JP6721991B2 - 表面処理された成形断熱材及びその製造方法 - Google Patents

表面処理された成形断熱材及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、成形断熱材に関し、詳しくは表面被覆剤による表面処理が施された成形断熱材に関する。
炭素繊維系の断熱材は、熱的安定性や断熱性能に優れ且つ軽量であることから、種々の用途で使用されている。特に、炭素繊維フェルトに樹脂材料を含浸させ炭素化させた炭素繊維成形断熱材は、形状安定性に優れ、微細な加工が可能であるため、単結晶シリコン引き上げ装置、多結晶シリコンキャスト炉、金属やセラミックスの焼結炉、真空蒸着炉等の高温炉の断熱材として使用されている。
このような成形断熱材は、直径が5〜20μm程度の細い炭素繊維を用いているため、ハンドリング時や設置時に、炭素繊維が欠落等して粉化(発塵)するおそれがある。粉化した炭素繊維が炉内雰囲気中に放出されると、製品品質を低下させてしまうおそれがある。
また、単結晶や多結晶シリコンなどの製造装置においては、高温炉内でSiOガスが発生したり、酸素ガスが不純物ガスとして製造雰囲気に混入したりする。SiOガスや酸素ガスは活性(反応性)が高く、炭素繊維成形断熱材とSiOガスとが反応するとSiCが生じ、また、炭素繊維成形断熱材と酸素ガスとが反応すると、一酸化炭素や二酸化炭素等の炭素酸化物が生じる。これらの反応により、炭素繊維で構成されている骨格構造が崩れ、その結果として当該骨格構造が多数の空間を形成することにより得られる断熱機能が低下する。また、この劣化により特に炭素繊維が粉化して炉内雰囲気中に放出される結果、製品品質が低下する。
上記問題に対して、特許文献1は、炭素繊維の発塵や劣化を防止する成形断熱材の表面処理技術を提案している。
特開2005−133033号公報
特許文献1の技術は、(1)炭化率が40%以上の炭素化材、(2)鱗状黒鉛、(3)粘貼剤及び(4)粘貼剤を溶かし、且つ炭素化材を分散又は溶解させる液剤からなる断熱材用コーティング剤、及び嵩密度が0.1〜0.8g/cm3の炭素化成形物の表面に、当該断熱用コーティング剤を塗工し炭素化してなる積層体に関する技術である。
この技術では、鱗片状黒鉛(鱗状黒鉛)や粘貼剤(バインダー)の炭素化物が、摩擦時に炭素繊維を保護するのでハンドリング時等の粉化を抑制でき、且つ、鱗状黒鉛や炭素化物が炭素繊維に先んじて活性ガスと反応するので、炭素繊維の劣化が抑制でき、これにより断熱性能の低下が抑制できるとされる。
本発明者らが上記特許文献1に係る技術について鋭意検討したところ、次のような問題点があることを知った。
鱗状黒鉛は、高度に黒鉛構造(層構造)が発達しており、非晶質炭素に比較して比表面積が大きく、特にそのエッジ部分で活性ガスと反応し易く、鱗状黒鉛が不均一に酸化されて粉化するおそれがある。
また、鱗状黒鉛は、その性質上灰分が含まれるが、この灰分が炉内に混入すると、製品性能を低下させる副反応を引き起こすおそれもある。
さらに、黒鉛粒子を含んだコーティング剤の塗工は、手間がかかるために生産性を低下させてしまうという問題もある。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、劣化や粉化を抑制できる表面処理された成形断熱材を高い生産性で提供することを目的とする。
上記課題を解決するための成形断熱材の製造方法に係る本発明は、次のように構成されている。
炭素繊維を交絡させた繊維フェルトと前記繊維フェルトの炭素繊維表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層とを有する成形断熱材の少なくとも一つの表面から1〜20mmの領域を、合成樹脂と前記合成樹脂を溶解する溶媒とからなる表面被覆剤溶液に浸漬して、成形断熱材に前記表面被覆剤溶液を添加する浸漬ステップと、前記浸漬ステップの後、成形断熱材を不活性雰囲気下1500〜2500℃で熱処理し、前記合成樹脂を炭素化させて、表面被覆層を形成する熱処理ステップと、を有し、前記合成樹脂がフェノール樹脂であり、前記浸漬ステップの後、前記熱処理ステップの前に、前記フェノール樹脂を熱硬化させる熱硬化ステップをさらに有する、表面処理された成形断熱材の製造方法。
