JP6724636B2 - 制御弁式鉛蓄電池 - Google Patents
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Description
ところが、制御弁式鉛蓄電池では、過充電時に正極で発生する酸素と負極耳部に這い上がる硫酸とにより、液式鉛蓄電池と比べて、負極耳部が腐食されることが指摘されている。
そこで、負極集電体を構成する合金に含まれるカルシウム(Ca)及び錫(Sn)の含有量を調整することが提案されている(特許文献1参照)。この技術によれば、腐食による負極耳部の破断が抑制されることが示されている。
そして、この新規な制御弁式鉛蓄電池は、負極耳部の腐食が更に抑制されるという事実を見いだした。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。
正極板と、
負極板と、
電解液と、を備えた制御弁式鉛蓄電池であって、
前記負極板は、負極集電体と負極電極材料とを有し、
前記負極電極材料の密度が2.7g/cm 3 以上であり、
前記負極電極材料が有機防縮剤を含有し、
前記有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量が3900μmol/g以上9000μmol/g以下であり、
前記負極集電体を構成する鉛合金に含まれるカルシウム(Ca)の含有量は、0.07mass%以上0.12mass%以下であり、
前記負極集電体を構成する鉛合金に含まれる錫(Sn)の含有量は、0.10mass%以上0.75mass%以下である。
本発明の一態様の制御弁式鉛蓄電池は、正極板と、負極板と、電解液と、セパレーターと、を備える。負極板は、負極集電体と負極電極材料とを有する。負極電極材料の密度は、2.6g/cm3よりも大きい。負極電極材料は有機防縮剤を含有し、有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量は、600μmol/gより大きい。
正極板の種類は特に限定されない。正極板として、例えば、クラッド式極板、ペースト式極板を用いることができる。クラッド式極板としては、例えば、ガラス繊維をチューブ状に編み上げ、その中に正極活物質である鉛粉を含む正極電極材料を充填した極板が用いられる。ペースト式極板は、例えば、エキスパンド、鋳造、パンチング等の集電体(格子体)に、正極活物質を含む正極電極材料のペーストを充填後、熟成乾燥して得られる。正極電極材料のペーストは、鉛粉等を水と希硫酸で練合して得ることができる。正極電極材料のペーストには、正極活物質の他に種々の添加物を添加してもよい。
3.1 極板の種類
負極板の種類は特に限定されない。負極板として、例えば、ペースト式極板を用いることができる。ペースト式極板としては、例えば、純鉛や鉛合金を鋳造して作製したエキスパンド、鋳造、パンチング等の集電体(格子体)にペースト状にした負極電極材料を塗り込んだ極板が用いられる。ペースト式極板は、例えば、集電体に負極電極材料のペーストを充填後、熟成乾燥して得られる。負極電極材料のペーストは、鉛粉等を水と希硫酸で練合して得ることができる。負極電極材料のペーストには、負極活物質の他に種々の添加物を添加してもよい。
本発明の一態様の制御弁式鉛蓄電池では、負極集電体の形状、大きさは特に限定されない。負極集電体は、通常、集電体本体部の上端部に突出した耳部を有している。集電体本体部は、一般的に略矩形状である。
負極集電体の製造方法は特に限定されない。例えば、ブックモールド法、連続鋳造法等の鋳造法や、圧延シートを加工するエキスパンド法やパンチング法を採用することができる。
本発明の一態様の制御弁式鉛蓄電池では、負極集電体を構成する鉛合金の成分は特に限定されない。負極集電体を構成する鉛合金の成分は、カルシウム(Ca)と錫(Sn)とを含むことが好ましい。以下、好ましい鉛合金の成分について詳細に説明する。
