以下、図面を参照しながら、各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1は、本実施形態のスクロール圧縮機1の断面図である。この図1に示すスクロール圧縮機1(以下、単に圧縮機1と呼ぶ)は、冷凍サイクルの一部を構成している。すなわち、本実施形態の圧縮機1は、冷凍サイクルに循環する流体である冷媒を吸入し、その吸入した冷媒を圧縮してから吐出する。
また、その冷凍サイクルは2段圧縮サイクルとして構成されているので、中間圧の冷媒が圧縮機1にてインジェクションされる。中間圧とは、冷凍サイクルにおける最低の冷媒圧力よりも高く且つ冷凍サイクルにおける最高の冷媒圧力よりも低い圧力である。この冷凍サイクルに循環する冷媒は、例えば二酸化炭素(すなわち、CO2)である。例えば、この冷凍サイクルは給湯システムの一部を構成する。
図1に示すように、本実施形態の圧縮機1はスクロール式の電動圧縮機である。圧縮機1は、冷媒を圧縮する圧縮機構部10と、圧縮機構部10を駆動する電動機部20とを上下方向(言い換えれば、縦方向)に配置した縦置きタイプになっている。圧縮機1は、圧縮機構部10、電動機部20、およびハウジング30等を備えている。なお、図1の矢印DR1は、圧縮機1の上下方向DR1を示している。
ハウジング30は、圧縮機1の外殻を成し気密に構成された密閉容器である。ハウジング30は、大まかには両端が塞がれた円筒形状を成しており、上下方向DR1を軸方向とした筒状部材31と、その筒状部材31の上側に設けられた蓋部材32と、筒状部材31の下側に設けられた底部材33とから構成されている。そして、ハウジング30は、そのハウジング30内に、圧縮機構部10および電動機部20を収容している。
電動機部20は、固定子をなすステータ21と、そのステータ21の内側に配置され回転子をなすロータ22とを有している。ステータ21は、ステータコアとそのステータコアに巻き付けられたステータコイルとを有している。
また、ロータ22の内側には駆動軸25が挿通され、駆動軸25はロータ22に対し相対回転不能に連結されている。そのため、電動機部20は、給電端子23を介して電力の供給を受けると、それにより、圧縮機軸心C1まわりに駆動軸25とロータ22とを一体に回転させる。その圧縮機軸心C1は、上下方向DR1に延びる一軸心C1である。すなわち、本実施形態では、圧縮機軸心C1の軸方向DRaは上下方向DR1に一致する。以下の説明では、圧縮機軸心C1の軸方向DRaを圧縮機軸方向DRaとも呼ぶ。
駆動軸25は、ロータ挿通軸部251と鍔部252と下端部253とを有している。このロータ挿通軸部251と鍔部252と下端部253は一体構成となっている。ロータ挿通軸部251は、圧縮機軸心C1を中心軸線として有する回転軸であり、ロータ22の内側に挿通されている。その一方で、鍔部252と下端部253は、ロータ22よりも下方側に設けられている。
駆動軸25の鍔部252は、圧縮機軸心C1の径方向DRrへ鍔状に張り出すように形成されている。また、その鍔部252にはバランスウェイト254が設けられている。以下の説明では、圧縮機軸心C1の径方向DRrを圧縮機径方向DRrとも呼ぶ。
ロータ挿通軸部251の上端部はロータ22から上方側へ突き出て、ハウジング30に固定された軸受部材27内に挿入されている。また、鍔部252に連結するロータ挿通軸部251の下端部はロータ22から下方側へ突き出て、ハウジング30に固定されたミドルハウジング29の軸受部291内に挿入されている。これにより、駆動軸25は、圧縮機軸心C1まわりに回転できるように支持されている。
圧縮機構部10は、第1スクロールとしての固定スクロール11と、第2スクロールとしての可動スクロール12とを備えている。その可動スクロール12はミドルハウジング29に対し下方側に配置され、固定スクロール11は可動スクロール12に対し下方側に配置されている。
可動スクロール12は、固定スクロール11に対し圧縮機軸心C1まわりに旋回移動する可動側部材である。可動スクロール12は旋回スクロールとも呼ばれる。固定スクロール11は、ハウジング30に対して固定された非回転部材としての固定側部材である。
図1および図2に示すように、可動スクロール12は、円板状の可動基盤部121と、渦巻き形状を成す外周側可動ラップ122と、渦巻き形状を成す内周側可動ラップ123とを有している。その外周側可動ラップ122と内周側可動ラップ123は、可動基盤部121から下方側(すなわち、圧縮機軸方向DRaの一方側)へ突き出るように設けられている。なお、図2では、吸入孔111c、111eおよび吐出孔111d、111fの図示が省略されており、このことは後述の図9〜図12でも同様である。
図1〜図3に示すように、固定スクロール11は、円板状の固定基盤部111と、渦巻き形状を成す固定ラップ112と、ランド部113とを有している。固定基盤部111は可動基盤部121に対し下方側に配置され、その固定基盤部111と可動基盤部121は互いに上下方向DR1に対向するように配置されている。固定ラップ112とランド部113は、固定基盤部111から上方側(すなわち、圧縮機軸方向DRaの他方側)へ突き出るように設けられている。そのランド部113の突出し高さは、固定ラップ112の突出し高さと同じになっている。なお、固定ラップ112は第1ラップに対応し、外周側可動ラップ122は第2ラップに対応し、内周側可動ラップ123は第3ラップに対応する。
ランド部113は、固定ラップ112の相互間にてその固定ラップ112を圧縮機径方向DRrに連結し、それにより、冷媒が圧縮される2つの圧縮部131、132を形成している。すなわち、本実施形態の圧縮機1は、2つの圧縮部131、132を有する2段圧縮式のスクロール圧縮機である。
その2つの圧縮部131、132とは、外周側圧縮部131と内周側圧縮部132とである。そして、内周側圧縮部132は、固定ラップ112の渦巻き形状に沿った渦巻き方向DRgにおいて外周側圧縮部131の内周側に設けられている。すなわち、外周側圧縮部131はランド部113に対して渦巻き方向DRgの外周側に設けられ、内周側圧縮部132はランド部113に対して渦巻き方向DRgの内周側に設けられている。
また、外周側可動ラップ122は外周側圧縮部131に設けられ、その外周側圧縮部131にて冷媒を圧縮する。内周側可動ラップ123は内周側圧縮部132に設けられ、その内周側圧縮部132にて冷媒を圧縮する。そして、固定ラップ112は、外周側圧縮部131と内周側圧縮部132との両方に及ぶように設けられている。
なお、固定ラップ112のうち渦巻き方向DRgの内周側の端部は別言すれば固定ラップ112の巻き始めであり、外周側の端部は別言すれば固定ラップ112の巻き終りである。また、外周側可動ラップ122のうち渦巻き方向DRgの内周側の端部は別言すれば外周側可動ラップ122の巻き始めであり、外周側の端部は別言すれば外周側可動ラップ122の巻き終りである。また、内周側可動ラップ123のうち渦巻き方向DRgの内周側の端部は別言すれば内周側可動ラップ123の巻き始めであり、外周側の端部は別言すれば内周側可動ラップ123の巻き終りである。
図1に示すように、可動基盤部121の上方側には、上方側を向いて円筒状に突き出た軸嵌入部124が形成されている。その軸嵌入部124は可動基盤部121の中央部分に配置されており、軸嵌入部124には、駆動軸25の下端部253が嵌め入れられている。また、駆動軸25の下端部253は、圧縮機軸心C1に対して偏心した偏心部253になっている。
また、圧縮機構部10は、可動スクロール12の自転を防止する不図示の自転防止機構を有している。そのため、可動スクロール12は自転することなく、駆動軸25の回転に伴い、圧縮機軸心C1を中心とした環状の軌跡に沿って固定スクロール11に対し旋回移動する。要するに、可動スクロール12は、圧縮機軸心C1を公転中心として図2の矢印Rt方向へ公転運動をする。
図2および図3に示すように、固定ラップ112は渦巻き状に形成されているので、その固定ラップ112の相互隙間は渦巻き状のスクロール溝11aとなっている。そして、固定スクロール11はランド部113を有しているので、そのスクロール溝11aは、外周側スクロール溝11bと、その外周側スクロール溝11bに対しランド部113を挟んで渦巻き方向DRgの内周側に設けられた内周側スクロール溝11cとに分けられている。要するに、固定スクロール11のスクロール溝11aは、外周側スクロール溝11bと内周側スクロール溝11cとを有している。そして、ランド部113は、外周側スクロール溝11bと内周側スクロール溝11cとを隔てる堰部として機能する。
