上述したように、従来のシングルレバー混合水栓は、吐水位置が固定されているか、吐水位置を変更可能であっても変更できる範囲が限定的であった。このため、シンクの必要な個所に直接吐水させることができず、使用者は、特に皿洗いやシンク掃除の際にストレスを感じることがあった。すなわち、吐水位置が固定されている場合、皿洗いで多くの皿を水洗する際に皿を一つ一つ吐水口の下まで移動させる必要があり、皿を動かす回数が非常に多くなっていた。また、シンク掃除においては、被吐水部位が直線的に変化するように吐水位置を変えつつ吐水を行うとシンク内の異物等を効率的に掃き流すことが可能であるにも関わらずスパウトが固定されていたりスパウトが一定の回動軌道上しか移動できなかったりするため、思うように吐水位置を変えることができなかった。
このような吐水の掃引に関する不自由はシングルレバー混合水栓に限るものではなく、他の水栓であっても同様に存在する。むろん、引出式の吐水ヘッドを備える水栓装置であれば自由な掃引が可能であるが、引出式の吐水ヘッドを備える水栓装置は吐水ヘッドを着脱するための専用の構造を必要とし、引き出し長さに相当するホースを収容するためのスペースを水栓装置の内部に設ける必要がある。また、吐水ヘッドの引出構造を備えない既設の水栓装置については、水栓装置全体を引出式の吐水ヘッドを備える水栓装置に取り換える以外、吐水の掃引に係る不自由を解消する方策が無かった。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、引出式の吐水ヘッドを備えない水栓装置における吐水の掃引に係る自由度を向上させることを目的とする。
本発明の態様の1つは、操作部の操作に応じて吐水態様が切り替わる吐水装置であって、前記吐水態様の少なくとも1つにおいて、前記吐水態様を切り替えるための前記操作部に対する操作に連動して吐水方向が変化することを特徴とする吐水装置である。
このように構成した吐水装置では、操作部の操作に応じて切り替え可能な複数の吐水態様の少なくとも1つにおいて、操作部に対する操作に連動して吐水方向を変化させることができる。すなわち、スパウトを水栓本体部に対して回転させたり吐水ヘッドを引き出したりすることなく、操作部に対して操作を行うことによって吐水装置の吐水方向を変化させて吐水を掃引することが可能である。しかも、この吐水方向を変化させる操作は、吐水態様を切り替えるために操作部に対して行う操作と同じ操作であるため、例えば、操作部に対する一連の操作の中で、吐水態様の切り替え操作と同じ操作の流れの中で連続的に吐水方向を変化させることができる。
本発明の選択的な態様の1つは、前記吐水態様は、前記操作部に対する回動操作に応じて切り替わり、前記操作部の第1回動範囲では第1吐水態様で吐水し、前記操作部の第2回動範囲では前記第1吐水態様とは異なる第2吐水態様で吐水することを特徴とする吐水装置である。
このように構成した吐水装置では、吐水態様を切り替える操作が操作部に対する回動操作により構成されており、操作部を操作して第1回動範囲にしたときは吐水装置が第1吐水態様で吐水し、操作部を操作して第2回動範囲にしたときは吐水装置が第2吐水態様で吐水するようになっている。例えば、操作部の操作に連動して吐水方向が変化する吐水態様が第1吐水態様の場合は、第1回動範囲で操作部を操作したときに操作部の操作に連動して吐水方向が変化することになる。
本発明の選択的な態様の1つは、前記操作部に対する操作に連動して吐水方向が変化する吐水態様は、散水状に吐水する散水吐水であることを特徴とする吐水装置である。
このように構成された吐水装置では、散水吐水の吐水態様において、操作部に対する操作に連動して吐水方向が変化する。散水状に吐水する散水吐水は収束状に吐水するいわゆるストレート吐水に比べて吐水対象部位の面積が広いため、1回の掃引で水を浴びせられる被吐水面積が広くなり、掃引1回当たりの掃引効率を向上することができる。
本発明の選択的な態様の1つは、前記操作部の操作に連動して吐水方向が変化する吐水態様において、前記吐水方向の変化方向が前後方向であることを特徴とする吐水装置である。
