JP6705081B2 - 蒸気発生型清拭具およびそれを用いた清拭方法 - Google Patents
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Description
これら従来技術に係る蒸気温熱具は、水蒸気の発生部位は水蒸気発生組成物と一体化しており、皮膚面へ5時間程度貼付する片面透通性であって温度が50℃程度の持続型罨法用品である。また、これらの蒸熱温熱具は、蒸気の皮膚・粘着面への温熱伝導性や持続性を高め、貼付後の気化熱による爽快知覚を喚起することを狙った温熱具である。
第2発明の蒸気発生型清拭具は、第1発明において、前記発熱体が、外袋と、該外袋に収納される内袋と、該内袋の内部に鉄分、活性炭、塩類、水および保水剤などからなる発熱素子とが封入されたものであることを特徴とする。
第3発明の蒸気発生型清拭具は、第1発明において、前記清拭布が、不織布製の布片を用いたものであり、該布片の長さ方向における約3分の1から約2分の1の領域に前記ゲル状膜を形成していることを特徴とする。
第4発明の蒸気発生型清拭具は、第3発明において、前記ゲル状膜が、前記発熱体と略同一寸法となるように形成されていることを特徴とする。
第5発明の清拭方法は、請求項1記載の蒸気発生型清拭具を用いる清拭方法であって、発熱体を発熱させると共に布片上のゲル状膜に密着させて、ゲル状膜に含まれている水分を蒸気として放出させる状態とし、その布片で人体の皮膚表面を清拭することを特徴とする。
第2発明によれば、発熱体が携帯に便利であり、かつ用時にすぐさま使用できるので、時と場所を選ばずに蒸気布を使用することができる。とくに、野外での手当てに便利である。
第3発明によれば、不織布製の布片を備えるので体表面を優しく清拭でき、かつ布片で発熱体をくるめるので皮膚に刺激を与えることなく清拭できる。
第4発明によれば、ゲル状膜が発熱体と略同一寸法に仕上げられていると、発熱体を確実に布片に接着させることができながら、ゲル状膜が余分にはみ出ることによって生ずる手などへの不用な付着が無くなるので、清拭動作を妨げない。
第5発明によれば、蒸気の放熱が徐々に進む数10分位の間に布片で清拭すれば皮膚表面に温熱を与えながら清拭に利用できる。また、蒸気により皮膚に湿分を補給するが水分は皮膚面に付着しないので身体から体温が気化熱によって奪われることが少なく、疲労感を与えずに穏やかな温感等の快感を与えることができる。
(蒸気発生型清拭具Cの全体構成)
図1に示すように、本実施形態の蒸気発生型清拭具Cは人体の清拭用に使用するため蒸気を発生させながら用いる清拭具であって、発熱体包Aと清拭布包Bとがセットになったものである。
清拭布包Bは、清拭布5とこれを収容する外装袋9とからなる。外装袋9は、用時に開口して清拭布5を取り出すが、用時までの間に清拭布5を保護するために用いられる。
図1および図2(A)に示すように、前記発熱体1は、内袋2とその内部に充填された発熱素子3とからなる。発熱素子3は鉄分、活性炭、塩類、水および保水剤などからなる公知のものである。発熱素子3の使用量は発熱温度と発熱持続時間によって左右されるが、25gから50gの範囲が好ましく、35gから40g程度が最も好ましい。
この重量範囲の発熱素子3を含有する発熱体1を後述する清拭布5と共に用いれば50℃以上の蒸散を始めてから60分位の時間、自然蒸気放出を持続させることができ、清拭に適する時間として30分位を確保できる。
内袋2の素材は通気性被覆材としてポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の合成樹脂フィルム又は紙などの積層体が好ましいが、これに限定されるものではない。
また、内袋2における清拭布5が配される側は非通気性材として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、レーヨン等の合成樹脂フィルム若しくはアルミニウム箔等の金属フィルム又はそれ等の積層体とする事も可能である。
また外袋4の素材としては、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド又はポリスチレン等の合成樹脂フィルム、又は、該合成樹脂フィルムとアルミニウム箔等の金属または紙などの積層体等が使用される。
図1および図2(B)に示すように、清拭布5は、布片6とその片面に水分を保持すると共に前記発熱体1を粘着させるゲル状膜7が形成されたものである。
