次に、添付図面に基づいて、本発明に係る紙葉類搬送装置の実施形態につき説明する。なお、搬送対象である紙葉類とは、紙幣や書面といった保形性のある紙類(ティッシュペーパーのように、搬送流に対して保形性を有しないものを除く)、樹脂製のフィルム(プラスティック紙幣を含む)や薄いカード類などが適用できる。本実施形態の紙葉類搬送装置においては、紙製の紙幣(一対の長辺と一対の短辺からなる矩形状の紙幣)を搬送対象とした紙幣搬送装置として説明する。また、搬送用流体としては、気体に限らず液体を用いることも可能であるが、本実施形態の紙幣搬送装置においては、空気(エア)を搬送用流体として用いた。また、本実施形態では、紙幣を重力方向に立てた状態で搬送するので、便宜上、紙幣の紙面(対向する二面)が臨む方向を左右または側方、これに直交する重力方向を上下という。
図1に示す紙幣搬送装置1は、例えば遊技店に設置され、遊技媒体貸出装置やカード販売装置等へ投入された紙幣PMを回収して一箇所へ集めるような使い方が可能である。直線搬送管2、捻れ搬送管3、湾曲搬送管4等の内部に形成された搬送路内を通過させて搬送する搬送対象の紙幣PMは、適所に設けた紙幣導入部5から長辺方向が搬送方向となるように直線搬送管2内へ導入される。直線搬送管2内における紙幣PMは、紙面が搬送方向と平行になる縦向きで、例えば、搬送方向と平行な第1搬送平行辺PM1aが上辺、搬送方向と平行な第2搬送平行辺PM1bが下辺、搬送方向と直交する第1搬送直交辺PM2aが前辺、搬送方向と直交する第2搬送直交辺PM2bが後辺となる。直線搬送管2の直線搬送路内を紙幣PMが通過するとき、紙幣PMの紙面は縦向きのままで変化しない。
直線搬送管2の下流側に連結した捻れ搬送管3は、搬送路内を紙幣PMが通過する間に紙幣PMの紙面を略90〔°〕回転させる捻れ搬送路を備える。よって、捻れ搬送管3に入る紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bは略鉛直方向であるが、捻れ搬送管3から出てくる紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bは略水平方向となる。なお、捻れ搬送管3に入る紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bは上辺と下辺であるが、捻れ搬送管3から出てくる紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bは右辺と左辺になる。
また、捻れ搬送管3を通過して出てくる紙幣PMの位置は、直線搬送管2の上下中間位置ではなく、下方あるいは上方に片寄った位置となる。これは、捻れ搬送管3の捻れ構造によるもので、その詳細については後述する。
捻れ搬送管3の下流側に連結した湾曲搬送管4は、紙幣PMの紙面に直交する上向き(或いは下向き)に曲げる湾曲搬送路を備える。湾曲搬送管4を紙幣PMが通過する間に、紙幣PMの搬送方向は横方向から縦方向へ変更されるので、湾曲搬送管4の下流に接続された直線搬送管2によって、紙幣PMを更に上方へ(或いは下方へ)搬送することが可能となる。このように、種々の搬送管(直線搬送管2、捻れ搬送管3、湾曲搬送管4などを特に区別しない場合、以下では、単に「搬送管」という)を組み合わせて接続すれば、自由度の高い搬送路を形成できる。
搬送路の最上流端(例えば、最上流に配置された直線搬送管2の上流側端)には送風機6を設け、搬送路の最下流端(例えば、最下流に配置された直線搬送管2の下流側端)には紙幣回収部7を設ける。すなわち、送風機6を設けた上流から紙幣回収部7を設けた下流に向けて、搬送用流体としての空気が搬送路内を流れるのである。なお、下流である紙幣回収部7側に吸引機を設けることで、搬送用流体としての空気が搬送路内を上流から下流へ流れるようにすることもできる。
直線搬送管2は、所要長さまで連結して、設置場所や状況に応じた流路に調整できる。直線搬送管2は、紙幣PMの2面に対向するよう内面側が配置された第1直線搬送壁211および第2直線搬送壁212と、第1,第2直線搬送壁211,212の上下両側に上部外方カバー221と下部外方カバー222をそれぞれ設けた構成である。これら、第1,第2直線搬送壁211,212と上,下部外方カバー221,222により、圧縮空気を送り出せる流体通過直線空間23が内部に形成される。この流体通過直線空間23のうち、第1直線搬送壁211の内壁面211bと第2直線搬送壁212の内壁面212bとで挟まれた空間が直線搬送路231となり、この直線搬送路231を通って紙幣PMが下流へ直線状に搬送されるのである。
直線搬送管2においては、搬送方向(送風方向WDと一致する方向)に向かって左側に第1直線搬送壁211を配置し、搬送方向に向かって右側に第2直線搬送壁212を配置しているので、以下の説明において、第1方向とは搬送方向に向かって左側を指し、第2方向とは搬送方向に向かって右側を指す。第1直線搬送壁211と第2直線搬送壁212は、平板な板状体であり、横方向に等距離を隔てて平行に配置される。また、第1直線搬送壁211と第2直線搬送壁212は、どちらも縦方向の高さ(上下幅)が一定で、第1直線搬送壁211の第1端縁である上端縁211cおよび第2端縁である下端縁211dと、第2直線搬送壁212の第1端縁である上端縁212cおよび第2端縁である下端縁212dは、搬送方向と略平行である。従って、第1,第2直線搬送壁211,212により形成される直線搬送路231を搬送方向に直交するように縦断した流路断面は、縦方向の壁長幅と横方向の壁間幅が常に一定となる。
上部外方カバー221は、第1直線搬送壁211の上端縁211cおよび第2直線搬送壁212の上端縁212cの上方空間と、第1直線搬送壁211の外壁面211aの一部(上側部分)および第2直線搬送壁212の外壁面212aの一部(上側部分)を覆う。一方、下部外方カバー222は、第1直線搬送壁211の下端縁211dおよび第2直線搬送壁212の下端縁212dの下方空間と、第1直線搬送壁211の外壁面211aの一部(下側部分)および第2直線搬送壁212の外壁面212aの一部(下側部分)を覆う。なお、上部外方カバー221と下部外方カバー222に分けて設けず、一つの外方カバーで第1直線搬送壁211と第2直線搬送壁212の外方全体を覆うような構造としても構わない。
なお、これら第1,第2直線搬送壁211,212と上,下部外方カバー221,222は、個別のパーツとして形成し、組み立てても良いし、射出成形や押出成形といった樹脂加工技術により複合パーツを形成して組み立てるようにしても良い。また、樹脂加工に限らず、厚さ1〜2〔mm〕程度の板材を加工して、第1,第2直線搬送壁211,212と上,下部外方カバー221,222を作っても良い。
また、第1,第2直線搬送壁211,212には、外壁面211a,212aから内壁面211b,212bに搬送用エアが通過し得るエア帰還孔24を所要間隔で設ける。本構成の直線搬送管2においては、上部外方カバー221で覆われている第1,第2直線搬送壁211,212の上部と、下部外方カバー222で覆われている第1,第2直線搬送壁211,212の下部とに、それぞれ搬送方向に向かって等間隔で一列状にエア帰還孔24を設けた(例えば、図2(B)を参照)。なお、本構成例の直線搬送管2におけるエア帰還孔24は略四角形状としたが、その開口形状や開口面積、配置間隔等は、特に限定されるものではなく、後述するように、必要十分な帰還流を得ることができれば良い。日本の紙幣PMを搬送する場合、第1,第2直線搬送壁211,212の高さ(壁長幅)を78〔mm〕程度、対向間隔(壁間幅)を10〜15〔mm〕程度とすると、上下2箇所に配列状に設ける各エア帰還孔24の上下方向の幅(搬送直交幅)は20〜30〔mm〕が適当である。なお、エア帰還孔24の搬送方向の幅(搬送平行幅)は、エア帰還孔24の配設間隔に応じて、適宜な風量や風速が得られるように定めれば良い。
また、第1直線搬送壁211に設ける全てのエア帰還孔24と、第2直線搬送壁212に設ける全てのエア帰還孔24とが、直線搬送路231を挟んで対向するように、各エア帰還孔24の開設位置を設定することが望ましい。しかしながら、第1直線搬送壁211側のエア帰還孔24と第2直線搬送壁212側のエア帰還孔24が、紙幣PMの搬送方向あるいは上下方向に多少ずれていても、極端に偏った帰還流が紙幣PMの二面へ両側から作用しなければ、紙幣PMの安定搬送を実現できる。
上部外方カバー221は、第1,第2直線搬送壁211,212の各内壁面211b,212b側から各外壁面211a,212a側へ搬送用エアをそれぞれ誘導する流体誘導空部を生じさせる分岐誘導部を備える。本構成の上部外方カバー221においては、第1直線搬送壁211に対応させて設けた第1分岐誘導部221a1と、第2直線搬送壁212に対応させて設けた第2分岐誘導部221b1を左右対称の構造とし、搬送方向に連続する中央連結部221cにて第1分岐誘導部221a1と第2分岐誘導部221b1を一体に連結した。
上部外方カバー221における第1分岐誘導部221a1の内面は、第1直線搬送壁211と第2直線搬送壁212との間である壁間幅の中間位置より徐々に直線搬送路231から遠ざかるように左上向きに突出し、第1直線搬送壁211を超えると徐々に左下向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第1分岐誘導部221a1は、第1直線搬送壁211の上端縁211cの上方空間に、第1直線搬送壁211の内壁面211b側から外壁面211a側へ搬送用エアを誘導する第1分岐誘導空部232aを形成できる。同様に、上部外方カバー221における第2分岐誘導部221b1の内面は、第1直線搬送壁211と第2直線搬送壁212との間である壁間幅の中間位置より徐々に直線搬送路231から遠ざかるように右上向きに突出し、第2直線搬送壁212を超えると徐々に右下向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第2分岐誘導部221b1は、第2直線搬送壁212の上端縁212cの上方空間に、第2直線搬送壁212の内壁面212b側から外壁面212a側へ搬送用エアを誘導する第2分岐誘導空部232bを形成できる。紙幣PMを搬送対象とする場合、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1の左右幅はそれぞれ15〔mm〕程度、凹曲面最奥部までの距離は5〔mm〕程度である。
上部外方カバー221の第1分岐誘導部221a1の外側(左側)に連なる第1外方誘導部221a2は、第1分岐誘導空部232aを介して第1直線搬送壁211の外壁面211a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第1外方誘導空部233aを生じさせる。同様に、上部外方カバー221の第2分岐誘導部221b1の外側(右側)に連なる第2外方誘導部221b2は、第2分岐誘導空部232bを介して第2直線搬送壁212の外壁面212a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第2外方誘導空部233bを生じさせる。なお、第1外方誘導部221a2の下端は、滑らかに湾曲させて第1直線搬送壁211の外壁面211aに密着する終端屈曲部221a2−eとし、エア帰還孔24の若干下方位置にて第1外方誘導空部233aが閉塞されるようにしておく。同様に、第2外方誘導部221b2の下端は、滑らかに湾曲させて第2直線搬送壁212の外壁面212aに密着する終端屈曲部221b2−eとし、エア帰還孔24の若干下方位置にて第2外方誘導空部233bが閉塞されるようにしておく。紙幣PMを搬送対象とする場合、第1,第2外方誘導部221a2,221b2の上下高さは30〜35〔mm〕程度である。
下部外方カバー222も上部外方カバー221と同様に、第1,第2直線搬送壁211,212の各内壁面211b,212b側から各外壁面211a,212a側へ空気をそれぞれ誘導する流体誘導空部を生じさせる分岐誘導部を備える。本構成の下部外方カバー222においても、第1直線搬送壁211に対応させて設けた第1分岐誘導部222a1と、第2直線搬送壁212に対応させて設けた第2分岐誘導部222b1を左右対称の構造とし、搬送方向に連続する中央連結部222cにて第1分岐誘導部222a1と第2分岐誘導部222b1を一体に連結した。
下部外方カバー222における第1分岐誘導部222a1の内面は、第1直線搬送壁211と第2直線搬送壁212との間である壁間幅の中間位置より徐々に直線搬送路231から遠ざかるように左下向きに突出し、第1直線搬送壁211を超えると徐々に左上向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第1分岐誘導部222a1は、第1直線搬送壁211の下端縁211dの下方空間に、第1直線搬送壁211の内壁面211b側から外壁面211a側へ搬送用エアを誘導する第1分岐誘導空部232aを形成できる。同様に、下部外方カバー222における第2分岐誘導部222b1の内面は、第1直線搬送壁211と第2直線搬送壁212との間である壁間幅の中間位置より徐々に直線搬送路231から遠ざかるように右下向きに突出し、第2直線搬送壁212を超えると徐々に右上向きに変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第2分岐誘導部222b1は、第2直線搬送壁212の下端縁212dの下方空間に、第2直線搬送壁212の内壁面212b側から外壁面212a側へ搬送用エアを誘導する第2分岐誘導空部232bを形成できる。紙幣PMを搬送対象とする場合、第1,第2分岐誘導部222a1,222b1の左右幅はそれぞれ15〔mm〕程度、凹曲面最奥部までの距離は5〔mm〕程度である。
下部外方カバー222の第1分岐誘導部222a1の外側(左側)に連なる第1外方誘導部222a2は、第1分岐誘導空部232aを介して第1直線搬送壁211の外壁面211a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第1外方誘導空部233aを生じさせる。同様に、下部外方カバー222の第2分岐誘導部222b1の外側(右側)に連なる第2外方誘導部222b2は、第2分岐誘導空部232bを介して第2直線搬送壁212の外壁面212a側へ誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ誘導可能な第2外方誘導空部233bを生じさせる。なお、第1外方誘導部222a2の上端は、滑らかに湾曲させて第1直線搬送壁211の外壁面211aに密着する終端屈曲部222a2−eとし、エア帰還孔24の若干上方位置にて第1外方誘導空部233aが閉塞されるようにしておく。同様に、第2外方誘導部222b2の上端は、滑らかに湾曲させて第2直線搬送壁212の外壁面212aに密着する終端屈曲部222b2−eとし、エア帰還孔24の若干上方位置にて第2外方誘導空部233bが閉塞されるようにしておく。紙幣PMを搬送対象とする場合、第1,第2外方誘導部222a2,222b2の上下高さは30〜35〔mm〕程度である。
上述したように、上部外方カバー221には第1,第2分岐誘導部221a1,221b1を設け、下部外方カバー222には第1,第2分岐誘導部222a1,222b1を設ければ、直線搬送路231の上方左右および下方左右へ均等に搬送用エアを誘導できる。なお、外方カバーとして、上部外方カバー221と下部外方カバー222の両方を設けず、一方端のみに外方カバーを設けておき、第1,第2直線搬送壁211,212にエア帰還孔24をそれぞれ一列だけ設けてもよい。かくする場合、外方カバーを設けない他方端では、第1直線搬送壁211と第2直線搬送壁212の間を遮蔽壁等で塞ぐことにより、搬送用エアが漏れない密閉状の流体通過直線空間23を形成すれば良い。
エア帰還孔24を設けた第1,第2直線搬送壁211,212の外壁面211a,212a側には、上,下部外方カバー221,222の第1,第2外方誘導部221a2,221b2にて誘導された搬送用エアをエア帰還孔24へ導く帰還ガイド部25を設ける。帰還ガイド部25は、少なくともエア帰還孔24の上流側開口縁にエア導入開口25aが位置し、エア帰還孔24の下流側開口縁に向かって狭まる突出体で、その横断面は略三角形状とした(図2(C)を参照)。また、帰還ガイド部25の上流側の上下部は、乱流を生じやすい角部とせず、滑らかな曲面部で構成した。この上下2箇所の曲面部が、エア帰還孔24の下流側開口縁の上端部または下端部へ向かって徐々に収束することで、帰還ガイド部25の内面上部には上方誘導湾曲面が形成され、内面下部には下方誘導湾曲面が形成される。すなわち、エア導入開口25aから帰還ガイド部25内へ導かれ、上方誘導湾曲面に誘導された搬送用エアは、エア帰還孔24を抜けると上向きに広がり易い帰還流となり、下方誘導湾曲面に誘導された搬送用エアは、エア帰還孔24を抜けると下向きに広がり易い帰還流となる。なお、エア帰還孔24と帰還ガイド部25は、樹脂加工により第1,第2直線搬送壁211,212を形成するとき、同時に形成できる。無論、別体として形成した構造体をエア帰還孔24の縁部に沿って取り付けることにより、帰還ガイド部25を形成するようにしても良い。
紙幣PMを搬送対象とし、上,下部外方カバー221,222に各々対応させて二列状にエア帰還孔24を設ける場合、帰還ガイド部25の上下幅はエア帰還孔24の搬送直交幅と一致し、帰還ガイド部25の横方向の幅はエア帰還孔24の搬送平行幅と一致する。前述したエア帰還孔24のサイズに対応させて、帰還ガイド部25の搬送直交幅を20〜30〔mm〕程度、搬送平行幅を5〜23〔mm〕程度にすると、帰還ガイド部25の突出量(エア導入開口25aの開口幅)は3〜6〔mm〕程度が望ましい。エア帰還孔24から直線搬送路231へ流入する帰還流の流入角度(帰還流の流入方向と搬送方向とが成す鋭角)を15〜30〔°〕の範囲で調整できるからである。帰還流が強い場合には、帰還流の流入角度を小さくして、帰還流が直線搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMに到達するまでの距離を長くする。かくすれば、強すぎる帰還流の流下勢は紙幣PMへ到達するまでに減衰してゆき、程良い流下勢となった帰還流が紙幣PMに作用する。一方、帰還流が弱い場合には、帰還流の流入角度を大きくして、帰還流が直線搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMに到達するまでの距離を短くする。かくすれば、帰還流の勢いが弱まる前に紙幣PMへ到達させることができ、紙幣PMを下流へ搬送する力を帰還流から与えることができる。