表面被覆剤溶液に成形断熱材を浸漬すると、成形断熱材を構成する炭素繊維や保護炭素層の表面や炭素繊維相互間の空隙に表面被覆剤溶液が浸透して、成形断熱材に表面被覆剤溶液が添加される。その後、不活性雰囲気で熱処理すると、表面被覆剤溶液に溶解された合成樹脂は炭素化して炭素繊維や保護炭素層の表面及び炭素繊維相互間の空隙に残存するとともに、溶媒は揮発する。これらの工程により、炭素繊維の表面等には合成樹脂由来の炭素質からなる表面被覆層が形成されるが、この層は黒鉛粒子等の粒状の成分を含まなくとも成形断熱材の粉落ちや雰囲気ガスによる成形断熱材の劣化を効果的に抑制する。
また、表面被覆剤は合成樹脂と溶媒とからなり、その他の成分(例えば、黒鉛粒子等の粒状成分)が含まれない。このため、表面被覆剤の添加には成形断熱材を表面処理剤溶液に浸漬する方法を用いることができるが、この方法は塗布よりも手間がかからず生産性に優れる。また、製造される成形断熱材の表面被覆層に粒状成分が残存することもなく、上述した黒鉛粒子による問題が生じることもない。
以上に説明したように、上記製造方法を採用することにより、塗工のような煩雑な工程を必要とすることのない簡便な手法で、粉落ちや活性ガスによる劣化を抑制できる良質な表面被覆層が形成された成形断熱材を製造することができる。
ここで、合成樹脂としては、炭素繊維や保護炭素層の表面に炭素質の被膜を形成するものであればよく、中でもフェノール樹脂を用いることが好ましい。なお、フェノール樹脂は熱硬化性樹脂であり、良質な表面被覆層の形成のために、熱処理ステップと浸漬ステップとの間に、成形断熱材に浸透させたフェノール樹脂の熱硬化ステップを行うことが好ましい。
表面被覆剤溶液に浸漬する成形断熱材の表面の数は、使用する用途に応じて適宜選択すればよく、1又は2以上とすることができ、また全面としても良い。
また、溶剤の揮発は、熱硬化や炭素化と同時に行ってもよく、これらの工程の前に溶剤を揮発させるステップを別個に設けてもよい。
成形断熱材の空隙に浸透し易く、良質な表面被覆層を形成し易いことから、表面被覆剤溶液の粘度は0.1〜1Pa・sであることが好ましい。ここで、表面被覆剤溶液の粘度は、25℃、1気圧(1.013×105Pa)における値を意味する。
上記課題を解決するための表面処理が施された成形断熱材に係る本発明は、次のように構成されている。
炭素繊維を交絡させた繊維フェルトと、前記繊維フェルトの炭素繊維表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層と、を有する成形断熱材において、前記成形断熱材の少なくとも一つの表面近傍の領域には、炭素繊維表面及び保護炭素層表面を被覆するとともに、炭素繊維相互間の空隙の一部を埋める表面被覆層が設けられ、前記表面被覆層は、粒状成分を含まない炭素質からなり、前記表面被覆層のラマン分光スペクトルにおける1360cm-1付近のピーク強度IDと1580cm-1付近のピーク強度IGとの比ID/IGが、1.7〜2.2であり、前記表面被覆層が形成された領域の厚みが、1〜20mmである、ことを特徴とする成形断熱材。
この構成では、炭素繊維表面及び保護炭素層表面を被覆するとともに、炭素繊維相互間の空隙の一部を埋める表面被覆層が、活性ガスと先んじて反応することにより、炭素繊維や炭素繊維により構成される骨格構造を維持する保護炭素層の劣化を抑制することができる。また、表面被覆層に粒状成分が含まれないので、上述した黒鉛粒子による問題が生じることもない。
