JP6711717B2 - 光学積層ロール及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、光学積層ロール及びその製造方法に関する。
従来、画像表示装置として液晶表示装置が知られている。液晶表示装置では、バックライトから出射された照明光を液晶パネルの裏面側から入射し、液晶パネルにより変調された光を液晶パネルの表面側から出射することによって、画像を表示することが可能である。
液晶表示装置は、液晶パネルと、液晶パネルの両面に配置された一対の偏光板とを有している。一対の偏光板としては、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムを延伸させた延伸フィルムに、ヨウ素等の二色性色素を吸着配向させた偏光フィルム(吸収型偏光子)が一般的に用いられている。しかしながら、このような偏光フィルムでは、透過軸方向に偏光した光を透過し、透過軸と直交する方向(吸収軸方向)に偏光した光の殆どを吸収するため、バックライトから出射された照明光の約50%が利用されなくなってしまう。
そこで、最近では、バックライトから出射された照明光の利用効率を高めるため、液晶パネルの裏面側に配置される偏光板について、偏光フィルムに粘着剤を介して反射型偏光子を積層したものが用いられている(例えば、特許文献1を参照。)。反射型偏光子は、上述した偏光フィルムの透過軸と直交する方向に反射軸を有する反射型偏光子であり、透過軸方向に偏光した光を透過し、吸収軸方向に偏光した光をバックライト側へと反射する機能を有している。これにより、吸収軸方向に偏光した光は、バックライト側で反射された後、透過軸方向に偏光した光に変換されてから偏光フィルムに入射するため、偏光フィルムに吸収されることなく、再利用することが可能である。
特開2016−85444号公報
ところで、上述した偏光フィルムと反射型偏光子とが積層された偏光板を製造する際は、これら偏光フィルムと反射型偏光子との透過軸を互いに一致させておく必要がある。
しかしながら、現状の偏光板の製造方法では、長手方向に透過軸を有する長尺帯状の偏光フィルムに対して、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の反射型偏光子を、いわゆるロール・トゥ・ロール方式により連続的に貼合することはできない。このため、反射型偏光子を所定の大きさにカットした後、互いの透過軸を一致させた状態で偏光フィルムに対して反射型偏光子を貼合する、いわゆる枚葉(バッチ)方式による偏光板の製造が行われている。
一方、偏光板のロール原反として、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の偏光フィルムと、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の反射型偏光子とを積層した光学積層ロールをロール・トゥ・ロール方式で連続的に製造することができれば、偏光板の製造工程の削減だけでなく、偏光板の製造コストを大幅に下げることが可能である。
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、偏光フィルムと反射型偏光子とが積層された偏光板のロール原反をロール・トゥ・ロール方式を用いて効率良く製造することが可能な光学積層ロール及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための手段として、本発明の一態様に従えば、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の偏光フィルムを含む光学フィルムと、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の反射型偏光子とがエネルギー線硬化型接着剤の硬化物を介して積層され、前記反射型偏光子は、280〜320nmの波長域において平均透過率が4%以上であることを特徴とする光学積層ロールが提供される。
また、本発明の一態様において、前記光学フィルムは、前記偏光フィルムの片面又は両面に積層された熱可塑性フィルムを含む構成であってもよい。
また、本発明の一態様において、前記偏光フィルム又は前記光学フィルムの厚みが10μm以上である構成であってもよい。
また、本発明の一態様において、前記熱可塑性フィルムを含む光学フィルムの表面粗さ(Ra)が1000nm以下である構成であってもよい。
また、本発明の一態様に従えば、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の偏光フィルムを含む光学フィルムと、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の反射型偏光子とをエネルギー線硬化型接着剤を介して貼合する工程と、前記反射型偏光子側から、少なくとも280〜320nmの波長域の光を含むエネルギー線を照射することによって、前記エネルギー線硬化型接着剤を硬化させる工程とを含み、前記反射型偏光子は、280〜320nmの波長域において平均透過率が4%以上であることを特徴とする光学積層ロールの製造方法が提供される。
また、本発明の一態様において、前記エネルギー線の照射量が1000〜2000mJ/cmである方法であってもよい。
