以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態にかかる水栓装置を表す説明図である。
図1に表したように、水栓装置10(吐水装置)は、対象物(人体や物体等)を検出して自動的な吐止水を行うものであり、洗面台に備え付けられる洗面器11に対して吐止水を行う。
洗面器11は、洗面カウンタ12の上面に設けられる。洗面カウンタ12の上には、洗面器11のボウル面11aに対して水を吐出するためのスパウトを構成する水栓13(吐水部)が設けられる。水栓13は、水を吐出する吐水口13aを有し、この吐水口13aから吐出される水が洗面器11のボウル面11a内に吐出されるように設けられる。
水栓13が吐水口13aから吐出する水は、給水路14により供給される。給水路14は、水道管等の給水源から供給される水を吐水口13aへと導く。洗面器11には、排水路15が接続されている。排水路15は、吐水口13aから洗面器11のボウル面11a内に吐水された水を排出する。
水栓装置10は、電磁弁16(開閉弁)と、センサ部18と、制御部20とを備える。センサ部18は、制御部20と分離されている。センサ部18は、例えば、水栓13の内部に収容される。電磁弁16及び制御部20は、例えば、洗面台の下側に収容される。電磁弁16及び制御部20は、例えば、洗面カウンタ12の下方に設けられるキャビネット(図示は省略)内に収容される。
センサ部18と制御部20とは、接続ケーブル17で接続されている。制御部20は、例えば、接続ケーブル17を介してセンサ部18に電源電圧を供給し、接続ケーブル17を介してセンサ部18を制御する。
電磁弁16は、給水路14に設けられ、給水路14の開閉を行う。電磁弁16が開くと、給水路14から供給された水が吐水口13aから吐出される吐水状態となり、電磁弁16が閉じると、給水路14から供給された水が吐水口13aから吐出されない止水状態となる。
電磁弁16は、制御部20に接続されており、制御部20は、電磁弁16を駆動して開/閉動作を制御する。電磁弁16は、制御部20からの制御信号に従って電気的に制御され、給水路14の開閉を行う。このように、電磁弁16は、吐水口13aから吐水される水の給水路14を開閉する給水バルブとして機能する。
電磁弁16は、いわゆるラッチング・ソレノイド・バルブと称される自己保持型電磁弁(ラッチ式電磁弁)であり、ソレノイドコイルへの一方向への通電によって閉状態から開状態に動作(開動作)し、その後ソレノイドコイルへの通電を遮断しても開状態を保持し、ソレノイドコイルへの他方向への通電によって開状態から閉状態に動作(閉動作)し、その後ソレノイドコイルへの通電を遮断しても閉状態を保持する。給水路14の開閉は、電磁弁16に限ることなく、制御部20の制御に応じて給水路14を開閉可能な他の開閉弁機構で行ってもよい。
センサ部18は、吐水口13aに接近する対象物(手など)を検出する。この吐水口13aの吐水先が、センサ部18の検出領域となる。センサ部18は、伝播波を送信し、送信した伝播波を受けた人体等の対象物から反射した伝播波を受信することにより、対象物の位置や動き等を検出する。
センサ部18は、例えば、赤外光、可視光等を伝播波として用いた光センサである。センサ部18は、例えば、マイクロ波や超音波などを伝播波として用いたセンサでもよい。
センサ部18は、水栓13の吐水口13a近くの内部に設けられ、洗面台の使用者側(図1において左側)に向けて伝播波を送信するように配置される。これにより、センサ部18は、吐水口13aに人体が近づいてきたことや、吐水口13aに近づいた人体から吐水口13aに向けて手が差し出されたこと等を検出可能にする。
センサ部18は、対象物の検出結果を表す検出信号を接続ケーブル17を介して制御部20に入力する。制御部20は、センサ部18から入力された検出信号に基づいて、対象物の有無を検出する。制御部20は、例えば、検出信号に基づいて、対象物の位置や動き等を検出する。そして、制御部20は、この検出結果に基づいて電磁弁16の開/閉動作を制御する。また、制御部20は、センサ部18に対して制御信号を出力して、センサ部18のセンシング動作を制御する。
以上のように、本実施形態の水栓装置10は、電磁弁16と、センサ部18と、制御部20とを備え、センサ部18の検出信号に基づいて制御部20が制御することにより、電磁弁16の開/閉動作が制御される。これにより、吐水口13aに接近する対象物の検出結果(洗面台の使用者の動き等)に応じた吐水を行う。制御部20は、対象物の検出に応じて吐水を行い、対象物の非検出に応じて吐水を停止させる。すなわち、水栓装置10では、使用者が吐水口13aの近くに手などを差し出している間、自動的に吐水が行われる。
