JP6724769B2 - ニッケル複合水酸化物の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、同文献ではニッケルイオン濃度は20mg/l以下であればよいとされているが制御範囲については特定されていない。そのため、ニッケルイオン濃度のバラツキが大きくなるので、この従来被術では安定した粒径を保つことはできない。
第2発明のニッケル複合水酸化物の製造方法は、第1発明において、前記アンモニウムイオン濃度の管理幅を、管理値から±10%以内の範囲に制御することを特徴とする。
第3発明のニッケル複合水酸化物の製造方法は、第1発明または第2発明において、前記ニッケルイオン濃度の目標幅を、目標値から±20%以内の範囲に収束させることを特徴とする。
第4発明のニッケル複合水酸化物は、一般式Ni1−x−yCoxAly(OH)2+α(0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15、x+y<0.3、0≦α≦0.5)で表される非水系電解質二次電池用正極活物質の原材料となるニッケル複合水酸化物であって、レーザー回折散乱法により測定した粒度分布から求められる相対標準偏差が、0.06以下であることを特徴とする。
第2発明によれば、アンモニウムイオン濃度の管理幅を管理値から±10%以内という狭い範囲に管理すると、濃度管理を正確に行う前提が成立するので、所望の粒度分布の粒子を長期にわたってより安定して製造することができる。
第3発明によれば、ニッケルイオン濃度の目標幅を目標値から±20%の範囲内に収めると、所望の粒度分布の粒子を長期にわたってより安定して製造することができる。
第4発明によれば、粒径の均一性に優れたニッケル複合水酸化物を前駆体とするので、得られたリチウムニッケル複合酸化物は、粒度分布の均一性に優れ、正極活物質として優れた特性が得られる。したがって、本発明の工業的価値はきわめて高いものといえる。
本発明に係るニッケル複合水酸化物の組成は、下記一般式に表わされるとおりである。
一般式Ni1−x−yCoxAly(OH)2+α
ここで、x、y、αの値は以下のとおりである。
0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15、x+y<0.3、0≦α≦0.5。
本発明に係るニッケル複合水酸化物の製造方法は、図2に示すように、反応槽1に、少なくともニッケルとアルミニウムを含む金属塩含有水溶液(金属塩を含む混合水溶液をいう)と、アルカリ金属水酸化物、およびアンモニウムイオン供給体を供給し、撹拌機2で撹拌しながら中和反応させる中和反応工程を用いることが基本である。さらに、反応槽1からオーバーフローした中和反応によって生成した粒子を含む反応水溶液を回収して固液分離し、水洗し、乾燥することにより、ニッケル複合水酸化物粒子を製造する。
ニッケルイオン濃度の目標値は、所望のニッケル複合水酸化物の粒径によって変動することもあるが、10mg/L〜30mg/Lをニッケルイオン濃度の設定範囲とし、この設定範囲の中で目標値を定めることが好ましい。
アンモニウムイオン濃度の分析には、公知のアンモニウムイオンメーターが用いられ、それには、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のOrion STAR A324(商品名)などが利用できる。ニッケルイオン濃度の分析には、公知のデジタルパックテスト器が用いられ、それには、共立理化学研究所製のDPM-NiD(商品名)などが利用できる。
この趣旨から、本発明におけるアンモニウムイオン濃度は、管理値から±10%以内の範囲を管理幅として制御することが好ましい。管理値の管理幅が管理値から±10%以内であると、ニッケルイオン濃度による粒径の制御を適正に行うことができる。管理幅が±10%の範囲を外れると粒径の制御を適正に行うことができなくなり、粒径に関する高い工程能力指数が得られないことがある。
一方、ニッケルイオン濃度の目標値が、±20%の目標幅の範囲を外れると、反応溶液中のニッケル複合水酸化物の粒径の標準偏差が大きくなり、結果より高い工程能力指数が得られなくなる。
ニッケルイオン濃度の調整は、アルカリ金属水酸化物の供給量を加減する等の公知の方法で行える。アルカリ金属水酸化物としては、たとえば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどを使用することができる。コスト低減や取り扱い性の観点から、水酸化ナトリウム水溶液を供給することが好ましい。
(1)アンモニウムイオン濃度を所定の管理値に保ちつつ、ニッケルイオン濃度を測定し、そのニッケルイオン濃度の目標値からの偏差に基づいてアルカリ金属水酸化物の供給量を変化させることで、ニッケルイオン濃度を目標値に収束させるので、所望の粒度分布の粒子を長期にわたって安定して製造することができる。とくに、反応系内のアンモニウムイオン濃度を管理値から±10%の範囲内に制御した状態で、ニッケルイオン濃度を目標値から±20%の範囲内で制御すると、所望の粒度分布の粒子を長期にわたって、より安定して製造することができる。