更に、本構成の直線搬送管2では、上,下部外方カバー221,222にそれぞれ設ける第1分岐誘導部221a1,222a1には、少なくとも第1分岐誘導空部232a内に第1方向誘導プレートとしての左誘導プレート26Lが突出する。一方、上,下部外方カバー221,222にそれぞれ設ける第2分岐誘導部221b1,222b1には、少なくとも第2分岐誘導空部232b内に第2方向誘導プレートとしての右誘導プレート26Rが突出する。左,右誘導プレート26L,26Rは、半円弧状の板材を弦方向に引き延ばした外観の板状体であり、一方の第1面261が上流側に、他方の第2面262が下流側に向くよう、第1,第2直線搬送壁211,212の上,下端縁211c,212c,211d,212dへ斜めに隙間無く当接させる。このため、左,右誘導プレート26L,26Rにおける弧状の曲縁部263は、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1の凹状内面と密に接するような曲率に設定してある。そして、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1に取り付けた左,右誘導プレート26L,26Rの平坦縁部264は、搬送用エアの送風方向WDとほぼ平行となり、直線搬送路231と第1,第2分岐誘導空部232a,232bの境界近傍に位置する。
また、上部外方カバー221において、第1分岐誘導部221a1に設ける左誘導プレート26Lの上流側端部26aと、第2分岐誘導部221b1に設ける右誘導プレート26Rの上流側端部26aは、第1分岐誘導部221a1と第2分岐誘導部221b1との連結部にて当接、或いは近接させる。第1分岐誘導部221a1と第2分岐誘導部221b1との連結部は、第1,第2直線搬送壁211,212との間の壁間幅の中間位置となるので、左,右誘導プレート26L,26Rは、直線搬送路231から上方へ圧入しつつ下流へ向かう搬送用エアを二等分するV字状の楔として機能する。下部外方カバー222においても同様に、左,右誘導プレート26L,26Rは、第1分岐誘導部222a1と第2分岐誘導部222b1との連結部にて当接、或いは近接させる。
上部外方カバー221において、左誘導プレート26Lの下流側端部26bは、第1分岐誘導部221a1と第1外方誘導部221a2との連結部近傍に位置させる。同様に、右誘導プレート26Rの下流側端部26bは、第2分岐誘導部221b1と第2外方誘導部221b2との連結部近傍に位置させる。一方、下部外方カバー222において、左誘導プレート26Lの下流側端部26bは、第1分岐誘導部222a1と第1外方誘導部222a2との連結部近傍に位置させる。同様に、右誘導プレート26Rの下流側端部26bは、第2分岐誘導部222b1と第2外方誘導部222b2との連結部近傍に位置させる。かくすれば、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1に各々設けた左,右誘導プレート26L,26Rにより、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2外方誘導空部233a,233bへ円滑に搬送流を誘導できる。
また、左,右誘導プレート26L,26Rは第1,第2直線搬送壁211,212と一体成形したり、接着、融着等の固定手法を用いて一体化したりすることで、第1,第2直線搬送壁211,212に対する左,右誘導プレート26L,26Rの配設位置を一定に保つことができる。加えて、左,右誘導プレート26L,26Rを第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1の第1,第2分岐誘導空部232a,232b内の適正位置へ入れると、第1,第2直線搬送壁211,212と上,下部外方カバー221,222も適正位置に保たれる。よって、第1,第2直線搬送壁211,212を所要位置に保持するステー等の保持構造を直線搬送路231内に設ける必要が無く、保持構造によって搬送用エアの流下勢を減衰させて、紙幣PMの搬送を不安定にするような不具合を効果的に回避できる。また、左誘導プレート26Lと右誘導プレート26Rを別体とせずに、一体のV形誘導プレートとしても良い。
第1,第2分岐誘導空部232a,232b内の適正位置に配置された左,右誘導プレート26L,26Rは、搬送用エアの流下勢の向きを左右へ分岐するように誘導して、第1,第2外方誘導空部233a,233bへ流入させる。これにより、第1,第2外方誘導空部233a,233bは直線搬送路231内より高圧となり、第1直線搬送壁211の外壁面211aと内壁面211bと間および第2直線搬送壁212の外壁面212aと内壁面212bと間に十分な圧力差が生ずる。この圧力差により、第1,第2直線搬送壁211,212に設けた各エア帰還孔24から直線搬送路231へ搬送用エアが戻る帰還流が生じ、第1直線搬送壁211側と第2直線搬送壁212側から均等に帰還流を受ける紙幣PMは直線搬送路231内を下流へ安定搬送されるようになる。
以上のように構成した本実施形態の紙幣搬送装置1では、左,右誘導プレート26L,26Rを設けることによって強い帰還流を生じさせ、直線搬送管2内で紙幣PMの安定した搬送を行うことができる。左,右誘導プレート26L,26Rを備えた直線搬送管2における帰還流の発生原理を図3(A),(B)に示す。なお、図3(B)は、上、下部外方カバー221,222の第2分岐誘導空部232bおよび第2外方誘導空部233bを透かして、第2直線搬送壁212の外壁面212a側を見た状態を示す。
このように左,右誘導プレート26L,26Rを配置すると、直線搬送路231から上,下部外方カバー221,222へ圧入された搬送用エアは、左,右誘導プレート26L,26Rの第1面261に沿って、滑らかに第1,第2直線搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ誘導される。
また、左,右誘導プレート26L,26Rは、第1,第2直線搬送壁211,212へ対向状に設けた各エア帰還孔24にそれぞれ対応した配置となるように、左,右誘導プレート26L,26Rの配設間隔はエア帰還孔24の配設間隔と同じにした。例えば、左,右誘導プレート26L,26Rの上流側端部26aは、エア帰還孔24よりも適宜上流側(エア帰還孔24の上流側縁部から水平距離10〜20〔mm〕程度)に位置させる。また、左,右誘導プレート26L,26Rの下流側端部26bは、エア帰還孔24よりも適宜下流側(エア帰還孔24の下流側縁部から水平距離15〜25〔mm〕程度)に位置させる。このように、各エア帰還孔24に対応させて左,右誘導プレート26L,26Rを適正位置に設けると、左,右誘導プレート26L,26Rにより誘導された搬送用エアが各帰還ガイド部25のエア導入開口25aへ導入される状態はほぼ等しくなり、各エア帰還孔24から直線搬送路231へ戻される帰還流の状態もほぼ等しくなる。
例えば、日本の紙幣PMを搬送するために、30〜60〔mm〕間隔でエア帰還孔24を設けた場合、左,右誘導プレート26L,26Rも同じ間隔(30〜60〔mm〕間隔)で設ければ、左,右誘導プレート26L,26Rにより誘導された搬送用エアが各帰還ガイド部25のエア導入開口25aへ導入される状態はほぼ等しくなる。よって、各エア帰還孔24から直線搬送路231へ偏りのない帰還流を導入することができ、紙幣PMの搬送状態を安定化するのに好適である。また、左,右誘導プレート26L,26Rの下流側端部26bは、対応するエア帰還孔24の下流側縁部よりも下流側に位置するので、下流側端部26bよりも下流に位置する最先のエア帰還孔24へ搬送用エアが導入されると、帰還流の効率(エア帰還孔24から直線搬送路231へ戻される搬送用エアの風量や風速など)を上げ易い。すなわち、左,右誘導プレート26L,26Rに導かれて第1,第2直線搬送壁211,212の外壁面211a,212a側へ回り込んだ搬送用エアが高確率で通過する流路範囲にエア導入開口25aを位置させることが望ましい。このため、左,右誘導プレート26L,26Rの下流側端部26bから下流に位置する最先のエア導入開口25aまでの水平距離は、10〔mm〕程度離しておくことが望ましい。
上述したように、直線搬送管2へ供給される搬送用エアの圧力によって流体通過直線空間23の上部および下部で上流から下流へ流れる搬送用エアを、左,右誘導プレート26L,26Rによって第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2外方誘導空部233a,233bへ滑らかに誘導できる。第1,第2分岐誘導空部232a,232bから流入する搬送用エアにより、第1,第2外方誘導空部233a,233bは直線搬送路231より高圧となるので、エア帰還孔24を通って直線搬送路231へ戻る搬送用エアの流れが帰還流となる。すなわち、左,右誘導プレート26L,26Rを設けた直線搬送管2では、搬送方向へ流れつつ互いに向かい合う強い帰還流を直線搬送路231内に生じさせることができる。直線搬送路231内での帰還流は徐々に弱まるが、直線搬送路231内の幅方向中央付近を通過する紙幣PMまで届き、紙幣PMを下流へ移送する力を紙幣PMの両面から効率良く与えることができる。
ここで、各エア帰還孔24から直線搬送路231へ流入した帰還流の挙動を図4に基づいて説明する。なお、図4(A)〜(C)は、直線搬送管2の上部外方カバー221を搬送方向へ略水平に切り欠いて、直線搬送路231と第1,第2外方誘導空部233a,233bを上方から見た状態を示す。図4(A)〜(C)において、第1,第2分岐誘導空部232a,232bから第1,第2外方誘導空部233a,233bへ導かれた循環流Fgが帰還ガイド部25のエア導入開口25aから導入されて帰還流となる。また、エア導入開口25aへ導入されずに帰還ガイド部25の下流側へ至った搬送用エアの一部は、更に下流のエア帰還孔24から直線搬送路231へ導入される帰還流となる可能性がある。
図4(A)に示すのは、理想的な設計の直線搬送管2であり、第1,第2直線搬送壁211,212の各エア帰還孔24からの帰還流によって、内壁面211b,212bに沿った側方流Fr,Frが形成され、これらに挟まれて搬送方向へ直進する中央流Fcが形成される。直線搬送管2においては、搬送用エアが各エア帰還孔24の開口面へ上流から流れ込んで、帰還流と干渉して乱流を生ずることはないので、帰還ガイド部25の角度調整により制御できる流入角度で帰還流を中央流Fc内へ到達させることができる。したがって、直線搬送管2では、紙幣PMの両側面近傍まで帰還流を到達させることで、紙幣PMが中央流Fc内を左右に大きく蛇行することを抑制し、略中央へ安定的に保持できる。更に、直線搬送管2では、紙幣PMの両側面近傍まで到達する帰還流により、紙幣PMを搬送方向(下流)へ向かわせる力を与えられるので、紙幣PMは効率良く搬送されることとなる。
ただし、紙幣PMの紙面へ両側から到達する帰還流の流速は、強過ぎたり、弱過ぎたりしない、程良い流速が望ましい。図4(B)に示すのは、十分な帰還流が得られない設計となった直線搬送管2′であり、内壁面211b,212bに沿った両サイドの側方流Fr,Frが弱いために、中央流Fcが左右に広がってしまった状態である。直線搬送管2′においては、搬送用エアが各エア帰還孔24の開口面へ上流から流れ込んでも、帰還流と干渉して有害な乱流を生じる心配はない反面、帰還流を中央流Fc内中心付近の紙幣PMまで到達させることは困難である。直線搬送管2′のように、中央流Fc内中心付近の紙幣PMの両側面へ帰還流を到達させることができないと、上述した直線搬送管2のような高い搬送効率は得難い。
また、直線搬送管2′においては、帰還流が弱いために内壁面211b,212b付近にしか影響を与えられないので、紙幣PMは左右に広がった中央流Fc内を左右に大きく蛇行しながら流れてゆく可能性が高く、紙幣PMは不安定な状態となってしまう。さらに、なんらかの理由で紙幣PMが内壁面211b,212bに接触してエア帰還孔24を塞いでしまうと、帰還流が発生しなくなり、そのまま内壁面211b,212bに紙幣PMが張り付いてしまう危険性がある。そうなると、外部から力を加えない限り、紙幣PMは内壁面211b,212bから外れないため、搬送されなくなってしまう。
一方、図4(C)に示すのは、強すぎる帰還流がエア帰還孔24より直線搬送路231内へ流入する設計となった直線搬送管2″であり、搬送用エアが各エア帰還孔24の開口面へ上流から流れ込んで、強い帰還流と干渉して渦状の乱流を生じてしまった状態である。この乱流の影響で、直線搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMには細かな振動が繰り返し生じるため、効率的な搬送は実現できない。
エア帰還孔24から直線搬送路231へ流入する帰還流が強い場合には、帰還流が直線搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMに到達するまでの距離を長くすれば、紙幣PMに到達する帰還流の流速を抑制できる。また、エア帰還孔24から直線搬送路231へ流入する帰還流が弱い場合には、帰還流の流入角度を大きくして、帰還流が直線搬送路231の中央付近を流れる紙幣PMに到達するまでの距離を短くすれば、紙幣PMに到達する帰還流の流速を高めることができる。
ただし、帰還流を直線搬送路231の中央付近へ届かせるために流入角度を大きくする(90〔°〕に近づける)と、搬送方向へ向かわせる力が弱くなり、本来の搬送機能が損なわれる可能性がある。そこで、極端に帰還流の流速が弱い場合には、上述した左,右誘導プレート26L,26Rを用いるなど、別の手法で帰還流の効率を高めるようにすることが望ましい。例えば、帰還流の効率を向上させるために、第1,第2外方誘導空部233a,233bの左右幅を狭めて、帰還ガイド部25との隙間を小さくし、その隙間から下流側へ通り抜ける搬送用エアの量を低減させてもよい。具体的には、第1,第2外方誘導部221a2,221b2の内面と各帰還ガイド部25との間、および第1,第2外方誘導部222a2,222b2の内面と各帰還ガイド部25との間に生ずる空隙を狭くすると、より多くの搬送用エアを帰還ガイド部25のエア導入開口25aへ導くことができる。
更には、第1,第2外方誘導部221a2,221b2および第1,第2外方誘導部222a2,222b2を各帰還ガイド部25と一体化させて作成すれば、第1,第2外方誘導空部233a,233bとエア導入開口25aの左右方向開口幅を一致させた構造とすることもできる。かくすれば、第1,第2外方誘導部221a2,221b2および第1,第2外方誘導部222a2,222b2の内面に沿って下流側へ流れる搬送用エアが、段差無く帰還ガイド部25のエア導入開口25aへ導入されるので、帰還流の効率を一層高められる。
また、上部外方カバー221の第1,第2外方誘導部221a2,221b2を各帰還ガイド部25と一体化させて作成するときに、各帰還ガイド部25の下部と終端屈曲部221a2−e,221b2−eとを一致させておけば、各帰還ガイド部25の下側に隙間が無くなる。すなわち、帰還ガイド部25の下側の隙間から下流側へ通り抜ける搬送用エアをなくすことで、エア導入開口25aに導入される搬送用エアの量を増やし、帰還流の効率を一層高めることが可能になる。同様に、下部外方カバー222の第1,第2外方誘導部222a2,222b2を各帰還ガイド部25と一体化させて作成するときに、各帰還ガイド部25の上部と終端屈曲部222a2−e,222b2−eとを一致させておけば、各帰還ガイド部25の上側に隙間が無くなる。すなわち、帰還ガイド部25の上側の隙間からから下流側へ通り抜ける搬送用エアをなくすことで、エア導入開口25aに導入される搬送用エアの量を増やし、帰還流の効率を一層高めることが可能になる。
このように、上述した構造の直線搬送管2を用いれば、搬送対象の紙幣PMは、相対向する帰還流によって直線搬送路231内の略中央にホールドされ、左右にぶれることなく搬送方向へ移送されてゆくので、紙幣PMの状態(癖、皺、よれ、こし等)に影響されることなく、安定搬送が可能となる。更に、左,右誘導プレート26L,26Rを設けることで得られた強い帰還流を、小さい流入角度で直線搬送路231へ流入させることにより、搬送速度を上げて、紙幣PMの搬送効率を高められるという利点もある。また、帰還流としてエア帰還孔24より戻った搬送用エアは、直線搬送路231内を下流へ流されつつ、上部または下部の第1,第2分岐誘導空部232a,232bへ誘導され、第1,第2外方誘導空部233a,233bからエア帰還孔24を経て再び帰還流となる螺旋状の流れ(以下、「螺旋流」という。)が途切れることなく続く。このように、直線搬送管2の上下左右4か所には、螺旋流が連続的に発生するので、紙幣PMの安定搬送に一層の効果がある。
しかしながら、上述した直線搬送管2で紙幣PMを搬送する場合、搬送中の紙幣PMが何らかの要因によって上下に振動した際に、上,下部外方カバー221,222、或いは左,右誘導プレート26L,26Rに接触してしまう危険性がある。接触により紙幣PMが傷んだり裂けたりすると、帰還流による安定搬送が難しくなる可能性がある。そこで、図6及び図7に示す第2構成例の直線搬送管2Bにおいては、上,下部外方カバー221,222や左,右誘導プレート26L,26Rに紙幣PMが接触することを防止する搬送ガイド27を設けた。
搬送ガイド27は、少なくとも、左,右誘導プレート26L,26Rよりも直線搬送路231側に設ける。本構成例では、第1直線搬送壁211および第2直線搬送壁212の上端縁211c,212cと左,右誘導プレート26L,26Rとの間、第1直線搬送壁211および第2直線搬送壁212の下端縁211d,212dと左,右誘導プレート26L,26Rとの間に設けた。これらの位置に配した搬送ガイド27は、紙幣PMが第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側へ入り込むことを防ぐと共に、搬送用エアが第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1へ流入することを許容する。
