JP6714676B2 - ガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置 - Google Patents

ガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、ガラス基板の製造方法、及びガラス基板製造装置に関する。
ダウンドロー法を用いてシートガラス(ガラス板)を製造する方法が知られている。ダウンドロー法により成形されるシートガラスは、板厚がほぼ一定の幅方向の中央領域と、中央領域の幅方向外側に位置し、中央領域より板厚が厚い端部(耳部)と、を有している。中央領域は、ガラス基板の製品となる製品領域を有している。ダウンドロー法では、成形されたシートガラスを下方向に安定して搬送するために、シートガラスの中央領域と端部との間の境界領域を搬送ローラにより挟持し、下方向に搬送する(特許文献1)。
特開2013−212987号公報
シートガラスの端部の厚さは、中央領域の厚さよりも厚いため、境界領域では、中央領域の側から端部の側に向かって徐々に板厚が大きくなっており、幅方向の位置によってシートガラスの板厚が異なっている。このため、境界領域を搬送ローラで挟持したときに、シートガラスと搬送ローラとの接触面積が小さくなり、シートガラスが搬送ローラから受ける圧力が不均一になりやすい。搬送ローラによって局所的に高い圧力で挟持されると、シートガラスに傷が発生し、後の工程で切断するときに、傷が起点となってシートガラスが割れるおそれがある。
そこで、本発明は、ガラス板を搬送する際に、ガラス板の幅方向の両側の領域に傷が発生することを抑制することのできるガラス基板の製造方法及びガラス基板製造装置を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、ガラス基板の製造方法であって、
溶融ガラスを、オーバーフローダウンドロー法を用いて成形し、ガラス板を形成する成形工程と、
前記ガラス板の幅方向の両側の領域を、前記ガラス板の搬送方向に間隔をあけて配置された複数の対の搬送ローラで挟持しつつ、前記ガラス板を下方向に搬送する搬送工程と、を有し、
前記成形工程では、前記両側の領域に、前記ガラス板の厚さが幅方向外側に向かって厚くなるよう傾斜した傾斜領域が形成され、
前記搬送工程において前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記傾斜領域のうち、前記搬送ローラと対向する前記ガラス板の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に調整されており、
前記搬送ローラのうち、搬送方向の下流側に位置する搬送ローラであるほど、前記許容値は小さい値に設定されている、ことを特徴とする。
前記成形工程では、前記搬送ローラで前記ガラス板を挟持する前に、前記搬送ローラよりも搬送方向の上流側に配置された冷却ローラで前記ガラス板の前記両側の領域を挟持し、
前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記冷却ローラが挟持した前記ガラス板の位置から幅方向内側に所定以上の間隔をあけた位置に調整されていることが好ましい。
さらに、前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置を調整する制御工程を有し、
前記制御工程では、前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置を、前記傾斜領域のうち、前記搬送ローラと対向する前記ガラス板の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に調整することが好ましい。
さらに、前記傾斜領域における前記ガラス板の厚さの傾斜を測定する測定工程を有し、
前記制御工程では、前記ガラス板の幅方向の中央領域の厚さ及び前記厚さの傾斜の測定結果に基づいて、前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置を調整することが好ましい。
前記制御工程では、前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置を、前記厚さの傾斜がさらに小さくなる領域内に調整することが好ましい。
前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記ガラス板の幅方向の両端から幅方向内側に所定以上の間隔をあけた位置に調整されていることが好ましい。
前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記搬送ローラと対向する前記ガラス板の部分の厚さが許容厚さ以下となる領域内に調整されていることが好ましい。
本発明の別の一態様は、ガラス基板製造装置であって、
溶融ガラスを、オーバーフローダウンドロー法を用いて成形し、ガラス板を形成する成形装置と、
前記ガラス板の幅方向の両側の領域を、前記ガラス板の搬送方向に間隔をあけて配置された複数の対の搬送ローラで挟持しつつ、前記ガラス板を下方向に搬送する搬送装置と、
前記成形装置は、前記両側の領域に、前記ガラス板の厚さが幅方向外側に向かって厚くなるよう傾斜した傾斜領域を形成し、
前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記傾斜領域のうち、前記搬送ローラと対向する前記ガラス板の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に調整されており、
前記搬送ローラのうち、搬送方向の下流側に位置する搬送ローラであるほど、前記許容値は小さい値に設定されている、ことを特徴とする。
本発明によれば、ガラス板を搬送する際に、ガラス板の幅方向の両側の領域に傷が発生することを抑制しつつ、ガラス板を搬送することができる。
