JP7360665B2 - 樹脂組成物、樹脂層および光学フィルター - Google Patents

樹脂組成物、樹脂層および光学フィルター Download PDF

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Description

本発明は、樹脂組成物、樹脂層および光学フィルターに関する。
ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などの固体撮像装置にはカラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されている。これら固体撮像素子では、その受光部において人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードが使用されている。また、光学センサー装置でも、シリコンフォトダイオードなどが使用されている。例えば、固体撮像素子では、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正を行うことが必要であり、特定の波長領域の光を選択的に透過もしくはカットする光学フィルター(例えば、近赤外線カットフィルター)を用いることが多い。
このような近赤外線カットフィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されている。例えば、基材として樹脂を用い、樹脂中に近赤外線吸収色素を含有させた近赤外線カットフィルターが知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載された近赤外線カットフィルターは、近赤外線吸収特性が必ずしも充分ではない場合があった。
また、近年のモバイル機器等では、波長800~1000nm付近の近赤外線を用いたセキュリティ認証機能(例えば、虹彩認証、顔認証など)を搭載するものが多く登場しており、この認証に用いる近赤外線がカメラ画像にフレアやゴーストなどの悪影響を与える場合があった。このため、近赤外線のうち、比較的長波長領域の光線をカットする特性が必要となっている。
さらに、レーザーを用いた距離測定技術等では、不要な光はノイズの原因となるためカットする必要があるが、レーザーの光源波長の長波長化に伴い、可視~近赤外領域までの広い波長域をカットする必要性が高まっている。
前記近赤外線吸収色素としては、従来、ポリメチン系、スクアリリウム系、ポルフィリン系、ジチオール金属錯体系、フタロシアニン系、ジイモニウム系などの色素が使用されているが、中でもジイモニウム系色素は波長900nm以上の近赤外線の吸収能が高く、可視光領域での透明性が高いことから多用されている。
例えば特許文献2に記載のジイモニウム系化合物は、近赤外線領域で広くて均一な吸光効率を示し、可視光領域では優れた透過特性を示す。
また、波長850nm以上の近赤外領域を選択的にカットする色素としては、ポリメチン系色素またはクロコニウム色素が知られている(例えば特許文献3)。
特開平6-200113号公報 特表2014-506252号公報 特表2008-528706号公報
しかしながら、ジイモニウム系色素を用いて、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットしようとした場合、可視光透過率が低下してしまうことが分かった。また、ジイモニウム系色素の吸収波形はなだらかであり、吸収帯域が広いため、近赤外領域において特定の波長を選択的にカットするには不向きであった。
また、従来のポリメチン系色素またはクロコニウム色素は、可視光透過性の点で改良の余地があることが分かった。
本発明は以上のことに鑑みてなされたものであり、波長850nm以上のカットしたい近赤外線領域の波長の光を、シャープな吸収波形で十分にカットしながらも、可視光透過率の低下を抑制でき、光に対して十分な耐性を有する樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記構成例によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の構成例を以下に示す。
なお、本発明において、数値範囲を表す「A~B」等の記載は、「A以上、B以下」と同義であり、AおよびBをその数値範囲内に含む。また、本発明において、波長A~Bnmとは、波長Anm以上、波長Bnm以下の波長領域における波長分解能1nmにおける特性を表す。
[1] 樹脂と、下記式(I)で表される化合物(A)とを含有する樹脂組成物。
Cn+An- (I)
[式(I)中、Cn+は下記式(II)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
Figure 0007360665000001
[式(II)中、Yaは独立に、置換または非置換の炭素数8~20のアルキル基であり、
Zaは、ハロゲン原子、または、下記式(A-1)~(A-2)のいずれかで表される基である。]
Figure 0007360665000002
[2] 前記アニオンが下記式(III)で表されるアニオンである、[1]に記載の樹脂組成物。
Figure 0007360665000003
[式(III)中、R7~R26はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。]
[3] 前記化合物(A)の含有量が、前記樹脂100質量部に対して0.005~1質量部である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物から形成された樹脂層。
[5] 波長850~1150nmに少なくとも1つの吸収極大波長を有する、[4]に記載の樹脂層。
[6] [4]または[5]に記載の樹脂層と、誘電体多層膜とを有する、光学フィルター。
本発明によれば、波長850nm以上のカットしたい近赤外線領域の波長の光を、シャープ吸収波形で十分にカットしながらも可視光透過率の低下を抑制でき、蛍光灯などによる光に対して十分な耐性を有する樹脂組成物および樹脂層を提供することができる。さらに、本発明によれば、これらの特性を有する光学フィルターを提供することができる。
なお、本発明において、光に対して十分な耐性を有するとは、光を照射した前後において、光学特性が大きく変化しないことをいう。
また、特許文献2に記載のように、ジイモニウム系色素は、近赤外線領域で幅広い吸光特性を示すため、ジイモニウム系色素を用いて、例えば、可視光-近赤外線選択透過フィルター(DBPF)や近赤外線透過フィルター(IRPF)を形成しようとする場合、透過したい所望の波長の近赤外線を透過させることは容易ではなかった。
さらに、例えば従来のポリメチン系色素は、可視光透過性の点で改良の余地があり、使用が制限されていた。
一方、本発明で用いる化合物(A)は、波長850nm以上の波長領域にシャープな吸収を有するだけでなく、耐光性にも優れているため、本発明によれば、近赤外線カットフィルター(NIR-CF)のみならず、DBPFやIRPFなどの光学フィルターをも容易に作製することができる。
図1は、基材または光学フィルターの透過率を測定する方法を示す概略模式図である。 図2は、実施例1で得られた基材の分光透過率を示す図である。 図3は、実施例1で得られた光学フィルターの分光透過率を示す図である。 図4は、比較例1で得られた基材の分光透過率を示す図である。 図5は、比較例1で得られた光学フィルターの分光透過率を示す図である。 図6は、比較例2で得られた基材の分光透過率を示す図である。 図7は、比較例2で得られた光学フィルターの分光透過率を示す図である。
≪樹脂組成物≫
本発明に係る樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、樹脂と前記化合物(A)とを含んでいれば特に制限されない。
本組成物は、2種以上の樹脂を含んでいてもよく、2種以上の化合物(A)を含んでいてもよい。
<化合物(A)>
化合物(A)は、下記式(I)で表される。
このような化合物(A)は、波長850nm以上における吸収極大付近での高い近赤外線カット性能と高い可視光透過性能とを有し、光に対して十分な耐性を有する。また、該化合物(A)は、シャープな吸収ピーク(鋭い吸収波形)を有する。このような化合物(A)を用いることで、可視光の透過率が高く、かつ、近赤外線領域において高いOD値の光学フィルターを容易に得ることができる。
Cn+An- (I)
[式(I)中、Cn+は下記式(II)で表される一価のカチオンであり、An-は一価のアニオンである。]
Figure 0007360665000004
[式(II)中、Yaは独立に、置換または非置換の炭素数8~20のアルキル基であり、
Zaは、ハロゲン原子、または、下記式(A-1)~(A-2)のいずれかで表される基である。]
Figure 0007360665000005
前記Zaにおけるハロゲン原子は、好ましくは、塩素原子、フッ素原子、臭素原子であり、より好ましくは塩素原子である。
