(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、エンジン(内燃機関)を駆動源として走行する車両において当該車両の各種機器に電力を供給する車載電源システムを具体化するものとしている。
図1に示すように、電源システム50は、鉛蓄電池10a及び10bを有する2電源システムである。鉛蓄電池10a,10bに対しては発電機としてのオルタネータ11による充電が可能となっており、また、鉛蓄電池10a,10bからはスタータ12や電気負荷13への放電が可能となっている。この場合、スタータ12は、電気負荷とみなすことができる。本システムでは、オルタネータ11に対して並列に鉛蓄電池10a,10bが接続されるとともに、スタータ12や電気負荷13に対して並列に鉛蓄電池10a,10bが接続されている。
鉛蓄電池10a,10bは周知の汎用蓄電池である。鉛蓄電池の構成として具体的には、正極活物質が二酸化鉛(PbO2)、負極活物質が鉛(Pb)、電解液が硫酸(H2SO4)である。本実施形態において、鉛蓄電池10a,10bは、互いに同じ性能を有しており、これらの定格電圧はいずれも同じである。定格電圧は、例えば12Vである。
オルタネータ11の回転軸は、図示しないエンジン出力軸に対してベルト等により駆動連結されており、エンジン出力軸の回転によってオルタネータ11の回転軸が回転する。すなわち、オルタネータ11は、エンジン出力軸や車軸の回転により発電(回生発電)を行う。オルタネータ11で発電した電力は、電気負荷13に供給されるとともに、各蓄電池10a,10bに供給される。一方、エンジンの駆動が停止してオルタネータ11による発電が行われていない場合には、各鉛蓄電池10a,10bから電気負荷13に電力が供給される。
電気負荷13には、供給電力の電圧が一定又は少なくとも所定範囲内で変動するよう安定であることが要求される定電圧要求負荷や、定電圧要求負荷以外の一般的な電気負荷が含まれる。定電圧要求負荷としては、例えばナビゲーション装置やオーディオ装置、メータ装置、エンジンECU等の各種ECUが挙げられる。また、一般的な電気負荷としては、例えばシートヒータやリヤウインドウのデフロスタ用ヒータ、ヘッドライト、フロントウインドウのワイパ、空調装置の送風ファン等が挙げられる。
ECU30は、CPU、各種メモリ(ROM、RAM)を備える周知のマイクロコンピュータとして構成されており、メモリ内の演算プログラムや制御データを参照して、車両における制御を実施する。本実施形態において、ECU30は車両制御装置として機能する。
ECU30には、車速を検出する車速センサ21、アクセル操作量(アクセル開度)を検出するアクセルセンサ22、ブレーキペダルの操作量を検出するブレーキセンサ23が接続されている。また、ECU30には、鉛蓄電池10aの通電経路に設けられ鉛蓄電池10aに流れる充放電電流Iaを検出する電流センサ24a、鉛蓄電池10bの通電経路に設けられ鉛蓄電池10bに流れる充放電電流Ibを検出する電流センサ24bが接続されている。これら各センサからの検出信号はECU30に逐次入力されるようになっている。ECU30は、入力されたこれらの検出信号に基づき、スロットルバルブの開度制御や、燃料噴射弁による燃料噴射の制御など各種エンジン制御を実施する。また、各蓄電池10a,10bのSOC(残存容量、満充電時の充電量に対する実際の充電量の割合でもある)が過放電となる範囲(使用禁止範囲)とならないように、オルタネータ11での発電を制御する。
また、ECU30は、エンジンのアイドリングストップ(自動停止)制御を実施する。アイドリングストップ制御とは、周知のとおり所定の自動停止条件の成立によりエンジンを自動停止させ、かつその自動停止状態下で所定の再始動条件の成立によりエンジンを再始動させるものである。
本実施形態において、ECU30は、以下の(1)〜(4)の各条件
(1)車両の車速が、所定の速度域(例えば、車速≦10km/h)である
(2)アクセル操作が解除されている(アクセル開度=ゼロ)
(3)ブレーキ操作が行われている(ブレーキON)
(4)蓄電池のSOC条件が成立している
を全て満たした場合に、自動停止条件が成立したとしてエンジンを自動停止させる。
なお、再始動条件としては、例えば、アクセル操作が開始されたことや、ブレーキ操作が解除されたことが含まれる。また、エンジン制御機能とアイドリングストップ機能とを別々のECU30にて実施する構成にすることも可能である。