また、センサ部18は常に動作しているのではなく、センシングを必要とするタイミングに動作をするように、制御部20が制御している。これにより、センサ部18の消費電力を下げることができる。制御部20は、例えば、使用者が不便に感じない程度にセンサ部18のセンシング動作の頻度を下げる。これにより、水栓装置10全体の低消費電力化を図ることができる。
図2は、第1の実施形態にかかる水栓装置を表すブロック図である。
図2に表したように、センサ部18は、送信部30と、受信部31と、増幅回路32と、反転回路33と、積分回路34と、積分補正回路35と、を有する。
制御部20は、センサ部18の各部の動作を制御し、吐水口13aに接近する対象物の検出を行う。また、制御部20は、電磁弁駆動部22に接続されている。制御部20は、センサ部18の検出結果に応じて電磁弁駆動部22を駆動することにより、電磁弁16の開/閉動作を制御する。電磁弁駆動部22は、例えば、電磁弁16及び制御部20とは別に設けられる。電磁弁駆動部22は、例えば、電磁弁16又は制御部20に組み込んでもよい。電磁弁駆動部22は、必要に応じて設けられ、省略可能である。
送信部30は、投光素子40と、抵抗41と、FET(Field Effect Transistor)42と、を有する。投光素子40は、センサ部18の出力信号である赤外光を投光する。送信部30は、赤外光を伝播波として送信する。送信部30の送信する伝播波は、赤外光に限ることなく、例えば、可視光、マイクロ波、超音波などでもよい。
抵抗41及びFET42は、投光素子40に所定の電流を流すための回路である。抵抗41及びFET42は、制御部20から出力されるタイミング信号(LEDOUT)に応じて投光素子40に所定の電流を流すことにより、投光素子40をパルス投光させる。送信部30は、例えば、所定の周期でオン/オフを繰り返すパルス状の伝播波を送信する。これにより、伝播波を常時送信する場合に比べて、送信部30における消費電力を抑えることができる。
受信部31は、対象物で反射した伝播波の反射波を受信し、反射波に対応した受信信号を出力する。受信部31は、受光素子44と、抵抗45と、OPアンプ46と、を有する。受光素子44は、対象物から反射した赤外光を受光し、その受光量に比例する光電流を発生させる。抵抗45及びOPアンプ46は、受光素子44で発生した光電流を電圧に変換し、変換後の電圧を受信信号として出力する。前述のように、送信部30は、パルス状の伝播波を送信する。この場合、受信部31は、伝播波の周期に応じたパルス信号(矩形波)を受信信号として出力する。
OPアンプ46の出力端子は、コンデンサ48に接続されている。受信部31は、コンデンサ48を介して増幅回路32に接続される。これにより、受信部31は、受信信号の交流成分をコンデンサ48を介して増幅回路32に入力する。受信部31は、例えば、パルス信号の交流成分を増幅回路32に入力する。コンデンサ48は、換言すれば、微分回路を形成する。コンデンサ48は、例えば、受信信号の時間微分を増幅回路32に入力する。
増幅回路32は、抵抗50、51及びOPアンプ52を有する。増幅回路32は、受信部31から入力された受信信号を増幅し、反転回路33に入力する。反転回路33は、抵抗53、54及びOPアンプ55を有する。反転回路33は、入力信号に対して信号振幅は等しく、その極性を反転させた信号を出力する。
また、増幅回路32の出力は、スイッチング素子56を介して積分回路34に入力される。換言すれば、増幅回路32は、受信部31と積分回路34との間に設けられ、受信信号を増幅して積分回路34に出力する。
反転回路33の出力は、スイッチング素子57を介して積分回路34に入力される。各スイッチング素子56、57は、制御部20に接続されている。制御部20は、タイミング信号S2及びS3により、各スイッチング素子56、57のオン/オフを個別に制御する。スイッチング素子56、57は、例えば、アナログスイッチである。
積分回路34は、受信信号を積分し、その積分信号を出力する。この例において、積分回路34は、増幅回路32によって増幅された増幅後の受信信号と、増幅後の受信信号の極性を反転回路33で反転させた反転後の受信信号と、を積分した積分信号を出力する。
積分回路34は、OPアンプ60と、抵抗61と、コンデンサ62と、スイッチング素子63と、を有する。OPアンプ60の出力端子は、制御部20に接続されている。積分回路34の出力(積分信号)は、制御部20に入力される(AD1)。
