以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。便宜上、各図には、互いに直交するX、Y、Z軸が付記されている。Z軸方向がインクジェットヘッド1の高さ方向であり、Z軸正方向が下方向である。また、X軸方向がインクジェットヘッド1の厚み方向で、Y軸方向がインクジェットヘッド1の幅方向である。インクジェットヘッド1は、Z軸正方向(下方向)にインクを吐出する。なお、X軸方向が請求項6に記載の「第1の方向」に相当し、Y軸方向が請求項6に記載の「第2の方向」に相当する。
図1(a)は、実施の形態に係るインクジェットヘッド1の構成を示す図であり、図1(b)は、実施の形態に係るアクチュエータ30と構造体40とを組み合わせた構成を模式的に示す図である。
図1(a)に示すように、インクジェットヘッド1は、収納ボックス10と、ヘッドベース20とを備える。収納ボックス10は、ヘッドベース20に対して着脱可能となっている。
収納ボックス10は、下面が開放された矩形の箱体からなっている。収納ボックス10の上面には内部に繋がる切欠き10aが設けられ、この切欠き10aを介して回路基板11が収納ボックス10に収納されている。回路基板11にはアクチュエータ30を駆動するための駆動回路が実装されている。切欠き10aのY軸正側とY軸負側に、それぞれ、円形の穴部10bが設けられている。穴部10bは、インク供給用のチューブ(図示せず)を収納ボックス10の内部へと導くためのものである。
ヘッドベース20は、上下に貫通する矩形の開口20aを中央に有する枠体からなっている。開口20aの下端に、図1(b)に示すアクチュエータ30と構造体40が設置される。アクチュエータ30は、開口20a内において回路基板11とFPC(Flexible Printed Circuits)によって電気的に接続される。
図1(b)に示すように、アクチュエータ30は、長方形の輪郭を有する板体からなっている。アクチュエータ30は、構造体40の上面に重ねられる。構造体40は、長方形の輪郭を有する板体からなっている。また、構造体40には、X軸方向に並ぶ4つのメイン流路51が形成されている。
アクチュエータ30のY軸正側の端部とY軸負側の端部には、それぞれ、4つのインク供給口30aがX軸方向に並んで形成されている。Y軸方向に並ぶ2つのインク供給口30aはそれぞれ、一つの独立したメイン流路51に繋がっている。
図2(a)は、図1(b)の構成のY軸正側の端部を拡大した図である。
アクチュエータ30の裏面には溝が形成されている。アクチュエータ30が構造体40に重ねられることにより、アクチュエータ30裏面の溝と構造体40の上面との間に、圧力室52が形成される。圧力室52は、構造体40に形成された連絡流路53(図2(b)参照)を介してメイン流路51に繋がっている。
なお、アクチュエータ30上面のX軸負側の端部とX軸正側の端部には、それぞれ、回路基板11のFPCを接続するための端子群(図示せず)が設けられている。この端子群は、アクチュエータ30の圧電体層34(図2(b)参照)に電圧(駆動信号)を印加するためのものである。
上記のようにメイン流路51は、端部がインク供給口30aに繋がっている。メイン流路51に沿って多数の圧力室52が配置され、各圧力室52が各連絡流路53(図2(b)参照)によってメイン流路51に繋がっている。
図1(b)に戻り、8つのインク供給口30aには、それぞれ、個別に管(図示せず)が嵌められ、各管にインク供給用のチューブ(図示せず)からインクが供給される。管は、開口20a内に配された支持部材によって支持され、管にインクを供給するチューブが穴部10bを介して外部に引き出される。インク供給用のチューブと管を介してインクがインク供給口30aに供給される。これにより、メイン流路51および連絡流路53を通ってインクが圧力室52に供給される。
Y軸方向に並ぶ2つのインク供給口30aには同じ色のインクが供給され、X軸方向に並ぶ4つのインク供給口30aには互いに異なる色のインクが供給される。したがって、図1(b)の構成では、4色のインクがアクチュエータ30に供給される。これにより、Y軸方向に並ぶ圧力室52には同じ色のインクが充填され、X軸方向に並ぶ圧力室52には互いに異なる色のインクが充填される。ヘッドベース20の開口20aの下端には、アクチュエータ30と構造体40の組み合わせが設置される。したがって、4色のインクがヘッドベース20の下面から吐出される。