このように構成された吐水装置では、シンクなどの被吐水領域において、利用者から離れたシンク奥方に配設される排水口に向けて、シンクの利用者に近い側から奥方の排水口に向けた吐水の掃引を行うことが可能になる。
本発明の選択的な態様の1つは、前記吐水方向の変化方向は、前記操作部の回動方向に沿う方向であることを特徴とする吐水装置である。
このように構成された吐水装置では、操作部の回動方向と吐水方向の変化方向とが一致しているため、利用者は吐水の掃引方向を直感的に把握して行うことができる。
本発明の選択的な態様の1つは、前記操作部の回動操作に連動して吐水方向が変化する吐水態様に係る吐水口は、前記操作部と一体化されており、前記操作部の回動操作に連動して前記操作部の回動方向に沿う方向に吐水方向が変化することを特徴とする吐水装置である。
このように構成された吐水装置では、吐水口と操作部とが一体化されているため、操作部の回動角と同じ角度だけ吐水方向が回動する。すなわち、操作部の回動操作に連動して操作部の回動方向に沿う方向に吐水方向が変化するため、操作部の回動方向と同じ方向に吐水方向が変化し、さらには操作部の回動量と吐水方向の変化量とが対応している。このため、利用者は吐水の掃引方向及び掃引距離を直感的に把握して行うことができる。
本発明の選択的な態様の1つは、前記操作部の回動操作に連動して吐水方向が変化する吐水態様に係る吐水口は、吐水方向の変化方向と略直交する方向に幅広に形成されていることを特徴とする吐水装置である。
このように構成された吐水装置では、吐水方向が変化する吐水態様において、吐水の掃引方向と略直交する方向の吐水幅が広くなるため、1回の掃引で水を浴びせられる面積が広くなり、掃引1回当たりの効率を向上することができる。
本発明の選択的な態様の1つは、収束状の第1吐水態様で吐水する第1吐水口と、散水状の第2吐水態様で吐水する第2吐水口と、を有し、前記第1吐水口を間に挟んで両側に前記第2吐水口がそれぞれ設けられていることを特徴とする吐水装置である。
このように構成された吐水装置では、吐水方向が変化する吐水態様において、吐水の掃引方向と略直交する方向の吐水幅が広くなるため、1回の掃引で水を浴びせられる面積が広くなり、掃引1回当たりの掃引効率を向上することができる。
本発明の選択的な態様の1つは、水栓装置の吐水口に接続するための接続口を有し、前記水栓装置から前記接続口を介して供給される水を、前記操作部の回動操作に応じて吐水態様を切り替えて吐水することを特徴とする吐水装置である。
このように構成された吐水装置では、他の水栓装置の吐水口に後付けで吐水装置を取り付けられるため、水栓装置本体を取り替えることなく、吐水の掃引を可能ならしめることができる。
なお、以上説明した吐水装置は、他の機器に組み込まれた状態で実施されたり他の方法とともに実施されたりする等の各種の態様を含む。
本発明によれば、操作部の操作に応じて切り替え可能な複数の吐水態様の少なくとも1つにおいて、操作部に対する操作に連動して吐水方向を変化させることができる。すなわち、スパウトを水栓本体部に対して回転させたり吐水ヘッドを引き出したりすることなく、操作部に対して操作を行うことによって吐水装置の吐水方向を変化させて吐水を掃引することが可能である。しかも、この吐水方向を変化させる操作は、吐水態様を切り替える操作と同じ操作部に対して行うものであるため、例えば、操作部に対する吐水態様の切り替え操作と同じ操作の流れの中で連続的に吐水方向を変化させる操作を行うことができる。これにより、引出式の吐水ヘッドを備えない水栓装置における吐水の掃引に係る自由度を向上させることができる。
また、本発明では、操作部の回動方向と吐水方向の変化方向とが一致しているため、利用者は吐水の掃引方向を直感的に把握して行うことができる。
請求項2に係る吐水装置では、吐水態様を切り替える操作が操作部に対する回動操作で構成されており、操作部を第1回動範囲に操作したときは吐水装置が第1吐水態様で吐水し、操作部を第2回動範囲に操作したときは吐水装置が第2吐水態様で吐水するようになっている。例えば、第1吐水態様が操作部の操作に連動して吐水方向が変化する吐水態様の場合は、第1回動範囲で操作部を操作すると、その操作部の操作に連動して吐水方向が変化することになる。
