以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る前部車体構造が適用された車両1の前部を示す。尚、以下の説明では、車両1についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。
車両1の前部には、車両1の前輪(図示省略)を駆動するエンジンユニットE(図9及び図10参照)及びトランスミッション(図示省略)を配設するためのエンジンルーム2が設けられている。エンジンユニットEは、該エンジンルーム2内に縦置きされており、上記トランスミッションはエンジンユニットEの後側に配設されている。エンジンユニットEは、該エンジンユニットEの左右両側側部に設けられたエンジンマウントを介して左右一対のフロントサイドフレーム5に連結されている。
左右一対のフロントサイドフレーム5は、上記エンジンルーム2の車幅方向両側の端部において、前後方向に延びるように配設されている。左右一対のフロントサイドフレーム5は、略矩形状の閉断面形状にそれぞれ形成されていて、上壁部5c(図3及び図7参照)及び下壁部5d(図7参照)と、上壁部5cの車幅方向内側の縁と下壁部5dの車幅方向内側の縁とを連結する内側側壁部5a(図5及び図7参照)と、上壁部5cの車幅方向外側の縁と下壁部5dの車幅方向外側の縁とを連結する外側側壁部5b(図3〜図5及び図8参照)と有している。以下の説明では、フロントサイドフレーム5の内側側壁部5aをフレーム内壁部5aといい、フロントサイドフレーム5の外側側壁部5bをフレーム外壁部5bといい、フロントサイドフレーム5の上壁部5cをフレーム上壁部5cといい、フロントサイドフレーム5の下壁部5dをフレーム下壁部5dという。
左右のフロントサイドフレーム5の後部は、その高さ位置が後側に向かって徐々に低くなるキック部5eとされており、このキック部5eと略同じ前後位置には、上記エンジンルーム2と車室とを区画するダッシュパネル9が設けられている。
上記ダッシュパネル9は、上下方向かつ車幅方向に延びており、ダッシュパネル9の上端部は、カウル部材10と結合されている。また、上記ダッシュパネル9の車幅方向両側の端部には、車両1の左右のフロントドア(図示省略)を回動可能に支持するためのフロントヒンジピラー11がそれぞれ固定されている。左右のフロントヒンジピラー11の上端部には、後側に向かって上方に延びるフロントピラー12の下端部がそれぞれ固定されている。
左右のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側には、サスペンションタワー13がそれぞれ設けられている。このサスペンションタワー13は、不図示のホイールハウスパネルと協働して、左右のフロントサイドフレーム5の車幅方向外側に、車両1の上記前輪が配置されるホイールハウスを形成する。左右のサスペンションタワー13の下端部は、左右のフロントサイドフレーム5にそれぞれ固定され、左右のサスペンションタワー13の上端部は、左右のフロントサイドフレーム5よりも上側に配設された左右のエプロンメンバ16にそれぞれ固定されている。
図示を省略しているが、サスペンションタワー13と略同じ前後位置には、左右の上記前輪を支持しかつ左右のフロントサイドフレーム5を連結するサスペンションクロスメンバが配設されている。該サスペンションクロスメンバの左右両側端部には、左右のフロントサイドフレーム5よりも下側の位置で前側に向かってそれぞれ延設された前方延設部が設けられており、上記左右の前方延設部の前側端部は、上下に延びる連結部材を介して、左右のフロントサイドフレーム5の前側端部とそれぞれ結合されている。左右の上記エンジンマウントは、その上側で左右のフロントサイドフレーム5にそれぞれ連結され、その下側で左右の上記前方延設部にそれぞれ連結されている。
左右のフロントサイドフレーム5の前側端には、クラッシュカン6がそれぞれ配設されている。具体的には、左右のフロントサイドフレーム5の前側端にはフランジ部7が、それぞれ対応するフロントサイドフレーム5と一体に設けられ、クラッシュカン6の後側端にはフランジ部6aが形成されている。これらフランジ部7,6a同士が互いに合わされた状態で、4つの締結部材8(ボルト及びナット)によって固定されている。
上記車両1の前側端部には、車幅方向に延びるバンパーレインフォースメント18が設けられている。上記左右のクラッシュカン6の前側端面が、それぞれバンパーレインフォースメント18の後面に固定されている。左右のクラッシュカン6は、バンパーレインフォースメント18が車両前突時の衝突荷重を受けたときに、前後方向に潰れることで、上記衝突荷重を吸収するように構成されている。
