JP6705132B2 - 光学フィルターおよび光学フィルターを用いた装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光学フィルターおよび光学フィルターを用いた装置に関する。詳しくは、可視光線を透過し、かつ、近赤外線の一部を遮断する光学フィルター、ならびに該光学フィルターを用いた固体撮像装置およびカメラモジュールに関する。
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などの固体撮像装置にはカラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されているが、これら固体撮像素子は、その受光部において人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードが使用されている。これらの固体撮像素子では、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正を行うことが必要であり、特定の波長領域の光線を選択的に透過もしくはカットする光学フィルター(例えば近赤外線カットフィルター)を用いることが多い。
このような光学フィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されている。例えば、ガラスなどの支持体を含む透明基材の表面に銀等の金属を蒸着して近赤外線を反射するようにしたもの、透明基材に屈折率の異なる金属酸化物を交互に積層したもの、アクリル樹脂やポリカーボネート樹脂等の透明樹脂に近赤外線吸収色素を添加したもの、などが実用に供されている。
ガラスを支持体として用いた場合、支持体自体が耐熱性を有するため、いわゆるハンダリフロー工程を有するプロセスに適用することが可能であり、その結果、光学部品および装置の小型化ならびに製造工程の簡略化が可能となる。また、真空蒸着法、スパッタリング法またはCVD法等を用いて、ガラス支持体に屈折率の異なる金属酸化物を交互に積層した誘電体多層膜を有した光学フィルターは、支持体を薄板ガラスに置き換えることも可能であり、例えば厚み0.1mmといった薄肉化が可能である(例えば特許文献1参照)。しかしながら、ガラス等の支持体の場合、厚みを薄くすると反りや割れが生じやすくなるという問題がある。
一方、近赤外光を光吸収にてカットするいわゆる色ガラスフィルターでは、垂直入射光と斜め入射光に対しての光学特性の差が小さく視野角に優れる反面、所定の光学特性の濃度を得るためには、基材の厚みが厚くなってしまい、また通常のガラスに比べて脆く割れ易いため、光学部品を小型化することが困難であった(非特許文献1)。
特開2007−197280号公報
シグマ光機社総合カタログ近赤外吸収フィルターCCF−50S−500C
本発明は、支持体の厚みを薄くしても、反りや割れが生じ難い光学フィルター、ならびに、該光学フィルターを具備する固体撮像装置およびカメラモジュールを提供することを課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の弾性率を有する支持体を用いることにより、支持体の厚みを薄くしても、反りや割れが生じ難い光学フィルターが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の態様の例を以下に示す。
[1] 弾性率が50〜500GPaである支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に樹脂層とを有する基材を含み、可視光線を透過し、かつ、近赤外線の少なくとも一部を遮断することを特徴とする光学フィルター。
[2] 前記樹脂層の弾性率が2〜8GPaであることを特徴とする項[1]に記載の光学フィルター。
[3] さらに、下記式(1)、(2)および(3)を満たすことを特徴とする項[1]または[2]に記載の光学フィルター。
Y ≧ −10500X + 540000 (1)
30 ≦ Ta ≦ 300 (2)
2 ≦ Tb ≦ 100 (3)
式(1)〜(3)中、Yは下記式(4)を満たし、Xは下記式(5)を満たし、Taは支持体の厚み(単位;μm)を示し、Tbは樹脂層の厚み(単位;μm)を示す。
Y =(Ea×Ta)×(Eb×Tb) (4)
X = Ta (5)
式(4)中、Eaは支持体の弾性率(単位;GPa)を示し、Ebは樹脂層の弾性率(単位;GPa)を示す。
[4] 前記Yおよび前記Xが下記式(6)を満たすことを特徴とする項[3]に記載の光学フィルター。
Y ≧ 300X (6)
[5] 前記Yおよび前記Xが下記式(7)を満たすことを特徴とする項[3]または[4]に記載の光学フィルター。
Y ≦ 24000X (7)
[6] 前記基材の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有することを特徴とする項[1]〜[5]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[7] 前記樹脂層が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂から形成されることを特徴とする項[1]〜[6]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[8] 前記支持体が、ガラス、水晶、合成石英、ニオブ酸リチウムおよびサファイアからなる群より選ばれる少なくとも1種から形成されることを特徴とする項[1]〜[7]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[9] 前記樹脂層が、波長600nm以上800nm未満に吸収極大を有する化合物(A)を含むことを特徴とする項[1]〜[8]のいずれか1項に記載の光学フィルター。
[10] 前記支持体が、近赤外波長領域に吸収極大を有することを特徴とする項[8]に記載の光学フィルター。
[11] 項[1]〜[10]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。
[12] 項[1]〜[10]のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。
本発明によれば、支持体の厚みを薄くしても、反りや割れが生じ難い光学フィルターを提供することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。
[光学フィルター]
