントの種類に応じて制御の流れを分岐するステップ762を含む。
ステップ762で判定するイベントの種類と、そのときに制御が分岐する先のステップ番号を以下に挙げる。
・スライドボタン394のドラッグ(ステップ770)
・スライダバー392へのタップ終了(ステップ780)
・スライドボタン394のドラッグ終了(ステップ790)
・ポップアップスライダ390の外側領域のタップ終了(ステップ800)
スライドボタン394のドラッグ時のルーチンは、タップ位置を検出するステップ770と、検出されたタップ位置に応じた風量を算出しメモリ528に格納するステップ772と、ポップアップスライダ390をドラッグモードで表示するステップ774とを含む。この後にはステップ776で設定された風量を香りディスプレイ52に送信し、制御はメインルーチンに戻る。
スライダバー392へのタップの終了イベントが発生したときのルーチンは、タップ終了時のタップ位置を検出するステップ780と、その位置に応じた風量を算出しメモリ528に保存するステップ782と、ステップ782において算出された位置により定まる位置にスライドボタン394が表示されるように通常モードでポップアップスライダ390を表示するステップ784とを含む。この後にはステップ776で設定された風量を香りディスプレイ52に送信し、制御はメインルーチンに戻る。
スライドボタン394のドラッグの終了イベントが発生したときのルーチンは、ドラッグ終了時のタップ位置を決定するステップ790と、通常モードでポップアップスライダ390を表示するステップ792とを含む。この後にはステップ776で設定された風量を香りディスプレイ52に送信し、制御はメインルーチンに戻る。
ポップアップスライダ390の領域外がタップされた場合には、タップの終了時にタップ終了イベントが発生し、ステップ800でポップアップスライダ390を消去し、このルーチンの実行を終了して制御をメインルーチンに戻す。
−ランダム設定ボタン346−
図24に示すランダム設定ボタン346がタップされると、図35のステップ604でランダムボタンイベントが発生し、ステップ620が実行される。
ステップ620の制御構造を図41に示す。図41を参照して、このルーチンは、繰返し制御変数iの値を0から11までステップ1で変化させながら、各チャンネルに香り強度を乱数で設定する処理842を繰返し実行するステップ840と、ステップ840の処理の完了後、ステップ840で各チャンネルについて設定された香り強度を用いてチャンネル濃度グラフ340の全チャンネルを表示するステップ844と、このようにして設定された各チャンネルの香り強度を香りディスプレイ52に送信して制御をステップ604に戻すステップ846とを含む。
処理842は、変数iにより指定されるチャンネルに香りディスプレイ52が装填されているか否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップ860と、ステップ860の判定が肯定のときに実行され、所定の範囲(例えば[0、1])で乱数を発生させるステップ862と、ステップ862で発生された乱数に所定の定数(例えば100)を乗じることにより各チャンネルに対応する香りカートリッジから噴出される香りの強度を算出しメモリ528(図34)に記憶して処理842の実行を終了するステップ864と、ステップ860の判定が否定のときに、変数iにより指定されるチャンネルの強度を0に設定して処理842の実行を終了するステップ866を含む。
なお、各チャンネルに香りディスプレイ52が装填されているか否かは、図17に示すNFCチップ群312の中のNFCチップ108などからの情報により知ることができる。
−全チャンネル100%設定ボタン348−
図27の全チャンネル100%設定ボタン348がタップされると、図35のステップ604では全100%ボタンイベントが発生し、ステップ622が実行される。
図42を参照して、ステップ622は、繰返し制御変数iの値を0から11までステップ1で変化させながら、各チャンネルの香りの強度を100%に設定する処理892を繰返し実行するステップ890と、ステップ890の処理の完了後、ステップ890で各チャンネルについて設定された香り強度を用いてチャンネル濃度グラフ340の全チャンネルを表示するステップ894と、設定された各チャンネルの強度を示す情報を香りディスプレイ52に送信するステップ896とを含む。
処理892は、繰返し変数iにより指定されるチャンネルに香りディスプレイ52が装填されているか否かを判定し、判定にしたがって制御の流れを分岐させるステップ900と、ステップ900の判定が肯定のときに実行され、対象のチャンネルの香りの強度を100%に設定してメモリ528(図34)に保存して処理892を終了するステップ902と、ステップ900の判定が否定のときに実行され、対象のチャンネルの香りの強度を0%に設定してメモリ528の保存し処理892を終了するステップ904とを含む。なお、ここでの繰返し変数iは0から11まで変化するが、対応するチャンネルは1から12である。
−新規作成ボタン360−
図29に示す新規作成ボタン360がタップされたときには、図35のステップ604で賦香リスト新規作成イベントが発生し、ステップ624が実行される。
