JP6716307B2 - 金属空気電池 - Google Patents

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Description

本発明は、金属空気電池に関する。より詳しくは、正極として空気極を用い、負極として金属電極を用いる金属空気電池に関する。
金属空気電池は、負極に金属材料を活物質として用い、正極に空気中の酸素を活物質として用いる。従って、正極活物質を充填するスペースが必要なく、その部分に負極活物質を充填できるため、高いエネルギー密度を実現できる電池として知られている。すでに一次電池としては、ボタン電池としての空気亜鉛電池が市場に出回っている金属空気電池には、二次電池化するための技術的課題が多い。その中の最大の課題である充電に耐えきれる正極材料がほとんど存在しないことについて、メカニカルチャージ方式や第三電極方式(特許文献1参照)が提案され、実用化に向けた検討がなされている。
特開2006−93022号公報
上記のように、二次電池化に向けた検討がされている金属空気電池は、その魅力である高いエネルギー密度を更に高める検討も必要である。例えば、金属空気電池の場合、電池の容量は負極に搭載する負極活物質量に依存する。従って、電池容器内にどれだけの負極活物質を搭載できるかが電池のエネルギー密度に直結する。一方、正極は酸素を用いるため必ず外気に触れる構造をとる必要があり、リチウムイオン電池のような積層構造をとることができない。ゆえに、金属空気電池の容量を大きくするには、おのずと一枚の電極に搭載する活物質量を大きくする必要があるが、活物質量が多すぎると集電体から脱落し、活物質として有効に活用できないおそれがある。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、多量の負極活物質を搭載することができる金属空気電池を提供することを目的とする。
本発明者は、多量の負極活物質を搭載しても、それらを活物質として有効に活用することができる金属空気電池について種々検討したところ、負極集電体に負極活物質層を貼り付けたものを電解液中に縦向きに設置する従来の負極を変更し、電池の底面全体に負極活物質層を形成して、その負極活物質層と接する位置に負極集電体を配置するようにし、負極活物質層の上に電解液を配置して電池を構成した。そうすると、集電体からの負極活物質の脱落の問題がなくなることから、負極活物質を多量に搭載することが可能となり、エネルギー密度の高い金属空気電池となることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、空気極である正極と、金属電極である負極と電解液とを含んで構成される金属空気電池であって、上記金属空気電池は、底面全体に負極活物質層が形成され、上記負極活物質層と接する位置に負極集電体が配置され、上記負極活物質層の上に電解液が配置されていることを特徴とする金属空気電池である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
<金属空気電池>
本発明の金属空気電池は、底面全体に負極活物質層が形成され、該負極活物質層と接する位置に負極集電体が配置され、該負極活物質層の上に電解液が配置された構成を有することを特徴とする。従来の集電体に負極活物質を貼り付けた負極を縦に置いた場合に比べて、底面上に負極活物質層を形成し、該負極活物質層と接する位置に負極集電体を配置すれば、負極活物質が集電体から脱落する不具合の発生を防止することができる。また、負極活物質層を底面上に積み上げるようにすると、負極活物質の重力による沈降を利用して活物質層を高密度化することができる。更に底面全体の上に負極活物質層を形成することで負極活物質層のシェイプチェンジの問題の発生も抑えることができる。
本発明の金属空気電池は、負極活物質層と接する位置に負極集電体が配置されていればよく、負極活物質層の側面が負極集電体であってもよく、下部が負極集電体であってもよいが、負極活物質層の少なくとも下部に集電体が配置されていることが好ましい。上記のとおり、活物質層の底部ほど重力により負極活物質層が高密度化されているため、高密度化された活物質層の底部と接触する位置に集電体があることで、より負極活物質を有効に利用することができる。より好ましくは、金属空気電池の底面全体が集電体となっていることである。また、負極活物質層の下部に加え、負極活物質層の側面も集電体となっていることがより好ましい。負極活物質層の下部に加えて側面も集電体となっていると、集電体と接触する、又は、距離の近い負極活物質の割合が多くなるため、負極活物質をより有効に充放電反応に利用することができるようになる。
本発明の金属空気電池は、充電用の正極と放電用の正極とを有する第三極方式の電池であることが好ましい。上述したように、第三極方式の電池とすることで、金属空気電池を充分な充放電が可能な二次電池とすることができる。また、第三極方式とすることで、充電時と放電時とで電流の流れる方向が異なるため、放電電流のルートに分厚いセパレータが不要であり、放電時の内部抵抗を下げることができるため高出力化することが可能となる。
本発明の金属空気電池は、セパレータを含んで構成された電池であることが好ましい。本発明の金属空気電池には、種々の電極の配置が考えられるが、図3のように、正極と負極とが対向する配置にある場合には、正極と負極との間にセパレータを用いることで正極と負極との短絡を効果的に防止することができる。
また、本発明の金属空気電池が第三極方式の電池である場合、充電用の正極と電解液との間、又は、電解液と負極との間のいずれかにセパレータが配置されていることが好ましい。セパレータが配置されていることで、負極活物質として亜鉛やニッケル等を用いた場合のデンドライトの成長による負極と充電用の正極間の短絡を抑制することができる。また、充電時に発生する酸素を効果的に電解液外へ放出させる点から、充電用の正極と電解液との間にセパレータが配置されていることがより好ましい。
本発明の金属空気電池が第三極方式の電池である場合、充電用の正極と電解液との間、又は、電解液と負極との間のいずれかに設置されるセパレータは、アニオン伝導性材料により形成されていることが好ましい。このセパレータがアニオン伝導性材料により形成されたアニオン伝導性膜であることにより、電極反応に必要なアニオンの良好な透過性を確保しつつ、デンドライトの成長を原因とする電極間の短絡をより効果的に抑制することができる。