本発明に係る光学フィルターは、弾性率が50〜500GPaである支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に樹脂層とを有する基材(i)を含み、可視光線を透過し、かつ、近赤外線の少なくとも一部を遮断することを特徴とする。前記樹脂層は、前記支持体の両面に形成されていてもよく、前記支持体の片面または両面に複数の樹脂層が設けられていてもよく、一方の面が単層で、他方の面が多層であってもよい。また、本発明の光学フィルターは、前記基材(i)の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有することが好ましい。
前記樹脂層は、波長600nm以上800nm未満に吸収極大を有する化合物(A)を含むことが好ましい。また、前記支持体は、近赤外波長領域に吸収極大を有していてもよく、このような支持体としては、例えば、近赤外波長領域に吸収極大を有するガラス(以下「近赤外線吸収ガラス」ともいう。)や化合物(A)を含有する樹脂製基板などが挙げられる。
上記のような構成を有する本発明の光学フィルターは、近赤外線カット特性に優れ、入射角依存性が少なく、可視波長領域での透過率特性および近赤外波長領域の多重反射光低減効果に優れた光学フィルターである。
本発明の光学フィルターを固体撮像素子用に使用する場合、近赤外波長領域の透過率が低い方が好ましい。特に、波長800〜1000nmの領域は固体撮像素子の受光感度が比較的高いことが知られており、この波長領域の透過率を低減させることにより、カメラ画像と人間の目の視感度補正を効果的に行うことができ、優れた色再現性を達成することができる。
本発明の光学フィルターは、波長800〜1000nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の平均透過率が5%以下、好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。波長800〜1000nmの平均透過率がこの範囲にあると、近赤外線を十分にカットすることができ、優れた色再現性を達成できるため好ましい。
本発明の光学フィルターを固体撮像素子などに使用する場合、可視光透過率が高い方が好ましい。具体的には、波長430〜580nmの領域において、光学フィルターの垂直方向から測定した場合の平均透過率が好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは83%以上、特に好ましくは85%以上である。この波長領域において平均透過率がこの範囲にあると、本発明の光学フィルターを固体撮像素子用途として使用した場合、優れた撮像感度を達成することができる。
本発明の光学フィルターは、波長560〜800nmの範囲において、光学フィルターの垂直方向から測定した時の透過率が50%となる最も短い波長の値(Xa)と、光学フィルターの垂直方向に対して30°の角度から測定した時の透過率が50%となる波長の値(Xb)との差の絶対値が小さい方が好ましい。(Xa)と(Xb)との差の絶対値は、好ましくは20nm未満、より好ましくは15nm未満、特に好ましくは10nm未満である。このような光学フィルターは、前記基材(i)上に誘電体多層膜を形成することで得られる。
本発明の光学フィルターの厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、近年の固体撮像装置の薄型化、軽量化等の流れによれば、本発明の光学フィルターの厚みも薄いことが好ましい。本発明の光学フィルターは、前記基材(i)を含むため、薄型化が可能である。
本発明の光学フィルターの厚みは、例えば、好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは120μm以下であることが望ましく、下限は特に制限されないが、例えば、20μmであることが望ましい。
本発明の光学フィルターは、下記式(1)、(2)および(3)を満たすことが、反りや割れを低減する上で好ましい。
Y ≧ −10500X + 540000 (1)
30 ≦ Ta ≦ 300 (2)
2 ≦ Tb ≦ 100 (3)
式(1)〜(3)中、Yは下記式(4)を満たし、Xは下記式(5)を満たし、Taは支持体の厚み(単位;μm)を示し、Tbは樹脂層の厚み(単位;μm)を示す。
Y =(Ea×Ta)×(Eb×Tb) (4)
X = Ta (5)
式(4)中、Eaは支持体の弾性率(単位;GPa)を示し、Ebは樹脂層の弾性率(単位;GPa)を示す。
また、前記Yおよび前記Xは、前記式(1)を満たすとともに、さらに、下記式(6)を満たすことが好ましく、下記式(6−1)を満たすことがより好ましく、下記式(6−2)を満たすことが特に好ましい。
Y ≧ 300X (6)
Y ≧ 1500X (6−1)
Y ≧ 3000X (6−2)
また、前記Yおよび前記Xは、さらに下記式(7)を満たすことが好ましい。
Y ≦ 24000X (7)
<支持体および樹脂層>
前記支持体の弾性率は、50〜500GPa、好ましくは50〜200GPa、より好ましくは50〜100GPaである。前記弾性率を有する支持体を用いることにより、支持体の厚みを薄くしても割れや反りが生じ難い光学フィルターが得られ、その結果、光学フィルターを含む各種装置等の小型化を図ることができる。また、前記樹脂層の弾性率は、特に限定されないが、好ましくは2〜8GPa、より好ましくは2〜7GPa、さらに好ましくは2〜6GPaである。なお、本明細書における前記弾性率は、株式会社フィッシャーインストルメンツ製「ピコデンターHM500」を用いて測定した値である。
前記支持体の厚みは、前記式(2)に示すように、好ましくは30〜300μmであり、より好ましくは30〜200μm、さらに好ましくは30〜100μmである。また、前記樹脂層の厚みは、前記式(3)に示すように、好ましくは2〜100μmであり、より好ましくは2〜50μm、さらに好ましくは2〜30μmである。
前記支持体は、前記弾性率を有するものであれば特に限定されないが、ガラス、水晶、合成石英、ニオブ酸リチウムおよびサファイアからなる群より選ばれる少なくとも1種から形成されることが、高透過率を保持する点で好ましい。前記ガラスとしては、特に限定されないが、例えば、ホウケイ酸塩系ガラス、ケイ酸塩系ガラス、ソーダ石灰ガラス、および近赤外線吸収ガラスなどが挙げられる。前記近赤外線吸収ガラスは、入射角依存性を低減できる点で好ましく、その具体例としては、フツリン酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラスなどが挙げられる。