バンパーレインフォースメント18は、車幅方向両側の端部が車幅方向中央部よりも後側に位置するように、上から見てアーチ状に湾曲した形状をなしている。本実施形態のバンパーレインフォースメント18の車幅方向両側の端部は、左右のフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側に位置している。詳しくは後述するが、バンパーレインフォースメント18の車幅方向の長さは、車両1の前面におけるフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側の部分と障害物とが衝突する、いわゆるスモールオーバーラップ衝突(以下、SOL衝突という)が発生したときに、該SOL衝突が発生した側において、バンパーレインフォースメント18におけるフロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側に延びた部分(以下、バンパー外側部18aという)が、後述する第1のブレース30の補強部40に当接するような長さに設定されている。
上記左右のエプロンメンバ16は、左右のフロントサイドフレーム5と略平行に前後方向に延びるエプロン延設部16aと、エプロン延設部16aの前側端から前側に向かって車幅方向内側に湾曲されたエプロン湾曲部16bとをそれぞれ有している。左右のエプロン延設部16aの後側端部は、左右のフロントヒンジピラー11の前部とそれぞれ接合されている。
左右のエプロン湾曲部16bの前側端部(車幅方向内側を向いている)は、車幅方向に延びるシュラウドアッパメンバ19の車幅方向両側の端部に、それぞれ2つの締結部材20を介して締結固定されている。つまり、左右のエプロンメンバ16の前側端部(エプロン湾曲部16bの前側端部)同士は、不図示のラジエータを支持する矩形枠状のシュラウドの上側部分を構成するシュラウドアッパメンバ19によって連結されている。
本実施形態では、左右のフロントサイドフレーム5のフランジ部7の後側には、フレーム外壁部5bとエプロンメンバ16とを、左側同士及び右側同士でそれぞれ連結させる第1のブレース30と、左右のフロントサイドフレーム5とシュラウドアッパメンバ19とを連結させる第2のブレース60とがそれぞれ設けられている。
以下、フロントサイドフレーム5における、フランジ部7の後側の部分の構成について、図2〜図8を参照しながら詳細に説明する。尚、本実施形態に係る車体前部構造は左右対称(車両1の車幅方向中央を通る平面に対して対称)に構成されているため、以下の上記構成の説明では、左側のフロントサイドフレームについてのみ説明し、右側のフロントサイドフレーム5については詳細な説明を省略する。また、以下の上記構成の説明では、左右両方に設けられている部材(フロントサイドフレーム5等)については、左側に設けられているものを指す。
上記第1のブレース30は、フロントサイドフレーム5と略同じ高さ範囲において、フロントサイドフレーム5に結合されかつフレーム外壁部5bよりも左側(車幅方向外側)に突出した補強部40と、該補強部40におけるフレーム外壁部5bよりも左側に突出した部分の上端縁部を、左側のエプロンメンバ16と連結させる延設部50とを有している。本実施形態では、補強部40が、フロントサイドフレーム5に、該フロントサイドフレーム5よりも車幅方向外側(つまりフレーム外壁部5bよりも車幅方向外側)に突出するように設けられた突出部に相当する。
補強部40は、図3に示すように、フレーム外壁部5bよりも左側に突出するようにそれぞれ水平に延びかつ上下に相対向する上面部43及び下面部44と、上面部43の周縁部におけるフレーム外壁部5cよりも左側に突出した部分と下面部44の周縁部におけるフレーム外壁部5cよりも左側に突出した部分とを連結させる連結部とを備えている。上面部43及び下面部44は、それぞれ板部材で構成されている。
上記上面部43及び下面部44における、フレーム外壁部5bよりも車幅方向外側に突出した部分である外側部43a,44aは、どちらも平面視略矩形状をなしており、それぞれ、後側の縁部が平面視で右側(車幅方向内側)に向かって後側に傾斜している。上記外側部43a,44aには、図3及び図5に示すように、該外側部43a,44aの左側かつ前側の角部近傍から右側かつ後側に向かって後面部46の車幅方向内側の端部近傍にまで、外側部43a,44aの対角線に沿って延びるビード43b,44bがそれぞれ形成されている(図5ではビード44bのみ示す)。外側部43aのビード43bは下向きに突出し、外側部44aのビード44bは上向きに突出している。尚、ビード43a,44aの突出の向きは、上下いずれの向きであってもよい。また、両外側部43a,44aのうち外側部43aのみにビード43bが形成されていてもよく、外側部44aのみにビード44bが形成されていてもよい。