請求項3に係る吐水装置では、散水吐水の吐水態様において、操作部に対する操作に連動して吐水方向が変化する。散水状に吐水する散水吐水は収束状に吐水するいわゆるストレート吐水に比べて吐水対象部位の面積が広いため、1回の掃引で水を浴びせられる面積が広くなり、掃引1回当たりの効率を向上することができる。
請求項4に係る吐水装置では、シンクなどの被吐水領域において、利用者から離れたシンク奥方に配設される排水口に向けて、シンクの利用者に近い側から奥方の排水口に向けた吐水の掃引を行うことが可能になる。
請求項5に係る吐水装置では、吐水口と操作部とが一体化されているため、操作部の回動操作に連動して、その操作部の回動方向に沿う方向に吐水方向が変化するような吐水の掃引を行うことができる。すなわち、操作部の回動角と同じ角度だけ吐水方向が回動により変化することとなり、操作部の回動方向と吐水方向の変化方向とが一致し、さらには操作部の回動量と吐水方向の変化量とが対応しているため、利用者は吐水の掃引方向及び掃引距離を直感的に把握して行うことができる。
請求項6に係る吐水装置では、吐水方向が変化する吐水態様において、吐水の掃引方向と略直交する方向の吐水幅が広くなるため、1回の掃引で水を浴びせられる面積が広くなり、掃引1回当たりの効率を向上することができる。
請求項7に係る吐水装置では、吐水方向が変化する吐水態様において、吐水の掃引方向と略直交する方向の吐水幅が広くなるため、1回の掃引で水を浴びせられる面積が広くなり、掃引1回当たりの掃引効率を向上することができる。
請求項8に係る吐水装置では、他の水栓装置の吐水口に後付けで吐水装置を取り付けられるため、水栓装置本体を取り替えることなく吐水の掃引を可能ならしめることができる。
以下、図面を参照しつつ下記の順序に従って本発明の一実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る吐水装置1を備える水栓装置Sを示す図である。水栓装置Sはキッチンなどのカウンタの上面に設けられ、カウンタに設けられたシンクに対して水を吐出する。水栓装置Sのスパウトは、水を吐出する吐水口S1を有し、この吐水口S1から吐出される水がシンク内に吐出される。同図に示すように、吐水装置1は、接続口Cを水栓装置Sの吐水口S1に対して連結部材等を用いて連結される。むろん、吐水装置1は、水栓装置Sの一部として予め一体的に形成されていてもよい。
図2は吐水装置1の斜視図、図3は吐水装置1の底面図、図4は吐水装置1の分解斜視図(一部、部材の図示を省略)、図5は吐水装置1を左右方向に切断して斜視状に示した断面図、図6は吐水装置1を前後方向に切断して示した断面図であり、図7,図8は吐水装置における流路を説明する図であり、図9はハンドルの操作範囲を説明する図であり、図10はハンドルの操作範囲の変形例を説明する図であり、図11は係合部材の溝を説明する図である。
吐水装置1は、接続口Cの流入口2から流入する流体(例えば、湯、水等の液体。本実施形態では、「水」を例にとり説明する。)を、操作部3の操作に応じて行われる弁体4の切り替えにより、第1吐水口5と第2吐水口6,6のいずれか又は双方から吐出するように構成されている。第2吐水口6,6は、第1吐水口5を間に挟んで両側にそれぞれ設けられている。本実施形態において第1吐水口5は水を拡散させずに収束状に吐出するストレート吐水口の構成とし、第2吐水口6,6は水を拡散させて散水状に吐出するシャワー吐水口の構成とする。
弁体4は、第1弁体7と第2弁体8とを一体化した構成であり、第1弁体7は、流入口2と第1吐水口5の間に設けられて、流入口2から第1吐水口5へ流れる水の流量や流速を制御する弁体であり、第2弁体8は、流入口2と第2吐水口6,6との間に設けられて、流入口2から第2吐水口6,6へ流れる水の流量や流速を制御する弁体である。
