JP6722485B2 - ビスフェノールf骨格含有フェノキシ樹脂、その製造方法、及びそれを用いた樹脂組成物 - Google Patents

ビスフェノールf骨格含有フェノキシ樹脂、その製造方法、及びそれを用いた樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明はビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂、その製造方法、及びそれを用いた樹脂組成物に関し、特に、表示素子関連部材の接着剤として好適に使用できる低粘度、低温熱圧着性、透明性に優れるビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂、樹脂ワニス、及びそれを用いた樹脂組成物の提供に関する。
従来から熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂は一般にフェノキシ樹脂として知られており、可撓性、耐衝撃性、絶縁性、密着性、機械的性質等が優れていることから、電気・電子分野では、磁気テープバインダー、フィルムコンデンサ用基材フィルム、モーター等の電気機械の絶縁ワニスや、回路基板用の接着剤やフィルム等、広範囲の用途に使用されている。そして、用途の拡大に応じて、液晶ディスプレイパネル等の表示素子関連部材の接着剤等にも適用がなされている。
表示素子関連部材としての接着剤は、その使用工程がパネルの貼り合わせ等、組み立て時の最終工程に近い場合があり、熱による貼り合わせに際して制限がかかることが多い。これは、すでに組み立てられた表示素子材料やその関連部材、表示素子を囲う筐体が熱による損傷を受けやすいことに由来する。
表示素子関連部材としての接着剤には表示素子やその関連部材、筐体に損傷を与えないよう、光硬化型接着剤の検討も広く検討されている。一般的に使用されている材料としては、液状のアクリル系接着剤又はベースフィルムに常温でタック性のあるアクリルポリマーが塗布された粘着フィルムであるが、液状接着剤の場合は接着部位以外への染み出しによる外観不良や光硬化時の硬化収縮による密着界面の剥離等の問題が発生し、常温でタック性のある粘着フィルムの場合はべたつきによるハンドリング面での欠点がある他、耐熱試験での剥離や耐湿試験での白化、電気的信頼性の面で問題がある。
この問題を改善するため、表示素子の関連部材としての接着剤は、常温でタックのないドライフィルム型接着剤が検討されている。ドライフィルム型接着剤の使用形態としては、表示素子の関連部材に熱損傷を与えない程度の熱を用いて基材と圧着させ、位置合わせのための仮接着を行った後に光又は熱処理を行うことで本接着を行うことが一般的である。
ドライフィルム型接着剤の要求特性としては、表示素子としての視認性を十分に果たせるだけの透明性、各種汎用的な基材に対する高い密着性と、室温でタック性がないこと、ドライフィルム自体としての造膜性等が求められるため、ガラス転移温度が室温以上のフェノキシ樹脂が適用されることがある。
一方で、昨今の情報機器の発達に伴い、スマートフォンを代表とする表示デバイスも多様化してきている。特に、タッチパネルと額縁印刷が施されたカバーパネルは、タッチパネルに接続する回路材料や電子部品を隠蔽する必要があり、額縁印刷の加飾性によっては印刷厚みが厚くなる場合がある。このため、この用途に用いられるドライフィルム型接着剤は、額縁印刷に由来する100μm程度の段差を追従し、隙間なく界面を密着させることが要求される。この時、ドライフィルム型接着剤としては、その製品形態からロール状に巻きつけられるだけの可撓性、接着後の十分な光線透過性と、室温でタック性がなく、表示素子関連部材に損傷を与えないだけの熱で溶融し、段差に追従できる高流動性を示し、被着材との良好な接着性を有することが求められる。
熱に弱い表示素子関連部材に対する接着剤としてのフェノキシ樹脂の適用として、特許文献1に記載されるような有機EL素子ラミネート封止用フィルム等が挙げられる。また、光学特性に優れるフェノキシ樹脂として、特許文献2、3に記載されるようなフェノキシ樹脂が挙げられる。
特許文献1には、ビスフェノールAやビスフェノールS骨格を含有するフェノキシ樹脂とエポキシ樹脂、ブロックイソシアネートを用いた、低温硬化が可能な有機EL封止用樹脂組成物が開示されている。しかし、有機EL表示素子はその厚みがnmオーダーであるため、段差追従性を求められるような低粘度化に対する記載はない。特許文献2に開示されているような、フルオレン構造のような縮合環を有するフェノキシ樹脂は、その剛直な構造によりガラス転移点及び溶融粘度が高くなるため、熱に弱い表示素子関連部材に対する接着剤としては不適である。特許文献3に開示されているような脂環構造を有するエポキシ樹脂を原料にしたフェノキシ樹脂は、貴金属触媒を用いた核水素化反応を経由する必要があり、経済的に不利であること、また、アルコール性水酸基とエピクロルヒドリンを出発原料とする場合は不純物となるクロルヒドリン体が発生しやすく、両末端エポキシ純度が低下するためフェノキシ樹脂の合成時に所望の分子量まで高分子鎖が成長しない。また末端基純度を上げるために蒸留等の精製を行うことは経済性の低下につながる。加えて、特許文献3に記載のフェノキシ樹脂は、重合性樹脂組成物とし、硬化してなる厚み50μmのフィルムにしたときの波長400nmでの透過率が80%以上と記載されているが、フェノキシ樹脂単独としての透明性や、表示素子関連部材用接着剤についての適用についてはなんら言及されていない。
一般的なフェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格のみで構成されたものがよく知られており、経済的に有利に入手することができる。しかし、ビスフェノールA骨格のみで構成されたフェノキシ樹脂はガラス転移点温度が90℃程度であり、熱に弱い表示素子関連部材に対する接着剤として使用するには流動開始温度が高いために、この用途での適用には困難を伴う。この欠点を改良するため、流動性に優れるビスフェノールF骨格を導入したフェノキシ樹脂もよく知られている。しかし、一般的にフェノキシ樹脂は2価のグリシジル基を有する樹脂と2価のフェノール性水酸基から合成される線状高分子であり、分岐が少ないことから目的とする分子量に応じて粘度がほぼ一義的に決定されてしまう。このため、たとえビスフェノールF骨格を導入してもフェノキシ樹脂の低粘度化には限界があり、さらなる段差追従性の要求や部材の変更に伴う低温熱圧着の要求が具現化した場合には適用が困難となる。
ビスフェノールF骨格を有するフェノキシ樹脂の粘度を低減させる方法として、分子量を同等にしつつ分岐度をあげ、ポリマーの慣性半径を小さくする手法も考えられる。具体的には、反応時にグリシジル基の開環により発生する2級アルコール性水酸基を、グリシジル基との反応点として活用することで高分子鎖を分岐させる手法が考えられる。しかし、これらの手法は分岐度と高分子鎖の成長反応のコントロールが難しく、低粘度化が容易に達成できず、往々にして分子量の分散が大きくなり結果として高粘度化、場合によっては架橋構造が局所的に発生することで不溶化する。
加えて、ビスフェノールF骨格を2価のフェノール性化合物として原料に使用するフェノキシ樹脂は、フェノキシ樹脂の製造時に酸化による着色が発生しやすい。これは、芳香族環を連結させているメチレン基が酸化されてカルボニル化、又は着色団を形成する別の構造に変化しやすいこと、反応時の中間体であるフェノキシド体が酸化されキノイド構造を取りやすいことに由来すると考えられる。
一方で、エポキシ樹脂を超多分岐(ハイパーブランチ)ポリマーとする試みもなされている。ハイパーブランチポリマーとはモノマーの重合において枝状に主鎖が分岐重合した高分子であり、球状に近くなることから同じ分子量の線状ポリマーと比較して慣性半径が短く、粘度が低くなるといった特徴がある。
特許文献4には、グリセリン−1,3−ジグリシジルエーテルをモノマーとし、酸又は塩基性触媒を用いて自己重合させ、多角度光散乱検出器によって測定された絶対分子量が、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された重量平均分子量の2倍以上であるエポキシ基含有ハイパーブランチポリマーが開示されている。しかし、アクリル酸ハライドや無水物を用いてアクリレート化した際の高硬度、硬化速度、低収縮性として有用な記載はあるものの、アクリレート化する前駆体であるグリセリン−1,3−ジグリシジルエーテルのポリエポキシドに関して、同分子量と比較したときの低粘度化に関する記載はない。加えて、グリセリン−1,3−ジグリシジルエーテル自体、芳香族から構成されるエポキシ樹脂とは異なり、主鎖の柔軟性が高いため、2級水酸基とエポキシ基の距離が分子内で接近しやすく、これにも記載されている通り開環時のプロトン交換平衡が起こりやすく1級アルコールが生成しやすい。これは貯蔵時又は反応時の品質が劣化しやすいことを意味し、グリセリン−1,3−ジグリシジルとビスフェノール類を原料とし、通常のような交互共重合型のフェノキシ樹脂を選択的に合成することは実現上かなりの困難を伴う。
特許文献5には、ゲル浸透クロマトグラフィーによるスチレン換算重量平均分子量が70000以上であり、光散乱法による重量平均分子量が70000以上の高分子量エポキシ重合体を用いたアディティブ用印刷配線板用エポキシ接着フィルムが開示されている。しかし、ゲル浸透クロマトグラフィーによる重量平均分子量と光散乱法による重量平均分子量に相違は見られず、低温での流動性の比較に関しても何ら記載はない。
特開2011−84667号公報 特開2013−32549号公報 国際公開2007/106795号 特開2010−150325号公報 特開平6−108016号公報
このため、従来技術のフェノキシ樹脂及びその製造方法では、同じ原料を用いた際の低粘度化が困難であり、表示素子部材用ドライフィルム型接着剤として好適な透明性、及び低粘度性を有する手法が望まれている。
本発明者らが鋭意検討した結果、ある種の触媒及び芳香族系有機溶剤を用いて合成したビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂が、ポリスチレン換算による分子量が従来のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂と同等でありながら、静的光散乱法により測定された分子量が通常より高分子量側にシフトしており、かつこのフェノキシ樹脂の末端エポキシ基が従来よりも多く残存していること、これを用いたワニスが従来技術と比較して低粘度化することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される構造を主鎖に有するビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による重量平均分子量(Mw)がポリスチレン換算値で30000〜60000であり、Mwとポリスチレン換算値の数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が3.5〜6.5であり、静的多角光散乱法による光散乱強度で示される分子量分布の強度が最大強度となる絶対分子量(MLS)とテトラヒドロフランを基準とする比屈折率で示される分子量分布の強度が最大強度となるポリスチレン換算による重量平均分子量(MRI)との比率(MLS/MRI)が3.0〜15であることを特徴とするビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂である。
Figure 0006722485
一般式(1)中、Aは2価の有機残基である。Yは下記一般式(1a)で表される基である。但し、Yの80モル%以上は、k=0成分である。nは10〜200の平均繰り返し数である。
Figure 0006722485
一般式(1a)中、Zは下記一般式(1b)又は(1c)で表される基である。R1は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mは独立に0〜4の数であり、m1は独立に0〜3の数である。kは平均値で0〜0.6の数である。
Figure 0006722485
一般式(1b)、(1c)中、Aは2価の有機残基である。Yは上記一般式(1)のYと同意である。n1及びn2は0〜200の平均繰り返し数である。
上記ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂のエポキシ当量は4000〜8500g/eq.が好ましく、フェノール性水酸基当量は7000〜17000g/eq.が好ましい。
上記一般式(1)中のAは、下記一般式(2)で表される2価の芳香族基であることが好ましい。
Figure 0006722485
一般式(2)中、Xは、単結合、メチレン基、ジメチルメチレン基、又は炭素数1〜4のアルキル置換基を有してもよい1,1−シクロへキシレン基である。R2は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。m2は独立に0〜4の数である。
上記一般式(2)で表される2価の芳香族基の例としては、下記一般式(2a)〜(2d)で表される基がある。
Figure 0006722485
一般式(2a)〜(2d)中、R2〜R5は及びm2〜m5は、それぞれ一般式(2)のR2及びm2と同意である。
さらに本発明は、下記一般式(3)で表される2価のエポキシ樹脂と、下記一般式(4)で表されるビスフェノールF化合物とを原料とし、オニウム塩類触媒の存在下、芳香族系溶媒中で、2価のエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル数(E1)とビスフェノールF化合物中のフェノール性水酸基のモル数(F1)の比率が、(E1):(F1)=1.035〜1.005:1の範囲で反応させることを特徴する上記一般式(1)で表されるビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法である。
Figure 0006722485
一般式(3)中、Aは2価の有機残基である。
Figure 0006722485
一般式(4)中、R1は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mは独立に0〜4の数であり、m1は独立に0〜3の数である。kは平均値で0〜0.6であるが、k=0の成分が80%(面積%)以上を占める。
また、本発明は、上記ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法で得られ、GPC測定によるMwがポリスチレン換算値で30000〜60000であり、MwとMnとの比率(Mw/Mn)が3.5〜6.5であり、静的多角光散乱法による重量平均分子量の光散乱強度で示される分子量分布の強度が最大強度となる絶対分子量(MLS)とテトラヒドロフランを基準とする比屈折率で示される分子量分布の強度が最大強度となるポリスチレン換算による重量平均分子量(MRI)との比率(MLS/MRI)が3.0〜15であるビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂である。
上記オニウム塩類触媒は、下記一般式(5)で表される有機ホスホニウム塩類であることが好ましく、上記芳香族系溶媒は、常圧下における沸点が80〜145℃であることが好ましい。
Figure 0006722485