上面部43における外側部43aの右側に位置する基端部43cは、フレーム上壁部5cの上側に重ねられた状態でフレーム上壁部5cと溶接により一体的に接合固定されている。また、下面部44における外側部44aの右側に位置する基端部44cは、フレーム下壁部5dの下側に重ねられた状態でフレーム下壁部5dと溶接により一体的に接合固定されている。尚、フレーム上壁部5cにおける基端部43cが重ねられた部分の一部が切り欠かれていてもよく、同様に、フレーム下壁部5dにおける基端部44cが重ねられた部分の一部が切り欠かれていてもよい。
また、上面部43及び下面部44の周縁におけるフレーム外壁部5bよりも車幅方向外側に位置する部分、つまり、上面部43の外側部43a及び下面部44の外側部44aの前後方向両側縁及び左側側縁には、上面部43及び下面部44を上記連結部(後述の前面部45、後面部46及び側面部47)に溶接接合するための溶接代43d,44dがそれぞれ形成されている。
上記連結部は、図2〜図4に示すように、上下方向かつ車幅方向に延びる前面部45と、前面部45に対して後側に離れて位置する後面部46と、前面部45及び後面部46の車幅方向外側(左側)の端部同士を連結する側面部47とで構成されている。後面部46は、上下方向に延びるとともに、車幅方向内側ほど後側に位置するように、車幅方向に対して傾斜した方向に延びている。後面部46及び側面部47は、1つの板部材で構成され、前面部45は、該板部材とは別の板部材で構成されている。尚、前面部45、後面部46及び側面部47の全てが、1つの板部材で構成されていてもよい。
上面部43の外側部43aの前側縁部及び下面部44の外側部44aの前側縁部が、前面部45の上下両端部にそれぞれ溶接接合されることで、前面部45は、外側部43a,44aの前側縁部同士を連結することになる。上面部43の外側部43aの後側縁部及び下面部44の外側部44aの後側縁部が、後面部46の上下両端部にそれぞれ溶接接合されることで、後面部46は、外側部43a,44aの後側縁部同士を連結することになる。上面部43の外側部43aの左側縁部及び下面部44の外側部44aの左側縁部が、側面部47の上下両端部にそれぞれ溶接接合されることで、側面部47は、外側部43a,44aの左側縁部同士を連結することになる。
前面部45の右側端部は、フランジ部7の左側端部に溶接により接合固定されている。上記側面部47の前側端には、左側に延びる前側結合フランジ47aが形成されており、該前側結合フランジ47aは、前面部45の左側端部と溶接により接合されている。また、後面部46の右側(車幅方向内側)の端部には、該端部からフレーム外壁部5bに沿って後側に延設された後側結合フランジ46aが形成されており、該後側結合フランジ46aは、フレーム外壁部5bに上下2箇所で締結部材73(図3〜図5参照(図5では、1つの締結部材73しか見えていない))により締結固定されている。この後側結合フランジ46aは、フレーム外壁部5bに沿って前後方向に延びかつ該フレーム側壁部5bに固定された固定部に相当する。尚、前面部45の右側端部を、フランジ部7の左側端部に固定する代わりに、フレーム外壁部5bに固定することも可能である。この場合、前面部45の右側端部が、フレーム外壁部5bにおける前側端近傍であることが好ましい。
また、前面部45、後面部46及び側面部47の上端部は、それぞれ上面部43よりも上側まで延びており、前面部45の上端部が上面部43の前側の溶接代43dと、後面部46の上端部が上面部43の後側の溶接代43dと、側面部47の上端部が上面部43の左側の溶接代43dとそれぞれ溶接により接合されている。一方で、前面部45、後面部46及び側面部47の下端部は、それぞれ下面部44よりも下側まで延びており、前面部45の下端部が下面部44の前側の溶接代44dと、後面部46の下端部が下面部44の後側の溶接代44dと、側面部47の下端部が下面部43の左側の溶接代44dとそれぞれ溶接により接合されている。
図5に示すように、フロントサイドフレーム5の内部の前後方向における補強部40が設けられた範囲には、フロントサイドフレーム5の内部空間を前後に仕切る第1の節部材71と第2の節部材72とが設けられている(第2の節部材72については、図6も参照)。本実施形態では、第1の節部材71は、板部材で構成されているが、これに限られるものではない。第2の節部材72は、板部材で構成されている。
