次に、添付図面に基づいて、本発明に係る紙葉類搬送装置の実施形態につき説明する。なお、搬送対象である紙葉類とは、紙幣や書面といった保形性のある紙類(ティッシュペーパーのように、搬送流に対して保形性を有しないものを除く)、樹脂製のフィルム(プラスティック紙幣を含む)や薄いカード類などが適用できる。本実施形態の紙葉類搬送装置においては、紙製の紙幣を搬送対象とした紙幣搬送装置として説明する。また、搬送用流体としては、気体に限らず液体を用いることも可能であるが、本実施形態の紙幣搬送装置においては、空気(エア)を搬送用流体として用いた。また、本実施形態では、紙幣を重力方向に立てた状態で搬送するので、便宜上、紙幣の二面が臨む方向を左右または側方、これに直交する重力方向を上下という。
図1に示す紙幣搬送装置1は、例えば遊技店に設置され、遊技媒体貸出装置やカード販売装置等へ投入された紙幣3を回収して一箇所へ集めるような使い方が可能である。第1構成例の搬送管2A内を通過させて搬送する搬送対象の紙幣3は、適所に設けた紙幣導入部4から長辺方向が搬送方向となるように搬送管2A内へ導入される。搬送管2Aの一方端には送風機5を設け、他方端には紙幣回収部6を設ける。すなわち、送風機5を設けた上流から紙幣回収部6を設けた下流に向けて、搬送用流体としての空気が搬送管2A内を流れるのである。なお、下流である紙幣回収部6側に吸引機を設けることで、搬送用流体としての空気が搬送管2A内を上流から下流へ流れるようにすることもできる。
搬送管2Aは、所要長さまで連結して、設置場所や状況に応じた流路に調整できる。搬送管2Aは、紙幣3の2面に対向するよう内面側が配置された第1主搬送壁部および第2主搬送壁部である第1主搬送壁211および第2主搬送壁212と、第1,第2主搬送壁211,212の上下両側に設ける外方カバーとしての上部外方カバー221と下部外方カバー222をそれぞれ設けた構成である。これら、第1,第2主搬送壁211,212と上,下部外方カバー221,222により、圧縮空気を送り出せる流体通過空間23が内部に形成される。この流体通過空間23のうち、第1主搬送壁211の内壁面211bと第2主搬送壁212の内壁面212bとで挟まれた空間が主搬送路231となり、この主搬送路231を通って紙幣3が搬送されるのである。
搬送管2Aにおいては、搬送方向に向かって左側に第1主搬送壁211を配置し、搬送方向に向かって左側に第2主搬送壁212を配置しているので、以下の説明において、第1方向とは搬送方向に向かって左側を指し、第2方向とは搬送方向に向かって右側を指す。また、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212は、どちらも縦方向の高さ(上下幅)が一定で、第1主搬送壁211の第1端縁である上端縁211cおよび第2端縁である下端縁211dと、第2主搬送壁212の第1端縁である上端縁212cおよび第2端縁である下端縁212dは、搬送方向と略平行である。
上部外方カバー221は、第1主搬送壁211の上端縁211cおよび第2主搬送壁212の上端縁212cの上方空間と、第1主搬送壁211の外壁面211aの一部(上側部分)および第2主搬送壁212の外壁面212aの一部(上側部分)を覆う。一方、下部外方カバー222は、第1主搬送壁211の下端縁211dおよび第2主搬送壁212の下端縁212dの下方空間と、第1主搬送壁211の外壁面211aの一部(下側部分)および第2主搬送壁212の外壁面212aの一部(下側部分)を覆う。なお、上部外方カバー221と下部外方カバー222に分けて設けず、後述するように、一つの外方カバーで第1主搬送壁211と第2主搬送壁212の外方全体を覆うような構造としても構わない。
なお、これら第1,第2主搬送壁211,212と上,下部外方カバー221,222は、個別のパーツとして形成し、組み立てても良いし、射出成形や押出成形といった樹脂加工技術により複合パーツを形成して組み立てるようにしても良い。また、樹脂加工に限らず、厚さ1〜2〔mm〕程度の板材を加工して、第1,第2主搬送壁211,212と上,下部外方カバー221,222を作っても良い。
また、第1,第2主搬送壁211,212には、外壁面211a,212aから内壁面211b,212bに搬送用エアが通過し得るエア帰還孔24を所要間隔で設ける。本構成の搬送管2Aにおいては、上部外方カバー221で覆われている第1,第2主搬送壁211,212の上部と、下部外方カバー222で覆われている第1,第2主搬送壁211,212の下部とに、それぞれ搬送方向に向かって等間隔で一列状に設けた(例えば、図2(B)を参照)。なお、本構成例の搬送管2Aにおけるエア帰還孔24は略四角形状としたが、その開口形状や開口面積、配置間隔等は、特に限定されるものではなく、後述するように、必要十分な帰還流を得ることができれば良い。日本の紙幣3を搬送する場合、第1,第2主搬送壁211,212の高さを80〔mm〕程度、対向間隔を10〜15〔mm〕程度とすると、上下2箇所に配列状に設ける各エア帰還孔24の上下方向高さは20〜30〔mm〕が適当である。なお、エア帰還孔24の搬送方向幅は、エア帰還孔24の配設間隔に応じて、適宜な風量や風速が得られるように定めれば良い。
また、第1主搬送壁211に設ける全てのエア帰還孔24と、第2主搬送壁212に設ける全てのエア帰還孔24とが、主搬送路231を挟んで対向するように、各エア帰還孔24の開設位置を設定することが望ましい。しかしながら、第1主搬送壁211側のエア帰還孔24と第2主搬送壁212側のエア帰還孔24が、紙幣3の搬送方向あるいは上下方向に多少ずれていても、極端に偏った帰還流が紙幣3の二面へ両側から作用しなければ、紙幣3の安定搬送を実現できる。
上部外方カバー221は、第1,第2主搬送壁211,212の各内壁面211b,212b側から各外壁面211a,212a側へ搬送用エアをそれぞれ誘導する流体誘導空部を生じさせる分岐誘導部を備える。本構成の上部外方カバー221においては、第1主搬送壁211に対応させて設けた第1分岐誘導部221a1と、第2主搬送壁212に対応させて設けた第2分岐誘導部221b1を左右対称の構造とし、搬送方向に連続する中央連結部221cにて第1分岐誘導部221a1と第2分岐誘導部221b1を一体に連結した。
