JP6443084B2 - 遷移金属複合水酸化物粒子とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法および非水系電解質二次電池 - Google Patents

遷移金属複合水酸化物粒子とその製造方法、非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法および非水系電解質二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、遷移金属複合水酸化物粒子とその製造方法、および、この遷移金属複合水酸化物粒子を前駆体とする非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法に関する。また、本発明は、この非水系電解質二次電池用正極活物質を正極材料として用いた非水系電解質二次電池に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高いエネルギ密度を有する小型で軽量な非水系電解質二次電池の開発が強く望まれている。また、モータ駆動用電源、特に輸送機器の電源として高出力の二次電池の開発が強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、非水系電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池がある。リチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、負極および正極の活物質として、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が用いられる。
リチウムイオン二次電池については、現在、研究開発が盛んに行われているところであるが、その中でも、層状またはスピネル型のリチウム遷移金属複合酸化物粒子を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の高い電圧が得られるため、高いエネルギ密度を有する電池として実用化が進んでいる。
このようなリチウムイオン二次電池の正極材料として、現在、合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)粒子や、コバルトよりも安価なニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)粒子、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(LiNi1/3Co1/3Mn1/32)粒子、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)粒子、リチウムニッケルマンガン複合酸化物(LiNi0.5Mn0.52)粒子、リチウムを過剰に含有するリチウム過剰遷移金属複合水酸化物(Li2MnO3−LiNixMnyCoz)粒子などが提案されている。
これらの中でも、リチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子は、リチウムコバルト複合酸化物粒子やリチウムニッケル複合酸化物粒子などと同様に、六方晶系の層状構造を備え、これを用いたリチウムイオン電池は高容量で、熱安定性に優れることが知られており、実用化に向けた研究が進められている(佐藤裕一、「リチウムイオン電池の高性能化:固溶体正極材料について」、FBテクニカルニュース,No66号(2011.1)、第3頁〜第10頁)。
たとえば、本発明者らの先願である特開2013−229339号公報には、一般式:bLi2MnM1 t13・(1−b)Li1+vNixCoyMnz2 t22(0.2≦b≦0.7、−0.05≦v≦0.20、t1+t2=t、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.4、0.2≦y≦0.8、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.1、M及びMは添加元素であり、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の元素)で表されるリチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子からなる正極活物質が開示されている。この正極活物質は、一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、二次粒子の表面近傍および内部に電解液が浸透可能な空隙を有しており、平均粒径が3μm〜12μm、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下に調整されたものである。
この文献では、この正極活物質の前駆体を、主として核生成を行う核生成段階(pH値=12.0〜14.0)と、主として粒子成長を行う粒子成長段階(pH値=10.5〜12.0)に明確に分離するとともに、核生成工程および粒子成長工程の初期における反応雰囲気を酸素濃度が1容量%を超える酸化性雰囲気に制御し、粒子成長段階全体に対して、その開始時から0%〜40%の範囲で、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に切り替えることを特徴とする晶析工程により製造している。このような正極活物質は、比較的小粒径で粒度分布が狭いため、これを用いた二次電池は、高容量で、出力特性に優れる。
特開2013−229339号公報
佐藤裕一、「リチウムイオン電池の高性能化:固溶体正極材料について」、FBテクニカルニュース,No66号(2011.1)、第3頁〜第10頁
しかしながら、特開2013−229339号公報の正極活物質は、二次粒子を凝集した一次粒子が焼結している外殻部と、その内側に存在する中空部とからなる中空構造により構成することによって出力特性の向上を図ったものである。ただし、このような中空構造の正極活物質では、二次粒子の表面近傍と内部に空隙を有することから、使用時において充放電を繰り返すうちに構造の劣化が進行して、サイクル特性が劣ってしまう可能性があることがわかった。このようなサイクル特性を改善するためには、中実構造もしくはこれに近い構造とすることが有効であるが、この場合、十分な出力特性を確保することが困難となる。
そこで、本発明は、小粒径で粒径の均一性が高く、かつ、凝集した一次粒子が焼結して形成された中実構造に近い構造であるにもかかわらず、二次電池を構成した場合に正極抵抗を低減することができる、リチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子、および、その前駆体である遷移金属複合水酸化物粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、このリチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子および遷移金属複合水酸化物粒子を、工業規模の生産において、容易に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、このリチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子を正極活物質として用いた、非水系電解資質二次電池を提供することを目的とする。
本発明の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法は、一般式(A):NixCoyMnz(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.05≦x≦0.3、0.1≦y≦0.4、0.6≦z≦0.8、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法であって、
反応槽内の雰囲気を、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に調整して、少なくともニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合水溶液と、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を反応槽に供給し、混合することにより、液温25℃基準におけるpH値が12.0〜14.0であり、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜20g/Lである核生成用水溶液を形成して、該核生成用水溶液の前記pH値および前記アンモニウムイオン濃度を維持しつつ、前記混合水溶液を供給することにより核生成を行う核生成工程と、
前記核生成工程後に、前記反応槽内の雰囲気を維持しつつ、前記核生成後の前記核生成用水溶液のpH値を調整することにより、または、成分調整水溶液を用意し、前記核生成後の前記核生成用水溶液もしくは該核生成用水溶液から一部液体を除去したものを、前記成分調整水溶液に供給することにより、液温25℃基準におけるpH値が、前記核生成用水溶液のpH値よりも低く、かつ、10.0〜12.0であり、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜20g/Lである粒子成長用水溶液を形成して、該粒子成長用水溶液の前記pH値および前記アンモニウムイオン濃度を維持しつつ、前記混合水溶液を供給することにより、前記核生成工程で生成した核を成長させる粒子成長工程と、
を備えることを特徴とする。
前記核生成工程および前記粒子成長工程において、前記核生成用水溶液および前記粒子成長用水溶液の液温を30℃以上とすることが好ましい。
本発明の遷移金属複合水酸化物粒子は、前記本発明の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法によって得られ、一般式(A):NixCoyMnz(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.05≦x≦0.3、0.1≦y≦0.4、0.6≦z≦0.8、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、その全体が複数の板状一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子からなり、前記二次粒子は、平均粒径が4.0μm〜7.0μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.6以下であることを特徴とする。
本発明の水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、一般式(B):bLi2MnO3・(1−b)Li1+uNixCoyMnzt2(0.2≦b≦0.8、−0.05≦u≦0.2、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.4、0.2≦y≦0.8、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子からなる非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、前記本発明の遷移金属複合水酸化物粒子とリチウム化合物を混合し、リチウム混合物を得る混合工程と、前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中、800℃〜1050℃で焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする。
前記混合工程において、前記リチウム混合物中のニッケル、コバルト、マンガンおよび添加元素Mの原子数の総和に対するリチウムの原子数の比率が1.16〜1.84となるように、前記本発明の遷移金属複合水酸化物粒子と前記リチウム化合物を混合することが好ましい。
前記焼成工程において、前記酸化性雰囲気を、18容量%以上の酸素を含有する雰囲気とすることが好ましい。
前記混合工程の前に、前記本発明の遷移金属複合水酸化物粒子を、105℃〜750℃で熱処理する熱処理工程をさらに備えることが好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式(B):bLi2MnO3・(1−b)Li1+uNixCoyMnzt2(0.2≦b≦0.8、−0.05≦u≦0.2、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.4、0.2≦y≦0.8、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子からなる正極活物質であって、前記正極活物質は、前記本発明の水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法によって得られ、その全体が複数の板状一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、前記板状一次粒子は、厚さが1.0μm以下、該厚さに対する長径の比率の平均値が1.5〜7.0であり、前記二次粒子は、平均粒径が4.0μm〜7.0μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.6以下であることを特徴とする。
