JP6729222B2 - エネルギ吸収デバイス及び免震構造 - Google Patents

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本発明は、エネルギ吸収デバイス及び免震構造に関する。
下記特許文献1及び特許文献2には、環状に形成された板バネや衝撃吸収部材が塑性変形されることで建物に入力された地震等によるエネルギを吸収することが可能とされた制振ダンパおよび免震構造が開示されている。
特開2004−183903号公報 特開平9−49346号公報
ところで、引用文献1に記載された板ばねを円形に屈曲させた制振ダンパでは、建物の荷重を支持した状態、すなわち上下方向への荷重が入力された状態で環状に形成された板バネが水平方向に変形される。そのため、環状に形成された板バネの塑性変形に要する荷重が安定し難い。
また、引用文献2に記載された免震構造では、環状に形成された衝撃吸収部材の軸方向が建物の水平方向へ向けられた状態で配置される。そのため、建物の上下方向に作用する荷重による衝撃を有効に吸収できる。その一方で、この衝撃吸収部材は、軸方向に変形し難い。そのため、この衝撃吸収部材には、水平方向に作用する荷重による衝撃の吸収については方向による性能のバラつきが大きくなるという課題がある。
本発明は上記事実を考慮し、入力された荷重に対してエネルギを安定して吸収することができるエネルギ吸収デバイス及び免震構造を得ることが目的である。
第1の態様に係るエネルギ吸収デバイスは、上下方向への荷重を負担しない状態で、水平方向への荷重により一部が塑性変形されてエネルギを吸収するエネルギ吸収デバイスであって、上下方向が軸線方向とされ、上下方向から見て、互いに直交する第1方向及び第2方向のそれぞれで対称な環状を成しており、前記第1方向の寸法が前記第2方向の寸法よりも大きく設定された筒状体と、前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の一方に設けられ、第1部材が接続される第1接続部と、前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の他方に設けられ、第2部材が接続され、前記第1接続部に対する水平方向の相対変位によって前記筒状体に塑性変形が生じる第2接続部と、を備えている。
第1の態様に係るエネルギ吸収デバイスによれば、水平方向への荷重が、筒状体の第1接続部及び第2接続部の少なくとも一方に入力されると、第2接続部の位置が第1接続部に対して相対的に変化する。そして、筒状体に塑性変形が生じることでエネルギが吸収される。
ここで、第1の態様では、上下方向への荷重を負担しない状態で水平方向への荷重が入力される。これにより、上下方向へのせん断やねじれが生じない状態で筒状体に塑性変形が生じる。その結果、筒状体の塑性変形に要する荷重を安定させることができる。また、筒状体の第1方向への寸法が第2方向への寸法よりも長く設定されていることにより、荷重入力方向によって、筒状体の塑性変形に要する荷重がバラつくことを抑制することができる。これにより、エネルギ吸収デバイスに入力された荷重に対してエネルギを安定して吸収することができる。
第2の態様に係るエネルギ吸収デバイスは、前記第2接続部に入力される水平方向への荷重をPとし、前記第1接続部に対する前記第2接続部の水平方向への変位量をδとし、前記変位量δの増分に対する前記荷重Pの増分の比率を剛性Kとし、少なくとも前記第2接続部が前記第1接続部に対して前記第2方向でかつ前記第1接続部と離間する方向へ相対的に変位される際の前記変位量δが、変形される前の前記筒状体の前記第2方向への寸法の1/2となる変位量まで増加する過程において、前記剛性Kの値が増加に転じないように変形される前の前記筒状体の形状及び寸法が設定されている。
第2の態様に係るエネルギ吸収デバイスによれば、少なくとも上記方向への第2接続部の第1接続部に対する変位量δが、変形される前の筒状体の第2方向への寸法の1/2となる変位量まで増加する過程において、剛性Kが増加に転じない。これにより、第1接続部に対する第2接続部の水平方向への変位量δが、変形される前の筒状体の第2方向への寸法の1/2以下となる領域において、第2接続部に入力される水平方向への荷重Pが急激に上昇することを抑制することができる。その結果、エネルギ吸収デバイスに入力された荷重に対してエネルギを安定して吸収することができる。
第3の態様に係るエネルギ吸収デバイスは、第1又は第2の態様に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、前記第2接続部に入力される水平方向への荷重をPとし、前記第1接続部に対する前記第2接続部の水平方向への変位量をδとし、前記変位量δの増分に対する前記荷重Pの増分の比率を剛性Kとし、前記筒状体の前記第2方向への外法の寸法をDSとし、前記筒状体の厚み寸法をtとし、前記変位量δが増加する過程において、前記剛性Kの値が増加に転じる際の前記変位量δをδfとし、δf/(DS−t)の値が0.28以上となるように変形される前の前記筒状体の形状及び寸法が設定されている。
第3の態様に係るエネルギ吸収デバイスによれば、δf/(DS−t)の値が0.28以上となるように筒状体の形状及び寸法が設定されている。これにより、第2接続部が第1接続部に対して第2方向でかつ第1接続部と離間する方向へ変位されることで筒状体が変形される際に、筒状体の周に沿って面内方向に作用する張力が当該筒状体に生じることを抑制することができる。これにより、筒状体の変形の進展に伴う荷重(筒状体の塑性変形に要する荷重)の急激な上昇を抑制することができ、エネルギ吸収デバイスに入力された荷重に対してエネルギを安定して吸収することができる。
第4の態様に係るエネルギ吸収デバイスは、第1〜第3の何れかの態様に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、前記第2接続部が前記第1接続部に対して前記第2方向でかつ前記第1接続部と近接する方向へ相対的に変位されることで前記筒状体が降伏した際に前記第2接続部に入力されている荷重を降伏荷重Pcとし、前記第2接続部が前記第1接続部に対して前記第1方向へ相対的に変位されることで前記筒状体が降伏した際に前記第2接続部に入力されている荷重を降伏荷重Psとし、Pc/Psの値が、0.66以上でかつ1.18以下の範囲となるように変形される前の前記筒状体の形状及び寸法が設定されている。