ここで、R7は1価の炭化水素基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。X1は1価の陰イオンを形成する原子及び原子団である。
また、R7は下記(イ)〜(ハ)のいずれか1つの条件を満たすことが好ましい。
(イ)すべてのR7が炭素数1〜10のアルキル基、
(ロ)すべてのR7が置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアラルキル基、
(ハ)3つのR7が、置換基を有してもよいアリール基であり、1つのR7が炭素数1〜10のアルキル基。
また、X1はハロゲン原子、又は下記一般式(5a)〜(5c)のうちのいずれかであることが好ましい。
Figure 0006722485
一般式(5a)〜(5c)中、R8、R9は炭素数1〜4のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R10は炭素数1〜10のアルキル基を表す。
上記一般式(4)で表される構造のうち、k=0の成分が96.5面積%以上であることが好ましい。
さらに本発明は、上記ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を、有機溶媒を用いて樹脂濃度が15〜90質量%に調製された樹脂ワニスである。
さらに本発明は、上記ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂又は上記樹脂ワニスと、フェノキシ樹脂と反応性を有する硬化剤を必須成分として含有する樹脂組成物である。また、上記ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂又は上記樹脂ワニスを熱可塑性樹脂と使用し、これに硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂ややアクリレート等の光硬化性樹脂を配合した組成物である。また、その樹脂組成物を、光及び/又は熱処理することにより得られる硬化物である。
さらに本発明は、上記ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂、上記樹脂組成物又は上記樹脂ワニスを用いた光学用接着剤、コーティング剤、又は表示装置である。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は、低粘度、透明性、接着性、貯蔵安定性に優れ、その組成物は、光学材料用途、コーティング材料用途、電子材料用途として有用であり、特に昨今タッチパネルと額縁印刷されたカバーパネル用を貼り合せる際に用いるドライフィルム型接着剤おいて、課題となっている段差追従性といった問題の改善が期待できる。
実施例の樹脂の比屈折率差で示されるGPCチャートである。 比較例の樹脂の比屈折率差で示されるGPCチャートである。 実施例の樹脂の光散乱強度で示されるGPCチャートである。 比較例の樹脂の光散乱強度で示されるGPCチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は上記一般式(1)で表され、GPC測定によるMwがポリスチレン換算値で30000〜60000であり、Mw/Mn=3.5〜6.5であり、静的多角光散乱法による光散乱強度で示される分子量分布の強度が最大強度となる絶対分子量(MLS)とテトラヒドロフランを基準とする比屈折率で示される分子量分布の強度が最大強度となるポリスチレン換算による重量平均分子量(MRI)との比率(MLS/MRI)が3.0〜15である。
一般式(1)中、Aは2価の有機残基を表す。2価の有機残基としては、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基等の脂肪族炭化水素基、シクロヘキシレン基、1,4−ジメチレンシクロヘキシル基、デカヒドロナフチレン基、ビシクロヘキシレン基、4,4’−ジメチレンビシクロヘキシル基等の脂環族炭化水素基、フェニレン基、m−キシリレン基、p−キシリレン基、ナフチレン基、ジメチレンナフチル基、ビフェニレン基、ビスフェノール類から誘導される芳香族含有有機残基等が挙げられるがこれらに限定されず、各々同一でも異なっていてもよい。また、これらの2価の有機残基は炭素数1〜8の1価の炭化水素基を置換基として有しても良い。好ましい置換基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、スチレニル基等が挙げられるがこれらに限定されない。好ましいAとしては、ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂としたときの低粘度性、透明性、接着性、経済性等の物性の観点から、上記一般式(2)で表される2価の芳香族基である。
なお、一般式(1)〜(4)において、共通の記号は特に断りがない限り同義である。
一般式(2)中、Xは、単結合、メチレン基、ジメチルメチレン基、又は炭素数1〜4のアルキル基を置換基として有してもよい1,1−シクロへキシレン基である。
2は独立して、炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、スチレニル基等が挙げられるがこれらに限定されない。m2は独立して0〜4の数である。好ましい態様としては、入手性、低粘度性、透明性の観点から、m2が0で表される構造である。
一般式(1)中、Yは上記一般式(1a)で表される基である。一般式(1a)中、Zは上記一般式(1b)又は(1c)で表される基である。一般式(1b)、(1c)中のA及びYは、一般式(1)におけるA及びYと同意である。n1及びn2は平均繰り返し数であり、0〜200範囲である。
一般式(1a)中、R1は炭素数1〜8の一価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、スチレニル基等が挙げられるがこれらに限定されない。mは0〜4のいずれかの数である。好ましい態様としては、入手性、低粘度性、透明性の観点から、m=0で表される構造である。
一般式(1)中、nは平均繰り返し数であり、10〜200の範囲である。この範囲にあることで、表示部材用ドライフィルム型接着剤としての可撓性、接着後の十分な光線透過性、室温での非タック性、低熱溶融性、段差に追従できる低流動性、被着材との良好な接着性を示すビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂を得ることができる。好ましいnの範囲としては、12〜150であり、さらに好ましくは15〜120である。nが10未満の場合は可撓性に乏しく、ロール状に巻きつけることが困難となる。nが200を超える場合は、分子量が大きすぎるために高粘度となり、段差追従性の達成が困難となる。また、同様の理由により、n+n1+n2の範囲は10〜200であることが好ましい。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂のMwは、ポリスチレン換算値で30000〜60000である。Mwが30000未満の場合は可撓性に乏しく、ロール状に巻きつけることが困難となる。一方、Mwが60000を超える場合は分子量が大きすぎるために高粘度となり、段差追従性の達成が困難となる。この範囲であれば、表示部材用ドライフィルム型接着剤としての可撓性、接着後の十分な光線透過性、室温での非タック性、低熱溶融性、段差に追従できる低流動性、被着材との良好な接着性を示すビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂を得ることができる。Mwの好ましい範囲は32000〜58000であり、より好ましい範囲は35000〜55000である。ここで、MwはGPC測定により求められ、GPC測定条件は実施例に記載した条件による。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂のMwとMnの比率(Mw/Mn)は、3.5〜6.5である。Mw/Mnが低い場合は、本発明の製造方法においてエポキシ当量が本発明の範囲を超える等、製造が困難になる恐れがある。Mw/Mnが高い場合は、副反応として発生する分岐構造を多量に含んでいる状態であり、高分子主鎖の自由度が分岐構造により制限されることからフィルムとしたときの脆さが現れる恐れがある。この範囲であれば、表示部材用ドライフィルム型接着剤としての可撓性、接着後の十分な光線透過性、室温での非タック性、低熱溶融性、段差に追従できる低流動性、被着材との良好な接着性を示す等、より良い特性を示すビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂を得ることができる。Mw/Mnの好ましい範囲は3.6〜6.4であり、より好ましい範囲は3.7〜6.3であり、さらに好ましい範囲は3.8〜6.0である。ここで、Mw及びMnはGPC測定により求められ、GPC測定条件は実施例に記載した条件による。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は、静的多角光散乱法による光散乱強度で示される分子量分布の強度が最大強度となる絶対分子量(MLS)とテトラヒドロフランを基準とする比屈折率で示される分子量分布の強度が最大強度となるポリスチレン換算による重量平均分子量(MRI)との比率(MLS/MRI)は、3.0〜15である。MLS/MRIが低い場合は、高分子主鎖の分岐度が少ない場合であり、結果として溶融粘度が高くなり本発明の効果が得られない。MLS/MRIが高い場合は、絶対分子量が高くなることで、溶融粘度が高くなるほか、分岐構造が多くなることで架橋構造を取りやすくなり貯蔵安定性の悪化や溶剤への不溶化を招くため好ましくない。この範囲であれば、表示部材用ドライフィルム型接着剤としての可撓性、接着後の十分な光線透過性、室温での非タック性、低熱溶融性、段差に追従できる低流動性、被着材との良好な接着性を示す等、より良い特性を示すビスフェノール骨格含有フェノキシ樹脂を得ることができる。MLS/MRIの好ましい範囲は3.5〜12であり、より好ましい範囲は4.0〜10である。ここで、MLS及びMRIはGPC測定により求められ、GPC測定条件は実施例に記載した条件による。
このような分岐構造が多い特異的なビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂が創出できたことについて、発明者らは下記のように考察している。
一般的なGPC測定は、分子量が既知であるポリスチレンなどの標準物質を用いて検量線を作成し、溶出時間により分子量に換算する手法として用いられる。分子量の分画はカラムに充填されているゲルに浸透する際の高分子の分子体積に由来する排除現象によって行われるため、検量線からの分子量計算はあくまでポリスチレンの溶液中の分子体積が基準となる。つまり、溶出時間と分子量からなる検量線は溶液中の分子体積から作成されるが、主鎖骨格が異なる高分子や分岐構造を内部に有する高分子においては溶液中の分子体積が標準物質と異なるため、あくまでポリスチレンの分子体積を指標とした相対値としての分子量しか表すことができない。
一方で静的多角光散乱法による分子量測定は、高分子を1つの粒子とみなし、1つの粒子に光を当てた時に発生する散乱現象を応用したものであり、その散乱強度は高分子溶液の濃度、分子量、屈折率の濃度依存性に比例することが知られている。あらかじめ屈折率の濃度依存性を測定しておき、散乱強度の濃度依存性、角度依存性を測定することで分子量を決定することができる。また、理論的には得られた散乱強度により溶液の化学ポテンシャルを導き、化学ポテンシャルの濃度に対する微分式において溶液濃度を0と極限近似した場合には、化学ポテンシャルは分子量の逆数で理論的に表されるため、静的多角光散乱法による分子量測定で得られた分子量は絶対分子量として取り扱うことができる。
本発明で定義した、静的多角光散乱法による光散乱強度で示される分子量分布の強度が最大強度となる絶対分子量(MLS)とテトラヒドロフランを基準とする比屈折率で示される分子量分布の強度が最大強度となるポリスチレン換算による重量平均分子量(MRI)との比率(MLS/MRI)は、言うなれば(絶対分子量)/(分子体積)として表現できる。同じ主鎖骨格を持つ高分子同士で比較した場合には、分子体積を一定にしたとき、絶対分子量は主鎖の分岐度合いにより変化するため、(絶対分子量)/(分子体積)は分岐度の指標として見なすことができる。つまり、この値が高いほど、分岐度が高いと表現できる。
フェノキシ樹脂自体は2官能のエポキシ樹脂と2官能のビスフェノール類から合成され、通常はエポキシ当量として10000g/eq.以上までエポキシ基が消費されているが、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は、GPC法におけるMn及びMw、分子量分布が通常のフェノキシと同程度でありながら、エポキシ基及びフェノール性水酸基が通常のフェノキシ樹脂より多く残っていることが判明した。この現象について詳細に調べるべく、静的多角光散乱法を用いた分子量測定を行ったところ、通常のフェノキシ樹脂と比較して絶対重量平均分子量が高く、光散乱強度で示される分子量分布のピークが高分子量側にシフトしていることが判明した。GPC法による分子量分布が通常のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂とほぼ同一であったことを鑑みると、エポキシ基とフェノール性水酸基との官能基以外の箇所で分岐反応が進行し、結果として絶対分子量が増大しながらも、分岐構造が多くなることで結果的に分子体積としては同等程度になったものと推測される。そして、このようなビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は分岐構造が通常のフェノキシ樹脂より多く有するために、同体積であればフェノキシ樹脂の有する直鎖構造よりもよりも丸まった構造に近くなっていることが推測される。高分子の粘度は基本的にその構造が有する「広がり」に依存する為、同体積であれば直鎖状の分子よりも丸まった構造を有する分子の方が粘度は低くなる。本発明で得られるフェノキシ樹脂はこのような丸まった構造を有する成分が多くなり溶融時の粘度が低くなることで、本発明の効果を得ることができたと考察される。
従って、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、4000〜8500が好ましく、4200〜8300がより好ましく、4500〜8000がさらに好ましい。エポキシ当量が低い場合は、単独で用いた際の造膜性が弱くなる。一方、エポキシ当量が高い場合は、エポキシ基と反応性を有する硬化剤を用いても十分な効果が得られない。この範囲であれば、本発明のフェノキシ樹脂を単独で用いた際の造膜性のみならず、エポキシ基と反応性を有する硬化剤を用いて硬化させることで硬化物を作成することができる。従来のフェノキシ樹脂はエポキシ当量が非常に大きいため、即ち、樹脂中に含まれるエポキシ基の数が非常に少ないため、エポキシ基と反応性を有する硬化剤を用いても反応に取り込まれず、かえって未反応物として残存するために耐熱性等が悪化する傾向にある。本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂はエポキシ基を残存させたまま高分子量化を行うことが可能であるため、熱硬化型フィルム樹脂組成物としての設計が可能であり、用途に応じて種々の硬化性フィルムを得ることができる。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂のフェノール性水酸基当量(g/eq.)は、7000〜17000が好ましく、7500〜16500がより好ましく、8000〜16000がさらに好ましい。この範囲であれば、表示素子部材用ドライフィルム型接着剤として使用した場合、より好適な透明性及び低粘度性を示す。フェノール性水酸基当量が小さい場合は、エポキシ基が十分に消費されていない状態であり、貯蔵安定性の面で粘度や分子量の上昇等が現れる等、十分な効果が得られない恐れがある。一方フェノール性水酸基当量が大きい場合は、十分にエポキシ基との反応が進行している状態であり、低溶融粘度の観点から本発明の効果が得られない恐れがある。