前記Yaは、好ましくは、置換もしくは非置換の炭素数8~20のアルキル基であり、より好ましくは、置換もしくは非置換の炭素数8~12のアルキル基であり、特に好ましくは、n-オクチル基(n-Oct)、n-デシル基である。
前記Yaにおける、置換または非置換の炭素数8~20のアルキル基における置換の炭素数8~20のアルキル基とは、炭素数8~20のアルキル基の一部が、置換基で置換された基が挙げられる。該置換基としては、下記La~Leが挙げられる。
(La):脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数1~12の脂肪族炭化水素基
(Lb):ハロゲン置換アルキル基、好ましくは炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基
(Lc):脂環式炭化水素基、好ましくは炭素数3~14の脂環式炭化水素基
(Ld):芳香族炭化水素基、好ましくは炭素数6~14の芳香族炭化水素基
(Le):複素環基、好ましくは炭素数3~14の複素環基
前記Laは、好ましくは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基(n-Bu)、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基である。
前記Lbにおけるハロゲン置換アルキル基としては、例えば、炭素数1~12のアルキル基の少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられ、好ましくは、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、1,1-ジクロロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタクロロプロピル基、ヘプタフルオロプロピル基である。
前記Lcにおける脂環式炭化水素基としては、好ましくは、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基等のシクロアルキル基;ノルボルナン基およびアダマンタン基等の多環脂環式基が挙げられる。
前記Ldにおける芳香族炭化水素基としては、好ましくは、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基である。
前記Leにおける複素環基としては、好ましくは、フラン、チオフェン、ピロール、インドール、インドリン、インドレニン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、モルホリンである。
前記An-としては、一価のアニオンであれば特に制限されないが、好ましくは、過塩素酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、下記式(III)で表されるアニオンなどが挙げられ、より好ましくは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、下記式(III)で表されるアニオンであり、耐熱性により優れる化合物(A)を容易に得ることができる等の点から、下記式(III)で表されるアニオンであることが特に好ましい。
Figure 0007360665000006
[式(III)中、R7~R26はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。]
前記式(III)で表されるアニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオン、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートアニオンが好ましく、耐熱性により優れる化合物(A)を容易に得ることができる等の点から、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンが特に好ましい。
前記化合物(A)は、具体的には、例えば、下記実施例に記載の方法で合成することができる。
化合物(A)は、有機溶剤可溶の化合物であることが好ましく、特に塩化メチレン可溶の化合物であることが好ましい。
ここで、有機溶剤可溶の化合物とは、25℃の有機溶剤100gに対し、化合物(A)が0.1g以上溶解する場合のことをいう。
化合物(A)は、下記要件(A)を満たす化合物であることが好ましい。
要件(A):化合物(A)を塩化メチレンに溶解した溶液を用いて測定される透過スペクトル(但し、該透過スペクトルは、吸収極大波長における透過率が10%となるスペクトルである。以下この透過スペクトルを「化合物(A)の透過スペクトル」ともいう。)において、波長400~530nmにおける透過率の平均値が、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。該透過率の平均値は高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
化合物(A)がこの要件(A)を満たすことで、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットしながらも可視光透過率の低下をより抑制できる。
なお、本発明において、波長A~Bnmの平均透過率は、Anm以上Bnm以下の、1nm刻みの各波長における透過率を測定し、その透過率の合計を、測定した透過率の数(波長範囲、B-A+1)で除すことで算出した値である。
化合物(A)は、下記要件(B)を満たす化合物であることが好ましい。
要件(B):化合物(A)の透過スペクトルにおいて、波長400~530nmにおける透過率の最低値が、好ましくは70%以上、より好ましくは72%以上、さらに好ましくは73%以上である。該透過率の最低値は高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
化合物(A)がこの要件(B)を満たすことで、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットしながらも可視光透過率の低下をより抑制できる。
化合物(A)の吸収極大波長は、好ましくは850~1150nm、より好ましくは855~1100nm、特に好ましくは860~1090nmの範囲にある。
該吸収極大波長は、化合物(A)を塩化メチレンに溶解した溶液を用いて測定される透過スペクトルにおいて、透過率の値が最も小さくなる時の波長のことをいう。
化合物(A)の吸収極大波長が前記範囲にあることで、近赤外線のうち、比較的長波長領域(波長850nm以上の領域)においても高い光線カット能を有する光学フィルターを容易に得ることができる。特に、波長900nm以上の領域、具体的には、波長940nmにおいて、光学濃度(OD値)が4程度以上である光学フィルターを容易に得ることができる。
化合物(A)は、下記要件(C)を満たす化合物であることが好ましい。
要件(C):化合物(A)の透過スペクトルの波長800~1200nmの範囲において、透過率が50%となる光の波長のうち、最も長波長側の波長(Xb')と、最も短波長側の波長(Xa')との差(Xb'-Xa')が、好ましくは270nm以下、より好ましくは250nm以下、特に好ましくは230nm以下である。前記差の下限は、例えば、30nm以上である。
前記範囲に吸収極大波長を有し、かつ、この要件(C)を満たす化合物(A)は、吸収ピークがシャープであるため、このような化合物(A)を用いることで、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットできるNIR-CFのみならず、透過したい所望の波長の近赤外線を透過させるDBPFやIRPFなどの光学フィルターをも容易に作製することができる。
Xb'-Xa'が400nmを超える場合は近赤外領域に透過領域を設けることが困難であるため、DBPFやIRPFなどの光学フィルターを作製することは容易ではない傾向にある。
本組成物中の化合物(A)の含有量は、樹脂100質量部に対して、好ましくは0.005~1質量部、より好ましくは0.008~0.5質量部、特に好ましくは0.01~0.2質量部である。
化合物(A)の含有量が前記範囲にあると、波長850~1150nmの範囲の近赤外線を効率よくカットできるほか、可視光透過性により優れる組成物および樹脂層を容易に得ることができる。
<樹脂>
本組成物に用いる樹脂としては特に制限されず、従来公知の樹脂を用いることができる。
本組成物に用いられる樹脂は、1種単独でもよく、2種以上でもよい。
前記樹脂としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されないが、例えば、熱安定性およびフィルム(板)形状への成形性等に優れ、かつ、100℃以上程度の蒸着温度で行う高温蒸着で誘電体多層膜を形成し得るフィルムを容易に得ることができる等の点から、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは110~380℃、より好ましくは110~370℃、特に好ましくは120~360℃である樹脂が挙げられる。また、前記樹脂のTgが140℃以上であると、誘電体多層膜をより高温で蒸着形成し得るフィルムが得られるため、特に好ましい。