前記二次粒子の比表面積は、1.0m2/g〜3.0m2/gであることが好ましい。また、前記二次粒子のタップ密度は、1.5g/cm3〜2.4g/cm3であることが好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、非水系電解質とを備え、前記正極の正極材料として、前記非水系電解質二次電池用正極活物質が用いられていることを特徴とする。
本発明によれば、二次電池の正極活物質として、小粒径で粒径の均一性が高く、かつ、凝集した一次粒子が焼結して形成された中実構造に近い構造であるにもかかわらず、二次電池を構成した場合に正極抵抗を低減することができ、高いサイクル特性と高い出力特性とを同時に達成できる、リチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子、および、その前駆体である遷移金属複合水酸化物粒子を、工業的規模の生産により低コストで提供することができるため、本発明の工業的意義はきわめて大きい。
図1は、本発明の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法の一実施態様を示す、概略フローチャートである。 図2は、本発明の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法の別実施態様を示す、概略フローチャートである。 図3は、本発明の遷移金属複合水酸化物粒子のSEM写真(観察倍率:5000倍)である。 図4は、本発明の正極活物質のSEM写真(観察倍率:5000倍)である。 図5は、電池評価に使用した2032型コイン電池の概略断面図である。 図6は、インピーダンス評価の測定例と解析に使用した等価回路の概略説明図である。
本発明者らは、上述の問題に鑑みて、リチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子からなる正極活物質を用いた二次電池において、充放電容量や出力特性を低下させることなく、サイクル特性を改善する方法について鋭意研究を重ねた。その際、液相内におけるリチウムの拡散速度は、固相内におけるリチウムの拡散速度に比べてはるかに速いことに着目した。この結果、正極活物質内に、リチウムが液相拡散可能な経路を多数設けることにより、中空構造などの特殊な構造を採用して比表面積を大きくせずとも、リチウムの挿入および脱離に伴う反応抵抗を低減することができるため、サイクル特性と出力特性を同時に改善可能であるとの結論を得た。
この結論に基づきさらに研究を重ねた結果、リチウムが液相拡散可能な経路を増加させるためには、正極活物質の構造を、表面から中心部に通じる多数の空隙を備えた多孔質構造とすることが重要であるとの知見を得た。また、このような多孔質構造は、正極活物質を板状一次粒子のみから構成し、かつ、この板状一次粒子の厚さおよび長径を特定範囲に制御することによって実現することができるとの知見を得た。
さらに、このような正極活物質は、弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気の下で、反応水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度を特定の範囲に制御した晶析反応により製造した複合水酸化物粒子を前駆体とすることで得ることができるとの知見を得た。
本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。以下、本発明について、「1.遷移金属複合水酸化物粒子」、「2.非水系電解質二次電池用正極活物質」および「3.非水系電解質二次電池」に分けて、詳細に説明する。
1.遷移金属複合水酸化物粒子
本発明の遷移金属複合水酸化物粒子(以下、「複合水酸化物粒子」という)は、後述する製造方法によって得られ、一般式(A):NixCoyMnz(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.05≦x≦0.3、0.1≦y≦0.4、0.6≦z≦0.8、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、複数の板状一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子から構成される。特に、本発明の複合水酸化物粒子は、二次粒子の平均粒径が4.0μm〜7.0μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.6以下であることを特徴とする。
(1−a)組成
本発明の複合水酸化物粒子は、一般式(A)で表される組成となるように調整されることが必要となる。これにより、一般式(B)で表される正極活物質を容易に得ることが可能となる。すなわち、本発明の複合水酸化物粒子の組成は、正極活物質に求められる特性に応じて、正極活物質のうちのリチウムを除いた組成に準じたものとなる。
すなわち、本発明の複合水酸化物粒子において、ニッケル(Ni)の含有量を示すxの値は、0.05〜0.3、好ましくは0.10〜0.25、より好ましくは0.10〜0.20に調整される。
コバルト(Co)の含有量を示すyの値は、0.1〜0.4、好ましくは0.1〜0.3、より好ましくは0.1〜0.2に調整される。
マンガン(Mn)の含有量を示すzの値は、0.6〜0.8、好ましくは0.60〜0.75、より好ましくは0.60〜0.70に調整することが必要となる。
また、本発明の複合水酸化物粒子は、これを前駆体とする正極活物質を用いた二次電池の耐久性や出力特性などをさらに改善するため、上述した金属元素に加えて、添加元素Mを含有してもよい。ただし、添加元素Mの含有量を示すtの値は、同様に、一般式(B)で表される正極活物質を容易に得る観点から、0〜0.1、好ましくは0〜0.05、より好ましくは0〜0.03の範囲に調整することが必要となる。
(1−b)粒子構造
[二次粒子]
本発明の複合水酸化物粒子は、図3に示すように、複数の板状一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子からなる。この二次粒子は、その全体が凝集した一次粒子が焼結して形成された構造であるが、その表面から中心部に通じる多数の空隙を有する多孔質構造を備える。このような二次粒子では、焼成工程において、粒子内部にリチウムを効率良く拡散させることができる。なお、本発明において、略球状には、球状のほか、楕円球状など、実質的に球状と判断され得る形状が含まれる。
この二次粒子は、上述した板状一次粒子がランダムな方向に凝集して形成されたものであることが好ましい。板状一次粒子がランダムな方向に凝集することで、二次粒子内に、均一に空隙が形成された均質な構造となるため、焼成工程において、溶融したリチウム化合物が二次粒子内部に均一に行き渡り、リチウムを十分に拡散させることができる。
[板状一次粒子]
本発明の複合水酸化物粒子は、後述する晶析工程(核生成工程および粒子成長工程)において、反応槽内の雰囲気(以下、「反応雰囲気」という)を弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に厳密に管理することにより、その全体が特定の板状一次粒子のみの凝集体によって構成されるように調整される。
この板状一次粒子は、厚さG0に対する長径L0の比率の平均値(平均比率)L0/G0が、好ましくは1.5〜7.0、より好ましくは2.0〜6.0、さらに好ましくは2.0〜5.0となるように調整される。平均比率L0/G0がこのような範囲にあれば、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質において、板状一次粒子の厚さGに対する長径Lの平均比率L/Gを特定の範囲(1.5〜7.0)に制御することが容易となる。
また、板状一次粒子の厚さG0は、1.0μm以下であることが好ましく、0.2μm〜0.6μmであることがより好ましい。一方、板状一次粒子の長径L0は、0.5μm〜4.0μmであることが好ましく、1.0μm〜3.0μmであることがより好ましい。厚さG0および長径L0を、このような範囲に制御することにより、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質において、板状一次粒子の厚さGおよび長径Lについても、容易に所定の範囲に調整することができる。
なお、板状一次粒子の厚さG0、長径L0および平均比率L0/G0は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより測定することができる。具体的には、50個以上の複合水酸化物粒子を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などにより断面観察が可能な状態とし、1粒子(二次粒子)当たり5個以上の板状一次粒子の厚さG0および長径L0を測定することにより求めることができる。
(1−c)平均粒径
本発明の複合水酸化物粒子は、二次粒子の平均粒径が、4.0μm〜7.0μm、好ましくは5.0μm〜7.0μmに調整される。二次粒子の平均粒径は、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径と相関する。このため、二次粒子の平均粒径を上記範囲に制御することにより、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径と所定の範囲(4.0μm〜7.0μm)に調整することができる。
なお、本発明において、平均粒径とは、体積基準平均粒径(MV)を意味し、たとえば、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
(1−d)粒度分布
本発明の複合水酸化物粒子は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.6以下、好ましくは0.56以下、より好ましくは0.48以下となるように調整される。正極活物質の粒度分布は、その前駆体である複合水酸化物粒子の影響を強く受ける。このため、微細粒子や粗大粒子が多く含む複合水酸化物粒子を前駆体とすると、これを前駆体とする正極活物質にも微細粒子や粗大粒子が多く含まれることとなり、この正極活物質を用いた二次電池の安全性、サイクル特性および出力特性を十分に改善することができない。これに対して、複合水酸化物粒子の段階で、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.6以下となるように調整しておけば、これを前駆体とする正極活物質の粒度分布を狭くすることができ、上述した問題を回避し、二次電池の安全性、サイクル特性および出力特性を改善することが可能となる。ただし、工業規模の生産を前提とした場合、複合水酸化物粒子として、〔(d90−d10)/平均粒径〕が過度に小さいものを使用することは現実的ではない。したがって、コストや生産性を考慮すると、〔(d90−d10)/平均粒径〕の下限値は、0.25程度とすることが好ましい。
なお、d10は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を、d90は、同様に粒子数を累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味する。d10およびd90は、平均粒径と同様に、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
(2)遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、一般式(A):NixCoyMnz(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.05≦x≦0.3、0.1≦y≦0.4、0.6≦z≦0.8、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法に関する。