第1の節部材71は、車幅方向及び上下方向に延びる節本体部71aと、節本体部71aの車幅方向両端から前側に延びる2つの結合部71bとを有している。節本体部71aは、フロントサイドフレーム5の長手方向(前後方向)から見て、フロントサイドフレーム5の内部空間と略同じ形状をなしている。右側に位置する結合部71bは、フレーム内壁部5aと溶接により接合され、左側に位置する結合部71bは、フレーム外壁部5bと溶接により接合されている。節本体部71aは、左右の結合部71bがフロントサイドフレーム5にそれぞれ接合された状態で、フロントサイドフレーム5と上記前方延設部とを連結する上記連結部材の近傍位置に位置している。第1の節部材71は、車両1の走行時に上記サスペンションクロスメンバ及び上記連結部材を介してフロントサイドフレーム5に入力される、路面からの上下方向の反発荷重に対してフロントサイドフレーム5の剛性を向上させるために設けられている。尚、第1の節部材71は、なくてもよい。
第2の節部材72は、車幅方向及び上下方向に延びる節本体部72aと、節本体部72aの右側端から前側に延びる内側結合部72bと、節本体部72aの左側端から後側に延びる外側結合部72cと、節本体部72aの上端及び下端からそれぞれ後側に延びる2つの延設部72d(図6参照)とを有している。外側結合部72cは、節本体部72aの車幅方向外側の端部に設けられかつ該端部から後側に延びる延設部に相当する。節本体部72aは、フロントサイドフレーム5の長手方向から見て、フロントサイドフレーム5の内部空間と略同じ形状をなしている。内側結合部72bは、フレーム内壁部5aと溶接により接合される一方、外側結合部72cは、2つの締結部材73により、フレーム外壁部5bを挟んで、後側結合フランジ46aと締結固定されている。つまり、外側結合部72cは、後側結合フランジ46aと共にフレーム外壁部5bに共締めされて、該フレーム外壁部5bに締結固定されている。各締結部材73は、図5に示すように、ボルト73aと、該ボルト73aが螺号するナット73bとで構成され、図6に示すように、外側結合部72cには、ボルト73aがそれぞれ挿通される2つのボルト挿通孔72gが形成されている。ナット73bは、第2の節部材72をフロントサイドフレーム5の内部に配置する前に予め溶接等により、外側結合部72cの車幅方向内側の面における各ボルト挿通孔72gの周囲に固定される。尚、後側結合フランジ46aと外側結合部72cとを、例えば溶接により、それぞれ別々にフレーム外壁部5bに固定するようにしてもよい。
上下の延設部72dは、それぞれフレーム上壁部5c及びフレーム下壁部5dに略接触しているだけであり、フレーム上壁部5c及びフレーム下壁部5dに接合されてはいない。尚、上下の延設部72dが、それぞれフレーム上壁部5c及びフレーム下壁部5dに接合されていてもよい。
また、内側結合部72bが、フレーム内壁部5aに接合されずに、フレーム内壁部5aに略接触した状態にあってもよい。第2の節部材72が外側結合部72cのみでフロントサイドフレーム5に固定されているだけであっても問題はない。要するに、第2の節部材72(節本体部72a)が、車幅方向に入力される荷重に対して、フレーム内壁部5aとフレーム外壁部5bとの間で突っ張ることができればよい。但し、第2の節部材72(節本体部72a)の厚みは、フロントサイドフレーム5にその前側から衝突荷重が入力されるような前面衝突が生じたときには、該衝突荷重が入力されたフロントサイドフレーム5が前後方向に潰れるのを阻害しないような厚みに設定される。第1の節部材71の厚みも、第2の節部材72と同様である。
さらに、内側結合部72bが、外側結合部72cと同様に、節本体部72aの右側端から後側に延びていてもよい。或いは、内側結合部72bが、節本体部72aの右側端から後側に延びかつ外側結合部72cが節本体部72aの左側端から前側に延びるか、又は、内側結合部72b及び外側結合部72cの両方が、それぞれ節本体部72aの右側端及び左端部から後側に延びていてもよい。
第2の節部材72は、内側結合部72b及び外側結合部72cがフロントサイドフレーム5に接合された状態で、後側結合フランジ46aと前後方向にオーバーラップするように設けられている。特に、第2の節部材72の節本体部72aが、車両1の側方から見て、後側結合フランジ46aと重複する前後位置に位置していることが好ましい。本実施形態では、節本体部72aが、前後方向において、後側結合フランジ46aの前側の端部(つまり、後面部46の車幅方向内側の端部)と同じ位置に位置している。また、外側結合部72cが、上記のように、節本体部72aの左側端から後側に延びていて、車両1の側方から見て、後側結合フランジ46aと重複する前後位置に位置している。
第2の節部材72は、上記SOL衝突時に、フロントサイドフレーム5が、該フロントサイドフレーム5における補強部40が設けられた部分(第2の節部材72が設けられた部分)に対して後側の近傍部分で折れ曲がるようにするために、上記のような位置に配設されている。