本実施形態に係るガラス板の製造方法のフローチャートである。 ガラス板の製造方法で用いられるガラス板の製造装置を示す模式図である。 成形装置の概略の概略図(断面図)である。 成形装置の概略の概略図(側面図)である。 制御装置の制御ブロック図である。 搬送ローラの挟持位置を説明する図である。 中央領域の厚さと、挟持位置におけるガラス板の厚さとの関係を示す図である。
本実施形態に係るガラス基板の製造方法では、例えばTFTディスプレイ用のガラス基板を製造する。ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法を用いて製造される。以下、図面を参照しながら、本実施形態に係るガラス基板の製造方法について説明する。
(1)ガラス基板の製造方法の概要
まず、図1および図2を参照して、ガラス基板の製造方法に含まれる複数の工程および複数の工程に用いられるガラス基板製造装置100を説明する。ガラス基板の製造方法は、図1に示すように、主として、溶融工程S1と、清澄工程S2と、成形工程S3と、冷却工程S4と、切断工程S5とを含む。この他に、ガラス基板の製造方法は、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス基板は、納入先の業者に搬送される。
溶融工程S1は、ガラスの原料が溶融される工程である。ガラスの原料は、所望の組成になるように調合された後、図2に示すように、上流に配置された溶融装置11に投入される。ガラス原料は、例えば、SiO,Al,B,CaO,SrO,BaO等の組成からなる。具体的には、歪点が660℃以上となるガラス原料を用いる。ガラスの原料は、溶融装置11で溶融されて、溶融ガラスFG(図3及び図4参照)になる。溶融温度は、ガラスの種類に応じて調整される。本実施形態では、ガラス原料が1500℃〜1650℃で溶融される。溶融ガラスFGは、上流パイプ23を通って清澄装置12に送られる。
清澄工程S2は、溶融ガラスFG中の気泡の除去を行う工程である。清澄装置12内で気泡が除去された溶融ガラスFGは、その後、下流パイプ24を通って、成形装置40へと送られる。
成形工程S3は、溶融ガラスFGをシート状のガラス(シートガラス)SGに成形する工程である。具体的に、溶融ガラスFGは、成形装置40に含まれる成形体41(図3及び図4参照)に連続的に供給された後、成形体41からオーバーフローする。オーバーフローした溶融ガラスFGは、成形体41の表面に沿って流下する。溶融ガラスFGは、その後、成形体41の下端部41a(図3及び図4参照)で合流してシートガラスSGへと成形される。シートガラスSGは、幅方向の端に位置する側部(耳部あるいは端部ともいう)SP(図6参照)と、側部に挟まれた幅方向の中央領域CA(図6参照)と、を有する。シートガラスSGの側部の板厚は、中央領域の板厚と比べて厚く成形される。成形工程S3では、シートガラスSGの幅方向の両側の領域R,L(図4参照)に、シートガラスSGの厚さが幅方向外側に向かって厚くなるよう傾斜した傾斜領域(境界領域)SA(図6参照)が形成される。すなわち、シートガラスSGは、中央領域と側部との間(境界となる領域)に、傾斜領域をさらに有する。傾斜とは、シートガラスSGの板厚が、シートガラスSGの幅方向に変化していること、すなわち、勾配を有していることを意味し、傾斜領域とは、シートガラスSGの板厚が幅方向に傾斜した領域を意味する。シートガラスSGの中央領域は、一定の板厚を有する、ガラス基板の製品となる領域である。シートガラスSGの中央領域の板厚は、例えば0.7mm以下、好ましくは0.4mm以下の薄板に成形される。なお、シートガラスSGの幅方向は、シートガラスSGが流下する方向(流れ方向あるいは搬送方向ともいう)及びシートガラスSGの厚み方向、と直交する方向である。
冷却工程S4は、シートガラスSGの幅方向の両側の領域を、シートガラスSGの搬送方向に設けられた、後述する引下げローラ(搬送ローラ)で挟持しつつ、シートガラスSGを下方向に搬送させて冷却(徐冷)する工程である。すなわち、冷却工程S4では、シートガラスSGを挟持しつつ下方向に搬送する搬送工程を行う。搬送工程に関して、後で詳細に説明する。シートガラスSGは、冷却工程S4を経て室温に近い温度へと冷却される。なお、冷却工程S4における、冷却の状態に応じて、ガラス基板の厚み(板厚)、ガラス基板の反り量、およびガラス基板の歪量が決まる。
切断工程S5は、室温に近い温度になったシートガラスSGを、所定の大きさに切断する工程である。切断工程S5では、具体的に、徐冷後のシートガラスSGを切断して端部及び境界領域を中央領域から分離し、シートガラスSGの中央領域を所定の長さに切断することでガラス基板を得る。切断されたガラス基板は、さらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。
次に、図3〜図5を参照して、ガラス基板製造装置100に含まれる成形装置40の構成を説明する。
(2)成形装置の構成
図3および図4に、成形装置40の概略構成を示す。図3は、成形装置40の断面図である。図4は、成形装置40の側面図である。
成形装置40は、シートガラスSGが通過する通路と、通路を取り囲む空間とを有する。通路を取り囲む空間は、オーバーフローチャンバー20、フォーミングチャンバー30、および冷却チャンバー80で構成されている。
オーバーフローチャンバー20は、清澄装置12から送られる溶融ガラスFGをシートガラスSGに成形する空間である。溶融ガラスFGは、成形体41の表面に沿って流下し、成形体41の下端部41aで合流してシートガラスSGへと成形される。
フォーミングチャンバー30は、オーバーフローチャンバー20の下方に配置され、シートガラスSGの厚みおよび反り量を調整するための空間である。フォーミングチャンバー30では、冷却工程ST4の一部が実行される。シートガラスSGの温度は、成形体41の下端部41aより下流において徐々に下げられる。
