JP6729964B2 - 時計遺伝子を指標とするpge2産生抑制剤のスクリーニング方法 - Google Patents

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Description

本発明は、PGE2産生抑制剤をスクリーニングする方法に関する。
皮膚は、紫外線への曝露により種々の影響を受ける。その際に皮膚内で産生される種々のケミカルメディエータ等は、炎症を引き起こし、皮膚組織に大きなダメージを与える。かかるケミカルメディエータとしては、アラキドン酸代謝物であるプロスタグランジン類やロイコトリエン類、サイトカインの一種であるインターロイキン類や腫瘍壊死因子−αなどがあり、中でもプロスタグランジン類E2(PGE2)は代表的な炎症性メディエータとして広く知られている。
ところで、生体内の細胞に存在する「時計遺伝子」は、日リズムと称される約24時間の周期性を生体において維持する機能を有していることが知られている。時計遺伝子としては具体的な遺伝子が複数知られており、例えば、例えば昼に発現が活性化されるPeriodやCry、夜に発現が活性化されるBmal1やClockなどが知られている。
時計遺伝子の発現調節に関しては研究途上ではあるが、これまでに特定の植物エキス等にBmal1等の時計遺伝子の発現調節機能が存在することが報告されている(特許文献1等)。また、メラノサイトにおける時計遺伝子の発現量の変化を指標として美白素材をスクリーニングする方法も提案されている(特許文献2)。
国際公開2011/122040号パンフレット 特開2015−208317号公報
PGE2は生体の恒常性維持に重要な役割を果たす一方で、紫外線への曝露等によって
PGE2産生が高まると炎症が引き起こされて、皮膚組織に大きなダメージが与えられ、
シワやシミ等の皮膚老化が進行する恐れがあるため、皮膚におけるPGE2産生は抑制す
ることが望ましい。
かかる状況に鑑みて、本発明は、PGE2産生抑制剤をスクリーニングする新たな方法
を提供することを課題とする。
本発明者らは、時計遺伝子について研究を進め、従来知られていなかった、時計遺伝子とPGE2産生との関係を見出した。すなわち、皮膚のケラチノサイト(角化細胞)にお
ける時計遺伝子の発現量の変動が、PGE2量の産生に影響を及ぼすことを見出した。そ
して、この知見をもとに、時計遺伝子を指標とすることによりPGE2産生抑制剤をスク
リーニングできることに想到し、完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]被験物質を細胞に添加する工程、及び
被験物質を添加した細胞での時計遺伝子の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該時計遺伝子の発現量と比較して変化した被験物質を選択する工程、
を含む、PGE2産生抑制剤のスクリーニング方法。
[2]前記細胞がケラチノサイトである、[1]に記載のスクリーニング方法。
[3]前記時計遺伝子がDec1であって、前記変化がDec1の発現抑制である、[1]又は[2]に記載のスクリーニング方法。
[4]前記時計遺伝子がBmal1であって、前記変化がBmal1の発現亢進である、[
1]又は[2]に記載のスクリーニング方法。
[5]前記PGE2産生抑制剤は紫外線照射時のPGE2産生を抑制する作用を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のスクリーニング方法。
[6][1]〜[5]のいずれかに記載のスクリーニング方法を行う工程、及び
前記工程により選択された物質を含有させる工程、
を含む、組成物の設計方法。
[7]前記組成物が、美白用、抗炎症用、又は抗シワ用である、[6]に記載の設計方法。
本発明により、時計遺伝子を指標とした、新たなPGE2産生抑制のスクリーニング方
法が提供される。
時計遺伝子の発現を阻害したケラチノサイトにおける紫外線照射時のPGE2産生量を表すグラフ。
<時計遺伝子>
本発明のスクリーニング方法は、時計遺伝子を指標とする。時計遺伝子は、「概日リズム」と称される約24時間の周期性を生体において維持する機能を有していることが知られており、具体的な遺伝子が複数知られている。本発明のスクリーニング方法において指標とする時計遺伝子は、肌、特にケラチノサイトにおけるPGE2産生機能と何らかの関
係を有する時計遺伝子である。具体的には、Bmal1及びDec1からなる群から選択される時計遺伝子であることが好ましい。しかしながらこれらのものに限定されず、既知の時計遺伝子であって、紫外線を細胞に照射した際又は既知のPGE2産生作用を有する
成分や化合物を細胞に添加した際に、該細胞において発現量が変化する時計遺伝子は、本発明のスクリーニング方法において指標となる時計遺伝子として用いることができる。このように指標とする時計遺伝子を選択する際に用いることができるPGE2産生作用を有
する成分や化合物としては、非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)等が挙げられる。
すなわち本発明のスクリーニング方法は、細胞にPGE2産生抑制作用を有する化合物
を添加し、該添加により発現量が変化した時計遺伝子をPGE2産生抑制剤のスクリーニ
ング方法の指標として選択するステップ、を含んでもよい。