また、外周側スクロール溝11bは外周側圧縮部131に設けられ、内周側スクロール溝11cは内周側圧縮部132に設けられている。従って、外周側可動ラップ122は外周側スクロール溝11b内に挿入されるようにして、外周側圧縮部131にて固定ラップ112と係合している。そして、内周側可動ラップ123は内周側スクロール溝11c内に挿入されるようにして、内周側圧縮部132にて固定ラップ112と係合している。言い換えれば、外周側可動ラップ122は外周側圧縮部131にて固定ラップ112と噛み合い、内周側可動ラップ123は内周側圧縮部132にて固定ラップ112と噛み合っている。
このように固定ラップ112と外周側可動ラップ122とが互いに係合しているので、図2に示すように外周側圧縮部131では、外周側可動ラップ122を挟んで第1外周側圧縮室131aと第2外周側圧縮室131bとが形成される。その第1外周側圧縮室131aは外周側可動ラップ122の径方向外側に配置され、第2外周側圧縮室131bは外周側可動ラップ122の径方向内側に配置される。
すなわち、図2および図3に示すように、固定スクロール11に形成された外周側スクロール溝11bの一部が第1外周側圧縮室131aまたは第2外周側圧縮室131bとなっている。詳細に言えば、固定ラップ112と外周側可動ラップ122は相互に噛み合って複数箇所で接触し、それによって第1外周側圧縮室131aと第2外周側圧縮室131bとを形成している。
また、固定ラップ112と内周側可動ラップ123とが互いに係合しているので、図4に示すように内周側圧縮部132では、内周側可動ラップ123を挟んで第1内周側圧縮室132aと第2内周側圧縮室132bとが形成される。その第1内周側圧縮室132aは内周側可動ラップ123の径方向外側に配置され、第2内周側圧縮室132bは内周側可動ラップ123の径方向内側に配置される。
すなわち、図3および図4に示すように、固定スクロール11に形成された内周側スクロール溝11cの一部が第1内周側圧縮室132aまたは第2内周側圧縮室132bとなっている。詳細に言えば、固定ラップ112と内周側可動ラップ123は相互に噛み合って複数箇所で接触し、それによって第1内周側圧縮室132aと第2内周側圧縮室132bとを形成している。なお、圧縮室131a、131b、132a、132bのことを作動室と呼んでもよい。
図2および図5に示すように、固定基盤部111は、圧縮機軸方向DRaで可動基盤部121側を向いた面として、2つの固定基盤面111a、111bを有している。すなわち、その2つの固定基盤面111a、111bは何れも上向き面である。固定ラップ112は固定基盤部111から上方側へ突き出ているので、2つの固定基盤面111a、111bは、圧縮機軸方向DRaでの固定ラップ112の基端112bに連結している。
その2つの固定基盤面111a、111bのうちの一方である外周側固定基盤面111aは外周側圧縮部131に含まれ、外周側スクロール溝11bの底面となっている。外周側固定基盤面111aは、圧縮機軸方向DRaでの外周側可動ラップ122の先端122aに対向して接触している。そして、その外周側可動ラップ122の先端122aは外周側固定基盤面111aに対し、可動スクロール12の旋回移動に伴って摺動する。
また、2つの固定基盤面111a、111bのうちの他方である内周側固定基盤面111bは内周側圧縮部132に含まれ、内周側スクロール溝11cの底面となっている。内周側固定基盤面111bは、圧縮機軸方向DRaでの内周側可動ラップ123の先端123aに対向して接触している。そして、その内周側可動ラップ123の先端123aは内周側固定基盤面111bに対し、可動スクロール12の旋回移動に伴って摺動する。
また、図2〜図5に示すように、外周側固定基盤面111aのうち渦巻き方向DRgの外周側の端近傍には、外周側吸入孔111cが形成されている。この外周側吸入孔111cは、外周側圧縮部131へ冷媒を吸入する外周側吸入ポートである。また、外周側固定基盤面111aのうち渦巻き方向DRgの内周側の端近傍には、外周側吐出孔111dが形成されている。この外周側吐出孔111dは、外周側圧縮部131から冷媒を吐き出す外周側吐出ポートである。従って、外周側圧縮部131において各圧縮室131a、131bには外周側吸入孔111cから冷媒が流入し、各圧縮室131a、131bで圧縮された冷媒は各圧縮室131a、131bから外周側吐出孔111dを通って流出する。詳細には、可動スクロール12の旋回移動に伴ってそれらの圧縮室131a、131bが互いに連通して合体し、それと共に、その圧縮室131a、131bで圧縮された冷媒は外周側吐出孔111dを通って流出する。
また、内周側固定基盤面111bのうち渦巻き方向DRgの外周側の端近傍には、内周側吸入孔111eが形成されている。この内周側吸入孔111eは、内周側圧縮部132へ冷媒を吸入する内周側吸入ポートである。そして、その内周側吸入孔111eは、圧縮機構部10に設けられた中継通路101を介して外周側吐出孔111dへ連通している。すなわち、外周側吐出孔111dは、外周側圧縮部131から内周側圧縮部132へ冷媒を吐き出し、内周側吸入孔111eは、その外周側吐出孔111dが吐き出した冷媒を内周側圧縮部132へ導入する。
このような冷媒流れから、可動スクロール12の旋回移動に伴って、外周側圧縮部131では冷媒が圧縮されると共に、内周側圧縮部132では、その外周側圧縮部131で圧縮された冷媒が更に圧縮される。すなわち、外周側圧縮部131は低圧側の圧縮部であり、外周側可動ラップ122は低圧側の可動ラップである。その一方で、内周側圧縮部132は高圧側の圧縮部であり、内周側可動ラップ123は高圧側の可動ラップである。要するに、本実施形態の圧縮機1では冷媒に対し2段階の圧縮が行われる。
また、内周側固定基盤面111bのうち渦巻き方向DRgの内周側の端近傍には、内周側吐出孔111fが形成されている。この内周側吐出孔111fは、内周側圧縮部132から冷媒を吐き出す内周側吐出ポートである。従って、内周側圧縮部132において各圧縮室132a、132bには内周側吸入孔111eから冷媒が流入し、各圧縮室132a、132bで圧縮された冷媒は各圧縮室132a、132bから内周側吐出孔111fを通って流出する。詳細には、可動スクロール12の旋回移動に伴ってそれらの圧縮室132a、132bが互いに連通して合体し、それと共に、その圧縮室132a、132bで圧縮された冷媒は内周側吐出孔111fを通って流出する。
また、図2および図3に示すように、外周側吐出孔111dは、可動スクロール12の旋回移動に伴って外周側可動ラップ122の先端122aに覆われることにより閉じられる。すなわち、外周側可動ラップ122は、可動スクロール12の旋回移動に伴って外周側吐出孔111dを開閉する吐出孔開閉部122cを有している。その吐出孔開閉部122cは、外周側可動ラップ122のうち渦巻き方向DRgの内周側の端部に設けられている。
これと同様に、内周側吐出孔111fは、可動スクロール12の旋回移動に伴って内周側可動ラップ123の先端123aに覆われることにより閉じられる。すなわち、内周側可動ラップ123は、可動スクロール12の旋回移動に伴って内周側吐出孔111fを開閉する吐出孔開閉部123cを有している。その吐出孔開閉部123cは、内周側可動ラップ123のうち渦巻き方向DRgの内周側の端部に設けられている。
図2〜図5に示すように、可動基盤部121は、圧縮機軸方向DRaで固定基盤部111側を向いた面として、可動基盤面121aを有している。すなわち、その可動基盤面121aは下向き面であり、固定基盤面111a、111bに対し圧縮室131a、131b、132a、132bを挟んで対向している。外周側可動ラップ122と内周側可動ラップ123は可動基盤部121から下方側へ突き出ているので、可動基盤面121aは、圧縮機軸方向DRaでの外周側可動ラップ122の基端122bと内周側可動ラップ123の基端123bとにそれぞれ連結している。
