JP6723103B2 - 軸の製造方法 - Google Patents
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Description
この軸の製造方法を用いれば、ジャーナル相当部に対してだけ硬化処理が的確に行われることになり、ジャーナル部において耐摩耗性や疲労強度を向上させることができる。
しかも、軸素材の材料として、焼入れによる硬化処理が期待できない金属材料が用いられる場合には、そもそも硬化処理としてレーザ光照射を用いることができず、ジャーナル部の耐摩耗性や疲労強度を向上させることができない。
(1)軸素材として、軸素材本体の外周面にジャーナル相当部を有するものを用意し、該ジャーナル相当部に硬化処理を行うことによりジャーナル部を形成する軸の製造方法において、
前記軸素材として、前記ジャーナル相当部の外径を前記ジャーナル部の外径よりも拡径することにより、該ジャーナル相当部に該ジャーナル部に比して余肉部分を有するものを用意し、
前記硬化処理として、前記余肉部分を、該ジャーナル相当部の全周に亘って該ジャーナル相当部の径方向内方に向けて押し潰す構成とされている。
この構成によれば、ジャーナル相当部における余肉部分の押し潰しによりジャーナル相当部の全周面を塑性変形させることができ、その塑性変形部分(全周面部分)を的確に加工硬化させることができる。
また、軸素材の材料として、焼入れによる硬化処理が期待できない金属材料が用いられる場合においても、硬化処理として、ジャーナル相当部を径方向内方に向けて押し潰すことにより、塑性変形を生じさせ、ジャーナル部を加工硬化させることができる。
前記余肉部分を、前記ジャーナル相当部の全周に亘って該ジャーナル相当部の径方向内方に向けて押し潰すことが、一対のダイスにより、該ジャーナル相当部を挟持しつつ該ジャーナル相当部に対して転造加工を行うことである構成とされている。
この構成によれば、ジャーナル相当部に対してだけ、一対のダイスを用いて転造加工を行うことができることになり、簡単な転造設備を用いて、ジャーナル部だけを具体的に加工硬化させることができる。
前記一対のダイスとして、互いに対向する対向面を有すると共に、該両対向面が相対移動するものを用い、
前記一対のダイスの両対向面の相対移動を利用することにより、前記ジャーナル相当部を該一対のダイス間に取り込んで、該ジャーナル相当部を転動させつつ該ジャーナル相当部に転造加工を行う構成とされている。
この構成によれば、一対のダイスにより、特別に、軸素材の取付け(セット)、取外しを行うことなく転造加工を行うことができるばかりか、一対のダイスの相対移動に伴い、軸素材を、その一対のダイスの相対移動方向一方側から取り込んで、その軸素材を一対のダイスの相対移動方向他方側から搬出することができる。このため、ジャーナル相当部に対する転造加工を、連続的な流れ作業の下で行うことができ、当該軸を迅速に製造できる。
前記ジャーナル相当部として、該ジャーナル相当部における前記軸素材の軸線方向内方側において環状溝を有するものを用いる構成とされている。
この構成によれば、一対のダイスによる押圧面積を、ジャーナル相当部に環状溝を有しない場合に比して減らすことができ、転造加工に要する押圧力を減少させることができる。このため、ジャーナル相当部に対する転造加工を的確に行うことができる。
前記軸素材として、溶体化処理を経たものを用いる構成とされている。
この構成によれば、焼入れ焼き戻し処理が行えない軸素材においても、溶体化処理により金属組織を均一にすることができ、軸素材における基本的硬さの向上を図ることができる。更に、余肉部分をジャーナル相当部の径方向内方に向けて押し潰すことにより(冷間加工時(転造時))、加工硬化させ、ジャーナル部の硬さをより高めることができる。
ターボチャージャにおけるタービンシャフトを形成するために用いる構成とされている。
この構成によれば、ターボチャージャにおけるタービンシャフトを製造するために最適な製造方法を提供できる。
また、軸素材の材料として、焼入れによる硬化処理が期待できない金属材料が用いられる場合であっても、ジャーナル部の耐摩耗性や疲労強度を向上させることができる。
本実施形態に係る軸の製造方法を、排気ガスのエネルギを利用した自動車用ターボチャージャに用いられるタービンシャフトを例にとって説明する。
自動車には、図1に示すように、ターボチャージャ1を搭載したものが存在する。具体的に説明すれば、燃焼室2には、排気通路3、吸気通路4がそれぞれ連なっており、排気通路3にはタービンハウジング5が設けられ、吸気通路4にはコンプレッサハウジング6が設けられている。そのタービンハウジング5内にはタービンホイール7が収容され、コンプレッサハウジング6内にはコンプレッサインペラ8が収容されている。
