次に、添付図面に基づいて、本発明に係る紙葉類搬送装置の実施形態につき説明する。なお、搬送対象である紙葉類とは、紙幣や書面といった保形性のある紙類(ティッシュペーパーのように、搬送流に対して保形性を有しないものを除く)、樹脂製のフィルム(プラスティック紙幣を含む)や薄いカード類などが適用できる。本実施形態の紙葉類搬送装置においては、紙製の紙幣を搬送対象とした紙幣搬送装置として説明する。また、搬送用流体としては、気体に限らず液体を用いることも可能であるが、本実施形態の紙幣搬送装置においては、空気(エア)を搬送用流体として用いた。また、本実施形態では、紙幣を重力方向に立てた状態で搬送するので、便宜上、紙幣の二面が臨む方向を左右または側方、これに直交する重力方向を上下という。
図1に示す紙幣搬送装置1は、例えば遊技店に設置され、遊技媒体貸出装置やカード販売装置等へ投入された紙幣を回収して一箇所へ集めるような使い方が可能である。直線搬送管2内を通過させて搬送する搬送対象の紙幣PMは、適所に設けた紙幣導入部4から直線搬送管2内へ導入される。直線搬送管2の最上流側には送風機5を設ける。また、直線搬送管2は途中で湾曲搬送管3と連結され、搬送方向が180゜まげられた状態で、送風機5の配設側へ直線搬送管2を延設する。直線搬送管2の最下流端には紙幣回収部6を設ける。すなわち、送風機5を設けた上流から紙幣回収部6を設けた下流に向けて、搬送用流体としての空気が直線搬送管2および湾曲搬送管3内を流れるのである。なお、下流である紙幣回収部6側に吸引機を設けることで、搬送用流体としての空気が直線搬送管2および湾曲搬送管3内を上流から下流へ流れるようにすることもできる。
直線搬送管2は、一対の主搬送壁部である第1主搬送壁211および第2主搬送壁212、第1,第2主搬送壁211,212の上部および下部をそれぞれ覆う端部カバー体としての上部カバー体221および下部カバー体222を備える。この直線搬送管2に接続される左カーブの湾曲搬送管3は、主搬送壁部の一方(例えば、第1主搬送壁211)と接続される内側湾曲壁312と、主搬送壁部の他方(例えば、第1主搬送壁211)と接続される外側湾曲壁311を備える。なお、右カーブの湾曲搬送管3を接続する場合は、第1主搬送壁211と外側湾曲壁311を接続し、第1主搬送壁211と内側湾曲壁312を接続する構造となる。また、直線搬送管2に接続される湾曲搬送管3は、上部カバー体221と接続される上部湾曲カバー体321と、下部カバー体222と接続される下部湾曲カバー体322を備える。
先ず、図2~図5を参照して、直線搬送管2の構造および機能について詳述する。
直線搬送管2は、所要長さまで連結して、設置場所や状況に応じた流路に調整できる。直線搬送管2は、紙幣PMの2面に対向するよう内面側が配置された一対の主搬送壁部である第1主搬送壁211および第2主搬送壁212と、第1,第2主搬送壁211,212の上下両端部に設ける端部カバーとしての上部カバー体221と下部カバー体222をそれぞれ設けた構成である。これら、第1,第2主搬送壁211,212と上部,下部カバー体221,222により、圧縮空気を送り出せるエア直線通過空間23が内部に形成される。このエア直線通過空間23のうち、第1主搬送壁211の内壁面211bと第2主搬送壁212の内壁面212bとで挟まれた空間が直線主搬送路231となり、この直線主搬送路231を通って紙幣PMが搬送されるのである。なお、これら第1,第2主搬送壁211,212と上部,下部カバー体221,222は、個別のパーツとして形成し、組み立てても良いし、射出成形や押出成形といった樹脂加工技術により複合パーツを形成して組み立てるようにしても良い。また、樹脂加工に限らず、厚さ1~2〔mm〕程度の板材を加工して、第1,第2主搬送壁211,212と上部,下部カバー体221,222を作っても良い。
また、第1,第2主搬送壁211,212には、外壁面211a,212aから内壁面211b,212bに搬送用エアが通過し得る流体帰還孔としてのエア帰還孔24を搬送方向へ所要間隔で設ける。本構成の直線搬送管2においては、上部カバー体221に対応させた第1,第2主搬送壁211,212の上部と、下部カバー体222に対応させた第1,第2主搬送壁211,212の下部とに、それぞれ等間隔で一列状に設けた(例えば、図3(B)を参照)。
各エア帰還孔24は、上流側開口縁241と下流側開口縁242と端部側開口縁243と中央側開口縁244とで囲まれた略四角形状である。なお、本構成例の直線搬送管2におけるエア帰還孔24は略四角形状としたが、その開口形状や開口面積、配置間隔等は、特に限定されるものではなく、後述するように、必要十分な帰還流を得ることができれば良い。日本の紙幣PMを搬送する場合、第1,第2主搬送壁211,212の高さを80〔mm〕程度、対向間隔を10~15〔mm〕程度とすると、上下2箇所に配列状に設ける各エア帰還孔24の上下方向高さは20~30〔mm〕が適当である。なお、エア帰還孔24の搬送方向幅は、エア帰還孔24の配設間隔に応じて、適宜な風量や風速が得られるように定めれば良い。
また、第1主搬送壁211に設ける全てのエア帰還孔24と、第2主搬送壁212に設ける全てのエア帰還孔24とが、直線主搬送路231を挟んで正対するように、各エア帰還孔24の開設位置を設定することが望ましい。しかしながら、第1主搬送壁211側のエア帰還孔24と第2主搬送壁212側のエア帰還孔24が、紙幣PMの搬送方向あるいは上下方向に多少ずれていても、極端に偏った帰還流が紙幣PMの二面へ両側から作用しなければ、紙幣PMの安定搬送を実現できる。
上部カバー体221は、第1,第2主搬送壁211,212の各内壁面211b,212b側から各外壁面211a,212a側を経て何れかのエア帰還孔24へ搬送用エアをそれぞれ誘導可能な搬送用流体誘導空部を生じさせる。本構成の上部カバー体221においては、第1主搬送壁211の内壁面211b側から外壁面211a側誘導するための第1分岐誘導部221a1と、第2主搬送壁212の内壁面212b側から外壁面212a側へ空気を誘導する第2分岐誘導部221b1を設けた。すなわち、本構成の上部カバー体221は、第1主搬送壁211の上端縁の上方空間に第1分岐誘導空部232aを生じさせる滑らかな凹曲面状の第1分岐誘導部221a1と、第2主搬送壁212の上端縁の上方空間に第2分岐誘導空部232bを生じさせる第2分岐誘導部221b1を備える。紙幣PMを搬送対象とする場合、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1の左右幅はそれぞれ15〔mm〕程度、凹曲面最奥部までの距離は5〔mm〕程度である。
上部カバー体221の第1分岐誘導部221a1に連なる第1外方誘導部221a2は、第1分岐誘導空部232aを介して第1主搬送壁211の外壁面211a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第1帰還誘導空部233aを生じさせる。同様に、上部カバー体221の第2分岐誘導部221b1に連なる第2外方誘導部221b2は、第2分岐誘導空部232bを介して第2主搬送壁212の外壁面212a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第2帰還誘導空部233bを生じさせる。なお、第1外方誘導部221a2の下端は、滑らかに湾曲させて第1主搬送壁211の外壁面211aに密着する終端屈曲部221a2-eとし、エア帰還孔24の若干下方位置にて第1帰還誘導空部233aが閉塞されるようにしておく。同様に、第2外方誘導部221b2の下端は、滑らかに湾曲させて第2主搬送壁212の外壁面212aに密着する終端屈曲部221b2-eとし、エア帰還孔24の若干下方位置にて第2帰還誘導空部233bが閉塞されるようにしておく。なお、第1,第2外方誘導部221a2,221b2の上下高さは搬送物の高さに対して4/10程度が望ましく、縦寸が76〔mm〕である日本の紙幣PMを搬送対象とする場合、第1,第2外方誘導部221a2,221b2の上下高さは30〔mm〕程度である。