特に本発明の製造方法は、反応槽内の雰囲気を、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に調整して、少なくともニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合水溶液と、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を反応槽に供給し、混合することにより、液温25℃基準におけるpH値が12.0〜14.0であり、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜20g/Lである核生成用水溶液を形成して、該核生成用水溶液の前記pH値および前記アンモニウムイオン濃度を維持しつつ、前記混合水溶液を供給することにより核生成を行う核生成工程と、前記核生成工程後に、前記反応槽内の雰囲気を維持しつつ、前記核が生成した前記核生成用水溶液のpH値を調整することにより、液温25℃基準におけるpH値が、前記核生成用水溶液のpH値よりも低く、かつ、10.0〜12.0であり、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜20g/Lである粒子成長用水溶液を形成して、該粒子成長用水溶液の前記pH値および前記アンモニウムイオン濃度を維持しつつ、前記混合水溶液を供給することにより、前記核生成工程で生成した核を成長させる粒子成長工程と、を備えることを特徴とする。
(2−a)晶析工程
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、晶析工程を、核生成のみを行う核生成工程と、粒子成長のみを行う粒子成長工程の2段階に明確に分離するとともに、各工程における晶析条件、特に反応雰囲気を適切に制御することにより、上述した粒子構造、平均粒径および粒度分布を備える複合水酸化物粒子を得ることを可能とするものである。なお、本発明において、晶析条件の調整に必要な操作は、基本的には従来技術と同様であるため、本発明は、複合水酸化物粒子の工業規模の生産に広く適用することが可能である。
[核生成工程]
図1に示す実施態様では、はじめに、反応槽内の雰囲気を酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に調整するとともに、反応槽内に、アルカリ水溶液とアンモニウムイオン供給体を含む水溶液に供給および混合して、液温25℃基準におけるpH値が12.0〜14.0、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜20g/Lである反応前水溶液を調製する。なお、反応前水溶液のpH値はpH計により、アンモニウムイオン濃度はイオンメータにより、それぞれ測定することができる。
同時に、少なくともニッケル、コバルトおよびマンガンを含有する金属化合物を所定の割合で水に溶解し、混合水溶液を調製する。
次に、反応前水溶液を撹拌しながら、混合水溶液を供給する。これにより、反応槽内には、核生成工程における反応水溶液である核生成用水溶液が形成される。この核生成用水溶液のpH値は上述した範囲にあるので、核生成工程では核はほとんど成長することなく、核の生成が優先的に起こる。なお、核生成工程では、核生成に伴い、核生成用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度が変化する。このため、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を適時供給し、核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準でpH12.0〜14.0の範囲に、アンモニウムイオンの濃度を3g/L〜20g/Lの範囲に維持することが必要となる。
このような核生成工程では、核生成用水溶液に、混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給することにより、連続して新しい核の生成が継続される。そして、核生成用水溶液中に、所定量の核が生成した時点で、核生成工程を終了する。この際、核の生成量は、核生成用水溶液に供給した混合水溶液に含まれる金属化合物の量から判断することができる。
なお、核生成工程における核の生成量は、特に制限されることはない。しかしながら、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得るためには、核生成工程および粒子成長工程を通じて供給する混合水溶液に含まれる金属化合物中の金属元素に対する核の生成量を、0.1原子%〜2.0原子%とすることが好ましく、0.1原子%〜1.5原子%とすることがより好ましい。
[粒子成長工程]
核生成工程終了後、前記核生成後の核生成用水溶液のpH値を調整して、そのpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0の範囲とし、かつ、アンモニウムイオンの濃度を3g/L〜20g/Lの範囲に維持することにより、粒子成長工程における反応水溶液である粒子成長用水溶液を形成する。この際、アルカリ水溶液の供給を調整することのみでpH値を調整することができるが、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得る観点から、一旦、すべての水溶液の供給を停止した上で、pH値を調整することが好ましい。この場合、pH値の調整は、核生成水溶液に、原料となる金属化合物を構成する酸と同種の無機酸、たとえば、原料として硫酸塩を使用する場合には、硫酸を供給することにより行うことが好ましい。
次に、前記反応槽内の雰囲気を前記弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に維持しつつ、この粒子成長用水溶液を撹拌しながら、混合水溶液の供給を再開する。この際、粒子成長用水溶液のpH値は上述した範囲にあるため、新たな核はほとんど生成せず、核(粒子)成長が進行し、所定の粒径を有する複合水酸化物粒子が形成される。ただし、粒子成長工程においても、粒子成長に伴い、粒子成長用水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度が変化するので、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を適時供給し、pH値およびアンモニウムイオン濃度を上記範囲に維持することが必要となる。
なお、このような複合水酸化物粒子の製造方法では、核生成工程および粒子成長工程において、金属イオンは、核または一次粒子となって析出する。このため、晶析反応が進行するにつれて、核生成用水溶液または粒子成長用水溶液中の金属成分に対する液体成分の割合が増加する。この結果、見かけ上、金属イオン濃度が低下し、特に、粒子成長工程においては、複合水酸化物粒子の成長が停滞する可能性がある。したがって、液体成分の増加を抑制するため、核生成工程終了後から粒子成長工程の途中で、粒子成長用水溶液の液体成分の一部を反応槽外に排出することが好ましい。具体的には、混合水溶液、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給および攪拌を一旦停止し、粒子成長用水溶液中の核や複合水酸化物粒子を沈降させて、粒子成長用水溶液の上澄み液を排出することが好ましい。このような操作により、粒子成長用水溶液における金属イオンの相対的な濃度を高めることができるため、粒子成長の停滞を防止し、得られる複合水酸化物粒子の粒度分布を好適な範囲に制御することができるばかりでなく、二次粒子全体としての密度も向上させることができる。
[複合水酸化物粒子の粒径制御]
上述のようにして得られる複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程や核生成工程における晶析反応時間、核生成用水溶液や粒子成長用水溶液のpH値や、混合水溶液の供給量により制御することができる。たとえば、核生成工程におけるpH値を高い値とすることにより、または、核生成工程の時間を長くすることにより、供給する混合水溶液に含まれる金属化合物の量を増やし、核の生成量を増加させることで、得られる複合水酸化物粒子の粒径を小さくすることが可能となる。反対に、核生成工程における核の生成量を抑制することで、得られる複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることが可能となる。
[晶析反応の別実施態様]
上述した実施態様では、核生成工程の終了後、生成した核を含む核生成用水溶液のpH値を調整することで、核生成工程から粒子成長工程への移行を容易かつ迅速に行うことができるという利点がある。
これに対して、図2に示す別実施態様のように、核生成用水溶液とは別に、粒子成長工程に適したpH値およびアンモニウムイオン濃度に調整された成分調整水溶液を用意し、この成分調整用水溶液に、核生成工程後の核生成用水溶液(核含有水溶液)、好ましくは核生成工程後の核生成用水溶液から液体成分の一部を除去したものを添加および混合して、これを粒子成長用水溶液として、粒子成長工程を行ってもよい。
この場合、核生成工程と粒子成長工程の分離をより確実に行うことができるため、各工程における反応水溶液(核生成用水溶液、粒子成長用水溶液)を、最適な状態に制御することができる。特に、粒子成長工程の開始時から粒子成長用水溶液のpH値を最適な範囲に制御することができるため、得られる複合水酸化物粒子の粒度分布をより狭いものとすることができる。
また、上述した実施態様(図1に示す実施態様)では、核生成工程から粒子成長工程に切り替える際に、核生成用水溶液のpH値を調整することが必要であり、この段階から粒子の成長(凝集)が進行することとなる。このため、得られる二次粒子には、微細な一次粒子が凝集した中心部が形成されやすく、板状一次粒子のみからなる二次粒子を形成することが困難となる場合がある。一方、本実施態様では、核生成工程と粒子成長工程を確実に分離することができるため、このような問題が生じることはなく、板状一次粒子のみからなる二次粒子を形成することができる。
(2−b)供給水溶液
[混合水溶液]
本発明においては、混合水溶液中の金属元素の比率が、概ね、得られる複合水酸化物粒子の組成と同じとなる。このため、混合水溶液は、目的とする複合水酸化物粒子の組成に応じて、各金属元素の含有量を適宜調整することが必要となる。たとえば、上述した一般式(A)で表される複合水酸化物粒子を得ようとする場合、混合水溶液中の金属元素の比率を、Ni:Mn:Co:M=x:y:z;t(ただし、x+y+z+t=1、0.05≦x≦0.3、0.1≦y≦0.4、0.6≦z≦0.8、0≦t≦0.1)となるように調整することが好ましい。
混合水溶液を調製するための、ニッケル化合物、コバルト化合物およびマンガン化合物としては特に制限されることはないが、取扱いの容易性から、水溶性の硝酸塩、硫酸塩および塩酸塩などを用いることが好ましく、コストやハロゲンの混入を防止する観点から、硫酸塩を好適に用いることが特に好ましい。
また、複合水酸化物粒子中に添加元素M(Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)を含有させる場合、添加元素Mを供給するための化合物としては、同様に水溶性の化合物が好ましく、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどを好適に用いることができる。なお、添加元素Mを複合水酸化物粒子の内部に均一に分散させるためには、混合水溶液中に添加元素Mを含有する化合物を添加し、添加元素Mを均一に分散させた状態で、ニッケル、コバルトおよびマンガンとともに共沈させればよい。
混合水溶液の濃度は、金属化合物の合計で、好ましくは1.0mol/L〜2.6mol/L、より好ましくは1.5mol/L〜2.2mol/Lとする。混合水溶液の濃度が1.0mol/L未満では、反応槽当たりの晶析物量が少なくなるため、生産性が低下する。一方、混合水溶液の濃度が2.6mol/Lを超えると、常温での飽和濃度を超えるため、各金属化合物の結晶が再析出して、配管などを詰まらせるおそれがある。
上述した金属化合物は、必ずしも混合水溶液として反応槽に供給しなくてもよい。たとえば、混合すると反応して目的とする化合物以外の化合物が生成されてしまう金属化合物を用いて晶析反応を行う場合、個別に金属化合物の水溶液を調製するとともに、全金属化合物水溶液の合計濃度が上記範囲となるようにして、各金属化合物の水溶液を所定の割合で反応槽に供給してもよい。
また、混合水溶液の供給量は、粒子成長工程の終了時点において、粒子成長用水溶液中の生成物の濃度が、好ましくは30g/L〜200g/L、より好ましくは80g/L〜150g/Lとなるようにする。生成物の濃度が30g/L未満では、一次粒子の凝集が不十分になる場合がある。一方、200g/Lを超えると、反応槽内に、核生成用金属塩水溶液または粒子成長用金属塩水溶液が十分に拡散せず、粒子成長に偏りが生じる場合がある。
[アルカリ水溶液]
