以下、添付図面を参照して、本願の開示する便器洗浄装置および水洗大便器の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
<1.水洗大便器の構成>
図1は、実施形態にかかる水洗大便器を斜め後方から眺めた模式斜視図である。図1に示すように、水洗大便器10は、便器本体100と、排水ソケット200とを備える。
本願明細書においては、便器本体100の前に立った使用者からみて手前側を「前方」とし、奥側を「後方」とする。また、便器本体100の前に立った使用者からみて右側を「右側方」とし、左側を「左側方」とする。また、便器本体100の前に立った使用者からみて上方を「上方」とし、下方を「下方」とする。
便器本体100は、汚物を受けるボウル部110と、ボウル部110に接続され、ボウル部110内の汚物を排水管50へ導く排水トラップ管路120とを備える。
ボウル部110には、排水トラップ管路120に向けて洗浄水を吐出するジェット吐水口111と、ボウル部110上部のリムから洗浄水を吐出してボウル部110内に洗浄水の旋回流を形成するリム吐水口113とが形成される。
排水トラップ管路120は、その入口から上方へ延びる上昇路部分と、上昇路部分の末端から下方に延びて排水ソケット200に接続される下降路部分とを有する。なお、ボウル部110から排水トラップ管路120の上昇路部分にかけては、水封状態を形成するための洗浄水(溜水)が貯留される。
排水ソケット200は、排水トラップ管路120と排水管50との間に設けられ、排水トラップ管路120と排水管50とを接続する。
上記のように構成された便器本体100は、ジェット吐水口111から吐出される洗浄水によってサイホン作用を効率的に発生させつつ、ボウル部110内の汚物を上記サイホン作用を利用して排水トラップ管路120へ引き込んで排水管50へ排出する。
<2.排水ソケットの構成>
次に、排水ソケット200の構成について図2Aおよび図2Bをさらに参照して具体的に説明する。図2Aおよび図2Bは、排水ソケット200の内部構成を示す模式断面図である。なお、図2Aには、開閉弁240が閉じた状態を、図2Bには、開閉弁240が開いた状態をそれぞれ示している。
図1に示すように、排水ソケット200は、ソケット本体210と、パッキン220と、操作部230とを備える。
パッキン220は、ソケット本体210の上端部に設けられ、例えばゴムなどの弾力性を有する材料により形成される。パッキン220は、上下方向に貫通する貫通孔を有し、この貫通孔に、排水トラップ管路120の下流側の端部が接続される。
操作部230は、例えばレリースワイヤであり、アウターチューブ231と、アウターチューブ231の内部に挿設されたインナーワイヤ233と、インナーワイヤ233の端部に設けられたリング状の把持部236とを備える。なお、操作部230は、レリースワイヤに限定されるものではなく、例えば、回転可能なハンドルなどであってもよい。
操作部230は、便器本体100の内部に収容されており、便器本体100の図示しないパネルによって外部から視認できない状態となっている。使用者は、図示しないパネルを取り外すことにより、操作部230を操作可能となる。
図2Aおよび図2Bに示すように、ソケット本体210は、排水トラップ管路120と排水管50とを接続する接続流路211を備える。そして、排水ソケット200は、接続流路211を開閉する開閉弁240と、開閉弁240を軸支する支持軸243とを備える。
支持軸243は、操作部230のインナーワイヤ233に接続され、インナーワイヤ233の移動に伴って開閉弁240を回動させる。
使用者によって操作部230が操作されていない通常時において、開閉弁240は、図2Aに示す開状態に維持される。したがって、開閉弁240は、通常時においては接続流路211の流路断面積を変化させてはいない。
一方、使用者が操作部230の把持部236を引っ張ると、インナーワイヤ233の移動に伴って開閉弁240が支持軸243を中心に回動して、図2Bに示す閉状態、すなわち、接続流路211の流路断面積を狭くした状態となる。
なお、開閉弁240は、接続流路211を完全に閉鎖する必要はない。すなわち、リム吐水口113およびジェット吐水口111から供給される洗浄水によりボウル部110の内部の水位を初期水位よりも上昇させることができればよく、開閉弁240と接続流路211との間に多少の隙間が存在していてもよい。
ここでは、排水ソケット200が、接続流路211の流路断面積を変化させる構成として、開閉弁240を備える場合の例について説明したが、排水ソケット200は、開閉弁240に代えて、たとえばターントラップを備えていてもよい。ターントラップは、電動で上下回動し、ボウル部110内に貯水された洗浄水を汚水と共に排出させることができる。また、ここでは、開閉弁240が接続流路211に設けられる場合の例について説明したが、開閉弁240やターントラップ等の可動部は、排水トラップ管路120に設けられていてもよい。
<3.便器洗浄装置の構成>
次に、便器洗浄装置の構成について図3を参照して説明する。図3は、便器洗浄装置の構成を示す図である。
図3に示すように、便器洗浄装置150は、便器本体100の後方に配置される。便器洗浄装置150は、図示しない外部電源に接続されており、かかる外部電源から供給される外部電力を用いて電磁弁等の部品を駆動させることによって、ボウル部110に洗浄水を供給する。
便器洗浄装置150は、定流量弁155と、電磁弁156と、リム吐水用バキュームブレーカ164とを備える。給水路151には、貯水タンク177への給水とリム吐水とを切り替える切替弁157と、貯水タンク177と、加圧ポンプ173と、ジェット吐水用バキュームブレーカ166と、水抜栓171と、が内蔵される。また、便器洗浄装置150には、電磁弁156の開閉操作、切替弁157の切換操作、及び、加圧ポンプ173の回転数や作動時間等を制御する制御部174が内蔵される。
定流量弁155は、止水栓152、ストレーナ153、及び分岐金具154を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞る。たとえば、定流量弁155は、洗浄水の流量を16リットル/分以下に制限する。定流量弁155を通過した洗浄水は、電磁弁156に流入し、電磁弁156を通過した洗浄水は、切替弁157により、リム吐水口113又は貯水タンク177に供給される。