第4の態様に係るエネルギ吸収デバイスによれば、Pc/Psの値が、0.66以上でかつ1.18以下の範囲となるように変形される前の筒状体の形状及び寸法が設定されていることにより、荷重入力方向によって、筒状体の塑性変形に要する荷重がバラつくことを抑制することができる。これにより、エネルギ吸収デバイスに入力された荷重に対してエネルギを安定して吸収することができる。
第5の態様に係るエネルギ吸収デバイスは、第4の態様に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、前記筒状体の前記第1方向への外法の寸法をDLとし、前記筒状体の前記第2方向への外法の寸法をDSとし、前記筒状体の厚み寸法をtとし、前記筒状体の上下方向への幅寸法をBとし、前記筒状体を形成する材料の降伏強度をσyとし、前記降伏荷重Pc及び前記降伏荷重Psが、以下の式(1)及び式(2)を満たす。
Pc=(2×t×B×σy)/(DL−t) 式(1)
Ps=(t×B×σy)/(DS−t) 式(2)
第5の態様に係るエネルギ吸収デバイスによれば、筒状体の厚み寸法t、幅寸法B、降伏強度σy、外法の寸法DL及びDSを設定することで、降伏荷重Pc及び降伏荷重Psの比率Pc/Psを容易に調整し、荷重入力方向によって、筒状体の塑性変形に要する荷重がバラつくことを抑制することができる。
第6の態様に係るエネルギ吸収デバイスは、第1〜第5の何れかの態様に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、前記筒状体の前記第1方向への外法の寸法をDLとし、前記筒状体の前記第2方向への外法の寸法をDSとし、前記筒状体の厚み寸法をtとし、前記筒状体の扁平率Fmを(DS−t)/(DL−t)とし、前記扁平率Fmの値が、0.33以上でかつ0.59以下の範囲となるように変形される前の前記筒状体の寸法が設定されている。
第6の態様に係るエネルギ吸収デバイスによれば、扁平率Fmの値が、0.33以上でかつ0.59以下の範囲となるように変形される前の筒状体の寸法を設定することにより、荷重入力方向によって、筒状体の塑性変形に要する荷重がバラつくことを抑制することができる。これにより、エネルギ吸収デバイスに入力された荷重に対してエネルギを安定して吸収することができる。
第7の態様に係るエネルギ吸収デバイスは、第1〜第6の何れかの態様に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、前記筒状体の内部には、該筒状体における前記第1接続部及び該第1接続部と隣接している部分及び前記第2接続部及び該第2接続部と隣接している部分の変形を規制する変形規制部材が設けられている。
第7の態様に係るエネルギ吸収デバイスによれば、筒状体における第1接続部及び第1接続部と隣接している部分及び第2接続部及び第2接続部と隣接している部分の変形を規制する変形規制部材が、筒状体の内部に設けられている。これにより、筒状体における第1接続部及びその周縁部及び第2接続部及びその周縁部の局所的なひずみや応力の上昇に起因する当該部分の延性破壊、脆性破壊、疲労破壊などによる損傷の発生を抑制することができる。
第8の態様に係る免震構造は、建物の上部構造物と下部構造物との間に設けられ、前記上部構造物を前記下部構造物に対して水平方向に移動可能に支持する支持部と、前記上部構造物が前記下部構造物に対して水平方向に移動されることで前記筒状体が塑性変形される第1〜第7の何れかの態様に係るエネルギ吸収デバイスと、を備えている。
第8の態様に係る免震構造によれば、上部構造物が支持部によって下部構造物に対して水平方向に移動可能に支持されている。この上部構造物及び下部構造物を備えた建物に地震等による荷重が作用して、上部構造物が下部構造物に対して水平方向へ移動されると、エネルギ吸収デバイスの筒状体が塑性変形される。これにより、建物に加わる地震等のエネルギを安定して吸収することができる。
本発明に係るエネルギ吸収デバイス及び免震構造は、入力された荷重に対してエネルギを安定して吸収することができる、という優れた効果を有する。
第1実施形態に係るエネルギ吸収デバイスを上下方向から見た平面図である。 第1実施形態に係るエネルギ吸収デバイスを図1に示された1B−1B線に対応する線に沿って切断した断面を示す側断面図である。 本実施形態の免震構造が建物の上部構造と下部構造との間に適用された例を示す側面図である。 第2実施形態に係るエネルギ吸収デバイスを示す図1Aに対応する平面図である。 第3実施形態に係るエネルギ吸収デバイスを示す図1Aに対応する平面図である。 第4実施形態に係るエネルギ吸収デバイスを示す図1Aに対応する平面図である。 第5実施形態に係るエネルギ吸収デバイスを示す図1Aに対応する平面図である。 第1実施形態に係るエネルギ吸収デバイスの解析モデルを示す斜視図である。 図5Aに示されたエネルギ吸収デバイスの解析モデルに入力される荷重の方向を説明するための平面図である。 解析を行ったエネルギ吸収デバイスの各部の寸法等を示す表である。 筒状体の荷重と変位との関係において、剛性、耐力、変位の定義を説明するためのグラフである。 図6に示されたケース番号2に係るエネルギ吸収デバイスの筒状体に入力された荷重と変位との関係を示すグラフである。 図6に示されたケース番号6に係るエネルギ吸収デバイスの筒状体に入力された荷重と変位との関係を示すグラフである。 図6に示されたケース番号2に係るエネルギ吸収デバイスの筒状体に0°方向への荷重が入力された際に当該筒状体に生じる応力と変形を示す図である。 図6に示されたケース番号6に係るエネルギ吸収デバイスの筒状体に0°方向への荷重が入力された際に当該筒状体に生じる応力と変形を示す図である。 図6に示されたケース番号9に係るエネルギ吸収デバイスの筒状体に入力された荷重と変位との関係を示すグラフである。 図6に示されたケース番号1〜10に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、筒状体の第2方向(短径方向)に圧縮変形を与えた場合の耐力Pcに対する第1方向(短径直交方向)にせん断変形を与えた場合の耐力Psの比率Pc/Psが耐力(降伏耐力Py)に与える影響を説明するためのグラフである。 