上部外方カバー221における第1分岐誘導部221a1の内面は、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212との間の幅方向中間位置より徐々に主搬送路231から遠ざかるように左上向きに突出し、第1主搬送壁211を超えると徐々に左下向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第1分岐誘導部221a1は、第1主搬送壁211の上端縁211cの上方空間に、第1主搬送壁211の内壁面211b側から外壁面211a側へ搬送用エアを誘導する第1分岐誘導空部232aを形成できる。同様に、上部外方カバー221における第2分岐誘導部221b1の内面は、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212との間の幅方向中間位置より徐々に主搬送路231から遠ざかるように右上向きに突出し、第2主搬送壁212を超えると徐々に右下向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第2分岐誘導部221b1は、第2主搬送壁212の上端縁212cの上方空間に、第2主搬送壁212の内壁面212b側から外壁面212a側へ搬送用エアを誘導する第2分岐誘導空部232bを形成できる。紙幣3を搬送対象とする場合、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1の左右幅はそれぞれ15〔mm〕程度、凹曲面最奥部までの距離は5〔mm〕程度である。
上部外方カバー221の第1分岐誘導部221a1の外側(左側)に連なる第1外方誘導部221a2は、第1分岐誘導空部232aを介して第1主搬送壁211の外壁面211a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第1外方誘導空部233aを生じさせる。同様に、上部外方カバー221の第2分岐誘導部221b1の外側(右側)に連なる第2外方誘導部221b2は、第2分岐誘導空部232bを介して第2主搬送壁212の外壁面212a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第2外方誘導空部233bを生じさせる。なお、第1外方誘導部221a2の下端は、滑らかに湾曲させて第1主搬送壁211の外壁面211aに密着する終端屈曲部221a2−eとし、エア帰還孔24の若干下方位置にて第1外方誘導空部233aが閉塞されるようにしておく。同様に、第2外方誘導部221b2の下端は、滑らかに湾曲させて第2主搬送壁212の外壁面212aに密着する終端屈曲部221b2−eとし、エア帰還孔24の若干下方位置にて第2外方誘導空部233bが閉塞されるようにしておく。紙幣3を搬送対象とする場合、第1,第2外方誘導部221a2,221b2の上下高さは30〜35〔mm〕程度である。
下部外方カバー222も上部外方カバー221と同様に、第1,第2主搬送壁211,212の各内壁面211b,212b側から各外壁面211a,212a側へ空気をそれぞれ誘導する流体誘導空部を生じさせる分岐誘導部を備える。本構成の下部外方カバー222においても、第1主搬送壁211に対応させて設けた第1分岐誘導部222a1と、第2主搬送壁212に対応させて設けた第2分岐誘導部222b1を左右対称の構造とし、搬送方向に連続する中央連結部222cにて第1分岐誘導部222a1と第2分岐誘導部222b1を一体に連結した。
下部外方カバー222における第1分岐誘導部222a1の内面は、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212との間の幅方向中間位置より徐々に主搬送路231から遠ざかるように左下向きに突出し、第1主搬送壁211を超えると徐々に左上向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第1分岐誘導部222a1は、第1主搬送壁211の下端縁211dの下方空間に、第1主搬送壁211の内壁面211b側から外壁面211a側へ搬送用エアを誘導する第1分岐誘導空部232aを形成できる。同様に、下部外方カバー222における第2分岐誘導部222b1の内面は、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212との間の幅方向中間位置より徐々に主搬送路231から遠ざかるように右下向きに突出し、第2主搬送壁212を超えると徐々に右上向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第2分岐誘導部222b1は、第2主搬送壁212の下端縁212dの下方空間に、第2主搬送壁212の内壁面212b側から外壁面212a側へ搬送用エアを誘導する第2分岐誘導空部232bを形成できる。紙幣3を搬送対象とする場合、第1,第2分岐誘導部222a1,222b1の左右幅はそれぞれ15〔mm〕程度、凹曲面最奥部までの距離は5〔mm〕程度である。
下部外方カバー222の第1分岐誘導部222a1の外側(左側)に連なる第1外方誘導部222a2は、第1分岐誘導空部232aを介して第1主搬送壁211の外壁面211a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第1外方誘導空部233aを生じさせる。同様に、下部外方カバー222の第2分岐誘導部222b1の外側(右側)に連なる第2外方誘導部222b2は、第2分岐誘導空部232bを介して第2主搬送壁212の外壁面212a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第2外方誘導空部233bを生じさせる。なお、第1外方誘導部222a2の上端は、滑らかに湾曲させて第1主搬送壁211の外壁面211aに密着する終端屈曲部222a2−eとし、エア帰還孔24の若干上方位置にて第1外方誘導空部233aが閉塞されるようにしておく。同様に、第2外方誘導部222b2の上端は、滑らかに湾曲させて第2主搬送壁212の外壁面212aに密着する終端屈曲部222b2−eとし、エア帰還孔24の若干上方位置にて第2外方誘導空部233bが閉塞されるようにしておく。紙幣3を搬送対象とする場合、第1,第2外方誘導部222a2,222b2の上下高さは30〜35〔mm〕程度である。
上述したように、上部外方カバー221には第1,第2分岐誘導部221a1,221b1を設け、下部外方カバー222には第1,第2分岐誘導部222a1,222b1を設ければ、主搬送路231の上方左右および下方左右へ均等に搬送用エアを誘導できる。なお、外方カバーとして、上部外方カバー221と下部外方カバー222の両方を設けず、一方端のみに外方カバーを設けておき、第1,第2主搬送壁211,212にエア帰還孔24をそれぞれ一列だけ設けてもよい。かくする場合、外方カバーを設けない他方端では、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212の間を遮蔽壁等で塞ぐことにより、搬送用エアが漏れない密閉状の流体通過空間23を形成すれば良い。