電磁弁156は、制御部174の制御に従って開閉する。具体的には、電磁弁156は、制御部174から開信号が入力されると開状態となり、供給された洗浄水を切替弁157へ流入させる。一方、電磁弁156は、制御部174から閉信号が入力されると閉状態となり、切替弁157への洗浄水の供給を停止させる。
切替弁157は、制御部174の制御信号により切り替えられ、電磁弁156を介して流入した洗浄水をリム吐水口113から吐出させ、又は、貯水タンク177に流入させる。
リム吐水用バキュームブレーカ164は、切替弁157を通過した洗浄水をリム吐水口113へ導くリム側給水路159の途中に配置され、洗浄水のリム吐水口113からの逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ164は、ボウル部110の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ164の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路165を通ってフロート式逆止弁169を介して貯水タンク177に流入する。
貯水タンク177は、ジェット吐水口111から吐水すべき洗浄水を貯水する。たとえば、貯水タンク177は、約2.5リットルの内容積を有する。
さらに、本実施形態においては、タンク側給水路161の先端(下端)はフロート式逆止弁167に接続されており、貯水タンク177からタンク側給水路161への逆流を防止している。また、貯水タンク177の内部には、上端フロートスイッチ175及び下端フロートスイッチ176が配置されており、貯水タンク177内の水位を検出できるようになっている。上端フロートスイッチ175は、貯水タンク177内の水位が所定の貯水水位に達するとオンに切り替わり、制御部174はこれを検知して、電磁弁156を閉鎖させる。一方、下端フロートスイッチ176は、貯水タンク177内の水位が所定の水位まで低下するとオンに切り替わり、制御部174はこれを検知して、加圧ポンプ173を停止させる。
加圧ポンプ173は、貯水タンク177に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口111から吐出させる。加圧ポンプ173は、貯水タンク177から延びるポンプ側給水路162により接続され、貯水タンク177内に貯水された洗浄水を加圧する。たとえば、加圧ポンプ173は、貯水タンク177内の洗浄水を加圧して、洗浄水を最大約120リットル/分の流量でジェット吐水口111から吐出させる。
また、加圧ポンプ173よりも下方の、貯水タンク177の下端部付近の高さにおいて、水抜栓171が配置されている。このため、水抜栓171を開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク177内及び加圧ポンプ173内の洗浄水を排出することができる。また、加圧ポンプ173の下方には、水受けトレイ172が配置されている。水受けトレイ172は、結露した水滴や漏水を受ける。
一方、加圧ポンプ173の流出口は、ジェット側給水路163を介して、ボウル部110の底部のジェット吐水口111に接続されている。このジェット側給水路163の途中は、上方に向けて凸型に形成されており、この凸型部分の最も高い部分であるジェット側給水路頂部163aは、貯水タンク177からジェット吐水口111に至る洗浄水管路の中で最も高い部分になっている。また、ジェット側給水路163のジェット側給水路頂部163aよりも下流側は、前述したジェット吐水口111と同じ高さに設定されている。
ジェット側給水路163には、一端にオーバーフロー口168aを有するオーバーフロー流路168が接続されている。オーバーフロー口168aは、上端フロートスイッチ175よりも上方に設けられている。貯水タンク177内の水位が上端フロートスイッチ175よりも高くなった場合には、貯水タンク177内の水は、オーバーフロー口168aからオーバーフロー流路168に流入し、加圧ポンプ173により加圧され、フラッパー弁178を介してジェット吐水口111から吐出される。
ジェット吐水用バキュームブレーカ166は、切替弁157を通過した洗浄水を貯水タンク177へ導くタンク側給水路161の途中に配置され、洗浄水の貯水タンク177からの逆流を防止している。また、ジェット吐水用バキュームブレーカ166の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路165を通ってフロート式逆止弁169を介して貯水タンク177に流入するようになっている。
制御部174は、使用者による便器洗浄スイッチ(図示せず)の操作により、電磁弁156、切替弁157、加圧ポンプ173を順次作動させ、リム吐水口113及びジェット吐水口111からの吐水を順次開始させて、ボウル部110を洗浄する。さらに、制御部174は、洗浄終了後、電磁弁156を開放し、切替弁157を貯水タンク177側に切り替えて洗浄水を貯水タンク177に補給する。貯水タンク177内の水位が上昇し、上端フロートスイッチ175が規定の貯水量を検出すると、制御部174は、電磁弁156を閉鎖して給水を停止する。なお、制御部174の具体的な構成については、後述する。
また、本実施形態にかかる水洗大便器10は、非常用電源131と、報知部133と、を備える。非常用電源131は、たとえば、乾電池や蓄電池等の内部電源であり、制御部174、電磁弁156および報知部133を作動させることができる。報知部133は、たとえば、スピーカやランプ等であり、音を鳴らしたり光を発したりすることにより、使用者に所定の情報を報知する。
<4.非停電時における便器洗浄動作>
次に、非停電時すなわち外部電源により電磁弁156を動作させる場合における便器洗浄動作について説明する。
非停電時において、たとえば図示しない便器洗浄スイッチが操作されると、1回目のリム吐水(前リム洗浄)が開始される。具体的には、制御部174は、電磁弁156に開信号を入力して電磁弁156を開放させるとともに、切替弁157をリム吐水口113の側に切り替える。これにより、水道の給水圧力によりリム吐水口113から洗浄水が吐出される。リム吐水口113から吐出された洗浄水は、ボウル部110内を旋回しながら下方へ流下し、ボウル部110の内壁面が洗浄される。