以上のように、本発明の一態様によれば、偏光フィルムと反射型偏光子とが積層された偏光板のロール原反をロール・トゥ・ロール方式を用いて効率良く製造することが可能な光学積層ロール及びその製造方法を提供することが可能である。
本発明の一実施形態に係る光学積層ロールの構成を示す断面図である。 図1に示す光学積層ロールの製造工程を説明するための斜視図である。 図1に示す光学積層ロールの製造工程を説明するための図であり、貼合後の光学積層ロールに対してUV光を照射する状態を示す断面図である。 反射型偏光子に照射されるUV光の波長と透過率との関係を示す特性図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
なお、以下の説明で用いる図面では、各構成要素を見やすくするため、構成要素を模式的に示している場合があり、構成要素によっては寸法の縮尺を異ならせて示すこともある。
(光学積層ロール)
先ず、本発明の一実施形態として、例えば図1に示す光学積層ロール1について説明する。なお、図1は、光学積層ロール1の構成を示す断面図である。
光学積層ロール1は、図1に示すように、偏光板のロール原反として、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の偏光フィルム2と、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の反射型偏光子3とが接着剤層4を介して積層された構造を有している。
偏光フィルム2は、吸収型偏光子であればよく、吸収型偏光素子としては、通常、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムに、ヨウ素等の二色性色素が吸着配向されたものが使用されるが、これに必ずしも限定されるものではない。PVA系樹脂は、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。
ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニル及び酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合される他の単量体としては、不飽和カルボン酸、オレフィン、ビニルエーテル、不飽和スルホン酸、アンモニウム基を有するアクリルアミドなどが挙げられる。
PVA系樹脂のケン化度は、通常85〜100モル%、好ましくは98モル%以上である。PVA系樹脂は、さらに変性されていてもよく、アルデヒドで変性されたポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用し得る。
また、PVA系樹脂の重合度は、通常1,000〜10,000、好ましくは 1,500〜 5,000である。具体的なPVA系樹脂や二色性色素としては、例えば特開2012−159778号公報に例示されているPVA系樹脂や二色性色素が挙げられる。
偏光フィルム2の製造方法は、特に限定されるものでなく、公知の方法で製造することができる。具体的に、偏光フィルム2は、例えば、PVA系樹脂フィルムを一軸延伸する工程で延伸し、PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色してその二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたPVA系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、このホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程、及び乾燥工程を経て製造される。偏光フィルム2は、製造ラインにおいて、長尺帯状のPVA系樹脂フィルムを流すことで、連続的に製造することができる。
また、偏光フィルム2は、例えば特開2012−159778号公報に記載されている方法で製造されてもよい。この方法では、基材フィルムにPVA系樹脂をコーティングすることで、吸収型偏光子となるPVA系樹脂フィルムを形成することができる。また、偏光フィルム2は、例えば特開2013−33249号公報に記載される、二色性色素と重合性液晶とを含む組成物を塗布して得られるフィルムであってもよい。
偏光フィルム2は、その片面又は両面に保護フィルムが積層されていない状態で、その厚みが30μm以下であることが好ましく、更に15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。
また、偏光フィルム2は、その片面又は両面に保護フィルムとして、熱可塑性フィルムが積層された構成(以下、光学フィルムという。)としてもよい。熱可塑性樹脂フィルムとしては、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンンのようなポリオレフィン系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂などからなるものを用いることができる。その中でも、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂から形成された熱可塑性樹脂フィルムを用いることが好ましい。なお、ここで言う(メタ)アクリレートとは、メタクリレート又はアクリレートのどちらでもよいことを指し、その他、(メタ)アクリル酸と言うときの「(メタ)」も同様である。