一般的なフェノキシ樹脂は2官能のエポキシ樹脂とエポキシ基と反応性を有する2官能の樹脂及びモノマーより合成されるが、その反応の特徴から、エポキシ基又はエポキシ基と反応性を有する官能基がほぼ消失したところで反応が完結する。一方で本発明の製造方法により得られるビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は、エポキシ基とフェノール性水酸基がともに残存したままで高分子量化反応が進行し、結果として両方の官能基が共存している性状を有している。
この理由として、エポキシ樹脂とビスフェノールF化合物に存在するフェノール性水酸基の反応の他に、エポキシ基とフェノール性水酸基以外の部位で高分子主鎖同士の付加又は縮合反応が発生し、エポキシ基とフェノール性水酸基が残存したままで高分子量化反応が副反応として進行すると推測している。例えば、ジヒドロキシジフェニルメタン部位中のメチレン基や、エポキシ基とフェノール性水酸基の反応によって生成する2級炭素上での水素引き抜きが発生し、ベンジル位や2級炭素上にてカチオン又はアニオンが発生することで、ベンゼン環とメチレン部位や2級炭素上の親電子付加、求核置換反応、2量化反応等の、エポキシ基とフェノール性水酸基が関与しない副反応が発生すると推測している。この現象はビスフェノールF骨格を有するビスフェノールF化合物、特定の溶媒と特定の触媒を選択することで発現すると発明者らは推測している。このため、同じ分子量であっても分子の慣性半径が短くなり、結果として溶融時の低粘度化につながったと考える。そして、本発明の手法を用いれば、互いに反応する官能基が共存していても、保管中に樹脂が変質することなく良好な貯蔵安定性を有するフェノキシ樹脂及びそのワニスを得ることができる。
次に本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法について述べる。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法は、上記一般式(3)で表される2価のエポキシ樹脂と、上記一般式(4)で表されるビスフェノールF化合物とを、オニウム塩類触媒の存在下、芳香族系溶媒中で、2価のエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル数(E1)とビスフェノールF化合物中のフェノール性水酸基のモル数(F1)の比率が、(E1):(F1)=1.035〜1.005:1の範囲で反応させる。
この比率で反応することで、低粘度、透明性、接着性、フィルム性、貯蔵安定性に優れるビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を得ることができる。比率が1.035を超える場合は、Mwを本発明の範囲に制御することが難しく、結果として本発明の効果を得ることが困難となる。比率が1.005未満の場合はMLS/MRIが範囲外となり、溶融粘度が高くなるほか、分岐構造が多くなることで架橋構造を取りやすくなり、貯蔵安定性等の悪化や溶剤への不溶化を招くため好ましくない。また、フェノール性水酸基当量もこの比率を外れると好ましい範囲を外れる恐れがある。(E1):(F1)の好ましい範囲は1.032〜1.010:1であり、より好ましい範囲は1.030〜1.012:1である。
上記一般式(3)で表される2価のエポキシ樹脂としては、公知の化合物であれば種々のものを適用することができる。例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、又は1,6−ヘキサンジオール等の鎖状脂肪族ジオール類から誘導されるエポキシ樹脂や;シクロヘキサンジオール、シクロデカンジオール、ビシクロヘキサンジオール、デカリンジオール、シクロヘキサンジメタノール、又はビシクロヘキサンジメタノール等の環状脂肪族ジオール類から誘導されるエポキシ樹脂や;ポリエチレンエーテルグリコール、ポリオキシトリメチレンエーテルグリコール、又はポリプロピレングリコール等のポリアルキレンエーテルグリコールから誘導されるエポキシ樹脂や;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールAP、ビスフェノールBP、ビスフェノールE、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールAD、ビスフェノールAF、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、ビスフェノールZ、ビスフェノールTMC、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、チオジフェノール、臭素化ビスフェノールA、又は単官能フェノールとアルデヒド基を1つ有する化合物との縮合反応により得られるビスフェノール類、あるいは単官能フェノールとカルボニル基を一つ有する化合物との縮合反応により得られるビスフェノール類等から誘導される芳香族基含有エポキシ樹脂が挙げられるがこれらに限定されない。好ましいエポキシ樹脂としては、入手の経済性、透明性、低溶融粘度の観点からビスフェノールA、ビスフェノールF、ビフェノール、又はビスフェノールZから誘導される2価のエポキシ樹脂である。
なお、ビスフェノールF化合物とエピハロヒドリンから得られるエポキシ樹脂をさらに蒸留することにより得られるビスフェノールFジグリシジルエーテル[4,4’−メチレンビス(グリシジルオキシベンゼン)、2,2’−メチレンビス(グリシジルオキシベンゼン)及び2,4’−メチレンビス(グリシジルオキシベンゼン)の混合物]の含有率が98質量%以上のエポキシ樹脂又は上記一般式(4)のk=0の成分が99面積%以上のビスフェノールF化合物とエピハロヒドリンから得られるエポキシ樹脂と、2価のフェノール性化合物と反応させることでも一般式(1)の構造が得られる。ただし、上記一般式(3)で表される2価のエポキシ樹脂と上記一般式(4)で表されるビスフェノールF化合物を用いることが経済性の面から好ましい。
上記一般式(4)において、R1は独立に炭素数1〜8の1価の炭化水素基を表す。このような炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ヘキシル基、フェニル基、又はスチレニル基等が挙げられるがこれらに限定されない。mは独立に0〜4の数であり、m1は独立に0〜3の数である。好ましい態様としては、入手性、低粘度性、透明性の観点から、m=0及びm1=0で表される構造である。kは平均値で0〜0.6の数であるが、k=0の成分は80%(面積%)以上であり、95%以上が好ましく、96.5%以上がより好ましい。k=0の成分が80%未満の場合は、3官能以上の成分が多くなることから反応点が多くなり、反応が進行するにつれて不溶化しやすく、本発明の効果が得られにくくなる。また、k=0の成分を2核体、k=1の成分を3核体、k=2の成分を4核体、k=3の成分を5核体とそれぞれ表現する場合がある。本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は、一般式(4)におけるkの値が0であるビスフェノールF化合物を用いることが最も好ましいが、このようなビスフェノールF化合物を得るためには一般的に晶析操作による処理を伴うことから経済的に不利である。本発明の効果を得るためのkの範囲は0〜0.6であり、この範囲での多核体を伴うビスフェノールF化合物であってよい。好ましくは0.0005〜0.05、さらに好ましくは0.001〜0.01である。なお、k=0の成分等の%は、GPC測定に基づく面積%であり、GPC測定条件は実施例に記載した分子量の測定条件と同条件である。
また、本発明で使用するビスフェノールF化合物中の2核体には、異性体が存在することがよい。本発明では、4,4’−体、2,2’−体、2,4’−体の3種類の異性体比を制御することが重要であり、その他の異性体は無視して構わない。この異性体比は、液体クロマトグラフィー(HPLC)測定による面積比で、4,4’−体は、40%以下が好ましく、29〜37%がより好ましい。2,2’−体は20%以下が好ましく、14〜19%がより好ましい。2,4’−体は40〜100%が好ましく、44〜60%がより好ましい。これらの異性体が上記の割合を超えた場合は、前述した反応が起こりにくくなり、エポキシ基とフェノール性水酸基が残存したままで高分子量化した本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂が得られない恐れがある。なお、HPLC測定条件は実施例に記載した条件による。
また、2価のエポキシ樹脂とビスフェノールF化合物との反応を行う際に、本発明の作用効果に影響がない範囲において、さらに、2価のフェノール性化合物を併用することができる。使用できる量は、ビスフェノールF化合物100質量部に対し、100質量部以下が好ましく、50質量部以下がより好ましく、25質量部以下がさらに好ましい。
2価のフェノール性化合物を併用する場合は、ビスフェノールF化合物中のフェノール性水酸基のモル数と、2価のフェノール性化合物中のフェノール性水酸基のモル数の合計をモル数(F1)として、2価のエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル数(E1)とのモル比率(E1:F1)=1.035〜1.005:1の範囲で反応する。
併用できる2価のフェノール性化合物としては、具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールC、ビスフェノールK、ビスフェノールAP、ビスフェノールBP、ビスフェノールE、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールAD、ビスフェノールAF、ビスフェノールフルオレン、ビスクレゾールフルオレン、ビスフェノールZ、ビスフェノールTMC、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールZ、ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、メチルハイドロキノン、ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ブチルハイドロキノン、ジブチルハイドロキノン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシメチルナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシジフェニルスルフィド、チオジフェノール、臭素化ビスフェノールA、又は単官能フェノールとアルデヒド基を1つ有する化合物との縮合反応により得られるビスフェノール類、あるいは単官能フェノールとカルボニル基を一つ有する化合物との縮合反応により得られるビスフェノール類等が挙がられる。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法において用いる触媒は、ホスホニウム塩類、アンモニウム塩類、ヨードニウム塩類及びスルホニウム塩類等のオニウム塩類であり、一般式(5)で表される有機ホスホニウム塩類が好ましく、必要に応じて2種以上を用いてもよい。
一般式(5)中、R7は1価の炭化水素基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、下記(イ)〜(ハ)のいずれか一つの条件を満たすものが好ましい。
(イ)すべてのR7が炭素数1〜10のアルキル基。
(ロ)すべてのR7が置換基を有してもよいアリール基又は置換基を有してもよいアラルキル基。
(ハ)3つのR7が、置換基を有してもよいアリール基であり、1つのR7が炭素数1〜10のアルキル基。
上記(イ)又は(ハ)に記載の炭素数1〜10のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、又はデシル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記(ロ)又は(ハ)に記載の、置換基を有してもよいアリール基としては、例えばフェニル基、トルイル基、ジメチルフェニル基、tert−ブチルフェニル基、メトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、又はtert−ブトキシフェニル基等が挙げられるがこれらに限定されない。また、置換基を有してもよいアラルキル基としては、例えばベンジル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、4−イソプロピルベンジル基等が挙げられるがこれらに限定されない。
上記一般式(5)中、X1は1価の陰イオンを形成する原子又は原子団である。また、ハロゲン原子、(R8O)2PO2 -、(R9O)2PS2 -又はR10CO2 -であるものが好ましい。但し、R8及びR9は炭素数1〜4のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。R10は炭素数1〜10のアルキル基を表す。(R8O)2PO2 -、(R9O)2PS2 -又はR10CO2 -は、上記一般式(5a)〜(5c)で表される。
8、R9は炭素数1〜4のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましくはメチル基又はエチル基である。R10は炭素数1〜10のアルキル基を表し、好ましくはメチル基である。
一般式(5)で表される有機ホスホニウム塩類を例示すると、R7が上記(イ)を満足する場合は次のとおりである。
1がハロゲンの場合:テトラメチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムヨージド、テトラエチルホスホニウムクロリド、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラエチルホスホニウムヨージド、テトラ−n−プロピルホスホニウムクロリド、テトラ−n−プロピルホスホニウムブロミド、テトラ−n−プロピルホスホニウムヨージド、メチルトリブチルホスホニウムクロリド、メチルトリブチルホスホニウムブロミド、メチルトリブチルホスホニウムヨージド、テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミド、テトラ−n−ブチルホスホニウムヨージド、テトラ−n−ヘキシルホスホニウムクロリド、テトラ−n−ヘキシルホスホニウムブロミド、テトラ−n−ヘキシルホスホニウムヨージド、テトラ−n−オクチルホスホニウムクロリド、テトラ−n−オクチルホスホニウムブロミド、テトラ−n−オクチルホスホニウムヨージド、テトラ−n−デシルホスホニウムクロリド、テトラ−n−デシルホスホニウムブロミド、テトラ−n−デシルホスホニウムヨージド、リメチルシクロヘキシルホスホニウムブロミド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムヨージド等。