スイッチング素子63は、制御部20に接続されている。制御部20は、タイミング信号S1をスイッチング素子63に入力することにより、スイッチング素子63のオン/オフを制御する。制御部20は、スイッチング素子63をオン状態にすることにより、コンデンサ62に蓄積された電荷を放電する。すなわち、制御部20は、スイッチング素子63をオン状態にすることにより、積分回路34のリセットを行う。
制御部20は、各タイミング信号S1、S2、S3を制御し、投光のタイミングと積分のタイミングを同期させる。これにより、例えば、効果的な受信信号の積分を行うことができる。
積分補正回路35は、積分回路34から出力される積分信号の補正を行う。積分補正回路35は、増幅回路32の入力に接続されている。より詳しくは、積分補正回路35は、増幅回路32の入力とコンデンサ48との間に接続されている。積分補正回路35は、例えば、積分信号を補正するための補正信号を増幅回路32に入力することにより、積分信号の補正を行う。
積分補正回路35は、コンデンサ65と、抵抗66と、を有する。コンデンサ65の一端は、増幅回路32の入力に接続されている。より詳しくは、コンデンサ65の一端は、抵抗50を介してOPアンプ52の反転入力端子に接続されている。コンデンサ65の他端は、抵抗66の一端に接続されている。抵抗66の他端は、制御部20に接続されている。
制御部20は、積分補正回路35にタイミング信号S4を入力することにより、積分補正回路35から増幅回路32に入力される補正信号を制御する。制御部20は、例えば、受信部31から増幅回路32に入力される受信信号を模擬した信号をタイミング信号S4として積分補正回路35に入力する。前述のように、受信信号は、例えば、パルス信号である。この場合、制御部20は、受信信号を模擬したパルス信号をタイミング信号S4として積分補正回路35に入力する。
積分補正回路35は、例えば、制御部20から入力されたパルス状のタイミング信号S4を基に、タイミング信号S4の交流成分の信号(微分信号)をコンデンサ65によって生成し、この交流成分の信号を補正信号として増幅回路32に入力する。この例において、積分補正回路35は、換言すれば、微分回路である。
図3は、第1の実施形態にかかる水栓装置の動作の一例を表すタイミングチャートである。
図3は、使用者が手などを吐水口13a(センサ部18の検出領域)に近接させた時の、水栓装置10の理想的な動作を表す。換言すれば、図3は、センサ部18が対象物を検出している時の理想的な動作である。理想的な動作とは、積分補正回路35による積分信号の補正を行うことなく、対象物の接近に応じて吐止水が適切に行われる動作である。
図3に表したように、水栓装置10の動作においては、まず、パルス投光を行う前に、T0のタイミングから所定時間、信号S1によってスイッチング素子63をオンし、コンデンサ62を放電する。すなわち、積分回路34をリセットする。この状態の積分回路34の出力電圧(OPアンプ60の出力)が基準値(反射信号のゼロ位置)となる。
T1のタイミングでLEDOUT信号がオン出力されてFET42がオンして、投光素子40が投光する。これと同時に、信号S2がオン出力されてスイッチング素子56がオンし、投光素子40の投光に同期して、反射光に比例した信号である増幅回路32の出力を積分回路34で積分する。
T2のタイミングでLEDOUT信号がオフする。これと同時に、信号S2がオフし、信号S3がオンしてスイッチング素子57がオンする。ここでは、投光素子40が投光していない状態の受信信号を、反転回路33によって極性を反転させて積分回路34で積分する。T3のタイミングでは、信号S3がオフ、信号S2がオンして、T1〜T3のタイミングの動作を繰り返す。
なお、T1〜T2とT2〜T3の時間間隔は、同じ時間である。こうして、図3のT5のタイミングまで、同一の動作を2回繰り返す。制御部20は、パルス投光の動作(T1〜T3のタイミングの動作)を所定回数繰り返す。パルス投光の回数は、例えば、10回〜100回程度である。パルス投光の回数は、これに限ることなく、任意の回数でよい。
本動作は、一般に同期積分と呼ばれており、パルス投光によりノイズを除去することができる。投光に同期して受信信号を積分する動作に加えて、投光しないタイミングで受信信号の極性を逆転させて積分(すなわち反転積分)することで、ノイズ除去効果が高まっている。このパルス投光とその積分動作を複数回、繰り返し行うことにより、反射物による積分量は増え、ノイズによる積分量は逆に減少する。このように、パルス投光とそれに同期した積分を複数回行えば、その繰り返し回数が増えるに従ってS/Nが向上することができる。また、送信部30の出力を小さくすることにより、例えば、送信部30や受信部31の小型化を図ることもできる。