前記タービンハウジング5と前記コンプレッサハウジング6との間には、ベアリングハウジング9が介在されている。そのベアリングハウジング9には、その内部において2つの軸受け(ジャーナル軸受け)10,11が取付けられており、その2つの軸受け10,11にタービンシャフト12が回転可能に支持されている。このタービンシャフト12は、その一端部がタービンハウジング5を貫通してタービンホイール7に連結され、その他端部は、コンプレッサハウジング6を貫通してコンプレッサインペラ8に連結されている。
これにより、タービンホイール7が排気ガスにより回転されると、その回転は、タービンシャフト12を介してコンプレッサインペラ8に伝達され、コンプレッサインペラ8は、吸気を圧縮して燃焼室2に送り出す。この際、タービンシャフト12は、10万rpm以上の回転数をもって回転することになり、タービンシャフト12は、高温度環境下で使用される。
タービンシャフト12は、図3に示す製造工程図(加工工程図)に従って製造される。
加工材料に基づき、要求特性を確保すると共に、後述の転造加工を適正に行うためである。この場合、上記加工材料を準備するに当たり、長尺な加工材料が一定長さに切断される。
加工材料としては、上記理由から、転造加工を行えるもの等が準備され、その加工材料の中には、焼入れによる硬化処理ができない金属材料としてのオーステナイト系ステンレスや、析出硬化系ステンレス、Ni基合金等の耐熱金属も含めることができる。特に、高温環境下で用いられ10万rpm以上の回転数で回転しなければならないタービンシャフト12の場合には、従来の軸材料であるSCM435等の構造用鋼に比してこれらの耐熱金属を用いることが好ましい。
第1軸素材25は、加工材料に対して塑性加工や除去加工を行うことにより形成され、その第1軸素材25は、軸状に形成されると共に、その一端部において、他の部分よりも拡径された拡径部13Aが形成される。このとき、拡径部13Aには、未だ、取付け部14、シール構造部15は形成されていない。
第1軸素材25全体の基本的硬さを高めつつ、その基本的硬さの均一化を図るためである。
熱処理としては、焼入れ焼戻し処理、又は溶体化処理(好ましくは溶体化処理に続いて時効処理を行うもの)を用いることができる。
焼入れ焼戻し処理は、第1軸素材25(加工材料)が焼入れ焼戻し可能材料である場合に用いることができ、溶体化処理は、第1軸素材25がステンレス、Ni基合金、オーステナイト系ステンレス(SUS303、SUS304、SUS316等)等である場合に用いることができる。また、溶体化処理の好ましい態様として、溶体化処理とその溶体化処理に続く時効処理とを行う場合には(以下、溶体化処理及び時効処理)、時効処理により結晶粒を細かくできる限り、第1軸素材25として、焼入れ焼戻し可能材料であるか否かにかかわらず種々の材料を用いることができる。
特に、熱処理として、溶体化処理及び時効処理を用いる場合には、第1軸素材25として、析出硬化系ステンレス、Ni基合金等を用いたものが好ましい。
これは、第1に、第1軸素材25が焼入れ焼き戻し処理を行えないものであっても、溶体化処理及び時効処理により結晶粒を細かくすることができることになり、溶体化処理及び時効処理を経た後に、第1軸素材25における基本的硬さの均一化を図ることができるからである。第2に、後述する転造加工において、ジャーナル相当部27における余肉部分28をそのジャーナル相当部27の径方向内方に向けて押し潰す際に、結晶粒を細かくできることに基づいて同じ圧力の下で塑性変形量を高めることができることになり、ジャーナル部18の硬さをより高めることができるからである。第3に、析出硬化系ステンレス、Ni基合金等は加工硬化し易い材料であり、その観点から、転造加工において、加工率を高めることができるからである。
第1軸素材25の拡径部13A以外の部分において、ジャーナル相当部27と軸本体部17とを形成するためである。
上記ジャーナル相当部27は、第1軸素材25において、拡径部13Aに隣合った領域を加工することにより形成され、本実施形態においては、その本体13Aとジャーナル相当部27との間に細幅の溝45が介在される。このジャーナル相当部27の径は、ジャーナル部18(図5中、仮想線参照)の径よりも拡径されており、ジャーナル相当部27は、その径方向外方において、ジャーナル部18に比して余肉部分28を有している。
このジャーナル相当部27には、本実施形態においては、その第2軸素材26の軸線方向中央部において環状溝19が形成される。このため、ジャーナル相当部27は、第2軸素材26の軸線方向において、環状溝19を基準として両側に、第1部分40と第2部分41とを有することになる。
上記軸本体部17は、上記ジャーナル相当部27よりも第1軸素材25の軸線方向他端側を加工することにより形成され、その径が所定径とされる。
尚、図5中、符号29は、切削加工具である。
前記荒加工(切削加工)に基づく歪みを取るためである。このため、前述の熱処理工程において、焼入れ焼戻し処理が行われた場合には、焼戻し処理温度以下の温度で熱処理され、溶体化処理の好ましい態様として、溶体化処理及び時効処理が行われた場合には、時効処理温度以下の温度で熱処理される。