1が一般式(5a)の場合:テトラメチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラメチルホスホニウムジエチルホスフェート、テトラエチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラエチルホスホニウムジエチルホスフェート、メチルトリプロピルホスホニウムジメチルホスフェート、メチルトリプロピルホスホニウムジエチルホスフェート、メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート、メチルトリブチルホスホニウムジエチルホスフェート、テトラ−n−ブチルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラ−n−ブチルホスホニウムジエチルホスフェート、テトラ−n−ヘキシルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラ−n−ヘキシルホスホニウムジエチルホスフェート、メチルトリヘキシルホスホニウムジメチルホスフェート、メチルトリヘキシルホスホニウムジエチルホスフェート等。
1が一般式(5b)の場合:テトラメチルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、テトラメチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラエチルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、テトラエチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラプロピルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、テトラプロピルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、メチルトリブチルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、メチルトリブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ヘキシルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ヘキシルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、メチルトリーn−ヘキシルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、メチルトリーn−ヘキシルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等。
1が一般式(5c)の場合:テトラエチルホスホニウムアセテート、テトラエチルホスホニウムプロピオネート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムプロピオネート、テトラブチルホスホニウムヘキサン酸塩、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩等。
7が上記(ロ)を満足する場合は次のとおりである。
1がハロゲンの場合:テトラフェニルホスホニウムクロリド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨージド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ベンジルトリフェニルホスホニウムブロミド、ベンジルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムヨージド等。
1が一般式(5a)の場合:テトラフェニルホスホニウムジメチルホスフェート、テトラフェニルホスホニウムジエチルホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムジメチルホスフェート、ベンジルトリフェニルホスホニウムジエチルホスフェート等、
1が一般式(5b)の場合:テトラフェニルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、テトラフェニルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、ベンジルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、ベンジルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等。
1が一般式(5c)の場合:テトラフェニルホスホニウムアセテート、テトラフェニルホスホニウムプロピオネート、テトラフェニルホスホニウムブタン酸塩、テトラフェニルホスホニウムヘキサン酸塩、テトラフェニルホスホニウムオクタン酸塩、テトラフェニルホスホニウムデカン酸塩、ベンジルトリフェニルホスホニウムアセテート、ベンジルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、ベンジルトリフェニルホスホニウムブタン酸塩、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサン酸塩、ベンジルトリフェニルホスホニウムオクタン酸塩、ベンジルトリフェニルホスホニウムデカン酸塩等。
7が上記(ハ)を満足する場合は次のとおりである。
1がハロゲンの場合:メチルトリフェニルホスホニウムクロリド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、プロピルトリフェニルホスホニウムクロリド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロミド、プロピルトリフェニルホスホニウムヨージド、ブチルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、ブチルトリフェニルホスホニウムヨージド、ヘキシルトリフェニルホスホニウムクロリド、ヘキシルトリフェニルホスホニウムブロミド、ヘキシルトリフェニルホスホニウムヨージド等。
1が一般式(5a)の場合:メチルトリフェニルホスホニウムジメチルホスフェート、メチルトリフェニルホスホニウムジエチルホスフェート、エチルトリフェニルホスホニウムジメチルホスフェート、エチルトリフェニルホスホニウムジエチルホスフェート、プロピルトリフェニルホスホニウムジメチルホスフェート、プロピルトリフェニルホスホニウムジエチルホスフェート、ブチルトリフェニルホスホニウムジメチルホスフェート、ブチルトリフェニルホスホニウムジエチルホスフェート、ヘキシルトリフェニルホスホニウムジメチルホスフェート、ヘキシルトリフェニルホスホニウムジエチルホスフェート等。
1が一般式(5b)の場合:メチルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、メチルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、エチルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、エチルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、プロピルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、プロピルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、ブチルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、ブチルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、ヘキシルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジメチルホスホロジチオエート、ヘキシルトリフェニルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート等。
1が一般式(5c)の場合:メチルトリフェニルホスホニウムアセテート、メチルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、メチルトリフェニルホスホニウムブタン酸塩、メチルトリフェニルホスホニウムヘキサン酸塩、メチルトリフェニルホスホニウムオクタン酸塩、メチルトリフェニルホスホニウムデカン酸塩、エチルトリフェニルホスホニウムアセテート、エチルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、エチルトリフェニルホスホニウムブタン酸塩、エチルトリフェニルホスホニウムヘキサン酸塩、エチルトリフェニルホスホニウムオクタン酸塩、エチルトリフェニルホスホニウムデカン酸塩、プロピルトリフェニルホスホニウムアセテート、プロピルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、プロピルトリフェニルホスホニウムブタン酸塩、プロピルトリフェニルホスホニウムヘキサン酸塩、プロピルトリフェニルホスホニウムオクタン酸塩、プロピルトリフェニルホスホニウムデカン酸塩、ブチルトリフェニルホスホニウムアセテート、ブチルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、ブチルトリフェニルホスホニウムブタン酸塩、ブチルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、ブチルトリフェニルホスホニウムヘキサン酸塩、ブチルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、ブチルトリフェニルホスホニウムオクタン酸塩、ブチルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、ブチルトリフェニルホスホニウムデカン酸塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウムアセテート、ヘキシルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、ヘキシルトリフェニルホスホニウムブタン酸塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、ヘキシルトリフェニルホスホニウムヘキサン酸塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、ヘキシルトリフェニルホスホニウムオクタン酸塩、ヘキシルトリフェニルホスホニウムプロピオネート、ヘキシルトリフェニルホスホニウムデカン酸塩等。
一般式(5)で表される有機ホスホニウム塩類は、上記に限定されない。
これらの中でより好ましい有機ホスホニウム塩類は、R7がメチル基、ブチル基、フェニル基のいずれかであり、上記(イ)、(ロ)、(ハ)のいずれかの条件を満たすものであり、X1がハロゲン原子で表されるものである。さらに好ましい有機ホスホニウム塩類はテトラメチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨージド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムヨージドである。
上記以外のオニウム塩類としては、例えば、ベンジルトリエチルホスホニウムブロミド、フェニルトリエチルホスホニウムブロミド、(tert−ブトキシカルボニルメチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、2−ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウムブロミド等の有機ホスホニウム塩類や;テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド等の有機アンモニウム塩類や;ジフェニルヨードニウムヨージド、フェニル(2‐メチルフェニル)ヨードニウムヨージド、フェニル(4‐メチルフェニル)ヨードニウムヨージド、フェニル(2,5‐ジメチルフェニル)ヨードニウムヨージド等の有機ヨードニウム塩類や;トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムヨージド、トリメチルスルホニウムクロリド、トリメチルスルホニウム・ブロミド、トリメチルスルホニウムヨージド、ジメチルフェニルスルホニウムクロリド、ジメチルフェニルスルホニウムブロミド、ジメチルフェニルスルホニウムヨージド、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムブロミド、4−tert−ブチルフェニルジフェニルスルホニウムヨージド、4−tert−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムブロミド、4−tert−ブトキシェニルジフェニルスルホニウムヨージド、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムブロミド、トリス(4−tert−ブチルフェニル)スルホニウムヨージド、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウムブロミド、トリス(4−tert−ブトキシフェニル)スルホニウムヨージド、p−トリルジフェニルスルホニウムブロミド等の有機スルホニウム塩類等が挙げられる。
また、本発明の範囲を損なわない程度で、エポキシ基とフェノール性水酸基を反応させることが可能な触媒を併用してもよい。例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシド、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等のアルカリ金属ハライド化合物、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩や、トリ−n−プロピルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−2,5−キシリルホスフィン、トリ−(p−メトキシフェニルホスフィン)等の有機ホスフィン化合物や、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン化合物や、ピリジン、キノリン、イソキノリン、ピペラジン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等の窒素原子含有複素環化合物等が挙げられる。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造における、触媒濃度については特に限定されないが、通常5ppm〜100000ppmである。5ppm以下では反応速度が非常に遅く経済的に不利であり、100000ppmを超えると副反応の進行が無視できなくなり、場合によっては樹脂が不溶化するため好ましくない。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法に用いる溶媒は、芳香族系溶媒であればよい。このような溶媒としては公知の物であれば特に限定されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロルベンゼン、塩化ベンジル、アニソール、メトキシトルエン等が挙げられるがこれらに限定されず、2種以上を併用してもよい。これらの中でより好ましい芳香族系溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等の常圧下における沸点が80〜145℃の溶媒である。特に好ましい溶媒は、安全性、乾燥に必要なエネルギーと時間の観点から、トルエンである。