本実施形態の一態様の制御弁式鉛蓄電池では、負極電極材料の密度は、2.6g/cm3よりも大きい。負極電極材料の密度は、2.7g/cm3以上が好ましい。また、負極電極材料の密度は4.0g/cm3以下とすることが好ましく、3.6g/cm3よりも小さいことが好ましい。より好ましくは、2.7g/cm3以上3.5g/cm3以下である。
負極電極材料の密度が、この範囲内であると、負極集電体の耳部の腐食を極力抑えることができるからである。
3.4.1 有機防縮剤の含有量
本実施形態の制御弁式鉛蓄電池では、負極電極材料には、有機防縮剤が含有される。有機防縮剤の含有量は特に限定されない。有機防縮剤の含有量は、既化成の負極電極材料100mass%に対し、通常、0.05mass%以上0.4mass%の範囲である。
本実施形態における有機防縮剤の種類は、特に限定されない。有機防縮剤は、1種類を単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
有機防縮剤は、天然物由来の防縮剤と、合成防縮剤に分類される
天然物由来の防縮剤としては、例えば、スルホン化リグニン等が挙げられる。なお、リグニンのアルキル側鎖にスルホン酸基を導入する場合、このアルキル側鎖にスルホン酸基1個以上を導入することは難しい。このため、リグニンのアルキル側鎖に、スルホン酸基、スルホニル基を直接導入せずに、間接的に導入したリグニンを用いることもできる。すなわち、リグニンのフェニル基に直接もしくはアルキル基を介して間接的にスルホン酸基及び/又はスルホニル基を導入することができる。このようにリグニンにスルホン酸基及び/又はスルホニル基を導入すると、硫黄元素(S元素)の含有量を高めることができる。
ビスフェノール類の縮合物は、常温より高い温度環境を経験しても性能が損なわれないので、常温より高い温度環境におかれる鉛蓄電池に適している。ナフタレンスルホン酸の縮合物は、ビスフェノール類の縮合物に比べ、分極が小さくなりにくいので、減液特性が重要な鉛蓄電池に適している。
ポリアクリルアミド・ターシャリーブチル・スルホン酸Naの重合物では、基本骨格とスルホン酸基量との比は、特に限定されないが、基本骨格とスルホン酸基量との比が1:1以上であることが好ましい。
フェノール性水酸基を複数有する化合物として、ビスフェノール類が好適に用いられる。ビスフェノール類とは、2個のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。ビスフェノール類としては、例えばビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールF、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ等が例示される。これらは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
なお、スルホン酸基はフェノール性水酸基を複数有する化合物の芳香環(例えば、ビスフェノール類のフェニル基)に直接結合している必要はない。例えば芳香環にアルキル鎖が結合し、このアルキル鎖にスルホン酸基が結合してもよい。
また、S元素はスルホン酸基として含まれていても、あるいはスルホニル基として含まれていても、合成防縮剤としての性能はほぼ同じである。
硫黄元素(S元素)がこの範囲に入ると、負極耳部の腐食がよく抑制され、制御弁式鉛蓄電池が長寿命となる。
GPC装置:ビルドアップGPCシステム
SD-8022/DP−8020/AS-8020/CO-8020/UV-8020 (東ソー製)
カラム :TSKgel G4000SWXL, G2000SWXL (7.8 mmI.D.×30cm) (東ソー製)
検出器 :UV検出器 λ=210nm
溶離液 :1mol/L NaCl : アセトニトリル(7:3)
流速 :1ml/min.