第1の節部材71の節本体部71aには、該節本体部71aを前後方向に貫通する貫通孔71cが形成され、第2の節部材72の節本体部72aには、該節本体部72aを前後方向に貫通する貫通孔72eが形成されている。これら貫通孔71c及び貫通孔72eは、上下方向に長い長孔状に形成されている。貫通孔71c及び貫通孔72eは、両フロントサイドフレーム5を含む車体部材の電着塗装工程において、電着液が各フロントサイドフレーム5の内部を前後方向(フロントサイドフレーム5の長手方向)に流れるようにするためのものである。
節本体部71aの貫通孔71cの周縁部全周は、バーリング加工により、前側に折り曲げられた折曲部71dとされている。この折曲部71eにより、節本体部71aに貫通孔71dが形成されていても、路面からの上下方向の反発荷重に対する節本体部71aの強度低下を抑制することができる。尚、節本体部71aの貫通孔71dの周縁部全周が後側に折り曲げられていてもよい。
同様に、節本体部72aの貫通孔72eの周縁部全周は、バーリング加工により、後側に折り曲げられた折曲部72fとされている。この折曲部72fにより、節本体部72aに貫通孔72eが形成されていても、車幅方向に入力される荷重に対する節本体部72aの強度低下を抑制することができる。尚、節本体部72aの貫通孔72eの周縁部全周が前側に折り曲げられていてもよい。
第1のブレース30の延設部50は、図2,図4,図7及び図8に示すように、上記補強部40の上端部の周縁部におけるフレーム外壁部5bよりも車幅方向外側に位置する部分、詳しくは、上記連結部の上端縁部から、左側のエプロンメンバ16に向かって延びている。具体的には、上記連結部の上端縁部から、エプロンメンバ16に向かって車幅方向外側かつ後側に傾斜して延びている。
上記延設部50は、図7に示すように、右側(車幅方向内側)が開口された開断面形状をなしており、図4に示すように、前側に位置する前壁部51と、左側に位置する側壁部52と、後側に位置する後壁部53と、前壁部51の右側の縁部及び上側の縁部、並びに、後壁部53の右側の縁部及び上側の縁部に沿って設けられたフランジ部54(特に図8参照)とによって構成されている。
延設部50の下端部は、上記連結部の上端縁部と溶接により接合されている。詳しくは、前壁部51の下端部が上記連結部の前面部45の上端縁部と、後壁部53の下端部が上記連結部の後面部46の上端縁部と、側壁部52の下端部が上記連結部の側面部47の上端縁部とそれぞれ溶接により接合されている。
上記フランジ部54は、図8に示すように、上端部がエプロンメンバ16の下面に沿うように形成されている。フランジ部54の上端部は、エプロン湾曲部16bと溶接により接合されており、これにより、延設部50がエプロンメンバ16と接合される。
延設部50は、後に述べる理由によって、上記SOL衝突時における衝突荷重により補強部40が移動したときに、当該補強部40の移動を妨げないように構成されている。
次に、第2のブレース60について説明する。第2のブレース60は、図7に示すように、フレーム内壁部5aにおける、車両1の側方から見て補強部40と重複する前後方向の部分から、シュラウドアッパメンバ19に向かって延びている。
第2のブレース60は、図2、図3及び図8に示すように、左側(車幅方向外側)が開放された開断面形状をなしており、前側に位置する前壁部61と、右側に位置する側壁部62と、後側に位置する後壁部63と、前壁部61の左側の縁部及び後壁部63の左側の縁部に沿って設けられたフランジ部64(特に図3参照)とを有している。
図3に示すように、前壁部61は、フロントサイドフレーム5から略鉛直上方に延びた後、前側に向かって曲げられて、その曲部61aからは、上側に向かって前側に傾斜して延びている。一方で、後壁部63は、シュラウドアッパメンバ19に向かって略鉛直上方に延びている。これにより、側壁部62における、上記曲部61aの高さ位置よりも下側の部分については、その前後方向の長さが上下方向で略同じである一方、側壁部62における、上記曲部61aの高さ位置よりも上側の部分については、その前後方向の長さがシュラウドアッパメンバ19に近づくほど大きくなるようになっている。
また、図3に示すように、前壁部61は、車幅方向の長さがシュラウドアッパメンバ19に近づくほど長くなるように形成され、図7に示すように、後壁部63も前壁部61と同様に、車幅方向の長さがシュラウドアッパメンバ19に近づくほど長くなるように形成されている。上記のように前壁部61及び後壁部63が形成されることで、第2のブレース60における上記曲部61aの高さ位置よりも下側の部分は、第2のブレース60における上記曲部61aの高さ位置よりも上側の部分と比べて、平板に近い形状をなすようになる。これにより、第2のブレース60におけるフロントサイドフレーム5に近い側の部分は、車幅方向の荷重に対する強度が低くなっている。