エア帰還孔24を設けた第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側には、上,下部外方カバー221,222の第1,第2外方誘導部221a2,221b2にて誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ導く帰還ガイド部25を設ける。帰還ガイド部25は、少なくともエア帰還孔24の上流側開口縁にエア導入開口25aが位置し、エア帰還孔24の下流側開口縁242に向かって狭まる突出体で、その横断面は略三角形状とした(図2(C)を参照)。また、帰還ガイド部25の上流側の上下部は、乱流を生じやすい角部とせず、滑らかな曲面部で構成した。この上下2箇所の曲面部が、エア帰還孔24の下流側開口縁242の上端部または下端部へ向かって徐々に収束することで、帰還ガイド部25の内面上部には上方誘導湾曲面が形成され、内面下部には下方誘導湾曲面が形成される。すなわち、エア導入開口25aから帰還ガイド部25内へ導かれ、上方誘導湾曲面に誘導された搬送用エアは、エア帰還孔24を抜けると上向きに広がり易い帰還流となり、下方誘導湾曲面に誘導された搬送用エアは、エア帰還孔24を抜けると下向きに広がり易い帰還流となる。なお、エア帰還孔24と帰還ガイド部25は、樹脂加工により第1,第2主搬送壁211,212を形成するとき、同時に形成できる。無論、別体として形成した構造体をエア帰還孔24の縁部に沿って取り付けることにより、帰還ガイド部25を形成するようにしても良い。
紙幣3を搬送対象とし、上,下部外方カバー221,222に各々対応させて二列状にエア帰還孔24を設ける場合、帰還ガイド部25の上下高さを20〜30〔mm〕程度、搬送方向幅を5〜23〔mm〕程度にすると、帰還ガイド部25の突出量は3〜6〔mm〕程度が望ましい。エア帰還孔24から主搬送路231へ流入する帰還流の流入角度(帰還流の流入方向と搬送方向とが成す鋭角)を15〜30゜の範囲で調整できるからである。帰還流が強い場合には、帰還流の流入角度を小さくして、帰還流が主搬送路231の中央付近を流れる紙幣3に到達するまでの距離を長くする。かくすれば、強すぎる帰還流の流下勢は紙幣3へ到達するまでに減衰してゆき、程良い流下勢となった帰還流が紙幣3に作用する。一方。帰還流が弱い場合には、帰還流の流入角度を大きくして、帰還流が主搬送路231の中央付近を流れる紙幣3に到達するまでの距離を短くする。かくすれば、帰還流が消失する前に紙幣3へ到達させることができ、紙幣3を下流へ搬送する力を帰還流から与えることができる。
更に、本構成の搬送管2Aでは、上,下部外方カバー221,222にそれぞれ設ける第1分岐誘導部221a1,222a1には、少なくとも第1分岐誘導空部232a内に第1方向誘導プレートとしての左誘導プレート26Lが突出する。一方、上,下部外方カバー221,222にそれぞれ設ける第2分岐誘導部221b1,222b1には、少なくとも第2分岐誘導空部232b内に第2方向誘導プレートとしての右誘導プレート26Rが突出する。左右誘導プレート26L,26Rは、半円弧状の板材を弦方向に引き延ばした外観の板状体であり、一方の第1面261が上流側に、他方の第2面262が下流側に向くよう、第1,第2主搬送壁211,212の上下端縁211c,212c,211d,212dへ斜めに隙間無く当接させる。このため、左,右誘導プレート26L,26Rにおける弧状の曲縁部263は、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1の凹状内面と密に接するような曲率に設定してある。そして、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1に取り付けた左,右誘導プレート26L,26Rの平坦縁部264は、搬送用エアの送風方向WDとほぼ平行となり、主搬送路231と第1,第2分岐誘導空部232a,232bの境界近傍に位置する。
また、上部外方カバー221において、第1分岐誘導部221a1に設ける左誘導プレート26Lの上流側端部26aと、第2分岐誘導部221b1に設ける右誘導プレート26Rの上流側端部26aは、第1分岐誘導部221a1と第2分岐誘導部221b1との連結部にて当接、或いは近接させる。第1分岐誘導部221a1と第2分岐誘導部221b1との連結部は、第1,第2主搬送壁211,212との間の幅方向中間位置となるので、左,右誘導プレート26L,26Rは、主搬送路231から上方へ圧入しつつ下流へ向かう搬送用エアを二等分するV字状の楔として機能する。下部外方カバー222においても同様に、左,右誘導プレート26L,26Rは、第1分岐誘導部222a1と第2分岐誘導部222b1との連結部にて当接、或いは近接させる。
上部外方カバー221において、左誘導プレート26Lの下流側端部26bは、第1分岐誘導部221a1と第1外方誘導部221a2との連結部近傍に位置させる。同様に、右誘導プレート26Rの下流側端部26bは、第2分岐誘導部221b1と第2外方誘導部221b2との連結部近傍に位置させる。一方、下部外方カバー222において、左誘導プレート26Lの下流側端部26bは、第1分岐誘導部222a1と第1外方誘導部222a2との連結部近傍に位置させる。同様に、右誘導プレート26Rの下流側端部26bは、第2分岐誘導部222b1と第2外方誘導部222b2との連結部近傍に位置させる。かくすれば、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1に各々設けた左,右誘導プレート26L,26Rにより、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2外方誘導空部233a,233bへ円滑に搬送流を誘導できる。
また、左,右誘導プレート26L,26Rは第1,第2主搬送壁211,212と一体成形したり、接着、融着等の固定手法を用いて一体化したりすることで、第1,第2主搬送壁211,212に対する左,右誘導プレート26L,26Rの配設位置を一定に保つことができる。加えて、左,右誘導プレート26L,26Rを第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1の第1,第2分岐誘導空部232a,232b内の適正位置へ入れると、第1,第2主搬送壁211,212と上,下部外方カバー221,222も適正位置に保たれる。よって、第1,第2主搬送壁211,212を所要位置に保持するステー等の保持構造を主搬送路231内に設ける必要が無く、保持構造によって搬送用エアの流下勢を減衰させて、紙幣3の搬送を不安定にするような不具合を効果的に回避できる。また、左誘導プレート26Lと右誘導プレート26Rを別体とせずに、一体のV形誘導プレートとしても良い。