第1弁体7の開弁中は、流入口2から流入した水の少なくとも一部が弁体4の第1弁体7を通過して第1吐水口5から吐出される。第2弁体8の開弁中は、流入口2から流入した水の少なくとも一部が弁体4の第2弁体8を通過して第2吐水口6,6から吐出される。一方、第1弁体7の閉弁中は第2弁体8が開弁することとなり、流入口2から流入した水が弁体4の第2弁体8を通過して第2吐水口6,6から吐出される。第2弁体8の閉弁中は第1弁体7が開弁することとなり、流入口2から流入した水が弁体4の第1弁体7を通過して第1吐水口5から吐出される。
弁体4は、固定部41と可動部42とを有している。固定部41は、吐水装置1の本体9に対して固定されており、可動部42は、操作部3に対して使用者が行う操作に応じて固定部41に対して相対的に移動する。
可動部42が固定部41に対して相対的に移動することにより、固定部41と可動部42の間の隙間を広げたり、固定部41と可動部42の間の隙間を狭くしたりする。より具体的には、可動部42が固定部41に対して方向Dbに移動したときは、流入口2と第1吐水口5の間の第1流路WP1の流路断面積が拡大するとともに流入口2と第2吐水口6,6との間の第2流路WP2の流路断面積が縮小し、逆に、可動部42が固定部41に対して方向Daに移動したときは、流入口2と第1吐水口5の間の第1流路WP1の流路断面積が縮小するとともに流入口2と第2吐水口6,6との間の第2流路WP2の流路断面積が拡大する。
本実施形態では、可動部42は、円筒筒状に形成され、円筒の内周に沿って環状に突出した環状リブ43を有する構成であり、固定部41は、可動部42の筒内に内挿されており、環状リブ43の内径よりも小径の軸部44と、環状リブ43と同軸状に形成されるとともに軸部44に対して一体的に形成された当接部45と、を有する構成としてある。当接部45は、環状リブ43よりも大径であって可動部42の円筒内周よりも小径に形成してある。この可動部42の円筒筒内を通って第1吐水口5に到る流路が上述した第1流路WP1を構成し、可動部42の円筒の端部と後述する仕切板95との隙間を通って第2吐水口6,6に到る流路が上述した第2流路WP2を構成する。
このため、可動部42が固定部41に対して方向Daに相対的に移動すると、環状リブ43と当接部45とが接近して流入口2と第1吐水口5の間の第1流路WP1の流路断面積が縮小し、可動部42の円筒の端部と後述する仕切板95とが離間して第2流路WP2の流路断面積が拡大する。逆に可動部42が固定部41に対して方向Dbに相対的に移動すると、環状リブ43と当接部45とが離間して流入口2と第1吐水口5の間の第1流路WP1の流路断面積が拡大し、可動部42の円筒の端部と後述する仕切板95とが接近して第2流路WP2の流路断面積が縮小する。
なお、当接部45と環状リブ43の当接部位には、当接部45と環状リブ43の少なくとも一方にゴム等の弾性体で形成されたパッキンを配設してある。これにより、環状リブ43と当接部45との間が水密に当接する。
以上説明した当接部45と環状リブ43は、本実施形態において上述した第1弁体7を構成しており、この第1弁体7は、当接部45と環状リブ43とが接近するほど開弁度合が小さくなり、当接部45と環状リブ43とが離間するほど開弁度合が大きくなる構造になっている。また、可動部42の筒開口の一方と仕切板95とは、本実施形態において上述した第2弁体8を構成しており、この第2弁体8は、可動部42と仕切板95とが接近するほど開弁度合が小さくなり、可動部42と仕切板95とが離間するほど開弁度合が大きくなる構造になっている。
次に、第1弁体7と第2弁体8の開弁/閉弁動作に係る構造を説明する。
可動部42は、本体9において流入口2から第1吐水口5へ連通する連通路91内に、連通路91の通路延在方向と可動部42の円筒の軸方向とが一致するように入れ子状に収容されている。連通路91の内壁92と可動部42の外壁46との間はOリング等の封止部材93,93で密封されている。このため、流入口2と第1吐水口5との間を流れる水は、可動部42の外壁と連通路91の内壁との間を流通せず、可動部42の筒内を流通する。可動部42は、その外壁46と連通路91の内壁92との間に封止部材93を挟持しつつ連通路91内をその通路延在方向に沿って摺動移動可能に構成されている。