搬送ガイド27は、長尺で平行な第1支持材271と第2支持材272の間に、所要間隔(紙幣PMの搬送方向長さよりも十分に短い間隔)で薄板状の遮蔽体273を架け渡した梯子状の外観である。遮蔽体273は、紙幣PMにおける第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bの長さ(長辺の長さ)よりも短い間隔で搬送方向に複数設ければ、紙幣PMが第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側へ入り込むことを防ぐ遮蔽部として機能する。そして、隣接する遮蔽体273の間に形成される空間は、搬送用エアが第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1へ流入することを許容する通空部27aとして機能する。
搬送ガイド27の作成手法は特に限定されず、1〔mm〕厚程度の金属製板材を加工することで、十分な強度を持たせつつ簡易に作成してもよい。また、メッシュ構造の金網なども、紙幣PMに対する遮蔽機能と、搬送用エアに対する透過機能を同時に実現できるので、搬送ガイド27として利用できる。なお、第1,第2直線搬送壁211,212あるいは左,右誘導プレート26L,26Rと搬送ガイド27を樹脂等で一体成形することも可能である。第1,第2直線搬送壁211,212の上端縁211c,212c側に跨がるように複数の遮蔽体273を一体成形すれば、遮蔽体273が第1,第2直線搬送壁211,212の対向間隔を適正に保持するスペーサとして機能し、直線搬送管2Bの強度を高める上でも効果的である。さらに、第1,第2直線搬送壁211,212と搬送ガイド27に加えて、左,右誘導プレート26L,26Rも樹脂等で一体成形すれば、第1,第2直線搬送壁211,212と左,右誘導プレート26L,26Rとの取り付け作業が不要で、生産効率を高められる。しかも、左,右誘導プレート26L,26Rは、第1,第2直線搬送壁211,212の上,下端縁211c,212c,211d,212dに加えて、搬送ガイド27とも一体化するので、左,右誘導プレート26L,26Rによる第1,第2直線搬送壁211,212の保持強度も高められる。
上述した搬送ガイド27を第1,第2直線搬送壁211,212の上端縁211c,212c側および下端縁211d,212d側に各々設けることで、紙幣PMが、上,下部外方カバー221,222、或いは左,右誘導プレート26L,26Rに接触してしまう危険性を確実に排除できる。しかしながら、搬送ガイド27の遮蔽体273は、搬送用エアが直線搬送路231から第1,第2分岐誘導空部232a,232bへ流入することを阻害し、帰還流の効率を下げてしまう可能性がある。そこで、直線搬送管2Bに設ける遮蔽体273は、断面が略四角形状の単純な板材とせずに、搬送用エアの勢いをなるべく削がないような形状とした。
遮蔽体273の具体的な板構造を、図6に示す。遮蔽体273は、直線搬送路231に臨む内面部2731と、その対向面である外面部2732と、上流側で内面部2731と外面部2732に連なる上流側面部2733と、下流側で内面部2731と外面部2732に連なる下流側面部2734を備える。そして、上流側面部2733と下流側面部2734は、内面部2731及び外面部2732に直交せず、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。すなわち、上流側面部2733は、直線搬送路231側の内側縁部2733aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2733bが下流に位置する。同様に、下流側面部2734は、直線搬送路231側の内側縁部2734aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2734bが下流に位置する。
このように、上流側面部2733および下流側面部2734を誘導傾斜面とすれば、隣り合う2つの遮蔽体273の間に形成される通空部27aは、直線搬送路231から搬送用エアを適宜な流入角度(誘導傾斜面の傾斜角度)で通過させることが可能となる。よって、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1へ誘導された搬送用エアは、搬送方向の流下勢が著しく削がれることなく通空部27aを通過できるので、帰還流の効率が低下することを効果的に抑制できる。
なお、本構成例の直線搬送管2Bで用いた搬送ガイド27は、上部外方カバー221側と下部外方カバー222側で共有できる。例えば、第1直線搬送壁211の下端縁211dに第1支持材271を、第2直線搬送壁212の下端縁212dに第2支持材272をそれぞれ配置すれば、遮蔽体273の上,下流側面部2733,2734が下向きの誘導傾斜面となるように、下部外方カバー222側へ搬送ガイド27を取り付けられる。その逆に、第1直線搬送壁211の上端縁211cに第2支持材272を、第2直線搬送壁212の上端縁212cに第1支持材271をそれぞれ配置すれば、遮蔽体273の上,下流側面部2733,2734が上向きの誘導傾斜面となるように、上部外方カバー221側へ搬送ガイド27を取り付けられる。
上述した搬送ガイド27の設計寸法として、通空部27aは、紙幣PMの長手方向寸法(150〜160〔mm〕)の1/10程度(例えば、10〔mm〕以上、20〔mm〕以下)であることが望ましい。10〔mm〕未満では遮蔽体273の配設間隔が短すぎて、左,右誘導プレート26L,26Rに加わる流圧が減少してしまう不具合が懸念される。20〔mm〕超過では遮蔽体273の配設間隔が広すぎて、紙幣PMが遮蔽体273に接触してしまう障害が発生する危険性がある。また、遮蔽体273の搬送方向長さと通空部27aの搬送方向長さの比率は3:7としたが、これよりも通空部27aの比率を低くしても、十分な帰還流の効率を得られる場合がある。ただし、通空部27aが50%以上であることが望ましい。また、誘導傾斜面である上流側面部2733および下流側面部2734の傾斜角度は、約30〔°〕とした。なお、遮蔽体273の配置間隔(通空部27aの開口間隔)は、エア帰還孔24の配置間隔に対して自然数倍(図5においては、4)に設定しておけば、搬送ガイド27、左,右誘導プレート26L,26R及びエア帰還孔24の配置が揃った効率的なレイアウトに調整できる。このようなレイアウトの構造にすれば、直線搬送管2Bの上下左右4か所で連続的に発生する螺旋流を妨げることがないので、紙幣PMを障害なく搬送することが可能となる。
搬送ガイド27の遮蔽体273では、直線搬送路231に臨む内面部2731が搬送方向にほぼ平行な平坦面であることから、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1へ誘導された搬送用エアを阻むこととなる。しかも、通空部27aを通過しようとしている搬送用エアを巻き込んだ乱流を発生させ、第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1への通過流量を低減させてしまう可能性がある。そこで、図7(A)に示す第2構成例の搬送ガイド27′では、乱流の発生を効果的に抑えられる遮蔽体274を用いる構成とした。
遮蔽体274は、直線搬送路231に臨む内面部2741と、その対向面である外面部2742と、上流側で内面部2741と外面部2742に連なる上流側面部2743と、下流側で内面部2741と外面部2742に連なる下流側面部2744を備える。そして、上流側面部2743は、直線搬送路231側の内側縁部2743aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2743bが下流に位置し、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。同様に、下流側面部2744は、直線搬送路231側の内側縁部2744aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2744bが下流に位置し、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。
ここで、内面部2741は、直線搬送路231側に膨出する凸面形状で、下流側面部2744と滑らかに連なる誘引流動面とした。すなわち、内面部2741を下流側面部2744に連なる誘引流動面としておけば、コアンダ効果により、搬送用エアは、内面部2741の凸曲面に沿って下流側面部2744の誘導傾斜面へ至るので、通空部27aを通過し易くなる。よって、搬送ガイド27′を用いれば、帰還流の効率低下を一層抑制することができる。
上記のように、誘引流動面である内面部2741を備えた搬送ガイド27′を用いることで、帰還流の効率低下を抑制できると、逆に帰還流が強すぎて紙幣PMの搬送を不安定にしてしまう可能性がある。そのような場合には、図7(B)に示す第3構成例の搬送ガイド27″のように、搬送方向に大きい遮蔽体275を用いて、通空部27aの比率を低くし、帰還流の効率を適宜な範囲に調整するようにしても良い。
遮蔽体275は、直線搬送路231に臨む内面部2751と、その対向面である外面部2752と、上流側で内面部2751と外面部2752に連なる上流側面部2753と、下流側で内面部2751と外面部2752に連なる下流側面部2754を備える。そして、上流側面部2753は、直線搬送路231側の内側縁部2753aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2753bが下流に位置し、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。同様に、下流側面部2754は、直線搬送路231側の内側縁部2754aよりも第1,第2分岐誘導部221a1,221b1,222a1,222b1側の外側縁部2754bが下流に位置し、上流から下流に向かって傾斜する誘導傾斜面とする。
内面部2751は、直線搬送路231側に膨出する滑らかな凸面形状で、下流側面部2754と滑らかに連なる誘引流動面である。このように、内面部2751を下流側面部2754に連なる誘引流動面としておけば、コアンダ効果により、搬送用エアは、内面部2751の凸曲面に沿って下流側面部2754の誘導傾斜面へ至るので、通空部27aを通過し易くなり、帰還流の効率低下を抑制する。しかも、遮蔽体275と通空部27aの搬送方向長さの比率は、遮蔽体275が大きくなるように設定してあるので、帰還流の効率を適宜な範囲に調整できる。
上述した直線搬送管2,2Bは、直線状の直線搬送路231によって紙幣PMを真っ直ぐに搬送するための機能を備えるものであり、直線搬送管2,2B単独で搬送方向を変えることはできない。紙幣PMの搬送方向を変えるためには、湾曲搬送管4等を用いる必要がある。しかしながら、紙幣PMの紙面が鉛直方向となるように設置された直線搬送管2,2Bの下流側に湾曲搬送管4を接続しても、紙幣PMの紙面に直交する左側あるいは右側へ搬送方向を変更することしかできない。紙幣PMの搬送方向を上方或いは下方へ変更するためには、紙幣PMの紙面が水平方向となる状態に変換して湾曲搬送管4へ送り出す必要がある。このような場合に捻れ搬送管3を用いれば、紙幣PMを搬送しながら縦向きの紙面を横向きに回転させることが可能となり、上方或いは下方に向けて湾曲する湾曲搬送管4と連結することができる。
捻れ搬送管3の詳細構造を説明するに際し、先ずは搬送方向へ紙幣PMを送り出しながら紙面の向きを変える基本原理について、図8〜図12に示す中心捻れ搬送管3−Oに基づき説明する。
直線搬送管2,2B等と連結するために、中心捻れ搬送管3−Oの上流端および下流端の少なくとも一方の形状は、直線搬送管2の流体通過直線空間23の流路断面と同形状にしておくことが望ましい。そこで、図8に示すように、本構成例の中心捻れ搬送管3−Oは、上流端および下流端のどちらも直線搬送管2,2Bと連結可能なように、第1直線搬送壁211と第1捻れ搬送壁311、第2直線搬送壁212と第2捻れ搬送壁312、上部外方カバー221と第1捻れ外方カバー321、下部外方カバー222と第2捻れ外方カバー322を対応させた。すなわち、紙幣PMの2面に対向するよう内面側が配置された第1捻れ搬送壁311および第2捻れ搬送壁312と、第1,第2捻れ搬送壁311,312の最上流端において上下となる両部位に第1捻れ外方カバー321と第2捻れ外方カバー322をそれぞれ設けた構成である。これら、第1,第2捻れ搬送壁311,312と第1,第2捻れ外方カバー321,322により、圧縮空気を送り出せる流体通過捻れ空間33が内部に形成される。
この流体通過捻れ空間33のうち、第1捻れ搬送壁311の内壁面311bと第2捻れ搬送壁312の内壁面312bとで挟まれた空間が中心捻れ搬送路331−Oとなり、紙幣PMはこの中心捻れ搬送路331−O内を搬送されながら時計回りに略90〔°〕回転するのである。なお、中心捻れ搬送路331−Oは、上流端開口の中心から下流端開口の中心へ至る直線状の中心軸CA−O回りに、上流より搬送された紙幣PMの紙面を回転(例えば、搬送方向に向かって時計回りに回転)させて、紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの向きを鉛直方向から水平方向へ変える流路である。上流より搬送された紙幣PMの紙面を時計回りに回転させて、紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの向きを鉛直方向から水平方向へ変える捻れ搬送路を構成することも可能である。また、上流より水平方向に搬送されてきた紙幣PMを時計回り(あるいは反時計回り)に回転させて鉛直方向へ変える捻れ搬送路を構成することも可能である。
中心捻れ搬送管3−Oの最上流端においては、搬送方向(送風方向WDと一致する方向)に向かって左側に第1捻れ搬送壁311を配置し、搬送方向に向かって右側に第2捻れ搬送壁312を配置する。しかしながら、中心捻れ搬送管3−Oの最下流端においては、上側に第1捻れ搬送壁311が位置し、下側に第2捻れ搬送壁312が位置する。このような中心捻れ搬送路331−Oを形成する第1捻れ搬送壁311と第2捻れ搬送壁312は、同一の湾曲板材で構成できる。また、第1捻れ搬送壁311の内壁面311bと第2捻れ搬送壁312の内壁面312bとの間である壁間幅が一定となるように、等距離を隔てて第1捻れ搬送壁311と第2捻れ搬送壁312を平行に配置する。
第1捻れ搬送壁311は、搬送方向の下流に向かって、第1端縁311c(中心捻れ搬送管3−Oの最上流端では上端縁)が第2捻れ搬送壁312へ近づく方向に傾くと共に第2端縁311d(中心捻れ搬送管3−Oの最上流端では下端縁)が第2捻れ搬送壁312から遠ざかる方向に傾く。一方、第2捻れ搬送壁312は、搬送方向の下流に向かって、第1端縁312c(中心捻れ搬送管3−Oの最上流端では上端縁)が第1捻れ搬送壁311から遠ざかる方向に傾くと共に第2端縁312d(中心捻れ搬送管3−Oの最上流端では下端縁)が第1捻れ搬送壁311へ近づく方向に傾く。
中心捻れ搬送管3−Oにおいては、搬送方向(送風方向WDと一致する方向)に向かって時計回り(或いは反時計回り)に紙幣PMを略90〔°〕回転させる捻れ構造であるため、最上流端における上下方向が最下流端において左右方向に変わることとなる。以下の説明においては、第1,第2捻れ搬送壁311,312の第2端縁311d、312dから第1端縁311c,312cに向かう方向を第1方向、第1端縁311c,312cから第2端縁311d、312dに向かう方向を第2方向とよぶ。すなわち、最上流端においては第1方向と第2方向が鉛直方向と一致するが、最下流端においては第1方向と第2方向が水平方向に変わることとなる。また、中心捻れ搬送路331−O内で紙幣PMが傾く方向を回転方向、紙幣PMが遠ざかる方向を反回転方向とよぶ。紙幣PMの紙面が鉛直方向に近い中心捻れ搬送路331−Oの上流においては、紙幣PMの上半分は右側へ傾くから右側が回転方向で左側が反回転方向、紙幣PMの下半分は左側へ傾くから左側が回転方向で右側が反回転方向となる。紙幣PMの紙面が水平方向に近づいた中心捻れ搬送路331−Oの下流においては、紙幣PMの右半分は下側へ傾くから下側が回転方向で上側が反回転方向、紙幣PMの左半分は上側へ傾くから上側が回転方向で下側が反回転方向となる。以下、中心捻れ搬送路331−Oの捻れ構造について説明する。
中心捻れ搬送路331−Oのみを単純化して図9に示す。図9(A)は、中心捻れ搬送路331−Oを上流から下流に向かって見た正面図で、中心軸CA−Oの周囲には上流から下流まで見通せる空部がある。図9(B)は、中心捻れ搬送路331−Oの右側面図で、最上流側における上面が最下流側で右側面となり、最上流側における底面が最下流側で左側面となるように捻れていく様子(図9(B)中、破線で示す)が分かる。
例えば、紙幣PMとして日本紙幣の一万円札を用いる場合、長手方向(第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1b)の寸法は160〔mm〕、短手方向(第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2b)の寸法は76〔mm〕、厚さは約0.1〔mm〕である。したがって、中心捻れ搬送路331−Oにおける流路断面の壁間幅(上流側においては横幅で、下流側においては縦幅)を12〔mm〕、壁長幅(上流側においては縦幅で、下流側においては横幅)を78〔mm〕とすれば、日本紙幣の一万円札を紙幣PMとして搬送できる。
そして、中心捻れ搬送路331−Oは、上流から下流に向かう一定距離に対して一定角度(例えば、150〔mm〕に対して15〔°〕)で連続的に変化させる。中心捻れ搬送路331−Oにおける最上流である開口端の第1捻れ流路断面331OS1は、図9(C1)に示すように、縦長の長方形である。中心捻れ搬送路331−Oの開口端から150〔mm〕だけ下流に離れた位置における第2捻れ流路断面331OS2は、図9(C2)に示すように、第1捻れ流路断面331OS1と同一形状であるが、中心軸CA−Oを中心とした時計回りに第1捻れ流路断面331OS1よりも15〔°〕傾いた状態となる。中心捻れ搬送路331−Oの開口端から300〔mm〕だけ下流に離れた位置における第3捻れ流路断面331OS3は、図9(C3)に示すように、第1,第2捻れ流路断面331OS1,331OS2と同一形状であるが、中心軸CA−Oを中心とした時計回りに第1捻れ流路断面331OS1よりも30〔°〕傾いた状態となる。中心捻れ搬送路331−Oの開口端から450〔mm〕だけ下流に離れた位置における第4捻れ流路断面331OS4は、図9(C4)に示すように、第1〜第3捻れ流路断面331OS1〜331OS3と同一形状であるが、中心軸CA−Oを中心とした時計回りに第1捻れ流路断面331OS1よりも45〔°〕傾いた状態となる。中心捻れ搬送路331−Oの開口端から600〔mm〕だけ下流に離れた位置における第5捻れ流路断面331OS5は、図9(C5)に示すように、第1〜第4捻れ流路断面331OS1〜331OS4と同一形状であるが、中心軸CA−Oを中心とした時計回りに第1捻れ流路断面331OS1よりも60〔°〕傾いた状態となる。中心捻れ搬送路331−Oの開口端から750〔mm〕だけ下流に離れた位置における第6捻れ流路断面331OS6は、図9(C6)に示すように、第1〜第5捻れ流路断面331OS1〜331OS5と同一形状であるが、中心軸CA−Oを中心とした時計回りに第1捻れ流路断面331OS1よりも75〔°〕傾いた状態となる。中心捻れ搬送路331−Oの開口端から900〔mm〕だけ下流に離れた位置における第7捻れ流路断面331OS7は、図9(C7)に示すように、第1〜第6捻れ流路断面331OS1〜331OS6と同一形状であるが、中心軸CA−Oを中心とした時計回りに第1捻れ流路断面331OS1よりも90〔°〕傾いた状態となる。すなわち、中心捻れ搬送路331−Oの開口端から900〔mm〕下流である第7捻れ流路断面331OS7の位置を、中心捻れ搬送路331−Oにおける最下流の開口端とすれば、ちょうど紙幣PMを90〔°〕回転させる流路形状となる。