下部カバー体222も上部カバー体221と同様に、第1,第2主搬送壁211,212の各内壁面211b,212b側から各外壁面211a,212a側へ空気をそれぞれ誘導する流体誘導空部を生じさせる。本構成の下部カバー体222においては、第1主搬送壁211の内壁面211b側から外壁面211a側へ空気を誘導するための第1分岐誘導部222a1と、第2主搬送壁212の内壁面212b側から外壁面212a側へ空気を誘導する第2分岐誘導部222b1を設けた。すなわち、本構成の下部カバー体222は、第1主搬送壁211の下端縁の下方空間に第1分岐誘導空部232aを生じさせる滑らかな凹曲面状の第1分岐誘導部222a1と、第2主搬送壁212の下端縁の下方空間に第2分岐誘導空部232bを生じさせる第2分岐誘導部222b1を備える。紙幣PMを搬送対象とする場合、第1,第2分岐誘導部222a1,222b1の左右幅はそれぞれ15〔mm〕程度、凹曲面最奥部までの距離は5〔mm〕程度である。
下部カバー体222の第1分岐誘導部222a1に連なる第1外方誘導部222a2は、第1分岐誘導空部232aを介して第1主搬送壁211の外壁面211a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第1帰還誘導空部233aを生じさせる。同様に、下部カバー体222の第2分岐誘導部222b1に連なる第2外方誘導部222b2は、第2分岐誘導空部232bを介して第2主搬送壁212の外壁面212a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第2帰還誘導空部233bを生じさせる。なお、第1外方誘導部222a2の上端は、滑らかに湾曲させて第1主搬送壁211の外壁面211aに密着する終端屈曲部222a2-eとし、エア帰還孔24の若干上方位置にて第1帰還誘導空部233aが閉塞されるようにしておく。同様に、第2外方誘導部222b2の上端は、滑らかに湾曲させて第2主搬送壁212の外壁面212aに密着する終端屈曲部222b2-eとし、エア帰還孔24の若干上方位置にて第2帰還誘導空部233bが閉塞されるようにしておく。第1,第2外方誘導部222a2,222b2の上下高さも搬送物の高さに対して4/10程度が望ましく、日本の紙幣PMを搬送対象とする場合、第1,第2外方誘導部222a2,222b2の上下高さは30〔mm〕程度である。
上述したように、上部カバー体221には第1,第2分岐誘導部221a1,221b1を設け、下部カバー体222には第1,第2分岐誘導部222a1,222b1を設ければ、直線主搬送路231の上方左右および下方左右へ均等に搬送用エアを誘導できる。なお、上部,下部カバー体221,222に設ける分岐誘導部は左右一対の構造に限定されない。例えば、第1外方誘導部221a2と第2外方誘導部221b2、或いは第1外方誘導部222a2と第2外方誘導部222b2を滑らかな曲面で連結する一つの分岐誘導部を用いて、上部カバー体221或いは下部カバー体222を構成しても良い。また、端部カバー体として、上部カバー体221と下部カバー体222の両方を設けず、一方端のみに端部カバー体を設けておき、第1,第2主搬送壁211,212にエア帰還孔24をそれぞれ一列だけ設けてもよい。かくする場合、端部カバー体を設けない他方端では、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212の間を遮蔽壁等で塞ぐことにより、搬送用エアが漏れない密閉状のエア直線通過空間23を形成すれば良い。
エア帰還孔24を設けた第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側には、上部,下部カバー体221,222の第1,第2外方誘導部221a2,221b2にて誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ導く帰還ガイド部25を設ける。帰還ガイド部25は、少なくともエア帰還孔24の上流側開口縁241にエア導入開口25aが位置し、エア帰還孔24の下流側開口縁242に向かって狭まる突出体で、その横断面は略三角形状とした(例えば、図3(C)を参照)。また、帰還ガイド部25の上流側の上下部は、乱流を生じやすい角部とせず、滑らかな曲面部で構成した。この上下2箇所の曲面部が、エア帰還孔24の下流側開口縁242の上端部または下端部へ向かって徐々に収束することで、帰還ガイド部25の内面上部には上方誘導湾曲面が形成され、内面下部には下方誘導湾曲面が形成される。すなわち、エア導入開口25aから帰還ガイド部25内へ導かれ、上方誘導湾曲面に誘導された搬送用エアは、エア帰還孔24を抜けると上向きに広がり易い帰還流となり、下方誘導湾曲面に誘導された搬送用エアは、エア帰還孔24を抜けると下向きに広がり易い帰還流となる。なお、エア帰還孔24と帰還ガイド部25は、樹脂加工により第1,第2主搬送壁211,212を形成するとき、同時に形成できる。無論、別体として形成した構造体をエア帰還孔24の縁部に沿って取り付けることにより、帰還ガイド部25を形成するようにしても良い。
紙幣PMを搬送対象とし、上,下カバー体221,222に各々対応させて二列状にエア帰還孔24を設ける場合、帰還ガイド部25の上下高さを20~30〔mm〕程度、搬送方向幅を8~15〔mm〕程度にすると、帰還ガイド部25の突出量は3~6〔mm〕程度が望ましい。エア帰還孔24から直線主搬送路231へ流入する帰還流の流入角度(帰還流の流入方向と搬送方向とが成す鋭角)を15~30゜の範囲で調整できるからである。帰還流が強い場合には、帰還流の流入角度を小さくして、帰還流が直線主搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMに到達するまでの距離を長くする。かくすれば、強すぎる帰還流の流下勢は紙幣PMへ到達するまでに減衰してゆき、程良い流下勢となった帰還流が紙幣PMに作用する。一方。帰還流が弱い場合には、帰還流の流入角度を大きくして、帰還流が直線主搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMに到達するまでの距離を短くする。かくすれば、帰還流が消失する前に紙幣PMへ到達させることができ、紙幣PMを下流へ搬送する力を帰還流から与えることができる。
前述したように、加圧した搬送用エアが送り込まれる直線搬送管2内では、上下左右の壁面を外向きに押す圧力が生じる。上部,下部カバー体221,222の第1,第2分岐誘導部221a1,222a1,221b1,222b1を外向きに押す力は、搬送用エアを第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2帰還誘導空部233a,233bへ誘導する力として作用する。なお、上部,下部カバー体221,222には、第1主搬送壁211と第2主搬送壁212の中間部位より左右両側に第1分岐誘導部221a1,222a1と第2分岐誘導部221b1,222b1を設けたので、左右に偏り無く気流が分岐して行く。
しかも、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1の内面は外側(直線主搬送路231から遠ざかる上下方向)に突出して滑らかに第1,第2外方誘導部221a2,221b2に連なる凸面形状の誘引流動面となるので、コアンダ効果により、第1,第2帰還誘導空部233a,233bへ誘導され易い。なお、コアンダ効果とは、粘性流体が近接した壁面に沿って流れる性質のことで、搬送用エアも粘性流体であるから、上部カバー体221および下部カバー体222の内面に沿って流れて行くことは理に適っている。
したがって、直線搬送管2内へ圧送された搬送用エアの一部は、直線主搬送路231から第1,第2分岐誘導空部232a,232bへ、更には第1,第2帰還誘導空部233a,233bへ誘導され、第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ回り込む。この気流は途切れること無く続くので、第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ回り込んだ搬送用エアが、極端に減圧されることは無い。第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ至った搬送用エアは、第1,第2帰還誘導空部233a,233b内を下流へ向かいつつ、直線主搬送路231の中央側(上部カバー体221では下方、下部カバー体222では上方)へ誘導される。