また、前記支持体が化合物(A)を含有する樹脂製基板の場合、前記樹脂製基板に用いられる樹脂は、後述する樹脂層と同様の樹脂を用いることができる。
前記樹脂層は、透明樹脂を用いて形成することができる。前記樹脂層に用いる透明樹脂としては、1種単独でもよいし、2種以上でもよい。
透明樹脂としては、本発明の効果を損なわないものである限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルムへの成形性を確保し、かつ、100℃以上の蒸着温度で行う高温蒸着により誘電体多層膜を形成しうるフィルムとするため、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110〜380℃、より好ましくは110〜370℃、さらに好ましくは120〜360℃である樹脂が挙げられる。また、前記樹脂のガラス転移温度が140℃以上であると、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成しえるフィルムが得られるため、特に好ましい。
透明樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂板を形成した場合に、この樹脂板の全光線透過率(JIS K7105)が、好ましくは75〜95%、さらに好ましくは78〜95%、特に好ましくは80〜95%となる樹脂を用いることができる。全光線透過率がこのような範囲となる樹脂を用いれば、得られる基板は光学フィルムとして良好な透明性を示す。
透明樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常15,000〜350,000、好ましくは30,000〜250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000である。
透明樹脂としては、例えば、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂を挙げることができる。
≪環状(ポリ)オレフィン系樹脂≫
環状(ポリ)オレフィン系樹脂としては、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体から得られる樹脂、および当該樹脂を水素添加することで得られる樹脂が好ましい。
Figure 0006705132
式(X0)中、Rx1〜Rx4はそれぞれ独立に、下記(i')〜(ix')より選ばれる原子または基を表し、kx、mxおよびpxはそれぞれ独立に、0または正の整数を表す。
(i')水素原子
(ii')ハロゲン原子
(iii')トリアルキルシリル基
(iv')酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、
置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(v')置換または非置換の炭素数1〜30の炭化水素基
(vi')極性基(但し、(iv')を除く。)
(vii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基
(但し、前記結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
(viii')Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1〜Rx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
(ix')Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1とRx4は、それぞれ独立に前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表す。)
Figure 0006705132
式(Y0)中、Ry1およびRy2はそれぞれ独立に、前記(i')〜(vi')より選ばれる原子または基を表すか、Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表し、kyおよびpyはそれぞれ独立に、0または正の整数を表す。
≪芳香族ポリエーテル系樹脂≫
芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
Figure 0006705132
式(1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、炭素数1〜12の1価の有機基を示し、a〜dはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示す。
Figure 0006705132
式(2)中、R1〜R4およびa〜dはそれぞれ独立に、前記式(1)中のR1〜R4およびa〜dと同義であり、Yは、単結合、−SO2−または>C=Oを示し、R7およびR8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1〜12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0のとき、R7はシアノ基ではない。
また、前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、さらに下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
Figure 0006705132
式(3)中、R5およびR6はそれぞれ独立に、炭素数1〜12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、−O−、−S−、−SO2−、>C=O、−CONH−、−COO−または炭素数1〜12の2価の有機基を示し、eおよびfはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示し、nは0または1を示す。
Figure 0006705132
式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhはそれぞれ独立に、前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfはそれぞれ独立に、前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。