また、熱可塑性樹脂フィルムには、市販品を適宜使用することができる。セルロース系樹脂フィルムの市販品としては、富士フィルム株式会社製の“フジタック(登録商標) TD80”、“フジタック(登録商標) TD80UF”及び“フジタック(登録商標) TD80UZ”、コニカミノルタ株式会社製の“KC2UAW”、“KC8UX2M”、“KC8UY”などが挙げられる。
ポリエステル系樹脂フィルムの市販品としては、三菱樹脂株式会社製の“ダイアホイル(登録商標)”、東レ株式会社製の“ルミラー(登録商標)”、東洋紡株式会社製の“コスモシャイン(登録商標)”などが挙げられる。
(メタ)アクリル系樹脂フィルムの市販品としては、住友化学株式会社製の“テクノロイ(登録商標)”、三菱レイヨン株式会社製の“アクリプレン(登録商標)”などが挙げられる。
ポリカーボネート系樹脂フィルムの市販品としては、帝人株式会社製の“パンライト(登録商標)”などが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、Topas Advanced Polymers GmbH社製で、ポリプラスチックス株式会社から販売されている“Topas”、JSR株式会社から販売されている“アートン”(ARTON )(登録商標)、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノア(ZEONOR)(登録商標)”、“ゼオネックス(ZEONEX)(登録商標)”、三井化学株式会社から販売されている“アペル”(登録商標)(以上、いずれも商品名)などが挙げられ、上記樹脂からフィルムを作製することができる。
また、市販のポリオレフィン系樹脂フィルムを使用してもよく、例えば、JSR株式会社から販売されている“アートンフィルム”(「アートン」は同社の登録商標)、積水化学工業株式会社から販売されている“エスシーナ”(登録商標)、日本ゼオン株式会社から販売されている“ゼオノアフィルム”(登録商標)などが挙げられる。
偏光フィルム(又は光学フィルム)2の厚みは、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは20〜100μmである。偏光フィルム(又は光学フィルム)2の厚みが薄過ぎると、接着剤層4を硬化させたときに、反射型偏光子3の表面に微細な凹凸、ひいては目視可能な皺等が発生し易くなる。
反射型偏光子3における偏光フィルム(又は光学フィルム)2側とは反対側の表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)は、300nm以下であることが好ましい。例えば、偏光フィルム(又は光学フィルム)2の厚みを、10μm以上とすることでRaを上記範囲とすることができる。これにより、反射型偏光子3の表面に発生する微細な凹凸を低減し、より平滑な面を形成することが可能である。また、光が屈曲して出射されるのを防ぐことができるので、液晶表示装置にムラをより生じにくくすることができる。
なお、本発明における算術平均粗さ(Ra)は、JIS B 0601−2013に準拠して測定されたものである。Raが大きいものは表面の凹凸が多い及び/又は大きいものであると言うことができる。Raは通常、各素点の平均高さからの高低差を求めて計算されるため、長さ(主にnm)を単位とする統計値である。Raは、例えば、有限会社センソファージャパンから販売されているPLμ2300等の共焦点顕微鏡にて表面画像を得た後、これを付属のソフトウェアを用いて統計処理を実施することで簡便に得ることができる。
反射型偏光子3は、上述した偏光フィルム2の透過軸と直交する方向に反射軸を有し、偏光フィルム2の透過軸方向に偏光した光を透過し、偏光フィルム2の吸収軸方向に偏光した光を反射する機能を有している。反射型偏光子3の偏光度は、85%以上であることが好ましく、更に90%以上であってもよい。
反射型偏光子3としては、グリッド型偏光フィルム、屈折率差を有する2種以上の材料による2層以上の多層薄膜積層体、ビームスプリッターなどに使用される屈折率の異なる蒸着多層薄膜、複屈折を有する2種以上の材料による2層以上の複屈折層多層薄膜積層体、複屈折を有する2種以上の樹脂を使用した2層以上の樹脂積層体を延伸したフィルム、直線偏光を直交する軸方向で反射/透過することで偏光方向を分離するフィルムなどが挙げられる。反射型偏光子3として、延伸フィルムを使用する場合、長手方向に延伸をすることにより、幅方向に透過軸を付与することができる。
反射型偏光子3を構成する多層薄膜積層体は、第1の光学材料層と第2の光学材料層とが厚み方向に交互に積層された構成を有している。
第1の光学材料層及び第2の光学材料層の具体的な材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びその異性体(例えば、1,4−PEN、1,5−PEN、2,7―PEN及び2,3−PEN等)、並びに、ポリアルキレンテレフタレート(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、メタクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂(ポリスチレン、ポリプロピレン等)、環状ポリオレフィン樹脂などを挙げることができる。
