以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
図1は、本発明の実施形態に係るガス警報器の構成を示すブロック図である。図1に示すように、ガス警報器1は、検知対象ガス(本実施形態ではメタンガス)の濃度が所定濃度以上であると判断した場合に警報出力するものであって、半導体式ガスセンサ10と、制御部20と、警報音発生部(警報出力部)30と、表示部(警報出力部)40とを備えて構成されている。
半導体式ガスセンサ10は、金属酸化物半導体をガス感応体として有し、ガス感応体が還元性ガスに曝されたときの抵抗値の変化に応じた信号を出力するものである。具体的に半導体式ガスセンサ10は、酸化スズの粉体を焼成して焼結し触媒を添加したものをガス感応体とし、還元性の検知対象ガスであるメタンガスに曝されたときの抵抗値の低下に応じた信号を出力する。この半導体式ガスセンサ10は、ヒータによってガス感応体が加熱されており、その加熱温度は、第1所定温度(例えば400℃)と第2所定温度(例えば80℃)との間で変化させられている。
なお、以下において半導体式ガスセンサ10のセンサ値は、半導体式ガスセンサ10から出力された信号を抵抗値換算した値(すなわちセンサ抵抗値)であるものとして説明する。
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)により構成され、ROM(Read Only Memory)に記憶されるプログラムを実行して、半導体式ガスセンサ10のセンサ値に基づいて警報状態であるかを判断するものである。警報音発生部30は、例えばスピーカと音声出力回路とによって構成され、制御部20により警報状態であると判断された場合に、警報音を出力するものである。表示部40は、例えばLED(Light Emitting Diode)と点灯回路とによって構成され、制御部20により警報状態であると判断された場合に、点灯出力又は点滅出力するものである。
図2は、図1に示した制御部20の機能ブロック図である。図2に示すように、制御部20は、ROMに記憶されるプログラムを実行することで、ヒータ制御部21と、エアベース比率算出部(エアベース比率算出手段)22と、センサ値補正部(センサ値補正手段)23と、警報制御部(警報制御手段)24とが機能する。
ヒータ制御部21は、半導体式ガスセンサ10の加熱温度を第1所定温度と第2所定温度との間で変化させるものであって、具体的には高温となる第1所定温度を5秒間維持した後に、低温となる第2所定温度を10秒間維持する制御を繰り返し実行するものである。
ここで、第1所定温度から第2所定温度に切り替わる直前の約1秒間(第2所定温度から第1所定温度に切り替わってから4秒〜5秒後)が、検知対象ガスであるメタンガスの測定期間である。制御部20は、メタンガスの測定期間における出力から得られたセンサ値に基づいて警報状態か否かを判断することとなる。
また、本実施形態においては、第1所定温度から第2所定温度に切り替わる直後(切り替わってから1秒後付近)が水素ガスに対して弁別性のある期間となる。なお、この期間において得られるセンサ値は水素ガス濃度に依存して変化するため、制御部20は、後述のように、この期間における出力から得られたセンサ値に基づいて所定濃度以上の水素ガスが存在するかを判断することとなる。一方で、上記したメタンガスの測定期間において得られるセンサ値は、メタンガスのみならず水素ガスによってもセンサ値が変化することとなる。このため、測定期間において得られたセンサ値は、雑ガスである水素ガスに影響を受けるものとなる。
エアベース比率算出部22は、半導体式ガスセンサ10の空気雰囲気(清浄状態の空気雰囲気)におけるセンサ値(特に測定期間において得られるセンサ値)の初期値に対する変動比率であるエアベース比率を算出するものである。このエアベース比率算出部22は、後述する更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する。ここで、半導体式ガスセンサにおいてエアベース値(清浄状態の空気雰囲気におけるセンサ値)は、長期使用された場合の被毒の影響によって初期値よりも低下する傾向にある。よって、エアベース比率算出部22は、後述する更新候補値を初期値で除することで、1以下のエアベース比率を算出することとなる。
図3〜図5は、図2に示したエアベース比率算出部22によるエアベース比率の算出処理の概要を示す図であり、図3は第1段階目の処理を示し、図4は第2段階目の処理を示し、図5は第3段階目の処理を示している。