図43を参照して、ステップ624は、新たな香りパターンをユーザに入力させるためのダイアログを表示するステップ930と、ステップ930で表示したダイアログの戻り値が、香りパターンを保存してよいことを示す値か否かを判定して制御の流れを分岐させるステップ932と、ステップ932の判定が肯定のときに、ダイアログで指定された名称を付与して現在の香りパターンをメモリ528(図34)に保存するステップ934と、ステップ934で保存した香りパターンの名称を追加して賦香リスト358を更新して表示し、メインルーチンに制御を戻すステップ936とを含む。ステップ932の判定が否定のときには、このルーチンは何もせず制御をメインルーチンに戻す。
−賦香リスト358−
図29に示す賦香リスト358の香りパターンのいずれかがタップされたときには、図35に示すステップ604で賦香リストボタンイベントが発生し、ステップ626が実行される。
図44を参照して、ステップ626は、指定された香りパターンをメモリ528(図34)から読出すステップ960と、エラーメッセージを表す変数の値をクリアするステップ962とを含む。このエラーメッセージは、指定された香りパターンに必要な香りカートリッジが香りディスプレイ52に装填されていないことを示すものである。
このルーチンはさらに、繰返し変数iの値を0から11まで1ずつ変化させながら処理966を実行するステップ964と、ステップ964で設定された条件にしたがって全チャンネルの香りパターンを表示するステップ968と、エラーメッセージを表示して制御をメインルーチンに戻すステップ970とを含む。エラーがなかったときには、エラーメッセージは空なので、結果として何も表示されない。エラーがあったときのみそのエラーが表示される。
処理966は、ステップ960で読出した香りパターンを構成する12チャンネルのうち、繰返し変数iにしたがって定まるチャンネルの香り識別子[i]と一致する香り識別子を持つ香りカートリッジがあるか否かを判定し、判定に応じて制御の流れを分岐させるステップ980と、判定が肯定であることに応答して実行され、その香りカートリッジに対応するチャンネルに、香り強度[i]を設定し処理966を終了するステップ982と、ステップ980の判定が否定であることに応答して実行され、読出された香り識別子[i]に該当する香りカートリッジがない旨のテキストをエラーメッセージに追加して処理966を終了するステップ984とを含む。
−編集ボタン362−
図31に示す編集ボタン362がタップされると、図35に示すステップ604において賦香リスト編集ボタンイベントが発生し、ステップ628が実行される。
図45を参照して、ステップ628は、賦香リスト358の中の各香りパターンの右に、図32に示す削除ボタン492を表示するステップ990と、図31に示す編集ボタン362に代えて、図32に示す編集完了ボタン490を表示するステップ992と、ステップ992の後にイベントが発生するのを待機し、発生したイベントの種類にしたがって制御を分岐させるステップ994とを含む。
ステップ994で発生するイベントの種類と、そのときに実行される処理は以下のとおりである。
・削除ボタン492(図32)のいずれかをタップ
この場合、指定された削除ボタン492に対応する香りパターンがメモリ528(図34)から削除され、賦香リスト358からも消去される。
・編集完了ボタン490(図32)をタップ
編集完了ボタン490をタップすると香りパターンの削除処理は終了し、編集ボタン362をタップする前の画面が再表示される。
・編集完了ボタン490でも削除ボタン492でもない領域外をタップ
警告音を発し、何もしない。
このため、このルーチンは、削除ボタンのいずれかがタップされたときに、その削除ボタンに対応する香りリストを特定するステップ996と、ステップ996で特定された香りリストを削除してよいか否かを尋ねるダイアログ(図33)を表示し、ユーザ入力を受けてダイアログが閉じるのを待つステップ998と、ステップ998でダイアログが閉じるときのダイアログの戻り値に基づいて、削除してよいと指示されたか否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップ1000と、ステップ1000の判定で削除してよいと指示されたと判定されたことに応答して、該当の香りリストをメモリ528(図34)から削除し、あわせて賦香リスト358(図32)からも削除して賦香リスト358を再表示し、制御をステップ994に戻すステップ1002とを含む。ステップ1000において、削除しないと指示された場合には、香りリストはいずれも削除されず制御はステップ994に戻る。
このルーチンはさらに、ステップ994で受信したイベントが領域外タップであることに応答して、警告音を発生し、制御をステップ994に戻すステップ1010と、イベントが編集完了ボタン490(図32)のタップであることに応答して、編集完了ボタン490を消去し編集ボタン362を再表示して制御をメインルーチンに戻すステップ1020とを含む。
−噴射制御ボタン342−
図18に示す噴射制御ボタン342がタップされたときには、図35のステップ604で噴射ボタンイベントが発生し、ステップ630が実行される。
