JP6701683B2 - ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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本発明は、ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、氷上性能およびウェット性能を共に向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
従来、タイヤの氷上性能(氷上での制動性)を向上させるために多くの手段が提案されている。例えば、ゴムに硬質異物や中空ポリマーを配合し、これによりゴム表面にミクロな凹凸を形成することによって氷の表面に発生する水膜を除去し、氷上摩擦を向上させる手法が知られている。
しかし、中空ポリマーを配合するとトレッドゴム中に空洞が形成され、ゴム強度が低下し、湿潤状態の路面における制動性(ウェット性能)が低下するという問題点がある。
このように、氷上性能およびウェット性能を同時に高めることは当業界では困難な事項とされてきた。
なお下記特許文献1には、タイヤトレッドの表面層にポリテトラフルオロエチレンを含有させる技術が開示されている。しかし、該技術では、氷上性能およびウェット性能を同時に改善することができない。
特開2006−240583号公報
したがって本発明の目的は、氷上性能およびウェット性能を共に向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定のガラス転移温度範囲を有するジエン系ゴムに対し、フッ素含有アクリル系モノマー単位を含む重合体を特定量で配合することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下のとおりである。
1.ガラス転移温度(Tg)が−60℃以下であるジエン系ゴム100質量部に対し、フッ素含有アクリル系モノマー単位を含む重合体を0.1〜20質量部含むことを特徴とするゴム組成物。
2.前記ジエン系ゴム100質量部に対し、さらに熱膨張性マイクロカプセルを1〜10質量部配合することを特徴とする前記1に記載のゴム組成物。
3.前記1または2に記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
本発明によれば、特定のガラス転移温度範囲を有するジエン系ゴムに対し、フッ素含有アクリル系モノマー単位を含む重合体を特定量で配合したので、氷上性能およびウェット性能を共に向上させ得るゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、とくに制限されず、ゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
中でも好ましくは、NR、BRである。
なお、NBRを使用すると本発明の効果を十分に発揮できない場合がある。
また本発明で使用されるジエン系ゴムは、ガラス転移温度(Tg)が−60℃以下である必要がある。Tgが−60℃を超えると氷上性能およびウェット性能が共に低下する。なお、ジエン系ゴムを複数種類用いる場合、Tgは平均Tgとして算出される。平均Tgは、ガラス転移温度の平均値であり、各ジエン系ゴムのガラス転移温度と各ジエン系ゴムの配合割合から平均値として算出することができる。
(フッ素含有アクリル系モノマー単位を含む重合体)
本発明で使用されるフッ素含有アクリル系モノマー単位を含む重合体(以下、特定重合体と言うことがある)において、フッ素含有アクリル系モノマー単位は、例えば、アルキル基の一部または全ての水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロ(メタ)アクリレートが好適なものとして挙げられる。本発明では、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロ(メタ)アクリレートが好ましい。
また、本発明で使用される特定重合体は、該フッ素含有アクリル系モノマー単位と、それ以外の公知のコモノマー単位とを共重合させた共重合体であることもできる。該コモノマー単位は、とくに制限されず、公知のコモノマーを適宜選択することができる。なお、特定重合体中、フッ素含有アクリル系モノマー単位は、20質量%以上を構成することが好ましい。
また、本発明で使用される特定重合体におけるフッ素含有量は、5〜80質量%が好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。
また、本発明で使用される特定重合体の重量平均分子量(GPC法によるポリスチレン換算値)は、100〜100,000好ましく、1,000〜50,000がさらに好ましい。