図2(b)は、図2(a)のX軸正側(右側)の圧力室52付近を、圧力室52のY軸方向の中央位置において、X−Z平面に平行な面で切断した断面を模式的に示す断面図である。
メイン流路51に流入されたインク60は、連絡流路53を通って圧力室52に充填される。構造体40は、メイン流路51および連絡流路53、54を有する上部材40aと、ノズル41を有する下部材40bからなっている。下部材40bには、圧力室52からZ軸正方向に延びる連絡流路54の部分に、ノズル41となる略円形の孔が形成されている。ノズル41は、Z軸正方向に向かうに従って次第に径が小さくなっており、出口付近で径が均一になっている。
アクチュエータ30は、圧力室層31の上部に、振動板層32、絶縁層33、圧電体層34および電極層35が積層されて構成されている。振動板層32、絶縁層33、圧電体層34および電極層35は、スパッタ法等の真空製膜技術により形成される。これらの層が塗布等の他の製膜技術により形成されてもよい。圧力室層31は、めっき工法等の厚膜形成技術もしくは金属板のエッチィング工法により形成される。圧力室層31の下面に上部材40aが装着されることにより、圧力室52が形成される。振動板層32は、導電性の金属材料から構成され、圧電体層34の下部電極(共通電極)を兼ねている。絶縁層33は、圧電体層34に対して振動板層32を絶縁する。すなわち、絶縁層33は、圧電機能領域R1以外の圧電体層34への電圧印加を遮蔽する。
圧電体層34は、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)で形成される。圧電体層34の膜厚は数μm程度である。電極層35は、導電性材料により形成される。電極層35は、たとえば、貴金属を含むチタンから形成される。電極層35の膜厚は0.2μm程度である。
電極層35に電圧が印加されることにより圧電機能領域R1において圧電体層34がZ軸方向に変形し、これに伴い、振動板層32が変形する。圧電機能領域R1において振動板層32が下方に変形すると、圧力室52の容積が減少し、圧力室52に充填されたインク60の圧力が高まる。これにより、ノズル41からインク60の液滴61が吐出される。
圧力室層31、振動板層32、絶縁層33、圧電体層34および電極層35は、それぞれ、必ずしも単層でなくともよく、複数の層によって形成されてもよい。また、各層の間に、さらに他の層が配置されてもよい。
図2(c)は、構造体40におけるノズル41の配列を模式的に示す図である。
図2(c)に示すように、構造体40には、複数のノズル41が一列に並ぶように配置されている。構造体40には、4つのノズル41の列L1〜L4が配置されている。たとえば、列L1〜L4に、それぞれ、200個のノズル41が一定間隔で設けられている。各列のノズル41の数はこれに限られるものではない。
図3は、圧力室52付近の構成の断面を示す部分斜視図である。
図3に示すように、構造体40の上部材40aは、板状体411、412と、7つの板状体413と、板状体414とを積み重ねることにより構成されている。板状体411〜414は、それぞれ、所定の厚みを有し、また、平面視において構造体40と同じ輪郭を有している。7つの板状体413は、同じ構造である。下から1番目と2番目の板状体413の間には、薄いダンパー415が挟まれている。ダンパー415は、アクチュエータ30が駆動され、振動板層32が下方向(Z軸正方向)に変位した際に連絡流路53からメイン流路51に付与される圧力波を吸収するためのものである。
板状体411、412には、それぞれ、連絡流路54を形成するための長孔411a、412aが形成されている。長孔411a、412aは、X軸方向が長手方向である。平面視において、長孔411a、412aは、それぞれ、X軸方向に長い長円形の輪郭を有する。より詳しくは、長孔411aは、互いに向き合う2つの半円弧の端をそれぞれ直線で繋いだ輪郭を有する。長孔412aは、長孔411aと同様の2つの半円弧をそれぞれ長孔411aよりも短い直線で繋いだ輪郭を有する。