上記芳香族系溶媒を使用することで比較的容易に本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を得ることができる。これ以外の溶媒の場合、反応制御が難しく反応終点の判断が困難となる場合がある。また、芳香族系溶媒以外の溶媒を併用する場合は、芳香族系溶媒を溶媒全体に対し、70質量%以上使用することが好ましい。この量であれば比較的容易に本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を得ることができる。併用できる芳香族系溶媒以外の溶媒は、エポキシ基とフェノール性水酸基に影響を及ぼさないものであれば公知であれば種々のものを適用できる。例えば、ヘキサン、へプタン、オクタン、デカン、ジメチルブタン、ペンテン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒や、ジオキサン、エチルフェニルエーテル、エチルベンジルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒や、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒や、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶媒や、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の各種溶媒が挙げられるがこれらに限定されず、2種以上を併用してもよい。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造における、反応温度については特に限定されないが、通常50℃〜230℃であり、特に好ましくは本発明が沸点80℃〜145℃の芳香族系炭化水素を用いることから80℃〜160℃である。50℃以下では反応速度が非常に遅く経済的に不利であり、反応温度が230℃を超えると副反応の進行が無視できなくなり、場合によっては樹脂が不溶化するため好ましくない。
特に、一般式(5)に記載の有機ホスホニウム塩類化合物で表される触媒と、常圧下において沸点80℃〜145℃の芳香族炭化水素系溶媒を反応時に併用することで、本発明の効果を最大限に発現することができるビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を製造することができる。この理由に関して、発明者らは以下のように考察している。
フェノキシ樹脂を製造する際に、芳香族系有機溶媒を反応溶媒として使用することや、有機ホスホニウム塩類を触媒として使用することは個別には知られているが、実際にこの組み合わせで実施された例はない。一般的なフェノキシ樹脂は側鎖に2級アルコール性水酸基を有する比較的高極性の高分子であり、極性の低い芳香族系溶媒はフェノキシ樹脂の溶解力に乏しい。一方で構造異性体を含有するビスフェノールF構造を原料として用いる際には、高分子主鎖構造はランダムに非対称となり極性が低い溶媒を用いても溶解力が上がると考えたところ、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は反応時においても樹脂が巨視的に凝集、分離する現象は見受けられなかった。本発明で使用するビスフェノールF化合物は前述した通り2核体として構造異性体が一般に3種存在し、非対称構造となることで溶解力が向上し、芳香族系溶媒は本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂に対してθ溶媒のような挙動を発現したものと考えられ、特に常圧下において沸点80℃〜145℃の芳香族系炭化水素が最適だったと考えられる。
このような反応系内では有機溶媒が相溶する部分と相溶しない部分が微視的に分離していると考えられ、フェノキシ樹脂を製造する際に用いる触媒が相間移動触媒として作用し、良溶媒を用いた均一系の場合と異なる挙動を示すことが推測される。本発明の手法では芳香族系溶媒のようなフェノキシ樹脂に対する溶解性の乏しい溶媒と、特定の4級ホスホニウム塩、及び構造異性体を有するビスフェノールF化合物が、前述したベンジル位や2級炭素上におけるカチオン又はアニオンの発生により、ベンゼン環とメチレン部位や2級炭素上での親電子付加、求核置換反応、2量化反応等のエポキシ基とフェノール性水酸基が関与しない副反応が進行することでエポキシ基とフェノール性水酸基が共存したまま高分子量化が進行し、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂が得られたものと推測している。このようなθ溶媒のごとき存在下での製造により得られたビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は、エポキシ基とフェノール性水酸基が共存し、貯蔵安定性にも優れる。かつ、このような性状を有するビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の報告例はこれまでのところ見出されていない。本発明においては、上記オニウム塩類と芳香族系触媒と併用することで特異的な反応場が生まれ、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂が得られものと推測している。特に、上記有機ホスホニウム塩類と沸点80℃〜145℃の芳香族系触媒と併用することで最適な状態で反応が起こり、最も効果的なビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂が得られたものと推測している。
ビスフェノールF化合物を2価のフェノール性化合物として原料に使用するフェノキシ樹脂は上記のとおり、反応時にメチレン基が酸化されカルボニル化、又は共役により着色団を形成する別の構造に変化しやすいこと、反応時の中間体であるフェノキシド体が酸化されキノイド構造を取りやすいこと等の理由により着色しやすい。オニウム塩類を触媒として用いた際に着色が少ない樹脂ワニスが得られる理由としては、詳細は不明であるが、アルカリ金属触媒やアミン類等の塩基を触媒として用いた際には重合開始種がフェノキシドイオンであり、エポキシ基との求核置換による反応が始まるが、求核付加反応が始まるまではメチレン部位まで共役構造が及ぶことで、副反応による着色団が発生しやすくなるのに対して、オニウム塩類を触媒に用いた場合はオニウムカチオンがエポキシ基に配位することで重合開始種が形成され、ついでフェノールとの求電子付加反応により重合が開始されるため、中間体であるフェノキシドイオンが形成されにくく、結果として着色団を形成せずに良好な透明性が得られたものと推測している。
次に、上記一般式(3)で表される2価のエポキシ樹脂と、一般式(4)で表されるビスフェノールF化合物とを、オニウム塩類触媒の存在下、芳香族系溶媒中で、2価のエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル数(E1)とビスフェノールF化合物中のフェノール性水酸基のモル数(F1)の比率(E1/F1)が1.035〜1.005の範囲で反応させて得られ、エポキシ当量が4000〜8500g/eq.であり、フェノール性水酸基当量が7000〜17000g/eq.であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による重量平均分子量がポリスチレン換算値で30000〜60000であるビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂(A2)について説明する。
一般式(3)で表される2価のエポキシ樹脂、一般式(4)で表されるビスフェノールF化合物、オニウム塩類触媒、及び芳香族系溶媒は、本発明の製造方法で示したものが使用され、好ましいものも同様である。モル比等の反応条件についても、本発明の製造方法で示した条件が使用され、好ましい条件も同様である。このようにして得られるビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂のエポキシ当量、フェノール性水酸基当量、及び重量平均分子量は、上記一般式(1)で表される本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂(A1)と同様であり、好ましい範囲も同様であり、上記一般式(1)で表される構造を主鎖中に有するが、一般式(1)で表すことのできない構造単位を有すると考えられる。以下、上記一般式(1)で表される本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂と、上記製造方法で得られる本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を区別する必要がある場合は、前者をビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂(A1)とし、後者をビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂(A2)とする。
次に本発明の樹脂ワニスについて述べる。
本発明の樹脂ワニスは、沸点が80〜145℃の芳香族系の有機溶媒(A)と沸点が60〜120℃のケトン系の有機溶媒(B)を必須成分とし、樹脂濃度が20〜80質量%である。これらの溶媒を用いることで、良好な透明性と表示素子部材用ドライフィルム型接着剤を製造する際に良好な粘度と乾燥性と併せ持つ樹脂ワニスを得ることができる。この樹脂は、ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂であり、ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂(A1)と(A2)は、同様に使用できる。
有機溶媒(A)としては、公知の物であれば種々のものを適用できる。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼン等が挙げられるがこれらに限定されず、2種以上を用いてもよい。特に好ましい溶媒としては、安全性、溶解性や、乾燥に必要なエネルギーと時間の観点から、トルエンである。
有機溶媒(B)としては、公知の物であれば種々のものを適用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、メチルイソブチルケトン、2−メチル−3−ペンタノン、tert−ブチルメチルケトン等が挙げられるがこれらに限定されず、2種以上を用いてもよい。特に好ましい溶媒としては、溶解性と乾燥に必要なエネルギーと時間の観点から、メチルエチルケトンである。
本発明の樹脂ワニスの樹脂濃度は、20〜80質量%である。樹脂濃度が20質量%を下回ると、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の高分子量成分が排斥され、均一なワニスを得ることが難しくなることがある。樹脂濃度が80質量%を超えると常温での流動性がなくなり、溶液としての取扱いが難しくなることがある。樹脂濃度を20〜80質量%の範囲にすることで、樹脂ワニスとしての取扱いを容易にすることができる。樹脂濃度の好ましい範囲は25〜70質量%であり、より好ましい範囲は30〜60質量%である。
本発明の樹脂ワニスは、有機溶媒(A)と、有機溶媒(B)の他に、公知の有機溶媒を用いて、樹脂濃度を20〜80質量%としてもよく、2種以上を併用してもよい。このような有機溶媒は当業者がその用途、目的に応じて適宜選択することができるが、本発明の範囲を損なわないという点で、沸点が60〜145℃、使用量が溶媒全体に対して50質量%未満であることが好ましい。沸点が60℃未満の有機溶媒を併用した場合は、保管時にワニスの皮張り、蒸発により品質が変化する恐れがある。沸点が145℃以上の有機溶媒を併用した場合は、表示部材用フィルム接着剤を製造する際に溶媒が残存し、接着剤の特性が悪化する恐れがある。
本発明の樹脂ワニスに用いる、有機溶媒(A)と有機溶媒(B)の溶媒組成については特に限定されないが、通常質量比で(A)/{(A)と(B)を含む溶媒全量}としたときに、0.8未満である。好ましくは0.75未満、さらに好ましくは0.65未満である。この範囲にあることで、本発明の樹脂ワニスは均一性を保つことができる。質量比で(A)/{(A)と(B)を含む溶媒全量}の値が0.8を上回る場合は有機溶媒(A)が多すぎる場合であり、本発明の樹脂ワニスの均一性が保てない恐れがある。特に、有機溶媒(A)としてトルエンを、有機溶媒(B)としてメチルエチルケトンを、質量比で(A)/(B)=8/2〜1/9の組成で用いることが好ましく、(A)/(B)=6/4〜1/9の組成で用いることがより好ましい。(A)の割合が多すぎると、混合溶剤が貧溶媒となり、相溶性が悪化する恐れがある。また、(A)の割合が少なすぎると、良溶媒である(B)の割合が多くなりすぎて、フェノキシ樹脂の分子間に取り込まれることで慣性半径が増大し粘度が高くなり所望の効果が得られない恐れがある。
本発明の樹脂ワニスの製造方法については特に限定されず、当業者にとって好ましい態様で実施することができる。例えば、任意の溶媒を用いた反応により得られた本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を、常圧下又は減圧下で溶媒回収し固形化した後に上記の沸点が80〜145℃の芳香族系の有機溶媒(A)と沸点が60〜120℃のケトン系有機溶媒(B)を用いて再溶解させるプロセスや、あらかじめ本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の原料とともに、あらかじめ沸点が80〜145℃の芳香族溶媒(A)及び/又は沸点が60〜120℃のケトン系の有機溶媒(B)を用いて反応を行い、所定の濃度に希釈するプロセスを用いることができる。好ましくは、あらかじめ沸点が80〜145℃の芳香族系の有機溶媒(A)を用いて反応を行う手法であり、特に好ましくは沸点が80〜145℃の芳香族系の有機溶媒(A)としてトルエンを用いる手法である。
本発明の樹脂ワニスの25℃の粘度は、500〜7000mPa・sが好ましく、1000〜4000mPa・sがより好ましい。粘度が低い場合は本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の分子量が十分に成長していない、又は分岐度が非常に高い場合であり、所望とする可撓性が十分に得られない恐れがある。粘度が高い場合は、表示素子部材用ドライフィルム型接着剤として用いた際、溶融粘度が高くなり段差追従性が悪化する恐れがある。