まず、エアベース比率算出部21は、図3に示すように、所定時間T毎に半導体式ガスセンサ10から得られる信号を抵抗値換算してセンサ値を求め、このセンサ値を記憶保存していく。そして、記憶保存したセンサ値がL個(Lは3以上の整数)となった場合、すなわち第1所定期間P1が経過した場合、L個のセンサ値のうち、最大値と最小値とを除き、(L−2)個のセンサ値の平均値を第1候補値として算出する。
次に、エアベース比率算出部21は、図4に示すように、第1所定期間P1毎に算出した第1候補値を記憶保存していく。そして、記憶保存した第1候補値がM個(Mは3以上の整数)となった場合、すなわち第2所定期間P2が経過した場合、エアベース比率算出部21は、M個の第1候補値のうち2番目に高い値を示す第1候補値を第2候補値として算出する。
ここで、第2候補値には、M個の第1候補値のうち2番目に高い値を示す第1候補値が採用されているが、2番目に限らず、最大値及び最小値を除いたいずれか1つの第1候補値が採用されてもよい。
次いで、エアベース比率算出部21は、図5に示すように、第2所定期間P2毎に算出した第2候補値を記憶保存していく。そして、記憶保存した第2候補値がN個(Nは3以上の整数)となった場合、すなわち第3所定期間P3が経過した場合、エアベース比率算出部21は、N個の第2候補値のうち2番目に高い値を示す第2候補値を更新候補値として算出する。
ここで、更新候補値には、N個の第2候補値のうち2番目に高い値を示す第2候補値が採用されているが、2番目に限らず、最大値及び最小値を除いたいずれか1つの第2候補値が採用されてもよい。
エアベース比率算出部22は、上記のようにして更新候補値を算出する。そして、エアベース比率算出部22は、算出した更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する。なお、初期値は、予め記憶された値であってもよいし、ガス警報器1の設置直後のセンサ値から求められる値であってもよい。
ここで、エアベース比率を算出するための更新候補値については、空気雰囲気のセンサ値に基づいて得られた値である必要がある。このため、エアベース比率算出部22は、警報音発生部30及び表示部40から警報出力されているときのセンサ値を第1候補値の算出に用いないこととする。
例えば、L個のセンサ値のうち、2つのセンサ値が警報出力時のものである場合、エアベース比率算出部21は、まずL個のセンサ値のうち警報出力時のセンサ値を除いて(L−2)個とし、(L−2)個のセンサ値の最大値と最小値とを除いた(L−4)個のセンサ値の平均値を第1候補値として算出する。また、所定時間T毎の検出タイミングにおけるセンサ値が警報出力時のものである場合、エアベース比率算出部21は、警報出力が解除されるまで待機し、解除されたときのセンサ値を所定時間T毎のセンサ値の1つとしてもよい。この場合、待機時間分だけ第1所定期間P1が延長されてもよいし、延長されなくともよい。
再度、図2を参照する。センサ値補正部23は、メタンガスの測定期間において得られた半導体式ガスセンサ10のセンサ値をエアベース比率算出部22により算出されたエアベース比率に基づいて補正して補正センサ値を算出するものである。具体的にセンサ値補正部23は、エアベース比率が所定範囲(0.2を超え0.9以下)内に収まる場合に、半導体式ガスセンサ10のセンサ値をエアベース比率で除することでセンサ値を補正する。これにより、センサ被毒の影響によるセンサ値の変化を緩和するようにしている。なお、センサ値補正部23は、エアベース比率が所定範囲外である場合には、半導体式ガスセンサ10のセンサ値を補正しないこととなる。
警報制御部24は、センサ値補正部23により算出された補正センサ値に基づいて警報状態であるかを判断するものである。この警報制御部24は、センサ値補正部23により補正された補正センサ値が示す検知対象ガスのガス濃度が、第1又は第2警報点(警報閾値)が示すガス濃度以上となると判断した場合に警報状態であると判断する。また、警報制御部24は、警報状態であると判断した場合、警報音発生部30から警報音を出力させたり、表示部40を点灯又は点滅させたりする警報動作を行わせるものである。
なお、エアベース比率が所定範囲外である場合には、半導体式ガスセンサ10のセンサ値は補正されない。この場合、警報制御部24は、補正されていないセンサ値に基づいて、警報状態であるかを判断することとなる。
次に、センサ値の補正の様子を説明する。図6は、図2に示したエアベース比率算出部22により算出されるエアベース比率の一例を示すグラフである。更新候補値はガス感応体の被毒によって低下していく傾向がある。このため、エアベース比率算出部22により算出されるエアベース比率についても被毒が進行すると低い値となる。