その可動基盤面121aは外周側圧縮部131と内周側圧縮部132とに及ぶように拡がっている。可動基盤面121aは、圧縮機軸方向DRaでの固定ラップ112の先端112aに対向して接触している。そして、その固定ラップ112の先端112aは可動基盤面121aに対し、可動スクロール12の旋回移動に伴って摺動する。
図1および図3に示すように、圧縮機構部10は、外周側圧縮部131へ冷媒を供給する供給部14を備えている。この供給部14には、圧縮機1を有する冷凍サイクルにおいて最も低圧の冷媒が冷媒入口36を介して流入する。そして、供給部14に流入した冷媒は、図2および図3に示すように、外周側吸入孔111cを介して外周側圧縮部131へ流入し、外周側圧縮部131にて各圧縮室131a、131bへ供給される。
図1および図3に示すように、固定基盤部111には、上記の吸入孔111c、111eおよび吐出孔111d、111fに加え、吐出室111gが形成されている。その吐出室111gは、内周側吐出孔111fを介して内周側圧縮部132へ連通している。吐出室111gには不図示の逆止弁が設けられており、その逆止弁は、内周側吐出孔111fから吐出室111g内への冷媒の流入を許容する一方で、吐出室111g内から内周側吐出孔111fへの冷媒の流出を阻止する。
吐出室111gは、圧縮機1の冷媒出口49へと接続されている。従って、吐出室111g内の冷媒は、矢印FLoutのように冷媒出口49から圧縮機1の外部へ吐出される。例えば、その冷媒は、冷凍サイクルに含まれる凝縮器へと吐出される。
また、本実施形態の圧縮機1では圧縮途中の冷媒へ中間圧の冷媒が合流させられる。詳細には、その中間圧の冷媒は、圧縮機1の外部から中間圧導入通路51と逆止弁50とを順に介して中継通路101へ導入される。すなわち、その中間圧の冷媒は、外周側圧縮部131から流出した冷媒と中継通路101にて合流し、その外周側圧縮部131からの冷媒と共に内周側吸入孔111eを通って内周側圧縮部132へ流入する。逆止弁50は、中間圧導入通路51から中継通路101への冷媒流れを許容する一方で、中継通路101から中間圧導入通路51への冷媒流れ(すなわち、冷媒の逆流)を阻止する。
図2および図3に示すように、固定ラップ112は、その固定ラップ112の径方向内側と径方向外側とに複数の側壁面を有している。具体的には、固定ラップ112は、その側壁面として、外周側内向摺接面112cと外周側内向逃がし面112dと外周側外向摺接面112eと内周側内向摺接面112jと内周側内向逃がし面112kと内周側外向摺接面112mとを有している。
外周側内向摺接面112cと外周側内向逃がし面112dと外周側外向摺接面112eは外周側スクロール溝11bの側面となっているので、外周側圧縮部131に含まれている。また、外周側内向逃がし面112dは、外周側内向摺接面112cに対し渦巻き方向DRgで外周側に設けられている。
外周側内向摺接面112cと外周側内向逃がし面112dは圧縮機径方向DRrの内側を向いている。そして、外周側内向摺接面112cには、可動スクロール12の旋回移動に伴って外周側可動ラップ122の外周側外向ラップ面122dが摺接する。これに対し、外周側内向逃がし面112dは、可動スクロール12が何れの旋回位置にあっても外周側可動ラップ122から離れるように配置されている。言い換えれば、外周側内向逃がし面112dは、外周側可動ラップ122に対し常に間隔を空けるように配置されている。
そのような配置のため、外周側内向摺接面112cと外周側内向逃がし面112dは、圧縮機径方向DRrの段差112nすなわち外周側内向段差112nを、外周側内向摺接面112cと外周側内向逃がし面112dとの間に形成している。そして、その外周側内向段差112nは、外周側内向逃がし面112dが外周側内向摺接面112cに対し圧縮機径方向DRrの外側へずれた段差となっている。
外周側外向摺接面112eは圧縮機径方向DRrの外側を向いており、その外周側外向摺接面112eには、可動スクロール12の旋回移動に伴って外周側可動ラップ122の外周側内向ラップ面122eが摺接する。
また、内周側内向摺接面112jと内周側内向逃がし面112kと内周側外向摺接面112mは内周側スクロール溝11cの側面となっているので、内周側圧縮部132に含まれている。また、内周側内向逃がし面112kは、内周側内向摺接面112jに対し渦巻き方向DRgで外周側に設けられている。
内周側内向摺接面112jと内周側内向逃がし面112kは圧縮機径方向DRrの内側を向いている。そして、内周側内向摺接面112jには、可動スクロール12の旋回移動に伴って内周側可動ラップ123の内周側外向ラップ面123dが摺接する。これに対し、内周側内向逃がし面112kは、可動スクロール12が何れの旋回位置にあっても内周側可動ラップ123から離れるように配置されている。言い換えれば、内周側内向逃がし面112kは、内周側可動ラップ123に対し常に間隔を空けるように配置されている。
そのような配置のため、内周側内向摺接面112jと内周側内向逃がし面112kは、圧縮機径方向DRrの段差112oすなわち内周側内向段差112oを、内周側内向摺接面112jと内周側内向逃がし面112kとの間に形成している。そして、その内周側内向段差112oは、内周側内向逃がし面112kが内周側内向摺接面112jに対し圧縮機径方向DRrの外側へずれた段差となっている。
内周側外向摺接面112mは圧縮機径方向DRrの外側を向いており、その内周側外向摺接面112mには、可動スクロール12の旋回移動に伴って内周側可動ラップ123の内周側内向ラップ面123eが摺接する。
図2および図6に示すように、外周側可動ラップ122は、その外周側可動ラップ122の径方向内側と径方向外側とに複数の側壁面を有している。具体的には、外周側可動ラップ122は、その側壁面として、外周側外向ラップ面122dと外周側内向ラップ面122eとを有している。
外周側外向ラップ面122dは圧縮機径方向DRrの外側を向いている。そして、外周側外向ラップ面122dは、外周側内向摺接面112cに摺接する摺接面として形成されている。
また、外周側内向ラップ面122eは圧縮機径方向DRrの内側を向いている。そして、外周側内向ラップ面122eは、外周側外向摺接面112eに摺接する摺接面として形成されている。
内周側可動ラップ123は、その内周側可動ラップ123の径方向内側と径方向外側とに複数の側壁面を有している。具体的には、内周側可動ラップ123は、その側壁面として、内周側外向ラップ面123dと内周側内向ラップ面123eとを有している。
内周側外向ラップ面123dは圧縮機径方向DRrの外側を向いている。そして、内周側外向ラップ面123dは、内周側内向摺接面112jに摺接する摺接面として形成されている。
また、内周側内向ラップ面123eは圧縮機径方向DRrの内側を向いている。そして、内周側内向ラップ面123eは、内周側外向摺接面112mに摺接する摺接面として形成されている。
図2、図3、および図6に示すように、外周側内向摺接面112cと外周側外向摺接面112eとには外周側可動ラップ122が摺接するので、外周側内向摺接面112cと外周側外向摺接面112eはそれぞれインボリュート曲線で形成されている。そして、外周側可動ラップ122の外周側外向ラップ面122dと外周側内向ラップ面122eもそれぞれインボリュート曲線で形成されている。
また、内周側内向摺接面112jと内周側外向摺接面112mとには内周側可動ラップ123が摺接するので、内周側内向摺接面112jと内周側外向摺接面112mもそれぞれインボリュート曲線で形成されている。そして、内周側可動ラップ123の内周側外向ラップ面123dと内周側内向ラップ面123eもそれぞれインボリュート曲線で形成されている。
更に、固定ラップ112を形成するインボリュート曲線および可動ラップ122、123を形成するインボリュート曲線はそれぞれ、外周側圧縮部131と内周側圧縮部132との間で不連続な曲線となっている。