図46を参照して、ステップ630は、香りディスプレイ52が現在香りを噴出しているか否かを判定し、判定にしたがって制御の流れを分岐させるステップ1050と、ステップ1050の判定が肯定のときに噴射を開始する指示を香りディスプレイ52に送信するステップ1052と、噴射制御ボタン342を強調表示するステップ1054と、ステップ1050の判定で使用する、香りディスプレイ52が香りを噴射しているか否かを示す噴射中フラグの値を1に設定しこのメインルーチンに制御を戻すステップ1056とを含む。
このルーチンはさらに、ステップ1050の判定が否定のときに、噴射の停止を香りディスプレイ52に対して指示するステップ1058と、噴射制御ボタン342を通常モードで表示するステップ1060と、噴射中フラグを0に設定し、制御をメインルーチンに戻すステップ1062とを含む。
図47は、香りディスプレイ52の制御用プロセッサ314(図17)が、パネル型コンピュータ54からコマンドを受信するために実行するプログラムの制御構造を示すフローチャートである。図47を参照して、このプログラムは、コマンドを受信するまで待機するステップ1200と、コマンドを受信したときにそのコマンドから指定の宛先(マイクロブロア群310の中のいずれか、又は駆動回路基板126)を抽出するステップ1202と、受信したコマンドから指定のパラメータを抽出するステップ1204と、指定された宛先に対応する記憶領域に、指定されたパラメータに対応するパラメータを保存して制御をステップ1200に戻すステップ1206とを含む。
<動作>
上記した香りディスプレイシステム50は以下のように動作する。
《香りディスプレイ52》
各香りカートリッジ130、…には、その内部の香源に応じたラベルが貼られており、その底面にはNFCタグ164が貼り付けられている。香りディスプレイ52のユーザは、自分が気に入った香りの香りカートリッジを購入し以下の手順で香りディスプレイ52に装填する。
図4及び図9を参照して、トップパネル90を上部筐体88から取外すことにより、上部筐体88の上部開口が露出する。図13に示すように、ユーザは上部筐体88の内部のカートリッジ収容部110の任意の位置に香りカートリッジを装填する。例えば12個の全てのカートリッジ収容部に香りカートリッジを装填する。ユーザは、香りカートリッジの装填後、トップパネル90を筐体60に取付ける。香りディスプレイ52に装填された香りカートリッジ130、…のNFCタグ164は、香りディスプレイ52が備えるNFCチップ108のうち、そのカートリッジが装填された位置に近接するものとの近接通信により、その香りカートリッジ130、…の識別子(又は香りの識別子)をNFCチップ108を介して制御用プロセッサ314に送信する。制御用プロセッサ314は、この香りカートリッジの識別子と、その香りカートリッジが装填されている位置の識別子(カートリッジ収容位置の番号)とを組にして、無線通信によりパネル型コンピュータ54に送信する。パネル型コンピュータ54はこの情報をメモリ528に格納する。
後述するように、香りディスプレイ52からの香気の噴射とその構成とをパネル型コンピュータ54を操作してリアルタイムで変化させ確認できる。そのときの香りディスプレイシステム50の動作については後述する。好ましい香気の構成が定まると、ユーザはパネル型コンピュータ54を用いて香気の噴射のタイミングと、香気を噴射する香りカートリッジの指定とを行い、さらにそのときのシロッコファン120の生成する空気流の大きさを指定する。それらを、所望のシーケンスにしたがって行うように予めプログラムを作成する。このプログラムをパネル型コンピュータ54で実行すると、パネル型コンピュータ54は、指定されたタイミングで、指定された香りカートリッジから香りを噴出させるよう、香りディスプレイ52の制御基板98にコマンドを送信する。このコマンドを受信した制御基板98は、指定された香りが装填されたカートリッジ収容部110のマイクロブロア138に、指定されたタイミングで指定された長さだけ交番電圧を加える。その結果、香りディスプレイ52からは、パネル型コンピュータ54により指定されたタイミングで、指定された香りが指定された時間だけ噴射される。さらに、制御基板98は、香りを噴射する間と、香りを噴射した後とで、それぞれ別々にシロッコファン120を制御し、シロッコファン120が生成する空気流の大きさを変化させる。この結果、例えば、ある映画などに応じて予め作成したプログラムをその映画の進行に同期して実行することで、映画のシーンに応じた香りを生成できる。
図16を参照して、マイクロブロア138などとシロッコファン120とが動作しているときには、空気がベース筐体84の底面及び底板94に形成された開口部を通じて香りディスプレイ52の筐体内に取込まれる。空気の一部は空気の移動経路302からマイクロブロア138などに至り、例えばマイクロブロア138により香りカートリッジ130の溝154を経て香りカートリッジ130の内部の空間に導入される。すると、香りカートリッジ130の内部の、香源から発生する香りを含んだ香気が香りカートリッジ130の内部から噴射口160を経て開口領域64に噴射される。
