図面を参照して実施例の電力変換装置2を説明する。図1に、実施例の電力変換装置2の回路図を示す。電力変換装置2は、例えば、電気自動車に搭載されるものであり、主に、2個の電圧コンバータ19a、19b、インバータ20、コントローラ50などを備えている。電気自動車は走行用のモータ30(例えば三相交流モータ)を備えている。電力変換装置2は、バッテリ3から供給される直流電力をモータ30に適した交流電力に変換してモータ30に供給し得るように構成されている。これにより、運転者がアクセルペダルを踏むと、モータ30が回転して当該電気自動車が走行する。運転者がブレーキペダルを踏んだときには、モータ30が発電する。モータ30がトルクを出力して車両が走行することを「力行」と称し、モータ30が発電機として発電することを「回生」と称する。回生により生成された電力は「回生電力」と称し、回生電力はバッテリ3を充電するのに使用される。
2個の電圧コンバータを、第1電圧コンバータ19aと第2電圧コンバータ19bと称する。第1電圧コンバータ19aは、リアクトル5a、2個のトランジスタ6a、7a、2個のダイオード8a、9a及び電流センサ10aを備えている。リアクトル5aは、その一端が、スイッチ4aを介して、バッテリ3の正極端子に電気的に接続されており、他端は、電流センサ10aに接続されている。また、トランジスタ6a及びトランジスタ7aは、高電圧側の正極端子と負極端子の間に直列に接続されている。なお、高電圧側の負極端子は、低電圧側の負極端子と直接に接続されている。それゆえ、高電圧側の負極端子と低電圧側の負極端子は、以下、「共通負極端子」と称する。トランジスタ6a、7aは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
本実施例では、トランジスタ6aのコレクタが高電圧側の正極端子に接続され、トランジスタ7aのエミッタが共通負極端子に接続されており、トランジスタ6aのエミッタとトランジスタ7aのコレクタが互いに接続されている。このトランジスタ6aとトランジスタ7aの接続部分を接続中点と称し、この接続中点に電流センサ10aを介してリアクトル5aが接続されている。トランジスタ6a、7aのゲートには、コントローラ50から配線される制御信号線が夫々接続されており、コントローラ50から出力されるトランジスタ駆動信号A1、A2によりこれらのスイッチングを制御し得るように構成されている。トランジスタ6aは接続中点に対して高電位側に位置し、またトランジスタ7aは接続中点に対して低電位側に位置する。そのため、トランジスタ6aは上アームトランジスタと称され、またトランジスタ7aは下アームトランジスタと称されることもある。
また、トランジスタ6a、7aには、ダイオード8a、9aが逆並列に接続されている。即ち、トランジスタ6aには、エミッタからコレクタに向けてダイオード8aが順方向に並列に接続されており、またトランジスタ7aにも、エミッタからコレクタに向けてダイオード9aが順方向に並列に接続されている。ダイオード8a、9aは、トランジスタ6aやトランジスタ7aがオン状態からオフ状態に移行する際にリアクトル5aから、トランジスタ6a、7aに対して逆方向に流れ込む電流を逃がすバイパス経路を構成するものであり、環流ダイオードやフライホイールダイオードと称されることもある。
第2電圧コンバータ19bも、基本的な構成については、第1電圧コンバータ19aと同じである。即ち、第2電圧コンバータ19bは、リアクトル5b、2個のトランジスタ6b、7b、2個のダイオード8b、9b及び電流センサ10bを備えており、これらは、第1電圧コンバータ19aを構成する、リアクトル5a、トランジスタ6a、7a、ダイオード8a、9a、電流センサ10aに夫々対応する。そのため、ここでは、第2電圧コンバータ19bの基本的な構成については説明を省略し、第1電圧コンバータ19aと異なる構成について説明する。
第2電圧コンバータは、その低電圧側の正極端子(リアクトル5bの一端側)が、スイッチ13を介して、第1電圧コンバータ19aの低電圧側の正極端子(リアクトル5aの一端側)に接続されている。このスイッチ13は、コントローラ50から配線される制御信号線が接続されており、コントローラ50から出力されるスイッチ制御信号Scによりオンオフを制御され得るように構成されている。また第2電圧コンバータ19bの低電圧側の正極端子(リアクトル5bの一端側)と共通負極端子の間に、直列に接続されたスイッチ14と抵抗15が接続されている。このスイッチ14も、コントローラ50から配線される制御信号線が接続されており、コントローラ50から出力されるスイッチ制御信号Sdによりオンオフを制御され得るように構成されている。