第1,第2帰還誘導空部233a,233bへ誘導された搬送用エアは、エア帰還孔24の帰還ガイド部25へ到達すると、エア導入開口25aから導入され、エア帰還孔24を介して第1主搬送壁211の内壁面211b側へ戻される帰還流となる。なお、搬送用エアが帰還ガイド部25に到達しないまま第1帰還誘導空部233aの下方部に至っても、第1帰還誘導空部233aの下部は終端屈曲部221a2-eで閉塞されているため、終端屈曲部221a2-eに沿って更に下流へ流れる。その下流にもエア帰還孔24を適宜な間隔で設けてあるので、下流のエア帰還孔24の帰還ガイド部25へ到達した搬送用エアの一部は、エア導入開口25aから導入されて直線主搬送路231へ戻る帰還流となる。
なお、直線搬送管2内へ圧送された搬送用エアの一部は、直線主搬送路231から第1,第2分岐誘導空部232a,232bへ至るものの、そのまま第1,第2分岐誘導空部232a,232b内を下流へ流れてゆく搬送用エアの割合が多い。直線搬送管2の実験結果では、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2帰還誘導空部233a,233bへ誘導される搬送用エアは50%以下であった。したがって、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから効率良く第1,第2帰還誘導空部233a,233bへ搬送用エアを誘導するために、誘導プレート7(図3中、二点鎖線で示す)を設けるようにしても良い。
例えば、上部,下部カバー体221,222の第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1に対して、第1,第2分岐誘導空部232a,232b内に突出する誘導プレート7を設ける。誘導プレート7は、半円弧状の板材を弦方向に引き延ばした外観の板状体であり、一方の第1面が上流側に、他方の第2面が下流側に向くよう、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1へ斜めに取り付ける。このため、誘導プレート7における弧状の曲縁部は、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1の凹状内面と密に接するような曲率に設定しておく。そして、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1に取り付けた誘導プレート7の平坦縁部は、搬送用エアの送風方向WDとほぼ平行となり、直線主搬送路231と第1,第2分岐誘導空部232a,232bの境界近傍に位置する。
また、上部カバー体221において、第1分岐誘導部221a1に設ける誘導プレート7の上流側端部と、第2分岐誘導部221b1に設ける誘導プレート7の上流側端部は、第1分岐誘導部221a1と第2分岐誘導部221b1との連結部にて当接、或いは近接させる。第1分岐誘導部221a1と第2分岐誘導部221b1との連結部は、第1,第2主搬送壁211,212の中間位置となるので、左右一対の誘導プレート7,7は、直線主搬送路231から上方へ圧入しつつ下流へ向かう搬送用エアを二等分するV字状の楔として機能する。下部カバー体222においても同様に、左右一対の誘導プレート7,7は、第1分岐誘導部222a1と第2分岐誘導部222b1との連結部にて当接、或いは近接させる。
一方、誘導プレート7の下流側端部は、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1と第1,第2外方誘導部221a2,221b2との連結部(或いは、第1,第2分岐誘導部222a1,222b1と第1,第2外方誘導部222a2,222b2との連結部)近傍に位置させる。かくすれば、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1に各々設けた誘導プレート7により、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2帰還誘導空部233a,233bへ円滑に搬送流を誘導できる。
このように誘導プレート7を配置すると、直線主搬送路231から上部,下部カバー体221,222へ圧入された搬送用エアは、誘導プレート7に沿って、滑らかに第1,第2主搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ誘導される。誘導プレート7を設けた直線搬送管2の実験結果では、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2帰還誘導空部233a,233bへ誘導される搬送用エアは80%以上と大幅に改善された。よって、誘導プレート7を設けることで、帰還流の効率(エア帰還孔24から主搬送路231へ戻される搬送用エアの風量や風速など)を飛躍的に向上させることが可能である。
次に、各エア帰還孔24から直線主搬送路231へ流入した帰還流の挙動を図5に基づいて説明する。なお、図5(A)~(C)は、直線搬送管2の上部カバー体221を搬送方向へ略水平に切り欠いて、直線主搬送路231と第1,第2帰還誘導空部233a,233bを上方から見た状態を示す。図5(A)~(C)において、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2帰還誘導空部233a,233bへ導かれた循環流Fgが帰還ガイド部25のエア導入開口25aから導入されて帰還流となる。また、エア導入開口25aへ導入されずに帰還ガイド部25の下流側へ至った搬送用エアの一部は、更に下流のエア帰還孔24から直線主搬送路231へ導入される帰還流となる可能性がある。
図5(A)に示すのは、理想的な設計の直線搬送管2であり、第1,第2主搬送壁211,212の各帰還孔24からの帰還流によって、内壁面211b,212bに沿った側方流Fr,Frが形成され、これらに挟まれて搬送方向へ直進する中央流Fcが形成される。直線搬送管2においては、搬送用エアが各エア帰還孔24の開口面へ上流から流れ込んで、帰還流と干渉して乱流を生ずることはないので、帰還ガイド部25の角度調整により制御できる流入角度で帰還流を中央流Fc内へ到達させることができる。したがって、直線搬送管2では、紙幣PMの両側面近傍まで帰還流を到達させることで、紙幣PMが中央流Fc内を左右に大きく蛇行することを抑制し、略中央へ安定的に保持できる。更に、直線搬送管2では、紙幣PMの両側面近傍まで到達する帰還流により、紙幣PMを搬送方向(下流)へ向かわせる力を与えられるので、紙幣PMは効率良く搬送されることとなる。
ただし、紙幣PMの両側面へ到達する帰還流の流速は、強過ぎたり、弱過ぎたりしない、程良い流速が望ましい。図5(B)に示すのは、十分な帰還流が得られない設計となった直線搬送管2′であり、内壁面211b,212bに沿った両サイドの側方流Fr,Frが弱いために、中央流Fcが左右に広がってしまった状態である。直線搬送管2′においては、搬送用エアが各エア帰還孔24の開口面へ上流から流れ込んでも、帰還流と干渉して有害な乱流を生じ難い反面、帰還流を中央流Fc内中心付近の紙幣PMまで到達させることは困難である。直線搬送管2′のように、側方流中央流Fc内中心付近の紙幣PMの両側面へ帰還流を到達させることができないと、上述した直線搬送管2のような高い搬送効率は得難い。
また、直線搬送管2′においては、帰還流が弱いために内壁面211b,212b付近にしか影響を与えられないので、紙幣PMは左右に広がった中央流Fc内を左右に大きく蛇行しながら流れてゆく可能性が高く、紙幣PMは不安定な状態となってしまう。さらに、なんらかの理由で紙幣PMが内壁面211b,212bに接触してエア帰還孔24を塞いでしまうと、帰還流が発生しなくなり、そのまま内壁面211b,212bに紙幣PMが張り付いてしまう危険性がある。そうなると、外部から力を加えない限り、紙幣PMは内壁面211b,212bから外れないため、搬送されなくなってしまう。
一方、図5(C)に示すのは、強すぎる帰還流がエア帰還孔24より直線主搬送路231内へ流入する設計となった直線搬送管2″であり、搬送用エアが各エア帰還孔24の開口面へ上流から流れ込んで、強い帰還流と干渉して渦状の乱流を生じてしまった状態である。この乱流の影響で、直線主搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMには細かな振動が繰り返し生じるため、効率的な搬送は実現できない。