可動部42の外壁46からは凸部47,47が突出しており、凸部47,47の先端は、連通路91の側面に形成された挿通孔94,94を通して連通路91の外側面に沿って配置されている係合部材10,10に設けられた係合溝11,11に受け入れられている。挿通孔94,94は、連通路91の通路延在方向に沿う方向に長い長穴形状に形成されており、凸部47,47の移動範囲を連通路91の通路延在方向に沿う長穴の範囲内に規制している。なお、本実施形態では、可動部42の円筒の軸と直交する方向に可動部42を貫通するように設けた棒状部材の可動部42の外壁46から突出する先端を凸部47,47としてある。
係合部材10,10は、操作部3に対する操作に応じて可動部42との対向面をその対向面に沿う方向に移動することで、係合溝11,11における凸部47,47先端の受け入れ位置を変動させる。
具体的には、係合部材10,10は、可動部42に対向する側の面10a,10aが円形の平坦面に形成されており、この面10a,10aに係合溝11,11が形成されている。面10a,10aは、操作部3に対する操作に連動して回転中心11X(図11参照)を軸にして回転することにより面10a,10aに沿う方向に移動して、係合溝11,11における凸部47,47先端の受け入れ位置を変動させる。なお、係合部材10,10は、面10a,10aの円の中心である回転中心11Xを本体9に対して軸支されている。
係合溝11,11は、短径部11Aと長径部11Bと、これら短径部11Aと長径部11Bとを滑らかに連結する連結部11Cとで構成されており、短径部11Aと長径部11Bとで面10a,10aの回転中心11Xからの距離が異なるように形成されている。すなわち、操作部3の操作による面10a,10aの回転に応じて、係合溝11,11における凸部47,47先端と、面10a,10aの回転中心11Xとの距離が変化する。このとき、可動部42は、上述した本体9に形成された挿通孔94,94によって、連通路91の通路延在方向以外の方向への移動を規制されており、係合部材10,10も面10a,10aの回転中心11Xを本体9に対して軸支されているため、可動部42は、凸部47,47先端の受け入れ位置から面10a,10aの回転中心11Xまでの距離に応じた位置に連通路91内を通路延在方向に沿って摺動移動することになる。
連通路91には、可動部42と流入口2との間で連通路91を仕切るように仕切板95が設けられている。仕切板95には流入口2から流入する水を可動部42側へ通過させるための孔95aが設けられている。このように、流入口2から流れ込む水を、仕切板95の孔を通して可動部42側へ流れるようにしてあるため、可動部42側へ送り込まれる水の流量を制限することができる。
可動部42は、連通路91内をその通路延在方向に沿って摺動移動することにより、可動部42の筒開口の一方を仕切板95に当接した状態にすることができる。
可動部42の筒開口の一方が仕切板95に当接した状態において、仕切板95の孔95aは、可動部42の筒内側に対向する位置に形成されている。このため、流入口2から流入して仕切板95の孔95aを通過した水は、可動部42の筒内に流入しやすく、特に使用中の吐水装置1において可動部42が略上下に配向するように配設される場合は、ほぼ確実に可動部42の筒内に流入する。
可動部42の仕切板95に当接する側の筒開口端部には、複数の切り欠きが櫛歯状に設けられている。この複数の切り欠きを櫛歯状に設けた部位からは筒外に水が漏出可能にしやすく、切り欠きの下端から上述した環状リブ43までの間には水が筒外に漏出しない。以下では、複数の切り欠きを櫛歯状に設けた部位を漏水部42aと呼び、切り欠きの下端から上述した環状リブ43までの部位を非漏水部42bと呼ぶことにする。
本実施形態においては、可動部42の一方の筒開口が仕切板95に当接するように可動部42を固定部41に対して相対的に移動させた状態では、当接部45と環状リブ43とが離間した状態、すなわち第1弁体7が開いた状態であり、可動部42の一方の筒開口が仕切板95から徐々に離間するように可動部42を固定部41に対して相対的に移動させるにつれて、当接部45と環状リブ43とが徐々に接近して第1弁体7が徐々に閉じていく構成としてある。