抵抗15は、後述するように、電流センサ10a、10bの故障判定をする際に、所定の電流経路に流れる電流値を予め決められた値に設定するためのものである。コントローラ50は、スイッチ13をオンン状態(接続状態)に制御するとともに、スイッチ14をオフ状態(解放状態)に制御する場合と、その逆に、スイッチ13をオフ状態に制御するとともにスイッチ14をオン状態に制御する場合がある。コントローラ50は、通常は前者の状態を保持する。前者の状態は、第2電圧コンバータ19bが第1電圧コンバータ19aと同一の構成となるとともに、第1電圧コンバータ19aと第2電圧コンバータ19bが、バッテリ3とインバータ20の間に並列に接続されることになる。後者の状態は、後述するように、電流センサ10a、10bの故障診断時に選択される状態である。スイッチ13とスイッチ14は、常に、一方がオン状態の場合は他方がオフ状態に制御される。即ち、スイッチ13、14は、ペアで制御されるので、これら2個のスイッチをバイパススイッチと総称する場合がある。
これらの2個の電圧コンバータ19a、19bは、低電圧側と高電圧側の間で双方向に電圧変換が可能な電圧コンバータであり、本実施例では、低電圧側及び高電圧側が互いに並列に接続されている(この場合、スイッチ13はオン状態に制御され、スイッチ14はオフ状態に制御されている)。即ち、先に述べたように、低電圧側の正極端子がスイッチ4aを介してバッテリ3の正極端子に接続されており、共通負極端子がスイッチ4bを介してバッテリ3の負極端子に接続されている。また2個の電圧コンバータ19a、19bの高電圧側は、インバータ20に接続されている。そして、夫々の電圧コンバータでバッテリ3の直流電圧を昇圧してインバータ20に供給する(昇圧動作)。また、インバータ20から回生電力が入力された場合には、夫々の電圧コンバータで降圧してバッテリ3を充電する(降圧動作)。電圧コンバータ19a、19bは、双方向DC−DCコンバータとも称される。バッテリ3は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池などの再充電可能バッテリである。
スイッチ4a、4bは、例えばシステムメインリレーである。システムメインリレーは、当該電気自動車のメインスイッチ(不図示)と連動しているが、コントローラ50によるオンオフ制御も可能に構成されている。本実施例では、スイッチ4aとスイッチ4bは、独立してオンオフ制御し得るように構成されている。スイッチ4aには、コントローラ50から配線される制御信号線が接続されており、コントローラ50から出力されるスイッチ制御信号Saによりオンオフを制御され得るように構成されている。スイッチ4bも同様に、コントローラ50から出力されるスイッチ制御信号Sbによりオンオフを制御され得るように構成されている。なお、低電圧側の正極端子と共通負極端子の間や、高電圧側の正極端子と共通負極端子の間には、フィルタ用又は平滑用のコンデンサ11、12が夫々接続されている。
電流センサ10a、10bは、リアクトル5a、5bに流れる直流電流値を計測可能に構成される直流電流検出素子である。本実施例では、電流センサ10a、10bは、夫々コントローラ50に電気的に接続されており、電流センサ10aから出力される電流センサ信号Iaや、電流センサ10bから出力される電流センサ信号Ibが、コントローラ50に入力され得るように構成されている。これにより、コントローラ50は、電流センサ10a、10bが計測した電流値を電流センサ信号Ia、Ibに基づいて取得することが可能になる。電流センサ10a、10bの計測値(リアクトル5a、5bに流れる電流値)は、夫々の電圧コンバータが昇圧動作や降圧動作を行う際の電流監視などに用いられる。
インバータ20は、バッテリ3から供給される直流電力をモータ30(三相交流モータ)に適した、例えば三相交流電力に変換してモータ30に供給する装置である。本実施例では、このインバータ20は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路を主に備えており、モータ30のU、V、Wの各相に対応してスイッチング制御されるIGBTなどのスイッチング素子を備えている。本実施例では、インバータ20は、コントローラ50から出力される制御信号によりスイッチング素子が制御されて、U、V、Wの各相に対応した三相交流電力を生成可能に構成されている。