冷却チャンバー80は、オーバーフローチャンバー20の下方に配置され、シートガラスSGの歪量を調整するための空間である。具体的に、冷却チャンバー80では、フォーミングチャンバー30内を通過したシートガラスSGが、徐冷点、歪点を経て、室温近傍の温度まで冷却される。なお、冷却チャンバー80の内部は、シートガラスSGの搬送方向に間隔をあけて配置された複数の断熱部材80bによって、複数の空間に区分けされている。
また、成形装置40は、主として、成形体41と、仕切り部材50と、冷却ローラ51と、冷却ユニット60と、引下げローラ81a〜81gと、ヒータ82a〜82gと、切断装置90と、から構成されている。さらに、成形装置40は、制御装置500を備える(図5参照)。制御装置500は、成形装置40に含まれる各構成の駆動部を制御する。
以下、成形装置40に含まれる各構成について詳細に説明する。
(2−1)成形体
成形体41は、オーバーフローチャンバー20内に設けられる。成形体41は、溶融ガラスFGをオーバーフローさせることによって、溶融ガラスFGをシートガラスSGへと成形する。
図3に示すように、成形体41は、断面形状で略5角形の形状(楔形に類似する形状)を有する。略5角形の先端は、成形体41の下端部41aに相当する。
また、成形体41は、長手方向(図4の左右方向)の第1端部に流入口42(図4参照)を有する。流入口42は、上述の下流パイプ24と接続されており、清澄装置12から流れ出た溶融ガラスFGは、流入口42から成形体41に流し込まれる。成形体41には、溝43が形成されている。溝43は、成形体41の長手方向に延びている。具体的には、溝43は、第1端部から、シートガラスSGの幅方向のうち第1端部と反対側の第2端部に延びている。溝43は、流入口42近傍において最も深く、第2端部に近づくにつれて徐々に浅くなるように形成されている。成形体41に流し込まれた溶融ガラスFGは、成形体41の一対の頂部41b,41bからオーバーフローし、成形体41の一対の側面(表面)41c,41cに沿って流下する。その後、溶融ガラスFGは、成形体41の下端部41aで合流してシートガラスSGになる。
このとき、成形体41の下端部41aでのシートガラスSGの液相温度は1100℃以上であり、液相粘度は2.5×10poise以上であり、より好ましくは、液相温度は1160℃以上であり、液相粘度は1.2×10poise以上である。また、成形体41の下端部41aでのシートガラスSGの側部(耳部、端部)の粘度は105.7Poise未満である。
(2−2)仕切り部材
仕切り部材50は、オーバーフローチャンバー20からフォーミングチャンバー30への熱の移動を遮断する部材である。仕切り部材50は、溶融ガラスFGの合流ポイントの近傍に配置されている。また、図3に示すように、仕切り部材50は、合流ポイントで合流した溶融ガラスFG(シートガラスSG)の厚み方向両側に配置される。仕切り部材50は、断熱材である。仕切り部材50は、溶融ガラスFGの合流ポイントの上側雰囲気および下側雰囲気を仕切ることにより、仕切り部材50の上側から下側への熱の移動を遮断する。
(2−3)冷却ローラ
冷却ローラ51は、フォーミングチャンバー30内に設けられる。より具体的に、冷却ローラ51は、仕切り部材50の直下に配置されている。また、冷却ローラ51は、シートガラスSGの厚み方向両側、及び、シートガラスSGの幅方向両側に配置される。シートガラスSGの厚み方向両側に配置された冷却ローラ51は対で動作する。すなわち、シートガラスSGの幅方向両側の領域R,Lが、二対の冷却ローラ51,51,・・・によって挟み込まれる。
冷却ローラ51は、内部に通された空冷管内を通る空気等の気体により空冷されている。冷却ローラ51は、シートガラスSGの側部(耳部、端部)と接触し、熱伝導によりシートガラスSGの側部(耳部、端部)を含む両側の領域を急冷する(急冷工程)。冷却ローラ51に接触したシートガラスSGの側部の粘度は、所定値(具体的には、109.0poise)以上である。
冷却ローラ51は、冷却ローラ駆動モータ390(図5を参照)により回転駆動される。冷却ローラ51は、シートガラスSGの両側の領域R,Lを冷却すると共に、シートガラスSGを下方に引き下げる機能も有する。
(2−4)冷却ユニット
冷却ユニット60は、オーバーフローチャンバー20内及びフォーミングチャンバー30内に設けられ、シートガラスSGを徐冷点近傍まで冷却するユニットである。冷却ユニット60は、複数の冷却要素61〜65を有する。図4において、冷却ユニット60はフォーミングチャンバー30内にのみ示されている。複数の冷却要素61〜65は、シートガラスSGの幅方向及びシートガラスSGの流れ方向に沿って配置されている。具体的に、複数の冷却要素61〜65には、中央領域冷却要素61〜63と、側部冷却要素64,65とが含まれる。
中央領域冷却要素61〜63は、空冷され、シートガラスSGの中央領域CAを冷却する。ここで、シートガラスSGの中央領域とは、シートガラスSGの幅方向中央部分であって、シートガラスSGの有効幅およびその近傍を含む領域である。言い換えると、シートガラスSGの中央領域は、シートガラスSGの両側の領域R,Lの間に位置する領域である。中央領域冷却要素61〜63は、シートガラスSGの中央領域CAの表面と対向する位置に、流れ方向に沿って配置される。中央領域冷却要素61〜63に含まれる各ユニットは、独立して制御可能である。
また、側部冷却要素64,65は、水冷され、シートガラスSGの両側の領域R,Lを冷却する。側部冷却要素64,65は、シートガラスSGの両側の領域R,Lの表面と対向する位置に、流れ方向に沿って配置される。側部冷却要素64,65に含まれる各ユニットは、独立して制御可能である。
(2−5)引下げローラ(搬送ローラ)