しかしながら、搬送対象である紙幣PMは耐久性の高い特別な紙で作られているため、平板状を維持し易く、紙幣PMの下流側は真っ直ぐのまま、上流側上部だけを右に曲げ、上流側下部だけを左に曲げて、中心捻れ搬送路331−Oを通過させることは困難である。このため、紙幣PM自体は平板状を維持したまま中心捻れ搬送路331−O内を下流へ搬送されて行き、第1捻れ搬送壁311の内壁面311bや第2捻れ搬送壁312の内壁面312bに押し当たり、強い摩擦で進めなくなり、紙幣PMが搬送路331内に滞留してしまう危険性がある。そこで、中心捻れ搬送路331−Oは、紙幣PMが平板状のまま通過できる流路形状にしておく必要がある。この流路形状を満たすには、任意箇所における上流側捻れ流路断面から紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bに相当する距離だけ離れた位置における下流側捻れ流路断面に至る基準中心捻れ搬送路に、紙幣PMが折れ曲がることなく平板状のまま通過できる紙葉類通過領域が形成されるようにする。
図10は、基準中心捻れ搬送路構成体8−Oを示し、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bに相当する長さ(1万円札の場合、160〔mm〕)である基準搬送路長の基準中心捻れ搬送路83を形成する壁体である。図10(A)は基準中心捻れ搬送路構成体8−Oを上流側から見た正面図、図10(B)は基準中心捻れ搬送路構成体8−Oの右側面図、図10(C)は基準中心捻れ搬送路構成体8−Oの平面図である。捻れ左側壁81aと捻れ右側壁81bと捻れ上壁81cと捻れ下壁81dとで囲まれて形成される基準中心捻れ搬送路83は、上流側捻れ流路断面82aから下流側捻れ流路断面82bまで、中心軸CA−Oを中心とした時計回りに17〔°〕傾いた流路である。上流側捻れ流路断面82aと下流側捻れ流路断面82bは同一の長四角形状で、前述した中心捻れ搬送路331−Oと同様、壁間幅は12〔mm〕、壁長幅は78〔mm〕とし、日本紙幣の一万円札を紙幣PMとして搬送できるようにした。
この基準中心捻れ搬送路構成体8−Oにおいては、基準中心捻れ搬送路83の中央位置(上流側捻れ流路断面82aからの距離と下流側捻れ流路断面82bからの距離が等しく80〔mm〕となる位置)における中央捻れ流路断面82cが鉛直方向の長辺と水平方向の短辺となる配置である。従って、基準中心捻れ搬送路83の1/2だけ上流側に位置する上流側捻れ流路断面82aは、中央捻れ流路断面82cよりも中心軸CA−Oに対して反時計回りに17〔°〕/2=8.5〔°〕だけ傾いている。同様に、中央捻れ流路断面82cから基準中心捻れ搬送路83の1/2だけ下流側に位置する下流側捻れ流路断面82bは、中央捻れ流路断面82cよりも中心軸CA−Oに対して時計回りに17〔°〕/2=8.5〔°〕だけ傾いている。
ここで、上流側捻れ流路断面82aから下流側捻れ流路断面82bまで紙幣PMが折れ曲がることなく平板状のまま通過できるための条件を考える。
上流側捻れ流路断面82aを通過して基準中心捻れ搬送路83内を紙幣PMが進むと、中心軸CA−Oよりも上側(捻れ上壁81cに近い側)は捻れ左側壁81aの内壁面に当たり、中心軸CA−Oよりも下側(捻れ下壁81dに近い側)は捻れ右側壁81bの内壁面に当たる。よって、紙幣PMを捻れ左側壁81aおよび捻れ右側壁81bの内壁面に当たらないように下流へ進ませるためには、紙幣PMを時計回りに傾けて行けば良い。しかしながら、紙幣PMを時計回りに傾けすぎると、中心軸CA−Oよりも上側(捻れ上壁81cに近い側)は捻れ右側壁81bの内壁面に当たり、中心軸CA−Oよりも下側(捻れ下壁81dに近い側)は捻れ左側壁81aの内壁面に当たってしまう。
捻れ左側壁81aおよび捻れ右側壁81bの内壁面に当たらないように、紙幣PMが基準中心捻れ搬送路83を通過して下流側捻れ流路断面82bに至るためには、上流から下流まで見通せる空部が形成されていれば良い。基準中心捻れ搬送路構成体8−Oにおいては、上流側捻れ流路断面82aの右上角部が下流側捻れ流路断面82bの左上角部を越えず、上流側捻れ流路断面82aの左下角部が下流側捻れ流路断面82bの右下角部を越えない範囲の角度で捻れた基準中心捻れ搬送路83とした。すなわち、上流側捻れ流路断面82aの右上角部から左下角部へ至る対角線を含む微小エリアから、下流側捻れ流路断面82bの左上角部から右下角部へ至る対角線を含む微小エリアまで連続する紙幣通過領域PAが基準中心捻れ搬送路83内に形成される。紙葉類が折れ曲がることなく平板状のまま通過できる紙葉類通過領域としての紙幣通過領域PAは、紙幣PMの紙厚以上の横幅で紙幣PMの短辺以上の縦幅である長方形の領域断面の略中央に中心軸CA−Oが位置し、基準中心捻れ搬送路83の上流端から下流端まで連続する直方体となる。
基準中心捻れ搬送路構成体8−Oで構成する基準中心捻れ搬送路83のように、壁間幅を12〔mm〕、壁長幅を78〔mm〕に設定した場合、上流側捻れ流路断面82aから下流側捻れ流路断面82bまでの捻れ角を17〔°〕とすれば、一万円札の紙幣PMに対応した紙幣通過領域PAを形成できることを説明する。
搬送方向に向かって、上流側捻れ流路断面82aの右上角部が下流側捻れ流路断面82bの左上角部と一致し、上流側捻れ流路断面82aの左下角部が下流側捻れ流路断面82bの右下角部と一致するとき、紙幣通過領域PAの横幅がほぼ零になって、実質的に最も狭小な紙幣通過領域PAとなる。なお、紙幣PMの厚さは零ではないので、紙幣通過領域PAの横幅が零では紙幣PMを通過させられないが、紙幣PMの短辺は上流側捻れ流路断面82aおよび下流側捻れ流路断面82bの対角線より若干短いので、0.1〔mm〕厚の一万円札に対しては有効な紙幣通過領域PAと看做せる。そこで、搬送方向に向かって、上流側捻れ流路断面82aの右上角部が下流側捻れ流路断面82bの左上角部と一致し、上流側捻れ流路断面82aの左下角部が下流側捻れ流路断面82bの右下角部と一致するときの紙幣通過領域PAを、通過限界と仮定する。
上流側捻れ流路断面82aが中央捻れ流路断面82cと一致するよう時計回りに回転させる角度をθとすると、中央捻れ流路断面82cが下流側捻れ流路断面82bと一致するよう時計回りに回転させる角度もθである。紙幣通過領域PAが通過限界となるときの捻れ角を2θとすると、「捻れ角≦2θ」の条件を満たしていれば、基準中心捻れ搬送路83内に紙幣通過領域PAを形成できる。そして、図10(A)に示す基準中心捻れ搬送路構成体8−Oの正面図から、幾何的にθを求めることができる。
上流側捻れ流路断面82aが中央捻れ流路断面82cと一致するよう時計回りに回転させる角度はθであるから、「tanθ=12/78」より「θ≒8.75〔°〕」が成立する。中央捻れ流路断面82cが下流側捻れ流路断面82bと一致するよう時計回りに回転させる角度もθであるから、同じく「tanθ=12/78」より「θ≒8.75〔°〕」が成立する。したがって、上流側捻れ流路断面82aが下流側捻れ流路断面82bと一致するよう時計回りに回転させる角度(捻れ角)は「2θ≒17.5〔°〕」となる。この捻れ角17.5〔°〕は、通過限界となる紙幣通過領域PAを形成するときの値であるから、17.5〔°〕以下の捻れ角であれば、有効な紙幣通過領域PAが基準中心捻れ搬送路83内に形成される。すなわち、基準中心捻れ搬送路構成体8−Oにおいて、上流側捻れ流路断面82aから下流側捻れ流路断面82bまでの捻れ角を17〔°〕とすれば、有効な紙幣通過領域PAを形成できるのである。
図9に示す中心捻れ搬送路331−Oは、基準中心捻れ搬送路構成体8−Oで構成する基準中心捻れ搬送路83と同様に、壁間幅が12〔mm〕で壁長幅が78〔mm〕である。そして、中心捻れ搬送路331−Oは、搬送路長900〔mm〕で紙幣PMを90〔°〕回転させるのであるから、基準搬送路長160〔mm〕の基準中心捻れ搬送路83に換算した捻れ角は16〔°〕となり、通過限界となる紙幣通過領域PAを形成するときの17.5〔°〕以下である。したがって、中心捻れ搬送路331−Oの全範囲に対して、有効な紙幣通過領域PAが形成されており、紙幣PMが進んだ箇所における紙幣通過領域PAに収まるよう傾けば、紙幣PMは折れ曲がることなく平板状のまま第1捻れ流路断面331OS1から第7捻れ流路断面331OS7まで通過できる。
また、基準中心捻れ搬送路83を上流から下流に向かって流れる搬送流は、中心軸CA−Oを含む中央付近では直進できるものの、中心から第1端縁側(捻れ上壁81c側)および第2端縁側(捻れ下壁81d側)へ離れるに従って、搬送方向へ直進できなくなる。基準中心捻れ搬送路83の上流から下流に向かうに従って、捻れ左側壁81aの第1端縁側(上側)および捻れ右側壁81bの第2端縁側(下側)は搬送用エアの直進を阻むように基準中心捻れ搬送路83内に迫り出してくるので、搬送用エアは捻れ左,右側壁81a,81bの内壁に当たって曲げられるのである。捻れ左側壁81aにおける中間位置よりも第1端縁側(捻れ上壁81c側)は反回転側であり、捻れ右側壁81bにおける中間位置よりも第2端縁側(捻れ下壁81d側)も反回転側であるから、反回転側の内壁面に当たった搬送用エアが回転方向に曲げられると、回転補助流として機能する。この回転補助流は、搬送方向へ流れつつ、反回転方向から回転方向へ曲がり続ける流れであるから、回転補助流を紙面に受けた紙幣PMは、下流へ移動する力に加えて、時計回りに回転する力を受けることとなる。したがって、上流端から下流端までの全域に紙幣通過領域PAが形成された中心捻れ搬送路331−Oを備える中心捻れ搬送管3−Oであれば、前述した直線搬送管2,2Bのような帰還流を紙幣PMに作用させなくても、紙幣PMを回転させながら下流へ搬送できる。
なお、上流側捻れ流路断面82aから下流側捻れ流路断面82bまでの捻れ角は、17〔°〕よりも小さくしても構わない。上流側捻れ流路断面82aから下流側捻れ流路断面82bまでの捻れ角を小さくすると、それだけ上流端から下流端まで見通せる領域が広くなって、幅広な紙幣通過領域PAを形成できる。しかしながら、上流側捻れ流路断面82aから下流側捻れ流路断面82bまでの捻れ角を小さくすると、それだけ紙幣PMを所定角度まで回転させるのに必要な流路長が長くなってしまう。例えば、壁間幅12〔mm〕で捻れ角17〔°〕とした基準中心捻れ搬送路83の設計条件で、紙幣PMを90〔°〕回転させる場合、「160〔mm〕×(90/17)≒847〔mm〕」であるから、中心捻れ搬送管3−Oの管長は約850〔mm〕で済む。しかし、壁間幅12〔mm〕で捻れ角15〔°〕である基準中心捻れ搬送路83の設計条件で、紙幣PMを90〔°〕回転させる場合、「160〔mm〕×(90/15)=960〔mm〕」となり、中心捻れ搬送管3−Oの管長は960〔mm〕まで長くしなければならない。よって、中心捻れ搬送管3−Oの管長を短く抑えるためには、通過限界に近い紙幣通過領域PAとなる捻れ角を採用することが望ましい。
また、上流側捻れ流路断面82aから下流側捻れ流路断面82bまでの捻れ角を変えずに、基準中心捻れ搬送路83の壁間幅を大きくしても、上流端から下流端まで見通せる領域が広くなって、幅広な紙幣通過領域PAを形成できる。例えば、図11(A)に示す基準中心捻れ搬送路構成体8−O′は、壁間幅15〔mm〕、壁長幅を78〔mm〕、捻れ角17〔°〕の設計条件に基づく基準中心捻れ搬送路83′であり、横幅の広い紙幣通過領域PA′を形成できる。しかも、捻れ角は17〔°〕であるから、中心捻れ搬送管3−Oの管長は約850〔mm〕で済む。
逆に、基準中心捻れ搬送路83の壁間幅を大きくして、紙幣通過領域PAを通過限界に近づければ、上流側捻れ流路断面82aから下流側捻れ流路断面82bまでの捻れ角をより大きくできる。例えば、図11(B)に示す基準中心捻れ搬送路構成体8−O″は、壁間幅15〔mm〕、壁長幅を78〔mm〕、捻れ角21〔°〕の設計条件に基づく基準中心捻れ搬送路83″であり、通過限界に近い紙幣通過領域PA″を形成できる。この基準中心捻れ搬送路83″では、捻れ角が21〔°〕であるから、「160〔mm〕×(90/21)≒686〔mm〕」となり、中心捻れ搬送管3−Oの管長は約690〔mm〕まで抑えられる。
上述した基準中心捻れ搬送路構成体8−Oの基準中心捻れ搬送路83や基準中心捻れ搬送路構成体8−O″の基準中心捻れ搬送路83″のように、通過限界に近い紙幣通過領域PA,PA″を形成した場合、紙幣PMの搬送位置が内壁面に接触する可能性がある。例えば、紙幣PMを搬送方向に対して時計回りに回転させる場合、紙幣PMに対して反時計回り側にある壁面が紙幣PMの直進を妨げるように湾曲しているので、紙幣PMが進行方向の反時計回り側にある壁面と接触し易いのである。紙幣PMが内壁面に接触すると、紙面と壁面との面接触による強い摩擦で紙幣PMが流路内に滞留してしまう危険性が生じる。このような障害を回避するため、図12(A),(B)に示すようなリブ構造を設けても良い。
図12(A)は、基準中心捻れ搬送路構成体8−Oの基準中心捻れ搬送路83の捻れ左側壁81aの第1端縁側と捻れ右側壁81bの第2端縁側にそれぞれガイドリブ38を設けた例を示す。第1捻れ搬送壁部としての捻れ左側壁81aの内壁面に設けるガイドリブ38および第2捻れ搬送壁部としての捻れ右側壁81bの内壁面に設けるガイドリブ38は、どちらも断面が略三角形状で、捻れ搬送方向に連続して突出する帯状の突出体である。
このように、ガイドリブ38を設けておけば、紙幣PMの紙面は捻れ左側壁81aあるいは捻れ右側壁81bの内壁面に面接触せず、ガイドリブ38の突出端と点接触あるいは線接触する。したがって、紙幣PMがガイドリブ38と接触しても、生じる摩擦は軽減されるので、紙幣PMが流路内に滞留してしまう危険性を効果的に抑制できる。しかも、ガイドリブ38は捻れ搬送方向に連続しているので、紙幣PMの第1端縁側紙面が接触し得るガイドリブ38と、紙幣PMの第2端縁側紙面が接触し得るガイドリブ38は、紙幣PMに対する搬送ガイドとしても機能する。
ガイドリブ38の取付位置や突出量は特に限定されるものではない。しかし、搬送中に回転する紙幣PMは、中心軸CA−Oから離れた部位(第1搬送平行辺PM1aおよび第2搬送平行辺PM1bに近い部位)の変位量が大きいことから、ガイドリブ38は中心軸CA−Oから離れた部位に設けて、紙幣PMの両端側をガイドする構造が望ましい。とはいえ、ガイドリブ38の取付位置を第1端縁側へ寄せ過ぎたり、ガイドリブ38の取付位置を第2端縁側へ寄せ過ぎたりすると、ガイドリブ38が紙幣通過領域PAに入り込んで、紙幣PMの通過を阻害することになる。また、ガイドリブ38の突出量が少なすぎると、紙幣PMの壁面接触防止機能を発揮できないし、逆にガイドリブ38の突出量が大き過ぎると、搬送用エアの流れを阻害してしまう危険性もある。
そこで、図12(A)に示す基準中心捻れ搬送路構成体8−Oの捻れ左側壁81aに設けるガイドリブ38は、捻れ左側壁81aの中間位置から捻れ上壁81c側(第1端縁側)に約30〔mm〕の位置にて、壁面から約2〔mm〕突出する形状とした。同様に、図12(A)に示す基準中心捻れ搬送路構成体8−Oの捻れ右側壁81bに設けるガイドリブ38は、捻れ右側壁81bの中間位置から捻れ下壁81d側(第2端縁側)に約30〔mm〕の位置にて、壁面から約2〔mm〕突出する形状とした。このようにガイドリブ38を設ければ、おおむね紙幣通過領域PAの辺縁にリブ突端が近接する状態となり、紙幣PMの壁面接触防止機能と紙幣PMの搬送ガイド機能を好適に実現できる。
なお、捻れ左側壁81aの中間位置から捻れ上壁81c側に約30〔mm〕の位置は、捻れ左側壁81aの中間位置から捻れ上壁81cまでの約3/4の位置である。同じく、捻れ右側壁81bの中間位置から捻れ下壁81d側に約30〔mm〕の位置は、捻れ右側壁81bの中間位置から捻れ下壁81dまでの約3/4の位置である。ガイドリブの形成位置として、側壁の中間位置から3/4の位置とすることは、一つの指標として有用である。また、ガイドリブ38を設ける部位は、反回転側となる捻れ左側壁81aおよび捻れ右側壁81bに限らず、回転側となる捻れ左側壁81aおよび捻れ右側壁81bに設けてもよい。
図12(B)は、基準中心捻れ搬送路構成体8−O″の基準中心捻れ搬送路83″の捻れ左側壁81aと捻れ右側壁81bにガイドリブ38を設けた例を示す。基準中心捻れ搬送路構成体8−O″における一方のガイドリブ38は、捻れ左側壁81aの中間位置から捻れ上壁81c側(第1端縁側)に約30〔mm〕の位置にて、壁面から約2〔mm〕突出する。同様に、基準中心捻れ搬送路構成体8−O″における他方のガイドリブ38は、捻れ右側壁81bの中間位置から捻れ下壁81d側(第2端縁側)に約30〔mm〕の位置にて、壁面から約2〔mm〕突出する。これは、図12(A)で示した基準中心捻れ搬送路構成体8−Oのガイドリブ38と同じであるが、図12(B)では、紙幣通過領域PAの辺縁にリブ突端が近接する状態とならず、紙幣通過領域PAから若干離れている。これは、基準中心捻れ搬送路構成体8−O″における基準中心捻れ搬送路83″の壁間幅が広く、捻れ角も大きいからである。このような場合、ガイドリブ38をより第1端縁側へ近づけると共にガイドリブ38をより第2端縁側へ近づけるように位置調整しても良いし、ガイドリブ38の突出量を大きくしても良い。