第2のブレース60とフロントサイドフレーム5とは溶接により接合されている。具体的には、図7に示すように、側壁部62の下端部には、下側に向かって突出した下側接合部66が設けられており、該下側接合部66が、フレーム内壁部5aと溶接により接合されている。また、前側及び後側のフランジ部64の各下端部もフレーム内壁部5aに溶接によって接合されている。
一方、第2のブレース60とシュラウドアッパメンバ19とは締結部材67(ボルト及びナット)により接合されている。具体的には、図8に示すように、第2のブレース60の上端部は、シュラウドアッパメンバ19に沿うように、左側に向かって略垂直に曲げられた上側接合部65が形成されており、該上側接合部65が、2つの締結部材67によってシュラウドアッパメンバ19の車幅方向一側の端部(ここでは左側端部)に接合されている。
本実施形態において、左側のフロントサイドフレーム5における、フランジ部7の後側の部分は、上述のように構成されている。右側のフロントサイドフレーム5における、フランジ部7の後側の部分は、上述した、左側のフロントサイドフレーム5における、フランジ部7の後側の部分の構造と左右対称になるように構成されている。
ここで、車両1の前部は、車両1が障害物と上記SOL衝突を起こしたときに、車両1の前部に上記横力を発生させ、該横力により、車両1の前部が車幅方向の上記障害物から遠ざかる側に移動するように車両1を車幅方向に回動させて、上記SOL衝突時における衝突荷重を車幅方向に受け流すことができるように構成されていることが望ましい。
本実施形態では、第1のブレース30の補強部40によって、車両1の前部に対して上記横力を効率的に発生させるようになっている。このことを、以下で詳細に説明する。
図9及び図10は、車両1が障害物Aと上記SOL衝突を起こしたときの、フロントサイドフレーム5のフランジ部7の周辺の状態を示している。尚、図9及び図10は、車両1の前面における左側部分が障害物Aと上記SOL衝突を起こした場合を示している。
車両1が障害物Aと左側で上記SOL衝突を起こしたときには、バンパーレインフォースメント18の左側のバンパー外側部18aと障害物Aとが当接して、左側のバンパー外側部18aに衝突荷重が入力される。左側のバンパー外側部18aに衝突荷重が入力されると、バンパーレインフォースメント18は、上記SOL衝突が発生していない側(ここでは右側)のクラッシュカン6の前側端面を支点として、左側のバンパー外側部18aが右側(車幅方向内側、つまり車幅方向における障害物Aとは反対側)かつ後側に向かって移動するように変形する。このとき、図9に示すように、バンパーレインフォースメント18の変形に伴い左側のクラッシュカン6が前後方向に潰れる。
左側のフロントサイドフレーム5には、フレーム外壁部5bよりも左側(車幅方向外側)に突出する補強部40が結合されているため、上記SOL衝突により上記のように移動した左側のバンパー外側部18aは、左側の補強部40と当接する。これにより、左側の補強部40に上記衝突荷重が入力される。このように車両1の前面の左側での上記SOL衝突時には、左側の補強部40に衝突荷重が入力されることになる(尚、車両1の前面の右側での上記SOL衝突時には、右側の補強部40に衝突荷重が入力される)。上記補強部40への衝突荷重の入力時において、左側のバンパー外側部18aは、左側の補強部40における前面部45の左側端部(前面部45における側面部47との接続部分)に当接するため、左側の補強部40における前面部45の左側端部には、左前側から右後側に向かって、上面部43及び下面部44の外側部43a,44aの対角線に沿うように衝突荷重が入力される。
左側の補強部40の前面部45に入力された上記衝突荷重が、前面部45における該衝突荷重の入力箇所から、該補強部40の上面部43及び下面部44を介して(特にビード43b,44bに沿って)、左側のフロントサイドフレーム5のフレーム外壁部5bにおける後側結合フランジ46aが固定された部分に伝達される。本実施形態では、第2の節部材72の節本体部72aが、前後方向において、後側結合フランジ46aの前側の端部(つまり、後面部46の車幅方向内側の端部)と同じ位置に位置するように、フロントサイドフレーム5の内部に設けられているので、フレーム外壁部5bにおける後側結合フランジ46aが固定された部分に伝達された衝突荷重は、第2の節部材72(節本体部72a)を介して、左側のフロントサイドフレーム5のフレーム内壁部5aに伝達される。これにより、上記衝突荷重が伝達された左側のフロントサイドフレーム5の長手方向において第2の節部材72(節本体部72a)が設けられた部分が車幅方向内側に押し込まれて、車幅方向内側に変位する。左側のフロントサイドフレーム5の長手方向において第2の節部材72が設けられた部分は、第2の節部材72によって車幅方向に折り曲げられ難くなっているため、フロントサイドフレーム5の長手方向における第2の節部材72の近傍部分が、車幅方向内側に凸になるように折れ曲がる。