エア帰還孔24から直線主搬送路231へ流入する帰還流が強い場合には、帰還流が直線主搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMに到達するまでの距離を長くすれば、紙幣PMに到達する帰還流の流速を抑制できる。また、エア帰還孔24から直線主搬送路231へ流入する帰還流が弱い場合には、帰還流の流入角度を大きくして、帰還流が直線主搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMに到達するまでの距離を短くすれば、紙幣PMに到達する帰還流の流速を高めることができる。
ただし、帰還流を直線主搬送路231の中央付近へ届かせるために流入角度を大きくする(90゜に近づける)と、搬送方向へ向かわせる力が弱くなり、本来の搬送機能が損なわれる可能性がある。そこで、極端に帰還流の流速が弱い場合には、上述した誘導プレート7を用いるなど、別の手法で帰還流の効率を高めるようにすることが望ましい。例えば、帰還流の効率を向上させるために、第1,第2帰還誘導空部233a,233bの左右幅を狭めて、帰還ガイド部25との隙間を小さくし、その隙間から下流側へ通り抜ける搬送用エアの量を低減させてもよい。具体的には、第1,第2外方誘導部221a2,221b2の内壁面と各帰還ガイド部25との間、および第1,第2外方誘導部222a2,222b2の内壁面と各帰還ガイド部25との間に生ずる空隙を狭くすると、より多くの搬送用エアを帰還ガイド部25のエア導入開口25aへ導くことができる。
更には、第1,第2外方誘導部221a2,221b2および第1,第2外方誘導部222a2,222b2を各帰還ガイド部25と一体化させて作成すれば、第1,第2帰還誘導空部233a,233bとエア導入開口25aの左右方向開口幅を一致させた構造とすることもできる。かくすれば、第1,第2外方誘導部221a2,221b2および第1,第2外方誘導部222a2,222b2の内壁面に沿って下流側へ流れる搬送用エアが、段差無く帰還ガイド部25のエア導入開口25aへ導入されるので、帰還流の効率を一層高められる。
また、上部カバー体221の第1,第2外方誘導部221a2,221b2を各帰還ガイド部25と一体化させて作成するときに、各帰還ガイド部25の下部と終端屈曲部221a2-e,221b2-eとを一致させておけば、各帰還ガイド部25の下側に隙間が無くなる。すなわち、帰還ガイド部25の下側の隙間から下流側へ通り抜ける搬送用エアをなくすことで、エア導入開口25aに導入される搬送用エアの量を増やし、帰還流の効率を一層高めることが可能になる。同様に、下部カバー体222の第1,第2外方誘導部222a2,222b2を各帰還ガイド部25と一体化させて作成するときに、各帰還ガイド部25の上部と終端屈曲部222a2-e,222b2-eとを一致させておけば、各帰還ガイド部25の上側に隙間が無くなる。すなわち、帰還ガイド部25の上側の隙間からから下流側へ通り抜ける搬送用エアをなくすことで、エア導入開口25aに導入される搬送用エアの量を増やし、帰還流の効率を一層高めることが可能になる。
次に、上記直線搬送管2と接続可能な湾曲搬送管3について説明する。ここでは、説明を簡単にするため、湾曲搬送管3は直線搬送管2によって横方向(例えば、水平方向)に搬送されてきた紙幣PMを横方向に曲げるものとして説明するが、湾曲搬送管3は、横方向に搬送されてきた紙幣PMの搬送方向を縦方向(例えば、鉛直方向)へ曲げるために使用することができる。無論、湾曲搬送管3は、縦方向に搬送されてきた紙幣PMの搬送方向を横方向へ曲げるために使用することもできる。先ず、図6~図8を参照して、第1構成例の湾曲搬送管3Aの構造および機能について詳述する。
湾曲搬送管3Aは、送風方向WDに対して右回りに180゜搬送路を変更できるもので、図6(A)における左側が上流、右側が下流となる。具体的には、内壁面311b側が凹状となる外側湾曲壁311の上流側を、直線搬送管2の下流側の第1主搬送壁211と接続し、内壁面312a側が凸状となる内側湾曲壁312の上流側を、直線搬送管2の下流側の第1主搬送壁211と接続する。また、外側湾曲壁311の下流側を、直線搬送管2の上流側の第1主搬送壁211と接続し、内側湾曲壁312の下流側を、直線搬送管2の上流側の第1主搬送壁211と接続する。このように、直線搬送管2,2と湾曲搬送管3とを接続すると、湾曲搬送管3によって送風方向WDを反転させ、搬送方向を逆向きに変えることができる。
また、外側,内側湾曲壁311,312の上下両端部に設ける端部カバーとしての上部湾曲カバー体321と下部湾曲カバー体322をそれぞれ設け、これら上部,下部湾曲カバー体321,322は、直線搬送管2の上部,下部カバー体221,222と夫々連結される。これら外側,内側湾曲壁311,312と上部,下部湾曲カバー体321,322により、圧縮空気を送り出せる機密性の高いエア湾曲通過空間33が内部に形成される。このエア湾曲通過空間33のうち、外側湾曲壁311の内壁面311bと内側湾曲壁312の内壁面312bとで挟まれた空間が湾曲主搬送路331となり、この湾曲主搬送路331を通って紙幣PMが搬送されるのである。なお、これら外側,内側湾曲壁311,312と上部,下部湾曲カバー体321,322は、個別のパーツとして形成し、組み立てても良いし、3Dプリンタによって一体成形としても良い。また、樹脂加工に限らず、厚さ1~2〔mm〕程度の板材を加工して、外側,内側湾曲壁311,312と上部,下部湾曲カバー体321,322を作っても良い。
また、外側湾曲壁311には、外壁面311aから内壁面311bに搬送用エアが通過し得る外側湾曲エア帰還孔34を搬送方向へ所要間隔毎(例えば、180゜の半円弧状である外側湾曲壁311に対して、45゜毎)に設ける。また、本構成の湾曲搬送管3Aにおいては、上部湾曲カバー体321に対応させた外側湾曲壁311の上部と、下部湾曲カバー体322に対応させた外側湾曲壁311の下部とに、それぞれ一列状に設けた。
なお、湾曲角度を基準にして外側湾曲エア帰還孔34を等間隔で設けると、湾曲主搬送路331の距離が長いのに外側湾曲エア帰還孔34が足りなかったり、逆に湾曲主搬送路331の距離が短いのに外側湾曲エア帰還孔34が多すぎたりする可能性がある。そこで、搬送物である紙葉類の長手方向の長さを基準として、外側エア帰還孔34の配設数を決めるようにしても良い。例えば、日本の紙幣PMの長手方向は150~160〔mm〕であり、3つ以上の外側湾曲エア帰還孔34が紙幣PMの側面に臨むようにするには50〔mm〕間隔で設ければ良く、4つ以上の外側湾曲エア帰還孔34が紙幣PMの側面に臨むようにするには35~36〔mm〕間隔で設ければ良い。
各外側湾曲エア帰還孔34は、上流側開口縁341と下流側開口縁342と上側開口縁343aと下側開口縁343bとで囲まれた略四角形状である。なお、本構成例の湾曲搬送管3Aにおける外側湾曲エア帰還孔34は略四角形状としたが、前述した直線搬送管2におけるエア帰還孔24と同様、その開口形状や開口面積、配置間隔等は、特に限定されるものではなく、必要十分な帰還流を得ることができれば良い。例えば図7に示すように、上流側開口縁341から下流側開口縁342までの開口幅は約25°相当とし、20゜相当の無孔区間を挟んで隣接する外側湾曲エア帰還孔34の上流側開口縁341を配置する。かくすれば、湾曲搬送管3Aに、4つの外側湾曲エア帰還孔34を等間隔で配置することができる。
上部湾曲カバー体321は、外側湾曲壁311の内壁面311b側から外壁面311a側を経て何れかの外側湾曲エア帰還孔34へ搬送用エアを誘導可能な外側湾曲誘導空部を生じさせる構造である。なお、本構成の上部湾曲カバー体321においては、連結する直線搬送管2の上部カバー体221と形状を合わせるため、内側湾曲壁312にはエア帰還孔を設けていないものの、内側湾曲壁312側に内側湾曲誘導空部が生ずるものとした。よって、上部湾曲カバー体321には、外側湾曲壁311の内壁面311b側から外壁面311a側へ誘導するための外側湾曲分岐誘導部321a1と、内側湾曲壁312の内壁面312b側から外壁面312a側へ空気を誘導する内側湾曲分岐誘導部321b1を設けた。また、本構成例の上部湾曲カバー体321では、外側湾曲壁311の上端縁の上方空間に外側湾曲分岐誘導空部332aを生じさせる滑らかな凹曲面状の外側湾曲分岐誘導部321a1と、内側湾曲壁312の上端縁の上方空間に内側湾曲分岐誘導空部332bを生じさせる内側湾曲分岐誘導部321b1を備える。