上述したように、紙幣PMが折れ曲がることなく平板状のまま通過できる紙幣通過領域PAが形成される第1捻れ搬送壁311と第2捻れ搬送壁312の第1端縁側(最上流においては上部で、最下流においては右側部)には、図8に示すように、第1捻れ外方カバー321を設ける。一方、第1捻れ搬送壁311と第2捻れ搬送壁312の第2端縁側(最上流においては下部で、最下流においては左側部)には、第2捻れ外方カバー322を設ける。なお、中心捻れ搬送管3−Oは直線搬送管2と連結可能とするため、少なくとも、最上流部における第1捻れ外方カバー321は直線搬送管2の上部外方カバー221と、最上流部における第2捻れ外方カバー322は直線搬送管2の下部外方カバー222と同一形状としておくことが望ましい。
第1捻れ外方カバー321は、第1捻れ搬送壁311の第1端縁311cおよび第2捻れ搬送壁312の第1端縁312cの第1方向側空間(最上流においては上方空間、最下流においては右側空間)を覆う。また、第1捻れ外方カバー321は、第1捻れ搬送壁311の外壁面311aにおける第1端側の一部(最上流においては上部、最下流においては右側部)を覆う。さらに、第1捻れ外方カバー321は、第2捻れ搬送壁312の外壁面312aにおける第1端側の一部(最上流においては上部、最下流においては右側部)を覆う。
一方、第2捻れ外方カバー322は、第1捻れ搬送壁311の第2端縁311dおよび第2捻れ搬送壁312の第2端縁312dの第2方向側空間(最上流においては下方空間、最下流においては左側空間)を覆う。また、第2捻れ外方カバー322は、第1捻れ搬送壁311の外壁面311aにおける第2端側の一部(最上流においては下部、最下流においては左側部)を覆う。さらに、第2捻れ外方カバー322は、第2捻れ搬送壁312の外壁面312aにおける第2端側の一部(最上流においては下部、最下流においては左側部)を覆う。なお、第1捻れ外方カバー321と第2捻れ外方カバー322に分けて設けず、一つの外方カバーで第1捻れ搬送壁311と第2捻れ搬送壁312の外方全体を覆うような構造としても構わない。
なお、これら第1,第2捻れ搬送壁311,312と第1,第2捻れ外方カバー321,322は、個別のパーツとして形成し、組み立てても良いし、射出成形や押出成形といった樹脂加工技術により複合パーツを形成して組み立てるようにしても良い。また、樹脂加工に限らず、厚さ1〜2〔mm〕程度の板材を加工して、第1,第2捻れ搬送壁311,312と第1,第2捻れ外方カバー321,322を作っても良い。
また、第1捻れ搬送壁311の中間位置よりも第1端縁311c側には、外壁面311a側から内壁面311b側に搬送用エアが通過し得る流体帰還孔としての第1反回転側エア帰還孔3411を設ける。同じく、第1捻れ搬送壁311の中間位置よりも第2端縁311d側には、外壁面311a側から内壁面311b側に搬送用エアが通過し得る流体帰還孔としての第1回転側エア帰還孔3412を設ける。一方、第2捻れ搬送壁312の中間位置よりも第1端縁312c側には、外壁面312a側から内壁面312b側に搬送用エアが通過し得る流体帰還孔としての第2回転側エア帰還孔3421を設ける。同じく、第2捻れ搬送壁312の中間位置よりも第2端縁312d側には、外壁面312a側から内壁面312b側に搬送用エアが通過し得る流体帰還孔としての第2反回転側エア帰還孔3422を設ける。そして、第1反回転側エア帰還孔3411と第2回転側エア帰還孔3421は、第1捻れ外方カバー321で覆われ、第1回転側エア帰還孔3412と第2反回転側エア帰還孔3422は、第2捻れ外方カバー322で覆われる。
第1反回転側エア帰還孔3411、第1回転側エア帰還孔3412、第2回転側エア帰還孔3421、第2反回転側エア帰還孔3422は、それぞれ搬送方向に向かって等間隔で一列状に設ける。なお、第1反回転側エア帰還孔3411、第1回転側エア帰還孔3412、第2回転側エア帰還孔3421、第2反回転側エア帰還孔3422(以後、特に呼び分ける必要がない場合、エア帰還孔34と総称する。)から中心捻れ搬送路331−O内に帰還流が戻されるのは、直線搬送管2と同じである。また、本構成例の中心捻れ搬送管3−Oにおけるエア帰還孔34は略四角形状としたが、その開口形状や開口面積、配置間隔等は、特に限定されるものではなく、必要十分な帰還流を得ることができれば良い。よって、エア帰還孔34の搬送直交幅L1や搬送平行幅L2は、適宜な風量や風速が得られるように定める。
第1捻れ搬送壁311に設ける第1反回転側エア帰還孔3411と、第2捻れ搬送壁312に設ける第2回転側エア帰還孔3421とは、中心捻れ搬送路331−Oを挟んで対向するように、搬送方向の開設位置を合わせる。同様に、第1捻れ搬送壁311に設ける第1回転側エア帰還孔3412と、第2捻れ搬送壁312に設ける第2反回転側エア帰還孔3422とは、中心捻れ搬送路331−Oを挟んで対向するように、搬送方向の開設位置を合わせる。
上述した第1反回転側エア帰還孔3411と第2回転側エア帰還孔3421を覆う第1捻れ外方カバー321は、第1,第2捻れ搬送壁311,312の各内壁面311b,312b側から各外壁面311a,312a側へ搬送用エアをそれぞれ誘導する流体誘導空部を生じさせる構造を備える。本構成の第1捻れ外方カバー321においては、第1捻れ搬送壁311に対応させて設けた第1捻れ分岐誘導部321a1と、第2捻れ搬送壁312に対応させて設けた第2捻れ分岐誘導部321b1は、中央連結部321cに対して略対称の構造である。なお、第1捻れ外方カバー321の中央連結部321cは、第1捻れ搬送壁311の第1端縁311cと第2捻れ搬送壁312の第1端縁312cの中間位置に沿って、搬送方向へ時計回りに略90〔°〕回転する部位である。
第1捻れ外方カバー321における第1捻れ分岐誘導部321a1の内面は、第1捻れ搬送壁311と第2捻れ搬送壁312との間である中央連結部321cより徐々に中心捻れ搬送路331−Oから第1方向へ遠ざかるように突出し、第1捻れ搬送壁311を超えると徐々に第2方向に変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第1捻れ分岐誘導部321a1は、第1捻れ搬送壁311の第1端縁311cの第1方向側空間に、第1捻れ搬送壁311の内壁面311b側から外壁面311a側へ搬送用エアを誘導する第1捻れ分岐誘導空部332aを形成できる。同様に、第1捻れ外方カバー321における第2捻れ分岐誘導部321b1の内面は、第1捻れ搬送壁311と第2捻れ搬送壁312との間である中央連結部321cより徐々に中心捻れ搬送路331−Oから第1方向へ遠ざかるように突出し、第2捻れ搬送壁312を超えると徐々に第2方向に変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第2捻れ分岐誘導部321b1は、第2捻れ搬送壁312の第1端縁312cの第1方向側空間に、第2捻れ搬送壁312の内壁面312b側から外壁面312a側へ搬送用エアを誘導する第2捻れ分岐誘導空部332bを形成できる。
第1捻れ外方カバー321の第1捻れ分岐誘導部321a1の外側(最上流においては左側、最下流においては上側)には、第1捻れ外方誘導部321a2が連なる。この第1捻れ外方誘導部321a2は、第1捻れ分岐誘導空部332aを介して第1捻れ搬送壁311の外壁面311a側へ誘導された搬送用エアを第1反回転側エア帰還孔3411へ誘導可能な第1捻れ外方誘導空部333aを生じさせる。同様に、第1捻れ外方カバー321の第2捻れ分岐誘導部321b1の外側(最上流においては右側、最下流においては下側)には、第2捻れ外方誘導部321b2が連なる。この第2捻れ外方誘導部321b2は、第2捻れ分岐誘導空部332bを介して第2捻れ搬送壁312の外壁面312a側へ誘導された搬送用エアを第2回転側エア帰還孔3421へ誘導可能な第2捻れ外方誘導空部333bを生じさせる。なお、第1捻れ外方誘導部321a2の第2方向端は、滑らかに湾曲させて第1捻れ搬送壁311の外壁面311aに密着する終端屈曲部321a2−eとし、第1反回転側エア帰還孔3411の第2方向側にて第1捻れ外方誘導空部333aが閉塞されるようにしておく。同様に、第2捻れ外方誘導部321b2の第2方向端は、滑らかに湾曲させて第2捻れ搬送壁312の外壁面312aに密着する終端屈曲部321b2−eとし、第2回転側エア帰還孔3421の若干第2方向側にて第2捻れ外方誘導空部333bが閉塞されるようにしておく。
第2捻れ外方カバー322も第1捻れ外方カバー321と同様に、第1,第2捻れ搬送壁311,312の各内壁面311b,312b側から各外壁面311a,312a側へ搬送用エアをそれぞれ誘導する流体誘導空部を生じさせる構造を備える。本構成の第2捻れ外方カバー322においては、第1捻れ搬送壁311に対応させて設けた第1捻れ分岐誘導部322b1と、第2捻れ搬送壁312に対応させて設けた第2捻れ分岐誘導部322a1は、中央連結部322cに対して略対称の構造である。なお、第2捻れ外方カバー322の中央連結部322cは、第1捻れ搬送壁311の第2端縁311dと第2捻れ搬送壁312の第2端縁312dの中間位置に沿って、搬送方向へ時計回りに略90〔°〕回転する部位である。
第2捻れ外方カバー322における第1捻れ分岐誘導部322b1の内面は、第1捻れ搬送壁311と第2捻れ搬送壁312との間である中央連結部322cより徐々に中心捻れ搬送路331−Oから第2方向へ遠ざかるように突出し、第1捻れ搬送壁311を超えると徐々に第1方向に変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第1捻れ分岐誘導部322b1は、第1捻れ搬送壁311の第2端縁311dの第2方向側空間に、第1捻れ搬送壁311の内壁面311b側から外壁面311a側へ搬送用エアを誘導する第2捻れ分岐誘導空部332bを形成できる。同様に、第2捻れ外方カバー322における第2捻れ分岐誘導部322a1の内面は、第1捻れ搬送壁311と第2捻れ搬送壁312との間である中央連結部322cより徐々に中心捻れ搬送路331−Oから第2方向へ遠ざかるように突出し、第2捻れ搬送壁312を超えると徐々に第1方向に変化する滑らかな凹曲面である。したがって、第2捻れ分岐誘導部322a1は、第2捻れ搬送壁312の第2端縁312dの第2方向側空間に、第2捻れ搬送壁312の内壁面312b側から外壁面312a側へ搬送用エアを誘導する第1捻れ分岐誘導空部332aを形成できる。
第2捻れ外方カバー322の第1捻れ分岐誘導部322b1の外側(最上流においては左側、最下流においては上側)には、第1捻れ外方誘導部322b2が連なる。この第1捻れ外方誘導部322b2は、第2捻れ分岐誘導空部332bを介して第1捻れ搬送壁311の外壁面311a側へ誘導された搬送用エアを第1回転側エア帰還孔3412へ誘導可能な第2捻れ外方誘導空部333bを生じさせる。同様に、第2捻れ外方カバー322の第2捻れ分岐誘導部322a1の外側(最上流においては右側、最下流においては下側)に連なる第2捻れ外方誘導部322a2は、第1捻れ分岐誘導空部332aを介して第2捻れ搬送壁312の外壁面312a側へ誘導された搬送用エアを第2反回転側エア帰還孔3422へ誘導可能な第1捻れ外方誘導空部333aを生じさせる。なお、第1捻れ外方誘導部322b2の第1方向端は、滑らかに湾曲させて第1捻れ搬送壁311の外壁面311aに密着する終端屈曲部322b2−eとし、第1回転側エア帰還孔3412の第1方向側にて第2捻れ外方誘導空部333bが閉塞されるようにしておく。同様に、第2捻れ外方誘導部322a2の第1方向端は、滑らかに湾曲させて第2捻れ搬送壁312の外壁面312aに密着する終端屈曲部322a2−eとし、第2反回転側エア帰還孔3422の第1方向側にて第1捻れ外方誘導空部333aが閉塞されるようにしておく。
なお、第1捻れ外方カバー321と第2捻れ外方カバー322は、中心軸CA−Oに対して軸対象となるので、例えば、第1捻れ外方カバー321として成形した外方カバー体を第2捻れ外方カバー322として用いることができる。すなわち、第1捻れ搬送壁311の第1端縁311c側に配される第1捻れ外方カバー321の第1捻れ分岐誘導部321a1および第1捻れ外方誘導部321a2は、第2捻れ搬送壁312の第2端縁312d側に配される第2捻れ外方カバー322の第2捻れ分岐誘導部322a1および第2捻れ外方誘導部322a2に対応する。また、第2捻れ搬送壁312の第1端縁311c側に配される第1捻れ外方カバー321の第2捻れ分岐誘導部321b1および第2捻れ外方誘導部321b2は、第1捻れ搬送壁311の第2端縁311d側に配される第2捻れ外方カバー322の第1捻れ分岐誘導部322b1および第1捻れ外方誘導部322b2に対応する。
第1捻れ搬送壁311の外壁面311a側には、第1反回転側エア帰還孔3411に対応させた第1反回転側帰還ガイド部3511と、第1回転側エア帰還孔3412に対応させた第1回転側帰還ガイド部3512を設ける。第2捻れ搬送壁312の外壁面312a側には、第2回転側エア帰還孔3421に対応させた第2回転側帰還ガイド部3521と、第2反回転側エア帰還孔3422に対応させた第2反回転側帰還ガイド部3522を設ける。第1反回転側帰還ガイド部3511、第1回転側帰還ガイド部3512、第2回転側帰還ガイド部3521、第2反回転側帰還ガイド部3522(以後、特に呼び分ける必要がない場合、帰還ガイド部35と総称する。)は、第1捻れ外方誘導空部333aおよび第2捻れ外方誘導空部333bに誘導された搬送用エアを各エア帰還孔34へ導く。
帰還ガイド部35は、少なくともエア帰還孔34の上流側開口縁に連なるエア導入開口35aが上流側に位置し、エア帰還孔34の下流側開口縁に向かって狭まる突出体で、その断面(上流端では横断面、下流端では縦断面)は略三角形状とした。また、エア導入開口35aの開口幅L3(例えば、第1,第2捻れ搬送壁311,312の外壁面311a,312aからの突出量)は、第1捻れ外方誘導空部333aおよび第2捻れ外方誘導空部333bの範囲内で任意に調整できる。例えば、エア導入開口35aの開口幅L3を大きくすると、エア帰還孔34へ誘導できるエア量を増やして帰還流を強くでき、エア導入開口35aの開口幅L3を小さくすると、エア帰還孔34へ誘導できるエア量を減らして帰還流を抑制できる。なお、エア帰還孔34と帰還ガイド部35は、樹脂加工により第1,第2捻れ搬送壁311,312を形成するとき、同時に形成できる。無論、別体として形成した構造体をエア帰還孔34の縁部に沿って取り付けることにより、帰還ガイド部35を形成するようにしても良い。
更に、本構成の中心捻れ搬送管3−Oでは、第1捻れ外方カバー321の第1捻れ分岐誘導部321a1に反回転側誘導プレート36Aを、第2捻れ分岐誘導部321b1に回転側誘導プレート36Rをそれぞれ設ける。同様に、第2捻れ外方カバー322の第2捻れ分岐誘導部322a1には反回転側誘導プレート36Aを設け、第1捻れ分岐誘導部322b1には回転側誘導プレート36Rを設ける。反回転側誘導プレート36Aは、第1捻れ分岐誘導空部332a内に突出する半円弧状の板状体であり、回転側誘導プレート36Rは、第2捻れ分岐誘導空部332b内に突出する半円弧状の板状体である。反回転側誘導プレート36Aと回転側誘導プレート36Rは、直線搬送管2における左,右誘導プレート26L,26Rと同様の機能を発揮するものである。ただし、第1捻れ分岐誘導部321a1,322a1と第2捻れ分岐誘導部321b1,322b1は非対称であるため、反回転側誘導プレート36Aと回転側誘導プレート36Rも非対称となる。
なお、前述した直線搬送管2Bにおいて、上,下部外方カバー221,222や左,右誘導プレート26L,26Rに紙幣PMが接触することを防止するために設けた搬送ガイド27と同様の構造を中心捻れ搬送管3−Oに設けるようにしてもよい。かくする場合には、第1,第2捻れ搬送壁311,312に沿って湾曲する搬送ガイドを形成して第1,第2捻れ搬送壁311,312の第1端縁311c、312c側および第2端縁311d,312d側に取り付ければ良い。あるいは、第1,第2捻れ搬送壁311,312の内壁面311b,312bの第1端縁311c,312c側および第2端縁311d,312d側に、搬送方向へ所要間隔で架設材を設け、搬送ガイドとしても良い。
上記のように構成した中心捻れ搬送管3−Oにおいては、中心軸CA−O回りに回転する捻れ搬送路311−Oを備えるので、第1捻れ外方カバー321が搬送方向右側へ捻れて突出する量と、第2捻れ外方カバー322が搬送方向左側へ捻れて突出する量がほぼ等しくなる。これに対して、本構成例の捻れ搬送管3は、第2端縁側(図13においては、第2捻れ外方カバー322の側)に片寄るように設定した偏心捻れ軸TA回りに回転する捻れ搬送路331を備えることで、左右への突出量が不均衡となる。このように、搬送方向左側への突出量と搬送方向右側への突出量を異ならせるようにした捻れ搬送管3の利点については後述する。
図13は、本構成例の捻れ搬送管3を示し、前述した中心捻れ搬送管3−Oと同様に、上流端および下流端のどちらも直線搬送管2,2Bと連結可能な構造である。すなわち、第1直線搬送壁211と第1捻れ搬送壁311、第2直線搬送壁212と第2捻れ搬送壁312、上部外方カバー221と第1捻れ外方カバー321、下部外方カバー222と第2捻れ外方カバー322がそれぞれ対応する。なお、図13において、前述した中心捻れ搬送管3−Oと同一あるいは対応する構成には、同一符号を付して説明を省略する。また、捻れ搬送管3には、直線搬送管2の搬送ガイド27に相当する搬送ガイド37と、第1捻れ搬送壁311における内壁面311bおよび第2捻れ搬送壁312における内壁面312bから突出するガイドリブ38が設けられる。
ここで、捻れ搬送管3に形成される捻れ搬送路331の詳細について説明する。流体通過捻れ空間33のうち、第1捻れ搬送壁311の内壁面311bと第2捻れ搬送壁312の内壁面312bとで挟まれた空間が捻れ搬送路331となり、紙幣PMはこの捻れ搬送路331内を搬送されながら時計回りに略90〔°〕回転するのである。なお、捻れ搬送路331の第1端縁側は、概ね第1,第2捻れ搬送壁311,312の第1端縁311c,312cの境界近傍であり、反回転側誘導プレート36A、回転側誘導プレート36R、搬送ガイド37は捻れ搬送路331の外側に設ける。捻れ搬送路331の第2端縁側も同様に、概ね第1,第2捻れ搬送壁311,312の第2端縁311d,312dの境界近傍であり、反回転側誘導プレート36A、回転側誘導プレート36R、搬送ガイド37は捻れ搬送路331の外側に設ける。