例えば図3に示すように、固定ラップ112の外周側内向摺接面112cは、第1のインボリュート曲線L1の一部により形成されている。そして、内周側内向摺接面112jは、第1のインボリュート曲線L1に対し内側にずれて配置される第2のインボリュート曲線L2の一部により形成されている。言い換えれば、その第2のインボリュート曲線L2は、第1のインボリュート曲線L1を内側にオフセットして得られるインボリュート曲線である。そして、第2のインボリュート曲線L2は、第1のインボリュート曲線L1に対する内側で第1のインボリュート曲線L1と並んで延びるインボリュート曲線である。
これに合わせて、図6に示すように、外周側可動ラップ122の外周側外向ラップ面122dは、第3のインボリュート曲線L3の一部により形成されている。そして、内周側可動ラップ123の内周側外向ラップ面123dは、第3のインボリュート曲線L3に対し内側にずれて配置される第4のインボリュート曲線L4の一部により形成されている。その第4のインボリュート曲線L4は、別言すれば、第3のインボリュート曲線L3に対する内側で第3のインボリュート曲線L3と並んで延びるインボリュート曲線である。
また、図3に示すように、固定ラップ112の外周側外向摺接面112eは、第5のインボリュート曲線L5の一部により形成されている。そして、内周側外向摺接面112mは、第5のインボリュート曲線L5に対し内側にずれて配置される第6のインボリュート曲線L6の一部により形成されている。その第6のインボリュート曲線L6は、別言すれば、第5のインボリュート曲線L5に対する内側で第5のインボリュート曲線L5と並んで延びるインボリュート曲線である。
これに合わせて、図6に示すように、周側可動ラップ122の外周側内向ラップ面122eは、第7のインボリュート曲線L7の一部により形成されている。そして、内周側可動ラップ123の内周側内向ラップ面123eは、第7のインボリュート曲線L7に対し内側にずれて配置される第8のインボリュート曲線L8の一部により形成されている。その第8のインボリュート曲線L8は、別言すれば、第7のインボリュート曲線L7に対する内側で第7のインボリュート曲線L7と並んで延びるインボリュート曲線である。
なお、本実施形態において固定ラップ112の内周側内向逃がし面112kは第1のインボリュート曲線L1の一部により形成されているが、内周側内向逃がし面112kはインボリュート曲線で形成されている必要はない。
ここで、本実施形態の圧縮機1の有用性を説明するために、図7〜図11に表された比較例の圧縮機90について説明する。比較例の圧縮機90では、図7および図8に示すように、図3の内周側内向逃がし面112kは設けられていない。
また、比較例の圧縮機90では、内周側スクロール溝11cを形成する内向きの側壁面901と、外周側スクロール溝11bを形成する内向きの側壁面112cは共に、共通のインボリュート曲線L1により形成されている。また、内周側スクロール溝11cを形成する外向きの側壁面902と、外周側スクロール溝11bを形成する内向きの側壁面112eは共に、共通のインボリュート曲線L5により形成されている。
また、内周側可動ラップ123の外向きの側壁面903と、外周側可動ラップ122の外向きの側壁面122dは共に、共通のインボリュート曲線L3により形成されている。また、内周側可動ラップ123の内向きの側壁面904と、外周側可動ラップ122の内向きの側壁面122eは共に、共通のインボリュート曲線L7により形成されている。
このような比較例の圧縮機90でも、図9に示すように、固定ラップ112の外周側内向逃がし面112dにより外周側圧縮部131に逃がしを設けることができる。そのため、外周側圧縮部131では、第1外周側圧縮室131aと第2外周側圧縮室131bとにおいて冷媒圧縮を同時に開始させることが可能である。なお、上記逃がしとは、固定ラップ112の側壁面を構成する部分のうち、可動ラップ122、123の側壁面から常に間隔を空けて離れている部分である。
一方、比較例の圧縮機90の内周側圧縮部132には逃がしが無いので、第1内周側圧縮室132aで冷媒圧縮が開始されるタイミングを調整できない。そのため、第1内周側圧縮室132aでの冷媒圧縮のタイミングが、第2内周側圧縮室132bでの冷媒圧縮のタイミングに対し異なることになり、比較例の内周側圧縮部132ではアンバランスな冷媒の圧縮になる。例えば、可動スクロール12が図10の旋回角度位置にきたときに第2内周側圧縮室132bでは冷媒圧縮が開始され、可動スクロール12が図11の旋回角度位置にきたときに第1内周側圧縮室132aでは冷媒圧縮が開始される。
また、比較例の圧縮機90において内周側圧縮部132に逃がしを設けようとすれば、内周側スクロール溝11cを形成する内向きの側壁面901を径方向外側へ削ることになる。そのようにしたとすれば、その内周側圧縮部132の逃がしを設けた箇所の固定ラップ112の板厚が薄くなり、強度不足の原因になる。従って、比較例の圧縮機90では、内周側圧縮部132に逃がしを設けることができない。
これに対し、本実施形態によれば、図2および図3に示すように、固定ラップ112の外周側内向摺接面112cは、第1のインボリュート曲線L1の一部により形成されている。そして、固定ラップ112の内周側内向摺接面112jは、その第1のインボリュート曲線L1に対し内側にずれて配置される第2のインボリュート曲線L2の一部により形成されている。
このような構成から、外周側内向摺接面112cと内周側内向摺接面112jとを共に第1のインボリュート曲線L1により形成する場合と比較して、本実施形態の内周側内向摺接面112jはその第1のインボリュート曲線L1に対し内側にずれている。これにより、内周側内向逃がし面112kは、内周側可動ラップ123から常に間隔を空けて離れるように配置される。
すなわち、内周側内向逃がし面112kを内周側可動ラップ123から離れさせるために、固定ラップ112のうち内周側内向逃がし面112kが形成されている部分の板厚を薄くすることが必要とはされない。従って、内周側圧縮部132にて内周側内向逃がし面112kにより逃がしを形成することが可能であると共に、その逃がしの形成に起因した固定ラップ112の強度不足を回避することが可能である。
例えば図4には、内周側圧縮部132の各圧縮室132a、132bと内周側吸入孔111eとの連通が可動スクロール12の旋回移動に伴って遮断された時点の旋回角度位置で、可動スクロール12が表されている。すなわち、図4には、内周側圧縮部132の各圧縮室132a、132bで冷媒圧縮が開始される圧縮開始時点の旋回角度位置で、可動スクロール12が表されている。この図4に示すように、本実施形態では、第1内周側圧縮室132aの圧縮開始時点が第2内周側圧縮室132bの圧縮開始時点と同じタイミングになるように設定されている。これは、図3の内周側内向段差112oを任意の位置に設定できるので実現することができる。
そして、図4に示すように第1内周側圧縮室132aの圧縮開始時点と第2内周側圧縮室132bの圧縮開始時点は互いに同じタイミングになるように設定されているので、両圧縮室132a、132bの相互間で冷媒圧力のアンバランスが抑えられる。これにより例えば、その冷媒圧力のアンバランスに起因した圧縮機1の効率低下を回避することができる。
また、本実施形態によれば、図2および図3に示すように、固定ラップ112の外周側内向逃がし面112dは外周側圧縮部131に含まれ、圧縮機径方向DRrの内側を向き、外周側内向摺接面112cに対し渦巻き方向DRgで外周側に設けられている。そして、外周側内向逃がし面112dは、可動スクロール12が何れの旋回位置にあっても外周側可動ラップ122から離れるように配置されている。従って、外周側内向段差112nを任意の位置に設定することにより、第1外周側圧縮室131aで冷媒圧縮が開始される圧縮開始時点を調節することが可能である。
例えば図2には、外周側圧縮部131の各圧縮室131a、131bと外周側吸入孔111cとの連通が可動スクロール12の旋回移動に伴って遮断された時点の旋回角度位置で、可動スクロール12が表されている。すなわち、図2には、外周側圧縮部131の各圧縮室131a、131bで冷媒圧縮が開始される圧縮開始時点の旋回角度位置で、可動スクロール12が表されている。この図2に示すように、本実施形態では、第1外周側圧縮室131aの圧縮開始時点が第2外周側圧縮室131bの圧縮開始時点と同じタイミングになるように設定されている。これは、図3の外周側内向段差112nを任意の位置に設定できるので実現することができる。