また、第1の光学材料層及び第2の光学材料層の具体的な材料としては、PENの共重合体、ポリアルカンテレフタレートの共重合体又はスチレン共重合体であってもよい。PENの共重合体の具体例としては、2,6−,1,4−,1,5−,2,7−及び2,3−ナフタレンジカルボン酸又はそのエステルと、a)テレフタル酸又はそのエステル、b)イソフタル酸又はそのエステル、c)フタル酸又はそのエステル、d)アルカングリコール、e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノール)、又は、f)アルカンジカルボキシル酸(例えば、シクロヘキサンジカルボキシル酸)との共重合体を挙げることができる。
ポリアルカンテレフタレートの共重合体の具体例としては、テレフタル酸又はそのエステルと、a)ナフタレンジカルボン酸又はそのエステル、b)イソフタル酸又はそのエステル、c)フタル酸又はそのエステル、d)アルカングリコール、e)シクロアルカングリコール(例えば、シクロヘキサンジメタノール)、f)アルカンジカルボン酸、及び/又は、g)シクロアルケンジカルボン酸(例えば、シクロヘキサンジカルボン酸)との共重合体を挙げることができる。
スチレン共重合体の具体例としては、スチレンーブタジエン共重合体及びスチレンーアクリロニトリル共重合体である。更に、第1及び第2の光学材料層の材料として、ABS樹脂(アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂)、MS樹脂(メタクリル酸メチルースチレン共重合体樹脂)を挙げることができる。
さらに、第1の光学材料層及び第2の光学材料層の各層は、例示した高分子又は高分子共重合体の2つ以上の混合物であってもよい。また、例示した材料は、吸光係数が小さく、吸収による損失が小さい点からも好ましい。市販の反射型偏光子としては、3M社製の“DBEF”(登録商標)、“APF‐V3”(製品名)及び“APF‐V2”(製品名)等が挙げられる。
反射型偏光子3の厚みは、通常、5〜100μmであり、好ましくは10〜50μmであり、より好ましくは10〜30μmである。
反射型偏光子3は、280〜320nmの波長域において平均透過率が4%以上であることが好ましい。延伸前の多層体の各層の厚み調整、延伸工程後の各層の厚み(延伸条件の調整)、及び材料の屈折率調節により、280〜320nmの波長域における平均透過率を4%以上とすることができる。280〜320nmの波長域における平均透過率の上限値は、特に限定されないが、通常50%以下である。なお、本発明において、280〜320nmの波長域における平均透過率は、非偏光を入射して測定をした値を言う。
接着剤層4は、活性エネルギー線を照射することによって硬化するエネルギー線硬化型接着剤の硬化物であり、エネルギー線硬化型接着剤としては、活性エネルギー線として紫外線(UV)光を照射することによって硬化する光硬化性接着剤(UV接着剤)を好適に用いている。
光硬化性接着剤としては、光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤との混合物などを挙げることができる。光硬化性エポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂、脂環式構造を有さないエポキシ樹脂、及びそれらの混合物などが挙げられる。また、光硬化性接着剤として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキタセン樹脂、ウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などにラジカル重合型開始剤及び/又はカチオン重合型開始剤を加えた接着剤も使用することができる。
光硬化性接着剤は、UV光(活性エネルギー線)を照射することによって硬化される。活性エネルギー線の光源としては、波長400nm以下、より好ましくは280〜320nmの波長域に発光分布を有するものを好適に用いることができる。具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることが好ましい。
光硬化性接着剤への光照射の強度は、この光硬化性接着剤の組成によって適宜決定されるが、光カチオン重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が0.1〜6,000mW/cmであることが好ましい。照射強度が0.1mW/cm以上である場合、反応時間が長くなりすぎず、6,000mW/cm以下である場合、光源から輻射される熱及び光硬化性接着剤の硬化時の発熱によるエポキシ樹脂の黄変や偏光板の劣化を生じる恐れが少ないという点で好ましい。
光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化させる光硬化性接着剤ごとに制御されるものであるが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量(以下、照射量という。)については、10〜10,000mJ/cm、好ましくは100〜5000mJ/cmとなるように、より好ましくは500〜2000mJ/cmとなるように設定されることが好ましい。光硬化性接着剤への積算光量が10mJ/cm以上である場合、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応をより確実に進行させることができ、10,000mJ/cm以下である場合、照射時間が長くなりすぎず、良好な生産性を維持できるという点で好ましい。