前記樹脂としては、当該樹脂からなる厚さ0.1mmの樹脂板の全光線透過率(JIS K 7375:2008)が、好ましくは75~95%、さらに好ましくは78~95%、特に好ましくは80~95%となる樹脂を用いることができる。
全光線透過率が前記範囲にある樹脂を用いると、透明性に優れる樹脂組成物、樹脂層や光学フィルターを容易に得ることができる。
前記樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常15,000~350,000、好ましくは30,000~250,000であり、数平均分子量(Mn)は、通常10,000~150,000、好ましくは20,000~100,000である。
前記樹脂としては、例えば、環状(ポリ)オレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド(アラミド)系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂が挙げられる。
[環状(ポリ)オレフィン系樹脂]
環状(ポリ)オレフィン系樹脂としては、下記式(X0)で表される単量体および下記式(Y0)で表される単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の単量体を用いて得られる樹脂、および、当該樹脂を水素添加することで得られる樹脂が好ましい。
Figure 0007360665000007
式(X0)中、Rx1~Rx4はそれぞれ独立に、下記(i')~(ix')より選ばれる原子または基を表し、kx、mxおよびpxはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
(i')水素原子
(ii')ハロゲン原子
(iii’)トリアルキルシリル基
(iv’)酸素原子、硫黄原子、窒素原子またはケイ素原子を含む連結基を有する、置換または非置換の炭素数1~30の炭化水素基
(v’)置換または非置換の炭素数1~30の炭化水素基
(vi’)極性基(但し、(ii')および(iv’)を除く。)
(vii’)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成されたアルキリデン基(但し、前記結合に関与しないRx1~Rx4は、それぞれ独立に前記(i’)~(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
(viii’)Rx1とRx2またはRx3とRx4とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1~Rx4は、それぞれ独立に前記(i’)~(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
(ix’)Rx2とRx3とが、相互に結合して形成された単環の炭化水素環または複素環(但し、前記結合に関与しないRx1とRx4は、それぞれ独立に前記(i’)~(vi’)より選ばれる原子または基を表す。)
Figure 0007360665000008
式(Y0)中、Ry1およびRy2はそれぞれ独立に、前記(i’)~(vi’)より選ばれる原子または基を表すか、Ry1とRy2とが、相互に結合して形成された単環もしくは多環の脂環式炭化水素、芳香族炭化水素または複素環を表し、kyおよびpyはそれぞれ独立に、0~4の整数を表す。
[芳香族ポリエーテル系樹脂]
芳香族ポリエーテル系樹脂は、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有することが好ましい。
Figure 0007360665000009
式(1)中、R1~R4はそれぞれ独立に、炭素数1~12の1価の有機基を示し、a~dはそれぞれ独立に、0~4の整数を示す。
Figure 0007360665000010
式(2)中、R1~R4およびa~dはそれぞれ独立に、前記式(1)中のR1~R4およびa~dと同義であり、Yは、単結合、-SO2-または-CO-を示し、R7およびR8はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、炭素数1~12の1価の有機基またはニトロ基を示し、gおよびhはそれぞれ独立に、0~4の整数を示し、mは0または1を示す。但し、mが0のとき、R7はシアノ基ではない。
また、前記芳香族ポリエーテル系樹脂は、さらに、下記式(3)で表される構造単位および下記式(4)で表される構造単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を有していてもよい。
Figure 0007360665000011
式(3)中、R5およびR6はそれぞれ独立に、炭素数1~12の1価の有機基を示し、Zは、単結合、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、-CONH-、-COO-または炭素数1~12の2価の有機基を示し、eおよびfはそれぞれ独立に、0~4の整数を示し、nは0または1を示す。
Figure 0007360665000012
式(4)中、R7、R8、Y、m、gおよびhはそれぞれ独立に、前記式(2)中のR7、R8、Y、m、gおよびhと同義であり、R5、R6、Z、n、eおよびfはそれぞれ独立に、前記式(3)中のR5、R6、Z、n、eおよびfと同義である。
[ポリイミド系樹脂]
ポリイミド系樹脂としては特に制限されず、繰り返し単位にイミド結合を含む高分子化合物であればよく、例えば、特開2006-199945号公報や特開2008-163107号公報に記載されている方法で合成することができる。
[ポリエステル系樹脂]
ポリエステル系樹脂としては特に制限されず、例えば、特開2010-285505号公報や特開2011-197450号公報に記載されている方法で合成することができる。
[ポリカーボネート系樹脂]
ポリカーボネート系樹脂としては特に制限されず、例えば、特開2008-163194号公報に記載されている方法で合成することができる。
[フッ素化芳香族ポリマー系樹脂]
フッ素化芳香族ポリマー系樹脂としては特に制限されないが、フッ素原子を少なくとも1つ有する芳香族環と、エーテル結合、ケトン結合、スルホン結合、アミド結合、イミド結合およびエステル結合からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合を含む繰り返し単位とを含有するポリマーであることが好ましく、例えば特開2008-181121号公報に記載されている方法で合成することができる。
[アクリル系紫外線硬化型樹脂]
アクリル系紫外線硬化型樹脂としては特に制限されないが、分子内に一つ以上のアクリル基もしくはメタクリル基を有する化合物と、紫外線によって分解して活性ラジカルを発生させる化合物を含有する樹脂組成物から合成されるものを挙げることができる。
アクリル系紫外線硬化型樹脂は、下記本樹脂層や下記オーバーコート層などの樹脂層を形成する際に用いられ得る硬化性樹脂として好適に使用することができる。
[市販品]
前記樹脂の市販品としては、以下の市販品等が挙げられる。環状(ポリ)オレフィン系樹脂の市販品としては、例えば、JSR(株)製アートン、日本ゼオン(株)製ゼオノア、三井化学(株)製APEL、ポリプラスチックス(株)製TOPASが挙げられる。ポリエーテルサルホン系樹脂の市販品としては、例えば、住友化学(株)製スミカエクセルPESが挙げられる。ポリイミド系樹脂の市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製ネオプリムLが挙げられる。ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、例えば、帝人(株)製ピュアエース、帝人(株)製パンライトSP-3810、三菱ガス化学(株)製ユピゼータEP-5000が挙げられる。フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、例えば、大阪ガスケミカル(株)製OKP4HTが挙げられる。アクリル系樹脂の市販品としては、例えば、(株)日本触媒製アクリビュアが挙げられる。シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂の市販品としては、例えば、新日鐵化学(株)製シルプラスが挙げられる。
<その他成分>
本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、化合物(A)以外の化合物(X)[紫外線吸収剤以外の吸収剤]、酸化防止剤、紫外線吸収剤、蛍光消光剤および金属錯体系化合物等のその他成分を含有してもよい。
これらその他成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