そして、図2に示すように第1外周側圧縮室131aの圧縮開始時点と第2外周側圧縮室131bの圧縮開始時点は互いに同じタイミングになるように設定されているので、両圧縮室131a、131bの相互間で冷媒圧力のアンバランスが抑えられる。これにより例えば、その冷媒圧力のアンバランスに起因した圧縮機1の効率低下を回避することができる。
また、本実施形態によれば、図2および図6に示すように、外周側可動ラップ122の外周側外向ラップ面122dは第3のインボリュート曲線L3の一部により形成されている。そして、内周側可動ラップ123の内周側外向ラップ面123dは、その第3のインボリュート曲線L3に対し内側にずれて配置される第4のインボリュート曲線L4の一部により形成されている。
このようにすれば、図3の外周側内向摺接面112cを形成する第1のインボリュート曲線L1と、内周側内向摺接面112jを形成する第2のインボリュート曲線L2との差に合わせて、各可動ラップ122、123を構成することが可能である。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
図12〜図14に示すように、本実施形態において、固定ラップ112は第1のシール材としての固定シール材114を有している。また、外周側可動ラップ122は第2のシール材としての外周側可動シール材125を有し、内周側可動ラップ123は第3のシール材としての内周側可動シール材126を有している。これらの点で本実施形態は第1実施形態と異なっている。
各シール材114、125、126はチップシールと呼ばれるシール材である。各シール材114、125、126は、例えばポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(すなわち、PEEK樹脂)などの弾性体で構成されている。
固定シール材114は、固定ラップ112の先端112aに設けられている。詳細には、可動基盤面121aに対向する向きに開口した第1シール収容溝112pが、固定ラップ112の先端112aに形成されている。そして、固定シール材114はその第1シール収容溝112pに嵌め込まれ、可動基盤面121aに押し付けられている。これにより、固定シール材114は、固定ラップ112の先端112aと可動基盤面121aとの間の隙間CR1をシールする。そして、固定シール材114は、可動スクロール12の旋回移動に伴い、可動基盤面121aに対して密着しつつ摺動する。
また、固定シール材114は、固定ラップ112の渦巻き形状に沿って延びる角柱状に形成されている。固定シール材114は、固定ラップ112のうち渦巻き方向DRgの内周側の端部から渦巻き形状に沿って外周側内向段差112nまで延びている。
なお、固定シール材114は、固定ラップ112の板厚方向における固定シール材114の幅が一定または略一定になるように延びている。固定シール材114の長手方向の伸縮が許容されるようにするためである。このことは、外周側可動シール材125の幅および内周側可動シール材126の幅についても同様である。
外周側可動シール材125は、外周側可動ラップ122の先端122aに設けられている。詳細には、外周側固定基盤面111aに対向する向きに開口した第2シール収容溝122fが、外周側可動ラップ122の先端122aに形成されている。そして、外周側可動シール材125はその第2シール収容溝122fに嵌め込まれ、外周側固定基盤面111aに押し付けられている。これにより、外周側可動シール材125は、外周側可動ラップ122の先端122aと外周側固定基盤面111aとの間の隙間CR2をシールする。そして、外周側可動シール材125は、可動スクロール12の旋回移動に伴い、外周側固定基盤面111aに対して密着しつつ摺動する。
また、外周側可動シール材125は、外周側可動ラップ122の渦巻き形状に沿って延びる角柱状に形成されている。外周側可動シール材125は、外周側可動ラップ122のうち渦巻き方向DRgの内周側の端部から渦巻き形状に沿って外周側の端部まで延びている。
内周側可動シール材126は、内周側可動ラップ123の先端123aに設けられている。詳細には、内周側固定基盤面111bに対向する向きに開口した第3シール収容溝123fが、内周側可動ラップ123の先端123aに形成されている。そして、内周側可動シール材126はその第3シール収容溝123fに嵌め込まれ、内周側固定基盤面111bに押し付けられている。これにより、内周側可動シール材126は、内周側可動ラップ123の先端123aと内周側固定基盤面111bとの間の隙間CR3をシールする。そして、内周側可動シール材126は、可動スクロール12の旋回移動に伴い、内周側固定基盤面111bに対して密着しつつ摺動する。
また、内周側可動シール材126は、内周側可動ラップ123の渦巻き形状に沿って延びる角柱状に形成されている。内周側可動シール材126は、内周側可動ラップ123のうち渦巻き方向DRgの内周側の端部から渦巻き形状に沿って外周側の端部まで延びている。
また、図12および図13に示すように、固定ラップ112は、外周側外向摺接面112eと内周側内向摺接面112jとが共に形成された拡幅部112qを有している。この拡幅部112qは、固定ラップ112のうち内周側内向段差112oに対し渦巻き方向DRgの内周側の部分であって、外周側圧縮部131と内周側圧縮部132とを隔てる壁となっている部分である。拡幅部112qは、固定ラップ112のうち内周側内向段差112oに対し渦巻き方向DRgの外周側の部分と比較して、板厚方向で幅広になっている。そして、拡幅部112qにおいて固定シール材114は、板厚方向の中央ではなく、圧縮機径方向DRrの内側に偏って配置されている。
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
また、本実施形態によれば、図12〜図14に示すように、固定シール材114は、固定ラップ112の先端112aに設けられ、その固定ラップ112の先端112aと可動基盤面121aとの間の隙間CR1をシールする。また、外周側可動シール材125は、外周側可動ラップ122の先端122aに設けられ、その外周側可動ラップ122の先端122aと外周側固定基盤面111aとの間の隙間CR2をシールする。また、内周側可動シール材126は、内周側可動ラップ123の先端123aに設けられ、その内周側可動ラップ123の先端123aと内周側固定基盤面111bとの間の隙間CR3をシールする。
従って、それぞれのシール材114、125、126によって、外周側圧縮部131および内周側圧縮部132に形成される各圧縮室131a、131b、132a、132bからの冷媒の漏れを防止し、効率良く冷媒を圧縮することが可能である。
また、本実施形態によれば、図12および図13に示すように、固定ラップ112の拡幅部112qにおいて固定シール材114は、板厚方向の中央ではなく、圧縮機径方向DRrの内側に偏って配置されている。
ここで、固定ラップ112の先端112aと可動基盤面121aとの間の隙間CR1のうち固定シール材114よりも圧縮機径方向DRrの外側で固定シール材114に沿って矢印LK1のように流れる冷媒の漏れは、外周側圧縮部131のおける冷媒漏れになる。その一方で、上記隙間CR1のうち固定シール材114よりも圧縮機径方向DRrの内側で固定シール材114に沿って流れる冷媒の漏れは、内周側圧縮部132のおける冷媒漏れになる。
従って、上記拡幅部112qにおける固定シール材114の配置から、外周側圧縮部131の冷媒漏れよりも内周側圧縮部132の冷媒漏れの方を優先して抑えることが可能である。そして、内周側圧縮部132の冷媒圧力が外周側圧縮部131の冷媒圧力に比して高いため、同じ漏れ面積で漏れ量を比較し場合、内周側圧縮部132での漏れ量の方が外周側圧縮部131での漏れ量よりも大きくなりやすい。従って、冷媒の漏れ量が大きくなりやすい内周側圧縮部132での冷媒漏れを優先して抑えることで、冷媒の圧縮過程において冷媒の漏れ低減を図ることが可能である。なお、図12の矢印LK1で示す冷媒漏れの漏れ面積には、例えば図13では固定ラップ112の先端112aと可動基盤面121aとの間の隙間CR1のうちのW1部分が相当する。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