また、上記衝突荷重が、前面部45における該衝突荷重の入力箇所から、補強部40の上面部43及び下面部44を介して、左側のフロントサイドフレーム5のフレーム上壁部5c及びフレーム下壁部5dにおける、上面部43及び下面部44がそれぞれ固定された部分に伝達される。こうして上記衝突荷重は、補強部40の上面部43及び下面部44並びに左側のフロントサイドフレーム5のフレーム上壁部5c及びフレーム下壁部5dを介して、左側のフロントサイドフレーム5のフレーム内壁部5aにまで伝達される。これにより、左側のフロントサイドフレーム5における補強部40が設けられた部分(特に上面部43及び下面部44が一体的に結合固定された部分)も車幅方向内側に向かって押し込まれて、車幅方向内側に変位する。左側のフロントサイドフレーム5における第2の節部材72に対して前側の部分に上面部43及び下面部44が固定されることになるので、左側のフロントサイドフレーム5における第2の節部材72に対して前側の部分は折れ曲がり難い。したがって、左側のフロントサイドフレーム5における第2の節部材72に対して後側の近傍部分(つまり、補強部40が設けられた部分に対して後側の近傍部分)が、車幅方向内側に凸になるように折れ曲がる(図9参照)。その後、該折り曲げられた部分である屈曲部5fは、上記衝突荷重によって右側かつ後側に向かって押し込まれる。
左側のフロントサイドフレーム5の右側には、上述したように、エンジンユニットEが配設されているため、屈曲部5fの車幅方向内側の部分が、エンジンユニットEと当接する(図10参照)。そして、該屈曲部5fの車幅方向内側の部分がエンジンユニットEと当接した後、屈曲部5fはエンジンユニットEを右側かつ後側に向かって押す。これにより、屈曲部5fを介してエンジンユニットEに、右側に向かう横力が入力される。エンジンユニットEに上記右側に向かう横力が入力されることによって、上記エンジンマウントを介して、エンジンユニットEから左右のフロントサイドフレーム5に上記右側に向かう横力が伝達されて、車両1の前部に上記右側に向かう横力が発生する。
屈曲部5fの車幅方向内側の部分が当接するのは、エンジンユニットEにおけるエンジン本体(シリンダブロック等)や、該エンジン本体に設けられた剛体部品であることが好ましい。また、屈曲部5fの車幅方向内側の部分が、エンジンユニットE以外の、フロントサイドフレーム5のような車体部材に連結された剛体部品に当接するようにしてもよい。
以上のようにして、車両1の前面における左側での上記SOL衝突時に車両1の前部に上記右側に向かう横力が発生する。一方、車両1の前面における右側の部分が障害物Aと上記SOL衝突を起こした場合は、バンパーレインフォースメント18、右側の補強部40及び右側のフロントサイドフレーム5が、上述した動作と左右対称な動作をして、車両1の前部に左側に向かう横力が発生することになる。上記剛体部品は、屈曲部5fの当接により、車両1の前部に上記横力を発生させることが可能な部品であればよいことになる。
上記バンパーレインフォースメント18の車幅方向の長さは、上記SOL衝突時に、上記SOL衝突が発生した側において、バンパー外側部18aが、第1のブレース30の補強部40に確実に当接するような長さに設定されている。
具体的には、上側から見て、バンパーレインフォースメント18の車幅方向の長さは、バンパーレインフォースメント18の車幅方向一側の端面における後側の端と、バンパーレインフォースメント18の車幅方向他側の端に近いクラッシュカン6の前側端面(バンパーレインフォースメント18の後面に固定される面)の車幅方向中央とを結ぶ直線の長さが、バンパーレインフォースメント18の車幅方向の上記一側の端に近い補強部40における上面部43の車幅方向外側かつ前側の角部と上記他側の端に近いクラッシュカン6における前側端面の車幅方向中央とを結ぶ直線の長さよりも長くなるような長さに設定されている。尚、バンパーレインフォースメント18は、車両1の車幅方向中央を通る平面に対して対称な形状をなしており、上記2つの直線の長さ関係は、左右いずれについても同じである。
