JP6719187B2 - ナット - Google Patents

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Description

本発明は、ナットに関するものである。
従来から、キッチンや洗面等のシンクとトラップ等の配管とをナットを用いて接続している。このような配管用ナットとして、シンク側に設けられた雄ネジに締結される雌ネジが設けられた内ネジ部材と、内ネジ部材を内部に収容し締結方向への回転トルクを内ネジ部材に伝える外殻部材と、を備え、内ネジ部材の外側には突片が設けられ、外殻部材の内側には複数の突起からなり、内ネジ部材の突片と噛み合うラチェット部が設けられたものが提案されている(下記特許文献1参照)。この配管用ナットでは、外殻部材に締結方向への基準未満の回転トルクが加えられた場合には、突片とラチェット部とが噛み合い内ネジ部材に回転トルクが伝達され、基準以上の回転トルクが加えられた場合には、突片とラチェット部との噛み合いが解消され、外殻部材は内ネジ部材に対して空転する構成とされている。
特許第4756204号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載の配管用ナットでは、内ネジ部材がシンクの雄ネジに対して適正に締結されたかどうかについて、施工業者等の使用者が外殻部材の空転を感覚的に認識するしかなく、確認しづらいという問題点がある。特に、キッチンのシンクとトラップとを連結させるナットでは、内ネジ部材が適正に締結されていないと、当該箇所から漏水する可能性があるため、使用者にとって内ネジ部材の締結を確認しやすい構成が望まれている。
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、適正に締結できるとともに、適正に締結されたことを使用者が確認しやすいナットを提供する。
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係るナットは、締結対象物に設けられた雄ネジ部に締結される雌ネジ部を有する内側部材と、該内側部材の径方向の外側に、該内側部材に対して回転可能に装着される外側部材と、を備えたナットであって、前記内側部材は、締結方向の後方に設けられた内側支持部と、前記締結方向の前方に設けられた内側係合部と、を有する内側当接体を備え、前記外側部材は、前記締結方向の前方に設けられた外側支持部と、前記締結方向の後方に設けられた外側係合部と、を有する外側当接体を備え、前記外側部材に所定量未満の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記内側支持部と前記外側支持部とが当接して、前記外側部材から前記内側部材へ前記トルクが伝達され、前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記外側支持部が前記内側支持部を前記締結方向の前方に乗り越えるとともに、前記外側係合部と前記内側係合部とが衝突音を発しつつ係合可能に構成され、前記内側当接体は、前記径方向の内側に、前記締結方向の後方に向かうにしたがって次第に前記径方向の内側に向かう内側摺動面を有し、前記外側当接体は、前記径方向の外側に、前記締結方向の後方に向かうにしたがって次第に前記径方向の内側に向かう外側摺動面を有し、前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記外側係合部と前記内側係合部とが係合した後、前記外側当接体が前記内側当接体よりも前記径方向の内側に配置されるように前記外側当接体と前記内側当接体とは離間し、前記外側部材に前記締結方向と反対方向の弛緩方向へのトルクが加えられると、前記外側摺動面が前記内側摺動面に沿って摺動可能に構成されていることを特徴とする。