投光素子40の投光に同期して増幅回路32の出力を積分することにより、積分回路34は、投光回数に比例した反射受光量を積分信号(AD1)として制御部20に出力する。図2の回路の場合、検出対象からの反射光、すなわち投光パルスに同期した信号は、積分回路34の出力が上昇する側に積分される。
なお、これは図2の構成でそうなるのであって、例えば受光素子44の取り付け極性、増幅回路32の構成(反転型か非反転型か)や増幅段数によっては積分回路34の出力が下降する側に積分される場合もある。積分回路34の出力は、上昇する方向に積分してもよいし、下降する方向に積分してもよい。
また、増幅回路32の出力と反転回路33の出力を同時間、同回数積分することにより、例えば、投光に同期しない成分、つまりセンサ部18の動作環境にあるランダムノイズを抑制することができる。こうして、投光と積分動作を繰り返すことで、反射信号量(積分回路34の出力)は大きくなり、ノイズ成分は小さくなってセンサ部18のS/N比を向上させることができる。
制御部20は、積分回路34から入力された積分信号に対して所定の閾値を設定する。制御部20は、積分信号が閾値を超えた場合に、対象物が有ると検出し、吐水を行う。この例では、積分回路34の出力が上昇する側に積分される。従って、この例において、閾値は、積分回路34をリセットした時の基準値よりも大きい。制御部20は、積分信号が閾値未満の場合に、対象物が無いと検出し、積分信号が閾値以上の場合に、対象物が有ると検出する。積分回路34の出力が下降する側に積分される場合には、これとは反対に、積分信号が閾値よりも大きい場合に、対象物が無いと検出し、積分信号が閾値以下の場合に、対象物が有ると検出する。
積分信号及び閾値は、投光素子40から所定回数のパルス投光を行った場合に、積分信号が閾値を超えるように設定される。このように、水栓装置10の理想的な動作においては、対象物が有る場合に、受信信号の積分値が閾値を超えることにより、対象物の検出が行われる。
図4は、第1の実施形態にかかる水栓装置の動作の一例を表すタイミングチャートである。
図4は、センサ部18の検出領域内に対象物が無い状態における水栓装置10の理想的な動作を表す。換言すれば、図4は、受信部31が反射波を受信していない時の理想的な動作である。
図4に表したように、センサ部18の検出領域内に対象物が無い状態においては、パルス投光を行った場合にも、受信部31の出力は、最低出力の状態(Low状態)で保持される。従って、積分回路34の出力も増減することなく、基準値の状態で保持される。
このように、水栓装置10の理想的な動作においては、対象物が無い場合、投光素子40から所定回数のパルス投光を行っても、積分信号が基準値の状態で実質的に一定となり、閾値を超えない。これにより、対象物が無いと検出される。止水中においては、止水状態が継続され、吐水中においては、吐水口13aからの吐水が停止される。
図5及び図6は、水栓装置が誤動作を起こした場合の動作の一例を表す参考のタイミングチャートである。
図5に表したように、積分回路34の出力(積分信号)は、実際には、受信部31が反射波を受信していない状態においても、基準値で一定にはならず、変動する。こうした積分信号の変動は、例えば、センサ部18や制御部20の各回路を構成する部品の特性のバラつきに起因する。
例えば、積分回路34のOPアンプ60のオフセット電圧のバラつきに起因して、積分信号が変動する。受信部31が反射波を受信してしない状態において、OPアンプ60からオフセット電圧(直流電圧)が出力されると、コンデンサ62が充電又は放電され、積分信号が変動する。コンデンサ62が充電される場合には、図5に表したように、時間の経過とともに、積分信号が連続的に増加する。反対に、コンデンサ62が放電される場合には、図6に表したように、時間の経過とともに、積分信号が連続的に減少する。
例えば、積分信号が増加する方向に変動した場合には、図5に表したように、対象物が無いにも関わらず、積分信号が閾値を超え、吐水が行われてしまう可能性が生じる。積分信号が減少する方向に変動した場合には、図6に表したように、対象物が有るにも関わらず、積分信号が閾値を超えなくなり、吐水が行われなくなってしまう可能性が生じる。
図7は、第1の実施形態にかかる水栓装置の動作の一例を表すタイミングチャートである。
図7に表したように、制御部20は、積分信号が増加する方向に変動する場合、LEDOUT信号がオフになるタイミング(例えばT2)でオンになり、LEDOUT信号がオンになるタイミング(例えばT3)でオフになるパルス状の信号S4を積分補正回路35に入力する。
