JP6732275B2 - バイオフィルム検出試薬キットおよびバイオフィルム検出方法 - Google Patents

バイオフィルム検出試薬キットおよびバイオフィルム検出方法 Download PDF

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Description

本出願は、2018年7月31日に出願された日本国特許出願第2018−144610号明細書、2018年8月23日に出願された日本国特許出願第2018−155979号明細書、及び2018年11月28日に出願された日本国特許出願第2018−222063号明細書(これらの開示全体が参照により本明細書中に援用される)に基づく優先権を主張する。本発明は、生組織におけるバイオフィルムの有無を検出するための方法、並びにそれに使用される試薬キットに関する。
褥瘡や糖尿病足潰瘍などの慢性創傷は外部からの細菌曝露を常に受けており、また宿主の免疫力が低下しているため、感染症を発症するリスクが極めて高い。近年、慢性創傷の病態に、細菌由来のバイオフィルムが関与していることが明らかになり、バイオフィルムの有無に対応して創傷管理するbiofilm-based wound managementが重要視されている。
バイオフィルムとは微生物が固着して形成されるコミュニティーであり、糖タンパク質、タンパク質、及び菌体外DNA などを主要な構成成分とする。バイオフィルムは、細菌のリザーバーとして存在し、集団を形成することで病原性を発現している。さらに、抗菌薬や宿主免疫の作用を回避することができるため、慢性炎症を引き起こし、非常に強固な感染源となる(非特許文献1参照)。従って、バイオフィルムが創底に存在する限り、治癒が見込めない。このため、2000年代後半より、biofilm-based wound therapyとして、バイオフィルムの有無によって創傷治療を選択する必要が提唱されている。具体的には、2014年に刊行された欧州、米国、環太平洋の褥瘡諮問委員会(EPUAP-NPUAP-PPPIA)が合同で公表した国際ガイドラインには、「Assessment and treatment of infection and biofilms」の項目が設けられ、その管理方法について解説されている。ここでは、創傷が4週間以上存在している、過去2週間治癒の徴候がみられない、炎症所見がある、抗菌薬抵抗性である、などの際はバイオフィルムの存在を疑うよう推奨している。しかし、バイオフィルムの存在の確定診断には組織生検と顕微鏡観察が必要であることから、臨床現場での実施は困難である(上記非特許文献1参照)。
このため、最近では、創面に存在する微量な成分を検出する方法である創面ブロッティングを応用し、バイオフィルムの構成成分である多糖成分を検出することにより創面上のバイオフィルムの分布を迅速に可視化する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜2、非特許文献2〜4)。
特許文献1には、バイオフィルムの細胞外マトリックスに存在する微量成分(ポリ−β−(1−6)−N−アセチル−D−グルコサミンやアルギン酸等のアニオン性の細菌外多糖類)を検出するリガンドを含むメンブレンを用いて、創面ブロッティングにより、創面上のバイオフィルムの分布を可視化する方法が記載されている。しかし、この方法は検出までに30分程度の時間を要するため、臨床現場、特にベッドサイドで実施する方法には適していない。特許文献2には、これを改善するため、バイオフィルムに特異的な検出リガンドを用いることなく、創面ブロッティングによりダイレクトにバイオフィルムを検出する方法が記載されている。具体的には、当該方法は、正に帯電させたメンブレン(例えばカチオン性ナイロン膜等)を創面に接触させる工程、創面から外した上記メンブレンをカチオン性染料(例えばルテニウムレッドやアルシアンブルー等)で染色する工程、及び染色したメンブレンを酢酸と1−2%の低級アルコールを含む水溶液で洗浄する工程を有し、これによりバイオフィルムに由来する負に帯電した微量成分をメンブレンに付着させた状態で染色することができるとされている。この方法によれば、特許文献1の方法と比較して検出時間を短縮できるものの、まだ十分ではなく、さらにメンブレンの洗浄溶液の成分として刺激臭のある酢酸を使用するため、ベッドサイドで実施する方法には適していない。
非特許文献2〜4には、創面を洗浄した後、該創面にニトロセルロースメンブレンを10秒間貼付し、次いでバイオフィルムに由来する多糖成分に特異的な染色液(ルテニウムレッドまたはアルシアンブルー)に浸漬することにより、バイオフィルムを可視化する方法が記載されている。この方法によれば、検出に要する時間は2分程度であり、ベッドサイドで簡便且つ短時間に、しかも非侵襲的にバイオフィルムが検出できるため、創傷部の清浄化の指標とすることができ、より適切な創部局所管理が可能になるとされている。
米国特許公報US9145574B2 米国特許公報US9927438B2
David J Leaper, et al., Extending the TIME concept: what have we learned in the past 10 years? International Wound Journal 2012,; 9 (Suppl.2): 1-19(関連箇所は特に6〜7頁) 仲上豪二朗ら、「バイオフィルムの可視化による創傷ケアの変革」、日本フットケア学会雑誌、2018:16(1);1−6頁 仲上豪二朗ら、「バイオフィルムを可視化する」、Visual Dermatology Vol.17,No.2,2018;156−159頁 仲上豪二朗、「ベッドサイドで実施可能なバイオフィルム検出技術を活用した新たな創傷ケア」、日本創傷治癒学会ニュース 2018.5;No.105
本発明は、生組織におけるバイオフィルムの有無を検出するための方法、並びにそれに使用する試薬キットを提供することを課題とする。より好ましくは、ベッドサイドで簡便且つ短時間に、しかも非侵襲的にバイオフィルムを検出するための方法及びそれに使用する試薬キットを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねていたところ、創面ブロッティングにより創傷部におけるバイオフィルムの有無を検出する方法として、創傷部に貼付したメンブレンをアニオン性以外の界面活性剤を含有する前処理液に浸漬処理した後に、染色処理及び洗浄処理(脱色処理)を行うことで、短時間にメンブレン上にバイオフィルムの存在を鮮明に可視化できることを確認した。さらに当該方法によると、前記バイオフィルム上の可視化が、脱色処理直後だけでなく、メンブレンが乾燥した後でも安定しており、さらにより鮮明になることを見出した。このため、本発明の創面ブロッティングによれば、創面におけるバイオフィルムの検出がベッドサイドで簡便に、また速やかに実施して確認できるだけでなく、その後の再確認、またその後に実施される創面におけるバイオフィルム除去の指標としても有効に使用することができる。
(I)バイオフィルム検出試薬キット
(I−1)被験組織におけるバイオフィルムの有無を検出するために用いられる試薬キットであって、当該試薬キットは:
(a)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する前処理液、
(b)染料を含有する染色液、及び
(c)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する脱色液
を備え、被験組織に接触させた後のメンブレンの当該接触面に、前記(a)前処理液、(b)染色液、及び(c)脱色液の順に接触させて用いられる、上記バイオフィルム検出用試薬キット。
(I−2)前記(a)前処理液、(b)染色液、及び(c)脱色液が、各々個別の容器、好ましくは開閉可能な蓋付き容器に収容されてなる、(I−1)に記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
(I−3)前記(a)前処理液および/または前記(c)脱色液に用いられる界面活性剤が、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム及び塩化ベンザルコニウムより選択されるカチオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びアルキルジメチルアミンオキサイドより選択される両性界面活性剤;またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及びポリグリセリン脂肪酸エステルより選択されるノニオン性界面活性剤である、(I−1)または(I−2)に記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
(I−4)前記(a)前処理液と(c)脱色液とが、同一組成からなる水溶液である(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
(I−5)さらに、被験組織に存在するバイオフィルムおよび/またはその成分を吸着することができるメンブレンを含有する、(I−1)〜(I−4)のいずれかに記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
(I−6)さらに、取扱説明書を含む(I−1)〜(I−5)のいずれかに記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
(I−7)さらに、浸漬容器、水切り部材、廃液容器、水切り部を有する容器、ピンセット、滅菌蒸留水、及び乾燥器から選択される少なくとも1種の補助器具を含む(I−1)〜(I−6)のいずれかに記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
(II)バイオフィルム検出方法
(II−1)下記の工程1〜4を有する、被験組織におけるバイオフィルムの有無を検出する方法:
(1)バイオフィルムおよび/またはその成分を吸着することができるメンブレンを被験組織に接触させる工程1、
(2)被験組織との接触から外したメンブレンの少なくとも被験組織との接触面を、(a)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する前処理液で処理する工程2(前処理工程)
(3)前記(a)前処理液で処理したメンブレンの少なくとも被験組織との接触面を(b)染料を含有する染色液で処理する工程3(染色処理工程)、及び
(4)前記(b)染色液で処理したメンブレンの少なくとも被験組織との接触面を(c)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する脱色液で処理する工程4(脱色工程)