活性エネルギー線照射後の接着剤層4の厚みは、通常0.001〜5μmであり、好ましくは0.01μm以上、3μm以下である。
(光学積層ロールの製造方法)
次に、上記光学積層ロール1の製造方法について、図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は、光学積層ロール1の製造工程を説明するための斜視図である。図3は、光学積層ロール1の製造工程を説明するための図であり、貼合後の光学積層ロール1に対してUV光Lを照射する状態を示す断面図である。
上記光学積層ロール1を製造する際は、図2に示すような製造装置を用いて、幅方向W1に透過軸を有する長尺帯状の偏光フィルム(又は光学フィルム)2と、幅方向W2に透過軸を有する長尺帯状の反射型偏光子3とを接着剤層4を介して積層した光学積層ロール1をロール・トゥ・ロール方式で連続的に製造する。
具体的に、図2に示す製造装置では、偏光フィルム2のロール原反2Aから巻き出された長尺帯状の偏光フィルム2と、反射型偏光子3のロール原反2Aから巻き出された長尺帯状の反射型偏光子3とが、一対のニップロール10a,10bの間を通過する。一対の第5のニップロール10a,10bは、互いに逆向きに回転しながら、その間に挟み込まれた偏光フィルム2と反射型偏光子3とを圧着させる。
偏光フィルム2と反射型偏光子3との互いに対向する面の何れか一方又は両方には、上記接着剤層4となる接着剤(図示せず。)が塗布される。接着剤の塗布方法は、必要量の接着剤を均一に塗布できる方法を採用すればよい。具体的には、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーターなどの各種の塗工方式を採用することができる。
偏光フィルム2と反射型偏光子3とは、図3に示すように、一対のニップロール10a,10bの間を通過することで、未硬化の接着剤層4を介して貼合された状態となる。
次に、この製造装置では、偏光フィルム2と反射型偏光子3とが未硬化の接着剤層4を介して貼合された後に、反射型偏光子3側から、少なくとも280〜320nmの波長域の光を含むUV光(エネルギー線)Lを照射することによって、接着剤層4を硬化させる。これにより、上記光学積層ロール1を連続的に製造することができる。
ところで、本実施形態の光学積層ロール1では、反射型偏光子3のUV光Lに対する平均透過率が4%以上であり、UV光Lの透過性が高いため、この反射型偏光子3側から照射されたUV光Lによって、接着剤層4を効率良く硬化させることが可能である。
これにより、UV光Lの照射量を下げると共に、UV光Lの照射時間を短くすることができ、UV光Lの照射によって光学積層ロール1に皺等が発生することを未然に防ぐことが可能である。特に、280〜320nmの波長域における平均透過率が反射型偏光子3よりも低い(例えば4%未満)保護フィルムが偏光フィルム2に貼合されている場合に、本発明はより効果的である。
以上のように、本実施形態によれば、偏光板のロール原反となる光学積層ロール1をロール・トゥ・ロール方式を用いて効率良く製造することが可能である。これにより、偏光板の製造工程の削減だけでなく、偏光板の製造コストを大幅に下げることが可能である。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
本実施例では、実際に反射型偏光子(フィルムAという。)と偏光フィルム(又は光学フィルム)(フィルムBという。)との種類を変えながら、これらフィルムAとフィルムBとをエネルギー線硬化型接着剤の硬化物を介して積層し、その評価を行った。なお、フィルムBとして吸収型偏光子に保護フィルムが積層された光学フィルムを使用したものについては、吸収型偏光子がフィルムAとの貼合面となるように積層した。以下、実施例1〜6及び比較例1,2について、まとめたものを表1に示す。
〔エネルギー線硬化型接着剤〕
フィルムAとフィルムBとの積層には、以下の組成のエネルギー線硬化型接着剤を使用した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル 3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:70部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル:20部
2−エチルヘキシルグリシジルエーテル:10部
トリアリールスルホニウム ヘキサフルオロホスフェート系の光カチオン重合開始剤:2.25部
<フィルムAの作製>
(実施例1,3,4,5,6)
実施例1,3,4,5,6のフィルムA(A−1)については、以下のように作製した。
先ず、熱可塑性樹脂A,Bとして、以下のものを準備した。
熱可塑性樹脂A:ナフタレン2,6−ジカルボン酸ジメチルエステルとエチレングリコールを常法により重縮合して得たポリエチレンナフタレート( 屈折率は1.65)。
熱可塑性樹脂B:テレフタル酸を30モル%共重合したポリエチレンナフタレート(屈折率は1.65)。
また、事前に熱示差走査計を用いてポリマーの熱測定を行い、熱可塑性樹脂Aが結晶性であり、熱可塑性樹脂Bが非晶性であることを確認した。
