以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
(第1実施形態)
図1は、ロータが制動されていない時の第1実施形態に係る電磁ブレーキを示す正面図である。図2は、ロータが制動されている時の第1実施形態に係る電磁ブレーキを示す正面図である。第1実施形態に係る電磁ブレーキ100は、例えばモータのロータ10を制動するための装置である。モータは、例えばダイレクトドライブモータである。図1に示すように、ロータ10は、円筒状の部材であって、回転軸Zを中心に回転する。
以下の説明において、回転軸Zに沿う方向は軸方向と記載される。回転軸Zを中心とした周方向は、単に周方向と記載される。回転軸Zを中心とした放射方向は、単に放射方向と記載される。
図1に示すように、電磁ブレーキ100は、ロータ10の内側に配置される。電磁ブレーキ100は、ハウジング11と、弾性部材35と、第1可動部材31と、第2可動部材32と、リンク機構4と、第1コイルユニット51と、第2コイルユニット52と、を備える。なお、図1及び図2において、第1コイルユニット51及び第2コイルユニット52の一部は断面図として描かれている。
ハウジング11は、ロータ10に伴って回転しない非回転部材である。例えば、ハウジング11は、モータのケース等に支持される。図1に示すように、ハウジング11は、回転軸Zを中心とした略円盤状の部材であって、中央に円形の孔を備える。
弾性部材35は、例えば板バネである。図1に示すように、弾性部材35は、固定部材36を介してハウジング11に固定されている。固定部材36は、例えば略L字状の板状部材である。固定部材36がボルト361でハウジング11に固定されている。弾性部材35がボルト351で固定部材36に固定されている。
第1可動部材31は、弾性部材35に支持されている。図1に示すように、第1可動部材31は、例えばボルト311で弾性部材35に連結されている。第1可動部材31は、リンク機構4の動きに応じて移動することができる。第1可動部材31は、ロータ10の内周面に近付く方向及びロータ10の内周面から遠ざかる方向に移動する。第1可動部材31の外周面は、ロータ10の内周面に沿っている。具体的には、第1可動部材31は、回転軸Zを中心とした円弧を描いている。すなわち、軸方向から見て、第1可動部材31の内周面は回転軸Zを中心とした円弧を描き、第1可動部材31の外周面は回転軸Zを中心とした円弧を描いている。
図1に示すように、第1可動部材31は、外周面に第1ブレーキシュー33を備える。第1ブレーキシュー33は、ロータ10の内周面に沿っている。第1ブレーキシュー33は、第1可動部材31の移動に伴って、ロータ10の内周面に近付く方向及びロータ10の内周面から遠ざかる方向に移動する。
第2可動部材32は、弾性部材35に支持されている。図1に示すように、第2可動部材32は、弾性部材35を挟んで第1可動部材31とは反対側に配置されている。第2可動部材32は、例えばボルト321で弾性部材35に連結されている。具体的には、周方向における弾性部材35の一端に第1可動部材31が連結されており、弾性部材35の他端に第2可動部材32が連結されている。第2可動部材32は、リンク機構4の動きに応じて移動することができる。第2可動部材32は、ロータ10の内周面に近付く方向及びロータ10の内周面から遠ざかる方向に移動する。第2可動部材32の外周面は、ロータ10の内周面に沿っている。具体的には、第2可動部材32は、回転軸Zを中心とした円弧を描いている。すなわち、軸方向から見て、第2可動部材32の内周面は回転軸Zを中心とした円弧を描き、第2可動部材32の外周面は回転軸Zを中心とした円弧を描いている。
図1に示すように、第2可動部材32は、外周面に第2ブレーキシュー34を備える。第2ブレーキシュー34は、ロータ10の内周面に沿っている。第2ブレーキシュー34は、第2可動部材32の移動に伴って、ロータ10の内周面に近付く方向及びロータ10の内周面から遠ざかる方向に移動する。
第1可動部材31及び第2可動部材32には、弾性部材35で生じる弾性力が加えられている。具体的には、弾性部材35は、第1可動部材31及び第2可動部材32に対して、互いに遠ざかる方向に移動させる力を加えている。
