JP6718877B2 - 光シート顕微鏡検査法によって検体を検査する方法 - Google Patents

光シート顕微鏡検査法によって検体を検査する方法 Download PDF

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Description

本発明は、光シート顕微鏡検査法によって検体を検査する方法に関し、特に、数種類の染料でマークを付けられている検体を分析する問題に対処する。
近年、検体の照明が光シートによって行われ、その平面(光シート平面)がゼロとは異なる角度で検出光軸(検出方向)と交差する、生物検体の検査が重要性を増してきている。通常、光シート平面は、概して、検出対物レンズの光軸に対応する検出方向と、ゼロとは異なる角度、しばしば(否応なしではないが)直角を形成している。そのような検査方法は、主に蛍光顕微鏡検査法において使用され、LSFM(光シート蛍光顕微鏡検査法)という用語に組み込まれている。一例は、(特許文献1)およびそれに基づく(特許文献2)において説明されている方法であり、SPIM(選択的平面照明顕微鏡検査法)と呼ばれ、これを用いて比較的厚い検体も比較的短時間で空間的に記録することができる:検体の視覚的/空間的に広範囲の表示が、光学的断面を断面に対して垂直な方向における相対的な動きと組み合わせることに基づいて、可能にしている。
共焦点レーザー走査顕微鏡検査法または二光子顕微鏡検査法などの、他の確立された方法と比較して、LSFM法は幾つかの利点を有する。検出が広視野で達成されるため、より大きな検体領域をカバーできる。分解能は共焦点レーザー走査顕微鏡検査法よりもわずかに低いが、浸入深度が大きいために、LSFM技術を用いてより厚い検体を分析できる。さらに、検体は検出方向に対してゼロとは異なる角度で薄い光シートによって照明されるだけであるため、検体に加わる光の負荷はこの方法では最も低く、これにより検体の褪色のリスクを低下させる。
純粋に静的な光シートの代わりに、光ビームによって検体を高速走査することによる、準静的な光シートも生成することができる。光シートタイプの照明は、光ビームを観察される検体に対して非常に素早く動かし、時間をかけて順次に幾つかを一緒につなぎ合わせることによって形成される。検体が結像されるセンサー上へのカメラの積分時間は、走査がその積分時間内に完了するように選択される。
光シート顕微鏡検査法の主な適用例の1つは、数百μm〜数mmの中型の生物の撮像である。概して、これらの生物は、ゲル、例えばアガロースに埋め込まれ、ゲルはガラス毛細管内に配置される。ガラス毛細管は、水で満たされた検体チャンバに上または下から導入され、検体は一部分を毛細管から押し出す。アガロース内の検体は光シートによって照明され、蛍光が検出対物レンズによってカメラ上に結像され、検出対物レンズは、(好ましくは、否応なしではないが)光シートに対して垂直であり、それゆえ、光シートを生成するための光学系の照明対物レンズに対しても垂直である。
しかしながら、光シート顕微鏡検査法によるこの方法は、幾つかの制限を受ける。第1に、検査される検体は比較的大きく、検体は発生生物学に由来する。第2に、検体の準備および検体チャンバの寸法ゆえに、光シートは比較的厚いため、達成可能な軸方向分解能には限界がある。第3に、検体の準備には労力を要し、個々の細胞に対する蛍光顕微鏡検査法において通例であるような標準的な検体の準備および標準的な検体ホルダと互換性がない。
近年では、これらの限界を部分的に回避するために、照明対物レンズおよび検出対物レンズが好ましくは互いに対して直角の向きにされると共に、検体に対して上方から45°の角度で向けられる、新規の構造が実現されている。そのような処置は、例えば(特許文献3)および(特許文献4)に説明されている。
概して、検体を照明するために、レーザーのコヒーレント光が使用される。蛍光顕微鏡検査法では、光の波長は、蛍光を発するように励起されるマーカーに依存して選択される。最も単純な場合には、例えば、ガウス関数に対応する強度プロファイルを備える光ビームは、円柱レンズによって静的に、または走査およびカメラの適合積分時間によって準静的に、光シートに成形される。分解能を増加させることができる検体の構造化照明が好都合である。それゆえ、例えば、ベッセルビームのコヒーレントな重ね合わせが、論文(非特許文献1)において説明されている。重ね合わせは、瞳に導入される位相要素をアルゴリズムを用いて計算することによって達成される。ベッセルビームのスペクトルが瞳内に結像される場合、位相要素は複数のベッセルビームを生成し、それらビームは検体において重ね合わせられる。位相要素は、位相値0およびπの星形回折格子と同様である。条件として、個々のベッセルビーム間の距離は最大である必要があり、そうでなければ、望ましくない干渉効果を生じることが挙げられる。