その後、ジェット吐水が開始されるが、この間もリム吐水口113からは洗浄水の吐水が続いている。まず、制御部174は、加圧ポンプ173に信号を送って加圧ポンプ173を起動させる。加圧ポンプ173が起動されると、貯水タンク177内に貯水されていた洗浄水は、加圧ポンプ173に流入して加圧される。加圧ポンプ173によって加圧された洗浄水は、ジェット側給水路163のジェット側給水路頂部163aを通って、ボウル部110の底部に開口したジェット吐水口111から吐出される。
ジェット吐水口111から吐出された洗浄水は排水トラップ管路120内に流入し、排水トラップ管路120を満水にしてサイホン作用を引き起こす。このサイホン作用により、ボウル部110内の溜水及び汚物は、排水トラップ管路120に吸引され、排水管50から排出される。
加圧ポンプ173によってジェット吐水口111から洗浄水が吐出されると、貯水タンク177内の水位が降下し、下端フロートスイッチ176がONになる。下端フロートスイッチ176がONになると、制御部174は、貯水タンク177内に貯水されていた洗浄水が無くなったことを検知し、加圧ポンプ173に信号を送ってこれを停止させ、ジェット吐水を終了させる。継続的に行われているリム吐水口113からの吐水によりボウル部110内の溜水の水位は上昇し、所定のリム吐水時間経過後、ボウル部110内は所定の溜水水位に到達する(リフィール)。
リム吐水終了後、制御部174は、電磁弁156を開放状態に保持した状態で、切替弁157に信号を送って、切替弁157を貯水タンク177側に切り替える。これにより、洗浄水が貯水タンク177内に流入して、貯水タンク177に洗浄水が補給される。
貯水タンク177内に洗浄水が補給され、貯水タンク177内の水位が規定の貯水水位に達すると、上端フロートスイッチ175がONになる。上端フロートスイッチ175がONになると、制御部174は、電磁弁156に閉信号を送り、電磁弁156を閉鎖させる。また、制御部174は、切替弁157に信号を送って、これをリム吐水口113の側に切り替える。そして、水洗大便器10は、待機状態となる。
このように、本実施形態にかかる水洗大便器10は、外部電源から供給される電力を用い、制御部174からの信号により電磁弁156、切替弁157、および加圧ポンプ173などの動作を制御して便器洗浄を行う。このため、停電が発生し、外部電源からの電力供給が断たれると、上述した通常の便器洗浄を行うことが困難となる。
そこで、本実施形態に係る水洗大便器10では、停電が発生した場合に、非常用電源131を用いて制御部174および電磁弁156を動作させることで、停電時においても自動で便器洗浄を行えるようにしている。
<5.停電時における便器洗浄動作>
次に、停電時における便器洗浄動作について図4および図5A〜図5Eを参照して説明する。図4は、停電時における電磁弁156の開閉タイミングを示すタイミングチャートである。また、図5A〜図5Eは、停電時における便器洗浄動作の説明図である。
図4に示すように、使用者が排泄行為を行う前において、開閉弁240は開状態、すなわち、接続流路211の流路断面積を変化させていない状態となっている(図4のタイミングt1)。
使用者は、停電時において排泄行為を行った後、操作部230(図1参照)を操作する。具体的には、使用者は、操作部230の把持部236を把持してインナーワイヤ233を引っ張る。これにより、支持軸243を中心として開閉弁240が回動して、開閉弁240が閉状態、すなわち、開閉弁240によりソケット本体210の流路断面積を狭くさせた状態となる(図4のタイミングt2および図5A)。
操作部230が操作されると、制御部174に操作信号が入力される。具体的には、操作部230は、リミットスイッチなどのスイッチを有しており、使用者がインナーワイヤ233を引っ張る操作に伴って上記スイッチが操作されて、かかるスイッチから制御部174に対して操作信号が入力される。
制御部174は、操作部230から操作信号を受信すると、非常用電源131を用いて電磁弁156に対して開信号を入力する(図4のタイミングt2)。
本実施形態では、電磁弁156としてラッチングソレノイドが用いられる。ラッチングソレノイドは、永久磁石の磁力を利用した自己保持型のソレノイドであり、コイルへの通電によってプランジャを吸引することにより流路を開状態とし、吸引後は永久磁石の磁力によってプランジャを吸着保持することで開状態を維持する。
このように、ラッチングソレノイドは、開閉時の所定時間だけ通電すればよく、その後の状態を維持するための通電が不要である。このため、たとえば開状態を維持するために電力を要するタイプの電磁弁と比較して電力消費量が少ないことから、非常用電源131で駆動させる電磁弁として適している。
制御部174は、ラッチングソレノイドである電磁弁156に対して開信号を第1開信号入力時間To1だけ入力することで、電磁弁156を開放させる。これにより、停電時において、リム吐水口113およびジェット吐水口111の少なくともいずれかからボウル部110に対して洗浄水を供給することができる。このとき、開閉弁240は、使用者によって閉状態とされている。すなわち、接続流路211が閉鎖された状態となっているため、図5Bに示すように、ボウル部110に洗浄水が貯留されてボウル部110内の水位が上昇する。
なお、本実施形態に係る水洗大便器10では、第1開信号入力時間To1内において、電磁弁156に流れる電流値の急峻な変化(ボトム電流)が検出された場合に、開信号の入力を中断する中断処理を行うことで、消費電力の更なる削減を行うこととしている。かかる中断処理については後述する。
つづいて、制御部174は、電磁弁156に対して開信号を入力してから第1の時間T1が経過する所定時間前(具体的には、第1閉信号入力時間Tc1だけ前)に、非常用電源131を用いて電磁弁156に対して閉信号を第1閉信号入力時間Tc1だけ入力する(図4のタイミングt3)。これにより、電磁弁156が閉鎖して、ボウル部110への洗浄水の供給が停止する。
第1の時間T1は、電磁弁156が開いてから、ボウル部110の内部の水位がボウル部110を洗浄可能な水位となるまでの時間である。ここで、「ボウル部110を洗浄可能な水位」とは、例えば、ボウル部110の内部の水を排出可能あるいは置換可能な水位である。あるいは、「ボウル部110を洗浄可能な水位」とは、例えば、サイホン作用を発生させることが可能な水位である。