(II−2)前記(a)前処理液および/または前記(c)脱色液に用いられる界面活性剤が、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム及び塩化ベンザルコニウムより選択されるカチオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びアルキルジメチルアミンオキサイドより選択される両性界面活性剤;またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及びポリグリセリン脂肪酸エステルより選択されるノニオン性界面活性剤である、(II−1)に記載するバイオフィルム有無の検出方法。
(II−3)前記(a)前処理液と(c)脱色液とが、同一組成からなる水溶液である(II−1)または(II−2)に記載するバイオフィルム有無の検出方法。
(II−4)()の工程2(前処理工程を2〜60秒間、好ましくは2〜30秒間、()の工程3(染色処理工程を5〜60秒間、好ましくは10〜30秒間、及び()の工程4(脱色工程を10〜120秒間、好ましくは10〜60秒間の時間配分で実施する(II−1)〜(II−3)のいずれかに記載するバイオフィルム有無の検出方法。
(II−5)被験組織が、臨床感染の徴候が見られる創傷部、難治性創傷部、または慢性創傷部(褥瘡、糖尿病性足潰瘍、下腿潰瘍)の生組織である、(II−1)〜(II−4)のいずれかに記載するバイオフィルム有無の検出方法。
(II−6)さらに、被験組織にバイオフィルムが存在するか否かを決定する工程5を有する(II−1)〜(II−5)のいずれかに記載するバイオフィルム有無の検出方法。
(II−7)前記工程5が、脱色液で処理したメンブレンの被験組織との接触面に、メンブレンの背景色に対してコントラストのある染料由来の着色(コントラスト像)が認められる場合に、被験組織にバイオフィルムが存在すると決定する工程である、(II−6)に記載するバイオフィルム有無の検出方法。
(II−8)前記工程2〜4を、下記(ア)〜(ウ)のいずれかの方法で実施することを特徴とする(II−1)〜(II−7)のいずれかに記載するバイオフィルム有無の検出方法:
(ア)工程1で得られたメンブレンを入れた浸漬容器に、前処理液、染色液及び脱色液を順次、入れ替えて前記工程2〜4を実施する方法、
(イ)工程1で得られたメンブレンを、前処理液、染色液及び脱色液をそれぞれ入れた浸漬容器に、順次、入れだしして前記工程2〜4を実施する方法、
(ウ)工程1で得られたメンブレンを、水切り部を有する容器の水切り部面上に載せ、前処理液、染色液及び脱色液を、順次、メンブレン全面に行き渡るように噴霧または滴下して前記工程2〜4を実施する方法。
発明の効果
本発明のバイオフィルム検出試薬キットまたは本発明のバイオフィルム検出法によれば、被験組織、特に生組織におけるバイオフィルムの存在を、非侵襲的にまた目視により迅速に、しかも明瞭に検出することができる。このため、本発明によれば、バイオフィルムの可視化検出を、診察時やベッドサイドで、簡便に短時間に実施することができる。その結果、その場で速やかにバイオフィルムを除去したり、治療方針を決定するなど、臨床現場での創傷管理が可能になる。特に、本発明のバイオフィルム検出試薬キットの好適な一態様には、アルシアンブルーを染料成分とする染色液を有するものが含まれる。当該染色液は、水溶液の状態で常温での長期保存性に優れているため、用時調製が不要な既調済み溶液の状態で、市場に流通させることが可能である。
本発明のバイオフィルム検出システムにおける、(1)工程2(前処理工程)、(2)工程3(染色工程)、及び(3)工程4(脱色工程)の一実施態様を示す概要図である。 本発明のバイオフィルム検出システムにおける、工程2(前処理工程)、工程3(染色工程)及び工程4(脱色工程)の、別の一実施態様を示す概要図である。 本発明のバイオフィルム検出システムにおける、(1)工程2(前処理工程)、(2)工程3(染色工程)、及び(3)工程4(脱色工程)の、さらに別の一実施態様を示す概要図である。 (1)及び(2)いずれも図3に示すバイオフィルム検出システムで使用する水切り部材(符号8)および廃液容器(符号9)の一態様を示す図である。 検証実験1で行った結果のうち、前処理液及び脱色液として、ノニオン性界面活性剤である(1)ポリソルベート80、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、及び(3)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル;両性界面活性剤である(7)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及び(8)ラウリルジメチルアミンオキシド;アニオン性界面活性剤である(11)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムをそれぞれ含む水溶液を用いて、バイオフィルム検出システムを実施した結果を示す。画像は、メンブレンの脱色直後と乾燥後の着色状態を示す。また、各画像に示されているスポットは、左側が2μL、右側が10μLのバイオフィルム懸濁液をそれぞれ滴下した箇所に対応する。 実験例2における、モデル創面(ブタ皮)を用いてブロッティングを行ったバイオフィルム検出システムにおいて、脱色処理後のブロッティングメンブレンの着色状態(脱色直後、乾燥後)を示した画像を示す。
1.用語の説明
バイオフィルムは、細胞外マトリックスに包まれた細菌からなる複合的微生物コミュニティーである。バイオフィルムの細胞外マトリックスには、ポリアニオン性の細胞外多糖類(例えば、ポリ−β−(1−6)−N−アセチル−D−グルコサミン、およびアルギン酸などの酸性ムコ多糖類)、タンパク質、細胞外DNA、脂質、および金属イオン(Ca、Mg、Feなど)などが含まれている。本明細書における「バイオフィルム成分」という用語には、バイオフィルム、およびその断片、並びにバイオフィルムの細胞外マトリックスを構成する成分のうち、特にバイオフィルムの細胞外マトリックスに特徴的なポリアニオン性の細胞外多糖類が含まれる。つまり「バイオフィルム成分」という用語は、特に言及しない限り、バイオフィルム、およびその断片、並びにバイオフィルムの細胞外マトリックスを構成する成分のうち、特にバイオフィルムに特徴的なポリアニオン性の細胞外多糖類を包含する総称として用いられる。
ブロッティングは、生体分子を、メンブレンに吸着させて固定する技術をいう。この目的で使用するメンブレンをブロッティングメンブレンという。創面とは創傷表面を意味し、創傷部のみならず、その周囲の皮膚表面を含む場合もある。創面ブロッティング(ウンドブロッティング)とは、前記ブロッティングを用いて、創傷表面を含む皮膚の不可視的な生理状態を非侵襲的に可視化する技術である。
本発明が対象とするバイオフィルム検出は、前記創面ブロッティングを応用したものである。基本的には、あらかじめ洗浄し、必要により水分を拭き取る等の前処置をした創傷部及びその周囲皮膚(創面)に対して、(A)ブロッティングメンブレンを付着し、メンブレン表面にバイオフィルム成分を採取する工程(バイオフィルム成分採取工程)、及び(B)創面から外したブロッティングメンブレンを染色処理する工程(染色工程)を有し、染色したブロッティングメンブレンの着色結果に基づいて、創面にバイオフィルムが存在するか否かを検出する技術である。
2.バイオフィルム検出試薬キット
本発明のバイオフィルム検出試薬キット(以下、単に「本試薬キット」とも称する)は、被験組織におけるバイオフィルムを検出するために用いられる試薬キットである。本試薬キットは、好適には創面ブロッティングを応用したバイオフィルム検出システムにおいてバイオフィルム検出用試薬として使用することができる。
なお、バイオフィルム検出システムとしては、制限されないものの、下記工程1〜5を有するものを例示することができる。バイオフィルム検出システムの詳細は後述するが、本試薬キットに含まれる前処理液、染色液、及び脱色液は、下記工程のうち工程2、3及び4においてそれぞれ用いることができる。これらの工程は、いずれも、工程1において創面に貼付してバイオフィルム成分を吸着させたブロッティングメンブレンを処理する工程である。
工程1:バイオフィルム成分採取工程
工程2:(ブロッティングメンブレンの)前処理工程
工程3:(同)染色工程
工程4:(同)脱色工程
工程5:バイオフィルム検出判定工程。
本試薬キットは、少なくとも下記の(a)前処理液、(b)染色液、及び(c)脱色液を、各々別個の容器に収容された状態で備えていることを特徴とする:
(a)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する前処理液、
(b)染料を含有する染色液、及び
(c)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する脱色液。
以下、前記バイオフィルム検出システムの工程2〜4との関係で、本試薬キットに含まれる各試薬について説明する。
(a)前処理液
前処理液は、工程1で得られたブロッティングメンブレンを処理するために用いられる試薬である。創面にバイオフィルムが存在している場合、工程1で得られたブロッティングメンブレンの創面接触表面にはバイオフィルムおよび/またはその成分(バイオフィルム成分)が吸着している。前処理液は、工程3(染色工程)に先立ち、工程2(前処理工程)において、前記ブロッティングメンブレンを処理するために使用される。染色処理に先だって当該前処理液による処理を行うことで、バイオフィルム成分が吸着していないブロッティングメンブレンの部分が染色されて染料が定着(着色)してしまうことで、バイオフィルム成分に起因した着色部とのコントラストが低下すること、つまり検出感度及び精度の低下を防ぐことができる。つまり前処理液による処理は、染料によるメンブレンへの非特異的着色を抑制するためのブロッキング処理に相当する。
当該前処理液は、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する水溶液として調製される。ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤は、本発明の効果を奏する限り、特に制限されない。好ましくはノニオン性界面活性剤である。