一方、香りディスプレイ52の内部に取込まれた空気の他の一部はシロッコファン120によって加速されてノズル92を経て空気の流通路140に導かれ、開口68からある流速を持って香りディスプレイ52の外部に噴射される。香りカートリッジ130から噴射された香気と、他の香りカートリッジ134などから噴射された香気とは、開口68からの空気流に引き込まれる形で香りディスプレイ52の外部に送出される。シロッコファン120による空気の送出量を大きくすれば開口68からの空気流は速くなり、香気は遠くまでこの空気流により運ばれる。シロッコファン120による空気の送出量を小さくすれば開口68からの空気流は遅くなり、香気は香りディスプレイ52の比較的近くの部分までしか創出されない。シロッコファン120を動作させず、香りカートリッジ130などのみから香気を噴射すれば、シロッコファン120からの空気流がないためその香気は香りディスプレイ52のごく近くに留まることになる。
このように、例えばシーンに応じて適切な香りを放出できるようにするためには、予め適切な香りを放出するための、香りパターンを作成しておく必要がある。香りパターンの作成を手作業で行う場合には、膨大な時間と労力とが必要となる。この実施の形態に係る香りディスプレイシステム50では、噴射されている香りの成分の割合が扇形のグラフ形式で、かつ様々な色彩で直感的に分かりやすいように表示される。その結果、香りディスプレイシステム50を使用することで、香りパターンを作成するための時間と労力とが大きく削減できる。
《パネル型コンピュータ54》
香りをリアルタイムで調製する際には、香りディスプレイシステム50は以下のように動作する。ユーザは、最初に香りの調製プログラムを起動する。この調製プログラムの制御構造は、図35から図47を参照して説明したとおりである。パネル型コンピュータ54の表示部には図18に示す制御画面330が表示される。この実施の形態では、このプログラムの実行開始時にはチャンネル濃度グラフ340に空白が表示される。
−新規な香りパターンの作成−
ユーザが新規に香りパターンを作成する場合には、図19に示すように、チャンネル濃度グラフ340の中で、所望のチャンネル(例えば第1チャンネル)に対応する扇形領域370の中の部分をタップする。すると、チャンネル選択のイベントが発生し、図35のステップ604での判定によりステップ610の処理(図36)が実行される。
図36を参照して、ステップ650において、選択されたチャンネルが特定される。ステップ652において、選択されたチャンネルに関する設定値をメモリ528(図34)から読出す。ステップ654において、ステップ650で特定されたチャンネルに対応する扇形領域370を、他のチャンネルと異なる形態でハイライト表示し制御をメインルーチンに戻す。この結果、選択されたチャンネルの扇形領域370の輪郭が強調表示され、現在第1チャンネルが選択されていることが示される。同時に画面下側の濃度設定スライダ352も強調表示され、第1チャンネルの香り強度を濃度設定スライダ352により設定できることが分かる。
続いてユーザが濃度設定スライダ352の濃度スライドボタン356を左右にドラッグすると、濃度設定スライダ352のドラッグイベントが発生する。図35のステップ604の判定により制御はステップ612に進み、図37に示すルーチンが実行される。図37を参照して、ここでのイベントはドラッグなので、ステップ604で受信された、ドラッグ中のタップ位置を検出し、保存する(ステップ690)。ステップ690の後、タップ位置に応じた濃度スライドボタン356の位置を決定し、保存する(ステップ692)。さらに、強調モードで濃度設定スライダ352を再表示する(ステップ694)。ステップ694では、スライダバー354のうち、濃度スライドボタン356の位置より左側は太く、右側は細く表示する。スライダバー354の右側にはタップ位置に応じた香り強度を示す数字を表示する。さらにこの後、指定されたチャンネルの番号とドラッグ途中の香り強度とを含むコマンドを香りディスプレイ52に送信して制御をメインルーチンに戻す(ステップ696)。
このとき、図47を参照して、香りディスプレイ52の制御用プロセッサ314は、無線通信ユニット316を介してこのコマンドを受信し(ステップ1200)、コマンドから宛先の情報(チャンネル番号)を抽出し(ステップ1202)、さらにパラメータ(香り強度)を抽出して、制御用プロセッサ314の内部の記憶領域の、そのチャンネル番号に対応する記憶位置にその香り強度を保存する。この値はマイクロブロア群310の中の、対応するマイクロブロア(例えばマイクロブロア138)が稼働するときに、そのマイクロブロア138のドライバなどにより一定間隔で繰返し読出される。各ドライバは読出された値にしたがって、マイクロブロアの動作を制御する。したがって、マイクロブロアが動作中であれば、そのチャンネルの香りカートリッジから放出される香気の濃度がリアルタイムで変化する。マイクロブロアが動作中でなければ、香気は放出されないので変化はないが、マイクロブロアが動作を開始すると、保存された香り強度にしたがった濃度で香りが放出されることになる。これはシロッコファン120についても同様である。