7つの板状体413には、連絡流路54を形成するための孔413aが形成されている。孔413aは、略円形である。板状体414およびダンパー415にも、それぞれ、連絡流路54を形成するための孔414a、415aが形成されている。孔414a、415aの径は、孔413aの径と略同じである。7つの孔413aは、互いに中心が一致している。また、孔414a、415aの中心は、孔413aの中心と一致している。ノズル41の中心は、孔413a、414a、415aの中心に一致している。
長孔412aの中心は、Y軸方向において孔413aの中心と一致し、X軸方向において孔413aの中心からX軸負方向にずれている。また、長孔411aの中心は、Y軸方向において長孔412aの中心と一致し、X軸方向において長孔412aの中心からX軸負方向にずれている。平面視において、長孔411a、412aのX軸正側の端縁は、孔413aのX軸正側の端縁と一致している。
板状体412、413には、それぞれ、メイン流路51に対応する領域に開口412b、413bが形成されている。開口412bは、開口413bに比べて、X軸方向の幅が狭くなっている。平面視において、開口412bのX軸正側の端縁は、開口413bのX軸正側の端縁と一致している。メイン流路51は、ダンパー415で仕切られている。
板状体411には、連絡流路53に対応する領域に開口411bが形成されている。この開口411bの底、すなわち、連絡流路53の入口にフィルタ411cが形成されている。フィルタ411cには、数μm程度の径の孔H1が多数設けられている。フィルタ411cに設けられた孔H1の径は、ノズル41の出口の径よりもやや小さい。たとえば、ノズル41の出口の径は20μmであり、フィルタ411cの孔H1の径は15μmである。平面視において、開口411bは、X軸方向に長い六角形の輪郭を有する。この他、開口411bは、X軸方向に長い長円形の輪郭、たとえば、互いに向き合う2つの半円弧の端をそれぞれ直線で繋いだ輪郭を有してもよい。
上述した長孔411a、孔412aおよび開口411bについては、大きな円形状にしてもよいが、ノズル41のピッチを狭くできなくなり、高密度印刷の阻害となるため、上記のように、長孔形状にすることが好ましい。
開口411bは、X軸正側が圧力室52に重なり、X軸負側は圧力室52に重ならないように、X軸方向において圧力室52からずれされて配置されている。また、フィルタ411cは、連絡流路53の入口の全領域に配置されている。これにより、フィルタ411cのX軸負側の部分と圧力室層31の下面との間に隙間が生じ、この隙間もインクの流路となっている。
開口411bのX軸負側では、メイン流路51からフィルタ411cを通り抜けたインクが、フィルタ411cと圧力室層31の下面との間の隙間を通って、開口411bのX軸正側から圧力室52へと進入する。アクチュエータ30が駆動されて圧力室52の圧力が高められると、圧力室52に充填されたインクが長孔411a、412aおよび孔413a、414a、415aにより構成される連絡流路54を通ってノズル41から吐出される。
図3に示すように、本実施の形態では、複数の板状体411、412、413、414を積み重ねることにより構造体40の上部材40aが構成され、上部材40aの下面に下部材40bが接着、もしくは熱拡散工法を用いて接合される。また、上部材40aが圧力室層31の下面に接着されて、上部材40aと下部材40bとからなる構造体40がアクチュエータ30に装着される。すなわち、連絡流路54を有する構造体40をアクチュエータ30に接着することにより圧力室52と連絡流路54とが接続される。このとき同時に、圧力室52と連絡流路53とが接続される。
ところで、インクジェットヘッドでは、構造体40のメイン流路51に付着した微細なゴミや構造体40の欠片等の不純物が、メイン流路51を流れるインクに混入することが起こり得る。また、もともとインクに不純物が含まれていることもある。このような場合、不純物の大きさがノズル41の出口の径よりも大きいと、ノズル41へと到達した不純物によってノズル41が詰まり、ノズル41からインクが円滑に吐出されないことが起こり得る。
これに対し、本実施の形態では、連絡流路53の入口にフィルタ411cが設けられているため、メイン流路51を流れるインクにノズル41の径より大きな不純物が混入したとしても、この不純物によってノズル41が詰まることが防止される。以下、フィルタ411cの効果について説明する。