なお、アニオン伝導性膜とは、陰イオンを優先的に透過する膜を意味する。これは、本発明と同じ又は類似の技術分野に属する下記公知文献に記載のいずれの発明においても共通する概念である。本発明では、アニオン伝導性膜とは、陰イオン、特に水酸化物イオンを透過する膜(層)を意味する。アニオン伝導性膜を形成するアニオン伝導性材料については後述する。
(特表2014−503689号公報、特開2013−145758号公報、特開2013−091598号公報、特開2014−011000号公報、特開2013−211201号公報参照。)
本発明の金属空気電池において、正極は電解液と接触することができる位置に配置されていればよく、電解液の側面にあっても上面にあってもよく、また、電解液中にあってもよい。
本発明の金属空気電池が第三極方式の電池である場合についても同様であり、充電用の正極、放電用の正極のいずれも電解液の側面にあっても上面にあっても、電解液中にあってもよい。本発明の金属空気電池が第三極方式の電池である場合の電極の配置については、例えば、電池の底部及び側面の全体が負極集電体であって、底部及び側面に囲まれた部分全体に負極活物質層があり、その上に電解液層があって、充電用の正極が電解液層の側面に、放電用の正極が電解液層の上面にある形態(図1)、電池の底部及び側面の全体が負極集電体であって、底部及び側面に囲まれた部分全体に負極活物質層があり、その上に電解液層があって、充電用の正極、放電用の正極がともに電解液層の側面にある形態(図2)、電池の底部全体が負極集電体であって、その上に負極活物質層があり、負極活物質層の上に電解液層があり、充電用の正極が電解液層中にあり、負極活物質層及び電解液層の側面全体に放電用の正極がある形態(図3)等が挙げられる。
これらの形態の中でも、充電用の正極で発生する酸素の影響で放電用の正極と電解液との接触面積が少なくなるおそれがなく、放電反応を円滑に行うことができる点からは図2又は図3の形態が好ましいといえる。
図2のように、充電用の正極、放電用の正極がともに電解液層の側面にある形態の場合、ともに電解液の側面に配置された充電用の正極、放電用の正極のいずれが上にあってもよいが、充電時に発生する酸素の影響を放電用の正極が受けにくくなるという点で、充電用の正極が上にあるほうが好ましい。
図3の形態は、図1、2の形態に比べて、放電用の正極の面積を最も広くとることができる点では図1、2の形態よりも優位であるが、電解液の深さが図1、2に比べて深くなる。電解液の水圧は深さが深くなるほど大きくなるため、電池の側面全体が空気極である場合、水圧の高い側面下部で電解液が漏れやすくなる。このため、電解液の液漏れのしにくさという点では図1、2の形態のほうが優位であるといえる。
なお、図3の形態では、充電用の正極は図3に示すように点であってもよいが、平面状の形態を有するものであってもよく、平面状の形態を有するものである場合、充電用の正極の内部抵抗を下げることができる。また、図4、5では電解液の上面が覆われていないが、電解液の上面が電池容器等で覆われていることが、電解液の蒸発抑制の点から好ましい。なお、図4の負極集電体と絶縁部材との接触部のギザギザは、負極集電体と絶縁部材それぞれにネジが切ってあり、ねじ込むことで結合していることを表しているが、負極集電体と絶縁部材の結合はそのようなものに限定されない。後述する図6(a)(c)(e)についても同様である。
また本発明の金属空気電池が、負極活物質層と集電体とを含んで構成される負極ユニットと、充電用の正極を含んで構成される充電用正極ユニットと、放電用の正極を含んで構成される放電用正極ユニットの独立した3つのユニットで構成され、少なくとも負極ユニットと充電用正極ユニット、及び、負極ユニットと放電用正極ユニットは結合可能であり、これらユニット同士を結合させてできる電池は電解液を含むことも、本発明の金属空気電池の好適な形態の1つである。
金属空気電池がこのような独立した3つのユニットからなるものであると、負極ユニットと充電用正極ユニットとを結合させて充電を行った後に負極ユニットを充電用正極ユニットから分離して放電用正極ユニットと結合させて放電を行うことができる。このように充電に必要な部位と放電に必要な部位とを分離可能にすることで、充電時、放電時にそれぞれ必要な部位のみを有する電池とすることができ、電池を自動車等の輸送機器で使用する場合に実質的に運搬すべき部材が削減でき、より軽量で高いエネルギー密度の蓄電デバイスを提供できる。
なお、この独立した3つのユニットからなる電池は、少なくとも負極ユニットと充電用正極ユニット、及び、負極ユニットと放電用正極ユニットを結合することが可能であればよく、これら3つのユニット全てを結合することが可能なものであってもよい。
上記3つのユニットからなる電池は、負極ユニットと充電用正極ユニットとを結合させた電池の場合、及び、負極ユニットと放電用正極ユニットとを結合させた電池の場合に電解液が含まれるものとなればよく、いずれのユニットに電解液が含まれていてもよい。いずれかのユニットのみに電解液が含まれる形態としては、例えば、負極ユニットに電解液が含まれ、充電用正極ユニット及び放電用正極ユニットには電解液が含まれていない形態、負極ユニットには電解液が含まれず、充電用正極ユニット及び放電用正極ユニットに電解液が含まれている形態が挙げられる。このように、いずれかのユニットのみに電解液が含まれる形態であってもよいが、全てのユニットに電解液が含まれていることが好ましい。3つのユニット全てが電解液を含むようにする、すなわち、電池に必要な電解液を複数のユニットに分けて収納するようにすると、電池重量を分散させることができ、ユニットの移動性を高めることができる。
上記3つのユニットは、それぞれセパレータを含んで構成されるものであってもよく、セパレータを含まないものであってもよいが、いずれもセパレータを含むものであることが好ましく、ユニット同士の結合の際にセパレータ同士を結合させるものであることが好ましい。このようにすると、各ユニットが電解液を含む場合でも電解液の液漏れがなく、分離したり、電池として機能を発揮するように結合することが可能なユニットとすることができるため、液漏れを防ぐための部材を用いる必要がなくなる。したがって、上記3つのユニットからなる金属空気電池において、3つのユニットが、いずれも電解液とセパレータとを含んで構成され、ユニット同士の結合の際にセパレータ同士を接触させて結合させるものであることは、本発明の3つのユニットからなる金属空気電池の好適な実施形態の1つである。