ユーザが図18に示すスライダバー354の上のいずれかの位置をタップすると、タップイベントが発生する。この場合、図37のステップ680の判定により制御はステップ700に移動する。ステップ700では、タップされた位置を検出し保存する。続くステップ702では、タップされた位置に応じて濃度スライドボタン356の位置を決定し保存する。さらにステップ704で、通常モードで濃度設定スライダ352を再表示する。この場合も、指定されたチャンネルの番号とタップ位置により算出された香り強度とを含むコマンドを香りディスプレイ52に送信して制御をメインルーチンに戻す(ステップ696)。この結果、香りディスプレイ52では、このチャンネルに対応する香りカートリッジが香気を放出していれば、リアルタイムでその香気の強度が変化することになる。
ユーザがパネル型コンピュータ54の画面にタップした後、又はドラッグした後に、その指を画面から離すとタップの終了イベントが発生する。この場合、図37のステップ680での判定により制御はステップ710に移動する。ステップ710ではタップ終了位置を決定し、濃度スライドボタン356の表示位置を決定する。続いてステップ712で通常モードで濃度設定スライダ352を再表示する。ここでもまた、香りディスプレイ52にチャンネル情報と香り強度とが送信される。
再び図18を参照して、ユーザが領域外をタップすると、図35のステップ604で領域外タップのイベントが発生し、ステップ614が実行される。
図38を参照して、領域外がタップされたときは、ステップ730において、現在何らかのダイアログが表示中か否かを判定し、判定結果が否定のときには直ちにメインルーチンに制御を戻す。判定結果が肯定のときには、ステップ732において、表示中のダイアログがモーダルダイアログか否かを判定する。ステップ732の判定が否定のときには、ステップ734において表示中のダイアログを消去し、ダイアログ表示前の画面を復元して制御をメインルーチンに戻す。ステップ732の判定が肯定のときには、ステップ736でユーザに対して注意を促すための処理を行った後に制御をメインルーチンに戻す。
再び図18を参照して、ユーザが風力設定ボタン344をタップすると、図35に示すプログラムのステップ604において風力設定ボタンイベントが発生し、ステップ616が実行される。
すなわち、図39を参照して、ステップ616のステップ740では、風力設定ボタン344を強調表示する。続いてステップ742で、現在の風量をメモリ528(図34)から読出す。ステップ744において、読出された風量にしたがった位置にスライドボタン394(図23)を設定してポップアップスライダ390(図22)を表示し制御をメインルーチンに戻す。
このステップ744で実行されるルーチンでは、図40を参照して、ステップ760において、現在設定されている風量に対応した座標位置を計算し、その位置にスライドボタン394(図23を参照)が位置するようにポップアップスライダ390を表示する。さらに、ステップ762でイベントの発生を待機し、イベントが発生するとそのイベントの種類に応じて制御の流れを分岐させる。
ステップ762で受信するイベントの種類と、そのときに制御が分岐する先のステップ番号については既に述べたとおりである。以下、これらについて順番に説明する。
・スライドボタン394のドラッグ(ステップ770)
スライドボタン394のドラッグ時には、ステップ770でタップ位置を検出し、ステップ772において、検出されたタップ位置に応じた風量を算出しメモリ528に格納する。さらにステップ774では、ポップアップスライダ390をドラッグモードで表示する。この後にはステップ776で設定された風量を香りディスプレイ52に送信し、制御をステップ762に戻す。香りディスプレイ52においてシロッコファン120が動作中であれば、この操作によりシロッコファン120が発生する風量がリアルタイムで変化する。シロッコファン120が動作中でなければ、この操作の結果は直ちには香りディスプレイ52の動作には反映されないが、次にシロッコファン120が動作を開始するときには、更新後の風量でシロッコファン120が動作することになる。これは以下に説明する、他の場合でも同様である。
・スライダバー392へのタップ終了(ステップ780)
スライダバー392へのタップの終了イベントが発生したときには、図40のステップ780において、タップ終了時のタップ位置を検出する。ステップ782で、その位置に応じた風量を算出しメモリ528に保存する。つづくステップ784では、ステップ782において算出された位置により定まる位置にスライドボタン394が表示されるように通常モードでポップアップスライダ390を表示する。この後にはステップ776において、設定された風量を香りディスプレイ52に送信し、制御はステップ762に戻って次のイベントを待つ。この結果、ユーザがスライダバー392の上のいずれかの位置をタップすると、その位置に応じた風量にリアルタイムで香りディスプレイ52の中継基板102が発生する風量が変化する。
・スライドボタン394のドラッグ終了(ステップ790)
スライドボタン394のドラッグの終了イベントが発生すると、ステップ790においてドラッグ終了時のタップ位置が決定される。ステップ792では、通常モードでポップアップスライダ390が表示される。この後にはステップ776において、設定された風量を香りディスプレイ52に送信し、制御をステップ762に戻す。
・ポップアップスライダ390の外側領域のタップ(ステップ800)