リンク機構4は、弾性部材35とは異なる位置で第1可動部材31と第2可動部材32とを連結する部材である。図1に示すように、リンク機構4は、第1リンク41と、第2リンク42と、第1ジョイントJ1と、第2ジョイントJ2と、第3ジョイントJ3と、第1永久磁石44と、第2永久磁石45と、を備える。
第1リンク41は、第1可動部材31に対して回転可能に連結されている。具体的には、第1リンク41が第1ジョイントJ1を介して第1可動部材31に連結されている。第1ジョイントJ1は、第1軸受と、第1突起31aと、第1止め輪46と、を備える。例えば、第1軸受が第1リンク41の端部に固定されており、且つ第1可動部材31の端部に設けられた円柱状の第1突起31aが第1軸受に嵌まっている。第1止め輪46は、第1突起31aに取り付けられており、第1突起31aが第1軸受から抜けることを防止している。
第2リンク42は、第2可動部材32に対して回転可能に連結されている。具体的には、第2リンク42が第2ジョイントJ2を介して第2可動部材32に連結されている。第2ジョイントJ2は、第2軸受と、第2突起32aと、第2止め輪47と、を備える。例えば、第2軸受が第2リンク42の端部に固定されており、且つ第2可動部材32の端部に設けられた円柱状の第2突起32aが第2軸受に嵌まっている。第2止め輪47は、第2突起32aに取り付けられており、第2突起32aが第2軸受から抜けることを防止している。
第2リンク42は、第1リンク41に対して回転可能に連結されている。具体的には、第2リンク42が第3ジョイントJ3を介して第1リンク41に連結されている。第3ジョイントJ3は、第3軸受と、第3突起41aと、第3止め輪48と、を備える。例えば、第3軸受が第2リンク42の端部に固定されており、且つ第1リンク41の端部に設けられた円柱状の第3突起41aが第3軸受に嵌まっている。第3軸受は、第2リンク42のうち第2軸受とは反対側の端部に配置されている。第3突起41aは、第1リンク41のうち第1軸受とは反対側の端部に配置されている。第3止め輪48は、第3突起41aに取り付けられており、第3突起41aが第3軸受から抜けることを防止している。
第1永久磁石44及び第2永久磁石45は、例えば第1リンク41の側面に固定されている。第2永久磁石45は、第3ジョイントJ3を挟んで第1永久磁石44とは反対側に配置されている。
第1コイルユニット51は、第1永久磁石44を吸引し且つ反発するための電磁石である。第1コイルユニット51は、図1に示すように第1コア511と、第1コイル515と、を備える。
第1コア511は、磁性材料で形成されている。具体的には、第1コア511は、鋳鉄又は圧粉磁心で形成されている。例えば、第1コア511は、ボルト512でハウジング11に固定されている。第1コア511は、補助面518と、補助面519と、を備える。補助面518は、第1リンク41に対向する第1コア511の表面である。補助面519は、第2リンク42に対向する第1コア511の表面である。補助面519は、補助面518と平行である。
第1コイル515は、第1コア511に巻き付けられている。具体的には、第1コイル515は、図1に示すように放射方向に沿う直線L1を中心として第1コア511に巻き付けられている。直線L1は、回転軸Z及び第3ジョイントJ3の中心(第3突起41aの中心)を通る直線である。第1コイル515は電源に接続されている。第1コイル515に電流が流れると、第1コア511が磁気を帯びる。例えば、直線L1に沿う方向における第1コア511の一端がS極となり、他端がN極となる。流れる電流の方向が逆になると、S極とN極が入れ替わる。
第2コイルユニット52は、第2永久磁石45を吸引し且つ反発するための電磁石である。第2コイルユニット52は、図1に示すように第2コア521と、第2コイル525と、を備える。
第2コア521は、磁性材料で形成されている。具体的には、第2コア521は、鋳鉄又は圧粉磁心で形成されている。例えば、第2コア521は、ボルト522でハウジング11に固定されている。第2コア521は、補助面528と、補助面529と、を備える。補助面528は、第1リンク41に対向する第2コア521の表面である。補助面529は、第2リンク42に対向する第2コア521の表面である。補助面529は、補助面528に対して角度をなしている。