図6に示されたケース番号1〜10に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、筒状体の第2方向(短径方向)に圧縮変形を与えた場合の耐力Pcに対する第1方向(短径直交方向)にせん断変形を与えた場合の耐力Psの比率Pc/Psが耐力((DS−t)×1/2変位した際の1/2変形耐力Pe)に与える影響を説明するためのグラフである。 図6に示されたケース番号11〜19に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、筒状体の第2方向(短径方向)に圧縮変形を与えた場合の耐力Pcに対する第1方向(短径直交方向)にせん断変形を与えた場合の耐力Psの比率Pc/Psが耐力(降伏耐力Py)に与える影響を説明するためのグラフである。 図6に示されたケース番号11〜19に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、筒状体の第2方向(短径方向)に圧縮変形を与えた場合の耐力Pcに対する第1方向(短径直交方向)にせん断変形を与えた場合の耐力Psの比率Pc/Psが耐力((DS−t)×1/2変位した際の1/2変形耐力Pe)に与える影響を説明するためのグラフである。 図6に示されたケース番号1〜10に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、筒状体の扁平率Fmが耐力Pyに与える影響を説明するためのグラフである。 図6に示されたケース番号1〜10に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、筒状体の扁平率Fmが耐力Peに与える影響を説明するためのグラフである。 図6に示されたケース番号11〜19に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、筒状体の扁平率Fmが耐力Pyに与える影響を説明するためのグラフである。 図6に示されたケース番号11〜19に係るエネルギ吸収デバイスにおいて、筒状体の扁平率Fmが耐力Peに与える影響を説明するためのグラフである。 筒状体の第2方向への寸法(DS−t)に対する剛性の変曲点の発現する変位δfの比率と、筒状体の180°方向における耐力Pe(Pe(180°))に対する0°方向における耐力Pe(Pe(0°))の比率との関係を示すグラフである。 図6に示されたケース番号6に係るエネルギ吸収デバイスの筒状体に180°方向への荷重が入力された際に当該筒状体に生じる応力と変形を示す図である。 図6に示されたケース番号6に係るエネルギ吸収デバイスの筒状体に90°方向への荷重が入力された際に当該筒状体に生じる応力と変形を示す図である。 筒状体の180°方向への変形に対する耐力を評価するためのモデルを示す図である。 筒状体の90°方向への変形に対する耐力を評価するためのモデルを示す図である。
図1A、図1B及び図2を用いて本発明の第1実施形態に係るエネルギ吸収デバイス及び免震構造について説明する。なお、本実施形態のエネルギ吸収デバイスを備えた建物の上下方向を矢印Vで示し、建物の水平方向を矢印Hで示す。
図2に示されるように、本実施形態のエネルギ吸収デバイス10は、建物12の免震構造に適用され、このエネルギ吸収デバイス10は、建物12に作用する地震等の外力に対してエネルギを吸収する。建物12は、その基礎等を構成する下部構造物14と、下部構造物14に支持部としてのアイソレータ16を介して支持された上部構造物18(図2では1階床梁を例示)と、下部構造物14と上部構造物18との間に設けられたエネルギ吸収デバイス10と、を含んで構成されている。
本実施形態のアイソレータ16は、軸受鋼等を球状に形成した転がり支承であり、複数のアイソレータ16が、上部構造物18と下部構造物14との間に水平方向Hに間隔をあけて配置されている。そして、複数の転がり支障(アイソレータ16)が転動することで、上部構造物18が下部構造物14に対して水平方向Hに移動することが可能となっている。なお、アイソレータ16は、すべり支承や積層ゴムなど、他の構成のアイソレータとしてもよい。
図1Bに示されるように、上部構造物18及び下部構造物14には、エネルギ吸収デバイス10が取付けられる下側連結部材20及び上側連結部材22が固定されている。この下側連結部材20と上側連結部材22とは、エネルギ吸収デバイス10を介して水平方向Hにつながれている。
ここで、図2に示されるように、本実施形態では、上部構造物18から下方へ作用する荷重(建物自重や積載物による荷重)は、アイソレータ16によって受け持たれる。これにより、上部構造物18からエネルギ吸収デバイス10へは、下方側への荷重は入力されないようになっていると共に、下部構造物14からエネルギ吸収デバイス10へは、上方側への荷重は入力されないようになっている。
そして、地震等による外力が建物12に作用する際、上部構造物18が下部構造物14に対して水平方向Hに移動されることで、下側連結部材20と上側連結部材22との水平方向Hへの間隔が変化する。これにより、エネルギ吸収デバイス10が変形することで、建物12に入力される地震等のエネルギを吸収することが可能となっている。
次に、エネルギ吸収デバイス10の詳細な構成について説明する。
図1Aに示されるように、エネルギ吸収デバイス10は、上方向(又は下方向)から見て環状に形成された筒状体24と、筒状体24において下側連結部材20及び上側連結部材22が接続される部分に沿って設けられた2つの変形規制部材26と、を含んで構成されている。
筒状体24は、厚みtとされた鋼管材が所定の幅B(上下方向への寸法)に切断されると共に所定の形状に変形(加工)されることにより形成されている。この筒状体24は、上方向(又は下方向)から見て略楕円形状に形成されていると共にその軸線方向が上下方向へ向けられた状態で使用される。なお、筒状体24の長径方向への外法の寸法(直径)をDLとし、筒状体24の短径方向への外法の寸法(直径)をDSとする。また、筒状体24の長径方向を第1方向としての第1水平方向H1とし、当該第1水平方向H1と直交する方向でかつ筒状体24の短径方向を第2方向としての第2水平方向H2とする。また、本実施形態の筒状部24は、上方向(又は下方向)から見て、第1水平方向H1及び第2水平方向H2のそれぞれで対称な環状を成している。