例えば、ノニオン性界面活性剤としては、炭素数10〜18の高級アルコールにエチレンオキシド(EO)が付加重合したポリオキシエチレン(POE)アルキルエーテル(例えば、POEラウリルエーテル等)、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールにEOが付加重合したポリオキシエチレン(POE)ポリオキシプロピレングリコール(例えば、POE(3)ポリオキシプロピレングリコール(17)等)、アルキルフェノールにEOが付加重合したポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル(例えば、POEノニルフェニルエーテル等)などのエーテル型界面活性剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えばポリソルベート20、40、60、65、80及び85等)などのエーテルエステル型界面活性剤;糖類(ぶどう糖等)を原料とするアルキルポリグリコシド;ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えば、モノカプリン酸デカグリセリル、モノラウリン酸ポリグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等)などのエステル型界面活性剤;などを挙げることができる。好ましくはPOEラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、POEポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、及びモノカプリン酸デカグリセリルを挙げることができる。より好ましくはPOEラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及びポリソルベート80である。
例えば、両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン(例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等)などのアルキルベタイン型の界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシド(例えば、ラウリルジメチルアミンオキシド等)などのアミンオキシド型の界面活性剤を例示することができる。
またカチオン性界面活性剤としては、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム(例えば、塩化ジデシルジメチルアンモニウム等)、及び炭素数8〜18の長鎖アルキル基を有する塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム塩型界面活性剤を例示することができる。
これらの界面活性剤は1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。比較的広い濃度範囲で安定した効果を発揮する点から好ましくはノニオン性界面活性剤であり、なかでも好ましくは、POEラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及びポリソルベート80で代表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。
前処理液は、これらの界面活性剤を、好ましくは水に溶解した水溶液の状態で使用される。ここで水は特に制限されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、精製水、及び滅菌水等を例示することができる。前処理液の界面活性剤の濃度としては、後述する検証実験1に示すように、0.001〜20質量%の範囲から適宜選択することができる。下限値として好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上を例示することができる。また上限値として好ましくは10質量%以下である。また、検証実験1に示すように、前処理液のpHは、その高低によって効果に大きな差がでることはなく、使用する界面活性剤の種類に応じてpH3〜12の範囲で種々のpHを有することができる。制限されないものの、好ましくはpH3〜8であり、より好ましくはpH4〜7を例示することができる。なお、前処理液には、本発明の効果を損なわないことを限度として防腐剤、殺菌剤、pH調整剤または安定剤等が配合されていてもよい。
(b)染色液
染色液は、前記工程2で処理したブロッティングメンブレンを染色するために使用される。創面にバイオフィルムが存在している場合、工程1で得られたブロッティングメンブレンの表面にはバイオフィルム成分が吸着しているが、当該染色液による染色処理により、バイオフィルム成分をブロッティングメンブレンに吸着した状態で染色することができる。
染料としては、バイオフィルムの細胞外マトリックスに存在するアニオン性の細胞外多糖類、特に酸性ムコ多糖類に選択的に結合し、染色されたバイオフィルム細胞外多糖類を肉眼で直接観察できるような彩度、色度及び色相を有するカチオン性の染料を挙げることができる。バイオフィルムの染色に従来より用いられている染料として、クリスタルバイオレッド、コンゴーレッド(以上、Karsten Pedersen, Applied and Environmental Microbiology, Jan. 1982, p.6-13;Bradford Craigen et al.,The Open Microbiology Journal, 2011, 5 21-31;森川正章、「バイオフィルムを調べてみよう」、生物工学第90巻、第5号、246-250頁、2012年等参照。)、ルテニウムレッド、およびアルシアンブルー(以上、非特許文献2〜4等参照)を例示することができる。好ましくはルテニウムレッド、およびアルシアンブルーであり、より好ましくは水溶液に調製した後の安定性からアルシアンブルーである。アルシアンブルーは、フタロシアニン系色素に属する塩基性の色素であり、官能基として正の性質を有するイソチオウロニウム基を有し、生体内の酸性ムコ物質のカルボキシル基(―COO-基)または/及び硫酸基(―SO 基)にイオン結合して、当該酸性ムコ物質を青色に染色することが知られている。これらの染料はいずれも商業的に入手することができる。
染色液は、前記染料を、好ましくは水に溶解した水溶液の状態で使用される。ここで水は特に制限されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、精製水、及び滅菌水等を例示することができる。染色液の染料濃度としては、後述する検証実験2に示すように、0.05〜1.2質量%の範囲から適宜選択することができる。下限値として好ましくは0.1質量%以上を例示することができる。また上限値として好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下を例示することができる。染色液のpHは、酢酸や塩酸などの酸で特に調整する必要はなく、染料を水に溶解した状態の例えばpH1〜5の範囲で用いることができる。制限されないが、好ましくはpH2〜5、より好ましくはpH2〜4.5を例示することができる。なお、染色液には、本発明の効果を損なわないことを限度として防腐剤、殺菌剤、pH調整剤または安定剤等が配合されていてもよい。
(c)脱色液
脱色液は、前記工程3で染色されたブロッティングメンブレンを脱色するために用いられる。当該脱色液による処理により、ブロッティングメンブレンに非特異的に付着した染料を脱離させることができる。これに対して、ブロッティングメンブレンに吸着したバイオフィルム成分に付着した染料は、バイオフィルム成分に特異的に吸着することで、当該脱色液による処理によっても脱離しないか、脱離したとしても僅かであり、染色状態を維持(着色)することができる。つまり、当該脱色液による脱色処理により、ブロッティングメンブレンのバイオフィルム成分非吸着部分に付着した染料は除去されて、当該メンブレン領域は淡色化する一方、ブロッティングメンブレンの表面に吸着されたバイオフィルム成分には染料が特異的に結合(イオン結合)して染色された状態が維持(着色)されるため、前記メンブレン背景色との対比でコントラストが形成され、当該コントラスト像によりブロッティングメンブレンに吸着されたバイオフィルム成分を明瞭に視覚化することができる。
脱色液は、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する。ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤は、本発明の効果を奏する限り、特に制限されないが、具体例としては、前述した前処理液と同じものを挙げることができる。このため前処理液に関する記載はここに援用することができる。
比較的広い濃度範囲で安定した効果を発揮する点から好ましくはノニオン性界面活性剤であり、なかでも好ましくは、POEラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、及びポリソルベート80で代表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルである。またこれらのノニオン性界面活性剤によれば、後述する検証実験1で示すように、脱色処理後、ブロッティングメンブレンが乾燥するにつれてメンブレンのバイオフィルム成分非吸着領域がより淡色化し、バイオフィルム成分による着色部位とのコントラストがより明瞭になり、検出感度及び精度が高くなるという効果が得られる。
脱色液は、これらの界面活性剤を、好ましくは水に溶解した水溶液の状態で使用される。ここで水は特に制限されず、水道水、蒸留水、イオン交換水、精製水、及び滅菌水等を例示することができる。脱色液の界面活性剤の濃度としては、後述する検証実験1に示すように、0.001〜20質量%の範囲から適宜選択することができる。下限値として好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上を例示することができる。また上限値として好ましくは10質量%以下である。また、検証実験1に示すように、脱色液のpHは、その高低によって効果に大きな差がでることはなく、使用する界面活性剤の種類に応じてpH3〜12の範囲で種々のpHを有することができる。制限されないものの、好ましくはpH3〜8であり、より好ましくはpH4〜7を例示することができる。なお、脱色液には、本発明の効果を損なわないことを限度として防腐剤、殺菌剤、pH調整剤または安定剤等が配合されていてもよい。
なお、脱色液として、好ましくは前述する前処理液と同じ組成からなる試薬を用いることができる。つまり、この場合、前処理液が脱色液を兼ね、一方、脱色液が前処理液を兼ねているということができる。