また、本発明に係るナットは、締結対象物に設けられた雄ネジ部に締結される雌ネジ部を有する内側部材と、該内側部材の径方向の外側に、該内側部材に対して回転可能に装着される外側部材と、を備えたナットであって、前記内側部材は、締結方向の後方に設けられた内側支持部と、前記締結方向の前方に設けられた内側係合部と、を有する内側当接体を備え、前記外側部材は、前記内側部材の径方向の外側に配置され環状に形成された外環状体と、該外環状体の内周面から径方向の内側に突出する基部と、該基部から前記締結方向の前方に延び弾性変形可能な腕部と、を有し、前記腕部は、前記締結方向の前方に設けられた外側支持部と、前記締結方向の後方に設けられた外側係合部と、を有する外側当接体を有し、前記外側部材に所定量未満の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記内側支持部と前記外側支持部とが当接して、前記外側部材から前記内側部材へ前記トルクが伝達され、前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記外側支持部が前記内側支持部を前記締結方向の前方に乗り越えるとともに、前記外側係合部と前記内側係合部とが衝突音を発しつつ係合可能に構成され、前記内側当接体は、前記内側部材の環状に形成された内環状体の上面から上方に突出し、前記外側当接体は、前記腕部の先端部に下方に向かって延びるように設けられていることを特徴とする。
このように構成されたナットでは、外側部材の内周面には径方向に突出する基部が設けられ、基部から締結方向の前方に弾性変形可能な腕部が延び、腕部の前端部に外側当接体が設けられている。これにより、外側部材に所定量未満の締結方向へのトルクが加えられた状態では、腕部が弾性変形することで、腕部の前端部に設けられた外側当接体の外側支持部が、内側部材の内側支持部に当接した状態を維持することができる。よって、外側部材から内側部材へトルクが伝達された状態を維持することができる。
また、外側部材に所定量以上の締結方向へのトルクが加えられ、外側当接体の外側支持部が内側支持部を締結方向の前方に乗り越えると、腕部は元の状態に戻ろうと弾性変形する。外側当接体は腕部の前端部に設けられているため、腕部が元の状態に戻る際に、外側当接体に大きな力が作用し、勢いよく戻る。よって、外側当接体の外側係合部が内側部材の内側係合部と係合する際に、確実に衝突音を発することができる。
また、外側部材に所定量以上の締結方向へのトルクが加えられると、外側係合部と内側係合部とが係合した後、外側当接体が内側当接体よりも径方向の内側に配置されるように外側当接体と内側当接体とは離間する。この状態から、外側部材に締結方向と反対方向の弛緩方向へのトルクが加えられると、外側当接体の径方向の外側に設けられた外側摺動面が、内側当接体の径方向の内側に設けられた内側摺動面に沿って摺動する。外側摺動面及び内側摺動面は、ともに締結方向の後方に向かうにしたがって次第に径方向の内側に向かうように形成されているため、外側摺動面が内側摺動面に沿って摺動する際に、互いに干渉することなく、滑らかに摺動する。よって、ナットを締結対象物から、大きなトルクを加えずに容易に取り外すことができる。
また、本発明に係るナットでは、前記外側部材は、前記外側部材の内周面から前記径方向に突出する基部と、該基部から前記締結方向の前方に延び、弾性変形可能な腕部と、を備え、前記外側当接体は、前記腕部の前記締結方向の前端部に設けられていることが好ましい。
このように構成されたナットでは、外側部材の内周面には径方向に突出する基部が設けられ、基部から締結方向の前方に弾性変形可能な腕部が延び、腕部の前端部に外側当接体が設けられている。これにより、外側部材に所定量未満の締結方向へのトルクが加えられた状態では、腕部が弾性変形することで、腕部の前端部に設けられた外側当接体の外側支持部が、内側部材の内側支持部に当接した状態を維持することができる。よって、外側部材から内側部材へトルクが伝達された状態を維持することができる。
また、外側部材に所定量以上の締結方向へのトルクが加えられ、外側当接体の外側支持部が内側支持部を締結方向の前方に乗り越えると、腕部は元の状態に戻ろうと弾性変形する。外側当接体は腕部の前端部に設けられているため、腕部が元の状態に戻る際に、外側当接体に大きな力が作用し、勢いよく戻る。よって、外側当接体の外側係合部が内側部材の内側係合部と係合する際に、確実に衝突音を発することができる。
また、本発明に係るナットは、締結対象物に設けられた雄ネジ部に締結される雌ネジ部を有する内側部材と、該内側部材の径方向の外側に、該内側部材に対して回転可能に装着される外側部材と、を備えたナットであって、前記内側部材は、締結方向の後方に設けられた内側支持部と、前記締結方向の前方に設けられた内側係合部と、を有する内側当接体を備え、前記外側部材は、前記締結方向の前方に設けられた外側支持部と、前記締結方向の後方に設けられた外側係合部と、を有する外側当接体を備え、前記外側部材に所定量未満の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記内側支持部と前記外側支持部とが