ポップアップスライダ390の領域外がタップされた場合には、ステップ800でポップアップスライダ390を消去し、このルーチンの実行を終了して制御をメインルーチンに戻す。
したがって、ユーザが風力設定ボタン344をタップするとポップアップスライダ390が表示され、ユーザがスライドボタン394をスライドさせるか、スライダバー392の上の任意の位置をタップすることで風力を設定できる。ポップアップスライダ390の領域外をタップすれば風量の設定モードを終了させることができる。
−ランダム設定ボタン346−
図18に示すランダム設定ボタン346がタップされた場合には、図41に示すルーチンが実行される。すなわち、図41を参照して、ステップ840において、繰返し制御変数iの値を0から11までステップ1で変化させながら、各チャンネルに香り強度を乱数で設定する処理842を繰返し実行する。
処理842では、ステップ860において、変数iにより指定されるチャンネルに香りディスプレイ52が装填されているか否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させる。ステップ860の判定が肯定のときにはステップ862において、所定の範囲(例えば[0、1])で乱数を発生させる。続くステップ864において、発生された乱数に所定の定数(例えば100)を乗じることにより各チャンネルに対応する香りカートリッジから噴出される香りの強度を算出しメモリ528(図34)に記憶して処理842を終了する。
ステップ840の完了後、ステップ844において、各チャンネルについて設定された香り強度を用いてチャンネル濃度グラフ340の全チャンネルを表示する。さらにステップ846において、このようにランダムに設定された各チャンネルの香り強度を香りディスプレイ52に送信し、制御をメインルーチンに戻す。
この結果、12個のチャンネルの各々に対して、0から100の範囲でランダムな香りの強度が設定される。人間が手作業で香りを調合するのと比較して、より短時間に手軽に多くの種類の香りの構成を試すことができる。この処理により作成した香りパターンも、人手で作成したものと同様に扱うことができる。すなわち、これら香りパターンを賦香リストに登録することもできるし、さらに一部の香りの強度を変更して新たな香りパターンを生成し登録することもできる。
−全チャンネル100%設定ボタン348−
図18に示す全チャンネル100%設定ボタン348がタップされた場合には、パネル型コンピュータ54は以下のように動作する。図42を参照して、まず繰返し変数iを0に設定し、処理892を実行する。処理892では、ステップ900でそのチャンネル(チャンネル[0]=第1チャンネル)に香りカートリッジがあるか否かを判定する。香りカートリッジが装填されていることを想定すると、制御はステップ902に進む。ステップ902でチャンネル[0]の強度に100を代入し、処理892を終了する。繰返し変数iの値を0から11まで1ずつ変化させながら処理892を実行することで、チャンネル1から12のチャンネルのうち、香りカートリッジが装填されているチャンネルの全ての強度が100に設定される。
ステップ894で全チャンネルを設定された強度で表示する。さらに、ステップ896で、各チャンネルの香り強度を香りディスプレイ52に送信し、制御を図35のステップ604に戻す。
−新規作成ボタン360−
図18に示す新規作成ボタン360をユーザがタップすると、図35のステップ604における判定の結果、ステップ624が実行される。
図43を参照して、ステップ624では、まず図30に示す賦香名入力ダイアログ460が表示される。賦香名入力ダイアログ460で新たな香りパターンの名前をユーザが入力して「作成」をタップすると、賦香名入力ダイアログ460が閉じ、賦香名入力ダイアログ460からプログラムに対して、ユーザにより香りパターンの保存が指定されたことと、その名前とが通知される。図43を参照して、ステップ932では賦香名入力ダイアログ460からの通知がどのようなものか判定し、制御の流れを分岐させる。ここでは香りパターンを保存することが通知されているので、制御はステップ934に進む。
ステップ934では、画面に表示されている香りパターンが、賦香名入力ダイアログ460により通知された香りパターン名を持つファイル(又はDBのレコード)としてメモリ528(図34)に保存される。さらに、図31の追加された賦香名480により示すように、追加された賦香名480を含む賦香リスト358を表示し、制御を図35のステップ604に戻す。この結果、新規作成ボタン360をタップしたときに賦香名入力画面440に表示されていたチャンネル濃度グラフ482を実現する各チャンネルの香り強度の集合からなる香りパターンが、指定された名称でメモリ528に保存される。
なお、指定された名称が既に存在している場合にはエラーメッセージが表示され名称の再入力が促される。そのためのルーチンは通常実施されているものであるので、ここではその詳細は繰返さない。また図30に示す賦香名入力ダイアログ460で「キャンセル」がタップされたときには、賦香名入力ダイアログ460が消去され画面は元の画面に戻る。
−賦香リスト358−