この場合、各スイッチング素子56、57のオン/オフにより、コンデンサ65を介して増幅回路32に入力される交流の補正信号のうち、負側に振れる信号が用いられる。これにより、積分信号を減少させ、増加傾向の積分信号の変動を抑制することができる。減少させる補正量を調整することにより、対象物が無い状態において、積分信号を実質的に一定にすることができる。
図8は、第1の実施形態にかかる水栓装置の動作の一例を表すタイミングチャートである。
図8に表したように、制御部20は、積分信号が減少する方向に変動する場合、LEDOUT信号がオンになるタイミング(例えばT1)でオンになり、LEDOUT信号がオンになるタイミング(例えばT2)でオフになるパルス状の信号S4を積分補正回路35に入力する。
この場合、各スイッチング素子56、57のオン/オフにより、コンデンサ65を介して増幅回路32に入力される交流の補正信号のうち、正側に振れる信号が用いられる。これにより、上記とは反対に、積分信号を増加させ、減少傾向の積分信号の変動を抑制することができる。増加させる補正量を調整することにより、対象物が無い状態において、積分信号を実質的に一定にすることができる。
図9(a)及び図9(b)は、第1の実施形態にかかる水栓装置の動作の一例を表すタイミングチャートである。
図9(a)に表したように、制御部20は、例えば、積分補正回路35のコンデンサ65に入力するパルス状の信号S4のパルス幅を調整する。あるいは、図9(b)に表したように、制御部20は、例えば、積分補正回路35のコンデンサ65に入力するパルス状の信号S4のパルス数を調整する。これにより、積分補正回路35による積分信号の補正量を調整することができる。例えば、パルス状の信号S4のパルスの振幅を調整することによって、積分補正回路35による積分信号の補正量を調整してもよい。または、これらを組み合わせて補正量を調整してもよい。制御部20は、例えば、信号S4のパルス幅、パルス数、及び振幅の少なくともいずれかを調整することにより、積分信号の補正量を調整する。
制御部20は、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号に基づいて、積分補正回路35による積分信号の補正量を決定する。制御部20は、例えば、受信部31が反射波を受信していない状態において、積分回路34をリセットした直後の積分信号(基準値)と、投光素子40から所定回数のパルス投光を行った後の積分信号と、の差分ΔIS(図7参照)を求める。そして、制御部20は、この差分ΔISを打ち消すように、積分補正回路35による積分信号の補正量を決定する。制御部20は、例えば、差分ΔISと補正量のパラメータとを関連付けたテーブルデータを有する。補正量のパラメータとは、上述のように、例えば、パルス信号のパルス幅、パルス数、振幅などである。制御部20は、例えば、算出した差分ΔISに対応する補正量のパラメータをテーブルデータから読み出すことにより、積分補正回路35による積分信号の補正量を決定する。
また、制御部20は、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号と閾値との差が所定値となるように、積分補正回路35による積分信号の補正量及び閾値を決定する。受信部31が反射波を受信していない時の積分信号と閾値との差は、換言すれば、対象物の検出の分解能である。すなわち、制御部20は、検出の分解能が所定値となるように、積分補正回路35による積分信号の補正量及び閾値を決定する。
例えば、積分回路34の最大出力が3Vで、必要な分解能が0.5Vであったとする。この際、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号の出力が2.8Vであると、必要な分解能が得られなくなってしまう。この場合、例えば、対象物を検出可能な距離が変化してしまう。
制御部20は、上記のような場合に、積分信号の補正量及び閾値を調整する。例えば、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号の出力が2.4Vで安定するようにし、閾値を2.9Vに設定する。すなわち、必要な分解能が0.5Vである場合には、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号の出力が、最大出力よりも少なくとも0.5V低くなるように補正量を決定する。これにより、必要な0.5Vの分解能を得ることができる。また、例えば、補正によって検出距離が変動してしまうことを抑制することができる。