上記3つのユニットが電解液とセパレータとを含んで構成され、ユニット同士の結合の際にセパレータ同士を接触させて結合させるものである場合、セパレータ同士で他のユニットと結合可能となっていればその構成は特に制限されないが、電解液が外気にふれないように構成されていることが好ましい。電解液を外気にふれないようにすることで、電解液の蒸発による液枯れを抑制することができる。
上記3つのユニットの好適な構成の一例を図6に示す。図6(a)の負極ユニットは、底部全体及び側面の一部が負極集電体で形成された容器の底部及び側面に囲まれた部分全体に負極活物質層があり、その上に電解液層があり、電解液層の上にセパレータが配置され、集電体とセパレータとの間に絶縁部材が配置されている。図6(b−1)の充電用正極ユニットは、底部がセパレータで形成され、その上に電解液層があり、電解液層の中に充電用の正極がある。充電時には、負極ユニット上面のセパレータと充電用正極ユニット底部のセパレータとを結合させて充電を行う(図6(c))。なお、電解液の蒸発による液枯れを抑制する点からは、充電用正極ユニットは、図6(b−2)のように電解液が外気に触れないように容器内に収納されていることが好ましい。
図6(d)の放電用正極ユニットは、底部がセパレータで形成され、その上に電解液層があり、ユニット側面が放電用の空気極で形成されている。電解液層と放電用の空気極との間には必要に応じてセパレータが配置される。放電時には、負極ユニット上面のセパレータと放電用正極ユニット底部のセパレータとを結合させて放電を行う(図6(e))。
<負極>
本発明の金属空気電池における負極の活物質は、カドミウム種・リチウム種・ナトリウム種・マグネシウム種・鉛種・亜鉛種・錫種・シリコン含有材料・水素吸蔵合金材料、白金等の貴金属材料等、電池の負極活物質として通常用いられるものを負極活物質として用いることができる。上記のように、負極と正極との間にアニオン伝導性膜をセパレータとして設置することでデンドライトの成長も効果的に抑制することができるため、負極としては、上記のものの中でも、亜鉛種又はカドミウム種が好ましい。
ここで、亜鉛種とは亜鉛の金属単体又は亜鉛化合物を意味し、カドミウム種とはカドミウムの金属単体又はカドミウム化合物を意味する。リチウム種、ナトリウム種、マグネシウム種、鉛種、亜鉛種、及び、錫種についても同様である。化合物としては、酸化物、硫化物、水酸化物等が挙げられる。
上記負極活物質は、平均粒子径が1nm〜500μmであることが好ましい。より好ましくは5nm〜200μmであり、更に好ましくは10nm〜100μmであり、特に好ましくは、10nm〜60μmである。
上記平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
上記負極は、集電体と接触するように負極活物質層が形成されたものであることが好ましい。活物質層中に含まれる活物質の質量割合は、活物質層全体100質量%中、40質量%以上であることが好ましい。活物質の配合量がこのような範囲であると、電極の容量を充分なものとすることができる。より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは85質量%以上である。また、該質量割合は、99.9質量%以下であることが好ましく、99.5質量%以下であることがより好ましく、99質量%以下であることが更に好ましく、98質量%以下であることが特に好ましい。
上記負極活物質層は、活物質以外に結着剤や導電助剤等を含んでいてもよい。
結着剤としては、種々のものを用いることができ、熱可塑性、熱硬化性のいずれであってもよく、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン原子含有ポリマー、ポリオレフィン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリスチレン等の芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等のエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコール等の水酸基含有ポリマー;ポリアミド、ポリアクリルアミド等のアミド結合含有ポリマー;ポリマレイミド等のイミド基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸塩等のカルボン酸塩基含有ポリマー;スルホン酸塩部位含有ポリマー;第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;イオン交換性重合体;天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)等の人工ゴム;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース等の糖類;ポリエチレンイミン等のアミノ基含有ポリマー;ポリウレタン等が挙げられる。
上記結着剤の活物質層全体中の質量割合は、0.3〜30質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜15質量%であり、更に好ましくは、1〜10質量%であり、特に好ましくは、2〜6質量%である。
上記導電助剤としては、特に制限されないが、例えば、導電性カーボン、導電性セラミックス、亜鉛・銅・真鍮・ニッケル・銀・ビスマス・インジウム・鉛・錫等の金属等の1種又は2種以上を用いることができる。
上記負極活物質層が導電助剤を含む場合の導電助剤の割合は、負極活物質層中の活物質100質量%に対して、0.0001〜100質量%であることが好ましい。導電助剤の含有割合がこのような範囲であると、より良好な電池性能を発揮することができる。より好ましくは、0.0005〜60質量%であり、更に好ましくは、0.001〜40質量%である。
上記負極活物質層は、その他の成分として、周期表の第1族〜第17族に属する元素からなる群より選択される少なくとも1つの元素を有する化合物、有機化合物、及び、有機化合物塩からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
上記負極活物質層がその他の成分を含む場合は、該その他の成分の負極活物質層中の含有割合は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。
上記負極活物質層の厚さは、100μm以上であることが好ましく、200μm以上であることがより好ましく、500μm以上であることが更に好ましく、1mm以上であることが特に好ましい。該活物質層の厚さは、例えば10mm以下であることが好ましく、5mm以下であることがより好ましい。
上記活物質層の厚さは、マイクロメーターにより測定することができる。
本発明において、負極集電体の材料は特に制限されず、(電解)銅箔、銅メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡銅、パンチング銅、真鍮等の銅合金、真鍮箔、真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)、発泡真鍮、パンチング真鍮、ニッケル箔、耐食性ニッケル、ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)、パンチングニッケル、金属亜鉛、耐食性金属亜鉛、亜鉛箔、亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)、(パンチング)鋼板、導電性を付与した不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等を添加した(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;Ni・Zn・Sn・Pb・Hg・Bi・In・Tl・真鍮等によりメッキされた(電解)銅箔・銅メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡銅・パンチング銅・真鍮等の銅合金・真鍮箔・真鍮メッシュ(エキスパンドメタル)・発泡真鍮・パンチング真鍮・ニッケル箔・耐食性ニッケル・ニッケルメッシュ(エキスパンドメタル)・パンチングニッケル・金属亜鉛・耐食性金属亜鉛・亜鉛箔・亜鉛メッシュ(エキスパンドメタル)・(パンチング)鋼板・不織布;銀;アルカリ(蓄)電池や空気亜鉛電池に集電体や容器として使用される材料等が挙げられる。
<充電用の正極>
本発明の金属空気電池が第三極方式の場合、電池を構成する充電用の正極としては、充電用の正極として機能することができるものである限り特に制限されないが、負極と対向する面に対して垂直方向にイオンを伝導できる構造又は材質が好ましく、多孔性の金属板等が好ましい。多孔性の金属板としては、上記負極を構成する集電体として用いることができる材料に含まれる、パンチング金属板、発泡金属板を用いることができる。
上記充電用の正極の厚さは特に制限されないが、0.01〜2mmであることが好ましい。より好ましくは、0.1〜1mmである。
上記充電用の正極の厚さは、マイクロメーターにより測定することができる。
<空気極(放電用の正極)>
本発明の金属空気電池を構成する空気極(第三極方式の場合は、放電用の空気極)は、空気極として機能するものである限り特に制限されないが、空気極用触媒を含むものであることが好ましく、集電体上に空気極用触媒層を形成したものであることがより好ましい。
空気極用触媒としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の導電性カーボン、金属、金属酸化物、金属水酸化物、金属硫化物等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記空気極用触媒層に含まれる空気極用触媒の質量割合は、空気極用触媒層全体100質量%中、5質量%以上であることが好ましい。空気極用触媒の割合がこのような範囲であると、空気極の機能を充分なものとすることができる。より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは20質量%以上である。また、該質量割合は98質量%以下であることが好ましく、95質量%以下であることがより好ましい。
上記空気極用触媒層は、空気極用触媒以外に結着剤を含んでいてもよい。
結着剤としては、上述した負極活物質層が含む結着剤と同様のものを用いることができる。
結着剤の空気極用触媒層中の質量割合は、0.1〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜8質量%であり、更に好ましくは、1〜5質量%である。
上記空気極用触媒層は、空気極用触媒、結着剤以外にその他の成分として撥水剤等を含んでいてもよい。
これらその他の成分の空気極用触媒層中の質量割合は、5質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、3質量%以下であり、更に好ましくは、2質量%以下である。
上記空気極用触媒層の厚さは、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることが更に好ましい。該活物質層の厚さは、例えば1mm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
上記活物質層の厚さは、マイクロメーターにより測定することができる。
上記空気極用触媒を構成する集電体としては、上述した負極となる金属電極を構成する集電体と同様のものを用いることができる。
<電解液>
本発明の金属空気電池を構成する電解液は、蓄電池の電解液として通常用いられるものを用いることができ、特に制限されないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエトキシエタン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、アセトニトリル、ベンゾニトリル、イオン性液体、フッ素含有カーボネート類、フッ素含有エーテル類、ポリエチレングリコール類、フッ素含有ポリエチレングリコール類等が挙げられる。これら有機溶剤系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、硫酸亜鉛水溶液、硝酸亜鉛水溶液、リン酸亜鉛水溶液、酢酸亜鉛水溶液等などが挙げられる。これらの中でも、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液といったアルカリ性電解質が好ましい。上記水系電解液は、1種でも2種以上でも使用することができる。水系電解液は、上記有機溶剤系電解液を含んでいてもよい。