本発明の樹脂ワニスの10mm石英セルを用いた400nmにおける波長の透過率は、90%以上が好ましく、93%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。透過率がこの範囲であれば、表示部材用ドライフィルム型接着剤としたときにより好適な透明性を得ることができる。
特に、本発明にて記載している有機ホスホニウム塩類を触媒として反応に用いることで、有機溶媒(A)としてトルエンを、有機溶媒(B)としてメチルエチルケトンを用いて、質量比で(A)/(B)=3/7の組成とし、樹脂濃度を50質量%に希釈したとき、樹脂ワニスを好適に得ることができ、表示部材用フィルム接着剤として好適な相溶性、粘度及び乾燥性を得ることができる。
次に本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂及びその樹脂ワニスを用いた用途について述べる。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂及びその樹脂ワニスは透明性、可撓性、及び接着性等が優れることから、光学用接着剤用途、コーティング用途、電子材料用途として好適に使用することができる。
光学用接着剤用途としては、公知のものであれば種々の用途を選択できる。例えば、カメラ(車載カメラ、デジタルカメラ、PC用カメラ、携帯電話用カメラ、監視カメラ等)の撮像素子用接着剤、メガネレンズ、光学フィルター、回折格子、プリズム、光案内子、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ、フォトセンサー、フォトスイッチ、LED、発光素子、光導波路、光分割器、光ファイバー等の光学素子用接着剤、表示装置用カバーガラス、表示装置用樹脂、表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイ保護膜、ディスプレイバックライト、導光板、反射防止用フィルム等の光学用積層板及び積層フィルム用接着剤等が挙げられる。
コーティング用途としては、公知のものであれば種々の用途を選択できる。例えば、防錆等の保護及び光沢付与、装飾、絶縁等の目的としての建築、フロアリング用途、金属プライマーコート用途、プレコートメタル用途、ガラスコート用途、セラミックコート用途、及び繊維、テープ、クロス等に組成物を含浸して製造される複合材コート用途等が挙げられる。
電子材料用途としては、公知のものであれば種々の用途を選択できる。例えば、回路基板用途、回路基板同士を貼り合せる層間接着剤、カバーレイフィルム、カバーレイフィルム用接着剤、銅張フィルム用接着剤、電磁波シールド用接着剤、半導体封止材用途、ダイアタッチフィルム等が挙げられる。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂及びそのワニスは、末端にエポキシ基を有することから、エポキシ基と反応性を有する化合物又は樹脂を配合することで、硬化性樹脂組成物を得ることができる。このような化合物又は樹脂としては、例えばノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型ナフトール樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、レゾール型フェノール樹脂等の多価フェノール性化合物又は樹脂や、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル化ヘキサヒドロ無水フタル酸、トリメリット酸、核水素化トリメリット酸等のカルボン酸化合物及びその無水物化合物や、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、メタキシリレンジアミン、イソホロンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジシアンジアミド等のアミン化合物や、トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物や、テトラフェニルホスホニウムブロマイド等のホスホニウム塩や、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類や、イミダゾール類とトリメリット酸、イソシアヌル酸、ホウ酸等との塩であるイミダゾール塩類等が挙げられるがこれらに限定されず、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は、側鎖に2級アルコール性水酸基を含有している。そのため、硬化剤として酸無水物化合物やイソシアネート基含有化合物、光又は熱によりカチオン種を発生するカチオン硬化性を有するオニウム塩類を併用することでも、硬化性樹脂組成物とすることができる。
酸無水物化合物としては、1価の酸無水物基を有するものであれば、本発明のビスフェノーF骨格含有フェノキシ樹脂と反応させることで2級アルコール性水酸基をカルボキシル基に変性することが可能となる。結果として、水への分散性が向上するとともに、カルボキシル基と反応性を有する樹脂、例えばエポキシ樹脂と反応させることで硬化物を得ることができる。
カルボキシル基に変性する一価の酸無水物化合物としては、公知の物であれば種々の化合物を適用することができる。例えば、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチル化テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル化無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ナジック酸、水素化無水ナジック酸、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸、水素化無水トリメリット酸等が挙げられ、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
変性に用いる1価の酸無水物化合物の量としては特に限定されないが、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂中に存在する2級アルコール性水酸基1モルあたり、通常0.2〜1.0モルである。
酸無水化合物として、2価の酸無水物基を有するものであれば、本発明のビスフェノーF骨格含有フェノキシ樹脂と反応させることで硬化物を得ることができる。このような2価の酸無水物化合物としては公知のものであれば種々の化合物を適用できる。例えば、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物等が挙げられ、必要に応じて2種以上を併用してもよい。
2価の酸無水物化合物の使用量は特に限定されないが、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂中に存在する2級アルコール性水酸基1モルあたり、通常0.2モル〜1.0モルである。硬化温度については特に限定されず、当業者にとって好ましい条件で実施することが可能であるが、通常は50℃〜200℃である。また、架橋反応を促進させるために塩基性を有する化合物を併用しても良い。
イソシアネート基を含有する化合物としては、一分子中に2個以上のイソシアネート基を含有するものであれば公知のものを適用できる。例えば、2,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)及び4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、その異性体混合物、及びその多官能価数同族体、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、その異性体混合物、m−キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンシイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等及びこれらのポリオール変性物が挙げられるがこれらに限定されず、2種以上を併用してもよい。
一分子中に2個以上のイソシアネート基を含有する化合物の使用量としては特に限定されないが、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂中に存在する2級アルコール性水酸基1モルあたり、通常0.2〜1.0モルである。また、架橋反応を促進させるために、イミダゾール化合物、アミン化合物、ジブチル錫ジラウレート等の金属化合物を併用してもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱処理することで硬化物を得ることができる。熱処理に必要な温度としては、特に限定されず当業者にとって好ましい温度で実施することができるが、通常は50〜230℃である。50℃以下では反応が進まず現実的ではない。230℃以上では本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂が分解する恐れがある。
光又は熱によりカチオン種を発生するカチオン硬化性を有するオニウム塩類としては、公知の物であれば種々の化合物を適用できる。例えば、芳香族スルホニウムカチオン、芳香族オキソスルホニウムカチオン等の陽イオン構造に、ヨードニウムアニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、ヘキサフルオロアンチモネートアニオン、ヘキサフルオロアルセネートアニオン等の陰イオン構造が対となる化合物が挙げられ、必要に応じて2種以上を用いてもよい。オニウム塩類の使用量については特に限定されないが、通常本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部である。
上記カチオン硬化性を有する硬化性樹脂組成物は、熱処理することで硬化物を得ることができる。熱処理に必要な温度としては、特に限定されず当業者にとって好ましい温度で実施することができるが、通常は50〜230℃である。50℃以下では反応が進まず現実的ではない。230℃以上では本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の分解の懸念がある。
本発明の硬化性樹脂組成物は、光カチオン発生剤を硬化剤としたとき、UV光を照射することにより硬化物を得ることができる。必要なUV光の光照射強度としては特に限定されず当業者にとって好ましい範囲で実施してよいが、通常50〜150mW/cm2の範囲である。50mW/cm2未満であるとカチオン重合が十分に進行しない場合があり、150mW/cm2を超えると本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の分解が発生する場合がある。なお、光照射を行い架橋させたのち、続いて熱処理を行うことでさらに架橋を進行させることもできる。熱処理に必要な温度としては、特に限定されず当業者にとって好ましい温度で実施することができるが、通常は室温〜230℃である。
これらの硬化性樹脂組成物の内、イソシアネート基を含有する化合物を用いた場合は低温での硬化が可能であり、かつ透明性に優れる硬化物を得ることができる。このため、とくに光学接着材用樹脂組成物として好適に使用できる。
また、本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂及びその樹脂ワニスは、必要に応じて他の熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を配合することができる。このような熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ウレア樹脂、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂が挙げられる。また、このような樹脂と反応性を有する硬化剤、促進剤又は開始剤とともに用いることで組成物とすることもできる。また、公知の有機溶媒や水を併用することで所望の粘度とした組成物として用いることもできる。このような硬化性の樹脂組成物は、光学用接着剤用途、コーティング用途、電子材料用途として好適に使用することができる。
上記に挙げた樹脂組成物は、他の熱可塑樹脂、添加剤、充填剤を併用しても良い。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルイミド等が挙げられるがこれらに限定されず、2種以上を併用しても良い。用いる量としては特に限定されないが、通常本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂100質量部に対して5質量部から95質量部である。
添加剤としては、公知のシランカップリング材や酸化防止剤、光安定剤、有機染料、有機顔料、レベリング材、難燃剤等が挙げられるがこれらに限定されず、2種以上を併用してもよい。用いる量については特に限定されず、当業者が目的に応じて適宜調整してもよい。
充填剤としては、公知のものであれば特に限定されない。例えば、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ハイドロタルサイト、ウォラストナイト、ゾノトライト、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化アンチモン、酸化ニッケル、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アルミニウム等が挙げられるがこれらに限定されず、必要に応じて2種以上を併用してもよい。用いる量については特に限定されず、当業者が目的に応じて適宜調整してもよい。
本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂及び樹脂ワニスを光学用接着剤として、表示装置とすることもできる。より具体的には、本発明の光学接着剤を離型フィルム等の上に単層又は多層のシート状に形成し、必要に応じて溶媒等を乾燥除去し、パソコン、モバイル端末、ゲーム機、テレビ、カーナビ、タッチパネル、ペンタブレット、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電界発光(EL)ディスプレイ等の画像表示装置のカバーパネル等の表示装置構成部材に貼り合せることで得ることができる。
上記離型フィルムの構成材料としては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム、紙、布、不織布等の多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、及びこれらのラミネート体等の薄葉体等を挙げることができるが、好ましくは離型性及び表面平滑性の観点からシリコーンライナー処理された樹脂フィルムである。