まず基準条件として、邪魔板を4枚取り付けた槽容積200Lのオーバーフロー式晶析反応槽に、純水170L、25質量%水酸化ナトリウム水溶液、25質量%アンモニア水溶液を添加して、槽内アンモニウムイオン濃度を11〜13g/Lに、pHを12.40に調整した。49℃に加温した反応溶液を直径25cmの6枚羽根フラットタービン翼を用いて280rpmで攪拌しつつ、定量ポンプを用いて、ニッケルモル濃度1.4mol/L、コバルトモル濃度0.3mol/Lの硫酸ニッケルコバルト混合水溶液を580ml/分、アルミニウム濃度0.43mol/Lのアルミン酸ナトリウム水溶液を92ml/分で供給し、併せて25質量%水酸化ナトリウム水溶液および25質量%アンモニア水溶液を断続的に添加し、ニッケルイオン濃度が目標値を15mg/Lとして目標幅が±2mg/L(目標値の±13%)となる13〜17mg/L、アンモニウムイオン濃度が管理値を12g/Lとして管理幅が±1g/L(管理値の±8%)となる11〜13g/Lに維持されるように制御し、中和晶析反応によりニッケル複合水酸化物の粒子を生成させた。このとき、pHメーターにより測定したpHは12.6〜13.0であった。
反応槽内での中和晶析反応が安定した後、オーバーフローした反応溶液を回収して固液分離後、水洗し、乾燥してニッケル複合水酸化物を得た。得られたニッケル複合水酸化物の体積基準の粒度分布をレーザー回折散乱法により測定したところ、平均粒径は12.5μmであり、標準偏差は0.22μmであった。また、標準偏差を平均粒径で除した相対標準偏差は0.018であった。粒子径と粒度分布から計算した工程能力指数Cpkは1.89であった。
ニッケルイオン濃度が目標値を10.5mg/Lとして目標幅が±1.5mg/L(目標値の±14%)となる9〜12mg/L、アンモニウムイオン濃度が管理値を12g/Lとして管理幅が±8g/L(管理値の±66%)となる4〜20g/Lとなるように制御した以外は、実施例1と同様にしてニッケル複合水酸化物を得た。
得られたニッケル複合水酸化物について実施例1と同様に計算すると、平均粒径は12.7μmであり、標準偏差は0.56μmであり、相対標準偏差は0.044であった。また工程能力指数Cpkは0.73であった。
反応溶液のpHを、pHメーターの測定値に基づいて25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給量を調整して12.8に制御するとともに、アンモニウムイオン濃度が管理値を12g/Lとして管理幅が±1g/L(管理値の±8%)となる11〜13g/Lとなるように制御した以外は、実施例1と同様にしてニッケル複合水酸化物を得た。このときの、ニッケルイオン濃度は4〜35mg/Lで変動し、変動範囲の中心値は19.5mg/Lであり変動幅は±15.5mg/L(中心値の±75%)であった。
得られたニッケル複合水酸化物について実施例1と同様に計算すると、平均粒径は12.3μmであり、標準偏差は1.17μmであり、相対標準偏差は0.095であった。また工程能力指数Cpkは0.36であった。
以上の実施例1および2の標準偏差と比較例1を対比すると分るように、本発明の製造方法によると得られたニッケル複合水酸化物の粒子の粒度分布は狭い範囲に収まっており、相対標準偏差が小さく工程能力指数も高いことが分かる。特に、ニッケルイオン濃度を目標幅の範囲内、アンモニウムイオン濃度を管理幅の範囲内に制御した実施例1では、粒度分布は非常に狭い範囲に収まっており、工程能力指数もより高いことが分かる。また、実施例1および2を前駆体として用いて公知の技術で得られたリチウムニッケル複合酸化物は、ニッケル複合水酸化物と同様に粒度分布が狭い範囲に収まっており、粒径の均一性に優れたものであることが確認された。
2 撹拌機
Claims (4)
- 一般式Ni1−x−yCoxAly(OH)2+α(0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15、x+y<0.3、0≦α≦0.5)で表される非水系電解質二次電池用正極活物質の原材料となるニッケル複合水酸化物の製造方法であって、
反応溶液を撹拌しながら、少なくともニッケルを含む金属塩含有水溶液と、アルカリ金属水酸化物、およびアンモニウムイオン供給体を供給して中和反応させ、ニッケル複合水酸化物粒子を得る晶析工程において、
アンモニウムイオン濃度を所定の管理値に保ちつつ、ニッケルイオン濃度を測定し、該ニッケルイオン濃度の目標値からの偏差に基づいてアルカリ金属水酸化物の供給量を変化させることで、ニッケルイオン濃度を目標値に収束させる
ことを特徴とするニッケル複合水酸化物の製造方法。 - 前記アンモニウムイオン濃度の管理幅を、管理値から±10%の範囲内に制御する
ことを特徴とする請求項1記載のニッケル複合水酸化物の製造方法。 - 前記ニッケルイオン濃度の目標幅を、目標値から±20%の範囲内に収束させる
ことを特徴とする請求項1または2記載のニッケル複合水酸化物の製造方法。 - 一般式Ni1−x−yCoxAly(OH)2+α(0≦x≦0.3、0.005≦y≦0.15、x+y<0.3、0≦α≦0.5)で表される非水系電解質二次電池用正極活物質の原材料となるニッケル複合水酸化物であって、
レーザー回折散乱法により測定した粒度分布から求められる相対標準偏差が、0.06以下である
ことを特徴とするニッケル複合水酸化物。
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