コントローラ50は、マイクロコンピュータを中心にRAM、ROMあるいはEEPROMなどの半導体メモリや、入出力インタフェースなどを備えた制御装置である。コントローラ50は、2個の電圧コンバータ19a、19bの昇圧動作や降圧動作を制御したり、インバータ20に対してはモータ30の出力トルクを制御したりする。また、後述するようにスイッチ4a、4b、13、14を制御して電流センサ10a、10bの故障を検出したりする。そのため、入出力インタフェースには、夫々の電圧コンバータ19a、19bのトランジスタ6a、7a、6b、7b、スイッチ4a、4b、13、14、電流センサ10a、10b、インバータ20や、モータ30の回転センサ(不図示)が接続されている。
コントローラ50は、ROMやEEPROMに記憶された制御プログラムなどをRAMに展開して処理を実行する。また、後述の電流センサ故障検出処理のプログラムもコントローラ50のROMやEEPROMなどに記憶されている。なお、コントローラ50は、CANやLINなどの車内ネットワークにも接続されており、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に基づくアクセル開度情報やブレーキペダルの踏み込み量に基づくブレーキ踏量情報などを車内ネットワークを介してリアルタイムに取得可能に構成されている。の、図1では、コントローラ50を一つの矩形で表しているが、その機能は、複数のマイクロコンピュータが協働して実現される。
電流センサ10a、10bは、夫々の電圧コンバータ19a、19bが昇圧動作や降圧動作を行う際に必要な情報として、リアクトル5a、5bに流れる電流値を計測して電流センサ信号Ia、Ibを出力する。そのため、故障などが発生して正常な電流センサ信号Ia、Ibを出力することができない場合には、その異常を検知する必要がある。そこで、本実施例では、コントローラ50が図2に示す電流センサ故障検出処理を行うことにより、電流センサ10a、10bの異常を検知可能にしている。なお、この処理は、例えば、当該電気自動車のメインスイッチ(不図示)がオン状態にされた直後に実施される所定の故障診断プログラムに組み込まれて実行される。
図2に示すように、電流センサ故障検出処理では、まずステップS2により各スイッチを所定状態に制御する処理が行われる。各スイッチとは、前述したスイッチ4a、4b、13、14である。本実施例では、コントローラ50は、スイッチ4a、4b、14をオン状態に制御し、スイッチ13をオフ状態に制御する。続いてステップS3により各トランジスタ6a、7a、6b、7bを所定状態に制御する処理が行われる。本実施例では、コントローラ50は、トランジスタ6bをオン状態に制御し、トランジスタ6a、7a、7bをオフ状態に制御する。
これにより、図1の破線で示すように、バッテリ3の正極端子から、スイッチ4a→第1電圧コンバータ19aの低電圧側の正極端子→リアクトル5a→電流センサ10a→ダイオード8a→高電圧側の正極端子→トランジスタ6b→電流センサ10b→リアクトル5b→第2電圧コンバータ19bの低電圧側の正極端子→スイッチ14→抵抗15→共通負極端子→スイッチ4bを経由してバッテリ3の負極端子に戻る電流経路(センサチェック用電流経路)が形成される。このとき、リアクトル5aと5bには同じ大きさの電流が流れる。このときの電流値は、例えば、抵抗15の抵抗値により予め設定されている。電流センサ10a、10bが正常であれば、それら電流センサの計測値は同じ値となる。
ステップS4では、各電流センサ10a、10bから電流データを取得する処理が行われる。コントローラ50は、電流センサ10aから出力される電流センサ信号Iaと電流センサ10bから出力される電流センサ信号Ibに基づいて、両電流センサ10a、10bの計測値(電流値)を得る。そして、ステップS5により各電流値が所定範囲内であるか否かを判定する。
例えば、コントローラ50は、予め設定された所定の上限基準値(所定の閾値)に対して電流センサ10a、10bの計測値(電流値)が夫々超えているか否かや、予め設定された所定の下限基準値(所定の閾値)に対して電流センサ10a、10bの計測値(電流値)が夫々下回っているか否かなどに基づいて判定する。そして、電流センサ10a、10bのうち、少なくとも1個の電流センサの計測値が、所定の上限基準値を超えていたり、所定の下限基準値を下回っていたりする場合には、各計測値は所定範囲内ではないと判定する(S5:NO)。また、両方の電流センサ10a、10bの計測値が所定の上限基準値と所定の下限基準値の間に夫々の電流値が入っている場合には、各計測値は所定範囲内であると判定する(S5:YES)。