制御部20は、例えば、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号が所定値となるように、積分補正回路35による積分信号の補正量を決定してもよい。例えば、積分回路34の最大出力が3Vである場合に、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号の出力が1.5Vで安定するように補正量を決定する。この場合、例えば、閾値を予め2.0Vに設定しておくことで、必要な分解能を得ることができる。これにより、例えば、閾値を変動させる必要が無く、制御部20における対象物の検出の処理を簡潔にすることができる。
図10〜図12は、第1の実施形態にかかる水栓装置の動作の一例を表すフローチャートである。
図10に表したように、水栓装置10の制御部20は、例えば、電源の投入などで動作を開始すると、まず、補正量算出サブルーチンを実行する(図10のステップS101)。すなわち、制御部20は、積分補正回路35による積分信号の補正量を算出する処理を実行する。
図11に表したように、補正量算出サブルーチンにおいて、制御部20は、投光素子40を非発光とした状態で、積分信号の積分値の測定を行う(図11のステップS201、S202)。すなわち、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号の積分値の測定を行う。積分値の測定では、まず積分回路34をリセットした時の積分信号の積分値(基準値)を取得する。そして、所定時間経過した後の積分信号の積分値を取得する。所定時間は、実際に対象物の検出を行う際のパルス投光の回数に対応する時間である。
なお、補正量算出サブルーチンにおいて、図5のように投光素子40を実際にパルス発光させてもよいが、センサ部18の設置状態によっては、検知対象物(使用者の手)以外にも反射物として洗面器11などが存在する可能性がある。つまり、発光状態で積分値を測定すると、意図しない反射波を受信してしまう可能性がある。そのため、補正量を算出する際は、投光素子40は非発光状態とした方が精度の高い補正量を算出することができる。
制御部20は、積分値を取得した後、補正量の算出を行う(図11のステップS203)。制御部20は、前述のように、基準値と所定時間経過後の積分値との差分ΔISを算出する。
制御部20は、差分ΔISを算出した後、積分補正回路35から増幅回路32に入力する補正信号の動作条件を決定する(図11のステップS204)。換言すれば、制御部20は、積分補正回路35に入力する信号S4の動作条件を決定する。制御部20は、例えば、前述のように、算出した差分ΔISに対応するパラメータをテーブルデータから読み出すことにより、動作条件を決定する。制御部20は、動作条件を決定した後、補正量算出サブルーチンを終了し、メインの処理に戻る。
制御部20は、補正量算出サブルーチンを終了した後、例えば、所定時間待機する(図10のステップS102)。所定時間は、例えば、0.5秒である。待機時間は、これに限ることなく、任意の時間でよい。制御部20は、所定時間の待機を行った後、続いて、センサ動作サブルーチンを実行する(図10のステップS103)。
図12に表したように、制御部20は、センサ動作サブルーチンを開始すると、図7及び図8などで説明したように、投光素子40のパルス投光を行い、投光素子40のパルス投光に同期させて各スイッチング素子56、57のオン/オフを制御するとともに、補正量算出サブルーチンで決定した動作条件に応じた信号S4を積分補正回路35に入力することにより、積分補正回路35に積分信号の補正を行わせる(図12のステップS301)。
制御部20は、所定回数のパルス投光を行った後、積分回路34から入力された積分信号の積分値を測定する(図12のステップS302)。
制御部20は、積分値を測定した後、基準値と積分値との差分をセンサデータとして算出する(図12のステップS303)。
制御部20は、算出したセンサデータが閾値以上か否かを判定する(図12のステップS304)。制御部20は、センサデータが閾値以上である場合、感知と判定する(図12のステップS305)。すなわち、対象物が有ると検出する。そして、制御部20は、センサデータが閾値未満である場合、非感知と判定する(図12のステップS306)。すなわち、対象物が無いと検出する。制御部20は、感知/非感知を判定した後、センサ動作サブルーチンを終了し、メインの処理に戻る。
制御部20は、センサ動作サブルーチンを終了すると、今回の検出動作において対象物を感知したか否かを判定する(図10のステップS104)。