(特許文献5)では、個々のベッセルビーム間の干渉効果を、広範かつ構造化された光シートを生成するために、対象を絞った方法で使用する。ここで、ベッセルビームは、個々のベッセルビームのサイドローブが、伝搬平面、すなわち光シート平面の上下で破壊的に重ね合わせられるほど近くに並んで配置される。個々のベッセルビームの互いからの距離に依存して、異なる干渉パターンが生じる。
(特許文献6)において、いわゆるsincビームの生成が説明されている。それゆえ、サイドローブが少量のみであるほぼ箱型の光シートが、検体において生成される。sincビームは、周波数領域において、3つのsinc関数:
f=fvrvxvy
の積として説明される。ここで、
Figure 0006718877
である。係数c、cおよびcは、瞳面内でのsincビームの位置を示し、係数w、wおよびwは、それぞれの方向におけるsincビームの幅を示す。
この関数fのフーリエ変換は、光シートの複素電場EFを生じる。焦点における強度分布Iは、I=abs(EF)となり、位相φは、φ=arg(EF)となる。また、sincビームは、コヒーレントに重ね合わせることができ、その結果、構造化された回折格子タイプの光シートを形成する。
上述のビームタイプを生成するために、例えば、空間光変調器(SLM)が使用される。ベッセルビームに関しては、例えば、これは論文(非特許文献2)において説明されている。2つのタイプの空間光変調器があり、それらは使用される液晶によって異なる。
ネマチックSLMは、0から6πまでの連続的に調整可能な最大位相偏移を可能にする。しかしながら、これらのSLMは比較的ゆっくりである:概して、それらは約60Hz、最大でも500Hzまでのフレームレートを有する。対照的に、ネマチックSLMの回折効率は90%を上回る。
他方では、位相偏移のない状態と位相偏移πの状態との間を交互に切換えることのみが可能な強誘電体SLMがある。このために、これらのSLMは非常に迅速に切換え可能であり、その結果、4000Hzまでのフレームレートを達成できる。しかしながら、回折効率は約14%であり、非常に低い。
両SLMタイプには、達成可能な位相偏移が照射レーザー光の波長に依存するという共通点がある。ネマチックSLMは、理想的には、0から全波長、それゆえ2πまでの連続的な位相偏移を有するように較正される必要がある。しかしながら、この位相偏移は単一波長においてのみ設定されることができ、それに合わせて設計される。SLMが異なる波長のレーザーによって照射されると、すぐに位相偏移は変化して2πに等しくなくなる。より短い波長では位相偏移は大きくなり、より長い波長では位相偏移は減少する。
強誘電体SLMのふるまいも同様である。ここでも、位相偏移πは、SLMで示されるパターンが設計される波長においてのみ達成される。異なる波長においては、位相偏移はπとは異なる。これは、上述のベッセルビームまたはsincビームの生成に直接の影響を及ぼすため、これらのビームは、ベッセルビームおよびMathieuビームに必要であるように位相偏移が0〜2πで連続的に変化するときにのみ、またはコヒーレントに重ね合わせられたベッセルビームまたはsincビームの場合のように位相偏移がちょうどπであるときに、最適に生成される。
蛍光顕微鏡検査法による分析に関しては、検体は、それぞれ検体の異なる領域を見ることができるようにする異なるマーカーによって準備されることが多い。それゆえ、光シート顕微鏡検査法において、異なる波長の光シートを用いて検体を励起することが望ましい。空間光変調器をビーム成形に使用すると、個々に異なる色の光シートが順次に照射されると共に、波長が変化するときに位相パターンがSLMに適合される場合に、最適な多色励起が実施される。例えば、第1の段階では、SLMは第1のレーザー波長に設定され、像スタックは、この波長でz方向、すなわち検出方向において記録される。その後、SLMは第2の波長に設定され、像スタックは再度この波長で記録される。しかしながら、この方法には、像スタックの記録が数十秒までの比較的長い時間持続するという欠点がある。この期間中に検体が動くまたは変化する場合、異なる色となった像スタックはもはや適合せず、1つの全体像へとまとめることができない。
代替的には、像スタックの個々の各像は、像スタックの次の像が記録される前に、初めに異なる波長で記録することもできる。しかしながら、これには、約10msの照明時間を用いて、新しいレーザー波長への空間光変調器の最適化を1秒当たり約100回行う必要があるという欠点がある。通常のネマチックSLMではこれは達成できず、その結果、低光効率であると共に位相偏移が制限されている強誘電体SLMを使用する必要がある。
独国特許出願公開第102 57 423A1号 国際公開第2004/0535558A1号 国際公開第2012/110488A1号 国際公開第2012/122027A1号 米国特許出願公開第2013/0286181A1号 国際公開第2014/005682A1号