特定重合体に含まれるアクリレート単位は極性が高いためタイヤ表面に偏在しやすい。これによりフルオロアルキル基に基づく高い撥水性をタイヤ表面に付与できる。氷上性能を高めるためには、氷上に存在する水を排除することが重要であるが、本発明では、上記のようにタイヤが高い撥水性を有することから、タイヤと氷上の間に存在する水を良好に排除することができ、氷上性能が向上する。また、このような水を排除する作用により、湿潤路面に対するタイヤの摩擦力が増大する。このように本発明によれば、氷上性能およびウェット性能を同時に高めることができる。
(熱膨張性マイクロカプセル)
本発明では、氷上性能およびウェット性能をさらに高めることを目的として、熱膨張性マイクロカプセルを配合することができる。
熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂で形成された殻材中に、熱膨張性物質を内包した構成からなる。熱膨張性マイクロカプセルの殻材はニトリル系重合体により形成することができる。
またマイクロカプセルの殻材中に内包する熱膨張性物質は、熱によって気化または膨張する特性をもち、例えば、イソアルカン、ノルマルアルカン等の炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種類が例示される。イソアルカンとしては、イソブタン、イソペンタン、2−メチルペンタン、2−メチルヘキサン、2,2,4−トリメチルペンタン等を挙げることができ、ノルマルアルカンとしては、n−ブタン、n−プロパン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等を挙げることができる。これらの炭化水素は、それぞれ単独で使用しても複数を組み合わせて使用してもよい。熱膨張性物質の好ましい形態としては、常温で液体の炭化水素に、常温で気体の炭化水素を溶解させたものがよい。このような炭化水素の混合物を使用することにより、未加硫タイヤの加硫成形温度域(150℃〜190℃)において、低温領域から高温領域にかけて十分な膨張力を得ることができる。
このような熱膨張性マイクロカプセルとしては、例えばスェーデン国エクスパンセル社製の商品名「EXPANCEL 091DU−80」または「EXPANCEL 092DU−120」等、或いは松本油脂製薬社製の商品名「マツモトマイクロスフェアー F−85D」または「マツモトマイクロスフェアー F−100D」等を使用することができる。
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、特定重合体を0.1〜20質量部含むことを特徴とする。
前記特定重合体の配合量が0.1質量部未満であると、配合量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができない。逆に20質量部を超えるとウェット性能が悪化する。
さらに好ましい特定重合体の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1〜10質量部である。
また本発明のゴム組成物において、熱膨張性マイクロカプセルを配合する場合、その配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、1〜10質量部が好ましい。
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛、カーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウムのような各種充填剤;老化防止剤;可塑剤などのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
また本発明のゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに適しており、トレッド、とくにキャップトレッドに適用するのがよい。また本発明の空気入りタイヤは、スタッドレスタイヤであることができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
標準例、実施例1〜4および比較例1〜6
サンプルの調製
下記表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、ゴム組成物を得た。次に得られたゴム組成物を所定の金型中で160℃、20分間プレス加硫して加硫ゴム試験片を得、以下に示す試験法で加硫ゴム試験片の物性を測定した。
氷上性能:各種加硫ゴム試験片をトレッドに組み込んだタイヤサイズ215/60R16の空気入りタイヤを、16×7Jのリムに組み付け、空気圧(220[kPa])を充填し、試験車両(国産2リットルセダンFF車)に装着した。続いて、氷盤路であるテストコースにて上記試験車両により初速40[km/h]から急制動して、完全停止するまでの制動距離を測定した。結果は、比較例1を100として指数で示した。指数が大きいほど、氷上性能に優れることを意味する。
ウェット性能:上記氷上性能の試験において、氷盤路であるテストコースに替えて、撒水したアスファルト路面にて試験車両により初速40[km/h]から急制動して、完全停止するまでの制動距離を測定した。結果は、比較例1を100として指数で示した。指数が大きいほど、ウェット性能に優れることを意味する。