このため、可動部42の一方の筒開口を仕切板95に当接させた状態では、第1弁体7が開きつつ第2弁体8が閉じた状態となり、仕切板95の孔95aから可動部42の筒内に流入した水が、漏水部42aから漏れることなく非漏水部42bに滴下し、開いた状態の第1弁体7を通って第1吐水口5から吐出される。
一方、可動部42の一方の筒開口を仕切板95から離間させていくにつれて第1弁体7が徐々に閉じていくため、仕切板95の孔95aから可動部42の筒内に流入した水は徐々に第1弁体7を通過しにくくなる。第1弁体7を通過できない水は、第1弁体7と非漏水部42bとで囲われた空間に滞留していく。
このとき、第2弁体8は徐々に開いていき、上述したように漏水部42aが設けられていることもあり、非漏水部42bを越えて滞留する水は、漏水部42aから第2弁体8を通って第2吐水口6,6に至る流路へ流れ出す。
そして、第1弁体7が完全に閉じるのと相前後して非漏水部42bに貯水された水が漏水部42aから溢れる状態となり、仕切板95の孔95aから可動部42の筒内に流入した水はすべて可動部42の筒外に流れ出して第2弁体8を通って第2吐水口6,6に至る流路へ流れ出すことになる。
連通路91を構成する本体9には、本体9の側壁を内外に貫通する窓部96,96が形成されている。窓部96,96は、後述するシャワー室12,12に向けて開口している。窓部96,96の外には、上述した係合部材10,10の面10a,10aが位置しており、面10a,10aの窓部96,96に対向する部位には、面10a,10aの回転中心から一定半径の円上に複数の通水孔13が断続的に形成されている。第2弁体8を通って可動部42の筒外に流出した水は、窓部96,96及び面10a,10aの通水孔13を通ってシャワー室12,12に流入する。
係合部材10,10の面10a,10aと反対側の面には、空洞状のシャワー室12が設けられている。本実施形態では、シャワー室12,12は円筒筒状になっており、一方の開口を係合部材10,10の面10a,10aを構成する部材で閉塞され、他方の開口を部材14,14で閉塞されている。
シャワー室12,12の筒側面にはシャワー吐水用の吐水穴として複数の小径の孔で構成された散水穴群15,15が形成されている。散水穴群15,15は、シャワー室12,12の筒軸方向に広く筒周方向に狭く分布している。すなわち、散水穴群15,15は、吐水装置1の左右方向に幅広に形成されている。この散水穴群15,15が、上述した第2吐水口6,6を構成する。
シャワー室12,12は、係合部材10,10と一体的に構成されており、上述した面10a,10aの回転中心から面10a,10aに略垂直に伸びる筒軸を中心にして回転可能になっている。このため、シャワー室12,12は、係合部材10,10の係合溝11,11と凸部47,47との係合によって規定される回転可能範囲内において筒軸を中心に回転することができる。
シャワー室12,12の外側面16,16には、操作部3としてのハンドルが一体的に設けられており、操作部3を回動させる回動操作によってシャワー室12,12が筒軸を中心に回転するとともに係合部材10,10の面10a,10aが回転し、これにより係合溝11,11における凸部47,47の係合位置が変化して、凸部47,47と面10a,10aの回転中心との距離に応じた位置に、凸部47,47及び可動部42が連通路91内を摺動移動する。
操作部3は、吐水装置1を接続口Cを水栓装置Sの吐水口S1に連結させた使用状態において、そのハンドル部分がシャワー室12,12の外側面から使用者側に向けて筒軸から離間する方向に延設されている。操作部3は、図9に示すように、第1回動範囲R1では、第1吐水口5から第1吐水態様としてのストレート吐水で吐水し、第2回動範囲R2では、第2吐水口6,6から第2吐水態様としてのシャワー吐水(散水吐水)で吐水する。
なお、第1の操作範囲R1と第2の操作範囲R2とは互いに重複してもよく、例えば、図10に示すように、第1の操作範囲R1と第2の操作範囲R2とが重複する第3の操作範囲R3が設けられてもよい。この第3の操作範囲R3では、ストレート吐水とシャワー吐水とが並行して行なわれることになる。