第2コイル525は、第2コア521に巻き付けられている。具体的には、第2コイル525は、図1に示すように直線L1に対して角度αをなす直線L2を中心として第2コア521に巻き付けられている。直線L2は、軸方向に対して直交し且つ第3ジョイントJ3の中心を通る直線である。第2コイル525は電源に接続されている。第2コイル525に電流が流れると、第2コア521が磁気を帯びる。例えば、直線L2に沿う方向における第2コア521の一端がS極となり、他端がN極となる。流れる電流の方向が逆になると、S極とN極が入れ替わる。
ロータ10が制動されない時、例えば、第1コア511が第1永久磁石44を反発するように励磁される。また、第2コア521が第2永久磁石45を吸引するように励磁される。これにより、第2永久磁石45が第2コア521に向かって移動する。第2永久磁石45の移動に伴って、第3ジョイントJ3が第2コア521に近付き、第1ジョイントJ1及び第2ジョイントJ2が互いに近付く。このため、第1可動部材31及び第2可動部材32が互いに近付く。その結果、第1ブレーキシュー33及び第2ブレーキシュー34がロータ10の内周面から離れる。すなわち、図1において、第1ブレーキシュー33とロータ10の内周面との間、及び第2ブレーキシュー34とロータ10の内周面との間には隙間が生じている。ロータ10の内周面で生じる摩擦(ブレーキ力)がなくなるので、ロータ10の制動が解除される。ロータ10が次に制動される時まで、第1コイル515及び第2コイル525に流れる電流は維持される。
また、第2永久磁石45が第2コア521に接している時、補助面528が第1リンク41に接しており且つ補助面529が第2リンク42に接している。このため、リンク機構4が3箇所で第2コア521に接するので、リンク機構4のガタツキが抑制される。
ロータ10が制動される時、例えば、第1コア511が第1永久磁石44を吸引するように励磁される。また、第2コア521が第2永久磁石45を反発するように励磁される。これにより、第1永久磁石44が第1コア511に向かって移動する。第1永久磁石44の移動に伴って、第3ジョイントJ3が第1コア511に近付き、第1ジョイントJ1及び第2ジョイントJ2が互いに遠ざかる。このため、第1可動部材31及び第2可動部材32が互いに遠ざかる。その結果、第1ブレーキシュー33及び第2ブレーキシュー34がロータ10の内周面に近付き接する。すなわち、図2において、第1ブレーキシュー33及び第2ブレーキシュー34はロータ10の内周面に接している。ロータ10の内周面で摩擦が生じるのでロータ10が制動される。例えば、第1永久磁石44が第1コア511に接した後、第1コイル515及び第2コイル525に対する通電が停止される。ロータ10の制動が解除される時まで、第1コイル515及び第2コイル525に対する通電の停止が維持される。
また、第1永久磁石44が第1コア511に接している時、補助面518が第1リンク41に接しており且つ補助面519が第2リンク42に接している。このため、リンク機構4が3箇所で第1コア511に接するので、リンク機構4のガタツキが抑制される。また、弾性部材35においては、ヒンジ等に比較して、第1可動部材31及び第2可動部材32がロータ10から受ける反力による変位が生じにくい。すなわち、電磁ブレーキ100は高い剛性を有する。このため、ロータ10の内周面における摩擦が維持されやすい。
図2に示すように、第1永久磁石44が第1コア511に接している時、第1リンク41及び第2リンク42が一直線上に並ぶ。すなわち、第1ジョイントJ1の中心(第1突起31aの中心)、第2ジョイントJ2の中心(第2突起32aの中心)及び第3ジョイントJ3の中心が一直線上に並ぶ。この時、弾性部材35によって、第1可動部材31及び第2可動部材32には、互いに遠ざかる方向に移動させる力が加えられている。このため、第1永久磁石44が第1コア511に接した後、第1コイル515及び第2コイル525の電流がなくなっても、第1リンク41及び第2リンク42が一直線上に並んだままである。このため、ロータ10の内周面で生じる摩擦が維持される。