図6に示す例においては、100日及び200日経過時点におけるエアベース比率が約0.8強となっており、300日経過時点におけるエアベース比率が約0.7強となっており、400日経過時点におけるエアベース比率が約0.5強となっている。
図7は、図6に示した被毒の進行状態における警報点の推移を示すグラフである。図7に示すように、0日(初期)において、第1段警報点は3000ppmとなっており、第2段警報点は3500ppmとなっている。すなわち、初期においては、メタンガスが3000ppmであるときに第1段警報(表示部40の点滅)が発せられ、メタンガスが3500ppmであるときに第2段警報(警報音発生部30から警報音出力、表示部40の点灯又は点滅)が発せられる。
しかし、100日経過すると、第1段警報点は約2000ppmとなっており、第2段警報点は約2500ppmとなっている。このため、100日経過時点においては、メタンガスが2000ppmしかない環境下において第1段警報が発せられ、メタンガスが2500ppmしかない環境下において第2段警報が発せられてしまう。
また、200日経過すると、第1段警報点は約1300ppmとなっており、第2段警報点は約1700ppmとなっており、300日経過すると、第1段警報点は約1000ppmとなっており、第2段警報点は約1400ppmとなっている。このため、200日経過時点や300日経過時点では、これらの濃度のメタンガスしかない環境下において第1又は第2段警報が発せられてしまう。特に、400日経過すると、第1段警報点及び第2段警報点は共に1000ppmを下回ってしまう。すなわち、検定下限レベルを下回る結果となってしまう。
図8は、図6に示したエアベース比率でセンサ値を補正したときの警報点の推移を示すグラフである。図8に示すように、センサ値をエアベース比率で補正(除算)することで、第1段警報点及び第2段警報点の低下を抑えることができ、400日経過時点において検定下限レベルを下回ることがないようになっている。すなわち、警報の鋭敏化を食い止める結果となっている。
以上のように、センサ値のエアベース比率で補正することにより、警報が鳴り易くなってしまう事態を防止している。
図9は、図2に示したエアベース比率算出部22により算出されるエアベース比率の他の例を示すグラフである。図9に示す例においては、100日及び200日経過時点におけるエアベース比率は図6に示すものと同様である。しかし、300日経過時点以降においては半導体式ガスセンサ10の劣化が図6に示す例よりも進行しており、300日経過時点におけるエアベース比率が約0.4強となっており、400日経過時点におけるエアベース比率が約0.1となっている。
図10は、図9に示したエアベース比率でセンサ値を補正したときの警報点の推移を示すグラフであって、メタンガスに対する警報点の推移を示している。図10に示すように、センサ値をエアベース比率で補正(除算)することで、200日経過する迄は第1段警報点及び第2段警報点を横ばいとすることができる。しかし、300日経過以降においては、第1段警報点及び第2段警報点が上昇することとなり、警報の鈍化を招くこととなっている。このように、半導体式ガスセンサ10は劣化が進行した場合において、センサ値をエアベース比率で補正(除算)すると警報の鈍化を招く。
図11は、図9に示したエアベース比率でセンサ値を補正したときの警報点の推移を示すグラフであって、水素ガスに対する警報点の推移を示している。
図11に示すように、センサ値をエアベース比率で補正(除算)した場合、250日経過時点における第1段及び第2段警報点は、2000ppm強となっている。すなわち、250日経過時点において、水素ガスが2000ppm強存在する環境下において第1段又は第2段警報が発せられてしまう。また、300日経過時点における第1段及び第2段警報点は、約500ppmとなっている。すなわち、300日経過時点では、水素ガスが500ppm程度存在する環境下において第1段又は第2段警報が発せられてしまう。なお、500ppmは検定下限レベルである。
特に、340日経過時点においては、第1段及び第2段警報点は100ppm未満となっており、100ppm未満の水素ガスが存在する環境下であっても第1段又は第2段警報が発せられてしまう。
このように、半導体式ガスセンサ10の劣化度合いが大きくなると、メタンガスに対して鈍化を招くと共に、水素ガスに対して極めて鋭敏となってしまう。よって、測定期間におけるセンサ値は、水素ガスによって支配的となってしまう。
一方で、図11に示すように、200日が経過する前、すなわち、エアベース比率が0.7を超える場合、第1段及び第2段警報点は、8000ppmを超えている。すなわち、エアベース比率が0.7を超える場合、測定期間におけるセンサ値に対して水素ガスは殆ど影響を与えないといえる。このように、半導体式ガスセンサ10が劣化していない場合、測定期間におけるセンサ値は水素ガスに影響を受けない。よって、半導体式ガスセンサ10が劣化していない場合は、水素ガスに対する誤警報の防止処理の必要性は低い。