結果を表1に示す。
Figure 0006701683
*1:NR(RSS No.3、Tg=−55℃)
*2:BR(日本ゼオン(株)製 Nipol BR1220、Tg=−105℃)
*3:SBR(日本ゼオン(株)製 Nipol 1723、油展量=SBR100質量部に対し37.5質量部、Tg=−55℃)
*4:シリカ(Solvay社製Zeosil 1165MP)
*5:カーボンブラック(キャボットジャパン社製ショウブラックN339)
*6:シランカップリング剤(Evonik Degussa社製Si69)
*7:プロセスオイル(昭和シェル石油(株)エキストラクト4号S)
*8:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*9:ステアリン酸(日油(株)製ステアリン酸YR)
*10:老化防止剤(Solutia Europe社製Santoflex 6PPD)
*11:ワックス(大内新興化学工業(株)製サンノック)
*12:特定重合体(以下のようにして合成された特定重合体)
*13:ポリテトラフルオロエチレンPTFE(旭硝子(株)製LM-720AP)
*14:フルオロシリコーン(東レ・ダウコーニング社製LS63U)
*15:熱膨張性マイクロカプセル(松本油脂製薬(株)製マツモトマイクロスフェアF−100D)
*16:硫黄(軽井沢精錬所製油処理イオウ)
*17:加硫促進剤1(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ-G)
*18:加硫促進剤2(Flexsys社製Perkacit DPG)
特定重合体の合成
モノマー(パーフルオロアルキルエチルアクリレート(FA)[C2n+1CHCHCOOCH=CH(n=6,8,10,12,14(nの平均9)の化合物の混合物)]=70g、ラウリルアクリレート(LA)=25g、N−メチロールアクリルアミド(N−MAM)=2.5g、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート(CHPMA)=2.5g、乳化剤(ジ硬化牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド(カチオン性界面活性剤A)=2g、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド(カチオン性界面活性剤B)=2g、ポリオキシエチレン(8)ジステアレート(ノニオン性界面活性剤A、HLB値8.5)=7g)、溶剤(トリプロピレングリコール(TPG)=30g)、連鎖移動剤(ドデシルメルカプタン=0.5g)、水(191g)を仕込み、ホモミキサーで攪拌後、超音波乳化機で乳化した。窒素置換し、窒素雰囲気下で開始剤(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩=0.6g)を添加し60℃で4時間重合した。GCによりモノマーの消失を確認した。得られた組成物の固形分(130℃、2時間での蒸発残分)は33%であった。このようにして、特定重合体を合成した。
前記の表1の結果から明らかなように、実施例1〜4で得られたゴム組成物は、特定のガラス転移温度範囲を有するジエン系ゴムに対し、フッ素含有アクリル系モノマー単位を含む重合体を特定量で配合したので、従来の代表的な標準例に対し、氷上性能およびウェット性能がいずれも向上している。とくに、熱膨張性マイクロカプセルを配合した実施例3および4は、氷上性能およびウェット性能がさらに改善された。
これに対し、比較例1は、特定重合体の配合量が本発明で規定する下限未満であるので、氷上性能およびウェット性能がいずれも改善されなかった。
比較例2は、特定重合体の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、ウェット性能が悪化した。
比較例3は、熱膨張性マイクロカプセルを配合し、特定重合体を配合しない例であるので、ウェット性能が悪化した。
比較例4は、ジエン系ゴムの平均Tgが本発明で規定する上限を超えているので、氷上性能およびウェット性能がいずれも悪化した。
比較例5は、特定重合体の替わりにPTFEを配合した例であり、氷上性能およびウェット性能がいずれも悪化した。
比較例6は、特定重合体の替わりにフルオロシリコーンを配合した例であり、氷上性能およびウェット性能がいずれも悪化した。

Claims (2)

  1. 天然ゴムおよびブタジエンゴムを含み、かつガラス転移温度(Tg)が−60℃以下であるジエン系ゴム100質量部に対し、フッ素含有アクリル系モノマー単位を含む重合体を0.1〜20質量部および熱膨張性マイクロカプセルを1〜10質量部含むことを特徴とするスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
  2. 請求項に記載のゴム組成物をトレッドに使用した空気入りスタッドレスタイヤ
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