本発明のスクリーニング方法は、被験物質を添加した細胞での時計遺伝子の発現量が、被験物質を添加しなかった細胞における該時計遺伝子の発現量と比較して変化した被験物質を選択するステップを有する。
時計遺伝子とPGE産生との関係は、時計遺伝子の種類によりその発現量変化の状況が異なる。すなわち本発明のスクリーニング方法では、被験物質を細胞に添加する添加ステップを経ることで、被験物質を添加した細胞での時計遺伝子の発現量が変化した場合に、該時計遺伝子の発現量が変化した被験物質をPGE産生抑制剤として選択するが、その遺伝子発現の変化は、時計遺伝子の種類に依存することを本発明者らは確認している。
例えば、本発明のスクリーニング方法の指標とする時計遺伝子がBmal1であった場合、Bmal1の発現亢進とPGE2産生抑制とが相関する。そのため、被験物質を細胞
に添加することで、Bmal1の発現亢進が生じた被験物質は、PGE2産生抑制作用を
有する成分として選択できる。
また、本発明のスクリーニング方法の指標とする時計遺伝子がDec1であった場合、Dec1の発現抑制とPGE2産生抑制とが相関する。そのため、被験物質を細胞に添加
することで、Dec1の発現抑制が生じた被験物質は、PGE2産生抑制作用を有する成
分として選択できる。
本明細書において「PGE2産生抑制」作用とは、細胞、特にケラチノサイトにおける
PGE2量を低下させる作用、又は、細胞、特にケラチノサイトにおけるPGE2量の上昇を抑制する作用をいう。より好ましくは、紫外線照射時の、細胞、特にケラチノサイトにおけるPGE2量を低下させる作用、又は、細胞、特にケラチノサイトにおけるPGE2量の上昇を抑制する作用をいう。
本発明のスクリーニング方法において、被験物質を添加した細胞での時計遺伝子の発現量は、被験物質を添加しなかった細胞における該時計遺伝子の発現量と比較して変化していればよく、通常、被験物質添加後12または24時間経過後に3%以上の変化があった場合に変化したとすることができ、好ましくは5%以上の変化であり、より好ましくは10%以上の変化であり、更に好ましくは15%以上の変化であり、特に好ましくは20%以上の変化であり、最も好ましくは25%以上の変化である。
より具体的には、時計遺伝子がBmal1である場合、Bmal1の発現亢進は、発現量が通常10%以上、好ましくは15%以上、より好ましくは20%以上となることをいう。時計遺伝子がDec1である場合、Dec1の発現抑制は、発現量が通常90%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下となることをいう。
時計遺伝子の発現量は、任意の方法を用いて測定することができる。例えば、該遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、定量的な検出を行う。なお、既知の時計遺伝子の塩基配列はそれぞれ公開されており、当業者は適宜プライマーを設計してPCRに供することができる。
また、例えば、時計遺伝子によりコードされるタンパク質の細胞内存在量を、常法により定量的に測定して、時計遺伝子の発現量としてもよい。
本発明のスクリーニング方法において、被験物質を添加する細胞は、時計遺伝子が存在する細胞であれば特段限定されないが、ケラチノサイトであることが好ましい。
本発明のスクリーニング方法が対象とする被験物質は、純物質、動植物由来の抽出物、又はそれらの混合物等のいずれであってもよい。
動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物乃至は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとし、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花穂、花蕾等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3−ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される1種乃至は2種以上が好適なものとして例示することができる。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位乃至はその乾燥物1質量に対して、溶媒を1〜3
0質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却し後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法により選択されたPGE2産生抑制剤は、PGE2産生抑制作用を有する。
PGE2産生が亢進すると、皮膚において炎症が生じ、シワやたるみが生じる原因とな
り得ることが知られているため、本発明のスクリーニング方法により選択されたPGE2
産生抑制剤は、抗炎症用、抗シワ用、抗老化用などの組成物の有効成分として好適に配合することができる。
また、PGE2産生が亢進すると、メラノサイトが活性化され、チロシナーゼによりメ
ラニン産生が亢進し、シミやソバカス、くすみが生じる原因となり得ることが知られているため、本発明のスクリーニング方法により選択されたPGE2産生抑制剤は、美白用組
成物にも有効成分として好適に配合することができる。
すなわち、本明細書は、本発明のスクリーニング方法を行い、それにより選択された物質(PGE2産生抑制剤)を含有させる工程を含む、組成物の設計方法も提供する。そし