これら前処理液、染色液、及び脱色液は、各々個別の容器に収容された状態で本試薬キットの一部または全部を構成する。当該容器は、前処理液、染色液及び脱色液を、変質(変色を含む)や内部表面への吸着などがなく(仮にあっても少なく)、内部に収容した状態で安定に保管できる材質及び形状のものであればよく、その限りにおいて特に制限されるものではない。例えば素材としては、ガラス製、金属製(例えばアルミニウム製、ステンレス製、スチール製など)、プラスチック製(例えばポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリエチレンテレフタレート製、塩化ビニル製、ポリスチレン製、ABS樹脂製、アクリル製、ポリアミド製、ポリカーボネート製、四フッ化エチレン製等)などを制限なく例示することができる。また容器の形状も、例えば瓶形状、ボトル形状、パウチ形状またはチューブ形状など、特に制限されることなく任意に選択することができる。容器の大きさは、前処理液、染色液及び脱色液の1回あたりの使用容量、並びに試薬キットを1回限りの使用態様(使い捨て)にするのか複数回の使用態様にするのかによっても相違する。例えば、試薬キットが1回限りの使用態様(使い捨て)のものである場合、前処理液、染色液及び脱色液をそれぞれ収容する容器も、各試薬の1回あたりの使用量が収容できる容量であればよく、特に制限されない。例えば一例を挙げるとすれば、2〜20mL容量の範囲から適宜選択設定することができる。また試薬キットが複数回の使用態様のものである場合、前処理液、染色液及び脱色液をそれぞれ収容する容器の大きさもそれらの使用回数に応じて、適宜選択することができる。制限されないものの、一例を挙げるとすれば、100〜500mL容量の範囲から適宜選択設定することができる。なお、複数回の使用態様の場合は、特にこれらの容器は開閉可能な蓋を備えていることが好ましい。また複数回の使用態様の場合、容器には計量目盛がついていてもよいし、また定量ポーラーや定量ディスペンサーなどを備えた容器であってもよい。なお、前処理液と脱色液が同一組成からなるものである場合、本試薬キットは前処理液と脱色液とが同じ容器に収容されていてもよい。つまりこの場合、本試薬キットは、1つの容器に収容された「前処理液」兼「脱色液」と、1つの容器に収容された「染色液」を少なくとも有するように構成される。
本試薬キットは、基本のセットとして少なくとも前記前処理液、染色液、及び脱色液の3種類の試薬を有するものであればよいが、これらに加えて、さらにブロッティングメンブレンを含むものであってもよい。
(ブロッティングメンブレン)
当該ブロッティングメンブレンは、創面からバイオフィルム成分を採取するために用いられ、その後、前記各試薬による処理に供される。ブロッティングメンブレンは、表面の一方にバイオフィルムおよび/またはその成分(バイオフィルム成分)を吸着する素材からなるシート(メンブレン)であればよく、各種の繊維素材からなる多孔性シート(例えば不織布等を含む)を例示することができる。ブロッティングメンブレンは、そのままの乾燥状態、または必要に応じて滅菌水等にて濡らした状態で、バイオフィルムを検出する対象の創傷患部を含む皮膚表面(創面)に貼付し、数秒〜数十秒間程度、好ましくは10秒間程度そのまま放置した後に剥がすという態様で用いられる。こうすることで、創面にバイオフィルムが存在していれば、ブロッティングメンブレンの接触表面にバイオフィルム成分を吸着させて採取することができる。このため、ブロッティングメンブレンの繊維素材やその繊維構造は、上記ブロッティングによってバイオフィルム成分を吸着できるものであることが好ましい。より好ましくは、その後の前処理工程、染色工程、及び脱色工程によってもバイオフィルム成分を安定して吸着保持できる繊維素材及び繊維構造を有するものであり、さらに好ましくは、前処理工程後の染色工程においてメンブレンに非特異的に付着した染色液(染料)が、その後の脱色工程における脱色液により容易に脱着(脱落)するような繊維素材及び繊維構造を有するものである。
このような、繊維素材としては、制限はされないものの、例えば、後述する検証実験3に示すように、ニトロセルロース、セルロース混合エステル、及びセルロースアセテート等のセルロース系繊維;ナイロン(ノンチャージナイロン、ポジティブナイロンを含む);並びに親水性ポリテトラフルオロエチレン(親水性PVDF)、及び親水性ポリテトラフルオロエチレン(親水性PTFE)等の親水性フッ素樹脂系繊維を例示することができる。検証実験3の結果から、ブロッティングメンブレンはチャージの有無に関わらず使用できるものの、極性を有するもの、または親水性の高い繊維素材が好適に使用できることがわかる。
またブロッティングメンブレンの孔径としては、制限されないものの、0.1〜0.5μm、好ましくは0.2〜0.45μmを例示することができる。ブロッティングメンブレンの厚みも、特に制限されないものの、取り扱いの点から、0.05〜1mmの範囲、好ましくは0.05〜0.3mmの範囲から適宜選択することができる。
本試薬キットにおいて、ブロッティングメンブレンの形状は、特に制限されず、例えば用時に所望の形状及び大きさにカットして使用できるようにロール状を有していてもよいし、また予めカットされた形状(例えば矩形など)を有していてもよい。使用上の便利から、予めカットされていることが好ましい。カットされた大きさは特に制限されない。例えば、一例を挙げるとすれば、矩形の場合、縦3〜30cm、横3〜30cmの範囲から適宜選択することができる。ブロッティングメンブレンは、滅菌された状態で、1枚ずつまたは複数枚一緒に袋に包装されていても
よいし。また予め滅菌水などに浸潤された状態で気密性の袋に包装されていてもよい。
本試薬キットは、さらに取り扱い説明書、試験結果の評価方法(バイオフィルム検出の評価)、またはその後の(推奨)処置方法等を記載した書面を含んでいてもよい。またオプションとして、浸漬容器、水切り部材、廃液の受け皿(廃液容器)、水切り部を有する容器、ピンセット、滅菌蒸留水、またはドライヤーなどの乾燥器具などの、本試薬キットを用いるための補助器具を有するものであってもよい。なお、前記水切り部を有する容器は、水切り部材と廃液容器が一体になっているものであっても、また水切り部材と廃液容器が取り外し可能な状態で1対になったものであってもよい。また、水切り部を有する容器は、例えば水切り部面上に処理したメンブレンを載せた状態で放置したり持ち運ぶことができるように、蓋を有するものであってもよい。水切り部材、水切り部を有する容器、本試薬キットの取り扱い方法、ブロッティングメンブレンに視覚化された試験結果の評価方法、及びその結果に基づくその後の処置については、下記にて説明する。
本試薬キットは、被験組織として特にバイオフィルムの存在の可能性が懸念される創傷部、例えば臨床感染の徴候(炎症、滲出液増加、治癒遅延、膿瘍形成、創面の変色、肉芽組織形成、創の破綻、創底のポケット形成、悪臭など)がみられる創傷部や、難治性の創傷部、例えば褥瘡、下腿潰瘍や糖尿病性足部潰瘍などの慢性創傷における、バイオフィルムの検出に好適に用いることができる。また、急性創傷部(切創、擦過創、熱傷など)におけるバイオフィルムの検出にも使用することができる。本試薬キットは、その取り扱いの簡便性と結果判定の迅速性から、診察時またはベッドサイドでの包帯や絆創膏の交換時に用いることができ、その結果に基づいて、その場で処置したり、また治療計画を立てることも可能である。
3.バイオフィルム検出方法
本発明のバイオフィルム検出方法は、基本的には、前述する工程1(バイオフィルム成分採取工程)、工程2(ブロッティングメンブレンの前処理工程)、工程3(染色工程)、及び工程4(脱色工程)を有するものである。
必要に応じて、その後に工程5(バイオフィルム検出判定工程)を有するものであってもよい。
(1)工程1(バイオフィルム成分採取工程)
工程1は、バイオフィルム成分を吸着することができるメンブレンを被験組織に接触させる工程を有する。当該工程で使用されるメンブレンとしては、前記2の項で説明したブロッティングメンブレンを例示することができる。メンブレンは、被験組織に接触させる前に、事前に滅菌水などで湿潤させておくことが好ましい。こうしておくことで、メンブレンが接触することによる患部の痛みが緩和するとともに、メンブレンにバイオフィルム成分が付着及び吸着しやすくなる。
対象とする被験組織は、前述するようにバイオフィルムの存在の可能性が懸念される創傷部であり、例えば臨床感染の徴候(炎症、滲出液増加、治癒遅延、膿瘍形成、創面の変色、肉芽組織形成、創の破綻、創底のポケット形成、悪臭など)がみられる創傷部や、難治性の創傷部を好適に例示することができる。例えば褥瘡、下腿潰瘍および糖尿病足潰瘍などの慢性創傷は感染症を発症するリスクが極めて高いため、好適な被験組織になりえる。なお、バイオフィルムの存在の可能性が懸念されるのであれば、急性創傷部(切創、擦過創、熱傷など)であってもよい。被験組織は、メンブレンを接触させる前に、事前に蒸留水や生理食塩水などで洗浄するなど前処置をしておくことが好ましい。
メンブレンの被験組織への接触は、制限されないものの、メンブレンを被験組織の表面(創面)に貼付することで実施することができる。貼付時間は、制限されないものの、数秒〜数十秒間、例えば5秒間以上、好ましくは10秒間以上、特に好ましくは10秒間程度を例示することができる。なお、必要により、貼付時間中、創面上に貼付したメンブレン表面を軽く押さえて、被験組織に存在しえるバイオフィルム成分がメンブレンに付着ないし吸着しやすくしてもよい。当該接触後、メンブレンを被験組織から外すことで、メンブレンにバイオフィルム成分を採取することができる。つまり、工程1における操作により、被験組織から採取したバイオフィルム成分を表面に吸着したメンブレンを準備することができる。
(2)工程2(ブロッティングメンブレンの前処理工程)
工程2は、前記の工程1で得られた、バイオフィルム成分を表面に吸着したメンブレンを前処理液を用いて前処理する操作を有する。この工程により、メンブレンに染料が非特異的に付着し定着(着色)してしまうこと防止することができる。当該工程で使用される前処理液としては、前記2の項で説明した前処理液を例示することができる。
前処理液によるメンブレンの処理は、メンブレン全体に前処理液を接触させ、前処理液を滲みこませて濡らす処理(湿潤処理)であればよく、この限りにおいて、具体的な処理操作は特に制限されるものではない。一例を挙げると、図1(1)に示すように、工程1で被験組織から取り出したメンブレン(符号4)を容器(例えばトレー)(符号5)に入れ、その状態で容器(符号5)に前処理液(符号1)を入れてメンブレン全体を前処理液に浸漬して湿潤する方法や、図2に示すように、予め前処理液(符号1)を入れた容器(例えばトレー)(符号5)に前記メンブレン(符号4)を入れて前処理液に浸漬して湿潤する方法(以上、浸漬法)や、また工程1で被験組織から取り出したメンブレンに前処理液を噴霧または滴下して満遍なくいきわたらせて湿潤する方法(噴霧・滴下法)などを例示することができる。なお、噴霧・滴下法を採用する場合、図3(1)に示すように、メンブレン(符号4)は網などの開口部を有する部材(本発明では、これを「水切り部材」と称する)(符号8)の上に乗せた状態で実施することもできる。水切り部材は、その材質、形状及び大きさ等に特に制限されず、その上にメンブレンを広げた状態で配置することができ、またメンブレンに湿潤させた以上の過量の前処理液を通過させることのできる開口部(通液孔)を有するものであればよい。例えば、図3(1)で示す平板状物(シートまたはプレート状)のほか、灰汁取りや茶こし等のようにザル(半円形または中くぼみ形状の水切り容器)に取手のついたものや、粉ふるい器のようなものも、区別することなく使用することができる。また、その場合、図4(1)及び(2)に示すように、水切り部材(符号8)の下に通液した前処理液を入れる受け皿や容器(以下、これを「廃液容器」と称する)(符号9)を配置しておくことで、その中に前処理液を廃液として回収することができる。また水切り部材と廃液容器とが取り外し可能な状態で一対になっている水切り部を有する容器を用いることもできる。なお、水切り部材の開口部(通液孔)の形状や大きさも、上記目的が達成できるものであればよく特に制限されない。湿潤処理時間は、制限されないものの、室温条件下(25±5℃)条件下で、2〜60秒間の範囲を例示することができる。好ましくは2〜30秒間であり、より好ましくは2〜15秒間である。前処理液による湿潤処理後は、容器から前処理液を除去するか(図1(1)参照)、前処理液を入れた容器から処理したメンブレンを取り出すか(図2参照)、または水切り部材に配置したメンブレンはそのままに、過量の前処理液を水切り部材の開口部から自重により(必要に応じて水切り部材を傾けて)落下させ(図3(1))、廃液として廃液容器(符号9)内に回収する(図4参照)ことで、工程2を終了することができる。
