JP6701908B2 - 積層体 - Google Patents
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Description
しかし、従来のICカードは、例えば長時間利用しているうちに、ICモジュールがカード基材から浮いてしまう場合があった。
・第2の発明は、PVCシートを含む複数のシート層と、外部接触端子、基板(41)を有するICモジュール(40)と、ICモジュールを収容し、PVCシートが露出した露出部(51a)を有するモジュール収容部(51)とを備え、前記基板は、接着部(60)によって前記露出部に接着され、前記基板を形成するPVCシート材は、試験条件が60℃、90%RH、500時間の加速試験後に、シート表面のスズの原子組成百分率が2.0atomic%以下であること、を特徴とする積層体である。
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態のカード1を示す図である。
図1(A)は、カード1を上面から見た図である。
図1(B)は、カード1の層構成を説明する断面図(図1(A)のB−B断面図)である。
実施形態、図面では、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。図1に示すように、この座標系は、カード上面を観察した状態におけるカード1の長手方向が左右方向X(左側X1,右側X2)、短手方向が縦方向Y(下側Y1,上側Y2)、観察方向が厚さ方向Z(下側Z1,上側Z2)である。なお、各図面において、厚さ方向Z等の構成等は、明確に図示するために、適宜大きさを誇張する。
カード1(積層体)は、外部装置との間で、非接触通信及び接触通信が可能なICカードである。
なお、説明は省略するが、カード1は、必要に応じて、磁気リーダで読み取り可能な磁気ストライプ等を備える。
アンテナシート10は、非接触通信用のICチップ43、アンテナ(図示せず)等が実装されている。ICチップ43は、外部機器との間で通信するための制御装置、記憶装置等を備える電気部品である。アンテナは、電磁誘導方式で通信するためのループコイルアンテナである。アンテナは、例えば、被覆付導線をコイル状に巻いたものである。
上基材21は、カード1のコア部材である。上基材21は、複数の層から形成されていてもよい。
透明シート22は、カード1の上面を保護するカバー層である。
印刷層23は、クレジットカードの会社名等の文字や、記号、模様等がオフセット印刷等によって設けられた層である。
下基材31は、上基材21と同様に、カード1のコア部材である。下基材31は、複数の層から形成されていてもよい。
透明シート32は、カード1の下面を保護するカバー層である。透明シート32の上面又は下面には、カード1の使用方法の説明等が印刷された印刷層(図示せず)を備える。
ICモジュール40は、基板41、接触端子42(外部接触端子)、ICチップ43を備える。
基板41は、ICチップ43を実装するための電気基板である。基板41は、例えばガラスエポキシ基板等である。
接触端子42は、外部機器の端子と接触通信するための端子である。接触端子42は、基板41上面に設けられており、カード上面に露出している。接触端子42は、例えば、銅箔に金メッキがされたものである。
ICチップ43は、外部機器と通信するための制御装置、記憶装置等を備える電気部品である。ICチップ43は、基板41下面に実装されている。ICチップ43の周囲は、樹脂等の封止部材44によって封止されている。
モジュール収容部50は、上穴部51、下穴部52を備えており、2段階の深さになっている。
上穴部51は、モジュール収容部50の上部分を形成する穴である。上穴部51は、カード上面から上基材21の途中まで切削することにより形成される。
下穴部52は、上穴部51の内側に設けられる。上側Z2から見た外形は、下穴部52が上穴部51よりも小さい。また、深さは、下穴部52が上穴部51よりも深い。
上記構成により、ICモジュール40の収容前の状態では、上穴部51の底部は、上側Z2に露出している。上基材21が露出した部分を、以下「露出部51a」ともいう。
接着部60は、ICモジュール40の基板41下面と、露出部51aとの間に配置されることにより、これらの間を接着する。