筒状体24における第2水平方向H2の一方側の部分は、下側連結部材20がボルト28及びナット30を介して接続される第1接続部32とされている。また、筒状体24における第2水平方向H2の他方側の部分は、上側連結部材22がボルト28及びナット30を介して接続されると共に第1接続部32と第2水平方向H2に対向して配置された第2接続部34とされている。そして、外力が建物12(図2参照)に作用すると、下側連結部材20と上側連結部材22との水平方向Hへの間隔が変化する。すなわち、筒状体24における第1接続部32と第2接続部34との相対位置が変化する。これにより、水平方向への荷重が筒状体24に入力されて、当該筒状体24が塑性変形されることで、建物12に作用する地震等の力に対してエネルギが吸収される。
また、筒状体24の内側には、当該筒状体24の第1接続部32及び第2接続部34の変形を規制すると共に第1接続部32及び第2接続部34の両側部分の変形量を制限する2つの変形規制部材26が設けられている。一方の変形規制部材26は、下側連結部材20を筒状体24の第1接続部32に接続するためのボルト28及びナット30を介して第1接続部32に固定されている。他方の変形規制部材26は、上側連結部材22を筒状体24の第2接続部34に接続するためのボルト28及びナット30を介して第2接続部34に固定されている。そして、第1接続部32及び第2接続部34が、変形規制部材26と下側連結部材20又は上側連結部材22との間に挟み込まれることで、第1接続部32及び第2接続部34の曲げ変形が規制されている。また、変形規制部材26においてボルト28が挿入された部分の両側部分26Aは、筒状体24と離間する方向へ緩やかに湾曲されていると共に筒状体24と離間している。
ここで、地震等による荷重が建物12(図2参照)に作用することで筒状体24の第2接続部34に入力される水平方向への荷重をPとし、筒状体24の第1接続部32に対する第2接続部34の水平方向への変位量をδとし、変位量δの増分に対する荷重Pの増分の比率を剛性Kとする。そして、本実施形態では、筒状体24が塑性変形される過程において、剛性Kの値が増加に転じないように、変形される前の筒状体24の形状及び寸法が設定されている。具体的には、本実施形態では、筒状体24の第1接続部32に対する第2接続部34の水平方向への変位量δが、設計上想定される筒状体24の変位量まで増加する過程において、剛性Kの値が増加に転じないように、変形される前の筒状体24の形状及び寸法が設定されている。なお、設計上想定される筒状体24の変位量とは、後述するように、変形される前の筒状体24の第2水平方向H2への寸法の1/2となる変位量(0°方向への変位量(図5B参照))等であるが、設計上想定される筒状体24の変位量は、建物12に作用する地震等による荷重や加速度等を考量して適宜決定すればよい。また、筒状体24の形状及び寸法は、エネルギ吸収デバイス10の単体の試験や後述する解析を行うことにより決定すればよい。
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
図1A〜図2に示されるように、以上説明したエネルギ吸収デバイス10によれば、建物12の上下方向Vへの荷重を負担しない状態で水平方向Hへの荷重が入力される。これにより、上下方向へのせん断やねじれが生じない状態で筒状体24が塑性変形される。その結果、筒状体24の塑性変形に要する荷重(エネルギ吸収荷重)を安定させることができる。
また、本実施形態では、筒状体24の第1水平方向H1への寸法DLが第2水平方向H2への寸法DSよりも長く設定されていることにより、荷重入力方向によって、筒状体24の塑性変形に要する荷重がバラつくことを抑制することができる。これにより、エネルギ吸収デバイス10に入力された荷重に対してエネルギを安定して吸収することができる。
さらに、本実施形態では、筒状体24の第1接続部32に対する第2接続部34の水平方向への変位量δが、設計上想定される変位量まで増加する過程において、剛性Kが増加に転じない。これにより、変位量δが設計上想定される変位量まで増加する過程において、第2接続部34に入力される水平方向への荷重Pが急激に上昇することを抑制することができる。その結果、エネルギ吸収デバイス10に入力された荷重に対してエネルギをより安定して吸収することができる。
また、本実施形態では、筒状体24の第1接続部32及び第2接続部34に沿って2つの変形規制部材26が設けられている。これにより、筒状体24が変形される際に、当該筒状体24における荷重入力部位及び荷重受け部位である第1接続部32及び第2接続部34の変形が規制されると共に第1接続部32及び第2接続部34の両側部分の変形量が制限される。その結果、第1接続部32及びその両側部分、並びに、第2接続部34及びその両側部分の局所的なひずみや応力の上昇に起因する環状部24の延性破壊、脆性破壊、疲労破壊等による損傷の発生を抑制することができる。
なお、本実施形態では、筒状体24を略楕円形状に形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図3Aに示された第2実施形態に係るエネルギ吸収デバイス36のように、筒状体24における第2水平方向H2の一方側及び他方側の部分を互いに平行に延在させると共に、第1水平方向H1の一方側及び他方側の部分を所定の曲率半径で湾曲させることにより、上下方向から見て陸上のトラックのような形状の環状に形成してもよい。また、図3B及び図3Cに示された第3実施形態に係るエネルギ吸収デバイス40及び第4実施形態に係るエネルギ吸収デバイス42のように、筒状体24は、複数の湾曲板材44(上方向(又は下方向)から見てU字状に湾曲された板材)を組合せて環状に形成しても良い。一例として、第1接続部32及び第2接続部34において2つの湾曲板材44の端部を重ね合わせて接合することで、筒状体24を構成することもできる。なお、一方の湾曲板材44と他方の湾曲板材44とで寸法DSが異なる場合は、大きい方の値で後述する扁平率Fe等を計算すればよい。さらに、図4に示された第5実施形態に係るエネルギ吸収デバイス38のように、筒状体24における第1水平方向H1の一方側及び他方側の部分及び第2水平方向H2の一方側及び他方側の部分を互いに平行に延在させることにより、上下方向から見て四隅が湾曲された矩形状の環状に形成してもよい。