工程2において、1回の湿潤処理に使用する前処理液の量は、上記湿潤処理が達成できる量であればよく、特に制限されるものではない。対象とする被験組織の大きさや使用するメンブレンの大きさによって相違するが、例えば、メンブレンが5cm×5cmの矩形状のシートである場合、2〜10mL/回の量を例示することができる。なお、湿潤処理の回数は制限されないものの、通常1回の処理で十分である。
(3)工程3(ブロッティングメンブレンの染色工程)
工程3は、前記の工程2で得られたメンブレン(前処理済みメンブレン)を染色する操作を有する。この工程により、メンブレンに吸着したバイオフィルム成分を、メンブレンに吸着した状態で染色することができる。当該工程で使用される染色液としては、前記2の項で説明した染色液を例示することができる。
染色液によるメンブレンの処理は、前処理液で前処理(湿潤処理)をしたメンブレンの少なくともバイオフィルム成分吸着箇所に染色液を接触させ、染色液を滲みこませて濡らす処理(湿潤処理)であればよく、この限りにおいて、具体的な処理操作は特に制限されるものではない。一例を挙げると、図1(2)に示すように、工程2で前処理液を除去したメンブレン入り容器(符号5)に、染色液(符号2)を入れてメンブレン(符号4)全体を当該染色液に浸漬して浸潤する方法や、図2に示すように、前処理液(符号1)を入れた容器(符号5)から取り出したメンブレンを、染色液(符号2)を入れた容器(符号5)に入れて当該染色液に浸漬して浸潤する方法(以上、浸漬法)や、また工程2で前処理したメンブレンに染色液を噴霧または滴下して湿潤する方法(噴霧・滴下法)などを例示することができる。なお、噴霧・滴下法を採用する場合、図3(2)に示すように、メンブレン(符号4)を、前処理工程と同様に(また前処理工程に連続して)、水切り部材(符号8)の上に乗せた状態で実施することもできる。またこの場合も、前処理工程と同様に(また前処理工程に連続して)、図4(1)及び(2)に示すように、水切り部材(符号8)の下に廃液容器(符号9)を配置しておくことで、その中に染色液を、前処理液同様に廃液として回収することができる。なお、本発明で使用する染色液は、前述する前処理液と混合しても発熱や反応性がないため、工程2で使用した廃液容器は中に前処理液を溜めた状態で、さらに染色液を廃液として溜めることができる。染色液による湿潤処理時間(染色時間)は、制限されないものの、室温条件下(25±5℃)条件下で、5〜60秒間の範囲を例示することができる。好ましくは10〜60秒間であり、より好ましくは10〜30秒間である。染色液による湿潤処理後(染色処理後)は、容器から染色液を除去するか(図1(2)参照)、染色液を入れた容器から処理したメンブレンを取り出すか(図2参照)、またはメンブレンはそのままに、過量の染色液を水切り部材の開口部から自重により(必要に応じて水切り部材を傾けて)落下させ(図3(2))、廃液として廃液容器内に回収する(図4参照))ことで、工程3を終了することができる。
工程3において、1回の湿潤処理(染色処理)に使用する染色液の量は、上記湿潤処理(染色処理)が達成できる量であればよく、特に制限されるものではない。対象とする被験組織の大きさや使用するメンブレンの大きさによって相違するが、例えば、メンブレンが5cm×5cmの矩形状のシートである場合、2〜10mL/回の量を例示することができる。なお、湿潤処理(染色処理)の回数は制限されないものの、通常1回の処理で十分である。
(4)工程4(ブロッティングメンブレンの脱色工程)
工程4は、前記の工程3で得られたメンブレン(染色処理済みメンブレン)を脱色する操作を有する。この工程により、メンブレンに吸着したバイオフィルム成分の着色は残った状態で、メンブレンに非特異的に付着した染料を脱着させることができる。これにより、バックグランドとなるメンブレンそのものの着色が低減(淡色化)する結果、メンブレンに吸着したバイオフィルム成分の存在がコントラスト像として浮き立たせることができるので目視により明確且つ容易に確認することが可能になる(バイオフィルムの視覚化)。当該工程で使用される脱色液としては、前記2の項で説明した脱色液を例示することができる。好ましくは工程2で使用した前処理液と同一組成からなる試薬を使用することができる。
脱色液によるメンブレンの処理は、染色液で湿潤処理(染色処理)をしたメンブレン領域に脱色液を接触させ、脱色液を滲みこませて濡らす処理(湿潤処理)であればよく、この限りにおいて、具体的な処理操作は特に制限されるものではない。一例を挙げると、図1(3)に示すように、工程3で染色液を除去したメンブレン入り容器(符号5)に、必要により容器を洗浄後、脱色液(符号3)を入れてメンブレン全体を当該脱色液に浸漬して湿潤する方法や、図2に示すように、染色液(符号2)を入れた容器(符号5)から取り出したメンブレンを、脱色液(符号3)を入れた容器(符号5)に入れて当該脱色液に浸漬して湿潤する方法(以上、浸漬法)や、工程3で染色処理したメンブレンに脱色液を噴霧または滴下して湿潤する方法(噴霧・滴下法)などを例示することができる。なお、噴霧・滴下法を採用する場合、図3(3)に示すように、メンブレン(符号4)は前処理工程や染色工程と同様に(また前処理工程及び染色工程に連続して)、水切り部材(符号8)の上に乗せた状態で実施することもできる。またこの場合も前処理工程や染色工程と同様に(また前処理工程及び染色工程に連続して)、図4(1)及び(2)に示すように、水切り部材(符号8)の下に廃液容器(符号9)を配置しておくことで、その中に脱色液を、前処理液及び染色液と同様に、廃液として回収することができる。なお、本発明で使用する脱色液は、前述する前処理液及び染色液と混合しても発熱や反応性がないため、工程2及び3で使用した廃液容器は中に前処理液及び染色液を溜めた状態で、さらに脱色液を廃液として溜めることができる。脱色液への湿潤処理時間(脱色時間)は、制限されないものの、室温条件下(25±5℃)条件下で、10〜120秒間の範囲を例示することができる。好ましくは10〜60秒間であり、より好ましくは10〜30秒間である。脱色液による湿潤処理(脱色処理)後は、容器から脱色液を除去するか(図1(3)参照)、脱色液を入れた容器から処理したメンブレンを取り出すか(図2参照)、またはメンブレンはそのままに、過量の脱色液を水切り部材の開口部から自重により(必要に応じて水切り部材を傾けて)落下させ(図3(3))、廃液として廃液容器内に回収する(図4参照)ことで、工程4を終了することができる。
工程4において、1回の湿潤処理(脱色処理)に使用する脱色液の量は、上記湿潤処理(脱色処理)が達成できる量であればよく、特に制限されるものではない。対象とする被験組織の大きさや使用するメンブレンの大きさによって相違するが、例えば、メンブレンが5cm×5cmの矩形状のシートである場合、2〜10mL/回の量を例示することができる。なお、湿潤処理(脱色処理)の回数は制限されないものの、通常1回の処理で十分である。
なお、上記工程1〜工程4の一連の操作は連続して行うこともできるが、本発明の効果が得られることを限度として非連続で行うことも可能である。工程1〜工程4の一連の操作を連続して行う場合、それに要する総所要時間は、前述する各工程の所要時間の総計であり、好ましくは2分以内を例示することができる。なお、工程1〜工程4を非連続で行う場合の例として、例えば、工程1で調製したメンブレンを工程2に供するまで保存しておいてもよいし、また工程2で前処理したメンブレンを、同様に工程3の染色工程に供されるまで保存しておいてもよい。
(5)工程5(バイオフィルム検出判定工程)
工程4により得られた脱色処理後のメンブレンの着色状態を目視することで、メンブレンに吸着したバイオフィルム成分の存在の有無を確認することができる。具体的には、工程4により得られたメンブレンの被験組織との接触面に、工程3で用いた染料による着色によってメンブレンの背景色(淡色)に対してコントラストの形成が認められる場合は、当該メンブレンにバイオフィルム成分が吸着しているとして、対象とした被験組織にバイオフィルムが存在していると決定することができる。一方、工程4により得られたメンブレンに、上記コントラストの形成が認められない場合は、当該メンブレンにはバイオフィルム成分が吸着していないとして、対象とした被験組織にバイオフィルムは存在していないと決定することができる。なお、当該視覚化による判断は、脱色処理直後に速やかに行うこともできるが、それに限らず、メンブレンが乾燥した後でも行うことができる。特に、前処理液及び脱色液をPOEラウリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、並びにポリソルベート80で代表されるポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルから選択される少なくとも1つのノニオン性界面活性剤を含む水溶液を用いて前処理及び脱色処理を行うことで、脱色処理後のメンブレンの乾燥により、メンブレンの背景色の淡色化がより顕著になるため、コントラストもより鮮明になり、バイオフィルム成分を浮き立たせて視覚化することができる。このため、脱色工程後、検出判定工程前に、メンブレンを乾燥する工程を有することもできる。