図15に示すように、本実施形態では、固定ラップ112が有する外周側外向摺接面112eの形状と、外周側可動ラップ122が有する外周側内向ラップ面122eの形状とが第1実施形態と異なっている。
具体的に、外周側外向摺接面112eは、第1外周側外向面112fと、第2外周側外向面112gと、その2つの外向面112f、112gの間に設けられた外周側外向段差112hとから構成されている。この外周側外向段差112hには外周側可動ラップ122は接触しないが、第1外周側外向面112fと第2外周側外向面112gとには、外周側可動ラップ122が可動スクロール12の旋回移動に伴って摺接する。
外周側外向摺接面112eが外周側圧縮部131に含まれているので、当然、第1外周側外向面112fと第2外周側外向面112gと外周側外向段差112hも外周側圧縮部131に含まれている。また、第1外周側外向面112fと第2外周側外向面112gは、第1実施形態の外周側外向摺接面112eと同様に、圧縮機径方向DRrの外側を向いている。
第1外周側外向面112fは、第2外周側外向面112gに対し渦巻き方向DRgで外周側に設けられている。そして、第1外周側外向面112fは、その一部において、固定ラップ112のうち内周側内向逃がし面112kに対する反対側の外周面を構成している。
また、第2外周側外向面112gは、固定ラップ112のうち内周側内向摺接面112jに対する反対側の外周面を構成している。
そして、第1外周側外向面112fと第2外周側外向面112gは、外周側外向段差112hを第1外周側外向面112fと第2外周側外向面112gとの間に形成している。その外周側外向段差112hは、第2外周側外向面112gが第1外周側外向面112fに対し圧縮機径方向DRrの内側へずれた段差となっている。
詳細には、第1外周側外向面112fは第1実施形態の外周側外向摺接面112eの一部分と同じである。すなわち、第1外周側外向面112fは、図3に示す第1実施形態の外周側外向摺接面112eを形成する第5のインボリュート曲線L5の一部により形成されている。
そして、第2外周側外向面112gは、図3に示す第1実施形態の内周側外向摺接面112mを形成する第6のインボリュート曲線L6の一部により形成されている。
本実施形態では、このように固定ラップ112が形成されるので、固定ラップ112は、その板厚が固定ラップ112の渦巻き形状の全長にわたって略一定になるように形成されている。
外周側可動ラップ122の外周側内向ラップ面122eは、第1外周側内向ラップ面122gと、第2外周側内向ラップ面122hと、その2つの内向ラップ面122g、122hの間に設けられた外周側内向段差122iとから構成されている。第1外周側内向ラップ面122gは、第2外周側内向ラップ面122hに対し渦巻き方向DRgで外周側に設けられている。
第1外周側内向ラップ面122gと第2外周側内向ラップ面122hは第1実施形態の外周側内向ラップ面122eと同様に、圧縮機径方向DRrの内側を向いている。そして、可動スクロール12の旋回移動に伴い、第1外周側内向ラップ面122gは第1外周側外向面112fに摺接し、第2外周側内向ラップ面122hは第2外周側外向面112gに摺接する。なお、外周側内向段差122iは固定ラップ112の外周側外向摺接面112eに接触しない。
そして、第1外周側内向ラップ面122gと第2外周側内向ラップ面122hは外周側内向段差122iを第1外周側内向ラップ面122gと第2外周側内向ラップ面122hとの間に形成している。その外周側内向段差122iは、固定ラップ112の外周側外向段差112hに応じて配置された段差であり、第2外周側内向ラップ面122hが第1外周側内向ラップ面122gに対し圧縮機径方向DRrの内側へずれた段差となっている。
詳細には、第1外周側内向ラップ面122gは第1実施形態の外周側内向ラップ面122eの一部分と同じである。すなわち、第1外周側内向ラップ面122gは、図6に示す第1実施形態の外周側内向ラップ面122eを形成する第7のインボリュート曲線L7の一部により形成されている。
そして、第2外周側内向ラップ面122hは、図6に示す第1実施形態の内周側内向ラップ面123eを形成する第8のインボリュート曲線L8の一部により形成されている。
また、図15に示すように、外周側可動ラップ122は、内周側部位構成部122jと外周側部位構成部122kとを有している。その内周側部位構成部122jは、外周側可動ラップ122のうち外周側内向段差122iよりも渦巻き方向DRgの内周側を構成する部分である。すなわち、内周側部位構成部122jは、外周側可動ラップ122のうち第2外周側内向ラップ面122hを有する部分である。また、外周側吐出孔111dを開閉する吐出孔開閉部122cは、外周側可動ラップ122のうち渦巻き方向DRgの内周側の端部に設けられているので、この内周側部位構成部122jに含まれる。
一方、外周側部位構成部122kは、外周側可動ラップ122のうち外周側内向段差122iよりも渦巻き方向DRgの外周側を構成する部分である。すなわち、外周側部位構成部122kは、外周側可動ラップ122のうち第1外周側内向ラップ面122gを有する部分である。
また、上述したように第2外周側内向ラップ面122hが第1外周側内向ラップ面122gに対し圧縮機径方向DRrの内側へずれているので、内周側部位構成部122jの板厚T1は、外周側部位構成部122kの板厚T2よりも大きくなっている。
また、内周側部位構成部122jの板厚T1は、固定ラップ112のうち第2外周側外向面112gを有する部分112rの板厚T3よりも大きくなっている。
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
また、本実施形態によれば、固定ラップ112の第1外周側外向面112fと第2外周側外向面112gは、外周側外向段差112hを第1外周側外向面112fと第2外周側外向面112gとの間に形成している。その外周側外向段差112hは、第2外周側外向面112gが第1外周側外向面112fに対し圧縮機径方向DRrの内側へずれた段差となっている。また、外周側可動ラップ122の第1外周側内向ラップ面122gと第2外周側内向ラップ面122hは、外周側外向段差112hに応じた外周側内向段差122iを、第1外周側内向ラップ面122gと第2外周側内向ラップ面122hとの間に形成している。
従って、外周側可動ラップ122のうちの巻始め部分の板厚、すなわち渦巻き方向DRgの内周側部分の板厚を大きくすることが可能である。これにより、外周側可動ラップ122のうち形状的に変形し易いその巻始め部分の剛性が高まり、外周側可動ラップ122の変形を小さくすることが可能である。その結果として、例えば、圧縮機1が冷媒を圧縮する際の更なる効率向上の効果が見込まれる。
また、本実施形態によれば、内周側部位構成部122jの板厚T1は、固定ラップ112のうち第2外周側外向面112gを有する部分112rの板厚T3よりも大きい。そして、外周側可動ラップ122のうち、内周側部位構成部122jの板厚T1は、外周側部位構成部122kの板厚T2よりも大きい。これらのことからも、上記のように、外周側可動ラップ122のうち形状的に変形し易いその巻始め部分の剛性が高まり、外周側可動ラップ122の変形を小さくすることが可能であると言える。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第3実施形態と異なる点を主として説明する。
図16に示すように、本実施形態では、固定ラップ112は第1のシール材としての固定シール材114を有している。また、外周側可動ラップ122は第2のシール材としての外周側可動シール材125を有し、内周側可動ラップ123は第3のシール材としての内周側可動シール材126を有している。これらの点で本実施形態は第3実施形態と異なっている。
なお、これらのシール材114、125、126は第2実施形態のものと基本的に同様である。但し、外周側可動ラップ122の形状が第2実施形態とは部分的に相違するので、この形状が相違する箇所における外周側可動シール材125の配置は、第2実施形態と異なる。
