JP6734013B2 - 蒸気布の製法 - Google Patents
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Description
看護や介護に使用する身体清拭や庵法は、入浴のできない患者にシャワーや湯船を使用しないで入浴同様の爽快感や清浄化を与える清潔技術である。本発明は、かかる清潔技術として使用される蒸気布の製法に関する。
上記のように、十分に濡れた手絞りタオルや蒸しタオルは、冷感を与える不快感や気化エネルギーによる疲労感等が懸念されるので、虚弱な患者への清潔技術としては不適である。
そして、本発明により得られた上記布はつぎの効果を奏する。
a)第1のタオルに含まれている蒸気が第2のタオルで包まれていることにより、温熱を外部に伝えることができながら、放熱が徐々に進むので数10分位の間は温熱を与える身体清拭や庵法に利用できる。
b)乾いたタオルに熱湯を吸収させて蒸気を生じさせた乾性蒸気布であることと、蒸気による加温は水分を伴わないので、身体から気化熱が奪われることが少なく虚弱な患者であっても疲労感を与えることがない。さらに、使用後の皮膚表面の温度低下が緩慢であるので、被使用者に対し穏やかな温感等の快感を与えることができる。
c)外側からくるむ第2のタオルが内側の第1のタオルより包み込み面積が大きいので、確実に第1のタオルを包み込み、蒸気の早期放散を防止でき、かつ使用時に、第1のタオル内の蒸気を被使用者に直接接触させないようにできるので、高温での熱接触を避け、緩やかな温感を与えることができる。
(蒸気布の構成)
本発明の製法で得られる蒸気布は、乾いたタオルに熱湯を吸収させて蒸気を生じさせた乾性蒸気布である点に特徴が存する。
具体的な構成は、つぎのとおりである。
温度80℃〜90℃の蒸気を含んだ第1のタオルと、この第1のタオルを外側からくるんだ第2のタオルとからなる。この蒸気布によると、第1のタオルに含まれている蒸気が第2のタオルで包まれていることにより、温熱を外部に伝えることができながら、放熱が徐々に進むので数10分位の間は温熱を与える身体清拭布として利用できる。また、蒸気による加温は水分を伴わないので、気化熱が奪われることが少なく虚弱な患者であっても疲労感を与えることがない。また被使用者に対し穏やかな温感覚を与えることができる。
本発明では、第1のタオルより包み込み面積の大きい第2のタオルが確実に第1のタオルを包み込むので、蒸気の早期放散を防止し、かつ、第1のタオルを直接被使用者に接触させないようにできるので、乾燥感を与えることができる。
また、二つのタオルを使う場合、第1のタオルより第2のタオルの方が包み込み面積が大きいことが使いやすくなる。具体的には洗面用タオルを八つ折りしたものと四つ折りしたものの二種を用いる場合、八つ折りのタオルより四つ折りのタオルの方が包み込み面積の大きいタオルに該当する。
本発明の製法を、以下に具体的に説明する。
以下では洗面用タオルを、八つ折りしたものをタオル1(第1のタオル)、四つ折りしたものをタオル2(第2のタオル)として用いている。
図1に基づき、具体的手法の一例を説明する。
(1)2枚のタオルを用意し、タオル1を八つ折りとし、タオル2を四つ折りとする。
(2)八つ折りのタオル1を開いて80℃〜90℃の熱湯を20cc滴下する。
(3)熱湯を滴下したタオル1を手で絞り、熱湯を蒸気化する。
(4)蒸気を含ませた八つ折りのタオル1をたなごころでたたくなどして瞬時に50℃〜55℃程度まで冷やす。
(5)タオル1を四つ折りのタオル2にのせ挟み込む。
(6)蒸気を含んだタオル1が乾燥したタオル2に包まれた状態である。
本発明の製法で得られた蒸気布には、以下のような利用法を例示できる。
1)庵法
本発明に係る蒸気布を臥床する人の腰部に差し込み、あるいは腹部にあてがう等の庵法として用いる。蒸気を含んだ第1のタオルを乾燥した第2のタオルで包んでいるので、人の膚に42℃〜45℃を接触させて保持するので、ゆるやかな加温効果を望める。
2)清拭
本発明に係る蒸気布を人の皮膚にあてがい、清拭する。清拭は荒熱を取り去り、50℃〜52℃で素早く拭く。皮膚には貼付しない。
3)治療資材
蒸気布を足あるいは他の部位における褥瘡黒色皮膚形成の段階で、これを包み込む。皮膚の浸軟化を生じさせ、不要角質を除去する。
本発明の製法で得られた蒸気布を庵法あるいは清拭に用いた場合、つぎの利点が得られる。
a)清拭後に、さっぱり、爽快感、ぽかぽかなどの主観的評価がある。
b)清拭後の穏やか、優しいなどの肯定的な感覚をイメージできる。
c)清拭後の皮膚温度は、絞りタオル、乾燥タオル、蒸しタオルより低下しない。
d)皮膚湿度は、絞りタオル、乾燥タオル、蒸しタオルより速く気化する。