ジャーナル相当部27における余肉部分28を塑性変形させて、ジャーナル部18として、加工硬化を生じたものを得るためである。勿論この場合、ジャーナル相当部27だけを転造加工することから、軸本体部17の軸歪を抑制できる。またこの場合、ジャーナル相当部27が拡径部13Aに溝45を介して離間されており、転造加工に際して、転造加工に使用するダイスの配置自由度を高めることができると共に、余肉を逃げ易くして転造加工時の変形性を高め、加工硬化し易くすることができる。
転造加工においては、丸ダイス転造盤、平ダイス転造盤、プラネタリ転造盤等を用いることができる。例えば、丸ダイス転造盤D1を用いてジャーナル相当部27を転造する場合には、図6に示すように、その一対の丸ダイス30,30間に第2軸素材26のジャーナル相当部27だけを挟持し、その状態で、一対の丸ダイス30,30を同速度で同一方向に回転させながら互いの距離を狭めることが行われる。これにより、余肉部分28が、そのジャーナル相当部27の全周に亘ってそのジャーナル相当部27の径方向内方に向けて押し潰され、その押し潰しに基づく塑性変形により、圧縮残留応力が生成されたジャーナル部18が形成される。
加えて、拡径部13Aと第1部分40の間に溝45が設けられており、転造時に余肉を逃げ易くして、塑性変形を促すことができる。
タービンシャフト12の仕上げ精度高めると共に、タービンシャフト12としての完成形状を得るためである。
このため、ジャーナル部18の外周面、端面が必要な精度の範囲で除去加工され、拡径部13Aに取付け部14及びシール構造部15が加工され、第2軸素材26の他端部に雄ねじ部16が加工される。勿論この場合、ジャーナル部18については、必要な加工精度の範囲内であれば、除去加工をする必要はない。
尚、図9中、符号36は切削加工具を示す。
特に、加工材料として、焼入れによる硬化処理が期待できないオーステナイト系ステンレス、析出硬化系ステンレス、Ni基合金等の耐熱金属が用いられる場合であっても、タービンシャフト12全体の基本的強度を高めつつ、ジャーナル部18の耐摩耗性や疲労強度を向上させることができ、高温環境下において用いられるタービンシャフト12として、好ましいものを提供できる。
(1)荒加工工程を熱処理工程に先立って行うこと。
(2)加工材料として、焼入れ処理ができるものを用いる場合には、熱処理工程において、焼入れ・焼き戻しによる調質処理を行ってもよいこと。
(3)丸ダイス転造盤としては、3つ以上の丸ダイスを有するものを用いてもよいこと。
12 タービンシャフト(軸)
18 ジャーナル部
19 環状溝
26 第2軸素材(軸素材)
27 ジャーナル相当部
28 余肉部分
30 丸ダイス
31 セグメントダイス
32 丸ダイス
39 平ダイス
Claims (5)
- ターボチャージャにおけるタービンシャフトの軸素材として、焼き入れによる硬化処理ができない耐熱金属製の軸素材本体の外周面に円柱状ジャーナル相当部を有するものを用意し、該ジャーナル相当部に加工硬化処理を行うことにより、ジャーナル軸受けに回転可能に支持される円柱状ジャーナル部を形成する軸の製造方法において、
前記軸素材として、前記ジャーナル相当部の外径を前記ジャーナル部の外径よりも拡径することにより、該ジャーナル相当部に該ジャーナル部に比して余肉部分を有するものを用意し、
前記加工硬化処理として、前記余肉部分を、該ジャーナル相当部の全周に亘って該ジャーナル相当部の径方向内方に向けて押し潰す、軸の製造方法であって、
前記ジャーナル相当部として、該ジャーナル相当部における前記軸素材の軸線方向内方側において幅広の環状溝を有するものを用いる、
ことを特徴とする軸の製造方法。 - 請求項1において、
前記余肉部分を、前記ジャーナル相当部の全周に亘って該ジャーナル相当部の径方向内方に向けて押し潰すことが、一対のダイスにより、該ジャーナル相当部を挟持しつつ該ジャーナル相当部に対して転造加工を行う、
ことを特徴とする軸の製造方法。 - 請求項2において、
前記一対のダイスとして、互いに対向する対向面を有すると共に、該両対向面が相対移動するものを用い、
前記一対のダイスの両対向面の相対移動を利用することにより、前記ジャーナル相当部を該一対のダイス間に取り込んで、該ジャーナル相当部を転動させつつ該ジャーナル相当部に転造加工を行う、
ことを特徴とする軸の製造方法。 - 請求項1において、
前記ジャーナル相当部は、該ジャーナル相当部の軸線方向中央部に形成した前記環状溝の両側に、前記ジャーナル軸受けの幅にそれぞれ対応する幅の第1部分と第2部分を有し、前記環状溝の幅が前記第1,第2部分の幅よりも大きい、
ことを特徴とする軸の製造方法。 - 請求項1において、
前記軸素材として、溶体化処理を経たものを用いる、
ことを特徴とする軸の製造方法。
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