また、例えば、両電流センサ10a、10bの計測値の差を算出しその差が所定の閾値を超えているか否かに基づいて判定してもよい。この場合は、当該計測値の差が所定の閾値を超えているときには各計測値は所定範囲内ではないと判定し(S5:NO)、計測値の差が所定の閾値以下であるときには各計測値は所定範囲内であると判定する(S5:YES)。この判定方法は、電流センサ10a、10bの夫々の計測値を所定の上限基準値や所定の下限基準値と比較する場合に比べて、簡素なアルゴリズムで構成することができる点に特徴があるが、各計測値が所定範囲内ではないと判定したとき(S5:NO)に、故障が疑われる電流センサ10a、10bを特定することが難しい。
ステップS5による判定処理により、各計測値が所定範囲内であると判定した場合には(S5:YES)、電流センサ10a、10bはいずれも正常である蓋然性が高いため、本電流センサ故障検出処理を終える。これに対して、ステップS5による判定処理により、各計測値が所定範囲内でないと判定した場合には(S5:NO)、電流センサ10a、10bのいずれかに故障が発生している可能性がある。この場合には、ステップS6により電流センサの故障情報を出力する処理が行われる。
具体的には、例えば、コントローラ50は、車内ネットワークで接続されている他のコントローラや上位のコントローラに対して、故障が疑われる電流センサ10a又は電流センサ10bを特定するセンサIDと故障内容を表すコードを併せて送信する。これにより、例えば、電流センサ10a、10bを含む電力変換装置2の故障が当該電気自動車のインストルメントパネルに表示される。
図1の電力変換装置2では、第2電圧コンバータ19bは、リアクトル5bとバッテリ3の正極端子との間の接続を切り離すとともに、リアクトル5bとバッテリ3の負極との間を接続するバイパススイッチ(スイッチ13、14)を備えている。そして、図2のステップS2、S3では、コントローラ50は、第1電圧コンバータ19aの高電位側のトランジスタ6aをオン状態に制御し、残りのトランジスタ7a、6b、7bをすべてオフ状態に制御するとともに、第2電圧コンバータ19bのリアクトル5bをバッテリ3の正極端子から切り離し負極端子に接続するようにバイパススイッチ(スイッチ13、14)を制御する。そうすることで、2個の電圧コンバータ19a、19bの電流センサ10a、10bに同じ大きさの電流が流れるセンサチェック用電流経路が形成される。
なお、2個の電圧コンバータが、夫々電圧の異なるバッテリ3、16に接続されている場合には、図3に示すような回路構成を採ることが可能である。図3に、参考例による電力変換装置2aの回路図を示す。この電力変換装置2aの場合には、前述したスイッチ13やスイッチ14は必要としない代わりに、第2電圧コンバータ19cとバッテリ16との電気的な接続をオンオフするスイッチ18a、18bが必要になる。このスイッチ18a、18bは、スイッチ4a、4bと同様に、当該電気自動車のメインスイッチ(不図示)と連動しているシステムメインリレーである。スイッチ18a、18bは、コントローラ50によるスイッチ制御信号Se、Sfによりオンオフ制御可能に構成されている。バッテリ16は、バッテリ3と同様に、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素バッテリなどの再充電可能バッテリである。バッテリ16の出力電圧VB2は、バッテリ3の出力電圧VB1に比べて低い(VB1>VB2)。図3の第1電圧コンバータ19aは、図1の第1電圧コンバータ19aと同じ構成を有している。
このような参考例においても、図2に示す電流センサ故障検出処理により電流センサ10a、10bの故障判定が可能である。例えば、図2に示すステップS2により、コントローラ50がスイッチ4a、4b、16a、16bを夫々オン状態に制御し、また続くステップS3により、トランジスタ6bをオン状態に制御し、トランジスタ6a、7a、7bをオフ状態に制御する。
これにより、図3の破線で示すように、バッテリ3の正極端子から、スイッチ4a→第1電圧コンバータ19aの低電圧側の正極端子→リアクトル5a→電流センサ10a→ダイオード8a→高電圧側の正極端子→トランジスタ6b→電流センサ10b→リアクトル5b→第2電圧コンバータ19cの低電圧側の正極端子→スイッチ18aを経由してバッテリ16の正極端子に戻る電流経路(センサチェック用電流経路)が形成される。そのため、ステップS4及びステップS5により電流センサ10a、10bの故障判定を行うことができ、またその結果をステップS6により出力することができる。