上部湾曲カバー体321の外側湾曲分岐誘導部321a1に連なる外側湾曲外方誘導部321a2は、外側湾曲分岐誘導空部332aを介して外側湾曲壁311の外壁面311a側へ誘導された搬送用エアを外側湾曲エア帰還孔34へ誘導可能な外側湾曲帰還誘導空部333aを生じさせる。同様に、上部湾曲カバー体321の内側湾曲分岐誘導部321b1に連なる内側湾曲外方誘導部321b2は、内側湾曲分岐誘導空部332bを介して内側湾曲壁312の外壁面312a側へ搬送用エアを誘導する内側湾曲帰還誘導空部333bを生じさせる。
なお、本構成例の内側湾曲壁312にはエア帰還孔を設けていないが、仮にエア帰還孔が設けられていた場合、上部湾曲カバー体321の内側湾曲帰還誘導空部333bは、内側湾曲分岐誘導空部332bからエア帰還孔へ搬送用エアを誘導する機能を発揮できる。また、外側湾曲外方誘導部321a2の下端は、滑らかに湾曲させて外側湾曲壁311の外壁面311aに密着する終端屈曲部とし、外側湾曲エア帰還孔34の若干下方位置にて外側湾曲帰還誘導空部333aが閉塞されるようにしておく。同様に、内側湾曲外方誘導部321b2の下端も滑らかに湾曲させることで、内側湾曲壁312の外壁面312aに密着する終端屈曲部とし、外側湾曲外方誘導部321a2の終端屈曲部と対向する位置にて内側湾曲帰還誘導空部333bが閉塞されるようにしておく。
下部湾曲カバー体322も上部湾曲カバー体321と同様に、外側湾曲壁311の内壁面311b側から外壁面311a側を経て何れかの外側湾曲エア帰還孔34へ搬送用エアを誘導可能な外側湾曲誘導空部を生じさせる構造である。なお、本構成の下部湾曲カバー体322においては、連結する直線搬送管2の下部カバー体222と形状を合わせるため、内側湾曲壁312にはエア帰還孔を設けていないものの、内側湾曲壁312側に内側湾曲誘導空部が生ずるものとした。よって、下部湾曲カバー体322にも、外側湾曲壁311の内壁面311b側から外壁面311a側へ空気を誘導するための外側湾曲分岐誘導部322a1と、内側湾曲壁312の内壁面312b側から外壁面312a側へ空気を誘導する内側湾曲分岐誘導部322b1を設けた。また、本構成例の下部湾曲カバー体322では、外側湾曲壁311の下端縁の下方空間に外側湾曲分岐誘導空部332aを生じさせる滑らかな凹曲面状の外側湾曲分岐誘導部322a1と、内側湾曲壁312の下端縁の下方空間に内側湾曲分岐誘導空部332bを生じさせる内側湾曲分岐誘導部322b1を備える。
下部湾曲カバー体322の外側湾曲分岐誘導部322a1に連なる外側湾曲外方誘導部322a2は、外側湾曲分岐誘導空部332aを介して外側湾曲壁311の外壁面311a側へ誘導された搬送用エアを外側湾曲エア帰還孔34へ誘導可能な外側湾曲帰還誘導空部333aを生じさせる。同様に、下部湾曲カバー体322の内側湾曲分岐誘導部322b1に連なる内側湾曲外方誘導部322b2は、内側湾曲分岐誘導空部332bを介して内側湾曲壁312の外壁面312a側へ搬送用エアを誘導する内側湾曲帰還誘導空部333bを生じさせる。
なお、本構成例の内側湾曲壁312にはエア帰還孔を設けていないが、仮にエア帰還孔が設けられていた場合、下部湾曲カバー体322の内側湾曲帰還誘導空部333bは、内側湾曲分岐誘導空部332bからエア帰還孔へ搬送用エアを誘導する機能を発揮できるのである。また、外側湾曲外方誘導部322a2の上端は、滑らかに湾曲させて外側湾曲壁311の外壁面311aに密着する終端屈曲部とし、外側湾曲エア帰還孔34の若干上方位置にて外側湾曲帰還誘導空部333aが閉塞されるようにしておく。同様に、内側湾曲外方誘導部322b2の上端も滑らかに湾曲させることで、内側湾曲壁312の外壁面312aに密着する終端屈曲部とし、外側湾曲外方誘導部322a2の終端屈曲部と対向する位置にて内側湾曲帰還誘導空部333bが閉塞されるようにしておく。
上述したように、上部湾曲カバー体321には外側,内側湾曲分岐誘導部321a1,321b1を設け、下部湾曲カバー体322には外側,内側湾曲分岐誘導部322a1,322b1を設ければ、湾曲主搬送路331の上方左右および下方左右へ均等に搬送用エアを誘導できる。なお、上部,下部湾曲カバー体321,322に設ける分岐誘導部は左右一対の構造に限定されない。例えば、外側湾曲外方誘導部321a2と内側湾曲外方誘導部321b2、或いは外側湾曲外方誘導部322a2と内側湾曲外方誘導部322b2を滑らかな曲面で連結する一つの分岐誘導部を用いて、上部湾曲カバー体321或いは下部湾曲カバー体322を構成しても良い。また、端部湾曲カバー体として、上部湾曲カバー体321と下部湾曲カバー体322の両方を設けず、一方端のみに端部湾曲カバー体を設けておき、外側,内側湾曲壁311,312に外側湾曲エア帰還孔34をそれぞれ一列だけ設けてもよい。かくする場合、端部湾曲カバー体を設けない他方端では、外側湾曲壁311と内側湾曲壁312の間を遮蔽壁等で塞ぐことにより、搬送用エアが漏れない密閉状のエア湾曲通過空間33を形成すれば良い。
外側湾曲エア帰還孔34を設けた外側湾曲壁311の外壁面311a側には、上部,下部湾曲カバー体321,322の外側湾曲外方誘導部321a2,322a2にて誘導された搬送用エアを外側湾曲エア帰還孔34へ導く外側湾曲帰還ガイド部35を設ける。外側湾曲帰還ガイド部35は、少なくとも、外側湾曲エア帰還孔34の上流側開口縁341に外側湾曲エア導入開口35aが位置し、外側湾曲エア帰還孔34の下流側開口縁342に向かって狭まる突出体で、その横断面は略三角形状とした(例えば、図7を参照)。外側湾曲帰還ガイド部35は、外側湾曲エア帰還孔34に臨む面が平坦な主エア誘導部351と、この主エア誘導部351の上部と外側湾曲エア帰還孔34の上側開口縁343aとを連結する上側エア誘導部352aと、主エア誘導部351の下部と下側開口縁343bとを連結する下側エア誘導部352bとを有する。
また、外側湾曲帰還ガイド部35における上側,下側エア誘導部352a,352bの上流側は、乱流を生じやすい角部とせず、滑らかな曲面部で構成した。これら上側,下側エア誘導部352a,352bの上流側曲面部は、外側湾曲エア帰還孔34の下流側開口縁342の上端部または下端部へ向かって徐々に収束する形状である。よって、上側エア誘導部352aの内面は上方誘導湾曲面となり、下側エア誘導部352bの内面は下方誘導湾曲面となる。
上方誘導湾曲面が形成された上側エア誘導部352aと下方誘導湾曲面が形成された下側エア誘導部352bとを備える外側湾曲帰還ガイド部35を設けると、外側湾曲エア帰還孔34から湾曲主搬送路331へ戻る外側湾曲帰還流は、上下方向にも広がりやすくなる。すなわち、外側湾曲エア導入開口35aから流入した搬送用エアの上部では、外側湾曲エア帰還孔34の上流側開口縁341に向かって湾曲幅が上向きに狭くなる上側エア誘導部352aに沿って流れるため、外側湾曲エア帰還孔34を抜けると上方に広がり易い。同様に、外側湾曲エア導入開口35aから流入した搬送用エアの下部では、外側湾曲エア帰還孔34の上流側開口縁341に向かって湾曲幅が下向きに狭くなる下側エア誘導部352bに沿って流れるため、外側湾曲エア帰還孔34を抜けると下方に広がり易い。このように拡散した帰還流が紙幣PMの側面に適量吹き当たることで、紙幣PMは搬送方向へ移送されることとなる。
さらに、外側湾曲帰還ガイド部35の主エア誘導部351は、その内面の誘導方向が、外側湾曲エア帰還孔34の下流側開口縁342で、外側湾曲壁311の内壁面311bの接線方向となるようにしてある。したがって、外側湾曲帰還ガイド部35に誘導されて湾曲主搬送路331へ戻された外側湾曲帰還流は、外側湾曲壁311の内壁面311bにおける外側湾曲エア帰還孔34の下流側開口縁342にて、当該内壁面311bの接線方向となる向きに流入するよう誘導される。これにより、外側湾曲エア帰還孔34を抜けた外側湾曲帰還流は、段差なく外側湾曲壁311の内壁面311bに押しあたり、ゲルトラー渦が発生する(図8を参照)。