なお、捻れ搬送路331は、上流端開口の中心から下流端開口の中心へ至る直線状の偏心捻れ軸TA回りに捻れた流路形状で、上流より搬送された紙幣PMの紙面を回転(例えば、搬送方向に向かって時計回りに回転)させて、紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの向きを鉛直方向から水平方向へ変える流路である。無論、上流より搬送された紙幣PMの紙面を反時計回りに回転させて、紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの向きを鉛直方向から水平方向へ変える捻れ搬送路を構成することも可能である。また、紙面が水平方向の状態で上流より搬送されてきた紙幣PMを時計回り(あるいは反時計回り)に回転させて鉛直方向へ変える捻れ搬送路を構成することも可能である。
捻れ搬送路331のみを単純化して図14に示す。図14(A)は、捻れ搬送路331を上流から下流に向かって見た正面図で、偏心捻れ軸TAの周囲には上流から下流まで見通せる空部がある。以下、捻れ搬送路331において、上流より受け入れる紙葉類としての紙幣PMの紙面に臨む部位を第1長側部331L1(第1捻れ搬送壁311に対応する部位)および第2長側部331L2(第2捻れ搬送壁312に対応する部位)とする。また、捻れ搬送路331において、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aに臨む部位を第1短側部331S1、紙幣PMの第2搬送平行辺PM1bに臨む部位をおよび第2短側部331S2とする。図14(B)は、捻れ搬送路331の右側面図で、最上流側の上面から最下流側の右側面となるように第1短側部331S1が捻れてゆき、最上流側の底面が最下流側の左側面となるように第2短側部331S2が捻れてゆく様子が分かる。
紙幣PMとして日本紙幣の一万円券を用いる場合、長手方向(第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1b)の寸法は160〔mm〕、短手方向(第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2b)の寸法は76〔mm〕、厚さは約0.1〔mm〕である。例えば、捻れ搬送路331における流路断面の壁間幅(第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離W)を18〔mm〕、第1,第2長側部331L1,331L2の長さを82〔mm〕とする。また、偏心捻れ軸TAは、上流端開口において選定した偏心捻れ点TPを搬送方向(捻れ搬送管3が接続される上流側の直線搬送管2と同じ搬送方向)へ延ばして下流端開口へ至る直線状の軸である。偏心捻れ点TPは、第1長側部331L1と第2長側部331L2から等距離で、第2短側部331S2から第1短側部331S1側へ9〔mm〕(第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wの1/2である半路幅)ずらした位置に設定した。
そして、捻れ搬送路331は、上流から下流に向かう一定距離に対して一定角度(例えば、160〔mm〕に対して30〔°〕)で連続的に変化させる。捻れ搬送路331における上流端開口である第1捻れ流路断面331TS1は、図14(C1)に示すように、縦長の長方形である。捻れ搬送路331の開口端から160〔mm〕だけ下流に離れた位置における第2捻れ流路断面331TS2は、図14(C2)に示すように、第1捻れ流路断面331TS1と同一形状であるが、偏心捻れ軸TAを中心とした時計回りに第1捻れ流路断面331TS1よりも30〔°〕傾いた状態となる。捻れ搬送路331の開口端から320〔mm〕だけ下流に離れた位置における第3捻れ流路断面331TS3は、図14(C3)に示すように、第1,第2捻れ流路断面331TS1,331TS2と同一形状であるが、偏心捻れ軸TAを中心とした時計回りに第1捻れ流路断面331TS1よりも60〔°〕傾いた状態となる。捻れ搬送路331の最下流端(開口端から480〔mm〕下流に離れた位置)における下流端開口である第4捻れ流路断面331TS4は、図14(C4)に示すように、第1〜第3捻れ流路断面331TS1〜331TS3と同一形状であるが、偏心捻れ軸TAを中心とした時計回りに第1捻れ流路断面331TS1よりも90〔°〕傾いた状態となる。
すなわち、上流端開口である第1捻れ流路断面331TS1を、搬送方向と平行な偏心捻れ軸TA回りに一定角度で連続的に回転させながら、下流端開口である第4捻れ流路断面331TS4へ至ることで、捻れ搬送路331が形成される。なお、下流端開口である第4捻れ流路断面331TS4の形状は、上流端開口である第1捻れ流路断面331TS1と同一形状であるが、第1,第2長側部331L1,331L2および第1,第2短側部331S1,331S2の角度が異なる。また、偏心捻れ軸TAに直交する任意箇所の断面である捻れ流路断面(例えば、第2,第3捻れ流路断面331TS2,331TS3)の形状は、上流端開口および下流端開口である第1,第4捻れ流路断面331TS1,331TS4の形状と同じになる。
ここで、捻れ搬送路331の上流端開口から480〔mm〕下流である第4捻れ流路断面331TS4の位置を、捻れ搬送路331における最下流の開口端とすれば、ちょうど紙幣PMを90〔°〕回転させる流路形状となる。この捻れ搬送路331を用いれば、紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bが臨む向きを、第1捻れ流路断面331TS1に対応した縦向きから第4捻れ流路断面331TS4に対応した横向きへ変えるように紙面を回転させながら、下流へ搬送できる。
上述したような捻れ搬送路331を形成できる偏心捻れ軸TAは、上流端開口である第1捻れ流路断面331TS1における偏心捻れ点設定可能範囲(後に詳述)から任意に設定した偏心捻れ点TPを搬送方向へ延ばして、下流端開口である第4捻れ流路断面331TS4へ至る直線状の軸である。偏心捻れ点設定可能範囲は、上流端開口である第1捻れ流路断面331TS1における開口中心点CPを通って第1,第2短側部331S1,331S2に直交する仮想中心線VCL(図14(C1)を参照)上の範囲に設定される。また、図14の捻れ搬送路331は、第2短側部331S2側に寄せて捻れ基準点TPを選定して、偏心捻れ軸TAを設定したが、逆に、第1短側部331S1側に寄せて捻れ基準点TP′を選定して、偏心捻れ軸TA′を設定しても良い。
図14に示した捻れ搬送路331は、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bの長さ毎にちょうど三等分でき、それぞれが基準捻れ搬送路に相当する。そこで、捻れ搬送路331を三等分したうちの一つ(例えば、第1捻れ流路断面331TS1から第2捻れ流路断面331TS2までの流路)を基準捻れ搬送路331Uとして、図15に示す。図15(A1)は、基準捻れ搬送路331Uを上流側から見た正面図である。図15(B)は、基準捻れ搬送路331Uの右側面図(第2長側部331L2側から見た図)である。図15(C)は、基準捻れ搬送路331Uの平面図(第1短側部331S1側から見た図)である。
基準捻れ搬送と331Uの偏心捻れ軸TAは、上流端開口331SUに設定した上流側偏心捻れ点TPUから、下流端開口331SDに設定した下流側偏心捻れ点TPDに至る直線状の軸である。下流端開口331SDは、偏心捻れ軸TA回りに第2長側部331L2側へ概ね30〔°〕回転させた位置にあり、上流端開口331SUから下流端開口331SDまで見通せる領域が有る。しかしながら、第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bが76〔mm〕である紙幣PMが上流端開口331SUから下流端開口331SDまで通過できる空間は、基準捻れ搬送路331U内に形成されていないように見える。
一方、図15(A2)に示すのも基準捻れ搬送路331Uであるが、正面側から通過指標軸IAと平行な視点で上流端開口331SUから下流端開口331SDを見た図である。通過指標軸IAとは、上流端開口331SUの開口中心点である上流側中心点CPUと、下流端開口331SDの開口中心点である下流側中心点CPDとを結んだ、仮想的な直線である。基準捻れ搬送路331Uを、上流側中心点CPUと下流側中心点CPDとが一点に重なるような視点で見ると、上流端開口331SUから下流端開口331SDまで見通せる略菱形の貫通空間が形成されていることがわかる。そして、貫通空間の最長対角線は、紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bよりも若干長く、紙幣PMが平板状のまま通過できる。
すなわち、基準捻れ搬送路331Uを通過指標軸IAと平行な視点で見ると、上流端開口331SUから下流端開口331SDまで見通せる貫通空間として、紙幣PMが上流端開口331Uから下流端開口331SDまで通過できる紙葉類通過空部としての紙幣通過空部PASが形成されていることが分かる。この紙幣通過空部PASは、同一形状である上流端開口331SUと下流端開口331SDの各中心点CPU,CPDが重なる状態で見える空間であるから、通過指標軸IAに直交する断面の形状は概ね菱形となり、長尺側対角線の向きを指標として紙幣PMが通過できる。
このように、本構成例の捻れ搬送管3における捻れ搬送路331では、紙幣通過空部PASが形成された基準捻れ搬送路331U毎の通過指標軸IAに沿って紙幣PMが下流へ移動することにより、紙幣PMは平板状のまま捻れ搬送路331内を下流まで到達できるのである。なお、基準捻れ搬送路331U内に紙幣通過空部PASが形成されるようにするためには、第1,第2長側部331L1,331L2の長さ、第1,第2短側部331S1,331S2の長さ、上流端開口331SUから下流端開口331SDまでの捻れ角度をファクターとして、多様に設定することができる。
また、紙幣通過空部PASにおける長尺側対角線の長さは、必ずしも紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bより長くする必要はなく、紙幣PMの紙面が基準捻れ搬送路331Uの内壁面に若干擦れてしまう程度でもよい。紙幣PMの紙面が基準捻れ搬送路331Uの内壁面に若干擦れてしまう場合でも、擦れによる摩擦力より搬送用エアによる搬送トルクが勝っていれば、紙幣PMは上流端開口331SUから下流端開口331SDまで通過できる。
ただし、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bが捻れ搬送路331の第1短側部331S1または第2短側部331S2に当たることがないように設定しておく必要がある。搬送用エアによって下流へ送られる紙幣PMの搬送状態は、必ずしも安定していないので、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bが第1,第2短側部331S1,331S2に当たると、搬送用エアによる搬送トルクを上回る強い抵抗が生じて、そのまま紙幣PMが管内に滞留してしまう危険性がある。よって、紙幣通過空部PASの両端部から第1,第2短側部331S1,331S2に臨む側には、紙幣PMの搬送状態のブレを考慮した空間的余裕を設けておく必要がある。
例えば、基準捻れ搬送路331Uに形成した紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2に臨む側の長さが、紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの長さ(76〔mm〕)と同じであれば、紙幣PMの捻れ搬送が可能な捻れ搬送管3となる。しかしながら、前述したように、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bが第1,第2短側部331S1,331S2に当たって擦れることは避けなければならない。そこで、紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2に臨む側には、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bが捻れ搬送管3の内面と接触することを抑制できる余剰空間としての通過猶予部PAMが形成されるようにした。第1短側部331S1側に形成する通過猶予部PAMについて、図15(A2)の部分拡大エリアにて説明する。紙幣PMが捻れ搬送路331内を通過するときの第1搬送平行辺PM1aがあると想定される位置から、基準捻れ搬送路331Uの第1短側部331S1側で最も内側に突出している第1端側最狭部331S1pまでの猶予空間が通過猶予部PAMである。第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの長さが76〔mm〕である日本の紙幣PMに対しては、1〜2〔mm〕程度の通過猶予部PAMを確保することが望ましい。
なお、上述した通過猶予部PAMを設けるとき、第1短側部331S1側で最も内側に突出している第1端側最狭部331S1pを考慮するのと同じく、第2短側部331S2側で最も内側に突出している第2端側最狭部も考慮しておく必要がある。そもそも、中心捻れ搬送管3−Oでは、第1,第2短側部331S1,331S2側に生じる最狭部は無視できる程度の突出量に過ぎないが、偏心捻れ軸TAが開口中心から離れるに従って、捻れ構造の歪みが顕在化するため、紙幣PMの安定搬送のために考慮が必要なのである。以下、偏心捻れ軸TAの設定位置に応じた特徴および考慮事項について説明する。
図16に示すのは、開口中心点CPから8〔mm〕ほど第2短側部331S2側へずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定した第1偏心捻れ搬送路331−C1を示す。この第1偏心捻れ搬送路331−C1は、第1,第2長側部331L1,331L2が紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの長さとほぼ同じ78〔mm〕とし、第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wは18〔mm〕とした。第1偏心捻れ搬送路331−C1は、搬送方向(図16(A)においては、紙面に向かって奥側)に対して、第1短側部331S1側および第2短側部331S2側を時計回りに90〔°〕回転させた捻れ構造である。
第1偏心捻れ搬送路331−C1は、紙幣PMを90〔°〕回転させるものであるから、上流端開口と下流端開口とが直交していれば良いのであるが、上流端開口から下流端開口まで180〔°〕回転させた場合を考える。紙幣PMを180〔°〕回転させる第1偏心捻れ搬送路331−C1rは、図16(B)に示すようになる。すなわち、第1偏心捻れ搬送路331−C1rでは、偏心捻れ軸TAと平行な視点で上流端開口から下流端開口に向けて(あるいは、下流端開口から上流端開口に向けて)見通すことができる貫通空間の断面積が、第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wを直径とする円の面積となる。すなわち、第1,第2長側部331L1,331L2と平行な中心線上を開口中心点CPから8〔mm〕ずらした位置を偏心捻れ点TPに設定した偏心捻れ軸TAは、偏心捻れ点設定可能範囲にあるので、紙幣通過空部PASを形成できるのである。
図16(C1)に示すのは、第1偏心捻れ搬送路331−C1における第1基準捻れ搬送路331−C1Uで、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bの長さと同じ160〔mm〕で約29〔°〕捻った構造である。開口中心点CPから8〔mm〕ずれた位置の偏心捻れ軸TA回りに上流端開口をひねることで形成される第1基準捻れ搬送路331−C1Uでは、第1短側部331S1側の内面よりも第2短側部331S2側の内面の方が流路を狭めるように捻れて行く。第1基準捻れ搬送路331−C1Uを正面側から通過指標軸IAと平行な視点で見ると、図16(C2)のように略菱形の貫通空間が見え、紙幣PMが通過できる紙幣通過空部PASが形成されているのが分かる。なお、紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2側では、紙幣PMの紙面が内壁に接触して微量だけ折れ曲がることとなるが、搬送用エアによる搬送トルクに抗するほど強い摩擦を生じるものでなければ、安定搬送の障害となるものではない。前述した中心捻れ搬送路331−Oと同様に、紙幣PMが折れ曲がることなく平板状のまま通過できる紙幣通過領域PAを形成する必要があれば、捻れ角を1〜2〔°〕程度抑えれば良い。
ただし、図16(C2)に示す第1基準捻れ搬送路331−C1Uでは、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aが第1端側最狭部331S1pにちょうど接触し、第2搬送平行辺PM1bが第2端側最狭部にちょうど接触している状態(以下、ゼロ寸状態という)となっている。すなわち、開口中心点CPから8〔mm〕ずらした偏心捻れ軸TAにより形成した第1偏心捻れ搬送路331−C1においては、160〔mm〕で約29〔°〕捻ったときにゼロ寸状態となる。前述した中心捻れ搬送路331−Oにおける基準中心捻れ搬送路83では、160〔mm〕で約30〔°〕捻ることでゼロ寸状態にできるので、開口中心点CPから16〔mm〕ずれた位置の偏心捻れ軸TAを設定する場合には、ゼロ寸状態とするための捻れ角をより小さく抑えなければならないことがわかる。
また、ゼロ寸状態の第1基準捻れ搬送路331−C1Uでは、通過猶予部PAMが全く形成されていないため、紙幣PMの安定搬送には適さない。そこで、第1,第2長側部331L1,331L2の長さをゼロ寸基準の78〔mm〕よりも適宜増加させる補正を行えば、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aと第1端側最狭部331S1pの間に通過猶予部PAMを形成できる。例えば、紙幣通過空部PASの第1短側部331S1側および第2短側部331S2側にそれぞれ1〔mm〕以上の通過猶予部PAMを形成できるように、第1,第2長側部331L1,331L2の長さを80〔mm〕以上とすれば、紙幣PMの安定搬送を実現できる。
このように、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから8〔mm〕ずらし、ゼロ寸状態となる限界の角度(約29〔°〕)まで捻った第1基準捻れ搬送路331−C1Uに対して通過猶予部PAMを形成する場合、通過猶予部PAMに必要な長さだけ第1,第2長側部331L1,331L2を長くすればよい。なお、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから8〔mm〕ずらした構造の第1基準捻れ搬送路331−C1Uであっても、捻れ角が29〔°〕未満でゼロ寸状態に達していなければ、第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させる補正値を2〔mm〕より小さく抑えても、十分な通過猶予部PAMを形成できる。