V. Kettunen et al., "Propagation−invariant spot arrays", Optics Letters 23(16), page 1247, 1998 Rohrbach et al., "A line scanned light−sheet microscope with phase shaped self−reconstructing beams",Optics Express 18, page 24229 2010
本発明の目的は、静的位相変調を用いて非常に短い時間にわたって同時にまたはほぼ同時に異なる波長の多色光シートによって検体を照明することを可能にし、その結果、幾つかの色が同時に検出され、なおかつ記録の持続時間が順次励起と比較して短縮される方法を提供することにある。なお、ここでは、ネマチックSLMも好ましくはそれらの高回折効率を理由に使用される。
この目的は、光シート顕微鏡検査法によって、検体用の照明光を構成する幾つかの照明波長を選択することにより、検体を検査する方法に関して、達成される。その場合、中波長では位相選択要素の変調度がπで固定される。中波長は、波長が選択される全範囲に同様の条件を獲得するために、使用される波長の中央の波長であるが、最長波長と最短波長との平均を中波長として使用することが好都合である。しかしながら、中波長はまた、他の基準を使用して固定されてもよく、例えば他の波長に対して同時に使用される他のレーザーと比較すると低い出力を有し、それゆえ、損失が可能な限り小さく、高い回折効率が望まれるレーザーの波長と適合することもできる。
照明光を構造化するために、所定の位相分布が位相選択要素に適用(impressed)され、所定の開口構造が開口面にある開口に適用(impressed)される。このために、第1のステップでは、好ましい波長が選択される。通例、これは、検体の照明用に使用される波長、すなわち蛍光マーカーを励起するために提供される、対応するレーザー線も通常は含む波長帯から選択される。しかしながら、好ましい波長はまた、その波長帯外にあってもよい。しかしながら、一般に、好ましい波長は、最長照明波長に対応するか、またはそれよりもさらに長い。
この好ましい波長では、照明対物レンズの焦点面において、所定の形状の光シートに関して、その電場を、この時点で好ましい波長の光によって決定する。所定の位相分布は電場から計算され、それは位相φをもつ、複素電場の偏角、φ=arg(EF)である。光シートの電場を決定または計算するために、好ましい波長に関して、中央または中心範囲が開口面においてフェードアウトすなわち次第に消されて、同様に計算からゼロ次を除去するようにし、ゼロ次は、構造化光シートを生成するために実際に除去される必要があると仮定する。照明対物レンズの焦点での電場の計算は、例えば、いわゆる瞳関数の、すなわち周波数領域における電場、ここでは、瞳でのその分布のフーリエ変換によってもたらされる。その後、計算された位相分布は、好ましくは中間像に配置されている位相選択要素に設定される。これが例えば位相板などの静的位相選択要素である場合、これはそれに応じて生じる。制御可能な位相選択要素、例えば空間光変調器などが制御され、それに応じて設定される。
任意選択的には、さらなる調整手段が実施される。例えば位相分布は、光シート平面に対して垂直な包絡関数を乗算されることができ、このようにして、光シートの厚さが設定され、さらに光シート平面に対して垂直なサイドローブが抑制される。また、位相分布は、瞳内のスペクトルが初期に計算されたスペクトルに対応するようにするかまたは検体内の光シートが所定の寸法を有するようにする寸法スケーリングによって、位相選択要素に
適用する(impressing)ように適合される。
その後、位相選択要素は、照明光によって、照明ビーム経路中の中間像平面内またはその近くで照明され、照明光は位相選択要素によって構造化される。構造化照明光は、位相選択要素の下流に配置された開口面内に結像され、そこで照明光の周波数スペクトルが生成される。そのため、開口構造の適合が結果的にもたらされ、開口面における構造化照明光のゼロ次が実質的に除去され、それにより、下流の照明対物レンズの焦点面において、照明対物レンズの焦点面に対して垂直な光シート平面を備える多色構造化光シートが形成される。結果として、検体は、光シート平面にある構造化光シートを用いて照明され、検体が発する光は、光シート平面とゼロとは異なる角度を形成する検出方向において検出される。
開口面にある開口は、さらに異なる方法で適合されることもできる。例えば、寸法スケーリングが実施される場合、開口調整は、重ね合わせられた光のゼロ次が正確に確実に除去されるようにする。開口を調整する別の可能性は、瞳関数の望ましくないサイドローブを除去することである。
このようにして、光シート顕微鏡検査法のための照明装置は、好ましい波長の光を使用するとき、この好ましい波長に最善の方法で構造化された光シートを生成するように調整され、光シートは同様に残りの波長に対して、特に構造化に関して高品質を有する。それゆえ、幾つかの波長による検体の励起は、同時にまたはほぼ同時に可能にされる。
