JP5052815B2 - カーボン部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カーボン部材およびその製造方法に係り、さらに詳しくは、高温大気中および高温水蒸気雰囲気中のいずれにおいても、高い耐食性および良好な摺動性を実現できるカーボン部材およびその製造方法に関する。
一般に、流体を密封するためのシール装置用の摺動部品として、カーボン部材からなる摺動部品が広く用いられている。この種のカーボン部材からなる摺動部品は、固体潤滑性に加えて摺動面に適度な凹凸を有することから、相手側摺動部材のシール摺動面との間に密封流体による液膜を保持することができ、優れた潤滑特性を発揮する。
カーボン部材からなる摺動部品は、通常、天然黒鉛、人造黒鉛、メソフェーズ、カーボンブラック等の骨材と、合成樹脂などの結合材と、を混合、混練りし、成形して、その後、1000℃〜3000℃で焼成することにより製造される。このようにして製造されるカーボン部材からなる摺動部品は、その製造過程において、多くの気孔がその内部に形成されることとなる。
また、このようなカーボン部材からなる摺動部品は、たとえば、ガスジェネレータ用シール等、用途によっては、500℃以上の高温酸化雰囲気で使用される場合がある。しかしながら、カーボン材料は500℃以上の高温酸化雰囲気で酸化してしまうという性質を有しており、特に、製造過程において、カーボン部材内部に形成された気孔は、酸化反応における酸化剤・反応生成物の移動経路となるため、これらの気孔表面に酸化消耗が生じてしまうという問題がある。そのため、500℃以上の高温酸化雰囲気において、安定して使用するためには、カーボン部材に、各種の耐酸化性の処理を施す必要がある。
たとえば、500℃以上の高温大気中(高温酸化雰囲気中)においても酸化することなく安定して使用できるカーボン部材として、その気孔部の表面に、リチウム化合物とリチウム以外のリン酸化合物との混合化合物被膜が形成されたカーボン部材が開示されている(たとえば、特許文献1)。しかしながら、この特許文献1に記載のカーボン部材は、高温大気中における耐酸化性および摺動性に優れるものの、高温水蒸気雰囲気中で使用した場合における、耐酸化性が不十分であるという課題があった。
また、高温水蒸気雰囲気中においても酸化することなく安定して使用できるカーボン部材として、たとえば、特許文献2には、Mg、Ca、ZnおよびAlのうち少なくとも一種のリン酸金属塩と、コロイド状のシリカと、からなる含浸液により、その気孔部に封口処理が施されたカーボン部材が開示されている。また、特許文献3には、その気孔部に、リン酸塩とアルミナ超微粒子とからなる含浸液を充填し、加熱処理して得られるカーボン部材が開示されている。しかしながら、特許文献2,3に記載のカーボン部材は、高温大気中で使用した場合における、耐酸化性や摺動特性に劣るという問題があった。
すなわち、これら特許文献1〜3に記載のカーボン部材では、高温大気中における耐酸化性と、高温水蒸気雰囲気中における耐酸化性と、を両立することができなかった。そのため、これら高温大気中、高温水蒸気雰囲気中のいずれにおいても、高い耐酸化性および優れた摺動特性を有するカーボン部材が望まれていた。
特開平9−87067号公報 特開昭57−179084号公報 特開昭58−69708号公報
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、ガスジェネレータ用シール等の摺動部品等として用いられ、高温大気中および高温水蒸気雰囲気中のいずれにおいても、高い耐食性および良好な摺動性を実現できるカーボン部材およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記目的を達成するために、鋭意検討を行った結果、カーボン基材に形成される気孔部の表面に、オルトリン酸アルミニウムを主として含有する被膜を形成することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るカーボン部材は、気孔部を有するカーボン基材と、前記気孔部の表面に形成され、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))を含有する被膜と、を有する。
前記気孔部の表面に形成されている被膜には、前記オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))に加えて、リチウムの化合物がさらに含有されていることが好ましい。
また、本発明に係るカーボン部材の製造方法は、
気孔部を有するカーボン基材に、リン酸アルミニウムを含有する被膜形成用水溶液を含浸させる工程と、
前記被膜形成用水溶液を含浸させたカーボン基材を、熱処理する工程と、