図4(a)は、実施の形態に係る圧力室52付近の構成および不純物の流れを模式的に示す断面図であり、図4(b)は、比較例に係る圧力室52付近の構成および不純物の流れを模式的に示す断面図である。図4(a)、(b)には、圧力室52のY軸方向の幅の中央位置において、アクチュエータ30および構造体40をXZ平面に平行な平面で切断した断面が示されている。
図4(b)に示す比較例では、最上段の板状体411’と2段目の板状体412’の構成が、図4(a)に示す実施の形態の構成と相違している。すなわち、比較例では、板状体413に形成された孔413aと同径の円形の孔411a’、412a’が、それぞれ、最上段および2段目の板状体411’、412’に設けられ、これらの孔411a’、412a’の中心が、孔413aの中心に一致している。これにより、連絡流路54が構成されている。また、比較例では、連絡流路53を構成する円形の孔411b’、412b’が、それぞれ、最上段および2段目の板状体411’、412’に設けられている。ここで、孔412b’の径は、孔411b’の径よりも小さく設定されている。
比較例の構成では、メイン流路51を流れるインクに不純物62が混入すると、この不純物62が、孔411b’、412b’からなる連絡流路53を通って圧力室52に進入し、その後、連絡流路54を通ってノズル41へと到達する。これにより、ノズル41が不純物62で塞がれ、ノズル41からインクが吐出されないことが起こり得る。
これに対し、本実施の形態では、図4(a)に示すように、連絡流路53の入口に、多数の円形の孔H1を有するフィルタ411cが、入口の全領域に亘って設けられている。また、フィルタ411cに設けられた孔H1の径は、ノズル41の出口の径よりも小さく設定されている。このため、ノズル41の出口の径よりも大きい不純物62が、メイン流路51を流れるインクに混入したとしても、不純物62は、フィルタ411cで止められて、圧力室52に進入することがない。このため、不純物62によりノズル41が詰まることが防がれる。
なお、フィルタ411cの孔H1の径よりも小さい不純物62は、フィルタ411cを通り抜けて、ノズル41へと到達する。しかし、この不純物62は、ノズル41の出口の径より小さいので、ノズル41からインクが吐出される際に、インクに含まれて外部に排出される。
このように、本実施の形態によれば、不純物62でノズル41が詰まることが確実に防止される。
なお、本実施の形態では、圧力室52側から1つ目の板状体411とその下の板状体412に長孔411a、412aが形成され、その他の板状体413、414の孔413a、414aよりもX軸方向に広くなっている。これにより、構造体40をアクチュエータ30に接着する際に構造体40とアクチュエータ30との間に多少の位置ずれが生じても、圧力室52に重なる連絡流路54の面積が顕著に小さくなることを抑制できる。
同様に、連絡流路53に構成された開口411bについても、X軸方向に長い長孔形状を有している。このため、構造体40をアクチュエータ30に接着する際に構造体40とアクチュエータ30との間に多少の位置ずれが生じても、圧力室52に重なる連絡流路53の面積が顕著に小さくなることを抑制できる。
図5(a)、(b)は、それぞれ、比較例に係る圧力室52と連絡流路53、54との重なりを模式的に示す図である。図5(a)、(b)には、圧力室52をZ軸正側から透視した状態が示されている。便宜上、図5(a)、(b)には、3つの圧力室52と連絡流路53、54との重なりが示されている。
図5(a)に示すように、比較例の構成では、構造体40がアクチュエータ30に位置ずれなく接着された場合、圧力室52に重なる連絡流路54の面積S1が適正に確保され、また、圧力室52に重なる連絡流路53の面積S2が適正に確保される。
しかしながら、比較例の構成では、図5(b)に示すように、構造体40をアクチュエータ30に接着する際に構造体40とアクチュエータ30との間にY軸方向の位置ずれが生じると、圧力室52に重なる連絡流路54の面積S3が正規の面積S1から減少し、また、圧力室52に重なる連絡流路53の面積S4が正規の面積S2から減少する。このため、連絡流路53から圧力室52にインクが流れにくくなり、また、圧力室52から連絡流路54にインクが流れにくくなる。