入射ビーム、例えばガウス型レーザービームは、好ましくは楕円にコリメートされ、一方ではゼロ次の光の出力を可能な限り低く保ち、他方では光シートに可能な限り低い影響しか有しないようにすることができる。
例えば、回折光学素子が位相選択要素として使用される。これは位相板として静的に形成され、一度特定の波長に適合される。そこで、波長の異なる組み合わせのために、異なる位相板がビーム経路に導入される。別の可能性は、空間光変調器(SLM)を回折光学素子として使用することである。これは、制御によって変更を必要とすることなく、異なる好ましい波長および照明波長に設定されるという利点を提供する;さらに、光シート用の異なるビーム形は、SLMによって実現される。しかしながら、検体の分析の最中、空間光変調器(SLM)の特性は変更されず、SLMは静的にふるまう。
SLMを使用する場合、ビーム経路自体におけるより簡単な適合が実施され、例えば、光シート平面に対して垂直な方向における、異なる包絡関数に位相分布が乗算され、それゆえさらなる設定が実施される。また、寸法スケーリングは、SLM上でより簡単に実施される。
ガウス強度プロファイルをもったビームは、コリメートされると共に位相選択要素上に向けられる入射ビームとして使用されることが多いが、光シートの電場を計算するために、複数の形状、すなわち、当然ながら、同様に、光シートの電場を計算するために使用されるようなガウス型光ビームよりも、検体の均一な照明または構造化照明に対してより好適である形状が、好ましくは適用される。
本発明の好ましい実施形態では、光シートの電場は、2つのsincビームを使用することによって決定される。これらビームは、照明対物レンズの焦点面においてコヒーレントに重ね合わせられて、光シートを成形する。ここで、検体における、すなわち焦点面における光シートの電場は、上記で特定した瞳関数から始まるフーリエ変換によって計算される。位相は、焦点面、すなわち重ね合わせ場を生じる電場から決定され、位相選択要素に適用(impressed)される。sincビームの重要な利点は、それらが検体において均一な照明を与え、小さいサイドローブのみを備える、ほとんど箱型光シートを形成するために使用されることである。コヒーレントな重ね合わせの場合、構造化された回折格子のような光シートが生成される。
別の好ましい実施形態では、光シートの電場は、所定の形状のベッセルビームを使用して光シートを成形することによって決定される。そのようなベッセルビームの場合には、焦点面内の電場が決定され、この電場と、いずれの場合も焦点面において所定の量Δだけ互いに離間した、複数の同一の電場との重ね合わせが、算術的に決定される。距離Δは、最適な光シートが設定されるまで、すなわち個々のベッセルビームのサイドローブが好ましくは破壊的に重ね合わせられるまで、変更され、その結果、横断面が長くて薄い光シートは、小さなサイドローブのみを持った形を呈する。
上述の特徴および下記でこれから説明される特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、述べられる組み合わせにおいてだけでなく、他の組み合わせにおいて、または単一で、適用可能であることが理解される。
本発明について、下記で、例として、添付図面を参照して、さらにより詳細に説明し、添付図面も本発明に不可欠な特徴を開示する。
逆向きにされた光シート顕微鏡の概略的な構造である。 ビーム成形モジュールの第1の設計である。 ビーム成形モジュールの第2の形態である。 ビーム成形モジュールの第3の形態である。 ビーム成形モジュールの第4の形態である。 図5のビーム成形モジュールによる光シート生成の個々のステップである。 第1の開口構造である。 第2の開口構造である。
はじめに、図1は、光シート顕微鏡検査法によって検体を検査するために使用することのできる、光シート顕微鏡の基本的な構造を示している。ここでは、光シート顕微鏡は逆向きの構成で示されている。これは例として理解されるにすぎず、検体を上からまたは横から見る光学顕微鏡も、取り得る実施形態である。検体1は検体チャンバ2内に置かれ、液体3、例えば水または培地によって取り囲まれている。検体チャンバ2は、所定の厚さのガラス製の側壁およびベースを有しており、その厚さは、例えば通常の顕微鏡スライドの厚さ、例えば0.17mmに対応する。検体チャンバ2は顕微鏡載物台4に搭載され、顕微鏡載物台は、3つの空間方向全てにおいて、手動またはモータによって、動かすことができる。光シート顕微鏡の個々の要素は、透明なベース5を有する検体チャンバ2の真下に配置される。光シート顕微鏡の対物レンズと検体チャンバ2のベース5との間には、内側レンズおよび外側レンズを備えるいわゆる仮想リレー6がある。仮想リレー6の内側レンズと検体チャンバのベース5との間には、同様に液体3がある。仮想リレー6の内側レンズと外側レンズとの間には、周囲の外気、概して空気があり、仮想リレー6の外側レンズと光シート顕微鏡の対物レンズとの間も同様である。