≪ポリイミド系樹脂≫
ポリイミド系樹脂としては、特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であればよく、例えば、特開2006−199945号公報や特開2008−163107号公報に記載されている方法で合成することができる。
≪フルオレンポリカーボネート系樹脂≫
フルオレンポリカーボネート系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリカーボネート樹脂であればよく、例えば、特開2008−163194号公報に記載されている方法で合成することができる。
≪フルオレンポリエステル系樹脂≫
フルオレンポリエステル系樹脂としては、特に制限されず、フルオレン部位を含むポリエステル樹脂であればよく、例えば、特開2010−285505号公報や特開2011−197450号公報に記載されている方法で合成することができる。
≪フッ素化芳香族ポリマー系樹脂≫
フッ素化芳香族ポリマー系樹脂としては、特に制限されないが、フッ素原子を少なくとも1つ有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位とを含有するポリマーであることが好ましく、例えば特開2008−181121号公報に記載されている方法で合成することができる。
≪アクリル系紫外線硬化型樹脂≫
アクリル系紫外線硬化型樹脂としては、特に制限されないが、分子内に一つ以上のアクリル基もしくはメタクリル基を有する化合物と、紫外線によって分解して活性ラジカルを発生させる化合物を含有する樹脂組成物から合成されるものを挙げることができる。
≪市販品≫
透明樹脂の市販品としては、以下の市販品等を挙げることができる。環状(ポリ)オレフィン系樹脂の市販品としては、JSR(株)製アートン、日本ゼオン(株)製ゼオノア、三井化学(株)製APEL、ポリプラスチックス(株)製TOPASなどを挙げることができる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、住友化学(株)製スミカエクセルPESなどを挙げることができる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ネオプリムLなどを挙げることができる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、帝人(株)製ピュアエースなどを挙げることができる。フルオレンポリカーボネート系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ユピゼータEP−5000などを挙げることができる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製OKP4HTなどを挙げることができる。アクリル系樹脂の市販品としては、(株)日本触媒製アクリビュアなどを挙げることができる。シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂の市販品としては、新日鐵化学(株)製シルプラスなどを挙げることができる。
≪化合物(A)≫
化合物(A)は、波長600nm以上800nm未満に吸収極大を有すれば特に制限されないが、溶剤可溶型の色素化合物であることが好ましく、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物およびシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、スクアリリウム系化合物を含むことがさらに好ましく、スクアリリウム系化合物とその他の化合物(A)をそれぞれ1種以上含むことがさらに好ましく、その他の化合物(A)としてはフタロシアニン系化合物およびシアニン系化合物が特に好ましい。
スクアリリウム系化合物は、優れた可視光透過性、急峻な吸収特性および高いモル吸光係数を有するが、光線吸収時に散乱光の原因となる蛍光を発生させる場合がある。そのような場合、スクアリリウム系化合物とその他の化合物(A)とを組み合わせて使用することにより、散乱光が少なくカメラ画質がより良好な光学フィルターを得ることができる。スクアリリウム系化合物の具体的な例としては、下記に記載の化合物(a−1)を挙げることができる。
Figure 0006705132
化合物(A)の吸収極大波長は、好ましくは620nm以上780nm以下、さらに好ましくは630nm以上770nm以下、特に好ましくは640nm以上760nm以下である。
前記樹脂層中の化合物(A)の含有量は、透明樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01〜5.0重量部、より好ましくは0.02〜4.0重量部、特に好ましくは0.03〜3.0重量部である。
≪その他の色素(X)≫
前記樹脂層には、さらに、化合物(A)に該当しない、その他の色素(X)が含まれていてもよい。
その他の色素(X)としては、吸収極大波長が600nm未満もしくは800nm超のものであれば特に制限されないが、吸収極大波長が800nm超のものが好ましい。このような色素としては、例えば、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、オクタフィリン系化合物、ジイモニウム系化合物、ペリレン系化合物、および金属ジチオラート系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
≪その他成分≫
前記樹脂層は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに酸化防止剤、近紫外線吸収剤、蛍光消光剤および金属錯体系化合物等の添加剤を含有してもよい。これらその他成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記近紫外線吸収剤としては、例えばアゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物などが挙げられる。
前記酸化防止剤としては、例えば2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、およびテトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