熱処理した前記カーボン基材を、温度180℃以上の高温高圧水で処理して、前記カーボン基材の有する気孔部の表面に、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))を含有する被膜を形成する工程と、を有する。
本発明の製造方法において、好ましくは、
気孔部を有するカーボン基材に含浸させる前記被膜形成用水溶液として、前記リン酸アルミニウムに加えて、リチウムの化合物をさらに含有する水溶液を用い、
前記カーボン基材の有する気孔部の表面に、前記オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))に加えて、前記リチウムの化合物をさらに含有する被膜を形成する。
本発明のカーボン部材は、気孔部を有するカーボン基材の気孔部表面に、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))を含有する被膜を形成してなるものである。このような本発明のカーボン部材によれば、このオルトリン酸アルミニウムを含有する被膜により、高温大気中だけでなく、高温水蒸気雰囲気中においても、カーボン基材に形成された気孔部に起因する酸化消耗を有効に防止することができる。そのため、本発明のカーボン部材は、これらの雰囲気中において、高い耐食性および良好な摺動性を実現することができ、たとえば、ガスジェネレータ用シール等の摺動部品等として好適に用いることができる。
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の実施例で使用した摺動試験装置を示す要部断面図、
図2は本発明の実施例および比較例に係るカーボン部材の大気中酸化試験の結果を示すグラフである。
カーボン部材
本発明のカーボン部材は、複数の気孔部を有するカーボン基材と、この気孔部の表面に形成された被膜と、を有し、特に、この被膜は、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))を含有してなるものである。
本発明のカーボン部材を構成するカーボン基材は、後述するように、各種カーボン材料からなる骨材と、合成樹脂などの結合材とを混合し、その後、所望の形状に成形し、1000℃〜3000℃で焼成することにより製造される。一方、このようにして製造されるカーボン基材には、製造過程で複数の気孔部が生じてしまい、この気孔部が原因となり、たとえば、高温酸化雰囲気中等で使用した場合に、酸化消耗が生じてしまう場合がある。
そのため、本発明のカーボン部材は、製造過程においてカーボン基材内部に生じた複数の気孔部の表面に、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))を含有する被膜を形成してなるものである。そして、このような構成を採用することにより、上記問題の解決を図るものである。
複数の気孔部の表面に形成される被膜は、オルトリン酸アルミニウムを主として含有するものであれば良いが、オルトリン酸アルミニウムに加えて、リチウムの化合物をさらに含有していることが好ましい。オルトリン酸アルミニウムに加えて、リチウムの化合物を含有させることにより、後述するように、これらの被膜を形成するための被膜形成用水溶液(たとえば、リン酸アルミニウムおよびリチウムの化合物を含有する水溶液)の、カーボン基材への含浸率を高めることができる。そのため、気孔部表面への被膜形成を、より効率的に行うことができる。
リチウム化合物としては、特に限定されないが、リン酸リチウム(LiPO)などが好ましく用いられる。
また、上記被膜は、オルトリン酸アルミニウム、および好ましく添加されるリン酸リチウム以外の他の成分については、実質的に含有されていないことが好ましく、特に、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)については、全く含有されていないことが望ましい。具体的には、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)に関しては、X線回折測定による検出限界以下となっていることが望ましい。メタリン酸アルミニウムが含有されていると、高温水蒸気雰囲気中における耐食性が劣化してしまうからである。
なお、本発明のカーボン部材においては、少なくともカーボン基材の有する気孔部の表面に上記した被膜が形成されていれば良く、たとえば、カーボン基材の有する気孔部に加えて、カーボン基材自体の表面にも被膜が形成されていても良い。
カーボン部材の製造方法
次に、本発明のカーボン部材の製造方法について、説明する。
本発明のカーボン部材は、まず、複数の気孔部を有するカーボン基材を製造し、カーボン基材中に、リン酸アルミニウムを含有する被膜形成用水溶液を含浸させ、次いで、熱処理を施し、その後、高温高圧水による処理を施すことにより製造される。
まず、複数の気孔部を有するカーボン基材を製造する。
カーボン基材は、カーボン材料と結合材とを混合、混練りし、得られた混練り物を、所望の形状に成形し、次いで、得られた成形体を、好ましくは1000℃〜3000℃で焼成することにより製造することができる。