当接して、前記外側部材から前記内側部材へ前記トルクが伝達され、前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記外側支持部が前記内側支持部を前記締結方向の前方に乗り越えるとともに、前記外側係合部と前記内側係合部とが衝突音を発しつつ係合可能に構成され、前記外側部材の外周面には、前記径方向に貫通する開口部が形成され、前記内側部材には、前記開口部に配置される突起部を有し、前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記突起部が前記開口部の所定の位置に配置されていてもよい。
このように構成されたナットでは、外側部材に所定量以上の締結方向へのトルクが加えられた場合に、内側部材の突起部が外側部材の外周面に形成された開口部の所定の位置に配置される。よって、使用者は、突起部が所定の位置に配置されたことを目視で確認することで、ナットが締結対象物に適正に締結されたと把握することができる。
本発明に係るナットによれば、適正に締結できるとともに、適正に締結されたことを使用者が確認しやすい。
本発明の一実施形態に係るナットが締結されたキッチンの槽体の側面図である。 本発明の一実施形態に係るナットをキッチンの槽体から取り外し、上方から見た分解斜視図である。 本発明の一実施形態に係るナットをキッチンの槽体から取り外し、下方から見た分解斜視図である。 本発明の一実施形態において、外側部材に締結方向へのトルクが加えられていない状態のナットの右側は平面図、左側は水平断面図である。 本発明の一実施形態において、外側部材に締結方向へのトルクが加えられていない状態のナットの側面図である。 本発明の一実施形態に係るナットにおいて、締結する際の外側当接体の軌跡を示す図である。 本発明の一実施形態において、外側部材に締結方向へのトルクが加えられた状態のナットの右側は平面図、左側は水平断面図である。 図7よりも、外側部材がさらに締結方向に回転した状態のナットの右側は平面図、左側は水平断面図である。 本発明の一実施形態において、外側部材に締結方向へのトルクが加えられた状態のナットの側面図である。 本発明の一実施形態に係るナットにおいて、弛緩する際の外側当接体の軌跡を示す図である。 本発明の一実施形態において、弛緩途中のナットの右側は平面図、左側は水平断面図である。
以下、本発明の一実施形態に係るナットとして、キッチンのシンク等の槽体に用いられるナットを例に挙げて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るナットが締結されたキッチンの槽体の側面図である。図2は、本発明の一実施形態に係るナットをキッチンの槽体から取り外し、上方から見た分解斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係るナットをキッチンの槽体から取り外し、下方から見た分解斜視図である。
図1から図3に示すように、槽体100は、ナット1によりトラップ110と接続されている。
図2に示すように、キッチンの天板101(図1参照)に設けられた槽体100の底部100Bには、下方に筒状に延びる連結体(締結対象物)102が固定されている。連結体102の下部の外周面には、雄ネジ部102Xが設けられている。
図2及び図3に示すように、ナット1は、槽体100の連結体102に締結され環状をなす内側部材2と、内側部材2の径方向の外側に装着される外側部材5と、を備えている。本実施形態では、内側部材2及び外側部材5は、樹脂により形成されている。以下、ナット1は、上下方向をなす軸線O方向に沿って配置されているものとして説明する。
内側部材2は、環状に形成された内環状体20と、内環状体20の外周面20Pから径方向の外側に突出する係合爪部(突起部)30と、内環状体20の上面20Tから上方に突出する上向き凸部(内側当接体)40と、を有している。
内環状体20の内周面には、槽体100の連結体102の雄ネジ部102Xに締結される雌ネジ部20Xが形成されている。内環状体20の内周面において、上部には軟性樹脂で形成されたパッキン21が嵌め込まれている。
内環状体20の下部には、上方に向かって環状に凹む下側嵌合部22が形成されている。この下側嵌合部22には、トラップ110の上端部が嵌め込まれる。
係合爪部30は、内環状体20の上下方向の高さと略同一の高さを有している。係合爪部30は、内環状体20の周方向に略等間隔に4箇所に設けられている。