(パラメータによる効果のCAE解析の説明)
次に、図5A〜図22Bを用いて、本実施形態のエネルギ吸収デバイス10のエネルギ吸収荷重のパラメータによる効果のCAE解析による評価結果について説明する。
(解析条件及び各パラメータの定義)
先ず、解析条件及び各パラメータの定義について説明する。
図5Aには、エネルギ吸収デバイス10の筒状体24の板厚中心(厚み中心)を基準として当該筒状体24を厚肉シェル要素でモデル化した解析モデルが示されている。なお、当該筒状体24の解析モデルにおいては、変形規制部材26(図1参照)を省略している。
図5Bに示されるように、筒状体24の解析モデルにおける第1接続部32を固定点とし、第2接続部34を載荷点として水平方向への荷重を加えた。なお、固定点とされた第1接続部32及び載荷点とされた第2接続部34の第1水平方向H1回りの回転、第2水平方向H2回りの回転、上下方向V(紙面直交方向)回りの回転は拘束されている。また、本解析においては、下側連結部材20及び上側連結部材22(図1参照)による第1接続部32及び第2接続部34は、それぞれ幅B(上下方向への寸法)にわたり一体的に固定及び変形するように変形拘束されている。さらに、第2接続部34が、第2水平方向H2の他方側へ変位する方向を0°方向とし、第2水平方向H2の一方側へ変位する方向を180°方向とする。また、第2接続部34が、第1水平方向H1の一方側へ変位する方向を90°方向とし、第1水平方向H1の他方側へ変位する方向を270°方向とする。そして、本解析では、図6に示されたケース番号1〜ケース番号19の寸法に設定された筒状体24の第2接続部34が、0°方向、45°方向、90°方向、180°方向、225°方向へ変位された際のエネルギ吸収荷重の特性を評価した。なお、ケース番号1及びケース番号11の条件の筒状体24の解析モデルは、本発明の比較例に係る解析モデルである。ケース番号2〜10では、ケース番号1と同じ板厚t(=12mm)および幅B(=150mm)とし、周長一定の条件で、筒状体24の第1方向の寸法DLおよび第2方向の寸法DSを変化させている。また、ケース番号12〜19では、ケース番号11と同じ板厚t(=22mm)および幅B(=150mm)とし、周長一定の条件で、筒状体24の第1方向の寸法DLおよび第2方向の寸法DSを変化させている。
ここで、図5A及び図6に示されるように、筒状体24の第1水平方向H1への半径をRLとし、筒状体24の第2水平方向H2への半径をRSとする。そして、筒状体24の外法の寸法から計算した筒状体24の扁平率は、DS/DLで計算され、この扁平率はFeで表されるものとする。
また、筒状体24の板厚中心の長径方向への寸法(直径)をDL−tとし、筒状体24の板厚中心の短径方向への寸法(直径)をDS−tとする。さらに、筒状体24の板厚中心の長径方向への半径をRL−t/2とし、筒状体24の板厚中心の短径方向への半径をRS−t/2とする。そして、筒状体24の板厚中心の寸法から計算した筒状体24の扁平率は、(DS−t)/(DL−t)で計算され、この扁平率はFmで表されるものとする。
さらに、筒状体24の第2接続部34が180°方向へ変位されることで筒状体24が降伏した際に第2接続部34に入力されている荷重を降伏荷重Pcとし、筒状体24の第2接続部34が90°方向へ変位されることで筒状体24が降伏した際に第2接続部34に入力されている荷重を降伏荷重Psとする。そして、降伏荷重Pcと降伏荷重Psとの比を耐力比Pc/Psとする。
また、筒状体24を形成する材料の降伏強度をσとし、この降伏強度σを400MPaとした。また、筒状体24を形成する材料のヤング率を205GPa、ポアソン比を0.3とし、降伏後の応力ひずみ特性はマルチリニアで近似した。
図7には、筒状体24の第2接続部34に入力される荷重P(耐力)を縦軸にとり、筒状体24の第2接続部34の変位量δを横軸にとることによって得られる荷重−変位線図が例示されている。この荷重−変位線図に示されるように、筒状体24の第2接続部34の変位量δの増分に対する荷重Pの増分の比率が、剛性Kで表される。
また、荷重Pと変位量δとの関係が比例的な関係となる比例限度内における剛性Kを初期剛性Kとし、剛性Kが初期剛性Kの1/3となる際の荷重Pを降伏耐力P(図中の白抜きの三角印)とする。
また、変位量δが大きくなるにつれて(筒状体24の変形が進むにつれて)低下した剛性Kが再び増加に転じる際の変位量をδf(図中の黒塗りの丸印)とする。なお、以下の説明において変位量δfとなるポイントを「変曲点」ということがある。
図5A及び図5Bに示されるように、筒状体24の第2接続部34が180°方向へ変位することによって第1接続部32に当接するまでの変位量δを筒状体24の最大変位量δmaxとする。ここで、180°方向を除く他の方向(0°方向、45°方向、90°方向、225°方向)への変形についてはδ=300mmまでのデータを示すが、これらの方向ではδ=300mmまでの変形域において前述する第1接続部32と第2接続部34の当接は生じていない。
図7に示されるように、筒状体24の第2接続部34が180°方向へ(DS−t)×1/2変位した(RS−t/2変位した)際の荷重Pを1/2変形耐力Pe(図中の白抜きの丸印)とする。
(解析結果)
図8には、図6に示されたケース番号2の条件(耐力比Pc/Ps=1.59、扁平率Fm=0.80)の筒状体24の第2接続部34が水平方向の各方向(0°方向、45°方向、90°方向、180°方向、225°方向)へ変位された際の荷重−変位線図が示されている。また、図9には、図6に示されたケース番号6の条件(耐力比Pc/Ps=0.88、扁平率Fm=0.44)の筒状体24の第2接続部34が水平方向の各方向(0°方向、45°方向、90°方向、180°方向、225°方向)へ変位された際の荷重−変位線図が示されている。これらの図に示されるように、いずれのケースにおいても、第2接続部34が180°方向へ変位された際の荷重−変位線図は、降伏耐力P(図7参照)に到達してからの変形進展に伴う耐力変動は小さく、安定したエネルギ吸収性能を発揮していることがわかる。