散水穴群15,15は、吐水装置1を接続口Cを水栓装置Sの吐水口S1に連結させた使用状態において、シンク等の吐水エリアに対向する筒側面に設けられている。ここで、シャワー室12,12が操作部3に対するハンドル操作に応じて筒軸を中心に回転すると、その回転に応じて散水穴群15,15も一緒に回転することになる。すなわち、散水穴群15,15の吐水方向は、散水穴群15を幅広に分布形成した方向と略直交する方向に変化することになる。
これにより、散水穴群15,15から吐水される水の方向、すなわちシャワー吐水の方向がシャワー室12,12の筒軸を中心に変化することになる。このとき、操作部3に対する操作方向と、シャワー吐水の変化方向とは、シャワー室12,12の筒軸を中心とした回転方向が一致しているため、使用者はシャワー吐水の方向の調整を操作部3に対する直感的な操作で行うことができる。
本実施形態においては、係合溝11と操作部3の操作方向とは次のような関係になっている。図11には、図6中の左側の係合部材10の面10aにおける係合溝11の形成位置を模式的に示してある。なお、図6中の右側の係合部材10の面10aにおける係合溝11の形成位置は、図11とは左右対称に現れる。係合溝11は、回転中心11Xに近い半径上に形成された短径部11Aと、回転中心11Xから離れた半径上に形成された長径部11Bとを、連結部11Cで連結して構成されている。
このため、操作部3が最も高い位置に押し上げられた状態、すなわち操作部3を図7中に示す回転方向D1に最大限に回転させた状態において、係合溝11の短径部11Aに凸部47が位置する。このとき凸部47及び可動部42が最も上昇した状態になるため、固定部41と可動部42の間の隙間が最大化するとともに、可動部42の上端が仕切板95に当接するため、流入口2から流入する水は第1吐水口5に流れ、シャワー室12,12から第2吐水口6,6には流れない。
一方、操作部3が最も低い位置に押し下げられた状態、すなわち操作部3を図中に示す回転方向D2に最大限に回転させた状態において、係合溝11の長径部11Bに凸部47が位置する。このとき凸部47及び可動部42が最も降下した状態になるため、固定部41と可動部42の間の隙間が閉じるとともに、可動部42の上端が仕切板95から離間するため、流入口2から流入する水は第1吐水口5には流れず、シャワー室12,12から第2吐水口6,6に流れる。
むろん、操作部3の操作と係合溝11の短径部11A及び長径部11Bとの関係は適宜変更可能であり、操作部3を最も高い位置に押し上げた状態で係合溝11の長径部11Bに凸部47が位置し、操作部3を最も低い位置に押し下げた状態で係合溝11の短径部11Aに凸部47が位置する構成としてもよい。また、係合溝11の回転中心11Xからの距離のバリエーションは、短径部11Aと長径部11Bの2種類に限るものではなく、3種類以上の複数種類としても構わない。
以上説明した吐水装置1によれば、操作部3の操作に応じて弁体4の開閉状況が次のように変化する。まず、第1の操作範囲R1で操作部3が回転方向D2に移動するように操作すると、第1弁体7の開口面積が徐々に減少するとともに、第2弁体8の開口面積が徐々に増加する。一方、第1の操作範囲R1で操作部3が回転方向D1に移動するように操作すると、第1弁体7の開口面積が徐々に増加するとともに、第2弁体8の開口面積が徐々に減少する。
すなわち、第1の操作範囲R1で操作部3が回転方向D2に移動するように操作すると、第1吐水口5からの吐水量が徐々に減少するとともに、第2吐水口6,6からの吐水量が徐々に増加する。逆に、第1の操作範囲R1で操作部3が回転方向D1に移動するように操作すると、第1吐水口5からの吐水量が徐々に増加するとともに、第2吐水口6,6からの吐水量が徐々に減少する。
一方、操作部3が第2の操作範囲R2にある間は、第1弁体7は閉じた状態であり、第2弁体8は最大に開いた状態である。すなわち、第2の操作範囲R2で操作部3を回転方向D1,D2のいずれに移動するように操作しても、第1吐水口5からは吐水せず、第2吐水口6,6から一定の吐水量で吐水が継続する。