第1,第2分岐誘導空部232a,232b内の適正位置に配置された左,右誘導プレート26L,26Rは、搬送用エアの流下勢の向きを左右へ分岐するように誘導して、第1,第2外方誘導空部233a,233bへ流入させる。これにより、第1,第2外方誘導空部233a,233bは主搬送路231内より高圧となり、第1主搬送壁211の外壁面211aと内壁面211bと間および第2主搬送壁212の外壁面212aと内壁面212bと間に十分な圧力差が生ずる。この圧力差により、第1,第2主搬送壁211,212に設けた各エア帰還孔24から主搬送路231へ搬送用エアが戻る帰還流が生じ、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212の両側から帰還流を受ける紙幣3は主搬送路231内を下流へ安定搬送されるようになる。
以上のように構成した本実施形態の紙幣搬送装置1では、左,右誘導プレート26L,26Rを設けることによって強い帰還流を生じさせ、搬送管2A内で紙幣3の安定した搬送を行うことができる。この左,右誘導プレート26L,26Rの有用性を説明するため、左,右誘導プレート26L,26Rを備えていない搬送管2−0を用いた場合の搬送動作を説明する。図3に示すように、搬送管2−0は、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1の第1,第2分岐誘導空部232a,232bには、左,右誘導プレート26L,26Rのような流体誘導構造は無く、送風方向WDに向かって連続した空間である。
左,右誘導プレート26L,26Rを備えていない搬送管2−0における帰還流の発生原理を図4(A),(B)に示す。なお、図4(B)は、上,下部外方カバー221,222の第2分岐誘導空部232bおよび第2外方誘導空部233bを透かして、第2主搬送壁212の外壁面212a側を見た状態を示す。
前述したように、加圧した搬送用エアが送り込まれる搬送管2−0内では、上下左右の壁面を外向きに押す圧力が生じる。上,下部外方カバー221,222の第1,第2分岐誘導部221a1,222a1,221b1,222b1を外向きに押す力は、搬送用エアを第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2外方誘導空部233a,233bへ誘導する力として作用する。なお、上,下部外方カバー221,222には、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212の幅方向中間部位より左右両側に第1分岐誘導部221a1,222a1と第2分岐誘導部221b1,222b1を設けたので、左右に偏り無く気流が分岐して行く。
しかも、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1の内面は外側(主搬送路231から遠ざかる方向)に突出して滑らかに第1,第2外方誘導部221a2,221b2に連なる凹面形状の誘引流動面となるので、コアンダ効果により、第1,第2外方誘導空部233a,233bへ誘導され易い。なお、コアンダ効果とは、粘性流体が近接した壁面に沿って流れる性質のことで、搬送用エアも粘性流体であるから、上部外方カバー221および下部外方カバー222の内面に沿って流れて行くことは理に適っている。
したがって、搬送管2−0内へ圧送された搬送用エアの一部は、主搬送路231から第1,第2分岐誘導空部232a,232bへ、更には第1,第2外方誘導空部233a,233bへ誘導され、第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ回り込む。この気流は途切れること無く続くので、第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ回り込んだ搬送用エアが、極端に減圧されることは無い。第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ至った搬送用エアは、第1,第2外方誘導空部233a,233b内を下流へ向かいつつ、主搬送路231の中央側(上部外方カバー221では下方、下部外方カバー222では上方)へ誘導される。
第1,第2外方誘導空部233a,233bへ誘導された搬送用エアは、エア帰還孔24の帰還ガイド部25へ到達すると、エア導入開口25aから導入され、エア帰還孔24を介して第1主搬送壁211の内壁面211b側へ戻される帰還流となる。なお、搬送用エアが帰還ガイド部25に到達しないまま第1外方誘導空部233aの下方部に至っても、第1外方誘導空部233aの下部は終端屈曲部221a2−eで閉塞されているため、終端屈曲部221a2−eに沿って更に下流へ流れる。その下流にもエア帰還孔24を適宜な間隔で設けてあるので、下流のエア帰還孔24の帰還ガイド部25へ到達した搬送用エアの一部は、エア導入開口25aから導入されて帰還流となる。
かくして、第1,第2主搬送壁211,212のエア帰還孔24から主搬送路231内に生じた帰還流は、上流から下流へ向かう流れを保っているので、主搬送路231の中央付近に位置する紙幣3まで帰還流が到達すれば、両面から帰還流を受ける紙幣3には下流へ向かう力が作用し、紙幣3の状態(癖、皺、よれ、こし等)に影響されることなく、下流への安定搬送が可能となる。
しかしながら、上述した搬送管2−0では、紙幣3の安定搬送を可能にするために必要十分な帰還流を得難い場合がある。搬送管2−0内へ圧送された搬送用エアの一部は、主搬送路231から第1,第2分岐誘導空部232a,232bへ至るものの、そのまま第1,第2分岐誘導空部232a,232b内を下流へ流れてゆく搬送用エアの割合が多いためである。左,右誘導プレート26L,26Rを備えていない搬送管2−0の実験結果では、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2外方誘導空部233a,233bへ誘導される搬送用エアは50%以下であった。しかも、第1,第2外方誘導空部233a,233bへ誘導された搬送用エアが全て帰還流となるわけではなく、その比率は70%程度である。また、上述したように、帰還流とならなかった搬送用エアが更に下流のエア帰還孔24から帰還流となる可能性もあるが、帰還流の比率を大きく変えるほどではない。なお、必要十分な帰還流が得られるように、搬送管2−0への送風圧力を高める方法も考えられるが、エネルギー効率が悪い上に、搬送管2−0には、過剰な内圧に耐えられる設計が必要となる。したがって、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2外方誘導空部233a,233bへ誘導される搬送用エアの割合を高めて、効率的に帰還流を増やすことが望ましい。