そこで、本実施形態においては図2に示すように、制御部20は、プログラムを実行することで、上記の特性を捉えた誤警報防止部(誤警報防止手段)25が機能するようになっている。
誤警報防止部25は、エアベース比率算出部22により算出されたエアベース比率が所定値以下であり(所定条件を満たし)、且つ、水素ガスに対して弁別性のある期間において得られるセンサ値から、所定濃度以上の水素ガスが存在すると判断した場合に、警報制御部24による処理を警報が出力され難くなる方向に変更するものである。ここで、誤警報防止部25は、例えば警報点を高濃度側にシフトさせたり、警報出力を禁止したりすることで、警報制御部24による処理を警報が出力され難くなる方向に変更する。また、誤警報防止部25は、警報出力に遅延時間を設けて、遅延時間中に警報状態でないと判断された場合には警報出力を行わないロジックを警報制御部24に実行させるようにしてもよい。
なお、本実施形態では上記所定値が0.9である。エアベース比率が0.9以下でない場合には、半導体式ガスセンサ10が劣化しているとはいえないからである。なお、所定値は0.7であってもよい。図11に示すように、半導体式ガスセンサ10はエアベース比率が0.7以下となると水素ガスに対して大きく反応し始めるからである。さらに、所定値は0.4であってもよい。図11に示すように、水素ガスに対する検定下限レベルは500ppmであり、エアベース比率が0.4以下となると検定下限レベル以下となってしまうからである。なお、半導体ガスセンサ10の個体差や環境によっては、エアベース比率が0.9以下となると水素ガスに対して大きく反応し始める場合もある。
また、上記所定濃度は1000ppmである。ここで、誤警報防止部25は、1000ppm以上の水素ガスが存在するか否かの判断を行っており、実際に1000ppm以上の水素ガスが存在するかを確認しているわけではない。すなわち、誤警報防止部25は、半導体式ガスセンサ10の劣化分も含めて、1000ppmの水素ガスが存在するときに相当するセンサ値が得られているかを判断している。
図12は、半導体式ガスセンサ10の劣化に伴って変化する所定濃度の推移を示すグラフであり、水素ガスに対する弁別性のある期間における水素ガスに対する所定濃度の推移を示している。なお、図12においては経過年数が大きくなるほど半導体式ガスセンサ10の劣化が進行しているものとする。
図12に示すように、経過年数が0年である場合、水素ガスに対する弁別性のある期間において、1000ppmの水素ガスが存在すれば、誤警報防止部25は、所定濃度(1000ppm)の水素ガスが存在すると判断する。また、経過年数が0.5年弱となると、水素ガスに対する弁別性のある期間において、777ppmの水素ガスが存在すれば、誤警報防止部25は、所定濃度(1000ppm)の水素ガスが存在すると判断する。
その後、さらに経過年数が大きくなり半導体式ガスセンサ10の劣化が進行すると、それぞれ313ppm、127ppm、48ppmの水素ガスが存在するだけで、誤警報防止部25は、所定濃度(1000ppm)の水素ガスが存在すると判断する。
以上のように、本実施形態において誤警報防止部25は、エアベース比率が所定値以下という条件に基づいて、半導体式ガスセンサ10が劣化しているかを判断しており、そのような劣化の可能性があるときに、所定濃度以上の水素ガスが存在すると判断した場合、すなわち誤警報の可能性があるときに、警報制御部24による処理を警報が出力され難くなる方向に変更する。
ここで、誤警報防止部25は、上記の場合に、警報出力を禁止させることが好ましい。図11に示すように、半導体式ガスセンサ10の劣化が進行すると(例えば300日経過以降において)、メタンガスの測定期間において得られるセンサ値は、水素ガスに対して極めて鋭敏な反応を示す一方で、メタンガスに対しては非常に鈍くなってしまう。すなわち、もはや水素ガスにしか反応しないようになってしまうことを見出した。このため、このような場合には例えば警報閾値を変更するなどの処理を行ったとしても、誤警報を適切に防止できるとはいえない。よって、警報出力を禁止することが誤警報防止の観点において適切であるといえる。
なお、誤警報防止部25は、エアベース比率の値に応じて、変更処理の内容を可変とするようにしてもよい。例えばエアベース比率が第2所定値以下(例えば0.4以下)である場合には警報出力を禁止するが、エアベース比率が第2所定値を超え所定値(例えば0.9)以下である場合には禁止以外の処理を行うようにしてもよい。これにより、一層適切な誤警報の防止を行うことができるからである。