なお、これら添加剤は、樹脂層を製造する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を合成する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性に応じて適宜選択されるものであるが、樹脂100重量部に対して、通常0.01〜5.0重量部、好ましくは0.05〜2.0重量部である。
<基材(i)>
波長600nm以上800nm未満の領域において、前記基材(i)の垂直方向から測定した最も低い透過率(Za)は、好ましくは40%以下、さらに好ましくは25%以下、特に好ましくは10%以下である。
波長600nm以上の領域における前記基材(i)の垂直方向から測定した透過率が50%超から50%以下となる最も短い波長(Xc)は、好ましくは610〜670nm、さらに好ましくは620〜665nm、特に好ましくは630〜660nmである。
基材(i)の(Za)および(Xc)がこのような範囲にあれば、不要な近赤外線を選択的に効率よくカットすることができるとともに、基材(i)上に誘電体多層膜を製膜した際、可視波長〜近赤外波長領域付近の光学特性の入射角依存性を低減することができる。
基材(i)の波長430〜580nmにおける平均透過率は、好ましくは75%以上、さらに好ましくは78%以上、特に好ましくは80%以上である。このような透過特性を有する基材を用いると、可視領域において高い光線透過特性を達成でき、高感度なカメラ機能を達成することができる。
前記基材(i)の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、得られる光学フィルターの入射角依存性を低減するように適宜選択することが望ましく、好ましくは10〜200μm、さらに好ましくは15〜180μm、特に好ましくは20〜150μmである。基材(i)の厚みが前記範囲にあると、該基材(i)を用いた光学フィルターを薄型化および軽量化することができ、固体撮像装置等の様々な用途に好適に用いることができる。
≪基材(i)の製造方法≫
前記支持体に、必要に応じて化合物(A)を含む樹脂溶液を溶融成形またはキャスト成形することで、好ましくはスピンコート、スリットコート、インクジェットなどの方法にて塗工した後に溶媒を乾燥除去し、必要に応じてさらに光照射や加熱を行うことで、前記支持体上に前記樹脂層が形成された基材(i)を製造することができる。また、必要に応じて、さらに、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングしてオーバーコート層を積層してもよい。
前記溶融成形としては、具体的には、樹脂と必要に応じて化合物(A)等とを溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;樹脂と必要に応じて化合物(A)等とを含有する樹脂組成物を溶融成形する方法;または、樹脂と溶剤と必要に応じて化合物(A)等とを含む樹脂組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
前記キャスト成形としては、樹脂、溶剤および必要に応じて化合物(A)等を含む樹脂組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法;または光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂と必要に応じて化合物(A)等とを含む硬化性組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶媒を除去した後、紫外線照射や加熱などの適切な手法により硬化させる方法などにより製造することもできる。
前記方法で得られた樹脂層中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよい。具体的には、前記残留溶剤量は、樹脂層の重さに対して、好ましくは3重量%以下、より好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以下である。残留溶剤量が前記範囲にあると、変形や特性が変化しにくい、所望の機能を容易に発揮できる樹脂層が得られる。
<誘電体多層膜>
本発明における誘電体多層膜は、近赤外線を反射する能力を有する膜である。本発明では、近赤外線反射膜は前記基材(i)の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合、高い強度を有し、反りやねじれが生じにくい光学フィルターを得ることができる。光学フィルターを固体撮像素子用途に適用する場合、光学フィルターの反りやねじれが小さい方が好ましいことから、誘電体多層膜を前記基材(i)の両面に設けることが好ましい。
前記誘電体多層膜は、波長700〜1100nmの範囲全体にわたって反射特性を有することが好ましく、さらに好ましくは波長700〜1150nm、特に好ましくは700〜1200nmの範囲全体にわたって反射特性を有することが好ましい。基材(i)の両面に誘電体多層膜を有する形態として、光学フィルターの垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に波長700〜950nm付近に主に反射特性を有する第一光学層を基材(i)の片面に有し、基材(i)の他方の面上に光学フィルターの垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に900nm〜1150nm付近に主に反射特性を有する第二光学層を有する形態や、光学フィルターの垂直方向に対して5°の角度から測定した場合に波長700〜1150nm付近に主に反射特性を有する第三光学層を基材(i)の片面に有し、基材(i)の他方の面上に可視域の反射防止特性を有する第四光学層を有する形態などが挙げられる。
誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層したものが挙げられる。高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.7〜2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウム等を主成分とし、酸化チタン、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0〜10重量%)含有させたものが挙げられる。