反応水溶液のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、20質量%〜50質量%とすることが好ましく、20質量%〜30質量%とすることがより好ましい。アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度をこのような範囲に規制することにより、反応系に供給する溶媒量(水量)を抑制しつつ、添加位置で局所的にpH値が高くなることを防止することができるため、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を効率的に得ることができる。
アルカリ水溶液の供給方法は、反応水溶液のpH値が局所的に高くならず、かつ、所定の範囲に維持される限り、特に制限されることはない。たとえば、反応水溶液を十分に撹拌しながら、定量ポンプなどの流量制御が可能なポンプにより供給すればよい。
[アンモニウムイオン供給体を含む水溶液]
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液も、特に制限されることはなく、たとえば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくはフッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
アンモニウムイオン供給体として、アンモニア水を使用する場合には、その濃度を、好ましくは20質量%〜30質量%、より好ましくは22質量%〜28質量%に調整する。アンモニア水の濃度をこのような範囲に規制することにより、揮発などによるアンモニアの損失を最小限に抑制することができるため、生産効率の向上を図ることができる。
なお、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給方法も、アルカリ水溶液と同様に、流量制御が可能なポンプにより供給することができる。
(2−c)pH値
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、液温25℃基準におけるpH値を、核生成工程においては12.0〜14.0の範囲に、粒子成長工程においては10.5〜12.0の範囲に制御することが必要となる。なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は、±0.2以内とすることが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合、核生成量と粒子成長の割合が一定とならず、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得ることが困難となる。
[核生成工程]
核生成工程においては、核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で12.0〜14.0、好ましくは12.3〜13.5の範囲に制御することが必要となる。これにより、核の成長を抑制しつつ、核生成を優先させることができるため、この工程で生成する核を均一なものとすることができる。これに対して、pH値が12.0未満では、核生成とともに核(粒子)の成長が進行し、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。一方、pH値が14.0を超えると、生成する核が微細になりすぎるため、核生成用水溶液がゲル化する問題が生じる。
[粒子成長工程]
粒子成長工程においては、粒子成長用水溶液のpH値を、液温25℃基準で、核生成工程におけるpH値よりも低く、かつ、10.5〜12.0、好ましくは11.0〜12.0の範囲に制御することが必要となる。これにより、新たな核の生成が抑制され、粒子成長を優先させることが可能となり、得られる複合水酸化物粒子を均質かつ粒度分布が狭いものとすることができる。これに対して、pH値が10.5未満では、アンモニウムイオン濃度が上昇し、金属イオンの溶解度が高くなるため、晶析反応の速度が遅くなるばかりでなく、粒子成長用水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、生産性が悪化する。一方、pH値が12.0を超えると、粒子成長工程中の核生成量が増加し、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。
なお、pH値が12.0の場合は、核生成と粒子成長の境界条件であるため、反応水溶液中に存在する核の有無により、核生成工程または粒子成長工程のいずれかの条件とすることができる。すなわち、核生成工程のpH値を12.0より高くして多量に核生成させた後、粒子成長工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、粒子成長が優先して起こり、粒径分布が狭い複合水酸化物粒子を得ることができる。一方、核生成工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に成長する核が存在しないため、核生成が優先して起こり、粒子成長工程のpH値を12.0より小さくすることで、生成した核が成長して良好な複合水酸化物粒子を得ることができる。いずれの場合においても、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値より低い値で制御すればよく、核生成と粒子成長を明確に分離するためには、粒子成長工程のpH値を核生成工程のpH値よりも0.5以上低くすることが好ましく、1.0以上低くすることがより好ましい。
(2−d)アンモニウムイオン濃度
反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は、核生成工程および粒子成長工程を通じて、3g/L〜20g/L、好ましくは5g/L〜15g/Lの範囲に維持することが必要となる。反応水溶液中においてアンモニウムイオンは錯化剤として機能するため、アンモニウムイオン濃度が3g/L未満では、金属イオンの溶解度を一定に維持することができないばかりか、反応水溶液がゲル化しやすくなり、一次粒子の性状が上述のように制御され、かつ、二次粒子の形状や粒径が整った複合水酸化物粒子を得ることが困難となる。一方、アンモニウムイオン濃度が20g/Lを超えると、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎるため、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、組成ずれなどの原因となる。
なお、晶析反応中にアンモニウムイオン濃度が変動すると、金属イオンの溶解度も変動し、均一な複合水酸化物粒子が形成されなくなる。このため、核生成工程と粒子成長工程を通じて、アンモニウムイオン濃度の変動幅を一定の範囲に制御することが好ましく、具体的には、変動幅を±5g/L以内に制御することが好ましい。
(2−e)反応雰囲気
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、核生成工程および粒子成長工程を通じて、反応雰囲気を酸素濃度が1容量%以下、好ましくは0.5容量%以下、より好ましくは0.3容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に制御することが必要となる。このような反応雰囲気では、前記核生成水溶液および前記粒子成長用水溶液のpH値とアンモニウムイオン濃度をそれぞれの適正範囲に維持すると、両工程の全体として、一次粒子は適度な厚さおよび長径を有する板状一次粒子として析出するため、上述したその全体が複数の板状一次粒子が凝集して形成され、かつ、多孔質構造を有する複合水酸化物の二次粒子を得ることが可能となる。これに対して、反応雰囲気中の酸素濃度が1容量%を超えると、一次粒子は、板状一次粒子よりも小さな微細一次粒子として析出するようになるため、上述した構造を有する複合水酸化物粒子を得ることができない。
なお、反応雰囲気は、反応槽内に、窒素やアルゴンなどの不活性ガスを導入することにより、さらには、反応水溶液をこれらの不活性ガスでバブリングすることにより形成することができる。
(2−f)反応温度
反応水溶液の温度(反応温度)は、核生成工程および粒子成長工程を通じて、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃〜60℃の範囲に制御することが必要となる。反応温度が30℃未満の場合、反応水溶液の溶解度が低くなることに起因して核生成が起こりやすくなり、得られる複合水酸化物粒子の平均粒径や粒度分布の制御が困難となる。なお、反応温度の上限は、特に制限されることはないが、60℃を超えると、アンモニアの揮発が促進され、反応水溶液中のアンモニウムイオンを一定範囲に制御するために供給するアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の量が増加し、生産コストが増加してしまう。
(2−g)被覆工程
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、上述したように、混合水溶液中に添加元素Mを含有する化合物を添加することで、粒子内部に添加元素Mが均一に分散した複合水酸化物粒子を得ることができる。しかしながら、より少ない添加量で、添加元素Mの添加による効果を得ようとする場合、粒子成長工程後に、得られた複合水酸化物粒子の表面を、添加元素Mを含む化合物で被覆する被覆工程を行うことが好ましい。
複合水酸化物粒子を、添加元素Mを含む化合物で被覆する方法は、特に制限されることはない。たとえば、複合水酸化物粒子をスラリー化し、そのpH値を所定の範囲に制御した後、添加元素Mを含む化合物を溶解した水溶液(被覆用水溶液)を添加し、複合水酸化物粒子の表面に添加元素Mを含む化合物を析出させることで、添加元素Mを含む化合物によって均一に被覆された複合水酸化物粒子を得ることができる。
この場合、被覆用水溶液に代えて、添加元素Mのアルコキシド溶液を、スラリー化した複合水酸化物粒子に添加してもよい。また、複合水酸化物粒子をスラリー化せずに、添加元素Mを含む化合物を溶解した水溶液またはスラリーを吹き付けて乾燥させることにより被覆してもよい。さらに、複合水酸化物粒子と添加元素Mを含む化合物が懸濁したスラリーを噴霧乾燥させる方法により、または、複合水酸化物粒子と添加元素Mを含む化合物を固相法で混合するなどの方法により被覆することもできる。
ただし、いずれの場合も、被覆後の複合水酸化物粒子の組成が、目的とする複合水酸化物粒子の組成と一致するように、混合水溶液や被覆用水溶液などの組成を適宜調整することが必要となる。なお、被覆工程は、複合水酸化物粒子を熱処理した後の熱処理粒子に対して行ってもよい。
(2−h)製造装置
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、晶析反応が完了するまで生成物を回収しない方式の装置、たとえば、バッチ反応槽を用いることが好ましい。このような装置であれば、オーバーフロー方式によって生成物を回収する連続晶析装置のように、成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されることがないため、粒度分布が狭い複合水酸化物粒子を容易に得ることができる。
また、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、晶析反応中の反応雰囲気を制御することが必要であるため、密閉式の装置などの雰囲気制御可能な装置を使用することが好ましい。このような装置であれば、核生成工程や粒子成長工程における反応雰囲気を適切に制御することができるため、上述した粒子構造を有し、かつ、粒度分布が狭い複合水酸化物粒子を容易に得ることができる。
2.非水系電解質二次電池用正極活物質
(1)非水系電解質二次電池用正極活物質
本発明の正極活物質は、一般式(B):bLi2MnO3・(1−b)Li1+uNixCoyMnzt2(0.2≦b≦0.8、−0.05≦u≦0.2、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.4、0.2≦y≦0.8、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子(以下、「リチウム過剰複合酸化物粒子」という)から構成される。この正極活物質は、前記本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法によって得られ、その全体が複数の板状一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、板状一次粒子は、厚さが1.0μm以下、該厚さに対する長径の比率の平均値が1.5〜7.0であることを特徴とする。また、二次粒子の平均粒径が4.0μm〜7.0μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.6以下であることを特徴とする。