<セパレータ>
本発明の金属空気電池がアニオン伝導性膜をセパレータとして有する場合、セパレータの厚みは特に制限されないが、1μm〜1000μmであることが好ましい。より好ましくは、5μm〜500μmであり、更に好ましくは、10μm〜100μmである。
セパレータの厚みは、マイクロメーターにより測定することができる。
本発明の金属空気電池が第三極方式のものであって、負極と電解液との間、又は、正極(第三極方式の電池の場合は充電用の正極)と電解液との間にセパレータを有する場合、このセパレータは、アニオン伝導性膜であってもよく、アニオン伝導性膜以外のセパレータであってもよいが、アニオン伝導性膜であることが好ましい。
上記アニオン伝導性膜以外のセパレータとしては、不織布、濾紙、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン部位含有ポリマー、ポリフッ化ビニリデン部位含有ポリマー、セルロース、フィブリル化セルロース、ビスコースレイヨン、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール含有ポリマー、セロファン、ポリスチレン等の芳香環部位含有ポリマー、ポリアクリロニトリル部位含有ポリマー、ポリアクリルアミド部位含有ポリマー、ポリフッ化ビニル部位含有ポリマー等のハロゲン含有ポリマー、ポリアミド部位含有ポリマー、ポリイミド部位含有ポリマー、ナイロン等のエステル部位含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸部位含有ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸塩部位含有ポリマー、ポリイソプレノールやポリ(メタ)アリルアルコール等の水酸基含有ポリマー、ポリカーボネート等のカーボネート基含有ポリマー、ポリエステル等のエステル基含有ポリマー、ポリウレタン等のカルバメートやカルバミド基部位含有ポリマー、寒天、ゲル化合物、有機無機ハイブリッド(コンポジット)化合物、イオン交換膜性ポリマー、環化ポリマー、スルホン酸塩含有ポリマー、第四級アンモニウム塩含有ポリマー、第四級ホスホニウム塩ポリマー、環状炭化水素基含有ポリマー、エーテル基含有ポリマー、セラミックス等の無機物等が挙げられる。
上記アニオン伝導性膜は、ポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物とを含むアニオン伝導性材料によって形成されるものであることが好ましい。このようなアニオン伝導性材料によって形成されたアニオン伝導性膜は、良好な水酸化物イオン透過性を有しながら、アニオンであってもイオン半径の大きな金属イオンの拡散は充分に防止することができるため、負極と正極(第三極方式の場合は、充電用正極)との間にセパレータとしてこのような膜が存在しても本発明の金属空気電池が良好な性能を発揮することができる。
この場合、アニオン伝導性材料はポリマーと、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物をそれぞれ1種含んでいても2種以上含んでいてもよく、また、これら以外の成分を含んでいてもよい。
以下に、アニオン伝導性材料が含むポリマー、及び、周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物(以下、単に無機化合物ともいう。)について順に説明する。
上記アニオン伝導性材料が含むポリマーとしては、ポリエチレンやポリプロピレン等の炭化水素部位含有ポリマー、ポリスチレン等に代表される芳香族基含有ポリマー;アルキレングリコール等に代表されるエーテル基含有ポリマー;ポリビニルアルコールやポリ(α−ヒドロキシメチルアクリル酸塩)等に代表される水酸基含有ポリマー;ポリアミド、ナイロン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドンやN−置換ポリアクリルアミド等に代表されるアミド基含有ポリマー;ポリマレイミド等に代表されるイミド基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸、ポリマレイン酸、ポリイタコン酸、ポリメチレングルタル酸等に代表されるカルボキシル基含有ポリマー;ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリマレイン酸塩、ポリイタコン酸塩、ポリメチレングルタル酸塩等に代表されるカルボン酸塩基含有ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のハロゲン含有ポリマー;エポキシ樹脂等のエポキシ基が開環することにより結合したポリマー;スルホン酸塩部位含有ポリマー;ARB(Aは、N又はPを表す。Bは、ハロゲンアニオンやOH等のアニオンを表す。R、R、Rは、同一又は異なって、炭素数1〜7のアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルカルボキシル基、又は、芳香環基を表す。R、R、Rは、結合して環構造を形成してもよい。)で表される基が結合したポリマーに代表される第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー;陽イオン・陰イオン交換膜等に使用されるイオン交換性重合体;天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)等に代表される人工ゴム;セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、カルボキシメチルセルロース、キチン、キトサン、アルギン酸(塩)等に代表される糖類;ポリエチレンイミンに代表されるアミノ基含有ポリマー;カルバメート基部位含有ポリマー;カルバミド基部位含有ポリマー;エポキシ基部位含有ポリマー;複素環、及び/又は、イオン化した複素環部位含有ポリマー;ポリマーアロイ;ヘテロ原子含有ポリマー;低分子量界面活性剤などが挙げられる。