図4は、外側部材5に締結方向Xへのトルクが加えられていない状態のナット1の右側は平面図、左側は水平断面図である。図5は、外側部材5に締結方向Xへのトルクが加えられていない状態のナット1の側面図である。図6は、ナット1において、締結する際の下向き突出部70の軌跡を示す図である。
なお、ナット1を締付ける際に回転させる方向を締結方向Xと称し、ナット1を緩める際に回転させる方向を弛緩方向Yと称する。また、締結方向X及び弛緩方向Yは、ともに周方向とも称する。
図4及び図6に示すように、各上向き凸部40は、締結方向Xの後方に形成された内側支持面(内側支持部)41と、内側支持面41の径方向の外側の端部に連続して形成された外側面42と、を有している。さらに、上向き凸部40は、外側面42の締結方向Xの前方の端部に連続して形成された内側係合面(内側係合部)43と、内側係合面43の径方向の内側の端部に連続して形成された内側摺動面44と、を有している。
内側支持面41は、径方向の外側に向かうしたがって次第に締結方向Xの前方に向かうように、径方向に対して傾斜して形成されている。外側面42は、周方向に沿うように形成されている。内側係合面43は、径方向に沿うように形成されている。内側摺動面44において締結方向Xの前側は、締結方向Xの後方に向かうにしたがって次第に径方向内側に向かうように、周方向に対して僅かに傾斜して形成されている。内側摺動面44において締結方向Xの後側は、周方向に沿うように形成されている。
内側支持面41と外側面42とにより形成される角部41C、外側面42と内側係合面43とにより形成される角部42C、内側係合面43と内側摺動面44とにより形成される角部43C及び内側摺動面44と内側支持面41とにより形成される角部44Cは、それぞれ曲線状に形成されている。
図2及び図3に示すように、外側部材5は、環状に形成され、内側部材2の径方向の外側に配置される外環状体50と、外環状体50の下端に形成され径方向の外側に延びるフランジ51とを有している。
外環状体50の外周面には、径方向の内側に凹む凹部52が形成されている。凹部52は、平面視円弧状に形成されている。凹部52が周方向に複数形成されることで、凹部52と凹部52との間は、径方向外側に膨らむ凸部53とされている。凹部52と凸部53とが連続して配置されることで、利用者が外側部材5を把持して締結する際に滑りにくい構造とされている。
図3及び図5に示すように、外環状体50の下部には、径方向に貫通する開口部55が形成されている。開口部55は、周方向から見て矩形状をなしている。開口部55には、内側部材2の係合爪部30が配置されている。外側部材5に締結方向Xへのトルクが加えられていない状態において、係合爪部30は、開口部55の締結方向Xの前側に配置されている。開口部55は、外環状体50の周方向に略等間隔に4箇所に設けられている。
外環状体50の外周面において、開口部55の上部に、径方向に凹む印部56が設けられている。印部56は、周方向から見て下向き三角をなしている。下向き三角の下側の頂点56Aは、開口部55の幅方向一端側(締結方向Xの後側)を指している。
図2及び図4に示すように、さらに、外側部材5は、外環状体50の内周面50Qから突出するアーム体60を有している。アーム体60は、外環状体50の周方向に略等間隔に4箇所に設けられている。
アーム体60は、外環状体50の内周面50Qに設けられた基部61と、基部61から締結方向Xの前方に延びる腕部65と、を有している。これら基部61及び腕部65は、一体的に形成されている。基部61の下面は、内環状体20の上面20Tに当接している。
基部61は、外環状体50の内周面50Qから径方向の内側に延び、周方向に離間して配置された一対の延出壁部62を有している。一対の延出壁部62の径方向の内側の端部同士は、連結壁部63で連結されている。
腕部65は、連結壁部63の上部に連続して形成されている。換言すると、腕部65と内環状体20の上面20Tとの間には空間部65S(図2参照)が形成されている。このように、腕部65の上下方向の厚みは、基部61の上下方向の厚みよりも薄く形成されているため、腕部65は撓みやすくなっている。
図3に示すように、腕部65の先端部には、下方に向かって延びる下向き突出部(外側当接体)70が設けられている。