図8に示されるように、ケース番号2の条件(耐力比Pc/Ps=1.59、扁平率Fm=0.80)の筒状体24では、第2接続部34が、0°方向へ変位されると、第2接続部34の変位量δがRS−t/2以下の領域において、剛性Kが再び増加に転じる(剛性Kが再び増加に転じる際の変位量δfに至る)ことがわかる。詳述すると、ケース番号2の条件の筒状体24では、図10Aに示されるように、第2接続部34の変位量δがRS−t/2以下の領域において0°方向へ増加する過程において、筒状体24の第1水平方向H1の一方側及び他方側の部分に第2水平方向H2への張力T(筒状体24の周に沿って面内方向に発生する力)が作用する。これにより、筒状体24の変形抵抗が増大し(剛性Kが再び増加に転じ)、第2接続部34を0°方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)が急激に上昇する。また、図8に示されるように、ケース番号2の条件の筒状体24では、第2接続部34を90°方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)が、第2接続部34を0°方向、45°方向、180°方向及び225°方向へ変位させるための荷重Pに比べて低い。なお、図10A及び後述する図10B、図21A、図21Bにおいて実線で描かれた2つの楕円は、変形される前の筒状体24の上縁及び下縁である。
これに対して、図9に示されるように、ケース番号6の条件(耐力比Pc/Ps=0.88、扁平率Fm=0.44)の筒状体24では、第2接続部34の変位量δがRS−t/2以下の領域において、当該第2接続部34を各々の方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)のバラつきが、ケース番号2の条件の筒状体24に比べて小さいことがわかる。詳述すると、ケース番号6の条件の筒状体24では、図10Bに示されるように、第1水平方向H1の一方側及び他方側の部分に第2水平方向H2への張力が作用しない(或いはきわめて小さい)。これにより、ケース番号6の条件の筒状体24では、第2接続部34の変位量δがRS−t/2以下の領域において、0°方向、45°方向、90°方向、180°方向及び225°方向のいずれの方向においても剛性Kが再び増加に転じない(剛性Kが再び増加に転じる際の変位量δfに至らない)。その結果、第2接続部34をいずれの方向に変位させた場合においても安定したエネルギ吸収荷重を得ることができる。
一方、図11に示されるように、ケース番号9の条件(耐力比Pc/Ps=0.58、扁平率Fm=0.29)の筒状体24では、第2接続部34を90°方向及び225°方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)が、第2接続部34を0°方向、45°方向及び180°方向へ変位させるための荷重Pに比べて高い。
(耐力比Pc/Psがエネルギ吸収荷重に与える影響)
以上説明したケース番号2、6、9と同様の解析をケース番号1、3〜5、7、8、10について行った。そして、これらの解析結果において耐力比Pc/Psに着目すると、耐力比Pc/Psが所定の値よりも高い場合や低い場合に第2接続部34を各々の方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)のバラつきが大きくなることがわかった。
図12には、ケース番号1〜ケース番号10を対象に、後述する降伏荷重Pc及び降伏荷重Psの計算値に基づく耐力比Pc/Psを横軸にとり、筒状体24の第2接続部34を180°方向へ変位させた際の降伏耐力Pに対する他の方向(0°方向、45°方向、90°方向、225°方向)へ変位させた際の降伏耐力Pの比率を縦軸にプロットすることによって、耐力比Pc/Psに対する降伏耐力Pyの上昇の程度を示したグラフが示されている。また、図13には、ケース番号1〜ケース番号10を対象に、耐力比Pc/Psを横軸にとり、筒状体24の第2接続部34を180°方向へ変位させた際の1/2変形耐力Pに対する他の方向(0°方向、45°方向、90°方向、225°方向)へ変位させた際の1/2変形耐力Pの比率を縦軸にプロットすることによって、耐力比Pc/Psに対する1/2変形耐力Pの上昇の程度を示したグラフが示されている。これらの図に示されるように、耐力比Pc/Psの値を0.66以上でかつ1.18以下の範囲内に設定することで、第2接続部34を各々の方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)のバラつきを小さくできることがわかった。すなわち、Pc/Psの値を0.66以上でかつ1.18以下の範囲内に設定することで、筒状体24の第2接続部34を180°方向へ変位させた際の降伏耐力P及び1/2変形耐力Pに対する他の方向(0°方向、45°方向、90°方向、225°方向)へ変位させた際の降伏耐力P及び1/2変形耐力Pのバラつきが50%程度に抑えられることがわかった。このように、降伏耐力P及び1/2変形耐力Pのバラつきを抑制することで、エネルギ吸収デバイスのエネルギ吸収性能を安定させるとともに、エネルギ吸収デバイスの構成部品(接続部、連結部材、ボルト等の接合)や周囲の構造(下部構造物、上部構造物)への負担を軽減することができる。
また、図14及び図15には、ケース番号1〜ケース番号10に対して筒状体24の板厚tが変更されたケース番号11〜ケース番号19に係る図12及び図13にそれぞれ対応するグラフが示されている。これらの図に示されるように、板厚tに関わらず、耐力比Pc/Psの値を0.66以上でかつ1.18以下の範囲内に設定することで、第2接続部34を各々の方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)のバラつきを小さくすることができることがわかった。
(扁平率Fmがエネルギ吸収荷重に与える影響)
また、ケース番号1〜ケース番号10の解析結果において扁平率Fmに着目すると、扁平率Fmが所定の値よりも高い場合や低い場合に第2接続部34を各々の方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)のバラつきが大きくなることがわかった。