制御部20は、感知したと判定した場合、止水中であるか否かを判定する(図10のステップS105)。
制御部20は、止水中であると判定した場合、電磁弁駆動部22を駆動させて電磁弁16を開き、吐水を開始させた後、ステップS102の処理に戻る(図10のステップS106)。一方、制御部20は、ステップS105において吐水中であると判定した場合には、そのままステップS102の処理に戻る。
制御部20は、ステップS104において非感知と判定した場合、吐水中であるか否かを判定する(図10のステップS107)。
制御部20は、吐水中であると判定した場合、電磁弁駆動部22を駆動させて電磁弁16を閉じ、吐水を終了させた後、ステップS102の処理に戻る(図10のステップS108)。一方、制御部20は、ステップS107において止水中であると判定した場合には、そのままステップS102の処理に戻る。
制御部20は、上記の処理を繰り返す。これにより、水栓装置10では、使用者が手などを吐水口13aに近付けることにより、吐水口13aから自動で吐水が開始され、使用者が手などを吐水口13aから遠ざけることにより、吐水口13aからの吐水が終了される。
本実施形態に係る水栓装置10では、積分補正回路35によって積分信号を補正することにより、部品の特性のバラつきなどに起因する誤動作を抑制することができる。対象物が存在するのに吐水が開始されなかったり、対象物が存在しないのに吐水が行われてしまったりすることを抑制することができる。
積分補正回路35は、増幅回路32の入力に補正信号を入力することによって、積分信号を補正する。これにより、増幅後の受信信号を補正する場合に比べて、積分補正回路35の構成を簡易にすることができる。例えば、積分補正回路35における消費電力を抑えることができる。
積分補正回路35は、増幅回路32の入力に接続されたコンデンサ65を有する。これにより、積分補正回路35の構成をより簡易にすることができる。例えば、積分補正回路35を小型化することができる。
積分補正回路35による積分信号の補正量は、コンデンサ65に入力されるパルス信号のパルス幅、あるいはパルス数によって調整される。これにより、パルス幅の長短又はパルス数の増減によって補正量を調整することができ、分解能の高い補正が可能となる。
積分補正回路35による積分信号の補正量は、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号に基づいて決定される。これにより、部品の特性のバラつきなどに起因する積分信号の変動量を知ることができ、積分信号を適切に補正することができる。
積分補正回路35による積分信号の補正量及び閾値は、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号と閾値との差が所定値となるように決定される。このように、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号(基準値)と閾値との差を所定値にすることにより、閾値を適切に設定することができる。例えば、対象物を検出可能な距離(領域)が、補正によって変動してしまうことを抑制することができる。
積分補正回路35による積分信号の補正量は、あるいは、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号が所定値となるように決定される。この場合には、受信部31が反射波を受信していない時の積分信号の出力値を、補正によって所定値に設定することができる。換言すれば、待機時の積分信号の出力値を、所定値に設定することができる。これにより、例えば、制御部20における対象物の検出の処理を簡潔にすることができる。
上記実施形態では、積分補正回路35が、増幅回路32の入力に補正信号を入力する。補正信号を入力する位置は、これに限ることなく、受光素子44から制御部20へと至る信号経路上の任意の位置でよい。補正信号を入力する位置は、積分信号を補正可能な任意の位置でよい。
上記実施形態では、パルス信号の交流成分の信号を補正信号として増幅回路32に入力している。補正信号の形態は、これに限ることなく、補正信号を入力する位置、積分信号の形態、及び送信部30から送信される伝播波の形態などに応じた任意の形態でよい。補正信号の形態は、積分信号を補正可能な任意の形態でよい。
上記実施形態では、制御部20から積分補正回路35にパルス状の信号S4を入力することにより、積分補正回路35に積分信号の補正を行わせている。これに限ることなく、例えば、積分補正回路35内でパルス信号を生成することにより、積分補正回路35の動作のみで積分信号の補正を行えるようにしてもよい。換言すれば、積分補正回路35は、制御部20から独立して動作させてよい。この場合、積分信号の補正量は、上記と同様の処理などにより、積分補正回路35に算出させてもよいし、例えば、ボリューム抵抗やディップスイッチなどの調整機構を設け、使用者の設定に応じて補正量を調整できるようにしてもよい。