こうしたメンブレンにおける着色、正確にはメンブレンの背景色に対するコントラスト(コントラスト像)を指標としたバイオフィルム成分の検出、それに基づく被験組織におけるバイオフィルムの存在の決定(判定)は、前記工程1〜4の処理、または必要に応じてそれに引き続いて行う乾燥処理によって得られたメンブレンを用いて、簡便に行うことができる。このため、本発明のバイオフィルム検出方法、特に本発明の試薬キットを用いたバイオフィルム検出方法によれば、医師にかぎらず、誰でも容易に被験組織におけるバイオフィルムの存在の有無を判定することができる。本発明の試薬キットまたは検出方法を用いた被験組織のバイオフィルム検出判定(本発明のバイオフィルム検出システム)は、生組織におけるバイオフィルムの存在の確定診断に使用できるほか、従来より実施されている組織生検及び/又は顕微鏡観察の補助診断またはプレ診断に使用することができる。
なお、本発明の方法により、被験組織にバイオフィルムが存在していると判断された場合は、被験組織からバイオフィルムを除去し、また必要に応じて更にバイオフィルムが再形成されることを予防する処置を講ずることが好ましい。当該処置は、本発明のバイオフィルム検出方法の後に連続して実施してもよいし、処置方法の一つとして提案及び検討後に実施されてもよい。バイオフィルムの除去方法としては、制限されないが、従来の方法として物理的破壊(アグレッシブ/シャープデブリードマン)、及び物理的洗浄(洗浄または超音波処理)が例示される。また、バイオフィルムの再形成予防方法として、ドレッシング材(例えば銀ドレッシング材、ヨウ素ドレッシング材、PHMBドレッシング材、医療用蜂蜜ドレッシング材など)、局所広域抗菌剤、または界面活性剤を用いて、微生物を殺菌してさらなる創傷感染を予防する方法などを例示することができる(非特許文献1等参照)。
以上、本明細書において、「を含有する」または「を含む」という用語には、「からなる」及び「から実質的になる」の意味が包含される。
以下、本発明の構成及び効果を実験例に基づいて説明する。但し、当該実験例は本発明を説明するための例示であって、本発明はこれらの実験例によって制限されるものではない。なお、以下、特に言及しない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味するものとする。また、特に言及しない限り、実験は一定温度(25±2℃)及び湿度(35±15%)に調整された室内で、大気圧条件下で実施した。
実験例1 バイオフィルム検出システムの設計と検証
創面ブロッティングを応用して、下記工程1〜5からなるバイオフィルム検出システムを設計し、工程2で使用する前処理液、工程3で使用する染色液、工程4で使用する脱色液、及び工程1〜5で使用するブロッティングメンブレンを検証した。
工程1:バイオフィルム成分採取工程
工程2:(ブロッティングメンブレンの)前処理工程
工程3:(同)染色工程
工程4:(同)脱色工程
工程5:バイオフィルム検出判定工程
工程1:バイオフィルム採取工程(所要時間:約10秒間)
工程1は、ブロッティングメンブレンを創面に貼付して、創面に存在するバイオフィルム成分を当該メンブレンに吸着させる工程である。この工程により、創面にバイオフィルムが存在する場合はブロッティングメンブレンにバイオフィルム成分を採取することができる。
下記の検証実験1〜3では、ブロッティングメンブレンを創面に貼付してバイオフィルム成分を吸着する工程に代えて、下記方法で調製した緑膿菌のバイオフィルム懸濁液(107〜109 CFU/mL)を、予め滅菌水で濡らしておいたブロッティングメンブレン(5cm×5cmの矩形シート)の表面に滴下(2μL、10μL)することで、バイオフィルム成分をブロッティングメンブレンに吸着させた。なお、バイオフィルム懸濁液に用いたコロニー(菌体外物質を含む)は白金耳で採取して硬質(ガラス)表面に付着させ、0.1%クリスタルバイオレット水溶液を添加し、20分程度染色した後、水でゆるやかに2、3回洗浄して染色していることを確認した。
[緑膿菌及び黄色ブドウ球菌のバイオフィルム懸濁液の調製方法]
緑膿菌として、Pseudomonas aeruginosa PAO1株、ATCC15442、およびATCC27853を、また黄色ブドウ球菌として、Staphylococcus aureus ATCC29213をそれぞれ用いて評価した。各緑膿菌及び黄色ブドウ球菌は、トリプトソーヤブイヨン寒天培地上で37℃、48時間培養し、培養により生成したコロニー(菌体外物質を含む)を滅菌水で回収し、それぞれ10〜10CFU/mLずつになるように調整した。これらを以下の検証実験1〜3においてバイオフィルム懸濁液として使用した。
工程2:ブロッティングメンブレンの前処理工程(所要時間:2〜60秒間)
工程2は、バイオフィルム成分を吸着させた前記ブロッティングメンブレンを前処理液で処理する工程である。この工程により、バイオフィルム成分が吸着していないメンブレン部分への着色を防ぐことができる。
下記の検証実験1〜3では、まず、工程1で処理したブロッティングメンブレンを浸漬処理用の容器(7cm×7cm、高さ1cmのプレート状容器)に入れた。以下、本工程2、並びにその後の工程3及び4は、いずれも当該容器中で実施した。その概要を図1(1)に示す。具体的には、ブロッティングメンブレン(符号4)を入れた容器(符号5)に前処理液(符号1)を2〜10mL添加して、ブロッティングメンブレンを当該前処理液に30秒間浸漬し、その後、前処理液を容器から除去した(図1(1)参照)。また後述する実験例4(1)では、この工程2を図2に示す方法を用いて、また実験例4(2)では図3(1)に示す方法を用いて実施した。実験例4(1)では、具体的には、ブロッティングメンブレン(符号4)を、前処理液(符号1)を2〜10mL入れた容器(符号5)にいれて浸漬して湿潤し、その後、当該容器からメンブレンを取り出した(図2参照)。また実験例4(2)では、具体的には、ブロッティングメンブレン(符号4)を、水切り部材(符号8)の上に載せ、その上から前処理液(符号1)を2〜10mL、満遍なく噴霧するかまたは滴下してメンブレン全体に行き渡らせて(浸潤)、次いで、過量な前処理液を水切り部材(符号8)から通液させて(図3(1)参照)、廃液として水切り部材の下に配置した廃液容器内に回収した。
工程3:ブロッティングメンブレンの染色工程(所要時間:5〜60秒間)
工程3は、工程2において前処理液で処理した前記ブロッティングメンブレンを染色液で処理する工程である。この工程により、ブロッティングメンブレンを染色するとともに、ブロッティングメンブレンの表面に吸着したバイオフィルム成分も染色することができる。
下記の検証実験1〜3では、具体的には、工程2において前処理液(符号1)を除去した容器(符号5)に染色液(符号2)を2〜10mL添加して、当該染色液にブロッティングメンブレンを30秒間浸漬し、その後に染色液を容器から除去した(図1(2)参照)。また後述する実験例4(1)では、この工程3を図2に示す方法を用いて、また実験例4(2)では図3(2)に示す方法を用いて実施した。実験例4(1)では、具体的には、ブロッティングメンブレン(符号4)を、染色液(符号2)を2〜10mL入れた容器(符号5)にいれて浸漬して湿潤し、その後、当該容器からメンブレンを取り出した(図2参照)。実験例4(2)では、具体的には、ブロッティングメンブレン(符号4)を、水切り部材(符号8)の上に載せ、その上から染色液(符号2)を2〜10mL、満遍なく噴霧するかまたは滴下してメンブレン全体に行き渡らせて(浸潤)、次いで、過量な染色液を水切り部材(符号8)から通液させて(図3(2)参照)、廃液として水切り部材の下に配置した廃液容器内に回収した。
工程4:ブロッティングメンブレンの脱色工程(所要時間:10〜120秒間)
工程4は、工程3において染色液で処理した前記ブロッティングメンブレンを脱色液で処理する工程である。この工程により、前記工程3で染色処理したブロッティングメンブレンに非特異的に付着した染料を脱着させることができる。しかし、ブロッティングメンブレンに吸着したバイオフィルム成分に特異的に結合した染料は脱着せずにそのまま残るため(着色)、ブロッティングメンブレンに吸着したバイオフィルム成分の存在を目視により明確に確認することができる(バイオフィルム成分の視覚化)。
下記の検証実験1〜3では、具体的には、工程3において染色液(符号2)を除去した容器(符号5)に脱色液(符号3)を2〜20mL添加して、当該脱色液にブロッティングメンブレンを60秒間浸漬し、その後に脱色液を容器から除去した(図1(3)参照)。また後述する実験例4(1)では、この工程4を図2に示す方法を用いて、また実験例4(2)では図3(3)に示す方法を用いて実施した。実験例4(1)では、具体的には、ブロッティングメンブレン(符号4)を、脱色液(符号3)を2〜10mL入れた容器(符号5)にいれて浸漬して湿潤し、その後、当該容器からメンブレンを取り出した(図2参照)。実験例4(2)では、具体的には、ブロッティングメンブレン(符号4)を、水切り部材(符号8)の上に載せ、その上から脱色液(符号3)を2〜10mL、満遍なく噴霧するかまたは滴下してメンブレン全体に行き渡らせて(浸潤)、次いで、過量な脱色液を水切り部材(符号8)から通液させて(図3(2)参照)、廃液として水切り部材の下に配置した廃液容器内に回収した。
工程5:バイオフィルム検出判定工程
工程5は、工程4において脱色液で処理したブロッティングメンブレンの着色状況を目視で確認する工程である。この工程により、工程1においてブロッティングメンブレンを貼付した創面にバイオフィルムが存在するか否かを判定することができる。脱色液で処理したブロッティングメンブレンの創面との接触面が、染料によって着色し、メンブレンの背景色に対してコントラスト像が認められた場合(陽性検出)、創面にバイオフィルムが存在すると判定することができる。具体的には、創面にバイオフィルムが存在している場合は、ブロッティングメンブレンの創面との接触面にバイオフィルム成分が吸着するため、染色処理後の脱色処理によっても、当該吸着部分からは染料が脱着しない。このため、当該吸着部分は、染料が脱着したメンブレンの背景色(淡色)よりは明らかに濃い色で着色した状態になり、メンブレンの背景色(淡色)に対して濃い色のコントラストを形成することになる(コントラスト像)。
下記の検証実験では、ブロッティングメンブレン表面に滴下したバイオフィルム懸濁液の当該滴下箇所(2箇所)におけるコントラスト像の有無を評価した。
検証実験1 前処理液及び脱色液の検証
本検証実験1では、工程2(前処理工程)で使用する前処理液、及び工程4(脱色処理工程)で使用する脱色液として、表1に記載する界面活性剤を各種濃度(0.001〜20%)になるように希釈調製した水溶液を用いて、前記のバイオフィルム検出システム(前処理:30秒間、染色処理:30秒間、脱色処理:60秒間、合計2分間)を実施し、前処理液及び脱色液の実用性を検証した。本検証実験では、工程1で使用するブロッティングメンブレンとして、ポアサイズ0.2μmのニトロセルロース製メンブレン(商品名:サポート付ニトロセルロースメンブレン、Bio-Rad#1620097)を5cm×5cmの矩形にカットして使用した。また工程3(染色工程)で使用する染色液として、アルシアンブルー8GX(シグマ社A9186)を用いて調製した0.3%濃度のアルシアンブルー水溶液(pH4.0)を使用した。