そこで、本実施形態の紙幣搬送装置1のように、左,右誘導プレート26L,26Rを備えた搬送管2Aを採用すれば、効率的に帰還流を増やす上でも有効である。左右誘導プレート26L,26Rを備えた搬送管2Aにおける帰還流の発生原理を図5(A),(B)に示す。なお、図5(B)は、上、下部外方カバー221,222の第2分岐誘導空部232bおよび第2外方誘導空部233bを透かして、第2主搬送壁212の外壁面212a側を見た状態を示す。
このように左,右誘導プレート26L,26Rを配置すると、主搬送路231から上,下部外方カバー221,222へ圧入された搬送用エアは、左,右誘導プレート26L,26Rの第1面261に沿って、滑らかに第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ誘導される。左,右誘導プレート26L,26Rを設けた搬送管2Aの実験結果では、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2外方誘導空部233a,233bへ誘導される搬送用エアは80%以上と大幅に改善された。
また、左,右誘導プレート26L,26Rは、第1,第2主搬送壁211,212へ対向状に設けた各エア帰還孔24にそれぞれ対応した配置となるように、左,右誘導プレート26L,26Rの配設間隔はエア帰還孔24の配設間隔と同じにした。例えば、左,右誘導プレート26L,26Rの上流側端部26aは、エア帰還孔24よりも適宜上流側(エア帰還孔24の上流側縁部から水平距離10〜20〔mm〕程度)に位置させる。また、左,右誘導プレート26L,26Rの下流側端部26bは、エア帰還孔24よりも適宜下流側(エア帰還孔24の下流側縁部から水平距離15〜25〔mm〕程度)に位置させる。このように、各エア帰還孔24に対応させて各左,右誘導プレート26L,26Rを設けると、各左,右誘導プレート26L,26Rにより誘導された搬送用エアが各帰還ガイド部25のエア導入開口25aへ導入される状態はほぼ等しくなり、各エア帰還孔24から主搬送路231へ戻される帰還流の状態もほぼ等しくなる。
例えば、日本の紙幣3を搬送するために、30〜60〔mm〕間隔でエア帰還孔24を設けた場合、左,右誘導プレート26L,26Rも同じ間隔(30〜60〔mm〕間隔)で設ければ、各左,右誘導プレート26L,26Rにより誘導された搬送用エアが各帰還ガイド部25のエア導入開口25aへ導入される状態はほぼ等しくなる。よって、各エア帰還孔24から主搬送路231へ偏りのない帰還流を導入することができ、紙幣3の搬送状態を安定化するのに好適である。また、左,右誘導プレート26L,26Rの下流側端部26bは、対応するエア帰還孔24の下流側縁部よりも下流側に位置するので、下流側端部26bよりも下流に位置する最先のエア帰還孔24へ搬送用エアが導入されると、帰還流の効率(エア帰還孔24から主搬送路231へ戻される搬送用エアの風量や風速など)を上げ易い。すなわち、左,右誘導プレート26L,26Rに導かれて第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ回り込んだ搬送用エアが高確率で通過する流路範囲にエア導入開口25aを位置させることが望ましい。このため、左,右誘導プレート26L,26Rの下流側端部26bから下流に位置する最先のエア導入開口25aまでの水平距離は、10〔mm〕程度離しておくことが望ましい。
上述したように、搬送管2Aへ供給される搬送用エアの圧力によって流体通過空間23の上部および下部で上流から下流へ流れる搬送用エアを、左,右誘導プレート26L,26Rによって第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2外方誘導空部233a,233bへ滑らかに誘導できる。第1,第2分岐誘導空部232a,232bから流入する搬送用エアにより、第1,第2外方誘導部233a,233bは主搬送路231より高圧となるので、エア帰還孔24を通って主搬送路231へ戻る搬送用エアの流れが帰還流となる。すなわち、左,右誘導プレート26L,26Rを設けた搬送管2Aでは、搬送方向へ流れつつ互いに向かい合う強い帰還流を主搬送路231内に生じさせることができる。主搬送路231内での帰還流は徐々に弱まるが、主搬送路231内の幅方向中央付近を通過する紙幣3まで届き、紙幣3を下流へ移送する力を紙幣3の両面から効率良く与えることができる。
しかも、紙幣3が何かしらの理由(癖札等)で、第1主搬送壁211の内壁面211b側、あるいは第2主搬送壁212の内壁面212b側へ移動するような挙動があっても、紙幣3は自然と主搬送路231の中央へ戻される。これは、第1,第2主搬送壁211,212に近づくほど、エア帰還孔24へ近づくために帰還流が強くなり、逆に、第1,第2主搬送壁211,212から遠ざかると帰還流の影響を受け難くなるためである。よって、紙幣3の両側に作用する帰還流の力がほぼ平衡する主搬送路231の幅方向中央付近に、紙幣3が自然とホールドされることとなる。
加えて、左,右誘導プレート26L,26Rを設けた搬送管2Aでは、エア帰還孔24から強い帰還流を得ることができるので、帰還流の流入角度を小さくして、帰還流が主搬送路231の中央付近を流れる紙幣3に到達するまでの距離を長くできる。エア帰還孔24から紙幣3に到達するまでの距離が長いと、帰還流はそれだけ浅い角度で紙幣3の側面に到達するので、対向する第1,第2主搬送壁211,212へ向かう帰還流のベクトル成分より、搬送方向に向かう帰還流のベクトル成分が相対的に大きくなる。よって、紙幣3には、帰還流の搬送方向へ向かう力が効率良く作用することとなり、搬送速度の向上が可能となる。
このように、本実施形態の紙幣搬送装置1によれば、搬送対象の紙幣3は、相対向する帰還流によって主搬送路231内の略中央にホールドされ、左右にぶれることなく搬送方向へ移送されてゆくので、紙幣3の状態(癖、皺、よれ、こし等)に影響されることなく、安定搬送が可能となる。更に、左,右誘導プレート26L,26Rを設けることで得られた強い帰還流を、小さい流入角度で主搬送路231へ流入させることにより、搬送速度を上げて、紙幣3の搬送効率を高められるという利点もある。また、帰還流としてエア帰還孔24より戻った搬送用エアは、主搬送路231内を下流へ流されつつ、上部または下部の第1,第2分岐誘導空部232a,232bへ誘導され、第1,第2外方誘導部233a,233bからエア帰還孔24を経て再び帰還流となる螺旋状の流れ(以下、螺旋流という)が途切れることなく続く。このように、搬送管2Aの上下左右4か所には、螺旋流が連続的に発生するので、紙幣3の安定搬送に一層の効果がある。