これらその他成分は、本組成物を調製する際に、樹脂などとともに混合してもよいし、樹脂を合成する際に添加してもよい。また、添加量は、所望の特性等に応じて適宜選択すればよいが、樹脂100質量部に対して、通常0.01~5.0質量部、好ましくは0.05~2.0質量部である。
[化合物(X)]
本組成物は、化合物(A)以外の化合物(X)[紫外線吸収剤以外の吸収剤]を1種または2種以上含んでいてもよい。
該化合物(X)としては、例えば、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ポリメチン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、オクタフィリン系化合物、ジイモニウム系化合物、ペリレン系化合物、金属ジチオラート系化合物が挙げられる。
前記化合物(X)の吸収極大波長は、好ましくは600~800nm、より好ましくは620~780nm、さらに好ましくは650~760nm、特に好ましくは660~750nmである。
前記範囲に吸収極大波長を有する化合物(X)を用いることで、赤色付近の色の入射角依存性が改良され、視感度補正により優れる光学フィルターを容易に得ることができる。
[紫外線吸収剤]
前記紫外線吸収剤としては、例えば、アゾメチン系化合物、インドール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、アントラセン系化合物、特開2019-014707号公報等に記載の化合物が挙げられる。
[酸化防止剤]
前記酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、2,2’-ジオキシ-3,3’-ジ-tert-ブチル-5,5’-ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンが挙げられる。
<添加剤>
本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに、有機溶剤、離型剤、界面活性剤、帯電防止剤、密着助剤、光拡散材等の添加剤を含有していてもよい。
これら添加剤はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
特に、本組成物を液状組成物とする場合、有機溶剤を用いることが好ましい。該有機溶剤の例としては、樹脂を溶解できる溶剤であることが好ましく、具体的には、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン含有化合物類が挙げられる。
また、後述するキャスト成形により樹脂層を製造する場合には、レベリング剤や消泡剤を用いることで該樹脂層の製造を容易にすることができる。
≪樹脂層≫
本発明に係る樹脂層(以下「本樹脂層」ともいう。)は、本組成物から形成された層であれば特に制限されず、厚みや大きさ等は、所望の用途に応じて適宜選択すればよい。
本樹脂層は、波長850~1150nmに少なくとも1つの吸収極大波長(λmax)を有することが好ましい。該波長範囲は、より好ましくは855~1100nm、特に好ましくは860~1090nmである。
該吸収極大波長(λmax)は、本樹脂層の垂直方向(本樹脂層の最も大きな面に対し垂直方向)から入射した光の透過率が最も低い値となる光の波長のことをいう。
本樹脂層の吸収極大波長が前記範囲にあることで、近赤外線のうち、比較的長波長領域(波長850nm以上の領域)においても高い光線カット能を有する光学フィルターを容易に得ることができる。特に、波長900nm以上の領域、具体的には、波長940nmにおいて、光学濃度(OD値)が4程度以上である光学フィルターを容易に得ることができる。
波長400~530nmにおいて、本樹脂層の垂直方向から測定した平均透過率(Tb_ave)は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。該透過率の平均値は高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
該平均透過率が前記範囲にあると、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットしながらも可視光透過率の低下をより抑制できる。
波長400~530nmにおいて、本樹脂層の垂直方向から測定した最低透過率(Tb_min)は、好ましくは70%以上、より好ましくは72%以上、さらに好ましくは73%以上である。該最低透過率は高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
該最低透過率が前記範囲にあると、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットしながらも可視光透過率の低下をより抑制できる。
波長800~1200nmにおいて、本樹脂層の垂直方向から測定した透過率が50%となる光の波長のうち、最も長波長側の波長(Xb)と、最も短波長側の波長(Xa)との差(Xb-Xa)は、好ましくは270nm以下、より好ましくは250nm以下、特に好ましくは230nm以下である。前記差の下限は、例えば、30nm以上である。
該差が前記範囲にある本樹脂層は、吸収ピークがシャープであるため、このような本樹脂層を用いることで、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットできるNIR-CFのみならず、透過したい所望の波長の近赤外線を透過させるDBPFやIRPFなどの光学フィルターをも容易に作製することができる。
Xb-Xaが400nmを超える場合は近赤外領域に透過領域を設けることが困難であるため、DBPFやIRPFなどの光学フィルターを作製することは容易ではない傾向にある。
本樹脂層の製造方法は特に制限されないが、例えば、本組成物を溶融成形またはキャスト成形することで製造することができる。
本樹脂層を製造する際には、溶剤を含む本組成物を用いることができるが、この場合、得られる本樹脂層中の残留溶剤量は可能な限り少ない方がよい。具体的には、該残留溶剤量は、本樹脂層の重さに対して、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
残留溶剤量が前記範囲にあると、変形や特性が変化しにくい、所望の機能を容易に発揮できる樹脂層が得られる。
本樹脂層を光学フィルターに用いる場合は、本樹脂層中の溶剤含有量を100質量ppm以下に抑えることが好ましい。
≪光学フィルター≫
本発明に係る光学フィルター(以下「本フィルター」ともいう。)は、本樹脂層と、誘電体多層膜とを有し、好ましくは、本樹脂層を含む基材(i)と、誘電体多層膜とを有する。
本発明の効果がより発揮される等の点から、このような本フィルターとしては、具体的には、近赤外線カットフィルター(NIR-CF)、可視光-近赤外線選択透過フィルター(DBPF)、近赤外線透過フィルター(IRPF)が挙げられる。これらのフィルターは、前記本樹脂層を有する以外は、従来公知の構成とすればよい。
本フィルターの厚みは、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、近年の固体撮像装置等の薄型化、軽量化等の流れによれば、該本フィルターの厚みも薄いことが好ましい。
本フィルターは、本樹脂層を含むため、薄型化が可能である。
本フィルターの厚みは、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、特に好ましくは150μm以下であり、下限は特に制限されないが、例えば、20μmであることが望ましい。
本フィルターの垂直方向から測定した、波長400~530nmの光の平均透過率(Tf_ave)は、好ましくは70%以上、より好ましくは75%以上、さらに好ましくは80%以上である。該透過率の平均値は高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
該平均透過率が前記範囲にあると、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットしながらも可視光透過率の低下をより抑制できる。
本フィルターの垂直方向から測定した、波長400~530nmの光の最低透過率(Tf_min)は、好ましくは70%以上、より好ましくは72%以上、さらに好ましくは73%以上である。該最低透過率は高い方が好ましいため、その上限は特に制限されず、100%であってもよい。
該最低透過率が前記範囲にあると、カットしたい近赤外線領域の波長の光を十分にカットしながらも可視光透過率の低下をより抑制できる。
本フィルターの、下記式にて算出した、波長950~1100nmにおける平均OD値(Tf_OD)は、好ましくは4.0以上、より好ましくは4.1以上である。
該OD値が前記範囲にあると、近赤外線カット特性が良好となり、本フィルターを固体撮像装置用途として使用した場合、良好な画像を容易に得ることができる。
Tf_OD=-Log10(波長950~1100nmにおける平均透過率(%)/100)
<NIR-CF>
前記NIR-CFは、波長850~1200nmの領域におけるカット性能に優れ、可視波長域での透過性に優れる光学フィルターであることが好ましい。