1分間の脱色処理後、容器からブロッティングメンブレンを取り出して、着色状況(コントラスト像の有無)を目視で確認した。結果を表1及び2に合わせて示す。表1にはバイオフィルム懸濁液として緑膿菌PAO1株の懸濁液(109 CFU/mLを10μlブロット)を用いた結果、表2にはバイオフィルム懸濁液として緑膿菌ATCC15442、緑膿菌ATCC27853、及び黄色ブドウ球菌ATCC29213の各懸濁液(109 CFU/mLを10μlブロット)を用いた結果である。なお、表1及び表2に示す○△×の評価基準は下記の通りである。
[評価基準]
○:脱色直後に目視でコントラスト像が確認できる。
△:脱色直後には目視でコントラスト像は確認できないが、メンブレンが乾燥すると目視でコントラスト像が確認できる。
×:脱色直後もメンブレンが乾燥しても目視でコントラスト像が確認できない。
Figure 0006732275
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表1に示す結果のうち、界面活性剤として(1)ポリソルベート80、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、(3)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(以上、ノニオン性界面活性剤)、(7)ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、(8)ラウリルジメチルアミンオキシド(以上、両性界面活性剤)、または(11)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(アニオン性界面活性剤)を5%濃度で含有する水溶液を用いて、前処理および脱色処理を行ったブロッティングメンブレンの着色状態(脱色直後、乾燥後)を示した画像を、図5に示す。
表1及び表2に示すように、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤を0.001〜20%濃度で含む水溶液が、前処理液及び脱色液として有用であることが確認された。また、図5に示すように、ノニオン性界面活性剤または両性界面活性剤を含む水溶液を用いて前処理と脱色処理をすることで、脱色処理直後でも、バイオフィルムの存在をブロッティングメンブレン上に明瞭に視覚化することができ、その状態はブロッティングメンブレンが乾燥した後でも安定して維持されていた。中でも、ノニオン性界面活性剤、特に(1)ポリソルベート80、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテル、または(3)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを含む水溶液は、広範囲の濃度で安定した結果が得られることに加えて、ブロッティングメンブレンの乾燥が進むとメンブレンの背景(バックグラウンド)の青みや赤みが薄くなり(淡色化)、バイオフィル成分が吸着した着色部位とのコントラストがより一層明瞭になり、バイオフィルムの存在をブロッティングメンブレン上に顕著に視覚化できることが確認された。
なお、本検証実験1では、工程2、工程3及び工程4を連続して実施したが、工程1で前処理したブロッティングメンブレンを、室温条件下で1週間放置し乾燥させた後に、工程2以降の工程を実施し、染色及び脱色処理した場合も、バイオフィルムの存在をブロッティングメンブレン上に顕著に視覚化できることも確認した。
検証実験2 染色液の検証
本検証実験2では、工程3(染色工程)で使用する染色液として、表2に記載する染料(ルテニウムレッド、アルシアンブルー)を各種濃度(0.05〜1.2%)になるように希釈調製した水溶液を用いて、前記のバイオフィルム検出システム(前処理:30秒間、染色処理:30秒間、脱色処理:60秒間、合計2分間)を実施し、染色液の実用性を検証した。
なお、各染色液は下記の方法で調製した。なお、染色液は、作り置きせず、本検証実験を実施する直前に調製した。
(1)ルテニウムレッド水溶液
ルテニウムレッド粉末(カラーインデックス77800)を0.5%になるように水で溶解した。
(2)アルシアンブルー水溶液
アルシアンブルー粉末(カラーインデックス74240)を0.05%〜1.2%になるように水で溶解した。
本検証実験2では、工程1で使用するブロッティングメンブレンとして、ポアサイズ0.2μmのニトロセルロース製メンブレン(商品名:サポート付ニトロセルロースメンブレン、Bio-Rad#1620097)を5cm×5cmの矩形にカットして使用した。また工程2(前処理工程)で使用する前処理液及び工程4(脱色工程)で使用する脱色液として、5%濃度のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ブラウノンEL1509:青木油脂工業株式会社製)水溶液を使用した。
1分間の脱色処理後、容器からブロッティングメンブレンを取り出して、着色状況を目視で確認した。結果を表3及び表4に合わせて示す。表3にはバイオフィルム懸濁液として緑膿菌PAO1株の懸濁液(109 CFU/mLを10μlブロット)を用いた結果、表4にはバイオフィルム懸濁液として緑膿菌ATCC15442、緑膿菌ATCC27853、及び黄色ブドウ球菌ATCC29213の各懸濁液(109 CFU/mLを10μlブロット)を用いた結果を示す。各表に示す○△×の評価基準は検証実験1で用いた基準と同じである。なお、表3には、染色液を調製後、50℃で1か月保存した後に同検証実験を行った結果も併せて示す。
Figure 0006732275
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表3及び4に示すように、少なくとも0.5%濃度のルテニウムレッド水溶液、並びに0.05〜1.2%、好ましくは0.1〜1.2%濃度のアルシアンブルー水溶液は、本発明のバイオフィルム検出システムにおける染色液として有効に使用できることが確認された。また、アルシアンブルーは、ルテニウムレッドと異なり、水溶液の状態で保存安定性に優れていた。またルテニウムレッドおよびアルシアンブルーは、水溶液のpHを調整する必要なく、単に水に溶解するだけで染色液として安定して使用できることが確認された。
検証実験3 ブロッティングメンブレンの検証
本検証実験3では、工程1〜工程5を通じて使用するブロッティングメンブレンとして、表3に記載する各種の素材からなるメンブレンシートを用いて、前記のバイオフィルム検出システム(前処理:30秒間、染色処理:30秒間、脱色処理:60秒間、合計2分間)を実施し、ブロッティングメンブレンの実用性を検証した。なお、表3に記載するメンブレンのうち、PVDF(Amersham Hybond P)/親水性処理、PVDF(イミュン-ブロット)/親水性処理、及びPVDF(シーケブロット)/親水性処理は、それぞれ市販のPVDF(Amersham Hybond P)、PVDF(イミュン-ブロット)、及びPVDF(シーケブロット)を親水性処理して調製したものを使用した。親水性処理は市販メンブレンを95容量%のエタノールに10分間浸漬処理(親水性処理)し、自然乾燥することで行った(実際の使用に際しては、乾燥メンブレンを滅菌水にて濡らした後に工程1に供する)。工程2(前処理工程)で使用する前処理液及び工程4(脱色工程)で使用する脱色液として、5%濃度のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ブラウノンEL1509:青木油脂工業株式会社製)水溶液を、また工程3(染色工程)で使用する染色液として、0.3%濃度のアルシアンブルー(シグマ社A9186)水溶液(pH4.0)を使用した。
1分間の脱色処理後、容器からブロッティングメンブレンを取り出して、着色状況を目視で確認した。結果を表5及び表6に合わせて示す。表5に示す結果はバイオフィルム懸濁液として緑膿菌PAO1株の懸濁液(109 CFU/mLを10μlブロット)を用いた結果である。表6にはバイオフィルム懸濁液として緑膿菌ATCC15442、緑膿菌ATCC27853、及び黄色ブドウ球菌ATCC29213の各懸濁液(109 CFU/mLを10μlブロット)を用いた結果を示す。各表に示す○△×の評価基準は検証実験1で用いた基準と同じである。
Figure 0006732275
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表5及び6に示す結果から、創面ブロッティングを利用したバイオフィルムの検出(バイオフィルム検出システム)において、ブロティングメンブレンは、チャージの有無に関わらず使用できるものの、極性を有するもの、または親水性の高い繊維素材が好適に使用できることが判明した。
実験例2 バイオフィルム検出システムの検証
実験例1(検証実験1〜3)で確立したバイオフィルム検出システムを用いて、本発明のバイオフィルム検出方法の検出感度を評価した。具体的には、実験例1で用いた緑膿菌のバイオフィルム懸濁液に代えて、バイオフィルムの構成成分である酸性ムコ多糖の一種であるヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸を含む水溶液(0.1mg/mLヒアルロン酸ナトリウム、及び0.1mg/mLコンドロイチン硫酸ナトリウム含有水溶液)を用いて、工程2〜工程4(工程2の前処理:30秒間、工程3の染色処理:30秒間、工程4の脱色処理:60秒間、合計2分間)を実施した。工程2〜4で使用するブロッティングメンブレンとして、表7に記載する各種メンブレンを5cm×5cmの矩形にカットして使用した。また工程2(前処理工程)で使用する前処理液及び工程4(脱色工程)で使用する脱色液として、5%濃度のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ブラウノンEL1509:青木油脂工業株式会社製)水溶液を使用した。また工程3(染色工程)で使用する染色液として、表4に記載する0.3%濃度のアルシアンブルー水溶液を用いた。
1分間の脱色処理後、容器からブロッティングメンブレンを取り出して、着色状況を目視で確認した。結果を表7に合わせて示す。表7に示す評価基準は前記検証実験で用いた基準と同じである。
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上記の結果から、本発明のバイオフィルム検出方法によると、少なくともヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸をそれぞれ0.1mg/mL濃度で含むバイオフィルムを目視によって検出できることが確認された。
実験例3 バイオフィルム検出システムの検証