上記のものの中でも、アニオン伝導性材料が含むポリマーは、芳香族基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボン酸塩基、水酸基、アミノ基、及び、エーテル基からなる群より選択される少なくとも1種を含有するか、又は、炭化水素であることが好ましい。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。より好ましくは、フッ素原子である。また、カルボン酸塩基は、カルボン酸リチウム塩基、カルボン酸ナトリウム塩基、カルボン酸カリウム塩基が好ましい。より好ましくは、カルボン酸ナトリウム塩基である。上記炭化水素は、例えばポリオレフィンが挙げられる。中でも、上記ポリマーは、(1)絶縁物であること、(2)アニオン伝導性材料の粉末を増粘・結着させることができること、(3)物理的強度に優れることの3点を総合的に考慮して適宜選択することが好ましく、このような観点からは、炭化水素部位含有ポリマー、芳香族基含有ポリマー、エーテル基含有ポリマー、カルボキシル基含有ポリマー、カルボン酸塩基含有ポリマー、ハロゲン含有ポリマー、スルホン酸塩部位含有ポリマー、第四級アンモニウム塩や第四級ホスホニウム塩含有ポリマー、糖類が好ましい。上記ポリマーは熱や圧力等により繊維化された状態になってもよい。ポリマーの繊維化により、活物質(層)やアニオン伝導性材料の強度、アニオン伝導度等を調節することもできる。
上記ポリマーの重量平均分子量は、200〜7000000であることが好ましい。これにより、アニオン伝導性材料のイオン伝導性、粘性、可とう性、強度等を調節することができる。該重量平均分子量は、より好ましくは、400〜6500000であり、更に好ましくは、500〜5000000である。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
上記ポリマーの質量割合は、アニオン伝導性材料100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、1質量%以上であり、更に好ましくは、25質量%以上であり、一層好ましくは、30質量%を超えることであり、特に好ましくは、40質量%を超えることであり、最も好ましくは、45質量%を超えることである。また、99.9質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、99.5質量%以下であり、更に好ましくは、99質量%以下であり、一層好ましくは、97質量%以下であり、特に好ましくは、80質量%以下である。これにより、アニオン伝導性材料のクラックを生じにくくすることができる。
本発明に係るアニオン伝導性材料における、ポリマーと、無機化合物との質量割合は、5000000/1〜1/100000であることが好ましい。より好ましくは、2000000/1〜1/50000であり、更に好ましくは、1000000/1〜1/10000である。一層好ましくは、1000000/1〜1/100である。より一層好ましくは、100/3〜75/100である。特に好ましくは、100/50〜75/100である。本発明に係るアニオン伝導性材料に含まれる無機化合物がハイドロタルサイトである場合に上記質量割合を満たすことにより、アニオン伝導性材料におけるアニオン伝導性を優れたものとする効果及びクラックを生じにくくする効果の両方を顕著に優れたものとすることができる。
上記周期表の第1族〜第17族から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物(本明細書中、単に無機化合物とも言う。)は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、Pb、N、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、及び、Brからなる群より選択される少なくとも1つの元素であることが好ましい。より好ましくは、Li、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Nb、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Sn、Pb、N、P、及び、Biからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含むものである。
上記無機化合物は、酸化物、水酸化物、層状複水酸化物、硫酸化合物、及び、リン酸化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であることが好ましい。
酸化物としては、例えばアルカリ金属、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、C、Si、Ge、Sn、N、P、Sb、Bi、S、Se、Te、F、Cl、及び、Brからなる群より選択される少なくとも1つの元素を含む酸化物であることが好ましい。より好ましくは、Li、Na、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Nb、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Ni、Pd、Cu、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Sn、Pb、及び、Biからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含む酸化物である。更に好ましくは、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化セリウム、酸化ニオブ、酸化錫、酸化ジルコニウムであり、特に好ましくは、酸化マグネシウム、酸化ビスマス、酸化セリウム、酸化ニオブ、酸化錫、酸化ジルコニウムである。また、酸化セリウムは、例えば、酸化サマリウム、酸化ガドリニウム、酸化ビスマス等の金属酸化物がドープされたものや、酸化ジルコニウム等の金属酸化物との固溶体であってもよい。上記酸化物は、酸素欠陥を持つものであってもよい。
上記水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化セリウム、水酸化ジルコニウムが好ましい。なお、本明細書中、水酸化物は、層状複水酸化物以外の水酸化物を言う。
上記層状複水酸化物は、例えばハイドロタルサイトが好ましい。これにより、上記アニオン伝導性材料のアニオン伝導性を際立って優れたものとすることができる。
上記ハイドロタルサイトは、下記式(1);
[M 1−x (OH)](An−x/n・mHO (1)