図10に表したフローチャートにおいて、補正量算出サブルーチンは、例えば、電源の投入時など、制御部20が動作を開始した時に実行される。補正量算出サブルーチンは、例えば、1日に1回の頻度など、所定の頻度で定期的に実行してもよい。これにより、例えば、補正量をより適切に設定することができる。水栓装置10の誤動作をより適切に抑制することができる。また、例えば、使用者の操作指示を入力する操作部を制御部20に接続し、使用者からの操作指示の入力に応じて補正量算出サブルーチンを実行できるようにしてもよい。
(第2の実施形態)
図13は、第2の実施形態にかかるトイレ装置を表す斜視図である。
図13に表したように、トイレ装置100(吐水装置)は、大便器102と、給水路14と、電磁弁16(開閉弁)と、センサ部18と、制御部20と、を備える。なお、上記第1の実施形態に関して説明した水栓装置10と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
大便器102は、凹状のボウル部と、ボウル部に洗浄水を吐出する吐水口(図示は省略)と、を有する。大便器102は、給水路14を介して供給された洗浄水を吐水口からボウル部内に吐出することにより、ボウル部内に排泄された汚物などを洗い流す。すなわち、この例においては、大便器102が吐水部として機能する。大便器102は、換言すれば、洋式腰掛便器である。
センサ部18は、上記第1の実施形態と同様に、送信部30と、受信部31と、増幅回路32と、反転回路33と、積分回路34と、積分補正回路35と、を有する(いずれも図示は省略)。センサ部18は、使用者の手などの対象物を検出し、検出結果を制御部20に入力する。制御部20は、例えば、センサ部18が対象物を検出したことに応答して電磁弁16を所定時間開くことにより、自動的に大便器102の洗浄を行う。制御部20は、例えば、センサ部18の検出結果が対象物を検出した状態から検出していない状態に切り替わった場合に、大便器102の洗浄を行うようにしてもよい。すなわち、制御部20は、使用者の大便器102から離れる動きに応答して大便器102の洗浄を行ってもよい。
このように構成されたトイレ装置100において、上記第1の実施形態と同様に、積分補正回路35によって積分信号を補正する。これにより、上記第1の実施形態の水栓装置10と同様に、トイレ装置100においても、部品の特性のバラつきなどに起因する誤動作を抑制することができる。
(第3の実施形態)
図14は、第3の実施形態にかかるトイレ装置を表す説明図である。
図14に表したように、トイレ装置200(吐水装置)は、小便器202と、給水路14と、電磁弁16(開閉弁)と、センサ部18と、制御部20と、を備える。
小便器202は、凹状のボウル部と、ボウル部に洗浄水を吐出する吐水口(図示は省略)と、を有する。小便器202は、給水路14を介して供給された洗浄水を吐水口からボウル部内に吐出することにより、ボウル部の表面を洗い流す。すなわち、この例においては、小便器202が吐水部として機能する。
センサ部18は、上記第1の実施形態と同様に、送信部30と、受信部31と、増幅回路32と、反転回路33と、積分回路34と、積分補正回路35と、を有する(いずれも図示は省略)。センサ部18は、使用者の身体などの対象物を検出し、検出結果を制御部20に入力する。制御部20は、例えば、センサ部18の検出結果が対象物を検出した状態から検出していない状態に切り替わった場合に、小便器202の洗浄を行う。
このように構成されたトイレ装置200において、上記第1の実施形態と同様に、積分補正回路35によって積分信号を補正する。これにより、上記第1の実施形態の水栓装置10と同様に、トイレ装置200においても、部品の特性のバラつきなどに起因する誤動作を抑制することができる。
このように、吐水装置は、水栓装置でもよいし、大便器を用いたトイレ装置でもよいし、小便器を用いたトイレ装置でもよい。吐水装置は、これらに限ることなく、対象物の検出を行って吐止水を制御する任意の吐水装置でよい。
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、水栓装置10、トイレ装置100、200などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。