このNIR-CFで用いる前記誘電体多層膜は、近赤外線反射膜であることが好ましい。
NIR-CFを固体撮像素子などに使用する場合、近赤外波長域の透過率は低い方が好ましい。特に、波長800~1200nmの領域は固体撮像素子の受光感度が比較的高いことが知られており、この波長域の透過率を低減させることにより、カメラ画像と人間の目との視感度補正を効果的に行うことができ、優れた色再現性を達成することができる。また、さらに、波長850~1200nmの領域の透過率を低減させることで、セキュリティ認証機能に用いる近赤外光がイメージセンサー等に到達するのを効果的に防ぐことが可能になる。
NIR-CFは、波長850~1200nmの領域において、該フィルターの垂直方向から測定した場合の平均透過率が、好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下である。
波長850~1200nmの平均透過率がこの範囲にあると、近赤外線を十分にカットすることができ、優れた色再現性を達成できるため好ましい。
NIR-CFを固体撮像素子などに使用する場合、可視光透過率が高い方が好ましい。具体的には、波長400~530nmの領域において、該フィルターの垂直方向から測定した場合の平均透過率が、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは83%以上、特に好ましくは85%以上である。
波長400~530nmの平均透過率がこの範囲にあると、優れた撮像感度を達成することができる。
<DBPF>
前記DBPFは、可視光と、近赤外線のうち透過させたい波長の光とを透過し、近赤外線のうちカットしたい波長の光をカットする光学フィルターであれば特に制限されない。
このDBPFで用いる前記誘電体多層膜は、可視光と、近赤外線のうち透過させたい波長の光とを透過し、近赤外線のうちカットしたい波長の光をカットする膜であることが好ましい。
DBPFもNIR-CFと同様に、固体撮像素子などに使用する場合、可視光透過率が高い方が好ましく、前記と同様の理由から、波長400~530nmの平均透過率が、NIR-CFの該平均透過率と同様の範囲にあることが好ましい。
また、DBPFは、可視光と、近赤外線のうち透過させたい波長の光とを十分に透過でき、近赤外線のうちカットしたい波長の光を十分にカットすることができる等の点から、下記特性(d)を満たすことが好ましい。
特性(d):波長650nm以上の領域に、光線阻止帯域Za、光線透過帯域Zbおよび光線阻止帯域Zcを有し、それぞれの帯域の中心波長はZa<Zb<Zcであり、
前記ZaおよびZcにおける本フィルターの垂直方向から測定した場合の最小透過率がそれぞれ、好ましくは15%以下、より好ましくは5%以下であり、
前記Zbにおける本フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率が、好ましくは55%以上、より好ましくは60%以上である。
Zaは波長650nm以上900nm以下において、本フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が、20%超から20%以下になる最も短い波長Za1から、20%未満から20%以上となる最も長い波長Za2までの波長帯域を指す。なお、Zaの中心波長は、(Za1+Za2)/2nmである。
Zbは波長750nm以上1050nm以下において、本フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が、40%以下から40%超になる最も短い波長Zb1から、40%超から40%以下となる最も長い波長Zb2までの波長帯域を指す。なお、Zbの中心波長は、(Zb1+Zb2)/2nmである。
Zcは波長820nm以上において、本フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率が、20%超から20%以下になる最も短い波長Zc1から、Zc1+200nmである波長Zc2までの波長帯域を指す。なお、Zcの中心波長は、(Zc1+Zc2)/2nmである。
<IRPF>
前記IRPFは、可視光をカットし、近赤外線のうち透過させたい波長の光を透過する光学フィルターであれば特に制限されない。
このIRPFで用いる前記誘電体多層膜は、カットしたい波長の光(可視光および/または近赤外線のうちの一部)をカットする膜であることが好ましい。
また、IRPFは、可視光吸収剤を用いて可視光をカットしてもよい。
IRPFは、赤外線監視カメラ、車載赤外線カメラ、赤外線通信、各種センシングシステム、赤外線警報機、暗視装置等の光学系に好適に使用でき、これらの用途に使用する場合、透過させたい近赤外線以外の波長の光の透過率は低い方が好ましい。
特に、波長380~700nmの領域において、本フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。
また、IRPFは、透過させたい近赤外線の透過率は高い方が好ましく、具体的には、波長750nm以上の領域に、光線透過帯Yaを有し、前記光線透過帯Yaにおいて、本フィルターの垂直方向から測定した場合の最大透過率(TIR)が、好ましくは45%以上、より好ましくは50%以上である。
<基材(i)>
前記基材(i)は、単層であっても多層であってもよく、本樹脂層を有すればよい。前記基材(i)は、2層以上の本樹脂層を有していてもよく、この場合、2層以上の本樹脂層は、同一であっても、異なっていてもよい。
基材(i)が単層の場合は、該基材(i)は本樹脂層からなり、つまり、本樹脂層(樹脂製基板)が基材(i)である。
基材(i)が多層の場合は、該基材(i)としては、2層以上の樹脂層を含む基材であって、該2層以上の樹脂層のうち少なくとも1つが本樹脂層である基材や、本樹脂層とガラス支持体とを含む基材が挙げられ、例えば、ガラス支持体やベースとなる樹脂製支持体などの支持体上に本樹脂層が積層された積層体を含む基材(A)、本樹脂層上に、硬化性樹脂等からなるオーバーコート層などの樹脂層が積層された積層体を含む基材(B)が挙げられる。
製造コストや光学特性調整の容易性、さらに、本樹脂層の傷消し効果を達成できることや、基材(i)の耐傷つき性向上等の点から、前記基材(i)としては、基材(B)が特に好ましい。
なお、前記樹脂製支持体や基材(B)におけるオーバーコート層などの樹脂層は、化合物(A)を含まない樹脂層のことをいう。該化合物(A)を含まない樹脂層は、樹脂を含めば特に制限されず、該樹脂としては、前記本組成物の欄に記載の樹脂と同様の樹脂等が挙げられる。また、該化合物(A)を含まない樹脂層は、下記その他の機能膜であってもよい。
基材(i)の厚みは、所望の用途に応じて適宜選択することができ、特に制限されないが、好ましくは10~250μm、さらに好ましくは15~230μm、特に好ましくは20~150μmである。
基材(i)の厚みが前記範囲にあると、該基材(i)を用いた本フィルターを薄型化および軽量化することができ、固体撮像装置等の様々な用途に好適に用いることができる。特に、前記単層の基材(i)をカメラモジュール等のレンズユニットに用いた場合には、レンズユニットの低背化、軽量化を実現することができるため好ましい。
基材(i)も、前記本樹脂層が有する光学特性と同様の光学特性を有することが好ましい。
[基材(i)の製造方法]
前記本樹脂層、前記樹脂製支持体および前記オーバーコート層などの樹脂層は、例えば、溶融成形またはキャスト成形により形成することができ、さらに、必要により、成形後に、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤をコーティングしてもよい。
前記基材(i)が、基材(A)である場合、例えば、前記支持体に、本組成物を溶融成形またはキャスト成形することで、好ましくはスピンコート、スリットコート、インクジェットなどの方法にて塗工した後に溶媒を乾燥除去し、必要に応じてさらに光照射や加熱を行うことで、支持体上に本樹脂層が形成された基材を製造することができる。
・溶融成形
前記溶融成形としては、具体的には、本組成物を溶融混練りして得られたペレットを溶融成形する方法;本組成物を溶融成形する方法;溶剤を含む液状の本組成物から溶剤を除去して得られたペレットを溶融成形する方法などが挙げられる。溶融成形方法としては、射出成形、溶融押出成形またはブロー成形などを挙げることができる。
・キャスト成形
前記キャスト成形としては、溶剤を含む液状の本組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶剤を除去する方法;前記樹脂として光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含む、硬化性の本組成物を適当な支持体の上にキャスティングして溶媒を除去した後、紫外線照射や加熱などの適切な手法により硬化させる方法などが挙げられる。
前記基材(i)が、前記単層の基材(i)である場合には、該基材(i)は、キャスト成形後、支持体から塗膜を剥離することにより得ることができ、また、前記基材(i)が、前記基材(A)である場合には、該基材(i)は、キャスト成形後、塗膜を剥離しないことで得ることができる。