カーボン材料としては、たとえば、グラファイト(人造黒鉛、天然黒鉛)などの黒鉛質カーボン、メソフェーズ、カーボンブラック、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などを炭素化した合成樹脂炭、木炭類などの炭素質カーボンなどが挙げられる。また、結合材としては、コールタールピッチやフェノール樹脂などの合成樹脂などが挙げられる。
なお、このようにして得られるカーボン基材は、その製造過程において、複数の気孔部が形成されることとなる。このような気孔部は、酸化反応における酸化剤・反応生成物の移動経路となるため、これらの気孔表面に酸化消耗が生じてしまい、腐食の原因となる。そのため、本発明においては、このような不都合を防止するために、次の方法により、得られたカーボン基材の気孔部表面に、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))を含有する被膜を形成する。
まず、カーボン基材の気孔部表面に被膜を形成するための被膜形成用水溶液を準備する。
本発明では、被膜形成用水溶液として、リン酸アルミニウムを主として含有する水溶液を用いる。リン酸アルミニウムとしては、たとえば、第一リン酸アルミニウム(Al・3P・6HO)などが挙げられる。水溶液中における、リン酸アルミニウムの含有量は、用途に応じて任意に変えることができる。
そして、真空加圧が可能な容器を備えた含浸装置を用い、含浸処理前のカーボン基材を含浸容器中に入れ、十分に真空引きを行い、上記にて準備した被膜形成用水溶液を注入する(真空含浸)。その後、窒素ガス等を導入することにより、含浸容器を加圧し、加圧した状態で一定時間保持する(加圧含浸)。次いで、大気圧に開放し、カーボン基材を取り出し、カーボン基材の表面を洗浄・乾燥した後、結晶水の脱離などにより、リン酸アルミニウム化合物が十分に緻密化する温度(たとえば、600℃以上の温度)で、熱処理を行う。なお、熱処理時の雰囲気としては、大気中または窒素雰囲気中などが挙げられる。
次いで、熱処理を行ったカーボン基材について、高温高圧水による処理を施す。高温高圧水により処理を施すことにより、カーボン基材表面にオルトリン酸アルミニウム(Al(PO))を含有する被膜を形成することができる。
本発明者等は、従来の方法、すなわち、カーボン基材に、リン酸アルミニウムを含有する被膜形成用水溶液を含浸させ、単に熱処理しただけの場合(たとえば、上述した特許文献1(特開平9−87067号公報))には、カーボン基材の気孔部表面に形成される被膜は、次のような構成となることを見出した。すなわち、この場合には、カーボン基材の気孔部表面に形成される被膜は、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))ではなく、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)を主成分として含有するものとなることを、X線回折等の結果により見出した。
このように、カーボン基材の気孔部表面に形成される被膜を、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)を主成分とするものとした場合には、高温大気中においては、耐酸化性に優れるものの、高温水蒸気雰囲気中で使用した場合においては、耐酸化性に劣るという問題があった。
さらに、本発明者等は、他の従来の方法、すなわち、被膜形成用水溶液として、リン酸アルミニウムと、シリカとの混合物を使用した場合(たとえば、上述した特許文献2(特開昭57−179084号公報))においても、形成される被膜は、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))に加えて、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)およびシリカ(SiO)を主成分として含有するものとなることを、X線回折等の結果により見出した。
そして、この場合においては、形成される被膜中には、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))に加えて、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)およびシリカ(SiO)が含有されてしまっているため、高温大気中における、耐酸化性に劣るという問題があった。なお、シリカの代わりに、たとえば、アルミナを使用した場合(たとえば、特許文献3(特開昭58−69708号公報))においても、同様の理由により、高温大気中における、耐酸化性に劣るという問題があった。