次に、熱可塑性樹脂A,Bをそれぞれ2台の単軸押出機に投入し、300℃で溶融させながら混練した。その後、それぞれFSSタイプのリーフディスクフィルタを5枚介した後、ギアポンプにて、フィルムの厚膜層を除いた積層比が熱可塑性樹脂A/熱可塑性樹脂B=1/1になるように計量しながら、スリット数301個のスリット板を2枚、303個のスリット板1枚の計3枚用いた構成である903層を積層装置にて合流させて、厚み方向に交互に903層積層された積層体とした。
次に、この積層体をTダイに供給し、シート状に成形した後、ワイヤーで8kVの静電印可電圧をかけながら、表面温度が25℃に保たれたキャスティングドラム上で急冷固化し、未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、縦延伸機で140℃、5.0倍縦延伸した後、70℃の中間冷却を経て、160℃の熱処理を施し、幅方向に透過軸を有する厚み34μmの積層フィルムを作製した。なお、得られた積層フィルムの光学特性及び透過スペクトルは、表1及び図4に示すとおりである。
(実施例2)
実施例2のフィルムA(A−2)は、縦延伸を4.6倍とした以外は、実施例1のフィルムAと同様にして、幅方向に透過軸を有する厚み36μmの積層フィルムを作製した。
(比較例1)
比較例1のフィルムAは、厚み26μmの3M製の輝度向上フィルム(APF−V3)を使用した。
(比較例2)
比較例2のフィルムAは、厚み96μmの3M製の輝度向上フィルム(DBEF−Q)を使用した。
<フィルムBの作製>
(実施例1,2)
実施例1,2のフィルムBは、下記の偏光フィルム(P−1)と熱可塑性フィルム(C−1)とを水系接着剤を介して貼合して作製した。得られたフィルムの厚みは20μmであった。
(実施例3)
実施例3のフィルムBは、下記の偏光フィルム(P−1)と熱可塑性フィルム(T−1)とを水系接着剤を介して貼合して作製した。得られたフィルムの厚みは27μmであった。
(実施例4、比較例1,2)
実施例4及び比較例1,2のフィルムBは、下記の偏光フィルム(P−3)と熱可塑性フィルム(T−2)とを水系接着剤を介して貼合して作製した。得られたフィルムの厚みは68μmであった。
(実施例5)
実施例5のフィルムBは、下記の偏光フィルム(P−1)を使用した。
(実施例6)
実施例6のフィルムBは、下記の偏光フィルム(P−2)を使用した。
〔P−1〕
厚み20μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を乾式延伸により約5倍に縦一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100である28℃の水溶液に60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100である72℃の水溶液に300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥処理を行って、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚み7μmの偏光フィルムP−1を作製した。偏光フィルムP−1は、幅方向に透過軸を有していた。
〔P−2〕
厚み30μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約4倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、40℃の純水に40秒間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.04/5.7/100の水溶液に28℃で30秒間浸漬して染色処理を行った。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が11.0/6.2/100の水溶液に70℃で120秒間浸漬した。引き続き、8℃の純水で15秒間洗浄した後、60℃で乾燥して、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚み12μmの偏光フィルムP−2を作製した。偏光フィルムP−2は、幅方向に透過軸を有していた。
〔P−3〕
厚み75μmのポリビニルアルコールフィルム(平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上)を、乾式延伸により約5倍に一軸延伸し、さらに緊張状態を保ったまま、60℃の純水に1分間浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.05/5/100である28℃の水溶液に60秒間浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が8.5/8.5/100である72℃の水溶液に300秒間浸漬した。引き続き26℃の純水で20秒間洗浄した後、65℃で乾燥し、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素が吸着配向している厚み28μmの偏光フィルムP−3を作製した。偏光フィルムP−3は、幅方向に透過軸を有していた。
〔C−1〕
熱可塑性樹脂フィルムC−1として、厚み13μmの日本ゼオン株式会社製の環状ポリオレフィン系樹脂フィルム(ZF14)を用意した。
〔T−1〕
熱可塑性樹脂フィルムT−1として、厚み20μmのコニカミノルタ株式会社製のセルロースエステルフィルム(KC2CT)を用意した。