引下げローラ81a〜81gは、冷却チャンバー80内に設けられ、フォーミングチャンバー30内を通過したシートガラスSGを、シートガラスSGの流れ方向へ引き下げ、シートガラスSGの搬送を行う。引下げローラ81a〜81gは、シートガラスSGを下方向に搬送する搬送装置を構成する。引下げローラ81a〜81gは、冷却チャンバー80の内部で、流れ方向に沿って間隔をあけて配置される。図3及び図4に示される例において、引下げローラ81a〜81gは、断熱部材80bによって仕切られた空間ごとに配置されている。なお、引下げローラ81a〜81gは、シートガラスSGの温度が徐冷点以下となる、冷却チャンバー80内の領域に配置されている。シートガラスSGの温度が徐冷点以下となる領域とは、シートガラスSGの中央領域の温度が徐冷点以下となる領域であり、シートガラスSGが徐冷点、歪点を経て、室温近傍の温度まで冷却される流れ方向に沿った冷却チャンバー80内の領域をいう。徐冷点は、粘度が1013ポワズとなるときの温度であり、ここでは、715.0℃である。図3及び図4に示す例において、シートガラスSGの温度が徐冷点となる位置は、搬送方向の最も上流側にある断熱部材80bと、引下げローラ81aとの搬送方向の間にある。
引下げローラ81a〜81gは、それぞれ、シートガラスSGの厚み方向両側(図3参照)、および、シートガラスSGの幅方向両側(図4参照)に配置されている。これにより、引下げローラ81a〜81gは、シートガラスSGの幅方向の両側の領域の、シートガラスSGの厚み方向の両側の表面に接触しながらシートガラスSGを下方に引き下げる。シートガラスSGの厚み方向両側に配置された引下げローラ81a〜81gは、対で動作し、対の引下げローラ81a,81a,・・・が、シートガラスSGを下方向に引き下げる。
引下げローラ81a〜81gは、引下げローラ駆動モータ391(図5参照)によって駆動される。また、引下げローラ81a〜81gは、それぞれ、上流側の部分がシートガラスSGに対して近づく方向に回転する。引下げローラ81a〜81gの周速度は、下流側に位置する引下げローラ程、大きい。すなわち、複数の引下げローラ81a〜81gのうち、引下げローラ81aの周速度が最も小さく、引下げローラ81gの周速度が最も大きい。
なお、引下げローラ81a〜81gの各対は、搬送工程において、制御装置500が、ローラ間の圧接力を計測する圧力センサ(図示せず)の計測結果に基づいて制御することにより、板厚方向に位置制御される。具体的に、引下げローラ81a〜81gの各対をなす一方のローラが他方のローラに対してシートガラスSGを挟んで一定の力で押圧するように、上記一方のローラの上記他方のローラに対する相対位置が制御される。
引下げローラ81a〜81gは高温のシートガラスSGを挟持するため、熱による変形を防ぐために、例えば、引下げローラ81a〜81gの内部に通された空冷管により空冷されている。引下げローラ81a〜81gがシートガラスSGを挟持した上記傾斜領域では、シートガラスSGの温度が低下(粘度が上昇)する。特に、シートガラスSGの中央領域の板厚を0.7mm以下、好ましくは0.4mm以下の薄板に成形しようとする場合、シートガラスSGの保有熱は小さく、シートガラスSGは、引下げローラ81a〜81gの影響を受けやすい。引下げローラ81a〜81gが挟持した傾斜領域の粘度が上昇すると、傾斜領域に隣接する他の領域との粘度差が生じ、歪等が発生する原因となる。このため、シートガラスSGの温度が幅方向に均一になるような温度プロファイルを実現することにより、引下げローラ81a〜81gが挟持した傾斜領域、及び、傾斜領域に隣接する領域において歪が発生するのを抑制する。
引下げローラ81a〜81gは、引下げローラ81a〜81gがシートガラスSGを挟持する位置(挟持位置)を調整するために、幅方向に移動できるよう構成されている。引下げローラ81a〜81gの挟持位置は、ガラス基板の製造方法を行う前に予め調整されるが、後述するように、ガラス基板の製造方法において調整されてもよい。
(2−6)ヒータ
ヒータ82(82a〜82g)は、冷却チャンバー80の内部に設けられ、冷却チャンバー80の内部空間の温度を調整する。具体的に、ヒータ82a〜82gは、シートガラスSGの流れ方向およびシートガラスSGの幅方向に複数配置される。図3及び図4に示す例では、シートガラスSGの流れ方向に、7つのヒータ82a〜82gが間隔をあけて配置され、断熱部材80bによって仕切られた空間ごとに配置されている。各空間に配置されたヒータは、例えば7つのヒータ要素(図示せず)がシートガラスの幅方向に並ぶよう配置されて構成される。7つのヒータ要素は、引下げローラ81a〜81gが挟持する傾斜領域を含む、シートガラスSGの中央領域CAと、シートガラスSGの両側の領域R,Lとをそれぞれ熱処理する。ヒータ82a〜82gは、後述する制御装置500によって出力が制御される。これにより、冷却チャンバー80内部を通過するシートガラスSGの近傍の雰囲気温度が制御され、シートガラスSGの温度制御が行われる。これによって、シートガラスSGの温度が搬送方向に沿って順次下がるよう、シートガラスSGは冷却される。この温度制御により、シートガラスSGは、粘性域から粘弾性域を経て弾性域へと推移する。冷却チャンバー80では、ヒータ82a〜82gの制御により、シートガラスSGの温度が、徐冷点近傍の温度から室温近傍の温度まで冷却される。
ヒータ要素は、制御装置500によって出力が独立して制御され、シートガラスSGにおいて、予め設計された温度プロファイルが実現されるよう、シートガラスSG近傍の雰囲気温度を調整する。
各ヒータ82a〜82gの近傍には、雰囲気温度を検出する手段として、例えば、熱電対380が設けられている。具体的には、複数の熱電対380が、シートガラスSGの流れ方向およびシートガラスSGの幅方向に間隔をあけて配置されている。熱電対380は、シートガラスSGの中心部Cの温度と、シートガラスSGの両側の領域R,Lの温度とをそれぞれ検出する。ヒータ82a〜82gの出力は、熱電対380によって検出される雰囲気温度に基づいて制御される。
(2−7)切断装置