また、制御部174は、電磁弁156が開いてから第1の時間T1が経過すると、使用者に対して報知部133により報知を行う。例えば、報知部133は、電磁弁156が開いてから第1の時間T1が経過すると音を鳴らす。これにより、使用者は、電磁弁156が開いてから第1の時間T1が経過したことを知ることができる。
使用者は、ボウル部110への洗浄水の供給停止を確認すると、あるいは報知部133による報知を確認すると、操作部230を操作する(例えば引っ張っていた把持部236を戻す)ことで開閉弁240を開状態とする(図4のタイミングt4)。すると、図5Cに示すように、ボウル部110に貯留された洗浄水が排水トラップ管路120に流れ込むことで、排水トラップ管路120が満水となり、サイホン作用が発生してボウル部110に滞留した大量の洗浄水が排出される。
また、引っ張られていた把持部236が元の位置に戻ると、操作部230から制御部174に対して操作信号が送信される。制御部174は、操作部230から操作信号を受信してから第2の時間T2が経過した後、非常用電源131を用いて電磁弁156に対して開信号を再度第1開信号入力時間To1だけ入力する(図4のタイミングt5)。これにより、電磁弁156が再度開状態となり、リム吐水口113およびジェット吐水口111の少なくともいずれかからボウル部110へ洗浄水が再度供給される(リフィール)。
つづいて、制御部174は、電磁弁156に対して開信号を再度入力してから第3の時間T3が経過する所定時間前(具体的には、第1閉信号入力時間Tc1だけ前)に、非常用電源131を用いて電磁弁156に対して閉信号を第1閉信号入力時間Tc1だけ入力する(図4のタイミングt6)。これにより、電磁弁156が閉鎖して、ボウル部110への洗浄水の供給が停止する(図4のタイミングt7)。
これにより、排水動作によって低下したボウル部110内の水位(図5D)が、初水位に戻る(図5E)。このように、ボウル部110内の水位を初水位に戻す(リフィールを行う)ことにより、初水位を安定化させ、ボウル部110の内部の水がボウル面から溢れたり、排水管50から室内へ臭い等が進入したりすることを抑制することができる。
なお、第2の時間T2は、たとえば開閉弁240が開状態となってからサイホン作用が終了するまでの時間である。
ところで、電磁弁156には、水道水に含まれるカルシウム成分などがスケールとなってプランジャ等の可動部に付着することで、可動部が固着して動作不良を起こすいわゆる固着現象が発生するおそれがある。特に、本実施形態に係る水洗大便器10では、停電時における消費電力を抑えるために、第1開信号入力時間To1および第1閉信号入力時間Tc1が、通常時における開信号および閉信号の入力時間よりも短く設定される。このため、停電時においては、通常時と比べて電磁弁156の固着が発生しやすい。
電磁弁156の固着を回避するためには、例えば、電磁弁156への通電時間を長くしたり、印加電圧を高くしたりすることが考えられる。しかしながら、消費電力の増加につながるため、電源が限られる停電時において無闇にこのような手段をとることは好ましくない。
そこで、本実施形態に係る水洗大便器10では、電磁弁156の固着の有無を判定し、固着有りと判定された場合に、閉信号の入力時間を通常の入力時間である第1閉信号入力時間Tc1よりも長い時間入力することとした。これにより、非常用電源131の電力消費量を抑えつつ、電磁弁156の固着を解消することができる。以下、かかる点について具体的に説明する。
<6.制御部の構成>
図6は、制御部174の構成を示すブロック図である。図6には、停電時における洗浄動作に必要な構成のみを記載している。
なお、制御部174は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含む。かかるマイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、水洗大便器10の動作を制御する。
かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から図示しない記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、例えばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
図6に示すように、制御部174は、判定処理部174aと、入力処理部174bと、中断処理部174cとを備える。なお、便器洗浄装置150は、電流検出部250を備える。電流検出部250は、電磁弁156に流れる電流を検出する。
判定処理部174aは、電流検出部250による検出結果に基づき、電磁弁156の固着の有無を判定する判定処理を行う。
ここで、かかる判定処理の内容について図7Aおよび図7Bを参照して説明する。図7Aは、固着が発生していない電磁弁156に対して開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性を示す図である。また、図7Bは、固着が発生している電磁弁156に対して開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性を示す図である。
図7Aに示すように、電磁弁156に固着が発生していない場合において、電磁弁156に開信号が入力されると、電磁弁156に流れる電流値は、一端上昇した後、急激に下降してボトムとなる電流値I1になる。その後、電磁弁156に流れる電流値は、第1開信号入力時間To1に達するまで上昇して電流値I2で飽和する。以下、電流値I1をボトム電流値と記載する。
一方、図7Bに示すように、電磁弁156に固着が発生している場合において、電磁弁156に開信号が入力されると、電磁弁156に流れる電流値は、第1開信号入力時間To1に達するまで上昇して電流値I2で飽和する。すなわち、電磁弁156に固着が発生している場合、電磁弁156に流れる電流値には、ボトム電流が見られない。
判定処理部174aは、このような電流特性の違いに基づいて、電磁弁156の固着の有無を判定する。すなわち、判定処理部174aは、第1開信号入力時間To1内において、ボトム電流が検出された場合には、電磁弁156に固着が発生していないと判定し、ボトム電流が検出されなかった場合には、電磁弁156に固着が発生していると判定する。