また、表面被覆層は、黒鉛質炭素、非晶質炭素のいずれでもよいが、ラマン分光スペクトルにおいて、黒鉛結晶構造の乱れに起因する1360cm-1付近のピーク強度IDと1580cm-1付近のピーク強度IGとの比ID/IGが、1.7〜2.2である炭素(非晶質炭素)からなることが好ましい。ピーク強度比ID/IGは、1.76〜2.14であることがより好ましく、1.82〜2.08であることがさらに好ましい。また、表面被覆層は、難黒鉛化性炭素からなることがより好ましい。
表面被覆層による効果は、表面被覆層の量が増大するほど増加するが、表面被覆層の量が増大するほどコスト高につながる。このため、表面被覆層が形成された領域の嵩密度は、成形断熱材の他の領域の嵩密度よりも、0.02〜0.30g/cm3大きい構成とすることが好ましく、0.08〜0.27g/cm3大きい構成とすることがより好ましく、0.14〜0.23g/cm3大きい構成とすることがさらに好ましい。また、表面被覆層が形成された領域の厚みは、1〜20mmに規制し、3〜15mmとすることがより好ましく、5〜10mmとすることがさらに好ましい。
以上に説明したように、本発明によると、低コストでもって断熱性能の劣化を抑制し得た炭素繊維成形断熱材を実現することができる。
図1は、実施例1にかかる成形断熱材の表面被覆層が形成された領域の顕微鏡写真である。 図2は、実施例1及び参考例1に係る表面被覆剤を焼成してなる樹脂炭のラマン分光スペクトルである。 図3は、耐酸化試験結果を示すグラフである。 図4は、比較例1に係る成形断熱材の顕微鏡写真である。
(実施の形態)
本実施の形態に係る成形断熱材は、炭素繊維を交絡させた繊維フェルトと繊維フェルトの炭素繊維の表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層とを有している。そして、成形断熱材の少なくとも一つの表面近傍の領域には、炭素繊維表面及び保護炭素層表面を被覆するとともに、炭素繊維相互間の空隙の一部を埋める表面被覆層が設けられている。この表面被覆層は、粒状成分を含まない炭素質で構成されている。表面被覆層を構成する炭素質のラマン分光スペクトルにおける1360cm-1付近のピーク強度IDと1580cm-1付近のピーク強度IGとの比ID/IGは、1.7〜2.2であることが好ましい。
なお、表面被覆層が形成される前の成形断熱材は特に限定されることはなく、市販の成形断熱材を用いることができる。例えば成形断熱材を構成する炭素繊維や保護炭素層として、以下に示すものを用いることができる。
成形断熱材を構成する炭素繊維としては、特に限定されることはなく、例えば石油ピッチ系、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系、フェノール樹脂系、セルロース系等の炭素繊維を、単一種又は複数種混合して用いることができる。中でも、熱処理による黒鉛化が起こり難い炭素繊維(たとえば、等方性の石炭ピッチ系、等方性の石油ピッチ系、レーヨン系、フェノール樹脂系の炭素繊維)を用いることが好ましい。また、炭素繊維の微視的な構造としては特に限定されず、形状(巻縮型、直線型、断面形状等)が同一のもののみを用いてもよく、また異なる構造のものが混合されていてもよい。ただし、炭素繊維の種類やその微視的構造は、製造される成形断熱材の物性に影響を与えるので、用途に応じて適宜選択するのがよい。
保護炭素層は、炭素繊維の表面全部、あるいは、炭素繊維の表面の一部を被覆しているものである。また、保護炭素層は炭素質(非晶質炭素や黒鉛質炭素)であればよく、非晶質炭素は難黒鉛化性、易黒鉛化性のいずれでもよい。保護炭素層の由来となる化合物は特に限定されることはないが、繊維フェルトに含浸可能な樹脂材料の炭素化物を用いることが好ましい。このような樹脂材料としては、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