ここで、アイドリングストップの開始からエンジンの再始動が完了するまでの期間は、鉛蓄電池10a,10bによって車両の電源が確保される。つまり、アイドリングストップ時には鉛蓄電池10a,10bから電気負荷13へ電力が供給されるとともに、再始動時には鉛蓄電池10a,10bからスタータ12へ電力が供給される。この場合、アイドリングストップ時の放電に伴って、各蓄電池10a,10bのSOCは低下していく。そのため、各SOCが使用禁止範囲とならないようSOC条件を満たした場合にアイドリングストップが許可される構成となっている。
具体的には、鉛蓄電池10a及び10bの少なくともいずれかのSOCが、所定の閾値Thよりも大きい場合に、SOC条件を満たしたと判定される。図1より、本電源システム50は、鉛蓄電池10a及び10bの充放電を個別に制御する構成にはなっておらず、鉛蓄電池10a及び10bの同時放電及び同時充電を基本とする構成となっている。かかる構成では、各蓄電池間のSOCに大きな差は生じないと考えられる。そのため、鉛蓄電池10a及び10bの少なくともいずれかのSOCが、所定の閾値Thよりも大きければアイドリングストップが許可される構成としている。
閾値Thは、使用禁止範囲の上限値(例えば88%)に、アイドリングストップ時における各蓄電池10a,10bから電気負荷13への放電量、及びエンジン再始動時における各蓄電池10a,10bからスタータ12への放電量を加味して設定される。例えば、アイドリングストップの実行に伴う各蓄電池10a,10bの放電量がそれぞれSOC1%に相当すると仮定した場合には、閾値Thは89%に設定される。
図2には、例えば、アイドリングストップ時における鉛蓄電池10a,10bのSOCの変化を示している。図2において、タイミングt11では、自動停止条件の成立に伴いアイドリングストップが開始され、タイミングt12では、再始動条件の成立に伴いアイドリングストップが解除される。図2中の実線より、タイミングt11では、鉛蓄電池10a,10bの各SOCは、いずれも閾値Thよりも大きくなっている。その後、各SOCは、アイドリングストップが解除されるタイミングt12まで徐々に低下していく。なおこの場合は、アイドリングストップ時に2個の鉛蓄電池から放電が行われており、各蓄電池は、各SOCが使用禁止範囲とならない範囲(使用範囲)で使用される。
一方、アイドリングストップ時に放電を行う鉛蓄電池が意図せずに1個となる場合が考えられる。例えば、鉛蓄電池10aに放電に関する異常が発生すると鉛蓄電池10aが放電不可となり、放電は鉛蓄電池10bのみから行われる。このような状況下でアイドリングストップが開始されると、図2中の一点鎖線で示すように鉛蓄電池10bのSOCが、2個放電の場合に比べて大きく低下する。この場合、鉛蓄電池10bのSOCが使用禁止範囲となってしまうことが考えられ、ひいては鉛蓄電池の劣化に影響を及ぼすことが考えられる。
なお、図2ではアイドリングストップ時における各蓄電池のSOCの変化を示したが、エンジン再始動時においても同様に考えることができる。すなわち、再始動時にスタータ12に対する放電を行う鉛蓄電池が1個の場合は、2個の場合に比べて、当該鉛蓄電池のSOCは大きく低下することになる。
そこで、本実施形態では、複数の鉛蓄電池10a,10bのうちエンジンの自動停止時及び再始動時に放電を行う鉛蓄電池の個数を確認し、確認された鉛蓄電池の個数に基づいて、閾値Thを設定する。そして、設定された閾値Thに基づいて、エンジンの自動停止を許可するか否かを判定するようにした。これにより、鉛蓄電池のSOCが想定以上に低下する場合であっても、SOCが使用禁止範囲となることを抑制することができる。
本実施形態において、ECU30は、アイドリングストップ時の電気負荷13に対する放電及びエンジン再始動時のスタータ12に対する放電を行う鉛蓄電池の個数を確認する。具体的には、各蓄電池10a,10bにおいて放電に関する異常が生じたか否かの異常判定を行い、その判定結果に基づいて放電を行う鉛蓄電池の個数を確認する。つまり、鉛蓄電池10a,10bが全て正常である場合には、2個の鉛蓄電池によりアイドリングストップ時及び再始動時の放電を行う。また、鉛蓄電池10a,10bのいずれか1個が異常である場合には、異常でない他方の(1個の)鉛蓄電池により放電を行う。なお、各鉛蓄電池10a,10bの異常判定は、各電流センサ24a,24bにより検出される充放電電流Ia,Ibに基づいて実施される。