外側湾曲壁311の内壁面311bにゲルトラー渦を発生させることにより、紙幣PMが外側湾曲壁311の内壁面311bに押し当たることを阻止し、紙幣PMを湾曲主搬送路331の左右方向中央側へ押し曲げる。これにより、紙幣PMは、要所要所で発生させたゲルトラー渦によって湾曲主搬送路331の湾曲状態に応じて曲げられてゆき、途中で外側湾曲壁311の内壁面311bに当たったり、外側湾曲エア帰還孔34を塞いだりすることなく、湾曲搬送管3Aの最下流端まで安定して搬送される。なお、紙幣PMを搬送対象として、安定搬送に十分なゲルトラー渦を生ずる帰還流を得る場合、外側湾曲帰還ガイド部35における外側湾曲エア導入開口35aの開口高さ(外側湾曲壁311の外壁面311aを基準とした左右方向の開口幅)は、4〔mm〕程度である。
上述したように、第1構成例の湾曲搬送管3Aにおいては、外側湾曲エア帰還孔34と外側湾曲帰還ガイド部35が、直線搬送管2の直線主搬送路231から湾曲主搬送路331に搬送された紙幣PMが外側湾曲壁311の内壁面311bに押し当たることを阻止するゲルトラー渦を任意箇所で発生させる紙葉類湾曲誘導手段として機能する。なお、外側湾曲エア帰還孔34と外側湾曲帰還ガイド部35は、樹脂加工により外側湾曲壁311と一体に形成すれば、外側湾曲帰還ガイド部35の主エア誘導部351と外側湾曲壁311の内壁面311bが段差なく接線方向に連続した形状を作りやすいという利点がある。無論、別体として形成した外側湾曲帰還ガイド部用構造体を外側湾曲エア帰還孔34の縁部に沿って取り付けることにより、外側湾曲帰還ガイド部35を形成するようにしても良い。
また、本構成例の湾曲搬送管3Aは、横方向に搬送されてきた紙幣PMを横方向へ180゜曲げるために用いたが、湾曲搬送管3Aの設置角度を上下に90゜傾けることにより、横方向に搬送されてきた紙幣PMを縦方向へ180゜曲げて横方向へ戻す使い方もできる。そして、湾曲搬送管3Aの湾曲角度を180゜から90゜程度に変えると、紙幣PMの搬送方向を横から縦(或いは、縦から横)へ曲げるために用いることができる。紙幣PMの搬送方向を横から縦(或いは、縦から横)に変更する場合には、横方向から横方向へ搬送方向を変える場合よりも強い紙葉類湾曲誘導手段を備える必要がある。そこで、搬送方向を縦-横変換する湾曲搬送管3Aでは、より短い間隔でゲルトラー渦を作用させるように、外側湾曲エア帰還孔34の配設間隔を短く(例えば、35.7〔mm〕以下に)することが望ましい。さらに、搬送方向を縦-横変換する湾曲搬送管3Aでは、横方向から横方向へ搬送方向を変える場合よりも強いゲルトラー渦を発生させるように、外側湾曲エア導入開口35aの開口高さをより高く(例えば、5〔mm〕程度に)することが望ましい。以下に説明する他の構成例の湾曲搬送管も、同様にして、ゲルトラー渦を作用させる間隔や強さを調整することで、紙葉類の搬送方向を縦-横変換するために使うことが可能となる。
次に、図9~図11を参照して、第2構成例の湾曲搬送管3Bの構造および機能について詳述する。なお、第1構成例の湾曲搬送管3Aと同一の機能については、同一符号を付して説明を省略する。
湾曲搬送管3Bは、外側湾曲壁311の内壁面311bに、ゲルトラー渦増幅プレート36を設けたものである。ゲルトラー渦増幅プレート36は、内壁面311bからの突出量が下流に向かって徐々に増す滑らかな曲面形状のゲルトラー渦増幅面361を備えるもので、外側湾曲エア帰還孔34における下流側開口縁342より上流側に設ける。本構成例の湾曲搬送管3Bでは、ゲルトラー渦増幅プレート36の上流側縁部362aを外側湾曲エア帰還孔34の下流側開口縁342にほぼ一致させ、ゲルトラー渦増幅プレート36の下流側縁部362bを外側湾曲エア帰還孔34の上流側開口縁341にほぼ一致させる。
かくすれば、外側湾曲エア帰還孔34を抜けた外側湾曲帰還流は、外側湾曲壁311の内壁面311bよりも曲率が大きいゲルトラー渦増幅面361に押し当たり、より広範囲に強いゲルトラー渦を発生させることができる(図11を参照)。しかも、ゲルトラー渦増幅プレート36の下流側縁部362bは、外側湾曲エア帰還孔34の上流側開口縁341よりも適宜立ち上がっているので、ゲルトラー渦増幅プレート36の下流側では、湾曲主搬送路331の左右方向中央に近い位置にゲルトラー渦を生じさせることができる。したがって、紙幣PMは、一層、湾曲主搬送路331の左右方向中央寄りに押し曲げられることとなり、途中で外側湾曲壁311の内壁面311bに当たったり外側湾曲エア帰還孔34を塞いだりする危険性を一層低減できる。また、ゲルトラー渦増幅プレート36の下流側縁部362bは、外側湾曲エア帰還孔34の上流側開口縁341よりも適宜立ち上がった突出体となるので、何らかの事情でゲルトラー渦が低減あるいは消失しても、紙幣PMが外側湾曲エア帰還孔34を塞いでしまうことを防止できる。なお、紙幣PMを搬送対象として、安定搬送に十分なゲルトラー渦を生ずる帰還流を得る場合、外側湾曲帰還ガイド部35における外側湾曲エア導入開口35aの開口高さ(内側湾曲壁312の外壁面312aを基準とした左右方向の開口幅)は、2〔mm〕程度である。
第2構成例の湾曲搬送管3Bにおいては、外側湾曲エア帰還孔34と外側湾曲帰還ガイド部35とゲルトラー渦増幅プレート36が協働することで、ゲルトラー渦を任意箇所で発生させる紙葉類湾曲誘導手段を実現できる。なお、外側湾曲エア帰還孔34と外側湾曲帰還ガイド部35とゲルトラー渦増幅プレート36は、樹脂加工により外側湾曲壁311と一体に形成すれば、外側湾曲帰還ガイド部35の主エア誘導部351とゲルトラー渦増幅プレート36のゲルトラー渦増幅面361が段差なく連続した形状を作りやすいという利点がある。無論、別体として形成した外側湾曲帰還ガイド部用構造体を外側湾曲エア帰還孔34の縁部に沿って取り付けると共に、別体として形成したゲルトラー渦増幅プレート用構造体を外側湾曲壁311の内壁面311bに取り付けても良い。
次に、図12~図14を参照して、第3構成例の湾曲搬送管3Cの構造および機能について詳述する。なお、第1構成例の湾曲搬送管3Aあるいは第2構成例の湾曲搬送管3Bと同一の機能については、同一符号を付して説明を省略する。
湾曲搬送管3Cでは、内側湾曲壁312に内側湾曲エア帰還孔37を上下2列に、約45゜相当の距離を隔てて等間隔に設ける。すなわち、外側湾曲壁311に設けた外側湾曲エア帰還孔34それぞれに対応させて内側湾曲エア帰還孔37を設けるのである。内側湾曲エア帰還孔37は、上流側開口縁371と下流側開口縁372と上側開口縁343aと下側開口縁343bとで囲まれた略四角形状である。なお、本構成例の湾曲搬送管3Cにおける内側湾曲エア帰還孔37は略四角形状としたが、前述した直線搬送管2におけるエア帰還孔24や外側湾曲エア帰還孔34と同様、その開口形状や開口面積、配置間隔等は、特に限定されるものではなく、必要十分な帰還流を得ることができれば良い。例えば図13に示すように、外側湾曲エア帰還孔34の上流側開口縁341を基準(0゜)として、約10゜相当の位置を上流側開口縁371とし、下流側開口縁342までの開口幅は約15°相当とする。よって、内側湾曲エア帰還孔37の下流側開口縁342は、外側湾曲エア帰還孔34の下流側開口縁342と同じ25゜相当の位置となる。また、隣接する内側湾曲エア帰還孔37は、約20゜相当の無孔区間を挟んで設ける。これにより、湾曲搬送管3Cには、4つの外側湾曲エア帰還孔34に加えて、4つの内側湾曲エア帰還孔37を等間隔で配置することができる。
内側湾曲エア帰還孔37を設けた内側湾曲壁312の外壁面312a側には、上部,下部湾曲カバー体321,322の内側湾曲帰還誘導空部333bに誘導された搬送用エアを内側湾曲エア帰還孔37へ導く内側湾曲帰還ガイド部38を設ける。内側湾曲帰還ガイド部38は、少なくとも、内側湾曲エア帰還孔37の上流側開口縁371に内側湾曲エア導入開口38aが位置し、内側湾曲エア帰還孔37の下流側開口縁372に向かって狭まる突出体で、その横断面は略三角形状とした(例えば、図13を参照)。内側湾曲帰還ガイド部38は、内側湾曲エア帰還孔37に臨む面が平坦な主エア誘導部381と、この主エア誘導部381の上部と内側湾曲エア帰還孔37の上側開口縁373aとを連結する上側エア誘導部382aと、主エア誘導部381の下部と下側開口縁373bとを連結する下側エア誘導部382bとを有する。