(式中、M=Mg、Fe、Zn、Ca、Li、Ni、Co、Cu、Mn等;M=Al、Fe、Mn、Co、Cr、In等;An−=CO 2−、OH、Cl、NO 、CO 2−、COO等、mは0以上の正数、nは1〜3、xは、0.20≦x≦0.40程度)で示される化合物であることが好ましい。この化合物を、150℃〜900℃で焼成することにより脱水した化合物や、層間内の陰イオンを分解させた化合物、天然鉱物であるMgAl(OH)16CO・mHO等を上記無機化合物として使用してもよい。上記ハイドロタルサイトには、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、シラノール基等の官能基を持つ化合物が配位していてもよい。層間内に有機物を有していてもよい。
上記硫酸化合物は、例えばエトリンガイトが好ましい。
上記リン酸化合物は、例えばヒドロキシアパタイトが好ましい。
上記ヒドロキシアパタイトは、Ca10(PO(OH)に代表される化合物であり、調製時の条件によりCaの量を減らした化合物や、Ca以外の元素を導入したヒドロキシアパタイト化合物等を上記無機化合物として使用してもよい。
上記無機化合物は、それを電解液原料、電解液、ゲル電解質等に導入した際に、溶解状態、コロイド等の分散状態、不溶状態等のいずれであっても良く、その表面の一部がプラスやマイナスの電荷に帯電するものが好ましく、ゼータ電位の測定等により、粒子の帯電状態を推察することができる。これら無機化合物は、後述するように、ポリマーが有する官能基との共有結合、配位結合や、イオン結合、水素結合、π結合、ファンデルワールス結合、アゴスチック相互作用等の非共有性結合により相互作用することもできる。ハイドロタルサイト等の層状化合物を用いる場合には、その層内にポリマーが形成されていてもよいし、有機物を含んでいてもよい。また、上記無機化合物は、それを電解液原料、電解液、ゲル電解質等に導入した際に、その表面の一部がプラスやマイナスの電荷に帯電しない状態(等電点に相当)で使用してもよい。
上記アニオン伝導性材料は、電解液原料、電解液、ゲル電解質等に導入した際に水和物となるようなものであってもよい。水和物であることにより、電池反応に関与する水酸化物イオン等の伝導性を更に高めることができる。
上記無機化合物の質量割合としては、アニオン伝導性材料100質量%に対して、0.1質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.5質量%以上であり、更に好ましくは、1質量%以上であり、一層好ましくは3質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上である。また、99.9質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、99質量%以下であり、更に好ましくは、75質量%以下であり、一層好ましくは、70質量%未満であり、特に好ましくは、60質量%未満であり、最も好ましくは55質量%未満である。
上記無機化合物の質量割合を上記範囲内とすることにより、本発明の効果を発揮できるとともに、アニオン伝導性材料のクラックを生じにくくする効果を発揮することができる。中でも、層状複水酸化物の質量割合を上記範囲内とすることが特に好ましい。
上記アニオン伝導性材料は、ポリマーと、無機化合物とを含む限り、更にその他の成分を含んでいてもよい。
上記その他の成分は、特に限定されないが、例えば、粘土化合物;固溶体;合金;ゼオライト;ハロゲン化物;カルボキシラート化合物;炭酸化合物;炭酸水素化合物;硝酸化合物;スルホン酸化合物;亜リン化合物;次亜リン酸化合物、ホウ酸化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;硫化物;オニウム化合物;塩;有機化合物等を1種又は2種以上含んでいても良い。上記その他の成分は、上記無機化合物や上記ポリマーとは異なる化合物である。上記その他の成分は、イオン伝導性を補助したり、溶媒・熱・焼成・電気等の手法を用いて除去されることによって後述するアニオン伝導性材料中の空孔を形成したりする等の働きも可能である。
上記その他の成分の質量割合は、その他の成分を用いる場合は、アニオン伝導性材料100質量%に対して、0.001質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、0.01質量%以上であり、更に好ましくは、0.05質量%以上である。また、90質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、70質量%以下であり、更に好ましくは、45質量%以下である。その他の成分は、全く含まなくてもよい。
本発明に係るアニオン伝導性材料は、上述したポリマー、無機化合物、その他の成分を、それぞれ、1種のみ含んでいてもよいし2種以上を含んでいてもよい。なお、ポリマーが2種以上含まれる場合、ポリマーの質量とは、特に断らない限り、2種以上のポリマーの合計質量を言う。無機化合物、その他の成分のそれぞれが2種以上含まれる場合についても同様である。
本発明の金属空気電池は、更に必要に応じて、電極間の短絡等を防ぐための絶縁部材を含んでいてもよい。絶縁部材としては、テフロン(登録商標)、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ABS樹脂、または金属酸化物、硫化物、水酸化物による成形体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の金属空気電池は、上述の構成よりなり、多量の負極活物質を搭載した場合でも活物質が集電体から脱落することなく、充放電反応に有効に利用することができることから、大容量の金属空気電池を実現可能とする電池である。
また、本発明の金属空気電池は、負極ユニット、充電用正極ユニット、放電用正極ユニットの独立した3つのユニットで構成された電池とすることも可能であり、そのようにすることで実質的に運搬すべき部材が削減でき、より軽量で高いエネルギー密度の蓄電デバイスを提供できる。