表面被覆層は、炭素質(非晶質炭素や黒鉛質炭素)であればよい。なかでも、熱処理による炭素化が可能な合成樹脂の炭素化物であることが好ましく、フェノール樹脂の炭素化物であることがより好ましい。
表面被覆層は、次のようにして成形断熱材に形成される。合成樹脂(例えば、フェノール樹脂)が溶剤(例えば、メタノール)に溶解されてなる表面被覆剤溶液(炭素質の粒子を含まない)に、成形断熱材の一つの表面の厚みが1〜20mmの領域を5〜30秒程度浸漬して、この領域に表面被覆剤溶液を浸透させる。
こののち、不活性雰囲気下、1000〜2500℃で熱処理して、合成樹脂を炭素化させることにより、合成樹脂の炭素化物からなる表面被覆層が、炭素繊維の表面、保護炭素層の表面及び炭素繊維相互間の空隙の一部に形成される。ここで、合成樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、炭素化の前に当該熱硬化性樹脂の硬化温度以上に加熱して、熱硬化性樹脂の熱硬化を行う。溶剤は、熱処理や熱硬化の際に揮発除去される。
ここで、本明細書でいう炭素化とは、黒鉛化を含んだ広義のものを意味する。例えば、特に2000℃以上の温度で熱処理する場合、表面被覆層の黒鉛構造が発展することが考えられるが、本発明では、表面被覆層を構成する炭素質は、非晶質炭素、黒鉛質炭素のいずれでもよく、非晶質炭素であることがより好ましい。
実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
(表面被覆剤の作製)
住友ベークライト製のフェノール樹脂(スミライトレジンPR−50273)に、溶媒としてのメタノールを粘度が0.5Pa・sとなるように加えて、表面被覆剤溶液を作製した。表面被覆剤溶液の粘度は、JIS Z 8803に準拠して、25℃、1気圧における値を測定した。
成形断熱材(大阪ガスケミカル製DON−1000−H、嵩密度0.16g/cm3)を、100mm(縦)×100mm(横)×40mm(厚み)に、切断した。この成形断熱材の1つの表面を、表面から5mmの領域が液に浸されるように、上記表面被覆剤溶液に10秒間浸漬し、その後ゆっくりと引き上げた。
この表面被覆剤添加成形断熱材を、不活性雰囲気下500℃で1時間熱処理してフェノール樹脂を熱硬化させるとともにメタノールを揮発除去し、その後不活性雰囲気下2000℃で5時間熱処理して、フェノール樹脂を炭素化させて、実施例1に係る成形断熱材を作製した。
(比較例1)
表面処理を行っていない成形断熱材(大阪ガスケミカル製DON−1000−H、嵩密度0.16g/cm3)を100mm(縦)×100mm(横)×40mm(厚み)に、切断したものを、比較例1に係る成形断熱材とした。
(粉落ち試験)
上記のように作製された実施例1、比較例1に係る成形断熱材を10cm四方に裁断して、試験片を作製した。この試験片の表面にサンドペーパー#500を設置し、15gf/cm2の荷重がかかるように、金属性の錘をサンドペーパー上に載置した。こののち、サンドペーパーを2cm/secで10cm引っ張り、試験前後の重量変化(減少)を測定した。試験片の表面1cm2あたりの重量変化(3サンプルの平均値)は、実施例1で0.018mg、比較例1で0.047mgであった。
粉落ち試験での重量変化は、サンドペーパーを引っ張る際の摩擦により、成形断熱材の構成材料が粉化脱離(発塵)したことによると考えられる。
ここで、実施例1に係る成形断熱材の表面被覆層が形成された領域の顕微鏡写真を図1に、比較例1に係る成形断熱材の顕微鏡写真を図4にそれぞれ示す。ここで、表面被覆層が存在しない図4では、多数の繊維(炭素繊維)1が多数の空隙(繊維間の空隙)を保持しつつ存在していること、及び、繊維1の表面や繊維1相互の接点近傍に、繊維1を覆う保護炭素層2が存在していることがわかる。また、これらの空隙から内部(奥)の繊維1や保護炭素層2等をみることができ、奥まで空隙である領域(合焦範囲内には繊維等が存在しない領域)も多くみられる。