具体的には、本実施形態では、ボトム電流が検出された場合に、後述する中断処理部174cによって開信号の入力が打ち切られる。そこで、判定処理部174aは、1回目の開信号すなわち排水動作時における開信号の入力時間と、2回目の開信号すなわちリフィール動作時における開信号の入力時間とを比較し、これらの差が所定の閾値を超える場合に、電磁弁156に固着有りと判定する。
また、判定処理部174aは、上記の判定処理においてボトム電流が検出された場合、後述する中断処理部174cに対して開信号の入力の中断を指示する。
また、判定処理部174aは、上記の判定処理において電磁弁156に固着無しと判定した場合、1回目の閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性と、2回目の閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性との比較に基づき、電磁弁156の固着を再度判定する再判定処理を行う。
かかる再判定処理の内容について図8Aおよび図8Bを参照して説明する。図8Aは、固着が発生していない電磁弁156に対して閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性を示す図である。また、図8Bは、固着が発生している電磁弁156に対して閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性を示す図である。
なお、閉信号を入力する場合、開信号を入力する場合とは逆向きの電流が電磁弁156に対して流される。このため、実際には、閉信号が入力されると、電流検出部250は、マイナス向きの電流を検出することとなるが、図8Aおよび図8Bでは、理解を容易にするために、正負を反転させて示している。
図8Aに示すように、固着が発生していない電磁弁156に対して閉信号が入力されると、電磁弁156に流れる電流値は、第1閉信号入力時間Tc1に達するまで上昇して電流値I3で飽和する。その後、第1閉信号入力時間Tc1に達し、閉信号が入力されなくなると、電磁弁156に流れる電流値は、徐々に低下して0に戻る。
一方、図8Bに示すように、固着が発生している電磁弁156に対して閉信号が入力された場合、電磁弁156に流れる電流値は、固着が発生していない場合と同様に、第1閉信号入力時間Tc1に達するまで上昇して電流値I3で飽和する。しかし、その後、閉信号が入力されなくなると、電磁弁156に流れる電流値は、固着が発生していない場合と比べて急速に低下して0に戻る。
判定処理部174aは、このような電流特性の違いに基づいて、電磁弁156の固着の有無を再判定する。すなわち、判定処理部174aは、1回目の閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間と、2回目の閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間との差が所定の閾値を超える場合に、電磁弁156に固着有りと判定する。
入力処理部174bは、電磁弁156に対して開信号および閉信号の入力を行う。具体的には、上述したように、入力処理部174bは、操作部230のインナーワイヤ233が引っ張られると、電磁弁156に対して開信号を第1開信号入力時間To1だけ入力し(図4のタイミングt2)、その後、電磁弁156に対して閉信号を第1閉信号入力時間Tc1だけ入力する(図4のタイミングt3)。これにより、ボウル部110に洗浄水が貯留され(図5B)、貯留された洗浄水が排出される(図5C)。また、その後、入力処理部174bは、電磁弁156に対して再度開信号および閉信号を順次入力する(図4のタイミングt5およびt6)。これにより、ボウル部110内の水位が初水位に戻る(図5E)。
このように、入力処理部174bは、一連の洗浄動作において、電磁弁156に対して1回目の開信号および1回目の閉信号を順次入力して排出処理を行い、その後、電磁弁156に対して2回目の開信号および2回目の閉信号を順次入力してリフィール処理を行う。
また、入力処理部174bは、判定処理部174aによって電磁弁156の固着有りと判定された場合に、2回目の閉信号、すなわち、リフィール処理時における閉信号を、固着無しと判定された場合と異なる態様で電磁弁156に入力する。
具体的には、入力処理部174bは、固着無しと判定された場合と異なる態様として、電磁弁156に対して閉信号を第1閉信号入力時間Tc1よりも長い第2閉信号入力時間だけ入力する。
中断処理部174cは、開信号の入力期間として予め設定された期間である第1開信号入力時間To1内においてボトム電流が検出された場合に、電磁弁156に対する開信号の入力を中断する中断処理を行う。具体的には、中断処理部174cは、判定処理部174aから開信号の入力の中断を指示された場合に、上記中断処理を行う。
このように、電磁弁156に流れる電流値の急峻な変化が検出された場合に、中断処理部174cによって電磁弁156への開信号の入力を中断するようにすることで、電磁弁156の開動作に要する電力消費量を抑えることができる。
なお、ここでは、中断処理部174cが、電磁弁156への開信号の入力を中断させるものとするが、これに限らず、中断処理部174cが、入力処理部174bに対して開信号の入力の中断を指示してもよい。また、ここでは、入力処理部174bと中断処理部174cとを別処理部として記載したが、たとえば入力処理部174bが中断処理を行うようにしてもよい。
<7.停電時において電磁弁に固着が発生した場合の便器洗浄動作>
次に、停電時において電磁弁156に固着が発生した場合の便器洗浄動作について説明する。まず、1回目の閉動作において固着が発生した場合の便器洗浄動作について図9を参照して説明する。図9は、1回目の閉動作において固着が発生した場合の便器洗浄動作を示すタイミングチャートである。
図9に示すように、たとえば1回目の閉動作において固着が発生した場合、上述したように2回目の開動作においてボトム電流が検出されないこととなる(図7B参照)。なお、1回目の閉動作において固着が発生する場合とは、たとえば、1回目の開動作においてプランジャが移動した際に、プランジャがスケールを噛み込むことによって生じる。この場合、閉信号を入力しても電磁弁156が閉鎖状態とならず、洗浄水が流通し続けることとなる。