次に、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法を説明する。図13は、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法を示すフローチャートであって、エアベース比率の算出処理を示している。なお、図13に示す処理はガス警報器1の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
図13に示すように、制御部20は、まず所定時間が経過したか否かを判断する(S1)。所定時間が経過していないと判断した場合(S1:NO)、所定時間が経過したと判断するまで、この処理が繰り返される。
所定時間が経過したと判断した場合(S1:YES)、エアベース比率算出部22は、半導体式ガスセンサ10からの信号に基づくセンサ値を記憶する(S2)。次に、エアベース比率算出部22は、第1所定期間が経過したかを判断する(S3)。第1所定期間が経過していないと判断した場合(S3:NO)、処理はステップS1に移行する。
一方、第1所定期間が経過したと判断した場合(S3:YES)、エアベース比率算出部22は、ステップS2において記憶したセンサ値のうち、警報時のセンサ値を除外すると共に、除外したセンサ値のうち、最大値と最小値とを除き、センサ値の平均値を第1候補値として算出し記憶する(S4)。
次いで、エアベース比率算出部22は、第2所定期間が経過したかを判断する(S5)。第2所定期間が経過していないと判断した場合(S5:NO)、処理はステップS1に移行する。
一方、第2所定期間が経過したと判断した場合(S5:YES)、エアベース比率算出部22は、ステップS4にて算出して記憶された第1候補値のうち、2番目に大きい値を第2候補値として算出し記憶する(S6)。その後、エアベース比率算出部22は、第3所定期間が経過したかを判断する(S7)。
第3所定期間が経過していないと判断した場合(S7:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、第3所定期間が経過したと判断した場合(S7:YES)、エアベース比率算出部22は、ステップS6にて算出して記憶された第2候補値のうち、2番目に大きい値を更新候補値として算出する(S8)。
その後、エアベース比率算出部22は、ステップS8にて算出された更新候補値を初期値で除することで、エアベース比率を算出する(S9)。その後、図13に示す処理は終了する。
図14は、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法を示すフローチャートであって、警報処理を示している。なお、図14に示す処理はガス警報器1の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
図14に示すように、まず制御部20は、測定期間における半導体式ガスセンサ10の信号からセンサ値を算出する(S10)。次に、制御部20は、現在のエアベース比率(図13のステップS9で算出されたエアベース比率)が所定範囲内であるか(例えば0.2<エアベース比率≦0.9であるか)を判断する(S11)。所定範囲内でないと判断した場合(S11:NO)、処理はステップS13に移行する。
一方、所定範囲内であると判断した場合(S11:YES)、センサ値補正部23は、ステップS10にて算出したセンサ値を、エアベース比率により除することで、補正センサ値を算出する(S12)。
その後、警報制御部24は、ステップS12にて算出された補正センサ値、又は、ステップS10にて算出したセンサ値に基づいて警報状態であるかを判断する(S13)。このとき、警報制御部24は、補正センサ値又はセンサ値と警報点とを比較して警報状態であるかを判断する。
警報状態でないと判断した場合(S13:NO)、図14に示す処理は終了する。警報状態であると判断した場合(S13:YES)、警報制御部24は、警報出力が禁止されているかを判断する(S14)。禁止されていると判断した場合(S14:YES)、図14に示す処理は終了する。
一方、警報出力が禁止されていないと判断した場合(S14:NO)、警報制御部24は、警報を出力させる(S15)。警報制御部24は、警報音発生部30から警報音を出力させ、表示部40が点灯又は点滅させる。そして、図14に示す処理は終了する。
図15は、本実施形態に係るガス警報器1の制御方法を示すフローチャートであって、警報禁止処理を示している。なお、図15に示す処理はガス警報器1の電源がオフされるまで、繰り返し実行される。