また、ECU30は、アイドリングストップ時及び再始動時に放電を行う鉛蓄電池の個数に基づいて、閾値Thを設定する。具体的には、2個の鉛蓄電池を使用する場合は、閾値Thに基準値Aを設定する。なお、基準値Aは、例えば89%である。一方、1個の鉛蓄電池を使用する場合は、2個の鉛蓄電池を使用する際の各蓄電池の放電量を考慮して、閾値Thを設定する。例えば、アイドリングストップの実行に伴う各蓄電池10a,10bの放電量がそれぞれSOC1%に相当すると仮定した場合には、1個の鉛蓄電池を使用する際の放電量はSOC2%に相当すると考えることができる。この場合、閾値Thは、使用禁止範囲の上限値88%にSOC2%を加算した90%に設定される。これにより、例えば1個の鉛蓄電池10bから放電が行われる場合であっても、SOCが使用禁止範囲となることを抑制することができる。
図3のフローチャートを用いて、ECU30により実施されるSOC条件の判定処理について説明する。この処理は、ECU30により所定周期で繰り返し実施される。
ステップS11では、鉛蓄電池10a,10bの各SOCを取得する。具体的には、各蓄電池における充放電電流Ia,Ibの積算に基づいてSOCを算出する。より具体的には、ECU30は、鉛蓄電池10a,10bに充放電電流が流れていない状態での開放電圧V0の検出値に基づいて、SOCの初期値を算出する。そしてその後、各蓄電池に充放電電流が流れる状態で、所定時間ごとに充放電電流を加算又は減算することでSOCを逐次更新する。例えば、ECU30は、次の式(1)を用いて鉛蓄電池10aのSOCを更新する。
SOC[%]=SOC0+100×∫Iadt/Qa … (1)
なお、SOC0はSOCの前回値、Iaは電流センサ24aの電流検出値、Qaは鉛蓄電池10aの満充電量である。なお、鉛蓄電池10bのSOCも同様にして取得される。
ステップS12及びステップS13では、鉛蓄電池10a,10bのうち何個が正常であるか否かを判定する。ここではまず、各充放電電流Ia,Ibに基づいて、各蓄電池10a,10bの異常判定を実施する。そして、その判定結果により正常であると判定した鉛蓄電池の個数に応じて、後続のステップS14,S16,S22のいずれかに進む。
各蓄電池10a,10bの異常判定は、例えば、オルタネータ11による発電が行われておらず、鉛蓄電池10a,10bから電気負荷13へ放電が行われている場合において、放電電流Iaが所定未満であれば鉛蓄電池10aは異常であると判定される。また、かかる場合において、放電電流Ibが所定未満であれば鉛蓄電池10bは異常であると判定される。なお、これ以外に、各蓄電池の放電電流Ia,Ibの差が所定以上である場合に、放電電流が小さい方の鉛蓄電池が異常であると判定してもよい。ステップS12及びステップS13が「異常判定部」に相当する。
そして、鉛蓄電池10a,10bがいずれも正常であると判定した場合(ステップS12:YES)は、ステップS14に進み、アイドリングストップ時及び再始動時に2個の鉛蓄電池により放電を行う旨を把握する。続くステップS15では、閾値Thに基準値Aを設定する。上記のとおり、基準値Aは、例えば89%である。
鉛蓄電池10a,10bのいずれか一方が正常であると判定した場合(ステップS13:YES)は、ステップS16に進み、アイドリングストップ時及び再始動時に1個の鉛蓄電池により放電を行う旨を把握する。続くステップS17では、閾値Thに判定値Bを設定する。判定値Bは、基準値Aよりも大きい値であって、例えば90%である。ステップS18では、鉛蓄電池のいずれか一方に異常が生じ、自動停止条件が変更された旨をドライバに通知する。なお、ドライバへ通知する方法は、特に限定されないが、アラームによって知らせる方法や、表示灯を点滅させる方法等が用いられる。なお、ステップS12,S13,S14,S16が「個数確認部」に相当し、ステップS15,S17が「設定部」に相当し、ステップS18が「通知部」に相当する。
ステップS19では、ステップS11で取得されたSOCが、ステップS15又はステップS17にて設定された閾値Thよりも大きいか否かを判定する。ステップS19がYESであれば自動停止を許可し(ステップS20)、ステップS19がNOであれば、自動停止を禁止する(ステップS21)。なお、ステップS19が「判定部」に相当する。
一方、鉛蓄電池10a,10bがともに異常であると判定した場合(ステップS13:NO)は、ステップS22に進み、自動停止を禁止する。ステップS23では、鉛蓄電池10a,10bにおいて異常が生じ、アイドリングストップの実行を禁止している旨をドライバに通知する。