本発明の光学用接着剤をシート状に形成する手法としては、公知のものであれば種々の方法を選択できる。例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート等の方法が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の光学用接着剤を用いた表示装置の構成形態としては特に限定されず、公知の構成であれば種々の形態に適用することができる。例えば、液晶パネル/タッチパネル間、液晶パネル/保護パネル間、液晶パネル/タッチパネル/保護パネル間、偏光フィルム/タッチパネル間、偏光フィルム/タッチパネル/保護パネル間を貼り合せる構成等があげられるがこれらに限定されない。
特に本発明のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂は加熱時の流動性に優れるので、カバーパネルに施されている額縁印刷に由来する段差の埋め込み性に優れ、カバーパネル/タッチパネル間の光学接着材用樹脂組成物として好適に使用できる。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。特に断りがない限り、「部」は質量部を表し、「%」は質量%を表す。
分析方法や測定方法を以下に示す。なお、当量の単位はいずれもg/eq.である。
エポキシ当量:JIS K−7236規格に記載の方法で測定し、不揮発分から固形分換算値としての数値を算出した。
不揮発分:JIS K−7235規格に記載の方法で測定した。乾燥温度は200℃で、乾燥時間は60分とした。
分子量(Mw、Mn、MRI):GPC測定により求めた。具体的には、本体(東ソー株式会社製、HLC−8320GPC)にカラム(東ソー株式会社製、TSKgel G4000HXL、TSKgel G3000HXL、TSKgel G2000HXL)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1mL/分の流速とし、検出器はRI(示差屈折計)検出器を用いた。測定試料はサンプル0.1gを10mLのテトラヒドロフランに溶解し、マイクロフィルターでろ過したものを100μL使用した。標準の単分散ポリスチレン(東ソー株式会社製、A−500、A−1000、A−2500、A−5000、F−1、F−2、F−4、F−10、F−20、F−40、F−80、F−128)より求めた検量線より換算して、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)を求めた。また、分子量分布の強度が最大強度となる重量平均分子量を「MRI」とした。
静的光散乱法による絶対分子量:本体(東ソー株式会社製、HLC−8320GPC)にカラム(昭和電工株式会社製、ShodexKF−806M)を2本直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液にはテトラヒドロフランを用い、1mL/minの流速とした。測定試料はサンプル0.01gを10mLのテトラヒドロフランに溶解し、マイクロフィルターでろ過したものを500μL使用した。多角度光散乱検出器はWyatt Technology社製DAWN HELEOS8+(検出角度数:8)を用いた。絶対分子量の算出に必要な屈折率の濃度増分値(dn/dc)は示差屈折率検出器(Wyatt Technology社製、Optilab T−rEX)を用い、樹脂濃度200ppm、600ppm、1000ppmのテトラヒドロフラン溶液を用いて示差屈折率を測定し、屈折率の濃度増分値を算出した。絶対分子量の解析にはWyatt Technology社製、Astra ver6.1.2.84を用い、8個の散乱強度と散乱角度からなるデバイプロットにより解析、算出した。その際、分子量分布の強度が最大強度となる絶対分子量を「MLS」とした。
フェノール性水酸基当量:ビスフェノールF(本州化学工業株式会社製、商品名:BPF−D)を5mg/L、20mg/L、又は50mg/L含有するテトラヒドロフラン溶液を50mL作成し、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド10%水溶液を20μL添加混合した後、UVスペクトルを測定し、305nmの吸光度により検量線を作成した。実施例及び比較例のサンプルを0.1g秤量し、テトラヒドロフラン50mLに溶解(希釈倍率:500倍)させて、テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド10%水溶液を20μL添加混合した後、UVスペクトルを測定し、305nmの吸光度からビスフェノールFに由来するフェノール性水酸基当量(POHE)を下記の数式にて算出した。
Figure 0006722485
m:試料採取量(g)
c:検量線濃度(mg/L)
d:試料溶液の希釈倍率、500(mL)
k:ビスフェノールFのグラム当量、100(g/eq.)
0
ワニス粘度:JIS K−7233、単一円筒回転粘度法にて測定した。具体的には、B型粘度計(東洋精機株式会社製TVB10H)を用いて、25℃での粘度を測定した。
光線透過率:紫外分光光度計(日本分光株式会社製、V−650)と10mm石英セルを用い、樹脂ワニスの作成で用いた溶媒組成をリファレンスとし、400nmの光線透過率を測定した。
実施例及び比較例で使用した略号の説明は以下のとおりである。
[エポキシ樹脂]
YD−128:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、エポトートYD−128、エポキシ当量=186)
YDF−8170:ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、エポトートYDF−8170、エポキシ当量=158)
YX−4000:テトラメチルビフェノールとエピクロルヒドリンの重縮合物(三菱化学株式会社製、YX−4000、エポキシ当量=183)
BPZ−EP:1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンとエピクロルヒドリンの重縮合物(新日鉄住金化学株式会社製、エポキシ当量=200)
[ビスフェノールF化合物]
BFF−1:蒸留ビスフェノールF(本州化学工業株式会社製、BPF−D、2核体=99.2面積%、3核体=0.8面積%、異性体比(4,4’−体:2,4’−体:2,2’−体=33:50:17)、フェノール性水酸基当量=100)
BPF−2:ビスフェノールF(新日鉄住金化学株式会社製、2核体=97面積%、3核体=3面積%、kの平均値=0.03、異性体比(4,4’−体:2,4’−体:2,2’−体=36:49:15)、フェノール性水酸基当量=100)
BPF−3:フェノールノボラック樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、2核体=10面積%、3核体=46面積%、5核体以上=21面積%、kの平均値=1.7、異性体比(4,4’−体:2,4’−体:2,2’−体=60:35:5)、フェノール性水酸基当量=105)
[触媒]
TMP:メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド(試薬)
TPPMI:メチルトリフェニルホスホニウムヨージド(試薬)
PX4MP:メチルトリブチルホスホニウムジメチルホスフェート(試薬)
PX4ET:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート(試薬)
TPPPB:テトラ−フェニルホスホニウムブロマイド(試薬)
TBPDA:テトラ−n−ブチルホスホニウムデカン酸塩(試薬)
TPPBB:テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド(試薬)
TMAOH:29%水酸化テトラメチルアンモニウム(試薬)
TPP:トリフェニルホスフィン(試薬)
[その他]
YP−70:ビスフェノールAビスフェノールF共重合フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、ビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂、フェノトートYP−70)
YP−50S:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製、フェノトートYP−50S)
実施例1
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管、及び冷却管を備えた反応装置に、ビスフェノールF化合物としてBPF−1を100部、エポキシ樹脂としてYD−128を190.7部(エポキシ基のモル数(E1)とフェノール性水酸基のモル数(F1)のモル比(E1/F1)=1.025)、反応溶媒としてトルエン(TL)を15部仕込み、窒素雰囲気下で100℃まで昇温させた。次いで、触媒としてTMPを0.1部仕込んだ後、内温を140℃まで上昇させた。反応が進行するに伴い反応液が増粘し始めたので、トルエン72部を数回に分けて適宜追加することで撹拌機のトルクを一定にしながら12時間反応を行った。なお、反応温度は不揮発分が80%以上では140~145℃で行い、それ以降は還流温度で行った。反応終了後、メチルエチルケトン(MEK)を204部(TL/MEKの質量比=3/7)加えて、樹脂ワニスを得た。
比屈折率差で示されるGPC測定チャートを図1に示す。左縦軸に信号強度を示し、右縦軸に重量平均分子量を常用対数で示す。流出曲線を実線で示す。用いた標準物質の重量平均分子量の測定値より求めた検量線を点線で示す。
光散乱強度で示されるGPC測定チャートを図3に示す。縦軸に絶対分子量を常用対数で示す。流出曲線を実線で示し、絶対分子量を点線で示す。
実施例2
YD−128を189.8部(E1/F1=1.020)、MEKを203部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例3
YD−128を187.9部(E1/F1=1.010)、追加TLを71部、MEKを202部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例4
YD−128を191.2部(E1/F1=1.028)使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例5
YD−128を191.2部(E1/F1=1.028)使用し、反応時間を18時間にした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例6
YD−128を192.3部(E1/F1=1.034)、MEKを205部使用し、反応時間を8時間にした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例7
YD−128を192.3部(E1/F1=1.034)、MEKを205部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例8
YD−128を192.3部(E1/F1=1.034)、MEKを205部使用し、反応時間を18時間にした以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例9
エポキシ樹脂としてYDF−8170を162部(E1/F1=1.025)、追加TLを64部、MEKを183部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例10
エポキシ樹脂としてYX−4000を187.6部(E1/F1=1.025)、追加TLを71部、MEKを202部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例11
エポキシ樹脂としてYX−4000を188.5部(E1/F1=1.030)、追加TLを71部、MEKを202部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例12
エポキシ樹脂としてBPZ−EPを205部(E1/F1=1.025)、追加TLを77部、MEKを213部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例13
触媒としてTPPMIを0.1部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例14
触媒としてPX4MPを0.1部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例15
触媒としてPX4ETを0.1部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例16
触媒としてTPPPBを0.1部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例17
触媒としてTBPDAを0.1部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例18
ビスフェノールF化合物としてBPF−2を100部(E1/F1=1.025)使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例19
ビスフェノールF化合物としてBPF−1を80部とBPF−3を21部(E1/F1=1.025)使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例20
反応溶媒としてキシレンを15部、追加TLを72部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例21
反応溶媒としてエチレングリコールジメチルエーテルを15部とTLを15部、追加TLを57部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例22
YD−128を187.9部(E1/F1=1.010)、触媒としてTPPMIを0.1部、追加TLを71部、MEKを202部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例23
YD−128を191.2部(E1/F1=1.028)、触媒としてTPPMIを0.1部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
実施例24
YD−128を192.3部(E1/F1=1.034)、触媒としてTPPMIを0.1部、MEKを205部使用した以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
比較例1
TL/MEK=3/7(質量比)の混合溶媒を用いて、YP−70を希釈して不揮発分が50%の樹脂ワニスを得た。
比屈折率差で示されるGPC測定チャートを図2に示す。左縦軸に信号強度を示し、右縦軸に重量平均分子量を常用対数で示す。流出曲線を実線で示す。用いた標準物質の重量平均分子量の測定値より求めた検量線を点線で示す。
光散乱強度で示されるGPC測定チャートを図4に示す。縦軸に絶対分子量を常用対数で示す。流出曲線を実線で示し、絶対分子量を点線で示す。
比較例2
YD−128を192.9部(E1/F1=1.037)、追加TLを73部、MEKを205部使用し、反応時間を18時間とした以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
比較例3
YD−128を186.6部(E1/F1=1.003)、追加TLを71部、MEKを201部使用した以外は実施例1と同様にして樹脂ワニスを得た。
比較例4