これにより、ICモジュール40は、モジュール収容部50内に固着される。
図2は、実施形態のモジュール収容部50近傍を拡大した断面図である。
図2(A)は、ICモジュール40が収容部に収容された状態である。
図2(B)は、ICモジュール40が剥離した状態である。
図2(B)に示すように、ICモジュール40は、製造後に長時間が経過すると、カード1から剥離し、脱落してしまうことがあった。このモジュール剥離の原因を解明できたので、説明する。
図2の矢印Cで示すように、このため、上基材21の露出部51aからは、時間経過とともにスズ化合物がブリードする。そのため、接着部60は、多量のスズ化合物を含み、また、接着部60及び基板41の界面には、スズ化合物が介在することになる。このため、接着部60及び基板41間の接着力は、低下してしまうと考えられる。また、この接着力の低下が、モジュール剥離の原因であると考えられる。
モジュール剥離の原因の検証実験について説明する。
(検証実験1)
図3は、実施形態の検証実験の結果を説明する表である。
図3(A)は、実施形態の検証実験1におけるサンプル表面の原子濃度を説明する表である。
検証実験1のサンプル♯01〜♯04は、上基材21のPVCシートとして、同一の種類のものを用いた。
検証実験1は、以下のように、加速試験にともなうサンプル表面の原子濃度の変化を検証した。原子濃度は、原子組成百分率(atomic%)で示す。実施形態では、単位の表記を適宜省略する。
(1)各サンプルを、後述する条件(温度、湿度が同じであり、試験時間が異なる)で加速試験した。
(2)各サンプルを、所定の曲率で屈曲させて、ICモジュール40のカード1からの浮きの有無を確認した。ICモジュール40の浮きがない場合には、剥離強度(つまり接着強度)が十分であると判定でき、一方、浮きがある場合には、剥離強度が不十分であると判定できる。
(3)ICモジュール40を、カード1から強制的に剥離後、界面の原子濃度を測定した。
上記(1)から(3)によって、経過時間の変化にともなう表面の変化を確認した。
サンプル♯01:「60℃ 90% 500h(時間)」の加速試験を行ったカードである。
サンプル♯02:「60℃ 90% 200h」の加速試験を行ったカードである。
サンプル♯03:加速試験前の状態のカードである。
サンプル♯04(参考):ICモジュール40を収容する前、かつ、加速試験前の状態のカードである。つまり、カードにモジュール収容部50を形成し、加速試験を行なわない状態のものである。
測定部分は、サンプル♯01〜♯03が、剥離界面(剥離面)である基板下面41aであり、サンプル♯04が上基材21の表面(露出部51a)である。
測定条件(装置、設定等)は、以下の通りである。
・装置:ESCALAB220i−XL(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製XPS装置)
・入射X線:monochromated ALKα線(単色化X線、hν=1486.6ev)
・X線出力:160W(10kV・16mA)
・レンズモード:Large Area XL(磁気レンズ)
・アパーチャ開度:F.O.V=open、A.A.=open
・測定領域:700μmφ
・光電子取込角度:90度(試料法線上にインプットレンズを配置)
・帯電中和:電子中和銃+4(V)・0.08(mA)、中和補助マスク使用
図3(A)に示すように、スズ濃度は、時間経過とも増加する傾向があった。
すなわち、スズ濃度は、加速試験前のサンプル♯03が「基板下面41a:0.1」、200h経過後のサンプル♯02が「基板下面41a:1.2」、500h経過後のサンプル♯01が「基板下面41a:2.7」であった。
また、サンプル♯02,♯03は、ICモジュール40の浮きがなく、一方、サンプル♯01は、ICモジュール40の浮きがあった。
また、ICモジュール40の浮きがなかったサンプルのうち最も高いスズ濃度は、サンプル♯02の「基板下面41a:1.2」であった。このため、「界面のスズ濃度が1.2以下であれば、剥離強度が十分であると判断でき、界面のスズ濃度が1.2よりも大きければ剥離強度が不十分である可能性があると判断できること」を確認できた。