また、電磁ブレーキ100においては、ブレーキ力を生じさせる部材が中央に配置されない。このため、電磁ブレーキ100は、中央に穴を有することができる。
なお、ロータ10が制動されない時、必ずしも第1コア511及び第2コア521の両方が励磁されなくてもよい。例えば、ロータ10が制動されない時、第1コア511が第1永久磁石44を反発するように励磁される一方、第2コア521が励磁されていなくてもよい。反対に、第1コア511が励磁されず、且つ第2コア521が第2永久磁石45を吸引するように励磁されてもよい。
なお、ロータ10が制動される時、必ずしも第1コア511及び第2コア521の両方が励磁されなくてもよい。例えば、ロータ10が制動される時、第1コア511が第1永久磁石44を吸引するように励磁される一方、第2コア521が励磁されていなくてもよい。反対に、第1コア511が励磁されず、且つ第2コア521が第2永久磁石45を反発するように励磁されてもよい。また、第1永久磁石44が第1コア511に接した後、第1コイル515及び第2コイル525に対する通電は停止されなくてもよい。すなわち、第1永久磁石44が第1コア511に接した後、第1コイル515及び第2コイル525に流れる電流が維持されてもよい。
以上で説明したように、電磁ブレーキ100は、ハウジング11と、弾性部材35と、第1可動部材31と、第2可動部材32と、リンク機構4と、第1コイルユニット51と、第2コイルユニット52と、を備える。弾性部材35は、ハウジング11に支持される。第1可動部材31は、回転部材(ロータ10)の内周面に沿う第1ブレーキシュー33を有し、弾性部材35に支持される。第2可動部材32は、回転部材(ロータ10)の内周面に沿う第2ブレーキシュー34を有し、弾性部材35に支持される。リンク機構4は、第1可動部材31と第2可動部材32とを弾性部材35とは異なる位置で連結する。第1コイルユニット51は、ハウジング11に支持される。第2コイルユニット52は、ハウジング11に支持され、且つリンク機構4を挟んで第1コイルユニット51と反対側に配置される。リンク機構4は、第1永久磁石44及び第2永久磁石45を備える。第1コイルユニット51は、第1永久磁石44に対向する第1コア511と、第1コア511に巻き付けられる第1コイル515とを備える。第2コイルユニット52は、第2永久磁石45に対向する第2コア521と、第2コア521に巻き付けられる第2コイル525とを備える。
これにより、第1コア511及び第2コア521が励磁されることで、第1永久磁石44及び第2永久磁石45が移動し、リンク機構4が動く。このため、第1可動部材31及び第2可動部材32が、互いに近付く方向又は遠ざかる方向に移動する。これに伴い、第1ブレーキシュー33及び第2ブレーキシュー34がロータ10の内周面に接する又はロータ10の内周面から離れる。電磁ブレーキ100は、直動機構を用いずにロータ10を制動することができる。このため、バックラッシュが生じにくい。さらに、第1可動部材31及び第2可動部材32が弾性部材35に支持されているので、第1可動部材31及び第2可動部材32がヒンジ等で支持されている場合に比較して、バックラッシュが生じにくい。したがって、電磁ブレーキ100は、バックラッシュを抑制することができる。
また、電磁ブレーキ100においては、第1コア511が第1永久磁石44を吸引する時、第2コア521が第2永久磁石45を反発する。
これにより、第1コア511及び第2コア521の一方が励磁される場合に比較して、リンク機構4の動きが速くなる。したがって、電磁ブレーキ100は、ロータ10の制動状態及び非制動状態の切替を速くすることができる。
また、電磁ブレーキ100においては、第1コア511が第1永久磁石44を反発する時、第2コア521が第2永久磁石45を吸引する。
これにより、第1コア511及び第2コア521の一方が励磁される場合に比較して、リンク機構4の動きが速くなる。したがって、電磁ブレーキ100は、ロータ10の制動状態及び非制動状態の切替を速くすることができる。
また、電磁ブレーキ100においては、リンク機構4は、第1リンク41と、第2リンク42と、を備える。第1リンク41は、第1永久磁石44及び第2永久磁石45を有し且つ第1可動部材31に対して回転可能に連結される。第2リンク42は、第2可動部材32及び第1リンク41に対して回転可能に連結される。第1リンク41及び第2リンク42が一直線上に並ぶ時、第1可動部材31及び第2可動部材32は、互いに遠ざかる方向に移動させる力を弾性部材35から受けている。