前記適当な支持体としては、例えば、ガラス板、スチールベルト、スチールドラムおよび樹脂(例えば、ポリエステルフィルム、環状オレフィン系樹脂フィルム)製支持体が挙げられる。
さらに、ガラス板、石英またはプラスチック製等の光学部品に、前記液状の本組成物をコーティングして溶剤を乾燥させる方法、または、前記硬化性の本組成物をコーティングして硬化および乾燥させる方法などにより、光学部品上に本樹脂層を形成することもできる。
前記樹脂製支持体およびオーバーコート層などの樹脂層を溶融成形またはキャスト成形により形成する場合には、前記溶融成形やキャスト成形の欄における本組成物の代わりに、樹脂を含む所望の組成物(但し、化合物(A)を含まない)を用いればよい。
また、前記樹脂製支持体およびオーバーコート層などの樹脂層を、溶剤を含む組成物を用いて形成する場合、得られる支持体や樹脂層中の残留溶剤量は、前記本樹脂層の欄で記載した範囲と同程度の範囲にあることが好ましい。
<誘電体多層膜>
本フィルターは誘電体多層膜を有する。該誘電体多層膜としては、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した積層体等が挙げられる。
該誘電体多層膜は、前記本樹脂層や基材(i)の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。片面に設ける場合、製造コストや製造容易性に優れ、両面に設ける場合、高い強度を有し、反りやねじれが生じにくい光学フィルターを得ることができる。本フィルターを固体撮像素子などに使用する場合、該フィルターの反りやねじれが小さい方が好ましいことから、誘電体多層膜を本樹脂層や基材(i)の両面に設けることが好ましい。
前記高屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.7以上の材料が挙げられ、屈折率が通常は1.7~2.5の材料が選択される。このような材料としては、例えば、チタニア、酸化ジルコニウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化ランタン、酸化イットリウム、酸化亜鉛、硫化亜鉛または酸化インジウム等を主成分とし、チタニア、酸化錫および/または酸化セリウム等を少量(例えば、主成分に対して0~10質量%)含有させたものが挙げられる。
前記低屈折率材料層を構成する材料としては、屈折率が1.6以下の材料を用いることができ、屈折率が通常は1.2~1.6の材料が選択される。このような材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、フッ化ランタン、フッ化マグネシウムおよび六フッ化アルミニウムナトリウムが挙げられる。
前記高屈折率材料層と低屈折率材料層とを積層する方法については、これらの材料層を積層した誘電体多層膜が形成される限り特に制限はない。例えば、本樹脂層や基材(i)上に、直接、CVD法、スパッタ法、真空蒸着法、イオンアシスト蒸着法またはイオンプレーティング法等により、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に積層した誘電体多層膜を形成することができる。
前記高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さは、通常、遮断しようとする近赤外線波長をλ(nm)とすると、0.1λ~0.5λの厚さが好ましい。λ(nm)の値としては、NIR-CFの場合、例えば700~1400nm、好ましくは750~1300nmである。高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さがこの範囲にあると、屈折率(n)と膜厚(d)との積(n×d)である光学的膜厚が、λ/4とほぼ同じ値となって、反射・屈折の光学的特性の関係から、特定波長の遮断・透過を容易にコントロールできる傾向にある。
誘電体多層膜における高屈折率材料層と低屈折率材料層との合計の積層数は、例えばNIR-CFの場合、光学フィルター全体として16~70層であることが好ましく、20~60層であることがより好ましい。各層の厚み、光学フィルター全体としての誘電体多層膜の厚みや合計の積層数が前記範囲にあると、十分な製造マージンを確保できる上に、光学フィルターの反りや誘電体多層膜のクラックを低減することができる。
本フィルターでは、化合物(A)の吸収特性等に合わせて、高屈折率材料層および低屈折率材料層を構成する材料種、高屈折率材料層および低屈折率材料層の各層の厚さ、積層の順番、積層数を適切に選択することで、透過したい波長域(例:可視域)に十分な透過率を確保した上で、カットしたい近赤外波長域に十分な光線カット特性を有し、かつ、斜め方向から近赤外線が入射した際の反射率を低減することができる。
ここで、誘電体多層膜の条件を最適化するには、例えば、光学薄膜設計ソフト(例えば、Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用い、透過したい波長域(例:可視域)の反射防止効果と、カットしたい近赤外域の光線カット効果を両立できるようにパラメーターを設定すればよい。前記ソフトの場合、例えば、NIR-CFの誘電体多層膜を形成する場合には、波長400~700nmの目標透過率を100%、Target Toleranceの値を1とした上で、波長705~950nmの目標透過率を0%、Target Toleranceの値を0.5にするなどのパラメーター設定方法が挙げられる。
これらのパラメーターは基材(i)の各種特性などに合わせて波長範囲をさらに細かく区切ってTarget Toleranceの値を変えることもできる。
<その他の機能膜>
本フィルターは、本発明の効果を損なわない範囲において、本樹脂層や基材(i)と誘電体多層膜との間、本樹脂層や基材(i)の誘電体多層膜が設けられた面と反対側の面、または、誘電体多層膜の本樹脂層や基材(i)が設けられた面と反対側の面に、本樹脂層(基材(i))や誘電体多層膜の表面硬度の向上、耐薬品性の向上、帯電防止および傷消しなどの目的で、反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を適宜設けることができる。
本フィルターは、前記機能膜を1層含んでもよく、2層以上含んでもよい。本フィルターが、前記機能膜を2層以上含む場合には、同様の膜を2層以上含んでもよいし、異なる膜を2層以上含んでもよい。
前記機能膜を積層する方法としては特に制限されないが、反射防止剤、ハードコート剤および/または帯電防止剤等のコーティング剤などを本樹脂層や基材(i)または誘電体多層膜に、前記と同様に溶融成形またはキャスト成形する方法等を挙げることができる。
また、前記コーティング剤などを含む硬化性組成物をバーコーター等で本樹脂層や基材(i)または誘電体多層膜上に塗布した後、紫外線照射等により硬化することによっても製造することができる。
前記コーティング剤としては、紫外線(UV)/電子線(EB)硬化型樹脂や熱硬化型樹脂などが挙げられ、具体的には、ビニル化合物類や、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系樹脂などが挙げられる。コーティング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
これらのコーティング剤を含む前記硬化性組成物としては、ビニル系、ウレタン系、ウレタンアクリレート系、アクリレート系、エポキシ系およびエポキシアクリレート系硬化性組成物などが挙げられる。
前記硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。前記重合開始剤としては、公知の光重合開始剤または熱重合開始剤を用いることができ、光重合開始剤と熱重合開始剤を併用してもよい。重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
前記硬化性組成物中、重合開始剤の配合割合は、硬化性組成物の全量を100質量%とした場合、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。重合開始剤の配合割合が前記範囲にあると、硬化特性および取り扱い性等に優れる硬化性組成物を容易に得ることができ、所望の硬度を有する反射防止膜、ハードコート膜や帯電防止膜などの機能膜を容易に得ることができる。
さらに、前記硬化性組成物には溶剤として有機溶剤を加えてもよく、有機溶剤としては、公知の溶剤を使用することができる。有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
これら溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
前記機能膜の厚さは、好ましくは0.1~20μm、より好ましくは0.5~10μm、特に好ましくは0.7~5μmである。