判定処理部174aは、1回目の開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性と、2回目の開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性との比較に基づき、電磁弁156の固着の有無を判定する。具体的には、本実施形態に係る判定処理部174aは、1回目の開信号の入力時間と2回目の開信号の入力時間とを比較することにより、電磁弁156の固着の有無を判定する。
すなわち、1回目の開動作時においては固着が発生しておらず、ボトム電流が正常に検出されるため、ボトム電流が検出された時点で中断処理部174cによって開信号の入力が中断される。これに対し、2回目の開動作時においては、固着が発生しており、ボトム電流が検出されないため、開信号の入力は中断されることなく第1開信号入力時間To1が経過するまで継続される。したがって、1回目の閉動作において固着が発生した場合、1回目の開信号の入力時間と2回目の開信号の入力時間とに差が生じることとなる。判定処理部174aは、これらの入力時間の差が所定の閾値を超える場合に、電磁弁156に固着有りと判定する。
このように、一連の洗浄動作で実行される2回の開動作を比較して固着の有無を判定するようにすることで、温度や湿度等の環境のバラつき、あるいは、電磁弁156や制御部174等の個体差の影響を可及的に排除することができる。したがって、電磁弁156の固着の有無を精度良く判定することができる。
また、1回目の開信号の入力時間と2回目の開信号の入力時間との比較によって電磁弁156の固着の有無を判定するようにしたため、電磁弁156の固着の有無を精度良く且つ容易に判定することができる。
上記の判定処理によって固着有りと判定されると、入力処理部174bは、2回目の閉信号を固着無しの場合と異なる態様で電磁弁156に入力する。具体的には、本実施形態に係る入力処理部174bは、2回目の閉信号の入力時間を固着無しの場合よりも長くする。
たとえば、非停電時すなわち外部電源を使用している場合における開信号および閉信号の入力時がそれぞれ80msであり、停電時すなわち非常用電源131を使用している場合における開信号および閉信号の入力時間(第1開信号入力時間To1および第1閉信号入力時間Tc1)がそれぞれ12msであるとする。この場合において、入力処理部174bは、2回目の閉信号を、固着無しの場合には12ms入力するのに対し、固着有りの場合には、非停電時と同じ80ms(第2閉信号入力時間Tc2)入力するようにする。
このように、2回目の閉信号の入力時間を固着無しの場合よりも長くすることで、電磁弁156のプランジャに付着したスケールに対し、固着無しの場合よりも長い時間力が加わることとなる。これにより、スケールを除去することができ、固着を解消することができる。また、たとえば、固着無しの場合よりも高い電圧を電磁弁156に印加して固着を解消するように構成した場合と比較し、別回路を設ける必要がないため、簡易な構成で固着を解消することができる。
次に、2回目の閉動作において固着が発生した場合の便器洗浄動作について図10を参照して説明する。図10は、2回目の閉動作において固着が発生した場合の便器洗浄動作を示すタイミングチャートである。
2回目の閉動作において固着が発生した場合、図10に示すように、2回目の開動作において未だ固着が発生しておらず、1回目の開動作および2回目の開動作ともにボトム電流が検出されるため、上記の判定処理では固着の有無を判定することが困難である。
この場合、判定処理部174aは、1回目の閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性と、2回目の閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性との比較に基づき、電磁弁156の固着を再度判定する再判定処理を行う。
具体的には、固着が発生していない1回目の閉動作と、固着が発生している2回目の閉動作とでは、閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間に差が生じる(図8Aおよび図8BのT5参照)。そこで、判定処理部174aは、1回目の閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間と、2回目の閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間との差が所定の閾値を超える場合に、固着有りと判定する。
たとえば、閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間は、固着が発生していない場合でおよそ2ms、固着が発生している場合でおよそ1msであるものとする。この場合、判定処理部174aは、1回目の閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間と、2回目の閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間との差が、0.5msを超える場合に、固着有りと判定する。
このように、本実施形態に係る水洗大便器10では、2回目の開動作までに固着が発生していなかったとしても、その後に実行される2回目の閉動作において固着が発生する可能性がある。そこで、上記再判定処理を行うことで、2回目の閉動作において固着が発生したことを検知することができる。また、一連の洗浄動作で実行される2回の閉動作を比較して固着の有無を判定するようにすることで、温度や湿度等の環境のバラつき、あるいは、電磁弁156や制御部174等の個体差の影響を可及的に排除することができる。したがって、電磁弁156の固着の有無を精度良く判定することができる。
また、閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間が、固着有りの場合と固着無しの場合とで異なることに着目し、この差に基づいて電磁弁156の固着の有無を判定するようにしたため、電磁弁156の固着の有無を精度良く且つ容易に再判定することができる。
上記の再判定処理において電磁弁156に固着有りと判定されると、入力処理部174bは、電磁弁156に対して3回目の閉信号を入力する。具体的には、入力処理部174bは、3回目の閉信号を1回目および2回目の閉信号の入力時間(第1閉信号入力時間Tc1)よりも長い時間(第2閉信号入力時間Tc2)入力する。