仮想リレー6は、照明の光軸および検出対物レンズの光軸が検体チャンバ2のベース5に対して垂直でないために形成される収差を補償する働きをする。そのような補正が行われるのであれば、仮想リレー6の代わりに、対物レンズに組み込まれる補助レンズまたは自由形状レンズなどの他の補正機構も使用することができる。
照明ビーム経路は、左側に示されている。レーザーモジュール7(例えば異なる波長の幾つかのレーザーがここに収容され、異なる波長間の選択を行うことができ、また幾つかの波長は同時に選択することができる)からの光が、ビーム成形モジュール8および走査モジュール9(これは、例えば、準静的な光シートを生成するために、および/または角付走査のために、使用することができる)を介して、照明対物レンズ10上に向けられる。照明対物レンズは、光シートを検体内の光シート平面に結像する。光シート平面は、ここでは照明対物レンズの光軸を含む。照明対物レンズ10の焦点、すなわち光シートが最も薄い範囲となる点は、駆動装置、例えばピエゾ駆動装置11を用いてシフトすることができる。代替的には、顕微鏡載物台4を動かすこともできる。
検出ビーム経路の例は、右側に描写されている。これは検出対物レンズ12を含み、この検出対物レンズは照明対物レンズ10と類似しており、駆動装置、ここではピエゾ駆動装置13によってシフトすることができる。検出対物レンズ12の光軸は、照明対物レンズ10の光軸がある光シート平面と、ゼロとは異なる角度、ここでは直角を形成する。しかしながら、これはプロセスを機能させるために絶対に必要なわけではなく、光シートの平面と検出対物レンズ12の光軸との間の角度がゼロとは異なることで十分である。検体1が発する蛍光光は、検出対物レンズ12によって、ビームスプリッタ14を介して、異なる検出モジュール15および16上に向けられる。例えば、幾つかの波長を含む光シートによって同時にまたはほぼ同時に検体を照明する場合、波長に応じて検出を異なって実施することができる。検出モジュール15、16内には、概して層状検出器(laminar detector)があり、これは強度を記録すると共にそれを対応する電気信号に変換し、その後、その電気信号は画像処理に取り込まれる。光シート顕微鏡検査法のための配置構成は、ピエゾ駆動装置18によって動かすことのできる概観対物レンズ(overview objective)17によって完成される。概観対物レンズ17は、はじめに検体の概観を捉え、対象領域(ROI)を選択する働きをし、それに対して、照明および検出が焦点調節される。
様々なビーム成形モジュールが図2〜5に示されている。図2に示されるビーム成形モジュールの場合、ガウス型レーザービームがコリメートされる。このために、図示の例では、2つの円柱レンズ19および20が使用され、このようにして、回転対称なレンズが使用されたときに得られたような回転対称なレーザービームの代わりに、コリメートされた楕円レーザービームが得られる;当然ながら、回転対称レーザービームも可能である。しかしながら、コリメートされた楕円ビームは、光シート成形に関して形状が既にどちらかといえば光シートに適合されており、回転対称なビームの場合にそうであるほどの多くの強度がゼロ次に流れないため、幾つかの利点を提供する。コリメートされた楕円光ビームは、位相選択要素、ここではネマチックSLM21に、ある角度で入射する、すなわち、ネマチックSLM21の面に対する垂線が円柱レンズ19および20の光軸と形成する角度は、ゼロとは異なる。代替的には、ビームスプリッタ22を使用することもでき、これは図3に示されている。
ネマチックSLM21は、照明ビーム経路において、中間像平面内またはその近くに配置され、照明光、すなわちコリメート光ビームによって照明される。照明光は、位相選択要素、すなわちネマチックSLM21によって構造化される。位相選択要素は中間像平面にあることが好ましく、そうでないと、生成される光シートはデフォーカシングを含む。その場合には、これは追加的なレンズ素子によって補償されるか、または対応する補正位相パターンと重ね合わせることによって位相分布を位相選択要素に適合させることによって直接に補償される必要がある。
レンズ23を介して、構造化照明光は、位相選択要素の下流に配置された開口面に結像され、レンズ23は、開口24が配置されている開口面に、照明光のフーリエ変換、すなわちビームの周波数スペクトルを生成する。開口24は、ビームのスペクトルフィルタリングを行うために使用することができるが、特に、開口面において構造化光のゼロ次を実質的に除去する働きをする。それにより、下流の照明対物レンズ10の焦点面に、構造化光シートが、照明対物レンズ10の焦点面に対して垂直な光シート平面で形成される。その後、レンズ25および26は、周波数スペクトルを、例えば走査ミラー(図示せず)上に結像し、これを使用して準静的な光シートを生成することができる。代替的には、レンズ26が使用されない場合には、照明対物レンズ10内へのビームを直接結像させることもできる。これは図5に示されている。