しかしながら、上述した搬送管2Aで紙幣3を搬送する場合、搬送中の紙幣3が何らかの要因によって上下に振動した際に、上,下部外方カバー221,222、或いは左,右誘導プレート26L,26Rに接触してしまう危険性がある。接触により紙幣3が傷んだり裂けたりすると、帰還流による安定搬送が難しくなる可能性がある。そこで、図6及び図7に示す第2構成例の搬送管2Bにおいては、上,下部外方カバー221,222や左,右誘導プレート26L,26Rに紙幣3が接触することを防止する搬送ガイド27を設けた。
搬送ガイド27は、少なくとも、左,右誘導プレート26L,26Rよりも主搬送路231側に設ける。本構成例では、第1主搬送壁211および第2主搬送壁212の上端縁211c,212cと左,右誘導プレート26L,26Rとの間、第1主搬送壁211および第2主搬送壁212の下端縁211d,212dと左,右誘導プレート26L,26Rとの間に設けた。これらの位置に配した搬送ガイド27は、紙幣3が第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側へ入り込むことを防ぐと共に、搬送用エアが第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1へ流入することを許容する。
搬送ガイド27は、長尺で平行な第1支持材271と第2支持材272の間に、所要間隔(紙幣3の搬送方向長さよりも十分に短い間隔)で薄板状の遮蔽体273を架け渡した梯子状の外観である。遮蔽体273は、紙幣3の搬送方向長さ(長辺の長さ)よりも短い間隔で搬送方向に複数設ければ、紙幣3が第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側へ入り込むことを防ぐ遮蔽部として機能する。そして、隣接する遮蔽体273の間に形成される空間は、搬送用エアが第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1へ流入することを許容する通空部27aとして機能する。
搬送ガイド27の作成手法は特に限定されず、1〔mm〕厚程度の金属製板材を加工することで、十分な強度を持たせつつ簡易に作成してもよい。また、メッシュ構造の金網なども、紙幣3に対する遮蔽機能と、搬送用エアに対する透過機能を同時に実現できるので、搬送ガイドとして利用できる。なお、第1,第2主搬送壁211,212あるいは左右誘導プレート26L,26Rと搬送ガイド27を樹脂等で一体成形することも可能である。第1,第2主搬送壁211,212の上端縁211c,212c側に跨がるように複数の遮蔽体273を一体成形すれば、遮蔽体273が第1,第2主搬送壁211,212の対向間隔を適正に保持するスペーサとして機能し、搬送管2Bの強度を高める上でも効果的である。さらに、第1,第2主搬送壁211,212と搬送ガイド27に加えて、左,右誘導プレート26L,26Rも樹脂等で一体成形すれば、第1,第2主搬送壁211,212と左,右誘導プレート26L,26Rとの取り付け作業が不要で、生産効率を高められる。しかも、左,右誘導プレート26L,26Rは、第1,第2主搬送壁211,212の上下端縁211c,212c,211d,212dに加えて、搬送ガイド27とも一体化するので、左,右誘導プレート26L,26Rによる第1,第2主搬送壁211,212の保持強度も高められる。
上述した搬送ガイド27を第1,第2主搬送壁211,212の上端縁211c,212c側および下端縁211d,212d側に各々設けることで、紙幣3が、上,下部外方カバー221,222、或いは左,右誘導プレート26L,26Rに接触してしまう危険性を確実に排除できる。しかしながら、搬送ガイド27の遮蔽体273は、搬送用エアが主搬送路231から第1,第2分岐誘導空部232a,232bへ流入することを阻害し、帰還流の効率を下げてしまう可能性がある。そこで、搬送管2Bに設ける遮蔽体273は、断面が略四角形状の単純な板材とせずに、搬送用エアの勢いをなるべく削がないような形状とした。
遮蔽体273の具体的な板構造を、図7に示す。遮蔽体273は、主搬送路231に臨む内面部2731と、その対向面である外面部2732と、上流側で内面部2731と外面部2732に連なる上流側面部2733と、下流側で内面部2731と外面部2732に連なる下流側面部2734を備える。そして、上流側面部2733と下流側面部2734は、内面部2731及び外面部2732に直交せず、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。すなわち、上流側面部2733は、主搬送路231側の内側縁部2733aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2733bが下流に位置する。同様に、下流側面部2734は、主搬送路231側の内側縁部2734aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2734bが下流に位置する。
このように、上流側面部2733および下流側面部2734を誘導傾斜面とすれば、隣り合う2つの遮蔽体273の間に形成される通空部27aは、主搬送路231から搬送用エアを適宜な流入角度(誘導傾斜面の傾斜角度)で通過させることが可能となる。よって、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1へ誘導された搬送用エアは、搬送方向の流下勢が著しく削がれることなく通空部27aを通過できるので、帰還流の効率が低下することを効果的に抑制できる。
なお、本構成例の搬送管2Bで用いた搬送ガイド27は、上部外方カバー221側と下部外方カバー222側で共有できる。例えば、第1主搬送壁211の下端縁211dに第1支持材271を、第2主搬送壁212の下端縁212dに第2支持材272をそれぞれ配置すれば、遮蔽体273の上,下流側面部2733,2734が下向きの誘導傾斜面となるように、下部外方カバー222側へ搬送ガイド27を取り付けられる。その逆に、第1主搬送壁211の上端縁211cに第2支持材272を、第2主搬送壁212の上端縁212cに第1支持材271をそれぞれ配置すれば、遮蔽体273の上,下流側面部2733,2734が上向きの誘導傾斜面となるように、上部外方カバー221側へ搬送ガイド27を取り付けられる。