図16には、ケース番号1〜ケース番号10を対象に、扁平率Fmを横軸にとり、筒状体24の第2接続部34を180°方向へ変位させた際の降伏耐力Pに対する他の方向(0°方向、45°方向、90°方向、225°方向)へ変位させた際の降伏耐力Pの比率を縦軸にプロットすることによって、扁平率Fmに対する降伏耐力Pyの上昇の程度を示したグラフが示されている。また、図17には、ケース番号1〜ケース番号10を対象に、扁平率Fmを横軸にとり、筒状体24の第2接続部34を180°方向へ変位させた際の1/2変形耐力Pに対する他の方向(0°方向、45°方向、90°方向、225°方向)へ変位させた際の1/2変形耐力Pの比率を縦軸にプロットすることによって、扁平率Fmに対する降伏耐力1/2変形耐力Pの上昇の程度を示したグラフが示されている。これらの図に示されるように、扁平率Fmの値を0.33以上でかつ0.59以下の範囲内に設定することで、第2接続部34を各々の方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)のバラつきを小さくすることができる(筒状体24の第2接続部34を180°方向へ変位させた際の降伏耐力P及び1/2変形耐力Pに対する他の方向(0°方向、45°方向、90°方向、225°方向)へ変位させた際の降伏耐力P及び1/2変形耐力Pのバラつきが50%程度に抑えられる)ことがわかった。
また、図18及び図19には、ケース番号1〜ケース番号10に対して筒状体24の板厚tが変更されたケース番号11〜ケース番号19に係る図16及び図17にそれぞれ対応するグラフが示されている。これらの図に示されるように、板厚tに関わらず、扁平率Fmの値を0.33以上でかつ0.59以下の範囲内に設定することで、第2接続部34を各々の方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)のバラつきを小さくすることができることがわかった。
(筒状体の短直径に対する変曲点の発現する変位)
さらに、ケース番号1〜ケース番号19の解析結果において筒状体24の板厚中心の短径方向への寸法(短直径)(DS−t)に対する変曲点の発現する変位(δf)の比率に着目すると、当該比率が所定の値よりも高い場合に第2接続部34を各々の方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)のバラつきが小さくなることがわかった。
図20には、ケース番号1〜ケース番号19を対象に、筒状体24の短直径(DS−t)に対する変曲点の発現する変位(δf)の比率δf/(Ds−t)を横軸に、筒状体24を180°方向へ変位させた際の1/2変形耐力Peに対する筒状体24を0°方向へ変位させた際の1/2変形耐力Peの比率Pe(0°)/Pe(180°)を縦軸にプロットし、変曲点が発現する変位と耐力上昇の関係が示されている。この図に示されるように、筒状体24の寸法と板厚の関係に関わらず、δf/(Ds−t)が0.28より小さい領域では、Pe(180°)に対してPe(0°)が大きく上昇している。これに対して、δf/(Ds−t)が0.28以上の領域では、Pe(180°)に対するPe(0°)の上昇を抑制され、第2接続部34を各々の方向へ変位させるための荷重P(エネルギ吸収荷重)のバラつきを小さくすることができる(筒状体24の第2接続部34を180°方向へ変位させた際の1/2変形耐力Pに対する他の方向(0°方向)へ変位させた際の1/2変形耐力Pのバラつきが50%程度に抑えられる)ことがわかった。
(降伏荷重Pc及び降伏荷重Psの計算)
次に、前述の耐力比Pc/Psを決定する降伏荷重Pc及び降伏荷重Psの計算式について説明する。
図21Aには、筒状体24の第2接続部34が180°方向へ変位された際に筒状体24の各部に生じる応力が示されている。ここで、図21Aに示された筒状体24の応力分布に基づいて、図22Aに示された耐力評価モデルを仮定すると、筒状体24への外部仕事と内部仕事は以下の式(3)及び式(4)で表される。
外部仕事=Pc×Δ 式(3)
内部仕事=8×Mp×θ×B 式(4)
ここで、Mpは塑性ヒンジがなす単位幅当たりの塑性モーメントであり、Mp=t×σy/4で与えられる。また、θは塑性ヒンジの回転角であり、θ=Δ/(DL−t)で与えられる。そして、外部仕事と内部仕事の釣合より、降伏荷重Pcを与える以下の式(5)が求められる。
Pc=2×t×B×σy/(DL−t) 式(5)
図21Bには、筒状体24の第2接続部34が90°方向へ変位された際に筒状体24の各部に生じる応力が示されている。ここで、前述の降伏荷重Pcを与える式(5)を求めた場合と同様に、図21Bに示された筒状体24の応力分布に基づいて、図22Bに示された耐力評価モデルを仮定すると、筒状体24への外部仕事と内部仕事は以下の式(6)及び式(7)で表される。
外部仕事=Ps×Δ 式(6)
内部仕事=4×Mp×θ×B 式(7)
ここで、θは塑性ヒンジの回転角であり、θ=Δ/(DS−t)で与えられる。そして、外部仕事と内部仕事の釣合より、降伏荷重Psを与える以下の式(8)が求められる。
Ps=t×B×σy/(DS−t) 式(8)
以上説明した式(5)及び式(8)より導かれた以下の式(9)を用いて筒状体24の寸法を設定することにより、所望の耐力比Pc/Psとされたエネルギ吸収デバイス10を得ることができる。
Pc/Ps=2(DS−t)/(DL−t) 式(9)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
10 エネルギ吸収デバイス
16 アイソレータ(支持部)
24 筒状体
32 第1接続部
34 第2接続部
36 エネルギ吸収デバイス
38 エネルギ吸収デバイス
H1 第1水平方向(第1方向)
H2 第2水平方向(第2方向)

Claims (7)

  1. 上下方向への荷重を負担しない状態で、水平方向への荷重により一部が塑性変形されてエネルギを吸収するエネルギ吸収デバイスであって、
    上下方向が軸線方向とされ、上下方向から見て、互いに直交する第1方向及び第2方向のそれぞれで対称な環状を成しており、前記第1方向の寸法が前記第2方向の寸法よりも大きく設定された筒状体と、
    前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の一方に設けられ、第1部材が接続される第1接続部と、
    前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の他方に設けられ、第2部材が接続され、前記第1接続部に対する水平方向の相対変位によって前記筒状体に塑性変形が生じる第2接続部と、
    を備え、