第1リンク41及び第2リンク42が一直線上に並ぶ時、第1可動部材31と第2可動部材32との間の距離が最も大きくなる。このため、第1ブレーキシュー33及び第2ブレーキシュー34がロータ10の内周面に押し付けられる。このため、ロータ10が制動される。また、第1リンク41及び第2リンク42が一直線上に並んだ後、仮に第1コイル515及び第2コイル525の電流がなくなっても、第1リンク41及び第2リンク42は一直線上に並んだままである。したがって、ロータ10の内周面で生じる摩擦が維持されるので、ロータ10の制動状態が維持される。このため、第1コイル515及び第2コイル525における発熱が抑制される。
(第2実施形態)
図3は、ロータが制動されていない時の第2実施形態に係る電磁ブレーキを示す正面図である。図4は、ロータが制動されている時の第2実施形態に係る電磁ブレーキを示す正面図である。図5は、図3におけるA−A断面図である。図6は、転動体の周辺を拡大して示す正面図である。なお、上述した第1実施形態で説明したものと同じ構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。
図3から図5に示すように、第2実施形態に係る電磁ブレーキ100Aは、ロータ10の内側に配置される。電磁ブレーキ100Aは、ハウジング12と、アウターリング6と、インナーリング7と、転動体15と、複数の永久磁石75と、アッパーコア8と、ロワーコア9と、コイル16と、を備える。
ハウジング12は、ロータ10に伴って回転しない非回転部材である。例えば、ハウジング12は、モータのケース等に支持される。ハウジング12は、回転軸Zを中心とした略円盤状の部材であって、中央に円形の孔を備える。
アウターリング6は、図3に示すように、ロータ10の内側に配置された環状の部材である。アウターリング6の外周面は、ロータ10の内周面に沿っている。アウターリング6は、例えば、図5に示すようにボルトFでハウジング12に固定されている。アウターリング6は、内周面に複数の第1カム面61を備える。
図6に示すように、複数の第1カム面61は、周方向で等間隔に配置されている。例えば、第1カム面61の数は12個である。第1カム面61は、第1端部曲面61aと、第1端部曲面61dと、第1保持曲面61cと、第1テーパー面61bと、を含む。周方向に沿って、第1端部曲面61a、第1テーパー面61b、第1保持曲面61c、第1端部曲面61dの順に配置されている。軸方向から見た時の第1端部曲面61a及び第1端部曲面61dは、放射方向でアウターリング6より内側の点を中心とした円弧を描く。軸方向から見た時の第1端部曲面61dが描く円弧の曲率半径R61dは、第1端部曲面61aが描く円弧の曲率半径R61aに等しい。軸方向から見た時の第1保持曲面61cは、回転軸Zを中心とした円弧を描く。軸方向から見た時の第1保持曲面61cが描く円弧の曲率半径は、曲率半径R61aより大きい。軸方向から見た時の第1テーパー面61bは、回転軸Zを中心とした円弧とは異なる曲線又は直線を描く。第1テーパー面61bの第1保持曲面61c側の端部は、第1テーパー面61bの第1保持曲面61cとは反対側の端部より放射方向で内側に位置する。
インナーリング7は、図3に示すように、アウターリング6の内側に配置された環状の部材である。インナーリング7は、転動体15を介してアウターリング6に支持されている。インナーリング7は、外周面に複数の第2カム面71を備える。