(1−a)組成
本発明の正極活物質の組成は、一般式(B)によって表されるように調整される。このような正極活物質では、リチウム以外の金属元素(ニッケル、コバルト、マンガンおよび添加元素M)の原子数の総和(Me)に対する、リチウムの原子数の総和(Li)の比率(Li/Me)が、二次電池の充放電容量に与える影響が大きく、組成を一般式(B)によって表されるように調整することで、高容量化に寄与するLi2MnO3が合成される割合を増加させることができる。
このような高容量化が達成できる理由は、以下のように考えられる。一般式(B)によって表される組成を有する正極活物質は、六方晶系の層状構造を有し、通常はリチウムの挿入反応および脱離反応が起こりにくいLi2MnO3の周囲に、リチウムの挿入反応および脱離反応が起こりやすいLi1+uNixCoyMnzt2が配置された2相構造を採る。この結果、Li2MnO3のリチウムの挿入反応および脱離反応が促進されて、充放電容量が増加することとなる。
以上の点を考慮すると、本発明の正極活物質におけるLi2MnO3の含有量を示すbの値は、0.2〜0.8、好ましくは0.3〜0.7、より好ましくは0.4〜0.6とすることが必要となる。bの値が0.2未満では、この正極活物質を用いた二次電池を十分に高容量化することができない。一方、bの値が0.8を超えると、Li2MnO3の周囲に存在するLi1+uNixCoyMnzt2の割合が少なくなり、リチウムの挿入および脱離反応の促進効果が低下するため、二次電池を高容量化することができなくなる。
この正極活物質において、Li1+uNixCoyMnzt2のリチウムの過剰量を示すuの値は、−0.05〜0.2とすることが必要となる。uの値が−0.05未満では、この正極活物質を用いた二次電池の正極抵抗が大きくなり、出力特性が低下する。一方、uの値が0.2を超えると、それに伴ってLi2MnO3の割合が増加し、出力特性および初期放電容量が低下する。なお、二次電池の出力特性をより向上させる観点から、uの値は、0.05以上とすることが好ましく、0.15以上とすることがより好ましい。
また、Li1+uNixCoyMnzt2におけるニッケル、コバルト、マンガンおよび添加元素Mの含有量は、以下のように調整することが必要となる。
ニッケルは、二次電池の高電位化および高容量化に寄与する元素であり、その含有量を示すxの値を、0.1〜0.4、好ましくは0.2〜0.4、より好ましくは0.3〜0.4の範囲に調整することが必要となる。xの値が0.1未満では、スピネル相が生成し、充放電容量が低下する。一方、xの値が0.4を超えると、サイクル特性が低下する。
コバルトは、充放電サイクル特性の向上に寄与する元素であり、その含有量を示すyの値を、0.2〜0.8、好ましくは0.2〜0.6、より好ましくは0.3〜0.5の範囲に調整することが必要となる。yの値が0.2未満では、Li1+uNixCoyMnzt2の割合が減少するため、充放電容量が低下する。一方、yの値が0.8を超えると、上述した2相構造を保てなくなり、充放電容量が低下する。
マンガンは、熱安定性の向上に寄与する元素であり、その含有量を示すzの値を、0.1〜0.4、好ましくは0.15〜0.35、より好ましくは0.20〜0.35の範囲に調整することが必要となる。zの値が0.1未満では、熱安定性が確保できなくなる。一方、zの値が0.4を超えると、マンガンの溶出量が増加し、サイクル特性が低下する。
また、正極活物質は、これを用いた二次電池の耐久性や出力特性などをさらに改善するため、上述した金属元素に加えて、添加元素Mを含有してもよい。このような添加元素Mとしては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選択される1種以上を用いることができる。
添加元素Mの含有量を示すtの値は、0.1以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.03以下の範囲に調整することが必要となる。tの値が0.1を超えると、Redox反応に貢献する金属元素が減少するため、充放電容量が低下してしまう。
(1−b)粒子構造
[二次粒子]
本発明の正極活物質は、図4に示すように、その全体が複数の板状一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子からなる。複数の板状一次粒子は、ランダムな方向に凝集していることが好ましく、これにより、二次粒子内に均一に空隙が形成された均質な構造となる。
このような正極活物質は、その表面から中心部に通じる多数の空隙を有する多孔質構造を備える。すなわち、本発明の正極活物質は、リチウムが液相拡散可能な経路を数多く備えており、比表面積を大きくせずとも、リチウムの挿入および脱離に伴う反応抵抗を低減することができ、サイクル特性と出力特性を同時に改善することが可能となる。
[板状一次粒子]
正極活物質を構成する板状一次粒子は、厚さGに対する長径Lの比率の平均値(平均比率)L/Gが1.5〜7.0、好ましくは2.0〜6.0、より好ましくは2.0〜5.0の範囲に調整される。平均比率L/Gが1.5未満では、一次粒子が板状ではなくなって、塊状一次粒子の凝集により、正極活物質の比表面積が過度に大きくなり、サイクル特性が低下するばかりでなく、一次粒子間の空隙が多くなり、正極活物質の充填性が低下するおそれがある。一方、平均比率L/Gが7.0を超えると、板状一次粒子の立体障害が大きくなり、正極活物質の密度が低下し、充放電容量が減少するばかりでなく、二次粒子同士の接点が少なくなり、正極抵抗が増加するおそれがある。加えて、二次粒子の強度が低下し、電極作成時のプレス圧力により破壊されやすくなってしまう。
また、板状一次粒子の厚さGは、1.0μm以下、好ましくは0.80μm以下、より好ましくは、0.20μm〜0.60μmに調整される。厚さGが1.0μmを超えると、リチウムを挿入および脱離する距離が長くなるため、正極抵抗が増加し、出力特性が低下してしまう。
これに対して、板状一次粒子の長径Lは、0.50μm〜4.0μmであることが好ましく、1.0μm〜3.0μmであることがより好ましい。長径Lをこのような範囲に制御することで、サイクル特性に影響を与えない範囲で比表面積を適正な範囲に維持して、反応抵抗をより低減することが可能となる。
なお、正極活物質を構成する板状一次粒子の厚さG、長径Lおよび平均比率L/Gは、複合水酸化物粒子を構成する板状一次粒子の厚さG0、長径L0および平均比率L0/G0と同様の方法で求めることができる。
(1−c)平均粒径
本発明の正極活物質は、平均粒径が4.0μm〜7.0μm、好ましくは5.0μm〜7.0μm、より好ましくは5.0μm〜6.0μmとなるように調整される。正極活物質の平均粒径がこのような範囲にあれば、この正極活物質を用いた二次電池の単位容積当たりの充放電容量を増加させることができるばかりでなく、安全性や出力特性も改善することができる。これに対して、平均粒径が4.0μm未満では、正極活物質の充填性が低下し、単位容積当たりの充放電容量を増加させることができない。一方、平均粒径が7.0μmを超えると、正極活物質の比表面積が大幅に低下し、二次電池を構成した場合に、電解液との反応面積が減少するため、出力特性を改善することができない。
なお、正極活物質の平均粒径とは、上述した複合水酸化物粒子と同様に、体積基準平均粒径(MV)を意味し、レーザ光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
(1−d)粒度分布
本発明の正極活物質は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が、0.6以下、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.52以下であり、きわめて粒度分布が狭いリチウム複合酸化物粒子によって構成される。このような正極活物質は、微細粒子や粗大粒子の割合が少なく、これを用いた二次電池は、安全性、サイクル特性および出力特性が優れたものとなる。
これに対して、〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.6を超えると、正極活物質中の微細粒子や粗大粒子の割合が増加する。たとえば、微細粒子の割合が多い正極活物質を用いた二次電池は、微細粒子の局所的な反応に起因して、発熱し、安全性が低下するとともに、微細粒子が選択的に劣化するため、サイクル特性が劣ったものとなる。また、粗大粒子の割合が多い正極活物質を用いた二次電池は、電解液と正極活物質の反応面積を十分に確保することができず、出力特性が劣ったものとなる。一方、工業規模の生産を前提とした場合、正極活物質として、〔(d90−d10)/平均粒径〕が過度に小さいものを用いることは現実的ではない。したがって、コストや生産性を考慮すると、〔(d90−d10)/平均粒径〕の下限値は、0.25程度とすることが好ましい。
なお、粒度分布の広がりを示す指標〔(d90−d10)/平均粒径〕におけるd10およびd90の意味、ならびに、これらの求め方は、上述した複合水酸化物粒子と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(1−e)比表面積
本発明の正極活物質は、比表面積が、1.0m2/g〜3.0m2/gであることが好ましく、1.3m2/g〜2.8m2/gであることがより好ましく、1.5m2/g〜2.5m2/gであることがさらに好ましい。比表面積をこのような範囲に制御することにより、この正極活物質を用いた二次電池の出力特性を十分に確保しつつ、サイクル特性を改善することが可能となる。これに対して、正極活物質の比表面積が1.0m2/g未満では、二次電池を構成した場合に、電解液との反応面積を確保することができず、出力特性が大幅に低下するおそれがある。一方、正極活物質の比表面積が3.0m2/gを超えると、電解液との反応性が高くなりすぎるため、サイクル特性を十分に改善することができないおそれがある。
なお、正極活物質の比表面積は、たとえば、窒素ガス吸着によるBET法により測定することができる。
(1−f)タップ密度
本発明の正極活物質は、充填性の指標であるタップ密度が、1.5g/cm3以上であることが好ましく、1.6g/cm3以上であることがより好ましく、1.8g/cm3以上であることがさらに好ましい。タップ密度が1.5g/cm3未満では、充填性が低く、二次電池全体の容量特性を十分に改善することができない場合がある。一方、タップ密度の上限値は、特に制限されるものではないが、通常の製造条件での上限は、2.4g/cm3程度となる。
なお、タップ密度とは、JIS Z−2504に基づき、容器に採取した試料粉末を、100回タッピングした後のかさ密度を意味し、振とう比重測定器を用いて測定することができる。
(2)非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法
本発明の正極活物質の製造方法は、本発明の複合水酸化物粒子を前駆体として用い、一般式(B)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウム複合酸化物粒子からなり、上述した粒子構造、平均粒径、粒度分布を備える正極活物質を合成することができる限り、特に制限されることはない。しかしながら、工業規模の生産を前提とした場合、以下の方法を採用することで、このような正極活物質を効率よく合成することができる。すなわち、本発明の正極活物質の製造方法は、本発明の複合水酸化物粒子とリチウム化合物とを混合し、リチウム混合物を得る混合工程と、このリチウム混合物を、酸化性雰囲気中、特定の温度で焼成する焼成工程とを備える。なお、必要に応じて、これらの工程に、熱処理工程、仮焼工程および解砕工程などの工程を追加してもよい。以下、工程ごとに、本発明の正極活物質の製造方法を説明する。
(2−a)熱処理工程
本発明の正極活物質の製造方法においては、任意的に、混合工程の前に熱処理工程を設けて、複合水酸化物粒子を熱処理粒子としてからリチウム化合物と混合してもよい。ここで、熱処理粒子には、熱処理工程において余剰水分を除去された複合水酸化物粒子のみならず、熱処理工程により、酸化物に転換された遷移金属複合酸化物粒子(以下、「複合酸化物粒子」という)、または、これらの混合物も含まれる。
熱処理工程は、複合水酸化物粒子を所定の温度まで加熱して熱処理することにより、複合水酸化物粒子に含まれる余剰水分を除去する工程である。これにより、焼成工程後まで残留する水分を一定量まで減少させることができるため、得られる正極活物質の組成のばらつきを抑制することが可能となる。
熱処理工程における加熱温度は105℃〜750℃とすることが好ましく、500℃〜700℃とすることがより好ましい。加熱温度が105℃未満では、複合水酸化物粒子中の余剰水分を除去できず、ばらつきを抑制することができない場合がある。一方、加熱温度が750℃を超えると、熱処理により粒子が焼結してしまい、粒度分布が悪化することとなる。