その後、検体1は、光シート平面にある構造化光シートによって照明され、検体によって発せられる光は、図1に関連して説明されたように、光シート平面との間でゼロとは異なる角度を形成する検出方向において検出される。
ネマチックSLM21の代わりに、上流にλ/2プレート28を備える強誘電体SLM27を使用することもでき、これは図4に示されている。SLM、すなわち位相選択要素の調整後、その特性は動作中には変化しないため、SLMの代わりに、静的位相選択要素(例えば位相板)を使用することもできる。ただし、SLMは制御可能であるために異なる条件(例えば異なるビーム形または異なる波長など)により簡単に適合できるが、静的位相選択要素の場合には、位相板を置き換える必要がある。
異なる波長の多色光シートを用いて検体1を照明するように使用するためのビーム成形モジュールを準備するために、所定の位相分布が位相選択要素に予め適用(impressed)される。同様に、開口面の開口に所定の開口構造が適用(impressed)される。これについて、他のビーム形も使用できるため、一般概念を制限することなく、下記では例として、sincビームに関して説明する。
第1のステップでは、検体1用の照明光を構成する幾つか(少なくとも2つ)の照明波長が初めに選択される。位相選択要素、特にSLMの位相偏移は、中波長に関しては波長に依存するため、位相選択要素の変調度はπに固定される。中波長は、照明波長のうちの1つに適合する必要はないが、概して、最長照明波長と最短照明波長との平均に対応する。焦点を決定する意味では、最長波長と最短波長との間の波長帯における個々の波長の位置を考慮する重み付け平均も、中波長を決定するために実施することができる。例えば、波長400nm、500nm、600nmが多色光シートを生成するために使用される場合、それに応じて、位相選択要素は500nmの中波長に対して設定される。より短い波長の場合、位相偏移はπよりも大きく、より長い波長の場合、位相偏移はπよりも小さい。所望の位相偏移は、SLMの場合には、概して制御電圧を使用して設定される。例として、位相偏移πが波長500nmに対して設定される場合、その例で使用される他の波長の場合には、位相偏移1.6πが400nmで、位相偏移0.9πが600nmで生じる。
変調度が設定される場合、は、所定の位相構造が位相選択要素に適用(impressed)される。このために、好ましい波長が最初に選択される。好ましい波長は、最長照明波長に対応する波長を少なくとも含むが、これはさらに長くすることもできる。本例では、好ましい波長は600nmである。上述および下記の調整は、この波長に対してのみ実施される。成形ビームの周波数スペクトルの位置はこの波長に適合され、瞳の縁にあるようにし、それゆえ、光シートの欠損が発生しないようにする。
当然ながら、波長帯の外側にある別の好ましい波長を選択することも可能である。ただし、これは光シートが生成されるときの精度が低下することがあるという欠点を有する。しかしながら、好ましい波長自体が照明に使用されず、それゆえ照明波長ではないことは除外されない。
調整を簡単に行えるようにするために、SLMは、任意選択的には完全に照明される。開口24の開口面では、まず中心領域が少なくとも好ましい波長に関して注意深く次第にフェードアウトされ、すなわち、そうでなければ構造化光シートを生成できないため、構造化光のゼロ次が開口面において実質的に除去される。
その後、照明対物レンズ10の焦点面では、重ね合わせ電場(electric superimposition field)が、好ましい波長で所定の形状の少なくとも2つの光ビームを重ね合わせることから決定される。本例では、sincビームが光ビームとして使用され、すなわち、焦点面において少なくとも2つのsincビームがコヒーレントに重ね合わせられるが、ガウス型ビームを含む他のビーム形を使用することもできる。
重ね合わせの結果として焦点面を生じる重ね合わせ場は、概して算術的に決定される。これは例えば、いわゆる瞳関数を用いてもたらされる。次のステップでは、照明対物レンズ10の焦点面の位相分布が決定され、これは「arg」関数を複素重ね合わせ電場に適用することによってもたらされる。任意選択的に、この位相分布は、依然として、光シートを光シート平面に対して垂直な上部および底部に制限を加える包絡関数によって乗算されてもよい。
そのため、そのように計算された位相分布は、所定の位相分布に対応し、位相選択要素、例えばSLMで設定されて表現される。
その後、任意選択的には、位相選択要素上の位相分布のサイズ、すなわち2次元の範囲に対して、スケーリングを実施することができる。その結果、瞳内のスペクトルは、初期に計算されたスペクトルに対応するか、または、検体内の光シートは、例えば検体のサイズに相関する対応する所定の寸法を有する。