切断装置90は、冷却チャンバー80内で室温近傍の温度まで冷却されたシートガラスSGを切断する。切断装置90は、具体的に、シートガラスSGに形成されたスクライブ線に沿って切断して端部及び境界領域を分離し、シートガラスSGの中央領域を所定長さに切断し、さらに、所定のサイズに切断する。切断装置90は、所定の時間間隔でシートガラスSGを切断する。これにより、シートガラスSGは、複数のガラス板になる。切断装置90は、切断装置駆動モータ392(図5を参照)によって駆動される。
(2−8)制御装置
制御装置500は、CPU、RAM、ROM、およびハードディスク等から構成されており、ガラス基板製造装置100の各部の制御を行う。図5は、一実施形態における制御装置500の構成の一例を示すブロック図である。
具体的には、図5に示すように、制御装置500は、ガラス基板製造装置100に含まれる各種のセンサ(例えば、熱電対380)やスイッチ(例えば、主電源スイッチ381)等による信号を受けて、冷却ユニット60、ヒータ82a〜82g、冷却ローラ駆動モータ390、引下げローラ駆動モータ391、切断装置駆動モータ392等の制御を行う。
(搬送工程)
図6は、搬送工程における引下げローラの挟持位置を説明する図である。図6には、シートガラスSGの幅方向の一方の側の領域Rの断面が示されている。以降の説明では、引下げローラ81a〜81gのうち、代表して引下げローラ81aに注目して説明するが、引下げローラ81b〜81gも引下げローラ81aと同様に挟持位置が調整される。なお、図6には、冷却ローラ51の挟持位置も合わせて示されている。
成形工程では、上述したように、中央領域CAと端部SPとの境界に位置する傾斜領域SAが形成される。傾斜領域SA及び端部SPを含む領域は、図示されるように、断面視した形状が球根状になっており、厚さの傾斜(勾配)の程度が幅方向に変化している。具体的には、中央領域CAの側から幅方向外側に進むに連れて、厚さの傾斜が大きくなった後、小さくなっている。傾斜領域SAの傾斜が0になった位置より幅方向外側の領域が、端部SPである。
傾斜領域SAは、シートガラスSGの厚さが幅方向外側に向かって厚くなるよう、厚さが傾斜した領域であり、幅方向に沿った厚さの勾配を有している。このような傾斜領域SAでは、引下げローラ81aと対向するシートガラスSGの位置(幅方向領域)に厚み差(偏差)が生じており、引下げローラ81aの幅方向の両端と対向するシートガラスSGの位置A、Bの間には厚み差が存在している。このため、傾斜領域SAでは、引下げローラ81aとシートガラスSGとの接触面積が小さく、シートガラスSGが引下げローラ81aから受ける圧接力が不均一になりやすい。この結果、シートガラスSGは、引下げローラ81aから局所的に大きい圧接力で挟持される。シートガラスSGは、冷却チャンバー80内では徐冷点近傍以下の温度まで冷却され、固くなっているため、引下げローラ81aの挟持位置によっては、傷が発生するおそれがある。このような傷がシートガラスSGにあると、下流側の工程で切断されたときに、傷が進展してシートガラスSGが割れるおそれがある。
本実施形態では、傾斜領域SAのうち、引下げローラ81aと対向するシートガラスSGの部分の厚さの傾斜が許容値より小さくなる領域内に調整された挟持位置において、引下げローラ81aはシートガラスSGを挟持する。上記した、引下げローラ81aと対向するシートガラスSGの部分の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域では、シートガラスSGの厚さの傾斜が小さいため、引下げローラ81aとシートガラスSGとの接触面積は、挟持位置が許容値以上となる領域にある場合と比べ大きく、シートガラスSGが引下げローラ81aから受ける圧接力の不均一さは緩和されたものとなる。このため、シートガラスSGが引下げローラ81aによって局所的に大きい圧接力で挟持されることが抑制され、シートガラスSGに傷が発生することが抑制される。なお、厚さの傾斜は、後述するように、例えば、引下げローラと対向するシートガラスSGの部分の厚み差で表される。また、引下げローラの挟持位置は、その少なくとも一部が傾斜領域内にあればよい。そのような態様には、引下げローラの幅方向外側の端が傾斜領域の幅方向内側の端に位置する態様も含まれる。
上述したように、傾斜領域SAは、通常、中央領域CAの側から幅方向外側に進むに連れて、厚さの傾斜の程度が大きくなっている。言い換えると、傾斜領域SAでは、中央領域CAに近づくに連れて、シートガラスSGの厚さの傾斜の程度は小さくなっている。このため、傾斜領域SAのうち、幅方向内側の位置に挟持位置が位置しているほど、シートガラスSGが引下げローラ81aから受ける圧接力の不均一さが大きく緩和され、傷の発生を抑制する効果が高くなる。このような領域内で引下げローラ81aがシートガラスSGを挟持するように、許容値は設定されている。
なお、傾斜領域SAには、引下げローラ81aの幅方向内側の端と対向する位置AでのシートガラスSGの厚さが、中央領域CAの厚さよりも大きい領域だけでなく、中央領域CAの厚さと等しく、かつ、引下げローラ81aの幅方向外側の端と対向する位置BでのシートガラスSGの厚さが中央領域CAの厚さより大きい領域も含まれる。
許容値は、具体的に、シートガラスSGの位置Aと位置Bとの厚み差(偏差)が所定値以下となるよう、中央領域CAの厚みに応じて定められた値であり、例えば、引下げローラ81aの幅方向長さの範囲における上記厚み差の値で表される。中央領域CAの厚みに応じた値である理由は、傾斜領域SAにおける厚み差の大きさは、中央領域CAの厚さに大きく依存し、互いに異なるシートガラスSGの同じ幅方向位置であっても、中央領域CAの厚さによって大きく変化するためである。なお、許容される位置A、Bの厚み差の大きさは、引下げローラ81aの幅(幅方向に沿った長さ)に依存するため、許容値は、上記厚み差の値の代わりに、厚み差を引下げローラ81aの幅で割り算した値が所定値以下となるよう、定められたものであってもよい。