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
複数の蓄電池が互いに並列接続された車両では、エンジン再始動時に始動装置に対する放電を行う蓄電池の個数によって、エンジン再始動時の蓄電池のSOCの低下量は異なると考えられる。この点を考慮し、複数の鉛蓄電池10a,10bのうちエンジンの再始動時に放電を行う鉛蓄電池の個数を確認し、確認された鉛蓄電池の個数に基づいて、閾値Thを設定する。そして、設定された閾値Thに基づいて、エンジンの自動停止を許可するか否かを判定するようにした。この場合、例えば、放電を行う鉛蓄電池の個数が意に反して減少した場合には、放電を行う鉛蓄電池の個数に基づいて閾値Thを大きくするため、SOCの低下量を見込んだ上で閾値Thを設定することができる。その結果、鉛蓄電池10a,10bのSOCが適正な範囲内でアイドリングストップを実行することができる。これにより、複数の鉛蓄電池10a,10bが互いに並列接続された車両において、エンジンの自動停止を適正に実施することができる。
また、鉛蓄電池10a,10bに異常が生じると、その蓄電池は放電不可となる場合がある。かかる場合には、エンジン再始動時に放電を行う蓄電池の個数が意に反して減少し、正常な蓄電池からの放電量が大きくなることが考えられる。この点を考慮し、各蓄電池において異常が生じたか否かを判定し、正常な蓄電池の個数に基づいて、アイドリングストップ時及びエンジン再始動時に放電を行う鉛蓄電池の個数を確認するようにしたため、鉛蓄電池に異常が生じた場合であっても、正常な鉛蓄電池の個数に基づいて閾値Thを適切に設定できる。その結果、正常な蓄電池の放電量が想定よりも大きくなることを抑制でき、正常な鉛蓄電池のSOCが適正な範囲内でアイドリングストップを実行することができる。
閾値Thが変更された場合に、その旨をドライバに通知するようにしたため、ドライバは、アイドリングストップの実行頻度が低下することを把握することができる。これにより、ドライバの違和感を軽減し、使い勝手の向上を図ることができる。
アイドリングストップ時及び再始動時において、複数の鉛蓄電池10a,10bとスタータ12及び電気負荷13とを繋ぐ電気経路を導通させるようにしたため、各蓄電池10a,10bからスタータ12や電気負荷13に対する同時給電が可能となる。これにより、アイドリングストップの実行に伴う各蓄電池10a,10bの放電量が小さくなるため、アイドリングストップの実行頻度を向上させることができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。図4には、第2実施形態における電源システム60の概略構成を示す。第1実施形態では、各鉛蓄電池10a,10bの各通電経路にそれぞれ電流センサ24a,24bが設けられていたのに対して、第2実施形態では、鉛蓄電池10aの通電経路には電流センサ24aが設けられているが、鉛蓄電池10bの通電経路には電流センサ24bが設けられていない。すなわち、鉛蓄電池10bの充放電電流Ibを直接検出できる構成となっていない。なお、電流センサ24bが設けられていないこと以外は、図1の構成図と変わらない。
第2実施形態においても、ECU30は、各蓄電池10a,10bにおいて放電に関する異常が生じたか否かの異常判定を行い、その判定結果に基づいて放電を行う鉛蓄電池の個数を確認する。
ただし、第2実施形態では、鉛蓄電池10bに流れる充放電電流Ibを直接検出することができない。そのため、電流センサ24aによる充放電電流Iaに基づいて、鉛蓄電池10bの異常判定を実施する構成としている。具体的には、充放電電流Iaに基づいて、鉛蓄電池10bの充放電電流Ibを推定する。そして、推定した充放電電流Ibに基づいて、鉛蓄電池10bの異常判定を実施する。以下に、鉛蓄電池10bの異常判定の具体的な方法について説明する。
例えば、第1の方法として、エンジン停止中における異常判定について説明する。エンジン停止中は、各蓄電池10a,10bから電気負荷13への放電が行われており、その電気負荷13の作動状態に基づいて電気負荷13の消費電流Iwを取得する。一方、電流センサ24aにより放電電流Iaを取得する。本電源システム60では、各蓄電池10a,10bの同時放電を基本としていることから、放電電流Ibは、消費電流Iwから放電電流Iaを減算した値として、下記の式(2)を用いて推定される。