このように、電磁弁156に対して3回目の閉信号を入力して、電磁弁156のプランジャに付着したスケールに力を加えることで、電磁弁156の固着を解消することができる。
<8.停電時における便器洗浄動作の具体的な処理手順>
次に、停電時における便器洗浄動作の具体的な処理手順について図11および図12を参照して説明する。図11および図12は、停電時における便器洗浄動作の具体的な処理手順を示すフローチャートである。
図11に示すように、制御部174は、使用者によって操作部230が操作されると、まず、電磁弁156に対して1回目の開信号を入力する(ステップS101)。なお、制御部174は、ステップS101の処理と同時に、開信号の入力時間の計測を開始する。
つづいて、制御部174は、電流検出部250の検出結果に基づいてボトム電流を検出したか否かを判定し(ステップS102)、ボトム電流を検出したと判定した場合には(ステップS102,Yes)、開信号の入力を中断する(ステップS103)。
ステップS102においてボトム電流が検出されず(ステップS102,No)、第1開信号入力時間To1が経過した場合、または、ステップS103の処理を終えた場合、制御部174は、開信号の入力時間の計測を終了して入力時間A1を取得する(ステップS104)。
つづいて、制御部174は、電磁弁156に対して1回目の閉信号を入力する(ステップS105)。その後、制御部174は、第1閉信号入力時間Tc1の経過に伴い閉信号の入力を停止した後、電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間B1(立ち下がり時間B1と記載する)を計測して取得する(ステップS106)。
つづいて、制御部174は、電磁弁156に対して2回目の開信号を入力する(ステップS107)。なお、制御部174は、ステップS107の処理と同時に、開信号の入力時間の計測を開始する。
つづいて、制御部174は、電流検出部250の検出結果に基づいてボトム電流を検出したか否かを判定し(ステップS108)、ボトム電流を検出したと判定した場合には(ステップS108,Yes)、開信号の入力を中断する(ステップS109)。
ステップS108においてボトム電流が検出されず(ステップS108,No)、第1開信号入力時間To1が経過した場合、または、ステップS109の処理を終えた場合、制御部174は、開信号の入力時間の計測を終了して入力時間A2を取得する(ステップS110)。
つづいて、制御部174は、1回目の開信号の入力時間A1と2回目の開信号の入力時間A2との差(絶対値)が閾値TH1以下であるか否かを判定する(ステップS111)。そして、閾値TH1以下であると判定した場合(ステップS111,Yes)、制御部174は、2回目の閉信号を第1閉信号入力時間Tc1(たとえば、12ms)だけ入力する(ステップS112)。
なお、ボトム電流が検出される時間は概ね既知であり、たとえば、開信号の入力が開始されてからおよそ4ms後である。すなわち、固着が発生していない場合における開信号の入力時間はおよそ4msである。これに対し、固着が発生している場合における開信号の入力時間は第1閉信号入力時間Tc1(たとえば、12ms)である。そして、制御部174は、1回目の開信号の入力時間A1と2回目の開信号の入力時間A2との差(絶対値)が、たとえば1ms以下であるか否かを判定する。
入力時間A1およびA2の差が閾値TH1以下でない場合、換言すれば、閾値TH1を超えると判定した場合(ステップS111,No)、制御部174は、2回目の閉信号を第2閉信号入力時間Tc2(たとえば、80ms)だけ入力して(ステップS113)、一連の洗浄動作を終える。
ステップS112の処理を終えると、制御部174は、図12に示すように、第1閉信号入力時間Tc1の経過に伴い閉信号の入力を停止した後、電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間B2(立ち下がり時間B2と記載する)を計測して取得する(ステップS201)。
つづいて、制御部174は、立ち下がり時間B1と立ち下がり時間B2との差(絶対値)が閾値TH2以下であるか否かを判定し(ステップS202)、閾値TH2以下であると判定した場合(ステップS202,Yes)、一連の洗浄動作を終了する。
一方、立ち下がり時間B1と立ち下がり時間B2との差(絶対値)が閾値TH2以下でない場合(ステップS202,No)、換言すれば、閾値TH2を超えると判定した場合、制御部174は、3回目の閉信号を第2閉信号入力時間Tc2(たとえば、80ms)だけ入力して(ステップS203)、一連の洗浄動作を終える。
<9.判定処理部による処理の変形例>
上述した実施形態では、1回目の開信号の入力時間と2回目の開信号の入力時間との差に基づいて固着の有無を判定することとしたが、電磁弁156の固着の有無の判定方法は、上記の例に限定されない。
たとえば、判定処理部174aは、1回目の開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性と、2回目の開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性との相関度(一致度)が所定の閾値を超える場合に、固着有りと判定するようにしてもよい。
上記電流特性の相関度は、たとえば、1回目の開信号を入力した場合と2回目の開信号を入力した場合とにおける、電磁弁156に流れる電流値の経時変化(図7Aおよび図7B参照)の相関度を算出することにより得ることができる。
かかる場合でも、温度や湿度等の環境のバラつき、電磁弁156や制御部174等の個体差の影響を可及的に排除することができるため、電磁弁156の固着の有無を精度良く判定することができる。
また、判定処理部174aは、2回目の開動作においてボトム電流が検出されなかった場合に、固着有りと判定するようにしてもよい。
2回目の開動作においてボトム電流が検出されなかったか否かは、たとえば、電流検出部250による検出結果を用い、2回目の開信号を入力した場合に電磁弁156に流れる電流値に急峻な変化が検出されたか否かにより判定することができる。この場合、判定処理部174aは、上記急峻な変化が検出されなかった場合に、固着有りと判定する。
また、2回目の開動作においてボトム電流が検出されなかったか否かは、2回目の開信号の入力時間が第1開信号入力時間To1であったか否かにより判定してもよいし、2回目の開信号が中断処理部174cによって中断されたか否かにより判定してもよい。