また、本実施形態では、バンパーレインフォースメント18は、車幅方向両側の端部が車幅方向中央部よりも後側に位置するように、上から見てアーチ状に湾曲した形状をなしているため、上記SOL衝突時に、バンパーレインフォースメント18が衝突荷重によって車幅方向内側に向かって湾曲変形し易くなっている。これにより、上記SOL衝突時に、上記SOL衝突が発生した側のバンパー外側部18aが車幅方向内側に移動し易くなる。そのため、当該バンパー外側部18aを介して、上記SOL衝突が発生した側の補強部40の前面部45の車幅方向外側の端部(前面部45における側面部47との接続部分)に入力される衝突荷重における、車幅方向内側に向かう成分の比率を出来る限り大きくすることができる。これにより、上記SOL衝突時に車両1の前部に対して上記横力をより効率的に発生させることができる。
さらに、本実施形態では、フロントサイドフレーム5の内部において、第2の節部材72の節本体部72aが、前後方向において、後側結合フランジ46aの前側の端部(つまり、後面部46の車幅方向内側の端部)と同じ位置に位置するように配設されているので、フロントサイドフレーム5の長手方向における節本体部72aの近傍部分に屈曲部5fを生じさせることができる。
特に本実施形態では、補強部40の上面部43の基端部43cはフレーム上壁部5cと一体的に接合固定され、補強部40の下面部44の基端部44cはフレーム下壁部5dと一体的に接合固定されているため、フロントサイドフレーム5における補強部40が固定された部分は、フロントサイドフレーム5における他の部分よりも車幅方向の荷重に対する強度が高くなっている。そのため、上記SOL衝突時に、上記SOL衝突が発生した側の補強部40に、上面部43及び下面部44の外側部43a,44aの対角線に沿うように衝突荷重が入力されたときには、上記SOL衝突が発生した側のフロントサイドフレーム5は、節本体部72aよりも後側の部分で車幅方向内側に向かって折れ曲がり易い。この結果、フロントサイドフレーム5の長手方向における屈曲部5fが生じる位置が安定して、上記SOL衝突時に屈曲部5fをエンジンユニットEに対して安定的に衝突させることができるようになる。
さらにまた、本実施形態では、上面部43及び下面部44の外側部43a,44aに、該外側部43a,44aの車幅方向外側かつ前側の角部近傍から車幅方向内側かつ後側に向かって延びるビード43b,44bがそれぞれ形成されている。上述したように、上記SOL衝突時には、補強部40に、車幅方向外側かつ前側から車幅方向内側かつ後側に向かって、上記外側部43a,44aの対角線に沿うように衝突荷重が入力されるため、上記ビード43b,44bが形成されていることによって、上記衝突荷重を、補強部40からビード43b,44bに沿ってフロントサイドフレーム5における特に補強部40の後側寄りの部分に対応する部分(延いては、節本体部72a)に伝達させ易くなる。これにより、上記SOL衝突時に車両1の前部に対して横力をより一層効率的に発生させることができる。
ここで、上記SOL衝突時に、補強部40が車幅方向内側かつ後側に向かって押し込まれるように移動するようにするためには、第1のブレース30の延設部50及び第2のブレース60が、補強部40の移動を妨げないように、上記SOL衝突時の衝突荷重によって適切に変形する必要がある。
本実施形態では、第1のブレース30の延設部50は車幅方向内側が開口した開断面形状をなすように構成されており、第2のブレース60は車幅方向外側が開口した開断面形状をなすように構成されているため、どちらも上記衝突荷重によって変形し易くなっている。特に、第2のブレース60については、フロントサイドフレーム5に近い側の部分が、車幅方向の荷重に対する強度が低くなるように構成されているため、補強部40に上記衝突荷重が入力された際に、上記衝突荷重によって変形し易くなっている。したがって、上記SOL衝突時に、第1のブレースの延設部50及び第2のブレース60によって、補強部40の移動が妨げられることはない。したがって、本実施形態では、上記SOL衝突時に車両1の前部に対して上記横力を効率的に発生させることができる。
よって、本実施形態では、車両1のSOL衝突時における衝突荷重が該車両1の車室内に伝達されるのを出来る限り抑制することができる。
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
例えば、上記実施形態では、左右の第1のブレース30が、補強部40と延設部50とを有しているが、延設部50は、必ずしも必要なものではない。
また、第2のブレース60の下端部(上記実施形態では、下側接合部66)が、フレーム内壁部5aに接合される代わりに、フレーム外壁部5bに接合されるようにしてもよい。或いは、第2のブレース60全体をなくすことも可能である。
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。