低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.2〜1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、基材(i)上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、遮断しようとする近赤外線波長をλ(nm)とすると、0.1λ〜0.5λの厚さが好ましい。λ(nm)の値としては、例えば700〜1400nm、好ましくは750〜1300nmである。厚さがこの範囲であると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)がλ/4で算出される光学的膜厚と、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さとがほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、光学フィルター全体として16〜70層であることが好ましく、20〜60層であることがより好ましい。各層の厚み、光学フィルター全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、光学フィルターの反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができる。
本発明では、化合物(A)の吸収特性に合わせて高屈折率材料層および低屈折率材料層を構成する材料種、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さ、積層の順番、積層数を適切に選択することで、可視域に十分な透過率を確保した上で近赤外波長域に十分な光線カット特性を有し、且つ、斜め方向から近赤外線が入射した際の反射率を低減することができる。
ここで、前記条件を最適化するには、例えば、光学薄膜設計ソフト(例えば、Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用い、可視域の反射防止効果と近赤外域の光線カット効果を両立できるようにパラメーターを設定すればよい。上記ソフトの場合、例えば第一光学層の設計にあたっては、波長400〜700nmの目標透過率を100%、Target Toleranceの値を1とした上で、波長705〜950nmの目標透過率を0%、Target Toleranceの値を0.5にするなどのパラメーター設定方法が挙げられる。これらのパラメーターは基材(i)の各種特性などに合わせて波長範囲をさらに細かく区切ってTarget Toleranceの値を変えることもできる。
<その他の機能膜>
本発明の光学フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、基材(i)と誘電体多層膜との間、基材(i)の誘電体多層膜が設けられた面と反対側の面、または誘電体多層膜の基材(i)が設けられた面と反対側の面に、基材(i)や誘電体多層膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止、密着性向上および傷消しなどの目的で、反射防止膜、ハードコート膜、プライマー膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
本発明の光学フィルターは、前記機能膜からなる層を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本発明の光学フィルターが前記機能膜からなる層を2層以上含む場合には、同様の層を2層以上含んでもよいし、異なる層を2層以上含んでもよい。
機能膜を積層する方法としては、特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを基材(i)または誘電体多層膜に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
また、前記コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で基材(i)または誘電体多層膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
前記コーティング剤としては、紫外線(UV)もしくは電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。これらのコーティング剤を含む前記硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
また、前記硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100重量%とした場合、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜5重量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化性組成物の硬化特性および取り扱い性が優れ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を得ることができる。
さらに、前記硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知のものを使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を挙げることができる。
これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記機能膜の厚さは、好ましくは0.1〜20μm、さらに好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは0.7〜5μmである。
また、基材(i)と機能膜および/または誘電体多層膜との密着性や、機能膜と誘電体多層膜との密着性を上げる目的で、基材(i)、機能膜または誘電体多層膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
[光学フィルターの用途]
本発明の光学フィルターは、視野角が広く、優れた近赤外線カット能等を有する。したがって、カメラモジュールのCCDやCMOSイメージセンサー等の固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー等に有用である。さらに、自動車や建物等のガラス板等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。