このような熱処理工程では、正極活物質中の各金属成分の原子数や、Liの原子数の割合にばらつきが生じない程度に水分が除去できればよいので、必ずしもすべての複合水酸化物粒子を複合酸化物粒子に転換する必要はない。しかしながら、各金属成分の原子数やLiの原子数の割合のばらつきをより少ないものとするためには、500℃以上に加熱して、すべての複合水酸化物粒子を、複合酸化物粒子に転換することが好ましい。なお、熱処理条件に応じて、熱処理粒子に含まれる金属成分を分析により予め求めておき、これに基づき、リチウム化合物との混合比を決定することで、上述したばらつきをより抑制することができる。
熱処理を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、非還元性雰囲気であればよいが、簡易的に行える空気気流中で行うことが好ましい。
また、熱処理時間も、特に制限されないが、複合水酸化物粒子中の余剰水分を十分に除去する観点から、1時間以上とすることが好ましく、5時間〜15時間とすることがより好ましい。
このような熱処理工程は、複合水酸化物粒子を上記条件で熱処理できるものであればよく、ガス発生がない電気炉などを好適に用いることができる。
(2−b)混合工程
混合工程は、上述した複合水酸化物粒子または熱処理粒子に、リチウム化合物などのリチウムを含有する物質を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
混合工程では、リチウム混合物中のリチウム以外の金属原子、具体的には、ニッケル、コバルト、マンガンおよび添加元素Mとの原子数の総和(Me)に対する、リチウムの原子数(Li)の比率(Li/Me)が、好ましくは1.16〜1.84、より好ましくは1.40〜1.60となるように、複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウムを含有する物質を混合することが必要となる。すなわち、焼成工程の前後ではLi/Meはほとんど変化しないので、混合工程におけるLi/Meが、概ね、目的とする正極活物質のLi/Meとなるように、複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウムを含有する物質を混合することが必要となる。
このように、複合水酸化物粒子または熱処理粒子に含まれるニッケル、コバルト、マンガンおよび添加元素Mに対して、過剰量のリチウムを混合し、所定条件で焼成することにより、六方晶系の層状構造を備え、Li2MnO3の周囲に、Li1+uNixCoyMnzt2が配置された正極活物質を合成することが可能となる。
混合工程で使用するリチウムを含有する物質は、特に制限されることはないが、入手の容易性から、水酸化リチウム、硝酸リチウム、炭酸リチウムまたはこれらの混合物を用いることが好ましい。特に、取り扱いの容易さや品質の安定性を考慮すると、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムを用いることが好ましい。
また、複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウムを含有する物質は、微粉が生じない程度に十分に混合することが好ましい。混合が不十分であると、個々の粒子間でLi/Meにばらつきが生じ、十分な電池特性を得ることができない場合がある。なお、混合には、一般的な混合機を使用することができる。たとえば、シェーカーミキサ、レーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができる。
(2−c)仮焼工程
リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合には、混合工程後、焼成工程の前に、リチウム混合物を、後述する焼成温度よりも低温、かつ、350℃〜800℃、好ましくは450℃〜780℃で、すなわち、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムと複合水酸化物粒子または熱処理粒子との反応温度で仮焼する、仮焼工程を行ってもよい。これにより、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中に、リチウムを十分に拡散させることができ、より均一なリチウム複合酸化物粒子を得ることができる。
上記温度での保持時間は、1時間〜10時間とすることが好ましく、3時間〜6時間とすることが好ましい。また、仮焼工程における雰囲気は、後述する焼成工程と同様に、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましい。
(2−d)焼成工程
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を所定の条件で焼成し、複合酸化物粒子または熱処理粒子中にリチウムを拡散させて、リチウム過剰複合酸化物粒子(正極活物質)を合成する工程である。
複合水酸化物粒子または熱処理粒子としては、上述したように、その表面が添加元素Mで被覆されたものを用いることもできる。この場合、リチウム混合物を低温かつ短時間で焼成することにより、添加元素Mが、粒子表面およびその近傍に高濃度で分布する正極活物質を得ることができる。なお、添加元素Mで被覆された複合水酸化物粒子または熱処理粒子を用いた場合であっても、リチウム混合物を高温かつ長時間で焼成することにより、添加元素Mが、粒子内部に均一に分布する正極活物質を得ることができる。したがって、複合水酸化物粒子または熱処理粒子における添加元素Mの含有態様を考慮の上で焼成条件を調整することにより、得られる正極活物質における添加元素Mの濃度分布を制御することが可能となる。
[焼成温度]
リチウム混合物の焼成温度は、800℃〜1050℃とすることが好ましく、900℃〜1000℃とすることがより好ましい。焼成温度が800℃未満では、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物粒子または熱処理粒子が残存したり、得られるリチウム複合酸化物粒子の結晶性が不十分なものとなったりする。一方、焼成温度が1050℃を超えると、リチウム複合酸化物粒子同士が激しく焼結し、異常粒成長が引き起こされ、不定形な粗大粒子の割合が増加するおそれがある。
なお、複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウム化合物との反応を均一に進行させる観点から、少なくとも500℃から焼成温度までの昇温速度を3℃/分〜10℃/分とすることが好ましく、5℃/分〜8℃/分とすることがより好ましい。また、リチウム化合物の融点付近の温度で、好ましくは1時間〜5時間、より好ましくは3時間〜5時間保持することで、複合水酸化物粒子または熱処理粒子とリチウム化合物との反応を一層均一に進行させることができる。
[焼成時間]
焼成時間のうち、上述した焼成時間での保持時間は、少なくとも2時間とすることが好ましく、4時間〜24時間とすることがより好ましい。焼成温度での保持時間が2時間未満では、正極活物質の合成が十分に進行しないおそれがある。
なお、焼成温度での保持時間経過後、焼成温度から少なくとも200℃までの冷却速度を2℃/分〜10℃/分とすることが好ましく、5℃/分〜10℃/分とすることがより好ましい。これにより、生産性を確保しつつ、匣鉢などの設備が、急冷により破損することを防止することができる。
[焼成雰囲気]
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気とすることがより好ましく、上記酸素濃度の酸素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが特に好ましい。すなわち、焼成は、大気ないしは酸素気流中で行うことが好ましく、電池特性を考慮すると、酸素気流中で行うことがより好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、正極活物質の結晶性が不十分なものとなるおそれがある。
(2−e)解砕工程
焼成工程によって得られたリチウム複合酸化物粒子は、凝集または軽度の焼結が生じている場合がある。このような場合、リチウム複合酸化物粒子の凝集体または焼結体を解砕することが好ましい。これによって、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作を意味する。
解砕の方法としては、公知の手段を用いることができ、たとえば、ピンミルやハンマーミルなどを使用することができる。この際、二次粒子を破壊しないように解砕力を適切な範囲に調整することが好ましい。
3.非水系電解質二次電池
本発明の非水系電解質二次電池は、正極、負極、セパレータ、非水系電解液などの、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素を備える。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基づいて、種々の変更、改良を施した形態に適用することも可能である。
(1)構成部材
(1−a)正極
本発明により得られた非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにして非水系電解質二次電池の正極を作製する。
まず、本発明により得られた粉末状の正極活物質に、導電材および結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの溶剤を添加し、これらを混練して正極合材ペーストを作製する。その際、正極合材ペースト中のそれぞれの混合比も、非水系電解質二次電池の性能を決定する重要な要素となる。たとえば、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60質量部〜95質量部とし、導電材の含有量を1質量部〜20質量部とし、結着剤の含有量を1質量部〜20質量部とすることができる。
得られた正極合材ペーストを、たとえば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じて、電極密度を高めるべく、ロールプレスなどにより加圧してもよい。このようにして、シート状の正極を作製することができる。この正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断などをして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、上述した例示のものに限られることはなく、他の方法によってもよい。
導電材は、電極に適当な導電性を与えるために添加されるものである。導電材としては、たとえば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料を用いることができる。
結着剤は、正極活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。
このほか、必要に応じて、正極活物質、導電材および活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加することができる。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することもできる。
(1−b)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金など、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、たとえば、金属リチウムやリチウム合金などのリチウムを含有する物質、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体ならびにコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
(1−c)セパレータ
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解質を保持する機能を有する。このようなセパレータとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に制限されることはない。
(1−d)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートおよびトリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートおよびジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランおよびジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、およびこれらの複合塩などを用いることができる。