これに対して、本発明においては、熱処理を行ったカーボン基材について、高温高圧水による処理を施すことにより、カーボン基材の気孔部表面に形成された被膜中における、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)を反応させて、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))とする。すなわち、本発明においては、カーボン基材の気孔部表面に形成された被膜を、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))を主として含有するものとする。そして、このようにすることにより、高温大気中で使用する場合に加えて、高温水蒸気雰囲気中で使用する場合においても、優れた耐酸化性を実現することができる。
高温高圧水による処理を行う際の条件としては、温度を180℃以上、好ましくは180〜220℃、より好ましくは180〜200℃とする。この温度が低すぎると、被膜中に、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)が残存してしまい、上記効果が得られなくなる。また、この場合における圧力は、上記した温度との関係で決定することが好ましく、特に、本発明においては、処理温度における飽和水蒸気圧以上とすることが好ましい。圧力を飽和水蒸気圧以上とすることにより、水の気化を抑制することができ、180℃以上の液相の水により処理を行うことができる。
なお、本発明においては、カーボン基材の気孔部表面に被膜を形成するための被膜形成用水溶液には、リン酸アルミニウムに加えて、リチウムの化合物をさらに含有させても良い。リチウムの化合物をさらに含有させることにより、被膜形成用水溶液を、カーボン基材に含浸させる際における、含浸物の吹き出しを防止することができる。そのため、リチウムの化合物をさらに含有させることにより、繰り返し含浸することなく含浸深さを大きくすることができ、さらには、吹き出してしまった含浸物の除去作業を軽減することもできる。すなわち、より効率的に、カーボン基材中への、被膜形成用水溶液の含浸率を高めることができる。
このようなリチウムの化合物としては、上記したリン酸アルミニウムに可溶なものであればよく、特に限定されないが、リン酸リチウム(LiPO)などが好ましく用いられる。また、被膜形成用水溶液中における、リチウムの化合物の含有量は、被膜形成用水溶液全体100重量%に対して、リチウム元素換算で、好ましくは0.1〜5重量%とする。
このようにして得られる本発明のカーボン部材は、カーボンの有する潤滑性等の特性を犠牲とすることなく、高温大気中で使用する場合に加えて、高温水蒸気雰囲気中で使用する場合においても、優れた耐酸化性を実現することができる。そのため、本発明のカーボン部材は、耐酸化性を必要とする各種用途に使用することができ、特に、高温大気中および高温水蒸気雰囲気中のいずれにおいても、優れた耐酸化性を有することが要求される摺動材(たとえば、ガスジェネレータ用シール等の摺動材)として、好適に用いることができる。特に、このような高温大気中および高温水蒸気雰囲気中でも、物性が変化することなく安定して使用できるものである。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例1
まず、人造黒鉛(平均粒度10μm):50重量%、コールタールピッチ:45重量%、およびフェノール樹脂:5重量%を均一に混合した後、加圧ニーダーを用いて、温度160℃で、60分間の混練りを行い、混練り物を得た。そして、混練り物を冷却した後、自由ミルを用いて100メッシュ以下に微粉砕を行い、成形粉を得た。
次いで、得られた成形粉を用いて、成形圧力1.3ton/cm、5分の条件で金型プレス成形を行い、φ100×φ40×L50mmの成形体を得た。そして、得られた成形体を、2500℃、1時間の条件で熱処理して、ショア硬度80、比重1.80、気孔率13%の黒鉛化カーボン焼結体を得た。
そして、このカーボン焼結体から、10×5×40mmの大きさのブロックを作製し、含浸評価用の基材とした。
また、このカーボン焼結体から、φ23×φ29×10mmのリングを作製し、摺動特性評価用の基材とした。
次いで、真空・加圧状態に耐えられる容器を具えた含浸装置を用い、上記にて作製した含浸評価用の基材および摺動特性評価用の基材に、被膜形成用水溶液を含浸させた。具体的には、各基材を、それぞれ含浸容器に入れ、その後、0.01kPaまで真空引きした後、被膜形成用水溶液を含浸させた。なお、本実施例では、被膜形成用水溶液として、第一リン酸アルミニウム(Al・3P・6HO:多木化学(株)製)38重量%水溶液を使用した。
上記条件で、約20分間保持した後、Nガスを用いて、0.7MPa、60分間の条件で加圧含浸を行い、その後、大気圧に戻し、各基材を取り出した。次いで、各基材を洗浄・乾燥した後、大気雰囲気炉で600℃、1時間の条件で熱処理を行った。最後に、熱処理後の基材について、180℃の高温高圧水にて、24時間処理することにより、含浸評価用および摺動特性評価用の試料をそれぞれ作製した。なお、高温高圧水の圧力は、温度180℃における、飽和水蒸気圧である1.05MPa以上とした。