放電電流Ib=消費電流Iw−放電電流Ia … (2)
そして、ECU30は、推定された放電電流Ibが所定未満の場合に、鉛蓄電池10bは異常であると判定する。
第2の方法として、エンジン駆動中における異常判定について説明する。エンジン駆動中は、オルタネータ11による発電が行われており、そのオルタネータ11の発電状態に基づいてオルタネータ11の発電電流Igを取得する。一方、電気負荷13の作動状態に基づいて電気負荷13の消費電流Iw、電流センサ24aにより充電電流Iaをそれぞれ取得する。そしてこの場合、充電電流Ibは、発電電流Igから、消費電流Iw及び充電電流Iaを減算した値として、下記の式(3)を用いて推定される。
充電電流Ib=発電電流Ig−消費電流Iw−充電電流Ia … (3)
そして、ECU30は、推定された充電電流Ibが所定未満の場合に、鉛蓄電池10bは異常であると判定する。
第3の方法として、エンジン始動時における異常判定について説明する。エンジンの始動時にはスタータ12の駆動に伴い、各蓄電池10a,10bからの放電電流Ia,Ibが増加する。また、エンジン始動時に伴う放電電流は、都度の始動時におけるばらつきが比較的小さいと考えられる。そこで、エンジンの始動時における鉛蓄電池10aの放電電流を記憶しておき、ECU30は、今回の始動時における放電電流Iaから前回の始動時における放電電流Iaを減算した減算値ΔIaが所定以上の場合に、鉛蓄電池10bは異常であると判定する。
また、第3の方法において、エンジンの始動時に作動している電気負荷13の作動状態を考慮してもよい。具体的には、今回のエンジン始動時に作動している電気負荷13の作動状態に基づく消費電流Iwと、前回のエンジン始動時に作動している電気負荷13の作動状態に基づく消費電流Iwとの差ΔIwを加味して、上記減算値ΔIaが所定以上であるか否かを判定してもよい。
このように、エンジンの駆動状態、電気負荷13の作動状態、オルタネータ11の発電状態に基づいて、電流センサが設けられていない鉛蓄電池10bの異常判定を実施することができる。
図5は、第2実施形態におけるSOC条件の判定処理を示すフローチャートである。本処理は、上述の図3に置き換えてECU30により所定周期で繰り返し実施される。なお第2実施形態では、鉛蓄電池10aが正常であることを前提として処理を実行する。つまり、アイドリングストップ時及び再始動時に鉛蓄電池10aは放電を行うこととしている。
ステップS31では、鉛蓄電池10aのSOCを取得する。具体的には、鉛蓄電池10aにおける充放電電流Iaの積算に基づいてSOCを算出する。ステップS32では、充放電電流Iaに基づいて、鉛蓄電池10bの充放電電流Ibを推定する。充放電電流Ibの推定には、例えば上記の第1の方法や第2の方法が用いられる。
ステップS33では、推定された充放電電流Ibに基づいて、鉛蓄電池10bが正常であるか否かを判定する。言い換えると、鉛蓄電池10bの異常判定を実施する。具体的には、充放電電流Ibが所定未満であるか否かを判定する。充放電電流Ibが所定以上であれば(ステップS33:YES)、鉛蓄電池10bは正常であるとしてステップS34に進む。ステップS34では、アイドリングストップ時及び再始動時に2個の鉛蓄電池により放電を行う旨を把握する。続くステップS35では、閾値Thに基準値Aを設定する。
一方、充放電電流Ibが所定未満であれば(ステップS33:NO)、鉛蓄電池10bは異常であるとしてステップS36に進む。ステップS36では、アイドリングストップ時及び再始動時に1個の鉛蓄電池10aにより放電を行う旨を把握する。続くステップS37では、閾値Thに判定値Cを設定する。判定値Cは、基準値Aよりも大きい値であり、例えば90%である。ステップS38では、鉛蓄電池のいずれか一方に異常が生じ、自動停止条件が変更された旨をドライバに通知する。
続くステップS39では、ステップS31で取得した鉛蓄電池10aのSOCが、ステップS35又はステップS37にて設定された閾値Thよりも大きいか否かを判定する。ステップS39がYESであれば自動停止を許可し(ステップS40)、ステップS39がNOであれば、自動停止を禁止する(ステップS41)。
なお、第2実施形態において、ステップS33が「異常判定部」に相当し、ステップS33,S34,S36が「個数確認部」に相当し、ステップS35,S37が「設定部」に相当し、ステップS38が「通知部」に相当し、ステップS39が「判定部」に相当する。