ここで、図7には、一例として、中央領域CAの厚さと、位置A、BにおけるシートガラスSGの厚さとの関係をそれぞれ表すグラフが示されている。図7において、丸いプロットを通るグラフは、位置Aにおいて望ましいシートガラスSGの厚さの上限値を表し、四角いプロットのグラフは、位置Bにおいて望ましいシートガラスSGの厚さの上限値を表す。上限値は、中央領域CAの主表面を基準とした位置A,Bの板厚方向の高さを意味する。
このような関係を用いて、例えば、中央領域CAの厚さが0.7mmのシートガラスSGを製造する場合には、位置Aにおいて望ましい厚さの上限値30μmと、位置Bにおいて望ましい厚さの上限値100μmとの差70μmが、厚み差の許容値として設定される。すなわち、引下げローラ81aの挟持位置は、傾斜領域SAのうち、厚み差が70μm以下となる位置、図6に示す例において、許容値を表す線PLより幅方向内側に位置するよう調整される。このように挟持位置が調整されることで、線PLより幅方向外側においてシートガラスSGを挟持する場合と比べ、シートガラスSGが引下げローラ81aから受ける圧接力の不均一さが緩和され、シートガラスSGに傷が発生することが抑制される。引下げローラ81aの挟持位置は、少なくとも、引下げローラ81aと対向するシートガラスSGの部分の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に調整されていれば、当該部分の厚さが、上記した位置A及び位置Bの望ましい厚さの上限値(後述する許容厚さ)以下となる領域内に調整される必要はないが、後述するように、引下げローラ81aの挟持位置は、さらに、当該部分の厚さが、位置A及び位置Bの望ましい厚さの上限値以下となる領域内に調整されることが好ましい。
なお、位置A及び位置Bの望ましい厚さの上限値はそれぞれ、例えば、中央領域CAの厚さが0.6mmの場合、15μm、80μmであり、中央領域CAの厚さが0.5mmの場合、5μm、60μmであり、中央領域CAの厚さが0.4mmの場合、1μm、40μmであり、中央領域CAの厚さが0.3mmの場合、1μm未満、30μmであり、中央領域CAの厚さが0.2mmの場合、1μm未満、20μmであり、中央領域CAの厚さが0.1mmの場合、1μm未満、15μmである。
図7に示すような、中央領域CAの厚さと、位置A、BにおけるシートガラスSGの厚さとの関係は、実際に引下げローラで挟持して作製したシートガラスSGの傾斜領域SAを観察したときの傷の状況に基づいて、傾斜領域SAに傷が発生しない厚みを見出し、作成される。位置A、Bは、引下げローラ81aの幅方向長さによって定まる。引下げローラ81aの幅方向長さを例示すると、例えば、30〜150mmである。
引下げローラ81aの挟持位置の調整は、例えば、検査工程等で、傾斜領域SAにおける厚さの分布を測定により求めるとともに、求めた厚さの分布において、上記要領で設定した許容値を満たす領域内に挟持位置を定め、すなわち、シートガラスSGの厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内の位置を定め、定めた位置に引下げローラ81aを移動することにより行うことができる。厚さの分布の測定については、後述する。
引下げローラ81aの挟持位置は、引下げローラ81aと対向するシートガラスSGの部分の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内でも、厚さの傾斜がより小さくなる位置であることが好ましく、厚さの傾斜が最も小さくなる位置であることが好ましい。図6に示す例において、厚さの傾斜がより小さくなる位置は、線PLから幅方向内側に遠ざかる側にあり、位置Bが傾斜領域SAの幅方向内側の端に位置する場合に、厚さの傾斜が最も小さくなる。
また、引下げローラ81aの挟持位置は、上記した、引下げローラ81aと対向するシートガラスSGの部分の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内の位置であることに加え、位置A及び位置Bの少なくとも一方が、許容厚さ(上記した望ましい厚さの上限値)以下となる位置であることが好ましい。厚さが大きい領域では、例えばシートガラスSGが冷却ローラ51に挟持されて変形したことに起因して、傾斜の程度が変動している場合があり、シートガラスSGが引下げローラ81aから受ける圧接力が変動する場合があるためである。例えば、上記した、中央領域CAの厚さが0.7mmのシートガラスSGを製造する例において、位置Aでの厚さが30μm以下となる引下げローラ81aの幅方向内側の端の位置、及び、位置Bでの厚さが100μm以下となる引下げローラ81aの幅方向外側の端の位置、の少なくとも一方を満たす位置に、引下げローラ81aの挟持位置が調整されることが好ましい。また、引下げローラ81aの挟持位置は、上記した圧接力の変動を避けるために、冷却ローラ51の挟持位置よりも幅方向内側にあることが好ましい。
一方で、引下げローラ81aの挟持位置は、位置Bが、傾斜領域SAの幅方向内側の端、もしくは、この端より幅方向外側に位置するように設定される。位置Bが傾斜領域SAの幅方向内側の端を超えて幅方向内側に位置していると、シートガラスSGに対して幅方向外側への力をかけることができないため、シートガラスSGが引下げローラ81aとの間で滑り、シートガラスSGが撓む可能性があり、シートガラスSGに形状不良が発生する。また、位置Bが、上記端を過度に超えて幅方向内側に位置していると、切断工程における切断位置(スクライブ線Sが形成される位置)を位置Aよりも幅方向内側に設定する必要があることから、製品領域が小さくなってしまう。なお、スクライブ線Sは、図6に示す例のように、通常、中央領域CAと傾斜領域SAの境界よりやや幅方向内側に設定される。