濃度 :10mg/mL
注入量 :10μL
標準物質 :ポリスチレンスルホン酸Na
(Mw=275,000、35,000、12,500、7,500、5,200、1,680)
ただし、亜硫酸塩とホルムアルデヒドは、略等モル含有して反応させることが好ましい。なお、アルカリ条件化では重合が進むため、pH調整剤として、NaOH等を使用し、pH=12程度(pH=10〜13)にすることが好ましい。
有機防縮剤の平均コロイド粒子径を測定するには、濃度が1〜10mg/mLの有機防縮剤の水溶液を、比重が1.26の硫酸により、容積比で20倍に希釈し、比重1.25の硫酸の溶液とする。硫酸で20倍希釈した試料を、例えば堀場製作所製のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA−950V2を用い、25℃で、バッチ式のセルを用い、マグネチックスターラーで撹拌しながら測定し、体積基準の平均コロイド粒子径を求める。なお鉛イオン、アルミニウムイオン、ナトリウムイオン等の共存イオンは、平均コロイド粒子径の測定値にほとんど影響しない。
なお、有機防縮剤の水溶液は、例えば鉛蓄電池の負極板から電極材料を取り出し、水洗して硫酸を除いた後に、1.0MのNaOH水溶液等のアルカリに溶解して、有機防縮剤を抽出することにより得られる。
負極電極材料中の有機防縮剤種の特定は、以下の様にして行う。満充電された鉛蓄電池を分解し、負極板を取り出し水洗により硫酸分を除去し、乾燥する。負極板から活物質を含んだ負極電極材料を分離し、1mol/LのNaOH水溶液に負極電極材料を浸漬して有機防縮剤を抽出する。抽出液から、不溶成分を濾過で取り除いた溶液を脱塩した後、濃縮・乾燥して粉末試料を得る。脱塩には、脱塩カラムやイオン交換膜が用いられる。
このようにして得た有機防縮剤の粉末試料を用いて測定した赤外分光スペクトルやNMRスペクトル、さらに粉末試料を蒸留水で希釈し、紫外可視吸光度計で測定した紫外可視吸収スペクトルなどから得た情報を用いて、有機防縮剤種を特定する。
負極電極材料中の有機防縮剤の含有量は以下の様にして測定する。
満充電された鉛蓄電池を分解し、負極板を取り出し水洗により硫酸分を除去し、乾燥する。負極板から負極電極材料を分離し、1mol/LのNaOH水溶液300mLに負極電極材料100gを浸漬して有機防縮剤を抽出する。抽出液から、不溶成分を濾過で取り除いた後、紫外可視吸収スペクトルを測定し、予め作成した検量線を用いて負極電極材料中の有機防縮剤の含有量を測定する。なお、他社製の電池を入手して有機防縮剤の含有量を測定する際に、有機防縮剤の構造式の厳密な特定ができないために検量線に同一の有機防縮剤が使用できない場合には、当該電池の負極板から抽出した有機防縮剤と、紫外可視吸収スペクトル、赤外分光スペクトル、およびNMRスペクトルなどが類似の形状を示す、別途入手可能な有機防縮剤を使用して検量線を作成することで、有機防縮剤の含有量を測定する。
負極電極材料中の有機防縮剤のS元素含有量(以下単に「S元素含有量」ともいう)は以下のようにして測定する。
満充電された鉛蓄電池を分解し、負極板を取り出し水洗により硫酸分を除去し、乾燥する。負極板から負極電極材料を分離し、1mol/LのNaOH水溶液に負極電極材料を浸漬して有機防縮剤を抽出する。抽出液から、不溶成分を濾過で取り除いた溶液を脱塩した後、濃縮・乾燥して粉末試料を得る。脱塩には、脱塩カラムやイオン交換膜が用いられる。
粉末試料0.1gをとり、粉末試料中のS元素を酸素燃焼フラスコ法により硫酸に変換した溶出液を得る。そして、トリンを指示薬として溶出液を過塩素酸バリウムで滴定して、粉末試料0.1g中のS元素含有量を求める。このS元素含有量を1g当たりの数量に変換して、有機防縮剤中のS元素含有量とする。
負極板には、上述の成分以外の他の成分を含有させても良い。他の成分としては、例えばカーボンブラック、硫酸バリウムが挙げられる。
電解液は希硫酸であることが好ましい。電解液の比重は特に限定されない。比重は、好ましくは1.15以上で1.35以下である。なお、電解液の比重は、20℃における値である。
電解液には、アルカリ金属イオン、アルミニウムイオン等のその他の成分が含有されていてもよい。