図15に示すように、誤警報防止部25は、現在のエアベース比率(図13のステップS9で算出されたエアベース比率)が所定値以下であるかを判断する(S20)。所定値以下でないと判断した場合(S20:NO)、図15に示す処理は終了する。
一方、所定値以下であると判断した場合(S20:YES)、誤警報防止部25は、水素ガスに対して弁別性のある期間における半導体式ガスセンサ10の信号からセンサ値を算出する(S21)。
そして、誤警報防止部25は、ステップS21にて算出したセンサ値から、所定濃度以上の水素ガスが存在するときのセンサ値に相当するかを判断する(S22)。所定濃度以上の水素ガスが存在するときのセンサ値に相当しないと判断した場合(S22:NO)、図15に示す処理は終了する。
一方、所定濃度以上の水素ガスが存在するときのセンサ値に相当すると判断した場合(S22:YES)、誤警報防止部25は、ガス警報器1を、警報出力を禁止する状態に設定する(S23)。これにより、図14に示したステップS16において「YES」と判断されることとなる。そして、図15に示す処理は終了する。
このようにして、本実施形態に係るガス警報器1及びその制御方法によれば、エアベース比率が所定条件を満たし、水素ガスに対して弁別性のある期間における半導体式ガスセンサ10のセンサ値から、所定濃度以上の水素ガスが存在すると判断した場合に、警報出力を禁止させる。ここで、本件発明者らは、半導体式ガスセンサ10が劣化していない場合、検知対象ガスの測定期間において得られるセンサ値は、水素ガスによる影響を受け難いことを見出した。このため、エアベース比率が所定条件を満たすかを判断することで半導体式ガスセンサ10の劣化が或る程度進行しているかを判断し、或る程度の劣化が見られない場合には、たとえ所定濃度以上の水素ガスが存在すると判断した場合であっても、処理を変更しないこととなる。このように、水素ガスを検出するだけでなく、半導体式ガスセンサ10の劣化状態を確認することで、検知対象ガスを測定期間でのセンサ値に対する水素ガスの影響度合いを判断して、誤警報の防止処理を行うこととなる。従って、誤警報の防止精度について向上を図ることができる。
また、エアベース比率が所定条件を満たし、水素ガスに対して弁別性のある期間における半導体式ガスセンサのセンサ値から所定濃度以上の水素ガスが存在すると判断した場合に、警報出力を禁止させる。ここで、本件発明者らは、半導体式ガスセンサ10の劣化が進行すると、検知対象ガスの測定期間において得られるセンサ値は、水素ガスに対して極めて鋭敏な反応を示し、もはや水素ガスによって支配的になってしまうことを見出した。このため、このような場合には例えば警報閾値を変更したとしても水素ガスによって警報閾値を超えてしまうこともあり、警報出力を禁止することが誤警報防止の観点において適切であるといえる。従って、より適切に誤警報を防止することができる。
また、エアベース比率が0.9以下であるときに所定条件を満たすと判断することが好ましい。ここで、本件発明者らは、半導体式ガスセンサ10が劣化してエアベース比率が0.9以下となる領域においては、水素ガスに対する鋭敏化傾向が急激に高まる可能性があることを見出した。このため、エアベース比率が0.9以下であるときに所定条件を満たすと判断することで、より一層確実に誤警報を防止することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、可能な範囲で適宜他の技術を組み合わせてもよい。
例えば、本実施形態に係るガス警報器1は、検知対象となる還元性ガスがメタンガスである都市ガス向けの警報器として説明したが、これに限らず、検知対象となるガスがプロパンガスやブタンガスなどであるLPガス向けの警報器であってもよい。また、ガス警報器1は、火災警報機能を更に有するガス火災警報器として構成されてもよい。
加えて、上記では、半導体式ガスセンサ10から電圧信号を抵抗値換算した値をセンサ値としたが、これに限らず、電圧信号をセンサ値としてもよい。この場合、上記説明においてセンサ値の大小関係の概念が逆になるなど、適宜処理内容が変わることはいうまでもない。また、センサ値は抵抗値や電圧信号に限らず、電圧信号を濃度換算した値であってもよい。すなわち、センサ値とは、出力される信号そのもの、又はその信号から求められる値であれば、特に上記に限られるものではない。
さらに、本実施形態においては検知対象ガスがメタンガスであるため、上記した期間を測定期間としたが、検知対象ガスが他のガスとなる場合には、他の期間が測定期間となることはいうまでもない。さらに、検知対象ガスがメタンガスであっても、他の期間を測定期間としてもよい。加えて、水素ガスに対する弁別性ある期間についても可能であれば他の期間であってもよい。