上述した搬送ガイド27の設計寸法として、通空部27aは、紙幣3の長手方向寸法(150〜160〔mm〕)の1/10程度(例えば、10〔mm〕以上、20〔mm〕以下)であることが望ましい。10〔mm〕未満では遮蔽体273の配設間隔が短すぎて、左,右誘導プレート26L,26Rに加わる流圧が減少してしまう不具合が懸念される。20〔mm〕超過では遮蔽体273の配設間隔が広すぎて、紙幣3が遮蔽体273に接触してしまう障害が発生する危険性がある。また、遮蔽体273の搬送方向長さと通空部27aの搬送方向長さの比率は3:7としたが、これよりも通空部27aの比率を低くしても、十分な帰還流の効率を得られる場合がある。ただし、通空部27aが50%以上であることが望ましい。また、誘導傾斜面である上流側面部2733および下流側面部2734の傾斜角度は、約30゜とした。なお、遮蔽体273の配置間隔(通空部27aの開口間隔)は、エア帰還口24の配置間隔に対して自然数倍(図6においては、4)に設定しておけば、搬送ガイド27、左,右誘導プレート26L,26R及びエア帰還口24の配置が揃った効率的なレイアウトに調整できる。このようなレイアウトの構造にすれば、搬送管2Bの上下左右4か所で連続的に発生する螺旋流を妨げることがないので、紙幣3を障害なく搬送することが可能となる。
搬送ガイド27の遮蔽体273では、主搬送路231に臨む内面部2731が搬送方向にほぼ平行な平坦面であることから、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1へ誘導された搬送用エアを阻むこととなる。しかも、通空部27aを通過しようとしている搬送用エアを巻き込んだ乱流を発生させ、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1への通過流量を低減させてしまう可能性がある。そこで、図8(A)に示す第2構成例の搬送ガイド27′では、乱流の発生を効果的に抑えられる遮蔽体274を用いる構成とした。
遮蔽体274は、主搬送路231に臨む内面部2741と、その対向面である外面部2742と、上流側で内面部2741と外面部2742に連なる上流側面部2743と、下流側で内面部2741と外面部2742に連なる下流側面部2744を備える。そして、上流側面部2743は、主搬送路231側の内側縁部2743aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2743bが下流に位置し、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。同様に、下流側面部2744は、主搬送路231側の内側縁部2744aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2744bが下流に位置し、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。
ここで、内面部2741は、主搬送路231側に膨出する凸面形状で、下流側面部2744と滑らかに連なる誘引流動面とした。すなわち、内面部2741を下流側面部2744に連なる誘引流動面としておけば、コアンダ効果により、搬送用エアは、内面部2741の凸曲面に沿って下流側面部274の誘導傾斜面へ至るので、通空部27aを通過し易くなる。よって、搬送ガイド27′を用いれば、帰還流の効率低下を一層抑制することができる。
上記のように、誘引流動面である内面部2741を備えた搬送ガイド27′を用いることで、帰還流の効率低下を抑制できると、逆に帰還流が強すぎて紙幣3の搬送を不安定にしてしまう可能性がある。そのような場合には、図8(B)に示す第3構成例の搬送ガイド27″のように、搬送方向に大きい遮蔽体275を用いて、通空部27aの比率を低くし、帰還流の効率を適宜な範囲に調整するようにしても良い。
遮蔽体275は、主搬送路231に臨む内面部2751と、その対向面である外面部2752と、上流側で内面部2751と外面部2752に連なる上流側面部2753と、下流側で内面部2751と外面部2752に連なる下流側面部2754を備える。そして、上流側面部2753は、主搬送路231側の内側縁部2753aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2753bが下流に位置し、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。同様に、下流側面部2754は、主搬送路231側の内側縁部2754aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2754bが下流に位置し、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。
内面部2751は、主搬送路231側に膨出する滑らかな凸面形状で、下流側面部2754と滑らかに連なる誘引流動面である。このように、内面部2751を下流側面部2754に連なる誘引流動面としておけば、コアンダ効果により、搬送用エアは、内面部2751の凸曲面に沿って下流側面部2754の誘導傾斜面へ至るので、通空部27aを通過し易くなり、帰還流の効率低下を抑制する。しかも、遮蔽体275と通空部27aの搬送方向長さの比率は、遮蔽体275が大きくなるように設定してあるので、帰還流の効率を適宜な範囲に調整できる。
上述した第1構成例の搬送管2Aと第2構成例の搬送管2Bでは、第1,第2主搬送壁211,212の上方から左右側方上部を覆う上部外方カバー221と、第1,第2主搬送壁211,212の下方から左右側方下部を覆う下部外方カバー222とを設けた。しかしながら、外方カバー自体は、第1,第2主搬送壁211,212により形成される主搬送路231の外方(上下空間および左右両側空間)を覆うことで、主搬送路231から左右の側方誘導部へ搬送用エアを導入できれば良い。図9および図10に示す第3構成例の搬送管2Cでは、一体構造の外方カバー28を用いた。なお、搬送管2Cにおいて、搬送管2A,2Bと同一の構成には同一符号を付して説明を省略する。また、図9および図10には描いていないが、第2構成例2Bの搬送ガイド27を第3構成例の搬送管2Cに設けても構わない。
外方カバー28は、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212の上端縁211c,212c側に、上部第1分岐誘導部28a1および上部第2分岐誘導部28b1を設け、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212の下端縁211d,212d側に、下部第1分岐誘導部28a2および下部第2分岐誘導部28b2を設ける。上部第1分岐誘導部28a1と上部第2分岐誘導部28b1は左右対称の構造で、搬送方向に連続する上部中央連結部28c1にて上部第1分岐誘導部28a1と上部第2分岐誘導部28b1を一体に連結した。同様に、下部第1分岐誘導部28a2と下部第2分岐誘導部28b2も左右対称の構造で、搬送方向に連続する下部中央連結部28c2にて下部第1分岐誘導部28a2と下部第2分岐誘導部28b2を一体に連結した。なお、本構成例の外方カバー28においては、上部第1分岐誘導部28a1と下部第1分岐誘導部28a2、上部第2分岐誘導部28b1と下部第2分岐誘導部28b2は、上下対称の構造である。