図6(a)、(b)は、それぞれ、実施の形態に係る圧力室52と連絡流路53、54との重なりを模式的に示す図である。図5(a)、(b)と同様、図6(a)、(b)には、圧力室52をZ軸正側から透視した状態が示されており、また、3つの圧力室52と連絡流路54の入口との重なりが示されている。図6(a)、(b)の連絡流路54側は、連絡流路54を構成する孔413aと圧力室52とが重なった領域が破線で囲まれており、連絡流路54を構成する長孔411aと圧力室52とが重なった領域にハッチングが付されている。
実施の形態の構成では、構造体40がアクチュエータ30に位置ずれなく接着された場合、図6(a)に示すように、圧力室52に重なる連絡流路54の面積が広く確保される。ここで、図3に示すノズル41へと続く孔413a、414a、415aが圧力室52に重なる面積S1は、図5(a)に示す比較例の面積S1と同じである。しかし、上記のように、実施の形態では、圧力室52側から1番目と2番目の長孔411a、412aが孔413aに比べてX軸方向に広げられているため、長孔411aが圧力室52に重なる面積S5は、図5(a)に示す比較例の面積S1よりも広くなる。また、実施の形態では、開口411bがX軸方向に広げられているため、開口411bが圧力室52に重なる面積S6は、図5(a)に示す比較例の面積S2よりも広くなる。
このため、実施の形態の構成では、図6(b)に示すように、構造体40をアクチュエータ30に接着する際に構造体40とアクチュエータ30との間にY軸方向の位置ずれが生じた場合は、連絡流路54の本流部分が圧力室52に重なる面積S3が正規の面積S1から減少するものの、連絡流路54(長孔411a)が圧力室52に重なる面積、すなわち、長孔411aが圧力室52に重なる面積S7が広く確保され、また、連絡流路53(開口411b)が圧力室52に重なる面積S8が広く確保される。このため、連絡流路53から圧力室52へと円滑にインクが導かれ、また、圧力室52から連絡流路54へと円滑にインクが導かれる。よって、このような位置ずれが生じた場合にも、ノズル41から所定量のインクを円滑に吐出させることができる。
上記は、圧力室52がY方向にずれることを想定した説明を行ったが、前述と直交する方向のX方向に位置ズレした際にも同様の効果が得られる。
図7は、実施の形態に係るインクジェット装置の構成を示すブロック図である。
インクジェット装置は、上記構成を備えたインクジェットヘッド1の他、インク供給部2と、コントローラ3と、インタフェース4とを備える。
インク供給部2は、インクジェットヘッド1にインクを供給するための上述のチューブと、チューブに接続されたインクタンクと、インクタンクからチューブにインクを供給するためのポンプとを備える。コントローラ3は、CPUとメモリを備え、メモリに保持されたプログラムに従ってインクジェットヘッド1およびインク供給部2を制御する。インタフェース4は、印刷すべき文字および図形等の描画情報の入力を受け付けて、当該描画情報をコントローラ3に出力する。
コントローラ3は、入力された描画情報に従ってインクジェットヘッド1を制御し、被印刷面に印字や描画を行う。こうして、印刷画像に対応するノズル41からインクが被印刷面に吐出され、被印刷面に印字や描画が行われる。
<実施形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、以下の効果が奏される。
図4(a)を参照して説明したとおり、ノズル41の径よりも大きい不純物62がインクに含まれた場合、この不純物62は、ノズル41に至る前にフィルタ411cによって除去される。よって、もともとインクに混入していた不純物62やヘット製造上混入した不純物62によってノズル41が詰まることを抑制することができる。
図3に示すように、フィルタ411cは、ノズル41の径より小さい径の多数の孔H1を有する構成であるため、ノズル41の径より大きい不純物62を確実にブロックできる。