て、かかる組成物は、経皮投与される組成物(例えば、化粧料、医薬部外品、医薬品等の皮膚外用剤)や、経口投与/摂取される組成物(例えば、飲食品、医薬部外品、医薬品等の経口組成物)などの態様とすることができる。
また、組成物の剤型は特に限定されない。例えば、化粧料として設計される場合の剤型は、通常知られているローション剤型、乳液剤型、エッセンス剤型、クリーム剤型、粉体含有剤型等が挙げられる。
本発明のスクリーニング方法により選択されたPGE2産生抑制剤を含有する組成物を
設計する際、PGE2産生抑制剤の含有量(配合量)は、通常、0.00001質量%以
上、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上であり、通常80質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。上記範囲とすることで、好適にPGE2産生抑制効果を奏する組成物とすることができ
る。
また、該組成物に含有させるPGE2産生抑制剤の種類は、1種類のみでなく2種類以
上であってもよい。
本発明のスクリーニング方法により選択されたPGE2産生抑制剤を含有する組成物を
設計する際は、前述した態様や用途に応じて、適宜必要な成分を配合するよう、設計してよい。
例えば、化粧料組成物として設計する場合は、通常化粧料に使用される成分を広く配合することが可能であり、また、その剤型や用途についても、何ら限定されない。以下、主に化粧料に適用される場合に化粧料中に含有させることができる成分について説明する。
有効成分としては、美白成分、シワ改善成分、抗炎症成分、動植物由来の抽出物等が挙げられる。なお、本発明のスクリーニング方法により選択されたPGE2産生抑制剤と重
複して配合してもよい。
美白成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、4−n−ブチルレゾルシノール、アスコルビン酸グルコシド、3−О−エチルアスコルビン酸、トラネキサム酸、アルブチン、1−トリフェニルメチルピペリジン、1−トリフェニルメチルピロリジン、2−(トリフェニルメチルオキシ)エタノール、2−(トリフェニルメチルアミノ)エタノール、2−(トリフェニルメチルオキシ)エチルアミン、トリフェニルメチルアミン、トリフェニルメタノール、トリフェニルメタン及びアミノジフェニルメタン、N−(p−トルイル)システイン酸、N−(p−メトキシベンゾイル)
システイン酸、パンテノール、パントテン酸等が挙げられる。更にその他の美白成分として、N−ベンゾイル−セリン、N−(p−メチルベンゾイル)セリン、N−(p−エチルベンゾイル)セリン、N−(p−メトキシベンゾイル)セリン、N−(p−フルオロベンゾイル)セリン、N−(p−トリフルオロメチルベンゾイル)セリン、N−(2−ナフトイル)セリン、N−(4−フェニルベンゾイル)セリン、N−(p−メチルベンゾイル)セリンメチルエステル、N−(p−メチルベンゾイル)セリンエチルエステル、N−(2−ナフトイル)セリンメチルエステル、N−ベンゾイル−O−メチルセリン、N−(p−メチルベンゾイル)−O−メチルセリン、N−(p−メチルベンゾイル)−O−アセチルセリン、N−(2−ナフトイル)−O−メチルセリン等が挙げられる。
化粧料における美白成分の含有量は、通常0.01〜30質量%であり、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜5質量%がより好ましい。
シワ改善成分としては、一般的に化粧料に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、ビタミンA又はその誘導体が、レチノール、レチナール、レチノイン酸、トレチノイン、イソトレチノイン、レチノイン酸トコフェロール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノールやウルソール酸ベンジルエステル、ウルソール酸リン酸エステル、ベツリン酸ベンジルエステル、ベンジル酸リン酸エステルが挙げられる。
化粧料におけるシワ改善成分の含有量は、通常0.01〜30質量%であり、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
動植物由来の抽出物としては、一般的に医薬品、化粧料、食品等に用いられているものであれば特に限定はない。例えば、アケビエキス、アスナロエキス、アスパラガスエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アーモンドエキス、アルニカエキス、アロエエキス、アロニアエキス、アンズエキス、イチョウエキス、インドキノエキス、ウイキョウエキス、ウドエキス、エイジツエキス、エゾウコギエキス、エンメイソウエキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オウレンエキス、オタネニンジンエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、オレンジエキス、カキョクエキス、カッコンエキス、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、カンゾウエキス、キウイエキス、キューカンバーエキス、グアバエキス、クジンエキス、クチナシエキス、クマザサエキス、クララエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、黒米エキス、クロレラエキス、クワエキス、ケイケットウエキス、ゲットウヨウエキス、ゲンチアナエキス、ゲンノショウコエキス、紅茶エキス、ゴボウエキス、コメエキス、コメ発酵エキス、コメヌカ発酵エキス、コメ胚芽油、コケモモエキス、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、サンシャエキス、サンショウエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シソエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、シャクヤクエキス、ショウキョウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、ステビアエキス、ステビア発酵物、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、セージエキス、ゼニアオイエキス、センキュウエキス、センブリエキス、ソウハクヒエキス、ダイオウエキス、ダイズエキス、タイソウエキス、タイムエキス、タンポポエキス、茶エキス、チョウジエキス、チンピエキス、甜茶エキス、トウガラシエキス、トウキエキス、トウキンセンカエキス、トウニンエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ニンニクエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、ハスエキス、パセリエキス、バーチエキス、ハマメリスエキス、ヒキオコシエキス、ヒノキエキス、ビワエキス、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、ブドウ種子エキス、ヘチマエキス、ベニバナエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ボタンエキス、ホップエキス、マツエキス、マヨナラエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、メリッサエキス、モズクエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユキノシタエキス、ユズエキス、ユリエキス、ヨクイニンエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、緑
茶エキス、リンゴエキス、ルイボス茶エキス、レイシエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンギョウエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス、ワレモコウエキス等のエキスが好ましいものとして挙げられる。
化粧料中における動植物由来抽出物の含有量は、通常0.01〜30質量%であり、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
食品中における動植物抽出物の含有量は、通常0.01〜80質量%であり、0.1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましい。
抗炎症成分としては、クラリノン、グラブリジン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、パントテニルアルコール等が挙げられ、好ましくは、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸アルキル及びその塩、並びに、グリチルレチン酸及びその塩である。
化粧料中における抗炎症成分の含有量は、通常0.01〜30質量%であり、0.1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
油性成分としては、極性油、揮発性炭化水素油等が挙げられる。
極性油としては、合成エステル油として、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、イソノナン酸2−エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ−2−エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ−2−エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパンを挙げることができる。
さらに、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、オクチルメトキシシンナメート等も挙げられる。
また、天然油として、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が挙げられる。
揮発性炭化水素油としては、イソドデカン、イソヘキサデカン等が挙げられる。
界面活性剤としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオ
ン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、
ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等) 、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコ
ール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、等が挙げられる。
多価アルコールとしては、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。
増粘剤としては、グアーガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、ペクチン、マンナン、デンプン、キサンタンガム、カードラン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、グリコーゲン、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、トラガントガム、ケラタン硫酸、コンドロイチン、ムコイチン硫酸、ヒドロキシエチルグアガム、カルボキシメチルグアガム、デキストラン、ケラト硫酸、ローカストビーンガム、サクシノグルカン、カロニン酸,キチン、キトサン、カルボキシメチルキチン、寒天、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ベントナイト等が挙げられる。
粉体類としては、表面を処理されていてもよい、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面を処理されていてもよい、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類、表面を処理されていてもよい、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていてもよい赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2'−ヒドロキシ−5'−t−オクチルフェニル)ベンゾ
トリアゾール、4−メトキシ−4'−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類
、等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<参考例>UV刺激によるPGE2産生量への時計遺伝子の影響
以下の手順で、ケラチノサイトにおける種々の時計遺伝子の発現をsiRNAで阻害することにより、UV刺激によるPGE2産生量への時計遺伝子の影響を検討した。
ケラチノサイト基本培地(Humedia-KG2、クラボウ社製)を用いて、24ウェルプレー
トにヒト由来正常ケラチノサイト培養細胞を6.0×104個/ウェルになるように播種
し、37℃、二酸化炭素5%中にて培養した。翌日、すべてのウェルについて、以下の条件で培地交換した。すなわち3ウェルには新しいケラチノサイト培養用完全培地(コントロール)500μLを添加し、残りのウェルには最終濃度4〜6nMとなるよう調製した時計遺伝子のsiRNAを含むケラチノサイト培養用完全培地500μLを3ウェルずつ添加した。発現を阻害する時計遺伝子としては、Bmal1、Dec1、Per2、及びCry1を対象とした。24時間培養後、全てのウェルについて、最終濃度100nMとなるようにデキサメタゾン(和光純薬工業社製)を添加したケラチノサイト基本培地(Humedia-KG2、クラボウ社製)500μLに交換した。2時間培養後、PBS(リン酸緩衝
生理食塩水)で洗浄し、紫外線ランプを用いて50mJ/cm2となるように紫外線を照
射した。照射後の細胞を、新しいケラチノサイト培養用完全培地に交換してさらに24時間培養した。培養上清を回収して試料とし、ヒトPGE2 Biotrak Easy ELISA キット(GEヘルスケア社製)を用いてPGE2量を測定した。コントロール群にて産生されるPGE2量に対する時計遺伝子発現抑制群のPGE2量を百分率で算出し、PGE2産生量(%)とした。
結果を図1に示す。
Dec1の発現阻害により、コントロールと比較して紫外線照射時のPGE2産生量が
低下することが確認された。また、Bmal1の発現阻害により、コントロールと比較して紫外線照射時のPGE2産生量が増加することが確認された。
一方、Per2及びCry1の発現を阻害しても、紫外線照射時のPGE2産生量には
影響しないことが認められた。
<実施例1:培養ヒト正常ケラチノサイトを用いたDec1のmRNA発現量を指標とするスクリーニング>
培養細胞では、デキサメタゾン含有培地で2時間培養することにより生体リズムがリセットされる。この反応を用い、以下の手順で、ケラチノサイトにおける生体リズムへの植物抽出エキスの作用を評価し、時計遺伝子Dec1の発現量を指標としてPGE2産生抑
制剤のスクリーニングを行った。
ケラチノサイト基本培地(Humedia-KG2、クラボウ社製)を用いて、24ウェルプレー
トにヒト正常ケラチノサイト(クラボウ社製)を6.0×104個/ウェルになるように