[固体撮像装置]
本発明の固体撮像装置は、本発明の光学フィルターを具備する。ここで、固体撮像装置とは、CCDやCMOSイメージセンサー等といった固体撮像素子を備えたイメージセンサーであり、具体的にはデジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、デジタルビデオカメラ等の用途に用いることができる。例えば、本発明のカメラモジュールは、本発明の光学フィルターを具備する。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味する。また、各物性値の測定方法および物性の評価方法は以下のとおりである。
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
(a)ウオターズ(WATERS)社製のゲルパーミエ−ションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー社製Hタイプカラム、展開溶剤:o−ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
(b)東ソー社製GPC装置(HLC−8220型、カラム:TSKgelα‐M、展開溶剤:THF)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
<ガラス転移温度(Tg)>
エスアイアイ・ナノテクノロジーズ株式会社製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
<弾性率>
弾性率は、株式会社フィッシャーインストルメンツ製「ピコデンターHM500」を用いて、測定条件:300mN/10sで測定した。
<厚み>
支持体の厚みは(株)ミツトヨ製「デジマチックインジケータ」を用いて測定し、樹脂層の厚みは大塚電子(株)製「反射分光膜厚計FE−3000」を用いて測定した。
<反り>
10mm角にチップカットした蒸着シートを、(株)KEYENCE製「デジタルマイクロスコープVHX−600」の観察ステージ上に配置し、横から観察してチップ端部の反りの高さを測定し、下記基準で評価した。
○○○:20μm未満
○○:20μm≦反り<40μm
○:40μm≦反り<60μm
△:60μm≦反り<80μm
×:80μm以上
<割れ>
10mm角にチップカットした蒸着シートを、100mmの高さからSUS板状へ50回落下させ、(株)KEYENCE製「デジタルマイクロスコープVHX−600」を用いて50倍にて、割れや欠けの発生状況を観察し、下記基準で評価した。
○○○: 割れ・欠けの発生無し。
○○: 1〜3箇所欠け・割れを生じる。
○: 3〜9箇所欠け・割れを生じる。
△: 10箇所以上に欠け・割れを生じる。
[合成例]
下記実施例で用いた化合物(A)は、一般的に知られている方法で合成した。一般的な合成方法としては、例えば、特許第3366697号公報、特許第2846091号公報、特許第2864475号公報、特許第3703869号公報、特開昭60−228448号公報、特開平1−146846号公報、特開平1−228960号公報、特許第4081149号公報、特開昭63−124054号公報、「フタロシアニン −化学と機能―」(アイピーシー、1997年)、特開2007−169315号公報、特開2009−108267号公報、特開2010−241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報などに記載されている方法を挙げることができる。
<樹脂合成例1>
下記式(a)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(以下「DNM」ともいう。)100部、1−ヘキセン(分子量調節剤)18部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することにより開環重合反応させて開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
Figure 0006705132
このようにして得られた開環重合体溶液1,000部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。この反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。また、得られた樹脂Aからなる樹脂層の弾性率は3GPaであった。
[実施例1]
樹脂合成例1で得られた樹脂A 100部、化合物(A)として前記化合物(a−1) 0.3部、および塩化メチレンを加えて調製した樹脂溶液(樹脂濃度20重量%)を、ガラス支持体(SCHOTT製「D263」、厚み;80μm、弾性率70GPa)上にキャストし、150℃で1時間乾燥することにより、ガラス支持体上に厚みが10μmの樹脂層が形成された基材を得た。
続いて、得られた基材の片面に、蒸着温度1 0 0 ℃ で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ( S i O 2 : 膜厚8 3 〜 1 9 9 n m ) 層とチタニア( T i O 2 : 膜厚1 0 1 〜 1 2 5 n m)層とが交互に積層されてなるもの, 積層数2 0 〕を形成し、さらに基材のもう一方の面に、蒸着温度1 0 0 ℃ で近赤外線を反射する多層蒸着膜〔シリカ( S i O 2 : 膜厚7 7 〜1 8 9 n m ) 層とチタニア( T i O 2 : 膜厚8 4 〜 1 1 8 n m ) 層とが交互に積層されてなるもの, 積層数2 6 〕を形成し、両面の蒸着膜の厚さの合計が0.005mmの近赤外線カットフィルターを得た。多層蒸着膜は基材屈折率の波長依存性等を考慮した上で設計した。得られた近赤外線カットフィルターの反りおよび割れに関する評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例2〜9]
樹脂層および支持体を構成する材料種、ならびに、樹脂層および支持体の厚みを表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして近赤外線カットフィルターを作成し、評価した。得られた近赤外線カットフィルターの評価結果を表1に示す。
[比較例1]