実施例1と同様の装置を使用して、ビスフェノールF化合物としてBPF−1を100部、エポキシ樹脂としてYD−128を190.7部(E1/F1=1.025)、反応溶媒としてシクロヘキサノンを32部仕込み、窒素雰囲気下で140℃まで昇温させた。次いで触媒としてTPPBBを0.02部仕込んだ後、内温を155℃(還流温度)まで上昇させた。反応は還流温度で行い、反応が進行するに伴い反応液が増粘し始めた。シクロヘキサノンを適宜追加することで撹拌機のトルクを一定にすることで12時間反応を行った後、冷却しながらさらにシクロヘキサノンを投入し、シクロヘキサノンの25%溶液を調製した。次いで、100℃、0.67kPa(5Torr)の条件で24時間乾燥を行ってシクロヘキサノンを留去させ、固形化後に、TL/MEK=3/7(質量比)の混合溶媒を用いて、同樹脂を希釈して、不揮発分が50%の樹脂ワニスを得た。
比較例5
実施例1と同様の装置を使用して、ビスフェノールF化合物としてBPF−1を254部、エポキシ樹脂としてYD−128を496部(E1/F1=1.050)、反応溶媒としてメチルイソブチルケトンを250部、触媒としてTMAOHを1.2部仕込み、窒素ガス雰囲気下130℃で7.5時間重合反応を行った。次いで、40℃、0.67kPa(5Torr)の条件で48時間乾燥を行って、メチルイソブチルケトンを留去させ、固形化後に、TL/MEK=3/7(質量比)の混合溶媒を用いて、同樹脂を希釈して、不揮発分が50%の樹脂ワニスを得た。
比較例6
TL/MEK=3/7(質量比)の混合溶媒を用いて、YP−50Sを希釈して不揮発分が50%の樹脂ワニスを得た。
比較例7
実施例1と同様の装置に、BPF−1を100部、YD−128を190.7部(E1/F1=1.025)、TLを15部仕込み、窒素雰囲気下で100℃まで昇温させた。次いで触媒としてTPPを0.3部仕込んだ後、内温を140℃まで上昇させた。反応温度140〜145℃で、10時間反応したが分子量の増加が認められなかった。TPPを0.3部追加してさらに10時間反応を継続したが、分子量の増加が認められなかったため、反応を中断した。中断時の分子量は、Mw=14800、Mn=5240だった。
実施例1〜24及び比較例1〜7により得られた樹脂ワニスのエポキシ当量、Mw、Mw/Mn、強度比(MLS/MRI)、フェノール性水酸基当量、ワニス粘度、光線透過率をそれぞれ測定し、実施例の結果を表1に、比較例の結果を表2に示す。
Figure 0006722485
Figure 0006722485
(貯蔵安定性)
実施例1〜24及び比較例1〜6で得られた樹脂ワニスを500mLの丸缶に密閉し、40℃の温度下にて1ヶ月保管し、25℃での粘度を測定することで貯蔵安定性を評価した。判定の項目と説明については下記のとおりである。実施例の結果を表3に、比較例の結果を表4に示す。
○:試験後の粘度が保管前の粘度の1.5倍未満であった。
△:試験後の粘度が保管前の粘度の1.5倍以上2.0倍未満であった。
×:試験後の粘度が保管前の粘度の2倍以上であった。
(保管後の透過率)
○:貯蔵安定性の試験後の樹脂ワニスを用いて、光線透過率を測定した際、90%T以上の透過率を有する。
△:貯蔵安定性の試験後の樹脂ワニスを用いて、光線透過率を測定した際、80%T以上90%T未満の透過率を有する。
×:貯蔵安定性の試験後の樹脂ワニスを用いて、光線透過率を測定した際、80%T未満の透過率を有する。
(段差埋め込み性)
実施例1〜24及び比較例1〜6で得られた樹脂ワニスを、100mm×100mm×0.7μmのガラス基板に、乾燥膜厚が150μmとなるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃、30分の条件下にて溶媒を蒸発させ、ガラス基板上に樹脂層を形成した。この樹脂付きガラス基板に、外周部に幅10mm、厚さ100μmの寸法の白色印刷層(段差)を設けた100mm×100mm×0.7mmのガラス基板を、樹脂層を挟み込むように重ね、ホットプレス機を用いて80℃、0.2MPaの条件で1分間貼り合せた。このサンプルを用いて、光学顕微鏡にて印刷層(段差)周辺部の外観評価を行った。判定の説明については下記のとおりである。実施例の結果を表3に、比較例の結果を表4に示す。
○:段差部位に、気泡及び剥離がない。
△:1辺のみに、気泡又は剥離がある。
×:2辺以上に、気泡又は剥離がある。
(ITO接着性)
実施例1〜24及び比較例1〜6で得られた樹脂ワニス100質量部に、ジフェニルメタンジイソシアネートを11質量部とジブチル錫ジラウレート0.01質量部を加え、樹脂組成物を作成した。ついで、この樹脂組成物を、離型処理を施したPETフィルム上にバーコーターを用いて乾燥膜厚が150μmとなるように塗布し、40℃、1時間真空下にて溶媒留去を行った。その後、厚さ100μmの寸法の白色印刷層(段差)を設けた100mm×100mm×0.7mmのガラス基板を、樹脂層を挟み込むように重ね、ホットプレス機を用いて80℃、0.2MPaの条件で1分間貼り合せた。離型処理されたPETフィルムを剥がした後に、PETフィルムを基材とするITOフィルムを、金属酸化物側が樹脂層と接するように重ね、ホットプレス機を用いて80℃、0.2MPaの条件で15分貼り合せた。その後、ITOフィルムを1cmの幅を残すように剥がし、90度のピール試験を行った。判定の説明については下記のとおりである。実施例の結果を表3に、比較例の結果を表4に示す。
○:接着強度が0.7N/mm以上
△:接着強度が0.5N/mm以上0.7N/mm未満
×:接着強度が0.5N/mm未満
(耐溶剤性)
実施例1〜24及び比較例1〜6で得られた樹脂ワニス100質量部に、ノボラック型フェノール樹脂(昭和電工株式会社製、BRG−557)0.84質量部、トリフェニルホスフィン0.005質量部を投入し均一になるまで撹拌し樹脂組成物とした。次いで、100mm×100mm×0.7mmのガラス基板にバーコーターを用いて樹脂組成物を塗布した。このガラス基板を80℃、30分の条件にて溶媒を乾燥させた後、150℃、1時間の熱処理を行い、硬化させた。硬化膜に対し、メチルエチルケトンを染み込ませたウェスを用い、49N荷重で30往復ラビング試験を行った。硬化性の判定の説明については下記のとおりである。実施例の結果を表3に、比較例の結果を表4に示す。
○:ラビング試験後の硬化膜が透明である。
△:ラビング試験後の硬化膜に白濁が見られる
×:ラビング試験後の硬化膜が全体的に白濁又は剥がれが見られる。
Figure 0006722485
Figure 0006722485

Claims (16)

  1. 下記一般式(1)で表される構造を主鎖に有するビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂であって、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による重量平均分子量(Mw)がポリスチレン換算値で30000〜60000であり、Mwとポリスチレン換算値の数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が3.5〜6.5であり、静的多角光散乱法による光散乱強度で示される分子量分布の強度が最大強度となる絶対分子量(MLS)とテトラヒドロフランを基準とする比屈折率で示される分子量分布の強度が最大強度となるポリスチレン換算による重量平均分子量(MRI)との比率(MLS/MRI)が3.0〜15であることを特徴とするビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂。
    Figure 0006722485
    (式中、Aは下記一般式(2)で表される2価の有機残基であり、Yは下記一般式(1a)で表される基である。但し、Yの80モル%以上は、k=0成分である。nは10〜200の平均繰り返し数である。)
    Figure 0006722485
    (式中、Zは下記一般式(1b)又は(1c)で表される基である。R1は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mは独立に0〜4の数であり、m1は独立に0〜3の数である。kは平均値で0〜0.6の数である。)
    Figure 0006722485
    (式中、A、Yは、一般式(1)におけるA、Yと同意である。n1及びn2は0〜200の平均繰り返し数である。)
    Figure 0006722485
    (式中、Xは、単結合、メチレン基、ジメチルメチレン基、又は炭素数1〜4のアルキル置換基を有してもよい1,1−シクロへキシレン基である。R は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。m は独立に0〜4の数である。)
  2. 下記一般式(3)
    Figure 0006722485
    (一般式中、Aは下記一般式(2)で表される2価の有機残基であり、
    Figure 0006722485
    Xは、単結合、メチレン基、ジメチルメチレン基、又は炭素数1〜4のアルキル置換基を有してもよい1,1−シクロへキシレン基である。R は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。m は独立に0〜4の数である。)
    で表される2価のエポキシ樹脂と、下記一般式(4)
    Figure 0006722485
    (一般式中、R1は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mは独立に0〜4の数であり、m1は独立に0〜3の数である。kは平均値で0〜0.6の数であるが、k=0の成分が80%以上を占める。)
    で表されるビスフェノールF化合物とを、オニウム塩類触媒の存在下、芳香族系溶媒中で、2価のエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル数(E1)とビスフェノールF化合物中のフェノール性水酸基のモル数(F1)の比率(E1/F1)が1.035〜1.005の範囲で反応させて得られ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定による重量平均分子量がポリスチレン換算値で30000〜60000であり、Mwとポリスチレン換算値の数平均分子量(Mn)との比率(Mw/Mn)が3.5〜6.5であり、静的多角光散乱法による光散乱強度で示される分子量分布の強度が最大強度となる絶対分子量(MLS)とテトラヒドロフランを基準とする比屈折率で示される分子量分布の強度が最大強度となるポリスチレン換算による重量平均分子量(MRI)との比率(MLS/MRI)が3.0〜15であることを特徴とするビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂。
  3. エポキシ当量が4000〜8500g/eq.である請求項1又は2に記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂。
  4. フェノール性水酸基当量が7000〜17000g/eq.である請求項1〜3のいずれかに記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂。
  5. 請求項1に記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法であって、下記一般式(3)
    Figure 0006722485
    (一般式中、Aは下記一般式(2)で表される2価の有機残基であり、
    Figure 0006722485
    Xは、単結合、メチレン基、ジメチルメチレン基、又は炭素数1〜4のアルキル置換基を有してもよい1,1−シクロへキシレン基である。R は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。m は独立に0〜4の数である。)
    で表される2価のエポキシ樹脂と、下記一般式(4)
    Figure 0006722485
    (一般式中、R1は炭素数1〜8の1価の炭化水素基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。mは独立に0〜4の数であり、m1は独立に0〜3の数である。kは平均値で0〜0.6の数であるが、k=0の成分が80%以上を占める。)
    で表されるビスフェノールF化合物とを、オニウム塩類触媒の存在下、芳香族系溶媒中で、2価のエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル数(E1)とビスフェノールF化合物中のフェノール性水酸基のモル数(F1)との比率が、(E1):(F1)=1.035〜1.005:1の範囲で反応させることを特徴とするビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法。
  6. オニウム塩類触媒が下記一般式(5)で表される有機ホスホニウム塩類である請求項5に記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法。
    Figure 0006722485
    (式中、R7は1価の炭化水素基を表し、それぞれ同一でも異なっていてもよい。X1は1価の陰イオンを形成する原子又は原子団である。)
  7. 芳香族系溶媒の常圧下における沸点が80〜145℃である請求項5又は6に記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法。
  8. 一般式(4)で表されるビスフェノールF化合物中のk=0の成分が96.5%以上である請求項5〜7のいずれかに記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂の製造方法。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を、有機溶剤に溶解させて、樹脂濃度が15〜90質量%に調製されたことを特徴とするビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂ワニス。
  10. 請求項1〜4のいずれかに記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂、及びフェノキシ樹脂と反応性を有する硬化剤を必須成分として含有する樹脂組成物。
  11. 請求項1〜4のいずれかに記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂、及び硬化性樹脂を必須成分として含有する樹脂組成物。
  12. 請求項1〜4のいずれかに記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を用いたことを特徴とする光学用接着剤。
  13. 請求項1〜4のいずれかに記載のビスフェノールF骨格含有フェノキシ樹脂を用いたことを特徴とするコーティング剤。
  14. 請求項10に記載の樹脂組成物を、光及び/又は熱処理することにより得られる硬化物。
  15. 請求項12に記載の光学用接着剤を用いたことを特徴とする表示装置。
  16. 請求項13に記載のコーティング剤を用いたことを特徴とする表示装置。


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