また、内側湾曲帰還ガイド部38における上側,下側エア誘導部382a,382bの上流側は、乱流を生じやすい角部とせず、滑らかな曲面部で構成した。これら上側,下側エア誘導部382a,382bの上流側曲面部は、内側湾曲エア帰還孔37の下流側開口縁372の上端部または下端部へ向かって徐々に収束する形状である。よって、上側エア誘導部382aの内面は上方誘導湾曲面となり、下側エア誘導部382bの内面は下方誘導湾曲面となる。
上方誘導湾曲面が形成された上側エア誘導部382aと下方誘導湾曲面が形成された下側エア誘導部382bとを備える内側湾曲帰還ガイド部38を設けると、内側湾曲エア帰還孔37から湾曲主搬送路331へ戻る内側湾曲帰還流は、上下方向にも広がりやすくなる。すなわち、内側湾曲エア導入開口38aから流入した搬送用エアの上部では、内側湾曲エア帰還孔37の上流側開口縁371に向かって湾曲幅が上向きに狭くなる上側エア誘導部382aに沿って流れるため、内側湾曲エア帰還孔37を抜けると上方に広がり易い。同様に、内側湾曲エア導入開口38aから流入した搬送用エアの下部では、内側湾曲エア帰還孔37の上流側開口縁371に向かって湾曲幅が下向きに狭くなる下側エア誘導部382bに沿って流れるため、内側湾曲エア帰還孔37を抜けると下方に広がり易い。
さらに、内側湾曲帰還ガイド部38の主エア誘導部381は、その内面の誘導方向が、外側湾曲壁311の内壁面311b(図13においては、ゲルトラー渦増幅プレート36のゲルトラー渦増幅面361)に対して所要の角度範囲(例えば、10゜~45゜)となるように調整する。かくすれば、内側湾曲帰還ガイド部38に誘導されて内側湾曲エア帰還孔37を抜けた内側湾曲帰還流は、ゲルトラー渦を生じさせ得る角度で外側湾曲壁311の内壁面311b(あるいは、ゲルトラー渦増幅プレート36のゲルトラー渦増幅面361)に押し当たる。これにより、外側湾曲エア帰還孔34を抜けた外側湾曲帰還流に加えて内側湾曲エア帰還孔37を抜けた内側湾曲帰還流が外側湾曲壁311の内壁面311b(あるいは、ゲルトラー渦増幅プレート36のゲルトラー渦増幅面361)に押し当たり、より広範囲に強いゲルトラー渦を発生させることができる(図14を参照)。
第3構成例の湾曲搬送管3Cにおいては、内側湾曲エア帰還孔37と内側湾曲帰還ガイド部38とによって、直線搬送管2の直線主搬送路231から湾曲主搬送路331に搬送された紙幣PMが外側湾曲壁311の内壁面311bに押し当たることを阻止するゲルトラー渦を任意箇所で発生させる紙葉類湾曲誘導手段を構成できる。そして、前述した外側湾曲エア帰還孔34と外側湾曲帰還ガイド部35で構成した紙葉類湾曲誘導手段やゲルトラー渦増幅プレート36と組み合わせることにより、湾曲主搬送路331内で紙幣PMを一層安定的に搬送することが可能となる。
なお、内側湾曲エア帰還孔37と内側湾曲帰還ガイド部38によって湾曲主搬送路331内へ流入させる内側湾曲帰還流は、ゲルトラー渦を発生させ易い角度で外側湾曲壁311に当てることができるので、外側湾曲エア帰還孔34と外側湾曲帰還ガイド部35で生じさせる外側湾曲帰還流ほどの風量・風速は必要ない。よって、内側湾曲エア帰還孔37の前後幅(上流側開口縁371から下流側開口縁342までの開口幅)は外側湾曲エア帰還孔34の前後幅よりも狭くて構わない。また、内側湾曲帰還ガイド部38における内側湾曲エア導入開口38aの開口高さ(内側湾曲壁312の外壁面312aを基準とした左右方向の開口幅)も、外側湾曲帰還ガイド部35における外側湾曲エア導入開口35aの開口高さの半分程度(2〔mm〕程度)で構わない。また、内側湾曲帰還流が紙幣PMに当たると、搬送方向への推進力を与えることができるものの、紙幣PMを外側湾曲壁311へ押しつける方向の力としても作用するため、この力によって紙幣PMを減速させてしまい、紙幣PMの安定搬送を阻害する危険性もある。よって、内側湾曲帰還流を強くし過ぎないということは、紙幣PMを減速させることなく安定して搬送することにも有用である。
内側湾曲エア帰還孔37と内側湾曲帰還ガイド部38は、樹脂加工により内側湾曲壁312と一体に形成すれば、内側湾曲帰還ガイド部38の主エア誘導部381による帰還流誘導角度を高精度に作りやすいという利点がある。無論、別体として形成した内側湾曲帰還ガイド部用構造体を内湾曲エア帰還孔37の縁部に沿って取り付けることにより、内側湾曲帰還ガイド部38を形成するようにしても良い。
次に、図15~図17を参照して、第4構成例の湾曲搬送管3Dの構造および機能について詳述する。なお、第1~第3構成例の湾曲搬送管3A~3Cと同一の機能については、同一符号を付して説明を省略する。
第3構成例の湾曲搬送管3Dにおいては、紙幣PMが外側湾曲壁311の内壁面311bに密着することを防止する凸状の外側湾曲リブ8を外側湾曲壁311の内壁面311bに設けた。また、内側湾曲壁312の内壁面312bには、紙幣PMの後端部が内側湾曲壁312の内壁面312bに接触することを防止する凸状の内側湾曲リブ9を設けた。
外側湾曲リブ8は、外側湾曲壁311の内壁面311bから湾曲主搬送路331内に一定量突出した凹曲面状の密着防止面81と、密着防止面81の上縁から内壁面311bに至る湾曲上面部82と、密着防止面81の下縁から内壁面311bに至る湾曲下面部83とを備える。密着防止面81の突出高さは、例えば、ゲルトラー渦増幅プレート36における下流側縁部362bの突出高さと同じにする。かくすれば、外側湾曲リブ8とゲルトラー渦増幅プレート36との間に段差が生じないので、紙幣PMが段差に引っかかる危険性を無くすことができる。
この外側湾曲リブ8は、湾曲搬送管3Dの流入開口に上流側端部84aを位置させ、湾曲搬送管3Dの流出開口に下流側端部84bを位置させることで、湾曲搬送管3Dの流入開口から流出開口まで途切れずに連続した形状である。したがって、外側湾曲エア帰還孔34でも外側湾曲リブ8が途切れないように、外側湾曲エア帰還孔34の上流側開口縁341から下流側開口縁342へ跨がるように配置する。このとき、外側湾曲エア帰還孔34の上下方向中央付近に外側湾曲リブ8を配置することが望ましい。外側湾曲エア帰還孔34の上部側を塞ぐように外側湾曲リブ8を設けると、外側湾曲帰還流が上方に広がることを阻止してしまい、外側湾曲エア帰還孔34の下部側を塞ぐように外側湾曲リブ8を設けると、外側湾曲帰還流が下方に広がることを阻止してしまうからである。
上記のような外側湾曲リブ8を設けておけば、前述した紙葉類湾曲誘導手段等が有効に機能せず、外側湾曲壁311の内壁面311bに十分なゲルトラー渦を発生させることができなくても、紙幣PMが外側湾曲壁311の内壁面311bに密着することを防止できる(図17を参照)。なお、外側湾曲リブ8は、単一の部材で形成しても良いし、外側湾曲エア帰還孔34の配設サイクル毎(湾曲搬送管3Dの45゜相当の範囲毎)の短尺部材に分割しておき、隣接する外側湾曲リブ8の上流側端部84aと下流側端部84bを連結することで、湾曲搬送管3Dの流入開口から流出開口まで連続させても良い。また、樹脂加工により外側湾曲壁311と一体、ゲルトラー渦増幅プレート36と一体、あるいは外側湾曲壁311およびゲルトラー渦増幅プレート36と一体に形成しても良い。
内側湾曲リブ9は、内側湾曲壁312の内壁面312bから湾曲主搬送路331内に突出した凸曲面状の接触防止面91と、接触防止面91の上縁から内壁面312bに至る湾曲上面部92と、接触防止面91の下縁から内壁面312bに至る湾曲下面部93とを備える。この内側湾曲リブ9は、外側湾曲エア帰還孔34の配設サイクル毎(湾曲搬送管3Dの45゜相当の範囲毎)に設けられ、接触防止面91は、内側湾曲リブ9の上流側端部94aから下流側端部94bに向かって徐々に突出量が増加してゆく。すなわち、内側湾曲リブ9の上流側端部94aの突出量は限りなく0に近く(理想的には、内側湾曲壁312の内壁面312bに等しく)、下流側端部94bの突出量が最大(概ね、外側湾曲リブ8の突出量と同等)となる。
この内側湾曲リブ9は、外側湾曲エア帰還孔34の配設サイクル内(湾曲搬送管3Dの45゜相当の範囲内)で途切れずに連続した形状である。したがって、内側湾曲エア帰還孔37でも内側湾曲リブ9が途切れないように、内側湾曲エア帰還孔37の上流側開口縁371から下流側開口縁372へ跨がるように配置する。このとき、内側湾曲エア帰還孔37の上下方向中央付近に内側湾曲リブ9を配置することが望ましい。内側湾曲エア帰還孔37の上部側を塞ぐように内側湾曲リブ9を設けると、内側湾曲帰還流が上方に広がることを阻止してしまい、内側湾曲エア帰還孔37の下部側を塞ぐように内側湾曲リブ9を設けると、内側湾曲帰還流が下方に広がることを阻止してしまうからである。