上部第1分岐誘導部28a1の内面は、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212との間の幅方向中間位置より徐々に主搬送路231から上方へ遠ざかるように左上向きに突出し、第1主搬送壁211を超えると徐々に左下向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、上部第1分岐誘導部28a1は、第1主搬送壁211の上端縁211cの上方空間に、第1主搬送壁211の内壁面211b側から外壁面211a側へ搬送用エアを誘導する第1分岐誘導空部232aを形成できる。同様に、上部第2分岐誘導部28b1の内面は、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212との間の幅方向中間位置より徐々に主搬送路231から上方へ遠ざかるように右上向きに突出し、第2主搬送壁212を超えると徐々に右下向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、上部第2分岐誘導部28b1は、第2主搬送壁212の上端縁212cの上方空間に、第2主搬送壁212の内壁面212b側から外壁面212a側へ搬送用エアを誘導する第2分岐誘導空部232bを形成できる。
下部第1分岐誘導部28a2の内面は、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212との間の幅方向中間位置より徐々に主搬送路231から下方へ遠ざかるように左下向きに突出し、第1主搬送壁211を超えると徐々に左上向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、下部第1分岐誘導部28a2は、第1主搬送壁211の下端縁211dの下方空間に、第1主搬送壁211の内壁面211b側から外壁面211a側へ搬送用エアを誘導する第1分岐誘導空部232aを形成できる。同様に、下部第2分岐誘導部28b2の内面は、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212との間の幅方向中間位置より徐々に主搬送路231から下方へ遠ざかるように右下向きに突出し、第2主搬送壁212を超えると徐々に右上向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、下部第2分岐誘導部28b2は、第2主搬送壁212の下端縁212dの下方空間に、第2主搬送壁212の内壁面212b側から外壁面212a側へ搬送用エアを誘導する第2分岐誘導空部232bを形成できる。
上部第1分岐誘導部28a1の外側(左側)と下部第1分岐誘導部28a2の外側(左側)は、第1外方誘導部28a3で接続し、上部第2分岐誘導部28b1の外側(右側)と下部第2分岐誘導部28b2の外側(右側)は、第2外方誘導部28b3で接続する。すなわち、第1,第2外方誘導部28a3,28b3によって、上,下部第1分岐誘導部28a1,28a2および上,下部第2分岐誘導部28b1,28b2を直接連結することにより、外方カバー28内には、搬送方向に直交する平面内で閉じた空間が形成される。よって、第1主搬送壁211の外壁面211aと第1外方誘導部28a3との間には縦長の第1外方誘導空部233a′が形成され、第2主搬送壁212の外壁面212aと第2外方誘導部28b3との間には縦長の第2外方誘導空部233b′が形成される。
第1,第2外方誘導空部233a′,233b′は、上下方向に長いため、上部と下部で誘導機能が異なる。第1外方誘導空部233a′の上部は、上部第1分岐誘導部28a1により形成される第1分岐誘導空部232aから流入する搬送用エアを上段のエア帰還孔24へ誘導する。第1外方誘導空部233a′の下部は、下部第1分岐誘導部28a2により形成される第1分岐誘導空部232aから流入する搬送用エアを下段のエア帰還孔24へ誘導する。第2外方誘導空部233b′の上部は、上部第2分岐誘導部28b1により形成される第2分岐誘導空部232bから流入する搬送用エアを上段のエア帰還孔24へ誘導する。第2外方誘導空部233b′の下部は、下部第2分岐誘導部28b2により形成される第2分岐誘導空部232bから流入する搬送用エアを下段のエア帰還孔24へ誘導する。
すなわち、搬送管2Cの第1外方誘導空部233a′は、上下両方の第1分岐誘導空部232aを介して第1主搬送壁211の外壁面211a側へ誘導された搬送用エアを上下段それぞれのエア帰還孔24へ誘導する機能を併せ持つ。同様に、第2外方誘導空部233b′は、上下両方の第2分岐誘導空部232bを介して第2主搬送壁212の外壁面212a側へ誘導された搬送用エアを上下段それぞれのエア帰還孔24へ誘導する機能を併せ持つ。なお、第1,第2外方誘導空部233a′,233b′では、上段のエア帰還孔24と下段のエア帰還孔24の間に搬送用エアが至ると、もはやエア帰還孔24から帰還流として主搬送路231内へ戻る可能性は極めて少ない。そこで、第1,第2外方誘導空部233a′,233b′の上下方向中央部分(上段のエア帰還孔24と下段のエア帰還孔24との間)に至る搬送用エアを低減させるように、第1,第2外方誘導部28a3,28b3の上下方向中央部分を窪ませてもよい。
なお、本構成例の搬送管2Cにおいては、外方カバー28は第1,第2主搬送壁211,212と非接触となるので、搬送管2A,2Bのように、上,下部外方カバー221,222によって第1,第2主搬送壁211,212を保持する構造にはできない。しかしながら、第1,第2主搬送壁211,212に取り付けた(或いは、一体成形した)左,右誘導プレート26L,26Rが第1,第2分岐誘導空部232a,232b内の適正位置に収納されると、第1,第2主搬送壁211,212も適正位置に収納される。無論、搬送ガイド27に第1,第2主搬送壁211,212と左,右誘導プレート26L,26Rを取り付けて、外方カバー28内へ収納するようにしてもよい。
以上、本発明に係る紙葉類搬送装置を実施形態に基づき説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての紙葉類搬送装置を権利範囲として包摂するものである。