図16(D1)に示すのは、前述した第1基準捻れ搬送路331−C1Uの捻れ角度を5〔°〕増加させ、160〔mm〕で約34〔°〕まで捻った構造の第1基準捻れ搬送路331−C1U′である。第1基準捻れ搬送路331−C1U′を正面側から通過指標軸IAと平行な視点で見ると、図16(D2)のように略菱形の貫通空間が見えるものの、紙幣PMが通過できる紙幣通過空部PASは形成されていない。紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aが第1端側最狭部331S1pよりも壁内へ突出し(図16(D2)の部分拡大エリアを参照)、同様に紙幣PMの第2搬送平行辺PM1bが第2端側最狭部よりも壁内へ突出した状態となっている。実際には、紙幣PMが狭小な第1基準捻れ搬送路331−C1U′内で第1,第2短側部331S1,331S2に押し当たって湾曲した状態となるので、搬送用エアによる搬送トルクが強くても、紙幣PMが第1基準捻れ搬送路331−C1U′を通過することは事実上不可能である。
このように、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから8〔mm〕ずらし、ゼロ寸状態を越える角度(約34〔°〕)まで捻った第1基準捻れ搬送路331−C1U′に対して通過猶予部PAMを形成する場合、紙幣通過空部PASをゼロ寸にする補正量を加味して第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させるような補正が必要である。なお、第1基準捻れ搬送路331−C1U′のように捻れ角度を大きくした場合、通過猶予部PAMが形成されるように補正しても、紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2側では、紙幣PMの紙面が内壁に接触する面積が多くなるので、紙幣PMが第1基準捻れ搬送路331−C1U′を通過する際の接触抵抗が高くなる。しかしながら、ゼロ寸状態となる基準の捻れ角度に対して5〔°〕程度加算しても、搬送用エアによる搬送トルクで安定搬送が可能と見込まれる。
図17に示すのは、開口中心点CPから16〔mm〕ほど第2短側部331S2側へずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定した第2偏心捻れ搬送路331−C2を示す。この第2偏心捻れ搬送路331−C2は、第1,第2長側部331L1,331L2が紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの長さとほぼ同じ78〔mm〕とし、第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wは18〔mm〕とした。第2偏心捻れ搬送路331−C2は、搬送方向(図17(A)においては、紙面に向かって奥側)に対して、第1短側部331S1側および第2短側部331S2側を時計回りに90〔°〕回転させた捻れ構造である。なお、第2偏心捻れ搬送路331−C2においては、第1,第2長側部331L1,331L2の内面にガイドリブ38を設けてある。ガイドリブ38の配設位置は、例えば、第1,第2長側部331L1,331L2の中心から第1,第2短側部331S1,331S2側にそれぞれ16〔mm〕の部位である。
第2偏心捻れ搬送路331−C2は、紙幣PMを90〔°〕回転させるものであるから、上流端開口と下流端開口とが直交していれば良いのであるが、上流端開口から下流端開口まで180〔°〕回転させた場合を考える。紙幣PMを180〔°〕回転させる第2偏心捻れ搬送路331−C2rは、図17(B)に示すようになる。すなわち、第2偏心捻れ搬送路331−C2rでは、偏心捻れ軸TAと平行な視点で上流端開口から下流端開口に向けて(あるいは、下流端開口から上流端開口に向けて)見通すことができる貫通空間の断面積が、第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wを直径とする円の面積となる。しかしながら、第2偏心捻れ搬送路331−C2rには、第1,第2長側部331L1,331L2の内面にガイドリブ38が設けられているために、見通せる貫通空間の断面積は小さくなってしまう。第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wを18〔mm〕に対して、ガイドリブ38の突出量は1〜1.5〔mm〕で十分であるが、ガイドリブ38の突出量を2〔mm〕とした場合を考える。ガイドリブ38により狭められた貫通空間の断面積と、ガイドリブ38が無い場合の貫通空間の断面積との比率は、「49π:81π」となる。よって、第2偏心捻れ搬送路331−C2rにおける貫通空間の断面積は、離隔距離W(18〔mm〕)を直径とする円の面積の1/2以上となる条件を満たしている。すなわち、第1,第2長側部331L1,331L2と平行な中心線上を開口中心点CPから16〔mm〕ずらした位置を偏心捻れ点TPに設定した偏心捻れ軸TAは、偏心捻れ点設定可能範囲にあるので、紙幣通過空部PASを形成できるのである。
図17(C1)に示すのは、第2偏心捻れ搬送路331−C2における第2基準捻れ搬送路331−C2Uで、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bの長さと同じ160〔mm〕で約29〔°〕捻った構造である。なお、第2基準捻れ搬送路331−C2Uの捻れ角29〔°〕は、前述した第1基準捻れ搬送路331−C1Uの捻れ角29〔°〕よりも、小数点以下で小さいものとなっている。また、第2基準捻れ搬送路331−C2Uにおいては、ガイドリブ38を省略してある。開口中心点CPから16〔mm〕ずれた位置の偏心捻れ軸TA回りに上流端開口をひねることで形成される第2基準捻れ搬送路331−C2Uにおいても、第1短側部331S1側の内面よりも第2短側部331S2側の内面の方が流路を狭めるように捻れて行く。前述した第1偏心捻れ搬送路331−C1における第1基準捻れ搬送路331−C1Uよりも、第2基準捻れ搬送路331−C2Uの方がより顕著となる。第2基準捻れ搬送路331−C2Uを正面側から通過指標軸IAと平行な視点で見ると、図17(C2)のように略菱形の貫通空間が見え、紙幣PMが通過できる紙幣通過空部PASが形成されているのが分かる。なお、紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2側では、紙幣PMの紙面が内壁に接触して微量だけ折れ曲がることとなるが、搬送用エアによる搬送トルクに抗するほど強い摩擦を生じるものでなければ、安定搬送の障害となるものではない。前述した中心捻れ搬送路331−Oと同様に、紙幣PMが折れ曲がることなく平板状のまま通過できる紙幣通過領域PAを形成する必要があれば、捻れ角を1〜2〔°〕程度抑えれば良い。
ただし、図17(C2)に示す第2基準捻れ搬送路331−C2Uでは、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aが第1端側最狭部331S1pにちょうど接触するゼロ寸状態となっている。すなわち、開口中心点CPから16〔mm〕ずらした偏心捻れ軸TAにより形成した第2偏心捻れ搬送路331−C2においては、160〔mm〕で約29〔°〕捻ったときにゼロ寸状態となる。前述した中心捻れ搬送路331−Oにおける基準中心捻れ搬送路83では、160〔mm〕で約30〔°〕捻ることでゼロ寸状態にできるので、開口中心点CPから16〔mm〕ずれた位置の偏心捻れ軸TAを設定する場合には、ゼロ寸状態とするための捻れ角をより小さく抑えなければならないことがわかる。
また、ゼロ寸状態の第2基準捻れ搬送路331−C2Uでは、通過猶予部PAMが全く形成されていないため、紙幣PMの安定搬送には適さない。そこで、第1,第2長側部331L1,331L2の長さをゼロ寸基準の78〔mm〕よりも適宜増加させる補正を行えば、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aと第1端側最狭部331S1pの間に通過猶予部PAMを形成できる。例えば、紙幣通過空部PASの第1短側部331S1側および第2短側部331S2側にそれぞれ1〔mm〕以上の通過猶予部PAMを形成できるように、第1,第2長側部331L1,331L2の長さを80〔mm〕以上とすれば、紙幣PMの安定搬送を実現できる。
このように、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから16〔mm〕ずらし、ゼロ寸状態となる限界の角度(約29〔°〕)まで捻った第2基準捻れ搬送路331−C2Uに対して通過猶予部PAMを形成する場合、通過猶予部PAMに必要な長さだけ第1,第2長側部331L1,331L2を長くすればよい。なお、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから16〔mm〕ずらした構造の第2基準捻れ搬送路331−C2Uであっても、捻れ角が29〔°〕未満でゼロ寸状態に達していなければ、第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させる補正値を2〔mm〕より小さく抑えても、十分な通過猶予部PAMを形成できる。
図17(D1)に示すのは、前述した第2基準捻れ搬送路331−C2Uの捻れ角度を5〔°〕増加させ、160〔mm〕で約34〔°〕まで捻った構造の第2基準捻れ搬送路331−C2U′である。なお、第2基準捻れ搬送路331−C2U′の捻れ角34〔°〕は、前述した第1基準捻れ搬送路331−C1U′の捻れ角34〔°〕よりも、小数点以下で小さいものとなっている。第2基準捻れ搬送路331−C2U′を正面側から通過指標軸IAと平行な視点で見ると、図17(D2)のように略菱形の貫通空間が見えるものの、紙幣PMが通過できる紙幣通過空部PASは形成されていない。紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aが第1端側最狭部331S1pよりも壁内へ突出し(図17(D2)の部分拡大エリアを参照)、同様に紙幣PMの第2搬送平行辺PM1bが第2端側最狭部よりも壁内へ突出した状態となっている。実際には、紙幣PMが狭小な第2基準捻れ搬送路331−C2U′内で第1,第2短側部331S1,331S2に押し当たって湾曲した状態となるので、搬送用エアによる搬送トルクが強くても、紙幣PMが第2基準捻れ搬送路331−C2U′を通過することは事実上不可能である。
このように、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから16〔mm〕ずらし、ゼロ寸状態を越える角度(約34〔°〕)まで捻った第2基準捻れ搬送路331−C2U′に対して通過猶予部PAMを形成する場合、紙幣通過空部PASをゼロ寸にする補正量を加味して第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させるような補正が必要である。なお、第2基準捻れ搬送路331−C2U′のように捻れ角度を大きくした場合、通過猶予部PAMが形成されるように補正しても、紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2側では、紙幣PMの紙面が内壁に接触する面積が多くなるので、紙幣PMが第2基準捻れ搬送路331−C2U′を通過する際の接触抵抗が高くなる。しかしながら、ゼロ寸状態となる基準の捻れ角度に対して5〔°〕程度加算しても、搬送用エアによる搬送トルクで安定搬送が可能と見込まれる。
図18に示すのは、開口中心点CPから24〔mm〕ほど第2短側部331S2側へずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定した第3偏心捻れ搬送路331−C3を示す。この第3偏心捻れ搬送路331−C3は、第1,第2長側部331L1,331L2が紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの長さとほぼ同じ78〔mm〕とし、第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wは18〔mm〕とした。第3偏心捻れ搬送路331−C3は、搬送方向(図18(A)においては、紙面に向かって奥側)に対して、第1短側部331S1側および第2短側部331S2側を時計回りに90〔°〕回転させた捻れ構造である。
第3偏心捻れ搬送路331−C3は、紙幣PMを90〔°〕回転させるものであるから、上流端開口と下流端開口とが直交していれば良いのであるが、上流端開口から下流端開口まで180〔°〕回転させた場合を考える。紙幣PMを180〔°〕回転させる第3偏心捻れ搬送路331−C3rは、図18(B)に示すようになる。すなわち、第3偏心捻れ搬送路331−C3rでは、偏心捻れ軸TAと平行な視点で上流端開口から下流端開口に向けて(あるいは、下流端開口から上流端開口に向けて)見通すことができる貫通空間の断面積が、第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wを直径とする円の面積となる。すなわち、第1,第2長側部331L1,331L2と平行な中心線上を開口中心点CPから24〔mm〕ずらした位置を偏心捻れ点TPに設定した偏心捻れ軸TAは、偏心捻れ点設定可能範囲にあるので、紙幣通過空部PASを形成できるのである。
図18(C1)に示すのは、第3偏心捻れ搬送路331−C3における第3基準捻れ搬送路331−C3Uで、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bの長さと同じ160〔mm〕で約28〔°〕捻った構造である。開口中心点CPから24〔mm〕ずれた位置の偏心捻れ軸TA回りに上流端開口をひねることで形成される第3基準捻れ搬送路331−C3Uにおいても、第1短側部331S1側の内面よりも第2短側部331S2側の内面の方が流路を狭めるように捻れて行く。前述した第1,第2基準捻れ搬送路331−C1U,331−C2Uよりも、第3基準捻れ搬送路331−C3Uの方がより顕著となる。第3基準捻れ搬送路331−C3Uを正面側から通過指標軸IAと平行な視点で見ると、図18(C2)のように略菱形の貫通空間が見え、紙幣PMが通過できる紙幣通過空部PASが形成されているのが分かる。なお、紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2側では、紙幣PMの紙面が内壁に接触して微量だけ折れ曲がることとなるが、搬送用エアによる搬送トルクに抗するほど強い摩擦を生じるものでなければ、安定搬送の障害となるものではない。前述した中心捻れ搬送路331−Oと同様に、紙幣PMが折れ曲がることなく平板状のまま通過できる紙幣通過領域PAを形成する必要があれば、捻れ角を1〜2〔°〕程度抑えれば良い。
ただし、図18(C2)に示す第3基準捻れ搬送路331−C3Uでは、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aが第1端側最狭部331S1pにちょうど接触するゼロ寸状態となっている。すなわち、開口中心点CPから24〔mm〕ずらした偏心捻れ軸TAにより形成した第3偏心捻れ搬送路331−C3においては、160〔mm〕で約28〔°〕捻ったときにゼロ寸状態となる。前述した第1,第2基準捻れ搬送路331−C1U,331−C2Uでは、160〔mm〕で約29〔°〕捻ってゼロ寸状態にできるので、開口中心点CPから24〔mm〕ずれた位置の偏心捻れ軸TAを設定する場合には、ゼロ寸状態とするための捻れ角をより小さく抑えなければならないことがわかる。
また、ゼロ寸状態の第3基準捻れ搬送路331−C3Uでは、通過猶予部PAMが全く形成されていないため、紙幣PMの安定搬送には適さない。そこで、第1,第2長側部331L1,331L2の長さをゼロ寸基準の78〔mm〕よりも適宜増加させる補正を行えば、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aと第1端側最狭部331S1pの間に通過猶予部PAMを形成できる。例えば、紙幣通過空部PASの第1短側部331S1側および第2短側部331S2側にそれぞれ1〔mm〕以上の通過猶予部PAMを形成できるように、第1,第2長側部331L1,331L2の長さを80〔mm〕以上とすれば、紙幣PMの安定搬送を実現できる。
このように、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから24〔mm〕ずらし、ゼロ寸状態となる限界の角度(約28〔°〕)まで捻った第3基準捻れ搬送路331−C3Uに対して通過猶予部PAMを形成する場合、通過猶予部PAMに必要な長さだけ第1,第2長側部331L1,331L2を長く補正すればよい。なお、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから24〔mm〕ずらした構造の第3基準捻れ搬送路331−C3Uであっても、捻れ角が28〔°〕未満でゼロ寸状態に達していなければ、第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させる補正値を2〔mm〕より小さく抑えても、十分な通過猶予部PAMを形成できる。
図18(D1)に示すのは、前述した第3基準捻れ搬送路331−C3Uの捻れ角度を5〔°〕増加させ、160〔mm〕で約33〔°〕まで捻った構造の第3基準捻れ搬送路331−C3U′である。第3基準捻れ搬送路331−C3U′を正面側から通過指標軸IAと平行な視点で見ると、図18(D2)のように略菱形の貫通空間が見えるものの、紙幣PMが通過できる紙幣通過空部PASは形成されていない。紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aが第1端側最狭部331S1pよりも壁内へ突出し(図18(D2)の部分拡大エリアを参照)、同様に紙幣PMの第2搬送平行辺PM1bが第2端側最狭部よりも壁内へ突出した状態となっている。実際には、紙幣PMが狭小な第3基準捻れ搬送路331−C3U′内で第1,第2短側部331S1,331S2に押し当たって湾曲した状態となるので、搬送用エアによる搬送トルクが強くても、紙幣PMが第3基準捻れ搬送路331−C3U′を通過することは事実上不可能である。