播種した。5%二酸化炭素条件下、37℃で24時間培養を行った。その後、すべてのウェルについて、以下の条件で培地交換した。すなわち3ウェルには新しいケラチノサイト培養用完全培地500μLを添加し(コントロール)、残りのウェルには被験物質として最終濃度1質量%となるよう調製した種々の植物抽出エキスを含むケラチノサイト培養用完全培地500μLを3ウェルずつ添加した。24時間培養後、全てのウェルについて、最終濃度100nMとなるようにデキサメタゾン(和光純薬工業社製)を添加したケラチノサイト培養用完全培地(クラボウ社製)500μLに交換した。2時間培養後、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、被験物質毎に3ウェルをまとめて回収したケラチノ
サイトにRNeasyMiniKit(QIAGEN社製)のRLT bufferを添加して、mRNAを抽出した。
抽出したmRNAを用いてQuantiTect Primer Assay(QIAGEN社製)を用いてRT−PC
Rを行いDec1のmRNA量を測定した。Dec1のmRNA発現量は、β−actinを内在性コントロールとして比較CT法により算出し、コントロールのケラチノサイトにおけるDec1のmRNA発現量を「1」とした場合の相対値で示した。Dec1の発現がコントロールより低い場合に、Dec1の発現抑制作用があると判断した。
結果を表1に示す。アマチャエキス及びクチナシエキスにDec1発現抑制作用が認められた。
Figure 0006729964
<試験例1:紫外線照射時のPGE2産生抑制作用評価>
以下の手順で、時計遺伝子Dec1の発現を抑制する植物抽出エキスの、PGE2産生
抑制効果を評価した。
ケラチノサイト基本培地(Humedia-KG2、クラボウ社製)を用いて、24ウェルプレー
トにヒト由来正常ケラチノサイト培養細胞を6.0×104個/ウェルになるように播種
し、37℃、二酸化炭素5%中にて培養した。翌日、すべてのウェルについて、以下の条件で培地交換した。すなわち3ウェルには新しいケラチノサイト培養用完全培地(コントロール)500μLを添加し、残りのウェルには被験物質として最終濃度1質量%となるよう調製した植物抽出エキスを含むケラチノサイト培養用完全培地500μLを3ウェルずつ添加した。24時間培養後、全てのウェルについて、最終濃度100nMとなるようにデキサメタゾン(和光純薬工業社製)を添加したケラチノサイト基本培地(Humedia-KG2、クラボウ社製)500μLに交換した。2時間培養後、PBS(リン酸緩衝生理食塩
水)で洗浄し、紫外線ランプを用いて50mJ/cm2となるように紫外線を照射した。
照射後の細胞を、新しいケラチノサイト培養用完全培地(コントロール)、または植物抽出エキスを含むケラチノサイト基本培地(Humedia-KG2、クラボウ社製)にて、さらに2
4時間培養した培養上清を試料とし、ヒトPGE2 Biotrak Easy ELISA キット(GEヘルスケア社製)を用いてPGE2量を測定した。コントロール群にて産生されるPGE2量に対する植物抽出エキス添加群のPGE2量を百分率で算出し、PGE2産生量(%)とした。
表2に結果を示す。アマチャエキス及びクチナシエキスは、紫外線によるPGE2産生
抑作用を有することがわかった。
Figure 0006729964
<実施例2:培養ヒト正常ケラチノサイトを用いたBmal1のmRNA発現量を指標とするスクリーニング>
mRNA量を測定した時計遺伝子をBmal1とした以外は実施例1と同様の手順を行い、PGE2産生抑制剤のスクリーニングを行った。培養ヒト正常ケラチノサイトにおけ
るBmal1の発現がコントロールより高い場合に、Bmal1の発現亢進作用があると判断した。
結果を表3に示す。ムラサキシキブ果実エキス及びアッケシソウエキスにBmal1発現亢進作用が認められた。
Figure 0006729964
<試験例2:紫外線照射時のPGE2産生抑制作用評価>
試験例1と同様の手順で、実施例2でBmal1の発現亢進作用が認められた植物エキスの、PGE2産生抑制効果を評価した。
表4に結果を示す。ムラサキシキブ果実エキス及びアッケシソウエキスは、紫外線によるPGE2産生抑作用を有することがわかった。
Figure 0006729964
本発明により、時計遺伝子を指標とした、新たなPGE2産生抑制のスクリーニング方
法が提供される。これにより、抗炎症用組成物等の設計・製造に有用となり得る素材の探索が可能になるので、産業上有用である。

Claims (4)

  1. 被験物質をケラチノサイトに添加する工程、及び
    被験物質を添加したケラチノサイトでの時計遺伝子の発現量が、被験物質を添加しなかったケラチノサイトにおける該時計遺伝子の発現量と比較して変化した被験物質を選択する工程、
    を含
    前記時計遺伝子がDec1であって、前記変化がDec1の発現抑制である、又は
    前記時計遺伝子がBmal1であって、前記変化がBmal1の発現亢進である、PGE産生抑制剤のスクリーニング方法。
  2. 前記PGE産生抑制剤は紫外線照射時のPGE産生を抑制する作用を有する、請求項1に記載のスクリーニング方法。
  3. 請求項1又は2に記載のスクリーニング方法を行う工程、及び
    前記工程により選択された物質を含有させる工程、
    を含む、組成物の設計方法。
  4. 前記組成物が、美白用、抗炎症用、又は抗シワ用である、請求項に記載の設計方法。
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