また、本樹脂層や基材(i)と機能膜および/または誘電体多層膜との密着性や、機能膜と誘電体多層膜との密着性を上げる目的で、本樹脂層や基材(i)、機能膜または誘電体多層膜の表面にコロナ処理やプラズマ処理等の表面処理をしてもよい。
[光学フィルターの用途]
本フィルターは、例えば、カットしたい領域の波長の光のカット能と、透過したい波長の光の透過能に優れる。従って、カメラモジュールのCCDやCMOSイメージセンサー等の固体撮像素子の視感度補正用として有用である。特に、デジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、デジタルビデオカメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、PCカメラ、監視カメラ、自動車用カメラ、赤外線カメラ、テレビ、カーナビゲーション、携帯情報端末、ビデオゲーム機、携帯ゲーム機、指紋認証システム、デジタルミュージックプレーヤー、各種センシングシステム、赤外線通信等に有用である。さらに、自動車や建物等のガラス板等に装着される熱線カットフィルターなどとしても有用である。
≪固体撮像装置≫
本発明に係る固体撮像装置は、本フィルターを具備する。ここで、固体撮像装置とは、CCDやCMOSイメージセンサー等といった固体撮像素子を備えた装置であり、具体的にはデジタルスチルカメラ、スマートフォン用カメラ、携帯電話用カメラ、ウェアラブルデバイス用カメラ、デジタルビデオカメラ等の用途に用いることができる。
≪光学センサー装置≫
本発明に係る光学センサー装置は、本フィルターを具備すれば特に制限されず、従来公知の構成とすればよい。
例えば、受光素子と本フィルターとを有する装置が挙げられ、具体的には、受光素子(半導体基板)、保護膜、本フィルターおよび他のフィルター等を有する装置が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
<分子量>
樹脂の分子量は、各樹脂の溶剤への溶解性等を考慮し、下記の(a)または(b)の方法にて測定を行った。
(a)ウォーターズ(WATERS)社製のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(150C型、カラム:東ソー(株)製Hタイプカラム、展開溶剤:o-ジクロロベンゼン)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
(b)東ソー(株)製GPC装置(HLC-8220型、カラム:TSKgelα-M、展開溶剤:THF)を用い、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定した。
<ガラス転移温度(Tg)>
樹脂のガラス転移温度は、(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計(DSC6200)を用いて、昇温速度:毎分20℃、窒素気流下で測定した。
<分光透過率>
基材および光学フィルターの各波長域における透過率は、(株)日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計(U-4100)を用いて測定した。この透過率は、光が基材または光学フィルターに対して垂直に入射する条件で、該分光光度計を使用して測定したものである。
ここで、基材または光学フィルターの透過率は、図1のように基材または光学フィルター1に対して垂直に透過した光6を分光光度計7で測定した。
本装置を用いて測定したパラメーターは以下の通りである。
λmax:波長850~1200nmにおいて、基材の垂直方向から測定した透過率が最も低い値となる光の波長
Tb_ave:基材の垂直方向から測定した、波長400~530nmの光の平均透過率
Tb_min:基材の垂直方向から測定した、波長400~530nmの光の最低透過率
Xa:波長800~1200nmにおいて、基材の垂直方向から測定した透過率が50%となる光の波長のうち、最も短波長側の波長
Xb:波長800~1200nmにおいて、基材の垂直方向から測定した透過率が50%となる光の波長のうち、最も長波長側の波長
Tf_ave:光学フィルターの垂直方向から測定した、波長400~530nmの光の平均透過率
Tf_min:光学フィルターの垂直方向から測定した、波長400~530nmの光の最低透過率
Tf_OD:下記式にて算出した、波長950~1100nmにおける平均OD値
Tf_OD=-Log10(波長950~1100nmにおける平均透過率(%)/100)
<基材の耐光性評価>
基材を室内蛍光灯(照度:400ルクス)に500時間曝露させ、基材中に含まれる化合物(A)の耐光性(環境光耐性)を評価した。耐光性は、蛍光灯曝露前後の前記λmaxにおける吸光度の変化[(蛍光灯曝露前の前記λmaxにおける吸光度-蛍光灯曝露後の前記λmaxにおける吸光度)×100/蛍光灯曝露前の前記λmaxにおける吸光度]を色素残存率(%)として評価した。蛍光灯で500時間曝露後の色素残存率は、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。
[合成例]
下記実施例で用いた化合物(A)および(X)は、一般的に知られている合成法に基づいて合成した。
化合物(A)は、例えば、特開2009-108267号公報、特開平5-59291号公報、特開2014-95007号公報、特開2011-52218号公報、国際公開第2007/114398号、特開2003-246940号公報、Chemistry of Heterocyclic Compounds: The Cyanine Dyes and Related Compounds, Volume 18(Wiley, 1964年)、Near-Infrared Dyes for High Technology Applications(Springer, 1997年)に記載されている方法に基づいて合成できる。
化合物(X)は、例えば、特許第3366697号公報、特許第2846091号公報、特許第2864475号公報、特許第3703869号公報、特開昭60-228448号公報、特開平1-146846号公報、特開平1-228960号公報、特許第4081149号公報、特開昭63-124054号公報、「フタロシアニン -化学と機能-」(アイピーシー、1997年)、特開2007-169315号公報、特開2009-108267号公報、特開2010-241873号公報、特許第3699464号公報、特許第4740631号公報に記載されている方法に基づいて合成できる。
[樹脂合成例1]
下記式(a)で表される8-メチル-8-メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(以下「DNM」ともいう。)100質量部、1-ヘキセン(分子量調節剤)18質量部およびトルエン(開環重合反応用溶媒)300質量部を、窒素置換した反応容器に仕込み、この溶液を80℃に加熱した。次いで、反応容器内の溶液に、重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/リットル)0.2質量部と、メタノール変性の六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度0.025mol/リットル)0.9質量部とを添加し、この溶液を80℃で3時間加熱攪拌することで開環重合反応させ、開環重合体溶液を得た。この重合反応における重合転化率は97%であった。
Figure 0007360665000013
前記で得られた開環重合体溶液1,000質量部をオートクレーブに仕込み、この開環重合体溶液に、RuHCl(CO)[P(C6533を0.12質量部添加し、水素ガス圧100kg/cm2、反応温度165℃の条件下で、3時間加熱撹拌して水素添加反応を行った。得られた反応溶液(水素添加重合体溶液)を冷却した後、水素ガスを放圧した。得られた反応溶液を大量のメタノール中に注いで凝固物を分離回収し、これを乾燥して、水素添加重合体(以下「樹脂A」ともいう。)を得た。得られた樹脂Aは、数平均分子量(Mn)が32,000、重量平均分子量(Mw)が137,000であり、ガラス転移温度(Tg)が165℃であった。
[実施例1]
〔基材の作製〕
容器に、樹脂合成例1で得られた樹脂A 100質量部、化合物(A)として、下記化合物(a-1)(塩化メチレン中での吸収極大波長:1058nm)0.08質量部、および塩化メチレンを加えて樹脂濃度が20質量%の溶液を調製した。得られた溶液を平滑なガラス板上にキャストし、20℃で8時間乾燥した後、ガラス板から剥離した。剥離した塗膜を更に減圧下100℃で8時間乾燥して、厚さ0.1mm、縦150mm、横150mmの樹脂層(1)を得た。
・化合物(a-1)
Figure 0007360665000014