なお、上記a)〜d)の利点は、後述する官能試験で実証されている。
本発明の製法で得られた蒸気布を、時期と場所を選ばず使用できるようにするには、以下の二つの方法がある。
(i)保温庫を利用する使用法
図1に示す製法で作った蒸気布をある程度の数だけ保温庫に保存しておく。そして、保温庫からそのつど取り出して使用したり、保温庫を別の場所に輸送したり、あるいは個々の使用者に配達する。そして、蒸気布を使用者が取り出して使用する。
この使用法は病院や介護施設等の固定施設内だけでなく、別の施設での利用に供したり、各家庭での利用に供することができる。
(ii)携帯型セットを利用する使用法
携帯可能な蒸気布とする場合、構成要素としては、(a)タオル1、(b)発熱剤(粉体の酸化カルシウムおよび粉体のアルミニウムを含む発熱主剤と、水を主成分とする発熱助剤とを反応させる発熱剤)、(c)加熱用の水約20ccを封入した袋、(d)これらを収容する開閉可能なパッケージが必要となる。なお、タオル2は、パッケージに入れてないものを利用できるが、予めパッケージに入れておいてもよい。
香川大学温度湿度環境実験サポートグループの協力を得て、認知的身体的に問題のない健康な男子大学生8名を調査協力者とした。年齢は、22から26歳であった。清拭実施部位は、調査協力者の負担を軽減すること、協力者が目視して確認できる部位であること、皮膚感覚が相対的に身体各部の中で一般的であることなどから調査協力者の上腕とした。
(測定用具)
皮膚感覚は、つぎの分析方法によった。
(1)官能試験として、20項目の形容詞対で構成された意味微分(SD)法を用いた。形容詞対は、情緒的評価3項目、緊張・弛緩の5項目、興奮・鎮静の3項目、明・暗の6項目、一般的評価の3項目であった。これらの形容詞対を7件法で評価した。
(2)皮膚表面の湿度と温度については、温湿度計を用いた。具体的には、神栄テクノロジー株式会社の温湿度THP−728を日本シンテック株式会社のネットワーク型温湿度計TRH−7Xに接続して皮膚表面の温度湿度を計測した。
試料(実施例1および比較例1〜3)は以下の通りである。
体温36.0℃、呼吸数16〜20/min、脈拍60〜90/min、血圧110〜134/60〜90mmHg、末梢酸素濃度(SpO2)95〜99%であり、安静時に測定を行った。
本発明の製法で得られた蒸気布(実施例1)と比較例1〜3による清拭下皮膚感覚は、図2のとおりであった。蒸気布(実施例1)は、他試料(比較例1〜3)より肯定的情緒、弛緩、一般的な肯定的イメージがあった。
蒸気布は、清拭後の皮膚表面の水分気化時間が絞り・蒸しタオルの次に早く、皮膚感覚の官能評価は、どの試料より優雅、洗練、温かい感じがあり、のんびり和やかな緩和イメージが形成されていた。清拭後皮膚水分の速い気化によって、皮膚温の若干の低下があるとされるが、イメージは概ね肯定的であり、とくに以下に注目される。
・清拭後に、さっぱり、爽快感、ぽかぽかなどの主観的評価がある。
・清拭後の穏やか、優しいなどの肯定的な感覚をイメージできる。
よって、心理的肯定化をもたらす有用な試料であると考えられる。
図3は皮膚表面湿度の減少曲線を示しており、縦軸の単位はmg/l、横軸の単位は秒である。表は4分間を示した。減少曲線が時間(秒)の経過と共に下降する程度が大きいほど早く乾燥することを示している。
この図3によると、実施例1の蒸気布の減少曲線ex1は、絞りタオルの減少曲線re1や紙タオルの減少曲線re3より早く下降しているので、皮膚が早く乾燥することが分かる。このように、蒸気布を用いた場合、冷感を感じにくいことが実証されている。
図4は皮膚表面温度の減少曲線を、示しており、縦軸の単位は℃、横軸の単位は秒である。表は5分間を示した。清拭実施後の時間の経過と共に減少曲線の下降程度が少ないほど、皮膚表面温度が高く保たれることを意味している。実施例1の減少曲線ex1は、清拭実施後100秒位までの間で、明らかに皮膚表面温度が高いことを示している。このように蒸気布を用いると温感が長続きすることが実証されている。
2 タオル
Claims (1)
- 人の皮膚にあてがって清拭するための蒸気布の製法であって、
乾いており八つ折りしたタオルを用い、該八つ折りしたタオルを開いて、その一部に温度80℃〜90℃の熱湯を少量滴下し、該八つ折りしたタオルである第1のタオルを手で絞って熱湯を蒸気化した蒸気を含ませ、ついで該第1のタオルをたなごころでたたいて該第1のタオル内の蒸気を瞬時に温度50℃〜55℃に冷却し、
さらに、乾燥しており前記第1のタオルに比べ包み込み面積の大きい第2のタオルで前記第1のタオルを包む
ことを特徴とする蒸気布の製法。
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