引下げローラ81aの挟持位置は、冷却ローラ51が挟持したシートガラスSGの位置のうち幅方向内側の端の位置Qから、幅方向内側に所定以上の間隔L1をあけた位置に調整されていることが好ましい。
冷却ローラ51で挟持されたシートガラスSGの表面には、冷却ローラ51に圧接されることで凹凸が形成されている場合があるため、挟持位置が位置Qに近いと、シートガラスSGの厚さの傾斜の程度が大きく変化していることで、シートガラスSGが引下げローラ81aから受ける圧接力が安定しないおそれがある。
また、上述したように、傾斜領域SAは、通常、中央領域CAから幅方向外側に進むに連れ、厚さの傾斜が大きくなった後、小さくなる領域を有しているため、挟持位置が位置Qに近いと、シートガラスSGに対して幅方向外側への力を十分に作用させることができず、搬送中に、シートガラスSGが引下げローラ81aに対して滑るおそれがある。
このような理由から、間隔L1は、冷却ローラ51と、傾斜領域SAと中央領域CAとの境界との距離の50%以上の長さであることが好ましく、例えば20mm以上である。
同様の理由から、引下げローラ81aの挟持位置は、シートガラスSGの幅方向の端から、幅方向内側に所定以上の間隔L2をあけた位置に調整されていることが好ましい。間隔L2は、傾斜領域SA及び端部SPの長さの80%以上の長さであることが好ましく、例えば、30mm以上である。
なお、図3及び図4において、冷却ローラ51、引下げローラ81a〜81gは、図6に示す大きさと比べて大きく示されている。また、図3において、冷却ローラ51と引き下げローラ81a〜81gのシートガラスSGの挟持位置は、図6と異なって示されている。
ガラス基板の製造方法は、さらに、引下げローラ81aの挟持位置を調整する制御工程を有していることが好ましい。制御工程では、引下げローラ81aの挟持位置を、傾斜領域SAのうち、上記した、引下げローラ81aと対向するシートガラスSGの部分の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に調整する。制御工程では、具体的に、引下げローラ81aの挟持位置が調整されるよう、引下げローラ81aを幅方向に移動させる駆動装置(図示せず)を、制御装置500が制御する。
制御工程では、引下げローラ81aの挟持位置が、上記厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内にあるか否かを、例えば、一定の時間間隔で判定し、挟持位置が、上記した、厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内にあると判定した場合は、引下げローラ81aの挟持位置を変更せず、操業を継続するとともに、上記した、厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内にないと判定した場合は、制御装置500が駆動装置を制御して、上記した、厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に挟持位置が位置するよう、引下げローラ81aの幅方向位置を調整する。
このガラス基板の製造方法によれば、操業中にシートガラスSGの厚さの傾斜が変化し、引下げローラ81aの挟持位置が、厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域外にある場合に、挟持位置をフィードバック調整し、引下げローラ81aの挟持位置を、厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に調整することで、シートガラスSGが引下げローラ81aから受ける圧接力の不均一さを緩和し、シートガラスSGに傷が発生することを抑制することができる。
ガラス基板の製造方法は、上記制御工程を有している場合に、さらに、傾斜領域SAにおけるシートガラスSGの厚さの傾斜を測定する測定工程を有していることが好ましい。シートガラスSGの厚さの傾斜は、具体的に、傾斜領域SA内の幅方向に沿った複数箇所で測定したシートガラスSGの厚さと、各厚さと幅方向位置とを対応付けることで得ることができる。各幅方向位置でのシートガラスSGの厚さは、例えば、レーザ変位計などの測定装置(図示せず)を用いて測定される。測定装置は、制御装置500に接続され、一定の時間間隔で測定した厚さと幅方向位置の情報を、制御装置500に向けて出力するよう構成される。制御装置500は、測定装置から送られた情報のうち、厚さと幅方向位置の情報から、厚さの傾斜を取得し、取得した厚さの傾斜と、シートガラスSGの中央領域CAの厚さとを用いて、上記した判定を行う。制御装置500は、中央領域CAの厚さとして、操業前に予め設定された厚さを用いてもよく、操業中に、上記測定装置と同様の測定手段によって測定した中央領域CAの厚さを用いてもよい。なお、制御装置500は、中央領域CAの厚さに応じた許容値に関する情報を保持している。
このガラス基板の製造方法では、中央領域CAの厚さに基づいて、挟持位置のフィードバック調整を行うことで、特に、中央領域CAの厚さに起因して厚さの傾斜が変化した場合に、シートガラスSGが引下げローラ81aから受ける圧接力の不均一さを精度良く緩和することができる。
厚さの傾斜の許容値は、引下げローラ81a〜81gごとに設定されていることが好ましい。この場合、さらに、下流側に位置する引下げローラであるほど、許容値は小さい値に設定されていることが好ましい。シートガラスSGは、下流側に位置する部分であるほど、温度が低く硬いため、上流側に位置する部分と比べ、傷が付きやすく、割れが発生しやすい。しかし、上記したように、下流側に位置する引下げローラであるほど、厚さの傾斜の許容値が小さくなるよう設定されていると、下流側に位置する引下げローラであるほど、板厚の傾斜が小さいシートガラスSGの部分に挟持位置が調整されるため、シートガラスSGにかかる圧接力の不均一さが大きく緩和される。このように、引下げローラ81a〜81gごとに許容値を設定し、その大きさを規定することで、搬送方向の全体にわたって、シートガラスSGの両側の領域に傷が発生することを抑制できる。なお、上流側に位置するシートガラスSGの部分であるほど、温度が高く柔らかいので、引下げローラの挟持位置が、板厚の傾斜が大きいシートガラスSGの部分に位置していても、下流側に位置するシートガラスSGの部分と比べ、傷はつき難い。