上記実施形態では、複数の鉛蓄電池10a,10bのうち鉛蓄電池10bに対しては電流センサが設けられていない構成としたため、全ての蓄電池に対して電流センサを設けなくてよく、システムをできるだけ簡素化することができる。また、電流センサが設けられていない鉛蓄電池を1個としたため、電流センサが設けられた他の蓄電池(鉛蓄電池10a)の充放電電流Iaに基づいて、鉛蓄電池10bの異常判定を実施することができる。
鉛蓄電池10a,10bの充放電電流Ia,Ibは、エンジンの駆動状態、オルタネータ11の発電状態、及び電気負荷13の作動状態に応じて変化すると考えられる。この点を考慮し、電流センサ24aが設けられた鉛蓄電池10aの充放電電流Iaに加え、エンジンの駆動状態、オルタネータ11の発電状態、及び電気負荷13の作動状態の少なくともいずれかに基づいて、鉛蓄電池10bの異常判定を実施するようにしたため、鉛蓄電池10bの異常判定の精度を向上させることができる。
(第2実施形態の変形例)
・上記実施形態では、電流センサ24aにより検出された充放電電流Iaに基づいて、鉛蓄電池10bの異常判定を実施する構成としたが、それ以外のパラメータを用いて鉛蓄電池10bの異常判定を実施してもよい。
この場合、例えば、鉛蓄電池10aに対して端子電圧Vaを検出可能な電圧センサ(図示しない)を設けた構成とし、エンジン始動時においてその端子電圧Vaを検出することで鉛蓄電池10bの異常判定を行うことができる。具体的には、エンジンの始動時における鉛蓄電池10aの端子電圧Vaを記憶しておき、ECU30は、今回の始動時における端子電圧Vaから前回の始動時における端子電圧Vaを減算した減算値ΔVaが所定未満の場合に、鉛蓄電池10bが異常であると判定する。
また、上記の方法において、鉛蓄電池10aの内部抵抗Raを考慮してもよい。具体的には、今回のエンジン始動時における内部抵抗Raと、前回のエンジン始動時における内部抵抗Raとの差ΔRaを加味して、上記減算値ΔVaが所定未満であるか否かを判定してもよい。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、第1実施形態及び第2実施形態との相違点を中心に説明する。図6には、第3実施形態における電源システム70の概略構成を示す。第1実施形態及び第2実施形態では、鉛蓄電池10a及び10bを有する2電源システムとしたのに対して、第3実施形態では、鉛蓄電池10a,10b,10c及び10dを有する4電源システムとした。
なお、鉛蓄電池10a,10b,10c及び10dは周知の汎用蓄電池であり、各鉛蓄電池の構成も第1実施形態及び第2実施形態と同じである。また、鉛蓄電池10a,10b,10c及び10dは、互いに同じ性能を有しており、これらの定格電圧はいずれも同じである。定格電圧は、例えば12Vである。
図6において、鉛蓄電池10aの通電経路には電流センサ24aが設けられ、鉛蓄電池10bの通電経路には電流センサ24bが設けられ、鉛蓄電池10cの通電経路には電流センサ24cが設けられている。一方、鉛蓄電池10dの通電経路には電流センサが設けられていない。すなわち、第2実施形態の電源システム60と同様、互いに並列接続されたn個(nは2以上の整数)の鉛蓄電池に対してn−1個の電流センサが設けられた構成となっている。言い換えると、複数の鉛蓄電池のうち1個の鉛蓄電池に対しては、検出センサとしての電流センサが設けられていない。
第3実施形態においても、ECU30は、各蓄電池10a〜10dにおいて放電に関する異常が生じたか否かの異常判定を行い、その判定結果に基づいて放電を行う鉛蓄電池の個数を確認する。
異常判定に関して言えば、鉛蓄電池10a〜10cの異常判定は、各電流センサ24a〜24cにより検出される充放電電流Ia〜Icに基づいて実施される。また、鉛蓄電池10dの異常判定は、例えば、充放電電流Ia〜Icに基づいて鉛蓄電池10dの充放電電流Idを推定し、推定した充放電電流Idに基づいて実施される。充放電電流Idの推定は、例えば、上記第2実施形態に記載の第1の方法や第2の方法に基づいて実施される。第1の方法であれば、放電電流Idは、消費電流Iwから放電電流Ia、放電電流Ib、放電電流Icを減算した値として、推定される。
ECU30は、鉛蓄電池10a〜10dが全て正常である場合は4個の鉛蓄電池によりアイドリングストップ時及び再始動時の放電を行い、鉛蓄電池10a〜10dのうち1個が異常である場合は3個の鉛蓄電池により放電を行い、鉛蓄電池10a〜10dのうち2個が異常である場合は2個の鉛蓄電池により放電を行う。