実施例2
被膜形成用水溶液として、第一リン酸アルミニウムに加えて、リン酸リチウム(一級試薬、純正化学(株)製)3重量%を添加した水溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして、含浸評価用および摺動特性評価用の試料をそれぞれ作製した。
比較例1
高温高圧水による処理を行わなかった以外は、実施例2と同様にして、含浸評価用および摺動特性評価用の試料をそれぞれ作製した。なお、比較例1の試料は、本発明の従来技術である特許文献1(特開平9−87067号公報)に相当する。
比較例2
被膜形成用水溶液の代わりに、第一リン酸アルミニウムと、コロイド状シリカ(スノーテックス O、日産化学工業(株)製)と、を容積比率1:1で混合した溶液を用い、熱処理の条件を、大気中、600℃、1時間の条件から、窒素雰囲気中、900℃、5時間の条件に変更し、さらには、高温高圧水による処理を行わなかった以外は、実施例1と同様にして、含浸評価用および摺動特性評価用の試料をそれぞれ作製した。なお、比較例2の試料は、本発明の従来技術である特許文献2(特開昭57−179084号公報)に相当する。
評価試験
そして、実施例1,2および比較例1,2において作製した各試料について、各評価を行った。具体的には、含浸評価用の試料を用いて酸化減量試験を、摺動特性評価用の試料を用いて摺動試験を、それぞれ、以下の方法により行った。
酸化減量試験
酸化減量試験は、それぞれ、上記にて作製した実施例1,2、比較例1,2に係る含浸評価用の試料を用いて、高温大気中(大気中、500℃、100時間)、高温水蒸気中(水蒸気中、500℃、50時間)、および沸騰水浸漬雰囲気中(沸騰水、100℃、100時間)に保持し、試験前後における試料の重量減少率を評価することにより行った。なお、重量減少率は、下記式(1)により求めた。
重量減少率(%)={(試験前重量−試験後重量)/試験前重量}×100 …(1)
高温大気中における試験結果を図2に、高温水蒸気中および沸騰水浸漬雰囲気中における試験結果を表1に、それぞれ示す。
摺動試験
摺動試験は、上記にて作製した実施例1,2、比較例1,2に係る摺動特性評価用の試料について、図1に示すような試験装置を用いて行った。
図1は、本実施例の摺動試験に用いた試験装置の断面図である。図1に示すように、本実施例の摺動試験は、上記にて作製した実施例1,2、比較例1,2に係る摺動特性評価用の試料から構成されるシールリング1と、相手材から構成されるメイティングリング2と、をそのシール面を介して、突き合わせてなるものである。シールリング1は、ボール7および固定側の治具3を介して、固定軸5により、荷重Wで固定されている。一方、メイティングリング2は、回転側の治具4を介して、回転軸6により回転自在となっている。この回転軸6は図示省略のモータにより回転可能となっている。
なお、図1に示すシールリング1およびメイティングリング2は、図示省略の加熱用電気炉の雰囲気内に配置されており、加熱用電気炉の温度は、気炉内に連結された第1熱電対温度計9により制御されている。また、シールリング1には、熱電対用の穴が形成されており、第2熱電対温度計10によりその温度を計測できるようになっている。
さらに、図1に示すように、固定軸5には、トルク測定器8が連結されており、このトルク測定器8により、回転軸6の摺動トルクMを測定できるようになっている。そして、摺動トルクMと、回転時の荷重Wと、摺動面の平均半径とから摩擦係数を測定できるような構成となっている。
そして、本実施例においては、実施例1,2および比較例1,2において作製した摺動特性評価用の試料をシールリング1として、高温大気中および温水蒸気中において、それぞれ摺動試験を行った。
高温大気中の摺動試験は、雰囲気:大気中、温度:500℃、摺動速度:2m/s、面圧:0.15MPa、摺動距離:21600m、相手材(メイティングリング2):炭化クロムコーティング材の条件で行った。
また、高温水蒸気中の摺動試験は、雰囲気:水蒸気中、温度:500℃、摺動速度:2m/s、面圧:0.15MPa、摺動距離:21600m、相手材(メイティングリング2):炭化ケイ素材の条件で行った。
高温大気中および高温水蒸気中における摺動試験の結果を表2に示す。なお、表2には、摺動試験終了後における、各試料の摩擦係数および摩耗量をそれぞれ示した。
評価
図2に、実施例1および比較例2の高温大気中における酸化試験の結果を示す。図2においては、保持時間と、各試料の重量減少率と、の関係をグラフ化して示した。図2から明らかなように、カーボン部材の気孔部表面に、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))からなる被膜を形成した実施例1は、第一リン酸アルミニウムと、コロイド状シリカと、を用いて被膜を形成した比較例2と比較して、重量減少率が抑えられており、高温大気中における耐酸化性に優れる結果となった。なお、実施例2、比較例1についても、実施例1とほぼ同等の結果となった。