さらに、非水系電解液は、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
(2)非水系電解質二次電池
以上の正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層することにより電極体とし、これを非水系電解液に含浸し、正極集電体と外部に通じる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通じる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続した後、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
(3)非水系電解質二次電池の特性
本発明の非水系電解質二次電池は、上述したように、本発明の正極活物質を正極材料として用いているため、高い初期放電容量および低い正極抵抗が得られ、高容量で高出力となる。しかも、従来のリチウムニッケル系複合酸化物粒子からなる正極活物質との比較においても、熱安定性が高く、安全性においても優れているといえる。
たとえば、本発明の正極活物質を用いて、図5に示すような2032型コイン電池を構成した場合、250mAh/g以上、好ましくは265mAh/g以上の初期放電容量と、50Ω以下、好ましくは45Ω以下の正極抵抗と、75%以上、好ましくは80%以上のサイクル特使を同時に達成することができる。
(4)用途
本発明の非水系電解質二次電池は、上述のように、高容量かつ高出力であり、かつ、安全性にも優れるため、小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。また、このような本発明の非水系電解質二次電池は、小型化が可能であり、かつ、高価な保護回路を簡略化することもできるため、搭載スペースに制約を受ける輸送用機器の電源としても好適に用いることができる。
以下、実施例および比較例を用いて、本発明を詳細に説明する。なお、すべての実施例および比較例を通じて、複合水酸化物粒子、正極活物質および二次電池の作製には、特段の断りがない限り、和光純薬工業株式会社製試薬特級の各試料を使用した。
(実施例1)
[複合水酸化物粒子の作製]
a)核生成工程
はじめに、反応槽(34L)内に、水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この際、反応槽内に5L/分で窒素ガスを流通させ、酸素濃度を0.3容量%以下に調整した。この状態で、反応槽内の水に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液と、25質量%のアンモニア水を適量加えて、液温25基準におけるpH値が12.8、アンモニウムイオン濃度が10g/Lである反応前水溶液を調製した。
同時に、硫酸ニッケル、硫酸コバルトおよび硫酸マンガンを、各金属元素のモル比が、Ni:Co:Mn=0.167:0.167:0.666となるように水に溶解し、1.8mоl/Lの混合水溶液を調製した。
次に、反応前水溶液に混合水溶液を88mL/分の割合で供給して、核生成用水溶液を形成し、晶析反応を2分30秒間行った。この際、pHコントローラを用いて水酸化ナトリウム水溶液を適時供給し、核生成用水溶液のpH値が設定値±0.2の範囲となるように制御した。また、核生成用水溶液中のアンモニウムイオン濃度が10g/Lに維持されるように、アンモニア水を適時供給した。
b)粒子成長工程
核生成工程終了後、反応槽内の酸素濃度を0.3容量%以下に維持したまま、核生成用水溶液のpH値が11.6になるまで、水酸化ナトリウム水溶液の供給のみを停止した。pH値が11.6に達したことを確認した後、混合水溶液およびアンモニア水の供給も停止し、粒子成長用水溶液を形成した。
この状態で、混合水溶液の供給を再開し、核生成工程で生成した核を、粒子が形成されるまで成長させた。この際、pHコントローラを用いて水酸化ナトリウム水溶液を適時供給し、粒子成長用水溶液のpH値が設定値±0.2の範囲となるように制御した。また、粒子成長用水溶液中のアンモニウムイオン濃度が10g/Lに維持されるように、アンモニア水を適時供給した。
混合水溶液の供給を再開してから4時間経過後、すべての水溶液の供給を停止し、粒子成長工程を終了した。その後、反応槽内のスラリーを水洗、ろ過および乾燥し、粉末状の複合水酸化物粒子を得た。なお、粒子成長工程の終了時点において、粒子成長用水溶液中の生成物の濃度は、約100g/Lであった。
[複合水酸化物の評価]
得られた複合水酸化物粒子の一部を無機酸で溶解し、ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所製、ICPE−9000)により分析したところ、その組成は、一般式:Ni0.169Co0.164Mn0.667(OH)2+a(0≦a≦0.5)で表されることが確認された。
続いて、この複合水酸化物粒子の平均粒径、d10およびd90をレーザ回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した。この結果、この複合水酸化物粒子は、平均粒径が5.3μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.46であることが確認された。
次に、この複合水酸化物粒子を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工により断面観察が可能な状態とした上で、その粒子構造をSEM(株式会社日立ハイテクノロジース製、S−4700)を用いて観察(倍率:1000倍)した。この結果、この複合水酸化物粒子は、その全体が複数の板状一次粒子がランダム方向に凝集して形成された均質な略球状の二次粒子からなること、および、二次粒子の粒径がほぼ均一に揃っていることが確認された。また、この二次粒子は、表面から中心部に通じる多数の空隙を有する多孔質構造を備えたものであることが確認された。以上の結果を表2および図3に示す。
[正極活物質の作製]
上述のようにして得られた複合水酸化物粒子を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、120℃で12時間熱処理した後(熱処理工程)、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製TURBULA TypeT2C)を用いて、Li/Meが1.50となるように炭酸リチウムと混合し、リチウム混合物を得た(混合工程)。
このリチウム混合物を、大気(酸素濃度:21容量%)中、500℃で4時間仮焼した。続いて、5℃/分で950℃まで加熱し、この温度で10時間焼成した後、10℃/分で室温まで冷却した(焼成工程)。このようにして得られたリチウム過剰複合酸化物粒子は、軽度の焼結が生じていたため、ハンマーミルを用いて解砕し、正極活物質を得た(解砕工程)。
[正極活物質の評価]
ICP発光分光分析装置を用いた分析により、このリチウム複合酸化物粒子からなる正極活物質は、一般式:Li1.50Ni0.167Co0.167Mn0.6662.5(0.5Li2MnO3・0.5Li1.00Ni0.334Co0.334Mn0.3322)で表されるものであることが確認された。
続いて、この正極活物質の平均粒径、d10およびd90をレーザ回折散乱式粒度分布測定装置により測定した。この結果、この正極活物質は、平均粒径が5.8μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.46であることが確認された。
次に、この正極活物質を樹脂に埋め込み、クロスセクションポリシャ加工により断面観察が可能な状態とした上で、その粒子構造SEMを用いて観察(倍率:1000倍)した。この結果、この正極活物質は、複数の板状一次粒子がランダム方向に凝集して形成された均質な略球状の二次粒子からなり、二次粒子の粒径がほぼ均一に揃っていることが確認された。また、この二次粒子は、表面から中心部に通じる多数の空隙を有する多孔質構造を備えたものであること、および、板状一次粒子の厚さGが0.2μm〜0.7μmであり、平均比率L/Gが4.6であることが確認された。
さらに、この正極活物質の比表面積を流動方式ガス吸着法比表面積測定装置(ユアサアイオニクス社製、マルチソーブ)により、タップ密度をタッピングマシン(株式会社蔵持科学器械製作所、KRS−406)により測定した。この結果、比表面積は1.5m2/gであり、タップ密度は1.8g/cm3であることが確認された。以上の結果を表3および図4に示す。
[2032型コイン電池の作製]
この正極活物質を用いて、図5に示すような2032型コイン電池1を作製した。この2032型コイン電池1は、ケース2と、ケース2内に収容された電極3とから構成される。
ケース2は、中空かつ一端が開口された正極缶2aと、この正極缶2aの開口部に配置される負極缶2bとを有しており、負極缶2bを正極缶2aの開口部に配置すると、負極缶2bと正極缶2aとの間に電極3を収容する空間が形成されるように構成されている。
電極3は、正極3a、セパレータ3cおよび負極3bとからなり、この順で並ぶように積層されており、正極3aが正極缶2aの内面に接触し、負極3bが負極缶2bの内面に接触するようにケース2に収容されている。
なお、ケース2は、ガスケット2cを備えており、このガスケット2cによって、正極缶2aと負極缶2bとの間が電気的に絶縁状態を維持するように固定されている。また、ガスケット2cは、正極缶2aと負極缶2bとの隙間を密封して、ケース2内と外部との間を気密かつ液密に遮断する機能も有している。
この2032型コイン電池1を、以下のようにして作製した。はじめに、上述の正極活物質52.5mg、アセチレンブラック15mg、およびポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgを混合し、100MPaの圧力で直径11mm、厚さ100μmにプレス成形して、正極3aを作製した。作製した正極3aを、真空乾燥機中、120℃で12時間乾燥した。この正極3aと、負極3b、セパレータ3cおよび電解液とを用いて、コイン型電池1を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。
なお、負極3bには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれた平均粒径20μm程度の黒鉛粉末と、ポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用いた。また、セパレータ3cには、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を用いた。電解液には、1MのLiClO4を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
[電池評価]
得られた2032型コイン電池1について、以下のa)〜c)について評価を行った。
a)初期放電容量
2032型コイン電池1を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2として、カットオフ電圧が4.8Vとなるまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧が2.5Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行い、初期放電容量を求めた。この際、充放電容量の測定には、マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製、R6741A)を用いた。
b)サイクル特性
正極に対する電流密度を2mA/cm2として、4.8Vまで充電して2.0Vまで放電を行うサイクルを200回繰り返した後の放電容量と初期放電容量の比を計算して容量維持率(200サイクル容量維持率)を求めた。
c)正極抵抗
充電電位4.1Vで充電した2032型コイン電池1を用いて、交流インピーダンス法により抵抗値を測定し、図6に示すナイキストプロットを得た。なお、測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製、1255B)を使用した。このナイキストプロットは、溶液抵抗、負極抵抗とその容量、および、正極抵抗とその容量を示す特性曲線の和として表れているため、等価回路を用いてフィッティング計算し、正極抵抗の値を算出した。
以上の評価の結果、本実施例の2032型コイン電池1は、初期放電容量が261mAh/g、正極抵抗が33Ω、200サイクル容量維持率が80%であることが確認された。以上の結果を表4に示す。
(実施例2〜6)