得られた樹脂層(1)の片面に、下記樹脂組成物(1)を、得られる樹脂層の厚みが3μmとなるようにバーコーターで塗布し、オーブン中70℃で2分間加熱して溶剤を揮発除去した。次に、UVコンベア式露光機(アイグラフィックス(株)製、アイ紫外硬化用装置、型式US2-X0405、60Hz)を用いて露光(露光量:500mJ/cm2、照度:200mW/cm2)を行い、樹脂組成物(1)を硬化させ、樹脂層(1)上に樹脂層(2)を形成した。同様に、樹脂層(1)のもう一方の面にも樹脂組成物(1)からなる樹脂層(2)を形成することで基材を得た。
樹脂組成物(1):トリシクロデカンジメタノールアクリレート60質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート40質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン5質量部、およびメチルエチルケトン(溶剤、得られる組成物中の固形分濃度が30質量%となるよう使用)を含む組成物
得られた基材のλmax、Tb_ave、Tb_min、Xa、Xbを測定し、Xb-Xaを算出した。さらに、得られた基材の耐光性評価を行った。結果をそれぞれ表3に示す。また、得られた基材の分光透過率を図2に示す。
〔光学フィルターの作製〕
前記基材の作製で得られた基材の片面に誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
得られた光学フィルターの分光透過率を測定し、Tf_ave、Tf_min、Tf_ODを求めた。結果を表3に示す。また、得られた光学フィルターの分光透過率を図3に示す。
誘電体多層膜(I)は、蒸着温度120℃で、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とを交互に積層した積層体である(合計26層)。誘電体多層膜(II)は、蒸着温度120℃で、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とを交互に積層した積層体である(合計20層)。
誘電体多層膜(I)および(II)のいずれにおいても、シリカ層およびチタニア層を、基材側からチタニア層、シリカ層、チタニア層、・・・シリカ層、チタニア層、シリカ層の順となるように交互に積層し、光学フィルターの最外層をシリカ層とした。
各層の厚さと層数については、可視域の良好な透過率と近赤外域の反射性能を達成できるよう、基材の屈折率の波長依存特性や、使用した化合物(A)または(X)の吸収特性に合わせて、光学薄膜設計ソフト(Essential Macleod、Thin Film Center社製)を用いて最適化を行った。最適化を行う際、本実施例においてはソフトへの入力パラメーター(Target値)を下記表1の通りとした。
Figure 0007360665000015
膜構成最適化の結果、前記誘電体多層膜(I)を、膜厚約30~155μmのシリカ層と膜厚約10~94μmのチタニア層とを交互に積層した、積層数26層の多層蒸着膜とし、誘電体多層膜(II)を、膜厚約36~183μmのシリカ層と膜厚約10~108μmのチタニア層とを交互に積層した、積層数20層の多層蒸着膜とした。最適化を行った膜構成の一例を下記表2に示す。
Figure 0007360665000016
[実施例2]
実施例1において、化合物(a-1)の代わりに下記化合物(a-2)(塩化メチレン中での吸収極大波長:1013nm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材のλmax、Tb_ave、Tb_min、Xa、Xbを測定し、Xb-Xaを算出した。さらに、得られた基材の耐光性評価を行った。結果をそれぞれ表3に示す。
・化合物(a-2)
Figure 0007360665000017
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターの分光透過率を測定し、Tf_ave、Tf_min、Tf_ODを求めた。結果を表3に示す。
[実施例3]
実施例1において、化合物(a-1)の代わりに下記化合物(a-3)(塩化メチレン中での吸収極大波長:1066nm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材のλmax、Tb_ave、Tb_min、Xa、Xbを測定し、Xb-Xaを算出した。さらに、得られた基材の耐光性評価を行った。結果をそれぞれ表3に示す。
・化合物(a-3)
Figure 0007360665000018
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターの分光透過率を測定し、Tf_ave、Tf_min、Tf_ODを求めた。結果を表3に示す。
[実施例4]
実施例1において、化合物(a-1)の代わりに、化合物(a-2)0.04質量部および化合物(a-3)0.04質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材のλmax、Tb_ave、Tb_min、Xa、Xbを測定し、Xb-Xaを算出した。さらに、得られた基材の耐光性評価を行った。結果をそれぞれ表3に示す。
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターの分光透過率を測定し、Tf_ave、Tf_min、Tf_ODを求めた。結果を表3に示す。
[比較例1]
実施例1において、化合物(a-1)の代わりに下記化合物(x-1)(塩化メチレン中での吸収極大波長:1032nm)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材のλmax、Tb_ave、Tb_min、Xa、Xbを測定し、Xb-Xaを算出した。さらに、得られた基材の耐光性評価を行った。結果をそれぞれ表3に示す。また、得られた基材の分光透過率を図4に示す。
・化合物(x-1)
Figure 0007360665000019
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターの分光透過率を測定し、Tf_ave、Tf_min、Tf_ODを求めた。結果を表3に示す。また、得られた光学フィルターの分光透過率を図5に示す。
[比較例2]
実施例1において、化合物(a-1)の代わりに下記化合物(x-2)(塩化メチレン中での吸収極大波長:1095nm)0.23質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして基材を得た。
得られた基材のλmax、Tb_ave、Tb_min、Xa、Xbを測定し、Xb-Xaを算出した。さらに、得られた基材の耐光性評価を行った。結果をそれぞれ表3に示す。また、得られた基材の分光透過率を図6に示す。
・化合物(x-2)
Figure 0007360665000020
続いて、実施例1と同様に、得られた基材の片面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計26層の誘電体多層膜(I)を形成し、さらに基材のもう一方の面に、シリカ(SiO2)層とチタニア(TiO2)層とが交互に積層されてなる合計20層の誘電体多層膜(II)を形成し、厚さ約0.110mmの光学フィルターを得た。
誘電体多層膜の設計は、実施例1と同様に、基材の屈折率の波長依存性等を考慮した上で、実施例1と同じ設計パラメーターを用いて行った。
得られた光学フィルターの分光透過率を測定し、Tf_ave、Tf_min、Tf_ODを求めた。結果を表3に示す。また、得られた光学フィルターの分光透過率を図7に示す。
Figure 0007360665000021
1・・・基材または光学フィルター
6・・・光
7・・・分光光度計

Claims (5)

  1. 樹脂と、下記式(I)で表される化合物(A)とを含有する樹脂組成物。
    CnAn (I)
    [式(I)中、Cnは下記式(II)で表される一価のカチオンであり、An下記式(III)で表される一価のアニオンである。]
    Figure 0007360665000022
    [式(II)中、Yaは独立に、置換または非置換の炭素数8~20のアルキル基であり、
    Zaは、ハロゲン原子、または、下記式(A-1)~(A-2)のいずれかで表される基である。]
    Figure 0007360665000023
    [式(A-1)および(A-2)中、*は結合手である。]
    Figure 0007360665000024
    [式(III)中、R ~R 26 はそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子またはトリフルオロメチル基である。]
  2. 前記化合物(A)の含有量が、前記樹脂100質量部に対して0.005~1質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の樹脂組成物から形成された樹脂層。
  4. 波長850~1150nmに少なくとも1つの吸収極大波長を有する、請求項に記載の樹脂層。
  5. 請求項またはに記載の樹脂層と、誘電体多層膜とを有する、光学フィルター。
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