ブタの皮を用いて作製したモデル創面を用いて、実験例1(検証実験1〜3)で確立したバイオフィルム検出システムを検証した。
(1)モデル創面の調製
食用に屠殺されたブタから採取した皮膚の毛を除去した市販のブタ皮片(5cm×5cm)の表面中心に、各種菌液(緑膿菌PAO1、緑膿菌ATCC27853、黄色ブドウ球菌ATCC29213、これら3菌の混合液)10CFU/mLを200μLずつ滴下し、円状(直径1.5〜2cm)に塗り広げた。次いで、37℃で3日間培養して、バイオフィルムを有するモデル創面を作製した。
滅菌水で濡らしたメンブレン(サポート付きニトロセルロース:Bio-Rad、0.2μm)(5cm×5cm)を、上記で作製したモデル創面(ブタ皮)に10秒間貼付し(工程1:ブロッティング)、次いで剥がしたメンブレンを、実験例1と同様に、工程2〜4を実施した。工程2(前処理工程)で使用する前処理液及び工程4(脱色工程)で使用する脱色液として、5%濃度のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ブラウノンEL1509:青木油脂工業株式会社製)水溶液を使用した。また工程3(染色工程)で使用する染色液として、0.3%濃度のアルシアンブルー水溶液を用いた。
脱色処理後のブロッティングメンブレンの着色状態(脱色直後、乾燥後)を示した画像を、図6に示す。この実験からも、実験例1と同様に、創面のバイオフィルムの存在をブロッティングメンブレン上に明瞭に視覚化することができ、その状態はブロッティングメンブレンが乾燥した後でも安定して維持されることが確認された。実験例1と同様に、ブロッティングメンブレンの乾燥が進むとメンブレンの背景(バックグラウンド)の青みが薄くなり(淡色化)、バイオフィル成分が吸着した着色部位とのコントラストがより一層明瞭になり、バイオフィルムの存在をブロッティングメンブレン上に顕著に視覚化できることが確認された。
実験例4 バイオフィルム検出システムの検証
実験例4(1)及び(2)では、バイオフィルム検出システムとして、それぞれ図2及び図3に記載する各工程(前処理工程、染色工程、及び脱色工程)を各々処理時間を変えて実施し、バイオフィルムの反応性を検証した(表8及び9)。本実験例では、ブロッティングメンブレンとして、ポアサイズ0.2μmのニトロセルロース製メンブレン(商品名:サポート付ニトロセルロースメンブレン、Bio-Rad#1620097)を5cm×5cmの矩形にカットして使用した。工程1では、実験例1または実験例2と同様に、ブロッティングメンブレンを創面に貼付してバイオフィルム成分を吸着する工程に代えて、バイオフィルム懸濁液として緑膿菌PAO1株の懸濁液(109 CFU/mL)またはヒアルロン酸を含む水溶液(0.1mg/mLヒアルロン酸ナトリウム含有水溶液)を、予め滅菌水で濡らしておいた上記ブロッティングメンブレンの表面に滴下(10μL)することで、バイオフィルム成分をブロッティングメンブレンに吸着させた。工程2(前処理工程)で使用する前処理液及び工程4(脱色工程)で使用する脱色液として、5%濃度のポリオキシエチレンラウリルエーテル(ブラウノンEL1509:青木油脂工業株式会社製)水溶液を、また工程3(染色工程)で使用する染色液として、0.3%濃度のアルシアンブルー(シグマ社A9186)水溶液(pH4.0)を使用した。
工程4の脱色処理後、ブロッティングメンブレンの着色状況を目視で確認した。結果を表8及び9に合わせて示す。なお、表8及び9に示す○の評価基準は検証実験1で用いた基準と同じである。
Figure 0006732275
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表8〜9に示す結果から、創面ブロッティングを利用したバイオフィルムの検出方法(バイオフィルム検出システム)において、前処理工程は最短で2秒間、染色工程は最短で10秒間、脱色工程は最短で10秒間で処理を完了することができること、さらに前処理工程は少なくとも180秒間、染色工程は少なくとも300秒間、脱色工程は少なくとも600秒間まで時間を延長しても、反応結果に影響がないことが確認された。各工程で好ましい処理時間としては、制限されないものの、前処理工程:2〜60秒間、染色工程:10〜60秒間、脱色工程:10〜60秒間であった。臨床現場での使用を考えると、各工程の総時間が2分以内になるように、上記の範囲から各工程の処理時間を選択設定することが好ましい。
1.前処理液
2.染色液
3.脱色液
4.ブロッティングメンブレン
5.浸漬容器
6.前処理液、染色液または脱色液を収容する容器
7.ピンセット
8.水切り部材
9.廃液容器

Claims (15)

  1. 被験組織におけるバイオフィルムの有無を検出するために用いられる試薬キットであって、当該試薬キットは:
    (a)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する前処理液、
    (b)染料を含有する染色液、及び
    (c)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する脱色液
    を備え、被験組織に接触させた後のメンブレンの当該接触面に、前記(a)前処理液、(b)染色液、及び(c)脱色液の順に接触させて用いられる、上記バイオフィルム検出用試薬キット。
  2. 前記(a)前処理液と(c)脱色液とが、同一組成からなる水溶液である請求項1に記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
  3. 前記(a)前処理液および/または前記(c)脱色液に用いられる界面活性剤が、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム及び塩化ベンザルコニウムより選択されるカチオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びアルキルジメチルアミンオキサイドより選択される両性界面活性剤;またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及びポリグリセリン脂肪酸エステルより選択されるノニオン性界面活性剤である、請求項1または2に記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
  4. さらに、被験組織に存在するバイオフィルムおよび/またはその成分を吸着することができるメンブレンを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
  5. さらに、浸漬容器、水切り部材、廃液容器、水切り部を有する容器、ピンセット、滅菌蒸留水、及び乾燥器から選択される少なくとも1種の補助器具を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
  6. 前記(a)前処理液、(b)染色液、及び(c)脱色液が、各々個別の容器に収容されてなる、請求項1〜5のいずれかに記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
  7. さらに取扱説明書を含む、請求項1〜6のいずれかに記載するバイオフィルム検出用試薬キット。
  8. 下記の工程1〜4を有する、被験組織におけるバイオフィルムの有無を検出する方法:
    (1)バイオフィルムおよび/またはその成分を吸着することができるメンブレンを被験組織に接触させる工程1、
    (2)被験組織との接触から外したメンブレンの少なくとも被験組織との接触面を、(a)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する前処理液で処理する工程2、
    (3)前記(a)前処理液で処理したメンブレンの少なくとも被験組織との接触面を(b)染料を含有する染色液で処理する工程3、及び
    (4)前記(b)染色液で処理したメンブレンの少なくとも被験組織との接触面を(c)ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びカチオン性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の界面活性剤を含有する脱色液で処理する工程4。
  9. 前記(a)前処理液と(c)脱色液とが、同一組成からなる水溶液である、請求項8に記載するバイオフィルム有無の検出方法。
  10. 前記(a)前処理液および/または前記(c)脱色液に用いられる界面活性剤が、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム及び塩化ベンザルコニウムより選択されるカチオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、及びアルキルジメチルアミンオキサイドより選択される両性界面活性剤;またはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、及びポリグリセリン脂肪酸エステルより選択されるノニオン性界面活性剤である、請求項8または9に記載するバイオフィルム有無の検出方法。
  11. 前記(の工を2〜60秒間、前記(の工を5〜60秒間、及び前記(の工を10〜120秒間の時間配分で実施する、請求項8〜10のいずれかに記載するバイオフィルム有無の検出方法。
  12. 被験組織が、臨床感染の徴候が見られる創傷部、難治性創傷部、または慢性創傷部の生組織である、請求項8〜11のいずれかに記載するバイオフィルム有無の検出方法。
  13. さらに、被験組織にバイオフィルムが存在するか否かを決定する工程5を有する、請求項8〜12のいずれかに記載するバイオフィルム有無の検出方法。
  14. 前記工程5が、脱色液で処理したメンブレンの被験組織との接触面に、メンブレンの背景色に対してコントラストのある染料由来の着色が認められる場合に、被験組織にバイオフィルムが存在すると決定する工程である、請求項13に記載するバイオフィルム有無の検出方法。
  15. 前記工程2〜4を、下記(ア)〜(ウ)のいずれかの方法で実施することを特徴とする請求項8〜14のいずれかに記載するバイオフィルム有無の検出方法:
    (ア)工程1で得られたメンブレンを入れた浸漬容器に、前処理液、染色液及び脱色液を順次、入れ替えて前記工程2〜4を実施する方法、
    (イ)工程1で得られたメンブレンを、前処理液、染色液及び脱色液をそれぞれ入れた浸漬容器に、順次、入れだしして前記工程2〜4を実施する方法、
    (ウ)工程1で得られたメンブレンを、水切り部を有する容器の水切り部面上に載せ、前処理液、染色液及び脱色液を、順次、メンブレン全面に行き渡るように噴霧または滴下して前記工程2〜4を実施する方法。
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