賦香リスト358には、登録されている香りパターンの名称が列挙されている。これら、表示されている香りパターンの名称の各々は、賦香リストボタンと呼ばれる。ユーザが賦香リスト358に表示されている賦香リストボタンの中のいずれかをタップすると、図34に示すプロセッサ550がその賦香リストボタンに対応する香りパターンに関する情報をメモリ528から読出し、その香りパターンに応じたチャンネル濃度グラフ340を描画する。
具体的には、ユーザが賦香リストボタンを押すと、図35のステップ604の判定の結果、制御はステップ626に進む。
この場合、図44を参照して、ステップ626のステップ960では、指定された賦香リストに対応する香りパターンをメモリ528(図34)から読出す。続くステップ962において、何らかのエラーメッセージが表示されていたときにはエラーメッセージがクリアされる。さらに、ステップ964において、繰返し変数iの値を0から11まで1ずつ増加させながら、処理966が実行される。
変数i=0のときには、読出された香りパターンの配列中の香り識別子[0]が以下のように処理される。処理966のステップ980では、香り識別子[0]と一致する香り識別子を持つ香りカートリッジが香りディスプレイ52に装填されているか否かが判定される。この判定は、香りディスプレイ52のNFCチップ群312(図17)を構成するNFCチップ108などから受信した、各香りカートリッジの香り識別子とその装填位置とに関する情報に基づいて行われる。ここでは、対応する香りカートリッジが必ず香りディスプレイ52に装填されていると想定する。すると、ステップ980の判定は肯定となり、ステップ982において、そのカートリッジに対応するチャンネルの香り強度が、ステップ960で読出された香りパターンの中の香り強度[0]に設定される。
こうした処理が香り変数iの値が11になるまで繰返されることで、ステップ960で読出された香りパターンにしたがって全てのチャンネルの香り強度が設定されることになる。ステップ968で、このようにして設定された全てのチャンネルについて、香り強度に応じた大きさで扇形を表示する。その結果、例えば図25のチャンネル濃度グラフ340により示されるようなグラフが表示される。
仮にステップ980における判定が否定であるとき、すなわち読出された香りパターンの香り識別子が香りディスプレイ52に装填されている香りカートリッジの香りカートリッジのいずれとも一致しないときには、ステップ984でエラーメッセージが生成され、ステップ970で表示される。この結果、ユーザは香りカートリッジの一部を交換する必要のあることが分かる。
ステップ970の後、各チャンネルに設定された香り強度を香りディスプレイ52に送信して制御は図35のステップ604に戻る。
−ステップ628−
図31に示す編集ボタン362をユーザがタップすると、図45を参照して、ステップ990において、賦香リスト358の中に表示されている各香りパターン名の横に削除ボタン492が表示される。ステップ992で。編集ボタン362が編集完了ボタン490に変更される。続いてステップ994でイベントの発生待ちになる。
ユーザが特定の香りパターン(例えば追加された賦香名480)の右側の削除ボタン492をタップすると、ステップ994では削除ボタンタップのイベントが発生する。この場合、ステップ996で、タップされた削除ボタン492に対応する香りパターンが特定され、ステップ998でその香りパターンを削除するための賦香削除ダイアログ500(図33)が表示される。このダイアログでユーザが「はい」をタップすると、ダイアログは閉じ、プログラムに対して削除が指示されたことが通知される。ステップ1000での判定が肯定となり、ステップ1002において、指定された香りパターンがメモリ528(図34)から削除される。制御はステップ994に戻る。
なおこのとき、削除されるパターンをチャンネル濃度グラフ340に一旦表示した後、賦香削除ダイアログ500を表示しても良い。また削除後の画面では、チャンネル濃度グラフ340を空白にしてもよいし、直前の表示をそのまま残しておいてもよい。
−香りパターン作成のための典型的処理−
通常は、ユーザは、例えば図19に示すように空のチャンネル濃度グラフ340の状態から、図20に示すように各チャンネルについてグラフィカルに香り強度を設定していく。なお、このときにはユーザは、香りディスプレイ52に装填されている全ての香りカートリッジの香りに関する知識を得ているものとする。そのためには例えば、図19に示す画面で各香りカートリッジの香りの名称を画面に表示するようにしてもよい。 初期状態では、図13及び図15に示すような香りディスプレイ52のマイクロブロア138、及びシロッコファン120などは動作していない。そのため、ユーザが各チャンネルの香りを設定しても香りディスプレイ52の噴出する香りには変化はない。この場合、図18に示す噴射制御ボタン342は通常状態で表示されている。しかし、ユーザが噴射制御ボタン342をタップすると、図36のステップ604の判定の結果、ステップ630が実行され香りディスプレイ52からの香りの噴出が開始される。噴射制御ボタン342は強調状態の表示に変化する。香りディスプレイ52からの香りの噴出が一旦開始すると、次にユーザが各チャンネルの香りの強度を変更すると、そのたびに図35のステップ604の判定によりステップ612の処理が実行される。その結果、ユーザ操作が濃度スライドボタン356(図20)のドラッグであれば図37のステップ690、ステップ692、ステップ694及びステップ696が実行されて直ちにその変化が香りディスプレイ52から出力される香りに反映される。ユーザ操作がスライダバー354(図20)上のタップであれば、図37のステップ700、ステップ702、ステップ704、及びステップ696が実行される。その結果、この場合も直ちにその結果が香りディスプレイ52から噴出される香りに反映される。