具体的に、外周側可動シール材125は、渦巻き方向DRgにおいて外周側可動ラップ122の全長にわたって設けられているので、内周側部位構成部122jにも及んでいる。更に詳しく言えば、図16〜図18に示すように、外周側可動シール材125は、外周側可動ラップ122の先端122aのうち吐出孔開閉部122cに含まれる部分である開閉部先端122mにまで及んでいる。その吐出孔開閉部122cが外周側吐出孔111dを開閉する部分であるので、吐出孔開閉部122cの開閉部先端122mは、可動スクロール12の旋回移動に伴って外周側吐出孔111dを覆い、それにより外周側吐出孔111dを閉じる。
そして、図16に示すように、外周側可動シール材125は、内周側部位構成部122jのうち吐出孔開閉部122cよりも渦巻き方向DRgの外周側に、外周側可動ラップ122の先端122aのうち圧縮機径方向DRrの内側に偏って配置された部位を有する。端的に言えば、外周側可動シール材125は、内周側部位構成部122jのうち吐出孔開閉部122cを除いた箇所において、外周側可動ラップ122の板厚のうち圧縮機径方向DRrの内側へ偏って配置されている。例えば図16では、第2外周側内向ラップ面122hと外周側可動シール材125との間隔Diの方が、外周側外向ラップ面122dと外周側可動シール材125との間隔Doよりも小さくなっている。
また、図17および図18に示すように、外周側可動シール材125は、圧縮機径方向DRrの外側に外側端縁125aを有している。
外周側可動ラップ122は、可動スクロール12の旋回移動に伴って、図17の(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)に示された位置に、その(a)〜(h)の並び順に従って順次移動する。そして、外周側可動ラップ122は、(h)に示された位置から、(a)に示された位置に戻る。
この図17に示すように、外周側吐出孔111dは、可動スクロール12が何れの旋回角度位置にあっても、常に、外周側可動シール材125の外側端縁125aを超えて外周側可動シール材125から圧縮機径方向DRrの外側へはみ出ることがない。すなわち、外周側吐出孔111dの全体は、可動スクロール12が何れの旋回角度位置にあっても外周側可動シール材125の外側端縁125aに対し圧縮機径方向DRrの内側に位置するということである。
このように外周側吐出孔111dが外周側可動シール材125に対して位置するのは、外周側可動ラップ122の開閉部先端122mにおける外周側可動シール材125の配置によるものである。すなわち、図17および図18に示すように、外周側可動シール材125が、外周側可動ラップ122の開閉部先端122mのうち圧縮機径方向DRrの外側に偏って配置された部位を有するからである。端的に言えば、外周側可動シール材125が、その開閉部先端122mにおいて圧縮機径方向DRrの外側に偏って配置されているからである。
以上説明したことを除き、本実施形態は第3実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第3実施形態と共通の構成から奏される効果を第3実施形態と同様に得ることができる。
また、本実施形態によれば、図16に示すように、外周側可動シール材125は、内周側部位構成部122jのうち吐出孔開閉部122cよりも渦巻き方向DRgの外周側に、外周側可動ラップ122の先端122aのうち圧縮機径方向DRrの内側に偏って配置された部位を有する。
これにより、内周側部位構成部122jにおいて外周側可動シール材125が外周側可動ラップ122の先端122aのうち圧縮機径方向DRrの外側に偏って配置される場合に比べ、圧縮過程における冷媒の漏れを小さくすることが可能である。その冷媒の漏れとは、詳しく言えば、外周側可動ラップ122の先端122aの幅のうち外周側可動シール材125が無い箇所でその先端122aと外周側固定基盤面111aとの間を通り外周側可動シール材125に沿って流れる冷媒の漏れである。
上記のように冷媒の漏れを小さくできるのは、第2外周側圧縮室131bの方が第1外周側圧縮室131aよりも高圧になり、その高圧側である第2外周側圧縮室131bへ外周側可動シール材125を寄せた方が漏れ防止への寄与度が大きいからである。要するに、その高圧側における漏れ面積を小さくすることができるからである。これにより、外周側圧縮部131において、外周側可動ラップ122の先端122aの幅のうち外周側可動シール材125が無い箇所で外周側可動シール材125に沿って流れる冷媒の漏れを小さくすることができる。
また、本実施形態によれば、図17および図18に示すように、外周側吐出孔111dの全体は、可動スクロール12が何れの旋回角度位置にあっても外周側可動シール材125の外側端縁125aに対し圧縮機径方向DRrの内側に位置する。
ここで、仮に、第1外周側圧縮室131aと第2外周側圧縮室131bとが外周側吐出孔111dを介して相互に連通したとすると、その2つの圧縮室131a、131bのうち高圧側から低圧側へと冷媒が流れ、冷媒の圧縮において損失を生じる。その点、本実施形態では、外周側可動シール材125を外周側吐出孔111dが跨ぐことはないので、その2つの圧縮室131a、131bが外周側吐出孔111dを介して相互に連通するという事態を回避できる。従って、外周側吐出孔111dが外周側可動シール材125を跨ぐことに起因した損失低下を回避することが可能である。
また、本実施形態によれば、図17および図18に示すように、外周側可動シール材125は、外周側可動ラップ122の開閉部先端122mのうち圧縮機径方向DRrの外側に偏って配置された部位を有している。従って、外周側可動シール材125が開閉部先端122mのうち圧縮機径方向DRrの内側に偏って配置される場合と比較して、外周側吐出孔111dが可動スクロール12の旋回移動に伴って外周側可動シール材125を跨ぐことを防止し易い。また、外周側吐出孔111dが外周側可動シール材125を跨ぐことを避けつつ、外周側吐出孔111dを大きく形成することができる。
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では図3に示すように、中間圧の冷媒が圧縮機1に導入され、その中間圧の冷媒は、外周側圧縮部131から流出した冷媒と中継通路101にて合流するが、これは一例である。例えば、圧縮機1には、中間圧の冷媒が導入されなくても差し支えない。
(2)上述の各実施形態において、図1の圧縮機1は給湯システムの一部を構成するが、圧縮機1は給湯システム以外のものに用いられても差し支えない。
(3)上述の各実施形態では、圧縮機1が吸入する流体は、例えば冷媒としての二酸化炭素であるが、圧縮可能な流体であれば二酸化炭素以外の流体であってもよい。また、圧縮機1は冷凍サイクルに用いられなくてもよい。
(4)上述の各実施形態では図2、図3等に示すように、内周側内向逃がし面112kは、固定ラップ112の基端112bから先端112aにかけて固定ラップ112の全高にわたって内周側可動ラップ123に対し接触しないように形成されている。
しかしながらこれは一例であり、例えば、固定ラップ112の基端112bから先端112aにかけて圧縮機軸方向DRaでの一部範囲において、内周側内向逃がし面112kは、内周側可動ラップ123に対し接触しないように形成されていてもよい。要するに、可動スクロール12が何れの旋回角度位置にあっても内周側吸入孔111eからの冷媒が内周側内向段差112oの位置にまで導かれるように、内周側内向逃がし面112kは設けられていればよい。このことは、外周側内向逃がし面112dに関しても同様である。
(5)上述の各実施形態では図1に示すように、圧縮機1は縦置きタイプであるが、横置きタイプであってもよい。すなわち、圧縮機軸方向DRaは圧縮機1の上下方向DR1に一致する必要はない。
(6)上述の各実施形態では、第2のインボリュート曲線L2は、第1のインボリュート曲線L1に対し内側にずれて配置される曲線であり、図3では第2のインボリュート曲線L2の全部が第1のインボリュート曲線L1に対し内側にずれている。しかしながら、これは一例である。つまり、第2のインボリュート曲線L2が第1のインボリュート曲線L1に対し全部ではなく部分的に内側にずれて配置されていても、第2のインボリュート曲線L2が、第1のインボリュート曲線L1に対し内側にずれて配置されていることに変わりはない。要するに、第2のインボリュート曲線L2は、第1のインボリュート曲線L1に対し少なくとも部分的に内側にずれて配置されていればよい。