図6に示すように、各下向き突出部70は、締結方向Xの後方に形成された外側係合面(外側係合部)71と、外側係合面71の径方向の外側の端部に連続して形成された第一外側摺動面(外側摺動面)72と、第一外側摺動面72の締結方向Xの前方の端部に連続して形成された第二外側摺動面73と、を有している。さらに、下向き突出部70は、第二外側摺動面73の締結方向Xの前方の端部に連続して形成された外側支持面(外側支持部)74と、外側支持面74の径方向の内側の端部に連続して形成された内側面75と、を有している。
外側部材5に締結方向Xへのトルクが加えられていない状態(図6に示すハッチングの状態)において、外側係合面71は、径方向に沿うように形成されている。第一外側摺動面72は、締結方向Xの後方に向かうにしたがって次第に径方向の内側に向かうように、周方向に対して僅かに傾斜して形成されている。第二外側摺動面73は、周方向に沿うように形成されている。外側支持面74は、径方向の外側に向かうしたがって次第に締結方向Xの前方に向かうように、径方向に対して傾斜して形成されている。内側面75は、周方向に沿うように形成されている。
図2及び図3に示すように、トラップ110は、有底筒状に形成された本体111と、本体111の側部に形成された流出口(不図示)に接続された排出管112とを有している。
本体111部の上端部には、径方向の外側に延びるフランジ113が設けられている。フランジ113の上部には、上方に延び、環状に形成されたトラップ側嵌合部114が設けられている。トラップ側嵌合部114は、内側部材2の下側嵌合部22に嵌め込まれる。また、トラップ110のフランジ113と外側部材5のフランジ51とは、バンド120(図1参照)により互いに上下方向に離間しないように連結される。
次に、上記のキッチンの槽体100とトラップ110とをナット1により接続する方法について説明する。
まず、図4の状態のように、外側部材5に対して内側部材2が嵌め込まれたナット1を、槽体100の連結体102の外側に配置して、ナット1の外側部材5の外環状体50の外周面を把持して、締結方向Xに回転させる。
すると、外側部材5のみが回転して、図6の二点鎖線で示すように、外側部材5の下向き突出部70の外側支持面74が、内側部材2の上向き凸部40の内側支持面41に当接する。これにより、外側部材5と内側部材2とは一体となって回転し、外側部材5に加えられたトルクが内側部材2に伝達され、内側部材2の雌ネジ部20X(図2参照。以下同じ。)が連結体102の雄ネジ部102X(図2参照。以下同じ。)に螺合していく。
内側部材2が連結体102に所定量螺合し、外側部材5に加えるトルクを増やしていくと、内側部材2は回転せずに、外側部材5の下向き突出部70の外側支持面74が内側支持面41上を径方向の外側に摺動して、外側部材5のみが回転する。
図7は、外側部材5に締結方向Xへのトルクが加えられた状態のナット1の右側は平面図、左側は水平断面図である。
図6の二点鎖線及び図7に示すように、下向き突出部70の外側支持面74が上向き凸部40の内側支持面41を乗り越えると、下向き突出部70の外側支持面74と内側面75との角部75Cが、上向き凸部40の外側面42を締結方向Xの前方に摺動する。この際、外側部材5の腕部65は、径方向の外側に向かって撓むように、弾性変形している。
角部75Cが、上向き凸部40の外側面42と内側係合面43との角部42Cに到達した後、さらに外側部材5が回転すると、上向き凸部40は腕部65の下方の空間部65Sに配置されるとともに、外側部材5の腕部65は元の状態に戻るように、つまり径方向の内側に向かって弾性変形する。この際、外側部材5の腕部65は元の状態に戻ろうとする勢いで、下向き突出部70の外側係合面71が上向き凸部40の内側係合面43に衝突(係合)し、衝突音が発生する。
図8は、図7よりも、外側部材5がさらに締結方向Xに回転した状態のナット1の右側は平面図、左側は水平断面図である。
図6の二点鎖線及び図8に示すように、外側部材5はさらに回転すると、下向き突出部70が上向き凸部40よりも締結方向Xの前方且つ径方向の内側に配置される。
図9は、外側部材5に締結方向Xへのトルクが加えられた状態のナット1の側面図である。
上記に示す外側部材5の内側部材2に対する締結方向Xへの相対的な回転にともなって、内側部材2の係合爪部30は、外側部材5の開口部55の締結方向Xの前側に配置された状態(図5参照)から、開口部55内を移動して、図9に示す開口部55の締結方向Xの後端部55Bに配置された状態になる。係合爪部30は、外側部材5の外周面に設けられた印部56の下向き三角の下側の頂点56Aの下方に配置されている。また、この際に、係合爪部30が開口部55の後端部55Bに衝突して、衝突音が発生する。