図6に示すように、複数の第2カム面71は、周方向で等間隔に配置されている。例えば、第2カム面71の数は12個である。第2カム面71の少なくとも一部は、放射方向で第1カム面61に重なっている。第2カム面71は、第2端部曲面71aと、第2端部曲面71dと、第2保持曲面71cと、第2テーパー面71bと、を含む。周方向に沿って、第2端部曲面71a、第2テーパー面71b、第2保持曲面71c、第2端部曲面71dの順に配置されている。軸方向から見た時の第2端部曲面71a及び第2端部曲面71dは、放射方向でインナーリング7より外側の点を中心とした円弧を描く。軸方向から見た時の第2端部曲面71dが描く円弧の曲率半径R71dは、第2端部曲面71aが描く円弧の曲率半径R71aに等しい。軸方向から見た時の第2保持曲面71cは、回転軸Zを中心とした円弧を描く。軸方向から見た時の第2保持曲面71cが描く円弧の曲率半径は、曲率半径R71aより大きい。軸方向から見た時の第2テーパー面71bは、回転軸Zを中心とした円弧ではない曲線又は直線を描く。第2テーパー面71bの第2保持曲面71c側の端部は、第2テーパー面71bの第2保持曲面71cとは反対側の端部より放射方向で外側に位置する。
転動体15は、例えばころである。転動体15は、第1カム面61及び第2カム面71に接する。転動体15は、インナーリング7がアウターリング6に対して回転できるように、インナーリング7を支持している。図6に示すように、軸方向から見た時の転動体15の半径R15は、曲率半径R61a及び曲率半径R71aより小さい。
永久磁石75は、インナーリング7の内周面に固定されている。複数の永久磁石75は、等間隔に配置されている。例えば、永久磁石75の数は20個である。永久磁石75の放射方向の一端がS極であり、他端がN極である。S極が内側に位置する永久磁石75は、N極が内側に位置する永久磁石75の隣りに配置されている。すなわち、S極及びN極が周方向に交互に並んでいる。
アッパーコア8は、磁性材料で形成されている。例えば、アッパーコア8は、鋳鉄又は圧粉磁心で形成されている。アッパーコア8は、複数の永久磁石75の内側に配置される。アッパーコア8は、例えば、図5に示すようにボルトFでアウターリング6と共にハウジング12に固定されている。
図3から図5に示すように、アッパーコア8は、アッパーヨーク81と、複数のアッパークロー82と、を備える。アッパーヨーク81は、回転軸Zを中心とした環状部材である。アッパークロー82は、アッパーヨーク81の外縁から軸方向に突出している。アッパークロー82は、永久磁石75に対向している。複数のアッパークロー82は、周方向に等間隔に配置されている。例えば、アッパークロー82の数は10個である。
ロワーコア9は、磁性材料で形成されている。例えば、ロワーコア9は、鋳鉄又は圧粉磁心で形成されている。ロワーコア9は、複数の永久磁石75の内側に配置され、且つ軸方向でアッパーコア8と重なる。ロワーコア9は、例えば、図5に示すようにボルトFでアウターリング6及びアッパーコア8と共にハウジング12に固定されている。
図3から図5に示すように、ロワーコア9は、ロワーヨーク91と、複数のロワークロー92と、を備える。ロワーヨーク91は、回転軸Zを中心とした環状部材である。ロワークロー92は、ロワーヨーク91の外縁から軸方向に突出している。ロワークロー92は、永久磁石75に対向している。複数のロワークロー92は、周方向に等間隔に配置されている。例えば、ロワークロー92の数は10個である。1つのロワークロー92は、2つのアッパークロー82の間に配置されている。すなわち、アッパークロー82及びロワークロー92が周方向に交互に並んでいる。アッパークロー82の数とロワークロー92の数の和は、永久磁石75の数に等しい。
図3に示すように、角度θ1は角度θ2に等しい。角度θ1は、隣り合う永久磁石75の中央を結ぶ円弧の中心角である。角度θ2は、隣り合うアッパークロー82及びロワークロー92の中央を結ぶ円弧の中心角である。
コイル16は、アッパーコア8及びロワーコア9に巻き付けられている。具体的には、コイル16は、回転軸Zを中心としてアッパーヨーク81及びロワーヨーク91の外周面に巻き付けられている。コイル16は、電源に接続されている。コイル16に電流が流れると、アッパーヨーク81及びロワーヨーク91が磁気を帯びる。例えば、アッパーヨーク81がS極となり、ロワーヨーク91がN極となる。このため、アッパーヨーク81と一体である複数のアッパークロー82がS極となり、ロワーヨーク91と一体である複数のロワークロー92がN極となる。したがって、コイル16に電流が流れると、S極及びN極が周方向に交互に並ぶ。