なお、図1に示すように直列に接続されたスイッチ14及び抵抗15を、第2電圧コンバータ19aの低電圧側の正極端子(リアクトル5bの一端側)と共通負極端子の間に接続してもよい。この場合には、バッテリ3の正極端子から、スイッチ4a→第1電圧コンバータ19aの低電圧側の正極端子→リアクトル5a→電流センサ10a→ダイオード8a→高電圧側の正極端子→トランジスタ6b→電流センサ10b→リアクトル5b→第2電圧コンバータ19bの低電圧側の正極端子→スイッチ14→抵抗15→共通負極端子→スイッチ18b(又はスイッチ4b)を経由してバッテリ16の負極端子に戻る電流経路(センサチェック用電流経路)が形成される。
また、3個の電圧コンバータ19a、19d、19eがバッテリ3に接続されている場合には、図4に示すような回路構成を採ることが可能である。図4に、実施例の改変例による電力変換装置2bの回路図を示す。この電力変換装置2bの場合には、前述したスイッチ14は必要としない。この改変例の場合には、3個目の電圧コンバータを「第3電圧コンバータ19e」と称する。なお、図4では、第2電圧コンバータには符号「19d」を付している。第3電圧コンバータ19eは、第1電圧コンバータ19aと同様に構成されている。即ち、第3電圧コンバータ19eは、リアクトル5c、2個のトランジスタ6c、7c、2個のダイオード8c、9c及び電流センサ10cを備えており、これらは、第1電圧コンバータ19aを構成する、リアクトル5a、トランジスタ6a、7a、ダイオード8a、9a、電流センサ10aに夫々対応する。そのため、ここでは、第3電圧コンバータ19eの構成については説明を省略する。
なお、トランジスタ6c、7cのゲートには、コントローラ50から配線される制御信号線が夫々接続されており、コントローラ50から出力されるトランジスタ駆動信号C1、C2によりこれらのスイッチングを制御し得るように構成されている。また、電流センサ10cから出力される電流センサ信号Icは、コントローラ50に入力され得るように構成されている。これにより、コントローラ50は、電流センサ10cの計測値(電流値)を電流センサ信号Icに基づいて取得することが可能になる。電流センサ10cの計測値は、第3電圧コンバータ19eが昇圧動作や降圧動作を行う際の電流監視などに用いられる。
このような改変例においても、図2に示す電流センサ故障検出処理により電流センサ10a、10bの故障判定が可能である。例えば、図2に示すステップS2により、コントローラ50がスイッチ4a、4bを夫々オン状態に制御し、また続くステップS3により、トランジスタ6b、7cをオン状態に制御し、トランジスタ6a、7a、7b、6cをオフ状態に制御する。
これにより、図4の破線で示すように、バッテリ3の正極端子から、スイッチ4a→第1電圧コンバータ19aの低電圧側の正極端子→リアクトル5a→電流センサ10a→ダイオード8a→高電圧側の正極端子→トランジスタ6b→電流センサ10b→リアクトル5b→第2電圧コンバータ19dの低電圧側の正極端子→第3電圧コンバータ19eの低電圧側の正極端子→リアクトル5c→電流センサ10c→トランジスタ7c→共通負極端子→スイッチ4bを経由してバッテリ3の正極端子に戻る電流経路(センサチェック用電流経路)が形成される。
このため、図2に示すステップS5により、例えば、コントローラ50は、予め設定された所定の上限基準値(所定の閾値)に対して電流センサ10a、10b、10cの計測値(電流値)が夫々超えているか否かや、予め設定された所定の下限基準値(所定の閾値)に対して電流センサ10a、10b、10cの計測値が夫々下回っているか否かなどに基づいて判定する。そして、電流センサ10a、10b、10cのうち、少なくとも1個の電流センサの計測値が、所定の上限基準値を超えていたり、所定の下限基準値を下回っていたりする場合には、各計測値は所定範囲内ではないと判定する(S5:NO)。また、これらの電流センサ10a、10b、10cの計測値が所定の上限基準値と所定の下限基準値の間に夫々の電流値が入っている場合には、各計測値は所定範囲内であると判定する(S5:YES)。
また、例えば、これらの電流センサ10a、10b、10cのうち、予め決められた2個の電流センサの計測値の差を算出しその差が所定の閾値を超えているか否かに基づいて判定してもよい。例えば、電流センサ10aの計測値と電流センサ10bの計測値との差、電流センサ10aの計測値と電流センサ10cの計測値との差、及び、電流センサ10bの計測値と電流センサ10cの計測値との差、である。この場合は、当該計測値の差が所定の閾値を超えているときには各計測値は所定範囲内ではないと判定し(S5:NO)、計測値の差が所定の閾値以下であるときには各計測値は所定範囲内であると判定する(S5:YES)。