この状態で、係合爪部30は、開口部55の締結方向Xの後端部55Bに係合している。よって、外側部材5にさらにトルクを加えると、外側部材5と内側部材2とは一体となって回転し、外側部材5に加えられたトルクが内側部材2に伝達され、内側部材2は増し締めされる。
次に、内側部材2の下側嵌合部22(図3参照)にトラップ110のトラップ側嵌合部114(図2参照)を嵌め込む。そして、外側部材5のフランジ51とトラップ110のフランジ113とをバンド120(図1参照)で連結する。そして、トラップ110の排出管112に、不図示の配管を接続する。
次に、ナット1を弛緩する際について説明する。
図10は、ナット1において、弛緩する際の下向き突出部70の軌跡を示す図である。図11は、弛緩途中のナット1の右側は平面図、左側は水平断面図である。
図10及び図11に示すように、外側部材5に弛緩方向(締結方向Xと反対方向)Yのトルクを加えると、外側部材5は弛緩方向Yに回転して、下向き突出部70の第一外側摺動面72が上向き凸部40の内側摺動面44に沿って摺動する。外側部材5がさらに回転すると、第二外側摺動面73が内側摺動面44に沿って摺動して、締結前の位置にまで戻る。この際、第一外側摺動面72及び内側摺動面44の締結方向Xの前側は、ともに締結方向Xの後方に向かうにしたがって次第に径方向の内側に向かうように、周方向に対して僅かに傾斜して形成されているため、大きなトルクを加えなくても弛緩しやすい。
このように構成されたナット1では、外側部材5に所定量未満の締結方向Xへのトルクが加えられた場合に、内側部材2に締結方向Xの後方に設けられた内側支持面41と、外側部材5に締結方向Xの前方に設けられた外側支持面74とが当接し、外側部材5から内側部材2へトルクが伝達される。これにより、内側部材2の雌ネジ部20Xが、槽体100の連結体102に設けられた雄ネジ部102Xに締結される。そして、外側部材5に所定量以上の締結方向Xへのトルクが加えられた場合に、外側支持面74が内側支持面41を締結方向Xの前方に乗り越えるとともに、外側部材5の外側係合面71と内側部材2の内側係合面43とが衝突する。よって、所定量の締結方向Xへのトルクで、ナット1を槽体100の連結体102に適正に締結させることができる。さらに、外側係合面71と内側係合面43とが係合する際及びこれとほぼ同時に内側部材2の係合爪部30が外側部材5の開口部55の後端部55Bに係合する際に、衝突音が発せられるため、使用者は当該衝突音を聞いて、ナット1が槽体100の連結体102に適正に締結されたことを確認することができる。
また、外側部材5の内周面には径方向に突出する基部61が設けられ、基部61から締結方向Xの前方に弾性変形可能な腕部65が延び、腕部65の前端部に下向き突出部70が設けられている。これにより、外側部材5に所定量未満の締結方向Xへのトルクが加えられた状態では、腕部65が弾性変形することで、腕部65の前端部に設けられた下向き突出部70の外側支持面74が、内側部材2の内側支持面41に当接した状態を維持することができる。よって、外側部材5から内側部材2へトルクが伝達された状態を維持することができる。
また、外側部材5に所定量以上の締結方向Xへのトルクが加えられ、下向き突出部70の外側支持面74が内側支持面41を締結方向Xの前方に乗り越えると、腕部65は元の状態に戻ろうと弾性変形する。下向き突出部70は腕部65の前端部に設けられているため、腕部65が元の状態に戻る際に、下向き突出部70に大きな力が作用し、勢いよく戻る。よって、下向き突出部70の外側係合面71が内側部材2の内側係合面43と係合する際に、確実に衝突音を発することができる。
また、外側部材5に所定量以上の締結方向Xへのトルクが加えられると、外側係合面71と内側係合面43とが係合した後、下向き突出部70が上向き凸部40よりも径方向の内側に配置されるように下向き突出部70と上向き凸部40とは離間する。この状態から、外側部材5に弛緩方向Yへのトルクが加えられると、下向き突出部70の径方向の外側に設けられた第一外側摺動面72及び第二外側摺動面73が、上向き凸部40の径方向の内側に設けられた内側摺動面44に沿って摺動する。第一外側摺動面72及び内側摺動面44の締結方向Xの前側の部分は、ともに締結方向Xの後方に向かうにしたがって次第に径方向の内側に向かうように形成されているため、第一外側摺動面72が内側摺動面44に沿って摺動する際に、互いに干渉することなく、滑らかに摺動する。よって、ナット1を槽体100の連結体102から、大きなトルクを加えずに容易に取り外すことができる。