これに対し、表面被覆層が存在する図1では、奥まで空隙である領域が図4よりも大きく減少しており、この代わりに繊維間を埋める平面状の層3が増加していることが分かる。つまり、この平面状の層3が表面被覆層3であり、この表面被覆層3が炭素繊維1や保護炭素層の表面を覆いつつ繊維1間の空隙の一部を埋めていることが確認できる。
以上のことから、表面被覆層3を形成することにより、摩擦による発塵を抑制できることが分かる。
(実施例2)
メタノールの添加量を変化させて表面被覆剤溶液の粘度を0.3Pa・sとしたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例2に係る成形断熱材を作製した。
(実施例3)
メタノールの添加量を変化させて表面被覆剤溶液の粘度を0.1Pa・sとしたこと以外は、上記実施例1と同様にして、実施例3に係る成形断熱材を作製した。
実施例1〜3に係る成形断熱材の表面被覆層形成前後の質量を測定し(各実施例2点)、表面被覆層が形成された領域の嵩密度変化量(表面被覆剤溶液によるコート量)を算出した。この結果を下記表1に示す。なお、下記表1において、コート量の括弧外数値は平均値、括弧内数値は実測値を示す。
上記表1から、表面被覆剤溶液の粘度が0.3P・sである実施例2の表面被覆剤溶液によるコート量が最大となっていることが分かる。これは、低粘度化による表面被覆剤溶液の浸透性の向上と、低粘度化によるフェノール樹脂成分濃度の低下と、がバランスされた結果によると考えられる。この結果から、表面被覆剤溶液の粘度が0.1〜0.5P・sの範囲では、良質な表面被覆層を安定して形成できることが分かる。
(残炭量試験)
(参考例1)
新日本理化(株)製のポリイミド(リカコートSN−20(粘度13.9Pa・s))に、溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンを粘度が0.5Pa・sとなるように加えた表面被覆剤溶液を用いたこと以外は、上記実施例1と同様にして成形断熱材を作製した。
上記実施例1及び参考例1について、表面被覆層形成工程での質量変化を調べ、表面被覆層のコート量及び残炭率(表面被覆層質量÷含浸合成樹脂質量×100)を求めた。この結果、実施例1ではコート量が0.214g/cm3、残炭率が59.0%であり、参考例1ではコート量が0.046g/cm3、残炭率が38.3%であった(いずれも、2点平均)。
この結果から、表面被覆剤の合成樹脂としてフェノール樹脂を用いた実施例1では、高密度な表面被覆層を形成しやすいことが分かった。このため、フェノール樹脂を用いることにより、活性ガスによる劣化を抑制し得た成形断熱材を実現できる。なお、参考例1において、上記と同様の粉落ち試験を行ったところ、0.023mgと十分に低い値であった。
(ラマン分光試験)
上記実施例1及び参考例1で用いた表面被覆剤溶液を単体で、上記実施例1と同様の条件で熱硬化及び炭素化を行って、樹脂炭サンプルを作製した。これをラマン分光法(Thermo Fischer製DXR Raman Microscope)を用いて黒鉛化性の評価をおこなった。このとき、出力2mW、波長532nmのレーザー光をビーム径2μmに絞って測定を行った。この結果を図2に示す。
どちらのサンプルについても、1360cm-1付近の構造の乱れに起因するDバンドおよび1580cm-1付近の黒鉛由来の振動モードに起因するGバンドがみられた。そして、黒鉛結晶の乱れを示すピーク強度比ID/IGは、実施例1(図2上)に係る樹脂炭で2.06、参考例1(図2下)に係る樹脂炭で1.75であった。この結果から、実施例1に係る樹脂炭は参考例1(図2上)に係る樹脂炭に比べて、結晶の乱れを示すDバンドが大きく黒鉛結晶性が低いことがわかった。なお、樹脂炭の性質として、フェノール樹脂の炭素化物は難黒鉛化性炭素に分類され、結晶子サイズが小さく、配向性も低い一方、ポリイミド樹脂炭は理想的な黒鉛結晶が形成されやすく、結晶子サイズが大きく、また配向性も高いことが知られている。