    前記第2接続部に入力される水平方向への荷重をPとし、
    前記第1接続部に対する前記第2接続部の水平方向への変位量をδとし、
    前記変位量δの増分に対する前記荷重Pの増分の比率を剛性Kとし、
    少なくとも前記第2接続部が前記第1接続部に対して前記第2方向でかつ前記第1接続部と離間する方向へ相対的に変位される際の前記変位量δが、変形される前の前記筒状体の前記第2方向への寸法の1/2となる変位量まで増加する過程において、前記剛性Kの値が増加に転じないように変形される前の前記筒状体の形状及び寸法が設定された
    エネルギ吸収デバイス
  2. 上下方向への荷重を負担しない状態で、水平方向への荷重により一部が塑性変形されてエネルギを吸収するエネルギ吸収デバイスであって、
    上下方向が軸線方向とされ、上下方向から見て、互いに直交する第1方向及び第2方向のそれぞれで対称な環状を成しており、前記第1方向の寸法が前記第2方向の寸法よりも大きく設定された筒状体と、
    前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の一方に設けられ、第1部材が接続される第1接続部と、
    前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の他方に設けられ、第2部材が接続され、前記第1接続部に対する水平方向の相対変位によって前記筒状体に塑性変形が生じる第2接続部と、
    を備え、
    前記第2接続部に入力される水平方向への荷重をPとし、
    前記第1接続部に対する前記第2接続部の水平方向への変位量をδとし、
    前記変位量δの増分に対する前記荷重Pの増分の比率を剛性Kとし、
    前記筒状体の前記第2方向への外法の寸法をDSとし、
    前記筒状体の厚み寸法をtとし、
    前記変位量δが増加する過程において、前記剛性Kの値が増加に転じる際の前記変位量δをδfとし、
    δf/(DS−t)の値が0.28以上となるように変形される前の前記筒状体の形状及び寸法が設定された
    エネルギ吸収デバイス。
  3. 上下方向への荷重を負担しない状態で、水平方向への荷重により一部が塑性変形されてエネルギを吸収するエネルギ吸収デバイスであって、
    上下方向が軸線方向とされ、上下方向から見て、互いに直交する第1方向及び第2方向のそれぞれで対称な環状を成しており、前記第1方向の寸法が前記第2方向の寸法よりも大きく設定された筒状体と、
    前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の一方に設けられ、第1部材が接続される第1接続部と、
    前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の他方に設けられ、第2部材が接続され、前記第1接続部に対する水平方向の相対変位によって前記筒状体に塑性変形が生じる第2接続部と、
    を備え、
    前記第2接続部が前記第1接続部に対して前記第2方向でかつ前記第1接続部と近接する方向へ相対的に変位されることで前記筒状体が降伏した際に前記第2接続部に入力されている荷重を降伏荷重Pcとし、
    前記第2接続部が前記第1接続部に対して前記第1方向へ相対的に変位されることで前記筒状体が降伏した際に前記第2接続部に入力されている荷重を降伏荷重Psとし、
    Pc/Psの値が、0.66以上でかつ1.18以下の範囲となるように変形される前の前記筒状体の形状及び寸法が設定された
    エネルギ吸収デバイス。
  4. 前記筒状体の前記第1方向への外法の寸法をDLとし、
    前記筒状体の前記第2方向への外法の寸法をDSとし、
    前記筒状体の厚み寸法をtとし、
    前記筒状体の上下方向への幅寸法をBとし、
    前記筒状体を形成する材料の降伏強度をσyとし、
    前記降伏荷重Pc及び前記降伏荷重Psが、以下の式(1)及び式(2)を満たす
    請求項3記載のエネルギ吸収デバイス。
    Pc=(2×t×B×σy)/(DL−t) 式(1)
    Ps=(t×B×σy)/(DS−t) 式(2)
  5. 上下方向への荷重を負担しない状態で、水平方向への荷重により一部が塑性変形されてエネルギを吸収するエネルギ吸収デバイスであって、
    上下方向が軸線方向とされ、上下方向から見て、互いに直交する第1方向及び第2方向のそれぞれで対称な環状を成しており、前記第1方向の寸法が前記第2方向の寸法よりも大きく設定された筒状体と、
    前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の一方に設けられ、第1部材が接続される第1接続部と、
    前記筒状体における前記第2方向に対向する一対の対向部の他方に設けられ、第2部材が接続され、前記第1接続部に対する水平方向の相対変位によって前記筒状体に塑性変形が生じる第2接続部と、
    を備え、
    前記筒状体の前記第1方向への外法の寸法をDLとし、
    前記筒状体の前記第2方向への外法の寸法をDSとし、
    前記筒状体の厚み寸法をtとし、
    前記筒状体の扁平率Fmを(DS−t)/(DL−t)とし、
    前記扁平率Fmの値が、0.33以上でかつ0.59以下の範囲となるように変形される前の前記筒状体の寸法が設定された
    エネルギ吸収デバイス
  6. 前記筒状体の内部には、該筒状体における前記第1接続部及び該第1接続部と隣接している部分及び前記第2接続部及び該第2接続部と隣接している部分の変形を規制する変形規制部材が設けられている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のエネルギ吸収デバイス。
  7. 建物の上部構造物と下部構造物との間に設けられ、前記上部構造物を前記下部構造物に対して水平方向に移動可能に支持する支持部と、
    前記上部構造物が前記下部構造物に対して水平方向に移動されることで前記筒状体が塑性変形される請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のエネルギ吸収デバイスと、
    を備えた免震構造。
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