外装袋9は、清拭布5の劣化を防ぐ目的から光不透過性のフィルムなどが用いられるが、これに限られるものではない。
外装袋9に用いられるフィルムは、通常は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド又はポリスチレン等の合成樹脂フィルム、又は、該合成樹脂フィルムとアルミニウム箔等の金属または紙などの積層体等から選ばれたものが使用されるが、これに限られない。
用いられる不織布としては、親水性繊維や疎水性繊維、またはこれらの混紡または積層体で構成された不織布などを例示できるが、これらに限られない。また、不織布の製法には、スパンレース製法やニードルパンチ製法、スチームジェット製法などがあるが、どの製法を用いてもよい。
布片6の長さ寸法は200〜400mm位であるが260〜340mm位が最も好ましい。この寸法であると、発熱体1をくるんだ状態で、人の片手を挿入することができ、短すぎず長すぎもしないからである。ただし、本発明はこれらの寸法に制限されない。
このゲル状膜7は、水分を保持することと、前記した発熱体1を密着するための粘着性を付与できる材料を用いて形成される。
そのような材料としては、ゲル基剤などが好適であるが、これらに制限されるものではない。また、ゲル状膜の製法と塗工は公知の方法を適宜用いることができる。
ゲル状膜6の好ましい長さ寸法は、100〜200mm位であって、布片6の長さ方向における約3分の1から約2分の1の領域に形成される。この寸法と配置位置は使用上の便宜から考えられたものであるが、本発明はこれに限られるものではない。
ただし、ゲル状膜7の形成位置は上記に限られることなく布片6の長さ方向の端に寄った約2分の1位の領域であってもよい。このようにしても、図1に示すように、布片6を二つ折りして発熱体1をくるむことができるからである。
剥離フィルムの素材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレンなどが好ましく使用される。また、ゲル状膜と接する面にシリコン処理を施したものや、エンボス加工を施したもの、あるいは着色及び/または印刷を施したものも使用することが出来る。剥離フィルムの厚みは特に限定はないが、20〜100μmの範囲とすると、ゲル状膜の保護と使用性の点から好ましい。
上記外袋4と上記外装袋9は発熱体1と清拭布5を別体に保管しておくために用いられ、用時には開口して発熱体1と清拭布5を取出すと、廃棄される。
使用に際しては、図3(A)に示すように、清拭布5における布片6のゲル状膜7の上面に発熱体1を置き、同図(B)に示すように布片6の余った部分で発熱体1の上面をくるむ。可能なら、布片6の両端部を互いに重ねるようにする。
蒸気放散の持続時間は約60分以上であり、この蒸気放散する間に蒸気発生型清拭布Cを片手で持って、布片6を人の皮膚面に当ててふくと、蒸気を含んだ布片6によって体表面が清められ、しかも温熱効果が与えられる。本実施形態によると、この清拭可能時間は約30分を確保できる。
香川大学温度湿度環境実験サポートグループの協力を得て、認知的身体的に問題のない健康な成人男女を被験者とした。実施例1、2については、3名、平均年令32.3歳であった。
清拭実施部位は、被験者の前腕内側とした。調査日は平成28年5月19日である。
(測定用具)
皮膚表面の温度と湿度については、温湿度計を用いた。具体的には、日本シンテック株式会社の温湿度薄型センサープローブTHP−728を神栄テクノロジー株式会社のネットワーク型温湿度計TRH−7Xに接続して皮膚表面の温度湿度を計測した。
官能試験には、20項目の形容詞対で構成された意味微分(SD)法を用いた。形容詞対は、図7に示すとおりの情緒的評価3項目、緊張・弛緩の5項目、興奮・鎮静の3項目、明・暗の6項目、一般的評価の3項目であった。これらの形容詞対を7件法で評価した。
官能試験は、実施例1は13名(男性1名女性12名、平均年齢28.8歳)、実施例2は3名で(全て女性、平均年齢36.3歳)、比較例1は7名(全て男性、平均年齢23.3歳)、比較例2は2名(36.0歳)であった。実施期間は、実施例1・2は平成27年10月から11月、比較例1・2は平成28年5月19〜20日であった。
調査に用いた試料(実施例1、2および比較例1、2)は以下の通りである。
(実施例1)