このように、第2の操作範囲R2にある間は、操作部3を操作しても第2吐水口6,6からの吐水量は変化しないが、第2吐水口6,6からの吐出方向が変化する。すなわち、操作部3が回転方向D1に移動するように操作すると、第2吐水口6,6からの吐出方向は、操作部3に対する操作量に応じた分だけ回転方向D1に変化し、操作部3が回転方向D2に移動するように操作すると、第2吐水口6,6からの吐出方向は、操作部3に対する操作量に応じた分だけ回転方向D2に変化する。
このように、操作部3の操作に応じてシャワー吐水とストレート吐水とを切り替え可能に構成しつつ、操作部3に対する操作に連動してシャワー吐水の吐水方向を変化させることができるため、スパウトを水栓本体部に対して回転させたり吐水ヘッドを引き出したりすることなく、操作部3に対して操作を行うことによって吐水装置1の吐水方向を変化させて吐水を掃引することが可能である。しかも、この吐水方向を変化させる操作は、シャワー吐水とストレート吐水とを切り替えるために操作部3に対して行う操作と同じ操作であるため、例えば、操作部3に対する一連の操作の中で連続的に吐水方向を変化させることができる。
また、シャワー吐水とストレート吐水とを切り替える操作が操作部3に対する回動操作により構成されており、操作部3を操作して第1回動範囲R1にしたときは第1吐水口5からストレート吐水を行い、操作部3を操作して第2回動範囲R2にしたときは第2吐水口6,6からシャワー吐水を行うようになっている。そして、シャワー吐水の場合は、第2回動範囲で操作部3を操作したときに操作部3の操作に連動して吐水方向が変化する。シャワー吐水は収束状に吐水するいわゆるストレート吐水に比べて吐水対象部位の面積が広いため、1回の掃引で水を浴びせられる被吐水部位の面積が広くなり、掃引1回当たりの掃引効率を向上することができる。
また、シャワー吐水における吐水方向の変化方向が前後方向であるため、シンクにおいて、利用者から離れた奥方に配設される排水口に向けて、利用者に近い側から奥方の排水口に向けた吐水の掃引を行うことが可能になる。
また、シャワー吐水における吐水方向の変化方向が操作部3の回動方向に沿う方向であるため、操作部3の回動方向と吐水方向の変化方向とが一致することとなり、利用者は吐水の掃引方向を直感的に把握して行うことができる。
また、シャワー吐水を行う第2吐水口6,6は、操作部3と一体化されており、操作部3の回動操作に連動して操作部3の回動方向に沿う方向に吐水方向が変化するため、操作部3を回動させたときに操作部3の回動角と同じ角度だけ吐水方向が回動する。すなわち、操作部3の回動方向と同じ方向に吐水方向が変化し、さらには操作部3の回動量に対応する量だけと吐水方向が変化する。このため、利用者は吐水の掃引方向及び掃引距離を直感的に把握して行うことができる。
また、シャワー吐水を行う第2吐水口6,6は、吐水方向の変化方向と略直交する方向に幅広に形成されており、シャワー吐水を掃引した際の吐水幅が広くなって1回の掃引で水を浴びせられる面積が広くなるため、掃引1回当たりの掃引効率を向上することができる。
また、第2吐水口6,6が第1吐水口5を間に挟んで両側に設けられており、シャワー吐水において掃引幅が広くなり、1回の掃引で水を浴びせられる面積が広くなるため、掃引1回当たりの掃引効率を向上することができる。
また、吐水装置1は、水栓装置Sの吐水口S1に接続するための接続口Cを有しており、水栓装置Sから接続口Cを介して供給される水を、操作部3の回動操作に応じて吐水態様を切り替えて吐水するものであり、水栓装置Sの吐水口S1に後付けで吐水装置1を取り付けられるため、水栓装置S本体を取り替えることなく、吐水の掃引を可能ならしめることができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。また,本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず,特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。