Figure 0005052815
表1に、実施例1,2、比較例1,2の高温水蒸気中および沸騰水浸漬雰囲気中における酸化試験の主な試験条件と、各試料における重量減少率の結果と、を示す。
表1より、高温高圧水による処理を行わなかった比較例1においては、高温水蒸気中および沸騰水浸漬雰囲気中のいずれにおいても、重量減少率が高くなり、これらの雰囲気中における耐酸化性に劣る結果となった。なお、この理由としては、比較例1においては、高温高圧水による処理を行っていないため、カーボン部材の気孔部表面に形成された被膜が、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)を主成分とするものとなったことによると考えられる。
これに対し、高温高圧水による処理を行い、カーボン部材の気孔部表面に、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))からなる被膜を形成した実施例1,2においては、高温水蒸気中および沸騰水浸漬雰囲気中のいずれにおいても、重量減少率が低く、耐酸化性に優れる結果となった。
Figure 0005052815
表2に、実施例1,2、比較例1,2の高温大気中および高温水蒸気中における摺動試験の主な試験条件と、各試料の摺動試験終了後(すなわち、摺動距離:21600mにおける試験の終了後)における、摩擦係数および摩耗量と、をそれぞれ示す。
表2より、第一リン酸アルミニウムと、コロイド状シリカと、を用いて被膜を形成した比較例2においては、高温大気中における摺動試験において、摩擦係数が高くなる結果となり、また、摺動試験終了後におけるカーボン部材の摩耗量が多くなる結果となった。すなわち、高温大気中における摺動特性に劣る結果となった。
また、高温高圧水による処理を行わなかった比較例1においては、高温水蒸気中における摺動試験において、摩擦係数が高くなる結果となり、また、摺動試験終了後におけるカーボン部材の摩耗量が多くなる結果となった。すなわち、高温水蒸気中における摺動特性に劣る結果となった。
これに対して、高温高圧水による処理を行い、カーボン部材の気孔部表面に、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))からなる被膜を形成した実施例1,2においては、高温大気中および高温水蒸気中のいずれにおいても、摩擦係数が低く抑えられており、また、各摺動部材の摩耗量も少なく、摺動特性に優れる結果となった。
参考例
実施例1で作製した含浸評価用の基材を使用して、実施例1と同様の方法により、温度100〜200℃の各条件で、24時間、高温高圧水による処理を行い、基材の気孔部表面に被膜を形成することにより、処理条件の異なる含浸評価用の試料を製造した。そして、得られた各試料について、X線回折により、形成された被膜の組成を調べた。結果を表3に示す。
Figure 0005052815
表3より、処理温度を160℃以上とすることにより、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)から、オルトリン酸アルミニウム(Al(PO))に変化することが確認できる。さらには、処理温度を180℃以上とすることにより、メタリン酸アルミニウム(Al(PO)が実質的に検出できなくなる結果となった。
図1は本発明の実施例で使用した摺動試験装置を示す要部断面図である。 図2は本発明の実施例および比較例に係るカーボン部材の大気中酸化試験の結果を示すグラフである。
符号の説明
1… シールリング
2… メイティングリング
3… 固定側の治具
4… 回転側の治具
5… 固定軸
6… 回転軸

Claims (2)

  1. 気孔部を有するカーボン基材に、リン酸アルミニウムを含有する被膜形成用水溶液を含浸させる工程と、
    前記被膜形成用水溶液を含浸させたカーボン基材を、熱処理する工程と、
    熱処理した前記カーボン基材を、温度180℃以上の高温高圧水で処理して、前記カーボン基材の有する気孔部の表面に、オルトリン酸アルミニウムを含有する被膜を形成する工程と、を有するカーボン部材の製造方法。
  2. 気孔部を有するカーボン基材に含浸させる前記被膜形成用水溶液として、前記リン酸アルミニウムに加えて、リチウムの化合物をさらに含有する水溶液を用い、
    前記カーボン基材の有する気孔部の表面に、前記オルトリン酸アルミニウムに加えて、前記リチウムの化合物をさらに含有する被膜を形成する請求項1に記載のカーボン部材の製造方法。
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