ユーザが図23に示す矢印396をタップすると、図39に示す処理が実行され、図23に示すように現在の風力を反映したポップアップスライダ390が表示される。ユーザがスライドボタン394をスライドさせると、図40に示すステップ770、ステップ772、ステップ774及びステップ776が実行される。その結果、ユーザの設定した風力が香りディスプレイ52のシロッコファン120に直ちに反映される。ユーザがスライダバー392の点をタップすると、図40に示すステップ780、ステップ782、ステップ784及びステップ776の処理が実行され、この場合もユーザのタップした位置により定まる風力が直ちに香りディスプレイ52のシロッコファン120に反映される。
このようにして所望の香りパターンが完成すれば、ユーザは図18に示す新規作成ボタン360をタップしてその香りパターンをメモリ528に保存する。保存された香りパターンは、図31に示す追加された賦香名480のように賦香リスト358に表示される。賦香リスト358に表示された香りパターンは、その香りパターンボタンをタップすることでいつでもチャンネル濃度グラフ482に呼び出すことができる。
このように、香りパターンを変化させると、リアルタイムで香りディスプレイ52が噴出する香りにその変化が反映される。しかもその香りパターンは例えば図21に示されるように、視覚的に分かりやすい形でユーザに提示される。したがって、所望の香りパターンを効率よく開発できる。香りを手作業でブレンドして新たな香りを生成するという従来の作業と比較して、その効率ははるかに高い。また、開発した香りパターンはそのまま保存できる。香りパターンは、必要な香り識別子とその香りの強度、及び場合によってはシロッコファン120による風の強さという形で保存できる。したがって、異なる機械でも同じ香りディスプレイ52のセットさえあれば忠実に再現できる。その結果、開発された香りパターンを高い再現性で再現できるという効果もあるし、複数の香りディスプレイに効率的に配布できるという効果もある。
[変形例]
上記実施の形態では、香りを含まない空気流を生成するためにシロッコファンを用いている。シロッコファンは、速度制御が安定して行え、生成される空気流も大きいとい効果がある。さらにブラシレスモータを用いた場合には、騒音も小さく、香りディスプレイを使う場面を選ばないという効果もある。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば大きな空気流を生成するという目的のためにはプロペラファン、クロスフローファンなどを用いても良い。また、交流電源が使用できる場合には、交流モータを駆動源とするファンを採用してもよい。要するに、所望のタイミングで、所望の量の空気流を、所望の時間だけ生成できるように制御可能な風力源であり、かつ香りディスプレイ52の筐体内に収まるようなものであれば、どのようなものを用いても良い。
上記実施の形態では、図18に示すチャンネル濃度グラフ340のように、各チャンネルの香りの強度を円グラフ的な扇形グラフで表している。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されず、香りの強度を、チャンネルごとに表すことができるような表現方法であればどのような方法で香りパターンを表しても良い。例えば棒グラフ表示でもよいし、円グラフの角度を調整することで各香りパターンの強さの比率を表すようにしてもよい。棒グラフの場合には、香りの強度を横棒又は縦棒の長さであらわしてもよいし、長さと太さとの組合せで表してもよい。また上記実施の形態では、各香りの強度を濃度設定スライダ352を用いて指定している。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。特に棒グラフ的な表現を用いる場合には、個々のチャンネルの棒グラフをドラッグすることでそのチャンネルの香りの強度を指定するようにしてもよい。また単に香りの強さをチャンネルごとに数値で表し、何らかの手段でこの数値を入力することで香りの強さを設定するようにしてもよい。
また上記実施の形態では、基本的に図18に示すような画面を用いて様々な設定を行っている。しかしこの発明はそのような実施の形態には限定されない。画面上の各ボタンをタップするごとに、各ボタンの機能に応じた独自の画面に遷移するようにしてもよい。ただしこの場合にも、各チャンネルの香りの強さは何らかの形で画面上に表示しておくことが望ましい。
今回開示された実施の形態は単に例を示したものであって、この発明が上に記載した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。