本発明の金属空気電池の好適な形態の1つを示した図である。 本発明の金属空気電池の好適な形態の1つを示した図である。 本発明の金属空気電池の好適な形態の1つを示した図である。 実施例1の空気亜鉛電池の構成を示した図である。 比較例の空気亜鉛電池の構成を示した図である。 本発明の金属空気電池が負極ユニット、充電用正極ユニット、放電用正極ユニットの独立した3つのユニットで構成された電池である場合の各ユニットの構成(図6(a)、(b−1)、(b−2)(d))、及び、充電時、放電時のユニットの結合状態(図6(c)、(e))の一例を示した図である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
下記実施例、比較例において、負極、充電用の正極、放電用の正極、電解液、セパレータとしては、それぞれ以下のものを用いた。
(1)負極(亜鉛負極)
酸化亜鉛(平均粒子径300nm)と金属亜鉛(平均粒子径45μm)とを80:20の重量比で混合し、亜鉛極活物質とした。
(2)充電用の正極
Niメッキされたパンチング鋼板を充電用の正極として用いた。
(3)放電用の正極(空気極)
天然黒鉛と60%濃度のテトラフルオロエチレン水分散液(ポリフロン D−210C、ダイキン社製)を9:1の割合で混合しペースト化したものを、Niメッキされたパンチング鋼板に圧延によって圧着し、さらに電解液側にポリプロピレン製不織布、空気側にテフロン(登録商標)製不織布がくるような3層構成を圧延によって圧着して形成し、セパレータを密着させた空気極とした。
(4)電解液
8M濃度のKOH水溶液を電解液とした。
(5)セパレータ
ハイドロタルサイト(商品名:DHT−6、協和化学工業社製、平均粒子径は0.20μm)とスチレンーブタジエン共重合体の水分散体(製品名:TRD2001、JSR社製、Tg=−2℃、固形分量48%)とポリテトラフルオロエチレン水分散体(商品名:D210C、ダイキン工業社製、固形分60%)とカルボキシメチルセルロース(商品名:ダイセル1380、ダイセルファインケム社製)と純水とを100:100:5:3:15の質量比でニーダー混練し、ロール圧延を行うことで、厚さ100μmのアニオン伝導性膜を作製した。
実施例1
図4に示すとおり亜鉛活物質をSUS製の容器に粉体のまま導入し、円筒型の空気亜鉛電池を作成した。セパレータ、充電極、放電極は図示したとおりに配置した。亜鉛活物質量は、理論容量で算出し、10Ahとした(酸化亜鉛:658mAh/g、亜鉛:820mAh/gから算出)。
この空気亜鉛電池について、下記の条件で充放電サイクル試験を行ったところ、100サイクルまで充放電を実施しても特に問題なく電池として駆動した。
[充放電サイクル試験]
充電電流500mA/cmとし、亜鉛極と充電極間で充電を6時間実施し、放電電流500mA/cmで、亜鉛極と放電極間の電圧が0.5Vまで低下するまで放電を実施するサイクルを継続し、サイクル毎の効率を測定した。
比較例
図5に示すとおり各電極、セパレータを配置して空気亜鉛電池を作成した。亜鉛極は亜鉛活物質と集電体とを平板プレスを用いて5MPaで圧着し、その表面に袋状に加工したセパレータを配置した。亜鉛活物質量は実施例と同様に、理論容量で算出し、10Ahとした。
この空気亜鉛電池について、実施例と同じ条件で充放電サイクル試験を行ったところ、12サイクル時で亜鉛活物質が重力の影響を受けて、電池容器下部へ蓄積し、15サイクル時に充電極と亜鉛極が短絡した。
実施例2
図6(a)、(b−1)、(d)に示す構成の負極ユニット、充電用正極ユニット、放電用正極ユニットを作製した。
負極ユニットはSUS製の容器に亜鉛活物質と電解液を搭載し、セパレータで上部が覆われた構成である。
充電用正極ユニットは、電力を供給する電源と共に配置されている。図6(b−1)のとおり充電極と電解液によって成り立っており、下部がセパレータで覆われている。充電極は、Niメッキされたパンチング鋼板(厚み200μm)を用いた。
放電用正極ユニットは、上記セパレータを密着させた空気極と電解液によって構成され、下部がセパレータで覆われている。
この3つのユニットを用いて以下のようにして充電、ユニットの運搬、及び、放電を行った。充電時には図6(c)のように充電用正極ユニットと負極ユニットとの接続はセパレータを介して行った。セパレータはイオン伝導ができるため、充電に必要なイオンは十分供給できる。放電時には、図6(e)のように放電用正極ユニットと負極ユニットとをセパレータを介して接続して行った。
充電後に分離した負極ユニットを放電用正極ユニットと接続することで問題なく放電を行うことができた。
充電:充電極と亜鉛負極間に50mAの電流を6時間流し、充電を行った。
運搬:充電用正極ユニットと負極ユニットとを分離し、負極ユニットだけで5分間放置した。その際、負極ユニット上部のセパレータが大気に触れている部分をポリエチレンシートで覆い、乾燥を防いだ。
放電:ポリエチレンシートを取り除き、セパレータ同士が接続するように放電用正極ユニットと負極ユニットとを接続した。放電電流500mAを流して、放電極と亜鉛極の電圧が0.5Vまで低下するまで放電を行った。
A:セパレータを密着させた放電用の正極(空気極)
B:充電用の正極
C:負極集電体(図4、5ではSUS)
D:絶縁部材(図4、5ではテフロン(登録商標))
E:セパレータ
F:負極活物質層
G:電解液
H:電池容器

Claims (3)

  1. 空気極である正極と、金属電極である負極と電解液とを含んで構成される金属空気電池であって、
    該金属空気電池は、充電用の正極と放電用の正極とを有し、底面全体に負極活物質層が形成され、該負極活物質層と接する位置に負極集電体が配置され、該負極活物質層の上に電解液が配置されており、更に
    該充電用の正極と電解液との間にアニオン伝導性材料により形成されているセパレータが配置されているか、又は、
    負極活物質層と集電体とを含んで構成される負極ユニットと、充電用の正極を含んで構成される充電用正極ユニットと、放電用の正極を含んで構成される放電用正極ユニットの独立した3つのユニットで構成され、少なくとも負極ユニットと充電用正極ユニット、及び、負極ユニットと放電用正極ユニットは結合可能であり、これらユニット同士を結合させてできる電池は電解液を含むことを特徴とする金属空気電池。
  2. 前記負極活物質層の少なくとも下部に集電体が配置されていることを特徴とする請求項1に記載の金属空気電池。
  3. 前記3つのユニットは、いずれも電解液とセパレータとを含んで構成され、ユニット同士の結合の際にセパレータ同士を接触させて結合させることを特徴とする請求項に記載の金属空気電池。
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