また、外側部材5に所定量以上の締結方向Xへのトルクが加えられた場合に、係合爪部30は、外側部材5の外周面に形成された開口部55の締結方向Xの後端部に配置される。また、外側部材5の外周面において、印部56の下向き三角の下側の頂点56Aが、開口部55の締結方向Xの後側を指すように設けられている。よって、使用者は、係合爪部30が印部56の下向き三角の下側の頂点56Aの下方に配置されたことを目視で確認することで、ナット1が槽体100の連結体102に適正に締結されたと把握することができる。
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上記に示す実施形態において、下向き突出部70は外側部材5の内周面に設けられた基部61から延びる腕部65の先端部に設けられているが、本発明はこれに限られない。内側部材2の上面に基部が設けられ、基部から延びる腕部の先端部に内側当接体が設けられるとともに、当該内側当接体と当接及び係合可能に外側当接体が設けられていてもよい。あるいは、外側部材5において、外環状体50の上部に径方向内側に延びる壁部が設けられ、当該壁部から下方に延びるように外側当接体が設けられていてもよい。
また、上記に示す実施形態において、下向き突出部70の外側係合面71と上向き凸部40の内側係合面43とが衝突することで衝突音が発生する構成であるが、本発明はこれに限られない。外側部材5の締結方向Xの後方に設けられた外側係合部と、内側部材2の締結方向Xの前方に設けられた内側係合部とが係合する構成であればよく、例えば、下向き突出部70の内側面75と外側係合面71との角部75Cが上向き凸部40の内側係合面43に衝突する構成でもよく、または下向き突出部70の外側係合面71と第一外側摺動面72との角部71Cが内側係合面43に衝突する構成等であってもよい。あるいは、上向き凸部40とは別体で、内環状体20の上面から上方に突出する内側係合部が、上向き凸部40よりも締結方向Xの前方に設けられる構成であってもよい。
また、上記に示す実施形態において、外側部材5に所定量以上の締結方向Xへのトルクを加えた際に、下向き突出部70は上向き凸部40を径方向の外側から乗り越えるが、本発明はこれに限られず、下向き突出部70が上向き凸部40を径方向の内側から乗り越える構成であってもよい。また、外側部材5に弛緩方向Yへのトルクを加えた際に、下向き突出部70は上向き凸部40の径方向の内側を摺動するが、本発明はこれに限られず、下向き突出部70が上向き凸部40の径方向の外側を摺動する構成であってもよい。
また、上記に示す実施形態において、下向き突出部70及び上向き凸部40は、それぞれ4個設けられているが、本発明はこれに限られず、必要されるトルクの大きさ等に応じて、個数を設定することができる。
1…ナット
2…内側部材
5…外側部材
20…内環状体
20X…雌ネジ部
21…パッキン
22…下側嵌合部
30…係合爪部(突起部)
40…上向き凸部(内側当接体)
41…内側支持面(内側支持部)
42…外側面
43…内側係合面(内側係合部)
44…内側摺動面
50…外環状体
51…フランジ
55…開口部
56…印部
60…アーム体
61…基部
65…腕部
65S…空間部
70…下向き突出部(外側当接体)
71…外側係合面(外側係合部)
72…第一外側摺動面(外側摺動面)
73…第二外側摺動面
74…外側支持面(外側支持部)
75…内側面
100…槽体
101…天板
102…連結体(締結対象物)
102X…雄ネジ部
110…トラップ
111…本体
112…排出管
114…トラップ側嵌合部
120…バンド
O…軸線
X…締結方向
Y…弛緩方向

Claims (4)

  1. 締結対象物に設けられた雄ネジ部に締結される雌ネジ部を有する内側部材と、
    該内側部材の径方向の外側に、該内側部材に対して回転可能に装着される外側部材と、を備えたナットであって、
    前記内側部材は、締結方向の後方に設けられた内側支持部と、前記締結方向の前方に設けられた内側係合部と、を有する内側当接体を備え、
    前記外側部材は、前記締結方向の前方に設けられた外側支持部と、前記締結方向の後方に設けられた外側係合部と、を有する外側当接体を備え、
    前記外側部材に所定量未満の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記内側支持部と前記外側支持部とが当接して、前記外側部材から前記内側部材へ前記トルクが伝達され、