(酸化耐久性の評価)
住友ベークライト製のフェノール樹脂(スミライトレジンPR−50273)を単体で硬化、炭素化、黒鉛化処理を施し、樹脂炭サンプルを作製した。また参考対象として、新日本理化(株)製のポリイミド(ポリイミドリカコートSN−20)についても同様のサンプルを作製した。示差熱天秤(Rigaku製TG8120)の白金パンに上記の樹脂炭サンプル約10mgを入れ、空気100ml/minを流した状態で昇温速度5℃/minで室温から1000℃まで加熱し、このときの重量変化を測定した。
図3に、上記測定結果を示す。フェノール樹脂炭(PR−50273)はポリイミド樹脂炭(SN−20)よりもはやく酸化減量し始めており、酸化耐久性が低いことが分かった。これはフェノール樹脂炭がポリイミド樹脂炭よりも結晶性が低いことによると考えられる。
以上の結果から、フェノール樹脂を用いる場合の表面被覆層は、ポリイミド樹脂を用いる場合よりも耐酸化性が低く(黒鉛化度合いが低く)、密度を高くできることが分かった。なお、耐酸化性が低く高密度な表面被覆層、耐酸化性が高く低密度な表面被覆層は、ともに炭素繊維成形断熱材の粉落ちや劣化を防止でき、いずれを用いるかは目的とする用途に応じて適宜選択すればよいが、コスト面ではフェノール樹脂が有利である。
上記で説明したように、本発明によると、簡便な表面被覆処理により、劣化や粉化を抑制し得た長寿命な成形断熱材を実現できるので、その産業上の利用可能性は大きい。
1 炭素繊維(繊維)
2 保護炭素層
3 表面被覆層

Claims (4)

  1. 炭素繊維を交絡させた繊維フェルトと前記繊維フェルトの炭素繊維表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層とを有する成形断熱材の少なくとも一つの表面から1〜20mmの領域を、合成樹脂と前記合成樹脂を溶解する溶媒とからなる表面被覆剤溶液に浸漬して、成形断熱材に前記表面被覆剤溶液を添加する浸漬ステップと、
    前記浸漬ステップの後、成形断熱材を不活性雰囲気下1500〜2500℃で熱処理し、前記合成樹脂を炭素化させて、表面被覆層を形成する熱処理ステップと、
    を有し、
    前記合成樹脂がフェノール樹脂であり、
    前記浸漬ステップの後、前記熱処理ステップの前に、前記フェノール樹脂を熱硬化させる熱硬化ステップをさらに有する、表面処理された成形断熱材の製造方法。
  2. 前記表面被覆剤溶液の粘度が、0.1〜1Pa・sである、
    ことを特徴とする請求項1に記載の成形断熱材の製造方法。
  3. 炭素繊維を交絡させた繊維フェルトと、前記繊維フェルトの炭素繊維表面を被覆する炭素質からなる保護炭素層と、を有する成形断熱材において、
    前記成形断熱材の少なくとも一つの表面近傍の領域には、炭素繊維表面及び保護炭素層表面を被覆するとともに、炭素繊維相互間の空隙の一部を埋める表面被覆層が設けられ、
    前記表面被覆層は、粒状成分を含まない炭素質からなり、
    前記表面被覆層のラマン分光スペクトルにおける1360cm-1付近のピーク強度ID
    と1580cm-1付近のピーク強度IGとの比ID/IGが、1.7〜2.2であり、
    前記表面被覆層が形成された領域の厚みが、1〜20mmである、
    ことを特徴とする成形断熱材。
  4. 前記表面被覆層が形成された領域の嵩密度は、成形断熱材の他の領域の嵩密度よりも0.02〜0.30g/cm3大きい、
    ことを特徴とする請求項3に記載の成形断熱材。
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