各工程における条件を表1に示すように調整したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を作製し、その評価を行った。これらの結果を表2〜4に示す。
(比較例1)
上部にオーバーフロー用配管を備えた連続晶析用の反応槽を用いて、窒素雰囲気中、液温25℃におけるpH値を11.0、アンモニウムイオン濃度を10g/Lに調整した反応水溶液に、実施例1と同様にして調製した混合水溶液、アンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液を一定流量で供給する、連続晶析法により晶析反応を行った。反応槽内の平均滞留時間を10時間として、晶析反応が平衡状態になったことを確認してからスラリーを回収した。このスラリーを水洗、ろ過および乾燥して、粉末状の複合水酸化物粒子を得た。この複合水酸化物粒子に対して、実施例1と同様の評価を行った。
続いて、この複合水酸化物粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、正極活物質および2032型コイン電池を作製し、その評価を行った。これらの結果を表2〜4に示す。
(比較例2および3)
各工程における条件を表1に示すように調整したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質および2032型コイン電池を作製し、その評価を行った。これらの結果を表2〜4に示す。
(比較例4)
核生成工程において、反応槽内の酸素濃度を2.5容量%としたこと以外は実施例と同様にして複合水酸化物粒子を得た。この複合水酸化物粒子に対して、実施例1と同様の評価を行った。
この複合水酸化物粒子をビーズミルで微粉砕し、水に溶解してスラリー化した後、マイクロミストドライヤ(藤崎電機株式会社製、MDL−050M)により噴霧乾燥した。このようにして得られた造粒粉末を前駆体としたこと以外は実施例1と同様にして、正極活物質および2032型コイン電池を作製し、その評価を行った。これらの結果を表2〜4に示す。
[総合評価]
表1〜4より、本発明の製造方法に従って作製された実施例1〜6の正極活物質は、一次粒子の形状および平均比率L/G、ならびに、二次粒子の形状、平均粒径、〔(d90−d10)/平均粒径〕のいずれもが所定の範囲にあり、これを用いた二次電池では、初期放電容量や正極抵抗を損ねることなく、容量維持率が向上していることが確認される。
これに対して、比較例1は、連続晶析法により複合水酸化物粒子を作製した例であり、粒子成長の時間にばらつきがあるため、粒度分布が広くなった。このため、比較例1で得られた正極活物質を用いた二次電池では、容量維持率が悪化していることが確認される。
比較例2は、粒子成長工程における酸素濃度を2.5容量%としたため、核生成工程で生成した核を十分に成長させることができず、板状一次粒子の平均比率L/Gが低下した。このため、正極活物質は、タップ密度が低くなり、これを用いた二次電池の容量維持率を改善することができなかった。
比較例3は、焼成温度を1150℃とした例であり、正極活物質を構成する板状一次粒子の厚さGが増加したため、リチウムの経路(リチウムを挿入および脱離する距離)が長くなり、正極抵抗や容量維持率が悪化した。
比較例4は、複合水酸化物粒子および正極活物質の比表面積を高くしすぎた例であり、優れた初期放電容量や正極抵抗を達成しているものの、容量維持率が悪化している。これは、比較例4では、前駆体として、一旦作製した複合水酸化物粒子を微粉砕し、噴霧乾燥することにより得られた造粒粉末を用いたため、正極活物質の粒子密度が低くなり、充放電に伴う体積の膨張および収縮に耐えられなかったためと考えられる。
以上より、本発明の非水系電解質二次電池は、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適に用いることができる。また、この非水系電解質二次電池は、安全性にも優れ、小型化や高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける輸送用機器の電源としても好適に用いることができる。
1 2032型コイン型電池
2 ケース
2a 正極缶
2b 負極缶
2c ガスケット
3 電極
3a 正極
3b 負極
3c セパレータ

Claims (11)

  1. 複数の板状一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子からなり、一般式(A):NixCoyMnz(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.05≦x≦0.3、0.1≦y≦0.4、0.6≦z≦0.8、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表される遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法であって、
    反応槽内の雰囲気を、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に調整して、少なくともニッケル、コバルトおよびマンガンを含む混合水溶液と、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を反応槽に供給し、混合することにより、液温25℃基準におけるpH値が12.0〜14.0であり、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜20g/Lである核生成用水溶液を形成して、核生成を行う核生成工程と、
    前記核生成工程後に、前記酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気を維持しつつ、液温25℃基準におけるpH値が、前記核生成用水溶液のpH値よりも低く、かつ、10.0〜12.0であり、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜20g/Lである粒子成長用水溶液を形成して、該核生成工程で生成した核を成長させる粒子成長工程と、
    を備え
    前記板状一次粒子の厚さを1.0μm以下、前記板状一次粒子の長径を0.5μm〜4.0μm、前記厚さに対する前記長径の比率の平均値を1.5〜7.0として、該遷移金属複合水酸化物粒子を、その表面から中心部に通じる多数の空隙を有する多孔質構造を備え、体積基準平均粒径が4.0μm〜7.0μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/体積基準平均粒径〕が0.6以下である、二次粒子により構成することを特徴とする、
    遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
  2. 前記核生成工程および前記粒子成長工程において、前記核生成用水溶液および前記粒子成長用水溶液の液温を30℃以上とする、請求項1に記載の遷移金属複合水酸化物粒子の製造方法。
  3. 複数の板状一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、一般式(A):NixCoyMnz(OH)2+a(x+y+z+t=1、0.05≦x≦0.3、0.1≦y≦0.4、0.6≦z≦0.8、0≦t≦0.1、0≦a≦0.5、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、複数の板状一次粒子が凝集して形成された略球状の二次粒子からなり、
    前記板状一次粒子は、厚さが1.0μm以下、長径が0.5μm〜4.0μm、前記厚さに対する前記長径の比率の平均値が1.5〜7.0であり、および、
    前記二次粒子は、その表面から中心部に通じる多数の空隙を有する多孔質構造を備え、体積基準平均粒径が4.0μm〜7.0μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/体積基準平均粒径〕が0.6以下である、
    遷移金属複合水酸化物粒子。
  4. 複数の板状一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、一般式(B):bLi2MnO3・(1−b)Li1+uNixCoyMnzt2(0.2≦b≦0.8、−0.05≦u≦0.2、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.4、0.2≦y≦0.8、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子からなる非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法であって、
    請求項3に記載の遷移金属複合水酸化物粒子とリチウム化合物を混合し、リチウム混合物を得る混合工程と、
    前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中、800℃〜1050℃で焼成する焼成工程と、
    を備え
    前記板状一次粒子の厚さを1.0μm以下、前記板状一次粒子の長径を0.5μm〜4.0μm、前記厚さに対する前記長径の比率の平均値を1.5〜7.0として、前記リチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子を、その表面から中心部に通じる多数の空隙を有する多孔質構造を備え、体積基準平均粒径が4.0μm〜7.0μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/体積基準平均粒径〕が6.0以下である、二次粒子により構成することを特徴とする、
    非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  5. 前記混合工程において、前記リチウム混合物中のニッケル、コバルト、マンガンおよび添加元素Mの原子数の総和に対するリチウムの原子数の比率が1.16〜1.84となるように、前記遷移金属複合水酸化物粒子と前記リチウム化合物を混合する、請求項4に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 前記焼成工程において、前記酸化性雰囲気を、18容量%以上の酸素を含有する雰囲気とする、請求項4または5に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 前記混合工程の前に、前記遷移金属複合水酸化物粒子を、105℃〜750℃で熱処理する熱処理工程をさらに備える、請求項4〜6のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  8. 複数の板状一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、一般式(B):bLi2MnO3・(1−b)Li1+uNixCoyMnzt2(0.2≦b≦0.8、−0.05≦u≦0.2、x+y+z+t=1、0.1≦x≦0.4、0.2≦y≦0.8、0.1≦z≦0.4、0≦t≦0.1、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Wから選択される1種以上の添加元素)で表され、六方晶系の層状構造を有するリチウム過剰遷移金属複合酸化物粒子からなる正極活物質であって、
    前記正極活物質は、複数の板状一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、
    前記板状一次粒子は、厚さが1.0μm以下、長径が0.5μm〜4.0μm、該厚さに対する長径の比率の平均値が1.5〜7.0であり、
    前記二次粒子は、その表面から中心部に通じる多数の空隙を有する多孔質構造を備え、体積基準平均粒径が4.0μm〜7.0μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/体積基準平均粒径〕が0.6以下である、
    非水系電解質二次電池用正極活物質。
  9. 前記二次粒子の比表面積が1.0m2/g〜3.0m2/gである、請求項8に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
  10. 前記二次粒子のタップ密度が1.5g/cm3〜2.4g/cm3である、請求項8または9に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
  11. 正極と、負極と、セパレータと、非水系電解質とを備え、前記正極の正極材料として、請求項8〜10のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質が用いられている、非水系電解質二次電池。
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