そして、ECU30は、アイドリングストップ時及び再始動時に放電する蓄電池の個数に応じて閾値Thを設定する。具体的には、4個の鉛蓄電池を使用する場合は閾値Thに基準値Aを設定し、3個の鉛蓄電池を使用する場合は閾値Thに判定値D1を設定し、2個の鉛蓄電池を使用する場合は閾値Thに判定値D2を設定する。なお、閾値Thに設定される各値は、A<D1<D2の大小関係となる。
一方、鉛蓄電池10a〜10dのうち3個が異常である場合は、ECU30は、アイドリングストップの実行を禁止する。かかる場合、1個の鉛蓄電池は正常であるが、1個の鉛蓄電池に基づいて閾値Thを設定すると、閾値Thは比較的大きな値に設定される。例えば、4個の鉛蓄電池を使用する場合における各蓄電池の放電量がSOC1%に相当すると仮定すると、閾値Thは92%に設定される。鉛蓄電池は、SOCが所定以上(高SOC)になると充電電流の受入性能が低下するため、充電に要する時間が長くなる。そのため、SOC条件が成立しにくくなることでアイドリングストップの実行頻度が低下し、ひいてはドライバの違和感につながるおそれがある。また、鉛蓄電池の過度の充電につながるおそれもある。
そこで、本実施形態では、3個の鉛蓄電池が異常であり、1個の鉛蓄電池が正常である場合には、エンジンの自動停止を禁止するとともに、ドライバにアイドリングストップが禁止されている旨を通知するようにしている。
図7は、第3実施形態におけるSOC条件の判定処理を示すフローチャートである。本処理は、上述の図3や図5に置き換えて、ECU30により所定周期で繰り返し実施される。
ステップS51では、鉛蓄電池10a〜10cの各SOCを取得する。ステップS52では、鉛蓄電池10dの充放電電流Idを推定する。充放電電流Idの推定には、例えば上記第1の方法や第2の方法が用いられる。
ステップS53,S54,S55では、鉛蓄電池10a〜10dのうち何個が正常であるか否かを判定する。各蓄電池10a〜10dの異常判定は、充放電電流Ia〜Idに基づいて実施される。そして、その判定結果により正常であると判定された鉛蓄電池の個数に応じて、後続のステップS56,S58,S61,S67のいずれかに進む。すなわち、鉛蓄電池10a〜10dが全て正常であると判定された場合(ステップS53:YES)は、ステップS56に進み、鉛蓄電池10a〜10dのうち3個正常であると判定された場合(ステップS54:YES)は、ステップS58に進み、鉛蓄電池10a〜10dのうち2個正常であると判定された場合(ステップS55:YES)は、ステップS61に進み、鉛蓄電池10a〜10dのうち1個以下が正常であると判定された場合(ステップS55:NO)は、ステップS67に進む。
ステップS56では、アイドリングストップ時及び再始動時に4個の鉛蓄電池により放電を行う旨を把握し、続くステップS57では閾値Thに基準値Aを設定する。ステップS58では、アイドリングストップ時及び再始動時に3個の鉛蓄電池により放電を行う旨を把握し、続くステップS59では閾値Thに判定値D1を設定する。ステップS61では、アイドリングストップ時及び再始動時に2個の鉛蓄電池により放電を行う旨を把握し、続くステップS62では閾値Thに判定値D2を設定する。なお、ステップS60,S63では、鉛蓄電池に異常が生じ、自動停止条件が変更された旨をドライバに通知する。
判定値D1,D2の設定に関して説明する。ここでは、4個の鉛蓄電池を用いた場合における各蓄電池の放電量がSOC1%に相当すると仮定して判定値D1,D2を設定する。3個の鉛蓄電池を用いる場合には、各蓄電池の放電量がSOC1.3%に相当すると考えられる。そのため、判定値D1は、使用禁止範囲の上限値88%にSOC1.3%を加算した89.3%に設定される。一方、2個の鉛蓄電池を用いる場合には、各蓄電池の放電量がSOC2.0%に相当すると考えられる。そのため、判定値D2は、使用禁止範囲の上限値88%にSOC2.0%を加算した90%に設定される。
続くステップS64では、ステップS51で取得した鉛蓄電池10a〜10cのうちいずれかのSOCが、ステップS57,S59又はS62にて設定された閾値Thよりも大きいか否かを判定する。ステップS64がYESであれば自動停止を許可し(ステップS65)、ステップS64がNOであれば、自動停止を禁止する(ステップS66)。