上記のような内側湾曲リブ9を設けておけば、何らかの理由で、紙幣PMの後端部が湾曲主搬送路331の左右方向中央側へ寄せられず、内側湾曲壁312の内壁面312bに近づいた場合でも、内側湾曲壁312の内壁面312bに接触することを防止できる(図17を参照)。仮に、紙幣PMの後端部が内側湾曲壁312の内壁面312bに押し当たると、面接触か線接触となるのに対して、紙幣PMの後端部が内側湾曲リブ9押し当たっても、線接触か点接触程度にとどめられるので、接触抵抗による搬送速度の減衰を抑制できるという効果もある。また、内側湾曲リブ9は上流側端部94aから下流側端部94bに向かって徐々に突出量が大きくなるので、内側湾曲リブ9に接触した紙幣PMの後端部を、湾曲主搬送路331の左右方向中央側へ押し戻す効果も期待できる。なお、別体として形成した内側湾曲リブ9を内側湾曲壁312の内壁面312bに取り付けても良いし、樹脂加工により内側湾曲壁312と内側湾曲リブ9を一体に形成しても良い。
上述した第1~第4構成例の湾曲搬送管3A~3Dは、搬送方向を180゜変えるものであったが、任意の角度だけ搬送方向を変えるように湾曲搬送管を構成しても良い。あるいは、所要角度だけ湾曲搬送路を変える湾曲搬送ユニットを複数組み合わせることで、搬送方向を所望の角度まで変更したり、搬送位置をずらしたりすることもでき、汎用性の高いものとなる。
図18に示すのは、右湾曲搬送ユニット3RUであり、前述した第4構成例の湾曲搬送管3Dを外側湾曲エア帰還孔34の配設サイクル内(湾曲搬送管3Dの45゜相当の範囲内)で分割した構造である。したがって、右湾曲搬送ユニット3RUには、外側湾曲エア帰還孔34および外側湾曲帰還ガイド部35、ゲルトラー渦増幅プレート36、内側湾曲エア帰還孔37および内側湾曲帰還ガイド部38、外側湾曲リブ8、内側湾曲リブ9を全て設けることができる。また、右湾曲搬送ユニット3RUは、上流側に送風方向WDで流入した搬送用エアを、下流側で右へ45゜曲げて出力できるものである。
一方、図19に示すのは、左湾曲搬送ユニット3LUであり、右湾曲搬送ユニット3RUを左右判定した構造である。よって、左湾曲搬送ユニット3LUは、上流側に送風方向WDで流入した搬送用エアを、下流側で左へ45゜曲げて出力できるものである。無論、左湾曲搬送ユニット3LUにも、外側湾曲エア帰還孔34および外側湾曲帰還ガイド部35、ゲルトラー渦増幅プレート36、内側湾曲エア帰還孔37および内側湾曲帰還ガイド部38、外側湾曲リブ8、内側湾曲リブ9を全て設けることができる。
右湾曲搬送ユニット3RUと左湾曲搬送ユニット3LUは、上流側と下流側を密に連結可能な取付機構(図示省略)を備えており、右湾曲搬送ユニット3RU同士、左湾曲搬送ユニット3LU同士、右湾曲搬送ユニット3RUと左湾曲搬送ユニット3LUを相互に取り付けられる。無論、前述した直線搬送管2にも同様の取付機構を設けておき、直線搬送管2と右湾曲搬送ユニット3RUあるいは左湾曲搬送ユニット3LUを相互に取り付け可能としても良い。なお、前述した直線搬送管2は上下方向に対象な構造であるから、湾曲搬送管3A~3Dも上下方向に対象な構造とした。したがって、湾曲搬送管3Dを4等分した構造の右湾曲搬送ユニット3RUも上下方向に対象な構造であり、右湾曲搬送ユニット3RUを上下反転させると、左湾曲搬送ユニット3LUと同じ形状になる。同様に、左湾曲搬送ユニット3LUを上下反転させると、右湾曲搬送ユニット3RUと同じ形状になる。すなわち、右湾曲搬送ユニット3RUだけ、あるいは左湾曲搬送ユニット3LUだけで、湾曲主搬送路331の右湾曲と左湾曲を行うことも可能である。
これら右湾曲搬送ユニット3RUと左湾曲搬送ユニット3LUを用いれば、搬送方向を左右へ45゜、90゜、135゜、180゜変更できる。また、右湾曲搬送ユニット3RUと左湾曲搬送ユニット3LUを用いれば、搬送方向を変更するだけでなく、搬送方向を変えずに搬送位置をずらすことも可能である。図20に、右湾曲搬送ユニット3RUと左湾曲搬送ユニット3LUを用いて構成した湾曲搬送管3をいくつか例示する。
図20(A)示す第5構成例の湾曲搬送管3Eは、上流側に右湾曲搬送ユニット3RUを、下流側に左湾曲搬送ユニット3LUを連結して構成したものである。湾曲搬送管3Eは、右湾曲搬送ユニット3RUによって右へ45゜送風方向WDが傾いた後、左湾曲搬送ユニット3LUによって左へ45゜送風方向WDが戻されるので、紙幣PMの搬送方向は変わらない。しかしながら、湾曲搬送管3Eの上流側と下流側では、搬送位置が右に変位距離Dだけずれることとなる。紙幣搬送装置1の搬送路を一直線に形成できず、途中で左右にずれる小さな段差があるような場合に、この湾曲搬送管3Eが有用である。
図20(B)に示す第6構成例の湾曲搬送管3Fは、上流側の右湾曲搬送ユニット3RUと、下流側の左湾曲搬送ユニット3LUとの間に、比較的短尺な直線搬送管2′を連結して構成したものである。この湾曲搬送管3Fは、上述した湾曲搬送管3Eと同様に、紙幣PMの搬送方向が変わらず、搬送位置が右にずれる。しかしながら、湾曲搬送管3Fは、右湾曲搬送ユニット3RUと左湾曲搬送ユニット3LUの間に直線搬送管2′が連結されているので、搬送位置のずれる変位距離D′は、湾曲搬送管3Eの変位距離Dよりも大きくなる。しかも、湾曲搬送管3Fの変位距離D′は、直線搬送管2′の長さによって微調整することもできるので、湾曲搬送管3Eでは対応できないぐらいの段差があるような場合に、この湾曲搬送管3Fが有用である。
図20(C)示す第7構成例の湾曲搬送管3Gは、上流側に2つの右湾曲搬送ユニット3RUを、下流側に2つの左湾曲搬送ユニット3LUを連結して構成したものである。湾曲搬送管3Eは、2つの右湾曲搬送ユニット3RUによって右へ90゜送風方向WDが傾けられた後、2つの左湾曲搬送ユニット3LUによって左へ90゜送風方向WDが戻されるので、紙幣PMの搬送方向は変わらない。そして、湾曲搬送管3Gの上流側と下流側で、搬送位置を右に変位距離D″だけずらすことができる。
なお、上記湾曲搬送管3Fは、右湾曲搬送ユニット3RUと左湾曲搬送ユニット3LUの間に連結する直線搬送管2′の管長を調整することで変位距離D′を自在に変えられるので、湾曲搬送管3Gの変位距離D″と同じにする事は可能である。しかしながら、湾曲搬送管3Fで長い直線搬送管2′を用いると、それだけ上流側開口端から下流側開口端までの距離Lが大きくなってしまい、湾曲搬送管3Gの上流側開口端から下流側開口端までの距離L′を越えることとなる。よって、短い距離範囲で搬送路の段差に対応しなければならない場合、この湾曲搬送管3Gが有用である。しかも、湾曲搬送管3Gにおいて、右湾曲搬送ユニット3RUと左湾曲搬送ユニット3LUの間に直線搬送管2′を連結すれば、上流側開口端から下流側開口端までの距離L′を変えずに、変位距離D″だけを自在に変えることができる。
図21に示すのは、第8構成例の湾曲搬送管3Hで、上流側と下流側にそれぞれ左湾曲搬送ユニット3LUを配し、その間を6つの右湾曲搬送ユニット3RUで連結した構成である。湾曲搬送管3Hは、最初の左湾曲搬送ユニット3LUによって左へ45゜送風方向WDが傾けられた後、6つの右湾曲搬送ユニット3RUによって右へ270°送風方向WDが変更され、最後の左湾曲搬送ユニット3LUによって左へ45゜送風方向WDが傾けられる。したがって、湾曲搬送管3Hでは、送風方向WDが180゜変更され、紙幣PMの搬送方向を反転させるUターン構造となる。
なお、紙幣PMの搬送方向を反転させるには、右湾曲搬送ユニット3RUを4つ連結した半円状の湾曲搬送管、あるいは左湾曲搬送ユニット3LUを4つ連結した半円状の湾曲搬送管を用いれば十分であるが、上流側と下流側の変位距離D2は大きくなる。一方、湾曲搬送管3Hでは、上流側と下流側の変位距離D1を小さく抑えられる。したがって、湾曲搬送管3Hを用いれば、上流側に接続する直線搬送管2と下流側に接続する直線搬送管2との間隔を小さく抑えることができ、紙幣搬送装置1における直線搬送部分の往路と復路を狭小なダクト内に納めなければならない場合などに有用である。
以上、本発明に係る紙葉類搬送装置を実施形態に基づき説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての紙葉類搬送装置を権利範囲として包摂するものである。