ステップS5による判定処理により、各計測値が所定範囲内であると判定した場合には(S5:YES)、電流センサ10a、10b、10cはいずれも正常である蓋然性が高いため、本電流センサ故障検出処理を終える。これに対して、ステップS5による判定処理により、各計測値が所定範囲内でないと判定した場合には(S5:NO)、電流センサ10a、10b、10cのいずれかに故障が発生している可能性がある。この場合には、ステップS6により電流センサの故障情報を出力する処理が行われる。ステップS6による処理では、故障が疑われる電流センサ10a、電流センサ10b又は電流センサ10cを特定するセンサIDと故障内容を表すコードが車内ネットワークで接続されている他のコントローラなどに送信される。
なお、電流制限用の抵抗(例えば抵抗15)とスイッチとを並列接続したものを、第2電圧コンバータ19dの低電圧側の正極端子(リアクトル5bの一端側)と第3電圧コンバータ19eの低電圧側の正極端子(リアクトル5cの一端側)との間に接続してもよい。電流センサ10a、10b、10cの故障判定時には、このスイッチをコントローラ50によりオフ状態に制御し、昇圧動作時や降圧動作時には、このスイッチをコントローラ50によりオン状態に制御する。これにより、故障判定時に形成される電流経路に所定電流以上の電流が流れないようにすることが可能になる。この場合には、バッテリ3の正極端子から、スイッチ4a→第1電圧コンバータ19aの低電圧側の正極端子→リアクトル5a→電流センサ10a→ダイオード8a→高電圧側の正極端子→トランジスタ6b→電流センサ10b→リアクトル5b→第2電圧コンバータ19dの低電圧側の正極端子→電流制限用の抵抗→第3電圧コンバータ19eの低電圧側の正極端子→リアクトル5c→電流センサ10c→トランジスタ7c→共通負極端子→スイッチ4bを経由してバッテリ3の正極端子に戻る電流経路(センサチェック用電流経路)が形成される。
以上のとおり、本実施例の電力変換装置2では、コントローラ50は、2個の電圧コンバータ(第1電圧コンバータ19a及び第2電圧コンバータ19b)のうち、第2電圧コンバータ19aの高電位側のトランジスタ6bをオン状態に制御し、残りのトランジスタ6a、7a、7bをすべてオフ状態に制御したときに、図1の破線で示す電流経路が形成されて電流センサ10a、10bに所定の計測値の電流が流れる。コントローラ50は、2個の電圧コンバータ19a、19bが夫々備えている2個の電流センサ10a、10bの夫々の計測値に所定の閾値を超える差がある場合、2個の電流センサ10a、10bの少なくとも1個が故障していると判定する(S5:NO)。これにより、故障判定の対象になる2個の電流センサ10a、10b以外に、他の電流センサを設ける必要がない。そのため、他の電流センサを設けることによる製品コストの増加を抑制しつつ電流センサの故障を検出することが可能になる。
また、本実施例の電力変換装置2bでは、コントローラ50は、3個の電圧コンバータ(第1電圧コンバータ19a、第2電圧コンバータ19d、及び、第3電圧コンバータ19e)のうち、第2電圧コンバータ19dの高電位側のトランジスタ6bと第3電圧コンバータ19eの低電位側のトランジスタ7cをオン状態に制御し、残りのトランジスタ6a、7a、7b、6cをすべてオフ状態に制御したときに、図4の破線で示す電流経路が形成されて電流センサ10a、10b、10cに所定計測値の電流が流れる。コントローラ50は、3個の電圧コンバータ19a、19d、19eが夫々備えている3個の電流センサ10a、10b、10cが出力する3個の計測値のうちの2個の計測値に所定の閾値を超える差がある場合、3個の電流センサ10a、10b、10cの少なくとも1個が故障していると判定する(S5:NO)。これにより、故障判定の対象になる2個の電流センサ10a、10b、10c以外に、他の電流センサを設ける必要がない。そのため、他の電流センサを設けることによる製品コストの増加を抑制しつつ電流センサの故障を検出することが可能になる。
実施例技術に関する留意点を述べる。第2電圧コンバータ19b(19d)を構成する、リアクトル5b、トランジスタ6b、7b及びダイオード8b、9bが、一方の電圧コンバータの一例に相当する。第1電圧コンバータ19aを構成する、リアクトル5a、トランジスタ6a、7a及びダイオード8a、9aが、他方の電圧コンバータの一例に相当する。トランジスタ6a、6b、7a、7bがスイッチング素子の一例に相当する。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。