ロータ10が制動されない時、コイル16に電流が流されない。コイル16に電流が流れないので、アッパークロー82及びロワークロー92が磁気を帯びない。このため、インナーリング7にトルクが加わらない。インナーリング7にトルクが加わっていない時、転動体15は、第1端部曲面61a及び第2端部曲面71aに接している。コイル16に電流が流されていない時、図3に示すように、アウターリング6とロータ10の間には隙間が生じている。例えば、隙間の幅Wは、転動体15の直径より小さい。このため、ロータ10の内周面で摩擦が生じないので、ロータ10が制動されない。
ロータ10が制動される時、コイル16に一定方向の電流が流される。これにより、アッパークロー82及びロワークロー92が磁気を帯びるので、インナーリング7にトルクが加わる。インナーリング7がアウターリング6に対して回転する。上述したように角度θ2が角度θ1(図3参照)に等しいので、インナーリング7の回転角は、最大で角度θ1である。インナーリング7の回転角が角度θ1になる前に、転動体15が第1テーパー面61b及び第2テーパー面71bを移動することで、転動体15がアウターリング6の内周面を押す。アウターリング6は、転動体15から受ける力により、外側に撓む。図3に示すアウターリング6とロータ10との間の隙間がなくなり、アウターリング6がロータ10に接する。このため、ロータ10の内周面で摩擦が生じるのでロータ10が制動される。
また、仮に第1保持曲面61c及び第2保持曲面71cがない場合、転動体15が第1端部曲面61d及び第2端部曲面71dに達した後にコイル16の電流がなくなると、転動体15は、第1テーパー面61b及び第2テーパー面71bに接することになる。このため、転動体15は、第1テーパー面61b及び第2テーパー面71bから周方向の反力を受けるので、第1端部曲面61a及び第2端部曲面71aに向かって移動する。その結果、ブレーキ力がなくなる。これに対して、電磁ブレーキ100Aにおいては、上述したように回転軸Zを中心とした円弧を描く第1保持曲面61c及び第2保持曲面71cが設けられている。これにより、転動体15は、第1保持曲面61c及び第2保持曲面71cに接している時、周方向ではなく放射方向の反力を受ける。このため、転動体15が第1保持曲面61c及び第2保持曲面71cに達した後、コイル16の電流がなくなっても、転動体15が第1保持曲面61c及び第2保持曲面71cに接している状態が保たれる。したがって、ロータ10の制動状態が維持されるので、コイル16の発熱が抑制される。制動状態を解除する時、ロータ10が制動される時の電流とは反対方向の電流がコイル16に流される。
また、第1実施形態に示すように第1可動部材31及び第2可動部材32が弾性部材35に支持されている場合、弾性部材35は軸方向に撓む可能性がある。これに対して、第2実施形態においては、弾性部材35が用いられていない。このため、電磁ブレーキ100Aは、第1実施形態に係る電磁ブレーキ100より高い剛性を有する。
また、電磁ブレーキ100Aにおいては、ブレーキ力を生じさせる部材が中央に配置されない。このため、電磁ブレーキ100Aは、中央に穴を有することができる。
なお、永久磁石75の数は必ずしも20個でなくてよく、アッパークロー82の数及びロワークロー92の数は必ずしもそれぞれ10個でなくてよい。ただし、永久磁石75の数は、アッパークロー82の数及びロワークロー92の数の和に等しいことが望ましい。
以上で説明したように、電磁ブレーキ100Aは、ハウジング12と、アウターリング6と、インナーリング7と、転動体15と、複数の永久磁石75と、アッパーコア8と、ロワーコア9と、コイル16と、を備える。アウターリング6は、ハウジング12に支持され且つ回転部材(ロータ10)の内周面に沿い、第1カム面61を内周面に有する。インナーリング7は、アウターリング6の内側に配置され、第2カム面71を外周面に有する。転動体15は、第1カム面61及び第2カム面71に接する。複数の永久磁石75は、インナーリング7の内周面に固定されている。アッパーコア8は、ハウジング12に支持され且つ永久磁石75の内側に配置される。ロワーコア9は、ハウジング12に支持され且つ回転部材(ロータ10)の軸方向でアッパーコア8に重なる。コイル16は、回転軸Zを中心としてアッパーコア8及びロワーコア9に巻き付けられる。アッパーコア8は、永久磁石75に対向する複数のアッパークロー82を備える。ロワーコア9は、永久磁石75に対向する複数のロワークロー92を備える。アッパークロー82及びロワークロー92は、周方向に交互に配置される。インナーリング7の回転角の増加に応じて、転動体15が第1カム面61を押す力が大きくなる。