〔T−2〕
熱可塑性樹脂フィルムT−2として、厚み40μmのコニカミノルタ株式会社製のセルロースエステルフィルム(KC4UY)を用意した。
〔水系接着剤〕
水系接着剤として、水100重量部に、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール〔日本合成化学工業株式会社製の商品名“ゴーセファイマー(登録商標)Z−200”〕2重量部、グリオキシル酸ナトリウム〔日本合成化学工業株式会社製の商品名“SPM−01”〕2重量部を溶解させることによって、ポリビニルアルコール系接着剤を調製した。
Figure 0006711717
表1には、実施例1〜6及び比較例1,2の各フィルムAの種類と、各々の厚み[μm]と、各々の偏光度[%]と、各々の波長280〜320nmにおける透過率[%]とを示している。また、実施例1〜6及び比較例1,2の各フィルムAの種類と、各々の厚み[μm]とを示している。
また、比較例1,2のフィルムAについては、長手方向に透過軸を有するため、ロール・トゥ・ロール(RtR)方式による製造を行うことができないので、枚葉(バッチ)方式による製造を行った(×)。実施例1〜6のフィルムAについては、幅方向に透過軸を有するため、ロール・トゥ・ロール(RtR)方式による製造を行った(○)。
また、実施例1〜6及び比較例1,2について、UV光の照射量を1500mJ/cmとした場合の反射型偏光子の表面における皺の発生の有無(○/×)と、接着剤の硬化状態(○/×)について目視で検査した。UV光の照射量を1500mJ/cmとした場合、実施例1〜6及び比較例1〜2において皺は確認されなかったが、比較例1においては、接着剤の硬化不良が観察された。一方、UV光の照射量を5000mJ/cmとした場合に同様の検査をしたところ、実施例1〜6及び比較例1〜2において接着剤の硬化は良好であったものの、実施例1〜6及び比較例1において皺が観察された。
ここで、実施例1,2及び比較例1,2のフィルムAについて、UV光の波長に対する透過率を測定した結果を図4に示す。図4に示すように、実施例1,2のフィルムAは、比較例1のフィルムAに比べて、波長280〜320nmの波長域における透過率が高くなっていることがわかる。また、実施例1,2のフィルムAは、比較例2のフィルムAに比べて薄型であるため皺が生じやすいものと推定されるが、適切なUV照射量を選ぶことで、フィルムAに生じ得る皺の低減と、接着剤の十分な硬化とを両立させることができる。
さらに、UV光の照射量を1500mJ/cmとした場合について、フィルムAの表面粗さ(Ra:中心線平均粗さ)[nm]を測定した。その結果、フィルムBの厚みが10μm以上である実施例1〜4,6及び比較例1については、表面粗さRaが低いことがわかった。一方、フィルムBの厚みが10μm未満である実施例5については、表面粗さRaが高くなっている。
以上のように、実施例1〜6では、ロール・トゥ・ロール(RtR)方式により光学積層ロールの製造効率を高めることが可能である。
1…光学積層ロール 2…偏光フィルム 3…反射型偏光子 4…接着剤層 L…UV光

Claims (6)

  1. 幅方向に透過軸を有する長尺帯状の偏光フィルムを含む光学フィルムと、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の反射型偏光子とがエネルギー線硬化型接着剤の硬化物を介して積層され、
    前記反射型偏光子は、280〜320nmの波長域において平均透過率が4%以上であり、且つ、複屈折を有する2種以上の樹脂を使用した2層以上の樹脂積層体を延伸したフィルムであることを特徴とする光学積層ロール。
  2. 前記光学フィルムは、前記偏光フィルムの片面又は両面に積層された熱可塑性フィルムを含むことを特徴とする請求項1に記載の光学積層ロール。
  3. 前記偏光フィルム又は前記光学フィルムの厚みが10μm以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学積層ロール。
  4. 前記熱可塑性フィルムを含む光学フィルムの表面粗さ(Ra)が1000nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の光学積層ロール。
  5. 複屈折を有する2種以上の樹脂を使用した2層以上の樹脂積層体を長手方向に延伸することにより、幅方向に透過軸を有する長尺帯状の反射型偏光子を得る工程と、
    幅方向に透過軸を有する長尺帯状の偏光フィルムを含む光学フィルムと、前記反射型偏光子とをエネルギー線硬化型接着剤を介して貼合する工程と、
    前記反射型偏光子側から、少なくとも280〜320nmの波長域の光を含むエネルギー線を照射することによって、前記エネルギー線硬化型接着剤を硬化させる工程とを含み、
    前記反射型偏光子は、280〜320nmの波長域において平均透過率が4%以上であり、
    前記反射型偏光子を得る工程と、前記貼合する工程と、前記硬化させる工程とを、ロール・トゥ・ロール方式で連続的に行うことを特徴とする光学積層ロールの製造方法。
  6. 前記エネルギー線の照射量が1000〜2000mJ/cmであることを特徴とする請求項5に記載の光学積層ロールの製造方法。
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