なお、インクに不純物62が含まれると、この不純物62がフィルタ411cの下面に付着することが起こり得る。しかしながら、本実施の形態によれば、ノズル41からインクを吐出する際にアクチュエータ30によって付与される圧力によって、圧力室52内のインクの一部が、連絡流路53からメイン流路51へと逆流する。このインクの流れによって、フィルタ411c下面に付着した不純物62が、フィルタ411cから剥離される。これにより、不純物62によってフィルタ411cに目詰まりが生じることが抑止され、メイン流路51から圧力室52へのインクの流れが確保される。
また、本実施の形態では、圧力室52からメイン流路51へと逆流するインクの流れに対してフィルタ411cが抵抗となるため、圧力室52内の圧力が連絡流路53を介してメイン流路51へと逃げにくくなる。このため、図3および図4(a)に示すように連絡流路53の断面積を広げても、圧力室52内の圧力をノズル41に適正に付与できる。したがって、連絡流路53の面積を広げてフィルタ411cの面積を広げることにより、ノズル41に付与される圧力を適正に維持しつつ、メイン流路51から圧力室52へとインクを円滑に供給することができる。
また、本実施の形態では、アクチュエータ30を駆動した際に圧力室52からメイン流路51へと向かう圧力波が、フィルタ411cで緩衝される。このため、この圧力波がダンパー415で跳ね返されて、再び圧力室52に進入することを、より効果的に抑止できる。このため、圧力波による圧力室52の不所望な圧力変動を防ぐことができ、これにより、アクチュエータ30によるインクの吐出動作を、より精度良く行うことができる。
図3および図4(a)に示すように、連絡流路53は、X軸正側が圧力室52に重なり、X軸負側は圧力室52に重ならないように、X軸方向に圧力室52からずれされて配置され、また、フィルタ411cは、連絡流路53入口の全領域に配置されている。これにより、フィルタ411cのX軸負側の部分と圧力室層31の下面との間に隙間を生じさせることができ、この隙間を介して、フィルタ411cから圧力室52へとインクを導くことができる。また、フィルタ411cの面積を大きき確保してフィルタ411cを通過するインクの流量を高めながら、圧力室52に重なる連絡流路53の面積を抑えて圧力室52内の圧力が連絡流路53からメイン流路51へと逃げることを抑制することができる。これにより、メイン流路51から圧力室52にインクを円滑に導くことと、圧力室52に付与された圧力によりインクを適正に吐出させることの両方を同時に実現できる。
図6(a)、(b)に示すように、圧力室52および連絡流路53は、何れも、X軸方向(第1の方向)の幅がX軸方向(第1の方向)に直交するY軸方向(第2の方向)の幅よりも広くなっており、連絡流路53は、X軸方向(第1の方向)において圧力室52からずらされて配置されている。これにより、図6(b)に示すように、構造体40をアクチュエータ30に接着する際に構造体40とアクチュエータ30との間にY軸方向の位置ずれが生じたとしても、連絡流路53(開口411b)が圧力室52に重なる面積S8が広く確保され、また、X軸方向の位置ずれが生じた場合も、連絡流路53(開口411b)が圧力室52に重なる面積が広く確保される。このため、連絡流路53から圧力室52へと円滑にインクが導かれ、また、圧力室52から連絡流路54へと円滑にインクが導かれる。よって、このような位置ずれが生じた場合にも、ノズル41から所定量のインクを円滑に吐出させることができる。
<変更例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に何らの制限を受けるものではない。
たとえば、上記実施の形態では、連絡流路53の幅をX軸方向(第1の方向)に広げたが、図8(a)、(b)に示すように、連絡流路53(開口411b)の幅をY軸方向(第2の方向)に広げてもよい。
この変更例によっても、構造体40とアクチュエータ30の位置ずれに伴って、図8(b)に示すように、連絡流路53と圧力室52との間にY軸方向の位置ずれが生じた場合に、連絡流路53が圧力室52に重なる面積が小さくなることを抑制できる。よって、このような位置ずれに対して、上記実施の形態と同様、インクの流れを確保できるとの効果が奏され得る。
しかしながら、この変更例では、開口411bの広がり方向がY軸方向であるため、図8(a)、(b)に示すように、隣り合う開口411b間の隙間がかなり狭くなる。このため、構造体40とアクチュエータ30との間にY軸方向の位置ずれが生じると、図8(b)に示すように、圧力室52が隣の連絡流路53にかなり接近し、圧力室52と隣の連絡流路53とが連通しやすくなる。
これに対し、上記実施の形態では、開口411bの広がり方向がX軸方向(第1の方向)であるため、図6(a)、(b)に示すように、隣り合う開口411b間の隙間を広く確保できる。このため、構造体40とアクチュエータ30との間にY軸方向の多少の位置ずれが生じても、圧力室52と隣の連絡流路53とが連通することがない。よって、圧力室52内に充填されたインクを適正に吐出させることができる。この理由から、開口411bの広がりは、上記実施の形態のようにX軸方向(第1の方向)であることが好ましい。
また、上記実施の形態では、フィルタ411cが連絡流路53の入口に設けられたが、フィルタ411cが、ノズル41と連絡流路53の入口付近との間の他の位置に設けられてもよい。たとえば、図9(a)に示すように、フィルタ411dが、連絡流路54の入口に設けられてもよく、連絡流路54のその他の位置に設けられてもよい。
ただし、図4(a)の変更例では、フィルタ411dが、圧力室52からノズル41へと向かうインクの流れに対して抵抗となるため、圧力室52内のインクをノズル41へと円滑に導くためには、フィルタ411dの面積をかなり広げる必要がある。また、この構成では、不純物62がフィルタ411dの上面に付着するため、アクチュエータ30駆動時に生じるインクの流れによって不純物62をフィルタ411dから剥離させる作用が上記実施の形態に比べて低くなり、このため、フィルタ411d上面に不純物62が堆積しやすくなる。これらの理由から、フィルタ411dは、上記実施の形態のように連絡流路53の方に設けることが好ましい。
また、上記実施の形態では、連絡流路53を構成する板状体411にフィルタ411cが設けられたが、連絡流路53を構成する部材とは別の部材にフィルタ411cを設けてフィルタ411cを流路に配置してもよい。たとえば、フィルタ411cを形成した部材をメイン流路51側から設置して連絡流路53の入口付近にフィルタ411cが配置されてもよい。この場合、フィルタ411cは、連絡流路53の入口に嵌まり込んでもよく、あるいは、連絡流路53の入口を覆うようにして連絡流路53の入口からややメイン流路51側に変位した位置に配置されてもよい。
この他、連絡流路53の配置位置は、上記実施の形態に示した位置に限られるものではなく、たとえば、図9(b)に示すように、連絡流路53のX軸方向の全範囲が圧力室52に重なるように、連絡流路53が配置されてもよい。また、連絡流路53におけるフィルタ411dのZ軸方向の配置位置も上記実施の形態に示した位置に限られるものではなく、たとえば、図9(b)に示すよう、連絡流路53の入口からZ軸負側に変位した位置にフィルタ411cが設けられてもよく、あるいは、連絡流路53の出口にフィルタ411cが設けられてもよい。
ただし、図4(a)のように、開口411bとフィルタ411cを配置すれば、上記のように、フィルタ411cの面積を大きき確保してフィルタ411cを通過するインクの流量を高めながら、圧力室52に重なる連絡流路53の面積を抑えて圧力室52内の圧力が連絡流路53からメイン流路51へと逃げることを抑制できるとの効果が奏される。よって、この効果から、開口411bとフィルタ411cは、図4(a)のように配置することが好ましい。
また、上記実施の形態では、複数の板状体411、412、413、414を重ねることにより、構造体40の上部材40aが構成されたが、構造体40の構成方法は、これに限定されるものではない。たとえば、図3に示す7つの板状体413のうち上側6つの板状体413が1つの部材により一体形成されてもよい。
この他、インクジェットヘッド1やアクチュエータ30の構成、および、メイン流路51、圧力室52、連絡流路53の形状や構成も、上記実施の形態のものに限定されるものではない。また、上記実施の形態では、一つのメイン流路に対してY軸方向に並ぶ2つのインク供給口30aからインクが供給されたが、一つのメイン流路に対して一つのインク供給口30aが設けられてもよい。
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。