これにより、アッパーコア8及びロワーコア9が励磁されることで、インナーリング7にトルクが加わる。インナーリング7にトルクが加わると、転動体15が第1カム面61及び第2カム面71を移動する。これにより、アウターリング6が転動体15から押され、外側に向かって撓む。そして、アウターリング6がロータ10の内周面に接する。このため、ロータ10の内周面で摩擦が生じるのでロータ10が制動される。このように、電磁ブレーキ100Aは、直動機構を用いずにロータ10を制動することができる。したがって、電磁ブレーキ100Aは、バックラッシュを抑制することができる。
また、電磁ブレーキ100Aにおいては、第1カム面61は、第1テーパー面61cを備える。転動体15が第1カム面61を押す前の状態で、第1テーパー面61cの転動体15から遠い一端は、第1テーパー面61cの転動体15に近い他端に対して、放射方向で内側に位置する。第2カム面71は、第2テーパー面71cを備える。転動体15が第1カム面61を押す前の状態で、第2テーパー面71cの転動体15から遠い一端は、第2テーパー面71cの転動体15に近い他端に対して、放射方向で外側に位置する。
これにより、インナーリング7の回転角の増加に応じて、転動体15が第1カム面61を押す力が大きくなる。したがって、インナーリング7の回転角の増加に応じて、アウターリング6の撓みが大きくなり、ブレーキ力が大きくなる。
また、電磁ブレーキ100Aにおいては、第1カム面61は、第1端部曲面61a及び第1端部曲面61dと、第1端部曲面61a及び第1端部曲面61dの間に位置する第1保持曲面61cと、第1端部曲面61dと第1保持曲面61cとの間に位置する第1テーパー面61bと、を備える。軸方向から見た時の第1保持曲面61cは、回転軸Zを中心とした円弧である。軸方向から見た時の第1端部曲面61a(第1端部曲面61d)は、第1保持曲面61cの曲率半径より小さい曲率半径R61a(曲率半径R61d)を有する円弧である。第1テーパー面61bの第1保持曲面61c側の端部は、第1テーパー面61bの第1保持曲面61cとは反対側の端部に対して放射方向で内側に位置する。第2カム面71は、第2端部曲面71a及び第2端部曲面71dと、第2端部曲面71a及び第2端部曲面71dの間に位置する第2保持曲面71cと、第2端部曲面71dと第2保持曲面71cとの間に位置する第2テーパー面71bと、を備える。軸方向から見た時の第2保持曲面71cは、回転軸Zを中心とした円弧である。軸方向から見た時の第2端部曲面71a(第2端部曲面71d)は、第2保持曲面71cの曲率半径より小さい曲率半径R71a(曲率半径R71d)を有する円弧である。第2テーパー面71bの第2保持曲面71c側の端部は、第2テーパー面71bの第2保持曲面71cとは反対側の端部に対して放射方向で外側に位置する。
これにより、転動体15が第1保持曲面61c及び第2保持曲面71cに接している時に受ける反力の方向は放射方向となる。このため、転動体15が第1保持曲面61c及び第2保持曲面71cに達した後、コイル16の電流がなくなっても、転動体15が第1保持曲面61c及び第2保持曲面71cに接している状態が保たれる。したがって、ロータ10の制動状態が維持されるので、コイル16の発熱が抑制される。
また、電磁ブレーキ100Aにおいては、永久磁石75の数は、アッパークロー82の数とロワークロー92の数との和に等しい。複数の永久磁石75、複数のアッパークロー82及び複数のロワークロー92は、それぞれ周方向に等間隔に配置される。インナーリング7の回転角が、隣り合う永久磁石75の中央を結ぶ円弧の中心角の角度θ1よりも大きくなるまでに、転動体15がアウターリング6を回転部材(ロータ10)に向かって押す。
これにより、コイル16に流される電流が一定であっても、ロータ10の内周面に摩擦が生じる。すなわち、電磁ブレーキ100Aによれば、ブレーキ力を生じさせるために必要となるコイル16の電流の制御を単純化することができる。