後述する樹脂B 100部に化合物(A)として化合物(a−1) 0.3部を加えて調製した樹脂塗液を、PENフィルムにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。この際、乾燥後の厚みが5μmになるようにバーを選定した。次に、コンベア式UV露光機を用いて露光(露光量500mJ/cm2、200mW/cm2)を行い、樹脂Bを硬化させ、PENフィルム上に厚みが5μmの樹脂層が形成された基材を得た。実施例1と同様にして、得られた基材の両面に多層蒸着膜を形成して近赤外線カットフィルターを作成し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例2]
樹脂Cを用いたこと以外は、比較例1と同様にして近赤外線カットフィルターを作成し、評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006705132
表1中の支持体および樹脂層の材料種は下記の通りである。
<支持体の材料種>
ガラスA:SCHOTT製「D263」(弾性率;70GPa)
ガラスB:松浪硝子工業(株)製「BS13」(弾性率;60GPa)
サファイア:京セラ(株)製「SA100」(弾性率;470GPa)
PEN:帝人デュポンフィルム(株)製「テオネックス」(弾性率;6GPa、ポリエチレンナフタレート)
ガラスBは近赤外波長領域に吸収極大を有し、厚みが300μmのときの半値が597nm、厚みが100μmのときの半値が641nmであった。
<樹脂層の材料種>
樹脂A:環状オレフィン系樹脂(樹脂合成例1)
樹脂B:アクリル系紫外線硬化型樹脂(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 100重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5重量部、メチルエチルケトン(溶剤、固形分濃度:30%))
樹脂C:ウレタンアクリル系紫外線硬化型樹脂(大成ファインケミカル(株)製「8BR−500」 50重量部、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート 50重量部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5重量部、メチルエチルケトン(溶剤、固形分濃度:30%))
本発明の光学フィルターは、デジタルスチルカメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、パーソナルコンピューター用カメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、テレビ、カーナビゲーションシステム用車載装置、携帯情報端末、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム用装置、デジタルミュージックプレーヤー等に好適に用いることができる。さらに、自動車や建物などのガラス等に装着される熱線カットフィルターなどとしても好適に用いることができる。

Claims (12)

  1. 弾性率が50〜500GPaである支持体と、該支持体の少なくとも一方の面に樹脂層とを有する基材を含み、
    前記樹脂層が、波長600nm以上800nm未満に吸収極大を有する化合物(A)を含み、
    下記式(1)、(2)(3)および(6−1)を満たし、厚みが65μm以上180μm以下であり、可視光線を透過し、かつ、近赤外線の少なくとも一部を遮断することを特徴とする光学フィルター。
    Y ≧ −10500X + 540000 (1)
    30 ≦ Ta ≦ 100 (2)
    2 ≦ Tb ≦ 100 (3)
    [式(1)〜(3)中、Yは下記式(4)を満たし、Xは下記式(5)を満たし、Taは支持体の厚み(単位;μm)を示し、Tbは樹脂層の厚み(単位;μm)を示す。]
    Y =(Ea×Ta)×(Eb×Tb) (4)
    X = Ta (5)
    [式(4)中、Eaは支持体の弾性率(単位;GPa)を示し、Ebは樹脂層の弾性率(単位;GPa)を示す。]
    Y ≧ 1500X (6−1)
  2. 厚みが95μm以上150μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルター。
  3. 前記樹脂層の弾性率が2〜8GPaであることを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルター。
  4. 前記Yおよび前記Xが下記式(7)を満たことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルター。
    Y ≦ 24000X (7)
  5. 前記基材の少なくとも一方の面に、近赤外線を反射する誘電体多層膜を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  6. 前記誘電体多層膜が、波長700〜1100nmの範囲全体にわたって反射特性を有することを特徴とする請求項5に記載の光学フィルター。
  7. 前記誘電体多層膜の積層数が16〜60層であることを特徴とする請求項5または6に記載の光学フィルター。
  8. 前記樹脂層が、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂およびビニル系紫外線硬化型樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂から形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  9. 前記支持体が、ガラス、水晶、合成石英、ニオブ酸リチウムおよびサファイアからなる群より選ばれる少なくとも1種から形成されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学フィルター。
  10. 前記支持体が、近赤外波長領域に吸収極大を有することを特徴とする請求項9に記載の光学フィルター。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備する固体撮像装置。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の光学フィルターを具備するカメラモジュール。
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