また、上記スズ濃度が「1.8以下」であれば、上記範囲の中間値以下であるので、上記屈曲試験を行っても、ICモジュール40の浮きを抑制できる可能性が大きい。
さらに、上記スズ濃度が「1.5以下」であれば、スズ原子組成百分率がさらに小さいく、また、スズ濃度「1.2」に十分に近いので、ICモジュール40の浮きを抑制できる可能性がさらに向上する。
図3(B)は、実施形態の検証実験2におけるサンプル表面の原子濃度(原子組成百分率)を説明する表である。
検証実験2では、上基材21のPVCシートの種類が異なる複数のカード1を、全て共通の条件で加速試験を行った。加速試験の条件は、上記サンプル♯01と同じ「60℃ 90% 500h」である。
そして、検証実験1と同様にICモジュール40の浮きの有無を確認し、また、検証実験1の測定条件と同様な条件で、界面の原子濃度を測定した。
サンプルのカード1の上基材21(PVCシート)は、以下の3種である。
サンプル♯01:検証実験1に同じ
サンプル♯12〜13:種別の異なる基材
測定箇所は、基板下面41aである。
図3(B)に示すように、スズ濃度は、サンプル♯12が「0.1」、サンプル♯13が「0.3」、サンプル♯14が「0.2」であり、これらは、サンプル♯01の「2.7」に比べると低かった。
また、サンプル♯12〜♯14は、ICモジュール40の浮きがなかった。一方、前述したように、サンプル♯01は、ICモジュール40の浮きがあった。
図3(C)は、実施形態の検証実験3におけるサンプル表面の原子濃度(原子組成百分率)を説明する表である。
検証実験3では、検証実験2と同じ4種のサンプル♯1,12〜14のシート材(つまり、ICモジュール40を収容しない状態の上基材21)を、全て共通の条件で加速試験後に、スズ化合物のブリード量を確認した。
加速試験の条件は、検証実験2と同じ「60℃ 90% 500h」である。そして、検証実験1,2の測定条件と同様な条件で、シート材表面の原子濃度を測定した。
図3(C)に示すように、スズ濃度は、サンプル♯12が「0.2」、サンプル♯13が「0.1」、サンプル♯14が「0.4」であり、これらは、サンプル♯01の「2.4」に比べると低かった。
例えば、上記スズ濃度が、例えば「2.0以下」であれば、「2.4」に比べて十分に小さいので、ICモジュール40の浮きを抑制できる効果を期待できる。
また、上記スズ濃度が「1.4以下」であれば、上記範囲の中間値以下であるので、上記屈曲試験を行っても、ICモジュール40の浮きを抑制できる可能性が大きい。
さらに、上記スズ濃度が「1.0以下」であれば、スズ原子組成百分率がさらに小さいく、また、「0.4」に十分に近いので、ICモジュール40の浮きを抑制できる可能性がさらに向上する。
(1)実施形態において、カードは、非接触通信、接触通信両用のものである例を示したが、これに限定されない。カードは、非接触通信機能を備えず、接触通信機能のみを備えていてもよい。この場合には、アンテナシートが不要であるので、上基材、下基材を一体にした基材を設けてもよい。
Claims (2)
- PVCシートを含む複数のシート層と、
外部接触端子、及び、基板を有するICモジュールと、
ICモジュールを収容し、PVCシートが露出した露出部を有するモジュール収容部とを備え、
前記基板は、接着部によって前記露出部に接着され、
前記PVCシートは、前記PVCシートを単体で、試験条件が60℃、90%RH、500時間の加速試験後における前記PVCシート表面のスズの原子組成百分率が0.4atomic%以下であり、
試験条件が60℃、90%RH、500時間の加速試験後に、前記基板及び前記接着部の間を剥離した状態において、前記基板の剥離面のスズの原子組成百分率が2.0atomic%以下であること、
を特徴とする積層体。 - PVCシートを含む複数のシート層と、
PVCシートが露出した露出部を有するモジュール収容部とを備え、
前記PVCシートは、前記PVCシートを単体で、試験条件が60℃、90%RH、500時間の加速試験後における前記PVCシート表面のスズの原子組成百分率が0.4atomic%以下であること、
を特徴とする積層体。
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