このように、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから24〔mm〕ずらし、ゼロ寸状態を越える角度(約33〔°〕)まで捻った第3基準捻れ搬送路331−C3U′に対して通過猶予部PAMを形成する場合、紙幣通過空部PASをゼロ寸にする補正量を加味して第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させるような補正が必要である。なお、第3基準捻れ搬送路331−C3U′のように捻れ角度を大きくした場合、通過猶予部PAMが形成されるように補正しても、紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2側では、紙幣PMの紙面が内壁に接触する面積が多くなるので、紙幣PMが第3基準捻れ搬送路331−C3U′を通過する際の接触抵抗が高くなる。しかしながら、ゼロ寸状態となる基準の捻れ角度に対して5〔°〕程度加算しても、搬送用エアによる搬送トルクで安定搬送が可能と見込まれる。
図19に示すのは、開口中心点CPから30〔mm〕ほど第2短側部331S2側へずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定した捻れ搬送路331を示す。この捻れ搬送路331は、第1,第2長側部331L1,331L2が紙幣PMの第1,第2搬送直交辺PM2a,PM2bの長さとほぼ同じ78〔mm〕とし、第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wは18〔mm〕とした。捻れ搬送路331は、搬送方向(図19(A)においては、紙面に向かって奥側)に対して、第1短側部331S1側および第2短側部331S2側を時計回りに90〔°〕回転させた捻れ構造である。
捻れ搬送路331は、紙幣PMを90〔°〕回転させるものであるから、上流端開口と下流端開口とが直交していれば良いのであるが、上流端開口から下流端開口まで180〔°〕回転させた場合を考える。紙幣PMを180〔°〕回転させる捻れ搬送路331rは、図19(B)に示すようになる。すなわち、捻れ搬送路331rでは、偏心捻れ軸TAと平行な視点で上流端開口から下流端開口に向けて(あるいは、下流端開口から上流端開口に向けて)見通すことができる貫通空間の断面積が、第1長側部331L1と第2長側部331L2との離隔距離Wを直径とする円の面積となる。すなわち、第1,第2長側部331L1,331L2と平行な中心線上を開口中心点CPから第2短側部331S2側へ30〔mm〕ずらした位置(第2短側部331S2からW/2だけ中心寄りの位置)を偏心捻れ点TPに設定した偏心捻れ軸TAは、偏心捻れ点設定可能範囲にあるので、紙幣通過空部PASを形成できる。
この捻れ搬送路331における偏心捻れ点TPの設定位置は、偏心捻れ点設定可能範囲における第2短側部331S2側の終端である。また、開口中心点CPから第1短側部331S1側に30〔mm〕ずらした位置が、偏心捻れ点設定可能範囲における第1短側部331S1側の終端である。開口中心点CPを通って第1,第2長側部331L1,331L2に平行な仮想直線上で、これら2つの終端から開口中心点CP側に形成された偏心捻れ点設定可能範囲内であれば、どこでも偏心捻れ点TPを設定することができる。ただし、開口中心点CPを通って搬送方向と平行な軸は中心捻れ搬送管3−Oの中心軸CA−Oであるから、開口中心点CPは偏心捻れ点設定可能範囲から除く。
図19(C1)に示すのは、捻れ搬送路331における基準捻れ搬送路331Uで、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bの長さと同じ160〔mm〕で約27〔°〕捻った構造である。開口中心点CPから30〔mm〕ずれた位置の偏心捻れ軸TA回りに上流端開口をひねることで形成される基準捻れ搬送路331Uにおいても、第1短側部331S1側の内面よりも第2短側部331S2側の内面の方が流路を狭めるように捻れて行く。前述した第3基準捻れ搬送路331−C3Uよりも、基準捻れ搬送路331Uの方がより顕著となる。基準捻れ搬送路331Uを正面側から通過指標軸IAと平行な視点で見ると、図19(C2)のように略菱形の貫通空間が見え、紙幣PMが通過できる紙幣通過空部PASが形成されているのが分かる。なお、紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2側では、紙幣PMの紙面が内壁に接触して微量だけ折れ曲がることとなるが、搬送用エアによる搬送トルクに抗するほど強い摩擦を生じるものでなければ、安定搬送の障害となるものではない。前述した中心捻れ搬送路331−Oと同様に、紙幣PMが折れ曲がることなく平板状のまま通過できる紙幣通過領域PAを形成する必要があれば、捻れ角を1〜2〔°〕程度抑えれば良い。
ただし、図19(C2)に示す基準捻れ搬送路331Uでは、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aが第1端側最狭部331S1pにちょうど接触するゼロ寸状態となっている。すなわち、開口中心点CPから30〔mm〕ずらした偏心捻れ軸TAにより形成した捻れ搬送路331においては、160〔mm〕で約27〔°〕捻ったときにゼロ寸状態となる。前述した第3基準捻れ搬送路331−C3Uでは、160〔mm〕で約28〔°〕捻ってゼロ寸状態にできるので、開口中心点CPから30〔mm〕ずれた位置の偏心捻れ軸TAを設定する場合には、ゼロ寸状態とするための捻れ角をより小さく抑えなければならないことがわかる。
また、ゼロ寸状態の基準捻れ搬送路331Uでは、通過猶予部PAMが全く形成されていないため、紙幣PMの安定搬送には適さない。そこで、第1,第2長側部331L1,331L2の長さをゼロ寸基準の78〔mm〕よりも適宜増加させる補正を行えば、紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aと第1端側最狭部331S1pの間に通過猶予部PAMを形成できる。例えば、紙幣通過空部PASの第1短側部331S1側および第2短側部331S2側にそれぞれ1〔mm〕以上の通過猶予部PAMを形成できるように、第1,第2長側部331L1,331L2の長さを80〔mm〕以上とすれば、紙幣PMの安定搬送を実現できる。
このように、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから30〔mm〕ずらし、ゼロ寸状態となる限界の角度(約27〔°〕)まで捻った基準捻れ搬送路331Uに対して通過猶予部PAMを形成する場合、通過猶予部PAMに必要な長さだけ第1,第2長側部331L1,331L2を長く補正すればよい。なお、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから30〔mm〕ずらした構造の基準捻れ搬送路331Uであっても、捻れ角が27〔°〕未満でゼロ寸状態に達していなければ、第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させる補正値を2〔mm〕より小さく抑えても、十分な通過猶予部PAMを形成できる。
図19(D1)に示すのは、前述した基準捻れ搬送路331Uの捻れ角度を5〔°〕増加させ、160〔mm〕で約32〔°〕まで捻った構造の基準捻れ搬送路331U′である。基準捻れ搬送路331U′を正面側から通過指標軸IAと平行な視点で見ると、図19(D2)のように略菱形の貫通空間が見えるものの、紙幣PMが通過できる紙幣通過空部PASは形成されていない。紙幣PMの第1搬送平行辺PM1aが第1端側最狭部331S1pよりも壁内へ突出し(図19(D2)の部分拡大エリアを参照)、同様に紙幣PMの第2搬送平行辺PM1bが第2端側最狭部よりも壁内へ突出した状態となっている。実際には、紙幣PMが狭小な基準捻れ搬送路331U′内で第1,第2短側部331S1,331S2に押し当たって湾曲した状態となるので、搬送用エアによる搬送トルクが強くても、紙幣PMが基準捻れ搬送路331U′を通過することは事実上不可能である。
このように、偏心捻れ軸TAを開口中心点CPから30〔mm〕ずらし、ゼロ寸状態を越える角度(約32〔°〕)まで捻った基準捻れ搬送路331U′に対して通過猶予部PAMを形成する場合、紙幣通過空部PASをゼロ寸にする補正量を加味して第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させるような補正が必要である。基準捻れ搬送路331U′をゼロ寸状態にするためには、第1短側部331S1側および第2短側部331S2側にそれぞれ0.5〔mm〕の余裕が必要であるから、加味する補正量は約1〔mm〕である。なお、基準捻れ搬送路331U′のように捻れ角度を大きくした場合、通過猶予部PAMが形成されるように補正しても、紙幣通過空部PASの第1,第2短側部331S1,331S2側では、紙幣PMの紙面が内壁に接触する面積が多くなるので、紙幣PMが基準捻れ搬送路331U′を通過する際の接触抵抗が高くなる。しかしながら、ゼロ寸状態となる基準の捻れ角度に対して5〔°〕程度加算しても、搬送用エアによる搬送トルクで安定搬送が可能と見込まれる。
上述したように、捻れ搬送管3においては、偏心捻れ点TPが開口中心点CPから離隔している距離(第1ずれ量)に応じて、ゼロ寸状態から必要十分な通過猶予部PAMを形成する補正条件(第1補正条件)が異なる。よって、第1補正条件を満たすように第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させるように補正すれば、紙幣PMを安定搬送させるために必要な通過猶予部PAMを形成できる。
また、捻れ搬送管3においては、基準捻れ搬送路331におけるゼロ寸状態の基準捻れ角(27〔°〕)よりも大きく捻る角度(第2ずれ量)に応じて、ゼロ寸状態まで戻す補正量を加味した上で必要十分な通過猶予部PAMを形成する補正条件(第2補正条件)が異なる。よって、第2補正条件を満たすように第1,第2長側部331L1,331L2の長さを増加させるように補正すれば、紙幣PMを安定搬送させるために必要な通過猶予部PAMを形成できる。
そして、本構成例の捻れ搬送管3の捻れ搬送路331では、偏心捻れ軸TAの設定位置に応じた補正を行うことで、紙幣通過空部PASに通過猶予部PAMを確実に形成できる。よって、紙幣PMが紙幣通過空部PASの第1短側部331S1側あるいは第2短側部331S2側にぶれても、紙幣PMの第1,第2搬送平行辺PM1a,PM1bが第1,第2短側部331S1,331S2に接触することを抑制でき、紙幣PMの安定搬送を実現できるのである。
また、本構成例の捻れ搬送管3には、偏心捻れ軸TA回りに上流端開口を回転させた形状の捻れ搬送路331が形成されるので、第1長側部331L1側もしくは第2長側部331L2側のどちらか一方の突出量が大きくなり、他方の突出量が小さくなる。したがって、捻れ搬送路における突出量の小さい側が、並設される他の搬送管と相対するように捻れ搬送管3を配設すれば、2列の搬送管の離隔距離を小さく抑えることが可能となる。この利点について、図20に基づき説明する。なお、前述した直線搬送管2や捻れ搬送管3には、上,下部外方カバー221,222や第1,第2捻れ外方カバー321,322が設けられているが、以下では説明を単純化するために、搬送路のみを並設するものとした。
図20(A)は、直線搬送路231と中心捻れ搬送路331−Oを並設したところを上流側または下流側から見たイメージ図である。2つの搬送路を並べて2列状に設置する場合、両方の搬送路が接近しすぎないように定めた規制距離SRだけ離しておかなければならない。なお、規制距離SRは、搬送路の1/2以上とすることが望ましい。直線搬送路231を2列にする場合は、規制距離SRを空けて2つの直線搬送路231を配置すれば良い。しかしながら、直線搬送路231と中心捻れ搬送路331−Oを接続する場合には、中心捻れ搬送路331−Oとの間にも規制距離SRが確保されていなければならない。そのため、中心捻れ搬送路331−Oにおける直線搬送路231側の最大突出部が規制距離SRを満たすようにすると、中心捻れ搬送路331の上流端開口と直線搬送路231との離隔距離SDは、規制距離SRに比べて相当大きいものになる。
図20(B)は、直線搬送路231と第1偏心捻れ搬送路331−C1を並設したところを示す。第1偏心捻れ搬送路331−C1は、開口中心点CPから−8〔mm〕(下方へ8〔mm〕)ずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定し、偏心捻れ軸TAよりも上側を、並設する直線搬送路231から遠ざかる方向へ捻った構造である。よって、第1偏心捻れ搬送路331−C1においては、直線搬送路231側の最大突出量が少なくなるので、規制距離SRを満たすように直線搬送路231と第1偏心捻れ搬送路331−C1との離隔距離SDは、中心捻れ搬送路331−Oの場合よりも若干短くなる。なお、開口中心点CPから+8〔mm〕(上方へ8〔mm〕)ずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定し、偏心捻れ軸TAよりも下側を、並設する直線搬送路231から遠ざかる方向へ捻った構造としても、同様に離隔距離SDを短くできる。
図20(C)は、直線搬送路231と第2偏心捻れ搬送路331−C2を並設したところを示す。第2偏心捻れ搬送路331−C2は、開口中心点CPから−16〔mm〕(下方へ16〔mm〕)ずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定し、偏心捻れ軸TAよりも上側を、並設する直線搬送路231から遠ざかる方向へ捻った構造である。よって、第2偏心捻れ搬送路331−C2においては、直線搬送路231側の最大突出量が一層少なくなるので、規制距離SRを満たすように直線搬送路231と第2偏心捻れ搬送路331−C2との離隔距離SDは、第1偏心捻れ搬送路331−C1の場合よりも若干短くなる。なお、開口中心点CPから+16〔mm〕(上方へ16〔mm〕)ずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定し、偏心捻れ軸TAよりも下側を、並設する直線搬送路231から遠ざかる方向へ捻った構造としても、同様に離隔距離SDを短くできる。
図20(D)は、直線搬送路231と第3偏心捻れ搬送路331−C3を並設したところを示す。第3偏心捻れ搬送路331−C3は、開口中心点CPから−24〔mm〕(下方へ24〔mm〕)ずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定し、偏心捻れ軸TAよりも上側を、並設する直線搬送路231から遠ざかる方向へ捻った構造である。よって、第2偏心捻れ搬送路331−C2においては、直線搬送路231側の最大突出量が一層少なくなるので、規制距離SRを満たすように直線搬送路231と第2偏心捻れ搬送路331−C2との離隔距離SDは、第2偏心捻れ搬送路331−C2の場合よりも若干短くなる。なお、開口中心点CPから+24〔mm〕(上方へ24〔mm〕)ずらした偏心捻れ点TPを通るように偏心捻れ軸TAを設定し、偏心捻れ軸TAよりも下側を、並設する直線搬送路231から遠ざかる方向へ捻った構造としても、同様に離隔距離SDを短くできる。
図20(E)は、直線搬送路231と図14の捻れ搬送路331を並設したところを示す。捻れ搬送路331は、開口中心点CPから−32〔mm〕(下方へ32〔mm〕)ずらした偏心捻れ点TP(前述した偏心捻れ点設定可能範囲の第2短側部331S2側端点)にて偏心捻れ軸TAを設定し、偏心捻れ軸TAよりも上側を、並設する直線搬送路231から遠ざかる方向へ捻った構造である。よって、捻れ搬送路331においては、直線搬送路231側の最大突出量が一層少なくなるので、規制距離SRを満たすように直線搬送路231と捻れ搬送路331との離隔距離SDは、第3偏心捻れ搬送路331−C3の場合よりも更に短くなる。なお、開口中心点CPから+32〔mm〕(上方へ32〔mm〕)ずらした偏心捻れ点TP(前述した偏心捻れ点設定可能範囲の第1短側部331S1側端点)にて偏心捻れ軸TAを設定し、偏心捻れ軸TAよりも下側を、並設する直線搬送路231から遠ざかる方向へ捻った構造としても、同様に離隔距離SDを短くできる。
上述したように、第1〜第3偏心捻れ搬送路331−C1〜C3および捻れ搬送路331を直線搬送路231と並設すれば、両者の離隔距離SDを、中心捻れ搬送路331−Oと直線搬送路231との離隔距離SDよりも小さく抑えられる。しかも、上流端開口における偏心捻れ点設定可能範囲の端点を偏心捻れ点TPに選定して偏心捻れ軸TAを設定した捻れ搬送路331では、並設する直線搬送路231との離隔距離SDを最も小さくできるので、遊技島内の狭小スペースに2列に搬送管を設置するのに好適である。上述した離隔距離SDを小さく抑える必要がある場合、スペースの余裕状況に応じて偏心捻れ軸TAの位置を定めれば良いが、概ね、上流端開口の下縁あるいは上縁からW/2〔mm〕(捻れ搬送路331に相当する位置)以上、W〔mm〕(第3偏心捻れ搬送路331−C3に近い位置)以下の範囲に設定するのが実用的である。
以上、本発明に係る紙葉類搬送装置を実施形態に基づき説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての紙葉類搬送装置を権利範囲として包摂するものである。例えば、本実施形態では、搬送用流体が流れる搬送路にて紙葉類としての紙幣を搬送するものとしたが、紙葉類を搬送する主搬送管とは別に搬送用流体が流れる補助搬送管を設け、補助搬送管内を流れる搬送流によって間接的に主搬送管内の紙葉類を搬送する構成でも構わない。より具体的には、補助搬送管内に配したマグネット等の吸着体を搬送流にて移動させ、吸着体に非接触で吸着される金属やマグネット等の被吸着体を主搬送管側に設けておけば、補助搬送管内における吸着体の移動によって主搬送管側の被吸着体を移動させることが可能となる。そして、主搬送管側の被吸着体が紙葉類を上流から下流に向けて押して行く構造等を備えていれば、補助搬送管内の搬送流によって主搬送管側の紙葉類を搬送できる。前述した中心捻れ搬送管3−Oや捻れ搬送管3を主搬送管とし、主搬送管の捻れに沿わせた補助搬送管を別途設ければ、この搬送手法を適用できる。その場合、搬送用流体を流さない主搬送管は非密閉の搬送路として構わない。