    前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記外側支持部が前記内側支持部を前記締結方向の前方に乗り越えるとともに、前記外側係合部と前記内側係合部とが衝突音を発しつつ係合可能に構成され、
    前記内側当接体は、前記径方向の内側に、前記締結方向の後方に向かうにしたがって次第に前記径方向の内側に向かう内側摺動面を有し、
    前記外側当接体は、前記径方向の外側に、前記締結方向の後方に向かうにしたがって次第に前記径方向の内側に向かう外側摺動面を有し、
    前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記外側係合部と前記内側係合部とが係合した後、前記外側当接体が前記内側当接体よりも前記径方向の内側に配置されるように前記外側当接体と前記内側当接体とは離間し、
    前記外側部材に前記締結方向と反対方向の弛緩方向へのトルクが加えられると、前記外側摺動面が前記内側摺動面に沿って摺動可能に構成されていることを特徴とするナット。
  2. 締結対象物に設けられた雄ネジ部に締結される雌ネジ部を有する内側部材と、
    該内側部材の径方向の外側に、該内側部材に対して回転可能に装着される外側部材と、を備えたナットであって、
    前記内側部材は、締結方向の後方に設けられた内側支持部と、前記締結方向の前方に設けられた内側係合部と、を有する内側当接体を備え、
    前記外側部材は、前記締結方向の前方に設けられた外側支持部と、前記締結方向の後方に設けられた外側係合部と、を有する外側当接体を備え、
    前記外側部材に所定量未満の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記内側支持部と前記外側支持部とが当接して、前記外側部材から前記内側部材へ前記トルクが伝達され、
    前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記外側支持部が前記内側支持部を前記締結方向の前方に乗り越えるとともに、前記外側係合部と前記内側係合部とが衝突音を発しつつ係合可能に構成され、
    前記外側部材の外周面には、前記径方向に貫通する開口部が形成され、
    前記内側部材には、前記開口部に配置される突起部を有し、
    前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記突起部が前記開口部の所定の位置に配置されることを特徴とするナット。
  3. 締結対象物に設けられた雄ネジ部に締結される雌ネジ部を有する内側部材と、
    該内側部材の径方向の外側に、該内側部材に対して回転可能に装着される外側部材と、を備えたナットであって、
    前記内側部材は、締結方向の後方に設けられた内側支持部と、前記締結方向の前方に設けられた内側係合部と、を有する内側当接体を備え、
    前記外側部材は、前記内側部材の径方向の外側に配置され環状に形成された外環状体と、該外環状体の内周面から径方向の内側に突出する基部と、該基部から前記締結方向の前方に延び弾性変形可能な腕部と、を有し、
    前記腕部は、前記締結方向の前方に設けられた外側支持部と、前記締結方向の後方に設けられた外側係合部と、を有する外側当接体を有し
    前記外側部材に所定量未満の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記内側支持部と前記外側支持部とが当接して、前記外側部材から前記内側部材へ前記トルクが伝達され、
    前記外側部材に前記所定量以上の前記締結方向へのトルクが加えられた場合に、前記外側支持部が前記内側支持部を前記締結方向の前方に乗り越えるとともに、前記外側係合部と前記内側係合部とが衝突音を発しつつ係合可能に構成され、
    前記内側当接体は、前記内側部材の環状に形成された内環状体の上面から上方に突出し、
    前記外側当接体は、前記腕部の先端部に下方に向かって延びるように設けられていることを特徴とするナット。
  4. 前記外側部材は、
    前記外側部材の内周面から前記径方向に突出する基部と、
    該基部から前記締結方向の前方に延び、弾性変形可能な腕部と、を備え、
    前記外側当接体は、前記腕部の前記締結方向の前端部に設けられている請求項1または2に記載のナット。
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