一方、ステップS55がNOの場合、すなわち鉛蓄電池10a〜10dのうち1個が正常である、又は、全てが異常であると判定された場合は、エンジンの自動停止を禁止し(ステップS67)、その旨をユーザに通知する(ステップS68)。
なお、第3実施形態において、ステップS53,S54,S55が「異常判定部」に相当し、ステップS53,S54,S55,S56,S58,S61が「個数確認部」に相当し、ステップS57,S59,S62が「設定部」に相当し、ステップS60,S63,S68が「通知部」に相当し、ステップS64が「判定部」に相当し、ステップS67が「禁止部」に相当する。
上記実施形態では、4個の鉛蓄電池10a〜10dを備えた4電源システムとしており、かかる構成において、正常な鉛蓄電池の個数がゼロよりも大きくてかつ4個よりも小さい所定個数以下となる場合に閾値Thを大きくする側に変更すると、高SOC側に閾値Thが設定されることになる。この場合、アイドリングストップの実行頻度が大きく低下し、ひいてはドライバの違和感につながるおそれがある。この点を考慮し、上記実施形態では、正常な鉛蓄電池の個数が1個の場合であっても、鉛蓄電池のSOCにかかわらずエンジンの自動停止を禁止するとともに、その旨をドライバに通知するようにしたため、ドライバの違和感を軽減することができる。また、鉛蓄電池の過度な充電を抑制することができる。
(他の実施形態)
・上記実施形態では、並列接続された複数の鉛蓄電池が同時放電又は同時充電を行うことを前提とした。そのため、上記電源システムでは、並列接続された複数の鉛蓄電池と、スタータ12及び電気負荷13とを繋ぐ電気経路にスイッチを設けず、常に導通させた状態としたが、これを変更してもよい。例えば、各蓄電池の通電経路にスイッチを設けてもよい。ただし、かかる構成において、当該スイッチは全てオンに制御される。
・上記実施形態では、並列接続された複数の鉛蓄電池が同時放電又は同時充電を行う構成としたが、これを変更し、複数の鉛蓄電池を個別に充放電できる構成としてもよい。かかる構成では、各蓄電池の通電経路に、各蓄電池の通電を遮断可能なスイッチを設け、そのスイッチの開閉制御を実施することで各蓄電池の充放電を個別に行う。この場合、例えば、ECU30は、アイドリングストップ時及び再始動時に使用される蓄電池の個数を可変に設定する。例えば、ECU30は、各蓄電池の内部抵抗をそれぞれ取得し、その内部抵抗に基づいてアイドリングストップ時及び再始動時に放電を行う蓄電池の個数を確認する。4個の蓄電池のうち、1個の蓄電池の内部抵抗が所定以上である場合には、その1個の蓄電池を除いた3個の蓄電池を用いて放電を行う旨を把握する。そして、3個の蓄電池に基づいて、閾値Thを設定する。なお、ECU30は、各蓄電池の内部抵抗以外に各蓄電池の劣化度合を取得し、その劣化度合に基づいて蓄電池の個数を確認するようにしてもよい。
・上記実施形態では、蓄電池として鉛蓄電池を用いる構成としたが、同じ性能を有する蓄電池が互いに並列接続される構成であれば、これに限定されない。例えば、蓄電池としてリチウムイオン蓄電池を用いてもよい。かかる場合には、同じ性能を有するリチウムイオン蓄電池が互いに並列接続される。なお、リチウムイオン蓄電池は、鉛蓄電池に比べて、充放電における電力損失が少なく、出力密度、及びエネルギ密度の高い高密度蓄電池である。
・上記実施形態では、始動装置としてスタータ12を備えた電源システムを用い、複数の鉛蓄電池からスタータ12へ放電を行うことでエンジンの再始動を行う構成としたが、これを変更してもよい。例えば、始動装置として、スタータ12に加えて、ISG(Integrated Starter Generator)を備えた電源システムを用いてもよい。この場合、ISGに対して複数の鉛蓄電池が並列に接続される。ISGは、エンジン出力軸の回転により発電(回生発電)を行う発電機として機能する一方、エンジン出力軸に回転力を付与する力行機能も併せ持っている。この電源システムにおいて、エンジン再始動時には、鉛蓄電池からISGへ放電を行うことでエンジンの再始動を行うようにしてもよい。また、スタータ12とISGを併用して、エンジンの再始動を行うようにしてもよい。
・上記実施形態では、2個の鉛蓄電池を備えた2電源システム又は4個の鉛蓄電池を備えた4電源システムに、ECU30を適用したが、これらに限定されない。例えば、ECU30を、3個の鉛蓄電池を備えた3電源システムに適用してもよく、また、5個以上の鉛蓄電池を備えた電源システムに適用してもよい。