発熱体1は、37.5gの発熱素子3を未晒しクレープ紙および有孔ポリエチレンフィルムの積層体素材の内袋2(縦横寸法130×95mm)に充填したものを用いた。清拭布5は、PET素材の布片6(長さ300mm、幅85mm)を用い、その長さ方向片側の上面にゲル状膜7(長さ120mm、幅85mm)を形成した。ゲル状膜7の素材はポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸部分中和物、などの懸濁化剤を加えてゲル状にしたものである。
(実施例2)
発熱素子3の充填量を45.0gとした以外は実施例1と同様のものを用意した。
(比較例1)
市販の普通のタオルに温度80〜90℃の蒸気を含ませたものを用意した。
(比較例2)吸水性の高い高級タオル(1リットルの水が入ったビーカーの上に1cm角の試験片(タオル)を浮かべて5秒以内に沈み始めたら合格という、今治タオル品質基準を満たすタオル、商品名「今治タオル」)に温度80〜90℃の蒸気を含ませたものを用意した。
被験者の体調は、概ね体温36.0℃、呼吸数16〜20/min、脈拍60〜70/min、血圧110〜115/70〜75mmHg、末梢酸素濃度(SpO2)99%であり、安静時に測定を行った。実施日は、天候晴れ、実施室内の温度24.9℃、湿度44.5%で、空調は使用しなかった。
実施例1、2は発熱体1を水平に20回振ってから3分経過後に清拭布5のゲル状膜6に貼付し2分経過してから被験者の前腕内側皮膚面を清拭した。
比較例1、2はタオルに湯を含ませてタオルを捻り、蒸気が発生するようになってから粗熱をとり、被験者の前腕内側皮膚面を清拭した。
実施例1、2および比較例1、2における清拭直後に計測した皮膚表面の温度と湿度の変化は以下のとおりであった。
図5は皮膚表面温度の変化曲線を示しており、縦軸は温度を示し単位は℃、横軸は清拭後の経過時間を示し単位は秒である。縦軸の0点は皮膚表面の平均温度であり、上下の温度は変化した温度を示している。比較例1、2のタオルは清拭直後急な温度上昇があるものの、その後は温度低下がやや大きいが、実施例1では温度上昇が少ないものの、その後の温度低下も少ないまま持続している。
つまり、本発明の実施例1では、清拭後に変化が少ない穏やかな皮膚面の温性環境をもたらすことができることが分る。
図6は皮膚表面湿度の変化曲線を示しており、縦軸は湿度を示し、単位はmg/l、横軸は清拭後の経過時間を示し単位は秒である。比較例1、2のタオルは清拭直後に急激な湿度上昇があり、かつ急速にほとんどの湿度分が無くなるが、これは気化熱による湿度低下が大きいことを示している。これに対し、本発明の実施例1では、湿度上昇も少ないのでその低減量も少ないまま持続している。
つまり本発明の実施例1では、清拭後の気化熱を最小にし、エネルギー消耗を最小にできることが分る。
図7において、黒丸は実施例1を示し、二重丸は実施例2を示している。
実施例1、2は、皮膚感覚の官能評価において、「好ましい」、「なごやか」、「落ち着いた」、「優雅」、「あたたかい」等の肯定イメージが形成されていた。
このことは、本発明の蒸気発生型清拭具およびそれを用いた清拭方法を用いた後に、さっぱり、爽快感、ぽかぽかなど、穏やか、優しいなどの肯定的な感覚をイメージできたことを示すので、本発明の高い有用性を示すものである。
2 内袋
3 発熱素子
5 清拭布
6 布片
7 ゲル状膜
Claims (5)
- 人体の清拭用に使用される蒸気発生型清拭具であって、
発熱体と清拭布とがセットになっており、
前記発熱体は、袋体に発熱素子が封入された携帯型の発熱体であり、
前記清拭布は、布片と、その片面に形成されており水分を保持すると共に前記発熱体を粘着させるゲル状膜からなる
ことを特徴とする蒸気発生型清拭具。 - 前記発熱体が、外袋と、該外袋に収納される内袋と、該内袋の内部に鉄分、活性炭、塩類、水および保水剤などからなる発熱素子とが封入されたものである
ことを特徴とする請求項1記載の蒸気発生型清拭具。 - 前記清拭布が、不織布製の布片を用いたものであり、該布片の長さ方向における約3分の1から約2分の1の領域に前記ゲル状膜を形成している
ことを特徴とする請求項1記載の蒸気発生型清拭具。 - 前記ゲル状膜が、前記発熱体と略同一寸法となるように形成されている
ことを特徴とする請求項3記載の蒸気発生型清拭具。 - 請求項1記載の蒸気発生型清拭具を用いる清拭方法であって、
発熱体を発熱させると共に布片上のゲル状膜に密着させて、ゲル状膜に含まれている水分を蒸気として放出させる状態とし、
その布片で人体の皮膚表面を清拭する
ことを特徴とする清拭方法。
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