また、判定処理部174aは、1回目の閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間が所定の閾値を下回る場合に、固着有りと判定することとしてもよい。
上述したように、電磁弁156に固着が発生している場合、閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間(立ち下がり時間)が、固着無しの場合における立ち下がり時間と比べて短くなる。固着無しの場合における立ち下がり時間および固着有りの場合における立ち下がり時間は、概ね既知であるため、判定処理部174aは、立ち下がり時間が所定の閾値を下回る場合に、固着有りと判定することができる。これにより、電磁弁156の固着の有無を容易に判定することができる。
このように、判定処理部174aは、1回目の開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性、1回目の閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性および2回目の開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性の少なくとも1つに基づき、電磁弁156の固着の有無を判定することができる。
また、上述した実施形態では、1回目の閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間と、2回目の閉信号の入力を停止してから電磁弁156に流れる電流値が0になるまでの時間との差が所定の閾値を超える場合に、固着有りと判定することとした。しかし、これに限らず、判定処理部174aは、たとえば、1回目の閉信号の入力を停止した後における電磁弁156の電流特性と、2回目の閉信号の入力を停止した後における電磁弁156の電流特性との相関度(一致度)が所定の閾値を超える場合に、固着有りと判定するようにしてもよい。
上記電流特性の相関度は、たとえば、1回目の閉信号の入力を停止した場合と2回目の閉信号の入力を停止した後とにおける、電磁弁156に流れる電流値の経時変化(図8Aおよび図8B参照)の相関度を算出することにより得ることができる。
このように、判定処理部174aは、1回目の閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性と、2回目の閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性との比較に基づき、電磁弁156の固着を再度判定することができる。
<10.入力処理部による処理の変形例>
また、上述した実施形態では、判定処理において固着有りと判定された場合に、2回目の閉信号の入力時間を固着無しの場合よりも長くすることで電磁弁156の固着を解消することとしたが、電磁弁156の固着を解消する方法は、上記の例に限定されない。
たとえば、入力処理部174bは、判定処理において固着有りと判定された場合に、2回目の閉信号を電磁弁156に対して複数回入力するようにしてもよい。
このように、2回目の閉信号を電磁弁156に対して複数回入力するようにすることで、電磁弁156の可動部に付着したスケールに力が複数回加えられることとなる。これにより、上記スケールが除去されることで、電磁弁156の固着を解消することができる。
また、入力処理部174bは、判定処理において固着有りと判定された場合に、2回目の閉信号の電圧値を固着無しの場合よりも高くすることとしてもよい。
このように、2回目の閉信号の電圧値を固着無しの場合よりも高くすることで、電磁弁156の可動部に付着したスケールに対し、固着無しの場合よりも強い力が加わることとなる。これにより、上記スケールが除去されることで、電磁弁156の固着を解消することができる。
このように、入力処理部174bは、判定処理において固着有りと判定された場合に、2回目の閉信号を固着無しの場合の閉信号よりも電力消費量が多い態様で電磁弁156に入力することで、電磁弁156の固着を解消することができる。
また、上述した実施形態では、2回目の閉動作において固着が発生した場合に、電磁弁156に対して、3回目の閉信号を1回目および2回目の閉信号よりも長い時間入力することとしたが、入力処理部174bは、3回目の閉信号を1回目および2回目の閉信号と同じ長さで複数回入力することとしてもよい。
上述してきたように、本実施形態に係る便器洗浄装置150は、ボウル部110に洗浄水を供給する便器洗浄装置であって、電磁弁156と、制御部174とを備える。電磁弁156は、ボウル部110への洗浄水の供給路を開閉する。制御部174は、操作部230への操作(所定の操作の一例)を受け付けた場合に、非常用電源131を用いて電磁弁156に開信号および閉信号を順次入力することによってボウル部110に貯留された洗浄水を排出する排水処理を行った後、非常用電源131を用いて電磁弁156に再度開信号および閉信号を順次入力することによってボウル部110内の水位を戻すリフィール処理を行う。また、制御部174は、判定処理部174aと、入力処理部174bとを備える。判定処理部174aは、1回目の開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性、1回目の閉信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性および2回目の開信号を入力した場合における電磁弁156の電流特性の少なくとも1つに基づき、電磁弁156の固着の有無を判定する。入力処理部174bは、判定処理において固着有りと判定された場合に、2回目の閉信号を固着無しの場合と異なる態様で電磁弁156に入力する。
したがって、本実施形態に係る便器洗浄装置150によれば、非常用電源131の電力消費量を抑えつつ、電磁弁156の固着を解消することができる。
なお、上述した実施形態では、電磁弁156としてラッチングソレノイドを用いる場合の例について説明したが、電磁弁156は、開信号の入力により可動部の位置が変化して開状態となり、閉信号の入力により可動部の位置が元に戻り閉状態となるタイプの電磁弁であればよく、必ずしもラッチングソレノイドであることを要しない。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。