開口24は、それまでに光軸の周りの中央または中心領域を除去しているだけであるが、この領域は、概して好ましい波長のコヒーレントに重ね合わせられた回折照明光のゼロ次に正確には対応していない。開口24の開口構造は、ここではできる限り正確に、好ましい波長のゼロ次が除去されるように、その上また、照明光の照明波長または他の照明波長のゼロ次が除去されるように、適合される。さらにまた、開口構造は、瞳関数の望ましくないサイドローブが除去されるように適合されることもできる。
その後、SLMまたは位相選択要素に入射する、照明波長の光で作られた入射ビームのコリメーションも適合される。楕円コリメーションが使用される場合、ゼロ次回折の出力が可能な限り小さくなると共に光シートが同時に影響を受けないようにする効果に、適合が生じる必要がある。代替的には、位相選択要素は、矩形関数を用いて(すなわち均一に)照明されることもできる。しかしながら、その場合、照射光のほとんどはゼロ次に回折され、これは、そうでなければ光シートが生成されないため、フィルタリングして除去される必要がある。楕円にコリメートされたガウス強度分布も、例えば位相分布に1次元包絡関数、例えば指数関数を乗算することによって達成される。それゆえ、包絡関数の乗算は、入射ビームの光学的な楕円コリメーションの代替として、あるいはそれと組み合わせて、使用することができる。
図6は、これらの手法がどのように動作するかを示している。図6aには、楕円にコリメートされたガウス型ビームによってSLMが照明されている場合における、SLM上の強度が示されている。中央の狭い領域のみが照明されている。それに応じて、図6bに示されるSLM上の位相分布も、中央領域においてのみゼロとは異なり変化する。ここでは、その領域は包絡関数をマークしており、その外側では位相分布はゼロ、すなわち位相は変化しない。開口面において、開口24は、単色sinc光シートに対して、図6cに示される開口構造を有する。開口24を備える開口面では、図6dに示される強度分布が生じる。また、照明対物レンズ10の焦点面では、図6eに横断面で示される構造化光シートが生じる。なお、ここではy軸は検出方向に対応する。
SLMまたは位相選択要素が均一に照明される場合、入射光の98%までがゼロ次に回折され、それゆえ、もはや光シート強度には利用できない。そのため、位相選択要素は、ガウス強度プロファイルを備えるコリメートされた楕円ビームによって、上述のように好ましくは照明される。ビームは、近似的にSLM上の位相分布の次元を有する必要がある。位相分布が、包絡関数、例えばガウス関数によって乗算される場合、これは光シートの形状に対して直接の影響を有する。ガウス関数が広範であるほど、光シートはより薄くなる。しかしながら、その場合、サイドローブは対応してより明白になる。その一方で、選択されたガウス関数が狭いほど、一定照明の場合にはより多くの光がゼロ次に回折される。この点で、位相分布を包絡関数によって乗算せずに、位相選択要素の照明を直接適合することが好都合である。このようにして、検体において同一の強度分布が達成される。その利点は、ゼロ次に回折されるエネルギーの部分が極端に小さく、概して10%以下であることである。
照明のために、重ね合わせられたsincビームを使用する代わりに、別の所定の形状の光ビーム、例えばベッセルビームを使用することもできる。このために、所定の形状のベッセルビームを光ビームとして使用し、焦点面においてベッセルビームの電場を決定し、この電場と、いずれの場合も照明対物レンズ10の焦点面において所定の量Δだけ互いに離間した、複数の同一の電場との重ね合わせを算術的に決定することによって、重ね合わせ電場が決定される。距離Δは、最適な光シートが設定されるまで変化する。そうでない場合、プロセスは、sincビームの重ね合わせに基づく構造化光シートの生成の場合の通りである。
調整は、最長波長(ここでは、好ましい波長は600nmである)に対して実施されたため、幾つかの色で構成された成形ビームの位置は、より短い波長に対して位相選択要素上において示される位相分布が、調整に使用されるよりも小さな開口数を備えるsincビームに対応するように適合される。結果として、対応するビームの周波数スペクトルは更に瞳の内部にあるようになり、これはベッセルビームにも同様に当てはまる。
位相偏移πの場合、回折効率は最高であり、全入射レーザー放射はsincまたはベッセルビームに再分配される。これから逸脱する変調度の場合、回折効率は低下し、レーザー出力の一部分はゼロ次に再分配される。位相偏移が無いまたは位相偏移が2πの倍数である場合、全レーザー出力はゼロ次に回折され、その結果、sincビームまたはベッセルビームは生成されない。ゼロ次が開口24によってフィルタで除去される場合、sinc光シートは(出力に関わらず)位相分布の変調度と無関係である。本例では、回折効率は、波長400nmで30%、波長500nmで85%、波長600nmで78%である。中波長500nmにおける変調度がπに設定された場合、回折効率は100%ではなく、85%にすぎない。これは、楕円ガウス型ビームを備える照明が、実際の構造で十分に生成される近似を示すにすぎないということに起因する。回折効率100%を達成するためには、位相だけでなく、計算された光シートの強度もSLMに示される必要がある。しかしながら、これは極めて技術的に費用をかけてのみ成し遂げられるにすぎない。多色光シートと一緒に使用されるように適合された開口は、図7ではsincビームに対して示されており、図8ではベッセルビームに対して示されている。