本実施形態によれば、引下げローラ81aと対向するシートガラスSGの部分の厚さの傾斜が、許容値より小さくなる領域内に調整された挟持位置で、引下げローラ81aがシートガラスSGを挟持することで、許容値より小さくなる領域の外に挟持位置が位置する場合と比べ、シートガラスSGが引下げローラ81aから受ける圧接力の不均一さは緩和されたものとなる。このため、シートガラスSGが引下げローラ81aによって局所的に大きい圧接力で挟持されることが抑制され、シートガラスSGに傷が発生することが抑制される。
以上、本発明のガラス基板の製造方法およびガラス基板製造装置について詳細に説明したが、本発明の具体的な構成は、上記の実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
11 溶融装置
12 清澄装置
40 成形装置
41 成形体
51 冷却ローラ
60 冷却ユニット
81a〜81g 引下げローラ
82a〜82g ヒータ
90 切断装置
100 ガラス基板製造装置
500 制御装置

Claims (8)

  1. 溶融ガラスを、オーバーフローダウンドロー法を用いて成形し、ガラス板を形成する成形工程と、
    前記ガラス板の幅方向の両側の領域を、前記ガラス板の搬送方向に間隔をあけて配置された複数の対の搬送ローラで挟持しつつ、前記ガラス板を下方向に搬送する搬送工程と、を有し、
    前記成形工程では、前記両側の領域に、前記ガラス板の厚さが幅方向外側に向かって厚くなるよう、前記ガラス板の厚さが幅方向に傾斜した傾斜領域が形成され、
    前記搬送工程において前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記傾斜領域のうち、前記搬送ローラと対向する前記ガラス板の部分の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に調整されており、
    前記搬送ローラのうち、搬送方向の下流側に位置する搬送ローラであるほど、前記許容値は小さい値に設定されている、ことを特徴とするガラス基板の製造方法。
  2. 前記成形工程では、前記搬送ローラで前記ガラス板を挟持する前に、前記搬送ローラよりも搬送方向の上流側に配置された冷却ローラで前記ガラス板の前記両側の領域を挟持し、
    前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記冷却ローラが挟持した前記ガラス板の位置から幅方向内側に所定以上の間隔をあけた位置に調整されている、請求項1に記載のガラス基板の製造方法。
  3. さらに、前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置を調整する制御工程を有し、
    前記制御工程では、前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置を、前記傾斜領域のうち、前記搬送ローラと対向する前記ガラス板の部分の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に調整する、請求項1又は2に記載のガラス基板の製造方法。
  4. さらに、前記傾斜領域における前記ガラス板の前記部分の厚さの傾斜を測定する測定工程を有し、
    前記制御工程では、前記ガラス板の幅方向の中央領域の厚さ及び前記厚さの傾斜の測定結果に基づいて、前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置を調整する、請求項3に記載のガラス基板の製造方法。
  5. 前記制御工程では、前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置を、前記厚さの傾斜がさらに小さくなる領域内に調整する、請求項3又は4に記載のガラス基板の製造方法。
  6. 前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記ガラス板の幅方向の両端から幅方向内側に所定以上の間隔をあけた位置に調整されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  7. 前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記搬送ローラと対向する前記ガラス板の部分の厚さが許容厚さ以下となる領域内に調整されている、請求項1から3のいずれか1項に記載のガラス基板の製造方法。
  8. 溶融ガラスを、オーバーフローダウンドロー法を用いて成形し、ガラス板を形成する成形装置と、
    前記ガラス板の幅方向の両側の領域を、前記ガラス板の搬送方向に間隔をあけて配置された複数の対の搬送ローラで挟持しつつ、前記ガラス板を下方向に搬送する搬送装置と、を有し、
    前記成形装置は、前記両側の領域に、前記ガラス板の厚さが幅方向外側に向かって厚くなるよう、前記ガラス板の厚さが幅方向に傾斜した傾斜領域を形成し、
    前記搬送ローラが前記ガラス板を挟持する位置は、前記傾斜領域のうち、前記搬送ローラと対向する前記ガラス板の部分の厚さの傾斜が許容値よりも小さくなる領域内に調整されており、
    前記搬送ローラのうち、搬送方向の下流側に位置する搬送ローラであるほど、前記許容値は小さい値に設定されている、ことを特徴とするガラス基板製造装置。
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