(1)負極板の作製
負極集電体(負極格子)は、表2〜8記載の組成のPb−Ca−Sn合金を用いた。Ca濃度とSn濃度とを変化させた合金を用いて、耳部を有する負極集電体をブックモールド法により鋳造した。負極集電体の厚さは2mm、耳部は、幅10mm、高さ25mm、厚さ2mmとした。
有機防縮剤としては、スルホン化リグニン、ビスフェノール類の縮合物及びナフタレンスルホン酸の縮合物を用いた。なお、表中600μmol/gの有機防縮剤としては、スルホン化リグニンを用い、その他の有機防縮剤には、ビスフェノール類の縮合物、ナフタレンスルホン酸の縮合物を用いた。なお、表2〜8に記載の有機防縮剤中のS元素量(μmol/g)については、負極電極材料として混合する前の有機防縮剤のそれぞれにおいて測定して求められた値が記載されている。
また、負極電極材料の密度は、後述の表2〜8示す値になるように調整した。
なお、負極電極材料の密度は、島津製作所製、自動ポロシメータ、オートポアIV9505を用い、前述の方法を用いて測定した。
Ca 0.06mass%、Sn 1.5mass%、Al 0.01mass%で、残部がPbと不可避不純物であるPb−Ca−Sn−Al合金を用いて、耳部を有する正極集電体(正極格子)をブックモールド法により鋳造した。正極集電体の厚さは4mm、耳部は幅10mm、高さ25mm、厚さ4mmである。鉛粉100質量部に対し、合成樹脂繊維0.1質量部を加え、比重1.10の硫酸でペースト化し、正極集電体に充填し、乾燥と熟成とを施して、未化成の正極板とした。なお、正極板から正極集電体(集電体本体部及び耳部)を除いたものを正極電極材料とする。
4枚の未化成の正極板の耳部を、純鉛(Pb 99.9mass%以上)の足し鉛を用いたストラップで互いに接続し、正極板群とした。同様に5枚の未化成の負極板の耳部を、耳部と同じ組成の足し鉛を用いたストラップで互いに接続し、負極板群とした。正極板群の正極板と負極板群の負極板との間に、保液体としてのリテイナーマットを挟み込んで、セルとした。圧迫を加えた状態のセルを電槽に収容し、蓋の溶着、端子の接続を行い、比重1.20の硫酸を加えてリテイナーマットに吸収させ、電槽化成を施し、制御弁式鉛蓄電池とした。電池は出力2V、定格容量50Ahであった。
電池の劣化の加速試験として、60℃の水槽に電池を浸し、2.23Vの充電電圧で、電池を6か月間連続で過充電した。6か月経過後に電池を解体し、負極の耳部の残存厚みを測定した。耳部の残存厚みは、以下の表1のように、6段階で評価した。表1の腐食レベルの値が小さい方が、腐食が抑制されており、良好な結果を示している。
各電池の結果を表2〜8に併記し、表2〜7から導き出されたデータから得られたグラフを図2〜7に示す。
なお、実施例において以上の結果になった理由は定かではないが、以下のように推測される。
負極耳部表面は、液膜が薄く、抵抗が大きいため、鉛/硫酸鉛の平衡電位よりも貴な電位になる。液膜中に酸素が溶けると、耳部表面で酸素吸収反応が生じて水が生成する。液膜の比重が低下すると、抵抗が増加するため、耳部の電位はさらに貴にシフトし、一定の電位に入ると腐食が進行すると考えられる。
なお、本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではない。
Claims (2)
- 正極板と、
負極板と、
電解液と、を備えた制御弁式鉛蓄電池であって、
前記負極板は、負極集電体と負極電極材料とを有し、
前記負極電極材料の密度が2.7g/cm 3 以上であり、
前記負極電極材料が有機防縮剤を含有し、
前記有機防縮剤中の硫黄元素(S元素)の含有量が3900μmol/g以上9000μmol/g以下であり、
前記負極集電体を構成する鉛合金に含まれるカルシウム(Ca)の含有量は、0.07mass%以上0.12mass%以下であり、
前記負極集電体を構成する鉛合金に含まれる錫(Sn)の含有量は、0.10mass%以上0.75mass%以下である、制御弁式鉛蓄電池。 - 前記負極電極材料の密度が3.5g/cm 3 以下である、請求項1に記載の制御弁式鉛蓄電池。
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