第2のインボリュート曲線L2が第1のインボリュート曲線L1に対し部分的に内側にずれて配置される例としては、第2のインボリュート曲線L2が第1のインボリュート曲線L1に対し交差するように配置されている場合を挙げることができる。そのように交差する場合には、第2のインボリュート曲線L2は部分的に第1のインボリュート曲線L1に対して外側にもずれるので、第2のインボリュート曲線L2が第1のインボリュート曲線L1に対し全部ではなく部分的に内側にずれて配置されることになる。
このことは、図6の第3のインボリュート曲線L3と第4のインボリュート曲線L4との関係においても同様である。すなわち、第4のインボリュート曲線L4が第3のインボリュート曲線L3に対し全部ではなく部分的に内側にずれて配置されていても、第4のインボリュート曲線L4が、第3のインボリュート曲線L3に対し内側にずれて配置されていることに変わりはない。要するに、第4のインボリュート曲線L4は、第3のインボリュート曲線L3に対し少なくとも部分的に内側にずれて配置されていればよい。
(7)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
(まとめ)
上記各実施形態の一部または全部で示された第1の観点によれば、第1ラップは、外周側圧縮部に含まれ径方向の内側を向き第2ラップが摺接する外周側内向摺接面と、内周側圧縮部に含まれ径方向の内側を向き第3ラップが摺接する内周側内向摺接面とを有する。また、第1ラップは、内周側圧縮部に含まれ径方向の内側を向き内周側内向摺接面に対し渦巻き方向で外周側に設けられた内周側内向逃がし面を有する。外周側内向摺接面は第1のインボリュート曲線の一部により形成され、内周側内向摺接面は、その第1のインボリュート曲線に対し内側にずれて配置される第2のインボリュート曲線の一部により形成される。内周側内向逃がし面は、第2スクロールが何れの旋回位置にあっても第3ラップから離れるように配置されている。
また、第2の観点によれば、第1ラップは、外周側圧縮部に含まれ径方向の内側を向き外周側内向摺接面に対し渦巻き方向で外周側に設けられた外周側内向逃がし面を有する。そして、その外周側内向逃がし面は、第2スクロールが何れの旋回位置にあっても第2ラップから離れるように配置されている。
従って、外周側圧縮部で第2ラップの径方向外側に形成される圧縮室にて流体の圧縮が開始される圧縮開始時点を、外周側内向摺接面と外周側内向逃がし面との境目の位置を任意に設定することにより調節することが可能である。例えば、これにより、外周側圧縮部で第2ラップの径方向外側と径方向内側とにそれぞれ形成される圧縮室での圧縮開始時点が互いに同じタイミングになるように、上記径方向外側の圧縮室での圧縮開始時点を設定することが可能である。
また、第3の観点によれば、第2ラップは、径方向の外側を向き外周側内向摺接面に摺接する外周側外向ラップ面を有する。また、第3ラップは、径方向の外側を向き内周側内向摺接面に摺接する内周側外向ラップ面を有する。外周側外向ラップ面は第3のインボリュート曲線の一部により形成され、内周側外向ラップ面は、その第3のインボリュート曲線に対し内側にずれて配置される第4のインボリュート曲線の一部により形成されている。
このようにすれば、外周側内向摺接面を形成する第1のインボリュート曲線と、内周側内向摺接面を形成する第2のインボリュート曲線との差に合わせて、第2ラップと第3ラップとを構成することが可能である。
また、第4の観点によれば、第1外周側外向面と第2外周側外向面は、外周側圧縮部に含まれ、第2外周側外向面が第1外周側外向面に対し径方向の内側へずれた段差を第1外周側外向面と第2外周側外向面との間に形成する。第2ラップは、径方向の内側を向き第1外周側外向面に摺接する第1外周側内向ラップ面と、径方向の内側を向き第2外周側外向面に摺接する第2外周側内向ラップ面とを有する。また、第1外周側内向ラップ面と第2外周側内向ラップ面は、第1外周側外向面と第2外周側外向面との間の上記段差に応じた段差を、第1外周側内向ラップ面と第2外周側内向ラップ面との間に形成している。
従って、第2ラップのうちの巻始め部分の板厚を大きくすることが可能である。これにより、形状的に変形し易いその巻始め部分の剛性が高まり、第2ラップの変形を小さくすることが可能である。その結果として、例えば、圧縮機が流体を圧縮する際の更なる効率向上の効果が見込まれる。
また、第5の観点によれば、第2ラップのうち第2外周側内向ラップ面を有する部分の板厚は、第1ラップのうち第2外周側外向面を有する部分の板厚よりも大きい。従って、上記の第4の観点と同様に、第2ラップのうちの巻始め部分の剛性が高まり、第2ラップの変形を小さくすることが可能である。
また、第6の観点によれば、第2ラップのうち、第2外周側内向ラップ面を有する部分の板厚は、第1外周側内向ラップ面を有する部分の板厚よりも大きい。従って、上記の第4の観点と同様に、第2ラップのうちの巻始め部分の剛性が高まり、第2ラップの変形を小さくすることが可能である。
また、第7の観点によれば、第2ラップは、その第2ラップの先端に設けられその先端と外周側基盤面との間の隙間をシールするシール材を有する。また、第2ラップは、第1外周側内向ラップ面と第2外周側内向ラップ面との間の上記段差よりも渦巻き方向の内周側を構成する内周側部位構成部を有する。その内周側部位構成部は、渦巻き方向の内周側の端部に設けられ第2スクロールの旋回移動に伴って外周側吐出孔を開閉する吐出孔開閉部を有する。シール材は内周側部位構成部に及んでおり、その内周側部位構成部のうち吐出孔開閉部よりも渦巻き方向の外周側に、第2ラップの先端のうち径方向の内側に偏って配置された部位を有する。
このようにすれば、内周側部位構成部においてシール材が第2ラップの先端のうち径方向の外側に偏って配置される場合に比べ、第2ラップの先端の幅のうちシール材が無い箇所でシール材に沿って流れる流体の漏れを小さくすることが可能である。なぜなら、第2ラップの内側の方が外側よりも高圧になり、その高圧側である内側にシール材を寄せた方が漏れ防止への寄与度が大きいからである。要するに、その高圧側における漏れ面積を小さくすることができるからである。これにより、外周側圧縮部において、第2ラップの先端の幅のうちシール材が無い箇所でシール材に沿って流れる流体の漏れを小さくすることができる。
また、第8の観点によれば、シール材は径方向の外側に外側端縁を有し、第2ラップの先端のうち吐出孔開閉部に含まれる部分である開閉部先端にまで及んでいる。外周側吐出孔の全体は、第2スクロールが何れの旋回位置にあってもシール材の外側端縁に対し径方向の内側に位置する。
ここで、仮に、第2ラップの内側に形成される圧縮室と外側に形成される圧縮室とが外周側吐出孔を介して相互に連通したとすると、その2つの圧縮室のうち高圧側から低圧側へと流体が流れ、流体の圧縮において損失を生じる。その点、上記の第8の観点では、第2ラップのシール材を外周側吐出孔が跨ぐことはないので、その2つの圧縮室が外周側吐出孔を介して相互に連通するという事態を回避できる。従って、外周側吐出孔がシール材を跨ぐことに起因した損失低下を回避することが可能である。
また、第9の観点によれば、シール材は、開閉部先端のうち径方向の外側に偏って配置された部位を有する。従って、シール材が開閉部先端のうち径方向の内側に偏って配置される場合と比較して、外周側吐出孔が第2スクロールの旋回移動に伴って第2ラップのシール材を跨ぐことを防止し易い。
また、第10の観点によれば、第1ラップは第1のシール材を有し、その第1のシール材は、第1ラップの先端に設けられ、その先端と第2スクロールの基盤面との間の隙間をシールする。第2ラップは第2のシール材を有し、その第2のシール材は、第2ラップの先端に設けられ、その先端と外周側基盤面との間の隙間をシールする。第3ラップは第3のシール材を有し、その第3のシール材は、第3ラップの先端に設けられ、その先端と内周側基盤面との間の隙間をシールする。従って、それぞれのシール材によって、外周側圧縮部および内周側圧縮部に形成される各圧縮室からの流体の漏れを防止し、効率良く流体を圧縮することが可能である。