1 検体
2 検体チャンバ
3 液体
4 顕微鏡載物台
5 透明ベース
6 仮想的リレー
7 レーザーモジュール
8 ビーム成形モジュール
9 走査モジュール
10 照明対物レンズ
11 ピエゾ駆動装置
12 検出対物レンズ
13 ピエゾ駆動装置
14 ビームスプリッタ
15、16 検出モジュール
17 概観対物レンズ(overview objective)
18 ピエゾ駆動装置
19、20 円柱レンズ
21 ネマチックSLM
22 ビームスプリッタ
23 レンズ
24 開口
25、26 レンズ
27 強誘電体SLM
28 λ/2プレート

Claims (8)

  1. 光シート顕微鏡検査法によって検体(1)を検査する方法であって、
    − 前記検体(1)用の照明光を構成する幾つかの照明波長が選択され、
    − 位相選択要素の変調度が中波長に関してはπで固定され、
    − (i)最長照明波長に対応する波長を少なくとも含む好ましい波長を選択し、(ii)照明対物レンズ(10)の焦点面において、所定の形状の光シートに関して、前記好ましい波長の光を用いてその電場を決定し、これに基いて所定の位相分布を計算することによって、前記位相選択要素に所定の位相分布が適用されると共に、開口面にある開口(24)に所定の開口構造が適用され、このとき、中央領域は開口面において除去され、その結果、(iii)前記開口構造は前記好ましい波長の構造化光のゼロ次を除去し、
    − 照明ビーム経路の中間像平面内またはその近傍にある前記位相選択要素が照明光によって照明され、該照明光は前記位相選択要素によって構造化され、
    − 前記構造化照明光は、前記位相選択要素の下流に配置されると共に前記照明光の周波数スペクトルが生成される開口面内に結像され、
    − 前記開口構造は適合され、その結果、前記開口面における前記構造化照明光のゼロ次は実質的に除去され、それにより、下流の前記照明対物レンズ(10)の焦点面において、前記照明対物レンズ(10)の焦点面に対して垂直な光シート平面を備える構造化された多色光シートが形成され、
    − 前記検体(1)は、前記光シート平面において前記構造化光シートによって照明され、前記検体(1)が発した光は、前記光シート平面とゼロとは異なる角度を形成する検出方向において検出される、光シート顕微鏡検査法によって検体を検査する方法。
  2. 前記光シートの電場は、前記照明対物レンズ(10)の前記焦点面において少なくとも2つのsincビームをコヒーレントに重ね合わせることによって前記光シートを成形し、前記焦点面に生じる電場を計算することによって、決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記光シートの電場は、所定の形状のベッセルビームを使用することによって前記光シートを成形し、前記焦点面においてそのようなベッセルビームの電場を決定し、この電場と、いずれの場合も前記焦点面において所定の量Δだけ互いに離間した、複数の同一の電場との重ね合わせを算術的に求めることによって、決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 前記開口構造が前記開口面にあるサイドローブを除去することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記照明光がガウス分布に対応する強度プロファイルを備えるビームに成形され、これが前記位相選択要素に入射する前に楕円にコリメートされることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 回折光学素子が前記位相選択要素として使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 空間光変調器が回折光学素子として使用されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 最長波長の照明波長と最短波長の照明波長との平均が前記中波長として使用されるか、または、可能な限り高い回折効率の波長が必要とされることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
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